(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-24
(54)【発明の名称】睡眠呼吸障害を改善するための舌咽神経の神経調節
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20221116BHJP
【FI】
A61N1/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516221
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(85)【翻訳文提出日】2022-05-06
(86)【国際出願番号】 US2020050335
(87)【国際公開番号】W WO2021050829
(87)【国際公開日】2021-03-18
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】501271033
【氏名又は名称】バンダービルト・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】VANDERBILT UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】ケント,デイビッド,ティー.
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053JJ01
4C053JJ13
4C053JJ21
(57)【要約】
【課題】咽頭収縮筋又は茎突咽頭筋を支配する舌咽神経の遠心性繊維を含む少なくとも1つの標的部位に電気神経調節信号を送達することでSDBに罹患している患者のSDBを改善するための方法及びシステムを提供する。
【解決手段】方法には、他の部位に電気神経調節信号を送達することを含み、これらの他の部位は、頸神経ワナ、舌下神経、口蓋舌筋及び/又は口蓋咽頭筋の1つ又は複数の組み合わせを含む。舌咽神経の遠心性繊維に送達される電気神経調節信号は、患者の気道の神経筋状態を測定して検出された感覚又は入力信号と無関係に、行うことができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
睡眠呼吸障害に罹患している患者の睡眠呼吸障害を改善するための方法であって、
患者の気道の神経筋状態に関して検出又は感知された感覚又は入力信号と無関係に、1つ又は複数の咽頭収縮筋又は茎突咽頭筋を支配する舌咽神経の遠心性繊維を含む標的部位に電気神経調節信号を送達することと、
前記電気神経調節信号を送達することにより前記患者の睡眠呼吸障害を改善することとを含む、ことを特徴とする睡眠呼吸障害に罹患している患者の睡眠呼吸障害を改善するための方法。
【請求項2】
前記電気神経調節信号は、緊張性ベース又は前記気道の神経筋状態に関して検出又は感知された感覚又は入力信号と関係しないデューティサイクルで送達される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記舌咽神経の遠心性繊維を含む標的部位に電気神経調節信号を送達することは、電気神経調節信号を咽頭神経叢に送達することを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
睡眠呼吸障害に罹患している患者の睡眠呼吸障害を改善するための方法であって、
1つ又は複数の咽頭収縮筋又は茎突咽頭筋を支配する舌咽神経の遠心性繊維を含む標的部位に第1電気神経調節信号を送達することと、
1つ又は複数の舌骨下筋を支配する頸神経ワナを含む標的部位に第2電気神経調節信号を送達することと、
前記第1電気神経調節信号及び第2電気神経調節信号を送達することにより、前記患者の睡眠呼吸障害を改善することとを含む、ことを特徴とする睡眠呼吸障害に罹患している患者の睡眠呼吸障害を改善するための方法。
【請求項5】
前記舌咽神経の遠心性繊維を含む標的部位に第1電気神経調節信号を送達することは、咽頭神経叢に第1電気神経調節信号を送達することを含む、ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1電気神経調節信号及び第2電気神経調節信号の送達は、所定の期間又は一連の所定の期間で行われる、ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記第1電気神経調節信号及び第2電気神経調節信号の送達は、ほぼ同じ期間で行われる、ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項8】
第2電気神経調節信号を頸神経ワナと電気的に通信している標的部位に送達することは、胸骨甲状筋を支配する標的部位に前記第2電気神経調節信号を送達することを含む、ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記第2電気神経調節信号は、前記頸神経ワナの上根の分岐点の近位又は前記分岐点で送達される、ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記第2電気神経調節信号は、前記頸神経ワナの下根の近位で送達される、ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記頸神経ワナを含む標的部位に前記第2電気神経調節信号を送達することは、前記肩甲舌骨筋を支配する標的部位に前記第2電気神経調節信号を送達することを含む、ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項12】
舌下神経(HGN)を含む標的部位に第3電気神経調節信号を送達することをさらに含む、ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項13】
前記舌下神経を含む標的部位に前記第3電気神経調節信号を送達することは、少なくともオトガイ舌筋を支配する舌下神経を含む標的部位に前記第3電気神経調節信号を送達することを含む、ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記舌下神経を含む前記標的部位は、前記舌下神経の分岐点及び前記頸神経ワナの上根から遠く離れるか、又は前記舌下神経の分岐点及び前記頸神経ワナの上根にある、ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記舌下神経を含む前記標的部位は、舌牽引筋を支配する舌下神経の分岐点から遠く離れる、ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項16】
