(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-22
(54)【発明の名称】チーズケーキ及びそれを製造する方法
(51)【国際特許分類】
A23G 3/00 20060101AFI20221115BHJP
A23C 19/09 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
A23G3/00
A23C19/09
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518194
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(85)【翻訳文提出日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2020076466
(87)【国際公開番号】W WO2021058504
(87)【国際公開日】2021-04-01
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505310426
【氏名又は名称】フリースランドカンピーナ ネーデルランド ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディユクグラーフ、イェローン テオドルス マリア
【テーマコード(参考)】
4B001
4B014
【Fターム(参考)】
4B001AC02
4B001AC03
4B001AC05
4B001AC15
4B001AC43
4B001AC45
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4B001AC99
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4B014GB11
4B014GG02
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4B014GP02
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4B014GP14
4B014GQ05
(57)【要約】
本発明は、クラスト及びフィリングを含むベークドチーズケーキであって、フィリングは、フィリングの乾燥重量に基づいて2~7重量%の、好ましくは少なくとも34重量%のホエイタンパク質を含むホエイタンパク質源に由来するホエイタンパク質を含む、ベークドチーズケーキに関する。本発明は、特定のホエイタンパク質の使用がベークドチーズケーキのフィリングにおけるクラック形成を低減又は更に防止することができるという所見に基づく。本発明は、ベークドチーズケーキを調製するための方法であって、特定のホエイタンパク質が使用される方法に更に関する。更に、本発明は、チーズケーキフィリングを調製するために好適な粉末状成分組成物であって、組成物の総重量に基づいて4~30重量%の、好ましくは少なくとも34重量%のホエイタンパク質を含むホエイタンパク質源、25~45重量%の脂肪及び25~50重量%の炭水化物を含む粉末状成分組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラスト及びフィリングを含むベークドチーズケーキであって、前記フィリングは、前記フィリングの乾燥重量に基づいて2~7重量%の、好ましくは少なくとも34重量%のホエイタンパク質を含むホエイタンパク質源に由来するホエイタンパク質を含む、ベークドチーズケーキ。
【請求項2】
前記ホエイタンパク質源は、ホエイタンパク質濃縮物及び/又はホエイタンパク質単離物を含む、請求項1に記載のチーズケーキ。
【請求項3】
前記ホエイタンパク質源は、酸ホエイを含む、請求項1又は2に記載のチーズケーキ。
【請求項4】
前記フィリングは、前記フィリングの乾燥重量に基づいて5~40重量%の量の植物油を更に含む、請求項1~3の何れか一項に記載のチーズケーキ。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載のベークドチーズケーキを調製するための方法であって、
a)クリームチーズを提供する工程;
b)好ましくは少なくとも34重量%の天然ホエイタンパク質を含むホエイタンパク質源を含む粉末状成分組成物を提供する工程;
c)フィリングを得るために、前記クリームチーズ及び前記粉末状成分組成物を混合する工程;
d)前記クラストのための生地を提供する工程;
e)プレチーズケーキ組成物を得るために、工程c)において得られた前記フィリングと、工程d)において提供された前記生地とを組み合わせる工程;
f)前記ベークドチーズケーキを得るために、前記プレチーズケーキ組成物を焼成する工程
を含む方法。
【請求項6】
前記クリームチーズ及び粉末状成分組成物は、前記フィリングの乾燥重量に基づいて、前記クリームチーズが、前記フィリング中で25~50重量%の固形分を提供し、及び前記粉末状成分組成物が、工程f)で得られた前記チーズケーキの前記フィリング中で45~65重量%の固形分を提供するような量で使用される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
チーズケーキフィリングを調製するために好適な粉末状成分組成物であって、前記組成物の総重量に基づいて4~30重量%の、好ましくは少なくとも34重量%のホエイタンパク質を含むホエイタンパク質源、25~45重量%の脂肪及び25~50重量%の炭水化物を含む粉末状成分組成物。
【請求項8】
前記組成物の乾燥重量に基づいて3~12重量%のホエイタンパク質を含む、請求項7に記載の粉末状成分組成物。
【請求項9】
前記ホエイタンパク質源は、ホエイタンパク質濃縮物及び/又はホエイタンパク質単離物を含む、請求項7又は8に記載の粉末状成分組成物。
【請求項10】
前記ホエイタンパク質は、本質的に天然の状態である、請求項7~9の何れか一項に記載の粉末状成分組成物。
【請求項11】
1~10重量%の天然デンプンを更に含む、請求項7~10の何れか一項に記載の粉末状成分組成物。
【請求項12】
前記脂肪は、植物油を含む、請求項7~11の何れか一項に記載の粉末状成分組成物。
【請求項13】
乾燥卵黄粉末、小麦粉、食品用酸味料、増粘剤、香料、芳香料及び塩の群から選択される1種以上の構成成分を更に含む、請求項7~12の何れか一項に記載の粉末状成分組成物。
