(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-24
(54)【発明の名称】目に安全な発散ビーム光無線通信システム
(51)【国際特許分類】
H04B 10/11 20130101AFI20221116BHJP
H01S 5/02253 20210101ALI20221116BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20221116BHJP
H04B 10/50 20130101ALI20221116BHJP
【FI】
H04B10/11
H01S5/02253
G02B5/02 A
H04B10/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517297
(86)(22)【出願日】2020-09-17
(85)【翻訳文提出日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 IB2020058684
(87)【国際公開番号】W WO2021053583
(87)【国際公開日】2021-03-25
(32)【優先日】2019-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】312000387
【氏名又は名称】8 リバーズ キャピタル,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ウィリアム ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,ハンナ
【テーマコード(参考)】
2H042
5F173
5K102
【Fターム(参考)】
2H042BA01
2H042BA16
5F173MA02
5F173MA07
5F173MC15
5F173MD65
5F173MF03
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5F173MF40
5K102AA21
5K102AA48
5K102AL21
5K102PB01
5K102PB14
5K102PB18
5K102PH13
5K102PH31
5K102RB00
(57)【要約】
光ビームを放出するように構成されたレーザ光源と、1つ以上のレンズとを含む、発散ビーム光トランスミッタが提供される。発散ビーム光トランスミッタはまた、レーザ光源と1つ以上のレンズとの間に配置され、光ビーム固有発散を増加させ、光ビームを1つ以上のレンズの後で目に安全であるように1つ以上のレンズの特定の部分に拡げるように構成されたディフューザを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発散ビーム光トランスミッタであって、
光ビームを放出するように構成されたレーザ光源と、
1つ以上のレンズと、
前記レーザ光源と前記1つ以上のレンズとの間に配置され、前記光ビームの固有発散を増加させ、前記光ビームを前記1つ以上のレンズの後で目に安全であるように前記1つ以上のレンズの特定の部分に拡げるように構成されたディフューザと、
を備える、発散ビーム光トランスミッタ。
【請求項2】
前記光ビームの固有発散は、異なる方向の異なる値を有する、請求項1に記載の発散ビーム光トランスミッタ。
【請求項3】
前記レーザ光源は、垂直共振器型面発光レーザアレイを含む、請求項1に記載の発散ビーム光トランスミッタ。
【請求項4】
前記レーザ光源は、エルビウムドープファイバ増幅器により増幅され、次いで、別のファイバにより前記発散ビーム光トランスミッタに接続される、ファイバ結合レーザを含む、請求項1に記載の発散ビーム光トランスミッタ。
【請求項5】
前記ディフューザは、透過型ディフューザである、請求項1に記載の発散ビーム光トランスミッタ。
【請求項6】
前記ディフューザは、前記固有発散を変化させるべく前記レーザ光源に近づく又は遠ざかる方に平行移動するように構成される、請求項1に記載の発散ビーム光トランスミッタ。
【請求項7】
前記ディフューザは、リンク取得中に前記固有発散を増加させるべく前記レーザ光源に近づく方に、次いで、前記固有発散を減少させる及びデータ伝送速度を増加させるべく前記レーザ光源から遠ざかる方に平行移動するように構成される、請求項6に記載の発散ビーム光トランスミッタ。
【請求項8】
前記透過型ディフューザは、工学的に設計されたディフューザである、請求項5に記載の発散ビーム光トランスミッタ。
【請求項9】
前記ディフューザは、入力に応答して拡散度を変化させるように構成された能動素子である、請求項1に記載の発散ビーム光トランスミッタ。
【請求項10】
前記能動素子は、機械的に移動可能な素子である、請求項9に記載の発散ビーム光トランスミッタ。
【請求項11】
前記機械的に移動可能な素子は、静止位置で光の透過を実質的に防ぐ、請求項10に記載の発散ビーム光トランスミッタ。
【請求項12】
前記能動ディフューザと前記1つ以上のレンズとの間に追加の受動ディフューザをさらに備える、請求項9に記載の発散ビーム光トランスミッタ。
【請求項13】
前記発散ビーム光トランスミッタは、クラス1のアイセーフである、請求項1に記載の発散ビーム光トランスミッタ。
【請求項14】
前記発散ビーム光トランスミッタは、クラス1Mのアイセーフである、請求項1に記載の発散ビーム光トランスミッタ。
【請求項15】
発散ビーム光通信システムであって、
光ビームを放出するように構成されたレーザ光源と、
前記光ビームを前記光ビームの全体的な発散にコリメートするように構成された1つ以上のレンズと、
前記光ビームの固有発散を増加させ、前記光ビームを前記1つ以上のレンズの後で目に安全であるように前記1つ以上のレンズの特定の部分に拡げるように構成されたディフューザと、
レシーブレンズと、
検出器であって、前記レシーブレンズは、前記光ビームを前記検出器に集束させるように構成され、前記検出器は、受光角が1.7mradより大きい状態で前記レシーブレンズから光を受けるのに十分なエタンデュを有する、検出器と、
を備える、発散ビーム光通信システム。
【請求項16】
発散ビーム光通信システムであって、
光ビームを放出するように構成されたレーザ光源と、
前記光ビームを前記光ビームの全体的な発散にコリメートするように構成された1つ以上のレンズと、
前記光ビームの固有発散を増加させ、前記光ビームを前記1つ以上のレンズの後で目に安全であるように前記1つ以上のレンズの特定の部分に拡げるように構成されたディフューザと、
