(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-24
(54)【発明の名称】二酸化炭素源からのギ酸形成
(51)【国際特許分類】
C07C 51/00 20060101AFI20221116BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20221116BHJP
C07C 53/02 20060101ALI20221116BHJP
C07C 51/42 20060101ALI20221116BHJP
C07C 47/058 20060101ALI20221116BHJP
C07C 45/41 20060101ALI20221116BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20221116BHJP
【FI】
C07C51/00
B01D53/14 200
C07C53/02
C07C51/42
C07C47/058 A
C07C45/41
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516732
(86)(22)【出願日】2020-09-21
(85)【翻訳文提出日】2022-05-12
(86)【国際出願番号】 EP2020076336
(87)【国際公開番号】W WO2021053244
(87)【国際公開日】2021-03-25
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504346525
【氏名又は名称】ネーデルランツェ・オルガニザーティ・フォール・トゥーヘパストナトゥールウェテンシャッペレイク・オンダーズーク・テーエヌオー
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ゲーテル, アール ローレンス ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】フェーンストラ, マルティエ シーツケ
(72)【発明者】
【氏名】チャチサクーラ, スティリアーニ
【テーマコード(参考)】
4D020
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4D020AA03
4D020BA16
4D020BA30
4D020BB03
4D020BC01
4D020BC06
4D020CB25
4D020CC09
4D020CC10
4D020CC21
4D020CD04
4D020DA03
4D020DB03
4D020DB06
4D020DB07
4D020DB20
4H006AA02
4H006AC45
4H006AC46
4H006BE20
4H039CA65
(57)【要約】
本発明は、ギ酸を生成するための方法であって、(a)二酸化炭素源をアミンスクラバー内のアミン溶液と接触させて、重炭酸アンモニウム溶液を得る炭素捕捉ステップであり、炭素捕捉が、0~20℃の範囲の温度を有する冷却アミン溶液を使用する、炭素捕捉ステップと、(b)重炭酸アンモニウム溶液中での結晶化を誘導して、濃縮重炭酸アンモニウム溶液を得るステップと、(c)濃縮重炭酸アンモニウム溶液を水素化ステップに供してギ酸アンモニウムを得るステップと、(d)ギ酸アンモニウムを50~150℃の範囲の温度に加熱して、アミンを含有する気体生成物及びギ酸を含有する液体生成物ストリームを得るステップとを含む、方法に関する。本発明は、本発明による方法を実行するためのシステムにさらに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギ酸を生成するための方法であって、
(a)二酸化炭素源をアミンスクラバー内でアミン溶液と接触させて、重炭酸アンモニウム溶液を得る炭素捕捉ステップであり、前記炭素捕捉が、0~20℃の範囲の温度を有する冷却アミン溶液を使用する、炭素捕捉ステップと、
(b)前記重炭酸アンモニウム溶液中での結晶化を誘導して、濃縮重炭酸アンモニウム溶液を得るステップと、
(c)前記濃縮重炭酸アンモニウム溶液を水素化ステップに供して、ギ酸アンモニウムを得るステップと、
(d)前記ギ酸アンモニウムを50~150℃の範囲の温度に加熱して、前記アミンを含有する気体生成物及びギ酸を含有する液体生成物ストリームを得るステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記アミンが、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン又はトリメチルアミンであり、好ましくはアンモニアである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アミン溶液が、20~55重量%、好ましくは20~40重量%の前記アミンを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記アミン溶液が、前記アミンに加えて、5/95~95/5の範囲の水対有機溶媒の重量比の水及び水混和性有機溶媒からなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(b)の前記結晶化が、前記重炭酸アンモニウム溶液の温度を0~15℃の範囲、好ましくは3~5℃の範囲の温度に下げることによって誘導され、
好ましくは、スラリーが、50~100℃の範囲、より好ましくは70~90℃の範囲の温度に加熱されてから、ステップ(c)の水素化に供される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(c)で必要とされる水素ガスが、水の電気分解に由来する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(c)に由来する前記ギ酸アンモニウムが、ステップ(d)の加熱に供される前に、好ましくはフラッシュドラム内で、残留水素ガスを除去するステップ(e)に供され、
