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特表2022-548938ポリマー由来弾性ヒートスプレッダフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-22
(54)【発明の名称】ポリマー由来弾性ヒートスプレッダフィルム
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/205 20170101AFI20221115BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20221115BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
C01B32/205
C08L21/00
C08K3/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517750
(86)(22)【出願日】2020-09-15
(85)【翻訳文提出日】2022-05-09
(86)【国際出願番号】 US2020050794
(87)【国際公開番号】W WO2021055304
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】16/574,634
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
(71)【出願人】
【識別番号】522082160
【氏名又は名称】グローバル グラフェン グループ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Global Graphene Group,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ボア ゼット.
(72)【発明者】
【氏名】リン,イ-ジン
【テーマコード(参考)】
4G146
4J002
【Fターム(参考)】
4G146AA02
4G146AB07
4G146AC20A
4G146AC20B
4G146AC22A
4G146AC22B
4G146AC26A
4G146AC26B
4G146AD20
4G146AD29
4G146BA13
4G146BA22
4G146BC04
4G146BC36B
4G146CB20
4G146CB35
4G146DA04
4J002AC001
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC081
4J002AC091
4J002BB051
4J002BB061
4J002BB151
4J002BB181
4J002BG041
4J002CK001
4J002CK021
4J002CL071
4J002CP031
4J002DA026
4J002FA016
4J002FD016
(57)【要約】
a)ポリマーフィルム又はピッチフィルムの黒鉛化から調製される黒鉛フィルムであって、黒鉛フィルムは、互いに対して平行で、フィルム面に対して平行である黒鉛結晶を有し、0.34nm未満のグラフェン間距離を有し、及び黒鉛フィルムは、圧縮後、単独で、少なくとも600W/mKの熱伝導率、4000S/cm以上の電気伝導率、及び1.7g/cm超の物理的密度を有する、黒鉛フィルム;並びに、b)フィルムの少なくとも1つの面から黒鉛フィルムの中に浸透しているエラストマー又はゴムであって、エラストマー又はゴムは、全ヒートスプレッダフィルム重量に基づいて0.001重量%~30重量%の量である、エラストマー又はゴム、を備えた弾性ヒートスプレッダフィルムが提供される。弾性ヒートスプレッダフィルムは、2%~100%の完全に回復可能な引張弾性歪み、及び100W/mK~1750W/mKの面内熱伝導率を有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性ヒートスプレッダフィルムであって:
A)ポリマーフィルム又はピッチフィルムの黒鉛化から調製される黒鉛フィルムであって、前記黒鉛フィルムは、互いに対して実質的に平行で、フィルム面に対して平行である黒鉛結晶を有し、前記黒鉛結晶中に0.34nm未満のグラフェン間距離を有し、及び前記黒鉛フィルムは、すべて樹脂の非存在下で測定した場合に、少なくとも600W/mKの熱伝導率、4000S/cm以上の電気伝導率、及び1.5g/cm超の物理的密度を有する、黒鉛フィルム;並びに
B)前記黒鉛フィルムの少なくとも1つの面から前記黒鉛フィルムの中に浸透しているエラストマー又はゴムであって、前記エラストマー又はゴムは、全ヒートスプレッダフィルム重量に基づいて0.001重量%~30重量%の量である、エラストマー又はゴム、
を備え、
前記弾性ヒートスプレッダフィルムは、2%~100%の完全に回復可能な引張弾性歪み、及び100W/mK~1750W/mKの面内熱伝導率を有する、弾性ヒートスプレッダフィルム。
【請求項2】
前記エラストマー又はゴムが、天然ポリイソプレン、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、クロロプレンゴム、ポリクロロプレン、ブチルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、メタロセン系ポリ(エチレン-co-オクテン)エラストマー、ポリ(エチレン-co-ブテン)エラストマー、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレンエラストマー、エピクロロヒドリンゴム、ポリアクリルゴム、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、パーフルオロエラストマー、ポリエーテルブロックアミド、クロロスルホン化ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル、熱可塑性エラストマー、タンパク質レジリン、タンパク質エラスチン、エチレンオキシド-エピクロロヒドリンコポリマー、ポリウレタン、ウレタン-尿素コポリマー、これらのスルホン化バージョン、又はこれらの組み合わせから選択される材料を含有する、請求項1に記載の弾性ヒートスプレッダフィルム。
【請求項3】
10nm~500μmの厚さを有する、請求項1に記載の弾性ヒートスプレッダフィルム。
【請求項4】
前記黒鉛フィルムが、前記エラストマー又はゴムなしで測定された場合、0.337nm未満のグラフェン間距離、少なくとも1300W/mKの熱伝導率、8000S/cm以上の電気伝導率、及び1.8g/cm超の物理的密度を有する、請求項1に記載の弾性ヒートスプレッダフィルム。
【請求項5】
前記黒鉛フィルムが、前記エラストマー又はゴムなしで測定された場合、0.336nm未満のグラフェン間距離、少なくとも1500W/mKの熱伝導率、10000S/cm以上の電気伝導率、及び2.0g/cm超の物理的密度を有する、請求項1に記載の弾性ヒートスプレッダフィルム。
【請求項6】
前記弾性ヒートスプレッダフィルムが、厚さt、前面、及び後面を有し、前記エラストマー又はゴムが、前記前面から前記黒鉛フィルム中へ少なくとも1/10tの距離浸透し、及び/又は前記後面から前記フィルム中へ少なくとも1/10tの距離浸透し、前記黒鉛フィルム内部に、エラストマーを含まないゾーンが存在する、請求項1に記載の弾性ヒートスプレッダフィルム。
【請求項7】
厚さtを有し、エラストマーを含まないコアのサイズが1/10t~9/10tである、請求項1に記載の弾性ヒートスプレッダフィルム。
【請求項8】
前記黒鉛フィルムが、0.337nm未満のグラフェン間距離及び1.0未満のモザイクスプレッド値を呈する、請求項1に記載の弾性ヒートスプレッダフィルム。
【請求項9】
前記黒鉛フィルムが、60%以上の黒鉛化度、及び/又は0.7未満のモザイクスプレッド値を呈する、請求項1に記載の弾性ヒートスプレッダフィルム。
【請求項10】
前記黒鉛フィルムが、90%以上の黒鉛化度、及び/又は0.4未満のモザイクスプレッド値を呈する、請求項1に記載の弾性ヒートスプレッダフィルム。
【請求項11】
すべて薄フィルムの面方向に沿って測定した場合、500W/mK以上の熱伝導率、及び/又は5000S/cm以上の電気伝導率を有する、請求項1に記載の弾性ヒートスプレッダフィルム。
【請求項12】
すべて薄フィルムの面方向に沿って測定した場合、800W/mK以上の熱伝導率、及び/又は8000S/cm以上の電気伝導率を有する、請求項1に記載の弾性ヒートスプレッダフィルム。
【請求項13】
すべて薄フィルムの面方向に沿って測定した場合、1200W/mK以上の熱伝導率、及び/又は12000S/cm以上の電気伝導率を有する、請求項1に記載の弾性ヒートスプレッダフィルム。
【請求項14】
すべて薄フィルムの面方向に沿って測定した場合、1500W/mK以上の熱伝導率、及び/又は20000S/cm以上の電気伝導率を有する、請求項1に記載の弾性ヒートスプレッダフィルム。
【請求項15】
熱管理要素として請求項1に記載の弾性ヒートスプレッダフィルムを含む電子デバイス。
【請求項16】
耐荷重熱管理要素として請求項1に記載の弾性ヒートスプレッダフィルムを含む構造部材。
【請求項17】
請求項1に記載に弾性ヒートスプレッダフィルムを製造するための方法であって、前記方法は:
