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特表2022-548942プラスチック含有廃棄物及び有機液体からの長鎖炭化水素の分解
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  • 特表-プラスチック含有廃棄物及び有機液体からの長鎖炭化水素の分解 図1
  • 特表-プラスチック含有廃棄物及び有機液体からの長鎖炭化水素の分解 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-22
(54)【発明の名称】プラスチック含有廃棄物及び有機液体からの長鎖炭化水素の分解
(51)【国際特許分類】
   C10G 1/10 20060101AFI20221115BHJP
   C10G 9/00 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
C10G1/10
C10G9/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517796
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(85)【翻訳文提出日】2022-05-12
(86)【国際出願番号】 EP2020076101
(87)【国際公開番号】W WO2021053139
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】2023870
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522107898
【氏名又は名称】ブルーアルプ イノベーションズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル リー,トゥーニス クリスティアン
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA03
4H129BA04
4H129BB03
4H129BC08
4H129BC10
4H129BC12
4H129CA01
4H129DA03
4H129FA07
4H129HA15
4H129HA30
4H129HB10
4H129NA21
4H129NA45
(57)【要約】
本発明は、プラスチック含有廃棄物、及び原油をベースとする有機液体からの長鎖炭化水素の分解方法であって、長鎖炭化水素を含有する材料を提供すること、長鎖炭化水素を含有する材料の特定の容積を、材料中の炭化水素の鎖がより短い鎖へと分解し始める分解温度まで加熱すること、及び分解温度より高い温度を有する特定の容積に関して、特定の容積の温度より50℃以下高い熱まで特定の容積を暴露することを含む方法を提供する。本発明は、本発明を実行するための装置も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック含有廃棄物、及び原油をベースとする有機液体からの長鎖炭化水素の分解方法であって、
-長鎖炭化水素を含有する材料を提供すること、
-長鎖炭化水素を含有する前記材料の特定の容積を、前記材料中の炭化水素の鎖がより短い鎖へと分解し始める分解温度まで加熱すること、及び
-前記分解温度より高い温度を有する前記特定の容積に関して、前記特定の容積の前記温度より50℃以下高い熱まで前記特定の容積を暴露すること
を含む、方法。
【請求項2】
暴露の間、気体含有量を制限するために前記特定の容積の圧力を調整する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
暴露の間、10~35バール、好ましくは20バールに前記特定の容積の圧力を調整する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
十分に流動性になるまで前記特定の容積を加熱する間に添加剤が提供され、前記添加剤は、長鎖ポリマーの分解後に鎖端部にヒドリドを供与するために特に提供される酸化防止剤であり、好ましくはブチルヒドロキシトルエン(BHT)及び/又はゼオライトを含有する添加剤である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記特定の容積を熱に暴露した後、前記特定の容積の圧力を低下させることをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記特定の容積を熱に暴露した後、前記特定の容積から蒸発する気体を調整するために、前記特定の容積の温度を調整することをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記温度が、前記特定の容積を冷却することによって調整される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
蒸発した気体が、長鎖炭化水素を前記気体から分離するように構成される部分凝縮器中を通過する、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
気体を蒸発させた後の前記特定の容積が、残留する長鎖炭化水素を分解するために、好ましくは再加熱前の前記特定の容積の前記温度より25℃未満高い温度まで再加熱され、前記再加熱された特定の容積が、最初に熱に暴露されたさらなる材料と混合され、再加熱された材料対最初に熱に暴露された後の材料の混合比が、好ましくは5:1~15:1、より好ましくは8:1~10:1である、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記特定の容積を熱に暴露した後、前記特定の容積からコークを分離することをさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
