(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-22
(54)【発明の名称】Kv1.3遮断剤
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20221115BHJP
C07K 14/435 20060101ALI20221115BHJP
C07K 1/00 20060101ALI20221115BHJP
C07K 1/113 20060101ALI20221115BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20221115BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20221115BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20221115BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20221115BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221115BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20221115BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221115BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20221115BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20221115BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20221115BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20221115BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20221115BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20221115BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20221115BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20221115BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20221115BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20221115BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20221115BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20221115BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221115BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20221115BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20221115BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20221115BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20221115BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20221115BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20221115BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20221115BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20221115BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20221115BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20221115BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20221115BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221115BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K14/435 ZNA
C07K1/00
C07K1/113
C12P21/02 C
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K38/16
A61P29/00
A61P37/02
A61P37/08
A61P37/06
A61P11/06
A61P11/02
A61P17/04
A61P17/14
A61P21/00
A61P19/08
A61P9/00
A61P19/02
A61P27/02
A61P43/00 105
A61P11/00
A61P1/16
A61P25/00
A61P1/04
A61P17/00
A61P17/06
A61P13/12
A61P3/10
A61P3/04
A61P25/28
A61P25/16
A61P35/00
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517906
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(85)【翻訳文提出日】2022-05-18
(86)【国際出願番号】 EP2020076187
(87)【国際公開番号】W WO2021053194
(87)【国際公開日】2021-03-25
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501466189
【氏名又は名称】ジーランド・ファーマ・ア/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリク・フィッシャー・ムンク
(72)【発明者】
【氏名】ラスムス・ブッゲ・イェンセン
(72)【発明者】
【氏名】イェンス・クヴィスト・マドセン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064AG30
4B064CA02
4B064CA05
4B064CA08
4B064CA09
4B064CA10
4B064CA11
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA13
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA83X
4B065AA86X
4B065AA87X
4B065AA87Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA02
4C084BA19
4C084BA20
4C084BA21
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA41
4C084NA14
4C084ZA01
4C084ZA02
4C084ZA16
4C084ZA34
4C084ZA36
4C084ZA59
4C084ZA68
4C084ZA70
4C084ZA75
4C084ZA81
4C084ZA89
4C084ZA92
4C084ZA94
4C084ZA96
4C084ZB07
4C084ZB08
4C084ZB13
4C084ZB15
4C084ZB21
4C084ZB26
4C084ZB27
4C084ZC35
4C084ZC41
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA18
4H045BA19
4H045CA50
4H045DA83
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA20
4H045FA30
4H045FA33
4H045FA50
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、カリウムチャネルKv1.3の新規遮断剤、それをコードするポリヌクレオチド、並びにそれを作製及び使用する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Kv1.3阻害剤成分を含むイオンチャネル遮断剤又はその薬学的に許容される塩であって、前記Kv1.3阻害剤成分は:
PaT1の配列:
QMDMRCSASVECKQKCLKAIGSIFGKCMNKKCKCYPR;
又は、最大9個の置換、挿入、又は欠失によってPaT1とは異なる変異体を含み、
いずれかの置換又は欠失は、位置1~5、7~11、13~15、17~23、25、28~31、33及び35~37から選択されるアミノ酸位置にあり;
前記Kv1.3阻害剤成分は、Kv1.3阻害剤活性を有し、Kv1.3に選択的である、イオンチャネル遮断剤又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
位置28、31、34、35、36又は37の1つ又は複数、又は位置28、31、34及び35の1つ又は複数が、PaT1の対応する位置と同一である、請求項1に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項3】
位置28、31、34及び35の全て、又は位置28、31、34、35、36及び37の全てが、PaT1の対応する位置と同一である、請求項2に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項4】
Kv1.3阻害剤成分が、PaT1の配列:
QMDMRCSASVECKQKCLKAIGSIFGKCMNKKCKCYPRを含むか、
又は最大9個の置換、挿入、又は欠失によってPaT1と異なり、いずれかの置換又は欠失は、次の位置でのみ行われ、PaT1と異なる場合:
位置1の残基は、N、P、I、V、H、Y、及びSから選択されるか、又は欠失しており;
位置2の残基は、Nle、I、V、L、T、Q、及びEから選択されるか、又は欠失しており;
位置3の残基は、E、S、及びNから選択されるか、又は欠失しており;
位置4の残基は、Nle、I、V、L、A、E、及びSから選択されるか、又は欠失しており;
位置5の残基は、K、Q、A、L、E、及びDから選択されるか、又は欠失しており;
位置7の残基は、K、R、Q、E、F及びAから選択され;
位置8の残基は、I、H、S、L、Y及びGから選択され;
位置9の残基は、A、Abu、P、F、V及びLから選択され;
位置10の残基は、R、K、P、A、Q及びLから選択され;
位置11の残基は、Q及びDから選択され;
位置13の残基は、L、A、E、Q、I、K、H、D、V、及びGから選択され;
位置14の残基は、V、K、E、L、D及び2-アミノ-5-カルボキシペンタノイルから選択され;
位置15の残基は、S、L及びPから選択され;
位置17の残基は、K、Y、R、Q、D、V、及びEから選択されるか、又は欠失しており;
位置18の残基は、D、A、Y、G、V、Q、hQ、及びLから選択されるか、又は欠失しており;
位置19の残基は、R、Y、及びQから選択されるか、又は欠失しており;
位置20の残基は、Y、E、及びRから選択されるか、又は欠失しており;
位置21の残基は、R、H、E及びDから選択され;
位置22の残基は、R、M、D、L及びCから選択され;
位置23の残基は、R、K、hK、P、G及びHから選択され;
位置26の残基は、ホモリジンであり;
位置28の残基は、Nle、A及びLから選択され;
位置29の残基は、Vであり;
位置30の残基は、G及びDから選択され;
位置31の残基は、D、Q、E及びHから選択され;
位置33の残基は、H、V、D、Q及びRから選択され;
位置35の残基は、T、F(4-NH
2)、F(4-F)、F(4-NO
2)及びF(4-CH
3)から選択され;
位置36の残基は、Q、S、及びGから選択されるか、又は欠失しており;
位置37の残基は、K、E、S、及びCから選択されるか、又は欠失している、請求項1から3のいずれか一項に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項5】
Kv1.3阻害剤成分が、最大9個の置換、挿入、又は欠失によってPaT1とは異なり、いずれかの置換又は欠失は、次の位置でのみ行われ、PaT1と異なる場合:
位置1の残基は、N、P、I、V、H、Y、及びSから選択されるか、又は欠失しており;
位置2の残基は、Nle、I、V、L、T、Q、及びEから選択されるか、又は欠失しており;
位置3の残基は、E、S、及びNから選択されるか、又は欠失しており;
位置4の残基は、Nle、I、V、L、A、E、及びSから選択されるか、又は欠失しており;
位置5の残基は、K、Q、A、及びLから選択されるか、又は欠失しており;
位置7の残基はK、R及びQから選択され;
位置8の残基はI、H、S、L、Y及びGから選択され;
位置9の残基はA、Abu、P、F、V及びLから選択され;
位置10の残基はR、K及びPから選択され;
位置11の残基はQであり;
位置13の残基は、L、A、E、Q、I、K、H、及びGから選択され;
位置14の残基は、V、K、E、L及び2-アミノ-5-カルボキシペンタノイルから選択され;
位置15の残基はS及びLから選択され;
位置17の残基は、K、Y、R、Q、及びDから選択されるか、又は欠失しており;
位置18の残基は、D、A、Y、G、V、Q、hQ、及びLから選択されるか、又は欠失しており;
位置19の残基は、R、Y、及びQから選択されるか、又は欠失しており;
位置20の残基は、Y、E、及びRから選択されるか、又は欠失しており;
位置21の残基はR、H及びEから選択され;
位置22の残基はR、M、D、L及びCから選択され;
位置23の残基はR、K、hK、P及びGから選択され;
位置28の残基はNleであり;
位置30の残基はG及びDから選択され;
位置31の残基はD、Q、E及びHから選択され;
位置33の残基はH、V、D、Q及びRから選択され;
位置35の残基は、T、F(4-NH
2)、F(4-F)、F(4-NO
2)及びF(4-CH
3)から選択され;
位置36の残基はQ、S、及びGから選択されるか、又は欠失しており;
位置37の残基はK、S、及びCから選択されるか、又は欠失している、請求項4に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項6】
Kv1.3阻害剤成分が、最大9個の置換、挿入、又は欠失によってPaT1とは異なり、いずれかの置換又は欠失は、次の位置でのみ行われ、PaT1と異なる場合:
位置1の残基は、N、P、V、H、Y、及びSから選択されるか、又は欠失しており;
位置2の残基は、Nle、I、V、及びLから選択されるか、又は欠失しており;
位置3の残基は、E及びSから選択されるか、又は欠失しており;
位置4の残基は、Nle、I、V、L、E、及びSから選択されるか、又は欠失しており;
位置7の残基は、K及びRから選択され;
位置8の残基は、I及びHから選択され;
位置9の残基は、Abu及びLから選択され;
位置10の残基は、R及びKから選択され;
位置11の残基は、Qであり;
位置13の残基は、L、A、E、Q、V及びGから選択され;
位置14の残基は、V、K、E、L及び2-アミノ-5-カルボキシペンタノイルから選択され;
位置15の残基は、S及びLから選択され;
位置17の残基は、K、Y、及びRから選択されるか、又は欠失しており;
位置18の残基は、D、A、Y、G、V、Q、hQ、及びLから選択されるか、又は欠失しており;
位置19の残基は、R及びYから選択されるか、又は欠失しており;
位置20の残基は、Y、E、及びRから選択されるか、又は欠失しており;
位置21の残基は、R、H及びEから選択され;
位置22の残基は、R及びCから選択され;
位置23の残基は、R、K、hK、P及びGから選択され;
位置28の残基は、Nleであり;
位置30の残基は、Gであり;
位置33の残基は、H、V及びRから選択され;
位置35の残基は、F(4-NH
2)、F(4-F)、F(4-NO
2)及びF(4-CH
3)から選択され;
位置36の残基は、Q、S、及びGから選択されるか、又は欠失しており;
位置37の残基は、S及びCから選択されるか、又は欠失している、請求項5に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項7】
Kv1.3阻害剤成分が、PaT1の配列と比較して、3つ以下の欠失、2つ以下の欠失、又は1つ以下の欠失を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項8】
位置20~33のいずれもが欠失していない、請求項1から7のいずれか一項に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項9】
Kv1.3阻害剤成分が、2つ以上の欠失を含む場合、それらの欠失の1つが位置1にある、請求項1から8のいずれか一項に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項10】