【請求項14】
ベークドチーズケーキのフィリングにおけるクラックの低減又は好ましくは防止のための、天然ホエイタンパク質濃縮物及び/又はホエイタンパク質単離物の使用。
【請求項15】
レアプレチーズケーキ組成物を調製するための方法であって、
a)クリームチーズを提供する工程;
b)好ましくは少なくとも34重量%の天然ホエイタンパク質を含むホエイタンパク質源を含む粉末状成分組成物を提供する工程;
c)フィリングを得るために、前記クリームチーズ及び前記粉末状成分組成物を混合する工程;
d)クラストのための生地を提供する工程;
e)レアプレチーズケーキ組成物を得るために、工程c)において得られた前記フィリングと、工程d)において提供された前記生地とを組み合わせる工程
を含む方法。
【請求項16】
好ましくは請求項15に記載の方法によって得ることができるか又は得られたレアプレチーズケーキ組成物であって、クラスト及びフィリングを含み、前記フィリングは、前記フィリングの乾燥重量に基づいて2~7重量%の、好ましくは少なくとも34重量%のホエイタンパク質を含むホエイタンパク質源に由来する天然ホエイタンパク質を含む、レアプレチーズケーキ組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼成安定性のチーズケーキ及びチーズケーキを調製するための方法に関する。本発明は、チーズケーキを調製するために好適であるホエイタンパク質を含む粉末状成分組成物及びベークドチーズケーキフィリングにおけるクラックの低減又は防止のためのホエイタンパク質の使用に更に関する。
【背景技術】
【0002】
チーズケーキは、クリームチーズをベースとするフィリング及びフィリングを支持するクラストを含む甘い食品である。チーズケーキは、従来、新鮮な成分から手作りされている。フィリングは、クリームチーズ、砂糖、(サワー)クリーム、全卵、レモン汁若しくはクエン酸、(加工)コーンスターチ及び/又は小麦粉並びに任意選択的にバニラアロマから製造される。クラストは、通常、砕いたクッキー、グラハムクラッカー又はビスケット及び溶けた脂肪(例えば、バター)の生地から調製される。ときに、クラストが吸水によって生焼けになることを防止するため、焼成時にガラス質の特性を提供するためにクラスト成分に砂糖が加えられる。
【0003】
クリームチーズは、従来、クリームを10~20%の乳脂肪に標準化し、クリームを(例えば、66~68℃で30分間又は72~75℃で30~90秒間)低温殺菌し、均質化し、約30℃で培養し、且つpHが約4.6に達してカードが形成されるまでスターター培養物を接種することによって調製される。カードが撹拌され、ホエイがカード塊から排出される。生じたカード塊は、圧縮してパックされ、低温保存される。今日、ホエイからカードを分離するために代替の限外濾過法も使用されている。
【0004】
チーズケーキの官能的及び視覚的側面は、消費者によって高度に好まれ、チーズケーキは、高級な食品であると見なされている。チーズケーキ、特にフィリングは、その固さに関して特定の要件を有する。フィリングは、カット又はスライスされるために十分に固い必要があるが、他方では、口当たりに悪影響を及ぼすほど固すぎてはならない。工業生産では、追加して、その繊細な官能的特性を失うことなく、大規模生産後の冷凍及び消費者末端での解凍に耐えなければならない。フィリングは、(発酵)クリームチーズの使用及びレモンの皮、レモンジュース又はクエン酸の添加に起因して心地良いわずかな酸味(約5のpH)を有する。
【0005】
チーズケーキは、主として、低温硬化のフィリングタイプ又はベークドタイプの2種類で提供される。低温硬化のチーズケーキフィリングの固さは、通常、ほぼ室温でチーズケーキフィリングの固化を誘発するであろう、ゼラチン又は特定のリン酸塩のようなゲル化剤等の構造形成成分によって得られる。ベークドタイプのチーズケーキのために、フィリング(及びクラスト)は、全卵、クリーム及びデンプンの存在のため、加熱プロセスの結果として硬化される。特別なタイプのチーズケーキは、同様にベークドタイプであり、ヨーロッパ式の(クワルクをベースとする)低脂肪チーズケーキと比較して、相当に大量の脂肪を含有する生成物である、いわゆるニューヨークスタイルのチーズケーキである。
【0006】
ベークドチーズケーキは、乾燥成分ブレンド及びクリームチーズを使用することにより工業規模で製造することもできる。このブレンドは、例えば、砂糖、デンプン、小麦粉、増粘剤、粉乳、乳化剤、植物油、食用酸及び塩等の多数の成分を含有する。チーズケーキを調製するために、クリームチーズ、成分ブレンド及び全卵が混合され、任意選択的に例えばクリーム及び/又は水等のより多くの成分を添加することができ;フィリングは、次に、生地上に層状に重ねられ、オーブン内で焼成される。焼成後、チーズケーキは、冷ましてそのまま置かれる。冷めると、調製したチーズケーキは、長期間貯蔵及び小売業者への輸送のために冷凍することができる。
【0007】
しかしながら、ベークドチーズケーキに発生し得る1つの問題は、乾燥成分ブレンドを含む方法を使用した場合及び新鮮成分を用いる従来の方法でも頻繁に、焼成後、フィリングがおそらくフィリング基質の収縮に起因してクラックを形成し得ることである。クラックの形成は、チーズケーキを冷凍するときにも発生し得る。成分ブレンドを用いて観察された別の欠陥は、最終チーズケーキの最終的味覚及び構造が必ずしも容認されないことである。
【0008】
結果として、業務用パン職人は、販売することのできない、従って経済的損失を形成する欠陥のあるチーズケーキの廃棄を必要とするであろう。更に、このフィリングの官能的特性は、高品質のチーズケーキ、例えばニューヨークスタイルのチーズケーキの基準を満たさないと思われた。
【0009】
米国特許第3455698号明細書は、酸凝固性タンパク質源、砂糖、小麦粉、コーンスターチの主要部分及び水に加水分解可能で食用酸を遊離させるアシドゲンを含む、チーズケーキフィリングとして再構成可能な乾燥食品ミックスに関する。
【0010】
国際公開第2004-008868号パンフレットは、常温保存可能な風味の良いチーズ製品及びそれを調製するためのプロセスに関する。この製品は、水性液体相、分散脂肪層及び固形分相を含む3相調製物として調製される。この製品は、焼成前に非焼成生地に適用され、焼成後にそれらの所望の特性を維持することができる。
【0011】