好ましくは、前記水素ガスが、ステップ(c)の前記水素化に再循環される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記濃縮重炭酸アンモニウム溶液の重炭酸アンモニウムの濃度が、ステップ(c)に供されるときに40~60重量%の範囲にある、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(d)の前記加熱が、ストリッパーカラム内で実行され、前記気体生成物が上部ガスとして得られ、前記液体生成物ストリームが下部流出物として得られる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ギ酸が水素化ステップに供されてホルムアルデヒドを得るステップ(g)をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(d)で得られた前記気体生成物がステップ(f)での凝縮に供され、残留ギ酸及び水が前記アミンから取り出され、
好ましくは、前記アミンのステップ(a)への再循環及び/又はギ酸と水の混合物のステップ(d)への再循環が行われる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(d)で得られた前記アミンが、任意選択で凝縮ステップ(f)の後に、ステップ(a)に再循環される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記二酸化炭素源が、煙道ガス、好ましくは廃棄物焼却炉の煙道ガス及び/又は発電煙道ガスを含有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法を実行するためのモジュール式システムであって、
(a)アミンスクラバーを含む炭素捕捉モジュールであり、アミンスクラバーが、アミン溶液を受け取るための第1の入口と、二酸化炭素源を受け取るための第2の入口と、スクラバーの上部にあるガス出口と、重炭酸アンモニウム溶液を排出するためにスクラバーの底部にある出口とを有し、前記スクラバーが、前記アミン溶液、前記二酸化炭素源及び前記スクラバーのうちの少なくとも1つを0~20℃の範囲の温度に冷却するための手段をさらに含む、炭素捕捉モジュールと、
(b)重炭酸アンモニウムを結晶化する手段を備える結晶化モジュールであり、好ましくは、前記手段が、前記重炭酸アンモニウム溶液を0~15℃の範囲の温度に冷却するように構成された冷却器と、重炭酸アンモニウムスラリーを排出するための出口とを備える、結晶化モジュールと、
(c)前記スラリーを受け取るための入口と、水素ガスを受け取るための入口と、ギ酸アンモニウム溶液を排出するための出口とを備える、水素化反応器と、
(d)ストリッパー又は蒸留カラムであり、前記ギ酸アンモニウム溶液を受け取るための入口と、前記アミンを含有する気体生成物を排出するための前記ストリッパーの上部にあるガス出口と、ギ酸を含有する液体生成物ストリームを排出するための前記ストリッパーの下部にある液体出口とを備える、ストリッパー又は蒸留カラムと
を備える、システム。
【請求項15】
(e)モジュール(c)に由来する前記ギ酸アンモニウム溶液から水素ガスを分離して、モジュール(d)に供される水素ガスが枯渇したギ酸アンモニウム溶液及び水素ガスを得るための気液分離器、
(f)モジュール(d)に由来する前記気体生成物を凝縮に供して、ギ酸及び水を含有する液体ストリーム、並びに前記アミンを含有するガスストリームを得るための凝縮器、
(g)モジュール(d)又は(f)からギ酸を含有する前記液体ストリームを受け取るための入口と、水素ガスを受け取るための入口と、ホルムアルデヒドを排出するための出口とを備える、第2の水素化反応器
から選択される1つ又は複数のモジュールをさらに備える、請求項14に記載のモジュール式システム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
[0001]本発明は、二酸化炭素からギ酸を形成するための反応器及び方法に関する。
【0002】
[背景技術]
[0002]過去数十年の間に、二酸化炭素排出量が驚くべきレベルまで増大しているというコンセンサスが拡大している。二酸化炭素の捕捉は、そのような排出の最小化に向けた重要な技術を構成する。二酸化炭素捕捉の全体的成功は、大部分について、捕捉された二酸化炭素を価値のある最終製品に効果的に変換する可能性にかかっている。
【0003】
[0003]ギ酸及びホルムアルデヒドは重要な工業用化学物質であり、最終生成物又はより複雑な分子の前駆体として多くの用途を有する。Millarら、Ind.Eng.Chem.Res.2017、56巻(33号)、9247~9265頁は、ホルムアルデヒドの工業生産のためのプロセスを開示している。二酸化炭素からギ酸を形成するための従来のプロセスは、Rumayorら、Appl.Sci.2008、8巻(6号)、914頁によって概説されている。本発明者らは、捕捉された二酸化炭素がギ酸又はホルムアルデヒドに効率的に変換される改良された方法を開発した。
【0004】
[発明の概要]
[0004]本発明は、二酸化炭素からギ酸を生成するための非常に効率的で耐久性のある方法に関する。本発明者らは、ギ酸を生成するための効率的且つ耐久性のある方法において、これらのステップを初めて組み合わせた。本発明による方法において、二酸化炭素は、最初に、アミン溶液の助けを借りてアミン溶液中で捕捉され、これにより、二酸化炭素を重炭酸アンモニウム塩に変換する。アンモニウム塩は、沈殿し、溶媒と一緒にスラリーを形成し、その後、結晶化ステップによってスラリーから取り出され得る。アンモニウム塩を水素化することにより、ギ酸アンモニウム塩が形成される。ギ酸を生成するには、混合物をストリッパーカラム内で加熱し、ギ酸アンモニウムをギ酸とアミンに分解する。アミンはストリッパーカラムの上部から排出され、ギ酸及び場合によっては他の残部の液体成分が、ストリッパーカラムの下部から排出される。
