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特表2022-548957キャップガイド及びRNAマッピングのためのその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-22
(54)【発明の名称】キャップガイド及びRNAマッピングのためのその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20221115BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALI20221115BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12Q1/6813 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517933
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(85)【翻訳文提出日】2022-03-18
(86)【国際出願番号】 US2020051583
(87)【国際公開番号】W WO2021055811
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】62/902,604
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513084469
【氏名又は名称】モデルナティエックス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ModernaTX,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100195796
【弁理士】
【氏名又は名称】塩尻 一尋
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・ジェイ・アマト
(72)【発明者】
【氏名】セレヌス・フア
(72)【発明者】
【氏名】ケリー・サランドリア
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA20
4B063QQ02
4B063QQ04
4B063QQ05
4B063QQ08
4B063QQ52
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS32
4B063QS34
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】
本開示は、一部の実施形態において、単離核酸(キャップガイドとも呼ばれる)及びRNAマッピングのためのその使用方法に関する。本開示は部分的に、mRNA分子の最初のヌクレオチドの少なくとも7ヌクレオチド下流にある位置に結合するガイドRNAに基づいている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5’から3’へと、式、
[R][R]
で表される単離核酸であって、
式中、それぞれのRは非修飾または修飾RNAヌクレオチドであり、Dはデオキシリボヌクレオチド塩基であり、q及びpのそれぞれは独立して、0~50の整数であり、
前記単離核酸は、mRNAの最初のヌクレオチドの少なくとも7ヌクレオチド下流の位置において前記mRNAにハイブリダイズし、
RNase Hの存在下における前記単離核酸の前記mRNAへのハイブリダイゼーションは、前記RNase Hによる前記mRNAの開裂をもたらす、
前記単離核酸。
【請求項2】
前記mRNAは配列番号:1または配列番号:2に記載の5’UTRを含む、請求項1に記載の単離核酸。
【請求項3】
式中、少なくとも1つのRは、
i)修飾RNAヌクレオチド、任意選択的に、2’-O-メチル修飾RNA塩基、2’フルオロ修飾RNA塩基、ペプチド核酸(PNA)、またはロックド核酸(LNA)、
ii)修飾主鎖であって、任意選択的に、前記修飾主鎖はホスホロチオエート主鎖である、前記修飾主鎖、または
iii)i)とii)の組み合わせ、
を含む、請求項1または請求項2に記載の単離核酸。
【請求項4】
式中、D及びDはシトシン(C)を含み、D及びDはチミン(T)を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の単離核酸。
【請求項5】
5’から3’へと、式、
[R][R]
で表される単離核酸であって、
式中、それぞれのRは非修飾または修飾RNA塩基であり、Dはデオキシリボヌクレオチド塩基であり、q及びpのそれぞれは独立して、0~50の整数であり、
式中、D及びDはシトシン(C)を含み、D及びDはチミン(T)を含み、
RNase Hの存在下における前記単離核酸のmRNA 5’非翻訳領域(5’UTR)へのハイブリダイゼーションは、前記RNase Hによる前記mRNA 5’UTRの開裂をもたらす、
前記単離核酸。
【請求項6】
式中、D、D、D、及びDのうちの少なくとも1つは非修飾デオキシリボヌクレオチド塩基である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の単離核酸。
【請求項7】
式中、D、D、D、及びDのうちの少なくとも1つは修飾デオキシリボヌクレオチド塩基である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の単離核酸。
【請求項8】
前記修飾デオキシリボヌクレオチド塩基は、5-ニトロインドール、イノシン、4-ニトロインドール、6-ニトロインドール、3-ニトロピロール、2-6-ジアミノプリン、2-アミノ-アデニン、または2-チオ-チアミンである、請求項7に記載の単離核酸。
【請求項9】
前記RNase Hによる前記mRNA 5’UTRの前記開裂は、インタクトmRNAキャップの遊離をもたらす、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の単離核酸。
【請求項10】
前記mRNAはin vitro転写(IVT)RNAである、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の単離核酸。
【請求項11】
前記単離核酸は表2に記載の配列から選択される、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の単離核酸。
【請求項12】
前記単離核酸は配列番号:3または配列番号:4である、請求項11に記載の単離核酸。
【請求項13】
前記単離核酸は配列番号:5または配列番号:6である、請求項11に記載の単離核酸。
【請求項14】
前記単離核酸は配列番号:7または配列番号:8である、請求項11に記載の単離核酸。
【請求項15】
前記単離核酸は配列番号:9または配列番号:10である、請求項11に記載の単離核酸。
【請求項16】
前記単離核酸は配列番号:11または配列番号:12である、請求項11に記載の単離核酸。
【請求項17】
前記単離核酸は配列番号:13または配列番号:14である、請求項11に記載の単離核酸。
【請求項18】
前記単離核酸は配列番号:15である、請求項11に記載の単離核酸。
【請求項19】
複数の単離核酸を含む組成物であって、前記単離核酸のそれぞれは個別に、請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の単離核酸である、前記組成物。
【請求項20】
前記複数は3つまたはそれ以上の単離核酸である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
バッファー、及び任意選択的に、RNase H酵素を更に含む、請求項19または請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
単離核酸を選択するための方法であって、
請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の単離核酸にハイブリダイズしたmRNAをRNase酵素で消化して、複数のmRNAフラグメントを生成すること、
前記複数のmRNAフラグメントを物理的に分離すること、
前記複数のmRNAフラグメントを検出することによって前記mRNAのシグネチャープロファイルを作成すること、
前記シグネチャープロファイルを既知のmRNAシグネチャープロファイルと比較すること、及び
前記シグネチャープロファイルの前記既知のRNAシグネチャープロファイルとの前記比較に基づいて、前記単離核酸を選択すること、
を含む、前記方法。
【請求項23】
前記選択すること及び/または前記検出することは、ゲル電気泳動、キャピラリ電気泳動、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、及び質量分析からなる群から選択される方法を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記HPLCはHPLC-UVである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記質量分析はエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)またはマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記mRNAは、消化前において、尿素、EDTA、塩化マグネシウム(MgCl)、及びトリスからなる群から選択される少なくとも1種の構成成分を含むバッファーと混合されている、請求項22から請求項25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記mRNA及び前記バッファーは60℃~100℃の温度でインキュベートされる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記消化に続いて、前記mRNA試料を2’,3’-環状-ヌクレオチド 3’-ホスホジエステラーゼ(CNP)とインキュベートしてCNP処理済みmRNA試料を作製することを更に含む、請求項22から請求項27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記mRNAをCNPと前記インキュベートすることは約1時間実施される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記CNP処理済みmRNAを子ウシ腸内アルカリホスファターゼ(CIP)とインキュベートすることを更に含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記mRNAを酵素阻害剤とインキュベートすることを更に含む、請求項28から請求項30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記酵素阻害剤はEDTAである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記シグネチャープロファイルは吸収スペクトルまたは質量スペクトルの形態である、請求項22から請求項32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記単離核酸は請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の単離核酸である、請求項22から請求項33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記mRNA 5’非翻訳領域(5’UTR)は配列番号:1または配列番号:2を含む、請求項22から請求項34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記比較することは、前記シグネチャープロファイルの前記既知のRNAシグネチャープロファイルとの前記比較に基づいて、前記mRNAのキャップ構造を同定することを含む、請求項22から請求項35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
RNA医薬組成物の品質管理のための方法であって、
前記RNA医薬組成物をRNase H酵素で消化して、複数のRNAフラグメントを生成すること、
前記複数のRNAフラグメントを物理的に分離すること、
前記複数のフラグメントを検出することによって前記RNA医薬組成物のシグネチャープロファイルを作成すること、
前記シグネチャープロファイルを既知のRNAシグネチャープロファイルと比較すること、及び
前記シグネチャープロファイルの前記既知のRNAシグネチャープロファイルとの前記比較に基づいて、前記RNAの品質を測定すること、
を含み、
前記消化工程は、前記RNA医薬組成物をRNase H酵素と接触させる前に、前記RNA医薬組成物を請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の単離核酸または請求項19から請求項21のいずれか1項に記載の医薬組成物と接触させることを含む、
前記方法。
【請求項38】
