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特表2022-548985繊維製品に印刷するためのインク流体セット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-22
(54)【発明の名称】繊維製品に印刷するためのインク流体セット
(51)【国際特許分類】
   D06P 5/30 20060101AFI20221115BHJP
   C09D 11/40 20140101ALI20221115BHJP
   C09D 11/54 20140101ALI20221115BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20221115BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20221115BHJP
   D06P 5/00 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
D06P5/30
C09D11/40
C09D11/54
B41M5/00 132
B41M5/00 114
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B41J2/01 123
B41J2/01 501
D06P5/00 106
D06P5/00 104
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518277
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(85)【翻訳文提出日】2022-05-23
(86)【国際出願番号】 US2020051423
(87)【国際公開番号】W WO2021055700
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】62/903,233
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519372065
【氏名又は名称】デュポン エレクトロニクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スコット ダブリュ.エリス
(72)【発明者】
【氏名】シャオチン リー
(72)【発明者】
【氏名】ジュエ リアン
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4H157
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EC36
2C056EC37
2C056EE17
2C056EE18
2C056FB03
2C056HA42
2H186AA04
2H186AA05
2H186AB02
2H186AB03
2H186AB12
2H186AB27
2H186AB39
2H186AB44
2H186AB46
2H186AB47
2H186AB50
2H186AB55
2H186BA08
2H186DA17
2H186FA01
2H186FA07
2H186FB54
2H186FB56
2H186FB57
4H157AA01
4H157AA02
4H157BA15
4H157BA22
4H157BA27
4H157CA12
4H157CA29
4H157CB09
4H157CB13
4H157CB19
4H157CB45
4H157CB46
4H157CC01
4H157DA01
4H157DA17
4H157DA34
4H157GA06
4J039AD01
4J039AD03
4J039AD08
4J039AD09
4J039AD11
4J039AE04
4J039BA04
4J039BA15
4J039BA30
4J039BC09
4J039BC10
4J039BC19
4J039BC50
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE22
4J039CA06
4J039EA18
4J039EA21
4J039EA38
4J039EA46
4J039FA03
4J039GA24
(57)【要約】
本開示は、水性前処理組成物、透明インク及び着色水性インクジェットインクを含有するインク流体セットを提供する。このインク流体セットは、ポリエステル、綿及び綿と合成繊維製品とのブレンドへの印刷に特に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維製品基材に印刷するためのインクジェット印刷方法であって、以下の順序において、
a)前記基材を提供する工程と、
b)多価カチオン及び/又は酸の塩を含む前処理組成物を塗布する工程と、
c)ポリマーバインダーを含む透明インクを噴射することによって塗布する工程と、
d)白色インクを噴射することによって塗布する工程と、
e)非白色着色インクを噴射することによって塗布する工程と
を含むインクジェット印刷方法。
【請求項2】
前記多価カチオンは、元素Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ti、Zr、V、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Cu、Au、Zn、Al、Ga、In、Sb、Bi、Ge、Sn及びPbの多価カチオンの群の1つ以上から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸は、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマル酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、これらの酸の誘導体及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記酸は、ポリアクリル酸、酢酸及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマーバインダーは、ポリウレタン、アクリル、スチレンアクリル、スチレンブタジエン、スチレンブタジエンアクリロニトリル、ネオプレン、エチレン(メタ)アクリル酸、エチレン酢酸ビニルエマルジョン、ラテックス及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマーバインダーは、ポリウレタン、アクリル、スチレンアクリル、エチレン酢酸ビニルエマルジョン及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記透明インクは、熱処理時に前記ポリマーと化学的に反応する潜在性架橋剤を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記前処理組成物は、前記ポリマーバインダーを凝集又は沈殿させる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記白色インクの印刷と前記透明インクの印刷との間の時間間隔は、10分未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記白色インクの印刷と前記透明インクの印刷との間の時間間隔は、1分未満である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記着色インクの印刷と前記白色インクの印刷との間の時間間隔は、10分未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記着色インクの印刷と前記白色インクの印刷との間の時間間隔は、1分未満である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記繊維製品基材は、非白色着色繊維製品である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
インクジェット印刷流体セットであって、
a)多価カチオン及び/又は酸の塩を含む前処理組成物と、
b)ポリマーバインダーを含む透明インクと、
c)白色インクと、
d)非白色着色インクと