熱に暴露された後の前記特定の容積が分離器容器に入り、そこで気体が、好ましくは部分凝縮器によって蒸発し、コークが、アウトレット構造を通して分離され、前記アウトレット構造が、好ましくは、液体材料の最低レベル未満の前記アウトレット構造への分離器タンクの開口部を有しながら、前記分離器容器内の液体材料の最低レベルを維持する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記アウトレット構造が、コークを分離するために前記分離器容器の方に開放するか、又はロック中の前記コークを放出するために前記分離器容器から前記アウトレット構造を閉塞する前記ロックを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アウトレット構造が、前記分離器容器内の液体材料の前記最低レベルを維持し、コーク温度がその燃焼温度未満に低下したら前記コークを放出する弁及び冷却構造を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記分離器容器が、前記アウトレット構造への前記分離器タンクの前記開口部に隣接するセデーション領域を提供する、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法を実行するための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般に、使用済みプラスチック及びポリオレフィンを処理するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
未処置の使用済みプラスチックは、これまで環境問題を引き起こしてきたが、それらは、通常は原油及び他の化石燃料供給源から回収される炭化水素を少なくとも部分的に置き換える供給源ももたらす。使用済みプラスチックが供給源として使用される場合、既知のプロセスでは、重質炭化水素及び/又は固体炭素である、すすが比較的大量に発生することが非常に多くある。工業的に、より短い鎖長の軽質炭化水素が非常に望ましいが、すすはあまり望ましくない。
【0003】
国際公開第2016/116114A1号は、特定のポリオレフィンリッチ廃棄物において、触媒を使用せずに純粋に熱分解によって、プラスチック廃棄物から炭化水素を回収する方法に関する。この方法は、2台の加熱デバイス中でプラスチック廃棄物を融解させることを含み、分解反応器から誘導され、分離器システム中で精製されるリサイクル流が、加熱デバイスからの融解プラスチック廃棄物と混合される。混合プラスチック流は2台目の加熱デバイス中でさらに加熱されて、そしてそこから分解反応器中に誘導されて、そこでプラスチック材料は分解され、その後の蒸留によってディーゼル及び低沸点溶剤へと分離される。
【0004】
米国特許第10,160,920B2号は、分解ユニットのカスケードでの炭化水素原料の熱分解のための連続分解法を記載する。前記炭化水素原料は、炉中で、予め決められた最高温度まで加熱され、そして分解のカスケードにおいて熱分解され、コークの形成は減少する。
【0005】
図面の簡単な説明
図面は一定比率ではない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】長鎖炭化水素を分解するためのアセンブリを示す。
図2】分離構造及び放出構造の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
好ましい実施形態の説明
図1は、本発明の実施形態による長鎖炭化水素の分解のためのアセンブリ10を示す。示された実施形態の詳細をさらに説明する前に、本発明の一般的な態様を以下に記載する。
【0008】
第1の態様によると、プラスチック含有廃棄物、及び原油をベースとする有機液体からの長鎖炭化水素の分解方法は、
-長鎖炭化水素を含有する材料を提供すること、
-長鎖炭化水素を含有する材料の特定の容積(specific volume)を、材料中の炭化水素の鎖がより短い鎖へと分解し始める分解温度まで加熱すること、及び
-分解温度より高い温度を有する特定の容積に関して、特定の容積の温度より50℃以下高い熱まで特定の容積を暴露すること
を含む。
【0009】
材料の温度より50℃未満高い温度まで長鎖炭化水素を含有する材料を暴露することによって、固体炭素、すす及びより有用ではない重質炭化水素の形態が実質的に減少することが判明した。通常、特定の容積を暴露することは、加熱領域で実行される。以下の説明は特定の容積を言及しているが、これは、分解プロセスを受け、したがって、より短鎖の炭化水素を含有する材料へと変化する長鎖炭化水素を含有する材料の特定の容積であり、さらにそれは分解プロセスにおいて展開することは理解される。さらに、本方法は、同一時点で様々なグレードの分解材料を有する連続プロセスとして考えられる。本出願に関して、分解とは、通常、炭素-炭素結合を破壊することによって、炭化水素のより長い鎖、又はより複雑な構造を、炭化水素のより短い鎖、又はより複雑ではない構造へと分割することを意味する。
【0010】
いくつかの実施形態において、暴露の間、気体含有量を制限するために、長鎖炭化水素を含有する材料の特定の容積の圧力を調整する。長鎖炭化水素を含有する材料は、通常、加熱領域の前に配列されるネジ錐などのポンプ又は押出機によって加熱領域中を送達されるため、材料流を停止し、したがって、加熱領域内での圧力蓄積をもたらす圧力制御弁を加熱構造の後に配列することが十分となる可能性がある。気体は、因習的に、同一物質の液体よりも低い熱伝導率を有する。より高い圧力によって、液体の沸点は上昇する。したがって、圧力を増加させることによって、物質内の熱伝導率は増加し、物質、本明細書中では長鎖炭化水素を含有する材料への伝熱は改善される。
【0011】
いくつかの実施形態において、暴露の間、長鎖炭化水素を含有する材料の圧力は、10~35バール、好ましくは20バールに調整される。提案された範囲は、改善された熱伝導率と、長鎖炭化水素を含有する材料が分解する傾向との間の良好な交換条件を提供する。
【0012】
いくつかの実施形態において、十分に流動性になるまで材料を加熱する間に添加剤が提供される。添加剤は、好ましくは酸化防止剤、長鎖ポリマーの分解後に鎖端部にヒドリドを供与するために特に提供される添加剤、好ましくはブチルヒドロキシトルエン(BHT)及び/又はゼオライトを含有する添加剤である。したがって、長鎖炭化水素を含有する材料がすでに増加圧力下にある場合、添加剤を導入する必要はない。加えて、早期に導入される場合、添加剤は、分解しようとする長鎖炭化水素を含有する材料と十分に混合される。
【0013】
いくつかの実施形態において、本方法は、特定の容積を熱に暴露した後、材料の圧力を低下させることをさらに含む。すなわち、長鎖炭化水素を含有する材料がさらに加熱されなくなったら、より短鎖の材料は気体として蒸発することが可能である。
【0014】
