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特表2022-5490913Dプリンター用プロピレン系のフィラメント
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  • 特表-3Dプリンター用プロピレン系のフィラメント 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-24
(54)【発明の名称】3Dプリンター用プロピレン系のフィラメント
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/10 20060101AFI20221116BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20221116BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20221116BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20221116BHJP
   D01F 6/06 20060101ALI20221116BHJP
   B29C 64/118 20170101ALI20221116BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20221116BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20221116BHJP
【FI】
C08L23/10
C08L23/16
C08K3/013
C08L23/26
D01F6/06 A
B29C64/118
B33Y70/00
B33Y10/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516432
(86)(22)【出願日】2020-09-28
(85)【翻訳文提出日】2022-03-14
(86)【国際出願番号】 EP2020077033
(87)【国際公開番号】W WO2021063855
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】19200725.0
(32)【優先日】2019-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500289758
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ランゲンフェルダー、ディーター
(72)【発明者】
【氏名】ローマン、ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】シュミッツ、カーステン
(72)【発明者】
【氏名】シルマイスター、カール ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】ケスラー、ヤニック
(72)【発明者】
【氏名】リヒト、エリック ハンス
(72)【発明者】
【氏名】カールセン、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】アルシュタット、フォルカー
【テーマコード(参考)】
4F213
4J002
4L035
【Fターム(参考)】
4F213AA11
4F213AB11
4F213AB25
4F213AC02
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL23
4F213WL24
4F213WL27
4J002BB12X
4J002BB14W
4J002BB15X
4J002BB213
4J002DA016
4J002DE266
4J002DJ006
4J002DJ046
4J002DJ056
4J002DL006
4J002FA046
4J002FD016
4J002GK00
4L035AA05
4L035BB31
4L035FF01
4L035HH10
4L035LA02
(57)【要約】
15重量%から50重量%までの範囲のキシレン可溶分、0.5から100G/10分までの範囲のメルトフローレートMFR L、1.5から6.0DL/Gまでの範囲の25℃のキシレンに可溶性の画分の固有粘度、および10重量%から50重量%までの範囲のエチレン含有量を有する異相ポリプロピレン組成物を含む、消耗フィラメント、ならびに該消耗フィラメントを押出系付加製造システムにおいて使用する方法。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出系付加製造システムのためのフィラメントの使用であって、前記フィラメントは、65重量%以下のプロピレンホモポリマーまたはプロピレンエチレンコポリマーマトリックス相a1)、および35重量%以下のプロピレンエチレンコポリマーエラストマー相a2)(合計a1)+a2)は100である)を有する異相ポリプロピレン組成物A)を含み、前記異相ポリプロピレン組成物A)が、15重量%から50重量%までの範囲のキシレン可溶分、0.5から100g/10分までの範囲のメルトフローレートMFR L(条件L、すなわち230℃および2.16kg荷重での、ISO 1133)、1.5から6.0dl/gまでの範囲の25℃のキシレンに可溶性の画分の固有粘度、および10重量%から50重量%までの範囲のエチレン含有量を有する、フィラメントの使用。
【請求項2】
押出系付加製造システムにおける消耗フィラメントとしての、請求項1に記載のフィラメントの使用。
【請求項3】
異相ポリプロピレン組成物A)が、20重量%から40重量%までの、好ましくは22重量%から35重量%までの範囲のキシレン可溶分を有する、請求項1または2に記載のフィラメントの使用。
【請求項4】
異相ポリプロピレン組成物A)が、2.0から50g/10分までの、好ましくは5.0から20g/10分までの範囲のメルトフローレートMFR L(ISO 1133、条件L、すなわち、230℃および2.16kg荷重)を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のフィラメントの使用。
【請求項5】