を含むインクジェット印刷流体セット。
【請求項15】
前記多価カチオンは、元素Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ti、Zr、V、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Cu、Au、Zn、Al、Ga、In、Sb、Bi、Ge、Sn及びPbの多価カチオンの群の1つ以上から選択される、請求項14に記載の流体セット。
【請求項16】
前記酸は、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマル酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、これらの酸の誘導体及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項14に記載の流体セット。
【請求項17】
前記ポリマーバインダーは、ポリウレタン、アクリル、スチレンアクリル、スチレンブタジエン、スチレンブタジエンアクリロニトリル、ネオプレン、エチレン(メタ)アクリル酸、エチレン酢酸ビニルエマルジョン、ラテックス及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項14に記載の流体セット。
【請求項18】
前記透明インクは、熱処理時に前記ポリマーと化学的に反応する潜在性架橋剤を更に含む、請求項14に記載の流体セット。
【請求項19】
前記前処理組成物は、前記ポリマーバインダーを凝集又は沈殿させる、請求項14に流体セット。
【請求項20】
インクジェット印刷流体セットであって、
a)多価カチオン及び/又は酸の塩を含む前処理組成物と、
b)ポリマーバインダーを含む透明インクと、
c)非白色着色インクと
からなるインクジェット印刷流体セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下において、2019年9月20日に出願された米国仮特許出願第62/903233号明細書からの優先権を主張する。
【0002】
本開示は、水性前処理組成物、透明インク及び水性着色インクジェットインクを含有するインク流体セットに関する。このインク流体セットは、繊維製品基材への印刷に特に適している。
【背景技術】
【0003】
インクジェット印刷は、ノンインパクトデジタル印刷プロセスであり、この場合、紙などの基材にインクの液滴を堆積させて、所望の画像を形成する。インクジェットプリンターは、フルカラー印刷のために、典型的にはシアン、マゼンタ及びイエローインク(CMY)を含むインクセットを備える。典型的には、インクセットは、ブラックインクも含み(CMYK)、ブラックインクは、最も一般的なインクである。
【0004】
インクジェット印刷は、小規模オフィス/ホームオフィス向けの従来のデスクトップ印刷以外の市場で一層重要になっている。デジタル印刷法は、繊維製品の印刷において支持を得ており、スクリーン印刷などの従来の印刷法よりも多くの潜在的な利点を提供する。インクジェットデジタル印刷は、スクリーンの準備に関連するセットアップ費用を削除し、費用効果の高い短期間の生産を可能にする可能性がある。インクジェット印刷は、スクリーン印刷プロセスで実際には達成できない色調のグラデーション及び無限のパターンの繰り返しサイズなどの視覚的効果を更に可能にする。
【0005】
しかしながら、水性顔料インクジェットインクは、従来、合成繊維材料のインク吸収性及び表面疎水性が制限されているため、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリウレタン、ナイロン、Nomax(登録商標)及びKevlar(登録商標)などの合成樹脂をベースにした合成布地への印刷に適していない。疎水性繊維への接着性の欠如により、顔料インクジェット印刷された布地は、摩耗及び洗浄による色の除去を受けやすくなる。当技術分野では、欧州特許第2059634B1号明細書に開示された方法など、改善された洗濯堅牢度を達成するために、着色インクを印刷する前に布地に前処理を施し、続いて白色インクベース層を塗布することが知られている。しかしながら、洗濯堅牢度に必要な前処理溶液に存在するポリマーは、汚れを残すだけでなく、布地の弾力性、伸縮性及び柔らかな手触り感を失わせる。更に難しいのは、色染めされた合成布地、特に分散染料で着色されたポリエステルに印刷することである。白色インク及び着色インクの高温硬化中、布地における分散染料が白色インク層に移動すると、多くの場合、白色インク層が変色し、画質が不良となる。
【0006】
米国特許出願公開第20070103529号明細書は、湿潤組成物と接触すると沈殿する特性感受性剤を有する特性感受性インクジェット組成物を使用する印刷方法を開示している。しかしながら、この手法は、湿潤組成物がインクプリントヘッドの近くに噴射され、最終的にノズルの近くのインクを不安定にし、プリントヘッドの故障を引き起こすという問題を抱えている。
【0007】
特開2017-132946号公報は、インクジェット捺染記録方法を採用した捺染インクジェットインクセットを開示しており、これは、水及び着色インク組成物の成分を凝集させる反応剤を含有する前処理液を布地に塗布する工程と、前処理液が塗布された布地に、相互に湿潤した状態で、着色インク組成物及び透明インク組成物を塗布することによって画像を形成する工程とを有する。しかしながら、このインクセットは、前処理において反応剤と反応する樹脂を含むその着色インク組成物と、前処理において反応剤と反応しない樹脂を含むその透明インク組成物とを必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
布地、特に着色された繊維製品におけるより高い色彩、耐久性を実現すること及び弾力性の維持を実現することが必要とされている。本開示は、前処理組成物を含有するインク流体セット並びに着色インクにおける接着剤及び染料遮断層として機能する透明インクを提供することにより、この必要性を満たし、印刷された布地の剛性を高めることなく、より高い印刷品質及び耐久性を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態は、繊維製品基材に印刷するためのインクジェット印刷方法であって、以下の順序において、
a)基材を提供する工程と、
b)多価カチオン及び/又は酸の塩を含む前処理組成物を塗布する工程と、
c)ポリマーバインダーを含む透明インクを噴射することによって塗布する工程と、
d)白色インクを噴射することによって塗布する工程と、
e)非白色着色インクを噴射することによって塗布する工程と
を含むインクジェット印刷方法を提供する。
【0010】
別の実施形態は、多価カチオンが、元素Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ti、Zr、V、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Cu、Au、Zn、Al、Ga、In、Sb、Bi、Ge、Sn及びPbの多価カチオンの群の1つ以上から選択されることを提供する。
【0011】
別の実施形態は、酸が、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマル酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、これらの酸の誘導体及びこれらの混合物からなる群から選択されることを提供する。
【0012】
別の実施形態は、酸が、ポリアクリル酸、酢酸及びこれらの混合物からなる群から選択されることを提供する。
【0013】
別の実施形態は、ポリマーバインダーが、ポリウレタン、アクリル、スチレンアクリル、スチレンブタジエン、スチレンブタジエンアクリロニトリル、ネオプレン、エチレン(メタ)アクリル酸、エチレン酢酸ビニルエマルジョン、ラテックス及びこれらの混合物からなる群から選択されることを提供する。
【0014】
別の実施形態は、ポリマーバインダーが、ポリウレタン、アクリル、スチレンアクリル、エチレン酢酸ビニルエマルジョン及びこれらの混合物からなる群から選択されることを提供する。
【0015】
別の実施形態は、透明インクが、熱処理時に前記ポリマーと化学的に反応する潜在性架橋剤を更に含むことを提供する。