前記消化工程はブロッキングオリゴヌクレオチドの存在下で実施される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記ブロッキングオリゴヌクレオチドは少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含み、任意選択的に、前記修飾は、ロックド核酸ヌクレオチド(LNA)、2’OMe-修飾ヌクレオチド、及びペプチド核酸(PNA)ヌクレオチドから選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記ブロッキングオリゴヌクレオチドは前記試験mRNAの5’非翻訳領域(5’UTR)または3’非翻訳領域(3’UTR)を標的とする、請求項38または請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記mRNAはin vitro転写(IVT)によって調製される、請求項37から請求項40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記RNAは治療用mRNAである、請求項37から請求項41のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、mRNA生成プロセス中におけるメッセンジャーRNA(mRNA)の特性決定のための方法に関する。
関連出願
本出願は、2019年9月19日出願、表題「CAP GUIDES AND METHODS OF USE THEREOF FOR RNA MAPPING」の米国仮出願シリアル番号62/902,604の出願日に対する米国特許法119(e)条の利益を主張するものであり、その内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
大型mRNAの構造バリアント、例えば、配列中断、不均一ポリAテール、または折り畳み構造などの確認は、前臨床及び臨床試験用に製造されたmRNAベース製品を特性決定してその製剤の一貫性、安全性、及び活性を確保するために必須である。大きなサイズ及び構造バリアントは、必要な解像度または感度を有していない多くの利用可能な解析ツールに課題を課している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2018/081462A1
【特許文献2】WO2014/144039A1
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は少なくとも部分的に、RNase H及びホスファターゼを用いた処理後のmRNA上におけるある特定の核酸種(例えば、キャップ種、コード領域種、ポリAテール種など)の相対存在量を測定するのに有用なキャップガイドの設計、スクリーニング、及び選択に基づいている。本開示は部分的に、標的核酸の最初の核酸残基の少なくとも7ヌクレオチド下流(例えば、標的核酸の最初の核酸残基に対して3’)の位置においてmRNA分子などの標的核酸に特異的に結合(例えば、ハイブリダイズ)する単離核酸に基づいている。一部の態様では、このような単離核酸は、1つまたは複数の修飾、例えば、1つまたは複数の2’-O-メチル(2’OMe)修飾、1つまたは複数のホスホロチオエート(PS)修飾、またはこれらの組み合わせを含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の単離核酸(例えば、キャップガイド)は、これまでに記載されたガイド核酸と比較してより高い感度及び/または特異度でmRNA種を検出する。
【0005】
それゆえ、本開示の態様は、5’から3’へと、式、
[R][R]
で表される単離核酸に関し、
式中、それぞれのRは非修飾または修飾RNA塩基であり、Dはデオキシリボヌクレオチド塩基であり、q及びpのそれぞれは独立して、0~50の整数であり、単離核酸は、mRNAの最初のヌクレオチドの少なくとも7ヌクレオチド下流の位置においてmRNAにハイブリダイズし、RNase Hの存在下における単離核酸のmRNAへのハイブリダイゼーションは、RNase HによるmRNAの開裂をもたらす。一部の実施形態では、mRNAは配列番号:1または配列番号:2に記載の5’UTRを含む。一部の実施形態では、D及びDはシトシン(C)を含み、D及びDはチミン(T)を含む。一部の実施形態では、それぞれのRは、2’OMe修飾及び/またはホスホロチオエート修飾を含む。
【0006】
本開示の態様は、5’から3’へと、式、
[R][R]
で表される単離核酸に関し、
式中、それぞれのRは非修飾または修飾RNA塩基であり、Dはデオキシリボヌクレオチド塩基であり、q及びpのそれぞれは独立して、0~50の整数であり、RNase Hの存在下における、mRNA 5’非翻訳領域(5’UTR)の+7位への単離核酸のハイブリダイゼーションは、RNase HによるmRNA 5’UTRの開裂をもたらし、mRNA 5’UTRは配列番号:1または配列番号:2を含む。一部の実施形態では、D及びDはシトシン(C)を含み、D及びDはチミン(T)を含む。
【0007】
本開示の態様は、5’から3’へと、式、
[R][R]
で表される単離核酸に関し、
式中、それぞれのRは非修飾または修飾RNA塩基であり、Dはデオキシリボヌクレオチド塩基であり、q及びpのそれぞれは独立して、0~50の整数であり、式中、D及びDはシトシン(C)を含み、D及びDはチミン(T)を含み、RNase Hの存在下における、mRNA 5’非翻訳領域(5’UTR)の+7位への単離核酸のハイブリダイゼーションは、RNase HによるmRNA 5’UTRの開裂をもたらす。
【0008】
一部の実施形態では、少なくとも1つのRは、修飾RNAヌクレオチド、任意選択的に、2’-O-メチル修飾RNAヌクレオチド、2’-フルオロ修飾RNAヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)、またはロックド核酸(LNA)である。一部の実施形態では、少なくとも1つのRは、修飾RNA主鎖、任意選択的に、ホスホロチオエート(PS)主鎖を含む。一部の実施形態では、D、D、D、及びDのうちの少なくとも1つは非修飾デオキシリボヌクレオチド塩基である。一部の実施形態では、D、D、D、及びDのうちの少なくとも1つは修飾デオキシリボヌクレオチド塩基である。
【0009】
一部の実施形態では、修飾デオキシリボヌクレオチド塩基は、5-ニトロインドール、イノシン、4-ニトロインドール、6-ニトロインドール、3-ニトロピロール、2-6-ジアミノプリン、2-アミノ-アデニン、または2-チオ-チアミンである。
【0010】
一部の実施形態では、RNase HによるmRNAの開裂は、mRNAの5’UTRの遊離をもたらす。一部の実施形態では、RNase HによるmRNAの開裂は、mRNAのポリAテールの遊離をもたらす。一部の実施形態では、RNase HによるmRNA(例えば、mRNA 5’UTR)の開裂は、インタクトmRNAキャップの遊離をもたらす。一部の実施形態では、mRNAはin vitro転写(IVT)RNAである。
【0011】
一部の実施形態では、単離核酸は表2に記載の配列から選択される。一部の実施形態では、単離核酸は配列番号:3または配列番号:4である。一部の実施形態では、単離核酸は配列番号:5または配列番号:6である。一部の実施形態では、単離核酸は配列番号:7または配列番号:8である。一部の実施形態では、単離核酸は配列番号:9または配列番号:10である。一部の実施形態では、単離核酸は配列番号:11または配列番号:12である。一部の実施形態では、単離核酸は配列番号:13または配列番号:14である。一部の実施形態では、単離核酸は配列番号:15である。
【0012】
本開示の態様は、複数の単離核酸を含む組成物に関し、単離核酸のそれぞれは個別に、本明細書に記載の単離核酸である。一部の実施形態では、複数は3つまたはそれ以上の単離核酸である。一部の実施形態では、組成物は、バッファー、及び任意選択的に、RNase H酵素を更に含む。
【0013】
本開示の態様は、単離核酸を選択するための方法に関し、方法は、本明細書で提供する単離核酸にハイブリダイズしたmRNAをRNase酵素で消化して、複数のmRNAフラグメントを生成すること、複数のmRNAフラグメントを物理的に分離すること、複数のmRNAフラグメントを検出することによってmRNAのシグネチャープロファイルを作成すること、シグネチャープロファイルを既知のmRNAシグネチャープロファイルと比較すること、及び、シグネチャープロファイルの既知のRNAシグネチャープロファイルとの比較に基づいて、単離核酸を選択することを含む。
【0014】
一部の実施形態では、選択すること及び/または検出することは、ゲル電気泳動、キャピラリ電気泳動、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、及び質量分析からなる群から選択される方法を含む。一部の実施形態では、HPLCはHPLC-UVである。一部の実施形態では、質量分析はエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)またはマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析である。
【0015】
一部の実施形態では、mRNAは、消化前において、尿素、EDTA、塩化マグネシウム(MgCl)、及びトリスからなる群から選択される少なくとも1種の構成成分を含むバッファーと混合されている。一部の実施形態では、mRNA及びバッファーは60℃~100℃の温度でインキュベートされる。
【0016】
一部の実施形態では、本明細書で提供する方法は、消化に続いて、mRNA試料を2’,3’-環状-ヌクレオチド 3’-ホスホジエステラーゼ(CNP)とインキュベートしてCNP処理済みmRNA試料を作製することを更に含む。一部の実施形態では、mRNAをCNPとインキュベートすることは約1時間実施される。一部の実施形態では、方法は、CNP処理済みmRNAを子ウシ腸内アルカリホスファターゼ(CIP)とインキュベートすることを更に含む。
【0017】
一部の実施形態では、方法は、mRNAを酵素阻害剤とインキュベートすることを更に含む。一部の実施形態では、酵素阻害剤はEDTAである。
【0018】
一部の実施形態では、シグネチャープロファイルは吸収スペクトルまたは質量スペクトルの形態である。
【0019】
一部の実施形態では、単離核酸は本明細書に記載の単離核酸である。一部の実施形態では、mRNA 5’非翻訳領域(5’UTR)は配列番号:1または配列番号:2を含む。
【0020】
一部の実施形態では、シグネチャープロファイルは、シグネチャープロファイルの既知のRNAシグネチャープロファイルとの比較に基づいて、mRNAのキャップ構造を同定することを含む。
【0021】
本開示の態様は、RNA医薬組成物をRNase H酵素で消化して、複数のRNAフラグメントを生成すること、複数のRNAフラグメントを物理的に分離すること、複数のフラグメントを検出することによってRNA医薬組成物のシグネチャープロファイルを作成すること、シグネチャープロファイルを既知のRNAシグネチャープロファイルと比較すること、及び、シグネチャープロファイルの既知のRNAシグネチャープロファイルとの比較に基づいて、RNAの品質を測定すること、を含む、RNA医薬組成物の品質管理のための方法に関し、消化工程は、RNA医薬組成物をRNase H酵素と接触させる前に、RNA医薬組成物を本明細書に記載の単離核酸または本明細書に記載の医薬組成物と接触させることを含む。
【0022】
一部の実施形態では、消化工程はブロッキングオリゴヌクレオチドの存在下で実施される。一部の実施形態では、ブロッキングオリゴヌクレオチドは少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含み、任意選択的に、修飾は、ロックド核酸ヌクレオチド(LNA)、2’OMe-修飾ヌクレオチド、及びペプチド核酸(PNA)ヌクレオチドから選択される。一部の実施形態では、ブロッキングオリゴヌクレオチドは、1つまたは複数の修飾主鎖結合、例えば、1つまたは複数のホスホロチオエート結合を含む。一部の実施形態では、ブロッキングオリゴヌクレオチドは、完全修飾主鎖、例えば、ホスホロチオエート(PS)主鎖を含む。一部の実施形態では、ブロッキングオリゴヌクレオチドは、試験mRNAの5’非翻訳領域(5’UTR)、オープンリーディングフレーム、または3’非翻訳領域(3’UTR)を標的とする。
【0023】
一部の実施形態では、mRNAはin vitro転写(IVT)によって調製される。一部の実施形態では、RNAは治療用mRNAである。
【0024】
本発明の限定のそれぞれは本発明の様々な実施形態を包含し得る。それゆえ、任意の1つの要素または要素の組み合わせを含む本発明の限定のそれぞれが本発明のそれぞれの態様に含まれ得ることが予想される。本発明はその適用において、以下の説明に記載するまたは図面に示す構造の詳細及び構成成分の配合に限定されない。本発明はその他の実施形態においても可能であり、また様々な方法で実施または実行可能である。また、本明細書で使用する表現及び専門用語は説明を目的としたものであり、限定としてみなされるべきではない。本明細書で使用する、「含む(including)」、「含む(comprising)」、または「有する」、「含む(containing)」、「含む(involving)」、及びその変化形態は、その後に列記される要素及びそれらの等価物、ならびに更なる要素を包含することを意味する。
【0025】