異相ポリプロピレン組成物A)が、1.8から4.0dl/gまでの範囲、好ましくは2.0から2.8dl/gまでの、より好ましくは2.0から2.5dl/g未満の範囲である、25℃のキシレンに可溶性の画分の固有粘度を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のフィラメントの使用。
【請求項6】
異相ポリプロピレン組成物A)が、15重量%から40重量%までの、好ましくは20重量%から30重量%までの範囲のエチレン含有量を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のフィラメントの使用。
【請求項7】
フィラメントが、
A)60重量%から95重量%までの、好ましくは65重量%から92重量%までの、より好ましくは70重量%から90重量%までの異相ポリプロピレン組成物であって、
a1)0.1重量%から4.5重量%までの範囲のエチレン誘導単位の含有量、および10重量%未満の25℃で測定されたキシレン可溶分を有する、30重量%から65重量%までのプロピレンホモポリマーまたはプロピレン/エチレンコポリマー、
a2)35重量%から85重量%までの、より好ましくは50重量%から80重量%までの範囲のエチレン誘導単位の含有量を有する、35重量%から70重量%までのプロピレンエチレンコポリマー(合計a1+a2は100である)
を含み、15重量%から50重量%までの範囲のキシレン可溶分、0.5から100g/10分までの範囲のメルトフローレートMFR L(ISO 1133、条件L、すなわち230℃および2.16kg荷重)、1.5から6.0dl/gまでの範囲である25℃のキシレンに可溶性の画分の固有粘度、および10重量%から50重量%までの範囲のエチレン含有量を有する異相ポリプロピレン組成物A);ならびに
B)5.0重量%から40.0重量%までの、好ましくは8.0重量%から35重量%までの、より好ましくは10重量%から30重量%までのフィラーを含む(合計A+Bは100である)充填ポリオレフィン組成物を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のフィラメントの使用。
【請求項8】
フィラーが、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、珪灰石、ガラス繊維、ガラス球、および炭素由来等級品(carbon derived grades)からなるリストの中から選択される、請求項7に記載のフィラメントの使用。
【請求項9】
フィラーが、ガラス繊維である、請求項8に記載のフィラメントの使用。
【請求項10】
ポリオレフィン組成物が、無水マレイン酸をグラフトしたプロピレンポリマーをさらに含む、請求項9に記載のフィラメントの使用。
【請求項11】
ポリオレフィン組成物が、2.0から30.0g/10分までの、好ましくは7.0g/10から15.0g/10分までの範囲のMFR L(条件L、すなわち230℃および10. 2.16kg荷重での、ISO 1133に準じたメルトフローレート)を有する、請求項7~10のいずれか一項に記載のフィラメントの使用。
【請求項12】
3D印刷物品の製造のための、請求項1~10のいずれか一項に記載のフィラメントの使用。
【請求項13】
3Dプリンターによる成形品を作製する方法であって、
(i) 65重量%以下のプロピレンホモポリマーまたはプロピレンエチレンコポリマーマトリックス相a1)、および35重量%以下のプロピレンエチレンコポリマーエラストマー相a2)(合計a1)+a2)は100である)を有する異相ポリプロピレン組成物A)を含み、前記異相ポリプロピレン組成物A)が、15重量%から50重量%までの範囲のキシレン可溶分、0.5から100g/10分までの範囲のメルトフローレートMFR L(条件L、すなわち230℃および2.16kg荷重での、ISO 1133に準じたメルトフローレート)、1.5から6.0dl/gまでの範囲の25℃のキシレンに可溶性の画分の固有粘度、および10重量%から50重量%までの範囲のエチレン含有量を有する、フィラメントを提供することと、
(ii)該フィラメントから、3Dプリンターによる成形品を作製することを含む方法。
【請求項14】
押出系付加製造システムによって物品を作製する方法であって、請求項1~6に記載の異相ポリプロピレン組成物A)または請求項7~11の充填ポリオレフィン組成物の、堆積したストランド、液滴、もしくはビーズを溶融結合することを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出ベースの3Dプリンターに使用される異相プロピレンエチレンコポリマーを含むフィラメントに関する。
【背景技術】
【0002】
押出ベースの3Dプリンターは、流動性造形材料を押出することによって、3Dモデルのデジタル表現から層ごとに3Dモデルを構築するのに使用されている。造形材料のフィラメントは、押出ヘッドによって支持される押出先端部を通って押出され、x-y平面内の基材上に一連のロード(road)として堆積される。押出された造形材料は、以前に堆積された造形材料に融着され、温度が下がると固化される。基材に対する押出ヘッドの位置は、(x-y平面に垂直である)z-軸に沿って増大し、次いで、プロセスは、デジタル表現に類似の3Dモデルを形成するために繰り返される。基材に対する押出ヘッドの移動は、3Dモデルを表す構築データ(build data)に従ってコンピューター制御下で実行される。構築データは、3Dモデルのデジタル表現を複数個の水平断層に最初にスライスすることによって得られる。次いで、各断層について、ホストコンピューターは、3Dモデルを形成するために、造形材料のロードを堆積するための構築経路を生成する。
【0003】
印刷プロセスにおいて、フィラメントは、明らかに重要な役割を果たし、フィラメントの材料を変化させると完成した印刷物の最終的な機械的及び美的特性が変化する。通常当業界では、ポリ乳酸(PLA)またはアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)ポリマーまたはポリアミドのフィラメントが使用される。
【0004】