いくつかの実施形態において、本方法は、特定の容積を熱に暴露した後、特定の容積から蒸発する気体の種類を調整するために、特定の容積の温度を調整することをさらに含む。これに関連する気体の種類は、特に、その気体の1分子中に含まれる炭素数を意味する。
【0015】
いくつかの実施形態において、温度は、特定の容積を冷却することによって調整される。特定の容積を冷却することによって、通常、長鎖を有する分子は液体状態に保持され、それらは容易に蒸発しない。
【0016】
いくつかの実施形態において、蒸発した気体は、長鎖炭化水素を気体から分離するように構成される部分凝縮器中を通過する。したがって、熱に暴露された後の材料の特定の容積を、例えば分離構造中で分離することが可能である。部分凝縮器は、特に長鎖炭化水素の小液滴が気体と一緒に分離構造から出ることを防ぐ。
【0017】
いくつかの実施形態において、気体を蒸発させた後の特定の容積は、残留する長鎖炭化水素を分解するために、好ましくは再加熱前の材料の温度より25℃未満高い温度まで再加熱され、そして再加熱された材料は、最初に熱に暴露された材料と混合され、再加熱された材料対最初に熱に暴露されたさらなる材料の混合比は、好ましくは5:1~15:1、より好ましくは8:1~10:1である。したがって、再加熱は、十分に分解していない材料に対するフィードバックループ型で実行される。すなわち、材料が加熱領域から分離構造に入った時、気体は蒸発し、そして長鎖炭化水素を含有する残留材料は戻されて再び加熱され、そのようにして長鎖は分解される。次いで、残留材料は、最初に暴露される材料中に供給され、再び分離構造に入り、気体を蒸発させることができる。
【0018】
いくつかの実施形態において、本方法は、特定の容積を熱に暴露した後、特定の容積からコークを分離することをさらに含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、特定の容積は、特定の容積を熱に暴露した後に分離器容器に入り、そこで気体は、好ましくは部分凝縮器によって蒸発し、そしてコークは、アウトレット構造を通して分離される。アウトレット構造は、好ましくは、液体材料の最低レベル未満のアウトレット構造への分離器タンクの開口部を有しながら、分離器容器内の液体材料の最低レベルを維持する。
【0020】
いくつかの実施形態において、アウトレット構造は、コークを分離するために分離器容器の方に開放するか、又はロック中のコークを放出するために分離器容器からアウトレット構造を閉塞するロックを含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、アウトレット構造は、分離器容器内の液体材料の最低レベルを維持し、そしてコーク温度がその燃焼温度未満に低下したらコークを放出する弁及び冷却構造を含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、分離器容器は、アウトレット構造への分離器タンクの開口部に隣接するセデーション(sedation)領域を提供する。
【0023】
第2の態様によると、上記の実施形態のいずれか1つによる方法を実行するための装置が提供される。
【0024】
第3の態様によると、上記で列挙された態様の代わり、又はそれに加えて、プラスチック含有廃棄物、及び原油をベースとする有機液体からの長鎖炭化水素の分解方法は、
-分離構造中に長鎖炭化水素を含有する材料を提供し、短鎖炭化水素を蒸発させること、
-分離構造から長鎖炭化水素を含有する材料を循環させ、そして分離構造とは別の加熱領域において、材料中の炭化水素の鎖がより短い鎖へと分解し始める分解温度まで材料を加熱すること、
-分離構造中に材料を循環させること
を含む。
【0025】
上記態様による加熱領域は分離構造とは別であり、加熱領域において処理された材料の容積は分離構造の外部にある。
【0026】
一実施形態において、分離構造とは別の加熱領域は、分離構造内の材料の容積次第で材料の温度を調整する。いくつかの実施形態において、分離構造とは別の加熱領域は、材料の分解速度を調整するために、材料の温度を調整する。いくつかの実施形態において、分解速度は、時間フレームあたりの分解事象に関する基準である。さらなる実施形態において、分解速度は、容積あたりの分解事象の基準である。分解速度を調整することによって、短鎖炭化水素の量は調整され、続いて、分解した炭化水素は一般に分解前の同一炭化水素よりも低い蒸発温度を有するため、材料の蒸発が調整される。したがって、材料の温度を増加させることによって、材料の蒸発が促進され、そして材料の容積は増加する。したがって、材料の温度を増加させることは、分離構造内の材料の充填レベルを上昇させる。
【0027】
いくつかの実施形態において、蒸発した炭化水素は、分離構造中で長鎖炭化水素から分離される。さらなる実施形態において、蒸発した炭化水素は、分離構造から長鎖炭化水素を含有する材料と一緒に循環しない。蒸発した炭化水素が分離されるまで、材料の蒸発を増加させることによる分離構造中の材料の容積の増加は適用される。気体相の材料の特定の容積は液体相の同一材料の特定の容積よりも実質的に大きいため、分離構造中の材料の容積は、蒸発を調整することによって、広範囲にわたって調整することができる。いくつかの実施形態において、分離構造中の長鎖炭化水素から分離された炭化水素は、分離構造中に循環させる前に分離構造とは別の加熱領域から循環させた材料に添加される長鎖炭化水素を含有する材料によって置き換えられる。
【0028】
第4の態様によると、上記で列挙された態様の代わり、又はそれに加えて、プラスチック含有廃棄物、及び原油をベースとする有機液体からの長鎖炭化水素の分解方法は、
-供給デバイス中に長鎖炭化水素を含有する材料を提供し、そして材料の流動性が増加する温度まで供給デバイス内の材料を加熱すること、
-材料を加熱構造中に放出し、そして材料中の炭化水素の鎖がより短い鎖へと分解し始める分解温度まで、長鎖炭化水素を含有する材料の温度を増加させること
を含み、材料が供給デバイス内部にある間に、分解を支持する添加剤が材料に添加される。
【0029】
上記態様による添加剤は、分解された炭化水素鎖の再結合を防止することによって、分解を支持する。いくつかの実施形態において、添加剤は、分解後、開鎖端部に水素原子を提供する。いくつかの実施形態において、添加剤は酸化防止剤である。いくつかの実施形態において、添加剤は、ゼオライト、カルシウム及び/又はブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含有する。より後の段階でのそのような添加剤の添加は、別々に添加剤を加圧又は加熱することなどの追加手段を必要とし得るため、供給デバイス中で添加剤を添加することは有利であることが見出された。
