(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-24
(54)【発明の名称】激越の出現を検出及び防止するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20221116BHJP
A61K 31/4174 20060101ALI20221116BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20221116BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20221116BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20221116BHJP
A61B 5/0533 20210101ALI20221116BHJP
A61B 5/372 20210101ALI20221116BHJP
【FI】
A61B5/16 120
A61K31/4174
A61K9/70
A61P25/02 105
A61P25/20
A61B5/0533
A61B5/372
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517347
(86)(22)【出願日】2020-09-17
(85)【翻訳文提出日】2022-05-09
(86)【国際出願番号】 US2020051256
(87)【国際公開番号】W WO2021055595
(87)【国際公開日】2021-03-25
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】518014933
【氏名又は名称】バイオエクセル セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨッカ,フランク ディー.
(72)【発明者】
【氏名】デ ビボ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】リシンガー,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】セス,スベンドゥ
(72)【発明者】
【氏名】マジャーニック,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】カーリン,ダニエル アール.
(72)【発明者】
【氏名】ジェミソン,ジャミーレ
(72)【発明者】
【氏名】ウォルド,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】アマヴェル ドス サントス ピンヘイロ,ミゲル
【テーマコード(参考)】
4C038
4C076
4C086
4C127
【Fターム(参考)】
4C038PP03
4C038PQ06
4C038PS01
4C038PS03
4C076AA89
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4C086GA13
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4C127AA02
4C127AA03
4C127AA07
4C127BB03
4C127GG05
4C127GG10
4C127GG16
(57)【要約】
本開示において、激越を呈しやすい対象において切迫した激越エピソードを診断するための方法、システム、及び装置が開示される。開示された方法は、対象の皮膚表面に配置または取り付けられた自動検知デバイスを使用して、対象の交感神経系活動の1つ以上の生理学的信号を監視することと、デバイス内の受信データの処理を介して、対象が激越エピソードを起こしそうなときを特定することと、を含む。本開示は、切迫した激越イベントの徴候を測定するための解決策を提供し、激越の出現及びその適切な治療の前に対象を治療するように介護者にアラートする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
激越を呈しやすい対象において切迫した激越エピソードを診断する方法であって、前記方法が、
(a)前記対象の皮膚表面に配置または取り付けられた自動検知デバイスを用いて前記対象の交感神経系活動の1つ以上の生理学的信号を監視することと、
(b)前記デバイス内の受信データの処理を介して、前記対象が激越エピソードを起こしそうなときを特定することと、を含む、前記方法。
【請求項2】
激越を呈しやすい対象において切迫した激越エピソードを介護者にアラートする方法であって、前記方法が、
(a)前記対象の皮膚表面に配置または取り付けられた自動検知デバイスを用いて前記対象の交感神経系活動の1つ以上の生理学的信号を監視することと、
(b)前記デバイス内の受信データの処理を介して、前記対象が激越エピソードを起こしそうなときを特定することと、
(c)前記デバイスから介護者が監視する対応するデバイスに、前記対象の切迫した激越エピソードを前記介護者にアラートする信号を送信することと、を含む、前記方法。
【請求項3】
激越を呈しやすい対象における激越の出現を防止する方法であって、前記方法が、
(a)前記対象の皮膚表面に配置または取り付けられた自動検知デバイスを用いて前記対象の交感神経系活動の1つ以上の生理学的信号を監視することと、
(b)前記デバイス内の受信データの処理を介して、前記対象が激越エピソードを起こしそうなときを特定することと、
(c)前記デバイスから介護者が監視する遠隔の対応するデバイスに、前記対象の切迫した激越エピソードを前記介護者にアラートする信号を送信することと、
(d)前記対象の交感神経活動を低下させる抗激越薬を前記介護者により投与することと、を含む、前記方法。
【請求項4】
激越を呈しやすい対象における激越の早期出現または激越の徴候を治療する方法であって、前記方法が、
(a)前記対象の皮膚表面に配置または取り付けられた自動検知デバイスを用いて前記対象の交感神経系活動の1つ以上の生理学的信号を監視することと、
(b)前記デバイス内の受信データの処理を介して、前記対象が激越エピソードを起こしかけているときを特定することと、
(c)前記デバイスから介護者が監視する遠隔の対応するデバイスに、前記対象の激越エピソードの開始を前記介護者にアラートする信号を送信することと、
(d)前記対象の交感神経活動を低下させる抗激越薬を前記介護者により投与することと、を含む、前記方法。
【請求項5】
顕著な鎮静を引き起こすことなく、激越が防止または治療される、請求項3または請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記自動検知デバイスがウェアラブルデバイスである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
交感神経系活動の前記生理学的信号が、皮膚電気活動の変化;心拍変動(例えば、安静時EEG、ECG);瞳孔の大きさなどの認知機能評価;唾液アミラーゼの分泌;血圧;脈拍;呼吸数;体温変動、及び血中酸素濃度のうちの1つ以上から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
交感神経系活動が、皮膚電気活動の任意の変化、または皮膚電気活動の任意の変化と安静時EEGの任意の変化をともに測定することにより評価される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記自動検知デバイスが、患者における交感神経系活動に関連する生理学的信号のデータを、1つ以上の早期警告アルゴリズムを含む遠隔位置にある装置(例えば、コンピュータデータベース)に送信する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記デバイスが、ブルートゥースを介して前記遠隔位置にある装置に信号を送信する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抗激越薬がα-2アドレナリン受容体作動薬である、請求項3~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記α-2アドレナリン受容体作動薬が、クロニジン、グアンファシン、グアナベンズ、グアノキサベンズ、グアネチジン、キシラジン、チザニジン、メデトミジン、デクスメデトミジン、メチルドパ、メチルノルエピネフリン、ファドルミジン、ヨードクロニジン、アプラクロニジン、デトミジン、ロフェキシジン、アミトラズ、ミバゼロール、アゼペキソール、タリペキソール、リルメニジン、ナファゾリン、オキシメタゾリン、キシロメタゾリン、テトラヒドロゾリン、トラマゾリン、タリペキソール、ロミフィジン、プロピルヘキセドリン、ノルフェネフリン、オクトパミン、モキソニジン、リダミジン、トロニジン、UK14304、DJ-7141、ST-91、RWJ-52353、TCG-1000、4-(3-アミノメチル-シクロヘキサ-3-エニルメチル)-1,3-ジヒドロ-イミダゾール-2-チオン、及び4-(3-ヒドロキシメチル-シクロヘキサ-3-エニルメチル)-1,3-ジヒドロ-イミダゾール-2-チオン、または薬学上許容できるそれらの塩からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記α-2アドレナリン受容体作動薬がデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩が、静脈内注射によって非経口的に投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩が、自立型溶解性フィルムを使用して舌下投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
デクスメデトミジンが塩酸塩として投与される、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
デクスメデトミジン塩酸塩が、約5マイクログラム~約250マイクログラム、好ましくは約5マイクログラム~約200マイクログラムの範囲の単位用量で投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
デクスメデトミジン塩酸塩が、180マイクログラムの単位用量で投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記患者が、統合失調症、双極性障害、双極性躁病、せん妄、大うつ病性障害、及びうつ病からなる群から選択される神経精神疾患を患っている、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記患者が、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症(FTD)、認知症、レビー小体型認知症(DLB)、心的外傷後ストレス障害、パーキンソン病、血管性認知症、血管性認知機能障害、ハンチントン病、多発性硬化症、クロイツフェルト-ヤコブ病、多系統萎縮症、外傷性脳損傷、及び進行性核上麻痺を患っている、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記患者が、オピオイド離脱症状、薬物乱用離脱症状(コカインアンフェタミンを含む)、またはアルコール離脱症状に関連する激越を呈しやすい、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
交感神経系活動の第1の生理学的データを受信することと、
前記第1の生理学的データを用いて少なくとも1つの機械学習モデルを訓練することにより、少なくとも1つの生理学的パラメータのベースライン値を確立することと、
対象に取り付けられた第1の監視デバイスから、前記対象の交感神経系活動の第2の生理学的データを受信することと、
前記少なくとも1つの機械学習モデルを用いて、少なくとも1つの生理学的パラメータの前記ベースライン値に基づいて、前記第2の生理学的データを分析し、前記対象の激越エピソードを予測することと、
前記対象の前記激越エピソードの予測に基づいて、前記対象の前記激越エピソードの前記予測を第2の監視デバイスに通知するための信号を前記第2の監視デバイスに送信し、前記対象の交感神経系活動を低下させるための治療を前記対象に提供できるようにすることと、を含む、方法。
【請求項23】
前記第1の監視デバイスが、前記対象と接触しているウェアラブルデバイスである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の監視デバイスが、前記対象の介護者によって監視される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記激越エピソードを予測するための前記分析が、前記対象の前記激越エピソードが発生する期間を判定することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記激越エピソードを予測するための前記分析が、前記対象の前記激越エピソードの程度を判定することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記激越エピソードを予測するための前記分析が、
前記第2の生理学的データを少なくとも1つの生理学的パラメータの前記ベースライン値と比較することであって、
前記第2の生理学的データが前記ベースライン値の第1の閾値を超えるとき、前記信号は第1の信号であり、前記治療は第1の治療であり、
前記第2の生理学的データが前記ベースライン値の第2の閾値を超えるとき、前記信号は前記第1の信号と異なる第2の信号であり、前記治療は前記第1の治療と異なる第2の治療である、前記比較することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記第2の生理学的データの前記受信が第1の期間中であり、さらに、
前記第1の期間の後の第2の期間中に、前記対象の交感神経系活動の第3の生理学的データを受信することと、
前記第2の生理学的データ及び前記第3の生理学的データに基づいて、前記対象の交感神経系活動の変化のパターンを特定するための、前記対象の交感神経系活動のレポートを生成することと、を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記治療が、前記対象に抗激越薬を投与することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
交感神経系活動の前記第2の生理学的データが、皮膚電気活動の変化、心拍変動、瞳孔の大きさなどの認知機能評価、唾液アミラーゼの分泌、血圧、脈拍、呼吸数、または血中酸素濃度のうちの少なくとも1つを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
前記交感神経系活動が、皮膚電気活動の任意の変化、または皮膚電気活動の任意の変化と安静時脳波の任意の変化をともに測定することにより評価される、請求項22に記載の方法。
【請求項32】
前記第2の監視デバイスに前記信号を送信した後に、前記激越エピソードに関連する徴候を受信することと、
前記徴候に基づいて、前記少なくとも1つの機械学習モデルをさらに訓練させることと、をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項33】
前記第2の監視デバイスに前記信号を送信した後に、前記激越エピソードに関連する徴候を受信することであって、前記徴候が、(1)前記激越エピソードが発生するか否か、(2)前記激越エピソードが発生するとき、(3)前記激越エピソードの程度、(4)前記激越エピソードが持続する期間、または(5)前記激越エピソードの症状、のうちの少なくとも1つを示す、前記受信することと、
前記徴候に基づいて、前記少なくとも1つの機械学習モデルをさらに訓練させることと、をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項34】
前記少なくとも1つの機械学習モデルが、線形回帰、ロジスティック回帰、決定木、ランダムフォレスト、ニューラルネットワーク、ディープニューラルネットワーク、または勾配ブースティングモデルのうちの少なくとも1つを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項35】
前記少なくとも1つの機械学習モデルが、教師あり学習、教師なし学習、半教師あり学習、または強化学習のうちの少なくとも1つに基づいて訓練される、請求項22に記載の方法。
【請求項36】
前記激越エピソードを予測するための前記分析が、前記第2の生理学的データと前記ベースライン値との比較に基づいて、前記対象の前記激越エピソードの程度を判定することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項37】
前記第1の監視デバイスから、前記対象の交感神経系活動の追加データを受信することであって、前記追加データが、音声データ、運動データ、または位置データのうちの少なくとも1つを含む、前記受信することと、
前記少なくとも1つの機械学習モデルを用いて前記追加データを分析し、前記対象の前記激越エピソードを予測することを含む、分析することと、をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項38】
メモリと、
前記メモリに操作可能に連結されたプロセッサであって、前記プロセッサが、
対象に取り付けられた第1の監視デバイスから、前記対象の交感神経系活動の生理学的データを受信し、
少なくとも1つの機械学習モデルを用いて、前記生理学的データを分析して交感神経系活動の基準パターンから異常を検出して、前記対象の激越エピソードの発生確率を判定し、
前記対象の前記激越エピソードの前記発生確率を第2の監視デバイスに通知するための信号を前記第2の監視デバイスに送信し、前記対象の交感神経系活動を低下させるための治療を前記対象に提供できるようにする、ように構成される前記プロセッサと、を含む、装置。
【請求項39】
前記プロセッサが、
前記第2の監視デバイスに前記信号を送信した後に、前記激越エピソードに関連する徴候を受信し、
前記徴候に基づいて、前記少なくとも1つの機械学習モデルをさらに訓練する、ように構成される、請求項38に記載の装置。
【請求項40】
前記プロセッサが、
前記第2の監視デバイスに前記信号を送信した後に、前記激越エピソードに関連する徴候を受信し、前記徴候が、(1)前記激越エピソードが発生するか否か、(2)前記激越エピソードが発生するとき、(3)前記激越エピソードの程度、(4)前記激越エピソードが持続する期間、または(5)前記激越エピソードの症状、のうちの1つを示し、
前記徴候に基づいて、前記少なくとも1つの機械学習モデルをさらに訓練する、ように構成される、請求項38に記載の装置。
【請求項41】
プロセッサによって実行される命令を表すコードを格納するプロセッサ可読非一時的媒体であって、前記コードが、前記プロセッサに、
対象に取り付けられた第1の監視デバイスから、前記対象の交感神経系活動の生理学的データを受信させ、
少なくとも1つの機械学習モデルを用いて、前記生理学的データを分析して交感神経系活動の基準パターンから異常を検出して、前記対象の激越エピソードの発生確率を判定させ、
前記対象の前記激越エピソードの前記発生確率を第2の監視デバイスに通知するための信号を前記第2の監視デバイスに送信し、前記対象の交感神経系活動を低下させるための治療を前記対象に提供できるようにさせる、コードを含む、前記プロセッサ可読非一時的媒体。
【請求項42】
前記コードが、前記プロセッサに、
前記少なくとも1つの機械学習モデルを用いて分析する前に、複数の対象に関連する交感神経系活動の訓練生理学的データに基づいた前記少なくとも1つの機械学習モデルであって、前記少なくとも1つの機械学習モデルが、入力として複数の生理学的パラメータを含み、前記複数の生理学的パラメータの各生理学的パラメータが、前記機械学習モデルの複数の重みから1つの重みに関連付けられる、前記少なくとも1つの機械学習モデル、を訓練させ、
前記少なくとも1つの機械学習モデルに基づいて、前記複数の生理学的パラメータから少なくとも1つの生理学的パラメータの基準パターンを判定させる、コードを含む、請求項41に記載のプロセッサ可読非一時的媒体。
【請求項43】
前記コードが、前記プロセッサに、
前記少なくとも1つの機械学習モデルを用いて分析する前に、複数の対象に関連する交感神経系活動の訓練生理学的データに基づいた少なくとも1つの機械学習アルゴリズムであって、前記少なくとも1つの機械学習モデルが、入力として複数の生理学的パラメータを含み、前記複数の生理学的パラメータの各生理学的パラメータが、前記機械学習モデルの複数の重みから1つの重みに関連付けられる、前記少なくとも1つの機械学習アルゴリズム、を訓練させ、
前記少なくとも1つの機械学習モデルに基づいて、前記複数の生理学的パラメータから少なくとも1つの生理学的パラメータの基準パターンを判定させ、
前記第2の監視デバイスに前記信号を送信した後に、前記激越エピソードに関連する徴候を受信させ、
前記徴候に基づいて、前記少なくとも1つの生理学的パラメータの基準パターンと前記少なくとも1つの生理学的パラメータに関連する重みとを調整するために、前記少なくとも1つの機械学習モデルをさらに訓練させる、コードを含む、請求項41に記載のプロセッサ可読非一時的媒体。
【請求項44】
交感神経系活動の追加の信号が音声及び運動を含む、請求項1~43のいずれかに記載の方法、装置、及びプロセッサ可読非一時的媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年9月18日に出願された「Prevention of Emergence of Agitation」と題する米国仮出願第62/901,955号、及び2020年2月14日に出願された「Prevention of Emergence of Agitation」と題する米国仮出願第62/976,685号の優先権及びその利益を主張するものであり、各々の開示全体が、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、激越事象及び交感神経系の覚醒を起こしやすい対象を監視し、激越の出現前に抗激越薬で対象を治療する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
激越は、過剰な運動または言語活動、興奮性、非協調性、脅迫的なジェスチャー、及び場合によっては攻撃的または暴力的な行動を特徴とする。統合失調症の対象は、特に疾患が悪化したときに急性の激越エピソードに陥りやすい。精神病に関連する激越もまた救急外来を受診するよくある理由であり、早期に認識されて効果的に管理されない限り、身体的暴力を含む潜在的に危険な状況に急速にエスカレートする可能性がある。激越は特定の疾患ではないが、多くの急性及び慢性の神経学的または精神的状態において共通の徴候または症状である。激越は、根底にある障害または誘因に対する反応と考えられ、他の過覚醒の徴候の中でもとりわけ、情動不安、徘徊、ペーシング、落ち着きのなさ(fidgeting)、早口、または口頭での爆発(verbal outburst)として現れることがある。激越は破壊的であることが多く、人によっては攻撃的行為にエスカレートするおそれがある。そのため、本来なら自宅で介護ができるはずの人が施設に収容されることにつながり、対象及び介護者の生活の質を低下させる症状である。激越行動の追跡と個人の激越状態のパターンの特性評価により、激越の開始の徴候を明らかにできる可能性があり、より早い段階でのディエスカレーションへの取り組みを可能にし、医療介入、鎮静剤、または拘束の必要性を低減できる。
【0004】
残念なことに、臨床医は、そのような悪化を防ぐのに十分なほど早く、激越のエピソードを診断できるわけではない。したがって、(1)切迫した激越事象の徴候を測定し、激越が出現する前に対象を治療するよう介護者にアラートするツールと、(2)対象を落ち着かせ、激越エピソードの発生を防止するための抗激越薬の投与を含み得る適切な治療と、が必要とされている。本開示は、これらの要望と関連する要望を満たすものである。
【発明の概要】
【0005】
以下の開示は、本開示のいくつかの態様の基本的な理解を提供するために、本開示の簡略化された要約を提示する。この要約は、本開示の広範な概要ではない。また、本開示の重要な要素を特定すること、または本開示の範囲を画定することも意図していない。その唯一の目的は、後に提示される本開示のより詳細な説明の前段階として、本開示のいくつかの概念を簡略化した形で提示することである。
【0006】
本開示の目的は、激越を呈しやすい対象において切迫した激越エピソードを診断するための解決策を提供することである。
【0007】
本開示の別の目的は、激越を呈しやすい対象における切迫した激越エピソードを介護者にアラートするための解決策を提供することである。
【0008】
本開示のさらに別の目的は、激越を呈しやすい対象における激越の初期段階の出現または激越の徴候を治療するための解決策を提供することである。
【0009】
本開示は、(A)激越を呈しやすい対象において、交感神経系活動を監視し(例えば、電気皮膚活動(EDA)、心拍変動、瞳孔サイズ、唾液アミラーゼの分泌、筋肉活動、体温、運動活動、音声信号などの変化を測定することによって)、切迫した激越エピソードを介護者にアラートする自動化デバイスと、(B)激越が出現していると特定された対象が、激越エピソードの発現を防止するために抗激越薬を投与される治療コンポーネントと、を含む、激越の出現を防止する統合システムを提供する。
【0010】
本開示は、数時間以内、例えば、約2時間以内での激越の出現を信頼性高く予測する、心血管及び運動活動の生理学的測定値を検出する方法も記載する。
【0011】
したがって、第1の態様では、本開示は、激越を呈しやすい対象において切迫した激越エピソードを診断する方法であって、
(a)対象の皮膚表面に配置または取り付けられた自動検知デバイスを用いて対象の交感神経系活動の1つ以上の生理学的信号を監視することと、
(b)デバイス内の受信データの処理を介して、対象が激越エピソードを起こしそうなときを特定することと、を含む、方法を提供する。
【0012】
第2の態様では、本開示は、激越を呈しやすい対象において切迫した激越エピソードを介護者にアラートする方法であって、
(a)対象の皮膚表面に配置または取り付けられた自動検知デバイスを用いて対象の交感神経系活動の1つ以上の生理学的信号を監視することと、
(b)デバイス内の受信データの処理を介して、対象が激越エピソードを起こしそうなときを特定することと、
(c)デバイスから介護者が監視する対応するデバイスに、対象の切迫した激越エピソードを介護者にアラートする信号を送信することと、を含む、方法を提供する。