レシーブレンズと、
検出器であって、前記レシーブレンズは、前記光ビームを前記検出器に集束させるように構成され、前記検出器は、受光角が5mradより大きい状態で前記レシーブレンズから光を受けるのに十分なエタンデュを有する、検出器と、
を備える、発散ビーム光通信システム。
【請求項17】
発散ビーム光通信システムであって、
光ビームを放出するように構成されたレーザ光源と、
前記光ビームを前記光ビームの全体的な発散にコリメートするように構成された1つ以上のレンズと、
前記光ビームの固有発散を増加させ、前記光ビームを前記1つ以上のレンズの後で目に安全であるように前記1つ以上のレンズの特定の部分に拡げるように構成されたディフューザと、
レシーブレンズと、
検出器であって、前記レシーブレンズは、前記光ビームを前記検出器に集束させるように構成され、前記検出器は、受光角が17mradより大きい状態で前記レシーブレンズから光ビームを受けるのに十分なエタンデュを有する、検出器と、
を備える、発散ビーム光通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる2019年9月17日に出願された「Eye Safe Diverged Beam Optical Wireless Communications System」という名称の米国特許仮出願第62/901,391号に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
本開示は一般に、光無線通信に関し、特に、目に安全な発散ビーム光無線通信に関する。
【背景技術】
【0003】
レーザを使用する自由空間光学(FSO)通信の概念は、レーザの発明にまでさかのぼる。しかしながら、高パワーレーザの生成及び変調の難しさにより、FSOの使用は、緊密にコリメートされたビームを使用する直射型システムに限られていた。テレビ及び他の電化製品のリモコンなどのいくつかのニッチな用途に発散パルス光で非常に低いパワー及び低い変調率が使用されている。コンポーネント及びシステムに数十億ドルの投資がなされていた1990年代後半から2000年代初頭のテレコムブームのときでさえも、FSOシステムは直射構成のコリメートされたビームを超えるまでには至らなかった。FSO直射型システムを販売しているいくつかの企業が存在するが、これらのシステムは正確な位置合わせと熟練した設置を必要とする。これらのシステムのコストはリンクあたり約10,000米ドルから始まり、年間わずか数千のシステムが出荷されている。
【0004】
上記の課題の少なくともいくつか、場合によっては他の課題を考慮に入れている及び解決する最近開発されたFSO通信システムが、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,847,834号に記載されている。それでもなお、既存のシステム及び方法をさらに改善及び拡張することがしばしば望まれる。
【発明の概要】
【0005】
例示的な実装は、’834特許、並びに、どちらの内容も参照により本明細書に組み込まれるAdams他の米国特許出願公開第2017/0257167号及びBrown他の米国特許出願公開第2018/0196139号を含む他の関連出願に記載の発散ビーム自由空間光リンクに基づいている。本開示の例示的な実装は、発散ビームシステムのレーザと透過レンズとの間にディフューザを追加する。特に、例示的な実装は、出射開口の照射領域を増加させる、したがって、目の安全を保ちながら送出することができる光の量を最大にすることによって人間の目で知覚される放射レーザビームの角度範囲を拡大するように構成された、ディフューザ及びレンズを備えた高パワーレーザ(又はアレイ)を提供する。
【0006】
ディフューザ発散とレーザスポットサイズは少なくとも2つの利点をもたらす:
1.ディフューザは、レーザビームが透過レンズのほぼ全体に及ぶようにビームの発散を増加させる。これにより、出射開口での照射領域が増加し、より高い総送出出力が可能となる。
2.ビーム固有発散(アルファ、αと呼ばれる)は、ディフューザ上のレーザスポットサイズをディフューザと透過レンズとの距離で割ることによって設定される。αの値が大きいほど、目の安全強度限界が広がる。
【0007】
レーザによってディフューザ上に照射されたスポットはビーム発散の有効領域となり、ディフューザは光学系に十分に又はほぼ十分に光を拡げ、特定の配置では許容強度を50倍に増加させ、総出力パワーを100倍以上にする。
【0008】
固有発散と全体的な発散は、全体的な発散が固有発散よりも大きいという要件で独立して制御することができる。
【0009】
本開示の例示的な実装には従来技術とのいくつかの違いがある。例えば、Wick(米国特許第4,453,806号)は、透過型光学素子を通過し(又は反射型光学素子から)、透過型ディフューザを通過し、最後にコリメート光学系を通過する、コリメートされたレーザビームを教示及び特許請求している。注目すべき違いとしては、本開示の例示的な実装は、(1)発散レーザアレイを使用する、(2)第1の光学素子を排除する、及び(3)コリメートされたビームではなく発散ビームをもたらすことが挙げられる。
【0010】
Lopez-Hernandez(米国特許第6,867,929号)は、レーザ光源、ディフューザ、コリメータ、及びレーザ光をディフューザに集束させるように配置され、3つの光学系すべてが1つの部品から形成された光集束システムを教示及び特許請求している。これは、ディフューザで拡散度を設定し、次いで、レンズでビームの発散を変化させるという、レーザ発散を使用する本発明の手法とは異なる。
【0011】
Joseph(米国特許出願公開第2013/0223846号)は、回路基板間の近距離(数メートル)接続を教示している。彼の教示には、垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)アレイのセクションを使用してマルチレベルの振幅変調を達成するだけでなく、アレイのサブセットのセクションを選択的に使用してある程度のビームステアリングを達成することも含まれる。最後に、アレイのサブセットを選択することにより光スイッチングを達成することも特許請求している。さらに、受信側で多数の検出器を使用し、送信側でアレイのサブセクションを使用することによる、光通信システムでの標準であるMIMO(多重入力多重出力)技術の使用を教示している。この特許では、ディフューザは、レーザアレイを拡張光源のように見せるために及びビームがインコヒーレントになるように素子をミックスするために使用される。しかしながら、Wickと同様に、レンズの後の出力ビームは依然としてコリメートされ、これは彼が教示しているような拡張光源では物理的には不可能である。