【0030】
第5の態様によると、上記で列挙された態様の代わり、又はそれに加えて、プラスチック含有廃棄物、及び原油をベースとする有機液体からの長鎖炭化水素の分解方法は、
-長鎖炭化水素を含有する材料を提供すること、
-長鎖炭化水素を含有する材料の特定の容積を、材料中の炭化水素の鎖がより短い鎖へと分解し始める分解温度まで加熱すること、及び
-材料が加熱される間に蒸発を防ぐために、長鎖炭化水素を含有する材料の特定の容積の圧力を維持すること
を含む。
【0031】
上記態様に従って圧力を維持することは、大気圧より高く、例えば10バール~40バールで圧力を維持することを含む。いくつかの実施形態において、圧力は約20バールに維持される。提案された範囲は、長鎖炭化水素を含有する材料中への熱交換器からの改善された熱伝導率と、材料が分解する傾向との間の良好な交換条件を提供する。
【0032】
第6の態様によると、上記で列挙された態様の代わり、又はそれに加えて、プラスチック含有廃棄物、及び原油をベースとする有機液体からの長鎖炭化水素を分解する装置は、
-長鎖炭化水素を含有する材料の特定の容積を、材料中の炭化水素の鎖がより短い鎖へと分解し始める分解温度まで加熱するために構成される加熱構造、及び
-材料が加熱される間に蒸発を防ぐために、長鎖炭化水素を含有する材料の特定の容積の圧力を維持するために構成され、加熱構造のアウトプットに配列される背圧制御素子
を含む。
【0033】
上記態様による実施形態は、押出機などの、それを通しての圧力放出を防止するために構成される供給デバイスを含む。いくつかの実施形態において、背圧制御素子は、加熱構造内の圧力を調整するために構成される弁及び/又は圧力センサーを含む。
【0034】
第7の態様によると、上記で列挙された態様の代わり、又はそれに加えて、異なる鎖長の炭化水素を含有する容積から重質炭化水素及び固体炭素を除去する方法は、
-炭化水素を含有する容積を分離構造中に提供すること、
-炭化水素を含有する容積中で鉛直軸の周囲に渦巻運動を生じさせること、及び
-容積の底部部分から炭化水素を引き抜き、そして分離構造内の炭化水素を含有する容積と類似の高さレベル間で延在し、引き抜きの間に分離構造と流体連通するロックチャンバー中に、引き抜かれた炭化水素を導入し、そして容積の上部表面を含む分離構造の上部部分及びロックチャンバーの上部部分に同一流体圧力をかけること
を含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、ロックチャンバーが分離構造と流体連通していること、及び容積の上部表面を含む分離構造の上部部分及びロックチャンバーの上部部分に同一流体圧力をかけることによって、重力の影響のため本質的に充填を出る分離構造内部の液体から圧力下でロックチャンバーを充填することが可能である。いくつかの実施形態において、炭化水素は、その後の容器又は外気に放出される前に冷却される。いくつかの実施形態において、渦巻運動は、容積に対して接線方向に炭化水素含有材料を転送することによって生じる。
【0036】
第8の態様によると、上記で列挙された態様の代わり、又はそれに加えて、異なる鎖長の炭化水素を含有する容積から重質炭化水素及び固体炭素を除去するための装置は、
-炭化水素を含有するように構成される分離構造、
-分離構造内の炭化水素を含有する容積中で鉛直軸の周囲に渦巻運動を生じさせるように構成される分離構造、
-分離構造の底部部分から炭化水素を受け取るように構成され、そして分離構造内の炭化水素を含有する容積と類似の高さレベル間で延在し、炭化水素を受け取る時に分離構造と流体連通するように構成され、そして炭化水素を受け取る時に分離構造の上部部分及びロックチャンバーの上部部分が同一流体圧力にあるように構成されるロックチャンバー
を含む。
【0037】
いくつかの実施形態において、ロックチャンバーは、その後の容器又は外気に放出される前に炭化水素を冷却することが可能となるように構成される。
【0038】
図1の説明に戻ると、アセンブリ10は、加熱構造11及び分離構造12を含む。加熱構造11は、流体を分離構造12中に供給するために、分離構造12と連通する。特に、加熱構造11は、分解された炭化水素を含有する流体を分離構造12中に供給する。
【0039】
いくつかの実施形態において、供給デバイス7は、廃棄プラスチック又は原油などの長鎖炭化水素を含有する材料を加熱構造11に充填するために配列される。種々の実施形態において、供給デバイスは、貯蔵のための構成要素、及び/又は予め決められたサイズより大きいいかなる固体材料も分解するための構成要素を含む。いくつかの実施形態において、予め決められたサイズは、約100mm又は約50mmである。いくつかの実施形態において、供給デバイスは、長鎖炭化水素を含有する材料を加熱及び/又は転送するための効果器8を含む。いくつかの実施形態において、効果器は、長鎖炭化水素を含有する材料を加熱及び/又は転送するために配列されるネジ錐8である。いくつかの実施形態において、ネジ錐8は材料を移動させ、そして材料中の内部摩擦によって材料が加熱及び融解する。さらなる実施形態において、供給デバイス7は、サーマルオイルなどの加熱媒体によって灌流された、電気ヒーター又は加熱デバイスなどの加熱デバイスを含む。種々の実施形態において、加熱によって水分が蒸発する。種々の実施形態において、供給デバイス7は、脱気によって水及び/又はハロゲンを除去するための液体リングポンプなどのポンプを含む。供給デバイス7は、長鎖炭化水素を含有する材料を加熱構造11へと転送する。
【0040】
いくつかの実施形態において、分解を増加及び/又は最適化させる添加剤は、供給デバイス7中の材料中に加えられる。供給デバイス7中で添加剤を加えることによって、材料との添加剤のより均質な分布が可能となることが見出された。また、添加剤が後の段階でのみ活性になるとしても、供給デバイス7で添加剤を加えることにより、増加した圧力及び熱下で添加剤を材料に加えることを必要とする構造が回避される。いくつかの実施形態において、添加剤は酸化防止剤である。いくつかの実施形態において、添加剤は、ゼオライト、カルシウム及び/又はブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含有する。種々の実施形態において、添加剤は、分解した炭化水素鎖が再結合することを防ぐ。さらなる実施形態において、添加剤は塩素などの障害を結合する。