口蓋舌筋、口蓋咽頭筋、前記口蓋舌筋を支配する神経繊維、又は前記口蓋咽頭筋を支配する神経繊維に第4電気神経調節信号を送達することをさらに含む、ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項17】
前記睡眠呼吸障害は、いびき、閉塞性睡眠時無呼吸又はそれらの組み合わせである、ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項18】
患者の気道の神経筋状態に関して検出又は感知された感覚又は入力信号と無関係に、1つ又は複数の咽頭収縮筋又は茎突咽頭筋を支配する舌咽神経の遠心性繊維を含む標的部位に電気神経調節信号を送達することで患者の睡眠呼吸障害を改善するための電極の用途。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2019年9月13日に出願された米国仮特許出願第62/900,442号及び2020年1月15日に出願された米国仮出願第62/961,338号の優先権を主張する。両方の出願の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本公開は、舌咽神経の遠心性繊維を神経調節することにより睡眠呼吸障害を治療するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
睡眠呼吸障害(睡眠呼吸障害、SDB)は、夜間に何度も起こる呼吸の部分的または完全な停止があるときに起こる。閉塞性睡眠時無呼吸(Obstructive sleep apnea、OSA)は、このようなタイプのSDBであり、それは、呼吸努力の存在下での呼吸の停止又は大幅な減少を伴う。これは、最も一般的なSDBのタイプであり、睡眠中に上気道潰れが再発的に発生することによって、呼吸が繰り返し停止した後、血中酸素飽和度が低下し、又は神経が覚醒することを特徴とする。OSAの病態生理には、頭蓋顔面の解剖学的構造、気道の崩壊性及び上気道拡張筋の筋肉組織の神経筋制御などの要因が関係する可能性がある。筋電図の研究では、咽頭気道拡張筋(オトガイ舌筋など)の緊張性及び段階的な動きは、覚醒から非急速眼球運動睡眠、急速眼球運動睡眠睡眠へと徐々に減少することを示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
持続的気道陽圧(Continuous positive airway pressure、CPAP)療法は、OSAの最前線の治療である。CPAP療法は、OSAに罹患している患者の気道を継続的に開いた状態に保つために、一定の空気圧の流れを供給するように設けられたデバイスを使用し、当該デバイスは、一般的にフロージェネレータ、チューブ及びマスクを含む。ただし、CPAP療法の成功は、報告された50%~70%の範囲の率の遵守によって制限される。舌下神経刺激(Hypoglossal nerve stimulation、HNS)は、気道陽圧に耐えられない、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)に罹患している患者に対する効果的な療法として確立されている。この療法は、舌の筋肉を突き出して硬化させ、それによって咽頭気道を拡張することにより機能する。しかし、OSAに罹患している患者のうちのごく一部のみは、舌下神経刺激療法に適する解剖学的構造を有する。多くの患者は、舌の筋肉組織が刺激された場合でも気道虚脱に苦しんでいるからである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、舌咽神経(脳神経IX)の遠心性繊維を神経調節することによりSDBを改善する方法及びシステムが提供される。特定の態様では、睡眠呼吸障害に罹患している患者の睡眠呼吸障害を改善するための方法は、患者の気道の神経筋状態に関して検出又は感知された感覚又は入力信号と無関係に、1つ又は複数の咽頭収縮筋筋肉又は茎突咽頭筋を支配する舌咽神経の遠心性繊維を含む標的部位に電気神経調節信号を送達する。当該方法は、電気神経調節信号を送達することにより、患者のSDBを改善することをさらに含む。
【0006】
特定の態様では、本明細書では、複数の気道部位に電気神経調節信号を送達することによりSDBに罹患している患者のSDBを改善する方法及びシステムが提供される。このような気道部位は、舌咽神経(脳神経IX)の遠心性繊維、頸神経ワナ、舌下神経(HGN)、口蓋舌筋、又は口蓋咽頭筋の1つ又は複数の組み合わせを含むことができる。例えば、方法は、電気神経調節信号を以下の1つ又は複数の組み合わせに送達し、舌咽神経の遠心性繊維を含む標的部位であって、当該遠心性繊維は、活性化されると咽頭筋の緊張度を増加させる1つ又は複数の咽頭収縮筋筋肉を支配し、又は活性化されると横方向に咽頭壁を動かす茎突咽頭筋を支配し、頸神経ワナを含む標的部位であって、当該頸神経ワナは、1つ又は複数の舌骨下筋を支配し、当該1つ又は複数の舌骨下筋は、活性化されると、気道を引き下げて尾側の張力又は牽引力を生じ、咽頭壁虚脱を減少させ、舌下神経(HGN)を含む標的部位であって、当該舌下神経は、1つ又は複数の筋肉を支配し、当該1つ又は複数の筋肉は、活性化されると、舌の筋肉組織を緊張させて舌に関連する気道閉塞を減少させ、口蓋舌筋又はその支配神経繊維を標的部位であって、当該口蓋舌筋又はその支配神経繊維は、活性化されると、軟口蓋を前方および下方に押し下げて引っ張り、患者の口蓋後空間を拡張及び開放し、又は、口蓋咽頭筋又はその支配神経繊維を含む標的部位であって、当該口蓋咽頭筋又はその支配神経繊維は、活性化されると、軟口蓋を引き下げて患者の口蓋後空間を拡張及び開放する。当該方法は、電気神経調節信号を送達することで患者のSDBを改善することをさらに含む。
【0007】
特定の態様では、SDBに罹患している患者のSDBを改善するための方法は、舌咽神経の遠心性繊維を含む標的部位に第1電気神経調節信号を送達することを含み、当該遠心性繊維は、活性化されると咽頭筋の緊張度を増加させる1つ又は複数の咽頭収縮筋、又は茎突咽頭筋、又は活性化されると横方向に咽頭壁を動かす茎突咽頭筋を支配する。当該方法は、頸神経ワナを含む標的部位に第2電気神経調節信号を送達することをさらに含み、当該頸神経ワナは、1つ又は複数の舌骨下筋を支配し、当該1つ又は複数の舌骨下筋は、活性化されると、気道を引き下げて、尾側の張力又は牽引力を生じ、咽頭壁虚脱を減少させる。当該方法は、第1及び第2電気神経調節信号を送達することにより患者のSDBを改善することをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本公開の一態様による、SDBに罹患している患者のSDBを改善するための方法の例示的なステップを示すフローチャートである。