米国特許出願公開第2001-0002267号明細書は、延長された保管寿命安定性を有する低水分チーズケーキ製品について記載している。製品は、クラスト及びフィリングについての所定の水分活性範囲を設定することによって得られ、それにより保管寿命が少なくとも3カ月間まで延長される。
【0012】
米国特許出願公開第2014-0170285号明細書は、室温安定性のチーズケーキフィリングを製造するための方法及びこの方法によって得られるチーズケーキフィリングに関する。この明細書に記載された方法は、チーズ、安定剤、水及び好ましくは抗酸化剤を混合し、混合物を加熱し、卵を砂糖と混合し、チーズ含有相と卵含有相とを組み合わせ、且つ加熱し、その後、これらの相を冷ます工程を含む。このようにして得られた混合物は、室温で数カ月間にわたり保持され得る。
【0013】
米国特許出願公開第2010-0178388号明細書は、大豆油等の脂肪成分及びオート麦繊維等の繊維成分を混合する工程によって形成されるフワフワした焼成安定性フィリングに関する。繊維は、粉末チーズ、ホエイタンパク質粉末、塩、酵母エンハンサー及びパプリカ等の任意選択的な成分と混合され得る。
【0014】
特開2019-50738号公報は、少なくともチーズ、乳化剤、ホエイタンパク質及びグルコマンナンを含むチーズケーキ様食品であって、乳化剤は、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド及び酵素分解レシチンからなる群から選択される少なくとも1つのタイプを含む、チーズケーキ様食品に関する。ホエイタンパク質は、好ましくは、非精製ホエイ、ホエイタンパク質濃縮物及びホエイタンパク質単離物質からなる群から選択される少なくとも1つのタイプである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、先行技術は、これまでチーズケーキと関連する上述の問題への解決策を提供しなかった。従って、改良されたチーズケーキと、好ましくはフィリングが焼成後にクラックを形成せず、且つ良い味及び口当たりを有するそのようなチーズケーキを調製するための改良された方法とを提供する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
ここで、乾燥粉末中に含まれ、且つベークドチーズケーキ調製方法において使用される特定のホエイタンパク質の使用は、驚くべきことに、焼成後のフィリングにおけるクラックの形成を低減又は更に防止し、且つ極めて味の良いチーズケーキを製造できることが見出された。
【0017】
従って、一態様では、本発明は、クラスト及びフィリングを含むベークドチーズケーキであって、フィリングは、フィリングの乾燥重量に基づいて2~7重量%の、好ましくは少なくとも34重量%のホエイタンパク質を含むホエイタンパク質源に由来するホエイタンパク質を含む、ベークドチーズケーキに関する。
【0018】
別の態様では、本発明は、ベークドチーズケーキを調製するための方法であって、
a)クリームチーズを提供する工程;
b)好ましくは少なくとも34重量%の天然ホエイタンパク質を含むホエイタンパク質源を含む粉末状成分組成物を提供する工程;
c)フィリングを得るために、クリームチーズ及び粉末状成分組成物を混合する工程;
d)クラストのための生地を提供する工程;
e)プレチーズケーキ組成物を得るために、工程c)において得られたフィリングと、工程d)において提供された生地とを組み合わせる工程;
f)チーズケーキを得るために、プレチーズケーキ組成物を焼成する工程
を含む方法に更に関する。
【0019】
別の態様では、本発明は、レアプレチーズケーキ組成物を調製するための方法であって、
a)クリームチーズを提供する工程;
b)好ましくは少なくとも34重量%の天然ホエイタンパク質を含むホエイタンパク質源を含む粉末状成分組成物を提供する工程;
c)フィリングを得るために、クリームチーズ及び粉末状成分組成物を混合する工程;
d)クラストのための生地を提供する工程;
e)レアプレチーズケーキ組成物を得るために、工程c)において得られたフィリングと、工程d)において提供された生地とを組み合わせる工程
を含む方法に関する。
【0020】
別の態様では、本発明は、好ましくは、直前に記載した方法によって得ることができるか又は得られたレアプレチーズケーキ組成物であって、クラスト及びフィリングを含み、フィリングは、フィリングの乾燥重量に基づいて2~7重量%の、好ましくは少なくとも34重量%のホエイタンパク質を含むホエイタンパク質源に由来する天然ホエイタンパク質を含む、レアプレチーズケーキ組成物に関する。
【0021】
更に別の態様では、本発明は、組成物の総重量に基づいて4~30重量%の、好ましくは少なくとも34重量%のホエイタンパク質を含むホエイタンパク質源、25~45重量%の脂肪及び30~45重量%の炭水化物を含む、チーズケーキフィリングを調製するために好適な粉末状成分組成物に関する。
【0022】
更に他の態様では、本発明は、ベークドチーズケーキのフィリングにおけるクラックの好ましくは防止の低減のための、天然ホエイタンパク質濃縮物及び/又は天然ホエイタンパク質単離物の使用に関する。
【0023】
定義
本明細書を通して、用語「脂肪」及び「油」は、互換的であると見なされる。「脂肪」は、「油」と同じ意味を有し得る。
【0024】
「乳脂肪」は、ウシの生乳中に存在し、ウシの生乳から入手できる脂質部分又はその画分である。「脂肪」又は「油」は、主として、好ましくは95重量%超が脂肪酸トリグリセリドからなる。
【0025】
「ホエイタンパク質の天然状態」は、パーセンテージとして表示される、pH4.6でのそのNSI値によって決定される。
【0026】
チーズケーキフィリングにおける「クラック」は、内側からフィリングに伸長する、表面又は側壁の目に見える中断として定義される。
【0027】
「天然デンプン」は、小麦、トウモロコシ、タピオカ又はジャガイモ等の植物源から抽出されるデンプンのために使用される用語である。天然デンプンは、冷水中に不溶性であり、化学的、物理的又は熱的に修飾されていない。
【0028】
「全卵」又は「全卵固形分」は、好ましくは、鶏卵中に存在するそれらの相対量中において卵黄及び卵の白身(卵白)の両方を含有する卵材料として定義される。
【0029】