【0012】
Chan他(米国特許第6,504,634号)は、少量の固有散乱(約1°)を有するディフューザを使用してビームの発散を最大1.5mradまで増加させることを説明している。目の安全性を考慮して、これは依然としてコリメートされたビームである。彼らはこれを上限として教示しているが、例示的な実装は、より高パワーの用途のためにこの値をはるかに上回る固有発散を使用する。彼らのビームの発散は限られているため、目の安全パラメータにおいてビームは依然としてほぼコリメートされているとみなされるので、これらの教示はより低パワーに限定される。
【0013】
Chacko及びDavies(公表論文、INTERNATIONAL JOURNAL FOR TRENDS IN ENGINEERING & TECHNOLOGY, VOLUME 5 ISSUE 2, MAY 2015, ISSN: 2349-9303)は、レンズ、そしてディフューザを備えた、LEDを使用する可視光システムを説明している。そこで説明されているリンクは非常に短く(数メートル)、したがって、そのような最小距離に到達するために高い発散度又は低いパワーレベルを有し得る。より長い距離が必要とされるときには、光パワーを犠牲にする又は発散を過度に狭めることなく目の安全を保つことが不可欠となり、それをどうするかは自明ではない。
【0014】
O’Brien及びKatz(ウェブサイト、Wireless World Research Forum(WWRF)~2004)は、許容パワーを増加させるためにFSOリンクにディフューザを使用することに言及している。彼らはその詳細を述べておらず、むしろ様々な用途のためのFSOの全体像を述べている。
【0015】
Khoo他(IEEE Colloquium Optical Wireless Communications, 1999, p3)は、コリメートレンズと、その後にディフューザを使用している。レーザとレンズとの間隔によりスポットサイズが設定され、次いで、工学的に設計されたディフューザにより発散が設定される。この論文は、長さがおよそ2メートルの非常に短い範囲の光学的距離を説明している。この概念は、より大きなパワーにスケール変更することもできるが、本開示の例示的な実装と比較していくつかの欠点を有する。最も重大な欠点は、この論文で説明されている工学的に設計されたディフューザは小さな発散ビームの実現を困難又は不可能にすることである。Khoo他は14度の全発散を説明している。本開示の特定の例示的な実装は、2度の全発散を用いるが、さらに小さな角度に拡散する能力を有する。従来技術で特定されているディフューザは、1~2度以下の発散でのコリメートされたビームを可能にしない。
【0016】
Khooの第2の欠点は、設定に起因して、ビームの全体的な発散と固有発散(α)は同じ値であり、ディフューザによって制御されるということである。本開示の例示的な実装では、本開示の例示的な実装はビームの発散と固有発散が独立して個別に制御され得る設定を含む。1つの利点は、2つの発散を独立して制御できるため、設定と全体的なフットプリントのサイズに融通性があることである。これはまた、他方を犠牲にして一方を最適化する必要がある用途での融通性のためにも有利である。
【0017】
加えて、Khooの教示ではシステム全体のサイズはより大きい。レーザとレンズとの距離はレーザの自然発散によって設定され、ゆえに、本開示の例示的な実装で得られるのと同じスポットサイズをレンズ上で達成するためには、より遠く離れていなければならない。ディフューザは、レンズの後ろにあり、サイズをさらに増加させる。例として、本発明の1Gbpsリンクは、1Wの出力光パワーと2度の発散を有する。目の安全のためには、スポットが占める領域は直径2インチである必要がある。光源-レンズ-ディフューザの設定でこれを達成するためには、本発明の光源-ディフューザ-レンズの設定に比べて2倍の光路長が必要である。
【0018】
Kare他(米国特許出願公開第2018/0131450号)は、VCSEL、光学系、及びフォトダイオードに基づく高パワービーム構成を提案している。この研究では、VCSELとレンズの間に拡散デバイスが設定されるが、光源の有限範囲からの固有発散については言及されておらず、彼らの見解ではゼロとみなされており、それは非物理的である。さらに、発散度は完全に制御可能であるとみなされており、それも光源の有限範囲から非物理的である。彼らの論は理論上の教科書上での点光源に対してはあてはまるかもしれないが、有限のゼロでない光源範囲を有する物理的光源では実現可能ではない。さらに、彼らの言及のうちの1つは、熱力学第二法則に反している。その18頁27行目で、彼らは「放射輝度を増加させることになる」と述べているが、放射輝度は、エタンデュのように、熱力学第二法則に反しているため受動系では増加することはできない。
【0019】
目の安全性と何が目の安全性を決めるのかについての彼らの言及も部分的にしか正しくない。その19頁14行目で、彼らは「決定された投射開口にこのように拡がると、高フラックスパワービーム106の見かけの角度サイズが増加し、これにより、高フラックスパワービーム106に関連する目の危険が低減し、特定の米国及び国際レーザ安全基準に係る安全性が高まる」と述べている。しかしながら、投射開口に拡がると目の危険が低減すると述べているのは正しくない。ビーム固有発散の増加が目の危険を低減するものである。これは本開示で述べている。彼らは固有発散を無視しており、実際には固有発散をまったく減らすことができないのに固有発散を減らしてゼロに戻すことができるとみなしている。さらに、目の安全性はmW/cm2で設定されるため、投射開口への拡がりを増加させると総許容パワースループットが増加する、ゆえに、面積の増加は総パワースループットを増加させる。
【0020】
したがって、本開示は、以下の例示的な実装を含むがこれらに限定されない。
【0021】
特定の例示的な実装は、発散ビーム光トランスミッタであって、光ビームを放出するように構成されたレーザ光源と、1つ以上のレンズと、レーザ光源と1つ以上のレンズとの間に配置され、光ビーム固有発散を増加させ、光ビームを1つ以上のレンズの後で目に安全であるように1つ以上のレンズの特定の部分に拡げるように構成されたディフューザとを備える発散ビーム光トランスミッタを提供する。
【0022】