反りは、3Dプリンティング中に材料が収縮することによって生じ、これは、プリンターによる成形物の角が、造形台から持ち上がり剥離する原因となる。プラスチックをプリンターで成形する場合、プラスチックは、はじめに若干膨張するが、冷めるにつれて収縮する。これによってプリンターによる成形物が造形台からおり上がり、変形した、3Dプリンターによって成形された物体が得られる。
【0005】
プロピレン系ポリマーは、フィラメントの作製に好適なポリマーとして提案されているが、出願人が行った試験からは、市場で入手できるプロピレン系フィラメントは、特に、反りが生じるため、プリント試験の結果は不十分なものである。
【0006】
CN103992560Aは、3Dプリンティングのための異相プロピレンエチレンコポリマーの使用を開示している。該コポリマーは、プロピレンホモポリマーマトリックスと架橋エチレン-プロピレン-ジオレフィンコポリマーゴムとから構成されている。フィラメント形態の該ポリマーについては、明確な言及はない。
【0007】
EP3067389A1は、エチレン系オレフィンブロックコポリマーを含有するポリマーマトリックスを含む、3Dプリンター用フィラメントを、MFI測定条件からの明確な結果と共に開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、3Dプリンターにおいてフィラメントとして使用され得るプロピレン系材料が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、押出系付加製造システムにおける使用のためのフィラメントであって、65重量%以下のプロピレンホモポリマーまたはプロピレンエチレンコポリマーマトリックス相a1)、および35重量%以下のプロピレンエチレンコポリマーエラストマー相a2)(合計a1)+a2)は100である)を有する異相ポリプロピレン組成物A)を含み、前記異相ポリプロピレン組成物A)が、15重量%から50重量%までの範囲のキシレン可溶分、0.5から100g/10分までの範囲のメルトフローレートMFR L(条件L、すなわち230℃および2.16kg荷重での、ISO 1133に準じたメルトフローレート)、1.5から6.0dl/gまでの範囲の25℃のキシレンに可溶性の画分の固有粘度、および10重量%から50重量%までの範囲のエチレン含有量を有する、フィラメントを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】反り挙動を評価するためにプリンターで成形したフレームの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、押出系付加製造システムにおける使用のためのフィラメントであって、65重量%以下のプロピレンホモポリマーまたはプロピレンエチレンコポリマーマトリックス相a1)、および35重量%以下のプロピレンエチレンコポリマーエラストマー相a2)(合計a1)+a2)は100である)を有する異相ポリプロピレン組成物A)を含み、前記異相ポリプロピレン組成物A)が、15重量%から50重量%までの範囲のキシレン可溶分、0.5から100g/10分までの範囲のメルトフローレートMFR L(条件L、すなわち230℃および2.16kg荷重での、ISO 1133に準じたメルトフローレート)、1.5から6.0dl/gまでの範囲の25℃のキシレンに可溶性の画分の固有粘度、および10重量%から50重量%までの範囲のエチレン含有量を有する、フィラメントに関する。
【0012】
本開示はまた、押出系付加製造システムのためのフィラメントの生産プロセスを提供し、該フィラメントは、65重量%以下のプロピレンホモポリマーまたはプロピレンエチレンコポリマーマトリックス相a1)、および35重量%以下のプロピレンエチレンコポリマーエラストマー相a2)(合計a1)+a2)は100である)を有する異相ポリプロピレン組成物A)を含み、前記異相ポリプロピレン組成物A)が、15重量%から50重量%までの範囲のキシレン可溶分、0.5から100g/10分までの範囲のメルトフローレートMFR L(条件L、すなわち230℃および2.16kg荷重での、ISO 1133に準じたメルトフローレート)、1.5から6.0dl/gまでの範囲の25℃のキシレンに可溶性の画分の固有粘度、および10重量%から50重量%までの範囲のエチレン含有量を有する。
【0013】
一実施形態では、本開示のフィラメントは、押出系付加製造システムにおいて消耗フィラメントとして使用される。
【0014】
異相ポリプロピレン組成物A)は、15重量%から50重量%までの範囲の、好ましくは20重量%から40重量%までの、より好ましくは25重量%から35重量%までの範囲のキシレン可溶分を有する。
【0015】
異相ポリプロピレン組成物A)は、0.5から100g/10分までの範囲の、好ましくは2.0から50g/10分までの、より好ましくは5.0から20g/10分までの範囲のメルトフローレートMFR L(条件L、すなわち230℃および2.16kg荷重での、ISO 1133に準じたメルトフローレート)を有する。
【0016】
異相ポリプロピレン組成物A)は、好ましくは1.5から6.0dl/gまでの範囲の、好ましくは1.8から4.0dl/gまでの、より好ましくは2.0から2.8dl/gまでの、さらにより好ましくは2.0から2.5dl/g未満の範囲の25℃のキシレンに可溶性の画分の固有粘度を有する。
【0017】
異相ポリプロピレン組成物A)は、10重量%から50重量%までの範囲の;好ましくは15重量%から40重量%までの;より好ましくは20重量%から30重量%までの範囲のエチレン含有量を有する。
【0018】
本開示において使用される「異相ポリプロピレン組成物」という表現は、弾性プロピレンエチレンコポリマーゴムが、マトリックス中に、すなわちプロピレン単独またはコポリマー中に、(細かく)分散されていることを指す。言い換えると、弾性プロピレンエチレンコポリマーゴムは、マトリックス中の包含物である。このように、マトリックスは、マトリックスの一部分ではない、(細かく)分散された包含物を含有し、前記包含物は、弾性プロピレンエチレンコポリマーを含有する。本開示による「包含物」という用語は、好ましくは、マトリックスと包含物とが、異相系内の異なる相を形成しており、前記包含物が、例えば、電子顕微鏡法または走査力顕微鏡法のような高分解能顕微鏡法によって認識することができることを意味するものとする。