Kv1.3阻害剤成分が、2つを超える欠失を含む場合、それらの欠失の2つが位置1及び2にある、請求項9に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項11】
Kv1.3阻害剤成分が、最大9個の置換、挿入、又は欠失によってPaT1とは異なり、いずれかの置換又は欠失は、次の位置でのみ行われ、PaT1と異なる場合:
位置1の残基は、N及びPから選択されるか、又は欠失しており;
位置2の残基は、Nle、I、V及びLであり;
位置3の残基は、E及びSから選択され;
位置4の残基は、Nle、I、V及びLであり;
位置8の残基は、Iであり;
位置10の残基は、Rであり;
位置11の残基は、Qであり;
位置13の残基は、Aであり;
位置14の残基は、Vであり;
位置18の残基は、D、Y及びAから選択され;
位置19の残基は、Rであり;
位置20の残基は、Yであり;
位置21の残基は、Rであり;
位置22の残基は、R及びCから選択され;
位置23の残基は、R及びGから選択され;
位置28の残基は、Nleであり;
位置30の残基は、Gであり;
位置33の残基は、Hであり;
位置37の残基は、Cである、請求項1から10のいずれか一項に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項12】
Kv1.3阻害剤成分が、PaT1の配列と比較して最大3つの挿入を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項13】
位置1の残基がQではない、請求項1から12のいずれか一項に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項14】
Kv1.3阻害剤成分が1N、1P又は1
*を含む、請求項13に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項15】
Kv1.3阻害剤成分の位置2、4及び28の残基の1つ、2つ、又は3つ全てがメチオニンではない、請求項1から14のいずれか一項に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項16】
次の残基の組み合わせ:
2
*+4Nle、4I、4V若しくは4L;
2Nle+4Nle、4I、4V若しくは4L;
2I+4Nle、4I、4V若しくは4L;
2V+4Nle、4I、4V若しくは4L;又は
2L+4Nle、4I、4V若しくは4Lの1つを含む、請求項15に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項17】
Kv1.3阻害剤が28Nleを含む、請求項1から16のいずれか一項に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項18】
Kv1.3阻害剤成分が残基22S+23I又は22R+23Gを含む、請求項1から17のいずれか一項に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項19】
Kv1.3阻害剤成分が残基13A及び/又は18Aを含む、請求項1から18のいずれか一項に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項20】
Kv1.3阻害剤成分が次の残基の組み合わせ:
2Nle+13A;
2Nle+18A;
2Nle+13A+18A;
2Nle+4Nle+13A+28Nle;
2Nle+4Nle+18A+28Nle;
2Nle+4Nle+13A+18A+28Nle;
2Nle+4Nle+28Nle;
2Nle+3E+4Nle+28Nle;
2Nle+3E+4Nle+18A+28Nle;
1P+2Nle+4Nle+28Nle;
1P+2Nle+3E+4Nle+28Nle;又は
1P+2Nle+3E+4Nle+18A+28Nle
の1つを含む、請求項19に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項21】
Kv1.3阻害剤成分が残基22C+37Cを含む、請求項1から20のいずれか一項に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項22】
Kv1.3阻害剤成分及び1つ又は複数の異種ポリペプチド配列を含む融合タンパク質である、請求項1から21のいずれか一項に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項23】
Kv1.3阻害剤成分が異種足場ポリペプチド内に挿入されている、請求項22に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項24】
イオンチャネル遮断剤が200アミノ酸、150アミノ酸、125アミノ酸、100アミノ酸、75アミノ酸又は50アミノ酸の最大長を有する、請求項1から23のいずれか一項に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項25】
式:
R
1-Z
1-X-Z
2-R
2
(式中、
R
1は水素、C
1~4アルキル、アセチル、ホルミル、ベンゾイル又はトリフルオロアセチルであり;
R
2はOH又はNH
2であり、
Xは、請求項1から24のいずれか一項に規定されるPaT1又はその変異体の配列を有するKv1.3阻害剤であり、
Z
1及びZ
2は独立して最大10アミノ酸残基の配列であり、
ただしイオンチャネル遮断剤は、50アミノ酸の最大長を有する)
を有する、請求項1から24のいずれか一項に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項26】
Z
1が配列GG又はSGを含むか又はからなる、請求項25に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項27】
Z
2が、配列RRTA、HRRK、QSKA、AGPR、RSRT、RHKR、GGKR、PKTA、TDAR、HRQQ、RPRH、ARNA、TGRK、HERT、NTRT、QRNG、AHRN、PRSA、QRQS、QRRK、ARAK、AKRD、RDKT、HRRK、RAKR、QRTR、ATRH、ARRS、AKTR、NRQR、若しくはPRNTを含むか又はからなる、請求項25又は26に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項28】
Kv1.3阻害剤成分が、配列:
【表1A】
【表1B】
【表1C】
【表1D】
【表1E】
の1つを含む、請求項1から27のいずれか一項に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項29】
配列:
【表2A】
【表2B】
【表2C】
【表2D】
【表2E】
【表2F】
の1つを含むか又はからなる、請求項1から28のいずれか一項に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項30】
【表3A】
【表3B】
【表3C】
【表3D】
【表3E】
から選択される、請求項1から29のいずれか一項に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項31】
請求項1から30のいずれか一項に記載のイオンチャネル遮断剤、Kv1.3阻害剤成分、又はペプチドZ
1-X-Z
2をコードする核酸。
【請求項32】
請求項31に記載の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項33】
請求項31に記載の核酸又は請求項32に記載の発現ベクターを含み、請求項1から27のいずれか一項に記載のイオンチャネル遮断剤、Kv1.3阻害剤成分、又はペプチドZ
1-X-Z
2を発現することができる、宿主細胞。
【請求項34】
請求項1から30のいずれか一項に記載のイオンチャネル遮断剤を合成する方法であって:
(a)固相又は液相ペプチド合成方法論を用いてイオンチャネル遮断剤を合成し、そのようにして得られたペプチドを回収する工程;
(b)イオンチャネル遮断剤をコードする核酸構築物からイオンチャネル遮断剤を発現させ、発現産物を回収する工程;又は
(c)前駆体ペプチド配列をコードする核酸構築物から前駆体ペプチドを発現させ、発現産物を回収し、前駆体ペプチドを修飾して、イオンチャネル遮断剤を生成する工程を含む、方法。
【請求項35】
薬学的に許容される担体と混合された、請求項1から30のいずれか一項に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物。
【請求項36】
医学的治療の方法における使用のための、請求項1から30のいずれか一項に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項37】
炎症を阻害又は低減する方法における使用のための、請求項1から30のいずれか一項に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項38】
炎症状態又は障害の治療における使用のための、請求項1から30のいずれか一項に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項39】
炎症状態又は障害が、自己免疫障害、アレルギー若しくは過敏症、同種移植片拒絶反応、又は移植片対宿主病である、請求項38に記載の使用のためのイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項40】
炎症状態又は疾患が、花粉症、喘息、アナフィラキシー、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、湿疹、円形脱毛症、皮膚筋炎、封入体筋炎、多発性筋炎、強直性脊椎炎、血管炎、関節炎(関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎を含む)、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、ブドウ膜炎、炎症性線維症(例えば、強皮症、肺線維症、肝硬変)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肝炎、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、炎症性腸疾患、大腸炎(例えば、クローン病及び潰瘍性大腸炎)、紅斑、甲状腺炎、乾癬、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、強皮症、糸球体腎炎、炎症性骨吸収、多発性硬化症、1型糖尿病、移植片拒絶又は移植片対宿主疾患である、請求項38又は請求項39に記載の使用のためのイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項41】
体重増加を阻害し、体重減少を促進し、過剰体重を減少させ、若しくは肥満を治療する方法における、又は肥満に関連する炎症、肥満に関連する胆嚢疾患若しくは肥満によって誘発される睡眠時無呼吸の治療における使用のための、請求項1から30のいずれか一項に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項42】
グルコース制御の障害によって引き起こされるか、又はそれに関連する状態の治療における使用のための、請求項1から30のいずれか一項に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項43】
状態がメタボリックシンドローム、インスリン抵抗性、耐糖能異常、糖尿病前症、空腹時血糖値の上昇又は2型糖尿病である、請求項42に記載の使用のためのイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項44】
平滑筋増殖性障害の治療における使用のための、請求項1から30のいずれか一項に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項45】
前記障害が再狭窄である、請求項44に記載の使用のためのイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項46】
神経炎症性又は神経変性障害の治療における使用のための、請求項1から30のいずれか一項に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項47】
前記障害がアルツハイマー病、多発性硬化症(MS)、パーキンソン病又は筋萎縮性側索硬化症(ALS)である、請求項46に記載の使用のためのイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項48】
癌の治療における使用のための、請求項1から30のいずれか一項に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項49】
前記癌が、乳癌、前立腺癌又はリンパ腫である、請求項48に記載の使用のためのイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項50】
前記リンパ腫が、非ホジキンリンパ腫(NHL)である、請求項49に記載の使用のためのイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【請求項51】
前記NHLが、大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、菌状息肉腫、未分化大細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、前駆Tリンパ芽球性リンパ腫又はセザリー症候群である、請求項50に記載のイオンチャネル遮断剤又は薬学的に許容される塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カリウムチャネルKv1.3の新規遮断剤、それをコードするポリヌクレオチド、並びにそれを作製及び使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
イオンチャネルは、生体膜に細孔を形成する膜タンパク質であり、関連する膜を通過するイオンの流れを可能にする(及び調節する)。イオンチャネルには多くの異なるタイプがあり、それらが通過を提供するイオンの種類、イオンの通過が調節される方法、又は「開閉」(例えば、「リガンド開閉」又は「電位開閉」)される方法、及びそれらの細胞局在又は細胞内局在等、さまざまな方法で分類できる。
【0003】
カリウムチャネルは、4つの主要なクラス、すなわち、電位開閉カリウムチャネル、カルシウム活性化カリウムチャネル、内向き整流カリウムチャネル、及びタンデム細孔ドメインカリウムチャネルに分類される。
【0004】
電位開閉カリウムチャネルは、他の電位開閉チャネルと同様に、膜貫通型電位に応答して開閉する。それらは、神経伝達物質の放出、心拍数、インスリン分泌、ニューロンの興奮性、上皮電解質の輸送、平滑筋の収縮、及び細胞の体積の調節を含む、多様な生物学的機能を備えた複雑なファミリーを代表している。
【0005】
Kv1.3(カリウム電位開閉チャネルサブファミリーAメンバー3)チャネルは、T細胞で発現し、T細胞の活性化を調節する役割を果たす。Kv1.3の遮断剤は、インビトロで活性化T細胞の増殖を阻害し(Cahalan及びChandy、Immunol. Rev. 231:59~87頁、2009年で概説)、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)、実験的関節炎、遅延型過敏症(DTH)、アレルギー性接触皮膚炎及び糸球体腎炎を含む、自己免疫疾患のさまざまな実験モデルで、T細胞依存性疾患の進行を阻害することが示されている。例えば、Rangarajuら(Expert Opin. Ther. Targets 13:909~24頁、2009年);Beetonら(Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 103:17414~9頁、2006年);Kooら(J. Immunol. 158:5120~8頁、1997年);Hyodoら(Am. J. Physiol. Renal Physiol. 299 : F1258~69頁、2010年)を参照されたい。国際公開第2016/112208号は、皮膚及び粘膜の炎症の治療のためのKv1.3遮断剤の局所適用を記載している。
【0006】
したがって、Kv1.3遮断剤は、自己免疫疾患を含む炎症性疾患の治療に使用できる相当な可能性がある。
【0007】
国際公開第2015/013330号は、シェーグレン症候群等の自己免疫状態によって引き起こされる場合を含む、ドライアイ及びブドウ膜炎等の眼の状態の治療のためのKv1.3遮断剤ペプチドの使用を提案している。
【0008】
Kv1.3の遮断剤は、例えば、エネルギー恒常性、体重調節、ブドウ糖制御に関連して、有益な代謝効果も持つ可能性がある。Kv1.3ノックアウト(Kv1.3(-/-))マウスは、対照同腹仔と比較して、高脂肪食に応答した体重増の減少、インスリン感受性の上昇、及び血漿グルコースレベルの低下減少を示す(Xuら、Hum. Mol. Genet. 12:551~9頁、2003年)。さらに、Kv1.3遮断剤は、グルコーストランスポーター4(GLUT4)の骨格筋及び脂肪組織での発現を増加させ、正常及びob/ob肥満マウスでのインスリン感受性を増加させ、インビトロで初代脂肪細胞でのグルコース取り込みを増加させることが示されている(Xuら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101:3112~7頁、2004年)。ヒトでは、Kv1.3遺伝子の一塩基多型(SNP)も、インスリン感受性の減少及び耐糖能障害に関連している(Tschritter、Clin Endocrinol Metab 91:654~8頁、2006年)。