任意の先行する例示的な実装又は任意の先行する例示的な実装の任意の組み合わせの発散ビーム光トランスミッタの特定の例示的な実装では、光ビーム固有発散は、異なる方向の異なる値を有する。
【0023】
任意の先行する例示的な実装又は任意の先行する例示的な実装の任意の組み合わせの発散ビーム光トランスミッタの特定の例示的な実装では、レーザ光源は、垂直共振器型面発光レーザアレイを含む。
【0024】
任意の先行する例示的な実装又は任意の先行する例示的な実装の任意の組み合わせの発散ビーム光トランスミッタの特定の例示的な実装では、レーザ光源は、エルビウムドープファイバ増幅器により増幅され、次いで、別のファイバにより発散ビーム光トランスミッタに接続される、ファイバ結合レーザを含む。
【0025】
任意の先行する例示的な実装又は任意の先行する例示的な実装の任意の組み合わせの発散ビーム光トランスミッタの特定の例示的な実装では、ディフューザは、透過型ディフューザである。
【0026】
任意の先行する例示的な実装又は任意の先行する例示的な実装の任意の組み合わせの発散ビーム光トランスミッタの特定の例示的な実装では、ディフューザは、固有発散を変化させるべくレーザ光源に近づく又は遠ざかる方に平行移動するように構成される。
【0027】
任意の先行する例示的な実装又は任意の先行する例示的な実装の任意の組み合わせの発散ビーム光トランスミッタの特定の例示的な実装では、ディフューザは、リンク取得中に固有発散を増加させるべくレーザ光源に近づく方に、次いで、固有発散を減少させる及びデータ伝送速度を増加させるべくレーザ光源から遠ざかる方に平行移動するように構成される。
【0028】
任意の先行する例示的な実装又は任意の先行する例示的な実装の任意の組み合わせの発散ビーム光トランスミッタの特定の例示的な実装では、透過型ディフューザは、工学的に設計されたディフューザである。
【0029】
任意の先行する例示的な実装又は任意の先行する例示的な実装の任意の組み合わせの発散ビーム光トランスミッタの特定の例示的な実装では、ディフューザは、入力に応答して拡散度を変化させるように構成された能動素子である。
【0030】
任意の先行する例示的な実装又は任意の先行する例示的な実装の任意の組み合わせの発散ビーム光トランスミッタの特定の例示的な実装では、能動素子は、機械的に移動可能な素子である。
【0031】
任意の先行する例示的な実装又は任意の先行する例示的な実装の任意の組み合わせの発散ビーム光トランスミッタの特定の例示的な実装では、機械的に移動可能な素子は、静止位置で光の透過を実質的に防ぐ。
【0032】
任意の先行する例示的な実装又は任意の先行する例示的な実装の任意の組み合わせの発散ビーム光トランスミッタの特定の例示的な実装では、発散ビーム光トランスミッタは、能動ディフューザと1つ以上のレンズとの間に追加の受動ディフューザをさらに備える。
【0033】
任意の先行する例示的な実装又は任意の先行する例示的な実装の任意の組み合わせの発散ビーム光トランスミッタの特定の例示的な実装では、発散ビーム光トランスミッタは、クラス1のアイセーフである。
【0034】
任意の先行する例示的な実装又は任意の先行する例示的な実装の任意の組み合わせの発散ビーム光トランスミッタの特定の例示的な実装では、発散ビーム光トランスミッタは、クラス1Mのアイセーフである。
【0035】
特定の例示的な実装は、発散ビーム光通信システムであって、光ビームを放出するように構成されたレーザ光源と、光ビームを光ビームの全体的な発散にコリメートするように構成された1つ以上のレンズと、光ビーム固有発散を増加させ、光ビームを1つ以上のレンズの後で目に安全であるように1つ以上のレンズの特定の部分に拡げるように構成されたディフューザと、レシーブレンズと、検出器であって、レシーブレンズは、光ビームを検出器に集束させるように構成され、検出器は、受光角が1.7mradより大きい状態でレシーブレンズから光を受けるのに十分なエタンデュを有する、検出器とを備える、発散ビーム光通信システムを提供する。
【0036】
特定の例示的な実装は、発散ビーム光通信システムであって、光ビームを放出するように構成されたレーザ光源と、光ビームを光ビームの全体的な発散にコリメートするように構成された1つ以上のレンズと、光ビーム固有発散を増加させ、光ビームを1つ以上のレンズの後で目に安全であるように1つ以上のレンズの特定の部分に拡げるように構成されたディフューザと、レシーブレンズと、検出器であって、レシーブレンズは、光ビームを検出器に集束させるように構成され、検出器は、受光角が5mradより大きい状態でレシーブレンズから光を受けるのに十分なエタンデュを有する、検出器とを備える、発散ビーム光通信システムを提供する。
【0037】
特定の例示的な実装は、発散ビーム光通信システムであって、光ビームを放出するように構成されたレーザ光源と、光ビームを光ビームの全体的な発散にコリメートするように構成された1つ以上のレンズと、光ビーム固有発散を増加させ、光ビームを1つ以上のレンズの後で目に安全であるように1つ以上のレンズの特定の部分に拡げるように構成されたディフューザと、レシーブレンズと、検出器であって、レシーブレンズは、光ビームを検出器に集束させるように構成され、検出器は、受光角が17mradより大きい状態でレシーブレンズから光ビームを受けるのに十分なエタンデュを有する、検出器とを備える、発散ビーム光通信システムを提供する。
【0038】
本開示のこれらの及び他の特徴、態様、及び利点は、以下で簡単に説明される添付図と共に以下の詳細な説明を読むことから明らかとなるであろう。本開示は、そのような特徴又は要素が、本明細書に記載の特定の例示的な実装で明示的に組み合わされる或いは列挙されるかどうかに関係なく、本開示に記載の2、3、4、又はそれ以上の特徴又は要素の任意の組み合わせを含む。本開示は、本開示の文脈が明確に別段の指示をしない限り、その態様及び例示的な実装のいずれかにおいて本開示の任意の分離可能な特徴又は要素が組み合わせ可能であるとみなされるように全体論的に読まれることを意図している。
【0039】
したがって、この概要は、本開示の特定の態様の基本的な理解を提供するために、特定の例示的な実装を要約する目的でのみ提供されることが理解される。したがって、上記の例示的な実装は単なる例であり、本開示の範囲又は精神を多少なりとも狭めるように解釈されるべきではないことが理解されるであろう。他の例示的な実装、態様、及び利点は、特定の説明される例示的な実装の原理を例示する添付図と併せて行われる以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【0040】