【0016】
別の実施形態は、前処理組成物が前記ポリマーバインダーを凝集又は沈殿させることを提供する。
【0017】
別の実施形態は、白色インクの印刷と透明インクの印刷との間の時間間隔が10分未満であることを提供する。
【0018】
別の実施形態は、白色インクの印刷と透明インクの印刷との間の時間間隔が1分未満であることを提供する。
【0019】
別の実施形態は、着色インクの印刷と白色インクの印刷との間の時間間隔が10分未満であることを提供する。
【0020】
別の実施形態は、着色インクの印刷と白色インクの印刷との間の時間間隔が1分未満であることを提供する。
【0021】
別の実施形態は、繊維製品基材が非白色着色繊維製品であることを提供する。
【0022】
別の実施形態は、インクジェット印刷流体セットであって、
a)多価カチオン及び/又は酸の塩を含む前処理組成物と、
b)ポリマーバインダーを含む透明インクと、
c)白色インクと、
d)非白色着色インクと
を含むインクジェット印刷流体セットを提供する。
【0023】
更に別の実施形態は、インクジェット印刷流体セットであって、
a)多価カチオン及び/又は酸の塩を含む前処理組成物と、
b)ポリマーバインダーを含む透明インクと、
c)非白色着色インクと
からなるインクジェット印刷流体セットを提供する。
【0024】
本実施形態のこれら及び他の特徴及び利点は、以下の詳細な記載を読むことで当業者によってより容易に理解されるであろう。明確化のために別々の実施形態として前述及び後述される、開示される実施形態の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせでも提供され得る。反対に、単一の実施形態に関連して記載される、開示される実施形態の様々な特徴は、別々に又は任意の部分組み合わせでも提供され得る。
【発明を実施するための形態】
【0025】
特に明記又は定義しない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されている意味を有する。
【0026】
特に明記されない限り、全てのパーセント、部、比などは、重量基準である。
【0027】
量、濃度又は他の値又はパラメーターが上位の好ましい値及び下位の好ましい値の範囲、好ましい範囲又はリストとして与えられる場合、これは、範囲が別個に開示されているかどうかにかかわらず、任意の上位範囲限界又は好ましい値と、任意の下位範囲限界又は好ましい値との任意の対から形成される全ての範囲を具体的に開示していると理解されるべきである。ある範囲の数値が本明細書において列挙される場合、特に明記しない限り、その範囲は、その終点並びにその範囲内の全ての整数及び分数を含むことを意図する。
【0028】
「約」という用語が値又は範囲の端点を表すために用いられる場合、本開示は、言及される特定の値又は端点を含むと理解されるべきである。
【0029】
本明細書において使用される場合、「分散」という用語は、1つの相がバルク物質全体に分布している微細粒子(多くの場合にコロイドの大きさの範囲において)からなる2相系を意味し、粒子は、分散された相又は内相であり、バルク物質は、連続相又は外相である。
【0030】
本明細書において使用される場合、「分散剤」という用語は、多くの場合、コロイドの大きさの極めて微細な固体粒子の均一且つ最大の分離を促進するために懸濁媒体に加えられる界面活性剤を意味する。顔料の場合、分散剤は、最も多くの場合、ポリマー分散剤であり、通常、分散剤及び顔料は、分散器材を使用して混ぜ合わされる。
【0031】
本明細書において使用される場合、「水性ビヒクル」という用語は、水又は水と少なくとも1つの水溶性又は部分的に水溶性(即ちメチルエチルケトン)の有機溶媒(共溶媒)との混合物を指す。
【0032】
本明細書において使用される場合、「実質的に」という用語は、相当な程度、ほとんど全てであることを意味する。
【0033】
本明細書において使用される場合、「ダイン/cm」という用語は、表面張力単位である1センチメートル当たりのダインを意味する。
【0034】
本明細書において使用される場合、「cP」という用語は、粘度単位であるセンチポアズを意味する。
【0035】
明確に述べられる場合のみを除いて、本明細書における材料、方法及び例は、例示的なものにすぎず、限定することを意図しない。
【0036】
更に、文脈上特に明記されない限り、単数形での言及は、複数形も含み得る(例えば、「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、1つ又は1つ以上を指し得る)。
【0037】
前処理組成物
前処理組成物は、インク中の着色剤又は他の成分と「沈殿」又は「衝突」するインク凝集剤を含有する。前処理流体は、着色されたインクジェットインクを適切に固定するために十分なインク凝集剤を含む必要がある。典型的には、前処理は、少なくとも約0.5重量%のインク凝集剤を含み、特に使用されるインク凝集剤の溶解限度までの量を使用することができる。好ましくは、前処理組成物は、約1重量%~約20重量%のインク凝集剤を含む。いくつかの適切なインク凝集剤には、多価金属塩及び有機酸が含まれる。
【0038】
「多価」は、2以上の酸化状態を示し、元素「Z」について、典型的にはZ2+、Z3+、Z4+などと記載される。簡潔にするために、多価カチオンは、本明細書ではZxとして言及され得る。多価カチオンは、水性前処理溶液に実質的に溶解し、好ましくは実質的にイオン化された状態で(溶液中に)存在するため、繊維製品が前処理溶液に曝されたときに繊維製品と相互作用するためにそれらが遊離しており、利用可能である形態にある。
【0039】
xには、これらに限定されないが、以下の元素の多価カチオンが含まれる:Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ti、Zr、V、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Cu、Au、Zn、Al、Ga、In、Sb、Bi、Ge、Sn、Pb。別の実施形態では、多価カチオンは、Ca、Mg、Ba、Ru、Co、Zn及びGaの少なくとも1つを含む。更に別の実施形態では、多価カチオンは、Ca、Mg、Ba、Ru、Co、Zn及びGaの少なくとも1つを含む。好ましくは、多価カチオンは、Ca、Mg及びZnである。
【0040】
xは、塩の形態で添加するか又はアルカリの形態で添加することにより、前処理溶液に組み込むことができ、前処理溶液のpHを調整する際の塩基として使用できる。
【0041】
関連するアニオン性材料は、任意の一般的なアニオン性材料、特にハロゲン化物、硝酸塩及び硫酸塩から選択することができる。アニオン形態は、多価カチオンが前処理水溶液に可溶であるように選択される。多価カチオン塩は、これらの水和形態で使用することができる。前処理溶液では、1つ以上の多価カチオン性塩を使用することができる。
【0042】
Caについて、好ましい多価カチオン塩は、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硝酸カルシウム水和物及びこれらの混合物である。
【0043】
凝集剤としての有機酸は、インクのpHを下げ、顔料分散物及び他のインク成分を凝固させることにより、インク液滴を析出させる。酸の具体的な例は、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマル酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸及びこれらの化合物の誘導体である。ポリアクリル酸及び酢酸が特に好ましい。
【0044】