【0013】
第3の態様では、本開示は、激越を呈しやすい対象における激越の出現を防止する方法であって、
(a)対象の皮膚表面に配置または取り付けられた自動検知デバイスを用いて対象の交感神経系活動の1つ以上の生理学的信号を監視することと、
(b)デバイス内の受信データの処理を介して、対象が激越エピソードを起こしそうなときを特定することと、
(c)デバイスから介護者が監視する遠隔の対応するデバイスに、対象の切迫した激越エピソードを介護者にアラートする信号を送信することと、
(d)対象の交感神経活動を低下させる抗激越薬を介護者により投与することと、を含む、方法を提供する。
【0014】
第4の態様では、本開示は、激越を呈しやすい対象における激越の早期出現または激越の徴候を治療する方法であって、
(a)対象の皮膚表面に配置または取り付けられた自動検知デバイスを用いて対象の交感神経系活動の1つ以上の生理学的信号を監視することと、
(b)デバイス内の受信データの処理を介して、対象が激越エピソードを起こしているときを特定することと、
(c)デバイスから介護者が監視する遠隔の対応するデバイスに、対象の激越エピソードの開始を介護者にアラートする信号を送信することと、
(d)対象の交感神経活動を低下させる抗激越薬を介護者により投与することと、を含む、方法を提供する。
【0015】
第5の態様では、本開示は、顕著な鎮静を引き起こすことなく、激越を呈しやすい対象における激越の出現を防止する方法であって、
(a)対象の皮膚表面に配置または取り付けられた自動検知デバイスを用いて対象の交感神経系活動の1つ以上の生理学的信号を監視することと、
(b)デバイス内の受信データの処理を介して、対象が激越エピソードを起こしそうなときを特定することと、
(c)デバイスから介護者が監視する遠隔の対応するデバイスに、対象の切迫した激越エピソードを介護者にアラートする信号を送信することと、
(d)顕著な鎮静を引き起こすことなく対象の交感神経活動を低下させる抗激越薬を介護者により投与することと、を含む、方法を提供する。
【0016】
第6の態様では、本開示は、顕著な鎮静を引き起こすことなく、激越を呈しやすい対象における激越の早期出現または激越の徴候を治療する方法であって、
(a)対象の皮膚表面に配置または取り付けられた自動検知デバイスを用いて対象の交感神経系活動の1つ以上の生理学的信号を監視することと、
(b)デバイス内の受信データの処理を介して、対象が激越エピソードを起こしかけているときを特定することと、
(c)デバイスから介護者が監視する遠隔の対応するデバイスに、対象の激越エピソードの開始を介護者にアラートする信号を送信することと、
(d)顕著な鎮静を引き起こすことなく対象の交感神経活動を低下させる抗激越薬を介護者により投与することと、を含む、方法を提供する。
【0017】
第7の態様では、本開示は、
(a)交感神経系活動の第1の生理学的データを受信することと、
(b)第1の生理学的データを用いて少なくとも1つの機械学習モデルを訓練することにより、少なくとも1つの生理学的パラメータのベースライン値を確立することと、
(c)対象に取り付けられた第1の監視デバイスから、対象の交感神経系活動の第2の生理学的データを受信することと、
(d)少なくとも1つの機械学習モデルを用いて、少なくとも1つの生理学的パラメータのベースライン値に基づいて、第2の生理学的データを分析し、対象の激越エピソードを予測することと、
(e)対象の激越エピソードの予測に基づいて、対象の激越エピソードの予測を第2の監視デバイスに通知するための信号を第2の監視デバイスに送信し、対象の交感神経系活動を低下させるための治療を対象に提供できるようにすることと、を含む、方法を提供する。
【0018】
第8の態様では、本開示は、激越を呈しやすい対象における激越の出現または激越の徴候を判定するためのシステムであって、
(a)激越を呈しやすい対象の少なくとも交感神経系活動を監視するように構成された自動検知デバイスと、
(b)少なくともウェアラブルデバイスからデータを受動的に収集するように構成されたデータ収集ユニットであって、データ収集モジュールが、データをローカルサーバー及びネットワークサーバーに伝達するように構成される、データ収集ユニットと、
(c)生態学的瞬間評価(EMA)を実施し、レポートを生成するように構成されたプロセッシング・ユニットと、を含むシステムを提供し、
(d)該プロセッシング・ユニットが、対象の切迫した激越エピソードを診断し、介護者が監視する対応するデバイスに、対象の切迫した激越エピソードについて介護者にアラートする信号を送信するように構成される。
【0019】
第9の態様では、本開示は、メモリと、該メモリに操作可能に連結されたプロセッサであって、該プロセッサが、対象に取り付けられた第1の監視デバイスから、対象の交感神経系活動の生理学的データを受信し;少なくとも1つの機械学習モデルを用いて、生理学的データを分析して交感神経系活動の基準パターンから異常を検出して対象の激越エピソードの発生確率を判定し;対象の激越エピソードの予測を第2の監視デバイスに通知するための信号を第2の監視デバイスに送信して対象の交感神経系活動を低下させるための治療を対象に提供できるようにする、ように構成されるプロセッサと、を含む装置を提供する。いくつかの実施形態では、監視デバイスはまた、激越の重症度(例えば、軽度,中等度,または高度)を検出する。いくつかの実施形態では、監視デバイスは、特定の患者が軽度から中等度、高度の激越に移る確率を予測する。
【0020】
第10の態様では、本開示は、プロセッサによって実行される命令を表すコードを格納するプロセッサ可読非一時的媒体であって、該コードが、該プロセッサに、対象に取り付けられた第1の監視デバイスから、対象の交感神経系活動の生理学的データを受信させ;少なくとも1つの機械学習モデルを用いて、生理学的データを分析して交感神経系活動の基準パターンから異常を検出して対象の激越エピソードの発生確率を判定させ;対象の激越エピソードの予測を第2の監視デバイスに通知するための信号を第2の監視デバイスに送信して対象の交感神経系活動を低下させるための治療を対象に提供できるようにさせる、コードを含む、プロセッサ可読非一時的媒体を提供する。
【0021】
本開示の他の顕著な特徴及び利点は、添付の図面と併せて、本開示の例示的な実施形態を開示する以下の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。
【0022】
本開示の特定の例示的な実施形態の上記及び他の態様、特徴、及び利点は、添付の図面と併せて、以下の説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本開示の一実施形態による、激越を呈しやすい対象における激越の出現または激越の徴候を判定するためのシステムを示す。
【
図2】本開示の一実施形態による、開示されたシステムのETLプロセスの概要を描写する図である。
【
図3】本開示の一実施形態による、激越を呈しやすい対象における切迫した激越エピソードを診断する方法のブロック図を示す。
【
図4】本開示の一実施形態による、激越を呈しやすい対象における切迫した激越エピソードを介護者にアラートする方法のブロック図を示す。
【
図5】本開示の一実施形態による、激越を呈しやすい対象における激越の出現を防止する方法のブロック図を示す。
【
図6】本開示の一実施形態による、激越を呈しやすい対象における激越の早期出現または激越の徴候を治療する方法のブロック図を示す。
【
図7】本開示の別の実施形態による、激越を呈しやすい対象における切迫した激越エピソードを診断し、介護者にアラートする方法のブロック図を示す。
【
図8】本開示の別の実施形態による、データを受信し、少なくとも1つの機械学習モデルを用いて分析し、介護者に信号を送信するための装置のブロック図を示す。
【
図9】本開示の別の実施形態による、患者ID、患者登録、及びデータの記録を割り当てるプロセスのシステムフロー図を示す。
【0024】
当業者は、図中の要素が簡潔性及び明確性のために図示されており、縮尺通りに描かれていない場合があることを理解するであろう。例えば、図中の要素のいくつかの寸法は、本開示の様々な例示的な実施形態の理解を向上させるのに役立つように、他の要素に対して誇張される場合がある。図面全体を通して、同一または類似の要素、特徴、及び構造を描写するために、同様の参照番号が使用されることに留意されたい。
【発明を実施するための形態】
【0025】
添付図面を参照する以下の説明は、本開示の例示的な実施形態の包括的な理解を支援するために提供されるものである。その理解を助けるために様々な具体的詳細を含むが、これらは単なる例とみなされる。
【0026】
したがって、当業者は、本明細書に記載された実施形態の様々な変更及び修正を、本開示の範囲から逸脱することなく行うことができることを認識するであろう。さらに、周知の機能及び構造に関する説明は、明確化及び簡潔化のために省略される。
【0027】
以下の説明で使用される用語及び単語は、書誌的な意味に限定されるものではなく、単に、本開示の明確かつ一貫した理解を可能にするために、発明者が使用するものである。したがって、本開示の例示的な実施形態の以下の説明は、例示の目的のみのために提供され、それらの同等物によって定義されるように本開示を限定する目的ではないことは、当業者には明らかであるはずである。
【0028】
「a」、「an」、及び「the」という単数形には、文脈上明らかに別段に示されている場合を除き、複数の言及物が含まれると理解される。
【0029】
1つの実施形態に関して説明及び/または図示されている特徴は、1つ以上の他の実施形態において同じ方法または同様の方法で、及び/または他の実施形態の特徴と組み合わせて、または他の実施形態の特徴の代わりに使用することができる。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprise)/含んだ(comprising)」は、記載された特徴、整数、ステップ、または構成要素の存在を特定するために用いられるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、構成要素、またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではないことは強調されるべきである。
【0031】
略語
ACES:興奮・鎮静評価スケール
EDA:皮膚電気活動
EEG:脳波
ETL:抽出、変換、及び読み込み
EMA:生態学的瞬間評価
GLONASS:全球測位衛星システム
HEOG:水平眼電図
VEOG:垂直眼電図
RASS:リッチモンド興奮鎮静スケール
NavIC:インド地域航法衛星システム
OPD:外来診療部門
PC:パーソナルコンピュータ
PSG:終夜睡眠ポリグラフ
RHR:安静時心拍数
IPD:入院診療部門
ICU:集中治療室
MMSE:ミニメンタルステート検査
UP:予期しない問題
【0032】
定義:
「対象」及び「患者」という用語は本明細書において互換的に使用され、哺乳動物、例えば、マウス、ラット、他のげっ歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、または霊長類、例えば、ヒトを含む、任意の動物を意味する。
【0033】
「激越を呈しやすい対象」という用語は、心的外傷後ストレス障害、神経精神病状態/神経精神疾患、または神経変性状態/神経変性疾患、オピオイド、アルコール、または薬物乱用(コカイン、アンフェタミンを含む)の離脱症状を患う対象、またはOPD/IPD処置を受けている対象を非限定的に含んでいる。
【0034】
「投薬量」という用語は、μg/日、μg/kg、μg/kg/時間、μg/kg/日、mg/kg/日、またはmg/kg/時間という用語で表現される製剤を包含することが意図される。
【0035】
「用量」は、単位体積または単位質量で患者へ投与される薬剤の量、例えばmgで表現される薬剤の絶対単位用量である。用量は、製剤中の薬剤の濃度(例えば1リットルあたりのモル(M)、体積あたりの質量(m/v)、または質量あたりの質量(m/m)で)に依存する。
【0036】
本明細書において使用される「鎮静」という用語は、患者または対象が気道確保及び定期的な呼吸パターンを自立して連続的に維持し、身体的刺激及び言葉による指示に対して適切に合理的に応答する能力を保持する、意識の低下を意味する。本明細書において使用される場合、「顕著な鎮静を引き起こすことなく」とは、患者がラムゼイ鎮静スケールでレベル3を超えない鎮静レベルを経験することを意味する。レベル3は、鎮静しているが、指示に応答することを意味する。
【0037】
本明細書において使用される「激越の出現」という用語は、激越しかかっているが、患者の身体は関連する精神的及び/または身体的変化による激越の徴候をまだ示していない患者を意味する。適切に監視されている場合、生理学的信号を使用して交感神経活動を測定できるため、生理学的信号は激越の出現のマーカーとなり得る。したがって、本開示は、皮膚電気活動(皮膚コンダクタンス反応)の変化及び安静時EEGの変化などの生理学的信号から交感神経系活動の増加を特定することによる激越の出現の監視を提供する。
【0038】
本明細書において非限定的に使用される「激越の徴候」という用語は、過剰な運動活動(例えば、ペーシング、ロッキング、表示行為、指差し、情動不安、型にはまったことを繰り返し行うことが挙げられる)、口頭での攻撃性(例えば、怒鳴ること、過剰に大声で話すこと、口汚い罵りを使用すること、金切り声をだすこと、叫ぶこと、他の人々を脅かすこと)、身体的な攻撃性(例えば、つかむこと、押しのけること、押すこと、拳を固めること、抵抗すること、他を打つこと、物体または人々を蹴ること、引っ掻くこと、咬むこと、物体を投げること、自身をぶつけること、ドアをバタンと閉めること、物を引き裂くこと、及び所有物を壊すこと)が挙げられる。
【0039】
本明細書において非限定的に使用される「激越」という用語は、例えば、前頭葉などの脳の特定の領域の機能不全のせいで、または例えば、ドーパミン及びノルエピネフリンなどの神経伝達物質系の機能不全のせいで、発生し得る興奮性、感情的爆発、思考障害、または過剰な運動及び言語活動を意味する。本開示においては、激越には心的外傷後ストレス障害における攻撃性及び過覚醒も含まれる。激越は急性であってもよいし、または慢性であってもよい。本明細書では「激越」の発生を「激越エピソード」または「激越事象」と呼ぶ。
【0040】
本明細書において使用される「神経精神病状態/神経精神疾患」という用語は、統合失調症、双極性疾患(双極性障害、双極性躁病)、うつ病、大うつ病性障害、せん妄、または他の関連する神経精神病状態を含むが、これらに限定されるものではない。
【0041】
本明細書において使用される「神経変性状態/神経変性疾患」という用語には、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症(FTD)、認知症、レビー小体型認知症(DLB)、心的外傷後ストレス障害、パーキンソン病、血管性認知症、血管性認知機能障害、ハンチントン病、多発性硬化症、クロイツフェルト-ヤコブ病、多系統萎縮症、進行性核上麻痺、外傷性脳損傷、及びまたは他の関連する神経変性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
「舌下で」という用語は文字通り「舌の下」を意味し、物質が消化管ではなく舌の下にある血管を介して速やかに吸収されるような方法で口を介して物質を投与する方法を指す。舌下吸収は、血管の多い舌下粘膜を介して生じ、物質を直接血液循環にアクセスさせ、それによって消化器の影響とは無関係に直接的な全身投与を提供し、望ましくない肝臓の初回通過代謝を回避する。
【0043】
本明細書において使用される「EDA」という用語は、皮膚コンダクタンス反応としても知られる電気皮膚活動/反応を指す(古い用語では「ガルバニック皮膚反応」とも言う)。EDAとは、生理学的に覚醒させる外部刺激または内部刺激が生じたときに、皮膚が瞬間的に電気を通しやすくなる現象のことである。EDAは、ストレス反応及び覚醒の最も反応が早い生理学的指標の1つとされている。EDAの研究により、EEGのような重要なツールがもたらされた。患者の皮膚に配置された自動検知デバイスは、患者の皮膚の電気抵抗の変化を記録することにより、EDAを監視する。交感神経系活動に変化があると、発汗がわずかに増加し、皮膚の抵抗が低下する(発汗には水及び電解質が含まれているため)。皮膚の電気抵抗のこのような変化は、検知デバイスによって記録される。
【0044】
本明細書において使用される「EEG」という用語は、脳波(EEG)を指す。EEGは、脳の電気的活動を記録するための電気生理学的監視法である。EEGは、基礎となるニューロンの電気的活動を反映し、ニューロン集団の振動、情報の流れの経路、及び神経活動ネットワークに関する情報を提供する。
【0045】
本明細書において使用される「安静時EEG」という用語は、安静状態で取得されたEEG記録を指し、基本的な脳状態に関連する自発的神経活動を示す。安静時EEGから得られる適切な特徴は、神経精神疾患、神経変性疾患、及び他の神経系関連疾患を患う患者の脳の状態を監視するのに役立ち得る。したがって、安静時EEGは、そのような患者のケアに関連する意思決定に寄与し得る。
【0046】
「RASS」という用語は、リッチモンド興奮鎮静スケールを指す:ベースラインからの変化量:RASSは、「好戦的」(+4)から「覚醒不可能」(-5)までの10段階の評価スケールである。
【0047】
「心拍変動」という用語は、心拍間の時間間隔の変動を指し、個人の現在の健康状態を反映する。
【0048】
「自動監視デバイス」という用語は、本明細書では「自動検知デバイス」と互換的に使用され、患者の身体に装着/配置/取り付けることができ、交感神経系活動及び/または運動活動に関連する信号を検出し、処理することができる任意のデバイスを指す。自動監視デバイスは、
図7及び
図8に関して説明された「第1の監視デバイス」とも称される。このデバイスは、エンドユーザーディスプレイ端末などの任意の適切な対応するデバイスと(例えば、遠隔的に、またはその他の方法で)やりとりすることができ、通常、トランスデューサ、トランスデューサ制御モジュール、通信デバイス、及び監視システムまたはコンピュータデータベースなどを含むことになる。生理学的測定値はまた、標準技術と、例えば、ネットワーク機能を有するセンサデバイス(例えば、腰装着、手首装着、指装着など)(例えば、iPhone)などの小型化されたウェアラブルデバイスとの両方を使用して測定することができる。本明細書で使用される自動検知デバイスは、統合された生理学的パラメータ(例えば、EDA、安静時EEG、血圧、移動性/運動、記憶/処理、発話/睡眠パターンなど)に関するデータを収集し、収集したデータを、早期警告アルゴリズムに基づく1以上の早期警告ユニットを含む患者監視デバイスの外部のコンピュータデータベースに転送/信号伝達してデータを特定の測定値、またはアラート信号の形で集約した機能的転帰として解釈可能な形式に変換する。本開示は、統合された患者管理ソリューションを提供し、これは、激越を予測及び特定する分析アルゴリズムを介して、激越への早期介入を可能にし得る。本明細書で使用される自動検知デバイスは、患者の交感神経系活動の最小限に観察可能な変化を、臨床観察で可能なレベルよりも高い分解能で測定することができる。
【0049】
自動監視デバイスは、交感神経系活動及び運動量の増加に関連する情報を、例えば介護者が監視する装置(例えば、コンピュータデータベース)に信号伝達することが可能である。自動監視デバイスは、例えば、ネットワーク機能を有する腰装着型マルチセンサデバイス、ネットワーク機能を有する手首装着型マルチセンサデバイス、ネットワーク機能を有する指装着型マルチセンサデバイスなど、任意の適切なセンサデバイスであり得る。広範なデバイス/センサ、例えば、スマートフォン(例えば、iPhone(BYODまたはプロビジョニング))、加速度計及びジャイロスコープ、ポータブルデバイス、デジタルデバイス、スマートファブリック、バンド及びアクチュエータ、スマートウォッチ(例えば、Apple watch(例えば、Apple watch 3)またはiWatch)、MC10パッチなどのパッチ、Oura Ring(例えば、スマートウォッチを装着できない、もしくは装着したくない患者もしくは高機能患者用)、Androidデバイス、Microsoft Kinectのようなセンサ、無線通信ネットワーク及び電源、ならびに処理及び意思決定支援のためのデータ取得技術、または同様の機能を果たす任意の従来の、または非従来のデバイス/センサが、自動監視デバイスであり得る、及び/または自動監視デバイスに含まれることができる。本明細書で使用される自動監視デバイスはまた、1つ以上の早期警告アルゴリズムと、アラートユニットと、アラートユニットによって提供される1つ以上のアラートに関するデータ、すなわち、交感神経活動の過去の検出増加、患者に関するデータ、所定の許容範囲及び閾値などを格納するためのストレージユニットと、を含むことができる。別の実施形態では、自動監視デバイスはまた、1つ以上のパラメータの格納されたデータまたは測定値を表示するための表示ユニットを備えてもよい。自動監視デバイスは、好ましくは、携帯性を可能にするためにすべてのユニットが同じ小型ケーシング内に配置されていてもよい。自動監視デバイスは、例えば、ブレスレット、時計、アンクレット、靴、アームバンド、大腿バンド、またはミトンなどのウェアラブル装置として具現化されてもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、自動検知デバイスは、EDAまたは安静時EEGなどの統合された生理学的パラメータについて測定したデータを内部メモリに記録し、さらに、データ信号をフィルタリングし、スパイク及び非接触値などのノイズを除去し(喜び及び幸福などのポジティブな感情がEDAも増加させ得るというリスクを回避するため)、ベースライン値を取得した。ベースライン値は、患者について計算され、EDA及び/または安静時EEGレベルなどの生理学的パラメータの任意の変化を定義されたスケール(0から5まで)で統計的に分類する。医学における「ベースライン」という用語は、後のデータとの比較に使用される研究の開始時に見出された情報または他の初期の既知の値である。ベースラインの概念は、データに対する絶対的な意味ではなく相対的な意味を確立するために、日常の医療行為に不可欠である。PANSS-ECは、統合失調症患者のPECとも呼ばれ、BIは検知デバイスの測定値の検証のためのベースラインとして使用される。
【0051】
アルゴリズムを使用して、これらの検出された生理学的信号に基づいて、患者がいつ激越する可能性があるかを判定することができる。この信号を使用して、激越が発生するのを防ぐために、患者にいつ抗激越薬を投与すべきかを判定することができる。早期警告アルゴリズムは、成人(高齢の患者を含む)と小児の患者の両方で使用可能である。本明細書で使用されるアルゴリズムは、心血管信号及び自発運動を含む、患者からの1つ以上の生理学的パラメータを利用する。心血管信号には、EDAデータ、安静時ECG信号データ、心拍数レベル、非侵襲的血圧測定値などが含まれる。自発運動は、アクチグラフなどの一般的な測定デバイスを使用して評価することができる。これらの生体認証信号を使用して、人がすぐに激越する可能性があるかどうかを判定するアルゴリズムを作成することができる。
【0052】
本明細書における「介護者」という用語は、神経精神疾患、神経変性疾患、もしくは他の神経系関連疾患に罹患し、自身の世話をするのに助けが必要である患者、オピオイド、アルコール、もしくは薬物乱用(コカイン、アンフェタミンを含む)の離脱症状を患う患者、またはOPD/IPD処置を受けている患者を介護する人を指す。介護者は、例えば、医療専門家、家族、友人、またはソーシャルワーカーであり得、対象の状況に応じて、自宅または病院または他の医療現場で介護を行うことができる。
【0053】
本開示の実施は、観察者のフィードバックを収集するためのインターフェースを有するモバイルアプリケーションなどの追加の技術を含む。追加のデータ収集のために、専用のセンサを追加してもよい。いくつかの実装形態では、本開示で説明されるシステムは、生態学的瞬間評価(EMA)を使用する。評価には、交感神経系活動などに関連するが、これらに限定されないデータを収集できるウェアラブル電子デバイスまたはユーザー機器を使用して日常生活で繰り返し収集される対象の感情及び行動が含まれ得る。データの繰り返し測定は、現象のダイナミクスの重要な特性を分析するためである。
【0054】
本開示の
図1に開示されているシステムを参照する。図示されているように、激越を呈しやすい対象は、交感神経系活動などに関連するが、これらに限定されないデータを収集するためのウェアラブルデバイスを装着する。ウェアラブルデバイスによって収集されたデータは、少なくともローカルサーバーに送信される(例えば、ネットワークを介して)。ネットワーク展開において、ローカルサーバーは、非限定的に、サーバーコンピュータ、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレットPC、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、制御システム、またはローカルサーバーによって取られるべきアクションを指定する一連の命令(順次またはその他)を実行可能な任意の機械を含み得る。ローカルサーバーは、プロセッサ(図示せず)と、プロセッサに操作可能に連結されたメモリ(図示せず)とを含む。ローカルサーバーのプロセッサは、ローカルサーバーによって実行されるものとして本明細書で説明されるような機能(例えば、ローカルサーバーのメモリに格納されたコード)を実行することができる。ネットワークサーバー(中央サーバーとも呼ばれる)は、ローカルサーバーからデータを受信するように構成されている。ネットワークサーバーは、プロセッサ(図示せず)と、プロセッサに操作可能に連結されたメモリ(図示せず)とを含む。ネットワークサーバーのプロセッサは、ネットワークサーバーによって実行されるものとして本明細書で説明されるような機能(例えば、ネットワークサーバーのメモリに格納されたコード)を実行することができる。いくつかの実装形態では、ローカルサーバーとネットワークサーバー両方の代わりに、単一のサーバーを使用することができる。このような実装では、単一のサーバーは、ローカルサーバーとネットワークサーバーの機能を組み合わせることができる。
【0055】
