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特表2022-549144ポリオレフィンポリマーのための触媒組成物
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  • 特表-ポリオレフィンポリマーのための触媒組成物 図1
  • 特表-ポリオレフィンポリマーのための触媒組成物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-24
(54)【発明の名称】ポリオレフィンポリマーのための触媒組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/652 20060101AFI20221116BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
C08F4/652
C08F10/00 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517350
(86)(22)【出願日】2020-09-16
(85)【翻訳文提出日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 US2020051011
(87)【国際公開番号】W WO2021055430
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】62/902,118
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001706
【氏名又は名称】ダブリュー・アール・グレース・アンド・カンパニー-コーン
【氏名又は名称原語表記】W R GRACE & CO-CONN
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】エプスタイン,ロナルド
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】エルダー,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】マリン,ウラジーミル
(72)【発明者】
【氏名】ヒントレー,アーメド
(72)【発明者】
【氏名】ボイヤー,ティモシー
【テーマコード(参考)】
4J128
【Fターム(参考)】
4J128AA02
4J128AA03
4J128AB02
4J128AB03
4J128AC05
4J128AC07
4J128BA00A
4J128BA02B
4J128BB00A
4J128BB01B
4J128BC15B
4J128BC36B
4J128CA16A
4J128CB23A
4J128CB35A
4J128CB43A
4J128CB44C
4J128CB45A
4J128DB10A
4J128EA01
4J128EB04
4J128EC01
4J128EF03
4J128FA01
4J128FA09
4J128GA05
4J128GA09
4J128GA21
4J128GA24
(57)【要約】
チーグラー・ナッタ触媒組成物が開示される。触媒組成物は、マグネシウム部分及びチタン部分を含有するプロ触媒から形成される。少なくとも1つの内部電子供与体が、プロ触媒に組み込まれる。内部電子供与体と組み合わせるチタン化手順中、チタン抽出剤を使用して、低活性又はアタクチックチタン活性部位を除去又は非活性化する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チーグラー・ナッタプロ触媒組成物を生成するためのプロセスであって、
マグネシウムを含むプロ触媒を少なくとも第1のチタン化ステップ及び第2のチタン化ステップに供することと、
内部電子供与体を前記プロ触媒に組み込むことと、
前記プロ触媒をチタン化ステップ中又は前記チタン化ステップ後にチタン抽出剤と接触させることと、を含み、前記チタン抽出剤が、前記プロ触媒上のチタンを除去する、プロセス。
【請求項2】
前記チタン抽出剤が、エステル、ケトン、カーボネート、又はそれらの混合物を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記チタン抽出剤が、モノエステルを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記チタン抽出剤が、エチルベンゾエートなどのアルキルベンゾエートを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記内部電子供与体が、アリールジエステルを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記内部電子供与体が、以下の式:
【化1】
を有するナフチルジベンゾエートを含み、
式中、各Rは、独立して、水素、ハロゲン、1~約8個の炭素原子を有するアルキル、フェニル、7~約18個の炭素原子を有するアリールアルキル、又は7~約18個の炭素原子を有するアルキルアリールである、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。別の実施形態では、各Rは、独立して、水素、1~約6個の炭素原子を有するアルキル、フェニル、7~約12個の炭素原子を有するアリールアルキル、又は7~約12個の炭素原子を有するアルキルアリールである。
【請求項7】
前記プロ触媒を、前記第1のチタン化ステップ中に前記チタン抽出剤と接触させる、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記プロ触媒を、前記第2のチタン化ステップ中に前記チタン抽出剤と接触させる、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記第1のチタン化ステップ中に、前記プロ触媒を、前記チタン抽出剤の不存在下で前記内部電子供与体と接触させ、前記第2のチタン化ステップ中に、前記プロ触媒を、前記内部電子供与体の不存在下で前記チタン抽出剤と接触させる、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記第1のチタン化ステップ中に、前記プロ触媒を、前記内部電子供与体及び前記チタン抽出剤と接触させ、前記第2のチタン化ステップ中に、前記プロ触媒を、前記内部電子供与体、前記チタン抽出剤、又は前記内部電子供与体と前記チタン抽出剤との両方と接触させる、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記プロ触媒が、噴霧結晶化されたハロゲン化マグネシウム化合物を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記噴霧結晶化されたハロゲン化マグネシウム化合物が、約1.5:1~約3.1:1の重量比でエタノール及び塩化マグネシウムを含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記内部電子供与体が、
【化2】
を含み、
式中、R及びRはそれぞれ、水素又は1~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、R及びRのうちの少なくとも1つは、水素であり、R及びRのうちの少なくとも1つは、1~20個の炭素原子を有する置換又は非置換ヒドロカルビル基を含み、E及びEは、同じであるか、又は異なり、任意選択的にヘテロ原子を含有する、1~20個の炭素原子を有するアルキル、1~20個の炭素原子を有する置換アルキル、6~20個の炭素原子を有するアリール、6~20個の炭素原子を有する置換アリール、又は1~20個の炭素原子を有する不活性官能基からなる群から選択され、X及びXはそれぞれ、O、S、アルキル基、又はNRであり、Rは、1~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であるか、又は水素である、請求項1~3又は7~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
及びRのうちの少なくとも1つが、分岐状若しくは線状構造を有するか、又は5~15個の炭素原子を有するシクロアルキル基を含むヒドロカルビル基を含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
マグネシウム部分が、以下の式:
Mg(OR)nX2-nLm
を有し、式中、Rは、ハロゲン原子を含有するアルキル基又はアリール基を含み、nは、0~2であり、Lは、エーテル及び/又はアルコールの配位された配位子基を含み、mは、配位された配位子の数であり、0~10であり、
チタン部分が、以下の式:
Ti(OR)4-g
で表され、式中、各Rは、独立して、C~Cアルキル基であり、Xは、臭素、塩素、又はヨウ素であり、gは、0、1、2、又は3である、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
助触媒、及び任意選択的に選択性制御剤と組み合わされた請求項1~15のいずれか一項に記載のプロ触媒組成物を含む、触媒組成物。