【0041】
加熱構造11は、長鎖炭化水素を含有する材料を受け取る。種々の実施形態において、加熱構造は、少なくとも1つの加熱領域1、2、3、4を含む。加熱領域1、2、3、4は、長鎖炭化水素を含有する材料を、制限された温度増加へと暴露するために配列される。言い換えると、長鎖炭化水素を含有する材料は、材料の温度よりも、予め決められた温度未満高い温度に暴露される。温度増加を制限することによって、アセンブリ10の運転から得られる所望の鎖長を有する炭化水素を含有する使用可能な材料の収率は増加し、そして得られる固体炭素の量は制限されることが見出された。種々の実施形態において、加熱領域1、2、3、4は、約50℃以下の予め決められた温度に長鎖炭化水素を含有する材料を暴露するために配列される。
【0042】
以下、長鎖炭化水素を含有する材料が暴露される温度は、曝露温度として記載される。しかしながら、曝露温度は、アセンブリ中の位置及び長鎖炭化水素を含有する材料の相当する温度次第で異なる値を有する。
【0043】
例えば、加熱領域1、2、3、4に入り、及び約200℃の温度を有する長鎖炭化水素を含有する材料に関して、加熱領域1、2、3、4は、加熱領域1、2、3、4の入口において、長鎖炭化水素を含有する材料を250℃以下の曝露温度に暴露する。長鎖炭化水素を含有する材料が加熱を開始したら、加熱領域1、2、3、4は、したがって増加した曝露温度に材料を暴露する。例えば、長鎖炭化水素を含有する材料が250℃の温度まで加熱された場合、加熱領域1、2、3、4は、材料を最高300℃までの曝露温度に暴露する。
【0044】
種々の実施形態において、加熱領域1、2、3、4は、したがって、長鎖炭化水素を含有する材料のバッチが、予め決められた最大温度に達するまで、材料の温度より50℃以下高い温度まで加熱されるバッチプロセスを提供する。少なくともいくつかの長鎖炭化水素が分解する、予め決められた保持時間後、長鎖炭化水素を含有する材料は、アセンブリ10の下流に放出される。いくつかの実施形態においては、保持時間がなく、すなわち、保持時間は0に近いが、材料は加熱直後に放出される。
【0045】
異なる実施形態において、加熱領域1、2、3、4は、長鎖炭化水素を含有する材料にフローパスを提供する。加熱領域1、2、3、4は、フローパスに沿って曝露温度を連続的に、又は徐々に増加させる。いくつかの実施形態において、加熱領域1、2、3、4は、長鎖炭化水素を含有する材料に第1の管を提供する。材料は、一般に第1の方向で第1の管中を流れる。加熱領域1、2、3、4は、熱が第2の管の内部から第1の管に移動することができるように、加熱領域1、2、3、4の実質的長さに沿って第1の管と接触する第2の管をさらに提供する。第2の管は、加熱媒体にフローパスを提供する。
【0046】
これらの実施形態のいくつかにおいて、加熱媒体が第2の方向のフローパスに沿って冷却されながら、長鎖炭化水素を含有する材料が第1の方向の流れに沿って加熱されるように、加熱媒体は第1の方向とは反対方向に流れる。これらの実施形態のいくつかにおいて、加熱媒体は、加熱領域1、2、3、4に沿って第2の管に入る時に、予め決められた最終温度より50℃以下高い温度を有するように、そして加熱領域1、2、3、4に入る時に、長鎖炭化水素を含有する材料の温度より50℃以下高い温度を有するように制御される。いくつかの実施形態において、第2の管中の加熱媒体及び/又は第1の管中の長鎖炭化水素を含有する材料の温度、速度及び/又は圧力は制御される。いくつかの実施形態において、第2の管は、それを通して予め決められた速度で流動し、及び予め決められた開始速度を有する加熱媒体が予め決められた温度特徴を有するような寸法を有する。いくつかの実施形態において、第1の管は、第2の管内に同軸延長する。
【0047】
いくつかの実施形態において、第2の管は、第1の管内に同軸延長する。いくつかの実施形態において、第2の管は、第1の管に巻付けられる。いくつかの実施形態において、第1の管は第2の管内で曲折状態で成形され、そして第1の管は、長鎖炭化水素を含有する材料が、加熱媒体が第2の管を出る位置に隣接する側面上で第1の管に入り、そして材料が、加熱媒体が第2の管に入る位置に隣接する第2の管の側面で第1の管を出るように配列される。
【0048】
いくつかの実施形態において、加熱領域1、2、3、4はいくつかの加熱部分を含み、そしてそれぞれの加熱部分は、長鎖炭化水素を含有する材料を、予め決められた温度に暴露する。加熱部分は、長鎖炭化水素を含有する材料がそれらのそれぞれを通して連続して流動するように構成される。それぞれの加熱部分は、以前の加熱部分よりも高い曝露温度に材料を暴露する。加熱部分は、曝露温度が、それぞれの加熱部分に入る時に長鎖炭化水素を含有する材料の温度より50℃高い温度を超えないように構成される。
【0049】
図1の実施形態において、加熱領域1、2、3、4は、4つの加熱部分を含む。例えば、第1の加熱部分1に入り、及び約200℃の温度を有する長鎖炭化水素を含有する材料に関して、加熱部分1は、長鎖炭化水素を含有する材料を250℃の第1の曝露温度に暴露する。長鎖炭化水素を含有する材料が第1の加熱部分1中を流動する間、長鎖炭化水素を含有する材料は加熱され、そしてその温度は第1の曝露温度に近くなる。いくつかの実施形態において、第1の曝露温度は200℃~370℃である。いくつかの実施形態において、第1の曝露温度は220℃~320℃である。いくつかの実施形態において、第1の曝露温度は約250℃である。
【0050】
分解が第1の加熱部分内で生じるかどうかは、温度は別として、材料中に含まれる長鎖炭化水素、並びに材料中に故意に、又は偶発的に含まれる他の物質、及び材料の圧力次第である。場合によっては、さらなるパラメーターが分解を促進しないため、分解は200℃~250℃などの低温では生じない。そのような場合、曝露温度は、材料の温度より50℃以上高くなってもよい。いくつかの実施形態において、曝露温度は、分解が実質的に起こる最低温度よりも50℃高くてもよい。
【0051】
第1の加熱部分1を出る時、材料は、第1の加熱部分1の下流の第2の加熱部分2へと通過する。第2の加熱部分2は、第1の加熱部分1より高い曝露温度、すなわち、第2の曝露温度に長鎖炭化水素を含有する材料を暴露する。第2の曝露温度は、長鎖炭化水素を含有する材料の温度より50℃高い温度を超えない。種々の実施形態において、第2の曝露温度は250℃~400℃である。いくつかの実施形態において、第2の曝露温度は270℃~370℃である。いくつかの実施形態において、第2の曝露温度は約300℃である。長鎖炭化水素を含有する材料は、第2の加熱部分2中を流動し、第2の曝露温度の方に加熱される。