以下の図面は本明細書の一部を形成し、本開示の特定の態様を更に説明するために含まれるが、本明細書で提供する特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせてこれら図面のうちの1つまたは複数を参照することにより、本開示の特定の態様をより適切に理解することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】RNase H及びホスファターゼを用いた処理後のmRNA上におけるキャップ種の相対存在量の代表的なデータを示す。
図2】RNase H及びホスファターゼを用いた処理後のmRNA上におけるキャップ種の代表的な質量分析プロファイルを示す。
図3】キャップ種の保持時間の代表的なトータルイオンクロマトグラム(TIC)データを示す。
図4】試料1の相対キャップ定量比較の代表的なデータを示す。
図5】試料6の相対キャップ定量比較の代表的なデータを示す。
図6】目的の主鎖修飾の代表的な構造を示す。
図7】隣接LNA配列または隣接LNA/2’OMe配列を含むキャップガイド配列を示す。配列番号:18~23を示す。
図8】主鎖修飾スクリーニングによる正規化キャップ1存在度の代表的なデータを示す。
図9】主鎖修飾スクリーニングによる保持時間の代表的なトータルイオンクロマトグラム(TIC)データを示す。
図10】異なる濃度の修飾キャップガイドを使用した解析によるキャップ1存在量の代表的なデータを示す。
図11】キャップガイド7PS直線性の代表的なデータを示す。
図12A】ワクシニアキャップ付加mRNAにおけるキャップガイド7PS及び現行キャップガイドの存在率の代表的なデータを示す。
図12B】キャップガイド7PS及び現行キャップガイドの存在量の代表的なデータを示す。
図13】ワクシニアキャップ付加mRNA及び共転写(共転写物)キャップ付加mRNAにおけるキャップガイド7PS及び現行キャップガイドの存在率の代表的なデータを示す。
図14】LC-UV分析による共転写物アッセイの代表的なデータを示す。
図15】共転写物LC-UVキャップアッセイによる配列バリアントの効果の代表的なデータを示す。
図16】従来ガイド条件対ピーク面積(上段パネル)及び7ntガイド条件対ピーク面積(下段パネル)の代表的なデータを示す。
図17】従来ガイド及び7ntガイドにおけるガイド濃度及び消化時間の代表的なデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
治療的文脈における対象へのmRNA分子の送達は、核酸ベース送達システム(例えば、ウイルスベクター及びDNAベースプラスミド)を必要とすることなくmRNAの細胞内翻訳及び少なくとも1種の目的のコードペプチドまたはポリペプチドの生成を可能とする点から期待が持てる。治療用mRNA分子は一般的に研究室で合成される(例えば、in vitro転写によって)。しかしながら、製造プロセス中には、不純物または夾雑物、例えば、誤って合成されたmRNA及び/または望ましくない合成試薬などを最終治療用製剤へと持ち越してしまうという潜在的なリスクがある。不純または汚染されたmRNAの投与を防止するため、使用前に、mRNA分子に対して品質管理(QC)手順(例えば、認証または確認された)を実施してもよい。認証により、適切なmRNA分子が合成されておりかつ純粋であることが確実となる。
【0028】
本明細書では、mRNA(例えば、RNA試料中の標的mRNA)を解析及び特性決定するための組成物及び方法を提供する。本開示は部分的に、標的核酸の最初の核酸位置の少なくとも7ヌクレオチド下流(例えば、標的核酸の最初の核酸位置に対して3’)の位置においてmRNA分子などの標的核酸に特異的に結合(例えば、ハイブリダイズ)する単離核酸に基づいている。一部の実施形態では、このような単離核酸は「+7ガイド」または「7nt」ガイドと呼ばれる。一部の態様では、このような単離核酸(例えば、7ntガイド)は、1つまたは複数の修飾、例えば、1つまたは複数の2’-O-メチル(2’OMe)修飾、1つまたは複数のホスホロチオエート(PS)修飾、またはこれらの組み合わせを含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の単離核酸(例えば、キャップガイド)は、これまでに記載されたガイド核酸と比較してより高い感度及び/または特異度でmRNA種を検出する。
【0029】
一部の実施形態では、本開示の単離核酸は、mRNAを解析及び特性決定するために使用される。それゆえ、一部の実施形態では、本開示は、mRNAを解析及び特性決定するための単離核酸を選択するための方法を提供する。一部の実施形態では、本開示は、本明細書に記載の単離核酸を含むmRNA医薬組成物の品質管理のための方法を提供する。
【0030】
単離核酸
一部の態様では、本開示は、mRNA(例えば、標的mRNA)にアニールしてそのmRNAのRNase H開裂を誘導する単離核酸(例えば、特定のオリゴ)を提供する。一部の実施形態では、単離核酸は「ガイド鎖」または「キャップガイド」と呼ばれる。
【0031】
「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、互いに共有結合した少なくとも2つのヌクレオチドであり、一部の例では、ホスホジエステル結合(例えば、ホスホジエステル「主鎖」)または修飾結合(例えば、修飾主鎖)、例えば、ホスホロチオエート結合(例えば、ホスホロチオエート(PS)主鎖)などを含有していてもよい。「単離核酸」は自然に発生しない核酸である。一部の例では、mRNA試料中のmRNAは単離mRNAを含む。しかしながら、全体として単離核酸が天然ではないという一方で、自然に発生するヌクレオチド配列を含み得るということを理解すべきである。それゆえ、「ポリヌクレオチド」または「核酸」配列は、一般的にDNA及びRNA内における、一続きのヌクレオチド塩基(「ヌクレオチド」とも呼ばれる)であり、2つまたはそれ以上のヌクレオチドの任意の鎖のことを意味する。この用語は、ゲノムDNA、cDNA、RNA、任意の合成及び遺伝子操作されたポリヌクレオチドを含む。この用語は、一本鎖分子及び二本鎖分子、すなわち、DNA-DNA、DNA-RNA、及びRNA-RNAハイブリッドに加えて、塩基をアミノ酸主鎖にコンジュゲートすることによって形成された「タンパク質核酸」(PNA)、及び、2’酸素及び4’炭素を連結する追加の架橋でRNAのリボース部分を修飾することによって形成された「ロックド核酸」を含む。
【0032】
単離核酸は、長さにおいて、例えば、約2ヌクレオチド長~約50,000ヌクレオチド長の範囲であってもよい。一部の実施形態では、単離核酸は、約2~10、5~20、10~50、50~200、100~500、250~1000、500~2500、1000~5000、2500~10,000、5,000~25,000、10,000~50,000、またはそれ以上のヌクレオチド長の範囲である。一部の実施形態では、単離核酸は50,000ヌクレオチド長よりも長い。
【0033】
本開示の態様は、最初の核酸位置(例えば、核酸塩基)の少なくとも7ヌクレオチド「下流」のmRNAの位置に結合する単離核酸(例えば、ガイド)に関する。一部の実施形態では、単離核酸(例えば、ガイド)は、最初の核酸位置の4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、またはそれ以上の数のヌクレオチド下流の位置においてmRNAに結合する。一部の実施形態では、単離核酸(例えば、ガイド)は、最初の核酸位置の25ヌクレオチド超(例えば、30、40、50、100、200、500、またはそれ以上の数)のヌクレオチド下流の位置においてmRNAに結合する。一部の実施形態では、単離核酸(例えば、ガイド)は、mRNA非翻訳領域(UTR)、例えば、5’UTRまたは3’UTRなどの1つまたは複数の核酸位置に結合する。一部の実施形態では、単離核酸(例えば、ガイド)は、mRNAのタンパク質コード領域の1つまたは複数の核酸位置(例えば、mRNAの5’UTRと3’UTRの間の1つまたは複数の位置、例えば、オープンリーディングフレームなど)に結合する。一部の実施形態では、単離核酸は、最後のタンパク質コード核酸位置(例えば、「終止」コドンの最後の核酸位置)の約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、またはそれ以上の数のヌクレオチド上流に結合する。
【0034】
一部の態様では、本開示は、5’から3’へと、式、
[R][R]
で表される単離核酸に関し、
式中、それぞれのRは非修飾または修飾RNA塩基であり、Dはデオキシリボヌクレオチド塩基であり、q及びpのそれぞれは独立して、0~50の整数であり、単離核酸は、mRNAの最初のヌクレオチドの少なくとも7ヌクレオチド下流の位置においてmRNAにハイブリダイズし、RNase Hの存在下における単離核酸のmRNAへのハイブリダイゼーションは、RNase HによるmRNAの開裂をもたらす。一部の実施形態では、mRNAは配列番号:1または配列番号:2に記載の5’UTRを含む。
【0035】
一部の態様では、本開示は、5’から3’へと、式、
[R][R]
で表される単離核酸を提供し、
式中、それぞれのRは修飾または非修飾RNA塩基であり、Dはデオキシリボヌクレオチド塩基であり、q及びpのそれぞれは独立して、0~50の整数であり、RNase Hの存在下における単離核酸のmRNA 5’非翻訳領域(5’UTR)へと少なくとも7nt内側の核酸位置へのハイブリダイゼーションは、RNase HによるmRNA 5’UTRの開裂をもたらす。一部の実施形態では、mRNA 5’UTRは配列番号:1または配列番号:2を含む。
【表1】
【0036】
一部の態様では、本開示は、5’から3’へと、式、
[R][R]
で表される単離核酸を提供し、
式中、それぞれのRは修飾または非修飾RNA塩基であり、Dはデオキシリボヌクレオチド塩基であり、q及びpのそれぞれは独立して、0~50の整数であり、式中、D及びDはシトシン(C)を含み、D及びDはチミン(T)を含み、RNase Hの存在下における単離核酸のmRNA 5’非翻訳領域(5’UTR)へのハイブリダイゼーションは、RNase HによるmRNA 5’UTRの開裂をもたらす。
【0037】
一部の実施形態では、少なくとも1つのRは、修飾RNAヌクレオチド、例えば、2’-O-メチル修飾RNAヌクレオチドである。修飾の例としては、シュードウリジン、N1-メチルシュードウリジン、2-チオウリジン、4’-チオウリジン、5-メチルシトシン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-シュードウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ジヒドロシュードウリジン、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-シュードウリジン、4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジン、4-メトキシ-シュードウリジン、4-チオ-1-メチル-シュードウリジン、4-チオ-シュードウリジン、5-アザ-ウリジン、ジヒドロシュードウリジン、5-メトキシウリジン、2’-O-メチルウリジン、及び2’-フルオロが挙げられるがこれらに限定されない。本明細書に記載のmRNAに有用な修飾のその他の例としては、米国特許出願公開番号2015/0064235に列挙されているようなものが挙げられる。
【0038】
一部の実施形態では、少なくとも1つのRは主鎖修飾を含む。「主鎖修飾」とは、単離核酸への1つまたは複数の非天然ホスフェート系結合の導入のことを意味する。例えば、例えば、リン酸基の酸素のうちの1つまたは複数を硫黄で置換すること(例えば、ホスホロチオエート(PS))によって、または、例えば、Eckstein,Antisense Nucleic Acid Drug Dev.2000 Apr.10(2):117-21,Rusckowski et al.Antisense Nucleic Acid Drug Dev.2000 Oct.10(5):333-45,Stein,Antisense Nucleic Acid Drug Dev.2001 Oct.11(5):317-25,Vorobjev et al.Antisense Nucleic Acid Drug Dev.2001 Apr.11(2):77-85、及び米国特許第5,684,143号に記載されているように、ヌクレオチドがその目的の機能を実行可能とするようなその他の置換を実施することによって、ヌクレオチドのリン酸基を修飾してもよい。上で言及した修飾(例えば、リン酸基修飾)のうちの特定のものは、例えば、in vivoまたはin vitroにおいて、上記アナログを含むポリヌクレオチドの加水分解速度を好ましくは低下させる。一部の実施形態では、単離核酸のそれぞれのRは主鎖修飾を含む(例えば、ガイドは「R」部分に対する完全修飾主鎖を含む)。
【0039】
[R]及び[R]のそれぞれの長さは独立して、様々な長さであり得る。例えば、一部の実施形態では、qは0~50の整数(例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50)であり、pは0~50の整数(例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50)である。