a)10nm~1mmのフィルム厚さを有する、ポリマー又はピッチの少なくとも1つのフィルムを提供すること;
b)前面及び後面を有する多孔質黒鉛化フィルムを得るために、前記少なくとも1つのフィルムを、非酸化性雰囲気中、2000℃超の黒鉛化温度での熱処理に掛けて、前記フィルムを黒鉛化すること;
c)前記多孔質黒鉛化フィルム中に前記前面及び後面のうちの少なくとも一方からゴム又はエラストマー樹脂を含浸させて、ゴム/エラストマー含浸フィルムを得ること;並びに
d)前記ゴム/エラストマー含浸フィルムを圧縮及び固化して、前記弾性ヒートスプレッダフィルムを製造すること、
を含む、方法。
【請求項18】
前記ポリマーフィルムが、ポリイミド、ポリアミド、フェノール樹脂、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリチアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリベンズイミダゾール、ポリベンゾビスイミダゾール、ポリ(ピロメリチミド)、ポリ(p-フェニレン-イソフタルアミド)、ポリ(m-フェニレン-ゾイミダゾール)、ポリ(フェニレン-ベンゾビスイミダゾール)、ポリアクリロニトリル、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記非酸化性雰囲気が、水素ガス、窒素ガス、不活性ガス、又はこれらの組み合わせを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記ピッチフィルムが、石油ピッチ、コールタールピッチ、多環式炭化水素、又はこれらの組み合わせのフィルムから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記多環式炭化水素が、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、クリセン、トリフェニレン、ピレン、ペンタセン、ベンゾピレン、コランニュレン、ベンゾペリレン、コロネン、オバレン、ベンゾフルオレン、その環構造上に置換基を有するこれらの誘導体、これらの化学誘導体、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ポリマー又はピッチの前記フィルムがさらに、前記フィルム中に分散された0.01重量%~50重量%の複数のグラフェンシートを含み、前記グラフェンシートは、未処理グラフェン、酸化グラフェン、還元グラフェンオキシド、フッ素化グラフェン、水素化グラフェン、ドープグラフェン、化学官能化グラフェン、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
ポリマー又はピッチの前記フィルムがさらに、0.01重量%~50重量%の膨張黒鉛フレーク又は剥離黒鉛を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記方法がさらに、工程(b)の前に、200~2500℃から選択される温度で前記フィルムを炭化する手順を含み、この場合、前記黒鉛化温度は、2500℃~3250℃である、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記エラストマー又はゴムが、天然ポリイソプレン、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、クロロプレンゴム、ポリクロロプレン、ブチルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、メタロセン系ポリ(エチレン-co-オクテン)エラストマー、ポリ(エチレン-co-ブテン)エラストマー、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレンエラストマー、エピクロロヒドリンゴム、ポリアクリルゴム、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、パーフルオロエラストマー、ポリエーテルブロックアミド、クロロスルホン化ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル、熱可塑性エラストマー、タンパク質レジリン、タンパク質エラスチン、エチレンオキシド-エピクロロヒドリンコポリマー、ポリウレタン、ウレタン-尿素コポリマー、これらのスルホン化バージョン、又はこれらの組み合わせから選択される材料を含有する、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
前記多孔質黒鉛化フィルムが、0.01g/cm~1.5g/cmの物理的密度を有し、圧縮及び固化後は、前記ゴム/エラストマー含浸フィルムは、1.5g/cm~2.25g/cmの物理的密度を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
前記黒鉛化温度が、2500℃~3250℃である、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
前記方法が、前記ポリマーフィルム又はピッチフィルムを、300℃~2500℃の温度を有する炭化ゾーン中へ、続いて2500℃~3250℃の温度を有する黒鉛化ゾーン中へ、連続的又は断続的に供給し、続いて前記黒鉛化ゾーンから前記多孔質黒鉛化フィルムを取り出すことを含む連続法である、請求項17に記載の方法。
【請求項29】
前記ポリマーフィルム又はピッチフィルムが、黒鉛化されている間、圧縮応力下にある、請求項17に記載の方法。
【請求項30】
前記ポリマーフィルム又はピッチフィルムが、黒鉛化されている間に前記ポリマーフィルム又はピッチフィルムに圧縮応力を働かせるために、第一の耐火性材料プレート上で支持され、第二の耐火性材料プレートで覆われる、請求項17に記載の方法。
【請求項31】
前記第一の耐火材料又は第二の耐火材料が、黒鉛、耐火性金属、又はタングステン、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、モリブデン、タンタル、若しくはレニウムから選択される耐火性元素の炭化物、酸化物、ホウ化物、若しくは窒化物から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ポリマーフィルム又はピッチフィルムが、1μm~200μmの厚さを有する、請求項17に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、あらゆる点でその内容が参照により本明細書に援用される2019年9月18日に出願された米国特許出願第16/574,634号の優先権を主張するものである。
【0002】
本開示は、熱フィルム又はヒートスプレッダ全般に関し、より詳細には、ポリマー由来の高弾性ヒートスプレッダフィルム、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高性能熱管理材料は、今日のマイクロエレクトロニクス、フォトニクス、及び光起電力システムにおいて、ますます重要となってきている。新規でより強力なチップデザイン及び発光ダイオード(LED)システムが導入されるに従って、それらはより多くの電力を消費し、より多くの熱を発生させる。このことにより、今日の高性能システムでは、熱管理が重要な課題となってきた。アクティブ電子走査レーダーアレイから、ウェブサーバー、個人消費者用エレクトロニクスのための大型バッテリーパック、ワイドスクリーンディスプレイ、及び半導体照明デバイスにわたる様々なシステムにはすべて、熱の放散をより効率的に行うことができる高熱伝導性材料が必要である。さらに、多くのマイクロエレクトロニクスデバイス(例:スマートフォン、フラットスクリーンTV、タブレット、及びラップトップコンピュータ)は、ますますより小さく、薄く、軽く、及び緻密となるように設計、製造されている。これはさらに、熱放散をより困難としている。実際、熱管理の課題は、業界がデバイス及びシステムの性能を継続的に向上可能とすることに対する重要な障壁として今や広く認識されている。
【0004】
ヒートシンクは、コンピュータデバイスのCPU又はバッテリーなどの熱源の表面から、周囲空気などのより低温の環境への熱放散を促進するコンポーネントである。典型的には、熱源から発生する熱は、ヒートスプレッダを通してヒートシンク又は周囲空気へと移動させる必要がある。ヒートシンクは、主として空気と直接接触するヒートシンク表面積を増加させることによって、熱源と空気との間の熱移動効率を高めるように設計されている。この設計により、熱放散速度を高めることができ、したがって、デバイスの運転温度が低下する。マイクロエレクトロニクスデバイスでは、熱源からの熱を素早くヒートシンク又は周囲空気へ移動させるために、ヒートスプレッダの高い熱伝導率が不可欠である。
【0005】