図1に関して示され、説明されているデバイス間の通信は、通信ネットワークを介して行うことができる。ネットワークは、サーバー及び/または計算デバイスのデジタル通信ネットワークであることができる。ネットワーク上のサーバー及び/または計算装置は、1つ以上の有線または無線通信ネットワーク(図示せず)を介して接続され、例えば、データストレージ及び/または計算能力などのリソースを共有することができる。ネットワーク150のサーバー及び/または計算デバイス間の有線または無線通信ネットワークとしては、1つ以上の通信チャネル、例えば、WiFi(登録商標)通信チャネル、ブルートゥース(登録商標)通信チャネル、セルラー通信チャネル、無線周波数(RF)通信チャネル、超低周波(ELF)通信チャネル、極超長波(ULF)通信チャネル、低周波(LF)通信チャネル、中周波(MF)通信チャネル、極超短波(UHF)通信チャネル、ミリ波(EHF)通信チャネル、光ファイバ通信チャネル、電子通信チャネル、衛星通信チャネルなどを含むことができる。ネットワークは、例えば、インターネット、イントラネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、メトロポリタンエリアネットワーク(MAN)、世界規模相互運用マイクロ波アクセスネットワーク(WiMAX(登録商標))、仮想ネットワーク、他の任意の適切な通信システム、及び/またはこれらのネットワークの組み合わせであることができる。
【0056】
開示されたシステムには、例えば、アルツハイマー病、せん妄、または認知症などの様々な神経精神疾患及び神経変性疾患を含む疾患の診断の文脈において、激越のエピソードを有する対象から受動的に縦断データを収集するように構成されたデータ収集モジュールが含まれる。データ収集モジュールには、運動データ、位置データ、生理学的データ、及び音声データを受動的に収集するように構成されたサブモジュールが含まれる。データ収集モジュールは、自動監視デバイス(例えば、ウェアラブルデバイス、スマートフォン、または
図8に示す第1の監視デバイス8001)内のプロセッサであることができる。このようにして収集されたデータは、激越モデルの開発に使用される。データ収集モジュールは、収集されたデータの送信のために、ネットワークサーバー及びローカルサーバーと通信するように構成される。収集されたデータを用いて、生態学的瞬間評価(EMA)が実施され、システムの処理ユニット(例えば、ネットワークサーバーのプロセッサ、または
図8に示すプロセッサ802)によってレポートが生成される。EMAのために、対象からデータが収集される。EMAはまた、対象へのプロンプト、パッチ、及びアップデートの提供も含む。ネットワークサーバーで取得され格納されたデータは、切迫した激越のエピソードを効果的に監視及び予測するための訓練目的で使用される。プロセッシング・ユニット(例えば、ネットワークサーバー内のプロセッサ、または
図8に示されるプロセッサ802)は、対象における切迫した激越エピソードを診断し、例えば、介護者によって監視される対応するデバイスに、対象の切迫した激越エピソードについて介護者にアラートする信号を送信するように構成される。信号は、介護者によって監視される遠隔の対応するデバイス(
図1には図示せず)にも送信することができ、対象における切迫した激越エピソードを介護者にアラートする。例えば、介護者によって監視される対応するデバイスは、
図8において第2の監視デバイス8002とも称される。
【0057】
自動検知デバイス(すなわち、ウェアラブルデバイス(1))は、一組のセンサ、プロセッサ、及びメモリを含む。ウェアラブルデバイスは、対象の運動及び位置情報を検出するための1つ以上のユニットを含む。例えば、位置を追跡するためのユニットは、例えば、衛星ベースの無線ナビゲーションシステムデータ(例えば、GPS)モジュール(経度及び緯度を追跡する)、インド地域航法衛星システム(NavIC)モジュール、全球測位衛星システム(GLONASS)モジュール、BeiDouモジュール、Galileoモジュール、Quasi-Zeniethモジュールなどの任意の好適な衛星ベースの無線ナビゲーションシステムであり得る。例えば、運動パターンは、加速度計、コンパス、ジャイロスコープ、歩数計などであるがこれらに限定されないデバイスによって追跡することができる。対象の発話は、時間、日付、または持続時間の追跡に関して追跡された対象の音声を追跡する音声監視ユニット(例えば、マイクによって記録されたもの)によって監視することができ、さらに発話ペース感情及び衝動的な動作を含む。いくつかの実装形態では、ウェアラブルデバイスは、心拍数(HR)、心拍変動(HRV)、呼吸数、ECGレベル、安静時心拍数(RHR)、体温偏差、±EDA、ECGなどの生理学的データを測定するための他のユニットを含むことができる。身体のバイタル及び他のパラメータの追跡は、患者によって異なる。例えば、一部の患者では、落ち着きのなさが激越のトリガーになり得るが、他の患者ではそうではない可能性がある。
【0058】
いくつかの実装形態では、システムの訓練の間、データは継続的に監視または分析されない。デバイス及びデータ収集モジュールは、対象の健康状態を監視するためには使用されない。対象は、試験中に経験した健康状態の変化について、医師に連絡するよう指示される。
【0059】
いくつかの実装形態では、データ収集モジュールは、デバイスのバッテリが切れるまで、連続的、定期的、及び/または散発的にデータを記録する。データ収集モジュールは、ウェアラブルデバイス(またはデータ収集モジュール)の電源がオンになり、システム内で機能する瞬間からデータを記録/収集する。いくつかの実装形態では、データ収集モジュールは、充電中も記録する。ウェアラブルデバイス(またはデータ収集モジュール)が再起動(バッテリの低下などの理由でユーザーが伝える)した後、データ収集モジュールは自動的にデータ収集をトリガーする。本開示によるデータアップロードプロトコルは、データの定期的な保存[例えば、30分の間隔で]のために収集されたデータをアップロードすることを含む。これは、定義された時間間隔内で行われる。システムは、バッチが正常に送信されるまで、データ収集モジュール上のデータをバックアップしておくために、追加のメモリストレージ設備(例えば、
図1のストレージ設備(5)または追加のストレージ設備(6)(それぞれデータを格納するための少なくとも1つのメモリを含む))を含んでもよい。バックアップデータは後に削除することができるが、いくつかの実装形態では、アップロードが成功した後に削除される。Wi-Fiまたはセルラーなどの無線通信モード(ウェアラブルデバイス(1)及び/またはデータ収集モジュール(2)からの)は、アップロードチャネルに使用される。システム内のデバイス/インターフェースは、患者のIDなどの一意の認証情報によって承認される。いくつかの実装形態では、データの連続的な監視及び転送があり得るため、システム内のデバイスのための充電プロトコルも定義される。いくつかの実装形態では、デバイスは一晩中充電することができる。
【0060】
アラートは、患者の激越エピソードが切迫しているとき、またはその可能性が高いときに通知される。いくつかの実装形態では、アラートは、臨床監督者及び介護者(または臨床監督者または介護者がアクセス可能な第2の監視デバイス8002)にも送信されるが、患者にはアラートは見えない。いくつかの実装形態では、アラートは、臨床監督者、介護者、及び/または患者に送信され得る。アラートは、システム障害の場合に臨床監督者に提供されることも可能である。上記のシステム障害には、データアップロードの失敗/デバイスオフ、セルラー経由で実行されたデータアップロード、低バッテリ、デバイスのアクセス許可が付与されない、デバイスが20時間超静止している、データアップロードパターンの不規則性が含まれるが、これらに限定されるものでない。場合によっては、アラートは、第2の監視デバイス8002のモニター上のウィンドウの点滅、テキストメッセージ、通話、第2の監視デバイス8002で受信された音などであることができる。
【0061】
早期警告アルゴリズムは機械学習に基づいている。本開示の実装形態では、当該アルゴリズムを実装する早期警告モジュール(ネットワークサーバー(4)に含まれる、または装置800のメモリ801に含まれ、
図8のプロセッサ802によって実行可能)が含まれる。いくつかの実装形態では、早期警告モジュールは、ウェアラブルデバイスまたはデータ収集モジュールに含まれることも可能である。すなわち、機械学習モデルの訓練、及び機械学習モデルを用いた予測/分析は、ネットワークサーバー、ローカルサーバー、ウェアラブルデバイス、及び/またはデータ収集モジュールによって実行することができる。早期警告モジュールは、データ抽出、変換、及びロード(ETL)プロセスを実行するように構成される。一実施形態のETLプロセスの概要を図示する
図2を参照する。データは、ウェアラブルデバイス(1)及び/またはデータ収集モジュール(2)の複数のセンサから抽出される。システムは、使用、データ収集、及び転送に関するあらゆる問題を追跡するように構成された報告モジュール(ネットワークサーバー(4)に含まれるか、または
図8の装置800のメモリ801に含まれ、プロセッサ802によって実行可能である)を含む。データ処理ステップは、ETLプロセスの様々なステージで発生する。データ処理ステップは、ファイル圧縮、暗号化、タイムスタンプ、及び無音部分の除去、スピーチマスキング、または予備的なスピーチ分析を含み得るが、これらに限定されない。データ処理ステップは、患者の切迫した激越に関する信号/アラートを提供するデータ分析をさらに含む。
【0062】
本明細書に開示されるのは、
図3に開示されているような激越を呈しやすい対象における切迫した激越エピソードを診断する方法である。当該方法は、以下のステップを含む。
ステップ301:自動検知デバイスを用いて、対象の交感神経系活動の1つ以上の生理学的信号を監視すること。自動検知デバイスは、対象の皮膚表面に配置または取り付けられる。
ステップ302:対象が激越エピソードを起こしそうなときを特定すること。これは、自動検知デバイスからの受信データの処理を介して行われる。このステップは、ネットワークサーバー、ローカルサーバー、または自動検知デバイスで実行することができる。
図3は、当該方法の概要を開示している。
【0063】
本明細書でさらに開示されるのは、
図4に開示されるような、激越を呈しやすい対象における切迫した激越エピソードを介護者にアラートする方法である。当該方法は、以下のステップを含む。
ステップ401:対象の皮膚表面に配置または取り付けられた自動検知デバイスを用いて対象の交感神経系活動の1つ以上の生理学的信号を監視すること、
ステップ402:自動検知デバイス内の受信データの処理を介して、対象が激越エピソードを起こしそうなときを特定すること、
ステップ403:対象の切迫した激越エピソードを診断し、自動検知デバイスから介護者が監視する対応するデバイスに、対象の切迫した激越エピソードを介護者にアラートする信号を送信すること。
【0064】
図5は、激越を呈しやすい対象における激越の出現を防止する方法を示す図である。当該方法は、以下のステップを含む。
ステップ501:対象の皮膚表面に配置または取り付けられた自動検知デバイスを用いて対象の交感神経系活動の1つ以上の生理学的信号を監視すること;
ステップ502:自動検知デバイス内の受信データの処理を介して、対象が激越エピソードを起こしそうなときを特定すること;
ステップ503:自動検知デバイスから介護者が監視する遠隔の対応するデバイスに、対象の切迫した激越エピソードを介護者にアラートする信号を送信すること;
ステップ504:対象の交感神経活動を低下させる抗激越薬を介護者により投与すること。
【0065】
図6は、激越を呈しやすい対象における激越の早期出現または激越の徴候を治療する方法を示す。
図6にすでに示されているように、当該方法は、以下を含む。
ステップ601:対象の皮膚表面に配置または取り付けられた自動検知デバイスを用いて対象の交感神経系活動の1つ以上の生理学的信号を監視すること;
ステップ602:自動検知デバイス内の受信データの処理を介して、対象が激越エピソードを起こしているときを特定すること;
ステップ603:自動検知デバイスから介護者が監視する遠隔の対応するデバイスに、対象の激越エピソードの開始を介護者にアラートする信号を送信すること;
ステップ604:介護者が対象の交感神経活動を低下させる抗激越薬を投与すること。
【0066】
本開示の一実施形態では、激越を呈しやすい対象における切迫した激越エピソードを診断し、それを介護者にアラートする方法が開示される。
図7にすでに示されているように、当該方法は、以下のステップを含む。
ステップ701:交感神経系活動の第1の生理学的データを受信すること;
ステップ702:第1の生理学的データを用いて少なくとも1つの機械学習モデルを訓練することにより、少なくとも1つの生理学的パラメータのベースライン値を確立すること;
ステップ703:対象に取り付けられた第1の監視デバイスから、対象の交感神経系活動の第2の生理学的データを受信すること;
ステップ704:少なくとも1つの数理モデル(例えば、機械学習モデル)を使用して、少なくとも1つの生理学的パラメータのベースライン値に基づいて、第2の生理学的データを分析し、対象の激越エピソードを予測すること;
ステップ705:対象の激越エピソードの予測に基づいて、対象の激越エピソードの予測を第2の監視デバイスに通知するための信号を第2の監視デバイスに送信し、対象の交感神経系活動を低下させるための治療を対象に提供できるようにすること。
【0067】
第1の監視デバイスは、対象と接触するウェアラブルデバイス(例えば、スマートウォッチ)であり、第2の監視デバイスは、対象の介護者によって監視される。激越エピソードを予測するための分析は、対象の激越エピソードが発生する期間を判定することを含み、また、対象の激越エピソードの程度を判定することも含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、激越エピソードを予測するための分析は、第2の生理学的データを少なくとも1つの生理学的パラメータのベースライン値と比較することを含む。第2の生理学的データがベースライン値の第1の閾値を超える場合、信号は第1の信号であり、治療は第1の治療であり、第2の生理学的データがベースライン値の第2の閾値を超える場合、信号は第1の信号と異なる第2の信号であり、治療は第1の治療と異なる第2の治療である。例えば、機械学習モデル(または他の数理モデル)は、訓練データ(すなわち、
図7で説明される第1の生理学的データ)に基づいて、対象の平均EEGが第1の閾値未満である場合、対象が平静状態である確率が高い(例えば、80%超)と判定することができる。さらに、例えば、機械学習モデル(または他の数理モデル)は、訓練データに基づいて、対象の平均EEGが第1の閾値と第2の閾値との間にある場合、対象は次の1時間(または予め定められた期間)に激越エピソードを起こす可能性が高いと判定することができる。機械学習モデル(または他の数理モデル)は、訓練データに基づいて、平均EEGが第2の閾値を超えるとき、対象が激越エピソードを起こす可能性が高いと判定する。対象の新たなEEGデータを受信すると、プロセッサ(例えば、
図8のプロセッサ802)は、新たなEEGデータを第1の閾値及び第2の閾値と比較することができる。新たなEEGデータが第1の閾値と第2の閾値との間にある場合、プロセッサは、対象が次の1時間に激越エピソードを起こす可能性が高いと予測する。プロセッサは、第2の監視デバイス(例えば、
図8の8002)に、介護者にアラートする第1の信号を送信することができる。したがって、激越エピソードを回避するために、適時に、対象に第1の治療が行うことができる。新たなEEGデータが第2の閾値を超える場合、プロセッサは、異なる治療が対象に行われ得るように、第2の信号を第2の監視デバイスに送信することができる。場合によっては、閾値は、機械学習モデル(または他の数理モデル)によって決定することができる。場合によっては、機械学習モデル(例えば、深層学習モデル)は、ベースライン値を確立するため、異常を特定するため、及び/または激越エピソードを予測するために使用される。
【0069】
本明細書では、訓練された機械学習モデルを使用して、激越エピソードを分析及び予測するものとして説明するが、いくつかの実装形態では、任意の他の適切な数理モデル及び/またはアルゴリズムを使用することが可能である。例えば、ベースラインが確立されると、数理モデルは、その後の患者データをベースラインと比較して、患者データがベースラインから所定の量及び/または統計的閾値だけ変化するか否かを判定することができる。このような例では、患者データがベースラインから所定の量及び/または統計的閾値だけ変化する場合、アラートを生成して提供することができる。
【0070】
いくつかの実装形態では、第2の生理学的データは、第1の期間に受信される。対象の交感神経系活動の第3の生理学的データは、第1の期間の後の第2の期間に受信される。対象の交感神経系活動の変化のパターンを特定するための、対象の交感神経系活動のレポートが生成される。レポートは、第2の生理学的データ及び第3の生理学的データに基づく。例えば、交感神経活動のレポートは、対象が1日の特定の期間(例えば、朝、食後)、または特定のイベントが行われた後(例えば、家族の訪問後)に、激越エピソードを起こしやすい(または起こしにくい)ことを示すことが可能である。対象の交感神経系活動の変化パターン(または傾向)のこのようなレポートは、介護者が対象の激越エピソードの発生の可能性を低減すること、またはその発生に対してよりよく準備することを支援することができる。
【0071】
いくつかの実装形態では、交感神経系活動の第2の生理学的データは、電気皮膚活動の変化、心拍変動、瞳孔の大きさなどの認知機能評価、唾液アミラーゼの分泌、血圧、脈拍、呼吸数、または血中酸素濃度のうちの少なくとも1つを含むことが可能である。これらは例として挙げたものであり、限定するものではないことに留意する必要がある。監視する要素も患者によって異なる。交感神経系活動は、電気皮膚活動の任意の変化、または電気皮膚活動の任意の変化と安静時脳波の任意の変化を測定することにより評価される。
【0072】
本実施形態の方法は、信号を第2の監視デバイスに送信した後、激越エピソードに関連する徴候を受信することと、その徴候に基づいて少なくとも1つの機械学習モデルを訓練することと、をさらに含む。
【0073】
本開示の一実施形態では、メモリ(801)と、メモリに操作可能に連結されたプロセッサ(802)とを含む、装置(800)が開示される。本装置のブロック図を
図8に示す。いくつかの実装形態では、装置(800)は、
図1のネットワークサーバー(4)及び/またはローカルサーバー(3)と構造的にも機能的にも類似している。本プロセッサは、対象に取り付けられた第1の監視デバイス(8001)から、対象の交感神経系活動の生理学的データを受信するように構成される。第1の監視デバイス(8001)は、自動化された監視デバイスである。プロセッサは、生理学的データを分析して交感神経系活動の基準パターンから異常を検出して、対象の激越エピソードの発生確率を判定することが可能である。この目的のために、プロセッサは、少なくとも1つの機械学習モデルを実行する。プロセッサ(802)は、対象の激越エピソードの発生確率を第2の監視デバイスに通知するための信号を第2の監視デバイス(8002)に送信し、対象の交感神経系活動を低下させるための治療を提供できるようにさせることがさらに可能である。第2の監視デバイスは、介護者によって監視されるデバイス(例えば、対象から遠隔の)である。第2の監視デバイスは、音/アラーム、及び/またはディスプレイによって介護者にアラートすることができるエンドユーザー端末であってもよい。第2の監視デバイスは、コンピュータまたはスマートフォンであり得るが、これに限定されない。
【0074】
プロセッサ(802)は、信号を第2の監視デバイスに送信した後、激越エピソードに関連する徴候を受信し、その徴候に基づいて少なくとも1つの機械学習モデルをさらに訓練するように構成される。その徴候は、(1)激越エピソードが発生するか否か、(2)激越エピソードが発生するとき、(3)激越エピソードの程度、(4)激越エピソードが持続する期間、または(5)激越エピソードの症状、のうちの1つを示す。
【0075】
機械学習モデル(または他の数理モデル)は、教師あり学習及び教師なし学習を使用して訓練することができる。装置(800)の機械学習モデル(または他の数理モデル)は、教師あり学習、教師なし学習、半教師あり学習、及び/または強化学習のうちの少なくとも1つに基づいて訓練される。いくつかの実装形態では、教師あり学習は、独立した予測因子に基づいて目標値が見出される回帰モデル(例えば、線形回帰)を含むことができる。これは、従属変数と独立変数との間の関係を見出すために、当該モデルが使用されることを意味する。少なくとも1つの機械学習モデルは、線形回帰モデル、ロジスティック回帰モデル、決定木モデル、ランダムフォレストモデル、ニューラルネットワーク、ディープニューラルネットワーク、及び/または勾配ブースティングモデルのうちの少なくとも1つを含むが、これらに限定されない任意の適切な種類の機械学習モデルであり得る。激越エピソードを予測するために、プロセッサは、データを分析するように構成される。この目的のために、プロセッサは、第2の生理学的データとベースライン値との比較に基づいて、対象の激越エピソードの程度を判定するように構成される。機械学習モデル(または他の数理モデル)は、メモリ801に格納され、プロセッサ802、及び/または例えばASIC、FPGA、CPLD、PLA、PLCなどのハードウェアベースのデバイスによって実行されるソフトウェアであることができる。いくつかの実装形態では、装置(800)は、
図1のネットワークサーバー(4)及び/またはローカルサーバー(3)と構造的にも機能的にも類似している。
【0076】
いくつかの実装形態では、プロセッサにより実行される命令を表すコードを格納する非一時的機械可読媒体を使用することができる。命令は、さらにネットワークインターフェースデバイスを介してネットワーク上で送受信され得る。「機械可読媒体」という用語は、機械が実行するための一連の命令を格納、符号化、または運ぶことができ、機械に本開示の任意の1つ以上の方法を実行させる任意の媒体を含むとみなされるものとする。したがって、「機械可読媒体」という用語は、以下を含むがこれらに限定されないものと解釈されるものとする。有形媒体;1つ以上の読み取り専用(不揮発性)メモリ、ランダムアクセスメモリ、または他の書き換え可能(揮発性)メモリを収容するメモリカードまたは他のパッケージなどのソリッドステートメモリー;ディスクまたはテープなどの光磁気または光学媒体;非一時的媒体または他の自己完結型情報アーカイブまたはアーカイブのセットは、有形ストレージ媒体と同等の配布媒体とみなされる。したがって、本開示は、本明細書に列挙され、本明細書のソフトウェア実装が格納される、当該技術分野で認められている均等物及び後継媒体を含む、機械可読媒体または配布媒体の任意の1つ以上を含むと考えられる。コードは、プロセッサに機能を実行させるためのコードを含む。上記コードは、プロセッサに、少なくとも1つの数理モデル(例えば、機械学習モデル)を用いて分析する前に、複数の対象に関連する交感神経系活動の訓練生理学的データに基づいた少なくとも1つの数理モデル(例えば、機械学習モデル)を訓練させるためのコードを含む。少なくとも1つの数理モデル(例えば、機械学習モデル)は、入力として複数の生理学的パラメータを含む。複数の生理学的パラメータからの各生理的パラメータは、数理モデル(例えば、機械学習モデル)の複数の重みから1つの重みと関連付けられる。媒体は、プロセッサに、少なくとも1つの数理モデル(例えば、機械学習モデル)に基づいて、複数の生理学的パラメータから少なくとも1つの生理学的パラメータの基準パターンを判定させるためのコードを含む。コードは、プロセッサに、第2の監視デバイスに信号を送信した後に激越エピソードに関連する徴候を受信させ、それにしたがって少なくとも1つの数理モデル(例えば、機械学習モデル)を訓練して少なくとも1つの生理学的パラメータの基準パターン及び少なくとも1つの生理学的パラメータに関連する重みを調整させるためのコードを含む。
【0077】
いくつかの実装形態では、メモリ801は、数理モデルデータベース及び/または機械学習モデルデータベース(図示せず)を格納することができ、これは、対象の交感神経系活動の生理学的データ、任意の追加データ(例えば、位置、運動、音声、加速度計、ジャイロスコープ、コンパス、衛星ベースの無線ナビゲーションシステムデータ)、及び/または第1の監視デバイス8001(または第1の監視デバイス8001のセンサ)から受信した任意のデータ、及び/または患者データを含むことができる。患者データは、患者の医療データ(例えば、人口統計学的属性、病歴、がんの種類、がんのステージ、以前の治療及び反応、進行履歴、メタボロミクス、及び/または組織学)を含むことができる。いくつかの実装形態では、交感神経系活動の生理学的データ、交感神経系活動の追加データ、及び/または患者データは、機械学習モデル(または他の数理モデル)を訓練するために使用することができる。
【0078】
いくつかの実装形態では、プロセッサ802は、第1の期間中に交感神経系活動の第1の生理学的データを受信することができる。プロセッサ802は、第1の生理学的データに基づいて機械学習モデル(または他の数理モデル)を訓練することによって、基準パターン(少なくとも1つのベースライン値または閾値を含む)を確立することができる。第1の期間の後の第2の期間に、プロセッサ802は、第2の生理学的データを受信し、機械学習モデル(または他の数理モデル)を使用して第2の生理学的データを分析して、異常を特定する及び/または激越エピソードを予測することが可能である。訓練ステップ(例えば、
図7のステップ702)及び分析ステップ(例えば、
図7のステップ704)は、プロセッサ802または異なるプロセッサによって実行され得る。場合によっては、第1の生理学的データ及び第2の生理学的データは、単一の対象に関連付けることができる(例えば、監視段階及び/または期間中に対象を監視することによって収集される)。場合によっては、第1の生理学的データは、第2の生理学的データの送信元である対象を含む、または含まない対象セットに関連付けることができる。いくつかの例では、第1の生理学的データは、基準パターンを確立するために機械学習モデル(または他の数理モデル)によって使用される訓練データである。訓練データは、対象に固有のデータまたは個人化されたデータであり、訓練期間にわたる対象の監視に基づくデータであり得る。いくつかの例では、訓練データは、他の類似の対象(例えば、類似の特性、人口統計学的属性、病歴などを有する)と関連付けることができる。いくつかの例では、訓練データは、激越エピソードが発生したとき(または発生後)のフィードバックまたは徴候に基づくことができる。
【0079】