【0019】
コポリマーという用語は、ポリマーが2つのモノマー、プロピレン及びエチレンのみによって形成されることを意味する。
【0020】
キシレン可溶性またはキシレン可溶性画分という用語は、実施例の節において報告した手順に従って測定された、25℃のキシレンに可溶性の画分であることが意図される。
【0021】
異相プロピレンエチレンコポリマーのマトリックスa1)は、最大10重量%、好ましくは最大5重量%のエチレン含量を有するプロピレンホモポリマーまたはプロピレンコポリマーであってよく、好ましくは、マトリックスは、プロピレンホモポリマーである。
【0022】
マトリックスa1)は、好ましくは90重量%より高い、より好ましくは95重量%より高い、さらにより好ましくは97重量%より高い、25℃のキシレンに不溶性の画分を有する。
【0023】
エラストマー相a2)は、好ましくは、20重量%から90重量%までの範囲の;より好ましくは35重量%から85重量%までの、さらにより好ましくは50重量%から80重量%までの範囲のエチレン含有量を有するプロピレンエチレンコポリマーである。
【0024】
好ましい一実施形態では、該フィラメントは、以下を含む充填ポリオレフィン組成物を含む:
A) A)60重量%から95重量%までの;好ましくは65重量%から92重量%までの、より好ましくは70重量%から90重量%までの異相ポリプロピレン組成物であって、
【0025】
a1)0.1重量%から4.5重量%までの範囲のエチレン誘導単位の含有量、および10重量%未満の25℃で測定されたキシレン可溶分を有する、30重量%から65重量%までのプロピレンホモポリマーまたはプロピレン/エチレンコポリマー、
【0026】
a2)20重量%から90重量%までの範囲の、より好ましくは35重量%から85重量%までの、さらにより好ましくは50重量%から80重量%までの範囲のエチレン誘導単位の含有量を有する、35重量%から70重量%までのプロピレンエチレンコポリマー
【0027】
(合計a1+a2は100である)を含み、
【0028】
15重量%から50重量%までの範囲の;好ましくは20重量%から40重量%までの、より好ましくは22重量%から35重量%までの範囲のキシレン可溶分、0.5から100g/10分までの範囲の;好ましくは2.0から50g/10分までの;より好ましくは5.0から20g/10分までのメルトフローレートMFR L(条件L、すなわち230℃および2.16kg荷重での、ISO 1133に準じたメルトフローレート)、1.5から6.0dl/gまでの範囲の、好ましくは1.8から4.0dl/gまでの、より好ましくは2.0から2.8dl/gまでの、さらにより好ましくは2.0から2.5dl/g未満の範囲の25℃のキシレンに可溶性の画分の固有粘度、および10重量%から50重量%までの範囲の;好ましくは15重量%から40重量%までの;より好ましくは20重量%から30重量%までの範囲のエチレン含有量を有する異相ポリプロピレン組成物A);ならびに
【0029】
B)5.0重量%から40.0重量%までの、好ましくは8.0重量%から35重量%までの、より好ましくは10重量%から30重量%までのフィラー
【0030】
(合計A+Bは100である)。
【0031】
好ましくは、得られる充填ポリオレフィン組成物は、2.0から30g/10分までの、より好ましくは7.0g/10分から15.0g/10分までの範囲のメルトフローレート(230℃/5kg、ISO 1133)を有する。
【0032】
好ましくは、フィラーは、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、珪灰石、ガラス繊維、ガラス球、および炭素由来等級品(carbon derived grades)からなるリストの中から選択され、より好ましくは、フィラーはガラス繊維である。
【0033】
ガラス繊維は、ガラス短繊維またはチョップトストランドとしても知られる、チョップトガラス繊維である。
【0034】
前記組成物に加えられる前のガラス繊維は、好ましくは1から5mmまでの、より好ましくは3から4.5mmまでの長さを有する。
【0035】
前記組成物に加えられる前のガラス繊維は、好ましくは8から20μmまでの、より好ましくは10から14μmまでの直径を有する。
【0036】
好ましくは、フィラーがガラス繊維である場合、フィラメントは、相溶化剤も含む。
【0037】
相溶化剤は、無機フィラーとポリマーとの間の界面特性を改善することができる成分である。典型的には、相溶化剤は、それら2つの間の界面張力を低減させるが、同時に、フィラー粒子の凝集傾向を低減させ、よって、ポリマーマトリックス内でのフィラー粒子の分散を改善する。
【0038】
相溶化剤として使用できる成分の1つのタイプは、ポリオレフィンの極性を高める反応性極性基を有する低分子量化合物であり、フィラーの官能化されたコーティング剤またはサイズ剤と反応してポリマーとの相溶性を増強することが意図される。フィラーの好適な官能化は、例えば、アミノシラン、エポキシシラン、アミドシラン、またはアシルシランなどのシランであり、より好ましくはアミノシランである。
【0039】
しかしながら、相溶化剤は、好適な極性部分および、場合により反応性極性基を有する低分子量化合物で改変された(官能化された)ポリマーを含むことが好ましい。
【0040】
構造に関して、該改変されたポリマーは、好ましくは、グラフトまたはブロックコポリマーから選択される。本文脈において、特に、酸無水物、カルボン酸、カルボン酸誘導体、第一級および第二級アミン、ヒドロキシル化合物、オキサゾリン、ならびにエポキシドから、さらにイオン化合物から選択される極性化合物由来の基を含有する改変されたポリマーが好ましい。
【0041】
前記極性化合物の具体例としては、不飽和環状酸無水物およびそれらの脂肪族ジエステル、ならびに二塩基酸誘導体がある。特に、無水マレイン酸、ならびにC~C10直鎖状および分枝状ジアルキルマレイン酸、C~C10直鎖状および分枝状ジアルキルフマレート、イタコン酸無水物、C~C10直鎖状および分枝状イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ならびにそれらの混合物から選択される化合物を使用することができる。
【0042】