【0009】
Kv1.3は、増殖しているヒト及びマウスの平滑筋細胞においても発現している。Kv1.3の遮断剤は、再狭窄等の平滑筋増殖性疾患、例えば、血管手術(例えば、血管形成術)後の患者に有効である可能性がある。Kv1.3遮断剤は、カルシウムの流入を阻害し、平滑筋細胞の遊走を低減し、エクスビボヒト静脈サンプルにおける新生内膜過形成を阻害することが示されている(Cheongら、Cardiovasc. Res. 89:282~9頁、2011年)。
【0010】
さらなる証拠は、Kv1.3チャネルが腫瘍細胞(Bielanskaら、Curr. Cancer Drug Targets 9:904~14頁、2009年)、ミクログリア(Khannaら、Am. J. Physiol. Cell Physiol. 280 :C796~806頁、2001年)及び神経前駆細胞の分化(Wangら、J. Neurosci. 30:5020~7頁、2010年)を含む多くのタイプの細胞の活性化及び/又は増殖に関与していることを示唆している。したがって、Kv1.3遮断剤は、神経炎症性及び神経変性疾患、並びに癌の治療に有益である可能性がある。
【0011】
Kv1.3は、Kv1.1からKv1.8と命名される、密接に関連したカリウムチャネルのサブファミリーの一部である。大きな相同ファミリーを扱う場合、遮断剤は、有効性と安全性を改善し、望ましくないオフターゲット効果を避けるために、所望のターゲットに対して可能な限り選択的かつ特異的であることが常に望ましい。今までに同定された最も特異的なKv1.3遮断剤は、ヘビ、クモ類(サソリやクモ等)、イソギンチャク等、さまざまなタイプの毒生物に由来する毒ペプチドである。このようなKv1.3遮断剤には、Chandyら、Trends in Pharmacol. Sci. 25:280~9頁、2004年により概説されるペプチドShK、Oskl、マルガトキシン(margatoxin)及びカリオトキシン(kaliotoxin)が含まれる。Abdel-Mottalebら、Toxicon 51:1424~30頁、2008年、及びMouhatら、Biochem. J. 385(Pt 1):95~104頁、2005年も参照されたい。
【0012】
特異性又は効力を含む特定の特性のために毒素ペプチドを遺伝子操作するためのさまざまな試みが、例えば、国際公開第2006/002850号、国際公開第2006/042151号、国際公開第2008/088422号、国際公開第2006/116156号、国際公開第2010/105184号、及び国際公開第2014/116937号に記載されている。
【0013】
しかしながら、代替のKv1.3遮断剤の必要性が残ったままである。安定性や効力等の他の特性の改善も有用であるかもしれないが、公知の遮断剤と比較して改善された特異性を有する遮断剤が特に望ましいかもしれない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2016/112208号
【特許文献2】国際公開第2015/013330号
【特許文献3】国際公開第2006/002850号
【特許文献4】国際公開第2006/042151号
【特許文献5】国際公開第2008/088422号
【特許文献6】国際公開第2006/116156号
【特許文献7】国際公開第2010/105184号
【特許文献8】国際公開第2014/116937号
【特許文献9】国際公開第98/11125号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Cahalan及びChandy、Immunol. Rev. 231:59~87頁、2009年
【非特許文献2】Rangarajuら(Expert Opin. Ther. Targets 13:909~24頁、2009年)
【非特許文献3】Beetonら(Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 103:17414~9頁、2006年)
【非特許文献4】Kooら(J. Immunol. 158:5120~8頁、1997年)
【非特許文献5】Hyodoら(Am. J. Physiol. Renal Physiol. 299 : F1258~69頁、2010年)
【非特許文献6】Xuら、Hum. Mol. Genet. 12:551~9頁、2003年
【非特許文献7】Xuら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101:3112~7頁、2004年
【非特許文献8】Tschritter、Clin Endocrinol Metab 91:654~8頁、2006年
【非特許文献9】Cheongら、Cardiovasc. Res. 89:282~9頁、2011年
【非特許文献10】Bielanskaら、Curr. Cancer Drug Targets 9:904~14頁、2009年
【非特許文献11】Khannaら、Am. J. Physiol. Cell Physiol. 280 :C796~806頁、2001年
【非特許文献12】Wangら、J. Neurosci. 30:5020~7頁、2010年
【非特許文献13】Chandyら、Trends in Pharmacol. Sci. 25:280~9頁、2004年
【非特許文献14】Abdel-Mottalebら、Toxicon 51:1424~30頁、2008年
【非特許文献15】Mouhatら、Biochem. J. 385(Pt 1):95~104頁、2005年
【非特許文献16】Wangら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 113(41)、11501~11506頁、2016年
【非特許文献17】Fields, G.B.ら、2002、“Principles and practice of solid-phase peptide synthesis". In: Synthetic Peptides(第2版)
【非特許文献18】Abdulら、Anticancer Res 23:3347頁、2003年
【非特許文献19】Fraserら、Pflugers Arch 446:559頁、2003年
【非特許文献20】Beetonら、Mol Pharmacol 67:1369頁、2005年
【非特許文献21】Kooら、Clin Immunol 197:99頁、1999年
【非特許文献22】Valverdeら、J Bone Mineral Res 19:155頁、2004年
【非特許文献23】Tarchaら、J. Pharmacol. Exp. Ther. 342:642頁、2012年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、アミノ酸配列:
QMDMRCSASVECKQKCLKAIGSIFGKCMNKKCKCYPR (PaT1);及び
QMDMRCSASVECKQKCLKAIGRGFGKCMNKKCKCYPR (PaT2);並びにその変異体を有するサソリパラブツス・トランスバアリクス(Parabuthus transvaalicus)由来のイオンチャネル遮断剤に関する。
【0017】
他の望ましい特性の中でも、これらの分子は、他の電位開閉カリウムチャネルよりもKv1.3に対して極めて選択的な遮断剤であることがわかっており、典型的には、Kv1.3チャネルでも高い効力を有する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
したがって、本発明は、Kv1.3阻害剤成分を含むイオンチャネル遮断剤又はその薬学的に許容される塩であって、上記Kv1.3阻害剤成分は:
PaT1の配列:
QMDMRCSASVECKQKCLKAIGSIFGKCMNKKCKCYPR;又は最大9個の置換、挿入、若しくは欠失によってPaT1とは異なるその変異体を含み、
いずれかの置換又は欠失は、位置1~5、7~11、13~15、17~23、25、28~31、33及び35~37から選択されるアミノ酸位置にあり;
上記Kv1.3阻害剤成分は、Kv1.3阻害剤活性を有し、Kv1.3に選択的である、イオンチャネル遮断剤又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0019】
したがって、イオンチャネル遮断剤のKv1.3阻害剤成分は、PaT1の配列と比較して最大9個のアミノ酸変化を含む可能性がある。他に特定されている場合を除き、これらの各々の9個の変更は、単一のアミノ酸の挿入、欠失、又は置換から独立して選択できる。一実施形態では、イオンチャネル遮断剤のKv1.3阻害剤成分は、PaT1の配列と比較して、9、8、7、6、5、4、3、2又は1個のアミノ酸変化を含み得る。一実施形態では、イオンチャネル遮断剤のKv1.3阻害剤成分は、PaT1の配列と比較して6個のアミノ酸変化を含む。
【0020】
PaT1のアミノ酸残基は、N末端からC末端の従来の方向で、1から33まで番号付けされる。本明細書を通じて、PaT1の変異体のアミノ酸位置は、PaT1と最適に整列している場合、PaT1の対応する位置に従って番号付けられる。したがって、特にPaT1と比較して1つ又は複数の挿入又は欠失を含む阻害剤については、いずれかの所与の残基の番号付けは、PaT1の対応する残基を反映し、必ずしも関連する配列におけるその線形位置を反映しない。
【0021】
特定の位置に存在する残基は、存在する残基の1文字のコード又は3文字のコードの横にある関連する位置の番号で示すことができる。したがって、1Q又はQ1(2つの形式は互換性がある)は、位置1のグルタミン(Q)残基を示し、2Nle、2[Nle]、Nle2、又は[Nle]2は、位置2のノルロイシン残基を示す。
【0022】
アスタリスクは、PaT1の配列に対する欠失の位置を示すために使用される場合がある。例えば、「1*」は、PaT1と比べて位置1の残基が欠失していることを示す。
【0023】
挿入は、単一の位置での連続する残基のストリングによって示される場合があり、例えば、「1QA」は、位置1でのグルタミン(Q)残基の後にアラニン(A)残基が挿入されることを示す。
【0024】
いくつかの実施形態では、位置28、31、34、35、36又は37の1つ又は複数が、PaT1の対応する位置と同一である、すなわち、関連する位置に存在する残基が、PaT1の対応する位置に存在する残基と同一であることが望ましい場合がある。例えば、位置28、31、34、及び35の1つ又は複数は、PaT1の対応する位置と同一である場合がある。いくつかの実施形態では、位置28、31、34、及び35の全ては、PaT1の対応する位置と同一であり、例えば、位置28、31、34、35、36、及び37の全ては、PaT1の対応する位置と同一である。
【0025】
PaT1と比較したいずれかの置換が、保守的な置換であることが望ましい場合がある。しかしながら、以下に提供する一般式のいずれかに列挙されるいずれかの置換は、それぞれの位置に導入することができる。
【0026】
分子のKv1.3阻害剤成分は、PaT1の配列:
QMDMRCSASVECKQKCLKAIGSIFGKCMNKKCKCYPRを含んでもよいし、
又は、最大9個の置換、挿入、又は欠失によってPaT1と異なっていてもよく、いずれかの置換又は欠失は、次の位置でのみ行われ、PaT1と異なる場合:
位置1の残基は、N、P、I、V、H、Y、及びSから選択されるか、又は欠失しており;
位置2の残基は、Nle、I、V、L、T、Q、及びEから選択されるか、又は欠失しており;
位置3の残基は、E、S、及びNから選択されるか、又は欠失しており;
位置4の残基は、Nle、I、V、L、A、E、及びSから選択されるか、又は欠失しており;
位置5の残基は、K、Q、A、L、E、及びDから選択されるか、又は欠失しており;
位置7の残基は、K、R、Q、E、F及びAから選択され;
位置8の残基は、I、H、S、L、Y及びGから選択され;
位置9の残基は、A、Abu、P、F、V及びLから選択され;
位置10の残基は、R、K、P、A、Q及びLから選択され;
位置11の残基は、Q及びDから選択され;
位置13の残基は、L、A、E、Q、I、K、H、D、V、及びGから選択され;
位置14の残基は、V、K、E、L、D及び2-アミノ-5-カルボキシペンタノイルから選択され;
位置15の残基は、S、L及びPから選択され;
位置17の残基は、K、Y、R、Q、D、V、及びEから選択されるか、又は欠失しており;
位置18の残基は、D、A、Y、G、V、Q、hQ、及びLから選択されるか、又は欠失しており;
位置19の残基は、R、Y、及びQから選択されるか、又は欠失しており;
位置20の残基は、Y、E、及びRから選択されるか、又は欠失しており;
位置21の残基は、R、H、E及びDから選択され;
位置22の残基は、R、M、D、L及びCから選択され;
位置23の残基は、R、K、hK、P、G及びHから選択され;
位置26の残基は、ホモリジンであり;
位置28の残基は、Nle、A及びLから選択され;
位置29の残基は、Vであり;
位置30の残基は、G及びDから選択され;
位置31の残基は、D、Q、E及びHから選択され;
位置33の残基は、H、V、D、Q及びRから選択され;
位置35の残基は、T、F(4-NH2)、F(4-F)、F(4-NO2)及びF(4-CH3)から選択され;
位置36の残基は、Q、S、及びGから選択されるか、又は欠失しており;
位置37の残基は、K、E、S、及びCから選択されるか、又は欠失している。
【0027】
分子のKv1.3阻害剤成分は、PaT1の配列:
QMDMRCSASVECKQKCLKAIGSIFGKCMNKKCKCYPRを含んでもよいし、
又は、最大9個の置換、挿入、又は欠失によってPaT1と異なっていてもよく、いずれかの置換又は欠失は、次の位置でのみ行われ、PaT1と異なる場合:
位置1の残基は、N、P、I、V、H、Y、及びSから選択されるか、又は欠失しており;
位置2の残基は、Nle、I、V、L、T、Q、及びEから選択されるか、又は欠失しており;
位置3の残基は、E、S、及びNから選択されるか、又は欠失しており;
位置4の残基は、Nle、I、V、L、A、E、及びSから選択されるか、又は欠失しており;
位置5の残基は、K、Q、A、L、E、及びDから選択されるか、又は欠失しており;
位置7の残基は、K、R、Q及びAから選択され;
位置8の残基は、I、H及びGから選択され;
位置9の残基は、A、Abu及びLから選択され;
位置10の残基は、R、K、P、A及びLから選択され;
位置11の残基は、Q及びDから選択され;
位置13の残基は、L、A、E、Q、I、K、H、D、V、及びGから選択され;
位置14の残基は、V、K、E、L、D及び2-アミノ-5-カルボキシペンタノイルから選択され;
位置15の残基は、S、L及びPから選択され;
位置17の残基は、K、Y、R、Q、D、V、及びEから選択されるか、又は欠失しており;
位置18の残基は、D、A、Y、G、V、Q、hQ、及びLから選択されるか、又は欠失しており;
位置19の残基は、R、Y、及びQから選択されるか、又は欠失しており;
位置20の残基は、Y、E、及びRから選択されるか、又は欠失しており;
位置21の残基は、R、H、E及びDから選択され;
位置22の残基は、R、M、D、L及びCから選択され;
位置23の残基は、R、K、hK、P、G及びHから選択され;
位置28の残基は、Nle、A及びLから選択され;
位置29の残基は、Vであり;
位置30の残基は、G及びDから選択され;
位置31の残基は、D、Q、E及びHから選択され;
位置33の残基は、H、V、D、Q及びRから選択され;
位置35の残基は、T、F(4-NH2)、F(4-F)、F(4-NO2)及びF(4-CH3)から選択され;
位置36の残基は、Q、S、及びGから選択されるか、又は欠失しており;
位置37の残基は、K、E、S、及びCから選択されるか、又は欠失している。
【0028】
いくつかの実施形態では、Kv1.3阻害剤成分は、最大9個の置換、挿入、又は欠失によってPaT1と異なっていてもよく、いずれかの置換又は欠失は、次の位置でのみ行われ、PaT1と異なる場合:
位置1の残基は、N、P、I、V、H、Y、及びSから選択されるか、又は欠失しており;
位置2の残基は、Nle、I、V、L、T、Q、及びEから選択されるか、又は欠失しており;
位置3の残基は、E、S、及びNから選択されるか、又は欠失しており;
位置4の残基は、Nle、I、V、L、A、E、及びSから選択されるか、又は欠失しており;
位置5の残基は、K、Q、A、及びLから選択されるか、又は欠失しており;
位置7の残基はK、R及びQから選択され;
位置8の残基はI、H、S、L、Y及びGから選択され;
位置9の残基はA、Abu、P、F、V及びLから選択され;
位置10の残基はR、K及びPから選択され;
位置11の残基はQであり;
位置13の残基は、L、A、E、Q、I、K、H、及びGから選択され;
位置14の残基は、V、K、E、L及び2-アミノ-5-カルボキシペンタノイルから選択され;
位置15の残基はS及びLから選択され;
位置17の残基は、K、Y、R、Q、及びDから選択されるか、又は欠失しており;
位置18の残基は、D、A、Y、G、V、Q、hQ、及びLから選択されるか、又は欠失しており;
位置19の残基は、R、Y、及びQから選択されるか、又は欠失しており;
位置20の残基は、Y、E、及びRから選択されるか、又は欠失しており;
位置21の残基はR、H及びEから選択され;
位置22の残基はR、M、D、L及びCから選択され;