いくつかの実装形態では、プロセッサ802は、激越エピソードの予測をアラートする信号を送信した後に徴候を受信することができる。例えば、介護者は、予測された激越エピソードが起こったか否か、激越エピソードの強度レベル、激越エピソードが起こる時間、激越エピソードの持続時間、及び/または激越エピソードの他の特性についての徴候をプロセッサ802に提供することができる。受信した徴候に基づいて、プロセッサ802は、強化学習によって機械学習モデル(または他の数理モデル)をさらに訓練することができる。具体的には、プロセッサ802は、機械学習モデル(または他の数理モデル)がより正確な予測を提供できるように、機械学習モデル(または他の数理モデル)に関連する生理学的パラメータのセット及び/または重み(複数可)を微調整することができる。
【0080】
いくつかの実装形態では、プロセッサ802は、例えば、ハードウェアベースの集積回路(IC)、または一組の命令もしくはコードを作動させる及び/または実行するように構成された他の任意の適切な処理デバイスであることができる。プロセッサ802は、
図7に関して説明した処理を実行するように構成され得る。例えば、プロセッサ802は、汎用プロセッサ、中央処理ユニット(CPU)、加速処理ユニット(APU)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)、コンプレックスプログラムマブルロジックデバイス(CPLD)、プログラムマブルロジックコントローラ(PLC)などであることができる。プロセッサ802は、システムバス(例えば、アドレスバス、データバス、及び/または制御バス)を介してメモリ801に操作可能に連結される。
【0081】
メモリ801は、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、メモリバッファ、ハードドライブ、読み取り専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EPROM)などであることができる。メモリ801は、例えば、プロセッサ801に1つ以上の処理、機能など(例えば、機械学習モデル)を実施させるための命令を含むことができる1つ以上のソフトウェアモジュール及び/またはコードを格納することができる。いくつかの実装形態では、メモリ801は、プロセッサ802に操作可能に連結され得るポータブルメモリ(例えば、フラッシュドライブ、ポータブルハードディスクなど)であることができる。
【0082】
治療薬:
交感神経系活動を低下させることができる任意の抗激越薬は、激越の出現を防止するために本明細書のシステムの一部として使用することができる。適切な薬剤の1つの特定の群は、α-2-アドレナリン受容体作動薬である。
【0083】
α-2アドレナリン受容体作動薬:
微生物学者らは、作動薬と拮抗薬に対する親和性に基づいて、α-2受容体の様々なクラスを細分化することができている。α-2受容体は、3つの薬理学的サブタイプ、α-2A、α-2B、及びα-2Cを有するGタンパク質共役型受容体のファミリーを構成する。α-2A及びα-2Cは主に中枢神経系に存在する。これらの受容体サブタイプの刺激は、鎮静、鎮痛、及び交感神経作用に関与している可能性がある(Joseph A.Giovannitti,Jr et al.Alpha-2 Adrenergic Receptor Agonists:A Review of Current Clinical Applications,Anesthesia Progress,2015)。
【0084】
一実施形態では、α-2アドレナリン受容体作動薬は、クロニジン、グアンファシン、グアナベンズ、グアノキサベンズ、グアネチジン、キシラジン、チザニジン、メデトミジン、デクスメデトミジン、メチルドパ、メチルノルエピネフリン、ファドルミジン、ヨードクロニジン、アプラクロニジン、デトミジン、ロフェキシジン、アミトラズ、ミバゼロール、アゼペキソール、タリペキソール、リルメニジン、ナファゾリン、オキシメタゾリン、キシロメタゾリン、テトラヒドロゾリン、トラマゾリン、タリペキソール、ロミフィジン、プロピルヘキセドリン、ノルフェネフリン、オクトパミン、モキソニジン、リダミジン、トロニジン、UK14304、DJ-7141、ST-91、RWJ-52353、TCG-1000、4-(3-アミノメチル-シクロヘキサ-3-エニルメチル)-1,3-ジヒドロ-イミダゾール-2-チオン、及び4-(3-ヒドロキシメチル-シクロヘキサ-3-エニルメチル)-1,3-ジヒドロ-イミダゾール-2-チオン、または薬学上許容できるそれらの塩を含むが、これに限定されない。
【0085】
好ましい実施形態では、α-2アドレナリン受容体作動薬は、デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩、特に塩酸塩である。
【0086】
デクスメデトミジン塩酸塩は、静注形態Precedex(登録商標)としても知られ、高選択的α2-アドレナリン作動薬である。これは、メデトミジンの薬理学的に活性なd-異性体である(Joseph A.Giovannitti,Jr et al.Alpha-2 Adrenergic Receptor Agonists:A Review of Current Clinical Applications,Anesthesia Progress,2015)。ベンゾジアゼピン及びオピオイドなどの他の鎮静剤とは異なり、デクスメデトミジンは呼吸抑制を引き起こすことなくその効果を発揮する。デクスメデトミジンは、青斑核における中枢シナプス前α2-受容体及びシナプス後α2-受容体の活性化により催眠作用を発揮する。PRECEDEX(登録商標)は、ICU鎮静(すなわち集中治療室での治療中にまず挿管され、人工呼吸された患者の鎮静)及び処置時の鎮静(外科的処置及び他の処置の前及び最中での非挿管患者の鎮静)での使用が米国FDAによって承認されており、安全かつ効果的な鎮静剤として知られている。
【0087】
その開示が参照により本明細書に組み込まれるWO2018/126182において、本発明者らは、デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を舌下投与することによる、対象における激越または激越の徴候の治療について記載する。有利なことに、激越は、顕著な鎮静も引き起こすことなく効果的に治療される。好ましい実施形態では、本開示は、激越の出現を防止するための本明細書のシステムの一部として、交感神経系活動を低減するための、薄膜フィルムなどのデクスメデトミジン塩酸塩舌下製品を提供する。特定の実施形態では、本システムは、顕著な鎮静も引き起こすことなく、激越の出現を防止する。
【0088】
神経精神疾患または神経変性疾患の患者における激越は、患者が治療に非協力的になり、また潜在的に暴力的で攻撃的になり、患者自身及び介護者にとって危険なものとなる。患者が激越状態になろうとしていることを示す信号を検出することによって、本開示は、診断と、デクスメデトミジンのようなα2アドレナリン作動薬などの抗激越薬を用いた治療コンポーネントとを組み合わせて、激越エピソードの発現を防止する。したがって、本開示によれば、デクスメデトミジンは、予防的または防止的な治療薬として使用することができる。
【0089】
監視デバイス/センサ:
広範なデバイス/センサ、例えば、適切なセンサデバイス、例えば、ネットワーク機能を有する腰装着型マルチセンサデバイス、ネットワーク機能を有する手首装着型マルチセンサデバイス、ネットワーク機能を有する指装着型マルチセンサデバイスなど。特定の実施形態では、広範なデバイス/センサ、例えば、スマートフォン(例えば、iPhone(BYODまたはプロビジョニング))、加速度計及びジャイロスコープ、ポータブルデバイス、デジタルデバイス、スマートファブリック、スマートウォッチ[例えば、Apple watch(例えば、Apple watch 3)またはiWatch]のようなバンド及びアクチュエータ、MC10パッチなどのスマートパッチ、スマートウォッチを装着できない、もしくは装着したくない患者もしくは高機能患者用のOura Ring、Androidデバイス、Microsoft Kinectのようなセンサ、無線通信ネットワーク及び電源、ならびに処理及び意思決定支援のためのデータ取得技術、または同様の機能を果たす任意の従来の、または非従来のデバイス/センサが、この定義された用語に該当することができる。Oura Cloud APIは、HTTP REST APIエンドポイントの集合体であり、認証にOAuth2を使用する。本明細書で使用されるデバイスはまた、1つ以上の早期警告アルゴリズム、アラートユニット、及びアラートユニットによって提供される1つ以上のアラートに関するデータ、すなわち交感神経活動の過去の検出増加、患者に関するデータ、所定の許容範囲及び閾値などを格納するためのストレージユニットを含むことができる。
【0090】
いくつかの実施形態では、自動検知デバイスは、EDAまたは安静時EEGなどの生理学的パラメータ、運動パラメータ、及び音声パラメータを含む統合されたパラメータについて測定したデータを内部メモリに記録し、さらに、データ信号をフィルタリングし、スパイク及び非接触値などのノイズを除去する(喜び及び幸福などのポジティブな感情がEDAも増加させ得るというリスクを回避するため)。ベースライン値は、患者について計算し、EDA及び/または安静時EEGレベルなどの生理学的パラメータの任意の変化を定義されたスケール(0から5まで)で統計的に分類することができる。
【0091】
方法:
本開示は、切迫した激越エピソードを示唆する、対象の交感神経活動の増加により生じる生理学的信号の変化を測定する監視デバイスを用いて、対象の激越の出現の徴候を検出する方法を提供する。
【0092】
本開示はまた、交感神経活動の増加により生じる生理学的信号の変化を測定するデバイスと、エンドユーザーディスプレイ端末などの適切な対応するデバイスとの間のインターフェースを介して、対象の激越の出現の徴候を介護者にアラートする方法も提供する。本方法は、デバイスが、交感神経系活動の増加に関連する情報を、例えば、ブルートゥースを介して遠隔的に、エンドユーザーディスプレイ端末などの受信ユニットに送信することを含み、その後、切迫した激越エピソードについて介護者に能動的にアラートしてもよいし、介護者による確認及び行動のためにデバイスから受信した情報を消極的に提示(例えば、画面上に表示)してもよい。
【0093】
本開示はまた、対象における激越の出現を防止する方法を提供し、介護者は、前述のデバイスから受信した情報を評価し、対象の交感神経系活動を低下させる抗激越薬を対象に投与するなどして、対象を落ち着かせる行動を取る。
【0094】
いくつかの実施形態では、デバイスは、EDAを経時的に測定することにより、交感神経系活動の変化を監視する。このデバイスはまた、安静時EEGなどの心拍変動、瞳孔の大きさなどの認知機能評価、唾液アミラーゼの分泌、血圧、脈拍、呼吸数、血中酸素濃度、及び交感神経系活動の増加に関連する他の信号を含む他の生理学的信号を監視することもできる。
【0095】
いくつかの実施形態では、自動検知デバイスは、統合された生理学的パラメータ(例えば、EDA、安静時EEG、血圧、移動性/運動、記憶/処理、発話/睡眠パターン、社会的関与など)に関する客観的データをデバイスの内部メモリに記録及び収集し、アルゴリズムを利用してデータを特定の測定値、または集約した機能的転帰として解釈可能な形式に変換し(データ信号のフィルタリングと、スパイク及び非接触値などのノイズの除去(喜び及び幸福などのポジティブな感情がEDAも増加させ得るというリスクを回避するため)を含む)、ベースライン値を取得する。ベースライン値は、患者について計算され、EDA及び/または安静時EEGレベルなどの生理学的パラメータの任意の変化を定義されたスケール(0から5まで)で統計的に分類する。PANSS-ECは、統合失調症患者のPECとも呼ばれ、双極性障害は検知デバイスの測定値の検証のためのベースラインとして使用される。本開示は、予測アルゴリズムを利用し、激越エピソードの発症前にデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩の投与を可能にする関連するウェアラブルデバイス技術を提供し、これにより、患者及び介護者の負担を軽減することができる。好ましい実施形態では、デクスメデトミジンは、薄い舌下フィルムの形態である。デクスメデトミジンを含む適切な薄い舌下フィルムは、PCT出願番号PCT/US2019/039268に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、自動監視デバイスは、ブルートゥースまたは任意の他の送信関連技術を通じてコンピュータデータベースに信号を送信/転送する。
【0096】
特定の実施形態では、激越の出現の徴候は、患者の皮膚に配置された自動検知デバイスの助けを借りてEDAを監視することによって検出される。交感神経系活動に変化があると発汗がわずかに増加し、皮膚の抵抗が低下するため(発汗には水及び電解質が含まれるため)、上記デバイスは、患者の皮膚の電気抵抗の変化を記録することによりEDAを監視し、デバイスの内部メモリにデータを送信し、さらに、収集データを複数の早期警告アルゴリズムを含むコンピュータデータベースに転送し、データを特定の測定値または集約した機能的転帰として解釈可能な形式に変換し(データ信号のフィルタリングと、スパイク及び非接触値などのノイズの除去(喜び及び幸福などのポジティブな感情がEDAも増加させ得るというリスクを回避するため)とを含む)、ベースライン値を取得する。
【0097】
いくつかの実施形態では、患者監視デバイスは、患者から生理学的データを取得するために、ディスプレイデバイスを含む少なくとも1つの患者モニターと、患者に接続された少なくとも1つのセンサとを含む。患者監視デバイスは、1つ以上の早期警告アルゴリズムを含むコンピュータデータベースにさらに接続される。各早期警告アルゴリズムは、生理学的データの複数のパラメータに基づいて患者の激越の出現の初期徴候を予測し、早期警告アルゴリズムの動作に基づいて患者のアラート/警告を生成するように動作する。
【0098】
いくつかの実施形態では、早期警告アルゴリズムを生成するプロセスは、開発段階1;開発段階2;開発段階3という3つの段階を含む。
【0099】
開発段階1には、(i)データ収集ツール、(ii)データ処理ツール、(iii)インフラストラクチャの作成ステップを含めることができる。データ収集ツールには、ユーザービリティ、ユーザーエクスペリエンス、患者の関与及びニーズの観点における受動的及び能動的なモバイルデータ収集ツールの検証;連続的な運動データ収集(例えば、加速度計、ジャイロスコープ、コンパス、歩数計、活動タイプ、身体パフォーマンス、位置、衛星ベースの無線ナビゲーションなど)、生理学的データ収集及び音声データ収集(例えば、発話ペース感情及び衝動的な動作の認識)に使用されるハードウェアセンサの信頼性の判断が含まれる。そして関与するデータ収集ツールに必要な改善を加える。データ処理ツールには、データの参照及びモデルの達成性能の観察及びエッジケースの文書化に基づいて、i)運動処理、ii)音声処理、iii)生理学的状態処理、のための基本分類モデルのプロトタイプを構築することが含まれる。急性の患者状態の早期警告システム構築に必要なため、インフラストラクチャには、モバイルベースのリアルタイムデータ収集、処理、解釈、及び通信のためのスケーラブルでプラグアンドプレイのシステムアーキテクチャを定義し実装することが含まれる。
【0100】
開発段階2には、研究統合と分類モデルの改善のステップが含まれる。研究統合は、データ照合、エキスパートアノテーション、データキュレーション、モデル訓練を含む。分類モデルの改善はユースケースごとの記述モデルの特異度及び感度における性能改善を含む:i)運動、音声、生理学的データ、ii)院内・院外、iii)TAの適用範囲の拡大。モデルの改善はさらに、i)発症、エピソード、及び回復の3段階の種類、長さ、及び強度、(ii)エピソード頻度及び同時性に基づいて、第1の症状発生予測モデルを開発することと、第1の患者別の激越プロファイルを開発することと、を含む。
【0101】
開発段階3には、研究統合と分類モデルの改善のステップが含まれる。研究統合は、急性の激越の測定を、確立された評価方法(PANSS-EC)と比較することを含む。分類モデルの改善はユースケースごとの特異度及び感度における記述モデルの性能改善を含む:i)運動、音声、生理学的データ、ii)院内・院外、iii)治療領域の適用範囲の拡大(連続サイクル)。また、患者別の激越プロファイルを作成するエンジンを予測機能(進行と予後を目的とした)により拡張することも含まれる。
【0102】
いくつかの実施形態では、激越の出現の徴候は、統合失調症、双極性障害、双極性躁病、せん妄、大うつ病性障害、うつ病、及び他の関連する神経精神疾患からなる群から選択される神経精神疾患を患う患者において監視される。場合によっては、患者は統合失調症またはせん妄、好ましくは統合失調症を患いかけている。いくつかの実施形態では、せん妄を患う患者において、激越の出現の徴候が監視される。せん妄患者の激越を測定するために使用される様々な手段には、リッチモンド興奮鎮静スケール(RASS)、覚醒レベルの観察スケール(OSLA)、混乱評価法(CAM)、せん妄観察スクリーニングスケール(DOS)、看護せん妄スクリーニングスケール(Nu-DESC)、日常の一部としての急性せん妄の認識(RADAR)、4AT(4A’s Test)が含まれる。いくつかの実施形態では、双極性障害を患う患者において、激越の出現の徴候が監視される。双極性障害患者における激越の測定に使用される様々な手段には、陽性・陰性症状スケール興奮版(PANSS-EC)、モンゴメリ・アスベルグうつ病評価スケール(MADRS)、単一項目行動評価スケール(BARS)が含まれる。いくつかの実施形態では、激越の出現の徴候は、アルツハイマー病、前頭側頭認知症(FTD)、認知症、レビー小体型認知症(DLB)、外傷後ストレス障害(PTSD)、パーキンソン病、血管性認知症、血管性認知機能障害、ハンチントン病、多発性硬化症、クロイツフェルト-ヤコブ病、多系統萎縮症、外傷性脳損傷、または進行性核上麻痺などの神経変性疾患を患う患者において監視される。いくつかの実施形態では、認知症を患う患者において、激越の出現の徴候が監視される。認知症患者において激越を測定するために使用される様々な手段には、コーエン・マンスフィールド激越目録(CMAI)、激越行動スケール(ABS)、ミデルハイム前頭葉スコア(MFS)などの新たなデジタル測定法の検証用のベースラインとして使用され得る認知症のスケールバッテリ(例えば、BAS、ABID、MPI)、アルツハイマー病行動病理学スケール(Behave-AD)、コーネル認知症抑うつスケール(CSDD)が含まれる。
【0103】
いくつかの実施形態では、オピオイド、アルコール、及び薬物乱用(コカイン、アンフェタミンを含む)の離脱症状を患う患者において、激越の出現の徴候を監視する。
【0104】
いくつかの実施形態では、OPD/IPD処置(例えば、MRI、CTまたはCATスキャン、腰椎穿刺、骨髄穿刺生検、抜歯、または他の歯科処置)を受けている患者において、激越の出現の徴候が監視される。
【0105】
いくつかの実施形態では、本開示は、激越を呈しやすい対象における激越の出現を防止する方法であって、
(a)対象の皮膚表面に配置または取り付けられた自動検知デバイスを用いて対象の交感神経系活動の1つ以上の生理学的信号を監視することと、
(b)デバイス内の受信データの処理を介して、対象が激越エピソードを起こしそうなときを特定することと、
(c)デバイスから介護者が監視する遠隔の対応するデバイスに、対象の切迫した激越エピソードを介護者にアラートする信号を送信することと、
(d)デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を介護者により投与して、患者の交感神経活動を低下させることと、を含む方法を提供する。
【0106】
特定の実施形態では、デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩、例えば、デクスメデトミジン塩酸塩は、例えば、薄膜フィルムを介して、対象に舌下投与される。場合によっては、顕著な鎮静を引き起こすことなく、激越の出現が防止される。
【0107】
いくつかの実施形態では、交感神経活動の増加は、皮膚電気活動の測定であって、監視デバイスが、患者の指にクリップで留められ、隣接する手の指の中節骨に電極を取り付けられる、測定と、EDA波形の測定/解析によって検出される。次いで、クリップ留めされたデバイスによって得られたデータは、監視デバイスが接続されたコンピュータデータベースであって、1つ以上の早期警告アルゴリズムを含むコンピュータデータベースに転送される。分析されたデータに基づいて、早期警告アルゴリズムが患者の激越の出現の初期徴候を予測し、早期警告アルゴリズムの動作に基づいて、介護者に対して抗激越薬を投与すべきであるという患者アラート/警告を生成する。
【0108】
特定の実施形態では、利便的なことにはクリップ留めされたデバイスは、EDAを監視するために使用される、Biopac MP150システムなどの商用デバイスであり得る。本明細書では、等張性の電極ペーストを充填した内径11mmの銀/塩化銀電極が、非利き手の第4指と第5指の中節骨に取り付けられる。EDA波形は、AcqKnowledgeソフトウェアまたはMatlabを使用して、刺激の開始から1~4秒間のウィンドウ内の最大たわみについてベースからピークまでの差を評価して、分析される。
【0109】
別の実施形態では、交感神経活動の増加は、患者の安静時EEGを測定することによって検出される。例えば、患者は、複数の頭皮電極、例えば、約3~約128個の範囲の電極を含む電極キャップを装着する。キャップには、額の上に配置された1つの基準電極(ground electrode)と、各耳たぶに1つずつ配置された1組のリンクされた参考電極(reference electrode)が含まれる。垂直眼電図及び水平眼電図(VEOG及びHEOG)を記録し、瞬きと眼球運動についてEEGデータを収集するために使用した。覚醒安静時のEEG活動(例えば、スペクトルパワー、トポグラフィックマイクロステート、及び電極間コヒーレンス)も監視される。監視されたデータの記録は、最大3分間の閉眼安静時EEGについて得られる。患者は、セッションのために目を閉じてリラックスするように指示され、可能な限り静止するように指示される(EEGの動きによるアーチファクトを最小限に抑えるため)。
【0110】
いくつかの実施形態では、監視デバイスは、安静時EEGを監視し、次いで、得られたデータを監視デバイスが接続されたコンピュータデータベース(1つ以上の早期警告アルゴリズムを含む)に転送する。分析されたデータに基づいて、早期警告アルゴリズムが患者の激越の出現の初期徴候を予測し、早期警告アルゴリズムの動作に基づいて、介護者に対して抗激越薬を投与すべきであるという患者アラート/警告を生成する。
【0111】
特定の実施形態では、EDA及び安静時EEGの両方が監視されて、対象が激越エピソードを起こしそうかどうかが判定される。
【0112】
いくつかの実施形態では、交感神経系活動は、音声、運動、及び生理学的信号によって監視される。音声信号には、例えば、涙、平均よりも速く話す、叫び声の爆発、絶え間ない話し方、及び首尾一貫性がない話し方などを挙げることができる。運動信号には、例えば、利き手(落ち着きがない、指/手を叩く(taping)、手を握り締める、爪を噛む、皮膚むしり)、身体(混沌とした体位変換、足を叩く、引きずり歩き)、身体及び手(じっと座っていられない、全般的に落ち着かない、ペーシング及び徘徊(例えば、部屋の周りを)、作業を突然始める/止める、服を脱いで着直す)などを挙げることができる。生理学的信号には、例えば、皮膚コンダクタンス(GSR)の変化、皮膚電気活動(EDA)、体温変動(皮膚温度)、筋電図(EMG)レベル、安静時EEG、ECGなどの心拍変動、アクチグラフ/睡眠ポリグラフ、瞳孔の大きさなどの認知機能評価、唾液アミラーゼの分泌、血圧、脈拍、呼吸数、血中酸素濃度、及び交感神経系活動に関する任意の他の信号などを挙げることができる。極端な興奮性、激高及び怒り、過度の興奮、気分変動など、運動・音声・生理学的データのいくつかを組み合わせたものを含む複合信号もある。
【0113】
さらなる実施形態では、本開示は、統合失調症を有する対象における激越の出現を防止する方法であって、
(a)対象の皮膚表面に配置または取り付けられた自動検知デバイスを用いて対象の交感神経系活動の1つ以上の信号(生理学的、運動、または音声)を監視することと、
(b)EDAデータを含むデバイス内の受信データの処理を介して、対象が激越エピソードを起こしそうなときを特定することと、
(c)デバイスから介護者が監視する遠隔の対応するデバイスに、対象の切迫した激越エピソードを介護者にアラートする信号を送信することと、
(d)デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を介護者により投与して、患者の交感神経活動を低下させることと、を含む方法を提供する。
【0114】
別の実施形態では、本開示は、認知症を有する対象における激越の出現を防止する方法であって、
(a)対象の皮膚表面に配置または取り付けられた自動検知デバイスを用いて対象の交感神経系活動の1つ以上の信号(生理学的、運動、または音声)を監視することと、
(b)EDA及び安静時EEGデータを含むデバイス内の受信データの処理を介して、対象が激越エピソードを起こしそうなときを特定することと、
(c)デバイスから介護者が監視する遠隔の対応するデバイスに、対象の切迫した激越エピソードを介護者にアラートする信号を送信することと、
(d)デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を介護者により投与して、患者の交感神経活動を低下させることと、を含む方法を提供する。
【0115】
さらなる実施形態では、本開示は、せん妄を有する対象における激越の出現を防止する方法であって、
(a)対象の皮膚表面に配置または取り付けられた自動検知デバイスを用いて対象の交感神経系活動の1つ以上の信号(生理学的、運動、または音声)を監視することと、
(b)EDAデータを含むデバイス内の受信データの処理を介して、対象が激越エピソードを起こしそうなときを特定することと、
(c)デバイスから介護者が監視する遠隔の対応するデバイスに、対象の切迫した激越エピソードを介護者にアラートする信号を送信することと、
(d)デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を介護者により投与して、患者の交感神経活動を低下させることと、を含む方法を提供する。
【0116】