【請求項17】
前記助触媒が、トリエチルアルミニウムを含む、請求項16に記載の触媒組成物。
【請求項18】
前記選択性制御剤が、存在し、かつアルコキシシランを含む、請求項16に記載の触媒組成物。
【請求項19】
前記選択性制御剤が、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジ-tert-ブチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジエトキシシラン、エチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジ-n-プロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、イソブチルイソプロピルジメトキシシラン、ジ-n-ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、
ジエチルアミノトリエトキシシラン、シクロペンチルピロリジノジメトキシシラン、ビス(ピロリジノ)ジメトキシシラン、ビス(ペルヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、又はそれらの混合物を含む、請求項16に記載の触媒組成物。
【請求項20】
前記触媒組成物が、活性制限剤を更に含む、請求項16~19のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項21】
前記活性制限剤が、カルボン酸エステルを含む、請求項20に記載の触媒組成物。
【請求項22】
前記プロ触媒が、以下の式:
Mg(OR)nX2-nLm
を有するマグネシウム部分であって、式中、Rは、ハロゲン原子を含有するアルキル基又はアリール基を含み、nは、0~2であり、Lは、エーテル及び/又はアルコールの配位された配位子基を含み、mは、配位された配位子の数であり、0~10である、マグネシウム部分、
及び以下の式:
Ti(OR)gX4-g
を有するチタン部分であって、式中、各Rは、独立して、C1~C4アルキル基であり、Xは、臭素、塩素、又はヨウ素であり、gは、0、1、2、又は3である、チタン部分を含む、請求項16~21のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項23】
ポリオレフィンポリマーを生成するためのプロセスであって、請求項16~22のいずれか一項に記載の触媒組成物の存在下で、プロピレンモノマー及び任意選択的に1つ以上のコモノマーを重合することを含む、プロセス。
【請求項24】
前記プロセスが、約0.5重量%~約6重量%のキシレン可溶分含有量を有するポリプロピレンポリマーを生成する、請求項23に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる2019年9月18日に出願された米国特許仮出願第62/902,118号に基づき、それに対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンポリマーは、多数の多様な用途及び分野で使用される。ポリオレフィンポリマーは、例えば、容易に加工することができる熱可塑性ポリマーである。ポリオレフィンポリマーはまた、リサイクル及び再利用することができる。ポリオレフィンポリマーは、石油化学物質から得られ、豊富に利用可能であるエチレン及びアルファ-オレフィンなどの炭化水素から形成される。
【0003】
ポリオレフィンポリマーの一種であるポリプロピレンポリマーは、一般に、プロピレンモノマーに基づく線状構造を有する。ポリプロピレンポリマーは、様々な異なる立体特異的配置を有し得る。ポリプロピレンポリマーは、例えば、アイソタクチック、シンジオタクチック、及びアタクチックであり得る。アイソタクチックポリプロピレンは、おそらく最も一般的な形態であり、高度に結晶性であり得る。生成され得るポリプロピレンポリマーとしては、ホモポリマー、変性ポリプロピレンポリマー、及びポリプロピレンターポリマーを含むポリプロピレンコポリマーが挙げられる。ポリプロピレンを変性するか、又はプロピレンを他のモノマーと共重合することによって、特定の用途に所望の特性を有する様々な異なるポリマーを生成することができる。例えば、ポリプロピレンコポリマーは、ポリマーの衝撃強度を大幅に向上させるエラストマー特性を有するように生成することができる。
【0004】
これらのポリマーの用途がより多様でより高度になるため、オレフィン系ポリマーの世界中の需要は成長し続ける。オレフィン系ポリマーの生成のためのチーグラー・ナッタ触媒組成物が知られている。チーグラー・ナッタ触媒組成物は、典型的には、遷移金属ハロゲン化物(すなわち、チタン、クロム、バナジウム)、及び有機アルミニウム化合物などの助触媒を含有するプロ触媒を含む。
【0005】
チーグラー・ナッタ触媒組成物は、有機電子供与体を使用して作製される。電子供与体は、典型的には、それがプロ触媒に結合していることを示すように、かつそれを重合プロセス中に使用される、典型的には外部電子供与体と称される他の電子供与体と区別するように、内部電子供与体と称される。内部電子供与体は、全触媒組成物の触媒活性などの性能特性を大幅に決定し得る。内部電子供与体はまた、触媒組成物から作製されたポリマーの特性に影響を及ぼし得る。例えば、内部電子供与体は、ポリマーのメルトフローレート、キシレン可溶分含有量などに影響を及ぼし得る。
【0006】
プロ触媒に組み込まれた内部電子供与体に加えて、プロ触媒を生成する方法もまた、性能特徴の範囲に影響を及ぼし得る。例えば、プロ触媒を生成するために使用される原材料の化学量論、並びに合成中に使用されるステップの条件及び数を変化させることは、触媒組成物の様々な特性及び生成されたポリマーの特性に影響を与え得る。
【0007】
最近、比較的複雑な構造を有する内部電子供与体の使用によって触媒組成物の性能を改善するために、大変な努力がなされている。当該技術分野では大きな進歩があったものの、依然として様々な改善が必要である。例えば、広範囲にわたるキシレン可溶分含有量のポリオレフィンポリマー、例えば、比較的高いキシレン可溶分含有量を有するポリマー及び比較的低いキシレン可溶分含有量を有するポリマーを生成することができる触媒組成物の必要性が存在する。上記に加えて、触媒組成物の特性を改善するだけでなく、触媒組成物を生成するために必要な内部電子供与体の量を最小化することができる、触媒組成物を生成するためのプロセスに対する必要性もまた存在する。
【発明の概要】
【0008】
一般に、本開示は、ポリオレフィンポリマーを生成するための触媒システムを対象とする。本開示はまた、改善された触媒組成物及びこの触媒組成物を生成するためのプロセスを対象とする。本開示の触媒組成物は、多くの利益を有し得、特定の用途のために設計及び配合され得る。例えば、本開示に従って作製されたチーグラー・ナッタ触媒組成物は、増加した立体選択性を有することができ、かつ/又は非常に広範囲にわたるキシレン可溶分含有量のポリオレフィンポリマーを生成することができる。したがって、本開示の触媒組成物は、広範囲の異なるポリオレフィン生成物を生成するための、多くの異なるタイプの重合プロセスで使用するのに十分に適している。触媒組成物は、低減した非晶質又はアタクチック相を有するプロピレンポリマーなどのポリマーを生成することができ、低減したキシレン可溶分含有量を有することができる。特定の利点のうち、上記の利益を有し、一方でまた、触媒組成物を生成するためにより少量の内部電子供与体を必要とする、触媒組成物を本開示に従って作製することができる。
【0009】
ある実施形態では、例えば、本開示は、チーグラー・ナッタ触媒組成物を生成するためのプロセスを対象とする。本プロセスは、マグネシウム部分及びチタン部分からプロ触媒担体を形成することを含む。
例えば、マグネシウム部分は、以下の式:
Mg(OR)nX2-nLm
を有し得、式中、Rは、ハロゲン原子を含有するアルキル基又はアリール基を含み、nは、0~2であり、Lは、エーテル及び/又はアルコールの配位された配位子基を含み、mは、配位された配位子の数であり、0~10である。チタン部分は、以下の式:
Ti(OR)4-g
を有し得、式中、各Rは、独立して、C~Cアルキル基であり、Xは、臭素、塩素、又はヨウ素であり、gは、0、1、2、又は3である。
【0010】
プロ触媒は、少なくとも第1のチタン化ステップ及び第2のチタン化ステップに供される。アリールジエステルなどの内部電子供与体は、プロ触媒に組み込むことができる。本開示によれば、プロ触媒を、少なくとも1つのチタン化ステップ中又はチタン化ステップ後に、チタン抽出剤と接触させる。チタン抽出剤は、プロ触媒上のチタンを除去する。より具体的には、チタン抽出剤は、活性がより低いか、又は内部電子供与体に結合しないアタクチック部位であるプロ触媒上のチタン種を抽出又は非活性化し、それによって触媒の立体選択性を改善することができると考えられる。
【0011】