【
図3】本公開の別の態様による、SDBに罹患している患者のSDBを改善するための方法の例示的なステップを示すフローチャートである。
【
図4】本公開の一態様による神経調節のための例示的な標的部位の概略図である。
【
図5】本公開の一態様による神経調節のための例示的な標的部位の概略図である。
【
図6】本公開の一態様による神経調節のための例示的な標的部位の概略図である。
【
図7】口蓋舌筋に当接して配置された電極装置の概略図であり、また、他の関連する周囲の解剖学的構造も示す。
【
図8】本公開の実施例による神経筋刺激システムの例示的な構成要素を示すブロック図である。
【
図9】本公開の実施例による神経筋刺激器の例示的な構成要素を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書では、咽頭収縮筋又は茎突咽頭筋を支配する舌咽神経(脳神経IX)の遠心性繊維を含む少なくとも1つの標的部位に電気神経調節信号を送達することによりSDBに罹患している患者のSDBを改善するための方法及びシステムが提供される。SDBの非限定的な例は、増加した上気道抵抗(いびきを含む)、上気道.抵抗症候群(upper airway resistance syndrome、UARS)、及び睡眠時無呼吸である。睡眠時無呼吸は、OSA、中枢性睡眠時無呼吸(central sleep apnea、CSA)及び複雑な睡眠時無呼吸を含む。記載された要素に関して本明細書で使用される場合、用語「1」、「1つ」及び「当該」は、特に示されない限り、(複数の)要素の少なくとも1つ又は複数を含む。さらに、特に明記しない限り、用語「又は」と「及び」は、「及び/又は」及びそれらの組み合わせを指す。用語「第1」、「第2」などは、ある要素を別の要素と区別するために使用され、特に明記しない限り、定量的な意味で使用されない。したがって、以下に記載される「第1」要素は、「第2」要素と呼ばれることも可能である。患者のSDBを「改善」するということには、SDBの症状を軽減すること、SDBを緩和又は予防することを含む。特定の態様では、患者のSDBを改善する方法は、本質的に反応的ではなく、予防的である。言い換えれば、特定の態様による、患者のSDBを改善する方法は、無呼吸又は低呼吸イベントを検出して検出されたベントに対応するのではなく、SDBを予防することを含む。SDBを予防することにより、治療方法は、記録されたイベントに対応するのではなく、気道虚脱の可能性を低下させることである。本明細書で使用される場合、「神経調節(neuromodulation又はneuromodulate)」、「神経刺激(neurostimulation又はneurostimulate)」「刺激(stimulation又はstimulate)」とは、神経活動を刺激又は抑制することを指す。本明細書に記載される部位の刺激には、両側刺激又は片側刺激が含まれる。SDBに罹患している患者は、ヒトなどの哺乳類が含まれる。
【0010】
一態様では、
図1及び
図2を参照すると、SBDに罹患している患者のSBDを改善するための方法100は、1つ又は複数の咽頭収縮筋又は茎突咽頭筋102を支配する舌咽神経の遠心性繊維を含む標的部位に電気神経調節信号を送達することを含む。例示的な標的部位50は、
図2に示される。活性化されると、このような1つ又は複数の咽頭収縮筋は、咽頭筋の緊張度を増加させて、咽頭気道の崩壊性を低下させる。活性化されると、茎突咽頭筋は、咽頭壁を横方向に動かすことができる。特定の実施例では、電気神経調節信号は、咽頭壁の粘膜層を支配する感覚繊維に送達されない。さらに、特定の実施例では、気道の神経筋状態関して検出又は感知された感覚又は入力信号と無関係に電気神経調節信号を送達する。例えば、電気神経調節信号は、緊張性ベース又は気道の神経筋状態に関して検出又は感知された感覚又は入力信号と関係しないデューティサイクルで送達することができる。言い換えれば、気道の神経筋状態に関する感覚又は入力信号を測定することができても、特定の実施例では、そのような感覚情報は、標的部位に送達される電気神経調節信号の刺激パラメータを指示しない場合がある。方法100は、電気神経調節信号104を送達することにより患者のSDBを改善することをさらに含む。標的部位は、咽頭神経叢であり得る。
【0011】
一方、複数の気道部位に電気神経調節信号を送達することにより、SDBに罹患している患者のSDBを改善する方法及びシステムが提供される。そのような多気道部位は、以下のうちの1つ又は複数の組み合わせを含み、即ち、舌咽神経(脳神経IX)の遠心性繊維であって、当該遠心性繊維は、1つ又は複数の咽頭収縮筋又は茎突咽頭筋を支配し、そして、頸神経ワナ、舌下神経(HGN)、口蓋舌筋又はその支配神経繊維、或いは口蓋咽頭筋又はその支配神経繊維がある。方法は、神経及び/又は筋肉を刺激してオトガイ舌筋の緊張度、咽頭の尾側の牽引及び固有の筋肉緊張度を調節してSDBを改善することにより、咽頭気道開放を改善することができる。例えば、SDBを改善する方法は、舌咽神経の遠心性繊維を刺激することにより固有の咽頭壁の緊張度を調節すること、頸神経ワナを刺激することにより上気道に尾側牽引を提供すること、HGNを刺激することによりオトガイ舌筋の張力を調節すること、及び/又はその組み合わせを含むことができる。方法は、追加的または代替的に、口蓋舌筋又はその支配神経繊維を刺激して軟口蓋を前方及び下方に押して引き、蓋後空間を拡張および開口させるを含むことができる。代替的または追加的に、方法は、口蓋咽頭筋又はその支配神経繊維を刺激して軟口蓋を下方に引き、患者の口蓋後空間を拡張および開口させるを含むことができる。
【0012】
図3を参照して、睡眠呼吸障害(SDB)に罹患している患者のSDBを改善する方法200は、1つ又は複数の咽頭収縮筋又は茎突咽頭筋を支配する舌咽神経の遠心性繊維を含む標的部位に第1電気神経調節信号を送達することを含む。活性化されると、1つ又は複数の咽頭収縮筋を支配する舌咽神経の遠心性繊維は、咽頭筋の緊張度を増加させることができる。活性化されると、茎突咽頭筋を支配する舌咽神経の遠心性繊維は、咽頭壁202を横方向に動かすことができる。例えば、標的部位は、咽頭神経叢を含むことができる。方法200は、さらに、頸神経ワナを含む標的部位に第2電気神経調節信号を送達することを含むことができる。活性化されると、1つ又は複数の舌骨下筋を支配する頸神経ワナを含む標的部位は、気道を下方に引き、咽頭の尾側張力又は牽引を生成し、咽頭壁虚脱204を減少させることができる。方法200は、さらに第1及び第2電気神経調節信号を送達することにより患者のSDB206を改善することを含む。