一実施形態では、自動検知デバイスは、ウェアラブルデジタルデバイスである。よりいくつかの実施形態では、ウェアラブルデバイスは、ネットワーク機能を有する手首装着型マルチセンサデバイス(例えば、Apple watchなどのウェアラブルウォッチ)である。本開示はまた、交感神経系活動の1つ以上の生理学的信号を測定することによって、激越エピソードを起こしそうであると特定された対象における激越の出現を防止する方法であって、有効量のα-2アドレナリン受容体作動薬または薬学上許容できるその塩、好ましくは、デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を対象に投与することを含む、方法を提供する。さらに、本開示は、激越の発症前にデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を投与することを含む、激越の防止及び治療を提供する。
【0117】
別の実施形態では、本開示は、交感神経系活動及び運動系活動の1つ以上の生理学的信号を測定することによって、激越エピソードを起こしそうであると特定された対象における激越の出現を防止する方法であって、有効量のα-2アドレナリン受容体作動薬または薬学上許容できるその塩、好ましくは、デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を対象に舌下投与することを含む、方法を提供する。
【0118】
別の実施形態では、本開示は、交感神経系活動及び運動系活動の1つ以上の生理学的シグナルを測定することによって、激越エピソードを起こしそうであると特定された対象における激越の出現を防止する方法であって、対象に舌下フィルム剤を投与することを含み、該舌下フィルム剤が、有効量のα-2アドレナリン受容体作動薬または薬学上許容できるその塩、好ましくはデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を含む、方法を提供する。
【0119】
さらなる実施形態では、激越の出現は、顕著な鎮静を併発することなく防止される。
【0120】
薬学的組成物、それらの調製、及び投与:
本開示では、α-2アドレナリン受容体アゴニスト、例えば、デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を含む抗激越薬を、経口、非経口(皮下、皮内、筋肉内、静脈内、関節内、及び髄内を含む)、経粘膜(舌下または頬)、腹腔内、経皮、鼻内、直腸、及び局所(皮膚を含む)投与に適した医薬組成物の形態で、激越を防止するために用いることができる。好ましい実施形態では、デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩などのα-2アドレナリン受容体作動薬の投与経路は、経粘膜、特に舌下である。
【0121】
組成物は、利便的なことには単位剤形で提供することができ、薬学の分野で公知の任意の方法によって調製することができる。典型的には、これらの方法は、有効成分(例えば、デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩などのα-2アドレナリン受容体作動薬)と1つ以上の副成分を構成する担体を組み合わせるステップを含む。
【0122】
医薬組成物は、注射剤、錠剤、カプセル剤、フィルム、ウェーハ、パッチ、トローチ、ゲル、スプレー、液滴、溶液、懸濁液などとして製剤化することができる。好ましい実施形態では、組成物は、特に有効成分がデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩などのα-2アドレナリン受容体作動薬である場合、舌下フィルムである。
【0123】
本開示によると、錠剤を製造するために様々なプロセスを使用することができる。したがって、例えば、活性成分を適当な溶媒(結合剤を含むまたは含まない)に溶解し、ラクトース(他の材料を含んでもよい)全体に均一に分散させて、例えば、公知の造粒、コーティング、または噴霧プロセスによって、顆粒を調製することができる。顆粒は、ふるい分けによってサイズ分けされ得、及び/または乾式造粒法/スラッグ形成法/ローラー圧縮法によってさらに処理され得、その後、特定の粒度分布の適切な顆粒を達成するために粉砕ステップが行われる。サイズ分けされた顆粒は、その後、他の成分とブレンドし、及び/または適切なブレンダーで潤滑化し、適切な工具を使用して特定の寸法の錠剤に圧縮することができる。
【0124】
非経口投与に適した組成物には、水性及び非水性無菌注射液が含まれ、これらは抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び製剤を意図するレシピエントの血液と等張にするための溶質を含有することができる。水性及び非水性無菌懸濁液は、例えば、懸濁剤、増粘剤、及び/または湿潤剤(例えば、Tween 80など)を含んでもよい。製剤は、単位用量または複数回の用量容器、例えば密封されたアンプル及びバイアルで提供されてもよく、使用直前に、無菌液体担体、例えば注射用水を添加することのみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保管されてもよい。即席の注射溶液及び懸濁液を、滅菌粉末、顆粒、及び錠剤から調製してもよい。
【0125】
無菌注射用製剤はまた、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液として、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の無菌注射用溶液または懸濁液であってもよい。利用され得る許容可能なビヒクル及び溶媒の中には、マンニトール、水、リンゲル液、及び等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、溶媒または懸濁媒体として、無菌の固定油が従来利用されている。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む、任意の無刺激性固定油が利用されてよい。オレイン酸及びそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、注射物質の調製に有用であり、同様に、オリーブ油またはひまし油などの天然の薬学上許容できる油は、特にそれらのポリオキシエチル化された形態において、有用である。これらの油の溶液または懸濁液は、長鎖アルコール希釈剤または分散剤も含有することができる。
【0126】
1つの特定の実施形態では、激越を防止するために本開示で使用される抗激越組成物は、PRECEDEX(登録商標)である。
【0127】
皮膚への局所適用のためには、医薬組成物は、利便的なことには担体中に懸濁または溶解させた活性成分を含有する好適な軟膏で製剤化され得る。局所投与のための担体としては、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス、及び水が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、医薬組成物は、担体中に懸濁または溶解させた活性化合物を含有する好適なローション剤またはクリーム剤として製剤化してもよい。好適な担体には、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、及び水が挙げられるが、これらに限定されない。経皮パッチ及びイオントフォレーシス投与も本開示に含まれる。
【0128】
医薬組成物は、経直腸投与用の坐剤の形態で投与してもよい。これらの組成物は、活性成分を、室温では固体であるが、直腸温度では液体であり、それにより直腸内で溶けて活性成分を放出する好適な非刺激性賦形剤と混合することにより調製することができる。そのような物質には、ココアバター、ミツロウ、及びポリエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
医薬組成物はまた、鼻腔内投与または吸入によって投与してもよい。そのような組成物は、医薬製剤の分野において既知の技術にしたがって調製され、ベンジルアルコールもしくは他の好適な保存剤、バイオアベイラビリティを高めるための吸収促進剤、フルオロカーボン、及び/または当該技術分野において知られている他の可溶化剤もしくは分散剤を使用して、生理食塩水中の溶液として調製することができる。
【0130】
1つの特定の実施形態では、激越を防止するために本開示で使用される抗激越組成物は、鼻腔内スプレー、特に、デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を含むスプレー、例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願公開WO2013/090278A2に記載されるもの、である。
【0131】
好ましい実施形態では、医薬組成物は、薬学上許容できる担体を含み得る舌下組成物である。好適な薬学上許容できる担体には、水、塩化ナトリウム、結合剤、浸透促進剤、希釈剤、潤滑剤、香味剤、着色剤などが含まれる。
【0132】
舌下組成物は、例えば、フィルム、ウェーハ、パッチ、トローチ、ゲル、スプレー、錠剤、液滴などであり得る。一実施形態では、舌下組成物は、錠剤または充填粉末の形態である。
【0133】
1つの特定の実施形態では、激越を防止するために本開示で使用される抗激越組成物は、舌下(またはバッカル)スプレー、特に、デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を含むスプレー、例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願公開WO2010/132882A2に記載されるもの、である。
【0134】
好ましい実施形態では、舌下組成物は、フィルム(例えば、薄膜フィルム)、特にデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を含むフィルムである。特定の実施形態では、フィルムは、自立型溶解性フィルムであり、(i)デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩、(ii)1つ以上の水溶性ポリマー、及び、任意選択で、(iii)1つ以上の薬学上許容できる担体を含む。好ましい態様では、(ii)は、低分子量の水溶性ポリマー(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、特に、約40,000ダルトンの分子量を有するヒドロキシプロピルセルロース)、及び1つ以上の高分子量の水溶性ポリマー(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、特に、約140,000ダルトンと370,000ダルトンの分子量を有する2つのヒドロキシプロピルセルロース)を含む。フィルムはまた、好ましくは、約600,000ダルトンの分子量を有するポリエチレンオキシドなどの水溶性ポリエチレンオキシドを含む。
【0135】
自立型溶解性フィルムは、デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩がポリマーフィルム基材全体に実質的に均一に分散しているモノリシックフィルムであり得る。しかしながら、自立型溶解性フィルムは、好ましくは、ポリマーフィルム基材であって、その表面上にデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩が、特に、該フィルム基材の表面を部分的にのみ覆う1以上の個別の液滴として堆積される場合に、成膜される、該ポリマーフィルム基材を含むフィルムであり得る。
【0136】
投薬量:
本開示で採用される投薬レジメンは、患者における激越の出現の徴候の重症度または強さなどのいくつかの要因に依存するであろう。激越の出現の徴候(交感神経活動の生理的変化によって表される)の重症度/強度に基づいて、特定の実施形態では、α-2アドレナリン受容体作動薬(例えば、デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩)などの抗激越薬の単位用量は、約3マイクログラム~約250マイクログラムの範囲で変動し得る。
【0137】
したがって、一態様では、単位用量におけるデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩の量は、約3マイクログラム~300マイクログラム、約3マイクログラム~250マイクログラム、約5マイクログラム~200マイクログラム、約5マイクログラム~180マイクログラム、約5マイクログラム~150マイクログラム、約5マイクログラム~120マイクログラム、約5マイクログラム~100マイクログラム、または約10マイクログラム~50マイクログラムであり得る。具体的には、単位用量におけるデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩の量は、約5マイクログラム、約10マイクログラム、約15マイクログラム、約20マイクログラム、約25マイクログラム、約30マイクログラム、約35マイクログラム、約40マイクログラム、約45マイクログラム、約50マイクログラム、約55マイクログラム、約60マイクログラム、約65マイクログラム、約70マイクログラム、約75マイクログラム、約80マイクログラム、約85マイクログラム、約90マイクログラム、約95マイクログラム、約100マイクログラム、約110マイクログラム、約120マイクログラム、約130マイクログラム、約140マイクログラム、約150マイクログラム、約160マイクログラム、約170マイクログラム、約180マイクログラム、約190マイクログラム、または約200マイクログラムであり得る。
【0138】
別の態様では、本開示は、交感神経系活動の1つ以上の生理学的信号を測定することによって、激越エピソードを起こしそうであると特定された対象における激越の出現を防止する方法であって、該対象に有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を、顕著な鎮静を引き起こさない投薬量で投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩の単位用量は、約3マイクログラム~約300マイクログラム、約3マイクログラム~約270マイクログラム、約3マイクログラム~約250マイクログラム、約3マイクログラム~約240マイクログラム、約3マイクログラム~約200マイクログラム、約3マイクログラム~約180マイクログラム、約3マイクログラム~約150マイクログラム、約5マイクログラム~約100マイクログラム、約5マイクログラム~約90マイクログラム、約5マイクログラム~約85マイクログラム、約5マイクログラム~約80マイクログラム、約5マイクログラム~約75マイクログラム、約5マイクログラム~約70マイクログラム、約5マイクログラム~約65マイクログラム、約5マイクログラム~約60マイクログラム、約5マイクログラム~約55マイクログラム、約5マイクログラム~約50マイクログラム、約5マイクログラム~約45マイクログラム、約5マイクログラム~約40マイクログラム、約5マイクログラム~約35マイクログラム、約5マイクログラム~約30マイクログラム、約5マイクログラム~約25マイクログラム、約5マイクログラム~約20マイクログラム、約5マイクログラム~約15マイクログラム、約5マイクログラム~約10マイクログラム、10マイクログラム未満(例えば、約5、6、7、8、または9マイクログラム)、約10マイクログラム、約12マイクログラム、約14マイクログラム、約15マイクログラム、約16マイクログラム、約18マイクログラム、約20マイクログラム、約30マイクログラム、約50マイクログラム)の範囲であり得る。
【0139】
さらなる態様では、本開示は、交感神経系活動の1つ以上の生理学的信号を測定することによって、激越エピソードを起こしそうであると特定された対象における激越の出現を防止する方法であって、有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を、対象の体重1kg当たり約0.05マイクログラム~対象の体重1kg当たり約3マイクログラムの投薬量で対象に投与することを含む、方法を提供する。好適な投薬量の例としては、約0.1マイクログラム/kg~約2.5マイクログラム/kg、約0.1マイクログラム/kg~約2マイクログラム/kg、約0.1マイクログラム/kg~約1.5マイクログラム/kg、約0.1マイクログラム/kg~約1マイクログラム/kg、約0.1マイクログラム/kg~約0.5マイクログラム/kg、約0.1マイクログラム/kg~約0.4マイクログラム/kg、約0.1マイクログラム/kg~約0.3マイクログラム/kg、約0.1マイクログラム/kg~約0.2マイクログラム/kg、約0.07マイクログラム/kg、約0.05マイクログラム/kg、約0.1マイクログラム/kg、約0.2マイクログラム/kg、約0.3マイクログラム/kg、約0.4マイクログラム/kg、約0.5マイクログラム/kg、約0.6マイクログラム/kg、約0.7マイクログラム/kg、約0.8マイクログラム/kg、約0.9マイクログラム/kg、約1.0マイクログラム/kg、約1.1マイクログラム/kg、約1.2マイクログラム/kg、約1.3マイクログラム/kg、約1.4マイクログラム/kg、約1.5マイクログラム/kgが挙げられる。
【0140】
投薬頻度は、交感神経活動の変化により生じる生理学的信号の強度/重症度に応じて、1日1回~2回以上まで変化させることができる。
【0141】
さらに他の態様では、本開示は、交感神経系活動の1つ以上の生理学的信号を測定することによって、激越エピソードを起こしそうであると特定された統合失調症の対象における激越の出現を防止する方法であって、該対象に有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を、顕著な鎮静を引き起こさない投薬量で投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩の単位用量は、約3マイクログラム~約300マイクログラム、約3マイクログラム~約250マイクログラム、約3マイクログラム~約200マイクログラム、約3マイクログラム~約180マイクログラム、約3マイクログラム~約150マイクログラム、約5マイクログラム~約100マイクログラム、約5マイクログラム~約90マイクログラム、約5マイクログラム~約85マイクログラム、約5マイクログラム~約80マイクログラム、約5マイクログラム~約75マイクログラム、約5マイクログラム~約70マイクログラム、約5マイクログラム~約65マイクログラム、約5マイクログラム~約60マイクログラム、約5マイクログラム~約55マイクログラム、約5マイクログラム~約50マイクログラム、約5マイクログラム~約45マイクログラム、約5マイクログラム~約40マイクログラム、約5マイクログラム~約35マイクログラム、約5マイクログラム~約30マイクログラム、約5マイクログラム~約25マイクログラム、約5マイクログラム~約20マイクログラム、約5マイクログラム~約15マイクログラム、約5マイクログラム~約10マイクログラム、10マイクログラム未満(例えば、約5、6、7、8、または9マイクログラム)の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩の単位用量は、約10マイクログラム、約12マイクログラム、約14マイクログラム、約15マイクログラム、約16マイクログラム、約18マイクログラム、約20マイクログラム、約30マイクログラム、約50マイクログラム、約60マイクログラム、約70マイクログラム、約80マイクログラム、約90マイクログラム、約100マイクログラム、約110マイクログラム、約120マイクログラム、約130マイクログラム、約140マイクログラム、約150マイクログラム、約160マイクログラム、約170マイクログラム、約180マイクログラム、約190マイクログラム、約200マイクログラム、約210マイクログラム、約220マイクログラムである。
【0142】
例示的実施形態:
実施形態1.激越の出現の徴候について患者を選択する方法であって、
(a)自動監視デバイスを患者の皮膚表面に配置または取り付けることと、
(b)上記デバイスを用いて、患者における交感神経系活動の1つ以上の生理学的信号を監視することと、
(c)上記デバイスによって監視される交感神経系活動の生理学的信号のパラメータの評価に基づいて、治療に適した患者を特定することと、
(d)1つ以上の生理学的信号に基づいて交感神経系活動が増加している患者を選択することと、を含む、方法。
【0143】
実施形態2.患者における激越の出現の徴候を防止する方法であって、
(a)自動監視デバイスを患者の皮膚表面に配置または取り付けることと、
(b)上記デバイスを用いて、患者における交感神経系活動の1つ以上の生理学的信号を監視することと、
(c)上記デバイスによって監視される交感神経系活動の生理学的信号のパラメータの評価に基づいて、治療に適した患者を特定することと、
(d)生理学的信号に基づいて交感神経系活動が増加している患者を選択することと、
(e)抗激越薬を投与して、患者の交感神経系活動を低下させることと、を含む、方法。
【0144】
実施形態3.患者における激越の出現の徴候を治療する方法であって、
(a)自動監視デバイスを患者の皮膚表面に配置または取り付けることと、
(b)上記デバイスの助けを借りて、患者における交感神経系活動の1つ以上の生理学的信号を監視することと、
(c)上記デバイスによって監視される交感神経系活動の生理学的信号のパラメータの評価に基づいて、治療に適した患者を特定することと、
(d)生理学的信号に基づいて交感神経系活動が増加している患者を選択することと、
(e)抗激越薬を投与して、患者の交感神経系活動を低下させることと、を含む、方法。
【0145】
実施形態4.自動監視デバイスがウェアラブルデバイスであり、患者の体と接触したままである、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0146】
実施形態5.自動監視デバイスが交感神経系活動に関連する生理学的信号の変化を検出する、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0147】
実施形態6.交感神経系活動に関連する生理学的信号の変化が、交感神経系パラメータの活動の増加を指す、実施形態5に記載の方法。
【0148】
実施形態7.交感神経系活動に関連する生理学的信号が、皮膚コンダクタンス(GSR)の変化、皮膚電気活動(EDA)、体温変動(皮膚温度)、筋電図(EMG)レベル、安静時EEG、ECGなどの心拍変動、アクチグラフ/睡眠ポリグラフ、瞳孔の大きさなどの認知機能評価、唾液アミラーゼの分泌、血圧、脈拍、呼吸数、血中酸素濃度、及び交感神経系活動に関する任意の他の信号のうちの1つ以上から選択される、実施形態5に記載の方法。
【0149】
実施形態8.自動化デバイスが、患者の交感神経系活動に関連する信号データを、介護者が監視する遠隔位置にある装置に送信する、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0150】
実施形態9.患者が装着するデバイスが、実質的に連続的なデータ転送技術(例えば、ブルートゥースまたは他の送信技術)を介して介護者に信号を送信する、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0151】
実施形態10.介護者が交感神経系活動の変化に気づき、交感神経系活動低下剤を投与して激越の発生を防止することにより応答する、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0152】
実施形態11.抗激越薬が、クロニジン、グアンファシン、グアナベンズ、グアノキサベンズ、グアネチジン、キシラジン、チザニジン、メデトミジン、デクスメデトミジン、メチルドパ、メチルノルエピネフリン、ファドルミジン、ヨードクロニジン、アプラクロニジン、デトミジン、ロフェキシジン、アミトラズ、ミバゼロール、アゼペキソール、タリペキソール、リルメニジン、ナファゾリン、オキシメタゾリン、キシロメタゾリン、テトラヒドロゾリン、トラマゾリン、タリペキソール、ロミフィジン、プロピルヘキセドリン、ノルフェネフリン、オクトパミン、モキソニジン、リダミジン、トロニジン、UK14304、DJ-7141、ST-91、RWJ-52353、TCG-1000、4-(3-アミノメチル-シクロヘキサ-3-エニルメチル)-1,3-ジヒドロ-イミダゾール-2-チオン、及び4-(3-ヒドロキシメチル-シクロヘキサ-3-エニルメチル)-1,3-ジヒドロ-イミダゾール-2-チオン、または薬学上許容できるそれらの塩、好ましくは、デクスメデトミジン及びまたは薬学上許容できるその塩、からなる群から選択されるα-2アドレナリン受容体作動薬である、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0153】
実施形態12.上記デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩が、経口、バッカル、経粘膜、舌下、または非経口、好ましくは舌下経路によって投与される、実施形態11に記載の方法。
【0154】
実施形態13.舌下剤形が、フィルム、ウェーハ、パッチ、トローチ、ゲル、スプレー、錠剤、及び液滴からなる群から選択される、実施形態12に記載の方法。
【0155】
実施形態14.上記デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩が、約3マイクログラム~約300マイクログラム、約3マイクログラム~約250マイクログラムの範囲の単位用量で、好ましくは、約5マイクログラム~約200マイクログラム、より好ましくは約5マイクログラム~約180マイクログラムの範囲の用量で投与される、実施形態11または12に記載の方法。
【0156】
実施形態15.患者が、神経精神疾患、神経変性疾患、または他の神経系関連疾患を患う、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0157】
実施形態16.上記神経精神疾患が、統合失調症、双極性障害、双極性躁病、せん妄、大うつ病性障害、及びうつ病からなる群から選択される、実施形態15に記載の方法。
【0158】
実施形態17.上記神経変性疾患が、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症(FTD)、認知症、レビー小体型認知症(DLB)、心的外傷後ストレス障害、パーキンソン病、血管性認知症、血管性認知機能障害、ハンチントン病、多発性硬化症、クロイツフェルト-ヤコブ病、多系統萎縮症、外傷性脳損傷、及び進行性核上麻痺からなる群から選択される、実施形態15に記載の方法。
【0159】