本発明は、一態様では、クラスト及びフィリングを含むベークドチーズケーキであって、フィリングは、フィリングの乾燥重量に基づいて2~7重量%の、好ましくは少なくとも34重量%のホエイタンパク質を含むホエイタンパク質源に由来するホエイタンパク質を含む、ベークドチーズケーキに関する。
【0030】
本発明による量における特定の起源からのホエイタンパク質の使用は、チーズケーキにおける焼成プロセス後のクラック形成を実質的に低減又は更に防止することが見出されており;クラックの形成は、極めて望ましくなく且つ魅力的ではない特徴となると考えられる。
【0031】
使用されるホエイタンパク質源のホエイタンパク質含量が重要であり得ることが更に観察されている。ホエイタンパク質源中で34重量%のホエイタンパク質の最小レベルが好ましい。任意の特定の理論に拘束されることなく、本発明によるフィリング中で十分に高いホエイタンパク質レベルを達成するために、例えば、(主として)ラクトース及び塩等のホエイタンパク質源中に存在する他の構成成分は、フィリングの固形分含量がはるかに高すぎることになることを引き起こし得るため、必要とされるホエイタンパク質含量を得るために、任意のホエイタンパク質源を単に添加することのみが好ましいとは考えられない。ホエイ粉末及びWPC30等の低ホエイタンパク質源を用いて作業するパン職人は、レシピを適合させることができ、それによりチーズケーキフィリングのレシピから有意に逸脱し得る。
【0032】
本発明において使用されるホエイタンパク質は、好ましくは、牛乳に由来する。好ましくは、フィリングは、フィリングの乾燥重量に基づいて2.5~6.5重量%、より好ましくは3~6重量%、最も好ましくは3.5~5.5重量%の、好ましくは少なくとも34重量%のホエイタンパク質を含むホエイタンパク質源に由来するホエイタンパク質を含む。
【0033】
好ましくは、ホエイタンパク質源は、ホエイタンパク質濃縮物及び/又はホエイタンパク質単離物を含む。用語「ホエイタンパク質濃縮物(WPC)」は、当技術分野で知られており、ホエイ、好ましくはウシホエイの精製工程及び/又は濃縮工程によって得られるホエイタンパク質調製物に関する。ホエイタンパク質濃縮物を生成するための従来のプロセスは、例えば、任意選択的に透析濾過(DF)が続く(膜)限外濾過(UF)による。WPCは、当技術分野において、乾燥重量に基づいて30~85重量%のホエイタンパク質含量を有する。
【0034】
ホエイタンパク質単離物(WPI)は、UF/DF又はイオン交換プロセスによって調製され得る。WPIのホエイタンパク質含量は、概して、乾燥重量に基づいて85~95重量%である。例えば、P.Walstra et al.,CRC Press,Dairy Science and Technology,2006,second edition,page 541を参照されたい。
【0035】
ホエイタンパク質濃縮物は、好ましくは、WPCの重量で34~85重量%、より好ましくは35~80重量%、最も好ましくは60~80%重量%のタンパク質を含む。乾燥重量で35、60及び80重量%の標準化量を有するWPCは、例えば、FrieslandCampina(NUTRI WHEY NATIVE)、ARLA Foods、Leprino Foods、Eurialから市販で入手することができ、従って本発明のために使用することができる。
【0036】
ホエイタンパク質単離物は、好ましくは、乾燥重量に基づいて85重量%超、最も好ましくは90重量%以上のタンパク質含量を有する。ホエイタンパク質単離物は、乾燥重量に基づいて95重量%未満のタンパク質含量を有する。一実施形態では、ホエイタンパク質源は、WPCとWPIとの組み合わせを含む。
【0037】
別の実施形態では、ホエイタンパク質源は、WPC35、WPC60及びWPC80の群から選択される1種以上のWPCを含む。WPC又はWPI等のホエイタンパク質源は、チーズホエイ又は酸ホエイに由来し得る。当業者は、これらのプロセスがどのように工業的に実施されるかを知っており;例えば、f.i.P.Walstra et al.,CRC Press,Dairy Science and Technology,2006,second edition,pages 538-542を参照されたい。
【0038】
ホエイタンパク質源は、最も好ましくは、酸ホエイがチーズケーキフィリングの調製において極めて良好な結果を生じさせることが観察されているため、酸ホエイを含む。最も好ましい実施形態では、ホエイタンパク質源は、ホエイタンパク質濃縮物、好ましくは酸ホエイ由来のWPC80を含む。
【0039】
チーズケーキフィリングは、更に植物脂肪又は油を更に含み得る。フィリングは、クリームチーズに由来する乳脂肪を既に含有しているため、植物油の存在は、フィリングにより優れた口当たりを提供することが見出された。植物油の量は、好ましくは、フィリングの乾燥重量に基づいて5~40重量%、より好ましくは10~30重量%、最も好ましくは12~25重量%であり得る。好ましくは、植物油は、パーム油、パーム核油、ココナッツ油、菜種油、大豆油及びヒマワリ油からなる群から選択される。最も好ましくは、植物油は、パーム油及び菜種油からなる群から選択される油であり、これは、これらの油を使用するとフィリングの最高の風味が得られることが見出されているためである。
【0040】
チーズケーキのフィリングは、フィリングの乾燥重量に基づいて好ましくは5~40重量%、より好ましくは10~35重量%、最も好ましくは15~30重量%の量で乳脂肪を更に含む。
【0041】
チーズケーキのフィリング中において、脂肪の総量は、フィリングの乾燥重量に基づいて好ましくは15~60重量%、より好ましくは20~52重量%、最も好ましくは25~48重量%である。
【0042】
追加して、チーズケーキのフィリングは、炭水化物を含み得る。炭水化物は、フィリングの乾燥重量に基づいて好ましくは20~30重量%の量で単糖、二糖及び/又はオリゴ糖を含み得る。炭水化物は、甘味料として且つフィリングに本体を提供するために機能する。オリゴ糖は、本明細書では、3~10種の単糖の鎖として定義される。好ましいオリゴ糖は、グルコースシロップ及び/又はマルトデキストリンを含み得る。好適な単糖及び/又は二糖は、スクロース及びグルコースを含む。最も好ましいのは、スクロースである。
【0043】
有利には、フィリングは、フィリングの砂質を回避するために、レベルの高すぎるラクトースを含まない。従って、フィリングは、フィリングの乾燥重量に基づいて15重量%未満、好ましくは13重量%未満、より好ましくは12重量%未満、最も好ましくは11重量%未満のラクトースを含む。