【0013】
一方、方法は、頸神経ワナを含む標的部位に電気神経調節信号を送達し、さらに1つ又は複数の咽頭収縮筋又は茎突咽頭筋を支配する舌咽神経の遠心性繊維、舌下神経(HGN)、口蓋舌筋又はその支配神経繊維、或いは口蓋咽頭筋又はその支配神経繊維に電気神経調節信号を送達することを含む。
【0014】
上述した態様における舌咽神経の遠心性繊維を含む標的部位に電気神経調節信号を送達することに関して、咽頭の側壁は、咽頭収縮筋によって構成され、これらの咽頭収縮筋は、脳神経IX及びXからの繊維を含む咽頭神経叢によって支配される。これらの筋肉を支配する神経は、咽頭収縮筋の外面に神経叢を形成し、咽頭収縮筋を通して口蓋舌筋及び口蓋咽頭筋に到達する。研究により、脳神経IXの運動枝は、収縮筋機構の呼吸制御を担う可能性があり、また、それらは、茎突咽頭筋の領域で識別することができる。呼吸中に増加する収縮筋の緊張度は、咽頭壁を硬化させることで咽頭虚脱を低減することができる。完全に収縮していない咽頭壁の硬化は、頸神経ワナ及び舌下神経に対する刺激をより効果的にすることができる。茎突咽頭筋の刺激は、咽頭壁を横方向に移動させることで気道口径を増加させることができ、また、筋肉の活性化が最初の咽頭壁硬化を超えて進行する場合に起こりうる収縮筋機構の活性化の咽頭狭窄部分を相殺することができる。特定の実施例では、電気神経調節信号は、気道の神経筋状態に関して検出又は感知された感覚又は入力信号と無関係に舌咽神経の遠心性繊維に送達することができる。
【0015】
上述した態様で頸神経ワナを含む標的部位に電気神経調節信号を送達することに関して、このような送達は、1つ又は複数の舌骨下筋を活性化することができ、且つ、頸神経ワナの上根と下根のうちの1つ又は2つ及び近接する枝を含むことができる。理論に縛られることを望まないが、舌骨下筋の活性化(例えば、これらの筋肉の引き締め)は、上気道のコンプライアンスを低下させることができる(例えば、上気道を硬化させる)と考えられる。上気道コンプライアンスはは、気道虚脱の可能性を示し、SDBの治療に関連し得る。理論に縛られることを望まないが、甲状軟骨及び舌骨の上方への移動を防げることにより、頸神経ワナを刺激して咽頭の下端をアンカーすることができ、これにより、咽頭収縮筋機構及び口蓋咽頭筋の収縮は、固体のアンカー部に当接し、可動性の挿入点が作用することではなく、それによって、舌咽神経の遠心性繊維の刺激又は口蓋咽頭筋の刺激で頸神経ワナの共刺激の有効性を増加させる。
【0016】
以下で説明したように、舌骨下筋には、胸骨舌骨筋、胸骨甲状筋、肩甲舌骨筋及び甲状舌骨筋が含まれレう。実施例では、方法は、頸神経ワナに近接する標的部位に電気神経調節信号を送達することを含み、当該頸神経ワナは、少なくとも胸骨甲状筋を神経支配して胸骨甲状筋を活性化する。標的部位は、頸神経ワナに近接するすることができ、それにより、電気神経調節信号を送達して頸神経ワナの運動繊維を活性化させる。少なくとも胸骨甲状筋の活性化は、患者の上気道を硬化させ、それにより、患者のSDBを改善することができると考えられる。
【0017】
図4乃至
図6を参照して、舌骨下筋は、頸神経ワナの上根及び下根の両方からの神経繊維の寄与によってさまざまに支配することができる。正常な解剖学的変異体は、胸骨甲状筋39への所望の刺激を達成するために、異なる患者において1つ又は複数の異なる標的部位を使用する必要があり得る。特定の態様において、
図4を参照すると、電気神経調節信号は、頸神経ワナ33に近接する標的部位に送達することができ、当該神経調節信号は、さらに胸骨舌骨筋の上腹部37a又は胸骨舌骨筋の下腹部37bを支配して、胸骨舌骨筋37の一部又は全部を活性化する。例えば、例示的な標的部位は、標的部位Aを含み、当該標的部位は、胸骨舌骨筋37を支配する頸神経ワナ27の上根の分岐点43に近接し、又は分岐点43に位置することができ、それにより、胸骨舌骨筋37及び胸骨甲状筋39を活性化させる。特定の態様では、頸神経ワナ27の上根に近接する標的部位Aに電気的信号を送達することは、肩甲舌骨筋41の一部又は全部を活性化させることができる。標的部位は、頸神経ワナ27の上根から遠く離れるが、分岐点1000を含まない場合(例えば、部位Gに配置される)、電気神経調節信号は、胸骨舌骨筋37又は肩甲舌骨筋41のみを活性化させ、胸骨甲状筋39及び胸骨舌骨筋37又は肩甲舌骨筋41を必ずしも活性化させない。理論に縛られることを望まないが、少なくとも胸骨甲状筋39(胸骨甲状筋39、胸骨舌骨筋37及び肩甲舌骨筋41を含む)の活性化は、患者の上気道を硬化させて、患者のSDBを改善する。
【0018】
特定の態様では、電気神経調節信号は、頸神経ワナ(例えば、頸神経ワナ35の下根に近接する)に近接する標的部位Bに送達され、また、胸骨甲状筋39、胸骨舌骨筋37及び肩甲舌骨筋41を支配して、支配する筋肉のうちの1つ又は複数の筋肉を活性化させる。特定の態様では、電気神経調節信号を頸神経ワナ31に近接する標的部位A及びBに同時に送達することができ、胸骨甲状筋39、胸骨舌骨筋37及び肩甲舌骨筋41を支配する頸神経ワナの上根27及び下根35の神経分岐を刺激する。特定の態様では、電気的信号を標的部位E(例えば、頸神経ワナ33のループから生じる1つ又は複数の共通幹神経1000の分岐点に位置し、又は近接し、当該1つ又は複数の共通幹神経は、上根27及び下根35からの神経繊維を結合し、少なくとも胸骨甲状筋39を提供して、また胸骨舌骨筋37及び肩甲舌骨筋41を可変的に提供する)に送達することは、少なくとも胸骨甲状筋39を活性化させることができ、特定の態様では、胸骨舌骨筋37を活性化させることができ、特定の態様では、肩甲舌骨筋41を活性化させることができる。特定の態様では、電気的信号を標的部位F(例えば、共通幹1001から1つ又は複数の胸骨甲状筋神経の分岐点に位置し、又は近接する)に送達することは、胸骨甲状筋39を活性化させることができる。上記標的部位は、単なる例示であり、1つ又は複数の電極を他の分岐を含む頸神経ワナの他の部分に配置することができると留意されたい。
【0019】
上述した態様でHGNを含む標的部位に電気神経調節信号を送達することに関して、このような標的部位は、オトガイ舌筋を支配してオトガイ舌筋を活性化させるHGNに近接し得る。標的部位は、電気神経調節信号を送達することがHGNの運動繊維を活性化させるように、HGNに近接し得る。
図4に戻ると、特定の態様では、電気的信号は、頸神経ワナ及びHGNに異なる強度又はタイミングの刺激を潜在的に提供するために別個の電極が必要であると考えられるため、分岐点43に近接するHGNに送達されない。他の態様では、HGNは、茎突舌骨筋又は舌骨筋への戻り筋(the retrusor muscle)分岐の分岐点の近位又は遠位で刺激され得る。オトガイ舌筋の活性化は、舌を前方に移動させ、患者の上気道を拡張/強化し、患者のSDBを改善することができる。