相溶化剤として無水マレイン酸をグラフトしたプロピレンポリマーを使用することが、特に好ましい。
【0043】
好ましくは、カップリング剤は、無水マレイン酸グラフトポリプロピレンからなるリストの中から選択され、より好ましくは、カップリング剤は、無水マレイン酸グラフトポリプロピレンである。
【0044】
一実施形態では、フィラメントは、2.0重量%以下の、好ましくは0.1~1.5重量%の相溶化剤、好ましくは無水マレイン酸をグラフトしたプロピレンポリマーの相溶化剤を含む、ポリオレフィン組成物を含む。この相溶化剤の量は、ポリオレフィン組成物の総重量に対するものである。
【0045】
アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂及びポリカーボネート樹脂などの非晶質ポリマー性材料が使用される場合、それらは、固体状態でポリマー鎖の規則的な配列をほとんどまたは全く有さない。これにより、得られた3Dモデルまたは支持構造におけるカーリング及び塑性変形の影響が減少される。
【0046】
結晶性または半結晶性ポリマーは、優れた機械的性質を示すが、3Dモデルを構築するために使用するとき結晶性によって、押出されたフィラメントが堆積されて3Dモデル層の一部を形成するときと、ロードが冷却されるときとの両方に好ましくない反り効果を示す。反り効果は、押出ベースの積層造形プロセスにおいて、結晶性または半結晶性ポリマーを3D物体の構築に使用できないようにする。
【0047】
本出願人は、その反り値によって示されたように、本開示の異相ポリプロピレン組成物A)が、場合によりフィラーB)と組み合わせて、半結晶性ポリマーを含む3Dモデルを造形するために有利に使用できることを見出した。
【0048】
本開示の異相ポリプロピレン組成物A)は、市販されている。そのようなコポリマーの一例は、LyondellBasellにより販売されているHifax CA 7442Aでありうる。
【0049】
本発明のフィラメント物体は、酸化防止剤、スリップ剤、プロセス安定剤、制酸剤及び核剤のような当業界で通常使用される添加剤をさらに含むことができる。
【0050】
さらに、本明細書に提供されるとおりのフィラメントは、木材粉末、金属粉末、大理石粉末及び特定の美的外観または改善された力学を有する3D物体を得るために通常使用される同様の材料を含むことができる。
【0051】
本開示の対象は、押出系付加製造システムによって物品を作製する方法であって、本開示のフィラメントから得られた流動性の造形用材料を押し出すことを含む方法である。
【0052】
一実施形態では、該方法は、3Dプリンターによる成形品を作製する方法であって、
【0053】
(i) 65重量%以下のプロピレンホモポリマーまたはプロピレンエチレンコポリマーマトリックス相a1)、および35重量%以下のプロピレンエチレンコポリマーエラストマー相a2)(合計a1)+a2)は100である)を有する異相ポリプロピレン組成物A)を含み、前記異相ポリプロピレン組成物A)が、15重量%から50重量%までの範囲のキシレン可溶分、0.5から100g/10分までの範囲のメルトフローレートMFR L(条件L、すなわち230℃および2.16kg荷重での、ISO 1133に準じたメルトフローレート)、1.5から6.0dl/gまでの範囲の25℃のキシレンに可溶性の画分の固有粘度、および10重量%から50重量%までの範囲のエチレン含有量を有する、フィラメントを提供することと、
【0054】
(ii)該フィラメントから、3Dプリンターによる成形品を作製すること、好ましくは該フィラメントから得られた流動性の造形用材料を押し出すことを含む方法である。
【0055】
3Dプリンターによる成形品の作製では、本開示のフィラメントが消耗される。
【0056】
本開示のさらなる対象は、押出系付加製造システムによって物品を作製する方法であって、前記異相ポリプロピレン組成物A)または前記充填ポリオレフィン組成物の、堆積したストランド、液滴、もしくはビーズを溶融結合することを含む方法である。
【0057】
以下の実施例は、例証のために示されるものであり、添付の特許請求の範囲において提示された主題を限定するものではない。
実施例
【0058】
プロピレンポリマー材料のデータは、以下の方法に従って得られた。
【0059】
25℃でのキシレン可溶性画分
【0060】
キシレン可溶性画分は、次の偏差(ISO 16152で規定されているブラケット間)を除いて、ISO 16152、 2005に従って測定した。
【0061】
溶液体積は、250ml(200ml)である。
【0062】
25℃で30分間沈澱段階の間、溶液を最終10分間マグネチックスターラー(30分間、撹拌を一切行わずに)によってアジテーション下に維持させる。
【0063】
最終乾燥ステップは、70℃(100℃)において真空下で行われる。
【0064】
前記キシレン-可溶性画分の含量は、元の2.5グラムの百分率として表示され、次いで、差(100に相補的)によって、キシレン不溶分%で表示される。
【0065】
エチレン(C2)含量
【0066】
プロピレン/エチレンコポリマーの13C NMR
【0067】
13C NMRスペクトルは、120℃でフーリエ変換モードにおいて160.91MHzで動作する、クライオプローブが備えられたブルカー(Bruker)AV-600分光器上で取得した。
【0068】
ββ炭素(「Monomer Sequence Distribution in Ethylene-Propylene Rubber Measured by 13C NMR.3.Use of Reaction Probability Mode」C.J.Carman,R.A.Harrington and C.E.Wilkes,Macromolecules,1977,10,536による命名法)のピークを29.9ppmの内部基準として使用した。試料を1,1,2,2-テトラクロロエタン-d2に120℃において8%(wt./v)濃度で溶解させた。各々のスペクトルを90°パルス、パルス間15秒の遅延及び1H-13Cカップリングを除去するためのCPDで取得した。512個の過渡信号(transient)を9000Hzのスペクトルウィンドウを使用して32Kデータ点に保存した。
【0069】