【0040】
一部の実施形態では、qは0~30の整数(例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30)であり、pは0~30の整数(例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30)である。
【0041】
一部の実施形態では、qは0~15の整数(例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15)であり、pは0~15の整数(例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15)である。
【0042】
一部の実施形態では、qは0~6の整数(例えば、0、1、2、3、4、5、または6)であり、pは1~10の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10)である。一部の実施形態では、pは0~6の整数(例えば、0、1、2、3、4、5、または6)であり、qは1~10の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10)である。
【0043】
一部の実施形態では、D及びDのそれぞれは非修飾(例えば、天然)デオキシリボヌクレオチド塩基である。本明細書で使用する場合、「非修飾デオキシリボヌクレオチド塩基」とは、天然DNA塩基、例えば、アデノシン、グアノシン、シトシン、チミン、またはウラシルなどのことを意味する。一部の実施形態では、D、D、またはD及びDは、非天然(例えば、修飾)デオキシリボヌクレオチド塩基である。一部の実施形態では、Dは非天然(例えば、修飾)デオキシリボヌクレオチド塩基である。一部の実施形態では、Dは非天然(例えば、修飾)デオキシリボヌクレオチド塩基である。一部の実施形態では、Dは非天然(例えば、修飾)デオキシリボヌクレオチド塩基である。一部の実施形態では、Dは非天然(例えば、修飾)デオキシリボヌクレオチド塩基である。
【0044】
用語「修飾デオキシリボヌクレオチド塩基」、「ヌクレオチドアナログ」、または「変異ヌクレオチド」とは、非天然デオキシリボヌクレオチドを含む非標準的なヌクレオチドのことを意味する。好ましいヌクレオチドアナログは、ヌクレオチドアナログがその目的の機能を実行する能力をなおも保持しつつヌクレオチドの特定の化学的特性が変化するように、任意の位置で修飾されている。誘導体化され得るヌクレオチドの位置の例としては、5位、例えば、5-(2-アミノ)プロピルウリジン、5-ブロモウリジン、5-プロピンウリジン、5-プロペニルウリジンなど、6位、例えば、6-(2-アミノ)プロピルウリジン、アデノシン及び/またはグアノシンにおける8位、例えば、8-ブロモグアノシン、8-クロログアノシン、8-フルオログアノシンなどが挙げられる。ヌクレオチドアナログとしてはまた、デアザヌクレオチド、例えば、7-デアザ-アデノシン、O-及びN-修飾(例えば、アルキル化、例えば、N6-メチルアデノシン、または別の当該技術分野において周知のもの)ヌクレオチド、及び、Herdewijn,Antisense Nucleic Acid Drug Dev.,2000 Aug.10(4):297-310に記載されているようなその他の複素環的に修飾されたヌクレオチドアナログが挙げられる。
【0045】
ヌクレオチドアナログはまた、ヌクレオチドの糖部分に修飾を含んでいてもよい。例えば、2’ OH-基は、H、OR、R、F、Cl、Br、I、SH、SR、NH、NHR、NR、COOR、またはORから選択される基で置換されていてもよく、式中、Rは、置換または非置換C-Cアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールなどである。
【0046】
一部の実施形態では、非天然(例えば、修飾)デオキシリボヌクレオチド塩基は5-ニトロインドールまたはイノシンである。一部の実施形態では、修飾デオキシリボヌクレオチドは、4-ニトロインドール、6-ニトロインドール、3-ニトロピロール、2-6-ジアミノプリン、2-アミノ-アデニン、または2-チオ-チアミンである。
【0047】
一部の実施形態では、RNase Hの存在下における特定の単離核酸(例えば、ガイド鎖)のmRNAへのハイブリダイゼーションは、RNase HによるmRNAからのmRNA 5’非翻訳領域(5’UTR)の特定の分離をもたらす。いかなる特定の理論に制限されるものではないが、mRNAのインタクト5’UTRの分離により、例えば、5’キャップフラグメントの質量分析によるmRNAの5’キャップ構造の特性決定が可能となる。一部の実施形態では、単離核酸は、mRNAのその他の領域(例えば、オープンリーディングフレーム(ORF)、3’非翻訳領域(UTR)、ポリAテールなど)の消化を伴うことなく、mRNAのインタクト5’UTRの分離を誘導する。一部の実施形態では、単離核酸は、mRNAのその他の領域(例えば、3’非翻訳領域(UTR)、ポリAテールなど)の消化を伴うことなく、mRNAのインタクト5’UTR及びmRNAの特定のその他の部分(例えば、コード配列またはその一部)の分離を誘導する。
【0048】
一部の実施形態では、mRNA 5’UTRのRNase H開裂を誘導する単離核酸(例えば、ガイド鎖)は、mRNAにおけるmRNAの5’末端から7以上のヌクレオチドにある5’UTR領域(例えば、mRNA開始コドンの最初のヌクレオチドのすぐ上流の領域)内の任意の場所にハイブリダイズし得る。例えば、一部の実施形態では、単離核酸(例えば、ガイド鎖)は、開始コドンの最初のヌクレオチドの1ヌクレオチド~約200ヌクレオチド上流のmRNA 5’UTRにハイブリダイズする。一部の実施形態では、単離核酸(例えば、ガイド鎖)は、開始コドンの最初のヌクレオチドの1ヌクレオチド~約100ヌクレオチド上流のmRNA 5’UTRにハイブリダイズする。一部の実施形態では、単離核酸(例えば、ガイド鎖)は、開始コドンの最初のヌクレオチドの1ヌクレオチド~約50ヌクレオチド(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50ヌクレオチド)上流のmRNA 5’UTRにハイブリダイズする。mRNA 5’UTRのRNase H開裂をもたらす単離核酸(例えば、ガイド鎖)の非限定例を表2に示す。
【表2】
【0049】
複数の単離核酸を含む組成物(例えば、ガイド鎖のカクテル)についてもまた本開示において検討を行う。一部の実施形態では、複数の単離核酸を含む組成物(例えば、ガイド鎖のカクテル)は、5’UTR、ORF、及び3’UTRを含むがこれらに限定されないmRNAの様々な領域の同時(例えば、「ワンポット」)消化及びそれに続く分離に有用である。本開示に記載する組成物は2~100の単離核酸(例えば、2~100のガイド鎖)を含有していてもよい。一部の実施形態では、複数のガイド鎖を含む組成物は、2、3、4、5、6、7、8、9、または10の固有の単離核酸(例えば、ガイド鎖)を含む。一部の実施形態では、組成物は、3つの異なる単離核酸(例えば、ガイド鎖)を含む。例えば、1つ、または2つのガイド鎖を同時に(例えば、連続的に)使用すると、mRNAの複数の直交消化を同一の手順及びランタイムで同時に実施することができ、RNaseマッピング中におけるより高い配列カバレッジが可能となる。
【0050】
一部の態様では、本開示は、本開示に記載の複数の単離核酸を含む組成物を提供する。一部の実施形態では、複数は3つまたはそれ以上の単離核酸である。一部の実施形態では、複数は、配列番号:3~15からなる群から選択される3つまたはそれ以上の単離核酸である。
【0051】
一部の実施形態では、複数は、それぞれがmRNAの異なる部分の開裂(例えば、5’UTR、オープンリーディングフレーム、3’UTR、ポリAテールなどの開裂)をもたらす5~50の単離核酸を含む。一部の実施形態では、複数は、それぞれがmRNA 5’UTRの開裂をもたらす5~50の単離核酸を含む。一部の実施形態では、複数は、それぞれがmRNAの異なる部分の開裂(例えば、5’UTR、オープンリーディングフレーム、3’UTR、ポリAテールなどの開裂)をもたらす10~20の単離核酸を含む。一部の実施形態では、複数は、それぞれがmRNAの異なる部分の開裂(例えば、5’UTR、オープンリーディングフレーム、3’UTR、ポリAテールなどの開裂)をもたらす1~5の単離核酸を含む。一部の実施形態では、複数は、それぞれがmRNA 5’UTRの開裂をもたらす10~20の単離核酸を含む。一部の実施形態では、複数は、それぞれがmRNA 5’UTRの開裂をもたらす1~5の単離核酸を含む。
【0052】
一部の実施形態では、複数は、(i)mRNA 5’UTRの開裂をもたらす少なくとも1つの単離核酸(例えば、本明細書で提供する単離核酸)、及び(ii)mRNA 3’UTRの開裂をもたらす少なくとも1つの単離核酸を含む。
【0053】
一部の実施形態では、複数は、(i)mRNA 5’UTRの開裂をもたらす少なくとも1つの単離核酸(例えば、本明細書で提供する単離核酸)、(ii)mRNA 3’UTRの開裂をもたらす少なくとも1つの単離核酸、及び(iii)mRNA ORFの開裂をもたらす少なくとも1つの単離核酸を含む。
【0054】
mRNA 3’UTRのRNase H開裂をもたらす単離核酸(例えば、ガイド鎖)は、mRNAの3’UTR領域(例えば、mRNA終止コドンの最後のヌクレオチドのすぐ下流の領域)内の任意の場所にハイブリダイズし得る。例えば、一部の実施形態では、単離核酸(例えば、ガイド鎖)は、終止コドンの最後のヌクレオチドの1ヌクレオチド~約200ヌクレオチド下流のmRNA 3’UTRにハイブリダイズする。一部の実施形態では、単離核酸(例えば、ガイド鎖)は、終止コドンの最後のヌクレオチドの1ヌクレオチド~約100ヌクレオチド下流のmRNA 3’UTRにハイブリダイズする。一部の実施形態では、単離核酸(例えば、ガイド鎖)は、終止コドンの最後のヌクレオチドの1ヌクレオチド~約50ヌクレオチド(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50ヌクレオチド)下流のmRNA 3’UTRにハイブリダイズする。
【0055】
一部の実施形態では、RNase Hの存在下における単離核酸のmRNAへのハイブリダイゼーションは、RNase HによるmRNAオープンリーディングフレーム(ORF)の開裂をもたらし、mRNAの5’UTRまたは3’UTRの開裂をもたらさない。いかなる特定の理論に制限されるものではないが、単離核酸(例えば、ガイド鎖)の長さを短くすることにより、ORFのより多くの場所に着下することが可能となり、mRNAの特定の完全消化をもたらす二次構造が継続的に抑制される。それゆえ、一部の実施形態では、mRNA ORFの開裂を誘導する単離核酸(例えば、ガイド鎖)は、4~16ヌクレオチド長(例えば、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16ヌクレオチド長)である。一部の実施形態では、ガイド鎖は単一の5’または3’に位置する2’O-メチルRNA及び4つの非修飾DNA塩基を含む。一部の実施形態では、ガイド鎖は4つの非修飾DNA塩基で構成される。
【0056】
一部の実施形態では、本開示に記載の組成物は、バッファー、及び任意選択的に、RNase H酵素を更に含む。
【0057】
標的RNA
本発明の態様は、標的RNA(例えば、標的mRNA)にアニールするキャップガイドに関する。一部の実施形態では、キャップガイドはRNA試料中のRNAにアニールする。RNAは反復リボヌクレオシドで構成される。RNAが1つまたは複数のデオキシリボヌクレオシドを含むことも可能である。好ましい実施形態では、RNAは、60%超、70%超、80%超、または90%超のリボヌクレオシドで構成される。その他の実施形態では、RNAは100%リボヌクレオシドで構成される。RNA試料中のRNAは、好ましくはmRNAである。
【0058】
本明細書で使用する場合、用語「メッセンジャーRNA(mRNA)」とは、RNAポリメラーゼ酵素によってDNA配列から転写され、リボソームと相互作用してDNAがコードするタンパク質を合成するリボ核酸のことを意味する。一般的に、mRNAは、2つのサブクラス、プレmRNA及び成熟mRNAに分類される。前駆体mRNA(プレmRNA)は、RNAポリメラーゼによって転写されているが、転写後プロセシング(例えば、5’キャッピング、スプライシング、エディティング、及びポリアデニル化)を何ら受けていないmRNAである。成熟mRNAは転写後プロセシングにより修飾されており(例えば、スプライシングを受けてイントロン及びポリアデニル化領域が除去されている)、リボソームと相互作用してタンパク質合成を実施することができる。
【0059】
様々な方法を用いて組織または細胞からmRNAを単離してもよい。例えば、細胞または細胞溶解物に対してトータルRNA抽出を実施してもよく、得られた抽出トータルRNAを精製(例えば、オリゴ-dTビーズを含むカラムで)して抽出mRNAを得てもよい。
【0060】
代替的に、セルフリー環境、例えば、in vitro転写(IVT)でmRNAを合成してもよい。IVTは、リボ核酸(RNA)(例えば、メッセンジャーRNA(mRNA))の鋳型誘導合成を可能とするプロセスである。IVTは一般的に、目的の配列の上流のバクテリオファージプロモーター配列を含む鋳型の改変に続く、対応するRNAポリメラーゼを使用した転写に基づいている。例えば、in vitro mRNA転写物をin vivo治療薬として使用して、標的組織内へとタンパク質治療薬をリボソームに発現させてもよい。