位置23の残基はR、K、hK、P及びGから選択され;
位置28の残基はNleであり;
位置30の残基はG及びDから選択され;
位置31の残基はD、Q、E及びHから選択され;
位置33の残基はH、V、D、Q及びRから選択され;
位置35の残基は、T、F(4-NH2)、F(4-F)、F(4-NO2)及びF(4-CH3)から選択され;
位置36の残基はQ、S、及びGから選択されるか、又は欠失しており;
位置37の残基はK、S、及びCから選択されるか、又は欠失している。
【0029】
いくつかの実施形態では、Kv1.3阻害剤成分は、最大9個の置換、挿入、又は欠失によってPaT1と異なっていてもよく、いずれかの置換又は欠失は、次の位置でのみ行われ、PaT1と異なる場合:
位置1の残基は、N、P、I、V、H、Y、及びSから選択されるか、又は欠失しており;
位置2の残基は、Nle、I、V、L、T、Q、及びEから選択されるか、又は欠失しており;
位置3の残基は、E、S、及びNから選択されるか、又は欠失しており;
位置4の残基は、Nle、I、V、L、A、E、及びSから選択されるか、又は欠失しており;
位置5の残基は、K、Q、A、及びLから選択されるか、又は欠失しており;
位置7の残基はK、R及びQから選択され;
位置8の残基はI、H及びGから選択され;
位置9の残基はA、Abu及びLから選択され;
位置10の残基はR、K及びPから選択され;
位置11の残基はQであり;
位置13の残基は、L、A、E、Q、I、K、H、及びGから選択され;
位置14の残基は、V、K、E、L及び2-アミノ-5-カルボキシペンタノイルから選択され;
位置15の残基はS及びLから選択され;
位置17の残基は、K、Y、R、Q、及びDから選択されるか、又は欠失しており;
位置18の残基は、D、A、Y、G、V、Q、hQ、及びLから選択されるか、又は欠失しており;
位置19の残基は、R、Y、及びQから選択されるか、又は欠失しており;
位置20の残基は、Y、E、及びRから選択されるか、又は欠失しており;
位置21の残基はR、H及びEから選択され;
位置22の残基はR、M、D、L及びCから選択され;
位置23の残基はR、K、hK、P及びGから選択され;
位置28の残基はNleであり;
位置30の残基はG及びDから選択され;
位置31の残基はD、Q、E及びHから選択され;
位置33の残基はH、V、D、Q及びRから選択され;
位置35の残基は、T、F(4-NH2)、F(4-F)、F(4-NO2)及びF(4-CH3)から選択され;
位置36の残基はQ、S、及びGから選択されるか、又は欠失しており;
位置37の残基はK、S、及びCから選択されるか、又は欠失している。
【0030】
上記分子のKv1.3阻害剤成分は、PaT1の配列:
QMDMRCSASVECKQKCLKAIGSIFGKCMNKKCKCYPRを含んでもよいし、
又は、最大9つの置換、挿入、又は欠失によってPaT1と異なってもよく、いずれかの置換又は欠失は、次の位置でのみ行われ、PaT1と異なる場合:
位置1の残基は、N、P、V、H、Y、及びSから選択されるか、又は欠失しており;
位置2の残基は、Nle、I、V、及びLから選択されるか、又は欠失しており;
位置3の残基は、E及びSから選択されるか、又は欠失しており;
位置4の残基は、Nle、I、V、L、E、及びSから選択されるか、又は欠失しており;
位置5の残基は、Kであるか、又は欠失しており;
位置7の残基は、K及びRから選択され;
位置8の残基は、I及びHから選択され;
位置9の残基は、Abu及びLから選択され;
位置10の残基は、R及びKから選択され;
位置11の残基は、Qであり;
位置13の残基は、L、A、E、Q、V及びGから選択され;
位置14の残基は、V、K、E、L及び2-アミノ-5-カルボキシペンタノイルから選択され;
位置15の残基は、S及びLから選択され;
位置17の残基は、K、Y、及びRから選択されるか、又は欠失しており;
位置18の残基は、D、A、Y、G、V、Q、hQ、及びLから選択されるか、又は欠失しており;
位置19の残基は、R及びYから選択されるか、又は欠失しており;
位置20の残基は、Y、E、及びRから選択されるか、又は欠失しており;
位置21の残基は、R、H及びEから選択され;
位置22の残基は、R及びCから選択され;
位置23の残基は、R、K、hK、P及びGから選択され;
位置28の残基は、Nleであり;
位置30の残基は、Gであり;
位置33の残基は、H、V及びRから選択され;
位置35の残基は、F(4-NH2)、F(4-F)、F(4-NO2)及びF(4-CH3)から選択され;
位置36の残基は、Q、S、及びGから選択されるか、又は欠失しており;
位置37の残基は、S及びCから選択されるか、又は欠失している。
【0031】
いくつかの実施形態では、上記分子のKv1.3阻害剤成分は、PaT1の配列:
QMDMRCSASVECKQKCLKAIGSIFGKCMNKKCKCYPRを含むか、
又は、最大9つの置換、挿入、又は欠失によってPaT1とは異なり、いずれかの置換又は欠失は、次の位置でのみ行われ、PaT1と異なる場合:
位置1の残基は、N及びPから選択されるか、又は欠失しており;
位置2の残基は、Nle、I、V及びLであり;
位置3の残基は、E及びSから選択され;
位置4の残基は、Nle、I、V及びLであり;
位置8の残基は、Iであり;
位置10の残基は、Rであり;
位置11の残基は、Qであり;
位置13の残基は、Aであり;
位置14の残基は、Vであり;
位置18の残基は、D、Y及びAから選択され;
位置19の残基は、Rであり;
位置20の残基は、Yであり;
位置21の残基は、Rであり;
位置22の残基は、R及びCから選択され;
位置23の残基は、R及びGから選択され;
位置28の残基は、Nleであり;
位置30の残基は、Gであり;
位置33の残基は、Hであり;
位置37の残基は、Cである。
【0032】
いくつかの実施形態では、本発明は、Kv1.3阻害剤成分を含むイオンチャネル遮断剤又はその薬学的に許容される塩であって、上記Kv1.3阻害剤成分は:
PaT1の配列:
QMDMRCSASVECKQKCLKAIGSIFGKCMNKKCKCYPR;
若しくは、PaT1の配列と少なくとも75%の同一性を有する配列を含み、PaT1の配列とのいずれかの差異は、位置1~5、7~11、13~15、17~23、25、28~31、33及び35~37から選択されるアミノ酸位置にあり;
上記Kv1.3阻害剤成分は、Kv1.3阻害剤活性を有し、Kv1.3に選択的である、イオンチャネル遮断剤又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0033】
いくつかの実施形態では、Kv1.3阻害剤成分は、PaT1の配列と少なくとも75%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、Kv1.3阻害剤成分は、PaT1の配列と少なくとも80%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、Kv1.3阻害剤成分は、PaT1の配列と少なくとも85%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、Kv1.3阻害剤成分は、PaT1の配列と少なくとも90%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、Kv1.3阻害剤成分は、PaT1の配列と少なくとも95%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、Kv1.3阻害剤成分は、PaT1の配列と少なくとも97%の同一性を有する。
【0034】
Kv1.3阻害剤成分は、PaT1の配列と比較して1つ又は複数の挿入又は欠失を含み得る。
【0035】
典型的には、Kv1.3阻害剤成分は、PaT1の配列と比較して、最大3つの挿入、例えば、正確に3つの挿入、正確に2つの挿入、又は正確に1つの挿入を含む。
【0036】
複数のアミノ酸の挿入が許容され得るが、典型的には、単一のアミノ酸のみがいずれかの所与の部位に挿入される。誤解を避けるために、同じ部位への2つのアミノ酸の挿入は、2つの挿入と見なされ、したがって、PaT1の配列との許容される差異の2つと見なされる。
【0037】
典型的には、Kv1.3阻害剤成分は、PaT1の配列と比較して7つ以下の欠失、例えば、6つ以下、5つ以下、4つ以下、3つ以下、2つ以下の欠失、1つ以下の欠失を含むか、又は全く欠失が無い。
【0038】
システイン残基の間隔、したがってジスルフィド結合のパターンを維持するために、6位(6C)のシステイン残基と34位(34C)のシステイン残基との間に挿入及び欠失が位置しないことが望ましい場合がある。したがって、いずれかの挿入又は欠失は、好ましくは、6CのN末端又は34CのC末端に位置し得る。
【0039】
しかしながら、Kv1.3阻害剤成分が6Cと34Cの間に1つ又は複数の挿入又は欠失を含む場合は、例えば、システイン残基の相対的な間隔を回復するために、その領域内に同じ数の挿入と欠失の両方を組み込むことが望ましい場合がある。
【0040】
多くの実施形態では、Kv1.3阻害剤成分は、PaT1の配列と比較して挿入を有さない。
【0041】
6Cと34Cの間に欠失が存在する場合、そのような欠失が1つのみ存在することが望ましい場合がある。特に、分子が、システイン残基の間隔を維持するための対応する挿入を含んでいない場合は、それは、例えば、位置17、18、19、又は20である可能性がある。
【0042】
理論に束縛されることを望まないが、複数の欠失は、N末端配列(残基1~5)及びC末端配列(残基36~37)においてよりよく許容され得ると考えられている。これらの領域では、複数の欠失が許容される場合がある。N末端配列(位置1~5)の欠失について、位置Xの残基が欠失している場合、その残基のN末端の全ての残基もまた欠失していることが望ましい場合がある。したがって、例えば、残基1、1及び2、1から3、1から4又は1から5が欠失している場合がある。C末端(位置36~37)での欠失について、位置36の残基が欠失している場合、位置37の残基もまた欠失していることが望ましい場合がある。したがって、例えば、残基37、又は36及び37が欠失している場合がある。
【0043】
誤解を避けるために、2つの連続するアミノ酸の欠失は、2つのアミノ酸の欠失と見なされ、したがって、PaT1の配列からの許容される差異の2つと見なされる。
【0044】
グルタミン(Q)残基は、インビボ又はインビトロのいずれか、例えば水溶液中での保存の間に、不安定になる可能性がある。側鎖が遊離アルファアミノ基と立体的に相互作用することができ、ピログルタミン酸への脱水をもたらす可能性があるため、これは、グルタミン残基が分子のN末端に位置する場合に特に関連する可能性がある。したがって、特にイオンチャネル遮断剤がKv1.3阻害剤のN末端に追加の配列を含まない場合は、位置1の残基がQではないことが望ましい場合がある。例えば、位置1の残基は、N又はPであってもよいし、又は欠失していてもよく、すなわち、Kv1.3阻害剤は、1N、1P又は1*を含み得る。
【0045】
追加的に、又は代替的に、メチオニン(M)残基は酸化を受けやすいため、位置2、4及び28の残基の1つ、2つ、又は3つ全てがMではないことが望ましい場合がある。好ましくは、1つ、2つ、又は全ての3つのメチオニン残基は、酸化不能な側鎖を有する残基で個別に置換されるか、又は欠失している。酸化不能な残基を有するいずれかの適切な残基を使用してもよいが、Nle、I、V及びLが特に適している。
【0046】
位置2、4、及び28の一部又は全ての残基の適切な組み合わせとしては:
2*+4Nle、4I、4V又は4L;
2Nle+4Nle、4I、4V又は4L;
2I+4Nle、4I、4V又は4L;
2V+4Nle、4I、4V又は4L;
2L+4Nle、4I、4V又は4Lが含まれる。
【0047】
上記のいずれも28Nleと組み合わせることができる。
【0048】
2Nle+4Nle+28Nleが特に好ましい場合がある。
【0049】
いくつかの実施形態では、Kv1.3阻害剤成分は、残基22S+23I又は22R+23Gを含む。
【0050】
位置1、2、4、及び28での差異に加えて、Kv1.3阻害剤成分には、PaT1の配列から、さらに4つの差異のみ、さらに3つの差異のみ、されに2つの差異のみ、又はさらに1つの差異のみが含まれることが望ましい場合がある。
【0051】
Kv1.3阻害剤成分は、位置1、2、4、及び28を除いた全ての位置で、PaT1又はPaT2と同一である場合がある。
【0052】
追加的に、又は代替的に、Kv1.3阻害剤成分は、残基13A及び/又は18Aを含んでもよい。
【0053】
例えば、それは、
2Nle+13A;
2Nle+18A、又は
2Nle+13A+18Aを含んでもよい。
【0054】
例えば、それは、
2Nle+4Nle+13A+28Nle;
2Nle+4Nle+18A+28Nle;又は
2Nle+4Nle+13A+18A+28Nleを含んでもよい。
【0055】
上記のいずれかは、1*と組み合わせてもよい。
【0056】
Kv1.3阻害剤成分は、位置2、3、及び4を除いた全ての位置で、PaT1又はPaT2と同一である場合がある。
【0057】
追加的に、又は代替的に、Kv1.3阻害剤成分は、残基1P及び/又は18Aを含んでもよい。
【0058】
例えば、それは、
2Nle+4Nle+28Nle;
2Nle+3E+4Nle+28Nle;
2Nle+3E+4Nle+18A+28Nle;
1P+2Nle+4Nle+28Nle;
1P+2Nle+3E+4Nle+28Nle;又は
1P+2Nle+3E+4Nle+18A+28Nleを含んでもよい。
【0059】
追加的に、又は代替的に、上記のいずれかは、22C+37C、すなわち、ジスルフィド結合を形成することができる位置22及び37の残基と組み合わせてもよい。
【0060】
イオンチャネル遮断剤は、Kv1.3阻害剤成分のN末端及び/又はC末端に追加のアミノ酸配列を含んでもよい。例えば、イオンチャネル遮断剤は、Kv1.3阻害剤及び異種成分と呼ばれ得る1つ又は複数の異種ペプチド又はポリペプチド配列を含む融合タンパク質であってもよい。異種成分は、例えば、組換え発現を促進するか、溶解度を増加するか、又はインビボでの半減期を延長するのに役立ち得る。適切な異種成分には、ヒト血清アルブミン(HSA)、抗体Fcドメイン等が含まれる。
【0061】
他の異種成分には、ポリヒスチジンタグ、FLAGタグ、Mycタグのようなタグが含まれる。
【0062】
イオンチャネル遮断剤は、Kv1.3阻害剤と異種成分との間に位置するリンカーペプチドを含んでもよい。
【0063】
さまざまな成分は、いずれの適切な方向であってよい。例えば、間にリンカー(存在する場合)を伴って、異種成分のN末端にKv1.3阻害剤が位置してもよいし、又はKv1.3阻害剤のN末端に異種成分が位置してもよい。
【0064】
ペプチドリンカーは、典型的には、3~30アミノ酸の長さであり、分子の水溶性を損なうことなく要求された柔軟性を提供するために、小さくて親水性のアミノ酸残基(例えば、グリシンやセリン)の割合が高い。例えば、それは、少なくとも50%のグリシン及びセリン残基、少なくとも60%のグリシン及びセリン残基、少なくとも70%のグリシン及びセリン残基、少なくとも80%のグリシン及びセリン残基、又は少なくとも90%のグリシン及びセリン残基を含んでもよい。それは、Kv1.3阻害剤及び異種成分の分離を可能にするプロテアーゼ切断部位を含んでもよい。
【0065】
Kv1.3阻害剤は、異種ポリペプチド内に挿入することもでき、これは、Kv1.3阻害剤の「足場」と見なすことができる。そのような場合、イオンチャネル遮断剤は、Kv1.3阻害剤のN末端及びC末端の異種成分を含むと見なすことができ、異種成分は同じ分子に由来し、互いに相互作用して、例えば、Kv1.3阻害剤がその表面に提示された、足場に折りたたまれる。したがって、Kv1.3阻害剤は、異種タンパク質の表面ループ内に、例えば、抗原結合ドメインを含む抗体のCDR配列又はそのフラグメント中に挿入されてもよい。Kv1.3阻害剤は、呼吸器合胞体ウイルスに対して向けられた「Syn」と命名されたヒト化免疫グロブリンのCDR(例えば、CDR3L)に挿入されたときに活性を保持することが実証されている。(Wangら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 113(41)、11501~11506頁、2016年)。したがって、Syn抗体又は抗原結合ドメインを含むそのフラグメントを足場として使用することができる。抗体足場がFcドメインを含む場合、これが機能的に「Fcヌル」であること、すなわち、Fc受容体に結合することができないことが望ましい場合がある。そのような変異は、前掲のWangらにより記載されている。
【0066】
いくつかの実施形態では、イオンチャネル遮断剤は、最大200アミノ酸、例えば、150アミノ酸、125アミノ酸、100アミノ酸、75アミノ酸又は50アミノ酸、例えば、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40、39、38、若しくは37アミノ酸、又は、Kv1.3阻害剤成分がPaT1の配列と比較して1つ又は複数の欠失を含む場合はさらに短い長さを有し得る。
【0067】
イオンチャネル遮断剤は、N末端に最大10個の追加の残基、例えば、N末端に1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の追加の残基をさらに含み得る。追加的に、又は代替的に、イオンチャネル遮断剤は、分子が50アミノ酸以下の長さであるという制約で、C末端に最大10個の残基、例えば、C末端に1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の追加の残基をさらに含み得る。