現行のヒートスプレッダフィルム(又は熱フィルム)は、典型的には、ポリイミドフィルム(ポリイミドフィルム、PIの炭化及び黒鉛化を介して)、又はグラフェンシートに由来する。グラフェン系フィルムのヒートスプレッダ用途は、2007年という早期に本発明者らの研究グループによって最初に開発されたものである;Bor Z.Jang,et al.“Nano-scaled Graphene Plate Films and Articles,”米国特許出願第11/784,606号(2007年4月9日);現在は米国特許第9,233,850号(2016年1月12日)。折り畳み式携帯デバイス(例:折り畳み式又は二つ折り式スマートフォン)が、ますます普及しつつある。折り畳み式スマートフォンは、このスマートフォンの耐用年数の間に10000回以上折り畳んだり開いたりされる可能性がある。このようなデバイス中のヒートスプレッダなどの個々のコンポーネントも、折り畳み可能であることが必要とされる。しかし、PI由来及びグラフェン系のいずれの熱フィルムも(又はいかなる種類の熱フィルムも)、熱伝導率及び構造完全性などの望ましい特性を大きく劣化させることなしに、屈曲変形の繰り返しに耐えることができないことが分かっている。
【0006】
本開示は、上記で概説した先行技術のヒートスプレッダフィルムの欠点を克服するために成されたものである。
【発明の概要】
【0007】
ある特定の実施形態では、本開示は、弾性ヒートスプレッダフィルムを提供し、弾性ヒートスプレッダフィルムは:(A)ポリマーフィルム又はピッチフィルムの黒鉛化から調製される黒鉛フィルムであって、黒鉛フィルムは、互いに対して実質的に平行で、フィルム面に対して平行である黒鉛結晶を有し、前記黒鉛結晶中に0.34nm未満のグラフェン間距離を有し、及び黒鉛フィルムは、すべて樹脂の非存在下で(すなわち、いかなるゴム又はエラストマーもない状態で)測定した場合に、少なくとも600W/mK(より典型的には、及び望ましくは1000W/mK超)の熱伝導率、4000S/cm以上(典型的には6000S/cm超)の電気伝導率、及び1.5g/cm超の物理的密度を有する、黒鉛フィルム;並びに(B)黒鉛フィルムの少なくとも1つの面から黒鉛フィルムの中に浸透しているエラストマー又はゴムであって、エラストマー又はゴムは、全ヒートスプレッダフィルム重量に基づいて0.001重量%~20重量%の量である、エラストマー又はゴム、を備え、弾性ヒートスプレッダフィルムは、2%~100%の完全に回復可能な引張弾性歪み、及び100W/mK~1750W/mK(より典型的には200W/mK超、なおより典型的には500W/mK超、さらにより典型的には800W/mK超、さらにより典型的には1000W/mK超、最も典型的には1250W/mK超)の面内熱伝導率を有する。
【0008】
好ましくは、ポリマーフィルム又はピッチフィルムは、黒鉛化される前に炭化される。典型的には、ポリマーフィルム又はピッチフィルムの炭化及び黒鉛化(又は炭化を行わない直接黒鉛化)を介して得られる黒鉛フィルム中の黒鉛結晶の長さ/幅は、100nm未満、より典型的には60nm未満、さらにより典型的には30nm未満、多くの場合には10nm未満である。黒鉛フィルムは、典型的には、1cm~150cmの幅及び1cm~1000mの長さを有する(典型的にはロール形態である出発ポリマーフィルムの長さに応じて、これより長くてもよい)。
【0009】
典型的には、弾性ヒートスプレッダフィルムは、5%~50%、さらにより典型的には10%~30%の完全に回復可能な引張弾性歪みを有する。ヒートスプレッダフィルムは、典型的には、10nm~500μmの厚さを有する。
【0010】
好ましくは、黒鉛フィルム中に含浸されるエラストマー又はゴムは、天然ポリイソプレン、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、クロロプレンゴム、ポリクロロプレン、ブチルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、メタロセン系ポリ(エチレン-co-オクテン)エラストマー、ポリ(エチレン-co-ブテン)エラストマー、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレンエラストマー、エピクロロヒドリンゴム、ポリアクリルゴム、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、パーフルオロエラストマー、ポリエーテルブロックアミド、クロロスルホン化ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル、熱可塑性エラストマー、タンパク質レジリン、タンパク質エラスチン、エチレンオキシド-エピクロロヒドリンコポリマー、ポリウレタン、ウレタン-尿素コポリマー、これらのスルホン化バージョン、又はこれらの組み合わせから選択される材料を含有する。
【0011】
エラストマー又はゴムは、高い弾性、すなわち、完全に回復可能である高い引張弾性変形値(2%~1000%)を有する必要がある。材料科学及び工学の技術分野において、「弾性変形」とは、定義により、機械的荷重の解放によって完全に回復可能である変形であることは公知であり、その回復プロセスは、本質的に瞬間的である(時間的遅延はほとんどない)。加硫天然ゴムなどのエラストマーは、2%~1000%(その元の長さの10倍)まで、より典型的には10%~800%、さらにより典型的には50%~500%、最も典型的には及び望ましくは100%~300%の引張弾性変形を呈し得る。両手を使ってゴムバンドを5cmから例えば40cmに伸ばし、続いて片方の手からゴムバンドを離した場合、ゴムバンドは直ちに、実質的に元の長さまで素早く戻る。そのような変形(この例では800%)は、完全に回復可能であり、塑性変形(永久変形)は実質的に起こらない。エラストマー又はゴム以外では、そのような高い弾性挙動を呈する材料はない。
【0012】
例えば、金属は、典型的には、高い引張延性を有するが(すなわち、破壊することなく、かなりの程度まで延ばすことができる;例えば10%~200%)、変形の大部分は塑性変形(回復不可能)であり、少量の変形のみが弾性変形である(すなわち、回復可能な変形は、典型的には<1%、より典型的には<0.2%である)。同様に、非エラストマーポリマー又はプラスチック(熱可塑性又は熱硬化性樹脂)は、かなりの程度まで延ばすことができ得るが、変形のほとんどは、塑性変形、すなわち応力/歪みを解放しても回復することができない永久変形である。例えば、ポリエチレン(PE)は、引張荷重下で200%まで延ばすことができ得るが、そのような変形の大部分(>98%)は、一般的には塑性変形と称される回復不可能な永久変形である。
【0013】
いくつかの実施形態では、エラストマー又はゴムは、天然ポリイソプレン(例:cis-1,4-ポリイソプレン天然ゴム(NR)及びtrans-1,4-ポリイソプレン グッタペルカ)、合成ポリイソプレン(IR、イソプレンゴムを表す)、ポリブタジエン(BR、ブタジエンゴムを表す)、クロロプレンゴム(CR)、ポリクロロプレン(例:Neoprene、Bayprenなど)、ハロゲン化ブチルゴム(クロロブチルゴム(CIIR)及びブロモブチルゴム(BIIR)を含むブチルゴム(イソブチレンとイソプレンとのコポリマー、IIR)、スチレン-ブタジエンゴム(スチレンとブタジエンとのコポリマー、SBR)、ニトリルゴム(ブタジエンとアクリロニトリルとのコポリマー、NBR)、EPM(エチレンプロピレンゴム、エチレンとプロピレンとのコポリマー)、EPDMゴム(エチレンプロピレンジエンゴム、エチレンとプロピレンとジエン成分とのターポリマー)、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、ポリアクリルゴム(ACM、ABR)、シリコーンゴム(SI、Q、VMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)、フルオロエラストマー(FKM及びFEPM;Viton、Tecnoflon、Fluorel、Aflas、及びDai-Elなど)、パーフルオロエラストマー(FFKM:Tecnoflon PFR、Kalrez、Chemraz、Perlast)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM;例:Hypalon)、及びエチレン-酢酸ビニル(EVA)、熱可塑性エラストマー(TPE)、タンパク質レジリン、タンパク質エラスチン、エチレンオキシド-エピクロロヒドリンコポリマー、ポリウレタン、ウレタン-尿素コポリマー、並びにこれらの組み合わせから選択される材料を含有する。
【0014】
適切に選択されたエラストマー又はゴムを、整列された黒鉛結晶を一緒に保持するためのバインダー又はマトリックス材料として含有する得られるヒートスプレッダフィルムは、驚くべきことに、>2%、より典型的には>5%、さらにより典型的には>10%、なおより典型的には>20%、多くの場合には>50%(例:100%まで)の引張弾性変形まで延伸することができる。
【0015】
そのような高い弾性特性によって、ヒートスプレッダフィルムは、熱伝導率を大きく劣化させることなく、何万回も前後に折る又は畳むことができるようになることは注目されるであろう。最初の屈曲前は典型的には500~1750W/mkである熱伝導率を、10000回の繰り返し屈曲後に、元の熱伝導率の>80%(典型的には、>90%)に維持することができる。
【0016】
好ましくは、上記で列挙した実施形態において、エラストマー又はゴムは、0.001重量%~20重量%、より好ましくは0.01重量%~10重量%、さらにより好ましくは0.1重量%~5重量%の量である。
【0017】