【0061】
従来より、mRNA分子の基本構成要素としては少なくとも、コード領域、5’-UTR、3’UTR、5’キャップ、及びポリAテールが挙げられる。IVT mRNAは、mRNAとして機能してもよいが、それらの機能的設計及び/または構造的設計の特徴から野生型mRNAと区別することができ、核酸ベース医薬品を用いた効果的なポリペプチド生成に関する従来の課題の克服に貢献している。例えば、IVT mRNAは構造修飾または化学修飾されていてもよい。本明細書で使用する場合、「構造」修飾は、ヌクレオチド自体に有意な化学修飾を伴うことなく、2つ以上の連結したヌクレオシドがポリヌクレオチド内において挿入、欠失、複製、反転、または無作為化されている修飾である。化学結合が必然的に破壊及び再編成されて構造修飾に影響を及ぼすことから、構造修飾は化学的性質のものであり、それゆえ、化学修飾である。しかしながら、構造修飾は異なる配列のヌクレオチドをもたらす。例えば、ポリヌクレオチド「ATCG」は「AT-5meC-G」へと化学修飾され得る。同一のポリヌクレオチドは「ATCG」から「ATCCCG」へと構造修飾され得る。ここでは、ジヌクレオチド「CC」が挿入されることにより、ポリヌクレオチドに構造修飾がもたらされている。
【0062】
RNAは、天然ヌクレオチド、及び/または非天然ヌクレオチド、例えば、修飾ヌクレオチドなどを含んでいてもよい。一部の実施形態では、RNAワクチンのRNAポリヌクレオチドは少なくとも1つの化学修飾を含む。一部の実施形態では、化学修飾は、シュードウリジン、N1-メチルシュードウリジン、2-チオウリジン、4’-チオウリジン、5-メチルシトシン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-シュードウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ジヒドロシュードウリジン、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-シュードウリジン、4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジン、4-メトキシ-シュードウリジン、4-チオ-1-メチル-シュードウリジン、4-チオ-シュードウリジン、5-アザ-ウリジン、ジヒドロシュードウリジン、5-メトキシウリジン、及び2’-O-メチルウリジンからなる群から選択される。本明細書に記載のmRNAに有用なその他の例示的な化学修飾としては、米国公開特許出願第2015/0064235号に列挙されているようなものが挙げられる。
【0063】
「in vitro転写鋳型(IVT)」とは、本明細書で使用する場合、メッセンジャーRNA(mRNA)を生成するためのIVT反応に用いるのに好適なデオキシリボ核酸(DNA)のことを意味する。一部の実施形態では、IVT鋳型は5’非翻訳領域をコードし、オープンリーディングフレームを含有し、3’非翻訳領域及びポリAテールをコードする。特定のヌクレオチド配列組成及びIVT鋳型の長さは、その鋳型がコードする目的のmRNAによって決まる。
【0064】
「5’非翻訳領域(UTR)」とは、タンパク質またはペプチドをコードしない開始コドン(すなわち、リボソームにより翻訳されたmRNA転写物の第1コドン)のすぐ上流(すなわち、5’)にあるmRNAの領域のことを意味する。
【0065】
「3’非翻訳領域(UTR)」とは、タンパク質またはペプチドをコードしない終止コドン(すなわち、翻訳の終了を指示するmRNA転写物のコドン)のすぐ下流(すなわち、3’)にあるmRNAの領域のことを意味する。
【0066】
「オープンリーディングフレーム」は、開始コドン(例えば、メチオニン(ATG))で始まり終止コドン(例えば、TAA、TAG、またはTGA)で終わるDNAまたはRNAの連続ストレッチであり、タンパク質またはペプチドをコードする。
【0067】
「ポリAテール」は、複数の連続したアデノシン一リン酸を含む3’UTRの下流、例えば、すぐ下流(すなわち、3’)にあるmRNAの領域である。ポリAテールは、10~300個のアデノシン一リン酸を含んでいてもよい。例えば、ポリAテールは、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、または300個のアデノシン一リン酸を含んでいてもよい。一部の実施形態では、ポリAテールは、50~250個のアデノシン一リン酸を含む。適切な生物学的状況(例えば、細胞内、インビボなど)において、ポリ(A)テールは、例えば細胞質内において、mRNAを酵素分解から保護するように機能し、転写終了、mRNAの核外輸送、及び翻訳に役立つ。しかしながら、一部の実施形態では、mRNA分子はポリAテールを含まない。一部の実施形態では、このような分子は「テールレス」と呼ばれる。
【0068】
一部の実施形態では、試験または標的mRNA(例えば、IVT mRNA)は治療用mRNAである。本明細書で使用する場合、用語「治療用mRNA」とは、治療用タンパク質をコードするmRNA分子(例えば、IVT mRNA)のことを意味する。治療用タンパク質は、疾患を治療するまたは疾患の徴候及び症候を改善するために、宿主細胞または対象内において様々な効果を媒介する。例えば、治療用タンパク質は、不完全または異常なタンパク質を置き換える、内在性タンパク質の機能を補完する、細胞に新規の機能を付与する(例えば、内在性細胞活性を阻害または活性化する)、または、別の治療用化合物(例えば、抗体薬物複合体)のための送達用物質として機能することができる。治療用mRNAは、以下の疾患及び症状、細菌感染症、ウイルス感染症、寄生虫感染症、細胞増殖障害、遺伝性疾患、及び自己免疫障害のための、ワクチン接種による治療または予防に有用であり得る。
【0069】
「試験mRNA」または「標的mRNA」(本明細書において同じ意味で用いられる)は、既知の核酸配列を有する目的のmRNAである。標的mRNAはRNAまたはmRNA試料内に存在し得る。標的mRNAに加え、RNAまたはmRNA試料は、mRNA分子のより大きな集団から得られた複数のmRNA分子またはその他の不純物を含んでいてもよい。例えば、IVT mRNAの調製後、純度の分析を行う及び/またはIVTによって調製されたmRNAの同一性を確認するために、IVT mRNAの集団から標的mRNA試料を除去してもよい。
【0070】
mRNA種の特性決定
本明細書で提供する方法は、本明細書で提供するガイドを使用してmRNAを特性決定することに関する。一部の実施形態では、mRNAを特性決定することは、標的mRNAを消化して、そのmRNAに固有のmRNAの2つまたはそれ以上のフラグメント(例えば、部分または種、例えば、キャップ種、ORF種、3’UTR種など)を生成することを含む。一部の実施形態では、mRNAを特性決定することは標的mRNAキャップの消化を含む。mRNAキャッピングは、mRNAの5’末端を7-メチルグアニル酸キャップ(「キャップ」とも呼ばれる)で修飾して、タンパク質合成中に翻訳を受けることが可能な安定かつ成熟したメッセンジャーRNAを生成するプロセスである。特定の例では、mRNAキャッピングプロセスは不完全であり、mRNAが部分的キャップ(例えば、7位がメチル化されていないキャップ)を有する状態のままである、またはキャップ非付加mRNAである。一部の実施形態では、mRNAの5’UTRをマッピングして、mRNAがキャップ、部分的キャップを含有しているかどうか、または、キャップ非付加である(キャップ種の相対存在量とも呼ばれる)かどうかを確認することが望ましい。一部の実施形態では、mRNAの3’UTRを特性決定して、例えば、mRNAポリAテール(「テール」とも呼ばれる)の長さを定量することが望ましい。一部の実施形態では、mRNAの5’UTRをマッピングして、mRNAがキャップ、部分的キャップを含有しているかどうか、または、キャップ非付加であるかどうかを確認すること、及び、mRNAの3’UTRをマッピングして、例えば、mRNAポリAテールの長さを定量することが望ましい。
【0071】
本発明の方法は、mRNAを特性決定する能力が重要な様々な用途に使用することができる。例えば、本発明の方法は、合成標的mRNAまたはmRNA試料のバッチ間のばらつきをモニタリングするのに有用である。既知のシグネチャープロファイルまたはmRNAの一次分子配列から予測された質量の理論上のプロファイルと比較したシグネチャープロファイルにおける任意の差異を同定することにより、それぞれのバッチの純度を測定してもよい。これらのシグネチャーはまた、試料中における活性成分であり得る望ましくない核酸の存在をモニタリングするのに有用である。どちらの試料がより望ましい純度を有しているかを確認するために、または別様に、試料の純度を比較するために、少なくとも2種の試料に対して本方法をまた実施してもよい。
【0072】
それゆえ、一部の例では、本発明の方法を使用してRNA試料の純度を測定する。用語「純粋」とは、本明細書で使用する場合、無関係な核酸、すなわち、RNAフラグメントを含む不純物または夾雑物の存在が低下または排除されることとなるように標的核酸活性剤のみを有している物質のことを意味する。例えば、精製RNA試料は1種または複数種の合成標的または試験核酸を含んでいるが、その他の核酸を実質的に含んでいないことが好ましい。本明細書で使用する場合、用語「実質的に含まない」は、物質の解析検査の文脈において実用的に使用される。好ましくは、不純物または夾雑物を実質的に含まない精製物質は少なくとも95%純粋であり、より好ましくは少なくとも98%純粋であり、なおもより好ましくは少なくとも99%純粋である。一部の実施形態では、純粋なRNA試料は100%の標的または試験RNAからなり、その他のRNAを含んでいない。一部の実施形態では、純粋なRNA試料は単一種の標的または試験RNAのみを含んでいる。
【0073】
本明細書に記載の技術の一部の実施形態に従い、任意のmRNAを特性決定してもよい。一部の実施形態では、本明細書で提供する方法は治療用mRNAを特性決定することを含む。一部の実施形態では、本明細書で提供する方法は標的mRNAを特性決定することを含む。一部の実施形態では、本明細書で提供する方法はmRNA試料中の標的mRNAを特性決定することを含む。一部の実施形態では、本明細書で提供する方法はin vitro転写(IVT)mRNAを特性決定することを含む。一部の実施形態では、標的mRNA及びin vitro転写(IVT)mRNAは合成mRNAとみなされる。
【0074】
一部の実施形態では、mRNAを特性決定することは、mRNAにシグネチャープロファイルを割り当てることを含む。「標的mRNAのシグネチャープロファイル」は、特定のRNase酵素を用いた消化により生成されたフラグメントに基づいて標的mRNAを有することが疑われるmRNA試料から作成したシグネチャーである。例えば、RNase T1を用いたmRNAの消化に続く、HPLCまたは質量分析を用いた得られた複数のmRNAフラグメントの解析により、トレースもしくは質量プロファイル、またはRNase T1を用いたその特定のmRNAの消化によってのみ作成され得るシグネチャーが作成される。
【0075】
その他の実施形態では、標的mRNAはRNase Hを用いて消化される。RNase HはDNA/RNA二重基質内のRNAの3’-O-P結合を開裂させて、3’-ヒドロキシル末端産物及び5’-リン酸末端産物を生成する。それゆえ、特定の核酸(例えば、DNA、RNA、またはDNAとRNAの組み合わせ)オリゴは標的mRNAにアニールするように設計され得、得られた二重体はRNase Hを用いて消化され、任意の試験mRNAの固有のフラグメントパターンが生成される(固有の質量プロファイルがもたらされる)。
【0076】
mRNA試料のシグネチャーが同定されると、そのシグネチャーを標的mRNAの既知のシグネチャープロファイルと比較することができる。「標的mRNAの既知のシグネチャープロファイル」とは、本明細書で使用する場合、標的mRNAを固有に同定する対照シグネチャーまたはフィンガープリントのことを意味する。純粋な試料の消化に基づいて標的mRNAの既知のシグネチャープロファイルを作成し、標的シグネチャープロファイルと比較してもよい。代替的に、対照シグネチャーは電子または非電子データ媒体内に保存された既知の対照シグネチャーであってもよい。例えば、対照シグネチャーは、特定のRNA(例えば、標的mRNA)の一次分子配列から予測された質量に基づいた理論上のシグネチャーであってもよい。
【0077】
mRNA(例えば、試験mRNA)の様々なバッチを同一条件下で消化してから、不純物または夾雑物(例えば、IVT反応から持ち越された化学物質などの添加剤、または誤って転写されたmRNA)を同定するために純粋なmRNAのシグネチャーと比較してもよく、または、標的mRNAの既知のシグネチャープロファイルと比較してもよい。標的mRNAのシグネチャーが標的mRNAの既知のシグネチャープロファイルと同一性を共有している場合、標的mRNAの同一性を確認してもよい。一部の実施形態では、試験mRNAのシグネチャーは、既知のmRNAシグネチャーと少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または少なくとも99.9%の同一性を共有している。