【0005】
[0005]本発明による方法は、驚くほど高い濃度で実行され得る。ステップ(a)の炭素捕捉は、従来の炭素捕捉方法をはるかに超えるアミン濃度、例えば10~60重量%で実行され得るだけでなく、ステップ(b)の結晶化は、ステップ(c)で水素化に供される重炭酸アンモニウムの濃度をさらに増加させ、最終的にはギ酸の収量の増加につながる。結晶化ステップは、形成された炭酸アンモニウム及び/又はカルバミン酸アンモニウムをさらに効率的に取り出し、水素化ステップの効率をさらに高める。ステップ(a)で使用されるアミン溶液は、水及び低沸点の水混和性有機溶媒を含むことが好ましく、これにより熱分解ステップ(d)中のカラム内での分離が改善され、高濃度のギ酸生成物ストリームが得られる。
【0006】
[0006]本発明は、以下の好ましい実施形態のリストに従って定義することができる。
1.ギ酸を生成するための方法であって、
(a)二酸化炭素源をアミンスクラバー内のアミン溶液と接触させて、重炭酸アンモニウム溶液を得る炭素捕捉ステップであり、炭素捕捉が、0~20℃の範囲の温度を有する冷却アミン溶液を使用する、炭素捕捉ステップと、
(b)前記重炭酸アンモニウム溶液中での結晶化を誘導して、濃縮重炭酸アンモニウム溶液を得るステップと、
(c)前記濃縮重炭酸アンモニウム溶液を水素化ステップに供して、ギ酸アンモニウムを得るステップと、
(d)前記ギ酸アンモニウムを50~150℃の範囲の温度に加熱して、前記アミンを含有する気体生成物及びギ酸を含有する液体生成物ストリームを得るステップと
を含む、方法。
【0007】
2.前記アミンが、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン又はトリメチルアミンであり、好ましくはアンモニアである、実施形態1に記載の方法。
【0008】
3.前記アミン溶液が、20~55重量%、好ましくは20~40重量%のアミンを含む、実施形態1又は2に記載の方法。
【0009】
4.前記アミン溶液が、前記アミンに加えて、5/95~95/5の範囲の水対有機溶媒の重量比の水及び水混和性有機溶媒からなる、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0010】
5.ステップ(b)の前記結晶化が、前記重炭酸アンモニウム溶液の温度を0~15℃の範囲、好ましくは3~5℃の範囲の温度に下げることによって誘導され、好ましくは、スラリーが、50~100℃の範囲、より好ましくは70~90℃の範囲の温度に加熱されてから、ステップ(c)の前記水素化に供される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0011】
6.ステップ(c)で必要とされる前記水素ガスが、水の電気分解に由来する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0012】
7.ステップ(c)に由来する前記ギ酸アンモニウムが、ステップ(e)に供されて、好ましくはフラッシュドラム内で、残留水素ガスを除去し、その後、ステップ(d)の加熱に供され、好ましくは、前記水素ガスが、ステップ(c)の前記水素化に再循環される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0013】
8.前記濃縮重炭酸アンモニウム溶液の重炭酸アンモニウム濃度が、ステップ(c)に供されるときに20~40重量%の範囲にある、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0014】
9.ステップ(d)の前記加熱が、ストリッパーカラム内で実行され、前記気体生成物が上部ガスとして得られ、前記液体生成物ストリームが下部流出物として得られる、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0015】
10.前記ギ酸を水素化ステップに供してホルムアルデヒドを得るステップ(g)をさらに含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0016】
11.ステップ(d)で得られた前記気体生成物がステップ(f)での凝縮に供され、残留ギ酸及び水が前記アミンから取り出され、好ましくは、前記アミンのステップ(a)への再循環及び/又はギ酸と水の混合物のステップ(d)への再循環が行われる、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0017】
12.ステップ(d)で得られた前記アミンが、任意選択で凝縮ステップ(f)の後に、ステップ(a)に再循環される、前述の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0018】
13.前記二酸化炭素源が、煙道ガスを含有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0019】
14.実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法を実行するためのモジュール式システムであって、
(a)アミンスクラバーを含む炭素捕捉モジュールであり、アミンスクラバーが、アミン溶液を受け取るための第1の入口と、二酸化炭素源を受け取るための第2の入口と、スクラバーの上部にあるガス出口と、重炭酸アンモニウム溶液を排出するためにスクラバーの底部にある出口とを有し、前記スクラバーが、前記アミン溶液、前記二酸化炭素源及び前記スクラバーのうちの少なくとも1つを0~20℃の範囲の温度に冷却するための手段をさらに含む、炭素捕捉モジュールと、
(b)重炭酸アンモニウムを結晶化する手段を備える結晶化モジュールであり、好ましくは、前記手段が、前記重炭酸アンモニウム溶液を0~15℃の範囲の温度に冷却するように構成された冷却器と、重炭酸アンモニウムスラリーを排出するための出口とを備える、結晶化モジュールと、