チタン抽出剤は、プロ触媒の調製で用いられる内部供与体よりも立体的嵩高さが少ないものであり得、チタン抽出剤は、立体的に嵩高い内部供与体によってアクセスできないチタン部位にアクセスすることができる。チタン抽出剤は、プロ触媒の調製で用いられる内部供与体のチタンに対する親和性以下の親和性を示す。少量のチタン抽出剤が、プロ触媒中に残る場合がある。チタン抽出剤の例としては、エステル、ケトン、カーボネート、及びそれらの混合物が挙げられる。一態様では、チタン抽出剤は、モノエステルである。例えば、チタン抽出剤は、エチルベンゾエートなどのアルキルベンゾエートであり得る。
【0012】
内部電子供与体はまた、特定の用途に応じて変化し得る。一態様では、内部電子供与体は、アリールジエステルである。内部電子供与体は、以下の式:
【化1】
を有し得、式中、R及びRはそれぞれ、水素又は1~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、R及びRのうちの少なくとも1つは、水素であり、R及びRのうちの少なくとも1つは、1~20個の炭素原子を有する置換又は非置換ヒドロカルビル基を含み、E及びEは、同じであるか、又は異なり、任意選択的にヘテロ原子を含有する、1~20個の炭素原子を有するアルキル、1~20個の炭素原子を有する置換アルキル、6~20個の炭素原子を有するアリール、6~20個の炭素原子を有する置換アリール、又は1~20個の炭素原子を有する不活性官能基からなる群から選択され、X及びXはそれぞれ、O、S、アルキル基、又はNRであり、Rは、1~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であるか、又は水素である。
【0013】
代替的に、内部電子供与体は、以下のように、1,8-ナフチルジアリーロエート化合物などのナフチルジベンゾエートであり得、
【化2】
式中、各Rは、独立して、水素、ハロゲン、1~約8個の炭素原子を有するアルキル、フェニル、7~約18個の炭素原子を有するアリールアルキル、又は7~約18個の炭素原子を有するアルキルアリールである。別の実施形態では、各Rは、独立して、水素、1~約6個の炭素原子を有するアルキル、フェニル、7~約12個の炭素原子を有するアリールアルキル、又は7~約12個の炭素原子を有するアルキルアリールである。
【0014】
一般的な例としては、1,8-ナフチルジ(アルキルベンゾエート)、1,8-ナフチルジ(ジアルキルベンゾエート)、1,8-ナフチルジ(トリアルキルベンゾエート)、1,8-ナフチルジ(アリールベンゾエート)、1,8-ナフチルジ(ハロベンゾエート)、1,8-ナフチルジ(ジハロベンゾエート)、1,8-ナフチルジ(アルキルハロベンゾエート)、などが挙げられる。
【0015】
上記のように、チタン抽出剤を、チタン化ステップ中にプロ触媒と接触させることができる。例えば、チタン抽出剤を、第1のチタン化ステップ中に、第2のチタン化ステップ中に、第3のチタン化ステップ中に、又はそれらの任意の組み合わせでプロ触媒と接触させることができる。例えば、プロ触媒を、第2のチタン化ステップ中にのみチタン抽出剤と接触させることができる。プロ触媒は、単独で、又は内部電子供与体と組み合わせて、チタン抽出剤と接触させることができる。例えば、プロ触媒を、第1のチタン化ステップ中に、チタン抽出剤の不存在下で内部電子供与体と接触させることができ、第2のチタン化ステップ中に、内部電子供与体の不存在下でチタン抽出剤と接触させることができる。別の代替例では、プロ触媒を、第1のチタン化ステップ中に、内部電子供与体及びチタン抽出剤と接触させ、第2のチタン化ステップ中に、内部電子供与体、チタン抽出剤、又は内部電子供与体とチタン抽出剤との両方と接触させる。
【0016】
プロ触媒は、ハロゲン化マグネシウム及びチタン化合物を含有し得る。一態様では、プロ触媒は、噴霧結晶化されたハロゲン化マグネシウム化合物である。
【0017】
本開示はまた、ポリオレフィンポリマーを生成するためのプロセスを対象とする。本プロセスは、触媒組成物の存在下で、プロピレンモノマー及び任意選択的に1つ以上のコモノマーを重合することを含む。触媒組成物は、少なくとも第1のチタン化ステップ及び第2のチタン化ステップに供されたプロ触媒を含み得る。本開示によれば、プロ触媒は、チタン化ステップのうちの少なくとも1つの間に、又はチタン化ステップ後にチタン抽出剤と接触している。
【0018】
上記のようなポリオレフィンポリマーを生成するためのプロセスにより、広範囲のキシレン可溶分含有量を有するポリプロピレンポリマーを生成することができる。例えば、キシレン可溶分含有量は、約0.25重量%~約10重量%のいずれかであり得る。このようにして、本開示の触媒組成物は、すべての異なるタイプのポリオレフィンポリマーを生成するのに十分に適している。ある実施形態では、例えば、約4重量%未満などの比較的低いキシレン可溶分含有量を有するポリプロピレンポリマーを生成することができる。しかしながら、他の実施形態では、より高いキシレン可溶分含有量を有するポリプロピレンポリマーを生成することもできる。
【0019】
ポリオレフィンポリマーを生成するために使用される場合、触媒組成物は、助触媒を含み得る。助触媒は、トリエチルアルミニウムなどの炭化水素アルミニウム化合物を含み得る。組成物はまた、選択性制御剤を含有し得る。選択性制御剤は、アルコキシシランを含み得る。例えば、選択性制御剤は、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジ-tert-ブチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジエトキシシラン、エチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジ-n-プロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、イソブチルイソプロピルジメトキシシラン、ジ-n-ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、シクロペンチルピロリジノジメトキシシラン、ビス(ピロリジノ)ジメトキシシラン、ビス(ペルヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、又はそれらの混合物を含み得る。
【0020】
更に別の実施形態では、触媒組成物は、活性制限剤を含み得る。
【0021】
本開示の他の特色及び態様は、以下でより詳細に考察される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本開示の完全かつ有効な開示は、添付の図面を参照することを含む、本明細書の残りの部分においてより具体的に記載される。
図1】以下の実施例で得られた結果のグラフ表示である。
図2】以下の実施例で得られた結果の別のグラフ表示である。
【0023】
本明細書及び図面における参照文字の繰り返し使用は、本発明の同じ又は類似の特色又は要素を表すことを意図している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
当業者は、本考察が例示的な実施形態の説明のみであり、本開示のより広い態様を限定することを意図するものではないことを理解するであろう。
【0025】
一般に、本開示は、ポリオレフィンポリマー、特にポリプロピレンポリマーを生成するための触媒システムを対象とする。本開示はまた、触媒組成物、及び触媒組成物を使用してオレフィンを重合及び共重合する方法を対象とする。一般に、本開示の触媒組成物は、マグネシウム部分、任意選択的にチタン部分、及び内部電子供与体を含有するプロ触媒を含む。本開示によれば、プロ触媒は、チタン抽出剤を使用して生成される。チタン抽出剤は、触媒上に存在する他のチタン種よりも活性が低く、立体規則能力(stereoregulating ability)が悪いチタン種を抽出又は非活性化する。チタン抽出剤を使用して、望ましくないチタン種を除去することにより、増加した立体選択性及び改善されたXS能力を有するチーグラー・ナッタ触媒組成物が生成される。
【0026】
上記のような触媒組成物は、所望の特性の組み合わせを有するポリマーを生成することができる。例えば、本開示の触媒組成物は、非常に広範囲にわたるキシレン可溶分含有量のポリオレフィンポリマーを生成するために使用することができる。結果として、1つの触媒を使用して、低いキシレン可溶分含有量を有するポリマー及び比較的高いキシレン可溶分含有量を有するポリマーを生成することができる。結果として、触媒生成物は、あるポリマーグレードから別のポリマーグレードに変更する際に、触媒の移行を行うことなく、非常に広範囲の特性を有するポリマーを生成することができる。例えば、本開示に従って作製された単一の触媒を用いて生成された、ポリプロピレンポリマーなどのポリオレフィンポリマーは、1.5%~6%のキシレン可溶分含有量の範囲であり得る。
【0027】
一態様では、プロ触媒組成物はまた、チタン化プロセスにおいてより少ない内部電子供与体を消費して生成することもできる。例えば、一態様では、チタン抽出剤は、より高価な内部電子供与体によって容易に置換することができないチタンを除去又は置換することができる。更に、より少ない内部電子供与体を使用してプロ触媒が生成されるが、依然として、チタン抽出剤が使用されない場合に生じるように、同じ量の内部電子供与体をプロ触媒に組み込むことができる。