このように本開示の例示的な実装を一般的な用語で説明したので、ここで、必ずしも原寸に比例して描かれているわけではない添付図の参照を行う。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本開示の特定の例示的な実装に係る、特定の波長及び露光持続時間でのコリメートされたビームの最大許容露光量を示す。
【
図2】特定の例示的な実装に係る、αの特定の範囲の値に対する目に安全な光強度のプロットを示す。
【
図3A】ディフューザなしの発散ビーム光トランスミッタを示す。
【
図3B】特定の例示的な実装に係る、ディフューザを備えた発散ビーム光トランスミッタを示す。
【
図4】特定の例示的な実装に係る、反射型構成のディフューザを備えた発散ビーム光トランスミッタを示す。
【
図5A】特定の例示的な実装に係る、能動ディフューザを備えた発散ビーム光トランスミッタを示す。
【
図5B】特定の例示的な実装に係る、ビームの全体的な発散を変化させるべく光源及びレンズに対して物理的に移動され得るディフューザを備えた発散ビーム光トランスミッタを示す。
【
図5C】特定の例示的な実装に係る、能動ディフューザと受動ディフューザとの両方を備えた発散ビーム光トランスミッタを示す。
【
図6】特定の例示的な実装に係る、レーザ光源がファイバ結合レーザを含む例を示す。
【
図7】特定の例示的な実装に係る、発散ビーム光通信システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
ここで本開示のすべてではないがいくつかの実装が示されている添付図を参照して、本開示の特定の実装を以下により十分に説明する。実際、本開示の様々な実装は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載の実装に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの例示的な実装は、本開示が十分及び完全となって、本開示の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。同様の参照番号は同様の要素を指す。
【0043】
特に明記されていない限り又は文脈から明らかでない限り、第1の、第2のなどへの言及は、特定の順序を意味すると解釈されるべきではない。別の特徴の上にあると説明されている特徴は(特に明記されていない限り又は文脈から明らかでない限り)、代わりに下にあってもよく、その逆の場合もあり、同様に、別の特徴の左にあると説明されている特徴は、代わりに右にあってもよく、逆もまた同様である。また、本明細書では、定量的尺度、値、幾何学的関係性などについて言及がなされる場合があるが、特に明記しない限り、これらのすべてではないにしてもいずれか1つ以上は、絶対的、又は工学公差などに起因する変動などの生じ得る許容できる変動を考慮に入れるために近似的であり得る。
【0044】
特に明記されていない限り又は文脈から明らかでない限り、本明細書で用いられる場合のオペランドのセットの「又は」は「包括的論理和」であり、したがって、オペランドのすべてが真であるときに偽である「排他的論理和」とは対照的に、オペランドのうちの1つ以上が真である場合及びその場合にのみ真である。したがって、例えば、「[A]又は[B]」は、[A]が真である場合、又は[B]が真である場合、又は[A]と[B]の両方が真である場合に真である。さらに、冠詞「一」及び「一つ」は、特に明記されていない限り又は文脈から明らかに単数形に向けられていない限り、「1つ以上」を意味する。さらに、特に明記しない限り、「データ」、「コンテンツ」、「デジタルコンテンツ」、「情報」という用語、及び同様の用語は、時々交換可能に用いられ得ることを理解されたい。
【0045】
レーザの目の安全性。レーザが人間の目を損傷することがあるいくつかの物理的メカニズムが存在する。非常に短い高強度のパルスは、眼内のタンパク質の変性と水の突沸の両方を引き起こすことがある。より長い露光時間は、光が組織内の化学反応をトリガする光化学的損傷につながることがある。
【0046】
光の波長が人間の目に与える影響を決める。可視光は、通常、まばたき反応を誘発し、したがって、より高い光パワーが目に安全とみなされる。より長波長では、眼内の水が光の多くを吸収し、網膜に到達するのを防ぐ。例として、1550nmの光では、目の安全限界は、光が角膜に熱傷を生じる約100mW/cm2の値を有するポイントにより設定される。直径50mmのレンズの場合、最大出射パワーは約2Wである。その間には、依然として眼内の水を通過できる波長範囲があるが、網膜の反応がはるかに低いため、ビームは目で実際よりもはるかに暗く見える。この範囲では、目の安全パワー限界はより低い。
【0047】
光ビーム固有発散(通常はアルファαと呼ばれ、ミリラジアンの単位で与えられる)も目に与える影響を決める。目の水晶体は網膜で約20ミクロンの最小スポットサイズにしか集束することができないので、α<1.5ミリラジアンのビームは目の安全性のためにコリメートされるとみなされる。α>1.5ミリラジアンのビームは20ミクロンよりも大きいスポットに集束し、目の損傷を引き起こすことなく、より高い強度を有することができる。ビーム固有発散はビームの全体的な発散とは異なることに留意されたい。シングルモードファイバから出るレーザは、数十度の範囲(ビームの全体的な発散)をカバーし得るが、ファイバによって設定される放射領域が非常に小さい(5~10ミクロン)ため、固有発散(α)は依然として1.5ミリラジアン未満である。
【0048】
図1は、400nm~1400nmの範囲の波長及び0.1秒~約30,000秒(8時間)の露光持続時間でのコリメートされたビーム(α<1.5mrad)のMPE(最大許容露光量、米国国家規格Z136.1-2014,p104)を示している。x軸100に示される露光時間に対するcm
2当たりのワットで測定される放射照度がy軸102にプロットされている。一般に波長が長いほどMPEが高くなるが、例外として1400nmは1315nmを下回る。MPEは、一般に10秒後にプラトーになる。
【0049】
ビームが電球などの拡張光源から来る場合、αは1.5ミリラジアンよりもはるかに大きく、目は光を最小スポットにではなくより大きなスポットに集束させる。このより大きなスポットは、網膜を損傷することなくより大きな総パワーを有することができる。その後、目に入射するビームの強度をより高くすることができる。
【0050】