(c)前記スラリーを受け取るための入口と、水素ガスを受け取るための入口と、ギ酸アンモニウム溶液を排出するための出口とを備える、水素化反応器と、
(d)ストリッパー又は蒸留カラムであり、前記ギ酸アンモニウム溶液を受け取るための入口と、前記アミンを含有する気体生成物を排出するための前記ストリッパーの上部にあるガス出口と、ギ酸を含有する液体生成物ストリームを排出するための前記ストリッパーの下部にある液体出口とを備える、ストリッパー又は蒸留カラムと
を含む、システム。
【0020】
15.
(e)モジュール(c)に由来する前記ギ酸アンモニウム溶液から水素ガスを分離して、モジュール(d)に供される水素ガスが枯渇したギ酸アンモニウム溶液及び水素ガスを得るための気液分離器、
(f)モジュール(d)に由来する前記気体生成物を凝縮に供して、ギ酸及び水を含有する液体ストリーム、並びに前記アミンを含有するガスストリームを得るための凝縮器と、
(g)モジュール(d)又は(f)からギ酸を含有する前記液体ストリームを受け取るための入口と、水素ガスを受け取るための入口と、ホルムアルデヒドを排出するための出口とを備える、第2の水素化反応器
から選択される1つ又は複数のモジュールをさらに備える、実施形態14に記載のモジュール式システム。
【0021】
[詳細な説明]
[0007]何よりもまず、本発明は、二酸化炭素からギ酸を生成するための非常に効率的で耐久性のある方法に関する。第2の態様では、本発明は、本発明による方法を実行するためのシステムに関する。以下では、本発明による方法及びシステムを別々に説明する。それにもかかわらず、当業者は、方法について述べられたすべてがシステムにも適用され、システムについて述べられたすべてが方法にも適用されることを理解するであろう。
【0022】
方法
[0008]第1の態様では、本発明は、二酸化炭素源からギ酸を形成するための方法に関する。
【0023】
[0009]本発明による方法は、
(a)二酸化炭素源をアミンスクラバー内のアミン溶液と接触させて、重炭酸アンモニウム溶液を得る炭素捕捉ステップであり、炭素捕捉が、0~20℃の範囲の温度を有する冷却アミン溶液を使用する、炭素捕捉ステップと、
(b)前記重炭酸アンモニウム溶液中での結晶化を誘導して、濃縮重炭酸アンモニウム溶液を得るステップと、
(c)前記濃縮重炭酸アンモニウム溶液を水素化ステップに供して、ギ酸アンモニウムを得るステップと、
(d)ギ酸アンモニウムを50~150℃の範囲の温度に加熱して、アミンを含有する気体生成物及びギ酸を含有する液体生成物ストリームを得るステップと
を含む。
【0024】
[0010]本明細書において、「アンモニウム」は、アンモニア又は置換アミンから形成され得る、任意の第四級アミンを指す。
【0025】
[0011]ステップ(a)では、アミン溶液中の二酸化炭素の捕捉が行われる。このような炭素捕捉は当技術分野で公知であり、典型的には、吸収器とも呼ばれるアミンスクラバー内で行われる。スクラバーは、二酸化炭素源及びアミン溶液を供給される。アミンと二酸化炭素の接触を最適化するために、二酸化炭素は典型的にはスクラバーの下部にあるガス入口を介して供給され、アミン溶液はスクラバーの上部にある液体入口を介して供給される。ステップ(a)の間に、スクラバーに供給される二酸化炭素は、スクラバー内に存在するアミンと反応し、おそらくカーボネート及びカルバメートアニオンなどの他の酸化炭素種と一緒に、重炭酸アンモニウム塩を形成する。このようにして形成された重炭酸アンモニウム溶液は、スクラバーの底部にある液体出口からスクラバーから排出される。
【0026】
[0012]炭素捕捉プロセスに適したアミンは、当業者に公知であり、任意のアミンが、本発明による方法において使用され得る。アミンは、二酸化炭素と接触したときに重炭酸塩を形成できる必要がある。本発明による方法は、炭酸アンモニウム及びカルバミン酸アンモニウムを除去することができるが、ステップ(a)中に形成される場合、以下に記載されるステップ(b)により、重炭酸塩のみがギ酸に変換される。炭酸アンモニウム及びカルバミン酸アンモニウムの変換は観察されなかった。したがって、アミンが重炭酸アンモニウムを形成することが、ステップ(a)の主要な結果であることが好ましい。本発明の文脈において特に好適なアミンとしては、第三級アミン及びアンモニアが挙げられ、好ましくは、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン又はトリメチルアミンから選択される。最も好ましい実施形態では、アミンはアンモニアである。
【0027】
[0013]重炭酸塩形成アミンを使用することが提案されてきたが、重炭酸塩は沈殿又は結晶化する傾向が強く、通常は下流の処理を妨げるため、重炭酸塩形成アミンは通常望ましくないと考えられている。本発明による方法において、重炭酸アンモニウム塩の結晶化能力は、アミンスクラバーの流出物の重炭酸塩含有量を増加させるために有利に使用される。
【0028】
[0014]本発明の文脈において、任意の二酸化炭素源が好適である。ギ酸を生成するための耐久性のある方法を提供するという全体的な目的に照らして、二酸化炭素は、他の方法では環境中に放出され得る、煙道ガス又は燃焼ガスに由来することが好ましい。例示的供給源としては、廃棄物焼却炉煙道ガス及び発電煙道ガスが挙げられる。好ましい実施形態では、ステップ(a)に供される二酸化炭素源は、4~15体積%、好ましくは6~12体積%の量の二酸化炭素を含む。ステップ(a)の炭素捕捉は、そのような二酸化炭素濃度において効率的に作用することが示されている。
【0029】