実施形態18.統合失調症を有する患者における激越の出現の徴候を防止する方法であって、
(a)自動監視デバイスを患者の皮膚表面に配置または取り付けることと、
(b)上記デバイスの助けを借りて、患者における交感神経系活動の1つ以上の生理学的信号を監視することと、
(c)上記デバイスによって監視される交感神経系活動の生理学的信号のパラメータの評価に基づいて、治療に適した患者を特定することと、
(d)生理学的信号に基づいて交感神経系活動が増加している患者を選択することと、
(e)α-2アドレナリン受容体作動薬を投与して、上記患者の交感神経系活動を低下させることと、を含む、方法。
【0160】
実施形態19.統合失調症を有する患者における激越の出現の徴候を治療する方法であって、
(a)自動監視デバイスを患者の皮膚表面に配置または取り付けることと、
(b)上記デバイスの助けを借りて、患者における交感神経系活動の1つ以上の生理学的信号を監視することと、
(c)上記デバイスによって監視される交感神経系活動の生理学的信号のパラメータの評価に基づいて、治療に適した患者を特定することと、
(d)生理学的信号に基づいて交感神経系活動が増加している患者を選択することと、
(e)α-2アドレナリン受容体作動薬を投与して、上記患者の交感神経系活動を低下させることと、を含む、方法。
【0161】
実施形態20.せん妄を有する患者における激越の出現の徴候を防止する方法であって、
(a)自動監視デバイスを患者の皮膚表面に配置または取り付けることと、
(b)上記デバイスの助けを借りて、患者における交感神経系活動の1つ以上の生理学的信号を監視することと、
(c)上記デバイスによって監視される交感神経系活動の生理学的信号のパラメータの評価に基づいて、治療に適した患者を特定することと、
(d)生理学的信号に基づいて交感神経系活動が増加している患者を選択することと、
(e)α-2アドレナリン受容体作動薬を投与して、上記患者の交感神経系活動を低下させることと、を含む、方法。
【0162】
実施形態21.せん妄を有する患者における激越の出現の徴候を治療する方法であって、
(a)自動監視デバイスを患者の皮膚表面に配置または取り付けることと、
(b)上記デバイスの助けを借りて、患者における交感神経系活動の1つ以上の生理学的信号を監視することと、
(c)上記デバイスによって監視される交感神経系活動の生理学的信号のパラメータの評価に基づいて、治療に適した患者を特定することと、
(d)生理学的信号に基づいて交感神経系活動が増加している患者を選択することと、
(e)α-2アドレナリン受容体作動薬を投与して、上記患者の交感神経系活動を低下させることと、を含む、方法。
【0163】
実施形態22.患者における激越の出現の徴候を防止する方法であって、
(a)自動監視デバイスを患者の皮膚表面に配置または取り付けることと、
(b)上記デバイスの助けを借りて、患者における交感神経系活動の1つ以上の生理学的信号を監視することと、
(c)上記デバイスによって監視される交感神経系活動の生理学的信号のパラメータの評価に基づいて、治療に適した患者を特定することと、
(d)生理学的信号に基づいて交感神経系活動が増加している患者を選択することと、
(e)デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を投与して、上記患者の交感神経活動を低下させることと、を含む、方法。
【0164】
実施形態23.患者における激越の出現の徴候を治療する方法であって、
(a)自動監視デバイスを患者の皮膚表面に配置または取り付けることと、
(b)上記デバイスの助けを借りて、患者における交感神経系活動の1つ以上の生理学的信号を監視することと、
(c)上記デバイスによって監視される交感神経系活動の生理学的信号のパラメータの評価に基づいて、治療に適した患者を特定することと、
(d)生理学的信号に基づいて交感神経系活動が増加している患者を選択することと、
(e)デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を投与して、上記患者の交感神経活動を低下させることと、を含む、方法。
【0165】
実施形態24.患者における激越の出現の徴候を防止する方法であって、
(a)自動監視デバイスを患者の皮膚表面に配置または取り付けることと、
(b)上記デバイスの助けを借りて、患者における交感神経系活動の1つ以上の生理学的信号を監視することと、
(c)上記デバイスによって監視される交感神経系活動の生理学的信号のパラメータの評価に基づいて、治療に適した患者を特定することと、
(d)生理学的信号に基づいて交感神経系活動が増加している患者を選択することと、
(e)選択された患者における交感神経系活動の増加した生理学的信号の強度を判定することと、
(f)デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を患者に投与して交感神経系活動を低下させることであって、該デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩の用量が、増加した信号の強度に基づき選択される、ことと、を含む、方法。
【0166】
実施形態25.患者における激越の出現の徴候を治療する方法であって、
(a)自動監視デバイスを患者の皮膚表面に配置または取り付けることと、
(b)上記デバイスの助けを借りて、患者における交感神経系活動の1つ以上の生理学的信号を監視することと、
(c)上記デバイスによって監視される交感神経系活動の生理学的信号のパラメータの評価に基づいて、治療に適した患者を特定することと、
(d)生理学的信号に基づいて交感神経系活動が増加している患者を選択することと、
(e)選択された患者における交感神経系活動の増加した信号の強度を判定することと、
(f)デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を患者に投与して交感神経系活動を低下させることであって、該デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩の用量が、増加した信号の強さの強度に基づき選択される、ことと、を含む、方法。
【0167】
実施形態26:
(a)交感神経系活動の第1の生理学的データを受信することと、
(b)第1の生理学的データを用いて少なくとも1つの機械学習モデルを訓練することにより、少なくとも1つの生理学的パラメータのベースライン値を確立することと、
(c)対象に取り付けられた第1の監視デバイスから、対象の交感神経系活動の第2の生理学的データを受信することと、
(d)少なくとも1つの機械学習モデルを用いて、少なくとも1つの生理学的パラメータのベースライン値に基づいて、第2の生理学的データを分析し、対象の激越エピソードを予測することと、
(e)対象の激越エピソードの予測に基づいて、対象の激越エピソードの予測を第2の監視デバイスに通知するための信号を第2の監視デバイスに送信し、対象の交感神経系活動を低下させるための治療を対象に提供できるようにすることと、を含む、方法。
【0168】
実施形態27:第1の監視デバイスが、対象と接触しているウェアラブルデバイスである、実施形態26に記載の方法。
【0169】
実施形態28:第2の監視デバイスが、対象の介護者によって監視される、実施形態26に記載の方法。
【0170】
実施形態29:激越エピソードを予測するための分析が、対象の激越エピソードが発生する期間を判定することを含む、実施形態26に記載の方法。
【0171】
実施形態30:激越エピソードを予測するための分析が、対象の激越エピソードの程度を判定することを含む、実施形態26に記載の方法。
【0172】
実施形態31:激越エピソードを予測するための分析が、
第2の生理学的データを少なくとも1つの生理学的パラメータのベースライン値と比較することであって、
第2の生理学的データがベースライン値の第1の閾値を超えるとき、該信号は第1の信号であり、該治療は第1の治療であり、
第2の生理学的データがベースライン値の第2の閾値を超えるとき、該信号は該第1の信号と異なる第2の信号であり、該治療は第1の治療と異なる第2の治療である、比較することを含む、実施形態26に記載の方法。
【0173】
実施形態32:第2の生理学的データの受信が第1の期間中であり、さらに、
第1の期間の後の第2の期間中に、対象の交感神経系活動の第3の生理学的データを受信することと、
第2の生理学的データ及び第3の生理学的データに基づいて、対象の交感神経系活動の変化のパターンを特定するための、対象の交感神経系活動のレポートを生成することと、を含む、実施形態26に記載の方法。
【0174】
実施形態33:治療が、対象に抗激越薬を投与することを含む、実施形態26に記載の方法。
【0175】
実施形態34:交感神経系活動の第2の生理学的データが、皮膚電気活動の変化、心拍変動、瞳孔の大きさなどの認知機能評価、唾液アミラーゼの分泌、血圧、脈拍、呼吸数、または血中酸素濃度のうちの少なくとも1つを含む、実施形態26に記載の方法。
【0176】
実施形態35:交感神経系活動が、皮膚電気活動の任意の変化、または皮膚電気活動の任意の変化と安静時脳波の任意の変化を測定することにより評価される、実施形態26に記載の方法。
【0177】
実施形態36:
第2の監視デバイスに信号を送信した後に、激越エピソードに関連する徴候を受信することと、
徴候に基づいて、少なくとも1つの機械学習モデルをさらに訓練させることと、をさらに含む、実施形態26に記載の方法。
【0178】
実施形態37:
第2の監視デバイスに信号を送信した後に、激越エピソードに関連する徴候を受信することであって、該徴候が、(1)激越エピソードが発生するか否か、(2)激越エピソードが発生するとき、(3)激越エピソードの程度、(4)激越エピソードが持続する期間、または(5)激越エピソードの症状、のうちの少なくとも1つを示す、受信することと、
徴候に基づいて、少なくとも1つの機械学習モデルをさらに訓練させることと、をさらに含む、実施形態26に記載の方法。
【0179】
実施形態38:少なくとも1つの機械学習モデルが、線形回帰、ロジスティック回帰、決定木、ランダムフォレスト、ニューラルネットワーク、ディープニューラルネットワーク、または勾配ブースティングモデルのうちの少なくとも1つを含む、実施形態26に記載の方法。
【0180】
実施形態39:少なくとも1つの機械学習モデルが、教師あり学習、教師なし学習、半教師あり学習、または強化学習のうちの少なくとも1つに基づいて訓練される、実施形態26に記載の方法。
【0181】
実施形態39:激越エピソードを予測するための分析が、第2の生理学的データとベースライン値との比較に基づいて、対象の激越エピソードの程度を判定することを含む、実施形態26に記載の方法。
【0182】
実施形態40:
メモリと、
メモリに操作可能に連結されたプロセッサであって、該プロセッサが、
対象に取り付けられた第1の監視デバイスから、対象の交感神経系活動の生理学的データを受信し、
少なくとも1つの機械学習モデルを用いて、生理学的データを分析して交感神経系活動の基準パターンから異常を検出して、対象の激越エピソードの発生確率を判定し、
対象の激越エピソードの発生確率を第2の監視デバイスに通知するための信号を第2の監視デバイスに送信し、対象の交感神経系活動を低下させるための治療を対象に提供できるようにする、ように構成されるプロセッサと、を含む、装置。
【0183】
実施形態41:プロセッサが、
第2の監視デバイスに信号を送信した後に、激越エピソードに関連する徴候を受信し、
徴候に基づいて、少なくとも1つの機械学習モデルをさらに訓練する、ように構成される、実施形態40に記載の装置。
【0184】
実施形態42:プロセッサが、
第2の監視デバイスに信号を送信した後に、激越エピソードに関連する徴候を受信し、該徴候が、(1)激越エピソードが発生するか否か、(2)激越エピソードが発生するとき、(3)激越エピソードの程度、(4)激越エピソードが持続する期間、または(5)激越エピソードの症状、のうちの1つを示し、
徴候に基づいて、少なくとも1つの機械学習モデルをさらに訓練する、ように構成される、実施形態40に記載の装置。
【0185】
実施形態43:プロセッサによって実行される命令を表すコードを格納するプロセッサ可読非一時的媒体であって、コードが、プロセッサに、
対象に取り付けられた第1の監視デバイスから、対象の交感神経系活動の生理学的データを受信させ、
少なくとも1つの機械学習モデルを用いて、生理学的データを分析して交感神経系活動の基準パターンから異常を検出して、対象の激越エピソードの発生確率を判定させ、
対象の激越エピソードの発生確率を第2の監視デバイスに通知するための信号を第2の監視デバイスに送信し、対象の交感神経系活動を低下させるための治療を対象に提供できるようにさせる、コードを含む、プロセッサ可読非一時的媒体。
【0186】
実施形態44:コードが、プロセッサに、
少なくとも1つの機械学習モデルを用いて分析する前に、複数の対象に関連する交感神経系活動の訓練生理学的データに基づいた少なくとも1つの機械学習モデルであって、該少なくとも1つの機械学習モデルが、入力として複数の生理学的パラメータを含み、該複数の生理学的パラメータの各生理学的パラメータが、機械学習モデルの複数の重みから1つの重みに関連付けられる、該少なくとも1つの機械学習モデル、を訓練させ、
少なくとも1つの機械学習モデルに基づいて、複数の生理学的パラメータから少なくとも1つの生理学的パラメータの基準パターンを判定させる、コードを含む、実施形態43に記載のプロセッサ可読非一時的媒体。
【0187】
実施形態45:コードが、プロセッサに、
少なくとも1つの機械学習モデルを用いて分析する前に、複数の対象に関連する交感神経系活動の訓練生理学的データに基づいた少なくとも1つの機械学習アルゴリズムであって、該少なくとも1つの機械学習モデルが、入力として複数の生理学的パラメータを含み、該複数の生理学的パラメータの各生理学的パラメータが、機械学習モデルの複数の重みから1つの重みに関連付けられる、該少なくとも1つの機械学習アルゴリズム、を訓練させ、
少なくとも1つの機械学習モデルに基づいて、複数の生理学的パラメータから少なくとも1つの生理学的パラメータの基準パターンを判定させ、
第2の監視デバイスに信号を送信した後に、激越エピソードに関連する徴候を受信させ、
徴候に基づいて、少なくとも1つの生理学的パラメータの基準パターンと少なくとも1つの生理学的パラメータに関連する重みとを調整するために、少なくとも1つの機械学習モデルをさらに訓練させる、コードを含む、実施形態43に記載のプロセッサ可読非一時的媒体。
【0188】
実施形態46.自動監視デバイスがウェアラブルデバイスまたはウェアラブルセンサである、実施形態1~45のいずれか1つに記載の方法、装置、及びコードを格納するプロセッサ可読非一時的媒体。
【0189】
実施形態47.自動監視デバイスが交感神経系活動に関連する生理学的信号の変化を検出する、実施形態1~46のいずれか1つに記載の方法、装置、及びプロセッサ可読非一時的媒体。
【0190】
実施形態48.交感神経系活動に関連する生理学的信号の変化が交感神経系パラメータの活動の増加を指す、実施形態47に記載の方法、装置、及びコードを格納するプロセッサ可読非一時的媒体。
【0191】
実施形態49.交感神経系活動に関連する生理学的信号が、皮膚電気活動(皮膚コンダクタンス)の変化、安静時EEG、ECGなどの心拍変動、瞳孔の大きさなどの認知機能評価、唾液アミラーゼの分泌、血圧、脈拍、呼吸数、体温変動、血中酸素濃度、及び交感神経系活動に関する任意の他の信号のうちの1つ以上を含む、実施形態48に記載の方法、装置、及びコードを格納するプロセッサ可読非一時的媒体。
【0192】
実施形態50.交感神経系活動に関連する音声及び運動信号の変化が交感神経系パラメータの活動の増加を指す、実施形態47に記載の方法、装置、及びコードを格納するプロセッサ可読非一時的媒体。
【0193】
実施形態51.自動監視デバイスが、患者の交感神経系活動に関連する信号のデータを、介護者が監視する遠隔位置にある装置に送信する、実施形態1~50のいずれか1つに記載の方法、装置、及びコードを格納するプロセッサ可読非一時的媒体。
【0194】
実施形態52.自動監視デバイスが、ブルートゥースまたは任意の他の送信関連技術を介して介護者に信号を送信する、実施形態1~51のいずれか1つに記載の方法、装置、及びコードを格納するプロセッサ可読非一時的媒体。
【0195】
実施形態53.介護者が交感神経系活動の変化に気づき、交感神経活動を低下させる量のα-2アドレナリン受容体作動薬などの抗激越薬を投与して激越の発生を防止することにより応答する、実施形態1~52のいずれか1つに記載の方法、装置、及びコードを格納するプロセッサ可読非一時的媒体。
【0196】
実施形態54.抗激越薬が、クロニジン、グアンファシン、グアナベンズ、グアノキサベンズ、グアネチジン、キシラジン、チザニジン、メデトミジン、デクスメデトミジン、メチルドパ、メチルノルエピネフリン、ファドルミジン、ヨードクロニジン、アプラクロニジン、デトミジン、ロフェキシジン、アミトラズ、ミバゼロール、アゼペキソール、タリペキソール、リルメニジン、ナファゾリン、オキシメタゾリン、キシロメタゾリン、テトラヒドロゾリン、トラマゾリン、タリペキソール、ロミフィジン、プロピルヘキセドリン、ノルフェネフリン、オクトパミン、モキソニジン、リダミジン、トロニジン、UK14304、DJ-7141、ST-91、RWJ-52353、TCG-1000、4-(3-アミノメチル-シクロヘキサ-3-エニルメチル)-1,3-ジヒドロ-イミダゾール-2-チオン、及び4-(3-ヒドロキシメチル-シクロヘキサ-3-エニルメチル)-1,3-ジヒドロ-イミダゾール-2-チオン、または薬学上許容できるそれらの塩からなる群から選択されるα-2アドレナリン受容体作動薬であり、好ましくは、デクスメデトミジン及びまたは薬学上許容できるその塩である、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法、装置、及びコードを格納するプロセッサ可読非一時的媒体。
【0197】
実施形態55.上記デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩が、経口、バッカル、経粘膜、舌下、または非経口、好ましくは舌下投与される、実施形態54に記載の方法、装置、及びプロセッサ可読非一時的媒体。
【0198】
実施形態56.舌下剤形が、フィルム、ウェーハ、パッチ、トローチ、ゲル、スプレー、錠剤、及び液滴からなる群から選択される、実施形態55に記載の方法、装置、及びコードを格納するプロセッサ可読非一時的媒体。
【0199】
実施形態57.上記デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩が、約3マイクログラム~約300マイクログラム、約3マイクログラム~約250マイクログラムの範囲の投薬量で、好ましくは、約5マイクログラム~約200マイクログラム、より好ましくは約5マイクログラム~約180マイクログラムの範囲の投薬量で投与される、実施形態54~56のいずれか1つに記載の方法、装置、及びコードを格納するプロセッサ可読非一時的媒体。
【0200】
実施形態58.患者が、神経精神疾患、神経変性疾患、または他の神経系関連疾患を患う、実施形態1~57のいずれか1つに記載の方法、装置、及びコードを格納するプロセッサ可読非一時的媒体。
【0201】
実施形態59.上記患者が、統合失調症、双極性障害、双極性躁病、せん妄、大うつ病性障害、及びうつ病からなる群から選択される神経精神疾患を患う、実施形態58に記載の方法、装置、及びコードを格納するプロセッサ可読非一時的媒体。
【0202】
実施形態60.上記患者が、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症(FTD)、認知症、レビー小体型認知症(DLB)、心的外傷後ストレス障害、パーキンソン病、血管性認知症、血管性認知機能障害、ハンチントン病、多発性硬化症、クロイツフェルト-ヤコブ病、多系統萎縮症、進行性核上麻痺、外傷性脳損傷、または他の関連する神経変性疾患からなる群から選択される神経変性疾患を患う、実施形態58に記載の方法、装置、及びコードを格納するプロセッサ可読非一時的媒体。
【0203】
実施形態61.上記患者がせん妄を患う、実施形態59に記載の方法、装置、及びコードを格納するプロセッサ可読非一時的媒体。
【0204】
実施形態62.上記患者が認知症を患う、実施形態60に記載の方法、装置、及びコードを格納するプロセッサ可読非一時的媒体。
【0205】
実施形態63.患者が、オピオイド、薬物(コカイン、アンフェタミンを含む)、またはアルコールの離脱症状を患う、実施形態1~62のいずれか1つに記載の方法、装置、及びコードを格納するプロセッサ可読非一時的媒体。
【0206】
実施形態64.交感神経系活動の追加の信号が音声及び運動を含む、実施形態1~60のいずれか1つに記載の方法、装置、及びコードを格納するプロセッサ可読非一時的媒体。
【0207】
以下の実施例は、例示であることを意図するものであって、限定を意図するものではない。したがって、実施例1は、本開示で使用するためのデクスメデトミジン塩酸塩の舌下組成物及びその調製を例示するものである。
【0208】
【0209】
(A)ポリマーマトリックスを調製するプロセス
ポリマー混合物:ポリエチレンオキシド及びFast Emerald Green Shadeを水中で少なくとも180分、約1400rpm~約2000rpmで混合した。スクラロース、ヒドロキシプロピルセルロース(分子量140,000)、ヒドロキシプロピルセルロースHPC-SSL(分子量40,000)及びヒドロキシプロピルセルロース(分子量370,000)を加え、少なくとも120分、約1600rpm~2000rpmで混合した。ペパーミント油を水に加え、続いて、得られた分散液を上記のポリマー混合物に加え、少なくとも30分混合した。得られた混合物をさらに、真空下(248トール)で少なくとも30分、350rpmの速度及び22.9℃の温度で混合した。
【0210】
コーティングステーション:ロールを巻出スダンドに設置し、そのロールの先端をガイドバー及びコーティングバーに入れた。ライナーを、シリコーンでコーティングされた側が上になるように配置した。コーティングバー間では、40ミリメートルの空隙を維持した。オーブン設定値を70℃に調整し、最終乾燥温度を85℃に調整した。
【0211】
コーティング/乾燥プロセス:上記のポリマー混合物を、ガイドバーとコーティングバーの間にあるライナー上に投入した。コーティングバーに液体が残らなくなるまで、ライナーを一定の速度でゆっくり手で引いて、コーティングバーに通した。安全ナイフを用いて、そのライナーを切断して、長さ約12インチのハンドシートにした。各ハンドシートを乾燥ボードの上に置き、隅を打ち付けて、乾燥中に丸まるのを防いだ。含水率が5%未満になるまで(約30分)、そのハンドシートをオーブンで乾燥してから、乾燥ボードから外した。そのコーティングの重量が合格基準を満たしているか調べ、満たしている場合には、それらのハンドシートを重ね、PET剥離ライナーで裏打ちされた34インチ×40インチのホイル製の袋に入れた。
【0212】
(B)成膜溶液を調製するプロセス:
FDC Blueをエチルアルコールに、少なくとも180分溶解させた。デクスメデトミジン塩酸塩をそのエチルアルコール溶液に、連続的に撹拌しながら10分、約400rpm~約800rpmで加えた。ヒドロキシプロピルセルロース(40,000)及びヒドロキシプロピルセルロース(140,000)をその混合物に加え、すべての材料が溶解するまで、少なくとも30分撹拌した。
【0213】
(C)マイクロ成膜されたマトリックスを調製するプロセス:
上記の工程(B)で得た成膜溶液をピペットに、所要の体積(最終製品の具体的な医薬品力価によって決定する)まで充填した。その成膜溶液を適切な量(1.5マイクロリットル=約5マイクログラム)、工程(A)で得たポリマーマトリックスの上に、(例えば液滴として)成膜し、成膜物/液滴が合わさらないように、各成膜物の間に間隔を設けて、合わせて10回繰り返し(すなわち10個の成膜物/液滴)、その後、そのフィルムを切断して、個別の薬物含有単位分にできるようにした。まず、上記のフィルムをダイカットして、薬物含有組成物の単一の成膜物を含む、22mm×8.8mmの寸法を有する個々の単位分にした。続いて、ダイカットされたマイクロ成膜マトリックスを70℃のオーブンで10分乾燥し、さらにダイカットして10単位分を得、それぞれの単位分には薬物含有組成物の単一の成膜物が含まれた。
【0214】
(D)包装:
欠陥のない各単位分を個別にホイル製パウチ内に封入してから、そのパウチをヒートシールした。そのヒートシールが許容可能であった場合には、そのパッケージは、商用として許容される単位分としてみなした。
【0215】
他の単位力価(例えば、40μg及び60μgのフィルム)も、薬物含有組成物中の薬物、ポリマー、及び着色剤の濃度を変更することによって、同様に調製した。例えば、40μgのフィルムは、上記の表1に記載されている20μgの薬物含有組成物で見られる量の約2倍量で薬物、ポリマー、及び着色剤を含む薬物含有組成物から調製し、60μgのフィルムは、約3倍量で含む薬物含有組成物から調製した。
【表2】
表2の製剤(80μg、120μg、及び180μg)は、上記の表1と同じ製造プロセスを使用して調製した。
【0216】
実施例2
統合失調症における急性の激越に対するデクスメデトミジン塩酸塩の舌下フィルム送達の安全性及び有効性を調査するための試験
【0217】
本試験は、統合失調症を有する患者における激越、自律神経覚醒、及び鎮静の臨床評価及び客観的バイオマーカーに対するデクスメデトミジン塩酸塩の用量相関性の有効性及び忍容性を調査するためにデザインされた。アウトカム尺度としては、十分に検証された激越の臨床尺度(PANSS-EC)、鎮静の臨床尺度(ACES/RASS)、及び過覚醒の生理学的尺度を用いた。
a.皮膚コンダクタンス反応
b.心拍変動
c.睡眠の尺度:アクチグラフ/睡眠ポリグラフ(PSG)
d.有効性の予測バイオマーカーモデルを開発するために他の精神生理学的アウトカム尺度と組み合わせて使用される探索的安静時脳波(EEG)及びPSG。
【0218】
研究計画の例:
本試験は、統合失調症を有する患者において、デクスメデトミジン塩酸塩の舌下フィルム製剤が、様々な症状関連アウトカム及び有効性のより近位の潜在的バイオマーカーに及ぼす影響をプラセボと比較して調査することを目的とする。
【0219】
本試験では、デクスメデトミジン塩酸塩の初回投与量を100マイクログラム(μg)とし、言語刺激により一時的に回復することができる覚醒可能な鎮静の達成を望ましいエンドポイントとした。エンドポイントに到達せず、薬物の忍容性が良好な場合(以下に定義)、60分後に60μgを追加投与するか、または20μgの用量を約60分間隔で20μgの用量を合計3回まで繰り返し投与する(すなわち、合計160μg/日)。