図2は、1.5mradから100mradまでのα200の値の範囲での目に安全な光強度202(単位mW/cm
2)のプロットを示している。このプロットは、波長850nm、露光時間10秒204及び60秒206で計算されている。100mrad(約6°)の上限レベルは、網膜上の総パワーが問題となるポイントである。
【0051】
目の安全性は、米国国家規格協会(ANSI)Z136.1規格(ANSI Z136.1規格)、国際電気標準会議(IEC)60825-1規格(IEC-60825-1規格)などのレーザ安全規格での定義通りに本明細書で用いられる。目の安全性はクラスにより設定され、クラスごとに安全ルールが異なる。現在のクラスには、クラス1、クラス1M、クラス2、クラス2M、クラス3R、クラス3B、及びクラス4がある。様々な例示的な実装は様々なクラスの目の安全性となる。多くの例示的な実装はクラス1又はクラス1Mとなる。特定の例示的な実装はクラス2又はクラス2Mとなる。特定の例示的な実装は、クラス3R、クラス3B、又はクラス4であり得る。
【0052】
以前のFSOシステム。ほとんどのFSO通信システムはファイバ結合レーザ又は単一要素レーザダイオードのいずれかを使用している。これらの光源は自然放射角度範囲を有し、これは1つ以上のレンズ又はミラーを使用することでビームにコリメートされる。コリメートされたレンズの焦点距離に対する放射領域の直径によって、又は極端なケースでは非常に小さい放射領域の場合、レンズ上のスポットサイズと光の波長との比によって設定される、残留発散が依然として存在する。この発散は非常に小さく、シングルモードファイバ及び50ミリメートルのコリメーションレンズの場合、1マイクロラジアン未満であり得る。これらのシステムのすべてにおいて、αは<1.5ミリラジアンであり、最小の目の安全強度が適用される。
【0053】
例として、850nmでは、光が眼内の水を通過するため、限界値は低く、コリメートされたビームの場合、約2mW/cm2である。直径50mmのレンズの最大パワー出力は、このとき総光パワーの約40mWに制限される。このビームの総パワーは、FSOシステムのリンク距離を制限する。
【0054】
この限界値を増加させるために、多くのFSOシステムは波長1310nmのレーザを使用していた。この場合、光は眼内の水を通過せず、目の安全性閾値は、角膜に熱傷を引き起こすパワーレベルによって設定される。これはおよそ200mW/cm2であり、そのとき、直径50mmのレンズはほぼ4Wを出射することができる。しかしながら、以前の適用で述べたように、より長波長のデバイスに使用されるInGaAsなどの材料よりもはるかに安価なシリコンベースのコンポーネントを現在使用することができるため、850nmが好ましい場合がある。
【0055】
DBFSOリンクの利点。本開示の例示的な実装は、ビームがレンズ全体にほぼ拡がり、ビーム固有発散がビームの全体的な発散までであってそれを超えないようにレーザとレンズの間にディフューザを追加する。これにより、最大出射パワー、したがって、リンクを達成することができる最大距離及びデータ転送速度が増加する。
【0056】
以前の開示及び出願では、光源が、レーザ又はレーザアレイとシステムの発散度を設定するための1つ以上のレンズからなる、発散ビームシステムが説明されてきた。レンズがレーザから或る焦点距離に設定される場合、ビームの全体的な発散は、レンズの焦点距離に対するレーザ領域のサイズによって設定される、すなわち、最小発散は、(レーザアレイサイズ)/(レンズ焦点距離)によって与えられる。
図3Aはこの構成を示している。レーザアレイ300は有限の幅を有し、レーザビーム302は、レーザ又はレーザアレイ300の自然発散角で発散する。ビームは、集束レンズ306と角度σ304をなし、次いで、法線との異なる発散角θ308を有する。レンズの他の側でのレーザの有限範囲はα310によって与えられる。
【0057】
一般に、システムのビームの発散は、レンズをレーザに近づく方に移動することで増加させることができる。その場合、ビームの全体的な発散が増加するにもかかわらず、局所的な(又は固有)発散が、レーザサイズをレンズまでの距離で割ることで依然として設定される。これは、レンズがレーザに十分に近づくまで続く、すなわち、レーザビームの発散により制限される。このポイントで、全体的な発散はレーザ自体の発散によって設定される、すなわち、レンズは集束パワーがほとんど又はまったくない窓のように見え始める。
【0058】
多くのレーザ及びレーザアレイは、20°~40°の範囲内の発散を有し、一実装では、発散は24°~34°である。個々のレーザ要素のそれぞれはレンズによってコリメートすることもできるが、要素はレンズ軸に対して異なる横方向の位置にあるため、各ビームは異なる角度方向にコリメートされる。レーザ要素はまた、互いに数十ミクロン以内で非常に近接しているので、1つ又はいくつかのレーザ要素のためのレンズが存在する場所でのレンズアレイの構築は難しい場合がある。
【0059】
ディフューザなしの発散ビーム。
図3Aは、ディフューザなしの発散ビームシステムで許容される、より高パワーの例示的な実装を提供している。一例では、レーザ300が約1mm幅であり、レンズ306が約40mm離れていると仮定する。その場合、目の安全のための発散は約25ミリラジアンであり、これにより、許容強度は2mW/cm
2から34mW/cm
2に増加する(10秒間の露光の場合)。レンズのスポットサイズはわずか2.1cm幅であるため、システムの最大出射パワーは118mWである。
【0060】
ディフューザありの発散ビーム。本開示の例示的な実装は、レーザとレンズの間にディフューザを追加することで許容強度を増加させる。ディフューザは、制御された角度範囲にわたって光を散乱させる。この角度範囲は、レーザ自体からのビームの発散よりも常に大きくなり、そうでなければ、システムはエタンデュの保存及び熱力学第二法則に反することになる。レーザによってディフューザ上に照射されたスポットは、レーザがトランスミッタの残りの部分、次いでシステムを伝搬する際に、固有ビーム発散でのレーザの有効領域となる。
【0061】
次いで、透過レンズ上の照射領域が、ディフューザの出力角度と、ディフューザと透過レンズとの距離によって設定される。目標は、十分な大きさのαの値を依然として維持しながら、透過レンズ全体にできるだけ多く拡がることである。ディフューザとレンズとの距離が長いほど、レンズでのビームサイズはより大きくなるが、距離が長いほど、αの値は小さくなることを意味する。
【0062】