【0044】
チーズケーキのフィリングは、好ましくは、追加して、ホエイタンパク質以外の乳タンパク質を4~8重量%、より好ましくは5~7重量%の量で含み得る。このような乳タンパク質は、最も好ましくは、カゼインを含む。
【0045】
チーズケーキのフィリングのpHは、およそpH5、好ましくはpH4.6~5.1、より好ましくは4.7~5.0である。ここで、pHの測定は、1重量部の水及び1重量部のチーズケーキフィリングを完全に混合し、20℃で校正済みpH計を用いてpHを測定することによって実施される。
【0046】
好ましい実施形態では、チーズケーキのフィリングは、フィリングの乾燥重量に基づいて2~6重量%の、好ましくはホエイタンパク質濃縮物の乾燥重量で35~80重量%のタンパク質を含むホエイタンパク質濃縮物に由来するホエイタンパク質;10~30重量%の植物油、10~30重量%の乳脂肪;20~30重量%の炭水化物;及び4~8重量%の、ホエイタンパク質源以外の乳タンパク質を含む。
【0047】
最も好ましい実施形態では、チーズケーキのフィリングは、フィリングの乾燥重量に基づいて2~6重量%の、好ましくはホエイタンパク質濃縮物の乾燥重量で60~80重量%のタンパク質を含むホエイタンパク質濃縮物に由来するホエイタンパク質;10~30重量%の、パーム油及び菜種油の群から選択される植物油、10~30重量%の乳脂肪;20~30重量%の単糖、二糖及び/又はオリゴ糖並びに4~8重量%のカゼインを含む。
【0048】
本発明についての調査の経過において、チーズケーキのフィリングの一部としての全卵は、焼成後のフィリング表面でのクラック形成を強化すると思われるような方法でフィリングの品質に悪影響を及ぼし得ることが観察された。従って、好ましくは、チーズケーキのフィリングは、フィリングの乾燥重量に基づいて6重量%未満、より好ましくは2重量%未満、一層より好ましくは0.5重量%未満の全卵固形分を含有し得る。最も好ましくは、フィリングは、全卵固形分を全く含有しない。
【0049】
別の態様では、本発明は、ベークドチーズケーキを調製するための方法であって、
a)クリームチーズを提供する工程;
b)好ましくは少なくとも34重量%の天然ホエイタンパク質を含むホエイタンパク質源を含む粉末状成分組成物を提供する工程;
c)フィリングを得るために、クリームチーズ及び粉末状成分組成物を混合する工程;
d)クラストのための生地を提供する工程;
e)プレチーズケーキ組成物を得るために、工程c)において得られたフィリングと、工程d)において提供された生地とを組み合わせる工程;
f)ベークドチーズケーキを得るために、プレチーズケーキ組成物を焼成する工程
を含む方法に更に関する。
【0050】
工程a)で提供されるクリームチーズは、背景技術に記載した従来のクリームチーズであり得る。当業者であれば、そのような生成物を得る方法を知っている。クリームチーズの好適なタイプは、例えば、フィラデルフィアオリジナル(KraftHeinz)及びモンシュー(FrieslandCampina)である。
【0051】
任意選択的に、工程a)におけるクリームチーズは、最初に、ある量の水と混合され得る。これは、クリームチーズのより容易な取り扱いを生じさせるであろう。当業者であれば、クリームチーズの固さに依存して、添加すべき適正な水の量を決定することができるであろう。好ましくは、工程a)においてクリームチーズと混合される水の量は、クリームチーズの総重量に基づいて15~25重量%である。
【0052】
クリームチーズは、製品全体で約21~43重量%の範囲に及ぶ様々な量の脂肪を含有し得る。炭水化物、主としてラクトースの量は、製品全体で3~8重量%の範囲に及び;タンパク質の量は、通常、4~8重量%の範囲である。クリームチーズは、グアーガム、ローカストビーンガム、イナゴマメ及び塩化ナトリウム等の添加塩等の粘着剤及び/又は安定剤を更に含有し得る。
【0053】
クリームチーズの乾燥固形分含量は、概して、30重量%超であり;乾燥固形分含量は、好ましくは、60重量%未満である。
【0054】
工程b)において提供される粉末状成分は、以下で本発明の更に別の態様として記載するように定義される。
【0055】
好ましくは、本方法では、限られた量の液体又は粉末の何れかの全卵が使用されるか又は使用されない。従って、好ましくは、工程a)~c)では、使用される全卵固形分の量は、チーズケーキのフィリングが、フィリングの乾燥重量に基づいて好ましくは6重量%未満、より好ましくは2重量%未満、一層より好ましくは0.5重量%未満の全卵固形分のみを含有する、最も好ましくは全卵固形分を全く含有しないような量である。
【0056】
本発明に関して背景技術において記載したように、チーズケーキのフィリングは、カット又はスライスされるのに十分に固い必要があるが、それでも優れた食体験等の優れた官能的特性を有し;チーズケーキのフィリングは、過度に固くても、過度に柔らかくても、過度に壊れやすくても、過度に砕けやすくても又は過度に弾性であってもならない。
【0057】
従って、適正な固さのフィリングを得るため且つ焼成後のクラック形成を低減又は好ましくは回避するために、好ましくは、クリームチーズ及び粉末状成分組成物は、特定の相対量で使用することができる。従って、クリームチーズ及び粉末状成分組成物は、工程c)において、フィリングの乾燥重量に基づいて、クリームチーズがフィリング中で25~50重量%の固形分を提供し、及び粉末状成分組成物が、工程f)で得られたチーズケーキのフィリング中で45~65重量%の固形分を提供するような量で使用される。より好ましくは、クリームチーズは、フィリング中で30~45重量%の固形分を提供し、及び粉末状成分組成物は、フィリング中で50~60重量%の固形分を提供する。
【0058】
工程d)で提供されるクラストのための生地は、当業者によって通常の作業として調製することができ;クラストのための生地は、砕いたクッキー、脂肪及び砂糖のブレンドを作成することによって手作りすることができるか;又は既製の生地を生地供給業者から入手することができる。
【0059】
工程e)では、生地(工程d)及びフィリング(工程c)は、例えば、生地上にフィリングを置くことによって組み合わされる。当業者は、この工程を実施する方法及びこれを達成するための適正な用具の選択について明確に認識している。工程e)の最終結果は、プレチーズケーキ組成物である。