【0052】
第2の加熱部分2から、長鎖炭化水素を含有する材料は、第2の加熱部分2の下流の第3の加熱部分3へと通過する。第3の加熱部分3は、材料を第3の曝露温度に暴露する。第3の曝露温度は、第2の曝露温度より高い。第3の曝露温度は、材料の温度より50℃高い温度を超えない。種々の実施形態において、第3の曝露温度は300℃~400℃である。いくつかの実施形態において、第3の曝露温度は320℃~380℃である。いくつかの実施形態において、第3の曝露温度は約370℃である。長鎖炭化水素を含有する材料は、第3の加熱部分3中を流動し、第3の曝露温度の方に加熱される。
【0053】
第3の加熱部分3から、長鎖炭化水素を含有する材料は、第3の加熱部分3の下流の第4の加熱部分4へと通過する。第4の加熱部分4は、材料を第4の曝露温度に暴露する。第4の曝露温度は、材料の温度より50℃高い温度を超えない。第4の曝露温度は、長鎖炭化水素の分解のための最大温度を本質的に決定する。いくつかの実施形態において、第4の曝露温度は350℃~450℃である。さらなる実施形態において、第4の曝露温度は380℃~420℃である。長鎖炭化水素を含有する材料は、第4の加熱部分4中を流動し、第4の曝露温度の方に加熱される。
【0054】
長鎖炭化水素を含有する材料が第4の加熱部分4中を流動する間、長鎖炭化水素のいくつかが分解する。いくつかの実施形態において、材料が第3の加熱部分3中を流動する間、長鎖炭化水素のいくつかが分解する。いくつかの実施形態において、材料が第2の加熱部分2中を流動する間、長鎖炭化水素のいくつかが分解する。いくつかの実施形態において、材料が第1の加熱部分1中を流動する間、長鎖炭化水素のいくつかが分解する。主に、加熱部分が熱いほど、多くの分解が生じる。実質的な量の長鎖炭化水素が分解したら、加熱部分は、材料の温度より50℃高い最大温度まで曝露温度を制限する。したがって、長鎖炭化水素を含有する材料は、分解された炭化水素も含有する。すなわち、より短い鎖長を有する炭化水素の割合は、加熱領域に入る前の材料と比較して増加する。第4の加熱部分4を出た材料は、分離構造12へと通過する。
【0055】
種々の実施形態において、加熱部分は、1種類のみの加熱部分が加熱部分の連鎖におけるそれぞれの位置のために使用されることが可能であるように、同一構造から構成される。種々の実施形態において、加熱部分は、450℃の温度までの加熱のために設計される。種々の実施形態において、加熱部分は、0バール~40バールの運転圧力のために設計される。種々の実施形態において、加熱部分には、加熱媒体としてサーマルオイルが供給される。種々の実施形態において、サーマルオイルは、加熱部分の運転温度より高い沸点及び/又は40℃未満の凝固温度を有するように選択される。
【0056】
いくつかの実施形態において、第1~第3の加熱部分のそれぞれは、次の加熱部分の曝露温度が、次の加熱部分に入る材料の温度より50℃高い温度を超えないように、材料が特定の最小温度に達したら出ることが可能であるようにのみ配列される。言い換えると、第1~第3の加熱部分のそれぞれは、材料が、それぞれの次の加熱部分の曝露温度より50℃未満低い温度に達したら出ることが可能であるようにのみ配列される。
【0057】
さらなる実施形態において、長鎖炭化水素を含有する材料のスループットは、第1~4の加熱部分を出る材料が特定のそれぞれの温度に達したことを確実にするように調整される。第1~3の加熱部分に関して、特定の温度は、それぞれの次の加熱部分の曝露温度より50℃未満低い。第4の加熱部分4に関して、特定の温度は、予め決められた最大温度である。
【0058】
より多くの、又はより少ない加熱部分を有する加熱構造に関して、上記が対応して適用される。
【0059】
いくつかの実施形態において、加熱領域1、2、3、4の下流に背圧制御素子5a、5bがある。背圧制御素子5a、5bは、加熱領域における長鎖炭化水素を含有する材料の圧力を調整するために配列される。種々の実施形態において、背圧制御素子は、加熱領域中の材料のスループットを制御する。背圧制御素子は、加熱領域及び分離構造12の間に配列される。背圧制御素子5a、5bを出た長鎖炭化水素を含有する材料は、分離構造12へと通過する。いくつかの実施形態において、背圧制御素子は、調節可能な弁5a及び圧力センサー5bを含む。圧力センサー5bは、加熱領域における材料の圧力を検出するために構成される。圧力センサー5bが特定の範囲における圧力を検出する限り、調節可能な弁5aは材料を放出するように構成される。いくつかの実施形態において、特定の範囲とは10バール~40バールである。いくつかの実施形態において、特定の範囲とは約20バールである。加熱領域中の材料が範囲外の圧力を有する場合、弁5aは、材料のスループットを制御する。例えば、加熱領域の圧力が圧力範囲の下限未満まで低下した場合、加熱領域の圧力が蓄積するまで、弁5aはスループットを減少させる。加熱領域の圧力が上限を超える場合、弁5aは、圧力が低下するまで、スループットを増加させる。いくつかの実施形態において、弁5aは、圧力レリーフ弁の構造を有し、すなわち、弁5aは、プレロードされたバネによって閉鎖されたまま保持され、予め決められた圧力を越えられたら、次の分離構造12の方に解放されるが、予め決められた圧力未満まで圧力が低下したら、閉鎖する。さらなる実施形態において、弁5aは、スループット、そしてそれによって、圧力センサー5bによって検出される圧力を調整するために開閉する仕切り弁である。いくつかの実施形態において、弁5aは、常に小スループットを可能にするように配列されて、言い換えると、弁5aは、完全に閉鎖されないように配列される。
【0060】
材料が背圧制御素子を通過すると、材料の圧力は低下する。分解から生じる特により短鎖の炭化水素は気体相に蒸発し、炭化水素を含有する気体が得られる。
【0061】
炭化水素を含有する液体及び気体を有する材料は、分離構造12へと通過する。分離構造12において、炭化水素を含有する気体は、材料のより長鎖の炭化水素を含有する液体から分離される。炭化水素を含有する気体は、液体から上昇する。分離構造12は、予め決められた鎖長以下の鎖長を有する炭化水素を含有する気体を放出する。いくつかの実施形態において、分離構造12は、その上部部分に気体放出器を備える。気体放出器は、好ましくは部分凝縮器21を備えている。