[0015]アミン溶液、典型的にはアミン水溶液中のアミンの任意の濃度が本方法の文脈において好適であるが、濃度が可能な限り高いことが好ましい。より高い濃度は重炭酸アンモニウム濃度の増加につながり、最終的には、より高いギ酸収率をもたらす。したがって、溶液が吸収器内に液体形態で残っている限り、アミン濃度は可能な限り高くてもよい。スクラバーに供給されるアミン溶液は、典型的には、10~60重量%、好ましくは15~50重量%、より好ましくは20~45重量%、最も好ましくは20~40重量%のアミンを含む。このようなアミン濃度は、炭素捕捉で使用される従来のアミン濃度に比べて増加している。このように高いアミン濃度により、ステップ(a)で得られる重炭酸アンモニウム溶液は同様の高濃度になり、重炭酸アンモニウムはステップ(b)で容易に沈殿することが確実になる。さらに、典型的には少なくとも水を含む他の溶媒の量が最小限に抑えられるため、ストリーム量及び水の除去に関する下流の処理がより効率的になる。
【0030】
[0016]アミン溶液は水をさらに含む。一実施形態では、アミン溶液の残部は水である。代替の好ましい実施形態では、アミン組成物は、水及び低沸点の水混和性有機溶媒を含む。低沸点とは、沸点が水の沸点よりも低い、すなわち100℃未満であることを指す。好ましくは、水混和性有機溶媒の沸点は、(周囲気圧にて)25~90℃の範囲であり、より好ましくは、40~75℃の範囲である。アミン溶液中の水の一部を交換しても、二酸化炭素の捕捉方法が妨げられることはないことが公知である。好適な溶媒については、Heldebrantら、Chem.Rev.、2017、117巻、9594~9624頁に、当業者向けの指示がある。特に好適な有機溶媒としては、メタノール及び/又はエタノールが挙げられる。好ましくは、アミンが溶解される溶媒系は、水と水混和性有機溶媒とを、水対有機溶媒の重量比5/95~95/5の範囲、好ましくは10/90~60/40の範囲、最も好ましくは10/90~30/70の範囲で含有する。アミン溶液中の水の一部を置き換えるための低沸点水混和性有機溶媒の使用は、以下に説明するとおり、熱分解ステップ(d)に有利に影響を与えることが見出された。
【0031】
[0017]ステップ(a)は、二酸化炭素の捕捉のために冷却アミン溶液を使用する。冷却二酸化炭素捕捉プロセス、例えば冷却アンモニアプロセスが、Dardeら、Energy Procedia、2009、1巻、1035~1042頁、及びWangら、Applied Energy、2018、230巻、734~749頁から当技術分野で公知であり、典型的には0~20℃の範囲、好ましくは0~15℃の範囲、最も好ましくは2~10℃の範囲の温度を有するアミン溶液を使用する。冷却アミン炭素捕捉プロセスは、任意の好適なアミンスクラバー内で実行され得る。典型的には、アミン溶液は、スクラバーに供給される前に、所望の温度に冷却される。好ましくは、二酸化炭素源も、スクラバーに供給される前に、同じ温度に冷却される。
【0032】
[0018]ステップ(d)では、ステップ(a)で使用されたアミンが再び回収される。本発明による方法は、ステップ(d)で形成されたアミンが、スクラバーに供給されるアミン溶液の一部としてステップ(a)に戻される、再循環を含み得る。
【0033】
[0019]アミンスクラバーから排出される重炭酸アンモニウム溶液は、結晶化ステップ(b)に供される。ステップ(b)により、重炭酸アンモニウム結晶を含有するスラリーが得られる。結晶化は、当技術分野で公知である任意の手段によって誘導することができる。好ましい実施形態において、結晶化は、重炭酸アンモニウム溶液の温度を0~15℃の範囲、好ましくは3~5℃の範囲の温度に下げることによって誘導される。スラリーの冷却は、当技術分野で公知であるとおり、結晶化容器内で実行され得る。
【0034】
[0020]結晶化ステップ(b)は、重炭酸アンモニウム塩の結晶化を誘導する。ステップ(a)の間に、いくらかの炭酸アンモニウム及び/又はカルバミン酸アンモニウムが生成された場合、これらの塩は、水中への溶解度が対応する重炭酸アンモニウムよりも大きいため、大部分は溶解したままとなる。したがって、形成されたすべての炭酸アンモニウム及び/又はカルバミン酸アンモニウムは、ステップ(b)の間に、液相と一緒に大部分が除去される。したがって、結晶化ステップ(b)は、方法が炭酸アンモニウム及び/又はカルバミン酸アンモニウムを形成するアンミンに対応できることを確実にする。炭酸アンモニウム及び/又はカルバミン酸アンモニウムは、重炭酸アンモニウム溶液をステップ(c)の水素化に供する前に除去されるためである。それにもかかわらず、重炭酸アンモニウムのみがギ酸に変換されるので、ステップ(a)の間に形成される炭酸塩及びカルバミン酸塩の量は可能な限り少ないことが好ましい。当業者は、重炭酸アンモニウムの好ましい形成、さらには選択的な形成のためにアミンを選択することを知っている。特に、第三級アミン及びアンモニアは、その点で好適である。
【0035】
[0021]ステップ(b)では、濃度をさらに高めるため、溶媒が結晶から除去される。ステップ(a)の炭素捕捉は、従来の捕捉方法よりも高い濃度で作用し得るが、効率的な水素化のために、濃度をさらに上げることが好ましい。好ましくは、ステップ(b)は、重炭酸アンモニウムの結晶を含有するスラリーをもたらし、全体的な重炭酸アンモニウム濃度は、20~50重量%の範囲にある。このような濃度において、ギ酸アンモニウムは水素化ステップ(c)で効率的に形成される。水素化ステップにとって最適な濃度を達成するために、重炭酸アンモニウムの水素化の前に結晶化ステップを使用することは、当技術分野では前例がなく、水素化ステップの効率を改善する効率的な方法を実現する。
【0036】
[0022]ステップ(b)の後、重炭酸塩を含有するスラリーは、好ましくは50~100℃の範囲、より好ましくは70~90℃の範囲の温度に加熱される。このような温度の上昇により、結晶が完全に溶解し、スラリーではなく溶液があることが確実になる。次に、重炭酸アンモニウム溶液は、ステップ(c)の水素化に供される。結晶を含むスラリーは、そのまま水素化ステップに供され得るが、結晶が溶解し、溶液が水素化反応器に供されるとき、液体ストリームの処理が促進される。さらに、水素化は高温にて実行されるため、いずれにしても加熱が必要とされる。したがって、ステップ(c)の前にスラリーを加熱することは、追加のエネルギー支出なしで実行され得る。
【0037】