図3Bは、例示的な実装を示している。レーザアレイ312は、ディフューザ314と角度σ322をなす自然発散を有する。ディフューザからのビーム316は、異なる発散角であり、レンズ324に対して角度σ
2をなす。レンズ324も、ビームの発散を法線に対して角度θをなすように変化させる。透過レンズ324上の照射領域により、レンズ324の後ろで角度α
2326が生じる。このαの値は、ディフューザに起因して
図3Aよりも大きい。
【0063】
本開示の例示的な実装として、レンズから40mmのところにあるディフューザ上の3mmのスポットは、75ミリラジアンの発散と、100mW/cm
2の許容強度(10秒間の露光で)を与える。レンズでのビームサイズはおよそ5cmであるため、システムの最大パワーはこのとき1963mWである。これは
図3Aに示されているディフューザなしの実装よりも約16倍大きい。
【0064】
レーザ光源は、垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)、VCSELアレイ、ストリップレーザ、ファイバレーザ、又は追加の増幅段を備えたファイバ結合レーザを含むがこれらに限定されない、いくつかのレーザ光源のいずれかであり得る。ファイバ結合レーザの一例は、EDFA(エルビウムドープファイバ増幅器)に接続されたCバンドのテレコムレーザであり、EDFAのファイバ出力はトランスミッタに接続される。レーザ光源のサイズは、可視波長ファイバの場合の小さな5ミクロンから、大きなVCSELアレイの場合の10ミリメートルまでの範囲であり得る。特定の他の例としては、1mmのVCSELアレイ、9ミクロンのコア、シングルモードテレコムファイバ、及び100ミクロンのマルチモードファイバが挙げられる。レーザ波長は、UV、可視、近赤外、遠赤外などを含む物理的に実現できる任意の値であり得る。これらの実装で用いられ得る既に利用可能な一般的な波長としては、800nm、850nm、905nm、1300nm、テレコムCバンド、及びテレコムLバンドが挙げられる。
【0065】
特定の例示的なシステムでは、Brightview Technologiesからのディフューザを使用することができる。一実装では、スポット製品は、VCSELアレイの+/-12°の発散を約+/-27°に増加させるC-HE40-PE-S-M-RA12を使用する。この実装では、ディフューザはレーザから約7mmのところにある。ディフューザをどれだけ近づけることができるかには限界がある。レーザに近すぎると、少量の吸収でディフューザが加熱されて溶ける可能性がある。さらに、レーザとディフューザとの距離が増加するにつれてディフューザ上のスポットサイズが増加するため、ディフューザが離れた位置にあるほど、αはより大きくなる可能性がある。このディフューザの効率は非常に高く、89%から97%までの範囲である。発散度は、特定のディフューザを選択することで工学的に設計することができる。Brightviewには、約5°から127°(FWHM)までの範囲の標準製品があり、カスタムのディフューザはその範囲内の任意のターゲットにヒットすることができる。
【0066】
他のディフューザは、1度から2πステラジアンの範囲であり得る。
【0067】
ディフューザによって導入される発散は、コリメートされたFSOシステムでの許容可能なビームの発散をはるかに超えているため、このスキームは高度に発散したビームシステムでのみ機能し得ることに留意されたい。すなわち、システムの角度範囲が広すぎて、任意の距離を達成するのにレーザパワーが十分ではない場合がある。これは、ビームが既に発散しており、25~200mradの発散は0.1°(1.75mrad)~20°(349mrad)又は最高で半球又は2πステラジアンの範囲を有し、システム全体の発散の設計範囲内であるため、発散ビームの開示でまさに機能する。
【0068】
発散(レーザ放射、固有、及び全体を含む)は、異なる方向の異なる値を有し得ることに注目されたい。これはレーザの設計に起因し、例えば、ストリップレーザは、通常、垂直方向の発散に比べて水平方向の発散がより大きくなる。これは意図的に設計することができ、例えば、1つのトランスミッタが地上近くの多数のレシーバにブロードキャストする、ブロードキャスト構成で使用するためには、垂直方向よりも水平方向の発散がより大きなトランスミッタを有することが有益な場合がある。
【0069】
固有発散と全体的な発散は、全体的な発散が固有発散よりも大きいという要件で独立して制御することができる。固有発散は、ディフューザ上のスポットサイズとディフューザからレンズまでの距離との比によって設定される。全体的な発散は、レンズを焦点(全体的な発散が固有発散に等しい)からディフューザに近づく方に移動することによって変化させることができ、これにより、全体的な発散が増加する。これは固有発散に影響を与えるが、レンズを移動する際の全体的な発散の変化に比べると小さい。
【0070】
例示的な実装はまた、レーザがディフューザの前面に向けられ、レーザ光がディフューザで反射及び散乱して発散角が増加する、反射型構成で用いることができる。
図4は、この構成の例示的な実装を示している。レーザアレイ400からのビームは、ディフューザ404に当たり、反射406されて、レンズ402に当たる。この場合も、最終的なビームの発散は、0.1度から20度まで、最高2πステラジアンの範囲であり得る。
【0071】
本開示の例示的な実装のさらなる利点は、特にトランスミッタのためにより短い焦点距離のレンズを使用できることである。これにより、システム全体のサイズを減少させることができる。例えば、レーザから+/-12°で発散する光を5cmのレンズ全体に拡げるには、ほぼレンズ全体に拡げるのに約12cmの焦点距離が必要である。ディフューザでその角度を+/-25°に増加させると、5cmのレンズ上の同じスポットサイズを約6cmの焦点距離で達成することができ、したがって、レーザとレンズの距離が減少し、システムのサイズが減少し得る。
【0072】
ディフューザは、受動素子又は能動素子であり得る。1つの例示的な実装は、Brightview Technologiesの受動エンジニアードディフューザを使用する。すりガラスなどを含む他の受動ディフューザを使用することができる。この説明では、ディフューザに能動素子を使用することもできる。これらは、電圧、電流、機械的歪み、又は応力、又はいくつかの他の特性の変化を介して、特定の関連する光学特性を変化させる素子を含む。能動素子は、様々なシナリオ又はフィードバックループに基づいてビームの発散を調整するために使用することができる。例えば、曇りのシナリオでは、レシーバによって検出される光の量を増加させるために、ビーム固有発散を減少させることができる。