【0062】
種々の実施形態において、分離構造12は、部分凝縮器21、炭化水素材料の気体-液体界面を有する分離領域25、並びに重質炭化水素及び/又は固体炭素が蓄積するための沈殿領域28を含む。いくつかの実施形態において、分離構造12は、分離領域25を含有する円筒形の中間部分24、並びに重質炭化水素及び/又は固体炭素のためのアウトレットに漏斗末端を有する沈殿領域28を含有する漏斗形状の底部部分27を含む。
【0063】
部分凝縮器21は、最大鎖長を有する炭化水素を有する気体が通過することを可能にするように構成される。部分凝縮器21は、炭化水素を含有する気体を凝縮温度まで冷却する。凝縮温度は、特定の鎖長以上の炭化水素を凝縮させる温度である。部分凝縮器は、凝縮された炭化水素を循環させて、液体に戻す。いくつかの実施形態において、凝縮温度は270℃~370℃である。さらなる実施形態において、凝縮温度は320℃である。
【0064】
いくつかの実施形態において、部分凝縮器21は、炭化水素を含有する気体のためのフローパスを提供する凝縮器容器22、及び気体を冷却するためのサーモオイルなどの冷却媒体のための冷却管23を含む。いくつかの実施形態において、冷却管23は凝縮器容器22を交差する。いくつかの実施形態において、冷却管は、曲折状、渦巻状、及び/又は螺旋状で凝縮器容器22中に延長する。いくつかの実施形態において、凝縮器容器22及び冷却管23は、気体が鉛直方向、及び1つ又はそれ以上の水平方向の両方で流動するように構成される。言い換えると、気体は線形ラインで部分凝縮器21を通過することはできない。いくつかの実施形態において、冷却管23は、冷却リブ及び/又はバッフルの気体との接触面の増加を提供し、特に部分凝縮器21内の気体フローを誘導する及び/又は遅らせる。いくつかの実施形態において、部分凝縮器21は、冷却リブ及び/又はバッフルのランダムな配列を含む。いくつかの実施形態において、冷却管23、冷却リブ及び/又はバッフルは、凝縮された炭化水素が気体の主要フローから離れて、例えば、凝縮器容器22の側面へと誘導され、液体中に流動若しくは滴下するように傾斜している。
【0065】
したがって、部分凝縮器21は、予め決められた鎖長を含むか、又はそれ以下の鎖長を有する炭化水素を含有する気体を通過させるように配列される。いくつかの実施形態において、予め決められた鎖長は、30個の炭素である。さらなる実施形態において、予め決められた鎖長は、25個の炭素である。さらなる実施形態において、予め決められた鎖長は、22個又は20個の炭素である。予め決められた鎖長を超える鎖長を有する炭化水素は、分離構造12中の液体に循環して戻される。
【0066】
種々の実施形態において、分離構造12は、予め決められた鎖長より長い鎖長を有する炭化水素を含有する液体を放出する。分離構造12は、分解から生じる重質炭化水素及び/又は固体炭素を除去する。
【0067】
いくつかの実施形態において、加熱構造11は、再加熱領域6を含む。炭化水素を含有する液体は、分離構造12から再加熱領域6へとパイプ輸送される。さらなる長鎖炭化水素が分解されるように、再加熱領域6では炭化水素を含有する液体が再加熱される。いくつかの実施形態において、再加熱領域は、炭化水素を含有する液体の温度より50℃以下高い曝露温度を提供するように配列される。制限された曝露温度は、炭化水素の炭化を制限し得る。いくつかの実施形態において、再加熱領域6は、気体及び炭素の分離による分離構造12における材料の熱損失、並びに分離構造12及びいずれかのパイプラインの壁を通しての熱損失を少なくとも部分的に考慮するように配列される。いくつかの実施形態において、再加熱領域6は、380℃~450℃の曝露温度を提供する。さらなる実施形態において、再加熱領域6は、390℃~410℃の曝露温度を提供する。
【0068】
いくつかの実施形態において、炭化水素を含有する液体は、粒子を除去するためにフィルター9を通過する。いくつかの実施形態において、炭化水素を含有する液体は、液体のフローレートを調整するために配列されたポンプ10によって転送される。
【0069】
液体は再加熱領域6を出て、分解した炭化水素鎖の気体を蒸発させる。いくつかの実施形態において、再加熱領域6の液体は、分解した炭化水素の一部がすでに再加熱領域6において分解した炭化水素鎖の気体中に蒸発するように加圧されない。いくつかの実施形態において、再加熱領域6を出た液体及び/又は気体は、蒸発した気体を放出するための分離構造12中に供給される。いくつかの実施形態において、再加熱領域6を出た液体及び/又は気体は、加熱領域1、2、3、4を出た材料と混合される。いくつかの実施形態において、再加熱領域6を出た液体及び/又は気体は、背圧制御素子5a、5bを出た材料と混合される。いくつかの実施形態において、再加熱領域6を出た液体及び/又は気体と、加熱領域1、2、3、4を出た材料との混合比は、フローレートによって5:1~15:1、より好ましくはフローレートによって8:1~10:1である。いくつかの実施形態において、混合比は、供給デバイス7、加熱領域、背圧制御素子及びポンプ10によって調整される。いくつかの実施形態において、再加熱領域6には、第1~4の加熱部分1、2、3、4で使用されるサーモオイルなどのサーモオイルが供給される。いくつかの実施形態において、再加熱領域6は、第4の加熱領域4と同一温度のサーモオイルを受け取る。
【0070】
いくつかの実施形態において、再加熱領域6は、分離構造12中の材料の容積次第で材料の温度を調整する。いくつかの実施形態において、再加熱領域は、材料の分解速度を調整するために、材料の温度を調整する。いくつかの実施形態において、分解速度は、時間フレームあたりの分解事象に関する基準である。さらなる実施形態において、分解速度は、容積あたりの分解事象の基準である。分解速度を調整することによって、材料中の短鎖炭化水素の量は調整され、続いて、分解した炭化水素は一般に分解前の同一炭化水素よりも低い蒸発温度を有するため、材料の蒸発が調整される。さらに、材料を加熱することによって、より多くの材料が蒸発する。したがって、材料の温度を増加させることによって、材料の蒸発が促進され、そして液体状態の材料の容積は減少する。いくつかの実施形態において、これは、分離構造12内の液体状態の材料のレベルを調整するために使用される。
【0071】
例示的な実施形態において、加熱部分1、2、3、4、再加熱領域6及び使用されたサーマルオイルは、以下のパラメーターを提供する。