【0020】
上述した態様で口蓋舌筋又はその支配神経繊維を含む標的部位に電気神経調節信号を送達することに関して、このような送達は、軟口蓋の前方及び下方変位を引き起こし、咽頭後壁に対する虚脱を減少させ、口蓋後空間を拡張及び開口させることができる。口蓋舌筋は、硬口蓋の後部における口蓋腱膜に由来する。それは、舌の後外側面に挿入するために、下側に下降する。それは、口腔の後部を通る間に、粘膜によって内側に覆われ、因此形成了口蓋舌弓を形成する。口蓋舌筋は、舌後部を上昇させ、軟口蓋を下方に引っ張ることにより口腔咽頭から口腔を閉鎖するように機能する。この筋肉は、咽頭神経叢の分岐によって支配され、咽頭神経叢は、舌下神経及び他の内因性および外因性の舌の筋肉組織と独立して機能すると考えられる。さらに、
図7に模式的に示されている関連する解剖学的構造に関して、口蓋帆挙筋は、軟口蓋を鼻の中に持ち上げるように機能する(矢印で示す)。軟口蓋が押圧されると、口蓋帆張筋は、軟口蓋を上昇させる。軟口蓋が上昇すると、口蓋帆張筋は、軟口蓋を押圧する。口蓋帆張筋は、軟口蓋を横方向に引っ張るように機能する(矢印で示す)。この横方向の動きは、軟口蓋を硬化させ、中立面に戻す。口蓋垂筋は、口蓋垂を硬口蓋の後端に近づけるように引っ張ることにより軟口蓋を短縮する(矢印で示すように)。口蓋舌筋は、口蓋帆挙筋に対向して、軟口蓋を下方に引っ張って舌の基部に向け得る(矢印で示すように)。
【0021】
上述した態様では、口蓋咽頭筋又はその支配神経繊維を含む標的部位に電気神経調節信号を送達することに関して、口蓋咽頭筋は、主に軟口蓋を押圧する。上にある咽頭収縮筋組織を貫通する咽頭神経叢の分岐によって支配される。筋肉は、口蓋腱膜に由来する。それは、咽頭壁の軟組織中に挿入するために下外側に下降する。口蓋咽頭筋は、口蓋帆挙筋に対向する。その動きが制限されていない場合、それは、収縮中に咽頭を上昇させることもある。
【0022】
本公開の態様は、さらに、患者のSDBを改善するために、患者の気道の神経筋状態に関して検出又は感知された感覚又は入力信号と無関係に、1つ又は複数の咽頭収縮筋又は茎突咽頭筋を支配する舌咽神経の遠心性繊維を含む標的部位に電気神経調節信号を送達するための電極の使用を提供する。各態様は、さらに電極を使用して1つ又は複数の咽頭収縮筋又は茎突咽頭筋を支配する舌咽神経の遠心性繊維を含む標的部位に第1電気神経調節信号を送達し、及び、電極を使用して1つ又は複数の舌骨下筋を支配する頸神経ワナを含む標的部位に第2電気神経調節信号を送達することで、患者のSDBを改善することを含む。
【0023】
電気神経調節信号を送達することは、1つ又は複数の電極/電気接点/神経刺激装置を標的部位に近接して配置することで実現することができる。様々な異なる方法で(例えば経皮的(transcutaneously又はpercutaneously)、皮下、筋肉内、管腔内、経血管的、血管内又は直接開放外科的移植)電極を標的部位に近接して配置することができる。電極は、また例えば注射可能な微小刺激装置、神経カフ電極又は経皮パッチなどの異なる形状因子を有することもできる。
【0024】
電極又は神経刺激装置は、同じ標的部位または異なる標的部位に配置することができる。例えば、標的部位が2つの別々の神経又は神経セグメントを含む場合、別々の神経カフ電極を各神経又は神経セグメントに配置することができ、ここで、各神経カフ電極は、それ自体の陰極及び陽極を有するが、同一のパルス発生器に接続されるか、又は別々の神経カフ電極が同一のパルス発生器に接続されるが、一方の神経カフ電極は、陰極として用いられ、他方は、陽極として用いられ、生成される電界は、神経又は神経セグメントを捕捉する。特定の実施例では、神経又は神経セグメントを刺激するように配置される1つ又は複数の電極は、別の神経又は神経セグメントを刺激するように配置される電極と組み合わせることができる。さらに代替的に、神経又は神経セグメントを刺激するように配置される1つ又は複数の電極は、別の神経又は神経セグメントを刺激するように配置される装置から遠く離れる装置の一部であってもよい。電極同一の単一のパルス発生器又は別個のパルス発生器((同一の物理的筐体内または別個の筐体内のいずれか)に操作可能に結合することができる。
【0025】
電極は、例えば電圧、周波数、パルス幅、電流及び強度において変化し得る出力信号を提供するように制御可能であり得る。電極は、さらに、電極からの正電流又は負電流の両方を提供し、又は電極からの電流を阻止し、又は電極からの電流の方向を変更することができる。電極は、電気エネルギー発生器(例えばバッテリ又はパルス発生器)に電気的に通信することができる。例えば、電気エネルギー発生器は、誘導結合によって充電可能なバッテリを含むことができる。電気エネルギー発生器は、電極に隣接し(例えば電極に隣接して埋め込まれる)、又は患者の体内又は身体上の遠隔部位、又は患者の身体から遠く離れる遠隔位置など、任意の適切な位置に配置することができる。電極は、遠隔に配置された電気エネルギー発生器に無線又はワイヤを介して接続することができる。
【0026】
電気エネルギー発生器は、例えば電気神経調節信号のパルス波形、信号パルス幅、信号パルス周波数、信号パルス位相、信号パルス極性、信号パルス振幅、信号パルス強度、信号パルス持続時間及びその組み合わせを制御することができる。電気エネルギー発生器は、様々な電流及び電圧を1つ又は複数の電極に伝達することにより、神経、ニューロン又は神経構造の活動を変調するようにプログラミングすることができる。電気エネルギー発生器は、独立して、又は必要に応じて様々組み合わせで複数の電極を制御するようにプログラミングすることができ、それにより、神経調節を提供する。場合によって、電極は、患者体外の電源を患者の皮膚に接触させることにより給電することができ、又は一体型の電源を含むことができる。
【0027】
電気神経調節信号は、一定であり、断続的であり、変化的であり、又は、電流、電圧、パルス幅、波形、周期、周波数、振幅などに関して変調され得る。波形は、正弦波、方形波などであってもよい。刺激の種類は、様々であり、様々な波形が含まれる場合がある。最適な活性化パターンは、同時活性化又は調整された調整可能な方式での交互活性化を含むかどうかにかかわらず、気道を最適に開くために、別の電極を活性化する前に電極で遅延し、又は別の協調的な方法で遅延を必要とする場合がある。
【0028】
コントローラ又はプログラマは、神経刺激装置に関連付けられてもよい。例えば、プログラマは、適切なソフトウェアプログラムの制御下に1つ又は複数のマイクロプロセッサを含むことができる。プログラマは、アナログ-デジタルコンバータなどのような他のコンポーネントを含むことができる。