【0028】
本開示によるプロ触媒組成物の合成は、一般に、2つ以上のチタン化反応又はステップを含む。例えば、プロ触媒組成物は、2つ、3つ、又は4つのチタン化ステップを使用して生成することができる。本開示によれば、以下でより詳細に記載されるように、本開示のチタン抽出剤は、チタン化ステップのいずれか又はすべての間のプロ触媒組成物の合成中に、プロ触媒に接触させることができる。チタン抽出剤はまた、チタン化ステップを行った後にプロ触媒に接触させることができる。チタン化ステップ中、チタン抽出剤を、単独又は内部電子供与体との組み合わせのいずれかでプロ触媒と接触させることもできる。
【0029】
本開示の触媒組成物を生成するために使用されるプロ触媒は、特定の実施形態及び所望の結果に応じて変化し得る。一般に、プロ触媒担体は、マグネシウム部分及びチタン部分を含有する。例えば、マグネシウム部分は、一般に、以下の式:
Mg(OR)nX2-nLm
を有し得、式中、Rは、ハロゲン原子を含有するアルキル基又はアリール基を含み、nは、0~2であり、Lは、エーテル及び/又はアルコールの配位された配位子基を含み、mは、配位された配位子の数であり、0~10である。チタン部分は、一般に、以下の式:
Ti(OR)4-g
を有し得、式中、各Rは、独立して、C1~C4アルキル基であり、Xは、臭素、塩素、又はヨウ素であり、gは、0、1、2、又は3である。
【0030】
プロ触媒担体は、例えば、混合マグネシウムチタン化合物(magnesium titanium compound、MagTi)、又はベンゾエート含有塩化マグネシウム化合物(benzoate-containing magnesium chloride compound、BenMag)であり得る。
【0031】
一態様では、プロ触媒担体は、混合マグネシウム/チタン化合物(「MagTi」)である。「MagTi前駆体」は、式MgTi(ORを有し、式中、Reは、1~14個の炭素原子を有する脂肪族若しくは芳香族炭化水素ラジカル、又はCOR’であり、R’は、1~14個の炭素原子を有する脂肪族若しくは芳香族炭化水素ラジカルであり、各OR基は、同じであるか、又は異なり、Xは、独立して、塩素、臭素、又はヨウ素、好ましくは塩素であり、dは、0.5~56、又は2~4であり、fは、2~116、又は5~15であり、gは、0.5~116、又は1~3である。前駆体は、その調製に使用される反応混合物からアルコールを除去する制御された沈殿によって調製される。反応媒体は、芳香族液体、特に塩素化芳香族化合物、最も特にはクロロベンゼンと、アルカノール、特にエタノールとの混合物を含み得る。好適なハロゲン化剤としては、四臭化チタン、四塩化チタン又は三塩化チタン、特に四塩化チタンが挙げられる。ハロゲン化に使用される溶液からアルカノールを除去すると固体の前駆体が沈殿し、これは特に望ましい形状及び表面積を有する。更に、得られた前駆体は、粒子サイズが特に均一である。
【0032】
代替的に、プロ触媒担体は、ベンゾエート含有塩化マグネシウム材料(benzoate-containing magnesium chloride material、「BenMag」)である。本明細書で使用される場合、「ベンゾエート含有塩化マグネシウム」(benzoate-containing magnesium chloride、「BenMag」)とは、ベンゾエート内部電子供与体を含有するプロ触媒(すなわち、ハロゲン化プロ触媒担体)であり得る。BenMag材料は、ハロゲン化チタンなどのチタン部分も含み得る。ベンゾエート内部供与体は不安定であり、触媒及び/又はプロ触媒合成中に他の電子供与体に置き換えられ得る。好適なベンゾエート基の非限定的な例としては、エチルベンゾエート、メチルベンゾエート、エチルp-メトキシベンゾエート、メチルp-エトキシベンゾエート、エチルp-エトキシベンゾエート、エチルp-クロロベンゾエートが挙げられる。ある実施形態では、ベンゾエート基はエチルベンゾエートである。一実施形態では、BenMagプロ触媒担体は、ベンゾエート化合物の存在下における、任意のプロ触媒担体(すなわち、MagMo前駆体又はMagTi前駆体)のハロゲン化の生成物であり得る。
【0033】
ある実施形態では、実質的に球状のMgCl2-nEtOH付加物は、噴霧結晶化プロセスによって形成することができる。このプロセスでは、nが1~6であるMgCl-nROH溶融物は、容器の上部に20~80℃の温度で不活性ガスを実施しながら容器の内側で噴霧される。溶融物液滴は、不活性ガスが-50~20℃の温度で導入される結晶化領域に移され、溶融物液滴を球形状の非凝集化固体粒子に結晶化する。球状のMgCl粒子は、次いで、所望のサイズに分類される。望ましくないサイズの粒子は、リサイクルすることができる。球状のMgCl前駆体は、約15~150ミクロン、好ましくは20~100ミクロン、最も好ましくは35~85ミクロンの平均粒子サイズ(Malvern d50)を有し得る。
【0034】
上記の球状プロ触媒担体は、「噴霧結晶化された」プロ触媒前駆体と称される。ある実施形態では、噴霧結晶化された前駆体は、脱アルコール化され得る。例えば、噴霧結晶化処理は、エタノールを除去するために、後処理プロセスを経ることができる。例えば、エタノール/塩化マグネシウム重量比は、約6:1未満、例えば約1.5:1~約3.1:1、例えば約2:1~約2.5:1であり得る。
【0035】
本開示によれば、上記のプロ触媒担体のうちの1つは、プロ触媒を形成する際に複数のチタン化ステップに供され、その後、助触媒との接触によって後に活性化され得る。チタン化中に、プロ触媒を、マグネシウム部分をハロゲン化マグネシウムに変換することができ、かつ/又はチタン部分をハロゲン化チタンに変換することができるチタンハロゲン化剤と接触させる。
【0036】
一態様では、ハロゲン化チタンは、式Ti(ORを有し、式中、Rは、1~14個の炭素原子を有する脂肪族若しくは芳香族炭化水素ラジカル、又はCOR’であり、R’は、1~14個の炭素原子を有する脂肪族若しくは芳香族炭化水素ラジカルであり、各OR基は、同じであるか、又は異なり、Xは、独立して、塩素、臭素、又はヨウ素であり、fは、0~3の整数であり、hは、1~4の整数であり、f+hは、4である。ハロゲン化剤は、TiClであり得る。チタン化は、ジクロロベンゼン、o-クロロトルエン、クロロベンゼン、ベンゼン、トルエン、又はキシレンなどの塩素化又は非塩素化芳香族液体の存在下で実施することができる。例えば、チタン化は、40~60体積パーセントのTiClなどのハロゲン化チタンを含む、ハロゲン化チタンと塩素化芳香族液体との混合物を使用して実施することができる。
【0037】
プロ触媒及びハロゲン化チタンは、約10℃未満、例えば約0℃未満、例えば約-10℃未満、例えば約-20℃未満、例えば約-30℃未満の温度で最初に接触させることができる。初期温度は、一般に、約-50℃より高く、例えば約-40℃より高い。次いで、混合物は、0.1~10.0℃./分の速度で、又は1.0~5.0℃/分の速度で加熱される。チタン化のための温度は、40℃~150℃.(又はそれらの間の任意の値若しくは部分範囲)、あるいは0℃~120℃である。
【0038】
チタン化手順は、必要に応じて1回、2回、3回、4回、又はそれ以上繰り返すことができる。過去においては、内部電子供与体は、チタン化ステップ中に存在することによってプロ触媒に組み込まれていた。実際、アリールジエステルのような内部電子供与体をプロ触媒に組み込む場合、重合に必要な高い活性を有する触媒組成物を生成するため、かつ低キシレン可溶分を有するポリマーを生成するために、すべてではないとしても多くのチタン化ステップにおいて、内部電子供与体を存在させる必要があると考えられていた。しかしながら、上記の内部電子供与体は比較的高価であり、上記のプロセスを通してプロ触媒に効率的に組み込まれていなかった。未知であるが、プロ触媒は、活性がより低く、内部電子供与体と結合するために容易に利用可能ではない部位に結合するチタン種を含有すると考えられる。したがって、本開示は、内部電子供与体のプロ触媒への組み込みを妨害することなく、より低い活性のチタンを除去するためのプロセス中にチタン抽出剤を使用することを対象とする。実際、一態様では、本開示のプロセスは、内部電子供与体をプロ触媒により効率的に組み込み、それによってより少ない内部電子供与体を使用し、合成プロセスの経済性を改善することができる。
【0039】
本開示によれば、プロ触媒を、チタン化ステップ中及び/又はチタン化ステップ後に、少なくとも1つの内部電子供与体及びチタン抽出剤と接触させる。プロ触媒、ハロゲン化チタン、内部電子供与体、及びチタン抽出剤を接触させる方法は、特定の用途及び所望の結果に応じて変化し得る。ある実施形態では、例えば、1つ以上のチタン化ステップ中に、プロ触媒をハロゲン化チタンと組み合わせて内部電子供与体と接触させることができ、一方で、他のチタン化ステップでは、プロ触媒をチタン抽出剤及びハロゲン化チタンと接触させることができる。代替的に、内部電子供与体及びチタン抽出剤を、チタン化ステップのいずれか又はすべての間に、ハロゲン化チタンと一緒に組み合わせてプロ触媒と接触させることができる。更に他の実施形態では、プロ触媒を、ある特定のチタン化ステップ中に内部電子供与体と接触させることができ、他のチタン化ステップ中にチタン抽出剤と接触させることができ、更なるチタン化ステップ中に内部電子供与体とチタン抽出剤との両方と接触させることができる。