【0060】
工程f)における焼成する工程は、この工程中にフィリングの最終構造が形成されるため、極めて重要なプロセスである。当業者は、この工程の重大性を認識しており、オーブン内での加熱温度及び滞留時間に関してオーブンの設定を調整する方法を知っているであろう。
【0061】
小規模の焼成は、デッキオーブン内で行われ得る一方、大規模生産(1日当たり数千個のケーキ)のために、通常、トンネル型オーブンが使用される。デッキオーブンでは、静的焼成温度が維持される。例えば、115℃で100分間の加熱時間が適用される。
【0062】
トンネル型オーブンには、それぞれが固有の温度設定を有する様々な加熱部が存在し得る。50分間にわたり更に180℃までの加熱時間を使用することができる。
【0063】
しかしながら、フィリングの適正な構造形成のために、使用するオーブンのタイプとは無関係に、フィリングのコアの温度が考慮されなければならない。フィリングのコアが80~85℃の温度に達するまさにその瞬間に加熱を停止する。デッキオーブンについて、これは、オーブンからチーズケーキを取り出し、好ましくは室温、即ち約20℃に冷ますことを意味するであろう。トンネル型オーブンについて、チーズケーキは、冷却部に入るであろう。フィリングのコア温度は、ケーキフィリングの所定の位置に校正済み温度プローブを挿入することによって監視することができる。
【0064】
従って、工程f)における焼成する工程は、フィリングのコア温度が80~85℃に達するまで、オーブン内のプレチーズケーキ組成物を焼成する工程を含み、その後、得られたチーズケーキは、ほぼ室温、好ましくは約20℃に冷まされ、ここで、フィリングのコア温度は、好ましくは、先端がフィリングの中心点に配置される校正済み温度計を用いて測定される。中心点は、フィリングの半分の高さでフィリングの直径の中間にある点として定義される。好ましくは、フィリングの形状は、円形であり、スズ製焼き型の形状に従う。任意選択的に、ベークドチーズケーキは、その後、例えば-20℃で冷凍され、将来の流通のために保存される。
【0065】
プレチーズケーキ組成物の焼成は、別個の工程で実施することもできる。プレチーズケーキ組成物は、例えば、冷蔵庫で保存することができ、別の場所及び/又は時点で焼成することができる。
【0066】
従って、別の態様では、本発明は、レアプレチーズケーキ組成物を調製するための方法であって、
a)クリームチーズを提供する工程;
b)好ましくは少なくとも34重量%の天然ホエイタンパク質を含むホエイタンパク質源を含む粉末状成分組成物を提供する工程;
c)フィリングを得るために、クリームチーズ及び粉末状成分組成物を混合する工程;
d)クラストのための生地を提供する工程;
e)レアプレチーズケーキ組成物を得るために、工程c)において得られたフィリングと、工程d)において提供された生地とを組み合わせる工程
を含む方法に関する。
【0067】
別の態様では、従って、本発明は、好ましくは、直前に記載した方法によって得ることができるか又は得られたレアプレチーズケーキ組成物であって、クラスト及びフィリングを含み、フィリングは、フィリングの乾燥重量に基づいて2~7重量%の、好ましくは少なくとも34重量%のホエイタンパク質を含むホエイタンパク質源に由来する天然ホエイタンパク質を含む、レアプレチーズケーキ組成物に関する。
【0068】
使用する成分の量及びタイプ並びにレアプレチーズケーキ組成物を調製するために実施される工程は、焼成工程を除いて、ベークドチーズケーキ及びその調製方法に関する本発明の態様において記載したものと同一である。
【0069】
更に別の態様では、本発明は、チーズケーキフィリングを調製するために好適な粉末状成分組成物であって、組成物の総重量に基づいて4~30重量%の、好ましくは少なくとも34重量%のホエイタンパク質を含むホエイタンパク質源、25~45重量%の脂肪並びに25~50重量%の、好ましくはスクロース、グルコース、グルコースシロップ及びそれらの混合物の群から選択される炭水化物を含む粉末状成分組成物に関する。好ましくは、粉末状成分組成物は、乾燥重量基準に基づいて8重量%未満、より好ましくは7重量%未満、最も好ましくは6重量%のラクトースを含有する。過度に高いラクトースレベルは、最終フィリングにおける砂質を誘発するであろう。ここで、粉末状成分組成物を便宜的にクリームチーズと混合することができ、その後、チーズケーキを焼成することができ、焼成後、フィリングにおけるクラック形成が強く低減されるか又は存在せず、優れた官能的特性が得られる。粉末状成分組成物は、好ましくは、95重量%超の乾燥固形分含量を有する。粉末状成分組成物は、好ましくは、5~28重量%、より好ましくは6~25重量%、最も好ましくは7~23重量%の、少なくとも34重量%のホエイタンパク質を含むホエイタンパク質源を含む。粉末状成分組成物は、好ましくは、粉末状成分組成物の乾燥重量に基づいて3~12重量%、より好ましくは4~10重量%、最も好ましくは5~9重量%のホエイタンパク質を含む。より低いホエイタンパク質量は、十分にしっかりしたフィリングをもたらさず;他方では、より高いホエイタンパク質量は、ベークドチーズケーキとの類似性を全く有さない過度に固い構造をもたらし;且つ消費者によって理解されないであろう。
【0070】
好ましくは、ホエイタンパク質源は、ホエイタンパク質濃縮物(WPC)若しくはホエイタンパク質単離物(WPI)を含むか、又はWPC若しくはWPIである。一実施形態では、ホエイタンパク質源は、ホエイタンパク質濃縮物及びホエイタンパク質単離物の両方を含み得る。別の実施形態では、ホエイタンパク質源は、WPC35、WPC60及びWPC80の群から選択される1種以上のWPCを含む。
【0071】
ホエイタンパク質濃縮物は、好ましくは、WPCの重量で34~85重量%、より好ましくは35~80重量%、最も好ましくは60~80%重量%のタンパク質を含む。ホエイタンパク質単離物は、好ましくは、乾燥重量に基づいて85重量%超、最も好ましくは90重量%以上のタンパク質含量を有する。ホエイタンパク質源は、最も好ましくは、酸ホエイがチーズケーキフィリングの調製において極めて良好な結果を生じさせることが観察されているため、酸ホエイを含む。従って、最も好ましい実施形態では、ホエイタンパク質源は、ホエイタンパク質濃縮物、好ましくは酸ホエイ由来のWPC80を含む。