【0029】
神経刺激装置は、所望の刺激パラメータで予めプログラミングすることができる。刺激パラメータは、電気神経調節信号が、電極をその標的位置から取り外すことなく、所望の設定に遠隔変調され得るように制御可能であり得る。遠隔制御は、例えば、電気的信号発生器及びバッテリ、外部送信機に結合された無線周波数受信機などを備える従来のテレメトリを使用して行うことができる。
【0030】
本明細書に開示される方法は、閉ループシステムの一部として使用することができる(以下でより詳細に説明するように)。このような方法は、SDBに関連する生理学的パラメータを感知し、当該生理学的パラメータに基づいてセンサ信号を生成し、当該センサ信号に応答して電極を活性化することで標的部位への電気的信号を調整することにより、患者のSDBを改善することを含むことができる。
【0031】
本公開の各態様は、さらにSDBに罹患している患者のSDBを改善するためのシステムを提供する。
図8及び
図9を参照すると、実施例では、神経刺激システム10は、神経刺激装置12と、神経刺激装置12に信号を伝送する外部装置14と、神経刺激装置12又は外部装置14と双方向に通信する患者プログラミング装置16と、医師プログラミング装置18とを含む。以下で説明するように、システムのの各構成要素は、互いに通信(例えば電気通信)することができる。場合によっては、システムの2つ又はより多くのコンポーネントは、相互に無線通信を行うことができる。他の場合、システムの2つ又はより多くのコンポーネントは、相互に有線通信を行うことができる。これにより、システムの一部のコンポーネントは、相互に無線通信することができ、他のコンポーネントは相互に有線通信をすることができる。さらに、本明細書に開示される例示的な実施例では、神経刺激システム10に含まれるコンポーネント間の通信は、本質的に双方向であるように配置される。ただし、2つ又はより多くのシステムコンポーネント間の通信は、単方向にすることができる。さらに、システムの異なるコンポーネントの機能を単一の装置に組み合わせることができる。例えば、外部装置と患者プログラミング装置のコンポーネントの機能を単一の装置に組み合わせることができる。
【0032】
実施例では、神経刺激装置12は、神経刺激パルスを送達するための、密封された筐体に封入され、電極に結合された1つまたは複数の電子回路などの電子回路システムを含む。特定の実施例では、神経刺激装置12は、刺激パルスを生成及び送達するための電力を提供し、通信機能などの他の装置機能に電力を供給するための一次電池セル、充電式電池セル又は誘導結合電源を含むことができる。神経刺激装置12又はシステム10は、標的部位に近接する組織に神経刺激装置を固定するための固定部材を含むことができる。
【0033】
外部装置14は、神経刺激装置12に操作可能に近接して外部装置14を患者に固定するためのストラップ、パッチ又は別の(複数の)取付部材を含むウェアラブルデバイスであり得る。場合によっては、外部装置14は、被験者の体の周りの外部装置14の配置を最適化する際に患者を支援するためのユーザフィードバックを提供するようにプログラミングされてもよい。神経刺激装置12に充電式電池セルが設けられている場合、外部装置14は、外部装置14から神経刺激装置12へ電力(例えば誘導電力伝送)を伝送するための再充電ユニットを含むことができる。この実施例では、プログラミング装置16は、双方向無線遠隔測定リンク20を介して神経刺激装置12によって送達される治療を開始又は終了するために用いられる患者手持ち装置であってもよい。代替的には、プログラミング装置16は、ウェアラブル外部装置14と通信して治療のオン及びオフ時間及び他の治療制御パラメータを制御するために、患者によって操作可能であり、これらのパラメータは、通信リンク24を介して神経刺激装置12に伝送される。プログラミング装置16は、双方向無線遠隔測定リンク22を介してウェアラブル外部装置14と通信することができ、当該双方向無線遠隔測定リンクは、は数フィートまでの距離で通信を確立することができ、距離遠隔測定を実現し、それにより、患者は、プログラミング装置16を神経刺激装置12に直接的に位置決めして治療のオン及びオフ時間を制御するか、或いは他の問い合わせ又はプログラミング操作(例えば、他の治療制御パラメータのプログラミング)を実行する必要がない。
【0034】
神経刺激装置12が一次電池セルを含む場合、外部装置14は、選択可能である。神経刺激装置12のプログラミングは、プログラミング装置16によって実行可能であり、それにより、近距離又は遠距離遠隔測定技術を使用してプログラミング装置16と神経刺激装置12との間でデータを伝送するための双方向通信リンク20を確立する。患者又は臨床医がプログラミング装置16を用いて、神経刺激装置12が自動的に実行する治療案を設定するようにしてもよい。プログラミング装置16は、治療を手動で開始及び停止し、治療送達パラメータを調整し、神経刺激装置12からデータを収集するために使用することができ、例えば、総累積治療送達時間に関連するデータ、或いは装置操作又は神経刺激装置12によって行われる測定に関連する他のデータがある。例えば、プログラミング装置16は、1つ又は複数の刺激を制御し、又は神経刺激装置12に関連するパラメータを制御するようにプログラミングされたソフトウェアを含むことができる。付加的又は選択的に、プログラミング装置16を含むソフトウェアは、日記の質問又は生理学的測定などの患者の治療データを記憶するようにプログラミングされ得る。プログラミング装置16は、遠隔データソース、特定のデータをクエリし、次いでクエリされたデータに基づいてシステム10に刺激指令を提供するようにプログラミングされたソフトウェアを含むことができる。例えば、プログラミング装置16は、睡眠開始後の所望の期間(例えば30分)後にカスタマイズ可能な又は患者が引き起こす警報(例えば、刺激期間及び各期間の持続期間を示す)を神経刺激装置12に提供するようにプログラミングされたソフトウェアを含むことができる。プログラミング装置16は、スマートフォン又はタブレットとして具体化することができるが、パーソナルコンピュータ(personal computer、PC)も含まれ得る。
【0035】
神経刺激装置12が外部から給電する装置として配置される場合、外部装置14は、刺激パルスを生成するために必要な電力を提供するように、患者に睡眠中に装着される電力伝送装置であってもよい。例えば、外部装置14は、バッテリにより給電する装置であってもよく、神経刺激装置12に含まれる二次コイルに電力を誘導的に伝送するための一次コイルを含む。外部装置14は、1つ又は複数の一次電池セル又は充電式バッテリセルを含むことができ、また、従って、例えば標準110V又は220Vの壁コンセントに再充電するための電力アダプタ及びプラグを含むことができる。