【0040】
例えば、一態様では、プロ触媒を、第1のチタン化ステップ中にハロゲン化チタンの存在下で内部電子供与体とのみ接触させ、第2のチタン化ステップ中にハロゲン化チタンと組み合わせてチタン抽出剤とのみ接触させる。代替的なプロセスでは、プロ触媒を、第1のチタン化ステップで内部電子供与体及びチタン抽出剤と接触させ、第2のチタン化ステップでチタン抽出剤とのみ接触させるか、第2のチタン化ステップで内部電子供与体とのみ接触させるか、又は第2のチタン化ステップ中に内部電子供与体とチタン抽出剤との両方と接触させる。
【0041】
所望の量の触媒活性及び所望のレベルの立体選択性を有する触媒組成物を生成するために、プロセスの様々な他の変更が生じ得ることを理解されたい。例えば、プロセスは、プロ触媒が、チタン化ステップのうちの少なくとも1つにおいて内部電子供与体の不存在下でチタン抽出剤と接触するように実行され得る。プロセスはまた、プロ触媒が、チタン化ステップのうちの少なくとも1つの間に内部電子供与体とチタン抽出剤との両方と接触するように実行され得る。
【0042】
プロ触媒、ハロゲン化チタン、内部電子供与体、及びチタン抽出剤を接触させる方法は変化し得る。例えば、ある実施形態では、プロ触媒を、最初に、ハロゲン化チタン及び任意選択的に芳香族化合物、例えば塩素化芳香族化合物と接触させることができる。得られた混合物を撹拌することができ、必要に応じて加熱することができる。次に、内部電子供与体及び/又はチタン抽出剤を、固体プロ触媒成分を生成するために反応混合物に添加することができる。
【0043】
代替的に、プロ触媒を、ハロゲン化チタンと反応させる前に、内部電子供与体及び/又はチタン抽出剤と接触させることができる。
【0044】
更に別の実施形態では、触媒を、チタン化ステップのうちの1つの間に、ハロゲン化チタン、内部電子供与体及び/又はチタン抽出剤と同時に接触させることができる。
【0045】
プロ触媒と内部電子供与体及び/又はチタン抽出剤との間の接触時間も変化し得る。一般に、プロ触媒と他の成分との間の接触時間は、少なくとも約-40℃、例えば少なくとも約-30℃、例えば少なくとも約-20℃、及び一般に、約150℃未満、例えば約120℃未満、例えば約110℃未満、例えば約100℃未満、例えば約80℃未満、例えば約50℃未満の温度において、少なくとも10分間、例えば少なくとも15分間、例えば少なくとも20分間、例えば少なくとも40分間、例えば少なくとも1時間である。
【0046】
複数のチタン化ステップの後、固体プロ触媒成分が生成される。
【0047】
前述のチタン化手順の後、得られた固体プロ触媒組成物を、最終プロセスで用いられる反応媒体から濾過によって分離し、例えば、湿った濾過ケークを作製する。次いで、液体希釈剤を用いて湿った濾過ケークをすすぎ、又は洗浄し、未反応のハロゲン化チタンを除去することができ、必要に応じて、乾燥させて残留液体を除去することもできる。典型的には、得られた固体プロ触媒組成物は、イソペンタン、イソオクタン、イソヘキサン、ヘキサン、ペンタン、又はオクタンなどの脂肪族炭化水素などの液体炭化水素である「洗浄液体」を用いて1回以上洗浄される。次いで、固体プロ触媒組成物は、分離及び乾燥され、又は炭化水素、特に更なる貯蔵若しくは使用のために鉱油などの比較的重質の炭化水素中でスラリー化され得る。
【0048】
固体プロ触媒を回収した後、プロ触媒組成物を、任意選択的に、更なる量のハロゲン化チタン化合物と接触させることができる。チタン化ステップの後、例えば、固体プロ触媒を、1つ以上の内部電子供与体及び/又は1つ以上のチタン抽出剤と接触させることもできる。例えば、固体プロ触媒を更なる量の内部電子供与体と接触させ、続いて更なる量のチタン抽出剤を接触させることができる。チタン化後のプロセスにおいて、プロ触媒を、酸塩化物などの様々な他の液体成分と同時に接触させることもできる。プロ触媒組成物は、すすぎ、洗浄、熱処理などを行うことができる。
【0049】
ある実施形態では、チタン化ステップ後、固体プロ触媒組成物を、加熱しながら、高温で、内部電子供与体及び/又はチタン抽出剤と接触させることができる。この温度は、例えば、約100℃超、例えば約110℃超、及び一般に、約170℃未満、例えば約150℃未満、例えば約130℃未満であり得る。
【0050】
上記のプロセスを通して、内部電子供与体及びチタン抽出剤が協働して、増加した立体選択性を有するプロ触媒組成物を生成する。加えて、ある実施形態では、得られた触媒組成物はまた、増加した又は長期の触媒活性を有し得る。チタン抽出剤は、重合中に触媒組成物の立体規則能力に悪影響を与え得る活性が低いチタン種を除去又は置換する。加えて、チタン抽出剤は、内部電子供与体をそれほど多く置換しないことが見出されており、ある実施形態では、内部電子供与体をプロ触媒組成物に組み込む効率を実際に改善することができる。
【0051】
プロ触媒を生成するプロセス中、チタン抽出剤は、望ましくないチタン種を除去し、それ自体はプロ触媒組成物にそれほど多く組み込まれない。例えば、得られたプロ触媒組成物は、一般に、約7重量%未満の量で、例えば約4重量%未満の量で、例えば約3重量%未満の量で、例えば約2重量%未満の量で、例えば約1重量%未満の量で、チタン抽出剤を含有する。一態様では、チタン抽出剤は、重量パーセント基準で内部電子供与体よりも少ない量でプロ触媒に組み込まれる。チタン抽出剤は、プロ触媒からかなりの量のチタンを除去する。例えば、プロセス中、チタン抽出剤は、存在するチタンの、約10重量%超、例えば約15重量%超、例えば約20重量%超、例えば約25重量%超、例えば約30重量%超、例えば約35重量%超、例えば約40重量%超、例えば約45重量%超、例えば約50重量%超を除去することができる。一般に、チタンの減量は、約70重量%未満、例えば約50重量%未満、例えば約45重量%未満である。
【0052】
固体プロ触媒組成物中のチタン対マグネシウムの重量比は、好適には約1:3~約1:160、又は約1:4~約1:50、又は約1:6~1:30である。一実施形態では、内部電子供与体は、約0.005:1~約1:1、又は約0.01:1~約0.4:1の内部電子供与体対マグネシウムのモル比でプロ触媒組成物中に存在し得る。重量パーセントは、プロ触媒組成物の総重量に基づいている。
【0053】
一般に、チタン抽出剤は、嵩高さが少なく、一般に、内部電子供与体よりも小さい化合物であり得る。使用され得るチタン抽出剤としては、例えば、エステル、ケトン、カーボネート、及びそれらの混合物が挙げられる。ある実施形態では、チタン抽出剤は、モノエステルであり得る。例えば、チタン抽出剤は、以下の式:
【化3】
を有し得、式中、R’は、アルキル基、環式基、1~20個の炭素原子を有するアリール基、ヘテロ原子、又はそれらの組み合わせを含み、R’’は、水素又は1つ以上の置換基を含み、各置換基は、独立して、アルキル基、環式基、1~20個の炭素原子を有するアリール基、ヘテロ原子、又はそれらの組み合わせを含み得る。例えば、ある実施形態では、支持電子供与体は、エチルベンゾエートを含む。
【0054】
チタン抽出剤として使用され得る他のモノエステルとしては、カルボン酸エステルが挙げられる。そのようなエステルは、例えば、メチルベンゾエート、エチルベンゾエート、フェニルベンゾエート、アニス酸エチル、ベンジルアセテート、エチルアセテート、オクチルアセテート、エチルプロプリオネート(ethyl proprionate)、エチルブチレート、メチルブチレート、メチルラウレート、メチルバレレート、ペンチルバレレート、エチルヘキサノエート、及びそれらの混合物を含み得る。使用することができるケトンとしては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アセトン、ジエチルケトン、エチルフェニルケトン、ブチルフェニルケトン、3-ヘキサノン、及びそれらの混合物が挙げられる。使用することができるカーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0055】
本開示のプロセスとともに使用することができる内部電子供与体は、チタン抽出剤と比較して、プロ触媒上の活性部位に優先的に結合する内部電子供与体を含む。内部電子供与体は、例えば、アリールジエステル、アミドフェノールジベンゾエート、メルカプトフェノールジベンゾエート、ナフチルジベンゾエートなどであり得る。
【0056】
本明細書で使用される場合、内部電子供与体とは、得られた組成物中に存在する1つ以上の金属に一対の電子を供与する、触媒組成物の形成中に添加される化合物である。内部電子供与体は、活性部位の形成を調節することを支援し、したがって触媒の立体選択性を高めると考えられる。ある実施形態では、本開示の内部電子供与体は、以下の化学式:
【化4】