【0078】
一部の実施形態では、mRNAの様々なバッチをハイスループット様式の同一条件下で消化してもよい。例えば、バッチのそれぞれのmRNA試料をマルチウェルプレートの独立した1つのウェルまたは複数のウェルに入れてから、RNaseと同時に消化してもよい。マルチウェルプレートは、6、24、96、384、または1536ウェルのアレイを含んでいてもよい。しかしながら、様々なその他の許容される構成、例えば、6、24、96、384、または1536の倍数の多くのウェルを備えたマルチウェルプレートなどへとマルチウェルプレートを構築してもよいということを当業者は理解するであろう。例えば、一部の実施形態では、マルチウェルプレートは3072ウェルのアレイ(1536の倍数)を含む。同時に消化する(例えば、マルチウェルプレート内で)mRNA試料の数は様々であり得る。一部の実施形態では、少なくとも2つのmRNA試料を同時に消化する。一部の実施形態では、2~96のmRNA試料を同時に消化する。一部の実施形態では、2~384のmRNA試料を同時に消化する。一部の実施形態では、2~1536のmRNA試料を同時に消化する。同時に消化するmRNA試料のそれぞれが同一のタンパク質または異なるタンパク質をコードし得る(例えば、同一タンパク質のバリアントをコードするmRNA、または、完全に異なるタンパク質をコードするmRNA、例えば、対照mRNAなど)ということを当業者は理解するであろう。
【0079】
本明細書で使用する場合、用語「消化」とは生体高分子の酵素分解のことを意味する。生体高分子は、タンパク質、ポリペプチド、もしくは核酸(例えば、DNA、RNA、mRNA)、または上記の任意の組み合わせであってもよい。一般的に、消化を媒介する酵素は、酵素がその機能を実行する基質に応じたプロテアーゼまたはヌクレアーゼである。プロテアーゼは、アミノ酸をペプチド鎖状に連結しているペプチド結合を加水分解する。プロテアーゼの例としては、セリンプロテアーゼ、スレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、及びメタロプロテアーゼが挙げられるがこれらに限定されない。ヌクレアーゼは、核酸のヌクレオチドサブユニット間のホスホジエステル結合を開裂させる。一般的に、ヌクレアーゼは、デオキシリボヌクレアーゼ、すなわちDNase酵素(例えば、DNAを開裂させるヌクレアーゼ)、及びリボヌクレアーゼ、すなわちRNase酵素(例えば、RNAを開裂させるヌクレアーゼ)に分類することができる。DNase酵素の例としては、DNA分子の末端を開裂させるエキソデオキシリボヌクレアーゼ、及びDNA配列を含む特定の配列を開裂させる制限酵素が挙げられる。
【0080】
消化される標的mRNAの量は様々であり得る。一部の実施形態では、消化される標的mRNAの量は、約1ng~約100μgの範囲である。一部の実施形態では、消化される標的mRNAの量は、約10ng~約80μgの範囲である。一部の実施形態では、消化される標的mRNAの量は、約100ng~約1000μgの範囲である。一部の実施形態では、消化される標的mRNAの量は、約500ng~約40μgの範囲である。一部の実施形態では、消化される標的mRNAの量は、約1μg~約35μgの範囲である。一部の実施形態では、消化される標的mRNAの量は、約1μg、約2μg、約3μg、約4μg、約5μg、約6μg、約7μg、約8μg、約9μg、約10μg、約11μg、約12μg、約13μg、約14μg、約15μg、約16μg、約17μg、約18μg、約19μg、約20μg、約21μg、約22μg、約23μg、約24μg、約25μg、約26μg、約27μg、約28μg、約29μg、または約30μgである。
【0081】
本開示は部分的に、RNase酵素を使用してmRNAを消化することで、RNAフラグメントの固有の集団、すなわち「シグネチャー」を作成することができるという発見に関する。RNase酵素の例としては、RNase A、RNase H、RNase III、RNase L、RNase P、RNase E、RNase PhyM、RNase T1、RNase T2、RNase U2、RNase V、RNase PH、RNase R、RNase D、RNase T、ポリヌクレオチドホスホリラーゼ(PNPase)、オリゴリボヌクレアーゼ、エキソリボヌクレアーゼ I、及びエキソリボヌクレアーゼ IIが挙げられるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、RNase T1またはRNase Aを使用して試験mRNAの同一性を同定する。一部の実施形態では、RNase Hを使用して試験mRNAの同一性を同定する。一部の実施形態では、試験mRNAはIVTプロセスによって生成された合成mRNAである。
【0082】
本開示に記載の方法で使用するRNase酵素の濃度は、消化させるmRNAの量に応じて様々であり得る。しかしながら、一部の実施形態では、RNase酵素の量は約0.1ユニット~約500ユニットのRNaseの範囲である。一部の実施形態では、RNase酵素の量は、約0.1U~約1U、1U~約5U、2U~約200U、10U~約450U、約20U~約400U、約30U~約350U、約40U~約300U、約50U~約250U、または約100U~約200Uの範囲である。
【0083】
当業者はまた、RNase酵素が動物(例えば、哺乳動物、ヒト、ネコ、イヌ、ウシ、ウマなど)、細菌(例えば、E.coli、S.aureus、Clostridium spp.など)、及びカビ(例えば、Aspergillus oryzae、Aspergillus niger、Dictyostelium discoideumなど)を含むがこれらに限定されない様々な生物に由来し得るということを理解するであろう。RNase酵素はまた、組換え的に作製してもよい。例えば、1つの種に由来するRNase酵素(例えば、A.oryzaeに由来するRNase T1)をコードする遺伝子を細菌宿主細胞(例えば、E.coli)内で非相同発現させてから精製してもよい。一部の実施形態では、消化はA.oryzae RNase T1酵素によって実施される。
【0084】
一部の実施形態では、消化はバッファー中で実施される。本明細書で使用する場合、用語「バッファー」とは、一定のpHを維持するために酸または塩基のいずれかを中和することができる溶液のことを意味する。バッファーの例としては、トリスバッファー(例えば、トリス-Clバッファー、トリス-酢酸バッファー、トリス-塩基バッファー)、尿素バッファー、重炭酸バッファー(例えば、重炭酸ナトリウムバッファー)、HEPES(4-2-ヒドロキシエチル-1-ピペラジンエタンスルホン酸)バッファー、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)バッファー、PIPES(ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸))バッファー、及びトリエチルアンモニウム酢酸(TEAAcバッファー)が挙げられるがこれらに限定されない。バッファーはまた、2種以上のバッファー剤、例えば、トリス-Cl及び尿素を含有していてもよい。バッファー中におけるそれぞれのバッファー剤の濃度は、約1mM~約10Mの範囲であってもよい。一部の実施形態では、バッファー中におけるそれぞれのバッファー剤の濃度は、約1mM~約20mM、約10mM~約50mM、約25mM~約100mM、約75mM~約200mM、約100mM~約500mM、約250mM~約1M、約500mM~約3M、約1M~約5M、約3M~約8M、または約5M~約10Mの範囲である。
【0085】
一般的に、バッファーを用いて維持されたpHは、約pH6.0~約pH10.0の範囲であってもよい。一部の実施形態では、pHは、約pH6.8~約7.5の範囲であってもよい。一部の実施形態では、pHは、約pH6.5、約pH6.6、約pH6.7、約pH6.8、約pH6.9、約pH7.0、約pH7.1、約pH7.2、約pH7.3、約pH7.4、約pH7.5、約pH7.6、約pH7.7、約pH7.8、約pH7.9、約pH8.0、約pH8.1、約pH8.2、約pH8.3、約pH8.4、約pH8.5、約pH8.6、約pH8.7、約pH8.8、約pH8.9、約pH9.0、約pH9.1、約pH9.2、約pH9.3、約pH9.4、約pH9.5、約pH9.6、約pH9.7、約pH9.8、約pH9.9、または約pH10である。
【0086】
一部の実施形態では、バッファーはキレート化剤を更に含む。キレート化剤の例としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール四酢酸(EGTA)、ジメルカプトコハク酸(DMSA)、及び2,3-ジメルカプト-l-プロパンスルホン酸(DMPS)が挙げられるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、キレート化剤はEDTA(エチレンジアミン四酢酸)である。EDTAの濃度は、約1mM~約500mMの範囲であってもよい。一部の実施形態では、EDTAの濃度は、約10mM~約300mMの範囲である。一部の実施形態では、EDTAの濃度は、約20mM~約250mM EDTAの範囲である。
【0087】
消化を促進させるためにRNase酵素を用いたインキュベーション前にmRNAを変性させてもよいということを当業者は理解するであろう。一部の実施形態では、少なくとも50℃、少なくとも60℃、少なくとも70℃、少なくとも80℃、または少なくとも90℃の温度でmRNAを変性させる。標的mRNAの消化は、RNase酵素がその目的の機能を実行する任意の温度で実施してもよい。標的mRNA消化反応の温度は約20℃~約100℃の範囲であってもよい。一部の実施形態では、標的mRNA消化反応の温度は約30℃~約50℃の範囲である。一部の実施形態では、標的mRNAはRNase酵素によって37℃で消化される。
【0088】
RNase酵素の消化により、下流のプロセシング(例えば、消化された試験mRNAフラグメントの検出)を妨げ得る環状ホスフェート及びその他の中間体(例えば、2’または3’-ホスフェート)の形成がもたらされ得る。それゆえ、一部の実施形態では、mRNA消化バッファーは、中間体の形成を阻害または防止する薬剤を更に含む。一部の実施形態では、バッファーは、2’,3’-環状-ヌクレオチド 3’-ホスホジエステラーゼ(CNP)及び/またはアルカリホスファターゼ、例えば、子ウシ腸内アルカリホスファターゼ(CIP)など、またはエビアルカリホスファターゼ(SAP)を更に含む。中間体の形成を阻害または防止するそれぞれの薬剤の濃度は、約10ng/μL~約100ng/μLの範囲であってもよい。一部の実施形態では、それぞれの薬剤の濃度は約15ng/μL~約25ng/μLの範囲である。代替的に、または上記濃度範囲と組み合わせて、薬剤の量は、約1U~約50U、約2U~約40U、約3U~約35U、約4U~約30U、約5U~約25U、または約10U~約20Uの範囲であってもよい。一部の実施形態では、RNase酵素を用いた消化は、CIP及び/またはCNPを含有しない消化バッファー中で実施される。
【0089】
一部の実施形態では、バッファーは塩化マグネシウム(MgCl)を更に含む。一般的に、MgClは、酵素(例えば、RNase)活性の補因子として機能し得る。バッファー中におけるMgClの濃度は約0.5mM~約200mMの範囲である。一部の実施形態では、バッファー中におけるMgClの濃度は、約0.5mM~約10mM、1mM~約20mM、5mM~約20mM、10mM~約75mM、または約50mM~約150mMの範囲である。一部の実施形態では、バッファー中におけるMgClの濃度は、約1mM、約5mM、約10mM、約50mM、約75mM、約100mM、約125mM、または約150mMである。
【0090】
一部の実施形態では、試験mRNAの消化は、2つのインキュベーション工程、(a)試験mRNAのRNase消化、及び(b)消化済み試験mRNAのプロセシングを含む。一部の実施形態では、試験mRNAの消化は、消化前に試験mRNAを変性させる工程を更に含む。上記の工程(a)、(b)、及び(c)のそれぞれのインキュベーション時間は、約1分間~約24時間の範囲であってもよい。一部の実施形態では、インキュベーション時間は、約1分間~約10分間の範囲である。一部の実施形態では、インキュベーション時間は、約5分間~約15分間の範囲である。一部の実施形態では、インキュベーション時間は、約30分間~約4時間(240分間)の範囲である。一部の実施形態では、インキュベーション時間は、約1時間~約5時間の範囲である。一部の実施形態では、インキュベーション時間は、約2時間~約12時間の範囲である。一部の実施形態では、インキュベーション時間は、約6時間~約24時間の範囲である。
【0091】
消化反応液中に含まれる構成成分に応じた様々な環境条件下で消化を実施してもよいということを当業者は理解するであろう。上記の構成成分とパラメータの任意の好適な組み合わせを使用してもよい。例えば、表1に記載のプロトコルに従って試験mRNAの消化を実施してもよい。
【0092】