スペクトルの割り当て、トライアド分布及び組成物の評価を次の方程式を使用してカクゴ(Kakugo)(「Carbon-13 NMR determination of monomer sequence distribution in ethylene-propylene copolymers prepared with δ-titanium trichloride- diethylaluminum chloride」M.Kakugo,Y.Naito,K.Mizunuma and T.Miyatake,Macromolecules,1982,15,1150)によって行った:
【数1】
エチレン含量のモルパーセントは、下記方程式を使用して評価した:
【数2】
エチレン含量の重量百分率は以下の式を利用して評価された:
【数3】
前記式において、P%モルは、プロピレン含量のモル比であり、MW及びMWは、それぞれエチレン及びプロピレンの分子量である。
反応性比の積rは、次のようにカーマン(C.J.Carman,R.A.Harrington and C.E.Wilkes,Macromolecules,1977;10,536)に応じて計算した:
【数4】
プロピレンシーケンスの立体規則性(tacticity)は、PPP mmTββの比(28.90~29.65ppm)及び全体Tββ(29.80~28.37ppm)からmm含量で計算された
【0070】
メルトフローレート(MFR)およびメルトボリュームレート(MVR)
【0071】
ポリマーおよび組成物の、メルトフローレートMFRおよびメルトボリュームフロ-レートは、ISO 1133-1 2011(230℃、2.16Kg)に準じて決定した。
【0072】
固有粘度
固有粘度は、135℃のテトラヒドロナフタリン中で決定した。
【0073】
機械的性質:引張特性およびシャルピー衝撃強度
【0074】
引張特性は、手順DIN EN ISO 527:2012に従って、引張試験片DIN EN ISO 527-1タイプ1Aを用いて測定した。
【0075】
シャルピー衝撃強度は、試験方法ISO 19069-1(2015)に準じて調製した射出成形T型部材からの80×10×4mmの長方形試験片に対して、手順DIN EN ISO 179-1に従って、23℃でノッチ付き試験片DIN EN ISO 179-1eAを用いて測定した。
【0076】
収縮
【0077】
収縮値は、内部法(internal method)に準じて測定した。この方法は、ISO 294-4に基づくが、試験片寸法が改善されており、また、すべての供試体に対して同じ位置での一定の接触圧力を保証するために、コンピューターに直接接続したデジタルゲージを使用している。
【0078】
同じ寸法の測定枠および内蔵したデジタルゲージを使用した、195mm×100mM×2.5mmの寸法および(結晶粒組織のない)滑らかな表面を有する平板での加工収縮および全収縮の決定。
【0079】
加工収縮は、室温で48時間保管した後、各材料について10個の平板に対して、流れ方向(MD、machine direction)およびその垂直方向(TD、transverse direction)の両方で決定し、平均を算出した。
【0080】
全収縮は、各材料平板について10個の平板に対して、同じ平板を80℃で24時間保管した後、流れ方向(MD)およびその垂直方向(TD)の両方で決定した。全収縮は、平板が室温に戻り次第、測定した。
【0081】
プリンターで成形した立方体での反り測定
【0082】
反りは、3Dプリンターで成形した辺長20mmを有する立方体で測定した。2段階プロセスによって検証を行った。第1の工程において、これらの立方体の辺を(Leica DM6000光学顕微鏡、5×対物レンズを使用して)撮像した。この画像には、立方体の最初のプリント成形層が含まれる。画像の視線方向は、右手X-Y-Z座標系のX-Z平面に一致した(xは、2つの横軸のうちの1つである)。第2の工程において、この画像を、ソフトウエアImageJを使用して数値化した。このソフトウエアの機能は、ソフトウエア中に、光学顕微鏡画像のスケールをスケール基準として設定することが可能である。次いで、2画素間の距離を、実際の長さの規格でアウトプットすることが可能である。この手順を、次のように、立方体に適用した。記録した辺の最も低い点を通る接線をベースラインまたはプリントベッドラインとし、画像中に描き込んだ。続いて、立方体の辺のそれぞれの右側端部とベースラインの間との距離を、ソフトウエア機能によって測定して、ひずみ(mm)を決定した。これは、必ず少なくとも3個の立方体に対して行った。
【0083】
プリンターで成形したフレーム上での反り測定
【0084】
反りを、図1に記載の形状を有する、3Dプリンターで成形したフレーム上で測定した。
【0085】
反り値は、平面上にフレームを配置し、4つの角の位置の高さを、その本来の位置である平面に対して測定することによって確定した。各材料の組成物について、3つの供試体をプリンターによって成形し、測定した。
【0086】
実施例1-比較例
【0087】
下記のものをもって組成物を構築した:
● 98.4重量%の市販のポリプロピレンホモポリマー(PP homo 1、Moplen HF 501N、MFR 10.0 g/10分、LyondellBasell Industries)、
● 0.6重量%の市販のポリプロピレンホモポリマー(PP homo 2、Moplen HF 500H MFR 1.2g/10分、LyondellBasell Industries)、
● 1.0重量%の、0.30重量%のIrgafos(登録商標)168、0.40重量%のIrganox(登録商標)1010、BASF、0.20重量%のAcrawax C(登録商標)、Lonza、および0.10重量%の酸化亜鉛で構成された標準添加剤パッケージ。
【0088】
実施例2
【0089】
下記のものをもって組成物を構築した:
● 98.4重量%の市販のポリプロピレン異相コポリマー(PP heco 1、Hifax CA 7442A、LyondellBasell Industries、MFR 12.0g/10分、キシレン可溶分 30.0重量%、25℃のキシレンに可溶性の画分の固有粘度 2.30dl/g、エチレン含有量 27.5重量%、マトリックス 60%、ゴム相内エチレン 68重量%)、