【0036】
いくつかの実施例では、神経刺激装置12が、充電可能な装置又は外部から給電可能な装置として具体化されるときに、神経刺激装置12に電力を伝送するために必要な機能、及び治療送達を制御するために神経刺激装置12をプログラミングするために必要な機能は、単一の外部装置で具体化することができる。例えば、外部装置14の電力伝送能力及び患者プログラミング装置16のプログラミング能力は、単一の外部装置に組み合わせることができ、当該単一の外部装置は、ウェアラブル又は手持ち装置(例えば、スマートフォン又はタブレット)であってもよい。
【0037】
患者プログラミング装置16に比べて、医師プログラミング装置18は、増加したプログラミング及び診断機能を含むことができる。例えば、医師プログラミング装置18は、パルス振幅、パルス幅、パルス形状、パルス周波数、デューティサイクル、治療オン及びオフ時間、電極の選択及び電極極性の割り当てなどを含むが、それらに限定されない全ての神経刺激治療制御パラメータをプログラミングするように配置することができる。患者プログラミング装置16は、一部のプログラミング機能及びプログラマブル治療制御パラメータが患者によってアクセス又は変更できないように、患者に全てのプログラミング機能への完全なアクセス権限を与えることなく、治療のオン又はオフ、治療の開始時間の調整又はパルス振幅の調整を行うように制限することができる。
【0038】
医師プログラミング装置18は、例えば来院中に無線双方向遠隔測定リンク28を介して神経刺激装置12と直接通信するように配置することができる。追加的又は代替的には、医師プログラミング装置18は、有線又は無線通信ネットワークリンク30を経由して患者プログラミング装置16にプログラミングコマンドを送信するための遠隔プログラミング装置として動作可能であり、その後、患者プログラミング装置16は、双方向遠隔測定リンク20(又はウェアラブル外部装置14及びリンク24)を介して神経刺激装置12にプログラミングデータを自動的に送信する。例えば、医師プログラミング装置は、スマートフォン、タブレット又はPCとして具体化することができる。
【0039】
いくつかの実施例では、患者に神経刺激装置12の操作を調整するための磁性体を提供することができる。例えば、磁性体の適用は、治療をオン又はオフにすることができ、或いは、神経刺激装置12の操作に他の二元的又は段階的な調整を引き起こすことができる。
【0040】
図9は、神経刺激システムの実施例による
図8の神経刺激装置12の機能ブロック図である。神経刺激装置12は、ハウジング34を含むことができ、当該ハウジングは、コントローラ36及び関連するメモリ38、遠隔測定モジュール40及び(複数の)電極44に結合されたパルス発生器42を封入する。神経刺激装置12は、電源46を含み、上記のように、当該電源は、一次電池セル、充電式電池セル又は外部給電システムの二次コイルのうちのいずれかを含むことができる。
【0041】
コントローラ36は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(digital signal processor、DSP)、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(fieldーprogrammable gate array、FPGA)又は同等の離散または集積論理回路システムのうちのいずれか1つ又は複数を含むことができる。いくつかの例では、コントローラ36は、1つ又は複数のマイクロプロセッサ、1つ又は複数のコントローラ、1つ又は複数のDSP、1つ又は複数のASIC又は1つ又は複数のFPGA及び他の離散又は集積論理回路システムの任意の組み合わせなどの複数のコンポーネントを含むことができる。本明細書でコントローラ36に帰属される機能は、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア又はその任意の組み合わせとして具体化することができる。一例では、患者のSDBを改善するための神経刺激治療案は、メモリ38内の指令として記憶又は符号化することができ、これらの指令は、コントローラ36によって実行されることにより、パルス発生器42は、プログラミングされた案に従って、電極44を介して治療を送達させる。
【0042】
メモリ38は、コンピュータ可読命令を含むことができ、コントローラ36によって実行されると、これらの命令は、神経刺激装置12に本公開全体を通して神経刺激装置に帰属される様々な機能を実行させる。コンピュータ可読命令は、メモリ38に符号化することができる。メモリ38は、ランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)、読み出し専用メモリ(read-only memory、ROM)、不揮発性RAM(non-volatile RAM、NVRAM)、電気的に消去可能なプログラマブルROM(electrically-erasable programmable ROM、EEPROM)、フラッシュメモリ又は任意の他のデジタル媒体、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体などの任意の揮発性、不揮発性、磁気、光学又は電気媒体を含むことができ、唯一の例外は、一時的な伝播信号である。
【0043】
遠隔測定モジュール40及び関連するアンテナ48は、外部装置14、患者プログラマ16又は医師プログラマ18との双方向通信を確立するために配置することができる。神経刺激装置12及びプログラミング装置16又は18によって使用される通信技術の例示には、低周波数又は無線周波数(RF)テレメトリが含まれ、例えばブルートゥース、WiFi又はMICSを介して確率されたRFリンクであってもよい。アンテナ48は、ハウジング34内に位置してもよいし、ハウジング34に沿ってもよいし、又はハウジング34から外部へ延びてもよい。
【0044】
電極44は、ハウジング44の外面に沿って配置することができ、以下でさらに説明するように、絶縁フィードスルー又は他の接続を介してパルス発生器42に結合することができる。他の実施例では、電極44は、リード線又は絶縁テザーによって運ばれることができ、当該リード線又は絶縁テザーは、適切な絶縁フィードスルー又は密封されたハウジング34を横切る他の電気接続を介してパルス発生器42に電気的に結合されている。さらに他の実施例では、電極44は、ハウジング34に組み合わせることができ、ここで、外部に露出された表面は、神経に近接する標的部位の近傍に操作可能に配置され、且つパルス発生器42に電気的に結合されるように適合される。