一部の態様では、本開示は、核酸(例えば、標的mRNA)を特性決定するための「ワンポット」RNase H消化アッセイを提供する。一般的に、RNase H消化アッセイは、(i)ガイド鎖を標的mRNAにアニールする及び(ii)ガイド鎖-mRNA二重体を消化するための独立した工程を含む。本開示は部分的に、条件が適切な場合(例えば、表1に記載のような)、ガイド鎖アニール工程とRNase H消化工程を単一工程に集約させることができるという発見に関する。いかなる特定の理論に制限されるものではないが、本開示に記載のワンポットRNase H消化アッセイは、一部の実施形態において、ランタイムが短く、複数の工程(例えば、独立したアニール工程及び消化工程など)を要する方法と比較して、解析法(例えば、HPLC/MSなど)用のより高い品質の試料を提供する。
【0093】
目的のポリヌクレオチドの「フラグメント」は、上記試験RNAの配列に由来する一続きの連続ヌクレオチドを含む。例えば、目的のポリヌクレオチドの「フラグメント」は、ポリヌクレオチドの配列に由来する少なくとも1、少なくとも2、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30連続ヌクレオチド(例えば、上記ポリヌクレオチドの少なくとも1、少なくとも2、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも35、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、または1000連続核酸残基)を含んでいてもよい(またはそれらからなっていてもよい)。ポリヌクレオチドのフラグメント(例えば、mRNAフラグメント)は、別のフラグメントと同一のヌクレオチド配列からなっていてもよい、または固有のヌクレオチド配列からなっていてもよい。
【0094】
「複数のmRNAフラグメント」とは、少なくとも2種のmRNAフラグメントの集団のことを意味する。複数を含むmRNAフラグメントは、同一、固有、または同一と固有の組み合わせ(例えば、一部のフラグメントは同一であり、一部は固有である)であってもよい。フラグメントがまた、同一の長さを有しているが、異なるヌクレオチド配列を含み得る(例えば、CACGU及びAAAGCは両方とも5ヌクレオチド長であるが異なる配列を含む)ということを当業者は理解するであろう。一部の実施形態では、複数のmRNAフラグメントは、単一種のmRNAの消化によって生成される。複数のmRNAフラグメントは、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、または少なくとも500のmRNAフラグメントであってもよい。一部の実施形態では、複数のmRNAフラグメントは、500超のmRNAフラグメントを含む。
【0095】
複数のフラグメントは物理的に分離している。本明細書で使用する場合、用語「物理的に分離した」とは、選択基準に基づいたmRNAフラグメントの単離のことを意味する。例えば、試験mRNAの消化により得られた複数のmRNAフラグメントは、クロマトグラフィーまたは質量分析によって物理的に分離することができる。一部の実施形態では、試験mRNAのフラグメントは、電気泳動図を作成するためのキャピラリ電気泳動によって物理的に分離することができる。クロマトグラフィー法の例としては、サイズ排除クロマトグラフィー及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が挙げられる。質量分析物理的分離技術の例としては、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)及びマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)が挙げられる。一部の実施形態では、複数のmRNAフラグメントのうちのそれぞれのフラグメントは、物理的分離中に検出される。例えば、HPLC装置につないだUV分光光度計を使用して、物理的分離中にmRNAフラグメントを検出してもよい(例えば、吸収スペクトルプロファイル)。得られたデータ(「トレース」とも呼ばれる)は、複数のmRNAフラグメントの組成のグラフ表示を提供する。別の実施形態では、質量分光光度計は、複数のmRNAフラグメントの物理的分離中に質量データを生成する。質量データのグラフ描画により、複数のmRNAフラグメントの成分を同定する「マスフィンガープリント」がもたらされ得る。
【0096】
質量分析は、混合物中の化合物を同定及び特性決定するための広範囲の技術を包含する。異なるタイプの質量分析ベース手法を使用して、試料を解析しその組成を同定してもよい。質量分析は、イオン化プロセスによって、解析を行う試料を複数のイオンに変換することを含む。力場に置かれたときに生じたイオンのそれぞれは、その加速度がその質量電荷比に反比例することになるように軌道に沿って場内を移動する。それゆえ、分子の質量スペクトルは、前駆体イオンのその質量電荷比に対する相対存在度のプロットを示すように生成される。それに続く段階の質量分析計、例えば、タンデム質量分析計などを使用して、前駆体イオンにより高いエネルギーをかけることによって試料を更に解析する場合、それぞれの前駆体イオンは、生成イオンと呼ばれるフラグメントへの解離を受け得る。得られたフラグメントを使用して、その前駆体分子の性質及び構造に関する情報を提供してもよい。
【0097】
MALDI-TOF(マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型)質量分析は、光吸収物質のマトリックス内に検体を包埋してから、揮発によりイオン化して飛行している状態の分子の重量を測定することによって、低揮発性のイオン化が不十分な検体または容易に断片化した検体の質量の分光測定を提供する。電場と磁場の組み合わせを試料にかけ、分子の個々の質量及び電荷に応じてイオン化物質を移動させる。Koster et al.に発行された米国特許第6,043,031号は、MALDI-TOF及びその他の質量分析法を使用してDNA内の一塩基変異を同定するための例示的な方法について記載している。
【0098】
HPLC(高速液体クロマトグラフィー)は、生体高分子の特性に基づいた生体高分子の分析的分離のために使用される。HPLCを使用し、サイズ及び/または電荷に基づいて核酸配列を分離してもよい。HPLCを使用して、別の核酸との1塩基対の差異を有する核酸配列を分離してもよい。それゆえ、特定の核酸フラグメントの有無を確認するために、HPLCを使用して、1つのヌクレオチド以外は同一である核酸試料を区別的に分離してもよい。好ましくは、HPLCはHPLC-UVである。
【0099】
本発明の方法を使用して作成したデータを個別に処理してもよく、またはコンピュータで処理してもよい。例えば、RNA試料のシグネチャープロファイルの代表的なデータセットを表すデータ構造(コンピュータ可読媒体内に実質的に組み入れられた)を作成するためのコンピュータ実装方法を本発明に従って実施してもよい。
【0100】
一部の実施形態は、少なくとも1つのプロセッサによって実行された場合に試料中のRNAを同定するための方法を実施する、コンピュータ実行可能命令を格納した少なくとも1つの非一過性コンピュータ可読記憶媒体に関する。
【0101】
それゆえ、一部の実施形態は、優れた精度、感度、及び速度で試料中の不純物を同定し得るMS/MSデータを処理するための技術を提供する。その技術は、RNAフラグメントの構造がこれまでに同定済みであるか参照データベース内に含まれているかにかかわらず、RNAフラグメントの構造同定に関係していてもよい。分析済み質量分析データを取得するために使用する技術にスコアが依存しないことから、計算されたスコアを用いて試料中に含まれる不純物の可能性を同定することを可能とするスコアリング手法を利用してもよい。
【0102】
一部の実施形態では、既知のmRNAデータの既知のシグネチャープロファイルを計算的に生成または計算してから、例えば、第1のデータベース内に格納してもよい。第1のデータベースは、完全なシグネチャー及び任意のその他の好適な情報を形成するために、それぞれのRNAフラグメントの識別子を含む、RNAに関する任意のタイプの情報を格納していてもよい。一部の実施形態では、既知のシグネチャーを含む第2のデータベースから読み込んだ計算フラグメントのそれぞれのセットについてスコアを計算してもよく、スコアは既知のシグネチャーのセットと実験によって得られたフラグメントのセットの間の相関関係を示す。スコアを計算するために、例えば、実験によって得られたフラグメントのセット内の対応するフラグメントにマッチする計算フラグメントのセット内のそれぞれのフラグメントに、実験によって得られたフラグメントの相対存在度に応じた重みを割り当ててもよい。それゆえ、そのセット内のフラグメントに割り当てた重みに応じ、計算フラグメントのそれぞれのセットについてスコアを計算してもよい。次に、スコアを使用して、RNA試料と既知の配列の間の差異を同定してもよい。
【0103】
上記をコンピュータプログラムとして実行可能なコンピュータシステムは一般的に、ユーザーに情報を表示する出力デバイスとユーザーからの入力を受け取る入力デバイスの両方に接続したメインユニットを含んでいてもよい。メインユニットは一般的に、相互接続機構を介してメモリシステムに接続したプロセッサを含む。入力デバイス及び出力デバイスはまた、相互接続機構を介してプロセッサ及びメモリシステムに接続していてもよい。
【0104】
一部の実施形態と関連させて使用することができるコンピュータシステムの例示的な実装を使用して、上記の機能のいずれかを実施してもよい。コンピュータシステムは、1つまたは複数のプロセッサ及び1つまたは複数のコンピュータ可読記憶媒体(すなわち、有形の非一過性コンピュータ可読媒体)、例えば、任意の好適なデータ記憶媒体で形成されていてもよい揮発性記憶媒体及び1つまたは複数の不揮発性記憶媒体を含んでいてもよい。プロセッサは、揮発性記憶装置及び不揮発性記憶装置へのデータ書き込み及びそれらからのデータ読み込みを、この点において実施形態が限定されない限り任意の好適な様式で制御していてもよい。本明細書に記載の機能のいずれかを実施するために、プロセッサは、プロセッサによる実行のための命令を格納した有形の非一過性コンピュータ可読媒体として機能し得る1つまたは複数のコンピュータ可読記憶媒体(例えば、揮発性記憶装置及び/または不揮発性記憶装置)内に格納された1つまたは複数の命令を実行してもよい。
【0105】
上記の実施形態を多数の様式のうちのいずれかを用いて実施してもよい。例えば、ハードウェア、ソフトウェア、またはこれらの組み合わせを使用して、実施形態を実施してもよい。ソフトウェアを用いて実施する場合、単一のコンピュータに供給されているかまたは複数のコンピュータ間に分散されているかにかかわらず、任意の好適なプロセッサまたはプロセッサの集合体上でソフトウェアコードを実行してもよい。上記の機能を実施する任意の構成要素または構成要素の集合体が一般的に、上で論じた機能を制御する1つまたは複数のコントローラとみなされ得るということを理解されたい。1つまたは複数のコントローラは、多数の様式、例えば、マイクロコードを用いてプログラムされた専用ハードウェアもしくは汎用ハードウェア(例えば、1つまたは複数のプロセッサ)または上で列挙した機能を実施するためのソフトウェアなどを用いて実施してもよい。
【0106】
この点において、1つの実装が、少なくとも1つのコンピュータ可読記憶媒体(すなわち、少なくとも1つの有形の非一過性コンピュータ可読媒体)、例えば、1つまたは複数のプロセッサ上で実行されると上で論じた機能を実行するコンピュータプログラム(すなわち、複数の命令)を用いてコードされたコンピュータメモリ(例えば、ハードドライブ、フラッシュメモリ、プロセッサワーキングメモリなど)、フロッピーディスク、光ディスク、磁気テープ、またはその他有形の非一過性コンピュータ可読媒体などを含むということを理解されたい。コンピュータ可読記憶媒体は、そこに格納されたプログラムが任意のコンピュータリソースにロードされて本明細書で論じる技術を実施可能となるように可搬式であってもよい。加えて、実行されると上で論じた機能を実行するコンピュータプログラムへの言及がホストコンピュータ上で走行するアプリケーションプログラムに限定されないということを理解されたい。むしろ、本明細書において一般的な意味で用いる用語「コンピュータプログラム」とは、上記の技術を実施するために1つまたは複数のプロセッサをプログラムするのに採用され得るあらゆるタイプのコンピュータコード(例えば、ソフトウェアまたはマイクロコード)のことを意味する。
【0107】
標的mRNAまたはRNA試料の特性決定に関連する更なる態様については、2018年6月6日出願、表題「METHODS AND COMPOSITIONS FOR RNA MAPPING」の米国特許出願公開番号US2018/0274009(その内容全体は参照により本明細書に組み込まれる)に提供されている。
【0108】
単離核酸を選択するための方法
本開示の態様は、RNA試料(例えば、標的mRNA)を解析及び特性決定するための本明細書に記載の単離核酸を選択するための方法に関する。
【0109】
一部の実施形態では、単離核酸を選択するための方法は、本明細書で提供する単離核酸にハイブリダイズしたmRNAをRNase酵素で消化して、複数のmRNAフラグメントを生成すること、複数のmRNAフラグメントを物理的に分離すること、複数のmRNAフラグメントを検出することによってmRNAのシグネチャープロファイルを作成すること、シグネチャープロファイルを既知のmRNAシグネチャープロファイルと比較すること、及び、シグネチャープロファイルの既知のRNAシグネチャープロファイルとの比較に基づいて、単離核酸を選択することを含む。