● 0.6重量%の市販のポリプロピレンホモポリマー(PP homo 2、Moplen HF 500H MFR 1.2g/10分、LyondellBasell Industries)、
● 1.0重量%の、0.30重量%のIrgafos(登録商標)168、0.40重量%のIrganox(登録商標)1010、BASF、0.20重量%のAcrawax C(登録商標)、Lonza、および0.10重量%の酸化亜鉛で構成された標準添加剤パッケージ。
【0090】
実施例3-比較例
【0091】
下記のものをもって組成物を構築した:
● 77.4重量%の市販のポリプロピレホモポリマー(PP homo 1、Moplen HF 501N、MFR 10.0g/10分、LyondellBasell Industries)、
● 0.6重量%の市販のポリプロピレンホモポリマー(PP homo 2、Moplen HF 500H MFR 1.2g/10分、LyondellBasell Industries)、
● 20.0重量%のガラス短繊維、Thermoflow(登録商標)CS EC 13636、長さ4mm、直径13ミクロン、
● 1.0重量%の無水マレイン酸グラフトポリプロピレン(Exxcelor PO 1020 ExxonMobil Chemical)、
● 1.0重量%の、0.30重量%のIrgafos(登録商標)168、0.40重量%のIrganox(登録商標)1010、BASF、0.20重量%のAcrawax C(登録商標)、Lonza、および0.10重量%の酸化亜鉛で構成された標準添加剤パッケージ。
【0092】
実施例4-比較例
【0093】
下記のものをもって組成物を構築した:
● 78.4重量%の市販のポリプロピレンホモポリマー(PP homo 1、Moplen HF 501N、MFR 10.0g/10分、LyondellBasell Industries)、
● 0.6重量%の市販のポリプロピレンホモポリマー(PP homo 2、Moplen HF 500H MFR 1.2g/10分、LyondellBasell Industries)、
● 20.0重量%のタルク20 MOOS、Imerys(50ミクロンのd50粒径分布を有する)、
● 1.0重量%の、0.30重量%のIrgafos(登録商標)168、0.40重量%のIrganox(登録商標)1010、BASF、0.20重量%のAcrawax C(登録商標)、Lonza、および0.10重量%の酸化亜鉛で構成された標準添加剤パッケージ。
【0094】
実施例5
【0095】
下記のものをもって組成物を構築した:
● 77.4重量%の市販のポリプロピレン異相コポリマー(PP heco 1、Hifax CA 7442A、LyondellBasell Industries、MFR 12.0g/10分)、
● 0.6重量%の市販のポリプロピレンホモポリマー(PP homo 2、Moplen HF 500H MFR 1.2g/10分、LyondellBasell Industries)、
● 20.0重量%のガラス短繊維、Thermoflow(登録商標)CS EC 13636、長さ4mm、直径13ミクロン、
● 1.0重量%の無水マレイン酸グラフトポリプロピレン(Exxcelor PO 1020 ExxonMobil Chemical)、
● 1.0重量%の、0.30重量%のIrgafos(登録商標)168、0.40重量%のIrganox(登録商標)1010、BASF、0.20重量%のAcrawax C(登録商標)、Lonza、および0.10重量%の酸化亜鉛で構成された標準添加剤パッケージ。
【0096】
実施例6
【0097】
下記のものをもって組成物を構築した:
● 78.4重量%の市販のポリプロピレン異相コポリマー(PP heco 1、Hifax CA 7442A、LyondellBasell Industries)、
● 0.6重量%の市販のポリプロピレンホモポリマー(PP homo 2、Moplen HF 500H MFR 1.2g/10分、LyondellBasell Industries)、
● 20.0重量%のタルク20 MOOS、Imerys(50ミクロンのd50粒径分布を有する)、
● 1.0重量%の、0.30重量%のIrgafos(登録商標)168、0.40重量%のIrganox(登録商標)1010、BASF、0.20重量%のAcrawax C(登録商標)、Lonza、および0.10重量%の酸化亜鉛で構成された標準添加剤パッケージ。
【0098】
実施例7-比較例
実施例7は、市販の高結晶化度プロピレンコポリマー(PP copo 1、Moplen EP3307、LyondellBasell Industries、MFR 14.0g/10分、キシレン可溶分 26.0重量%、25℃のキシレンに可溶性の画分の固有粘度 3.1dl/g、エチレン含有量 15重量%、マトリックス 68.5重量%)である。
【0099】
実施例8
実施例8は、市販のポリプロピレン異相コポリマーコポリマー(PP heco 1、Hifax CA 7442A、LyondellBasell Industries)である。
【0100】
実施例1、2、7、および8の組成物は、二軸スクリュー押出機、Krupp Werner & Pfleiderer/1973、ZSK 53、スクリュー直径:2×53、36Dを用いて、200rpmのスクリュー回転速度および230℃の溶融温度で調製した。
【0101】
実施例3~6の組成物は、二軸スクリュー押出機、Leistritz/2013、ZSE 27MAXX、スクリュー直径:2×28.3、44Dを用いて、500rpmのスクリュー回転速度および230℃の溶融温度で調製した。
【0102】
材料特性決定
【0103】
実施例1~6の組成物の特性決定を、表1に報告する。
【表1】
【0104】
フィラメント作製
【0105】
Brabender二軸スクリュー押出機を使用した。ダイ方向は、下方への押出し方向に対して90°とした。
ペレット投入:ホッパー
ダイ直径:3mm。
フィラメント直径:2.85mm。
ストランド冷却:水浴。
引き上げ速度:30~66mm/s。
【0106】
反り測定
【0107】
反りは、2つの異なる方法で評価した。第1の方法を、プリンターで成形した立方体に対し、第2の方法を、プリンターで成形したフレームに対するものとした。