を有し、式中、R及びRはそれぞれ、水素又は1~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、R及びRのうちの少なくとも1つは、水素であり、R及びRのうちの少なくとも1つは、1~20個の炭素原子を有する置換又は非置換ヒドロカルビル基を含み、E及びEは、同じであるか、又は異なり、任意選択的にヘテロ原子を含有する、1~20個の炭素原子を有するアルキル、5~10個の炭素原子を有するシクロアルキル基を含む)、1~20個の炭素原子を有する置換アルキル、6~20個の炭素原子を有するアリール、6~20個の炭素原子を有する置換アリール、又は1~20個の炭素原子を有する不活性官能基からなる群から選択され、X及びXはそれぞれ、O、S、アルキル基、又はNRであり、Rは、1~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であるか、又は水素である。
【0057】
本明細書で使用される場合、「ヒドロカルビル」及び「炭化水素」という用語は、分岐状若しくは非分岐状、飽和若しくは不飽和の、環式、多環式、縮合、又は非環式種、並びにそれらの組み合わせを含む、水素及び炭素原子のみを含有する置換基を指す。ヒドロカルビル基の非限定的な例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基、シクロアルケニル基、シクロアルカジエニル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基、及びアルキニル基が挙げられる。
【0058】
本明細書で使用される場合、「置換ヒドロカルビル」及び「置換炭化水素」という用語は、1つ以上の非ヒドロカルビル置換基により置換されたヒドロカルビル基を指す。非ヒドロカルビル置換基の非限定的な例は、ヘテロ原子である。本明細書で使用される場合、「ヘテロ原子」とは、炭素又は水素以外の原子を指す。ヘテロ原子は、周期表の13、14、15、16、又は17族からの非炭素原子であり得る。ヘテロ原子の非限定的な例としては、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、N、O、P、B、S、及びSiが挙げられる。置換ヒドロカルビル基はまた、ハロヒドロカルビル基及びケイ素含有ヒドロカルビル基を含む。本明細書で使用される場合、「ハロヒドロカルビル」基という用語は、1つ以上のハロゲン原子により置換されたヒドロカルビル基を指す。本明細書で使用される場合、「ケイ素含有ヒドロカルビル基」という用語は、1つ以上のケイ素原子により置換されたヒドロカルビル基である。ケイ素原子は、炭素鎖中にあってもよく、又はなくてもよい。
【0059】
式Iに関して上に示すような内部電子供与体は、変化し得るR1~R4基を含む。R1及びR4は、同一であり得るか又は非常に類似し得る。ある実施形態では、例えば、R1及びR4は、線状ヒドロカルビル基である。例えば、R1及びR4は、C1~C8アルキル基、C2~C8アルケニル基、又はそれらの混合物を含み得る。例えば、ある実施形態では、R1及びR4は、両方とも、同じ炭素鎖長を有するか、又は炭素鎖長が約3個以下の炭素原子、例えば約2個以下の炭素原子によって変化するアルキル基を含み得る。
【0060】
ある実施形態では、R4はメチル基であり、R1はメチル基、エチル基、プロピル基、若しくはブチル基であり、又はその逆もある。別の代替的実施形態では、R1及びR4の両方がメチル基であり、R1及びR4の両方がエチル基であり、R1及びR4の両方がプロピル基であり、又はR1及びR4の両方がブチル基である。
【0061】
R2又はR3のうちの少なくとも1つは、R1基及びR4基よりも大きいか又は嵩高い置換基である。R2又はR3の他方は、水素又はメチル基である。R2又はR3に位置する、より大きいか又は嵩高い基は、例えば、分岐状若しくは線状構造を有するヒドロカルビル基であり得るか、又は5~15個の炭素原子を有するシクロアルキル基を含み得る。R2又はR3のいずれかが、分岐状又は線状構造を有する場合、他方で、R2又はR3は、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などであり得る。例えば、R2又はR3は、3-ペンチル基又は2-ペンチル基であり得る。
【0062】
内部電子供与体の更なる例を以下に示す。以下の構造のそれぞれにおいて、R1~R4は、上記の組み合わせのいずれかの基のいずれかにより置換され得る。
【化5】
式中、R6~R15は、同じであっても異なっていてもよい。R6~R15のそれぞれは、水素、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、及び1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシル基、ヘテロ原子、並びにそれらの組み合わせから選択される。
【化6】
式中、上記のX1及びX2は、酸素、硫黄、又は窒素含有基であり得る。ある実施形態では、例えば、X1は酸素であり、X2は硫黄である。R5及びR6は、独立したアルキル基又はアリール基を含み得る。R5及びR6は、例えば、C~Cアルキル基を含み得る。
【化7】
式中、R16及びR17は、独立して、水素又はC1~C20ヒドロカルビル基である。上記式において、X1及びX2は、酸素、硫黄、又は窒素基であり得る。代替的に、X1及びX2のうちの一方又は両方は、1~3個の炭素原子を含有するアルキル基などのヒドロカルビル基であり得る。X3は、-OR基又は-NR1R2基であり、式中、R、R1又はR2は、任意選択的に、ハロゲン、リン、硫黄、窒素、又は酸素から選択されるヘテロ原子を含有するC1~C20ヒドロカルビル基から選択される。ある実施形態では、X1は炭素原子であり、X3はエチル基である。
【化8】
式中、R5は、アルキル基又はアリール基であり得る。例えば、R5は、C~Cアルキル基であり得る。
【化9】
【化10】
式中、R18は、水素又は約1~約8個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基である。
【化11】
【化12】
式中、R19、R20及びR21は、同じであるか、又は異なり、任意選択的に、ハロゲン、リン、硫黄、窒素、又は酸素から選択されるヘテロ原子を含有する約1~約15個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択され得る。R20及びR21は、同じであっても異なっていてもよく、一緒に縮合されて、1個以上の環式基を形成してもよい。
【0063】
上記のように、プロ触媒組成物は、マグネシウム部分、チタン部分、及び少なくとも1つの内部電子供与体の組み合わせを含み得る。プロ触媒組成物は、プロ触媒担体及び内部電子供与体を、内部電子供与体が組み込まれたマグネシウム部分及びチタン部分の組み合わせに変換する前述のチタン化手順によって生成される。本開示によれば、チタン抽出剤は、活性がより低く、内部電子供与体によって容易に置換されないチタン種を除去するために、チタン化手順中及び/又はチタン化手順後にプロ触媒に接触する。チタン抽出剤は、チタンを除去し、主に最終生成物から洗浄される。プロ触媒組成物が形成されるプロ触媒担体は、混合マグネシウム/チタン前駆体、ベンゾエート含有塩化マグネシウム前駆体又は球状の前駆体であり得る。
【0064】
一実施形態では、マグネシウム部分は、ハロゲン化マグネシウムである。別の実施形態では、ハロゲン化マグネシウムは、塩化マグネシウム、又は塩化マグネシウムアルコール付加物である。
【0065】
一実施形態では、チタン部分は、塩化チタンなどのハロゲン化チタンである。別の実施形態では、チタン部分は、四塩化チタンである。
【0066】
別の実施形態では、プロ触媒組成物は、塩化マグネシウム前駆体を含み、その上に塩化チタンが堆積され、かつその上に内部電子供与体が組み込まれる。
【0067】
本開示はまた、様々な他の触媒成分と組み合わされた上記のようなプロ触媒組成物を含む、触媒システムを対象とする。例えば、ある実施形態では、触媒組成物は、助触媒を含む。本明細書で使用される場合、「助触媒」とは、プロ触媒を活性重合触媒に変換することができる物質である。助触媒は、アルミニウム、リチウム、亜鉛、スズ、カドミウム、ベリリウム、マグネシウムの塩化物、アルキル、又はアリール、及びそれらの組み合わせを含み得る。一実施形態では、助触媒は、式RAlで表されるヒドロカルビルアルミニウム助触媒であり、式中、各Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はヒドリドラジカルであり、少なくとも1つのRは、ヒドロカルビルラジカルであり、2つ又は3つのRラジカルは、環式ラジカルに接合され、ヘテロ環式構造を形成することができ、各Rは、同じであっても異なっていてもよく、ヒドロカルビルラジカルである各Rは、1~20個の炭素原子、好ましくは1~10個の炭素原子を有する。更なる実施形態では、各アルキルラジカルは、直鎖又は分岐鎖であり得、そのようなヒドロカルビルラジカルは、混合ラジカルであり得、すなわち、ラジカルは、アルキル、アリール、及び/又はシクロアルキル基を含有し得る。好適なラジカルの非限定的な例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、2-メチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、2-エチルヘキシル、5,5-ジメチルヘキシル、n-ノニル、n-デシル、イソデシル、n-ウンデシル、n-ドデシルである。