【0068】
例えば、N末端の追加の配列は、配列GG又はSGを含み得るか、又はそれからなり得る。追加的に、又は代替的に、C末端の追加の配列は、配列RRTA、HRRK、QSKA、AGPR、RSRT、RHKR、GGKR、PKTA、TDAR、HRQQ、RPRH、ARNA、TGRK、HERT、NTRT、QRNG、AHRN、PRSA、QRQS、QRRK、ARAK、AKRD、RDKT、HRRK、RAKR、QRTR、ATRH、ARRS、AKTR、NRQR、PRNT、例えばRRTA又はHRRKを含み得るか、又はそれらからなり得る。これらの配列の全ては、Odk2類似体のC末端に付加された場合に、Kv1.3阻害剤の活性及び選択性と互換性があることが示されている(国際公開第12014/116937号を参照されたい)。
【0069】
したがって、本発明はまた、式:
R1-Z1-X-Z2-R2
(式中、
R1は、水素、C1~4アルキル、アセチル、ホルミル、ベンゾイル若しくはトリフルオロアセチルであり;
R2は、OH、NH2若しくはCH2OHであり、
Xは、上記のPaT1若しくはその変異体の配列を有するKv1.3阻害剤であり、
Z1及びZ2は、独立して最大10アミノ酸残基の配列であり、
ただしイオンチャネル遮断剤は、50アミノ酸の最大長を有する)
を有するイオンチャネル遮断剤又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0070】
上記のように、Z1は、配列GG若しくはSGを含み得るか、又はそれらからなり得る。
【0071】
追加的に、又は代替的に、Z2は、RRTA、HRRK、QSKA、AGPR、RSRT、RHKR、GGKR、PKTA、TDAR、HRQQ、RPRH、ARNA、TGRK、HERT、NTRT、QRNG、AHRN、PRSA、QRQS、QRRK、ARAK、AKRD、RDKT、HRRK、RAKR、QRTR、ATRH、ARRS、AKTR、NRQR、PRNT、例えばRRTA若しくはHRRKの配列を含み得るか、又はそれらからなり得る。
【0072】
追加的に、又は代替的に、R2は、CH2OHであり得、(4-アミノ-5-ヒドロキシペンチル)グアニジン又は4-アミノ-5-ヒドロキシペンタンアミドに含まれ得る。
【0073】
上記分子のKv1.3阻害剤成分は、一緒になって、残基6Cと27C、残基12Cと32C、及び残基16Cと34Cの間に3つのジスルフィド結合を形成する6つのシステイン(C)残基を含む。これらの結合は、Kv1.3阻害剤のコンフォメーション及び活性にとって重要であると考えられている。
【0074】
ジスルフィド結合は、PaT1を参照することにより、以下:
QMDMR[C(1)]SASVE[C(2)]KQK[C(3)]LKAIGSIFGK[C(1)]MNKK[C(2)]K[C(3)]YPR
のように図式的に示すことができ、式中、ジスルフィド結合と一緒に関わるシステイン残基のペアは、括弧内に同じ数字で示される。同様の表記法は、本出願のいずれかの他の配列に適用できる。文脈が別途要求する場合を除き、活性阻害剤化合物は、適切なジスルフィド結合を含むことを理解されたい。
【0075】
他のシステイン残基が置換によってKv1.3阻害剤成分に導入されないことが望ましい場合がある。追加的に、又は代替的に、システイン残基がどのN末端又はC末端の追加の配列にも存在しないことが望ましい場合がある。したがって、いくつかの実施形態では、上記分子は、PaT1の位置6、12、16、27、32及び34にあるものを除いて、他のシステイン残基を含まない。
【0076】
しかしながら、いくつかの実施形態では、阻害剤成分は、残基6C及び27C、残基12C及び32C、残基16C及び34C、並びにPat1の位置22及び37に対応する位置のシステイン残基の間で、4個のジスルフィド結合を一緒に形成する、8個のシステイン残基を含む。化合物87はそのような分子の例であり、ジスルフィド結合は次のように図式的に示すことができる:
H-S[Nle]D[Nle]R[C(1)]SASVE[C(2)]KQK[C(3)]LAAIG[C(4)]IFGK[C(1)][Nle]NKK[C(2)]K[C(3)]YP[C(4)]-NH2
【0077】
同様の表記法は、4つのペアのジスルフィド結合を有する他の化合物にも適用できる。
【0078】
したがって、阻害剤は、典型的には、位置22及び37にシステイン残基を有するか、位置22及び37のいずれもシステイン残基ではない(すなわち、位置22及び37の両方がシステインではない)。
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
イオンチャネル遮断剤は、次の配列のいずれかを含み得るか、又はからなり得る:
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
いくつかの実施形態では、イオンチャネル遮断剤は:
QMDMRCSASVECKQKCLKAIGSIFGKCMNKKCKCYPR、又は
QMDMRCSASVECKQKCLKAIGRGFGKCMNKKCKCYPRの配列を有さない。
【0091】
いくつかの実施形態では、R1はHであり、R2はNH2又はOHである。いくつかの実施形態では、R2がOHであることが望ましい場合がある。
【0092】
イオンチャネル遮断剤には、次のものが含まれる:
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
一実施形態では、本発明のイオンチャネル遮断剤は:
H-P[Nle]E[Nle]RCSASVECKQKCLAAIGSIFGKC[Nle]NKKCKCYPR-OH (化合物97)である。
【0099】
いくつかの実施形態では、イオンチャネル遮断剤は:
H-QMDMRCSASVECKQKCLKAIGSIFGKCMNKKCKCYPR-OH (化合物1)
又は
H-QMDMRCSASVECKQKCLKAIGRGFGKCMNKKCKCYPR-OH (化合物2)ではない。
【0100】
本発明は、記載されるようなイオンチャネル遮断剤、Kv1.3阻害剤、又はペプチドZ1-X-Z2をコードする核酸をさらに提供する。
【0101】
本発明はまた、本発明の核酸を含む発現ベクターを提供する。
【0102】
本発明は、本発明の核酸又は発現ベクターを含み、記載されるようなイオンチャネル遮断剤、Kv1.3阻害剤、又はペプチドZ1-X-Z2を発現することができる宿主細胞をさらに含む。宿主細胞は、記載されるようなイオンチャネル遮断剤、Kv1.3阻害剤、又はペプチドZ1-X-Z2を分泌することができる場合がある。
【0103】
本発明は:
(a)固相又は液相ペプチド合成方法を用いてイオンチャネル遮断剤を合成し、そのようにして得られたペプチドを回収する工程;
(b)イオンチャネル遮断剤をコードする核酸構築物からイオンチャネル遮断剤を発現させ、発現産物を回収する工程;又は
(c)前駆体ペプチド配列をコードする核酸構築物から前駆体ペプチドを発現させ、発現産物を回収し、前駆体ペプチドを修飾してイオンチャネル遮断剤を生成する工程を含む、本発明のイオンチャネル遮断剤を合成する方法をさらに提供する。
【0104】
本発明は、本発明のイオンチャネル遮断剤又はその薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される担体との混合物として含む、医薬組成物をさらに提供する。
【0105】
本発明は、医学的治療の方法における使用のための、本発明のイオンチャネル遮断剤又はその薬学的に許容される塩をさらに提供する。
【0106】
本発明は、炎症を阻害又は低減する方法、特に自己免疫障害を含む炎症状態又は障害の治療における使用のための、本発明のイオンチャネル遮断剤又はその薬学的に許容される塩をさらに提供する。
【0107】
炎症状態又は障害は、例えば、炎症が症状又は病因に寄与する場合等、炎症の軽減が望ましいいずれかの状態又は障害であり得る。
【0108】
そのような状態には、自己免疫疾患、アレルギー及び過敏症、同種移植片拒絶、並びに移植片対宿主病が含まれる。
【0109】
特定の状態には、花粉症、喘息、アナフィラキシー、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、湿疹、円形脱毛症、皮膚筋炎、封入体筋炎、多発性筋炎、強直性脊椎炎、血管炎、関節炎(関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎を含む)、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス(SLE、又は単に「ループス」)、及びブドウ膜炎、炎症性線維症(例えば、強皮症、肺線維症、肝硬変)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肝炎、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、炎症性腸疾患、大腸炎(クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む)、紅斑、甲状腺炎、乾癬、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、強皮症、糸球体腎炎、炎症性骨吸収、多発性硬化症、1型糖尿病、移植片拒絶並びに移植片対宿主疾患が含まれる。
【0110】
本発明は、体重増加を阻害し、体重減少を促進し、過剰体重を減少させ、又は肥満を治療する方法(例えば、食欲、摂食、食物摂取、カロリー摂取量、及び/又はエネルギー消費量の制御による)における、又は肥満に関連する炎症、肥満に関連する胆嚢疾患又は肥満によって誘発される睡眠時無呼吸の治療における使用のための、本発明のイオンチャネル遮断剤又はその薬学的に許容される塩をさらに提供する。
【0111】
体重への影響は、治療的又は美容的であってもよい。
【0112】
本発明は、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性、耐糖能異常、糖尿病前症、空腹時血糖値の上昇又は2型糖尿病等のグルコース制御障害によって引き起こされるか又はそれに関連する状態の治療に使用するための、本発明のイオンチャネル遮断剤又はその薬学的に許容される塩をさらに提供する。
【0113】
本発明は、例えば、血管手術(例えば、血管形成術)後の患者における再狭窄等の平滑筋増殖性障害の治療に使用するための、本発明のイオンチャネル遮断剤又はその薬学的に許容される塩をさらに提供する。
【0114】
本発明は、アルツハイマー病、多発性硬化症(MS)、パーキンソン病又は筋萎縮性側索硬化症(ALS)等の神経炎症性又は神経変性障害(例えば、ウイルス感染後)の治療に使用するための、本発明のイオンチャネル遮断剤又はその薬学的に許容される塩をさらに提供する。
【0115】
本発明はさらに、癌、例えば、乳がん、前立腺がん、又は非ホジキンリンパ腫(NHL)等のリンパ腫の治療に使用するための、本発明のイオンチャネル遮断剤又はその薬学的に許容される塩を提供する。NHLには、T細胞NHL及びB細胞NHLが含まれる。
【0116】
B細胞NHLの形態には、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、及びマントル細胞リンパ腫が含まれる。T細胞NHLの形態には、菌状息肉腫、未分化大細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、前駆Tリンパ芽球性リンパ腫、及びセザリー症候群が含まれる。
【0117】
本発明は、特に自己免疫障害を含む炎症状態又は障害の治療において、炎症を阻害又は低減するための医薬の調製における、本発明のイオンチャネル遮断剤又はその薬学的に許容される塩の使用をさらに提供する。そのような状態のさらなる詳細は上に述べられている。
【0118】
本発明は、体重増加の阻害、体重減少の促進、過剰体重の減少、又は肥満の治療(例えば、食欲、摂食、食物摂取、カロリー摂取、及び/又はエネルギー消費の制御による)、又は肥満に関連する炎症、肥満に関連する胆嚢疾患又は肥満によって誘発される睡眠時無呼吸の治療に使用するための医薬の調製における、本発明のイオンチャネル遮断剤又はその薬学的に許容される塩の使用をさらに提供する。
【0119】
本発明は、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性、耐糖能異常、糖尿病前症、空腹時血糖値の上昇、又は2型糖尿病等のグルコース制御障害によって引き起こされるか又はそれに関連する状態の治療のための、医薬の調製における本発明のイオンチャネル遮断剤又はその薬学的に許容される塩の使用をさらに提供する。
【0120】
本発明は、例えば、血管手術(例えば血管形成術)後の患者における再狭窄等の平滑筋増殖性障害の治療のための医薬の調製における、本発明のイオンチャネル遮断剤又はその薬学的に許容される塩の使用をさらに提供する。
【0121】
本発明は、アルツハイマー病、多発性硬化症(MS)、パーキンソン病又は筋萎縮性側索硬化症(ALS)等の神経炎症性又は神経変性障害(例えば、ウイルス感染後)の治療のための医薬の調製における、本発明のイオンチャネル遮断剤又はその薬学的に許容される塩の使用をさらに提供する。
【0122】
本発明は、癌、例えば、乳がん、前立腺がん、又は非ホジキンリンパ腫(NHL)等のリンパ腫の治療のための医薬の調製における、本発明のイオンチャネル遮断剤又はその薬学的に許容される塩の使用をさらに提供する。
【0123】
本発明は、本発明のイオンチャネル遮断剤又はその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象に投与することを含む、(特に、自己免疫障害を含む炎症状態又は障害の治療における)炎症を阻害又は低減する方法をさらに提供する。そのような状態のさらなる詳細は上に述べられている。
【0124】
本発明は、本発明のイオンチャネル遮断剤又はその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象に投与することを含む、体重増加を阻害し、体重減少を促進し、過剰体重を減少させ、若しくは肥満を治療する(例えば、食欲、摂食、食物摂取、カロリー摂取、及び/又はエネルギー消費の制御による)、又は肥満に関連する炎症、肥満に関連する胆嚢疾患又は肥満によって誘発される睡眠時無呼吸を治療する方法をさらに提供する。
【0125】
本発明は、本発明のイオンチャネル遮断剤又はその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象に投与することを含む、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性、耐糖能異常、糖尿病前症、空腹時血糖値の上昇又は2型糖尿病等のグルコース制御障害によって引き起こされるか又はそれに関連する状態を治療する方法をさらに提供する。
【0126】
本発明は、例えば、血管手術(例えば血管形成術)後の患者において、本発明のイオンチャネル遮断剤又はその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象に投与することを含む、再狭窄等の平滑筋増殖性障害を治療する方法をさらに提供する。
【0127】
本発明は、本発明のイオンチャネル遮断剤又はその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象に投与することを含む、アルツハイマー病、多発性硬化症(MS)、パーキンソン病又は筋萎縮性側索硬化症(ALS)等の神経炎症性又は神経変性障害(例えば、ウイルス感染後)を治療する方法をさらに提供する。
【0128】
本発明は、本発明のイオンチャネル遮断剤又はその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象に投与することを含む、癌、例えば、乳がん、前立腺がん、又は非ホジキンリンパ腫(NHL)等のリンパ腫を治療する方法をさらに提供する。
【発明を実施するための形態】
【0129】
本明細書において他に定義されない限り、本出願で使用される科学的及び技術的用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。概して、本明細書に記載の化学、分子生物学、細胞及び癌生物学、免疫学、微生物学、薬理学、並びにタンパク質及び核酸化学に関連して使用される命名法及びそれらの技術は、当技術分野で周知であり、一般的に使用されるものである。
【0130】
本出願で言及される全ての特許、公開された特許出願及び非特許公報は、参照により本明細書に具体的に組み込まれる。矛盾する場合は、特定の定義を含む現在の明細書が支配する。
【0131】
本明細書に記載の本発明の各実施形態は、単独で、又は本発明の他の1つ又は複数の実施形態と組み合わせて行うことができる。
【0132】
他に特定されない限り、次の定義は、現在の書面による説明で使用されている特定の用語について提供されている。
【0133】
本明細書を通じて、「含む(comprise)」という単語、及び「含む(comprises)」又は「含むこと(comprising)」等のその文法的変形は、述べられた整数又は構成要素、又は整数又は構成要素の群を含むことを意味すると理解されるが、いずれかの他の整数又は構成要素、又は整数又は構成要素の群の除外は意味しない。
【0134】
単数形の「a」、「an」、及び「the」には、文脈が明確に他を指示しない限り、複数形が含まれる。
【0135】
「含む(including)」という用語は、「含むがこれに限定されない」ことを意味するために使用される。「含む」及び「含むがこれに限定されない」は互換的に使用される場合がある。
【0136】