前処理組成物は、界面活性剤を更に含み、フィルム基材における湿潤性を提供することができる。いくつかの適切な界面活性剤には、インク凝集剤と混和性である界面活性剤が含まれる。いくつかの有用な界面活性剤には、カチオン性、非イオン性及び両性の界面活性剤が含まれる。いくつかの適切なカチオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルピリジニウムクロリドなどの4級化アンモニウム又はピリジニウム界面活性剤が挙げられる。いくつかの適切な非イオン性界面活性剤には、エトキシル化アセチレンジオール(例えば、EvonikのSurfynol(登録商標)シリーズ)、エトキシル化1級アルコール(例えば、ShellのNeodol(登録商標)シリーズ)及び2級アルコール(例えば、Dow ChemicalのTergitol(登録商標)シリーズ)、Pluronic(登録商標)ブロックコポリマー界面活性剤、スルホコハク酸塩(例えば、CytecのAerosol(登録商標)シリーズ)、オルガノシリコーン(例えば、EvonikのDynol(商標)シリーズ)及びフルオロ界面活性剤(例えば、ChemoursのZonyl(登録商標)シリーズ)が含まれる。特定のpH範囲内でカチオン性である両性界面活性剤も使用することができる。この場合、液体組成物のpHは、界面活性剤の等電点よりも低く調整しなければならない。有用な双性イオン性界面活性剤のいくつかの例としては、N,N-ジメチル-N-テトラデシルアミンオキシド(NTAO)、N,N-ジメチルN-ヘキサデシルアミンオキシド(NHAO)及び関連するアミンオキシド化合物が挙げられる。別の例は、N-ドデシル-N,N-ジメチルグリシンである。更に別の例としては、リン酸塩、亜リン酸塩、ホスホン酸塩、レシチン等、及びホスホミエリンなどのホスホン酸塩エステルが挙げられる。界面活性剤は、前処理流体の総重量に基づいて典型的には約0.1~約10%、より典型的には約0.5~約5%の量で使用することができる。
【0045】
前処理溶液中の他の任意選択の成分としては、これらに限定されないが、保湿剤及び殺生物剤を挙げることができる。殺生物剤は、微生物の分解を防ぎ、その殺生物剤の選択及び使用は、一般に当技術分野でよく知られている。
【0046】
布地への前処理溶液の塗布は、任意の便利な方法であり得、このような方法は、関連する技術分野の当業者にも一般的によく知られている。好ましい前処理溶液塗布方法の一例は、パディングと呼ばれる。パディングでは、布地を前処理溶液に浸し、次いで飽和した布地をニップローラーに通して余分な溶液を絞り出す。布地中に保持される溶液の量は、ローラーにかけられるニップ圧によって制御することができる。他の前処理技術には、布地の表面又は表面及び裏面に噴霧することによって溶液を塗布する噴霧塗布並びにインクジェットプリントヘッドから溶液を噴射する噴射塗布が含まれる。
【0047】
着色インク
実施形態による着色インクは、着色剤を含むインクを指す。着色インクには、白色インクを含めることができる。白色インクを着色インクから除外する場合、「非白色着色インク」という用語が使用される。
【0048】
着色剤
着色された画像を印刷するために使用される着色剤は、染料又は顔料であり得る。染料には、分散染料、反応性染料、酸性染料などが含まれる。本明細書において使用される場合、「顔料」という用語は、分散剤によって分散され、分散剤の存在下において分散条件下で処理されることを必要とする不溶性着色剤を意味する。顔料には分散された染料も含まれる。顔料インクが好ましい。
【0049】
使用するのに適した顔料は、水性インクジェットインクにおいて当技術分野で一般によく知られているものである。選択された顔料は、乾燥形態又は湿潤形態で使用され得る。例えば、顔料は、通常、水性媒体中で製造され、得られた顔料は、水で湿潤されたプレスケーキとして得られる。プレスケーキの形態では、顔料は、乾燥形態で凝集する程度に凝集しない。そのため、水で湿潤されたプレスケーキの形態の顔料は、予備混合プロセスにおいて脱凝集するために、乾燥形態での顔料と同程度に多くの混合エネルギーを必要としない。代表的な市販の乾燥顔料は、米国特許第5085698号明細書に列挙されている。
【0050】
インクジェットインクに有用な着色特性を有する顔料のいくつかの例には、これらに限定されないが、以下が含まれる:ピグメントブルー15:3及びピグメントブルー15:4のシアン顔料、ピグメントレッド122及びピグメントレッド202のマゼンタ顔料、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー95、ピグメントイエロー110、ピグメントイエロー114、ピグメントイエロー128及びピグメントイエロー155のイエロー顔料、ピグメントオレンジ5、ピグメントオレンジ34、ピグメントオレンジ43、ピグメントオレンジ62、ピグメントレッド17、ピグメントレッド49:2、ピグメントレッド112、ピグメントレッド149、ピグメントレッド177、ピグメントレッド178、ピグメントレッド188、ピグメントレッド254、ピグメントレッド184、ピグメントレッド264及びピグメントレッドPV19のレッド顔料、ピグメントグリーン1、ピグメントグリーン2、ピグメントグリーン7及びピグメントグリーン36のグリーン顔料、ピグメントブルー60、ピグメントバイオレット3、ピグメントバイオレット19、ピグメントバイオレット23、ピグメントバイオレット32、ピグメントバイオレット36及びピグメントバイオレット38のブルー顔料並びにブラック顔料カーボンブラック。本明細書において使用される顔料名及び省略形は、Society of Dyers and Colourists,Bradford,Yorkshire,UKによって確立され、The Color Index,Third Edition,1971で公開された顔料の「C.I.」表示である。
【0051】
白色材料の例としては、これらに限定されないが、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化アンチモン及び酸化ジルコニウムなどの白色無機顔料が挙げられる。このような白色無機顔料の他に、白色中空樹脂粒子及びポリマー粒子などの白色有機顔料も使用することができる。水性顔料白色インクに好ましい顔料は、二酸化チタンである。有用な二酸化チタン(TiO2)顔料は、ルチル又はアナターゼ結晶形態であり得る。それは、一般的に、塩化物プロセス又は硫酸塩プロセスのいずれかによって作製される。塩化物プロセスでは、TiCl4が酸化されてTiO2粒子になる。硫酸塩プロセスでは、硫酸と、チタンを含有する鉱石とが溶解され、得られた溶液は、一連の工程を経てTiO2を生成する。硫酸塩と塩化物との両方のプロセスは、“The Pigment Handbook”,Vol.1,2nd Ed.,John Wiley&Sons,NY(1988)により詳細に記載されており、その関連する開示は、完全に説明されているかのように、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0052】
二酸化チタン粒子は、インクの所望の最終用途に応じて、約1ミクロン以下の多様な平均粒子サイズを有することができる。高い隠蔽又は装飾印刷用途を要求する用途の場合、二酸化チタン粒子は、好ましくは、約1ミクロン(1000ナノメートル)未満の平均サイズを有する。好ましくは、粒子は、約50~約950ナノメートル、より好ましくは約75~約750ナノメートル、更により好ましくは約100~約500ナノメートルの平均サイズを有する。これらの二酸化チタン粒子は、一般的に、顔料性TiO2と呼ばれる。
【0053】
ある程度の透明性を備えた白色を要求する用途では、顔料として「ナノ」二酸化チタンが好ましい。「ナノ」二酸化チタン粒子は、典型的には、約10~約200ナノメートル、好ましくは約20~約150ナノメートル、より好ましくは約35~約75ナノメートルの範囲の平均サイズを有する。ナノ二酸化チタンを含むインクは、光による退色に対する良好な耐性及び適切な色相角を依然として維持しながら、彩度及び透明度を向上させることができる。コーティングされていないナノグレードの酸化チタンの市販の例は、Evonik(Parsippany N.J.)から入手可能なP-25である。
【0054】
二酸化チタン顔料は、実質的に純粋な二酸化チタンであり得るか、又はシリカ、アルミナ及びジルコニアなどの他の金属酸化物を含有し得る。他の金属酸化物は、例えば、チタン化合物を他の金属化合物と共酸化又は共沈殿させることにより、顔料粒子に組み込まれ得る。共酸化又は共沈殿された金属が存在する場合、それらは、二酸化チタン顔料の総重量に基づいて、金属酸化物として約0.1重量%~約20重量%、より好ましくは約0.5重量%~約5重量%、更により好ましくは約0.5重量%~約1.5重量%の量で存在することが好ましい。
【0055】