【0068】
好適なヒドロカルビルアルミニウム化合物の非限定的な例は、次のとおりである:トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、塩化ジイソブチルアルミニウム、塩化ジ-n-ヘキシルアルミニウム、二塩化イソブチルアルミニウム、二塩化n-ヘキシルアルミニウム、ジイソブチルヘキシルアルミニウム、イソブチルジヘキシルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ-n-プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリ-n-デシルアルミニウム、トリ-n-ドデシルアルミニウム。一実施形態では、助触媒は、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、塩化ジイソブチルアルミニウム、及び塩化ジ-n-ヘキシルアルミニウムから選択される。
【0069】
一実施形態では、助触媒は、式RAlX3-nで表されるヒドロカルビルアルミニウム化合物であり、式中、n=1又は2であり、Rはアルキルであり、Xはハロゲン化物である。好適な化合物の非限定的な例は、次のとおりである:塩化ジイソブチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、二塩化メチルアルミニウム、及び塩化ジメチルアルミニウム。
【0070】
一実施形態では、助触媒は、トリエチルアルミニウムである。アルミニウム対チタンのモル比は、約5:1~約500:1、又は約10:1~約200:1、又は約15:1~約150:1、又は約20:1~約100:1である。別の実施形態では、アルミニウム対チタンのモル比は、約45:1である。
【0071】
一実施形態では、触媒組成物は、選択性制御剤を含む。本明細書で使用される場合、「選択性制御剤」とは、プロ触媒形成とは独立して添加される化合物であり、金属原子に一対の電子を供与することができる少なくとも1つの官能基を含有する。特定の理論に束縛されないが、選択性制御剤は、触媒の立体選択性を向上させる(すなわち、フォルマントポリマー(formant polymer)中のキシレン可溶分材料を低減させる)と考えられる。
【0072】
一実施形態では、選択性制御剤供与体は、次のうちの1つ以上から選択され得る:アルコキシシラン、アミン、エーテル、カルボキシレート、ケトン、アミド、カルバメート、ホスフィン、ホスフェート、ホスファイト、スルホネート、スルホン、及び/又はスルホキシド。
【0073】
一実施形態では、選択性制御剤供与体は、アルコキシシランである。アルコキシシランは、一般式:SiR(OR’)4-m(I)を有し、式中、Rは、独立して、出現ごとに、水素、あるいは任意選択的に1つ以上の14、15、16、若しくは17族のヘテロ原子を含有する1つ以上の置換基により置換されたヒドロカルビル又はアミノ基であり、当該Rは、水素及びハロゲンを除く最大20個の原子を含有し、R’は、C1~4アルキル基であり、mは、0、1、2、又は3である。一実施形態では、Rは、C6~12アリール、アルキル若しくはアラルキル、C3~12シクロアルキル、C3~12分岐状アルキル、又はC3~12環式若しくは非環式アミノ基であり、R’はC1~4アルキルであり、mは、1又は2である。好適なシラン組成物の非限定的な例としては、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジ-tert-ブチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジエトキシシラン、エチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジ-n-プロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、イソブチルイソプロピルジメトキシシラン、ジ-n-ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、シクロペンチルピロリジノジメトキシシラン、ビス(ピロリジノ)ジメトキシシラン、ビス(ペルヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、及びジメチルジメトキシシランが挙げられる。一実施形態では、シラン組成物は、ジシクロペンチルジメトキシシラン(dicyclopentyldimethoxysilane、DCPDMS)、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン(methylcyclohexyldimethoxysilane、MChDMS)、又はn-プロピルトリメトキシシラン(n-propyltrimethoxysilane、NPTMS)、及びそれらの任意の組み合わせである。
【0074】
一実施形態では、選択性制御剤は、少なくとも2つのアルコキシシランの混合物であり得る。更なる実施形態では、混合物は、ジシクロペンチルジメトキシシラン及びメチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン及びテトラエトキシシラン、又はジシクロペンチルジメトキシシラン及びn-プロピルトリエトキシシランであり得る。
【0075】
一実施形態では、選択性制御剤は、次のうちの1つ以上から選択される:ベンゾエート、スクシナート、及び/又はジオールエステル。別の実施形態では、選択性制御剤は、ジエーテルである。
【0076】
一実施形態では、触媒組成物は、活性制限剤(activity limiting agent、ALA)を含む。本明細書で使用される場合、「活性制限剤」(「ALA」)とは、高温(すなわち、約85℃.超の温度)で触媒活性を低下させる材料である。ALAは、重合反応器の不具合を抑制又はそうでなければ防止し、重合プロセスの継続を確実にする。典型的には、チーグラー・ナッタ触媒の活性は、反応器の温度が上昇するにつれて増加する。チーグラー・ナッタ触媒はまた、典型的には、生成されたポリマーの融点温度近くで高い活性を維持する。発熱重合反応によって発生した熱は、凝集物を形成するポリマー粒子を生じさせる可能性があり、最終的にポリマー生成プロセスの継続を中断することにつながる場合がある。ALAは、高温で触媒活性を低下させ、それによって、反応器の不具合を防止し、粒子の凝集を低減(又は防止)し、重合プロセスの継続を確実にする。
【0077】
活性制限剤は、カルボン酸エステル、ジエーテル、ポリ(アルケングリコール)、ポリ(アルケングリコール)エステル、ジオールエステル、及びそれらの組み合わせであり得る。カルボン酸エステルは、脂肪族又は芳香族、モノ又はポリカルボン酸エステルであり得る。好適なモノカルボン酸エステルの非限定的な例としては、エチル及びメチルベンゾエート、エチルp-メトキシベンゾエート、メチルp-エトキシベンゾエート、エチルp-エトキシベンゾエート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアセテート、エチルp-クロロベンゾエート、ヘキシルp-アミノベンゾエート、イソプロピルナフテネート、n-アミルトルエート、エチルシクロヘキサノエート、プロピルピバレート、ペンチルバレレート、並びにオクチルアセテートが挙げられる。
【0078】
好適なポリカルボン酸エステルの非限定的な例としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジ-n-プロピルフタレート、ジイソプロピルフタレート、ジ-n-ブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジ-tert-ブチルフタレート、ジイソアミルフタレート、ジ-tert-アミルフタレート、ジネオペンチルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルフタレート、ジ-2-エチルデシルフタレート、ジエチルテレフタレート、ジオクチルテレフタレート、及びビス[4-(ビニルオキシ)ブチル]テレフタレートが挙げられる。しかしながら、ある実施形態では、本開示の触媒組成物及び触媒システムは、フタレートを含まない。
【0079】