いくつかの非常に有用な実施形態では、ヒートスプレッダフィルムは、10nm~500μmの厚さを有する薄フィルムの形態であり、黒鉛結晶は、薄フィルム面に対して実質的に平行に整列されている。実質的に平行に整列されている黒鉛材料は、平行からの逸脱が10度以下、好ましくは5度以下である黒鉛結晶を有する。いくつかの好ましい実施形態では、ヒートスプレッダは、100nm~100μmの厚さを有する薄フィルムの形態である。
【0018】
典型的には、開示されるヒートスプレッダフィルムは、すべて薄フィルムの面方向に沿って測定した場合、80MPa以上の引張強度、20GPa以上の引張弾性率、500W/mK以上の熱伝導率、及び/又は5000S/cm以上の電気伝導率を有する。典型的には及び好ましくは、弾性ヒートスプレッダフィルムは、すべて薄フィルムの面方向に沿って測定した場合、150MPa以上の引張強度、30GPa以上の引張弾性率、800W/mK以上の熱伝導率、及び/又は8000S/cm以上の電気伝導率を有する。多くの場合、弾性ヒートスプレッダフィルムは、すべて薄フィルムの面方向に沿って測定した場合、200MPa以上の引張強度、60GPa以上の引張弾性率、1200W/mK以上の熱伝導率、及び/又は12000S/cm以上の電気伝導率を有する。開示されるヒートスプレッダフィルムのいくつかは、すべて薄フィルムの面方向に沿って測定した場合、300MPa以上の引張強度、120GPa以上の引張弾性率、1500W/mK以上の熱伝導率、及び/又は20000S/cm以上の電気伝導率を有する。
【0019】
いくつかの実施形態では、弾性ヒートスプレッダフィルムは、厚さt、前面、及び後面を有し、エラストマー/ゴムは、少なくとも1つの主面から含浸されるものであるが、好ましくは2つの主面(前面及び後面)から含浸される。エラストマー又はゴムは、前面から(1/10)tの距離のフィルムのゾーンまで浸透することができ、及び/又は後面から少なくとも(1/10)tの距離のゾーン中まで浸透することができ、エラストマーを含まないコアが存在する(すなわち、エラストマー又はゴムは、フィルムの中央又はコア領域まで到達しない)。このエラストマーを含まないコアのサイズは、典型的には、(1/10)t~(9/10)tである。
【0020】
いくつかの実施形態では、黒鉛フィルムは、0.337nm未満のグラフェン間距離及び1.0未満のモザイクスプレッド値を呈する。ある特定の好ましい実施形態では、黒鉛フィルムは、60%以上の黒鉛化度、及び/又は0.7未満のモザイクスプレッド値を呈する。最も好ましくは、弾性ヒートスプレッダフィルムにおいて、黒鉛フィルムは、90%以上の黒鉛化度、及び/又は0.4未満のモザイクスプレッド値を呈する。
【0021】
本開示は、上述のヒートスプレッダフィルムをコンポーネントとして(例:熱管理要素として)有する電子デバイスも提供する。
【0022】
加えて、本開示は、開示されるヒートスプレッダフィルムを耐荷重熱管理要素として有する構造部材を提供する。
【0023】
本開示はまた、上述の弾性ヒートスプレッダフィルムを製造するための方法も提供する。ある特定の実施形態では、この方法は:(a)10nm~1mmのフィルム厚さを有する、ポリマー又はピッチの少なくとも1つのフィルムを提供すること;(b)前面及び後面を有する多孔質黒鉛化フィルムを得るために、少なくとも1つのフィルムを、非酸化性雰囲気中、2000℃超(好ましくは>2300℃、さらに好ましくは>2500℃、最も好ましくは>2800℃)の黒鉛化温度での熱処理に掛けて、フィルムを黒鉛化すること:(c)多孔質黒鉛化フィルム中に前面及び後面のうちの少なくとも一方からゴム又はエラストマー樹脂を含浸させて、ゴム/エラストマー含浸フィルムを得ること;並びに(d)ゴム/エラストマー含浸フィルムを圧縮及び固化して、弾性ヒートスプレッダフィルムを製造すること、を含む。
【0024】
開示される方法において、ポリマーフィルムは、好ましくは、ポリイミド、ポリアミド、フェノール樹脂、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリチアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリベンズイミダゾール、ポリベンゾビスイミダゾール、ポリ(ピロメリチミド)、ポリ(p-フェニレン-イソフタルアミド)、ポリ(m-フェニレン-ゾイミダゾール)(poly(m-phenylene-zoimidazole))、ポリ(フェニレン-ベンゾビスイミダゾール)、ポリアクリロニトリル、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される。
【0025】
ある特定の実施形態では、非酸化性雰囲気は、水素ガス、窒素ガス、不活性ガス(例:He)、又はこれらの組み合わせを含有する。
【0026】
ある特定の実施形態では、ピッチフィルムは、石油ピッチ、コールタールピッチ、多環式炭化水素、又はこれらの組み合わせのフィルムから選択される。多環式炭化水素は、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、クリセン、トリフェニレン、ピレン、ペンタセン、ベンゾピレン、コランニュレン、ベンゾペリレン、コロネン、オバレン、ベンゾフルオレン、その環構造上に置換基を有するこれらの誘導体、これらの化学誘導体、又はこれらの組み合わせから選択され得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、ポリマー又はピッチのフィルムはさらに、高グラフェンのポリマーフィルム又はピッチフィルムを形成するために、フィルム中に分散された0.01重量%~50重量%の複数のグラフェンシートを含み、グラフェンシートは、未処理グラフェン(pristine graphene)、酸化グラフェン、還元グラフェンオキシド、フッ素化グラフェン、水素化グラフェン、ドープグラフェン、化学官能化グラフェン、又はこれらの組み合わせから選択される。
【0028】
いくつかの実施形態では、ポリマー又はピッチのフィルムはさらに、熱処理の前にフィルム中に分散された0.01重量%~50重量%の膨張黒鉛フレーク又は剥離黒鉛を含む。ポリマーフィルム又はピッチフィルムは、熱処理の前にフィルム中に分散された膨張黒鉛フレーク及びグラフェンシートの組み合わせを含んでもよい。グラフェンシートが存在することで、必要とされる黒鉛化温度が低下することによって黒鉛化プロセスが促進され、黒鉛結晶又は黒鉛単結晶の形成が加速されると思われる。
【0029】
ある特定の実施形態では、方法はさらに、工程(b)の前に、300~2500℃から選択される温度でフィルムを炭化する手順を含み、この場合、黒鉛化温度は、2500℃~3250℃である。
【0030】
ある特定の実施形態では、エラストマー又はゴムは、天然ポリイソプレン、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、クロロプレンゴム、ポリクロロプレン、ブチルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、メタロセン系ポリ(エチレン-co-オクテン)エラストマー、ポリ(エチレン-co-ブテン)エラストマー、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレンエラストマー、エピクロロヒドリンゴム、ポリアクリルゴム、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、パーフルオロエラストマー、ポリエーテルブロックアミド、クロロスルホン化ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル、熱可塑性エラストマー、タンパク質レジリン、タンパク質エラスチン、エチレンオキシド-エピクロロヒドリンコポリマー、ポリウレタン、ウレタン-尿素コポリマー、これらのスルホン化バージョン、又はこれらの組み合わせから選択される材料を含有する。
【0031】
ある特定の実施形態では、多孔質黒鉛化フィルムは、0.01g/cm~1.5g/cmの物理的密度を有し、圧縮及び固化後は、ゴム/エラストマー含浸フィルムは、1.5g/cm~2.25g/cmの物理的密度を有する。
【0032】
ある特定の実施形態では、黒鉛化温度は、2500℃~3250℃である。
【0033】
ある特定の実施形態では、方法は、ポリマーフィルム又はピッチフィルムを、300℃~2500℃の温度を有する炭化ゾーン中へ、続いて2500℃~3250℃の温度を有する黒鉛化ゾーン中へ、連続的又は断続的に供給し、続いて黒鉛化ゾーンから多孔質黒鉛化フィルムを取り出すことを含む連続法である。
【0034】
好ましくは、ポリマーフィルム又はピッチフィルムは、黒鉛化されている間、圧縮応力下にある。
【0035】
ある特定の実施形態では、ポリマーフィルム又はピッチフィルムは、黒鉛化されている間に前記ポリマーフィルム又はピッチフィルムに圧縮応力を働かせるために、第一の耐火性材料プレート上で支持され、第二の耐火性材料プレートで覆われる。第一の耐火材料又は第二の耐火材料は、黒鉛、耐火性金属、又はタングステン、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、モリブデン、タンタル、若しくはレニウムから選択される耐火性元素の炭化物、酸化物、ホウ化物、若しくは窒化物から選択され得る。