二酸化チタン顔料は、1つ以上の金属酸化物表面コーティングを有することもできる。これらのコーティングは、当業者に知られている技術を使用して塗布することができる。金属酸化物コーティングの例には、とりわけ、シリカ、アルミナ、アルミナシリカ、ボリア及びジルコニアが含まれる。このようなコーティングは、二酸化チタン顔料の総重量に基づいて任意選択で約0.1重量%~約10重量%、好ましくは約0.5重量%~約3重量%の量で存在することができる。これらのコーティングは、二酸化チタンの光反応性を低減するなど、改善された特性を提供することができる。このようなコーティングされた二酸化チタンの商業的な例には、R700(アルミナコーティングされている、Chemours,Wilmington Del.から入手可能)、RDI-S(アルミナコーティングされている、Kemira Industrial Chemicals,Helsinki,Finlandから入手可能)、R706(Chemours,Wilmington Del.から入手可能)及びW-6042(Tayco Corporation,Osaka Japanのシリカアルミナ処理されたナノグレード二酸化チタン)が含まれる。
【0056】
二酸化チタン顔料は、例えば、カルボン酸、シラン、シロキサン及び炭化水素ワックス並びに二酸化チタン表面とのこれらの反応生成物など、1つ以上の有機表面コーティングを有することもできる。有機表面コーティングの量は、存在する場合、顔料の総重量に基づいて一般に約0.01重量%~約6重量%、好ましくは約0.1重量%~約3重量%、より好ましくは約0.5重量%~約1.5重量%、更により好ましくは約1重量%の範囲である。
【0057】
着色剤のためのポリマー系分散剤
着色剤のためのポリマー系分散剤は、ランダムポリマー又は構造化ポリマーであり得る。典型的には、ポリマー系分散剤は、疎水性モノマーと親水性モノマーとのコポリマーである。「ランダムポリマー」は、それぞれのモノマーの分子がポリマー主鎖においてランダムに配列されるポリマーを意味する。適切なランダムポリマー系分散剤の参照については、米国特許第4,597,794号明細書を参照されたい。「構造化ポリマー」は、ブロック、分岐、グラフト又はスター構造を有するポリマーを意味する。構造化ポリマーの例としては、米国特許第5,085,698号明細書に開示されるものなどのAB又はBABブロックコポリマー、欧州特許第0556649号明細書に開示されるものなどのABCブロックコポリマー及び米国特許第5,231,131号明細書に開示されるものなどのグラフトポリマーが挙げられる。使用することができる他のポリマー系分散剤は、例えば、米国特許第6,117,921号明細書、米国特許第6,262,152号明細書、米国特許第6,306,994号明細書及び米国特許第6,433,117号明細書に記載されている。
【0058】
「ランダムポリマー」には、ポリウレタンも含まれる。ポリウレタン分散剤が、顔料を分散させた後に架橋されて顔料分散物を形成する、米国特許出願公開第2012/0214939号明細書において開示されるポリウレタン分散剤が特に有用である。
【0059】
分散染料の分散に適した他の「ランダムポリマー」は、特に限定されず、例としては、クレオソート油スルホン酸のホルムアルデヒド縮合物、芳香族スルホン酸のホルムアルデヒド縮合物、リグニンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物及びこれらのナトリウム塩など、並びにスチレン-(メタ)アクリル酸に基づくコポリマー及びポリウレタン系分散剤が挙げられる。
【0060】
着色剤分散物の調製
本発明で使用される着色剤分散物は、当技術分野で公知の任意の従来の粉砕プロセスを使用して調製することができる。ほとんどの粉砕プロセスは、第1の混合工程、それに続く第2の粉砕工程を含む2段階プロセスを使用する。第1の工程は、ブレンドされた「プレミックス」を得るために、全ての成分、即ち着色剤、分散剤、液体担体、中和剤及び任意選択の添加剤を混合することを含む。典型的には、全ての液体成分が最初に添加され、続いて分散剤、最後に着色剤が添加される。混合は、一般に、撹拌されている混合容器内で行われ、混合工程のために高速分散機(HSD)が特に適している。HSDに取り付けられた、500rpm~4000rpm、より典型的には2000rpm~3500rpmで作動するCowels型のブレードは、所望の混合を実現するために最適なせん断を提供する。十分な混合は、通常、上記の条件下で15~120分間混合した後に達成される。
【0061】
第2の工程は、プレミックスを粉砕して着色剤分散物を作製することを含む。典型的には、粉砕には、メディアミルによる粉砕プロセスが含まれるものの、他の粉砕技術も使用することができる。本発明では、Eiger Machinery Inc.,Chicago,Illinoisによって製造されたラボスケールのEiger Minimill(M250型、VSE EXP)が使用される。粉砕は、約820グラムの0.5YTZ(登録商標)ジルコニアメディアをミルに入れることによって行った。ミルディスクは、2000rpm~4000rpm、典型的には3000rpm~3500rpmの速度で作動する。分散物は、再循環粉砕プロセスを使用して処理され、ミルを通る典型的な流量は、200~500グラム/分、より典型的には300グラム/分である。粉砕は、溶媒の一部が粉砕物から抜き出されて保持され、粉砕が完了した後に添加される段階的手順を使用して行うことができる。これは、粉砕効率を最大化する最適なレオロジーを実現するために行われる。粉砕中に抜き出されて保持される溶媒の量は、分散物によって異なり、典型的には合計800グラムのバッチサイズで200~400グラムである。典型的には、本発明の分散物は、合計4時間粉砕される。
【0062】
ブラック顔料分散物について、マイクロフルイダイザーを使用する別の粉砕プロセスを使用することができる。マイクロ流動化は、高圧下でノズルを介した顔料の衝突によって粉砕が行われる、メディアミルによらない粉砕プロセスである。典型的には、顔料分散物は、400グラム/分の流量において15,000psiで処理され、合計12回ミルを通過する。実施例のブラック顔料分散物の作製では、ダイヤモンドZチャンバーを備えたラボスケール(M-110Y型、Newton,MassachusettsのMicrofluidicsから入手可能)高圧空気式マイクロフルイダイザーを使用した。
【0063】
フィラー、可塑剤、顔料、カーボンブラック、シリカゾル、他のポリマー分散物及び公知のレベリング剤、湿潤剤、消泡剤、安定剤並びに目的の最終用途のために公知の他の添加剤も分散物に配合することができる。
【0064】
上記の着色剤分散物の有用な粒子サイズの範囲は、典型的には、約0.005um~約15umである。典型的には、粒子サイズは、約0.005um~約5um、特に約0.005um~約1umの範囲であるべきである。動的光散乱によって測定される平均粒子サイズは、約500nm未満、典型的には約300nm未満である。
【0065】
白色顔料分散物
二酸化チタンを安定化するために、着色顔料について説明した1つ以上の分散剤を使用する。一般に、安定化されたTiO2顔料を濃縮スラリーの形態で作製することが望ましい。TiO2スラリーは、一般に、攪拌されている混合容器内で行われ、高速分散機(HSD)が混合工程に特に適している。HSDに取り付けられた、500rpm~4000rpm、より典型的には2000rpm~3500rpmで作動するCowels型のブレードは、所望の混合を実現するために最適なせん断を提供する。十分な混合は、通常、上記の条件下で15~600分間混合した後に達成される。スラリー組成物中に存在する二酸化チタンの量は、好ましくは、スラリーの総重量に基づいて約35重量%~約80重量%であり、より好ましくはスラリーの総重量に基づいて約50重量%~約75重量%である。二酸化チタンは、好ましくは、50~500nmの範囲、より好ましくは150~350nmの範囲である50%の平均粒子サイズ(以下では「D50」と呼ぶ)を有する。これらの範囲内のD50を有する二酸化チタンは、印刷されたフィルムが画像の十分な不透明度を示すことを可能にし、これは、高品質の画像の形成を可能にする。
【0066】