「患者」、「対象」及び「個人」という用語は、互換的に使用される場合がある。対象は、ヒト若しくは非ヒト霊長類(例えば、類人猿、旧世界ザル若しくは新世界サル)を含む哺乳動物、家畜(例えば、ウシ若しくはブタ)、コンパニオンアニマル(例えば、イヌ若しくはネコ)又はげっ歯類(例えば、マウス若しくはラット)等の実験動物であってもよい。
【0137】
本明細書及び特許請求の範囲全体を通して、天然に存在するアミノ酸については、従来の3文字及び1文字のコードが使用されている、すなわち、A(Ala)、G(Gly)、L(Leu)、I(Ile)、V(Val)、F(Phe)、W(Trp)、S(Ser)、T(Thr)、Y(Tyr)、N(Asn)、Q(Gln)、D(Asp)、E(Glu)、K(Lys)、R(Arg)、H(His)、M(Met)、C(Cys)、及びP(Pro);
並びに、一般に、他のα-アミノ酸のコードとして許容されている、ノルロイシン(Nle)、サルコシン(Sar)、α-アミノイソ酪酸(Aib)、2,3-ジアミノプロパン酸(Dap)、2,4-ジアミノブタン酸(Dab)、2,5-ジアミノペンタン酸(オルニチン;Orn)α-アミノ酪酸(Abu、ホモアラニンとしても知られる)、hK、hLys又はホモLys(ホモリジン)、hQ、hGln又はホモGln(ホモグルタミン、6-オキソリジンとしても知られる、L-5-カルバモイルノルバリン、6-アミノ-6-オキソノルロイシン又は5-(アミノカルボニル)ノルバリン)、F(4-F)(4-フルオロ-フェニルアラニン)、F(4 -NH2)(4-アミノ-フェニルアラニン)、F(4-NO2)(4-ニトロ-フェニルアラニン)、F(4-CH3)(4-メチル-フェニルアラニン)等が使用されている。
【0138】
[2-アミノ-5-カルボキシペンタノイル]の表記は、2-アミノ-5-カルボキシペンタン酸のペプチド残基を示している:
【0139】
【0140】
したがって、これは、グルタミン酸のものと同様の側鎖を有するが、メチレン基が追加されている。
【0141】
そのような他のα-アミノ酸は、本明細書において一般式又は配列で使用される場合、特に残りの式又は配列が一文字のコードを使用して示される場合、角括弧「[]」(例えば、[Nle])で示されてもよい。上に列挙される20種類の「天然に存在する」アミノ酸は、標準的な遺伝暗号によってコードされているものであり、「タンパク質構成」アミノ酸と呼ばれることもある。
【0142】
他に特定されない限り、本発明のペプチドのアミノ酸残基はL-配置である。しかしながら、D-配置アミノ酸を組み込むことができる。本文脈において、小文字で記載されたアミノ酸コードは、上記アミノ酸のD配置を表し、例えば、「k」は、リジン(K)のD配置を表す。
【0143】
問題の配列のN末端の「H」(又は「Hy-」)部分は、N末端の遊離の一級又は二級アミノ基の存在に対応して、水素原子[すなわちR1=水素]を示し、配列のC末端の「-OH」又は「-NH2」部分[すなわちR2= OH or NH2]は、分子のC-末端にカルボキシ(COOH)基又はアミド(CONH2)基が存在することを示す。C末端の「CH2OH」部分[すなわち、R2= CH2OH]は、分子のC末端のアルキル基に結合したヒドロキシル基の存在を示す。CH2OH部分は、(4-アミノ-5-ヒドロキシペンチル)グアニジン又は4-アミノ-5-ヒドロキシペンタンアミド中に構成され得る。他のR1及びR2基の指定は、それに応じて解釈するべきである。
【0144】
KV1.3遮断剤
Kv1.3という用語は、カリウム電位開閉チャネルサブファミリーAメンバー3を指すために使用され、KCNA3、HPCN3、HGK5、HuKIII、及びHLK3とも呼ばれる。「サブファミリーA」は「シェーカー関連サブファミリー」と呼ばれることもある。ヒトアミノ酸配列は、UniProt受託番号P22001、バージョンP22001.3(Q5VWN2)で提供される。
【0145】
Kv1.3チャネルは、T及びBリンパ球で発現し、T細胞活性化に関与している。多くのグループが、免疫応答の阻害並びにさまざまなその他の適応症のための、Kv1.3遮断剤の開発を進めている。しかしながら、Kv1.3チャネルは、異なった生理学的役割を持つKv1.1、Kv1.2、及びKv1.6チャネルもまた含む、関連イオンチャネルの複雑なファミリーの一部である。結果として、Kv1.3阻害剤は、他のイオンチャネル、特にKv1.1、Kv1.2、Kv1.4、Kv1.5、Kv1.6、Kv1.7及びKv1.8等の他の電位開閉カリウムチャネルよりもKv1.3に可能な限り選択的であることが望ましい。
【0146】
「イオンチャネル遮断剤」という用語は、イオンチャネルに対して阻害(又は遮断)活性を有する、すなわち、典型的にはイオンチャネルに結合することによって、それぞれのイオンチャネルを通るイオン流を阻害又は排除することができる化合物を簡潔に示すために使用される。同様に、「Kv1.3阻害剤」及び「Kv1.3阻害剤成分」という用語は、典型的にはKv1.3チャネルに結合することによって、Kv1.3イオンチャネルを通るイオン流を阻害又は排除することができるペプチドを指す。しかしながら、「遮断剤」及び「阻害剤」という用語は、いずれかの特定の作用機序、又はイオンチャネル自体との特定の相互作用様式を意味するものと解釈されるべきではない。
【0147】
本発明のイオンチャネル遮断剤(及び単独のKv1.3阻害剤成分)は、Kv1.3イオンチャネルで阻害剤又は遮断剤活性を有する、すなわち、Kv1.3チャネルを通るイオン流を阻害することができる。
【0148】
IC50値は、阻害剤(又は遮断剤)の活性又は効力の尺度として使用することができる。IC50値は、所与のアッセイにおけるその化合物のイオンチャネル活性の最大阻害の半分を達成するために必要な阻害剤の濃度の尺度である。特定のイオンチャネルで参照化合物よりもIC50が低い化合物は、参照化合物よりも活性の高い阻害剤又はより強力な阻害剤であると見なすことができる。「活性」及び「効力」という用語は互換的に使用される。
【0149】
IC50値は、イオンフラックス(例えば、タリウムイオンフラックス)を測定する蛍光ベースのアッセイやパッチクランプアッセイ等の、いずれかの適切なアッセイを使用して決定することができる。これらは、以下の実施例で記載されるように実行することができる。例えば、QPatch(登録商標)システムを使用した、パッチクランプアッセイが好ましい場合がある。
【0150】
本発明のイオンチャネル遮断剤(又はKv1.3阻害剤)は、10nM未満のIC50を有し得るが、理想的には、IC50は、5nM未満、2nM未満、又は1nM未満である。場合によっては、それは、0.5nM、0.1nM、又はそれよりも低くてもよい。
【0151】
本発明のイオンチャネル遮断剤は、本明細書に記載の化合物1~5、7、11~42、44~48、50~53、55~60、62~68、70~73、75~81、83~88、90~98、101、104~108、116、122、129、131、132、134及び137を含み得る。これらの化合物は、本明細書の実施例2において、0.3nM以下のIC50を有することが示されている。
【0152】
本発明のイオンチャネル遮断剤は、本明細書に記載の化合物7、14~35、37、39、40~48、50~53、55~60、62~68、70~73、75~80、83~97、90、91、93~98、101、104~108、116、129及び131を含み得る。これらの化合物は、本明細書の実施例2において、0.2nM以下のIC50を有することが示されている。
【0153】
本発明のイオンチャネル遮断剤は、本明細書に記載の化合物7、15~17、19~28、30~35、37、39~42、44、46~48、51~53、55~60、62~67、70、71、73、75~80、83~85、87、91、93、96~98、104、106、107、108及び129を含み得る。これらの化合物は、本明細書の実施例2において、0.15nM以下のIC50を有することが示されている。
【0154】
本発明のイオンチャネル遮断剤は、本明細書に記載の化合物1、3、17、19、21、23、26~33、37、41~43、46~49、52、62、63、66~68、70~73、75、76、78、82~84、87、91、94、97~102、105~108、115及び116を含み得る。これらの化合物は、本明細書の実施例5において、ラット全血中のT細胞の活性化を阻害することについて1nM以下のIC50を有することが示されている。
【0155】
本発明のイオンチャネル遮断剤は、Kv1.3に選択的である。一実施形態では、本発明のイオンチャネル遮断剤は、Kv1.1、Kv1.2、Kv1.4、Kv1.5、Kv1.6、Kv1.7及びKv1.8よりも選択的である。特に、本発明のイオンチャネル遮断剤は、Kv1.1、Kv1.2及びKv1.6の1つ又は複数よりもKv1.3に選択的である。
【0156】
例えば、それらは:
Kv1.1よりもKv1.3に選択的であり;
Kv1.2よりもKv1.3に選択的であり;
Kv1.6よりもKv1.3に選択的であり;
Kv1.1及びKv1.2よりもKv1.3に選択的であり;
Kv1.1及びKv1.6よりもKv1.3に選択的であり;
Kv1.2及びKv1.6よりもKv1.3に選択的であり;又は
Kv1.1、Kv1.2、及びKv1.6よりもKv1.3に選択的である。
【0157】
典型的には、イオンチャネル遮断剤は、Kv1.1よりもKv1.3に選択的である。
【0158】
それらはさらに、Kv1.2及び/又はKv1.6よりもKv1.3に選択的であり得る。
【0159】
この文脈における「選択的」とは、イオンチャネル遮断剤が、Kv1.1、Kv1.2及びKv1.6のそれぞれに対してよりも、Kv1.3に対して、より高い阻害剤活性を有することを意味する。したがって、Kv1.3に対するそれらのIC50は、典型的には、それぞれの他のイオンチャネル又はチャネルに対するものよりも低い。
【0160】
したがって、別のイオンチャネルXに対するKv1.3についての選択性は、例えば、IC50[X]/IC50[Kv1.3]のような、それぞれのIC50値の比率として表すことができる。
【0161】
したがって、本発明のイオンチャネル遮断剤は、Kv1.1よりもKv1.3に対して少なくとも10、少なくとも100、少なくとも1000、又は少なくとも10000及び最大100000又はそれ以上の選択性を有し得る。典型的には、Kv1.1に対するKv1.3についての選択性は、少なくとも100、又は少なくとも1000である。
【0162】
本発明のイオンチャネル遮断剤は、本明細書に記載の化合物1~3、5、8、12、16~23、25~31、34~37、40~42、45~49、52~54、56、58、62、63、70、71、76、79、83、94~98、101、103~108及び117を含み得る。これらの化合物は、本明細書の実施例3において、少なくとも1000のKv1.1に対するKv1.3についての選択性を有することが示されている。
【0163】
本発明のイオンチャネル遮断剤は、本明細書に記載の化合物3、12、16、18~22、25~28、30、31、35、37、40~42、52、53、62、70、71、76、79、94、95、98及び105を含み得る。これらの化合物は、本明細書の実施例3において、少なくとも10000のKv1.1に対するKv1.3についての選択性を有することが示されている。
【0164】
したがって、本発明のイオンチャネル遮断剤は、少なくとも10、少なくとも100、少なくとも1000、又は少なくとも10000、及び最大100000又はそれ以上のKv1.2に対するKv1.3についての選択性を有し得る。典型的には、それらは、少なくとも10、好ましくは少なくとも50又は少なくとも100又は少なくとも1000のKv1.2に対するKv1.3についての選択性を有する。
【0165】
本発明のイオンチャネル遮断剤は、本明細書に記載の化合物1~3、5、8、16~23、25~31、34~37、40~42、45~49、52~54、56、58、62、63、70、71、76、79、83、94~98、101、103~108及び117を含み得る。これらの化合物は、本明細書の実施例3において、少なくとも50のKv1.2に対するKv1.3についての選択性を有することが示されている。
【0166】
本発明のイオンチャネル遮断剤は、本明細書に記載の化合物1、3、5、8、12、18、25、29、30、36、37、41、46~48、52、62、70、71、79、83、94~98、101、103~106及び117を含み得る。これらの化合物は、本明細書の実施例3において、少なくとも700のKv1.2に対するKv1.3についての選択性を有することが示されている。
【0167】
本発明のイオンチャネル遮断剤は、本明細書に記載の化合物1、3、12、18、29、30、36、37、41、47、48、62、70、71、79、94~98、101及び103~105を含み得る。これらの化合物は、本明細書の実施例3において、少なくとも1000のKv1.2に対するKv1.3についての選択性を有することが示されている。
【0168】
したがって、本発明のイオンチャネル遮断剤は、少なくとも10、少なくとも100、少なくとも1000、又は少なくとも10000、及び最大100000又はそれ以上のKv1.6に対するKv1.3についての選択性を有し得る。典型的には、それらは、少なくとも100、少なくとも400、又は少なくとも1000のKv1.6に対するKv1.3についての選択性を有する。
【0169】
本発明のイオンチャネル遮断剤は、本明細書に記載の化合物1、2、3、5、8、12、16~23、25~31、34~37、40~42、45~49、52~54、56、58、62、63、70、71、76、79、83、94~98、101、103~108及び117を含み得る。これらの化合物は、本明細書の実施例3において、少なくとも400のKv1.6に対するKv1.3についての選択性を有することが示されている。
【0170】
本発明のイオンチャネル遮断剤は、本明細書に記載の化合物3、12、16、18、20、22、26、30、31、37、41、52、53、70、71、76、79、94、95、98及び105を含み得る。これらの化合物は、本明細書の実施例3において、少なくとも10000のKv1.6に対するKv1.3についての選択性を有することが示されている。
【0171】
本発明のイオンチャネル遮断剤は、ShK、モカトキシン(Moka1)、Vm24、Odk2又はOsk1等の公知のイオンチャネル遮断剤よりも優れた選択性を有し得る。したがって、本発明のイオンチャネル遮断剤は、イオンチャネルXに対するKv1.3についてのより高い選択性、
すなわちIC50[X]/IC50[Kv1.3]を有し得、
これは、比較分子の選択性よりも優れている。2つのイオンチャネル遮断剤の選択性は、直接比較できるように、各イオンチャネルについて同じ条件下で決定される。上記のように、蛍光ベースのイオンフラックスアッセイ及びパッチクランプアッセイ等のいずれかの適切なアッセイを使用することができる。
【0172】
本発明のイオンチャネル遮断剤は、Kv1.1、Kv1.2及び/又はKv1.6のいずれか又は全てで、公知のイオンチャネル遮断剤(Odk2又はOsk1等)よりも低い絶対阻害剤活性(すなわち、より高いIC50)を有し得る。ただし、Kv1.3に対する選択性が比較化合物の選択性よりも高い限り、これらのイオンチャネルのいずれか又は全てでより高い絶対阻害剤活性を有することは許容される可能性がある。ただし、典型的には、本発明の化合物は、Kv1.3に対する高い特異性を高い効力と組み合わせる。
【0173】
合成及び組換え発現
本明細書に記載のイオンチャネル遮断剤は、固相又は液相ペプチド合成方法論を用いて合成することができる。この文脈において、国際公開第98/11125号、及び、とりわけ、Fields, G.B.ら、2002、“Principles and practice of solid-phase peptide synthesis". In: Synthetic Peptides(第2版)、及び本明細書の実施例を参照することができる。
【0174】
或いは、本明細書に記載のイオンチャネル遮断剤は、組換え技術によって、又は組換え技術とペプチド化学の組み合わせによって合成されてもよい。
【0175】
例えば、イオンチャネル遮断剤ペプチドは、
(a)固相又は液相ペプチド合成方法論を用いてペプチドを合成し、そのようにして得られたペプチドを回収する工程;
(b)ペプチドをコードする核酸構築物からペプチドを発現させ、発現産物を回収する工程;又は
(c)前駆体ペプチド配列をコードする核酸構築物から前駆体ペプチドを発現させ、発現産物を回収し、そして前駆体ペプチドを修飾して本発明のイオンチャネル遮断剤を生成する工程を含む方法によって合成されてもよい。
【0176】
前駆体ペプチドは、1つ又は複数の非タンパク構成アミノ酸(例えば、Nle)の導入、適切な末端基R1及びR2の導入等によって修飾されてもよい。
【0177】
ペプチド又は前駆体ペプチドをコードする核酸からのペプチド又は前駆体ペプチドの発現は、そのような核酸を含む細胞又は無細胞発現系において実行することができる。そのような発現は、典型的には、ペプチド又は前駆体ペプチドが、タンパク質構成アミノ酸(すなわち、標準的な遺伝暗号によってコード化された20個のアミノ酸)で全体的に構成されることが必要となる。
【0178】
組換え発現については、前駆体ペプチドをコードする核酸フラグメントは、通常、適切なベクターに挿入されて、クローニング又は発現ベクターを形成する。ベクターは、目的及び用途のタイプに依存して、プラスミド、ファージ、コスミド、ミニ染色体、又はウイルスの形態であり得るが、特定の細胞で一過性にのみ発現する裸のDNAも重要なベクターである。好ましいクローニング及び発現ベクター(プラスミドベクター)は、自律複製が可能であり、それにより、高レベルの発現又は後続のクローニングのための高レベルの複製の目的のための、高いコピー数が可能となる。