【0110】
シグネチャープロファイル、例えば、標的mRNAのシグネチャープロファイルの任意の特徴に基づいて、単離核酸を選択してもよい。一部の実施形態では、シグネチャープロファイルは吸収スペクトルまたは質量スペクトルの形態である。一部の実施形態では、シグネチャープロファイルは、シグネチャープロファイルの既知のRNAシグネチャープロファイルとの比較に基づいて、mRNAのキャップ構造を同定することを含む。一部の実施形態では、シグネチャープロファイルは生の質量分析プロファイルを含む。一部の実施形態では、シグネチャープロファイルは保持時間を含む。
【0111】
一部の実施形態では、単離核酸を選択することは、標的mRNAのシグネチャープロファイルを既知のmRNAシグネチャープロファイルと比較することを含む。一部の実施形態では、単離核酸を選択することは、本明細書に記載の単離核酸を選択することを含む。一部の実施形態では、単離核酸を選択することは、配列番号:3~15からなる群から単離核酸を選択することを含む。一部の実施形態では、単離核酸を選択することは、配列番号:3~15のうちの少なくとも1つを選択することを含む。一部の実施形態では、単離核酸を選択することは、配列番号:3~15のうちの少なくとも2つを選択することを含む。一部の実施形態では、単離核酸を選択することは、配列番号:3~15のうちの少なくとも3つを選択することを含む。
【実施例
【0112】
本明細書に記載の本発明がより完全に理解され得ることになるように、以下の実施例を記載する。本出願に記載の実施例は本明細書で提供するシステム及び方法を説明するために提供されるものであり、いかなる様式によってもその範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0113】
実施例1:物質及び方法
RNase Hガイド
キャップ:5’-mC*mU*mU*mA*mC*mU*mC*mU*mU*mC*mU*mU*mU*mU*mC*dTdCdTdCmU*mU*mA-3’(配列番号:16)
(mN*=2’OMeホスホロチオエート)
テール:5’-mCmAmGmAmCdTdTdTdAmUmUmCmAmA(配列番号:17)
(mN=2’OMe)
【0114】
RNase H消化混合液
以下の構成成分を混合してRNase H消化混合液を調製した。
【表3】
【0115】
試料調製及び解析
以下の反応用物質をPCRプレート内で混合させた。
【表4】
【0116】
次に、プレートを密閉してから、穏やかにボルテックスして混合し、1000rpm、30秒間の遠心分離にかけた。プレートをサーモサイクラー内で15分間65℃でインキュベートしてから、5℃で静置した。それぞれの試料に5μLの消化クエンチバッファー(1Mトリエチルアンモニウム酢酸(TEAA)、250mM EDTA)を加えることにより、反応を停止させた。次に、LC-MSまたはHPLC-UVを用いて試料を分析した。
【0117】
実施例2:キャップガイドの選択
本実施例では、RNase HによるmRNAキャップ領域の消化について説明する。簡潔に説明すると、キャップ領域に特異的なRNase Hガイド鎖を使用してmRNAを消化した。次に、LC-MS分析を行い、以下のデータ、(i)キャップの同定及び相対定量、(ii)ポリAテールの長さ同定及び相対定量、任意選択的に、(iii)完全消化及びマッピングの解析を行った。
【0118】
図1は、本明細書に記載の様々なキャップバリアントを用いて消化したmRNAの代表的な抽出イオンクロマトグラム(EIC)データを示している。ガイド番号:7、7a、8、及び9と記載されたキャップバリアントにおいて高レベルのRNase Hキャップシグナルが検出された。
【0119】
RNase Hの特異度及びRNase Hガイド鎖長の自由度を管理する能力は、RNase H標的フラグメント(例えば、キャップフラグメント)及びRNase Hガイド自体の保持時間を管理する人物の能力を有意に促進させるため、その人物に望ましくない共溶出を防止させることができ、その結果、比較的一定で信頼性が高くきれいなLC-MSデータが生成される。一部の例においては、mRNAのRNase H開裂が完全ではないがDNAzymeで失敗するほとんどのケースにおいて成功し得ると予測されるということに留意すべきである。それゆえ、RNase Hの基質特異性について調査を行った。切断部位のRNA塩基5’及び3’に対するRNase Hの開裂能を評価した。データは、切断部位の3’及び5’においてRNase H開裂が生じていないことを示している(図2)。
【0120】
図3は、ワンポットキャップRNase Hアッセイのトータルイオンクロマトグラム(TIC)の代表的な生データを示している。キャップフラグメントとの重複は認められなかった。保持時間は、ガイド番号:7、7a、及び8と記載されたキャップバリアントにおいて、その他のキャップバリアントと比較してより互換性があった。
【0121】
キャップ領域に特異的なRNase Hガイド鎖を使用して、ヒトEPO(hEPO)及びウイルス抗原(ウイルスAg)をコードするmRNAを消化した。次に、LC-MS分析を行ってから、キャップ同定を行い、試料1(図4)及び試料6(図5)の相対定量を行った。
【0122】
実施例3:修飾キャップガイド
修飾キャップガイド(ガイド番号:7、7a、8、及び9の修飾型)の試験をワンポットキャップRNase Hアッセイで行った。目的の主鎖修飾の代表的な構造を図6に示している。隣接LNA配列または隣接LNA/2’OMe配列を含む代表的なキャップガイド配列を図7に示している。修飾キャップガイドを使用して、ウイルスAgまたはIL-12をコードするmRNAを消化した。正規化キャップ1存在度の代表的なデータを図8に示している。保持時間の代表的なトータルイオンクロマトグラム(TIC)データを図9に示している。濃度を上昇させていく修飾キャップバリアントを用いて、ウイルスAgまたはIL-12をコードするmRNAを消化した。キャップ1存在量の代表的なデータを図10に示している。
【0123】
図11に示すとおり、%キャップ1と入力%キャップ1の間の関係は、2’OMeホスホロチオエート(7PS)を含有するガイド番号:7において直線的であった。7PSは、対照キャップガイド(現行)と比較した存在率(図12A)及び未加工存在量(図12B)において、類似した結果をもたらした。7PSを含む試料において対照キャップと比較してわずかにより多くのキャップ非付加mRNAが検出された(図13)。代表的なLC-UVデータを図14に示し、配列バリアントの効果を図15に示している。様々な条件におけるキャップガイド7PS及び対照の結果を示す代表的なデータを図16図17に示している。
【0124】
本発明のいくつかの実施形態について本明細書で記載及び説明してきたが、当業者は、本明細書に記載の機能を実施するための、及び/または、本明細書に記載の結果及び/または本明細書に記載の利点のうちの1つまたは複数を得るための、様々なその他の方法及び/または構成を容易に想像し、このような変化形態及び/または修正のそれぞれは、本発明の範囲内であるとみなされる。より一般的に言えば、本明細書に記載の全てのパラメータ、寸法、物質、及び構成が例示的であることを意味し、実際のパラメータ、寸法、物質、及び/または構成が、本発明の教示を利用する一特定用途または複数の特定用途に依存する、ということを当業者は容易に理解するであろう。本明細書に記載の本発明の具体的な実施形態に対する多くの等価物について、当業者は理解し、または、通常の実験を行うだけで確認することが可能であろう。それゆえ、上記の実施形態が単なる例として提供されており、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内において、具体的に記載及び請求したもの以外の本発明を別様に実施することができる、と理解すべきである。本発明は、本明細書に記載のそれぞれ個々の特徴、システム、物品、物質、及び/または方法に関する。加えて、2つまたはそれ以上のこのような特徴、システム、物品、物質、及び/または方法の任意の組み合わせは、このような特徴、システム、物品、物質、及び/または方法が互いに矛盾しない場合、本発明の範囲内に含まれる。
【0125】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される不定冠詞「a」及び「an」は、反対のことを明確に指し示さない限り、「少なくとも1つ」を意味するものと理解すべきである。
【0126】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される語句「及び/または」は、そのように連結された要素、すなわち、一部の例では接続的に示される要素、またその他の例では離接続的に示される要素の「一方またはその両方」を意味するものと理解すべきである。反対のことを明確に指し示さない限り、具体的に示されるそれら要素と関連しているかまたは関連していないかにかかわらず、「及び/または」節が具体的に示す要素以外のその他の要素を任意選択的に示してもよい。それゆえ、非限定例として、「A及び/またはB」への言及とは、「含む」などのオープンエンド用語と共に使用する場合、一実施形態ではBを伴わないA(B以外の要素を任意選択的に含む)、別の実施形態ではAを伴わないB(A以外の要素を任意選択的に含む)、更に別の実施形態ではAとBの両方(その他の要素を任意選択的に含む)、などのことを意味し得る。
【0127】
本明細書及び特許請求の範囲において使用する場合、「または」は、上で定義した「及び/または」と同一の意味を有すると理解すべきである。例えば、一覧の要素を分ける場合、「または」または「及び/または」は、包括的、すなわち、要素の数または一覧及び任意選択的に別の列挙されていない要素のうちの少なくとも1つを含むが、それらのうちの2つ以上もまた含む、と解釈されるべきである。反対のことを明確に指し示す用語、例えば、「のうちの1つのみ」もしくは「のうちの厳密に1つ」など、または特許請求の範囲において用いられる「からなる」に限り、要素の数または一覧のうちの厳密に1つの要素を含むことを意味する。一般的に、本明細書で使用する用語「または」は、「いずれか」、「のうちの1つ」、「のうちの1つのみ」、または「のうちの厳密に1つ」などの排他性の用語が先行する場合、排他的な選択肢(すなわち、「一方またはもう一方であるが両方ではない」)を指し示すと専ら解釈されるべきである。「から本質的になる」は、特許請求の範囲において使用する場合、特許法の分野で使用されるその通常の意味を有するべきである。
【0128】
本明細書及び特許請求の範囲において使用する場合、1つまたは複数の要素の一覧に関する語句「少なくとも1つ」は、要素の一覧における要素のうちのいずれか1つまたは複数から選択される少なくとも1つの要素を意味するものと理解されるべきであるが、要素の一覧内に具体的に列挙される全ての要素のうちの少なくとも1つを必ずしも含む必要はなく、要素の一覧内の要素の任意の組み合わせを除外するものでもない。この定義はまた、具体的に示されるそれら要素と関連しているかまたは関連していないかにかかわらず、語句「少なくとも1つ」が意味する要素の一覧内に具体的に示される要素以外の要素を任意選択的に示してもよいということを可能とする。それゆえ、非限定例として、「A及びBのうちの少なくとも1つ」(すなわち、「AまたはBのうちの少なくとも1つ」、すなわち、「A及び/またはBのうちの少なくとも1つ」)とは、一実施形態では、Bの存在を伴わない、2つ以上を任意選択的に含む少なくとも1つのA(B以外の要素を任意選択的に含む)、別の実施形態では、Aの存在を伴わない、2つ以上を任意選択的に含む少なくとも1つのB(A以外の要素を任意選択的に含む)、更に別の実施形態では、2つ以上を任意選択的に含む少なくとも1つのA、及び2つ以上を任意選択的に含む少なくとも1つのB(その他の要素を任意選択的に含む)、などのことを意味し得る。
【0129】
特許請求の範囲に加え上記の本明細書において、全ての移行句、例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(carrying)」、「有する」、「含む(containing)」、「含む(involving)」、「含む(holding)」などは、オープンエンドである、すなわち、含むがこれらに限定されないということを意味するものと理解されるべきである。米国特許庁特許審査基準2111.03条に記載のとおり、移行句「からなる」及び「から本質的になる」のみがそれぞれクローズド移行句またはセミクローズド移行句であるとする。
【0130】
クレーム内においてクレーム要素を修飾している順序を表す用語、例えば、「第1の」、「第2の」、「第3の」などの使用は、それ自体が、あるクレーム要素の別のクレーム要素に対する優先、優位、もしくは順序、または方法の行為を実施する時間的順序を何ら暗示するものではなく、単に、ある特定の名称を有するあるクレーム要素を同一の名称を有する別の要素と区別して(順序を表す用語の使用がなければ)クレーム要素を区別するための表示として使用されるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17
【配列表】
2022548957000001.app
【国際調査報告】