着色顔料の場合、インクは、インクの総重量に基づいて最大約30重量%、好ましくは約0.1~約25%、より好ましくは約0.25~約10重量%の顔料を含有し得る。TiO2顔料などの無機顔料を選択した場合、インクは、着色顔料を使用する同等のインクよりも高い重量パーセントの顔料を含有する傾向があり、無機顔料は、一般に、有機顔料よりも比重が高いため、場合により約75%にもなることがある。
【0067】
顔料分散物の形成後のポリマー分散剤の分散後改質
顔料を分散させるポリマー分散剤は、インクジェットインクに含まれる前に、顔料分散物が調製されて架橋された顔料分散物を形成した後、架橋され得る。
【0068】
架橋を可能にするために、ポリマー分散剤は、アセトアセトキシ、酸、アミン、エポキシ、ヒドロキシル、ブロックされたイソシアネート及びこれらの混合物からなる群から選択される架橋可能な部位で置換される。顔料分散物に架橋剤を導入すると、ポリマー分散剤の架橋が起こり、架橋された顔料分散物が形成される。典型的には、架橋剤は、アセトアセトキシ、酸、アミン、無水物、エポキシ、ヒドロキシル、イソシアネート、ブロックされたイソシアネート及びこれらの混合物からなる群から選択される。顔料分散物を架橋した後、限外濾過などの精製プロセスによって過剰なポリマー分散剤を除去することができる。
【0069】
架橋部位/架橋剤の対の具体的な例は、ヒドロキシル/イソシアネート及び酸/エポキシである。
【0070】
着色インクのためのポリマーバインダー
バインダーは、インク配合物に添加されるポリマー化合物又はポリマー化合物の混合物である。バインダーは、例えば、印刷された材料により大きい耐久性を与えるなど、印刷された材料に特性を付与することができる。インクジェットインクのバインダーとして使用される典型的なポリマーには、ポリウレタン分散物及びポリウレタン溶液、アクリル、スチレンアクリル、スチレンブタジエン、スチレンブタジエンアクリロニトリル、ネオプレン、エチレン(メタ)アクリル酸、エチレン酢酸ビニルエマルジョン、ラテックスなどが含まれる。バインダーは、溶液であり得るか、又はカルボン酸、硫黄含有酸、アミン基及び他の類似のイオン性基などのイオン性置換基を有することによってエマルジョンとして安定化され得る。代わりに、バインダーは、外的な界面活性剤により安定化され得る。バインダーは、単独で又は他のバインダーと組み合わせて使用することができる。バインダーは、典型的には、インクの総重量に基づいて少なくとも0.2重量%の量でインク中に存在する。典型的には、バインダーは、上述した染料及び顔料の分散剤と異なる。バインダーは、典型的には、顔料分散物の調製中ではなく、最終配合段階中にインクに加えられる。
【0071】
バインダーは、単独で又は他のバインダーと組み合わせて使用することができる。典型的には、バインダーは、ポリウレタンである。任意選択のポリウレタンバインダーは、米国特許第9255207号明細書に開示されているように、部分的に、例えばTHFに50%未満のみ溶解するものであり、インクジェットインクの印刷された画像の耐久性を高める。米国特許第9255207号明細書の開示は、完全に説明されているかのように、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0072】
バインダーは、典型的には、インクの総重量に基づいて少なくとも0.2重量%の量でインクに存在する。この量は、1~15重量%であり得る。
【0073】
着色インクのための用水性ビヒクル
適切な水性ビヒクル混合物の選択は、所望の表面張力及び粘度、選択された着色剤、インクの乾燥時間並びにインクが印刷される基材の種類などの特定の用途の要件に依存する。本開示において利用され得る水溶性有機溶媒の代表的な例は、米国特許第5,085,698号明細書において開示されるものである。
【0074】
水と水溶性溶媒との混合物が使用される場合、典型的には、水性ビヒクルは、約30%~約95%の水を含有することになり、残りの残部(即ち約70%~約5%)は、水溶性溶媒である。本開示の組成物は、水性ビヒクルの総重量に基づいて約60%~約95%の水を含有し得る。
【0075】
インクの水性ビヒクルの量は、典型的には、インクの総重量に基づいて約70%~約99.8%、より典型的には約80%~約99.8%の範囲である。
【0076】
界面活性剤は、典型的には、インクの総重量に基づいて約0.01%~約5%、特に約0.2%~約2%の量で使用され得る。
【0077】
着色インクの特性
噴射速度、液滴の分離長さ、液滴サイズ及び流れ安定性は、インクの表面張力及び粘度に非常に影響を受ける。インクジェット印刷システムでの使用に適したインクジェットインクは、25℃で約20ダイン/cm~約70ダイン/cm、より好ましくは約25~約40ダイン/cmの範囲の表面張力を有する必要がある。粘度は、25℃で好ましくは約1cP~約30cP、より好ましくは約2~約20cPの範囲である。インクは、広範囲の噴射条件、即ちペンの駆動周波数並びにノズルの形状及びサイズに適合する物理的特性を有する。
【0078】
インクは、長期間にわたり優れた貯蔵安定性を有する必要がある。好ましくは、本発明のインクは、粘度又は粒子サイズを実質的に増加させることなく、密閉容器内で長期間(例えば、70℃で7日間)高温に耐えることができる。
【0079】
更に、インクは、それが接触するインクジェット印刷装置のパーツを腐食してはならず、インクは、本質的に無臭且つ無毒である必要がある。
【0080】
本発明のインクは、洗濯堅牢度の有益な耐久特性を達成することができる。
【0081】
他のインク添加剤
他の成分、添加剤は、こうした他の成分がインクジェットインクの安定性及び噴射性を妨げない程度でインクジェットインクに配合され得る。これは、当業者により、日常の実験によって容易に測定され得る。
【0082】
通常、界面活性剤は、表面張力及び湿潤特性を調整するためにインクに加えられる。適切な界面活性剤としては、前述のビヒクルの項において開示されたものが挙げられる。典型的には、界面活性剤は、インクの総重量に基づいて約3重量%までの量、より典型的には1重量%までの量で使用される。
【0083】
エチレンジアミン四酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン-ジ(o-ヒドロキシフェニル酢酸)、ニトリロトリ酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、トランス-1,2-シクロヘキサンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン-N,N,N’,N’’,N’’-五酢酸及びグリコレテルジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸並びにこれらの塩などの封止(又はキレート)剤を含むことは、例えば、重金属不純物の有害作用を除去するために有益であり得る。
【0084】
透明インク組成物
この実施形態における透明インクは、バインダーとして作用するポリマー樹脂を含み、顔料又は染料のいずれの着色剤も含有しないインクジェットインクである。「ポリマー樹脂」及び「ポリマーバインダー」という用語は、本開示における透明インクの成分として交換可能に使用され得る。透明インクは、透明、半透明又はわずかに白色であり得る。ポリマー樹脂は、単独で又は他のポリマーと組み合わせて使用することができる。ポリマー樹脂は、典型的には、インクの総重量に基づいて少なくとも0.5重量%の量でインクに存在する。その量は、1~30重量パーセント、好ましくは3~25%パーセント、最も好ましくは5%~20%であり得る。透明インクの他の成分には、水性ビヒクルが含まれ、水、水溶性有機溶媒、界面活性剤、pH調整剤及び殺生物剤などの追加の添加剤は、着色インク組成物について記載されたものと同じ範囲におけるものである。インクの特性も同じ範囲で設定される。
【0085】
ポリマー樹脂は、10nm~200nmの範囲のD50粒子サイズの水分散性粒子を含有する。好ましくは、ポリマー樹脂は、前処理と相互作用すると凝集する。前処理でポリマー樹脂が凝集するかどうかを判断するためのスクリーニング試験では、10重量%のポリマー(乾燥ベースで)と15重量%の硝酸カルシウム四水和物とを混合し、溶液/エマルジョンが安定しているかどうかを観察する。安定性は、混合後24時間で周囲温度(約25℃)において観察する。透明インクポリマー樹脂は、上記の混合物において沈殿を引き起こす必要がある。ポリマー樹脂は、着色インクにおけるポリマーバインダーと同じであるか又は異なり得る。