【0036】
ある特定の実施形態では、ポリマーフィルム又はピッチフィルムは、1μm~200μmの厚さを有する。
【0037】
方法はさらに、弾性ヒートスプレッダフィルムを、デバイス中に、このデバイスの熱管理要素として実装することを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、本開示のある特定の実施形態に従う、エラストマー/ゴム含浸黒鉛フィルムを有する弾性ヒートスプレッダフィルムを製造するための方法を模式的に示す。
図2図2は、PBOの製造に関連する化学反応を示す。
図3図3Aは、繰り返し屈曲変形回数の関数としてプロットした、エラストマー含浸あり及びなしによるポリマー由来黒鉛フィルムの熱伝導率値を示す。図3Bは、繰り返し屈曲変形回数の関数としてプロットした、エラストマー含浸あり及びなしによるグラフェン強化ポリマー由来黒鉛フィルムの熱伝導率値を示す。図3Cは、繰り返し屈曲変形回数の関数としてプロットした、エラストマー含浸あり及びなしによる膨張黒鉛フレーク強化ポリマー由来黒鉛フィルムの熱伝導率値を示す。図3Dは、繰り返し屈曲試験を示す模式図である。
図4図4は、一方のシリーズはグラフェン強化PIフィルム由来の黒鉛フィルムを含有し、他方のシリーズはPIフィルム由来の黒鉛フィルムを含有し、いずれも黒鉛フィルムの両側から浸透させたエラストマー樹脂を含有する2つのシリーズのヒートスプレッダフィルムにおける、様々な重量パーセントのエラストマーに対する熱伝導率値を示す。
図5図5は、繰り返し屈曲変形回数の関数としてプロットした、エラストマー含浸あり及びなしによるグラフェン強化PBI由来黒鉛フィルムの電気伝導率値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本開示は、弾性ヒートスプレッダフィルムを提供し、弾性ヒートスプレッダフィルムは:(A)ポリマーフィルム又はピッチフィルムの黒鉛化から製造される黒鉛フィルムであって、黒鉛フィルムは、互いに対して実質的に平行で、フィルム面に対して平行である黒鉛結晶を有し、黒鉛結晶は、0.34nm未満のグラフェン間距離を有し、及び黒鉛フィルムは、すべて樹脂の非存在下で(すなわち、いかなるゴム又はエラストマーもない状態で)測定した場合に、少なくとも600W/mK(典型的には>1000W/mK)の熱伝導率、4000S/cm以上(典型的には>6000S/cm)の電気伝導率、及び1.5g/cm超(典型的には1.6g/cm~2.26g/cm)の物理的密度を有する、黒鉛フィルム;並びに(B)黒鉛フィルムの少なくとも1つの面から黒鉛フィルムの中に浸透しているエラストマー又はゴムであって、エラストマー又はゴムは、全ヒートスプレッダフィルム重量に基づいて0.001重量%~20重量%の量である、エラストマー又はゴム、を備え、弾性ヒートスプレッダフィルムは、2%~100%の完全に回復可能な引張弾性歪み、及び100W/mK~1750W/mK(より典型的には200W/mK超、なおより典型的には500W/mK超、さらにより典型的には800W/mK超、さらにより典型的には1000W/mK超、最も典型的には1250W/mK超)の面内熱伝導率を有する。
【0040】
典型的には、ポリマーフィルムの炭化及び黒鉛化を介して得られる黒鉛フィルム中の黒鉛結晶の長さ又は幅は、100nm未満、より典型的には60nm未満、さらにより典型的には30nm未満、多くの場合には10nm未満である。黒鉛フィルムは、典型的には、1cm~150cmの幅及び1cm~1000mの長さを有する(典型的にはロール形態である出発ポリマーフィルムの長さに応じて、これより長くてもよい)。
【0041】
エラストマー又はゴム材料は、高い弾性(高い弾性変形値)を有する必要がある。弾性変形は、完全に回復可能である変形であり、回復のプロセスは、本質的に瞬間的である(時間的遅延はほとんどない)。加硫天然ゴムなどのエラストマーは、2%~1000%(その元の長さの10倍)まで、より典型的には10%~800%、さらにより典型的には50%~500%、最も典型的には及び望ましくは100%~500%の弾性変形を呈し得る。金属又はプラスチック材料は、典型的には、高い延性を有するものの(すなわち、破壊することなく、かなりの程度まで延ばすことができる)、変形の大部分が塑性変形(すなわち、回復不可能な永久変形)であり、少量の変形のみ(典型的には<1%、より典型的には<0.2%)が弾性変形であることは注目されるであろう。
【0042】
エラストマー材料は、天然ポリイソプレン(例:cis-1,4-ポリイソプレン天然ゴム(NR)及びtrans-1,4-ポリイソプレン グッタペルカ)、合成ポリイソプレン(IR、イソプレンゴムを表す)、ポリブタジエン(BR、ブタジエンゴムを表す)、クロロプレンゴム(CR)、ポリクロロプレン(例:Neoprene、Bayprenなど)、ハロゲン化ブチルゴム(クロロブチルゴム(CIIR)及びブロモブチルゴム(BIIR)を含むブチルゴム(イソブチレンとイソプレンとのコポリマー、IIR)、スチレン-ブタジエンゴム(スチレンとブタジエンとのコポリマー、SBR)、ニトリルゴム(ブタジエンとアクリロニトリルとのコポリマー、NBR)、EPM(エチレンプロピレンゴム、エチレンとプロピレンとのコポリマー)、EPDMゴム(エチレンプロピレンジエンゴム、エチレンとプロピレンとジエン成分とのターポリマー)、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、ポリアクリルゴム(ACM、ABR)、シリコーンゴム(SI、Q、VMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)、フルオロエラストマー(FKM及びFEPM;Viton、Tecnoflon、Fluorel、Aflas、及びDai-Elなど)、パーフルオロエラストマー(FFKM:Tecnoflon PFR、Kalrez、Chemraz、Perlast)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM;例:Hypalon)、及びエチレン-酢酸ビニル(EVA)、熱可塑性エラストマー(TPE)、タンパク質レジリン、タンパク質エラスチン、エチレンオキシド-エピクロロヒドリンコポリマー、ポリウレタン、ウレタン-尿素コポリマー、並びにこれらの組み合わせから選択され得る。
【0043】
ウレタン-尿素コポリマーフィルムは、通常、ソフトドメイン及びハードドメインの2種類のドメインから成る。ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(PTMEG)単位から成る絡み合った直鎖状主鎖がソフトドメインを構成し、一方メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)及びエチレンジアミン(EDA)の繰り返し単位がハードドメインを構成する。実際、熱可塑性エラストマーのほとんどは、その構造中にハードドメイン及びソフトドメインを有する、又はソフトマトリックス中に分散されたハードドメインを有する。ハードドメインは、軽度に架橋した又は物理的に絡み合った鎖を一緒に保持して、鎖の変形可逆性を可能とする補助となり得る。
【0044】
適切に選択されたエラストマー又はゴムを、整列された黒鉛結晶を一緒に保持するためのバインダー又はマトリックス材料として含有する得られるヒートスプレッダフィルムは、驚くべきことに、>2%、より典型的には>5%、さらにより典型的には>10%、なおより典型的には>20%、多くの場合には>50%(例:100%まで)の引張弾性変形まで延伸することができる。
【0045】
そのような高い弾性特性によって、ヒートスプレッダフィルムは、熱伝導率を大きく劣化させることなく、何万回も前後に折る又は畳むことができるようになることは注目されるであろう。最初の屈曲前は典型的には500~1750W/mkである熱伝導率を、10000回の繰り返し屈曲後に、元の熱伝導率の>80%(典型的には、>90%)に維持することができる。
【0046】
好ましくは、上記で列挙した実施形態において、エラストマー又はゴムは、0.001重量%~20重量%、より好ましくは0.01重量%~10重量%、さらにより好ましくは0.1重量%~1重量%の量である。
【0047】
典型的には、開示されるヒートスプレッダフィルムは、すべて薄フィルムの面方向に沿って測定した場合、80MPa以上の引張強度、20GPa以上の引張弾性率、500W/mK以上の熱伝導率、及び/又は5000S/cm以上の電気伝導率を有する。典型的には及び好ましくは、弾性ヒートスプレッダフィルムは、すべて薄フィルムの面方向に沿って測定した場合、150MPa以上の引張強度、30GPa以上の引張弾性率、800W/mK以上の熱伝導率、及び/又は8000S/cm以上の電気伝導率を有する。多くの場合、弾性ヒートスプレッダフィルムは、すべて薄フィルムの面方向に沿って測定した場合、200MPa以上の引張強度、60GPa以上の引張弾性率、1200W/mK以上の熱伝導率、及び/又は12000S/cm以上の電気伝導率を有する。開示されるヒートスプレッダフィルムのいくつかは、すべて薄フィルムの面方向に沿って測定した場合、300MPa以上の引張強度、120GPa以上の引張弾性率、1500W/mK以上の熱伝導率、及び/又は20000S/cm以上の電気伝導率を有する。