【0045】
一方、システム10は、開ループ制御または閉ループ制御を可能にするために1つ又は複数のセンサ(図示せず)を含むことができる。例えば、開ループシステムでは、システム10は、1つ又は複数のセンサを含むことができ、それにより患者が(複数の)センサからのフィードバック(例えば検出された信号)に基づいて(例えば、予防的に)SDBの改善を管理する。このような検出された信号は、筋肉又は神経の電気的活動、舌の位置、口腔咽頭の気流などの変化などのSDBの開始を示すことができる。(複数の)信号に近づくと、患者は、神経刺激装置12を起動又は活性化させてSDBを防止又は軽減することができる。
【0046】
一方、システム10は、例えば感知された生理学的パラメータ、又はSDBの程度又は存在を示す関連する症状又は徴候に応答して自動的に応答する(例えば、神経刺激装置12の活性化)によって閉ループ制御を行うことを可能にするように、1つ又は複数のセンサを含むことができる。生理学的パラメータには、筋肉又は神経の電気的な活動、舌の位置の変化、心拍数または血圧の変化、呼吸努力に応答する圧力変化、口腔咽頭気流などが含まれる。閉ループ又は開ループシステムの一部として使用されるセンサは、皮膚表面、口腔、鼻腔、粘膜表面、または皮下位置を含む患者の任意の適切な解剖学的位置に配置することができる。
【0047】
本公開の開示された態様及び実施例のそれぞれは、個別に又は本公開の他の態様、実施例及び変形と組み合わせて考慮され得る。特に明記しない限り、本公開の方法のステップは、任意の特定の実行順序に限定されない。さらに、上記は、電気的刺激に関して説明されているが、例えば、超音波、磁気、または光エネルギーなどの他の形態のエネルギーを使用することができる。
【手続補正書】
【提出日】2022-05-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
睡眠呼吸障害
(SDB)を改善するための
治療送達システムであって、
患者の気道の神経筋状態に関して検出又は感知された感覚又は入力信号と無関係に、1つ又は複数の咽頭収縮筋又は茎突咽頭筋を支配する舌咽神経の遠心性繊維を含む標的部位に電気信号を送達
して、患者の睡眠呼吸障害を改善する少なくとも1つの電極と、
前記少なくとも1つの電極に電気的に通信する電源と、
前記少なくとも1つの電極に電気的に通信し、前記電気信号を
前記標的部位に送達
して前記1つ又は複数の咽頭収縮筋又は茎突咽頭筋を活性化することで前記睡眠呼吸障害を改善する
ようにプログラミングされたコントローラとを含む、ことを特徴とする睡眠呼吸障害を改善するための
治療送達システム。
【請求項2】
前記電気神経調節信号は、緊張性ベースで或いは前記気道の神経筋状態に関して検出又は感知された感覚又は入力信号と関係しないデューティサイクルで送達される、ことを特徴とする請求項1に記載の
システム。
【請求項3】
前記標的部位
は、咽頭神経叢
である、ことを特徴とする請求項1に記載の
システム。
【請求項4】
前記コントローラは、
1つ又は複数の咽頭収縮筋又は茎突咽頭筋を支配する舌咽神経の遠心性繊維を含む標的部位に第1電気神経調節信号を送達
し、
且つ、
1つ又は複数の舌骨下筋を支配する頸神経ワナを含む標的部位に第2電気神経調節信号を送達する
ように、
プログラミングされることを特徴とする
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記舌咽神経の遠心性繊維を含む標的部位に第1電気神経調節信号を送達することは、咽頭神経叢に第1電気神経調節信号を送達することを含む、ことを特徴とする請求項4に記載の
システム。
【請求項6】
前記第1電気神経調節信号及び第2電気神経調節信号の送達は、所定の期間又は一連の所定の期間で行われる、ことを特徴とする請求項4に記載の
システム。
【請求項7】
前記第1電気神経調節信号及び第2電気神経調節信号の送達は、ほぼ同じ期間で行われる、ことを特徴とする請求項4に記載の
システム。
【請求項8】
第2電気神経調節信号を頸神経ワナと電気的に通信している標的部位に送達することは、胸骨甲状筋を支配する標的部位に前記第2電気神経調節信号を送達することを含む、ことを特徴とする請求項4に記載の
システム。
【請求項9】
前記第2電気神経調節信号
の送達は、前記頸神経ワナの上根の分岐点の近位又は前記分岐点で送達される
ことを含む、ことを特徴とする請求項4に記載の
システム。
【請求項10】
前記第2電気神経調節信号
の送達は、前記頸神経ワナの下根の近位で送達される
ことを含む、ことを特徴とする請求項4に記載の
システム。
【請求項11】
前記頸神経ワナを含む標的部位に前記第2電気神経調節信号を送達することは、前記肩甲舌骨筋を支配する標的部位に前記第2電気神経調節信号を送達することを含む、ことを特徴とする請求項4に記載の
システム。
【請求項12】
前記コントローラは、
舌下神経(HGN)を含む標的部位に第3電気神経調節信号を送達する
ようにプログラミングされる、ことを特徴とする請求項4に記載の
システム。
【請求項13】
前記舌下神経を含む標的部位に前記第3電気神経調節信号を送達することは、少なくともオトガイ舌筋を支配する舌下神経を含む標的部位に前記第3電気神経調節信号を送達することを含む、ことを特徴とする請求項12に記載の
システム。
【請求項14】
前記舌下神経を含む前記標的部位は、前記舌下神経の分岐点及び前記頸神経ワナの上根から遠く離れるか、又は前記舌下神経の分岐点及び前記頸神経ワナの上根にある、ことを特徴とする請求項12に記載の
システム。
【請求項15】
前記舌下神経を含む前記標的部位は、舌牽引筋を支配する舌下神経の分岐点から遠く離れる、ことを特徴とする請求項12に記載の
システム。
【請求項16】
前記コントローラは、
口蓋舌筋、口蓋咽頭筋、前記口蓋舌筋を支配する神経繊維、又は前記口蓋咽頭筋を支配する神経繊維に第4電気神経調節信号を送達する
ようにプログラミングされる、ことを特徴とする請求項4に記載の
システム。
【請求項17】
前記睡眠呼吸障害は、いびき、閉塞性睡眠時無呼吸又はそれらの組み合わせである、ことを特徴とする請求項4に記載の
システム。
【請求項18】
患者の気道の神経筋状態に関して検出又は感知された感覚又は入力信号と無関係に、1つ又は複数の咽頭収縮筋又は茎突咽頭筋を支配する舌咽神経の遠心性繊維を含む標的部位に電気神経調節信号を送達することで患者の睡眠呼吸障害を改善するための電極の用途。
【国際調査報告】