【0086】
典型的なポリマー樹脂には、ポリウレタン分散物、アクリル、スチレンアクリル、スチレンブタジエン、スチレンブタジエンアクリロニトリル、ネオプレン、エチレン(メタ)アクリル酸、エチレン酢酸ビニルエマルジョン、ラテックスなどが含まれる。ポリマーは、典型的には、カルボン酸、硫黄含有酸、アミン基及び他の同様のイオン性基などのイオン性置換基を有することにより、エマルジョン粒子として安定化される。代わりに、ポリマーは、外部界面活性剤によって安定化され得る。樹脂粒子の安定化の手段は、ポリマーが混合時に前処理されて凝集体を形成する限り、任意の特定のものに限定されない。ポリウレタン分散物の例は、米国特許第9090734号明細書に開示されており、これは、完全に説明されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。市販のポリウレタン樹脂には、Mitsui Chemical(Tokyo,Japan)のTakelac(商標)W-6110、W-6061T、W-5661、WS-6021、W-5030及びWS-4022が含まれるが、これらに限定されない。アクリル及びスチレンアクリル樹脂の例には、Japan Coating Resin Corp.(Osaka,Japan)のMowiny l6760、6750、6770、6960、6963及び977Aが含まれるが、これらに限定されない。典型的には、ポリマーは、ポリウレタンである。ポリマーは、典型的には、インクの総重量に基づいて少なくとも3重量%の量でインクに存在する。
【0087】
透明インクは、印刷された物品の熱処理時、ポリマー、インク溶媒、布地、白色及び着色インクと化学的に反応する潜在性架橋剤も含有し得る。透明インクが印刷され、印刷された物品が加熱される前に、化学反応は、起こらない。潜在性架橋剤には、これらに限定されないが、ブロックされたイソシアネート、エポキシ、ポリカルボジイミド及びオキサゾリン官能性ポリマーが含まれる。典型的には、潜在性架橋剤は、ブロックされたイソシアネートである。ブロックされたイソシアネートの例は、Covestro(Leverkusen、Germany)製のImprafix(登録商標)2794、Baybond(登録商標)XL7270及びBaybond(登録商標)XL3674XPである。架橋剤の量は、0.1~10重量パーセント、好ましくは0.3~7%パーセント、最も好ましくは0.5%~5%であり得る。
【0088】
インクジェットインクセット
「インクセット」という用語は、インクジェットプリンターが備えられて噴射する全ての個々のインク又は他の流体を指す。着色インクを印刷する前に印刷するために使用される透明インクと白色インクとは、インクセットの一部と見なされる。このインクセットは、前処理組成物と一緒になり、インクジェット印刷流体セットを形成する。
【0089】
1つの好ましい実施形態では、インクセットは、2つの異なる色のインクジェットインクを含み、その少なくとも1つは、上記のような白色顔料インクジェットインクであり、一方は、上記のような透明インクである。
【0090】
別の好ましい実施形態では、インクセットは、少なくとも3つの異なる色のインクジェットインクを含み、少なくとも1つは、シアンインクジェットインクであり、少なくとも1つは、マゼンタインクジェットインクであり、少なくとも1つは、イエローインクジェットインクである。
【0091】
直前に記載した着色インクジェットインクに加えて、インクセットにブラックインクジェットインクを含めることも好ましい。
【0092】
上記のCMYKW及び透明インクに加えて、インクセットは、CMYKW及び他のインクの異なる強度のバージョンだけでなく、追加の異なる色のインクを含有し得る。
【0093】
例えば、本発明のインクセットは、インクセットにおけるインクの1つ以上の最大強度のバージョン及びにその「軽量」バージョンを含むことができる。
【0094】
インクジェットインクセットの追加の色には、例えば、オレンジ、バイオレット、グリーン、レッド及び/又はブルーが含まれる。
【0095】
好ましいインクセットインクは、顔料インクである。
【0096】
基材
本発明のインク及びインクセットの特に好ましい用途は、繊維製品のインクジェット印刷である。繊維製品としては、これらに限定されないが、綿、羊毛、絹、ナイロン、ポリエステル等、及びこれらの混合物が挙げられる。繊維製品の完成形態としては、これらに限定されないが、布地、衣類、Tシャツ、カーペット及び室内装飾用布地などの調度品等が挙げられる。更に、考慮される繊維製品材料としては、これらに限定されないが、綿、羊毛及び絹などの天然繊維材料並びにビスコース及びリヨセルなどの再生繊維材料が挙げられる。更なる繊維材料としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリウレタン、ナイロン、Nomax(登録商標)及びKevlar(登録商標)を含む合成樹脂に基づく繊維が挙げられる。これらのタイプの布地は、一般的には、印刷前に前処理される。前記繊維材料は、好ましくは、シート状の繊維織物布地、編布地又はウェブの形態である。本実施形態は、合成繊維材料及びこれらの綿とのブレンドから作製された非白色繊維製品におけるインクジェット印刷に特に有利である。
【0097】
印刷方法
本方法は、前処理された繊維製品基材をデジタル印刷することに関する。典型的には、これは、以下の順序において、
a)基材を提供する工程と、
b)多価カチオン及び/又は酸の塩を含む前処理組成物を塗布する工程と、
c)ポリマーバインダーを含む透明インクを噴射することによって塗布する工程と、
d)白色インクを噴射することによって塗布する工程と、
e)非白色着色インクを噴射することによって塗布する工程と
を伴う。
【0098】
好ましくは、前処理溶液は、布地100グラム当たり約0.20~約7.5グラムの多価カチオン性(カルシウム)塩、より好ましくは布地100グラム当たり約0.60~約6.0グラムの多価カチオン性(カルシウム)塩、更により好ましくは布地100グラム当たり約0.75~約5.0グラムの多価カチオン性(カルシウム)塩を噴霧することによって布地に塗布される。
【0099】
印刷は、布地の取り扱い及び印刷に対応している任意のインクジェットプリンターにより行うことができる。商用プリンターには、例えば、M&R Companies(Roselle,IL)のM-LINK Direct-to-Garmentプリンター、Dupont(商標)Artistri(商標)3210及び2020プリンター及びMimaki TXシリーズのプリンターが含まれる。
【0100】
上記のように、これらのプリンターでは、様々なインク及びインクセットを使用することができる。市販のインクセットには、例えば、DuPont(商標)Artistri(商標)P7000及びP6000シリーズのインクが含まれる。
【0101】
布地にのせられるインクの量は、プリンターの型、所定のプリンター内の印刷モード(解像度)及び所定の色を得るために必要なカバーパーセントにより様々であり得る。全てのこれらの検討事項の複合的な影響は、各色についての布地の単位面積当たりのインクのグラムである。
【0102】
典型的には、工程c)は、工程b)後、繊維製品基材を乾燥させずに実行される。より典型的には、前処理の適用と透明インクの塗布との間の時間間隔は、10分未満である。最も典型的には、前処理の適用と透明インクの塗布との間の時間間隔は、1分未満である。
【0103】
典型的には、工程d)は、工程c)後、繊維製品基材を乾燥させずに実行される。より典型的には、透明インクの塗布と白色インクの塗布との間の時間間隔は、10分未満である。最も典型的には、透明インクの塗布と白色インクの塗布との間の時間間隔は、1分未満である。
【0104】
典型的には、工程e)は、工程d)後、繊維製品基材を乾燥させずに実行される。より典型的には、白色インクの塗布と着色インクの塗布との間の時間間隔は、10分未満である。最も典型的には、白色インクの塗布と着色インクの塗布との間の時間間隔は、1分未満である。
【0105】
代替の実施形態では、白色インクを塗布するための上記の工程が削除され、印刷方法は、以下の順序において、
a)基材を提供する工程と、