【0048】
いくつかの実施形態では、弾性ヒートスプレッダフィルムは、厚さt、前面、及び後面を有し、エラストマー/ゴムは、少なくとも1つの主面から含浸されるものであるが、好ましくは2つの主面(前面及び後面)から含浸される。エラストマー又はゴムは、前面から(1/10)tの距離のフィルムのゾーンまで浸透することができ、及び/又は後面から少なくとも(1/10)tの距離のゾーンまで浸透することができ、エラストマーを含まないコアが存在する(すなわち、エラストマー又はゴムは、フィルムの中央又はコア領域まで到達しない)。このエラストマーを含まないコアのサイズは、典型的には、(1/10)t~(9/10)tである。
【0049】
いくつかの実施形態では、黒鉛フィルムは、0.337nm未満のグラフェン間距離及び1.0未満のモザイクスプレッド値を呈する。ある特定の好ましい実施形態では、黒鉛フィルムは、60%以上の黒鉛化度、及び/又は0.7未満のモザイクスプレッド値を呈する。最も好ましくは、弾性ヒートスプレッダフィルムにおいて、黒鉛フィルムは、90%以上の黒鉛化度、及び/又は0.4未満のモザイクスプレッド値を呈する。
【0050】
本開示は、上述のヒートスプレッダフィルムをコンポーネントとして(例:熱管理要素として)有する電子デバイスも提供する。
【0051】
加えて、本開示は、開示されるヒートスプレッダフィルムを耐荷重熱管理要素として有する構造部材を提供する。
【0052】
本開示はまた、上述の弾性ヒートスプレッダフィルムを製造するための方法も提供する。ある特定の実施形態では、図1に模式的に示されるように、方法は:(a)5nm以上(好ましくは10nm~5mm、より好ましくは100nm~1mm)のフィルム厚さを有する、ポリマー又はピッチの少なくとも1つのフィルムを提供すること;(b)前面及び後面を有する多孔質黒鉛化フィルムを得るために、少なくとも1つのフィルムを、非酸化性雰囲気中、2000℃超(好ましくは>2300℃、さらに好ましくは>2500℃、最も好ましくは>2800℃)の黒鉛化温度での熱処理に掛けて、フィルムを黒鉛化すること:(c)多孔質黒鉛化フィルム中に前面及び後面のうちの少なくとも一方からゴム又はエラストマー樹脂を含浸させて、ゴム/エラストマー含浸フィルムを得ること;並びに(d)ゴム/エラストマー含浸フィルムを圧縮及び固化して、弾性ヒートスプレッダフィルムを製造すること、を含む。黒鉛化によって、フィルムの内部に黒鉛結晶が形成される。
【0053】
図1の左側に示されるように、黒鉛化処理の前に、ポリマーフィルム又はピッチフィルムの炭化処理が行われてもよい。言い換えると、ポリマーフィルム又はピッチフィルムが炭化されて(例:炭化温度、Tc=200~2500℃で)、ポリマーカーボン又は炭化ピッチが得られ、次にこれが黒鉛化温度、T(例:T=2300~3250℃;T>Tc)で黒鉛化される。熱処理(炭化及び続いての黒鉛化、又は炭化工程を行わない直接黒鉛化)の生成物は、多孔質黒鉛フィルムであり、典型的には表面細孔及び内部細孔を有する。
【0054】
開示される方法において、ポリマーフィルムは、好ましくは、ポリイミド、ポリアミド、フェノール樹脂、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリチアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリベンズイミダゾール、ポリベンゾビスイミダゾール、ポリ(ピロメリチミド)、ポリ(p-フェニレン-イソフタルアミド)、ポリ(m-フェニレン-ゾイミダゾール)、ポリ(フェニレン-ベンゾビスイミダゾール)、ポリアクリロニトリル、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される。
【0055】
ある特定の実施形態では、非酸化性雰囲気は、水素ガス、窒素ガス、不活性ガス(例:He)、又はこれらの組み合わせを含有する。
【0056】
ある特定の実施形態では、ピッチフィルムは、石油ピッチ、コールタールピッチ、多環式炭化水素、又はこれらの組み合わせのフィルムから選択される。多環式炭化水素は、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、クリセン、トリフェニレン、ピレン、ペンタセン、ベンゾピレン、コランニュレン、ベンゾペリレン、コロネン、オバレン、ベンゾフルオレン、その環構造上に置換基を有するこれらの誘導体、これらの化学誘導体、又はこれらの組み合わせから選択され得る。
【0057】
好ましくは、ポリマー又はピッチのフィルムはさらに、高グラフェンのポリマーフィルム又はピッチフィルムを形成するために、フィルム中に分散された0.01重量%~50重量%の複数のグラフェンシートを含み、グラフェンシートは、未処理グラフェン、酸化グラフェン、還元グラフェンオキシド、フッ素化グラフェン、水素化グラフェン、ドープグラフェン、化学官能化グラフェン、又はこれらの組み合わせから選択される。グラフェンシートは、ナノグラフェンプレートレット(NGP)と称される場合もある。
【0058】
いくつかの実施形態では、ポリマー又はピッチのフィルムはさらに、熱処理の前にフィルム中に分散された0.01重量%~50重量%の膨張黒鉛フレーク又は剥離黒鉛を含む。
【0059】
ポリマーフィルム又はピッチフィルムは、熱処理の前にフィルム中に分散された膨張黒鉛フレーク及びグラフェンシートの組み合わせを含んでもよい。グラフェンシートが存在することで、必要とされる黒鉛化温度が低下することによって黒鉛化プロセスが促進され、黒鉛結晶又は黒鉛単結晶の形成が加速されると思われる。
【0060】
ある特定の実施形態では、方法はさらに、工程(b)の前に、300~2500℃から選択される温度でフィルムを炭化する手順を含み、この場合、黒鉛化温度は、2500℃~3250℃である。
【0061】
ゴム/エラストマーの前駆体(例:液体モノマー/硬化剤の混合物、オリゴマー、又は溶媒に溶解した未硬化樹脂など)を、熱処理の後、多孔質黒鉛フィルムの1又は2つの主面を通して、多孔質黒鉛フィルムの細孔中に含浸又は浸透させてもよい。ゴム/エラストマーの含浸後、得られた含浸黒鉛フィルムは、黒鉛結晶を整列/配向して互いに対して平行とするために、圧縮(例:ロールプレス)に掛けられ得る。硬化、架橋、加硫、及び/又は溶媒除去が、圧縮工程の直前、最中、又は後に行われ得る。エラストマーは、バインダー材料として、又はマトリックス材料として作用させるために含浸される。複数の黒鉛結晶が、バインダー材料によって結合され、又はマトリックス材料中に分散され、エラストマー又はゴムは、全ヒートスプレッダフィルム重量に基づいて0.001重量%~30重量%(より典型的には、0.01重量%~20重量%)の量であり、弾性ヒートスプレッダフィルムは、2%~100%の完全に回復可能な引張弾性歪み、及び200W/mK~1750W/mKの面内熱伝導率を有する。
【0062】
以下の例は、本開示を実践する最良モードに関するいくつかの具体的な詳細事項を示すために用いられるものであり、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。フィルムの引張特性、熱伝導率、及び電気伝導率は、公知の標準的手順に従って測定した。
【実施例
【0063】
例1:熱処理前のポリマーフィルム又はピッチフィルムのための強化添加剤としての別個のグラフェンシート及び膨張黒鉛フレークの調製
平均横寸法が45μmである天然黒鉛粉末を出発物質として用い、これを濃硫酸、硝酸、及び過マンガン酸カリウム(化学インターカレート及び酸化剤として)の混合物中に分散して、黒鉛層間化合物(GIC)を調製した。まず、出発物質を80℃で24時間、真空オーブン中で乾燥した。次に、濃硫酸、発煙硝酸、及び過マンガン酸カリウム(4:1:0.05の重量比)の混合物を、繊維セグメントを含有する三口フラスコへ適切な冷却及び撹拌下でゆっくり添加した。16時間の反応後、この酸処理天然黒鉛粒子をろ過し、溶液のpHレベルが4.0に到達するまで脱イオン水で充分に洗浄した。100℃で一晩乾燥した後、得られた黒鉛層間化合物(GIC)に、管状炉中、1050℃で45秒間の熱ショックを施して、剥離黒鉛(EG又は黒鉛ワーム)を形成した。
【0064】
得られた剥離黒鉛(黒鉛ワーム)の5グラムを、65:35の比でのアルコールと蒸留水とから成るアルコール溶液2000mlと2時間混合して、懸濁液を得た。次に、この混合物又は懸濁液を、様々な時間にわたる出力200Wでの超音波照射に掛けた。1.5時間ずつ2回の断続的超音波処理の後、EG粒子は、薄いグラフェンシートに効果的に断片化した。次に、懸濁液をろ過し、80℃で乾燥して残留溶媒を除去した。調製したままの状態のグラフェンシート(熱還元GO)は、およそ3.4nmの平均厚さを有する。
【0065】
得られた剥離黒鉛ワームの別の5グラムを、低強度エアジェットミリングに掛けて黒鉛ワームを分解し、膨張黒鉛フレーク(平均厚さ139nmを有する)を形成した。黒鉛ワーム、膨張黒鉛フレーク、及びグラフェンシートは、熱処理前のポリマーフィルム又はピッチフィルムにおける強化添加剤として、別々に又は組み合わせて用いられてもよい。
【0066】
例2:熱処理前のポリマーフィルム又はピッチフィルムのための強化添加剤としての、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)からの単層グラフェンシートの調製
メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)は、China Steel Chemical Co.から供給を受けた。この材料は、約2.24g/cmの密度を有し、メジアン粒径は約16μmである。MCMB(10グラム)を、酸溶液(4:1:0.05の比での硫酸、硝酸、及び過マンガン酸カリウム)で、72時間にわたってインターカレートした。反応の完了後、この混合物を脱イオン水中へ注ぎ入れ、ろ過した。この層間MCMBを、HClの5%溶液で繰り返し洗浄して、ほとんどの硫酸イオンを除去した。次に、サンプルを、ろ液のpHが中性となるまで脱イオン水で繰り返し洗浄した。スラリーを乾燥し、60℃で24時間、真空オーブン中に保存した。乾燥粉末サンプルを、石英管中に入れ、所望される温度1080℃に予め設定したおいた水平管状炉に45秒間挿入して、グラフェン材料を得た。TEM及び原子間力顕微鏡による試験から、グラフェンシートのほとんどが単層グラフェンであったことが示される。
【0067】
例3:熱処理前のポリマーフィルム又はピッチフィルムのための強化添加剤としての未処理グラフェンシートの調製
典型的な手順では、およそ20μmの粒径に粉砕した黒鉛フレークの5グラムを、1000mLの脱イオン水(0.1重量%の分散剤、DuPont製のZonyl(登録商標)FSOを含有)に分散して懸濁液を得た。85Wの超音波エネルギーレベル(Branson S450 Ultrasonicator)を15分間から2時間にわたって用いて、グラフェンシートの剥離、分離、及び粒径低下を行った。この懸濁液を噴霧乾燥して、ポリマーフィルム又はピッチフィルムのための強化剤としての未処理グラフェンシートを製造した。
【0068】
例4:熱処理前のポリマーフィルム又はピッチフィルムのための強化添加剤としてのフッ化グラフェンの調製
本発明者らは、いくつかのプロセスを用いてGFを製造してきたが、本明細書では、例として1つのプロセスのみを記載する。典型的な手順では、高剥離黒鉛(highly exfoliated graphite、HEG)を、層間化合物CF・xClFから調製した。HEGを、三フッ化塩素の蒸気によってさらにフッ素化して、フッ素化高剥離黒鉛(FHEG)を得た。予め冷却しておいたTeflon反応器に、20~30mLの予め冷却しておいた液体ClFを投入し、次に反応器を閉じ、液体窒素の温度まで冷却した。続いて、ClFガスを反応器に到達させるための穴をあけた容器に、1g以下のHEGを入れた。7~10日後、近似式CFを有するGFシートの灰ベージュ色生成物が形成された。
【0069】
例5:熱処理前のポリマーフィルム又はピッチフィルムのための強化添加剤としての窒素化グラフェンの調製
例2で合成したグラフェンオキシド(GO)を、異なる割合の尿素と共に微細に粉砕し、造粒した混合物を、マイクロ波反応器(900W)中で30秒間加熱した。生成物を脱イオン水で数回洗浄し、真空乾燥した。この方法では、グラフェンオキシドの還元及び窒素でのドープが同時に成される。グラフェン/尿素の質量比1/0.5、1/1、及び1/2で得た生成物を、それぞれN-1、N-2、及びN-3と称し、これらのサンプルの窒素含有量は、元素分析によって特定した場合、それぞれ14.7、18.2、及び17.5重量%であった。
【0070】
例6:熱処理前のポリマーフィルム又はピッチフィルムのための強化添加剤としての官能化グラフェン系熱フィルム
熱フィルムを、黒鉛フィルムのエラストマー含浸から調製し、黒鉛フィルムは、官能化グラフェン強化ポリマーフィルムの炭化及び黒鉛化から調製した。この実験に関与した化学官能基は、アジド化合物(2-アジドエタノール)、アルキルシラン、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミン基、スルホネート基(-SOH)、及びジエチレントリアミン(DETA)を含む。これらの官能化グラフェンシートは、Taiwan Graphene Co.,Taipei,Taiwanから供給を受けた。
【0071】
例7:ポリベンゾオキサゾール(PBO)フィルム、PBO/グラフェンフィルム、及びPBO/膨張黒鉛フレークフィルムからのエラストマー含浸黒鉛フィルムの調製
ポリベンゾオキサゾール(PBO)フィルムを、その前駆体であるメトキシ含有ポリアラミド(MeO-PA)から、キャスティング及び熱変換によって調製した。具体的には、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメトキシジフェニル(DMOBPA)及びイソフタロイルジクロリド(IPC)のモノマーを選択して、PBO前駆体のメトキシ含有ポリアラミド(MeO-PA)溶液を合成した。キャスティング用のこのMeO-PA溶液は、DMOBPA及びIPCを、DMAc溶液中、ピリジン及びLiClの存在下の-5℃で2時間重縮合することによって調製し、20重量%の透明淡黄色MeO-PA溶液を得た。得られたMeO-PA溶液の固有粘度は、0.50g/dlの濃度で25℃で測定した場合、1.20dL/gであった。このMeO-PA溶液を、キャスティング用にDMAcで希釈して15重量%の濃度とした。
【0072】
合成したままの状態のMeO-PAをガラス面上にキャストして、せん断条件下で薄フィルムを形成した(35~120μm)。キャストフィルムを、真空オーブン中、100℃で4時間乾燥して、残留溶媒を除去した。次に、およそ28~100μmの厚さの得られたフィルムを、N雰囲気下、200~350℃で3工程で処理し、各工程で約2時間のアニーリングを行った。この熱処理は、MeO-PAをPBOフィルムに熱変換する役割を有する。関与する化学反応は、図2に示され得る。比較のために、グラフェン強化PBO(NGP-PBO)及び膨張黒鉛フレークPBOフィルムを、類似の条件下で作製した。例1で調製したNGP又はEPフレークの割合を、0.01重量%~50重量%まで変化させた。
【0073】
調製したすべてのフィルムを、3sccmのアルゴンガス流下、1時間で室温から600℃まで、1.5時間で600℃から1000℃まで、及び1000℃で1時間維持、の3工程で熱処理(炭化)しながら、2枚のアルミナ板の間でプレスした。次に、炭化フィルムを、1対のローラー中でロールプレスして、およそ40%厚さを減少させた。次に、ロールプレスしたフィルムを、2500℃で2時間の黒鉛化処理に掛けて、多孔質黒鉛フィルムを製造した。
【0074】
続いて、多孔質黒鉛フィルムのいくつかを、多孔質黒鉛フィルムの両方の主面から、アセトンに溶解したウレタンオリゴマー(ジイソシアネート及びポリオールの混合物)で含浸した。含浸後、液体媒体(アセトン)を含浸フィルムから除去し、このフィルムを熱プレスで圧縮し、150℃で45分間硬化させた。
【0075】
図3(A)は、繰り返し屈曲変形回数の関数としてプロットした、2つのシリーズのヒートスプレッダフィルムの熱伝導率値を示し、一方のシリーズは、0.1重量%のエラストマーで含浸した後に圧縮したポリマー由来多孔質黒鉛フィルムを含有し、他方のシリーズは、エラストマー含浸なしで圧縮したポリマー由来多孔質黒鉛フィルムを含有する。
【0076】
図から分かるように、エラストマーを含まないサンプルは、各々180度による50回の屈曲変形後に、1475W/mKから899W/mkまでの熱伝導率の低下を呈している。このシートは、65サイクルの屈曲後に破壊された。対照的に、ヒートスプレッダフィルム中に組み込まれた少量のエラストマーは、黒鉛フィルムが破壊することなく5000回の繰り返し屈曲に耐えることを補助することができ、依然として高い熱伝導率を維持している。
【0077】
屈曲試験は、図3(D)に示されるように、容易に実施される。所望される枚数の同一の熱フィルムを用い、屈曲領域を横切る細長いフィルム片とすることによって調製した試料の熱伝導率を測定し、所望される回数の繰り返し屈曲変形の後、公知のレーザーフラッシュ法又は他の方法を用いてこの試料片の熱伝導率を測定してよい。
【0078】
一般的に述べると、黒鉛フィルム中のエラストマーの割合が増加すると、黒鉛フィルムの熱伝導率が低下する。これらの熱フィルムは、フィルムの2つの主面から内部へ含浸させたエラストマー樹脂を有し、含浸は、黒鉛フィルムを作製した後に行う。このプロセスは、典型的には、エラストマーを含まないコアを有するヒートスプレッダ構造をもたらすものであり、エラストマーは、多孔質黒鉛フィルムの2つの主面から限られた距離しか浸透せず、中心部には到達しない。エラストマー樹脂を黒鉛フィルムへ完全に浸透させる方法を見出すことも可能であり、例えば、多孔質フィルムをまず形成し、続いて長い時間にわたる含浸を行い、その後完全な圧縮を行うことによる。弾性ヒートスプレッダフィルムは、厚さt及び2つの主面(前面及び後面と称する)を有する。実験した例では、典型的には、エラストマー又はゴムは、前面から少なくとも1/10tの距離のゾーン、及び/又は後面から少なくとも1/10tの距離のゾーンの深さまで、フィルムの内部へ浸透することができる。エラストマーを含まないコアのサイズが1/10t~9/10tであるヒートスプレッダフィルムを製造することができる。
【0079】
図3(B)は、繰り返し屈曲変形回数の関数としてプロットした、エラストマー含浸あり及びなしによるグラフェン強化ポリマー由来黒鉛フィルムの熱伝導率値を示す。グラフェンシートを組み込むことによって、黒鉛フィルムの熱伝導率が上昇するものと思われる。ここでも、エラストマー含浸なしの熱フィルムは、70回を超える繰り返し変形に耐えることはできない。