[0023]ステップ(c)において、重炭酸アンモニウムは水素化ステップに供され、水素化ステップにおいて重炭酸アンモニウムは水素ガスの存在下で水素化触媒と接触し、ギ酸アンモニウムに変換される。このような重炭酸アンモニウムからギ酸アンモニウムへの変換は、当技術分野において公知であり、当業者によって任意の好適な方法で実行され得る。当業者は、Suら、 ChemSusChem、2015、8巻(5号)、813~816頁において、ステップ(c)を実行することに関するさらなる指示を見出すことができる。この文献では、Pd/Ac触媒を使用して最大95.6%の変換が報告されている。Pd/Cなどの代替の触媒も使用することができ、当業者にとって明らかである。ステップ(c)は、典型的には、重炭酸アンモニウムをギ酸アンモニウムに変換するのに有効な条件を使用する水素化反応器内で実行される。
【0038】
[0024]本発明の文脈において、水素ガスの任意の供給源が使用され得る。ギ酸の生成のための耐久性のある解決策を提供するという全体的な目的に照らして、水素ガスは再生可能な供給源から発生することが好ましい。好ましい実施形態では、ステップ(c)のための水素ガスは、水の電気分解に由来する。
【0039】
[0025]ステップ(c)の生成物は、未反応の水素ガスを含有し得る。本発明による方法の一実施形態では、この残留水素ガスは、ステップ(e)においてギ酸アンモニウムから分離される。したがって、ステップ(c)に由来するギ酸アンモニウムは、ステップ(d)の加熱に供される前に、好ましくは気液分離器を使用して、残留水素ガスを除去するためにステップ(e)に供され、好ましくは水素ガスはステップ(c)の水素化へと再循環されることが好ましい。このような水素分離ステップは、フラッシュドラム内で実行され得る。したがって、好ましい実施形態では、ステップ(c)に供される水素ガスは、水の電気分解に由来する水素ガスと、下流の水素除去ステップからの再循環材料との混合物である。
【0040】
[0026]ステップ(d)では、ギ酸アンモニウムは熱分解を介してギ酸にさらに変換される。本発明者らは、硫酸などの汚染濃酸を使用せず、実質的な廃棄物ストリームを形成せずに、この変換を行うための非常に効率的な方法を開発した。ギ酸アンモニウムをギ酸に効率的に変換するために、ギ酸アンモニウムは、ギ酸アンモニウムをギ酸とアミンに分解するために有効な温度に加熱される。ここで、アミンは、ステップ(a)で使用されたものと同じアミンであり、このアミンはステップ(d)で回収される。ギ酸アンモニウムは、典型的には、50~250℃の範囲、好ましくは100~200℃の範囲、最も好ましくは120~150℃の温度に加熱される。ステップ(d)は、ギ酸アンモニウムのギ酸とアミンへの熱分解とも呼ばれることがある。250℃を超える温度は、炭化及びカーボンブラック形成につながるおそれがあるため、特に望ましくない。本発明者らは、この方法が130℃で効率的に機能することを発見し、したがって、そのような高温は必要とされない。ステップ(d)が実行される圧力は、本発明の方法の作用にとって重要ではなく、例えば、0.5~10バール、好ましくは1~5バールの範囲であり得る。
【0041】
[0027]加熱は、典型的には、ストリッパーカラム又は蒸留カラム内で行われる。好都合なことに、液体ギ酸アンモニウム溶液は、液体入口を介して供給され、液体入口は、カラムの上部又は中途付近などの、カラム内の任意の位置に配置することができる。便利なことに、カラムの下部には、カラム内の液体を加熱するリボイラが装備されている。カラム、典型的にはリボイラは、熱交換器を含み、熱交換器において、熱が、熱油又は温かいガスなどの熱媒体によってカラム内の液体に伝達される。好ましい実施形態では、ストリッパー又は蒸留塔内の液体を加熱するために、蒸気が使用される。そのようなカラムは当技術分野で公知である。
【0042】
[0028]ギ酸及び水を含む液体生成物ストリームはカラムの下部において排出され、アミンを含む気体生成物ストリームは上部において収集される。ステップ(a)で揮発性アミンを使用するため、アミンはストリッパーカラム内でギ酸から効率的に分離され、ギ酸生成物から容易に分離されるように気体状態になる。したがって、炭素捕捉における揮発性アミンの使用は当技術分野で実行可能な選択肢であると考えられてはいないが、本発明者らは、ギ酸アンモニウムのギ酸への効率的な変換を開発することにより、揮発性を有利に利用した。本発明者らは、ステップ(a)で用いられるアミン溶液中での低沸点の水混和性有機溶媒の使用が、カラム内での分離をさらに改善することをさらに見出した。ステップ(d)に供給されるギ酸アンモニウム組成物中に存在する水が少なく、含有される水が少なくなり、カラムの底部に集められた液体生成物ストリームは、ギ酸においてより濃縮される。言い換えると、より濃縮されたギ酸ストリームが生成物として得られ、ギ酸の適用性を改善する。低沸点の水混和性有機溶媒は揮発性が高く、アミンと一緒にカラムの上部に集められる。
【0043】
[0029]典型的には、ストリッパーカラムの上部で得られる気体流出物は、微量のギ酸塩を含有し得る。典型的には、カラムの上部に適用される条件は、ギ酸及びアミンがギ酸アンモニウムに戻されるものである。有利なことに、気体流出物は凝縮ステップ(f)に供され、残留ギ酸アンモニウム及び場合によっては水がアミンから除去され、ステップ(d)のストリッパーカラムに再循環され得る。ストリッパーカラムでは、ギ酸アンモニウムは(再び)ギ酸アミンに分解し、その後、ギ酸が最終的に液体底部流出物になる。このように、ガス状アミンストリームは実質的に純粋であり、ステップ(a)に再循環されることがある。低沸点の水混和性有機溶媒をアミン溶液の一部として使用する場合、気体流出物は、アミン及び低沸点の水混和性有機溶媒を含有し、アミン及び低沸点の水混和性有機溶媒は、一緒にステップ(a)へと再循環され得、ステップ(a)でアミン溶液の一部を形成する。
【0044】