【0108】
立方体のプリンティングプロセス
【0109】
3Dプリンターは、DeltaTowerDual XLプリンターとした。印刷条件は、次の通りである。
最大造形容積:500×500×900mm
最大ノズル温度:295℃
最大ベッド温度(内蔵):75℃
最大ベッド温度(外部):150℃
プリントヘッド:交換可能な0.4mm(黄銅)および0.8mm(硬化鋼)ダイを付けた2個のエクストルーダー
スライサー:Simplify3D
ダイ:0.8mm青銅ダイ
ダイ温度:165~215℃
ベッド温度:80~140℃
プリンティング速度:30~40mm/s
【0110】
表2に、目標寸法(理論的な立方体の辺)からの、成形立方体の辺の平均偏差(mm)を示す。
【表2】
【0111】
データは、ホモポリマーを本開示による異相ポリプロピレン組成物で置き換えることにより、プリンターで成形した立方体の反りが低減することを示している。
【0112】
この傾向は、無充填材料、ガラス繊維強化材料、タルク充填材料の供試体で見て確認できる。
【0113】
フレームのプリンティングプロセス
【0114】
図1に記載の形状を有するフレームを、プリンターで成形した。
【0115】
3Dプリンターは、Ultimaker S5とした。印刷条件は、次の通りである。
スライサー:Cura
ダイ:0.4mm青銅ダイ
ダイ温度:210℃
ベッド温度:90℃
プリンティング速度:25mm/s
【0116】
表3に、フレームの反り挙動を示す。
【表3】
【0117】
データは、本開示による異相ポリプロピレン組成物を使用することにより、フレームの反りが低減することを示している。

図1
【手続補正書】
【提出日】2022-03-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出系付加製造システムのためのフィラメントの使用であって、前記フィラメントは、65重量%以下のプロピレンホモポリマーまたはプロピレンエチレンコポリマーマトリックス相a1)、および35重量%以下のプロピレンエチレンコポリマーエラストマー相a2)(合計a1)+a2)は100である)を有する異相ポリプロピレン組成物A)を含み、前記異相ポリプロピレン組成物A)が、15重量%から50重量%までの範囲のキシレン可溶分、0.5から100g/10分までの範囲のメルトフローレートMFR L(条件L、すなわち230℃および2.16kg荷重での、ISO 1133)、1.5から6.0dl/gまでの範囲の25℃のキシレンに可溶性の画分の固有粘度、および10重量%から50重量%までの範囲のエチレン含有量を有する、フィラメントの使用。
【請求項2】
異相ポリプロピレン組成物A)が、20重量%から40重量%までの範囲のキシレン可溶分を有する、請求項1に記載のフィラメントの使用。
【請求項3】
異相ポリプロピレン組成物A)が、2.0から50g/10分までの範囲のメルトフローレートMFR L(ISO 1133、条件L、すなわち、230℃および2.16kg荷重)を有する、請求項1または2に記載のフィラメントの使用。
【請求項4】
異相ポリプロピレン組成物A)が、1.8から4.0dl/gまでの範囲である、25℃のキシレンに可溶性の画分の固有粘度を有する、請求項1に記載のフィラメントの使用。
【請求項5】
フィラメントが、
A)60重量%から95重量%までの異相ポリプロピレン組成物であって、
a1)0.1重量%から4.5重量%までの範囲のエチレン誘導単位の含有量、および10重量%未満の25℃で測定されたキシレン可溶分を有する、30重量%から65重量%までのプロピレンホモポリマーまたはプロピレン/エチレンコポリマー、
a2)35重量%から85重量%までの範囲のエチレン誘導単位の含有量を有する、35重量%から70重量%までのプロピレンエチレンコポリマー(合計a1+a2は100である)、
を含み、15重量%から50重量%までの範囲のキシレン可溶分、0.5から100g/10分までの範囲のメルトフローレートMFR L(ISO 1133、条件L、すなわち230℃および2.16kg荷重)、1.5から6.0dl/gまでの範囲である25℃のキシレンに可溶性の画分の固有粘度、および10重量%から50重量%までの範囲のエチレン含有量を有する異相ポリプロピレン組成物A);ならびに
B)タルク、マイカ、炭酸カルシウム、珪灰石、ガラス繊維、ガラス球、および炭素由来等級品(carbon derived grades)からなるリストの中から選択される、5.0重量%から40.0重量%までのフィラー、
を含む(合計A+Bは100である)充填ポリオレフィン組成物を含むを含む、請求項1に記載のフィラメントの使用。
【請求項6】
ポリオレフィン組成物が、無水マレイン酸をグラフトしたプロピレンポリマーをさらに含む、請求項5に記載のフィラメントの使用。
【請求項7】
ポリオレフィン組成物が、2.0から30.0g/10分までの範囲のMFR L(条件L、すなわち230℃および10. 2.16kg荷重での、ISO 1133に準じたメルトフローレート)を有する、請求項5または6に記載のフィラメントの使用。
【請求項8】
3Dプリンターによる成形品を作製する方法であって、
(i) 65重量%以下のプロピレンホモポリマーまたはプロピレンエチレンコポリマーマトリックス相a1)、および35重量%以下のプロピレンエチレンコポリマーエラストマー相a2)(合計a1)+a2)は100である)を有する異相ポリプロピレン組成物A)を含み、前記異相ポリプロピレン組成物A)が、15重量%から50重量%までの範囲のキシレン可溶分、0.5から100g/10分までの範囲のメルトフローレートMFR L(条件L、すなわち230℃および2.16kg荷重での、ISO 1133に準じたメルトフローレート)、1.5から6.0dl/gまでの範囲の25℃のキシレンに可溶性の画分の固有粘度、および10重量%から50重量%までの範囲のエチレン含有量を有する、フィラメントを提供することと、
(ii)該フィラメントから、3Dプリンターによる成形品を作製することを含む方法。
【請求項9】
押出系付加製造システムによって物品を作製する方法であって、請求項1~4に記載の異相ポリプロピレン組成物A)または請求項5~7の充填ポリオレフィン組成物の、堆積したストランド、液滴、もしくはビーズを溶融結合することを含む方法。

【国際調査報告】