【0220】
参加者は、各投与後、以下に説明するように評価され、参加者が鎮静状態であるが、言語刺激に応答できるようになると、それ以上の投与は行われない。
【0221】
計画では、最大約20名の対象のコホートを設定する。デクスメデトミジン塩酸塩の初回投与量は、上記のように100μgとした。少なくとも6名の対象に実施後、少なくとも2/3の参加者において望ましいアウトカムが得られない場合、2回目の投与量レベルのコホートを開始することができる。この第2のコホートでは、第1のコホートで観察された安全性及び忍容性に基づき、デクスメデトミジン塩酸塩の初回投与量は120~160μgの舌下投与とし、同様の漸増投与で20μgずつ、または60μgの単回投与を行い、望ましいエンドポイントは以下のうちの1つとした、1)言語刺激により一時的に回復することができる覚醒可能な鎮静の達成、2)PEC合計スコアの50%以上の減少の達成、3)鎮静(ACES評価8または9,深睡眠または覚醒不可能な睡眠により測定される)を伴わないACES評価5,6,または7(軽度,中等度,または顕著な落ち着き)。試験日に対象に投与するデクスメデトミジン塩酸塩の合計最大投与量は180mcgを超えないものとする。したがって、160μgの開始投与量を使用した場合、その試験日には20μgのデクスメデトミジン塩酸塩の追加投与が1回のみ行われる。第1のコホートと同様に、エンドポイントに到達せず、薬剤の忍容性が良好な場合(以下に定義)、20μgを60分ごとに合計3回追加の20μgを繰り返し投与するか、60μgを1日当たり180μgまで単回投与する。参加者が鎮静状態であるが、言語刺激に応答できるようになると、それ以上の投与は行わない。
【0222】
参加者は治験実施施設の職員によって監視され、血圧、心拍数、及び血中酸素濃度を含むバイタルサインを、最後の投与から2時間後まで一定の間隔(約15分ごと)で測定及び記録される。対象のバイタルサインの変化が最終投与後2時間までにベースラインに戻らない場合、バイタルサインにおいて遅延効果があるかどうかを判断するために、最大6時間まで1時間ごとにバイタルサインを収集する。利用可能なデータに基づいて、本発明者らは、投与後それほど離れた時点では変化はないと予想する。ただし、臨床的に必要と判断される場合には、より長時間のモニタリングを継続することがある。心電図(EKG)は、スクリーニング時、ベースライン時(投与前)、投与後、及び投与翌日に実施する。
【0223】
主要アウトカム尺度の例:
1)ベースラインからのPANSS-EC変化:PANSS-EC(陽性・陰性症状スケール興奮版)は、激越に関する5項目、すなわち、衝動性の調節障害、緊張、敵意、非協調性、及び激越という項目を含み、それぞれ1(最小)から7(最大)まででスコア化される。PANSS-ECは、上記の5つのサブスケールの合計で、5から35までの範囲である。PANSSは、スクリーニング時、1日目のベースライン(投与前)、投与後30分ごと、2日目に測定する。
【0224】
2)皮膚コンダクタンス反応(SCR)、心拍変動、及び血圧などの覚醒の精神生理学的尺度:ベースライン時及び薬物投与後数回に分けて評価する。
【0225】
3)激越の他の心理尺度は以下を含む。
【0226】
a.ACES(興奮・鎮静スケール):落ち着きと鎮静の臨床レベルを評価するために設計された。これは、激越、落ち着き、及び睡眠状態を区別する9点スケールである。スコアは1(顕著な激越)から9(覚醒不可能)までの範囲である。
【0227】
b.ベースラインからのRASS(リッチモンド興奮鎮静スケール)変化:RASSは、「好戦的」(+4)から「覚醒不可能」(-5)までの10段階の評点スケールである。ACES/RASSスコアは、スクリーニング時、1日目のベースライン(投与前)、投与後約30分ごと、2日目に測定する。
【0228】
副次アウトカム尺度の例:
1)BARS(行動活動評価スケール):ベースラインからの変化は1から7までの範囲である:1=覚醒が困難または不可能、2=睡眠状態であるが言語的または身体的接触に正常に反応、3=傾眠状態であり、鎮静状態に見える、4=静かで、覚醒している(通常の活動レベル)、5=表立った(身体的または言語的)活動の徴候、指示により落ち着く、6=非常にまたは継続して活動するが拘束は必要ない、7=暴力的で拘束を必要とする。
【0229】
2)臨床的総合印象尺度-改善度(CGI-I)薬物投与後のCGI-Iスコアは1から7までの範囲である:0=評価なし(欠測)、1=非常に回復した、2=かなり回復した、3=最小限回復した、4=変化なし、5=最小限悪化した、6=かなり悪化した、7=非常に悪化した。
【0230】
3)前述の鎮静レベルの達成前または達成と同時に生じる、血圧、心拍数、または呼吸駆動に対する有害作用の判断。
【0231】
忍容性ガイドラインの例:
次のいずれかが発生した場合、対象への投与はいつでも停止される。
【0232】
1)仰臥位収縮期または拡張期血圧が30mmHg超低下すること
【0233】
2)100mmHg未満の収縮期血圧の単独低下(本試験では安静時仰臥位収縮期血圧110mmHg未満の患者は除外される)
【0234】
3)60mmHg未満の拡張期血圧の単独低下(本試験では安静時拡張期血圧70mmHg未満の患者は除外される)
【0235】
4)心拍数が50拍/分未満(本試験では安静時心拍数60拍/分未満の患者は除外される)
【0236】
5)ACESエンドポイント評価5,6,または7(軽度,中等度,または顕著な落ち着き)を達成すること
【0237】
6)投与後のRASSが-2を達成すること。
【0238】
ACES/RASSスコア、血圧、または心拍数のいずれが原因であっても、上記の中止基準を満たした場合には、参加者のパラメータがベースラインに達するか、または、治験責任医師の判断で、その参加者が安定かつ許容されるレベルの血圧及び心拍数に達するまで、参加者のバイタルサインを15分ごとに継続して監視するものとした。鎮静は、治験責任医師の判断で参加者が安定かつ許容される覚醒レベルに達するまで、30分ごとに評価する。その後の各開始用量は、治験依頼者と治験実施施設の代表者で構成されるチームによる前回の投与コホートの結果のレビューに基づいて決定する。このレビューは、前回のコホート終了後約1~4週間に行われる。
【0239】
FDAガイダンスにしたがって、重篤な有害事象(SAE)を含む有害事象(AE)を、評価、記録、及び報告する。何らかのSAEが生じた場合には、SAEの原因が明らかになるまで、試験を停止するものとした。
【0240】
質問票/行動のアウトカム尺度
上述のアウトカム尺度に加えて、睡眠はピッツバーグ睡眠質問票とスタンフォード眠気尺度を用いて評価される。また、覚醒度を評価するための自記式ツールも参加者に配布され、試験日0~2日に完了させる。
【0241】
精神生理学的アウトカム尺度
皮膚コンダクタンス反応(SCR):
SCRは、ストレス反応及び覚醒の最も速い反応の尺度の1つである。心拍数の変化と並んで、自律神経系活動の最も強固で非侵襲的な生理学的尺度の1つであることが判明している。試験では、統合失調症における中性音に対するSCRを調べ、過反応性を報告している。さらに、何人かの著者によって、統合失調症ではSCRが低く、症状の重症度と再発までの期間とに相関することも報告されている。
【0242】
SCRは、等張電極ペーストを充填した内径11mmのAg/AgCl電極を用いて、Biopac MP150システムで記録される。電極は、非利き手の第4指と第5指の中節骨に取り付けられる。SCR波形は、AcknowledgeソフトウェアまたはMATLABを使用して、刺激の開始から1~4秒間のウィンドウ内の最大たわみについてベースからピークまでの差を評価して、分析される。
【0243】
安静時EEG:
いくつかの前臨床試験及びいくつかの臨床試験では、デクスメデトミジン効果に関連するEEGのアウトカムを調査している。しかしながら、激越と鎮静の臨床的低下を区別するために安静時EEGパターンの変化を利用した研究はない。理論的アプローチを利用して、激越スコアの低下に関連するEEGパターンを特定する。また、デクスメデトミジンの効果に関連するバイオマーカーに最も適したモデルを提供するために、EEGデータが皮膚コンダクタンス及びアクチグラフ/睡眠ポリグラフと共にモデルに含められる。
【0244】
EEGは、3~128個の範囲の頭皮電極を含む電極キャップから記録される。キャップには、額の上に配置された1つの基準電極と、各耳たぶに1つずつ配置された1組のリンクされた参考電極が含まれる。
【0245】
垂直眼電図及び水平眼電図(VEOG及びHEOG)を記録し、瞬きと眼球運動についてEEGデータを補正するために使用する。覚醒安静時のEEG活動(例えば、スペクトルパワー、トポグラフィックマイクロステート、及び電極間コヒーレンス)は、精神病/覚醒に敏感であることが示されている。したがって、最長で3分間の閉眼安静時EEGを記録する。対象は、セッションのために目を閉じてリラックスするように指示され、EEGの動きによるアーチファクトを最小限に抑えるために、可能な限り静止するように指示される。
【0246】
PSG:
測定は、ドライシステム(Cognionix)またはTEMECもしくはCOMPUMEDICSシステムによって、頭皮電極によるEEG、顎と四肢の皮膚に設置した電極による筋電図、胴体と四肢に設置した電極による心電図、及び/または額とこめかみ上の電極による眼電図を用いて行われる。PSG中の酸素飽和度の測定にはパルスオキシメトリーが使用される。口鼻熱センサと鼻腔内気圧トランスデューサを使用して気流を測定し、呼吸努力はインダクタンスプレチスモグラフィーで測定する。
【0247】
心拍変動:
心拍変動(HRV)は、心拍間の時間間隔の変動の尺度であり、精神病/激越の悪化と同様に、交感神経活動にも敏感である。HRVを測定するために、対象の胸部と四肢に電極を設置する。
【0248】
アクチグラフ:
アクチグラフは、ヒトの休息/活動サイクルの非侵襲的尺度である。対象は、腕にストラップで固定された、腕時計程度の大きさの小型のアクチグラフデバイスを装着する。このデバイスは、総運動量、歩数、座っている/寝ている時間、及び身体活動量を測定する。対象は、入院時から退院時までアクチグラフデバイスを装着するように求められる場合がある。
【0249】
訪問での具体的な手順例:
スクリーニングの例
この試験は、病院で行われる1~2回のスクリーニング訪問から始まる。治験責任医師が必要と判断した場合は、対象を入院させてスクリーニング訪問を終えることもある。
【0250】
この試験では最大4つのコホートで約20名が試験を完了することを目標に、約40名の参加者をスクリーニングすることを見込んでいる。参加者は複数のコホートに含まれる場合がある。適切な投与量を特定するためにさらに多くのコホートが必要な場合は、修正案が提出される。
【0251】
適格性を判断するために、以下の検査及び手順が実施される:
【0252】
医学的、外科的、及び精神医学的病歴の確認
現在及び過去の服用薬(処方薬、非処方薬、及び栄養補助食品)の確認
身体検査
身長、体重、及びバイタルサイン(血圧、心拍数、及び体温)の測定
起立性血圧の測定
現在の診断と自殺念慮/自殺行動に関する質問票(すなわち、コロンビア自殺重症度評価尺度[CSSRS])の記入
記憶及び注意力を検査する認知機能検査を実施する場合もある
安静時EEG
スクリーニング時の皮膚コンダクタンス反応。
心電図
以下を含む臨床検査:
定期的な全血球計算、血液化学パネル、TSH、B型肝炎、C型肝炎、及びHIV/AIDSの検査
妊娠する可能性のある女性への妊娠検査。場合によっては、この試験に参加する資格を得るには、妊娠検査の結果が陰性でなければならない。
定期的な尿分析
アルコール飲酒検知
薬物乱用の尿検査
【0253】
0日目(参加者の都合により、スクリーニングまたは1日目のいずれかと組み合わせてもよい):
スクリーニング訪問後(ベースラインの60日前まで)に適格と判断された場合、試験参加者は試験参加のために最大3日間の入院が予定される。0日目(入院日):試験参加者は、違法薬物について検査するために尿サンプルを提供するように求められる。尿検査の結果が陽性の場合、研究責任者に通知され、研究への参加が延期または中止される場合がある。女性は、妊娠検査も行われる。尿による妊娠検査の結果が陽性の場合、試験への参加はキャンセルとなる。参加者は午前中に到着することが期待され、病院スタッフが身体検査、問診、標準的な代謝検査用の採血を実施し、心電図をとる。対象は、入院病棟と試験手順に順応する。SCR、HRV、及び安静時EEGを含むベースライン精神生理学的評価、ならびに臨床評価スケールが行われ得る。現在の自殺念慮/自殺行動に関連する質問票(すなわち、コロンビア自殺重症度評価尺度[CSSRS])が実施される。
【0254】
1日目:
バイタルサイン、精神生理学的アウトカム尺度(安静時EEG、SCR、EKGを含む)、及び行動評価(PANSS、ACES、RASSを含む)を含むベースライン評価を行った後、静脈ラインを留置し、治験薬を投与する。治験薬投与の前に、対象は、場合によっては、PANSS-ECで14以上のスコアを示さなければならない。投与の15分以内に、対象がPANSS-ECで14以上のスコアを示さない場合、投与は開始されない。バイタルサインは、投与後に頻繁に(15分間隔または必要に応じてより頻繁に)評価する。参加者は、少なくとも投与後2時間まで、またはバイタルサインが安定し鎮静レベルが許容できるまで監視される。要約すると、治験薬(デクスメデトミジン塩酸塩またはプラセボ)の投与前に、以下の手順が実施される:
【0255】
バイタルサイン(血圧、脈拍、及び血中酸素濃度)
起立性血圧の測定
精神生理学的アウトカム尺度
静脈留置
行動学的/臨床的アウトカム尺度
PK分析及び神経化学的アッセイ用の血液サンプル
【0256】
指定された治験薬が、その後、治験スタッフにより舌下投与され、以下が行われる:
バイタルサイン(血圧、脈拍、及び血中酸素濃度)を15分ごとに、最終投与から2時間後まで測定する。
対象が歩行開始前に起立性血圧を測定する。
【0257】
精神生理学的アウトカム尺度
30分ごとの行動学的/臨床的アウトカム尺度
【0258】
各投与後約0分、+30分、+60分、及び+120分に、PK分析及び神経化学的アッセイ用の血液サンプルを採取する。ある投与に対する+60/+120の時間点が、その後の投与に対する異なる時間点(例えば、「0」の時間点)と一致する場合、単一の血液サンプルのみが採取され得る。さらに、最終投与から約4時間後及び8時間後に血液サンプルが採取される。PK/アッセイ及び安全性ラボ試験のための追加の血液サンプルは、2日目に採取される。
【0259】
望ましい鎮静レベル(ACES/RASSにより判定)、任意の他の忍容性基準(血圧または脈拍の変化)を達成した後、または最後の投与から約2時間後、対象は以下の検査を受ける:
【0260】
心電図(ECG)
精神生理学的アウトカム尺度(事後)(治験責任医師の裁量による)
【0261】
対象が最終投与後2時間までにバイタルサインの変化がベースラインに戻らない場合、最終投与後6時間まで1時間ごとに、または臨床的に必要と考えられる場合はさらに、バイタルサイン(血圧、脈拍、及び血中酸素濃度)を取得する。
【0262】
ACES/RASSと鎮静の許容レベルの臨床評価
一晩の睡眠評価:PSQIとPSG/アクチグラフ
【0263】
2日目
対象は、治験薬による有害事象または副作用を評価するために治験担当者と面談する。研究施設から退院する前に、以下の手順が行われる:
【0264】
バイタルサイン
起立性血圧の測定
ECG
行動学的/臨床的アウトカム尺度
安全性ラボ試験
PK/アッセイのための採血
C-SSRSの実施
【0265】
2日目の手順に従い、医学的に許容できるとみなされた場合、参加者は退院する。
【0266】
フォローアップの例
1週間以内に手順後のフォローアップの電話があり、以下のことを評価する:
【0267】
参加者には、退院後に服用した薬について尋ねることができる
【0268】
C-SSRSを実施することができる
【0269】
有害事象について評価することができる:対象は、退院後の健康状態について一般的な質問を受ける。特定の有害事象の発生に関する質問は、対象が最初に自発的に情報を提供した場合を除き、尋ねられない。
【0270】
必要に応じて、参加者を招待して、対面での安全性とフォローアップ評価を行うことができる。
【0271】
研究対象が急性の自殺念慮があることが判明した場合、精神科の救急治療室に連れて行かれるか、または自殺念慮の治療のために精神科の救急外来に搬送されるか、措置入院となる場合がある。急性の自殺念慮のある患者は実験を継続することができず、参加に関心がある場合は後日再スクリーニングする必要がある。
【表3】
【0272】
起立性血圧を測定するために、研究スタッフは対象に5分間横になるように要求することができる。5分後、研究スタッフが血圧及び脈拍数を測定する。その後、対象は立ち上がるように求められる。血圧及び脈拍の測定は、対象が1分間と3分間立った後に再度行うことができる。BPが20mmHg以上、または拡張期BPが10mmHg以上低下した場合、または対象が軽い頭痛またはめまいを感じた場合、研究スタッフは対象に転倒予防策を開始することができる。
【0273】
対象の数:
統合失調症スペクトラム障害と診断された対象を募集する。この試験は、現在入院治療を必要としない精神病患者を登録することを目的とする。目標サンプル数は20、目標登録者数は40である。
【0274】
選択基準の例:
1.インフォームドコンセントを与える能力があること。
【0275】
2.18~65歳の男性または女性であること。
【0276】
3.DSM-Vによる、統合失調症または統合失調性感情障害の基準を満たしていること。
【0277】
4.治験責任医師または被指名者が、身体的に十分に健康であり、言語刺激により一時的に覚醒可能な鎮静を引き起こすのに十分なデクスメデトミジン塩酸塩の舌下投与量を受けることができると判断すること。
【0278】
5.詳細な病歴、身体診察、12誘導ECG、血液化学プロファイル、血液学的検査、尿検査による判定と、治験責任医師の判断において、試験参加前の全身健康状態が良好な患者であること。
【0279】
6.妊娠の可能性があり(子宮摘出術を受けたという文書がない限り、閉経が依然として証明されていない女性は妊娠の可能性があるとみなされる)、性生活のある女性参加者で、試験の前後30日間は、医学的に許容できる有効な避妊法を使用することに同意する者。男性参加者は、妊娠の可能性のあるパートナーと性生活のある場合、試験中、かつ試験終了から3ヶ月間、医学的に許容される有効な避妊法を使用することに同意する者。参加者及び/またはそのパートナーが使用し得る医学的に許容される避妊法には、禁欲、避妊ピルまたは避妊パッチ、殺精子剤配合のダイアフラム、子宮内避妊具(IUD)、フォームまたは殺精子剤配合のコンドーム、殺精子膣坐剤、避妊手術、及びプロゲスチンインプラント、またはプロゲスチン注射が含まれる。禁止される方法には、リズム法、腟外射精、コンドームのみ、またはダイアフラムのみが含まれる。
【0280】
7.ベースライン時(治療の15分前)に、PANSS-ECスコアが14以上であること。
【0281】
除外基準の例
1.急性中毒による激越状態の患者。
【0282】
2.ベースライン時に非処方薬の陽性判定があること。
【0283】
3.治験薬の投与前6時間以内に激越のために、ベンゾジアゼピン、または他の睡眠薬、または経口もしくは短時間作用型の筋肉内抗精神病剤による治療を受けた患者。患者が激越のためにPRNベンゾジアゼピンを必要とする場合は、検査日程を続行しない。
【0284】
4.局所神経欠損または臨床的に重大な神経障害があること。
【0285】
5.臨床的に重大または不安定な医学的疾患があり、治験責任医師または被指名者が本試験への参加に不適当と判断した場合。
【0286】
6.治験責任医師または被指名者が、急性的な自殺リスクの上昇があると判断した場合。
【0287】
7.寛解状態まで治療した場合を除く、重大な臨床検査値異常(B型肝炎陽性、C型肝炎陽性、HIV陽性を含む)がある場合。
【0288】
8.治験責任医師または被指名者が、過去6ヶ月以内の薬物またはアルコール使用障害があると判断する場合(ニコチンを除く)。
【0289】
9.以下の心血管系合併症のいずれかがあること:高度房室ブロック(ペースメーカーを使用しない2度以上の房室ブロック)、洞不全症候群の診断、血液量減少、インスリン依存性糖尿病、降圧剤で十分にコントロールされていない慢性高血圧症、失神または他の失神発作の病歴、起立性低血圧の最新のエビデンス、安静時心拍数60回/分未満または収縮期血圧110mmHg未満または拡張期血圧70mmHg未満を有する、臨床的に重大な12誘導ECG異常のエビデンスを有する。
【0290】
10.中等度から重度の肝機能障害があること(ピューチャイルズスコア7以上)。
【0291】
11.α-1ノルアドレナリン遮断薬と、クロニジン、グアンファシンなどのα-2作動薬による治療。
【0292】
12.妊娠中及び授乳中の女性であること。
【0293】
13.デクスメデトミジンに対するアレルギー反応の病歴またはデクスメデトミジンに対する既知のアレルギーがあること。
【0294】
適格基準の例:
対象は、最初に適格性を判断するために、電話スクリーニングを受けることができる。電話スクリーニング中に収集された情報は、対象が研究への参加を継続する場合にのみ使用される。
【0295】
最初の適格性を判断した後、研究スタッフは研究の簡単な説明を行い、対象は上記のスクリーニング手順のために来院する。すべてのスクリーニング手順が終了すると、研究スタッフ及び治験責任者は、すべての関連情報を検討し、対象が残りの研究手順を続行するかどうかを選択基準及び除外基準に基づいて判断する。すでに抗精神病薬または他の薬を服用している対象は、今回の研究に参加している間、その服用薬の使用を継続する。対象は、本試験参加のために抗精神病薬の服用を中止することはない。
【0296】
適格な対象(統合失調症、統合失調性感情障害、または統合失調症様障害を有する急性期の激越状態にある対象)は、外来診療所、精神保健、精神科、もしくは救急医療(医療/精神科観察室を含む)において確認され得るか、または急性の激越のために新たに入院した患者、または慢性的な基礎疾患のためにすでに入院している患者として確認され得る。対象は、臨床研究施設に居住していてもよく、または適格性を評価するためのスクリーニング手順を受けている間、入院していてもよい。
【0297】
統計的考察の例:
解析前にアウトカムを記述的に要約し、正規確率プロット及びコルモゴロフ検定統計を用いて正規性について評価することができる。必要に応じて、変換またはノンパラメトリック分析が行われる。すべての検定は両側で行われ、α=0.05で統計的に有意であるとみなされる。事後比較は適宜行い、二次分析の有意水準はボンフェローニ補正を用いて多重検定用に調整する。分析は、SAS,version 9.3(SAS Institute Inc.,Cary,NC)を用いて行うことができる。線形混合モデルは、PANSS-ECとRASSによって測定される症状の改善を評価するために使用することができる。
【0298】
各訪問時の記述統計量と臨床実験の被検体値のベースラインからの変化は、治療コホートごとに要約することができる。実験データは、正常範囲を有するシフトテーブル、生データ及びベースライン値からの変化量の要約統計量(平均、中央値、標準偏差、範囲)を提示し、データリストの注目すべき値にフラグを立てることによっても要約することができる。バイタルサインの測定値について記述統計量とベースラインからの変化量を要約することができる。
【0299】
分析用の母集団の例:
安全性分析は、二重盲検治験薬を少なくとも1回摂取した無作為化参加者を含むことができる安全性分析対象集団(safety population)に基づき行うことができる。薬物動態データ分析は、二重盲検治験薬(デクスメデトミジン塩酸塩)を少なくとも1回摂取し、ベースライン後のPK評価を実施した無作為化参加者を含む、intent-to-treat対象集団に基づき行うことができる。
【0300】
薬物動態分析の例:
治験薬(デクスメデトミジン塩酸塩)の以下のPKパラメータは、データから計算または導出することができる:
【0301】
投与後30分での濃度
【0302】
言語刺激により一時的に覚醒可能な鎮静のエンドポイントが達成されたときの濃度。
【0303】
薬力学的分析の例:
有効性:言語刺激により一時的に覚醒可能な鎮静の到達(達成までの投与量と時間、投与を停止した後の持続時間)。PANSS-EC及びACESが主要尺度となり得る。プロトコルによって確立された、許容可能な安全性閾値を下回る血圧または心拍数変化を引き起こすことなく、最短時間で5~7のACESを達成するために必要な投与量を記述的に分析する。
【0304】
反復測定:統計的有意性を決定するために0.05のαレベルを用いて、ANOVAが計算され、効果量(Cohenのdとnp2、単位:%)が報告され得る。コルチゾール、平均心拍数、血圧、及び唾液アミラーゼの試験間差が、同様の方法で計算される。
【0305】
実施例3
せん妄または認知症の状況で激越状態にある対象の活動データの受動的収集を評価するためのフィージビリティスタディ。
【表4】
【0306】
試験デザインと計画の例:
これは、モバイルデバイス(iPhone、Apple Watch)により、運動データ、位置データ、生理学的データ、及び音声データを収集するアプリケーションの長期的な受動的データ収集、データ品質、及びユーザー体験を評価するための多施設観察フィージビリティスタディである。
【0307】
この研究の目的は、せん妄または認知症の状況で激越状態を経験している対象のデータ収集及びユーザービリティを評価及び改善することであった。
【0308】
せん妄及び認知症の対象は、別々のコホートに登録した。自宅に住む対象の場合、彼らの一次介護者が激越のエピソードに関するフィードバックを提供した。施設に滞在する対象の場合、HCPと研究スタッフが、PASを含む毎日の激越フォームに1日1回記入することで、激越のエピソードに関するフィードバックを提供した。場合によっては、受動的なデータが介護者から収集されなかった。ファミリーホーム、グループホーム、ナーシングホーム、介護施設、または病院、老人精神科病棟、もしくは他の滞在型精神科病棟を含む専門滞在型施設に滞在する対象が、参加する資格があった。認知症コホートが最初に開始された。
【0309】
場合によっては、資格基準を満たしたすべての個人が登録された。
【0310】
ユーザーフローの説明(
図9を参照)
●認知症試験:
登録フロー
○事前生成及び割り当て:
○-施設ID
○-患者ID
○-患者ID-パスワード
■携帯電話を持っているスタッフ及び患者
■ロックは施設IDx2
■シングルアプリケーションモードを実行
■施設IDを入力(スタンドアローンスクリーンでもよい?)