【0073】
図5Aは、一実装を示している。ここでは、レーザアレイ500は、能動ディフューザ502と角度σ504をなす光を放出する。ディフューザ502は、レンズと角度σ
1508をなすnone506から角度σ
2512をなす最大ビーム510までの範囲の任意の角度で光を散乱させることができる。σ
1508はσ504に等しいことに留意されたい。
【0074】
別のシナリオでは、リンク取得のために非常に広い発散が用いられ、トランシーバが互いに向けられると発散が減少され得る。データ転送速度が発散に伴って変化し、例えば、リンク取得のために非常に広い発散で非常に低いデータ転送速度が用いられ、次いで、トランシーバが位置合わせされるとき、発散が減少され、データ転送速度が増加され得る。レシーバは、同様の効果を利用して1つの検出器が非常に低いデータ転送速度で広い視野を有することを可能にし、次いで、視野を減少させ、データ転送速度を増加させることができる。
【0075】
いくつかの実装では、ディフューザは、ビームの全体的な発散を変化させるべく光源及びレンズに対して物理的に移動される。
図5Bは、一実装を示している。ここでは、レーザアレイ516が、2つの位置のうちの1つ(位置1 520又は位置2 522)にあるディフューザ518に当たる光を放出する。位置1 520にあるディフューザから回折された光線が一点鎖線524で示されている。ディフューザが位置2 522にある光源からさらに離れている場合、光線は実線526で与えらる。これらの各位置は、それぞれ関連するαを同様に有する。位置1 520の場合、αは図のα
1530によって与えられ、位置2 522の場合、αはα
2532によって与えられる。この図は2つの位置のみを示しているが、ディフューザがとる可能性がある所与の範囲にわたる位置は無数にあり、それぞれレンズの様々な範囲に拡散し、様々な関連するαをもたらす。
【0076】
いくつかの実装では、能動ディフューザと受動ディフューザの両方が存在し得る。能動ディフューザは、レーザ(アレイ)光源により近い場合、第2の静的ディフューザ上のスポットサイズを制御することによって固有発散を制御することができる。次いで、静的ディフューザとレンズが全体的な発散を制御する。これは
図5Cに示されている。レーザアレイ534が、能動ディフューザ538に当たる光を放出する。能動ディフューザは、ビームが受動ディフューザ540にどれだけ拡がるかを決めることで光の固有発散を制御する。次いで、受動ディフューザ540とレンズ536が、全体的な発散、したがって、出力密度を制御する。前述のように、これらの量は両方とも目の安全性において重要である。代替的に、受動ディフューザを光源に近づけることができ、能動ディフューザを受動ディフューザの後ろに、しかし依然としてレンズの前に置くことができる。
【0077】
レンズが説明されている場合はいずれも、システムは1つ以上のレンズ又はミラーを使用して所望の効果を達成することができることに留意されたい。レンズは、球面、放物面、非球面、アクロマート、又は他のタイプであり得る。
【0078】
同様に、受信端では、レシーバでの受光角が存在する。これは、検出器のサイズをレシーブレンズの焦点距離で割ったものでおおよそ設定される。レシーバでの受光角は、マイクロラジアンから2πステラジアンまでの任意の値をとり得る。特定の実装では、受光角は、1.7mradより大きい場合がある。いくつかの実装では、受光角は、光源の発散角の数ミリラジアン以内である。他の場合には、レシーバでの受光角は、レーザの発散角よりも大きく、リンクの2つの端点を互いに位置合わせするのに役立ち得る。場合によっては、レシーバでの受光角は、トランスミッタでの発散角よりも小さい場合があり、これにより、全体的なリンク距離を増加させることができ、又はレシーバがリンクの他端でトランスミッタと位置合わせされる場合、この端のトランスミッタはまた、リンクの他端のレシーバと確実に位置合わせすることができる。
【0079】
前述のように、レーザ光源は、VCSEL、VCSELアレイ、ストリップレーザ、ファイバレーザ、又は追加の増幅段を備えたファイバ結合レーザを含むがこれらに限定されない、いくつかのレーザ光源のいずれかであり得る。
図6は、レーザ光源が、EDFA602によって増幅され、次いで、別のファイバ604により発散ビーム光トランスミッタに接続される、ファイバ結合レーザ600を含む例を示している。
【0080】
図7は、特定の例示的な実装に係る発散ビーム光通信システム700を示している。このシステムは、光ビームを放出するように構成されたレーザ光源702と、光ビームを光ビームの全体的な発散にコリメートするように構成された1つ以上のレンズ704を含む。このシステムは、光ビーム固有発散を増加させ、光ビームを1つ以上のレンズの後で目に安全であるように1つ以上のレンズの特定の部分に拡げるように構成されたディフューザ706を含む。
【0081】
また、示されるように、システム700は、光ビームを検出器710に集束させるように構成されたレシーブレンズ708を含む。いくつかの例では、検出器は、受光角が1.7mradより大きい状態でレシーブレンズから光を受けるのに十分なエタンデュを有する。他の例では、検出器は、受光角が5mradより大きい状態でレシーブレンズから光を受けるのに十分なエタンデュを有する。そしてさらに他の例では、検出器は、受光角が17mradより大きい状態でレシーブレンズから光ビームを受けるのに十分なエタンデュを有する。
【0082】
上記の説明及び関連する図面で提示された教示の利益を有する本開示に関係する当業者は本明細書に記載の本開示の多くの修正及び他の実装を思いつくであろう。したがって、本開示は、開示された特定の実装に限定されるものではなく、修正及び他の実装が付属の特許請求の範囲内に含まれることを意図していることが理解される。さらに、上記の説明及び関連する図は、要素及び/又は機能の特定の例示的な組み合わせとの関連で例示的な実装を説明しているが、要素及び/又は機能の異なる組み合わせが、付属の特許請求の範囲から逸脱することなく代替的な実装によって提供され得ることを理解されたい。これに関して、例えば、上記で明示的に説明されたものとは異なる要素及び/又は機能の組み合わせも、付属の請求項のうちのいくつかに記載され得るように企図される。本明細書では特定の用語が採用されているが、それらは一般的且つ説明的な意味でのみ用いられ、限定する目的のためではない。
【国際調査報告】