[0030]ステップ(a)に供給されるアミン溶液の水は、ほとんどの場合、ステップ(d)の液体生成物ストリームになり、したがって、かなりの量の水を含有する。典型的には、20~60重量%のギ酸水溶液が形成され、好ましくは、25~40重量%のギ酸水溶液が形成される。ギ酸と水の混合物は、本発明による方法の主な生成物である。ギ酸と水の混合物は、例えば、そのまま又は分離後に適合すると考えられて使用され得る。一実施形態では、ギ酸は、水素化によってホルムアルデヒドにさらに変換される。この実施形態において、この方法は、ギ酸の形成のためではなく、ホルムアルデヒドの生成のためのものであり、方法は、ギ酸を水素化ステップに供してホルムアルデヒドを得るステップ(g)をさらに含む。このようなギ酸のホルムアルデヒドへの水素化は、当技術分野で公知である。
【0045】
[0031]したがって、特に好ましい実施形態では、ステップ(d)で得られたギ酸は、ホルムアルデヒドに変換される(concerted)。ホルムアルデヒドは石油化学産業にとって貴重な原料であり、燃料及びより複雑な化学物質の構成単位となる。ステップ(g)において、ギ酸を含有する液体生成物ストリームは、ホルムアルデヒドを得るために、触媒の存在下で水素化ステップに供される。ギ酸溶液は、H2ガスの存在下で触媒と接触させられる。このようなギ酸のホルムアルデヒドへの変換は当技術分野で公知であり、当業者は任意の好適な方法で実行することができる。当業者が理解するように、ステップ(g)は、水素化触媒の存在下で、ギ酸をホルムアルデヒドに変換するのに適した条件を使用して、実行される。本発明の文脈において、H2ガスの任意の供給源がステップ(g)で使用され得る。ギ酸の生成のための耐久性のある解決策を提供するという全体的な目的に照らして、H2ガスは再生可能な供給源から発生することが好ましい。好ましい実施形態では、ステップ(g)のためのH2ガスは、水の電気分解に由来する。ステップ(g)の終わりに回収された残留水素ガスは分離され、ステップ(c)又は(g)に再循環されることがさらに好ましい。
【0046】
[0032]本発明による方法及びシステムは、効率的な熱統合を可能にする。例えば、ステップ(a)又は(b)の間に方法から放出される熱は、典型的には熱交換器を使用して、ステップ(c)又はステップ(d)の加熱ステップに伝達され得る。方法内の加熱及び冷却ステップを効率的に利用するための熱交換器のそのような使用は、当業者に周知である。
【0047】
システム
[0033]本発明は、本発明による方法を実行するためのモジュール式システムにさらに関する。本発明によるシステムは、
(a)アミンスクラバーを含む炭素捕捉モジュールであり、アミンスクラバーが、アミン溶液を受け取るための第1の入口と、二酸化炭素源を受け取るための第2の入口と、前記スクラバーの上部にあるガス出口と、重炭酸アンモニウム溶液を排出するために前記スクラバーの底部にある出口とを有する、アミンスクラバーを含み、前記スクラバーが、前記アミン溶液、二酸化炭素源及びスクラバーのうちの少なくとも1つを0~20℃の範囲の温度に冷却するための手段をさらに含む、炭素捕捉モジュールと、
(b)重炭酸アンモニウムを結晶化する手段を備える結晶化モジュールであり、好ましくは、前記手段が、前記重炭酸アンモニウム溶液を0~15℃の範囲の温度に冷却するように構成された冷却器と、重炭酸アンモニウムスラリーを排出するための出口とを備える、結晶化モジュールと、
(c)前記スラリーを受け取るための入口と、水素ガスを受け取るための入口と、ギ酸アンモニウム溶液を排出するための出口とを備える、水素化反応器と、
(d)ストリッパー又は蒸留カラムであり、前記ギ酸アンモニウム溶液を受け取るための入口と、前記アミンを含有する気体生成物を排出するための前記ストリッパーの上部にあるガス出口と、ギ酸を含有する液体生成物ストリームを排出するための前記ストリッパーの下部にある液体出口とを備える、ストリッパー又は蒸留カラムと
を含む。
【0048】
[0034]好ましくは、システムは、以下のモジュール:
(e)モジュール(c)に由来する前記ギ酸アンモニウム溶液から水素ガスを分離して、モジュール(d)に供される水素ガスが枯渇したギ酸アンモニウム溶液及び水素ガスを得るための気液分離器、
(f)モジュール(d)に由来する気体生成物を凝縮に供して、ギ酸及び水を含有する液体ストリーム、並びにアミンを含有するガスストリームを得るための凝縮器、
(g)モジュール(d)又は(f)からギ酸を含有する前記液体ストリームを受け取るための入口と、水素ガスを受け取るための入口と、ホルムアルデヒドを排出するための出口とを備える、第2の水素化反応器
のうちの1つ又は複数をさらに備える。
【0049】
[0035]ここで、モジュール(a)はステップ(a)を実行するためのものであり、モジュール(b)はステップ(b)を実行するためのものであり、モジュール(c)はステップ(c)を実行するためのものであり、モジュール(d)はステップ(d)を実行するためのものであり、モジュール(e)はステップ(e)を実行するためのものであり、モジュール(f)はステップ(f)を実行するためのものであり、モジュール(g)はステップ(g)を実行するためのものである。本発明によるシステムのモジュールは、モジュール間のストリームの流体接続を可能にするために相互接続されている。このような流体接続は、1つのモジュールの出口と後続のモジュールの入口の間に存在する。一実施形態では、本発明によるシステムは、気液分離器(e)を含む。一実施形態では、本発明によるシステムは、凝縮器(f)を含む。一実施形態では、本発明によるシステムは、第2の水素化反応器(g)を含む。好ましい実施形態では、本発明によるシステムは、気液分離器(e)及び凝縮器(f)を含む。特に好ましい実施形態では、本発明によるシステムは、気液分離器(e)、凝縮器(f)、及び第2の水素化反応器(g)を含む。
【0050】