■選択リストから患者IDを選択
■患者のイニシャルを入力
■スクリーンの記録
■設定ボタン->ログアウトオプション->施設IDスクリーン
○患者
■電話を持ち、時計(またはリング)を装着する。
■ePROは提供しない。
○研究施設スタッフ
■対象のデバイスを管理する
●毎朝患者にデバイス(時計&電話)をセットし、
●それらを患者から外し、毎晩充電ステーションに置く
●問題点を確認し、UX UI評価の対象となる
■EMAを提供する
●回答は専用のデバイス(タブレット)と専用のアプリケーションを介して、患者の各訪問後に提供される:
○5つのVAS:
○異常な発声
○運動性激越
○攻撃性
○-ケアへの抵抗
○合併症
○臨床医と選ばれたスタッフ
試験のために患者を登録する
IDが割り当てられる
患者ID及びパスワードリストを管理する
専用デバイス(タブレット)及び専用アプリケーションを介してeCOA-PAS-評価を毎日提供する[評価期間は24時間]
研究から患者をオフボーディングする
【0311】
場合によっては、すべての対象に、激越監視アプリケーションを実行する自動監視デバイス(例えば、iPhoneなどのネットワーク機能を有する腰装着型マルチセンサデバイス、Apple Watchなどのネットワーク機能を有する手首装着型マルチセンサデバイス、Ouraリングなどのネットワーク機能を有する指装着型マルチセンサデバイスなど)が支給された。
【0312】
技術要件及び機能要件の例:
iPhone 8
センサ及びデータタイプ
●運動及び場所[時間/日付/あらゆる記録セッションの持続時間の追跡]
○生データ収集の構成[0.8MB/分で保存]
■加速度計
●周波数-50Hz
■ジャイロスコープ
●周波数-50Hz
■コンパス
●周波数-50Hz
すべてが24時間で3GBのデータを追跡した場合(トラフィックに要求するのではなく)
●音声[時間/日付/あらゆる記録セッションの持続時間の追跡]
○録音フォーマット:
■M4A:16khzのサンプリングレート
AppleWatch S3の例
センサ及びデータタイプ
●運動及び場所[時間/日付/あらゆる記録セッションの持続時間の追跡]
○生データ収集の構成[0.8MB/分で保存]
■場所(緯度、経度、及び高度)(例えば、GPS)
●精度-小数点以下14桁
●周波数-デバイスの最高で約1記録/秒
■加速度計
●周波数-50Hz
■コンパス
●周波数-50Hz
●iOSで前処理されたデバイスの運動データ[1,2MB/分で保存]
●ジャイロスコープ
○50Hzごとに記録-環境バイアス(重力など)を排除して。すべてが24時間で3GBのデータを追跡した場合(トラフィックに要求するのではなく)
●生理学的データ
-時間
-歩数
-活動エネルギー
-基礎エネルギー
-階段昇降(Stair claim)
Ouraリングの例
Oura Cloud APIは、HTTP REST APIエンドポイントの集合体であり、認証にOAuth2を使用する。
センサ及びデータタイプ
○赤外線PPGによるパルス波形とパルス振幅の変動の検出
○身体温度
○3D加速度計とジャイロスコープ
○Ouraリングプロセスの信号は以下のとおりである。
i.拍動間隔(IBI)
ii.脈波振幅変動(血圧変動に関連)
iii.ECGレベルの安静時心拍数(RHR)
iv.心拍変動(HRV)
v.呼吸数
【0313】
記録プロトコル
●アプリケーションはバッテリがなくなるまで記録を継続する
●アプリケーションデバイスの電源を入れてアプリケーションを起動した瞬間から記録する
●アプリケーションは充電しながら記録する
●デバイスの再起動後(バッテリ残量不足のためにユーザーによる)、アプリケーションは手動でデータ収集をトリガーする必要がある。
●バッテリが20%未満の場合は、アップロードせず録音のみを行うこと。
【0314】
データアップロードプロトコル
●データを定期的に保存し[5分ごと]、データを定期的に送信する[30分ごと]ように構成される
●バッチが正常に送信されるまでは、データをデバイスにバックアップしておき、アップロードに成功した時点でのみ削除する。
●iPhone8またはAppleWatch S3からサーバーへのアップロードはWiFi及びセルラーデータプログラムを介して行われる。
○wifiがメインのアップロードチャネルとして最適化されている。
○Wi-Fiがそれ以上利用できない場合は、セルラーを介して送信すること。
【0315】
充電プロトコル
●一晩
【0316】
ログイン/ID
●介護者は患者のID及び施設ID及びオンボーディングプロセス中の患者のイニシャルを入力する。
●患者は自分でログインすることはできない
●介護者は電話(Applewatch S3の場合)と時計をペアリングする。
【0317】
アラート
いくつかの実装形態では、アラートはサーバーに送信され、患者には表示されない。
●クラッシュ分析及びアクティブ監視
○データアップロードの失敗/デバイスオフ
○電話が20時間を超えて静止状態
○バッテリが20%未満の場合はアラートを送信する
【0318】
スクリーン
●デバイスのロック時-他のアプリケーションにアクセス不可。
●アプリケーションのバックグラウンドでの実行-スクリーン表示なし、または(画面が必要な場合は)黒いスクリーンに最小限のステータスが表示される。
●Watchのアプリケーションでは、画面をパスワードで保護する必要がある。
【0319】
いくつかの実装形態では、ソフトウェアスイートまたはデバイスに、観察者のフィードバックを収集するアプリケーションを含む、追加の技術を加えることができる。いくつかの実装形態では、他のセンサが、追加のデータ収集(体温など)のために追加されるか、または自動監視デバイスの代わりに使用することができる。
【0320】
試験期間は4週間であった。対象は、試験期間の間、起床時間中にデバイスを装着した。
【0321】
収集したデータのタイプ
受動的:
●場所(緯度、経度、及び高度)(例えば、GPS)
●位置測定(モバイル信号局及びWi-Fi)
●加速度測定データ
●角速度(ジャイロスコープ)
●方位(磁力計/コンパス)
●歩数(歩数計)
●活動タイプ(活動タイプの時間及び信頼度)
●音声データ(発話ペース感情及び衝動的な動作を認識するため)
●心拍数及び心拍変動
【0322】
介護者/スタッフの回答
●激越エピソードの観察者レポート
●ユーザービリティアンケート
【0323】
参加の最後に、介護者またはスタッフは元払い配送でデバイスを返却した。
【0324】
試験期間中、データはリアルタイムで監視しなかった。参加者は、試験中に経験した健康状態の変化について医師に連絡するように指示された。試験全体を通じて、アプリケーションとデバイスに関する予期しない問題について収集した。
【0325】
フィージビリティ:
データ収集の範囲と、介護者、HCP、及び研究スタッフからのユーザービリティのフィードバックに基づいて、フィージビリティを評価した。受動的データ収集の閾値は、各データストリームの総時間と連続収集割合が50%を超えるカバレッジであった。忍容性の目標は、日中の活動時にiPhone、AppleWatchを毎日継続的に装着できることであった。データには装着差が見られ、ユーザービリティアンケートでは、ハードウェアアドヒアランスに対する課題がフィードバックされた。
【0326】
対象のデータに加えて、デバイスの機能に関するメトリクスをデバイスのオペレーションコアから入手し、バッテリ寿命と、様々なバッテリレベルにおけるアプリケーションの機能と、計画された使用時と試験前テスト時でのアプリケーションの機能の違いを理解した。
【0327】
試験対象集団の例
試験集団の選択:
この試験では、せん妄または認知症と診断され、日常生活動作(ADL)または社会的相互作用を妨げるほど重度の激越を経験する対象を登録した。対象は、病院、高度看護施設、ナーシングホーム、または他の滞在型ケア、及び外来診療で特定された。自宅で生活している登録対象に対しては、介護者が対象の激越エピソードに関するフィードバックを提供し、対象のデバイスを管理した。この試験では、せん妄または認知症コホートにおいて、複数の施設から最大160名の成人対象を登録した。参加者は全員、同意日時点で少なくとも18歳であった。認知症コホートが最初に開始され、最大80名の認知症の対象を登録した。
【0328】
選択基準の例-せん妄
1.18歳以上の男性と女性の対象。
2.錯乱評価法(CAM)及びDRS-R-98により測定した、せん妄のDSM-5基準を満たした対象。
3.社会的活動を損ない、スタッフの配置または医学的介入を必要とし(蹴る、噛む、暴れるなど)、日常生活の機能的動作の能力低下があるほどの激越状態の最近の病歴を有する対象であり、その旨を介助者から開示されたか、またはカルテに記録されている対象。
4.ファミリーホーム、グループホーム、ナーシングホーム、介護施設に滞在している対象は、参加資格があるものとした。
5.書面によるインフォームドコンセントを読み、理解し、提供することができた対象、または法定代理人(LAR)を有する対象。
6.スマートフォンを持ち運び、手首または手にアクティビティトラッカーを単独で、または介護者の助けを借りて装着することをいとわず、それが可能である対象。
7.単独で、または介護者と一緒に、スマートフォンと手首または手に装着したアクティビティトラッカーとを、単独で、または介護者の助けを借りて操作できた対象。
8.詳細な病歴によって決定され、治験責任医師の判断において、試験参加前に健康状態が良好であった対象。
9.補助器具なしで、または一点杖で歩行することができた対象。
【0329】
除外基準の例-せん妄
1.集中治療室に入院している対象。
2.脳卒中、主要心臓イベント、敗血症、または低酸素イベントの後遺症でせん妄を経験している対象。
3.多剤併用の結果としてせん妄を経験している対象。
4.スマートフォンを持ち運ぶかまたは所持し、手首または身体にアクティビティトラッカーを装着することを望まない、またはそれが不可能である対象。
5.重大または不安定な医学的疾患を有する対象。その疾患には、治験時点における肝疾患(中度~重度の肝障害)、腎疾患、胃腸疾患、呼吸器疾患、心血管疾患(虚血性心疾患、うっ血性心不全を含む)、内分泌系疾患、神経系疾患、または血液系疾患が含まれる。
6.何らかの理由で調査員によって不適切な候補と見なされた対象。
【0330】
選択基準の例-認知症
1.18歳以上の男性と女性の対象。
2.認知症(全原因)のDSM-5基準を満たした対象。
3.過去6ヶ月以内に、社会的活動を損ない、スタッフの配置または医学的介入を必要とし(蹴る、噛む、暴れるなど)、日常生活の機能的動作の能力低下があるほどの激越状態の最近の病歴を有する対象であり、その旨を介助者から開示されたか、またはカルテに記録されている対象。
4.ファミリーホーム、グループホーム、ナーシングホーム、介護施設に滞在している対象は、参加資格があるものとした。
5.書面によるインフォームドコンセントを読み、理解し、提供することができた対象、または法定代理人(LAR)を有する対象。
6.スマートフォンを持ち運び、手首または手にアクティビティトラッカーを単独で、または介護者の助けを借りて装着することをいとわず、それが可能である対象。
7.単独で、または介護者と一緒に、スマートフォンと手首または手に装着したアクティビティトラッカーとを、単独で、または介護者の助けを借りて操作できた対象。
8.詳細な病歴によって決定され、治験責任医師の判断において、試験参加前に健康状態が良好であった対象。
9.補助器具なしで、または一点杖で歩行することができた対象。
【0331】
除外基準の例-認知症
1.スマートフォンを持ち運び、手首または手にアクティビティトラッカーを装着することを望まない、またはそれが不可能である対象。
2.重大または不安定な医学的疾患を有する対象。その疾患には、治験時点における肝疾患(中度~重度の肝障害)、腎疾患、胃腸疾患、呼吸器疾患、心血管疾患(虚血性心疾患、うっ血性心不全を含む)、内分泌系疾患、神経系疾患、または血液系疾患が含まれる。
3.何らかの理由で調査員によって不適切な候補と見なされた対象。
【0332】
【0333】
【0334】
【0335】
コホートサイズの例
この試験では、せん妄または認知症コホートにおいて、複数の施設から最大160名の成人対象を登録した。各診断の参加者の総数は、5、10、または20のより小さなコホートに登録された。各コホートの最大サイズは80名の参加者であった。
【0336】
分散型認知症コホートの例
この研究には、最大30名の対象からなる分散型コホートが含まれた。このコホートには、一次介護者と一緒に自宅に居住する認知症患者のみが含まれた。
【0337】
募集例
対象は、HCPの紹介、オンライン広告、及び参加病院、診療所、または専門施設によって、対象となる診断ごとに募集された。介護者は、対象が自宅で生活しているときに、HCPまたは研究スタッフからフィードバックを提供するよう依頼された。すべての募集資料はIRBの承認を得るために提出された。
【0338】
試験手順の例
デバイスの準備
試験用デバイスは、試験参加者に配布するために治験実施施設に発送されるか、介護者に直接発送された。受領後、研究スタッフは次のようにデバイスを準備した:
●受領デバイスと出庫商品目録を照合した。
●完全に充電するためにデバイスを接続した。
●試験デバイスマニュアルを使用してデバイスのセットアップを完了した。
【0339】
介護者が支援する分散型コホートの対象は、デバイスを受領後、トレーニングセッションに参加した。
【0340】
デバイスが完全に充電され、アプリケーションがダウンロードされると、電源をオフにし、保管した。
【0341】
スクリーニング/ベースライン
データ収集を開始する前に、対象がスクリーニングされ、適格基準が満たされた。
【0342】
対象が直接訪問せずに研究を完了した場合、スクリーニング/ベースラインは2回のセッションにわたって実施された。1回は同意とすべての適格性評価を完了するため、もう1回は介護者が治験実施施設からデバイスを受領後のトレーニングのためである。
【0343】
スクリーニング/ベースラインでは、以下の手順を実施した。
●対象またはLARから書面によるインフォームドコンセントの入手。
●介護者への情報シートの提供。
●選択及び除外基準の確認。
●人口統計学的情報の収集。
●過去及び現在の治療(例えば、処方薬及び非処方薬)を含む病歴の記録。
●ミニメンタルステート検査(MMSE)の実施。
●ADLまたは社会的相互作用を妨げるほど重度の激越の最近の履歴について確認。
●デバイスの説明。
●デバイスの操作、充電、及び返却、ならびにアプリケーションの使用について、介助者及び対象への実演とトレーニングの実施。
●予期しない問題/デバイスの有害事象の記録。
【0344】
毎日(ベースラインから試験終了まで28(+3)日間)
●介護者または施設スタッフは、対象がApple Watch、iPhoneを装着するのを支援した。
●対象は、起きている時間、Apple Watchを装着した。
●対象は、起きている時間、iPhoneを持ち運んだ。
●介護者または研究スタッフは、1日1回PASを完了した。
●介護者または研究スタッフは、Apple Watch、iPhoneを一晩充電するようにセットした。
【0345】
1週目(+3日)の終わり
●介護者または研究スタッフは、ユーザービリティアンケートに回答した。
【0346】
研究スタッフによる介護者への電話:
○ユーザービリティアンケートに関してリマインド。
○アドヒアランスに関する問題について確認。
○予期しない問題/デバイスの有害事象の記録。
【0347】
研究の終わり(22(+5日)日目)
●介護者または研究スタッフは、ユーザービリティアンケートに回答した。
●研究スタッフによる介護者への電話:
○ユーザービリティアンケートに関してリマインド。
○アドヒアランスに関する問題について確認。
○予期しない問題/デバイスの有害事象の記録。
○デバイスの電源を切って返却することをリマインドし、返却プロセスに関する質問に答えた。
【0348】
試験のさらなるコミュニケーション
テキスト/電子メール
認知症の分散型コホートでは、アドヒアランスのサポート、技術的な問題の通知またはフォローアップのための介護者とのコミュニケーションが、介護者が希望する手段で、最大週1回行った。
【0349】
予定外の電話
通院及び分散型コホートの場合、対象からのデータが24時間を超えてもサーバーに到達しなかった場合、治験依頼者は、治験実施施設に、介護者に連絡してデバイスの問題または参加対象者の変更について問い合わせるよう依頼する場合がある。
【0350】
デバイスの返却
通院/分散型の介護者には、試験デバイスを返却するための、宛名付き元払い発送容器が提供された。参加者は、実施中の試験期間の終了時にデバイスを返却した。
【0351】
患者が滞在している治験実施施設では、研究スタッフがHealth Modeから提供された宛名付き元払い発送容器でデバイスを返却した。返品プロセスには以下が含まれた:
●EDCのデバイスの説明ページに返却する各デバイスを文書化。
●すべてのデバイスの電源切断。
●付属の材料によるデバイスの梱包及び発送。
【0352】
研究評価
錯乱評価法(CAM)
錯乱評価法は、せん妄を特定し、他のタイプの認知障害と区別するための診断ツールである。CAMは、精神科医ではない臨床評価者によって実施された場合に有効である。9つの質問への回答により、せん妄の診断を確認するために存在しなければならない4つの特徴のうち3つの有無が通知される。
【0353】
せん妄評価スケール-改訂版(DRS-R-98)
せん妄評価スケール-改訂版は、せん妄評価スケール(1988)の1998年改訂版であり、診断ツールとしての使用を改善する項目を含む。本試験の目的において、DRS-R-98の望ましい特徴は、せん妄の重症度の繰り返し測定尺度としての能力及び妥当性である。DRS-R-98は、訓練を受けた臨床医であれば誰でも実施することができる。
【0354】
ピッツバーグ激越スケール(PAS)
ピッツバーグ激越スケール(PAS)は、認知症に関連する激越の重症度を監視するために開発された、対象の直接観察に基づく手段である。4つのドメイン(異常な発声、運動性激越、攻撃性、ケアへの抵抗)は、0~4の範囲で評価され、定められた観察期間における対象の最も重篤な激越の感覚を答える。
【0355】
ミニメンタルステート検査(MMSE)
ミニメンタルステート検査は、対象へのインタビューに基づき、記銘、注意及び計算、想起、言語、簡単な指示に従う能力、及び見当識という複数のドメインにおける認知機能を評価するための手段である。これは、認知症のスクリーニングとして使用され、認知障害の重症度を評価する。試験は30点満点で採点され、スコアが低いほど重度の障害であることを示す。
【0356】
安全性
予期しない問題
予期しない問題(UP)の定義
被験者保護局(OHRP)は、参加者または他者へのリスクを伴う予期しない問題とは、一般的に、以下の基準をすべて満たすあらゆる出来事、経験、または結果を含むものとみなした。
●(a)治験審査委員会(IRB)承認の研究プロトコル及びインフォームドコンセント文書などのプロトコル関連文書に記載された研究手順と、(b)試験される参加者集団の特徴とを考慮して性質、重大性、または頻度の観点で、予期されないこと;
●研究への参加に関連する、または関連する可能性があること(「関連する可能性がある」とは、その出来事、経験、または結果が、研究に関与する手順によって引き起こされた可能性があるという合理的な可能性があることを意味する);
●その研究が、参加者または他者を、事前に知られていた、または認識されていたものよりも大きな危害(身体的、心理的、経済的、または社会的な危害を含む)のリスクにさらすことを示唆するものであること。
【0357】
この定義には、予期しないデバイスの有害作用、デバイスに起因もしくは関連する、健康もしくは安全性に影響する重大な有害作用、または生命を脅かす問題もしくは死亡に至るもので、その作用、問題、もしくは死亡に至るものが、治験計画もしくは申請(補足計画または申請を含む)であらかじめ特定されていなかった性質、重大性、もしくは発生程度であるもの、または対象の権利、安全、もしくは福祉に関わるデバイス関連の他の予期しない重大な問題も含まれる可能性がある(21 CFR 812.3(s))。
【0358】
予期しない問題の報告
治験責任医師(PI)は、予期しない問題(UP)を、選ばれた治験審査委員会(IRB)と治験依頼者に報告した。UPレポートには、以下の情報が含まれ得る:
●報告日、IRB試験番号、試験タイトル、試験スタッフの連絡先情報、UP発生日、及びPIにUPが通知された日付。
●研究の実施中に発生した予期しない問題の説明。
●この予期しない問題が発生した理由の説明。
●予期しない問題が試験に与える影響の特性決定。
●報告された発生を解決するために実行した手順の説明。
●将来の発生を回避または防止するために実施された計画の説明。
●必要に応じて他の試験参加者への通知。
●本UPが報告された他のすべての存在の列挙。
●UPにより現在承認されている研究及び/または同意書の修正が必要となるかを判断。
【0359】
重篤な有害事象(SAE)の報告
承認された試験の過程で発生した、重篤で、予期しない、アプリケーションもしくはデバイスの使用に関連する、または関連する可能性のある(研究員の判断による)有害事象及び死亡は、IRBに報告された。
【0360】
場合によっては、その事象が上記3つの基準すべてを満たしている場合、その事象を知った時点から5営業日以内にその事象についてIRBに報告された。治験依頼者も、事象を知った時点から24時間以内に通知を受けた。
【0361】
統計的方法
統計分析
実施される分析の詳細を記述した統計分析計画書(SAP)は、データベースのロック前に確定した。
【0362】
連続変数は、記述統計(n、平均値、中央値、標準偏差、最小値、及び最大値)を用いて治療別にまとめた。カテゴリ変数の場合、データの種類ごとに度数とパーセントが示された。ベースラインは、試験データ収集の開始前の最後の観察として定義した。統計分析の詳細は、データベースのロック前に確定された統計分析計画に提供された。
【0363】
フィージビリティ分析
登録されたすべての対象のデータを、フィージビリティを測定するために評価した。対象を収集されたデータのパーセントで層別化し、グループの特性を調べ、データ収集範囲を最適化する傾向及び機会を調査した。
【0364】
データ処理の例
データの抽出、変換、及び書き出し(ETL)プロセスの例
データの抽出、変換、及び書き出し(ETL)プロセスを
図2に示す。ソフトウェアプログラムを使用して、モバイルデバイスの様々な内部または外部センサからデータを抽出した。ソフトウェアアプリケーションには、使用状況、データ収集、及び転送に関する問題を追跡するために使用される報告システムが含まれた。データ処理ステップは、ETLプロセスの様々な段階に組み込まれた。データ処理ステップには、ファイル圧縮、暗号化、タイムスタンプ、及び無音部分の除去、スピーチマスキング、または予備的なスピーチ分析が含まれた。処理の最後のステップには、主要エンドポイントをサポートするためのアウトカム尺度を提供するデータ分析と、探索的エンドポイントをサポートするためのアウトカム尺度を提供する高度な激越及び過剰興奮性の特性解析が含まれた。
【0365】
試験の中止と終了
十分な合理的な理由がある場合、本試験は一時的に中断されるか、または早期に終了する可能性がある。試験の中断または終了の理由を文書化し、中断または終了の当事者から、試験参加者、研究員、治験依頼者、及び規制当局に対して書面による通知がなされることになっている。試験が早期終了または中断された場合、研究責任者(PI)は、試験参加者、治験審査委員会(IRB)、及び治験依頼者に速やかに通知し、終了または中断の理由(複数可)を説明した。試験参加者には、電話または電子メールで連絡を取り、試験スケジュールの変更について知らせた。
【0366】
終了または中断を必要とし得る状況には、以下が含まれるが、これらに限定されない:
●参加者に対する予期しない、重篤な、または許容できないリスクが判断される
●停止を必要とする有効性が実証される
●プロトコル要件の遵守が不十分である
●データが不十分及び/または評価できない
●主要エンドポイントが満たされていると判断される
●無益であると判断される
【0367】
安全性、プロトコルの遵守、及びデータの質に関する懸念に対処し、治験依頼者、IRB、及び/または食品医薬品局(FDA)が満足した場合には、試験は再開される場合がある。
【0368】
離脱
参加者が本試験から離脱した場合、離脱の理由(複数可)が試験データ収集システムに報告された。離脱時点までに収集されたデータは分析に使用され、プロトコルにしたがって保持された。参加者の離脱後、その参加者からさらなるユーザーインタラクションデータは収集されなかった。
【0369】
本明細書の開示は、特定の実施形態を参照して説明されてきたが、これらの実施形態は、本開示の原理及び応用を単に例示するものであることを理解されたい。多くの修正及び変形が当業者には明らかであろう。実施形態は、本開示及びその実用的な実装形態/応用を最もよく説明するために選択及び説明されており、それにより当業者は、様々な実施形態について、企図される特定の用途に適するような様々な変更を加えて、本開示を理解することができるようになる。したがって、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態に多数の変更を加えることができ、他の装置を考案することができることが理解されるであろう。
【0370】
本明細書に記載されるシステムの概要の図は、様々な実施形態の構造の一般的な理解を提供することを意図しており、本明細書に記載される構造を利用し得る装置及びシステムのすべての要素及び特徴の完全な説明として機能することは意図していない。他の多くの装置は、上記の説明を検討する際に当業者には明らかであろう。他の装置は、本開示の範囲から逸脱することなく、構造的及び論理的な置換及び変更を行うことができるように、利用され、そこから導出することができる。また、図は、単に表現的なものであり、縮尺どおりに描かれていない場合がある。その特定の比率は誇張されている可能性があり、他の比率は最小化されている可能性がある。したがって、本明細書及び図面は、限定する意味ではなくて例示的なものとみなされる。
【0371】
このように、本明細書では特定の図を図示及び説明したが、同じ目的を達成するために計算される任意の他の設計が、図示した特定の装置に代えることができることを理解されたい。本開示は、本開示の様々な実施形態の任意の及びすべての適合または変形を網羅することを意図している。本明細書に具体的に記載されていない上記の設計/構造的修正の組み合わせは、上記の説明を検討すれば当業者には明らかであろう。したがって、本開示を実施するために企図された最良の態様として開示された特定の方法フロー、装置、システムに限定されず、本開示が添付の請求項の範囲内に収まるすべての実施形態及び装置を含むことが意図される。
【0372】
様々な実施形態が上述されてきたが、それらは例としてのみ提示されたものであり、限定されたものではないことを理解されたい。上述した方法が、特定のイベントが特定の順序で発生することを示す場合、特定のイベントの順序は変更されてもよい。さらに、イベントのうちの特定のものは、可能な場合には並列処理で同時に実行されてもよく、上述のように順次実行されてもよい。
【0373】
本明細書に記載のいくつかの実施形態は、様々なコンピュータ実装動作を実行するための命令またはコンピュータコードをその上に有する非一時的コンピュータ可読媒体(非一時的プロセッサ可読媒体とも呼ばれ得る)を備えるコンピュータストレージ製品に関する。コンピュータ可読媒体(またはプロセッサ可読媒体)は、一時的な伝搬信号自体(例えば、空間またはケーブルなどの伝送媒体上で情報を運ぶ伝搬電磁波)を含まないという意味で、非一時的である。媒体及びコンピュータコード(コードとも呼ばれ得る)は、特定の目的(複数可)のために設計及び構築されたものであってもよい。非一時的コンピュータ可読媒体の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない:ハードディスク、フロッピーディスク、及び磁気テープなどの磁気ストレージ媒体;コンパクトディスク/デジタルビデオディスク(CD/DVD)、コンパクトディスク・リードオンリーメモリ(CD-ROM)及びホログラフィックデバイスなどの光ストレージ媒体;光ディスクなどの光磁気ストレージ媒体;搬送波信号処理モジュール;ならびに特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、リードオンリーメモリ(ROM)、及びランダムアクセスメモリ(RAM)デバイスなどのプログラムコードを格納及び実行するように特別に構成されたハードウェアデバイス。本明細書に記載の他の実施形態は、コンピュータプログラム製品に関するものであり、例えば、本明細書で説明する命令及び/またはコンピュータコードを含むことができる。
【0374】
コンピュータコードの例としては、マイクロコードまたはマイクロ命令、コンパイラによって生成されるような機械命令、ウェブサービスを生成するために使用されるコード、及びインタープリタを使用してコンピュータによって実行される高レベル命令を含むファイルなどがあるが、これらに限定されるわけではない。例えば、実施形態は、命令型プログラミング言語(例えば、C、Fortranなど)、関数型プログラミング言語(Haskell、Erlangなど)、論理型プログラミング言語(例えば、Prolog)、オブジェクト指向プログラミング言語(例えば、Java、C++など)、または他の適切なプログラミング言語及び/または開発ツールを使用して実装されてもよい。コンピュータコードの追加の例には、制御信号、暗号化コード、及び圧縮コードが含まれるが、これらに限定されない。
【0375】
様々な実施形態が上述されてきたが、それらは限定ではなく例としてのみ提示されたものであり、形態及び詳細の様々な変更がなされ得ることを理解されたい。本明細書に記載の装置及び/または方法の任意の部分は、互いに排他的な組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わされてもよい。本明細書に記載の実施形態は、記載される異なる実施形態の機能、構成要素、及び/または特徴の様々な組み合わせ及び/または下位の組み合わせを含むことができる。
【国際調査報告】