【0072】
粉末状成分組成物中のホエイタンパク質は、本質的に天然の状態であることが好ましい。本質的に天然の状態であるホエイタンパク質は、本質的に変性しておらず、これは、その三次構造、空間的構造、球状構造が依然として無傷であることを意味する。本発明のために、本質的に天然の状態であるホエイタンパク質を使用することが極めて有益であると思われた。天然状態であるホエイタンパク質は、中性pH及び低pHの両方で高溶解度を提示する。
【0073】
従って、本質的に天然の状態であるホエイタンパク質は、pH4.6で75%超、好ましくは85%超、より好ましくは90%超、最も好ましくは93%超の窒素溶解度指数(NSI pH4.6)を有するものとして定義される。
【0074】
ホエイタンパク質のNSI pH4.6は、以下の(ISO 15323:2002/IDF173に由来する)方法を用いて決定される:
a)ビーカー内に約1gのタンパク質と均等な量の生成物を測り入れ、
b)75mLの0.1MのNaCl溶液を添加し、
c)HClを用いてpHを4.6に調整し、22℃で2時間にわたり分散液を撹拌し続け、
d)分散液を100mLのフラスコに移し、100mLの印まで水を満たし、
e)フラスコからかなりの量の試料を取り出し、窒素含量を測定し、
f)35mLの残留分散液を遠心管に移し、3000g、22℃で10分間遠心し、
g)上清の窒素含量を決定する。
【0075】
窒素は、ISO8968-1/IDF 20-1に従ったケルダール法:
【数1】
(式中、
- NSIは、パーセントとして表示される試料の窒素溶解度指数であり;
- wsは、100mL当たりのgとして表示される、工程g)において得られる上清液の窒素含量であり;
- wdは、100mL当たりのgとして表示される、工程e)において得られる分散液の窒素含量である)
を用いて決定される。
【0076】
ケルダール法は、窒素転換係数又は6.38を用いて、本発明による組成物(ホエイタンパク質及びカゼイン等の乳タンパク質)のタンパク質含量を決定するためにも使用される。
【0077】
粉末状成分組成物は、好ましくは、組成物の乾燥重量に基づいて1~10重量%、より好ましくは1.5~7重量%、最も好ましくは2~6重量%の天然デンプンを含む。好ましい天然デンプンのタイプには、小麦デンプン及び/又はトウモロコシデンプン、タピオカデンプン及び/又はジャガイモデンプンが含まれ;最も好ましいのは、天然小麦デンプンである。天然デンプンを使用することにより、加工デンプン及び/又は耐酸性デンプンの使用は、もはや必ずしも必要とされないことが見出されている。天然デンプンは、ホエイタンパク質源と組み合わせて、焼成中のチーズケーキのフィリングの優れた構造展開を提供する。
【0078】
存在する場合、粉末状成分組成物中のデンプンの量は、組成物中に既に存在する炭水化物から個別に計算することができる。
【0079】
粉末状組成物中の脂肪の量は、組成物の乾燥重量に基づいて好ましくは28~42重量%、より好ましくは30~40重量%である。脂肪は、精製天然の、即ち非硬化脂肪又は完全水素化硬化脂肪であり得る。本発明による粉末状成分組成物中の脂肪は、好ましくは、パーム核油、菜種油、ココナッツ油、パーム油、大豆油、ヒマワリ油及び中鎖トリグリセリド油からなる群から選択される植物油を更に含み得る。より好ましくは、植物油は、パーム核油、パーム油、菜種油及びココナッツ油からなる群から選択される。最も好ましくは、油は、パーム油又は菜種油を含む。パーム油又は菜種油の使用は、最良の味覚及び口当たりを提供し、消費者がベークドチーズケーキから予測するであろう味覚及び口当たりと一致していると思われた。
【0080】
好ましい実施形態では、脂肪は、スプレー乾燥脂肪粉末として存在する。従って、好ましい実施形態では、粉末状成分組成物は、粉末状成分組成物の乾燥重量に基づいて30~55重量%、より好ましくは35~50重量%、最も好ましくは40~45重量%のスプレー乾燥脂肪粉末を含み、その脂肪粉末は、脂肪粉末の乾燥重量に基づいて83~87重量%の脂肪、10~15重量%の炭水化物、好ましくはグルコースシロップ及び1~3重量%のタンパク質、好ましくは例えばカゼイン塩等の乳タンパク質を含む。
【0081】
粉末の形態における脂肪の使用は、液体脂肪又は固体脂肪をそのままで含むのとは反対に、粉末状成分組成物の調製における脂肪の容易な取り扱いを可能にする。そのような脂肪粉末は、好ましくは、脂肪のエマルジョン、マルトデキストリン又はグルコースシロップ等炭水化物及びタンパク質をスプレー乾燥する工程によって製造される。そのような脂肪粉末の例は、精製パーム油に基づくVana Grasa(登録商標)80C 058又は菜種油に基づくVana Grasa(登録商標)80 B 065であり;何れもFrieslandCampina Ingredients,The Netherlandsから入手可能である。
【0082】
粉末状成分組成物中に含まれる炭水化物は、スクロース、デキストロース、グルコースシロップ、マルトデキストリン、フルクトース及び高フルクトースコーンシロップから更に選択され得る。
【0083】
粉末状成分組成物は、乾燥卵黄粉末、小麦粉、食品用酸味料、増粘剤、香料、芳香料及び塩の群から選択される1種以上の構成成分を更に含み得る。卵黄粉末は、組成物の乾燥重量に基づいて好ましくは1~10重量%、より好ましくは2~9重量%、最も好ましくは3~8重量%の量で存在し得る。小麦粉は、3~8重量%の量で成分組成物中に存在し得る。食品用酸味料は、好ましくは、クエン酸、乳酸、リンゴ酸及び/又はそれらに由来する塩から選択され得;好ましくは、これらは、約4.6~5.1のpHが最終チーズケーキのフィリング中で得られるような量で存在し;より好ましくは、食品用酸味料は、組成物の乾燥重量に基づいて好ましくは0.1~2.5重量%、より好ましくは0.5~1.8重量%、最も好ましくは0.8~1.5重量%の量で存在する。増粘剤は、好ましくは、組成物の乾燥重量に基づいて0.01~5重量%、より好ましくは0.02~3重量%、最も好ましくは0.05~1.5重量%の量において、グアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、ペクチン、ゼラチンガム、アラビアガムからなる群から選択され得る。最も好ましい増粘剤は、グアーガム、ローカストビーンガム及びキサンタンガムである。塩(塩化ナトリウム)、香料並びにレモンフレーバー及び/又はバニラフレーバー等の芳香料は、必要とされる量で粉末状成分組成物中に存在する。