b)多価カチオン及び/又は酸の塩を含む前処理組成物を塗布する工程と、
c)ポリマーバインダーを含む透明インクを噴射することによって塗布する工程と、
d)非白色着色インクを噴射することによって塗布する工程と
を伴うことを提供する。
【0106】
印刷された繊維製品は、任意選択で、米国特許出願公開第20030160851号明細書(この開示は、完全に説明されているかのように、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているように熱及び/又は圧力で後処理され得る。上限温度は、印刷されている具体的な布地の耐性によって規定される。下限温度は、所望のレベルの耐久性を達成するために必要とされる熱の量によって決定される。一般に、処理温度は、少なくとも約80℃、好ましくは少なくとも約140℃、更に好ましくは少なくとも約150℃、最も好ましくは少なくとも約160℃である。
【0107】
任意選択で、適度な融着圧力を適用して耐久性を向上させることができる。圧力は、約3psig、好ましくは少なくとも約5psig、より好ましくは少なくとも約8psig、最も好ましくは少なくとも約10psigであり得る。約30psi以上の融着圧力は、耐久性に更なる利点を提供しないように見えるが、このような圧力は、除外されない。
【0108】
後処理の期間(印刷された繊維製品が所望の温度で圧力下にある時間の長さ)は、特に重要であると考えられない。後処理操作のほとんどの時間は、一般に、プリントを所望の温度に上げることを伴う。プリントが完全に温度に達すると、滞留時間は、短くなり得る(分)。
【実施例
【0109】
本発明を以下の実施例により更に例示するが、本発明は、これらに限定されず、特に注釈しない限り、部及びパーセントは、重量基準である。
【0110】
成分及び略語
DBTDL=ジブチルスズジラウレート
DMP=3,5-ジメチルピラゾール
DMPA=ジメチロールプロピオン酸
IPDI=イソホロンジイソシアネート
TEA=トリエチルアミン
TETA=トリエチレンテトラミン
Duranol(商標)T5651及びT5652-Asahi Kaseiのポリカーボネートジオール
Terathane(登録商標)1400及び2900-Invista(Wilmington,DE)のポリエーテルジオール
Stepanpol(登録商標)PH-56-Stepan Company(Northfield,IL)のポリエステルジオール
Desmophen(登録商標)C1200-Covestro(Leverkusen,Germany)のポリカーボネートポリエステルジオール
Takelac(商標)W6110-Mitsui Chemicals(Tokyo,Japan)の水性ポリウレタン樹脂
【0111】
特に明記しない限り、上述の化学物質は、Aldrich(Milwaukee,WI)又は他の同様の研究用薬品の供給業者から入手した。
【0112】
前処理溶液の調製
前処理溶液は、脱イオン水中で5重量%の硝酸カルシウム溶液を作製することによって調製した。
【0113】
透明インクの調製
透明インクポリマーバインダー1
添加漏斗、凝縮器、スターラー及び窒素ガスラインを備えた乾燥した清潔なフラスコに224gのDuranol(商標)、140gのアセトン及び0.2gのDBTLを加えた。内容物を40℃に加熱し、完全に混合した。混合物に40℃で添加漏斗を介して103gのIPDIを添加し、残りのIPDIを添加漏斗から10gのアセトンでフラスコに濯いだ。
【0114】
フラスコの温度を50℃に上げ、60分間保持し、続いて14.5gのDMPA、続いて9.7gのTEAを、添加漏斗を介してフラスコに加え、次いでこれを10gのアセトンで濯いだ。次いで、フラスコ温度を再び50℃に上げ、NCO%が4%以下になるまで50℃で保持した。次いで、23.4gのDMPをフラスコに加えた。NCO%が1.88%以下になるまで混合物を50℃で撹拌した。
【0115】
50℃の温度で800gの脱イオン(DI)水を10分間かけて添加し、続いて7.1gのTETA(10%水溶液として)を添加漏斗から5分かけて加え、次いでこれを15.0gの水で濯いだ。混合物を50℃で1時間保持し、次いで室温に冷却した。
【0116】
アセトンを真空下で除去し、約31.0重量%の固形分を有するポリウレタンの最終分散物を残した。
【0117】
ポリマーバインダー2~9は、ポリマーバインダー1の調製と同様の手順を使用して、以下の表1に列挙される成分を使用して調製した。
【0118】
【表1】
【0119】
透明インクの調製
以下の表2に示される透明インクは、インクジェット技術の標準的な手順を使用して調製した。成分量は、最終的なインクの重量%である。ポリマーバインダーとImprafixとは、固形分ベースで見積られている。インク調製の例として、インクビヒクルを調製し、水性ポリマーバインダー及びImprafixに撹拌しながら添加し、良好なインク混合物が得られるまで撹拌した。
【0120】
【表2】
【0121】
着色インクの調製
シアンインク
シアンインクは、米国特許出願公開第2017/0355866号明細書に開示されている手順に従って調製し、その開示は、完全に説明されているかのように、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0122】
イエローインク
イエロー顔料PY155を使用したことを除いて、シアンインクと同様の方法でイエローインクを調製した。
【0123】
マゼンタインク
マゼンタインクは、マゼンタ顔料PR122を使用したことを除いて、シアンインクと同様の方法で調製した。
【0124】
ブラックインク
カーボンブラック顔料を使用したことを除いて、シアン分散物と同様の方法でブラックインクを調製した。
【0125】
白色インクの調製
白色インクは、国際公開第2017/223441号パンフレットに開示されている手順に従って調製した。
【0126】
印刷及び試験
印刷に使用した布地は、Sport-Tek(登録商標)100%ポリエステルTシャツであった。黒色及び赤色の両方のシャツを印刷した。印刷する前に布地に前処理溶液を噴霧した。その後の印刷は、湿潤した布地と乾燥した布地との両方で実行した。前処理した布地を乾燥せずに印刷した場合、噴霧後1分未満において、前処理した布地を、M&R Companies(Roselle,IL)のM-LINK Direct-to-Garmentプリンターを用いて印刷した。インクは、透明インク、白色インク及び着色インクの順で印刷した。異なるインク層間に乾燥はなく、噴射時間間隔は、一般に、異なるインク間で1分未満であった。インクは、同じプロセスで乾燥布地にも印刷され、ここで、乾燥プロセスは、165℃で3分間、噴霧された布地をコンベヤーベルト上でトンネル乾燥機に通して移動させることによって実行した。トンネル乾燥機は、Brown Manufacturing,Wyoming,MI製のDragonAir Fire(商標)3611であった。印刷後、次いで、全ての布地を、165℃で3.5分間、コンベヤーベルト上でDragonAir Fire(商標)3611トンネルドライヤーを通して移動させることによって硬化した。比較のプリントは、透明インクが白色インク及び着色インクと共に噴射されなかったことを除いて、同じプロセスで作製した。
【0127】
印刷された画像の洗濯堅牢度を測定するために、布地を9回のサイクルの洗濯にかけた。洗浄前後の画質を調べて比較した。画質に問題がなく、布地からインクが剥がれていない場合、洗濯堅牢度は、優秀と評価した。画像の5~10%が布地から剥がれ、ピンホールが観察された場合、洗濯堅牢度は、不良と評価した。以下の表3の結果は、透明インク-1で印刷された本発明のプリントAが、比較のプリントAよりもはるかに改善した洗濯堅牢度を有したことを示している。
【0128】
【表3】
【0129】
印刷された画像の染料の移動を測定するために、X-Rite測色計を使用して無地の白色画像の色特性を測定した。L*、a*が出力として報告された。L*が低いほど、白色が少ないことを示す。a*が高いほど、布地からの染料の移行による赤色が多いことを示す。以下の表4の結果は、それぞれ比較のプリントB及びCと比較して、本発明のプリントB及びCがより白色の画像を有し、印刷及び乾燥プロセス中に赤色の布地から拡散する赤色の染料の染みが少ないこと示した。
【0130】
【表4】
【国際調査報告】