【0072】
【表1】
【0073】
「PMインレット温度」は、それぞれの加熱部分中に投入される時の長鎖炭化水素を含有する材料の温度を示し、「PMアウトレット温度」は、それぞれの加熱部分から排出される時の長鎖炭化水素を含有する材料の温度を示し、「TOインレット温度」は、それぞれの加熱部分に適用される時の、この例示的な実施形態の加熱媒体として使用されるサーマルオイルの温度を示し、そして「TOアウトレット温度」は、適用後のそれぞれの加熱領域におけるサーマルオイルの温度を示す。この表で分かるように、TOインレット温度とPMアウトレット温度との間、並びにTOアウトレット温度とPMインレット温度との間の最大差は50℃を超えない。サーマルオイルがそれぞれの加熱部分中を材料のフロー方向とは反対方向に流れるため、曝露温度は材料の温度より50℃高い温度を超えない。
【0074】
種々の実施形態において、炭化水素を含有する材料は、加熱構造11から出て、インレット26を通って分離構造12に入る。いくつかの実施形態において、インレットは、材料を分離領域25中に接線方向に転送するために構成される。言い換えると、材料は、円筒形の中間部分24の垂直軸に対してオフセットされた円筒形の中間部分24に流入する。したがって、中間部分の内側の液体の回転が引き起こされる。重質炭化水素及び/又は固体炭素は、分離領域25の外側の方へ移動する。外側では、重質炭化水素及び/又は固体炭素は、円筒形の中間部分24の内壁などの分離領域25の側壁との摩擦を経験する。重質炭化水素及び/又は固体炭素は、減速し、底部の方へ下降する。種々の実施形態において、重質炭化水素及び固体炭素は、沈殿領域28において蓄積する。いくつかの実施形態において、漏斗形状の底部部分27は、重質炭化水素及び固体炭素を重質炭化水素及び/又は固体炭素のアウトレットに導く。
【0075】
種々の実施形態において、沈殿領域28は、漏斗形状の底部部分27より上に配列される分離円錐体29を含む。分離円錐体29は、水平円錐体表面を形成するシートを含み、円錐体基部は底部部分27と面し、円錐体上部は分離構造12の上部部分に面する。種々の実施形態において、分離円錐体29は、円筒形の中間部分24の鉛直軸と隣接するか、又は一致するその頂点を有する正確な円錐体として本質的に形成される。種々の実施形態において、分離円錐体29は先端が切断された形状を有し、頂点に開口部を含む。分離円錐体29は、固体炭素及び/又は重質炭化水素がアウトレットへと通過することができるように、分離円錐体29と、円筒形の中間部分24の内壁及び/又は漏斗形状の底部部分27との間に間隙が残るように配列される。間隙は、好ましくは、分離円錐体29の円周周辺に配列される。分離円錐体29は、中間部分24中で回転している液体が、漏斗形状の底部部分27中に蓄積された重質炭化水素及び/又は固体炭素を撹拌することを抑制する。これによって、重質炭化水素及び/又は固体炭素がアウトレットでより高密度に充填されることが可能となり、より少ない液体炭化水素によって除去することが可能である。
【0076】
種々の実施形態において、重質炭化水素及び/又は固体炭素は、予め決められた最低レベルで少なくとも留まるように分離構造12中の充填レベルを調整するために構成される弁構造13を通して放出される。種々の実施形態において、弁構造13は、少なくとも一方が通常、運転の間に閉鎖される少なくとも第1及び第2のロック弁31、32、並びに第1及び第2のロック弁31、32の間のロックチャンバーを含む。いくつかの実施形態において、制御素子33は、ロック弁31、32を制御する。運転の間、底部部分27に隣接する第1のロック弁31は開放され、そして重質炭化水素及び/又は固体炭素は分離構造12を出ることが可能である。重質炭化水素及び/又は固体炭素は、ロックチャンバーに入る。重質炭化水素及び/又は固体炭素が放出される前に、第1のロック弁31は閉鎖される。次いで、第2のロック弁32が開放される。
【0077】
図2は、分離構造12及び弁構造13の実施形態を示す。図2の弁構造13は、第1のロック弁31、ロックチャンバー34、第2のロック弁32及び補償のライン35を含む。補償のラインは、補償弁36を含む。ロックチャンバー34は、分離領域25及び沈殿領域28と同様の高さレベルの間で延在するように配列される。補償弁36を介した補償ライン35によって、それらの上部部分において分離構造12及びロックチャンバー34に同一流体圧力を受けさせることが可能となり、ロックチャンバー34に分離構造内の液体からの圧力下で充填させることが可能となる。
【0078】
分離構造12の運転時、分離構造12内部に常に特定のレベルの液体があることは有利である。第1のロック弁31と補償弁36が開放しており、そして第2のロック弁32が閉鎖している限り、ロックチャンバー34の充填レベルは分離構造12の充填レベルに相当する。重質炭化水素及び/又は固体炭素が沈殿領域28で蓄積すると、重質炭化水素及び/又は固体炭素は分離構造12からロックチャンバー34に排出される。ロックチャンバーの充填レベルが、分離構造12の充填レベルに相当するため、充填レベルの増加とともにロックチャンバー34の容量は増加する。しかしながら、分離構造12の充填レベルが低い場合、ロックチャンバー34の容量は低くなり、分離構造はロックチャンバー34中に完全には流出されず、したがって、空にならない。ロックチャンバー34が充填される場合、第1のロック弁31及び補償弁36は閉鎖している。第2のロック弁32は開放される。種々の実施形態において、重質炭化水素及び/又は固体炭素を引き抜くために、ロックチャンバー34を不活性気体によって加圧する。ロックチャンバー34が空である場合、第2のロック弁32は閉鎖され、そして第1のロック弁31及び補償弁36は開放される。沈殿領域28からのさらなる重質炭化水素及び/又は固体炭素がロックチャンバー34に入ることが可能となる。
【0079】
種々の実施形態において、ロックチャンバー34中の重質炭化水素及び/又は固体炭素は、それらの発火温度より高い。したがって、重質炭化水素及び/又は固体炭素は、空気と接触する前に冷却され得る。したがって、いくつかの実施形態において、重質炭化水素及び/又は固体炭素は、放出される前に冷却チャンバーに入り、冷却される。いくつかの実施形態において、それらの温度が特定の最大温度未満まで低下した後、重質炭化水素及び/又は固体炭素は冷却チャンバーを出る。いくつかの実施形態において、重質炭化水素及び/又は固体炭素の最大温度は発火温度である。
図1
図2
【国際調査報告】