【0084】
好ましい実施形態では、粉末状成分組成物は、組成物の重量に基づいて8~15重量%の、ホエイタンパク質濃縮物の乾燥重量に基づいて60~80重量%のタンパク質を含むホエイタンパク質濃縮物であって、ホエイタンパク質は、85%超のNSI pH4.6を有する、ホエイタンパク質濃縮物;25~40重量%の炭水化物、30~40重量%の植物油及び2~8重量%の天然デンプンを含む。
【0085】
最も好ましい実施形態では、粉末状成分組成物は、組成物の重量に基づいて8~12重量%の、ホエイタンパク質濃縮物の乾燥重量に基づいて80重量%のタンパク質を含むホエイタンパク質濃縮物であって、ホエイタンパク質は、90%超のNSI pH4.6を有する、ホエイタンパク質濃縮物;25~40重量%の炭水化物、30~40重量%の、パーム油及び菜種油からなる群から選択される油及び2~8重量%の天然小麦デンプンを含む。
【0086】
更に別の態様では、本発明は、ベークドチーズケーキのフィリングにおけるクラックの低減又は好ましくは防止のための、ホエイタンパク質濃縮物及び/又はホエイタンパク質単離物の使用に関する。チーズケーキに関する態様についての説明の下では、チーズケーキにおいて使用されるホエイタンパク質濃縮物及び/又はホエイタンパク質単離物の量は、上記で提供されている。好ましくは、ホエイタンパク質濃縮物及び/又はホエイタンパク質単離物は、粉末状成分組成物に関する態様について上記で記載した粉末状成分組成物中に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【
図1】本発明による実施例1によって調製したベークドチーズケーキである。
【発明を実施するための形態】
【0088】
実験の部
材料及び方法
温度計(コア温度を測定するため):TD11タイプT、プローブ長108mm、VWR(オランダ国)から入手した。
オーブンのタイプ:MIWEデッキオーブン(MIWE、独国)
【0089】
実施例1:
本発明による実施例は、以下の通りに作成した。
成分:
- 975gのフィラデルフィアクリームチーズ、22重量%の脂肪、31.5重量%の乾燥物質(KraftHeinz)
- 220gの水
- 以下:
○30gの卵黄粉末
○216の粉砂糖
○0.5gのグアーガム(Dupont)
○0.025gの香料
○0.1gの塩
○24gの天然小麦デンプン
○48gの酸ホエイ(FrieslandCampina Ingredients)NSI=91.0%から調製した天然WPC80であるNUTRI WHEY NATIVE
○250gのVana Grasa 80C 058(パーム油をベースとする脂肪粉末;組成:80.5重量%の精製パーム油、17重量%のグルコースシロップ、2重量%のカゼイン酸ナトリウム)
○1.4gのクエン酸
を含む574gの粉末混合物
- クラスト成分(バストーニュクッキーを砕き、溶かしバター又は均等物と混合する工程によって作成された従来品)
【0090】
調製:
クラスト生地を調製し、それを好適なスズ製焼き型(直径27cm)内に押し入れる。平滑な混合物が得られるまで、バタフライ型撹拌機を装備したHobartミキサーを用いてクリームチーズを水と混合する。クリームチーズミックスに粉末混合物を添加し、中速で2分間撹拌する。スズ製焼き型にミックスを充填する。82~85℃のフィリングのコア温度が得られるまで、115℃のMIWEデッキオーバー(MIWE、独国)内で焼成する。チーズケーキを周囲温度に冷ます。任意選択的に、ケーキは、冷凍して-20℃で保管し、消費前に解凍することができる。
【0091】
結果
実験1から得られた(フィリングの乾燥物質に基づいて4.4重量%の、WBC80)に由来するホエイタンパク質を含有する)チーズケーキは、焼成後及び-20℃での冷凍後又はその後の解凍後にもクラックを全く示さない(
図1を参照されたい)優れた平滑な表面を有した。水分は、表面上で視認できなかった。チーズケーキ、特にフィリングを構造的態様及び官能的態様について評価した。
- 構造的:優れた構造、カットしやすい、砕けやすくない、固すぎない。
- 官能的:本格的でリッチな風味、極めて優れた後味、甘い感覚;クリーミーな口当たり。
【0092】
実施例2.
異なるタンパク質源を用いて且つホエイタンパク質を用いずに別の実験を実施した。7種の成分ブレンドを調製し、フィラデルフィアクリームチーズと組み合わせ、続いて実施例1に記載したように焼成した。植物性脂肪源として、以下の組成物:80.2重量%の精製菜種油、15.3重量%のグルコースシロップ、2.5重量%のカゼイン酸ナトリウム、1.9重量%の凝固阻止剤及びリン酸塩を有するVana Grasa 80B 065(FrieslandCampina Ingredients)を使用した。組成物は、表1に記載した。組成物2A~2Cは、本発明によるものであり、2D~2Gは、比較例であった。
【0093】
【0094】
WPC35及び60の両方は、天然ホエイタンパク質であり、チーズホエイに由来する。
【0095】
【0096】
チーズケーキは、実施例1に記載したように調製した。
【0097】
焼成後、チーズケーキをクラックについて検査した。試料2F(チーズホエイを用いて作成)及び2G(全卵を使用し、ホエイタンパク質を用いずに作成)は、クラックを形成すると思われ、
図7及び8を参照されたい。これらは、好適ではない結果であるため、それ以上官能的態様について評価しなかった。
【0098】
試料2A~2Eは、クラックを全く示さなかったため、これらは、無作為割付した3桁の数を付した試験用ケーキの試料が与えられた16人のパネルを用いて、官能的承認について試験した。パネルメンバーは、チーズケーキが何を含有するかを知らなかった。パネルには、外観、味覚及び口当たりについてスケール1(極めて嫌い)~9(極めて好き)で試料を評価するように求めた。パネルメンバーには、更にコメントを提供するように求めた。5.5以上の評価は、容認可能であることが見出された。
【0099】
【0100】
本試験は、2~7重量%の、タンパク質源に由来するホエイタンパク質であって、天然形態であり、及び/又はホエイタンパク質源は、少なくとも34重量%のホエイタンパク質を含む、ホエイタンパク質を含むチーズケーキフィリングの性能が極めて優れていることを証明した。
【国際調査報告】