【0179】
一般的な概要として、発現ベクターは、5'→3'方向及び作動可能な結合において次の特徴を含む: 核酸フラグメントの発現を駆動するためのプロモーター、任意選択で、(細胞外相、又は、該当する場合、ペリプラズマへの)分泌を可能にするリーダーペプチドをコードする核酸配列、前駆体ペプチドをコードする核酸フラグメント、及び任意選択でターミネーターをコードする核酸配列。それらは、選択可能なマーカー及び複製起点等の付加的な機能を含む場合がある。生産株又は細胞株で発現ベクターを操作する場合、ベクターが宿主細胞ゲノムに組み込まれることができることが好ましい場合がある。当業者は適切なベクターに非常に精通しており、特定の要件に従って設計することができる。
【0180】
本発明のベクターは、宿主細胞を形質転換してペプチド又は前駆体ペプチドを産生するために使用される。そのような形質転換細胞は、核酸フラグメント及びベクターの増殖に使用される、並びに/又は前駆体ペプチドの組換え産生に使用される培養細胞若しくは細胞株であり得る。
【0181】
好ましい形質転換細胞は、細菌等の微生物[エシェリキア種(Escherichia)(例えば、大腸菌(E. coli))、バチルス(Bacillus)(例えば、枯草菌(Bacillus subtilis))、サルモネラ、又はマイコバクテリウム(Mycobacterium)(好ましくは非病原性、例えば、M.ボビスBCG(M. bovis BCG))、酵母(例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)及びピキア・パストリス(Pichia pastoris))、及び原生動物等]等の微生物である。或いは、形質転換細胞は、多細胞生物に由来してもよく、すなわち、それは、真菌細胞、昆虫細胞、藻類細胞、植物細胞、又は哺乳動物細胞等の動物細胞に由来してもよい。クローニング及び/又は最適化された発現の目的のために、形質転換細胞が本発明の核酸フラグメントを複製することができることが好ましい。核酸断片を発現する細胞は、本発明のペプチドの小規模又は大規模な調製に使用することができる。
【0182】
形質転換細胞の手段によりペプチド又は前駆体ペプチドを産生する場合、必須ではないものの、発現産物が培地に分泌されると便利である。
【0183】
治療指標
上記のように、Kv1.3の遮断剤は、活性化T細胞の増殖を阻害し、疾患のさまざまな実験モデルの有益な効果を有することが示されている。理論に拘束されることを望まないが、Kv1.3チャネルを介したカリウムの細胞流出は、T細胞活性化に必要なカルシウム流入を維持するために必要であると考えられている。
【0184】
Kv1.3は、新たに発症した1型糖尿病患者からのGad5/インスリン特異的T細胞、MS患者からのミエリン特異的T細胞、関節リウマチ患者の滑膜からのT細胞で過剰発現している(Beetonら、Proc Natl Acad Sci USA 103:17414~9頁、2006年)、乳がん検体(Abdulら、Anticancer Res 23:3347頁、2003年)及び前立腺がん細胞株(Fraserら、Pflugers Arch 446:559頁、2003年)。
【0185】
Kv1.3遮断剤を用いた動物モデルでの陽性転帰は、オバルブミン及び破傷風トキソイドに対する過敏症モデル(Beetonら、Mol Pharmacol 67:1369頁、2005年; Kooら、Clin Immunol 197:99頁、1999年)、ラット養子移入実験的自己免疫性脳脊髄炎(AT-EAE)モデル等の多発性硬化症のモデル(Beetonら、Proc Natl Acad Sci USA 103:17414~9頁、2006年)、炎症性骨吸収モデル(Valverdeら、J Bone Mineral Res 19:155頁、2004年)、関節炎のモデル(Beetonら、Proc Natl Acad Sci 103:17414頁、2006年; Tarchaら、J. Pharmacol. Exp. Ther. 342:642頁、2012年)及び肥満、糖尿病及び代謝障害(Xuら、Hum Mol Genet 12:551頁、2003年; Xuら、Proc Natl Acad Sci 101:3112頁、2004年)において記載されている。
【0186】
Kv1.3遮断剤の局所適用は、皮膚及び粘膜の炎症の治療のために提案されている。
【0187】
したがって、本明細書に記載されるイオンチャネル遮断剤は、特に自己免疫障害を含む炎症状態又は障害の治療において、炎症の阻害又は軽減における使用について、かなりの可能性がある。
【0188】
炎症状態又は障害は、例えば炎症が症状又は病因に寄与する場合等、炎症の軽減が望ましいいずれかの状態又は障害であってもよい。
【0189】
そのような状態には、自己免疫疾患、アレルギー及び過敏症、同種移植片拒絶、並びに移植片対宿主病が含まれる。
【0190】
より具体的には、状態には、花粉症、喘息、アナフィラキシー、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、湿疹、円形脱毛症、皮膚筋炎、封入体筋炎、多発性筋炎、強直性脊椎炎、血管炎、関節炎(関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎を含む)、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス(SLE、又は単に「ループス」)、及びブドウ膜炎、炎症性線維症(例えば、強皮症、肺線維症、肝硬変)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肝炎、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、炎症性腸疾患、大腸炎(クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む)、紅斑、甲状腺炎、乾癬、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、強皮症、糸球体腎炎、炎症性骨吸収、多発性硬化症、1型糖尿病、移植片拒絶並びに移植片対宿主疾患が含まれる。
【0191】
Kv1.3の遮断剤は、例えば、エネルギー恒常性、体重調節、及びブドウ糖制御に関連して、有益な代謝効果も持つ可能性がある。
【0192】
したがって、本明細書に記載のイオンチャネル遮断剤は、体重増加の阻害、体重減少の促進、過剰体重の減少、又は肥満の治療(例えば、食欲、摂食、食物摂取、カロリー摂取、及び/又はエネルギー消費の制御による)、並びに肥満関連の炎症、肥満関連の胆嚢疾患、及び肥満によって誘発される睡眠時無呼吸を含む、関連障害及び健康状態の治療にも使用してもよい。
【0193】
体重への影響は、治療的又は美容的であってもよい。
【0194】
イオンチャネル遮断剤は、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性、耐糖能異常、糖尿病前症、空腹時血糖値の上昇、及び2型糖尿病等の、グルコース制御障害によって引き起こされる、又はそれに関連する状態の治療にも使用できる。これらの状態のいくつかは、肥満に関連し得る。これらの状態に対するそれらの影響は、体重への影響を介して全体的又は部分的に媒介されるか、又はそれとは独立している場合がある。
【0195】
Kv1.3は、増殖中のヒト及びマウスの平滑筋細胞においても発現している。Kv1.3の遮断剤は、再狭窄等の平滑筋増殖性疾患、例えば血管手術(血管形成術等)後の患者に有効である場合がある。
【0196】
さらなる証拠は、Kv1.3チャネルが腫瘍細胞(Bielanskaら、Curr. Cancer Drug Targets 9:904~14頁、2009年)、ミクログリア(Khannaら、Am. J. Physiol. Cell Physiol. 280:C796~806頁、2001年)及び神経前駆細胞の分化(Wangら、J. Neurosci. 30:5020~7頁、2010年)を含む多くのタイプの細胞の活性化及び/又は増殖に関与していることを示唆している。したがって、Kv1.3遮断剤は、アルツハイマー病、多発性硬化症(MS)、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)等の神経炎症性及び神経変性障害(例えば、ウイルス感染後)、並びに乳がん、前立腺癌、及び非ホジキンリンパ腫(NHL)等のリンパ腫を含むがんの治療に有益である場合がある。非ホジキンリンパ腫には、T細胞NHL及びB細胞NHLが含まれる。B細胞NHLの形態には、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、及びマントル細胞リンパ腫が含まれる。T細胞NHLの形態には、菌状息肉腫、未分化大細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、前駆Tリンパ芽球性リンパ腫、及びセザリー症候群が含まれる。
【0197】
医薬組成物及び投与
本発明の一態様は、本発明のイオンチャネル遮断剤又はその塩を、担体、賦形剤又はビヒクルと共に含む組成物に関する。特定の実施形態では、組成物は医薬組成物であり、いずれかの塩は薬学的に許容される塩であり、担体は薬学的に許容される担体、賦形剤又はビヒクルである。
【0198】
したがって、本発明の化合物又はその塩、特にその薬学的に許容される塩は、保存又は投与のために調製された、治療有効量の本発明の化合物又は塩を含む組成物又は医薬組成物として製剤化されてもよい。
【0199】
塩基で形成される適切な塩には、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩等の金属塩、例えばナトリウム、カリウム又はマグネシウム塩;モルホリン、チオモルホリン、ピペリジン、ピロリジン、低級モノ-、ジ-又はトリ-アルキルアミン(例えば、エチル-tert-ブチル-、ジエチル-、ジイソプロピル-、トリエチル-、トリブチル-又はジメチルプロピルアミン)、又は低級モノ-、ジ-又はトリ-(ヒドロキシアルキル)アミン(例えば、モノ-、ジ-又はトリエタノールアミン)と形成されるもの等のアンモニア塩及び有機アミン塩が含まれる。内部塩も形成される場合がある。同様に、本発明の化合物が塩基性部分を含む場合、有機酸又は無機酸を使用して塩を形成することができる。例えば、塩は次の酸から形成することができる: ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、シュウ酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、マンデル酸、リンゴ酸、フタル酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、安息香酸、炭酸、尿酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸(すなわち、4-メチルベンゼンスルホン酸)、カンファースルホン酸、2-アミノエタンスルホン酸、アミノメチルホスホン酸及びトリフルオロメタンスルホン酸(後者はトリフリック酸とも呼ばれる)、並びに他の公知の薬学的に許容される酸。アミノ酸付加塩は、リジン、グリシン、又はフェニルアラニン等のアミノ酸を用いて形成することもできる。
【0200】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、化合物が医薬的に許容される酸付加塩の形態であるものである。
【0201】
医学技術の当業者にとって明らかなように、本発明の化合物又は医薬組成物の「治療有効量」は、とりわけ、治療される対象(患者)の年齢、体重、及び/又は性別に依存して変化するであろう。関連する可能性のある他の要因には、検討中の特定の患者の身体的特徴、患者の食事、いずれかの併用薬の性質、使用される特定の化合物、特定の投与方法、所望の薬理学的効果及び特定の治療指標が含まれる。これらの要因及びこの量を決定する際のそれらの関係は医学分野でよく知られているので、所望の治療効果を達成するための治療的に有効な投与量レベルの決定は、当業者の領域の範囲内である。
【0202】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、所与の状態又は病状の症状を軽減し、好ましくはその状態又は病状を有する個体における生理学的応答を正常化する量を指す。症状の軽減又は生理学的反応の正常化は、当技術分野で日常的な方法を使用して決定することができ、所与の状態又は病状によって変化し得る。一態様では、本発明の化合物又は医薬組成物の治療有効量は、測定可能な生理学的パラメータを、問題の状態又は病状のない個人におけるパラメータの値と実質的に同じ値(好ましくは30%以内、より好ましくは20%以内、さらにより好ましくは10%以内)に回復させる量である。
【0203】
本発明の一実施形態では、本発明の化合物又は医薬組成物の投与は、より低い投与量レベルで開始され、関連する医学的適応症を予防/治療する所望の効果が達成されるまで投与量レベルが増加される。これが治療有効量を定義する。本発明の化合物について、単独又は医薬組成物の一部として、活性化合物のそのようなヒト用量は、約0.01pmol/kg~500μmol/kg体重の間、約0.01pmol/kg~300μmol/kg体重の間、0.01 pmol/kg~100μmol/kg体重の間、0.1 pmol/kg~50μmol/kg体重の間、1 pmol/kg~10μmol/kg体重の間、5 pmol/kg~5μmol/kg体重の間、10 pmol/kg~1μmol/kg体重の間、50 pmol/kg~0.1μmol/kg体重の間、100 pmol/kg~0.01μmol/kg体重の間、0.001μmol/kg~0.5μmol/kg体重の間、0.05μmol/kg~0.1μmol/kg体重の間であり得る。
【0204】
有効な投与量及び治療プロトコールは、実験動物での低用量から始めて、効果を監視しながら投与量を増やし、投与レジメンも系統的に変えるという従来の手段によって決定することができる。所与の対象に最適な投与量を決定する際に、臨床医により多くの要因が考慮され得る。そのような考慮は当業者に公知である。
【実施例】
【0205】
(実施例1)
一般的なペプチド合成
略語及び供給業者のリストを以下の表に示す。
【0206】
【0207】
装置及び合成戦略
ペプチドは、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)をN-α-アミノ保護基として、及び適切な一般保護基を側鎖官能基として使用し、固相ペプチド合成手順に従って、CEM Libertyペプチド合成機やSymphony X合成機等のペプチド合成機でバッチ式に合成された。
【0208】
ポリマー支持体ベース樹脂として、例えば、TentaGel(商標)等が使用された。使用前にDMFで膨潤させた樹脂を合成機に充填した。
【0209】
カップリング
CEM Libertyペプチド合成機
Fmoc保護アミノ酸(4当量)の溶液を、カップリング試薬溶液(4当量)及び塩基の溶液(8当量)と共に樹脂に加えた。混合物をマイクロ波ユニットによって70~75℃に加熱し、5分間カップリングさせるか、又は加熱せずに60分間カップリングさせた。カップリングの間、窒素を混合物に通じて泡立たせた。
【0210】
Symphony X合成機
カップリング溶液を次の順序で反応容器に移した:アミノ酸(4当量)、HATU(4当量)及びDIPEA(8当量)。他に述べない限り、カップリング時間は室温(RT)で10分であった。樹脂をDMFで洗浄した(5×0.5分)。反復カップリングさせる場合、カップリング時間は全ての場合、RTで45分であった。
【0211】
脱保護
CEM Libertyペプチド合成機
DMF又は他の適切な溶媒中でピペリジンを使用してFmoc基を脱保護した。脱保護溶液を反応容器に加え、混合物を30秒間加熱し、およそ40℃に達した。反応容器を排水し、新しく脱保護溶液を加え、続いて70~75℃に3分間加熱した。反応容器を排水した後、DMF又は他の適切な溶媒で樹脂を洗浄した。
【0212】
Symphony X合成機
Fmoc脱保護は、DMF中の40%ピペリジンを使用して2.5分間行い、同じ条件を使用して繰り返した。DMFで樹脂を洗浄した(5×0.5分)。
【0213】
切断
乾燥したペプチド樹脂をTFA及び適切なスカベンジャーを用いておよそ2時間処理した。濾液の容量を減少させ、ジエチルエーテルを添加した後、粗ペプチドを沈殿させた。粗ペプチド沈殿物をジエチルエーテルで数回洗浄し、最後に乾燥させた。
【0214】
粗ペプチドのHPLC精製
粗ペプチドは、5×25cm Gemini NX 5u C18 110Aカラム等のカラムを備えた二成分の勾配の用途のために、331/332ポンプの組み合わせを備えたGilson GX-281等の従来のHPLC装置及びフラクションコレクターを使用して、緩衝液A(0.1%ギ酸、水溶液)又はA(0.1%TFA、水溶液)及び緩衝液B(0.1%ギ酸、90%MeCN、水溶液)又はB(0.1%TFA、90%MeCN、水溶液)の適切なグラジエントで20~40ml/分のフローを使用した分取逆相HPLCにより精製した。画分を分析用HPLC及びMSで分析し、選択した画分をプールして凍結乾燥した。最終生成物は、HPLC及びMSによって特徴付けた。
【0215】
ジスルフィド形成
6つのシステインを含む粗又は部分精製された直鎖状ペプチドを重曹(NaHCO3)又は酢酸アンモニウム(NH4Ac)等の緩衝液に溶解して、最終濃度をおよそ0.1mg/ml又は25μMとした。緩衝液のpHをpH8.0に調整し、溶液を室温で磁気攪拌の下、開放して大気に接触させた。反応の進行はHPLCによって決定され、通常は一晩で完了と評価された。酢酸又はトリフルオロ酢酸(pH <4)等の有機酸で溶液のpHを下げることにより、溶液をクエンチした。溶液をろ過し、精製のために分取HPLCカラムに直接充填した。