[0036]炭素捕捉モジュールは当技術分野で公知であり、任意の好適な炭素捕捉モジュールが、モジュール(a)として使用され得る。モジュール(a)はアミンスクラバーを備え、アミンスクラバーは、アミン溶液を受け取るための第1の入口と、二酸化炭素源を受け取るための第2の入口と、スクラバーの上部にあるガス出口と、重炭酸アンモニウム溶液を排出するためのスクラバーの底部にある出口とを有する。アミンスクラバーは、冷却二酸化炭素捕捉プロセスを実行することに適していなければならない。したがって、スクラバーは、アミン溶液、二酸化炭素源及びスクラバーのうちの少なくとも1つを0~20℃の範囲、好ましくは0~15℃の範囲、最も好ましくは2~10℃の範囲の温度に冷却するための手段をさらに含む。典型的には、少なくとも液体供給物、すなわちアミン溶液を冷却するための手段が存在し、好ましくは、ガス供給物、すなわち二酸化炭素源を冷却するための手段も存在する。冷却二酸化炭素捕捉のためのそのようなスクラバーは、当技術分野で公知である。
【0051】
[0037]結晶化モジュールは当技術分野で公知であり、任意の好適な結晶化モジュールが、モジュール(b)として使用され得る。モジュール(b)は、重炭酸アンモニウムを結晶化する手段を備え、好ましくは、前記手段が、重炭酸アンモニウム溶液を0~15℃の範囲の温度に冷却するように構成された冷却器と、重炭酸アンモニウムスラリーを排出するための出口とを備える。典型的には、モジュール(b)は、重炭酸アンモニウム結晶の形成を促進する攪拌機を含み得る結晶化容器を備える。好ましい実施形態では、モジュール(b)は、形成された結晶から液体を除去するための手段、又は遠心分離機、サイクロン、又はろ過装置などの脱水装置を備える。脱水装置は結晶から液体を除去し、液体ストリーム及び減少した体積の重炭酸アンモニウム結晶を含有するスラリーを提供する。モジュール(b)は、さらに好ましくは、結晶が再び溶解し、アンモニウム溶液がモジュール(b)から排出されてモジュール(c)に供給されるように、脱水されたスラリーを加熱するための手段を備える。しかしながら、重炭酸アンモニウム結晶を含有するスラリーは、そのままモジュール(c)の反応器に供されてもよい。
【0052】
[0038]水素化反応器は当技術分野で公知であり、任意の好適な水素化反応器が、モジュール(c)として使用され得る。モジュール(c)は、重炭酸アンモニウム溶液を受け取るための入口と、水素ガスを受け取るための入口と、ギ酸アンモニウム溶液を排出するための出口とを備える。水素化反応器は、重炭酸塩をギ酸塩に変換するために水素化反応を実行することができる触媒を備える。
【0053】
[0039]ストリッパー及び蒸留カラムは当技術分野で公知であり、任意の好適なストリッパー又は蒸留カラムが、モジュール(d)として使用され得る。モジュール(d)は、ギ酸アンモニウム溶液を受け取るための入口と、アミンを含有する気体生成物を排出するためのストリッパーの上部にあるガス出口と、ギ酸を含有する液体生成物ストリームを排出するためのストリッパーの下部にある液体出口とを備える。
【0054】
[0040]気液分離器は当技術分野で公知であり、任意の好適な気液分離器が、モジュール(e)として使用され得る。モジュール(c)に由来するギ酸アンモニウム溶液から水素ガスを分離して、モジュール(d)に供される水素ガスが枯渇したギ酸アンモニウム溶液及び水素ガスを得るための気液分離器。気液分離器は、好ましくはフラッシュドラムである。
【0055】
[0041]凝縮器は当技術分野で公知であり、任意の好適な凝縮器が、モジュール(f)として使用され得る。凝縮器(f)は、モジュール(d)に由来する気体生成物を凝縮して、ギ酸及び水を含有する液体ストリーム、及びアミンを含有するガスストリームを得ることができる。凝縮器は、ギ酸及び水を含有する液体ストリームを排出するための液体出口を備え、液体出口は、好ましくは、再循環材料を介してモジュール(d)のストリッパー又は蒸留カラムに接続され、液体ストリームをモジュール(d)に再循環させる。凝縮器は、アミンを含有するガスストリームを排出するためのガス出口をさらに備え、ガス出口は、好ましくは、再循環材料を介して、モジュール(a)、特にそのガス入口に接続されて、アミンガスをモジュール(a)に再循環させる。
【0056】
[0042]本発明によるシステムは、モジュール(d)又は(f)からギ酸を含有する液体ストリームを受け取るための入口と、水素ガスを受け取るための入口と、ホルムアルデヒドを排出するための出口とを備える、第2の水素化反応器をさらに備え得る。
【0057】
水素化反応器は当技術分野で公知であり、任意の好適な水素化反応器が、モジュール(g)として使用され得る。
【0058】
[実施例]
[0043]重炭酸アンモニウムの溶液を、70mlのミリQ水中の700mgのNH4HCO3により調製した。この溶液を、290mgのPd/C触媒とともに水素化反応器の管に挿入した。反応器を密閉し、20バールのH2にて加圧した。重炭酸アンモニウムの水素化を、次の条件:温度=80℃、H2圧力=20バール、保持時間=2時間、攪拌速度=500rpmで調査した。生成物混合物のHPLC分析によって決定したとおり、87.5%のギ酸アンモニウムの収率を得た。
【0059】
[0044]反応器出口の生成物混合物を、ギ酸アンモニウムの熱分解に供した。生成物混合物(pH7.1)を蒸留カラムに供し、400rpmで攪拌しながら1時間150℃に加熱した。留出物(pH13.1)及び残留物(pH4.1)を得た。反応器出口混合物、留出物及び残留物の組成を、HPLC及びFTIR分析によって決定した。HPLC分析は、57%の収率のギ酸が残留物中に得られたことを示した。留出物は純粋なアンモニア溶液を含有していた。留出物のIRスペクトル、約1000cm-1のピークは、残留物のIRスペクトルに存在しないアンモニアの存在を示し、さらに、約1200cm-1及び1700cm-1にて留出物のIRスペクトルに存在しないギ酸の特徴的ピークを示す。同様に、測定されたpH値は、残留物中の酸及び留出物中の塩基の形成を示している。このことは、蒸留カラム内でギ酸及びアンモニアが形成され、ギ酸が液体残留物に入り、アンモニアが留出物に入ったことを示している。
【国際調査報告】