【0080】
図3(C)は、繰り返し屈曲変形回数の関数としてプロットした、エラストマー含浸あり及びなしによる膨張黒鉛強化ポリマー由来黒鉛フィルムの熱伝導率値を示す。膨張黒鉛フレークを組み込むことによって、黒鉛フィルムの熱伝導率が上昇するものと思われる。エラストマー含浸なしの熱フィルムは、70回を超える繰り返し変形に耐えることはできない。
【0081】
例8:ポリイミド(PI)フィルム及びグラフェン強化PIフィルムからの黒鉛フィルムの調製
従来のポリイミド(PI)合成には、ピロメリット酸二無水物(PMDA)及びオキシジアニリン(ODA)から形成したポリ(アミック酸)(PAA、Sigma Aldrich)を含めた。使用の前に、両方の化学物質を、真空オーブン中、室温で乾燥した。次に、例として、4gのODAモノマーを21gのDMF溶液(99.8重量%)に溶解した。この溶液を、使用するまで5℃で保存した。PMDA(4.4g)を添加し、この混合物を、マグネティックスターラーバーを用いて30分間撹拌した。続いて、この透明な粘性ポリマー溶液を4つのサンプルに分けた。次に、トリエチルアミン触媒(TEA、Sigma Aldrich)を、0、1、3、及び5重量%で各サンプルに添加して、分子量を制御した。TEAの全量を添加するまで、メカニカルスターラーによる撹拌を維持した。合成したままの状態のPAAを-5℃に保って、さらなる処理に不可欠な特性を維持した。
【0082】
ポリ(アミック酸)合成に用いられる溶媒が、非常に重要な役割を担う。一般的に用いられる両性非プロトン性アミド溶媒は、DMF、DMAc、NMP、及びTMUである。本実験ではDMAcを用いた。中間体のポリ(アミック酸)及びグラフェン/PAA前駆体複合体を、熱イミド化経路によって最終ポリイミドに変換した。グラフェンシートは、例2及び例3で調製したものを用いた。フィルムを、まずガラス基材上にキャストし、次に100℃~350℃の範囲内の温度による熱サイクルに通した。手順は、ポリ(アミック酸)混合物を100℃まで加熱して1時間保持すること、100℃から200℃まで加熱して1時間保持すること、200℃から300℃まで加熱して1時間保持すること、及び300℃から室温までゆっくり冷却することを含む。
【0083】
2枚のアルミナ板の間でプレスしたPIフィルム及びグラフェン強化PIフィルムを、3sccmのアルゴンガス流下、1000℃で熱処理した。これは、1時間で室温から600℃まで、1.3時間で600℃から1000℃まで、及び1000℃で1時間維持、の3工程で行った。この炭化フィルムを、次に、2780℃の温度で1時間黒鉛化して、多孔質黒鉛フィルムを得た。熱処理の後、フィルムに多少のゴム溶液(例:THF中のポリイソプレン)を噴霧し、次にこれを乾燥して溶媒を除去した。次に、ゴム含浸フィルムをロールプレスすると共にゴムを硬化させた。
【0084】
様々な割合のゴムで含浸し、続いて圧縮した後のPIフィルム及びグラフェン/PIフィルム(30%グラフェン+70%PI)由来の2つのシリーズの黒鉛フィルムの熱伝導率値、図4にまとめて示す。図は、ゴム含有量の増加と共に黒鉛フィルムの熱伝導率が低下することを示している。
【0085】
例9:フェノール樹脂フィルム、膨張黒鉛/フェノール樹脂フィルム、及びグラフェン/フェノール樹脂フィルム由来の黒鉛フィルムの調製
フェノールホルムアルデヒド樹脂(PF)は、フェノール又は置換フェノールとホルムアルデヒドとの反応によって得られる合成ポリマーである。PF樹脂単独、又は25重量%のフッ化グラフェンシート(例4で調製)若しくは膨張黒鉛(EP)フレーク(例1で調製)を含むPF樹脂を、厚さ50μmのフィルムとし、100℃の定常的な等温の硬化温度で2時間、次に100から170℃に昇温し、170℃で維持して硬化反応を完了するという同じ硬化条件下で硬化した。
【0086】
次に、すべての薄フィルムを、500℃で2時間、続いて700℃で3時間炭化した。次に、炭化フィルムを、2500~2950℃まで変動させた温度で2時間、さらなる熱処理(黒鉛化)に掛けた。
【0087】
熱処理の後、多孔質黒鉛フィルムに多少のゴム溶液(例:キシレンに溶解したエチレンオキシド-エピクロロヒドリンコポリマー)を噴霧し、次にこれを乾燥して溶媒を除去した。次に、ゴム含浸フィルムをロールプレスすると共にゴムを硬化させた。ゴム含浸なしのいくつかの多孔質黒鉛フィルムもロールプレスし、比較目的の固化黒鉛フィルムを得た。ここでも、ゴム/エラストマー含浸なしの黒鉛フィルムが、100回を超える繰り返し屈曲変形に全体として耐えることができないことが観察された。対照的に、ゴム含浸黒鉛フィルムは、3000~12000回にわたって耐えることができる。
【0088】
例10:ポリベンズイミダゾール(PBI)フィルム及びグラフェン/PBIフィルムからの黒鉛フィルムの調製
PBIは、3,3’,4,4’-テトラアミノビフェニル及びジフェニルイソフタレート(イソフタル酸とフェノールとのエステル)から、段階成長重合によって調製される。本実験で用いたPBIは、PBI Performance Productsから、ジメチルアセタミド(DMAc)に溶解された0.7dl/gのPBIポリマーを含有するPBI溶液の形態で入手した。PBI及びNGP-PBIフィルムを、ガラス基材の面上にキャストした。熱処理、エラストマー樹脂含浸、及びロールプレスの手順は、例7でPBOに対して用いたものと同様であった。
【0089】
図5に示されるのは、繰り返し屈曲変形回数の関数としてプロットした、エラストマー含浸あり及びなしによるグラフェン強化PBI由来黒鉛フィルムの電気伝導率値である。エラストマー含浸の手法によって、繰り返し屈曲変形に対する黒鉛フィルムの劇的な耐性を付与可能であることが明らかである。
【0090】
例11:様々なピッチ系カーボン前駆体からの黒鉛フィルム
さらなるエラストマー含浸黒鉛フィルムを、いくつかの異なる種類の前駆体材料から調製した。それらの電気伝導率値及び熱伝導率値を以下の表1に挙げる。
【0091】
例12:黒鉛フィルムの特性評価
炭化及び黒鉛化材料のX線回折曲線を、熱処理温度及び時間の関数として確認した。X線回折曲線のおよそ2θ=22~23°でのピークは、天然黒鉛のおよそ0.3345nmのグラフェン間距離(d002)に相当する。PI、PBI、及びPBOなどの炭化芳香族ポリマーの>1500℃の温度でのいくつかの熱処理の場合、材料は、2θ<12℃にピークを呈する回折曲線を見せ始めている。黒鉛化温度及び/又は時間が増加すると、2θの角度は、より高い値へシフトしている。2500℃の熱処理温度で1~5時間の場合、距離d002は、典型的には、およそ0.336nmに減少し、黒鉛単結晶の0.3354nmに近い。
【0092】
2750℃の熱処理温度で5時間の場合、距離d002は、黒鉛単結晶と同じであるおよそ0.3354nmに減少する。加えて、高強度の第二の回折ピークは、2θ=55°に出現し、(004)面からのX線回折に相当する。同じ回折曲線上での(002)強度に対する(004)ピーク強度、又は比I(004)/I(002)は、結晶完全性及びグラフェン面の選択配向の度合いの良好な指標である。
【0093】
2800℃よりも低い最終温度で熱処理した純マトリックスポリマー(分散されたNGPを含有しない)から得られたすべての黒鉛材料において、(004)ピークは、存在しない、又は非常に弱く、比I(004)/I(002)<0.1である。これらの材料の場合、3000~3250℃で熱処理することによって得られた黒鉛材料における比I(004)/I(002)は、0.2~0.5の範囲内である。対照的に、NGP-PIフィルム(90%NGP)から、3時間にわたる2750℃のHTTによって調製した黒鉛フィルムは、0.78の比I(004)/I(002)及び0.21のモザイクスプレッド値を呈しており、特に優れた選択配向の度合いを有する実質的に完全なグラフェン単結晶であることを示している。
【0094】
「モザイクスプレッド」値は、X線回折強度曲線における(002)反射の半値全幅から得られる。規則性の度合いに対するこの指標は、黒鉛又はグラフェンの結晶サイズ(又は結晶粒径)、結晶粒界及び他の欠陥の量、並びに結晶粒の選択配向の度合いを特徴付ける。黒鉛のほぼ完全な単結晶は、0.2~0.4のモザイクスプレッド値を有することを特徴とする。本発明者らのNGP-PI由来材料のほとんどは、この0.2~0.4の範囲内のモザイクスプレッド値を有する(2200℃以上の熱処理温度で得られた場合)。
【0095】
可撓性黒鉛箔における比I(004)/I(002)は、典型的には<<0.05であり、ほとんどの場合、実際には存在しないことは注目されるであろう。すべてのNGP紙/膜サンプルに対する比I(004)/I(002)は、3000℃で2時間の熱処理後であっても<0.1である。
【0096】
走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)によるグラフェン層の格子画像、さらには制限視野電子回折(SAD)像、明視野(BF)像、及び暗視野(DF)像の分析も行って、様々な黒鉛フィルム材料の構造を特性評価した。

図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5
【国際調査報告】