【0216】
分析用HPLC
最終純度は、オートサンプラー、脱気剤、20μlフローセル、Chromeleonソフトウェアを備えた分析用HPLC(Agilent 1100/1200シリーズ)により決定された。HPLCは、Kinetex 2.6μm XB-C18 100A 100x4,6mmカラム等の分析カラムを使用して、40℃で1.2ml/分の流量で操作された。化合物は、215nmで検出され、定量された。緩衝液A(0.1%TFA、水溶液)及び緩衝液B(0.1%TFA、90%MeCN、水溶液)。
【0217】
質量分析
最終的なMS分析は、ロック質量キャリブレーション及びMassLynxソフトウェアと共にエレクトロスプレー検出器を備えた従来型質量分析計、例えば、Waters Xevo G2 Tofで実行された。それは、直接注入及び、クロマトグラムで指定された15V(1 TOF)、30V(2 TOF)、又は45V(3 TOF)のコーン電圧を使用して、ポジティブモードで操作された。精度は5ppmで、標準分解能は15,000~20,000であった。
【0218】
合成した化合物をTable 1(表5)に示す。
【0219】
【0220】
【0221】
【0222】
【0223】
【0224】
(実施例2)
FLIPRタリウムアッセイにおけるKv1.3遮断剤活性
ヒトKv1.3電位開閉K+チャネル細胞株は、Perkin Elmer社(TDS-AX-010-C-1)から購入した。細胞株は、ヒトKv1.3電位開閉K+チャネルで安定的にトランスフェクトされたCHO-DUKX細胞に基づく。
【0225】
細胞株は、ヌクレオチド、GlutaMAX(Gibco社 カタログ番号32571028)、10%ウシ胎児血清(FBS)、0.4mg/ml ジェネティシン(Geneticin)、100ユニット/ml ペニシリン、及び100μg/mlストレプトマイシンを含むMEMα中で増殖させ、10,000細胞/ウェルで黒色ポリ-D-リジンコーティングされた96ウェルプレート中に播種した。
【0226】
FluxOR(商標)カリウムイオンチャネルアッセイ(Invitrogen社カタログ番号F10016)を使用して、細胞膜の脱分極を引き起こし、チャネル活動に比例した蛍光シグナルを生成する刺激緩衝液によるKv1.3活性化への応答として、細胞へのタリウムイオンのフラックスを定量化した。アッセイは、アッセイキット製造業者により記載されるように実行された。FLIPR(登録商標)Tetra High Throughputスクリーニングシステム(Molecular Devices社)を使用して、蛍光応答を記録及び定量化した。
【0227】
細胞へのタリウムフラックスの阻害を誘発する試験化合物からのデータを、陽性(ShK)及び陰性対照(ビヒクル)に対して正規化して、濃度応答曲線からIC50を計算した。結果をTable 2(表7)に示す。IC50は、それぞれの化合物の阻害の効力の尺度と見なすことができる。IC50値は、所与のアッセイにおいて、その化合物のイオンチャネル活性の最大阻害の半分を達成するために必要な阻害剤の濃度の尺度である。特定のイオンチャネルでのIC50が参照化合物よりも低い化合物は、参照化合物よりも活性の高い阻害剤、又はより強力な阻害剤であると見なすことができる。
【0228】
【0229】
【0230】
【0231】
【0232】
(実施例3)
パッチクランプアッセイにおけるKv1.3選択性
各カリウムイオンチャネルの外因性ヒトαサブユニットを安定して発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株を、標準的な培養条件下で増殖及び継代した。
【0233】
自動化されたチップベースの平面パッチクランプデバイスQPatch(登録商標)を使用して、イオン電流を定量化した。全ての記録は、ギガオームシールの確立後、従来の全細胞構成で行われた。外部記録溶液には、(150mM NaCl、10mM KCl、10mM HEPES、1mM MgCl2、3mM CaCl2、10mMグルコース、pHをNaOHで7.4に調整)及び内部記録溶液(20mM KCl、120mM KF、10mM HEPES、10mM EGTA、5mM NaATP、pHをKOHで7.2に調整)が含まれていた。実験の間、0.1%(v/v)BSAが全ての外部記録溶液のビヒクルとして含まれていた。電流は-80mVの保持電位から、15秒ごとに500ミリ秒間、30mVに電圧をシフトさせる電圧プロトコールを用いて誘発された。濃度-反応関係は、化合物適用ごとに2分の記録期間で、7つの上昇した濃度の試験サンプルを個々の細胞に累積的に適用することによって確立された。
【0234】
有効性は、カーソル位置からの各濃度適用期間の終了時の最後の3回のスイープの平均電荷として決定された。各試験用量適用期間の阻害率は、ビヒクル期間の終了時に測定したカーソル値に対する平均カーソル値(電荷)の減少として計算され、濃度応答曲線からIC50を計算するために使用した。
【0235】
結果をTable 3(表8)に示す。
【0236】
【0237】
【0238】
実施例2及び3のデータの比較により、2つのアッセイで測定されたIC50値の間に良好な相関関係が存在することが示される。
【0239】
(実施例4a)
ヒトPBMCに対するKv1.3遮断剤の阻害活性
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を使用して、抗CD3による刺激後のIL-2(サイトカイン)放出によって決定されるT細胞活性化に対するKv1.3遮断剤の効果を評価した。
【0240】
ヒトPBMCは、Precision for Medicine(Frederick、MD)から入手した。5人のドナーからの細胞を使用した。プレート結合抗CD3を使用して、PBMC調製物中のバルクT細胞を刺激した。簡単に説明すると、1xPBSに希釈した50μLの0.5μg/mL抗CD3溶液を使用して、37℃、2時間、抗CD3抗体で96ウェルプレートをコーティングした。その後、プレートを2回洗浄した。
【0241】
Table 4a(表9)に示されるKv1.3遮断剤を培地(10%v/vウシ胎児血清、1%v/vペニシリン-ストレプトマイシン溶液を含む、Glutamax-I含有RPMI 1640)で希釈し、0.01pMから100nMの範囲(10倍希釈)の濃度で100μLの容量に添加した。シクロスポリンA(1ug/ml)及びVm24ペプチド(100nM)を陽性対照として使用した。最後に、1x105個のPBMCを100μLの容量で各ウェルに添加し、ウェルあたり200μLの最終容量とした。プレートを37℃/5%CO2インキュベーター内で20~24時間インキュベートした。プレートの遠心分離の後、25μlの上清をIL-2検出プレート(MSD Human IL-2 Tissue Culture Kit、カタログ番号K151AHB-2)に移し、製造業者(Meso Scale Discovery社、Rockville、Maryland、USA)の説明に従ってIL-2を測定した。
【0242】
結果はTable 4a(表9)に、抗CD3刺激ヒトPBMCアッセイから得られたIC50値の幾何平均として示される。全ての値は、少なくとも4つの反復から由来している。
【0243】
【0244】
抗CD3抗体活性化hPBMCとのインキュベーション及びKv1.3遮断剤の添加により、IL-2分泌が用量依存的に減少した。試験化合物の(IL-2放出から計算された)平均IC50値は、0.05nMから0.4nMの範囲にあった。これは、ShK186で観察されたIC50に匹敵しており(IC50は0.07nMである)、IL-2分泌の阻害に弱いMoka1のIC50よりも約10~100倍低かった。
【0245】
試験化合物とShK186の間に有意差はない。ShK186及び試験化合物は全てMoka1よりも有意に低かった。
【0246】
シクロスポリンは、全ての実験でCD3誘導IL-2放出を完全に遮断した。
【0247】
(実施例4b)
ヒトPBMCに対するKv1.3遮断剤の阻害活性
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を使用して、抗CD3を用いた刺激後のIL-2放出によって決定されるT細胞活性化に対するKv1.3遮断剤の効果を評価した。
【0248】
ヒトPBMCは、Precision for Medicine(Frederick、MD)から入手した。5人のドナーからの細胞を使用した。プレート結合抗CD3を使用して、PBMC調製物中のバルクT細胞を刺激した。簡単に説明すると、PBSで希釈した1μg/mlの抗CD3溶液50μlを使用して、5℃でおよそ16時間、96ウェルプレートを抗CD3抗体でコーティングした。その後、プレートを2回洗浄した。
【0249】
続いて、Kv1.3遮断剤を培地(10%v/vウシ胎児血清、1%v/vペニシリン-ストレプトマイシン溶液を含む、Glutamax-I含有RPMI 1640)で希釈し、50μlの容量に添加した。Table 4b(表10)に示される化合物は、0.3pMから1000nMの範囲の濃度で使用した(半対数希釈、開始濃度を変化)。シクロスポリンA(1μg/ml)及びVm24ペプチド(100nM)を陽性対照として使用した。
【0250】
最後に、同じ培地中の50,000個のPBMCを、各ウェルに50μlの容量で添加し、ウェルあたり100μlの最終容量とした。プレートを37℃/5%CO2インキュベーター内で20~24時間インキュベートした。プレートの遠心分離の後、25μlの上清をIL-2検出プレート(MSD Human IL-2 Tissue Culture Kit、カタログ番号K151AHB-2)に移し、製造業者(Meso Scale Discovery社、Rockville、Maryland、USA)の説明に従ってIL-2を測定した。
【0251】
結果はTable 4b(表10)に、抗CD3刺激ヒトPBMCアッセイから得られたIC50値の幾何平均として示される。全ての値は、少なくとも6つの反復から由来している。
【0252】
【0253】
抗CD3抗体活性化hPBMCとのインキュベーション及び本発明の化合物の添加により、IL-2分泌が用量依存的に減少した。
【0254】
Table 4b(表10)に示されるように、試験化合物の(IL-2放出から計算された)平均IC50値は0.01nMから0.09nMの範囲にあった。これは、ShK186で観察されたIC50に匹敵していた(IC50は0.05nMである)。本アッセイは、実施例4aに使用されたものとは異なるドナーを使用して実行されたため、2つのセットの実験においてShk-186の同一の値は期待されない。
【0255】
シクロスポリンは、全ての実験で抗CD3誘導IL-2放出を完全に遮断した。
【0256】
(実施例5)
ラット全血におけるKv1.3遮断剤の阻害活性
ラット全血を使用して、タプシガルギン(thapsigargin)での刺激後のIL-17A放出によって決定されるT細胞活性化に対するKv1.3遮断剤の効力を評価した。タプシガルギンを添加により、シグナル伝達カスケードの活性化がもたらされ、最終的にT細胞増殖及びサイトカイン産生が活性化されるが、Kv1.3イオンチャネルが重要な役割を果たすため、本実験システムで初代細胞のKv1.3遮断剤の活性を測定できる。
【0257】
ラット全血は、ヘパリンナトリウム採血管を使用して心臓から最終的に出血させた、健康でナイーブなLewis又はSprague-Dawleyラットから採取した。試験化合物をアッセイ緩衝液(DMEM+GlutaMAX)で最終試験濃度の4倍に希釈し(GlutaMAXは、25mM HEPES緩衝液、1mMピルビン酸ナトリウム、100ユニット/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン及び0.05%牛乳由来カゼイン(Sigma-Aldrich社))を補填した3.97mM L-アラニン-L-グルタミン(Gibcoカタログ番号61965026)を含む培地である)、25μlを96ウェルプレートのウェルに添加した。次に、50μlのラット全血を加え、室温で最短5分間インキュベートして、化合物を結合させた。次にアッセイ緩衝液で希釈した25μlの40μMタプシガルギンをアッセイプレートの全てのウェルに添加して、細胞を活性化した後、加湿ボックス中、37℃/5%CO2で24時間インキュベートした。アッセイプレートを4℃で300gで10分間遠心分離し、上清を新しいプレートに移した。上清に放出されたIL-17Aの濃度は、製造業者が推奨するラットIL-17A ELISAキット(Abcam社、カタログ番号ab214028)を使用して測定した。検出キットからの30μlの緩衝液75BSを含むELISAプレート上のウェルに、20μlの上清を移すことにより、サンプルを2.5倍に希釈した。
【0258】
IL-17Aの阻害を誘発する試験化合物からのデータは、全タプシガルギン活性化(遮断剤無添加)及び活性化対照無し(タプシガルギンの代わりにアッセイ緩衝液の添加)に対して正規化され、濃度応答曲線からIC50を計算した。
【0259】
標準偏差(IC50_SD)付のIC50として表した結果をTable 5(表11)に示す。全ての値は、少なくとも2つの反復から由来している。エクスビボでの生物学的効果は、化合物の効力との相関関係を示している。
【0260】
【0261】
【0262】
(実施例6)
薬物動態の特性評価
方法
Sprague Dawley又はWistarラット(体重がおよそ250~350gの雄)に、試験する各ペプチドを1回皮下(s.c.)注射した。
【0263】
選択化合物の皮下投与(用量70nmol/kg、2又は5mL/kgいずれかの投与量)に続いて、血液サンプルを投与後15分、30分、45分、60分、90分、2時間、3時間、4時間で採取した。各サンプリング時点で、ラットからのサンプルは舌下出血又は尾の切断によって採取された。最終サンプリングの後、ラットをO2/CO2麻酔によって屠殺した。投与ビヒクルは、10mMリン酸塩、0.8%NaCl、0.05%ポリソルベート20(pH6.0)であった。
【0264】
血漿サンプルは、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS/MS)による固相抽出(SPE)後に分析された。平均血漿濃度は、Phoenix WinNonlin 6.4以降のバージョンの非コンパートメントアプローチを使用した薬物動態パラメータの計算に使用された。血漿終末期消失半減期(T1/2)は、ln(2)/λzとして決定されたが、λzは、終末期での対数濃度対時間プロファイルの対数線形回帰の傾きの大きさである。AUCinfは、血漿濃度下の面積-無限大に外挿された時間曲線である(AUCinf= AUClast+Clast/λz、式中、Clastは最後に観察された血漿濃度である)。Cmaxは、Tmaxで生じる最大観測濃度である。選択化合物の結果をTable 6(表12)に示す。
【0265】
【0266】
(実施例7)
ラットのキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)耳炎症モデルにおけるKv1.3遮断剤治療の効果
ラットの片耳で古典的な遅延型過敏症(DTH)反応を誘発させた。簡単に説明すると、8~10週齢の雄のLewisラットを、-7日目に、完全フロイントアジュバント(CFA)(Difco社、カタログ番号263810)中に乳化した200μLのキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)(Sigma社、カタログ番号H7017)(4mg/mL)を用いて、尾の付け根の皮下(SC)に免疫した。0日目に、ラットの左耳の皮内に、40μLのKLH/NaCl 0.9%(2mg/mL)をチャレンジさせた。耳へのチャレンジの後、ラットはKLHチャレンジした左耳に、T細胞依存性炎症を発症する。右耳は炎症を起こさないままであり、対照として機能する。
【0267】
ビヒクルで治療したラット(n=8~10/gr)の反応をKv1.3遮断剤で治療したラットの反応と比較することにより、DTH耳腫脹反応を減少させるKv1.3遮断剤治療の能力を調査した。ビヒクル又はビヒクルに溶解したKv1.3遮断剤を、KLH耳チャレンジの24時間前にSC投与(2mL/kg)した。Kv1.3遮断剤の試験用量は50、70又は100nmol/kgであった。試験ビヒクルは、10mMリン酸塩、0.8%w/v NaCl、0.05%w/vポリソルベート20、pH6であった。シクロスポリン(CsA)を、全ての実験において陽性の研究対照として含めた。シクロスポリン(Sandimmune Neooral(登録商標)100mg/mL経口液剤、Novartis社)を、KLH耳チャレンジの1時間前及びKLH耳チャレンジの6時間後にもまた、経口(10mg/kg)投与した。
【0268】
有効性の一次読み出しとして、耳のDTH反応誘導後0~48時間からの各動物について、Δ耳の厚さ(mm)の曲線下面積(AUC)を計算し、その変化(D)は:左耳の厚さ-右耳の厚さ、のように計算された。次に、これらの結果を使用して、Kv1.3遮断剤治療による耳の厚さの%阻害を計算した:%阻害:((1-(個々のΔAUC Kv1.3遮断剤/平均ΔAUCビヒクル群))x100。結果は%阻害+/-標準偏差(SD)として計算され、Table 7(表13)及びTable 8(表14)に示される。
【0269】
【0270】
【0271】
本明細書に記載される研究は、助成金契約Venomics_CA_20111021の下、欧州共同体第7フレームワークプログラムFP7/2007-2013からの資金提供を受けている。
【配列表】
【国際調査報告】