脂肪族カルボン酸エステルは、C~C30脂肪族酸エステルであり得、モノ又はポリ(2つ以上)のエステルであり得、直鎖又は分岐状であり得、飽和又は不飽和であり得、及びそれらの任意の組み合わせであり得る。C~C30脂肪族酸エステルはまた、1つ以上の14、15、又は16族のヘテロ原子を含有する置換基により置換され得る。好適なC~C30脂肪族酸エステルの非限定的な例としては、脂肪族C4~30モノカルボン酸のC1~20アルキルエステル、脂肪族C8~20モノカルボン酸のC1~20アルキルエステル、脂肪族C4~20モノカルボン酸及びジカルボン酸のC1~4アリルモノ及びジエステル、脂肪族C8~20モノカルボン酸及びジカルボン酸のC1~4アルキルエステル、並びにC2~100(ポリ)グリコール又はC2~100(ポリ)グリコールエーテルのC4~20モノ又はポリカルボキシレート誘導体が挙げられる。更なる実施形態では、C~C30脂肪族酸エステルは、ラウレート、ミリステート、パルミテート、ステアレート、オレエート、セバケート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノ又はジアセテート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノ又はジミリステート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノ又はジラウレート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノ又はジオレエート、グリセリルトリ(アセテート)、C2~40脂肪族カルボン酸のグリセリルトリ-エステル、及びそれらの混合物であり得る。更なる実施形態では、C~C30脂肪族エステルは、イソプロピルミリステート又はジ-n-ブチルセバケートである。
【0080】
一実施形態では、活性制限剤は、ジエーテルを含む。ジエーテルは、以下の構造(XV):
【化13】
で表される1,3-ジエーテル化合物であり得、式中、R~Rは、互いに独立して、最大20個の炭素原子を有するアルキル、アリール、又はアラルキル基であり、任意選択的に14、15、16、又は17族のヘテロ原子を含有してもよく、R及びRは、水素原子であってもよい。ジアルキルエーテルは、線状又は分岐状であり得、次の基のうちの1つ以上を含み得る:1~18個の炭素原子を有するアルキル、脂環式、アリール、アルキルアリール、又はアリールアルキルラジカル、及び水素。R及びRは、シクロペンタジエン又はフルオレンなどの環式構造を形成するように連結され得る。
【0081】
一実施形態では、活性制限剤は、以下の構造(XVI):
【化14】
を有するスクシナート組成物を含み、式中、R及びR’は、同じであっても異なっていてもよく、R及び/又はR’は、次の基のうちの1つ以上を含む:水素、任意選択的にヘテロ原子を含有する、線状又は分岐状アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル又はアルキルアリール基。1つ以上の環構造は、2位及び3位の炭素原子の一方又は両方を介して形成され得る。
【0082】
一実施形態では、活性制限剤は、以下の構造(XVII):
【化15】
で表されるジオールエステルを含み、式中、nは、1~5の整数である。R及びRは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれは、水素、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、アリル、フェニル、又はハロフェニル基から選択され得る。R、R、R、R、R、及びRは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれは、水素、ハロゲン、1~20個の炭素原子を有する置換、又は非置換ヒドロカルビルから選択され得る。R~R基は、任意選択的に、炭素、水素、又は両方に置き換わる1つ以上のヘテロ原子を含有してもよく、ヘテロ原子は、窒素、酸素、硫黄、ケイ素、リン、及びハロゲンから選択される。R及びRは、同じであっても異なっていてもよく、いずれかのフェニル環の2位、3位、4位、5位、及び6位の任意の炭素原子に結合していてもよい。
【0083】
ある実施形態では、触媒システムは、混合外部電子供与体を含む。混合外部電子供与体は、次の成分のうちの少なくとも2つを含む:(1)第1の選択性制御剤、(2)第2の選択性制御剤、及び(3)活性制限剤。
【0084】
一実施形態では、選択性制御剤及び/又は活性制限剤は、別々に反応器内に添加され得る。別の実施形態では、選択性制御剤及び活性制限剤は、事前に一緒に混合され、次いで混合物として反応器内に添加され得る。混合物では、2つ以上の選択性制御剤又は2つ以上の活性制限剤を使用することができる。一実施形態では、混合物は、ジシクロペンチルジメトキシシラン及びイソプロピルミリステート、ジシクロペンチルジメトキシシラン及びポリ(エチレングリコール)ラウレート、ジシクロペンチルジメトキシシラン及びイソプロピルミリステート及びポリ(エチレングリコール)ジオレエート、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン及びイソプロピルミリステート、n-プロピルトリメトキシシラン及びイソプロピルミリステート、ジメチルジメトキシシラン及びメチルシクロヘキシルジメトキシシラン及びイソプロピルミリステート、ジシクロペンチルジメトキシシラン及びn-プロピルトリエトキシシラン及びイソプロピルミリステート、並びにジシクロペンチルジメトキシシラン及びテトラエトキシシラン及びイソプロピルミリステート、並びにそれらの組み合わせである。
【0085】
一実施形態では、触媒組成物は、前述の活性制限剤のいずれかと組み合わせて、前述の選択性制御剤のいずれかを含む。
【0086】
本開示はまた、上記のような触媒組成物を使用してオレフィン系ポリマーを生成するためのプロセスを対象とする。チタン抽出剤を使用することにより、例えば、より低いキシレン可溶分含有量を有するポリマーを生成するための増加した立体選択性を有する、触媒組成物を生成することができる。例えば、触媒組成物を使用して、非晶質含有量又はアタクチック含有量が低減されたポリオレフィンポリマーを生成することができる。
【0087】
一般に、本開示の触媒組成物は、ガスベースのプロセス又はバルクプロセスを含む任意の好適な重合プロセスで使用することができる。本プロセスは、重合条件下でオレフィンを触媒組成物と接触させることを含む。本プロセスは、オレフィン系ポリマーを形成することを更に含む。
【0088】
触媒組成物は、プロ触媒組成物及び助触媒を含み得る。触媒組成物は、本明細書に開示される任意の触媒組成物であり得る。プロ触媒組成物は、内部電子供与体として置換フェニレン化合物を含み得る。助触媒は、本明細書に開示される任意の助触媒であり得る。触媒組成物は、任意選択的に、既に開示された選択性制御剤及び/又は活性制限剤を含み得る。
【0089】
オレフィン系ポリマーは、プロピレン系オレフィン、エチレン系オレフィン、及びそれらの組み合わせであり得る。ある実施形態では、オレフィン系ポリマーは、プロピレン系ポリマーである。
【0090】
1つ以上のオレフィンモノマーを重合反応器内に導入して、触媒と反応させ、ポリマー、又はポリマー粒子の流動床を形成することができる。好適なオレフィンモノマーの非限定的な例としては、エチレン、プロピレン、C4~20α-オレフィン、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセンなど;C4~20ジオレフィン、例えば、1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、ノルボルナジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、及びジシクロペンタジエン;スチレン、o-、m-、及びp-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレンを含むC8~40ビニル芳香族化合物;並びにハロゲン-置換C8~40ビニル芳香族化合物、例えば、クロロスチレン及びフルオロスチレンが挙げられる。
【0091】
本明細書で使用される場合、「重合条件」とは、触媒組成物とオレフィンとの間の重合を促進して所望のポリマーを形成するのに好適な重合反応器内の温度及び圧力パラメータである。重合プロセスは、1つ、又は2つ以上の反応器内で操作する、気相、スラリー、又はバルク重合プロセスであり得る。
【0092】
重合は、気相重合によって起こり得る。本明細書で使用される場合、「気相重合」とは、上昇流動媒体の通過であり、この流動媒体は、流動媒体によって又は撹拌ガス媒体において流動化された状態で維持されたポリマー粒子の流動床を通る触媒の存在下で、1つ以上のモノマーを含有する。「流動化」、「流動化された」又は「流動化する」とは、微細ポリマー粒子の床がガスの上昇流によって持ち上げられ、かき混ぜられるガス-固体接触プロセスである。流動化は、粒子の床の細隙を通る流体の上向きの流れが、粒子状物質の重量を上回る圧力差及び摩擦抵抗の増大を獲得した場合に粒子状物質の床で生じる。したがって、「流動床」とは、流動媒体の流れによって流動化された状態で懸濁された複数のポリマー粒子である。「流動媒体」とは、1つ以上のオレフィンガス、任意選択的に、キャリアガス(例えば、H又はN)、及び任意選択的に気相反応器を通って上昇する液体(例えば、炭化水素)である。
【0093】
典型的な気相重合反応器(又は気相反応器)は、容器(すなわち、反応器)、流動床、分配板、入口及び出口配管、圧縮機、循環ガス冷却器又は熱交換器、並びに生成物排出システムを含む。容器は、反応ゾーン及び速度低下ゾーンを含み、これらのそれぞれは分配板上に位置する。床は、反応ゾーンに位置する。一実施形態では、流動媒体は、プロピレンガスと、オレフィンなどの少なくとも1つの他のガス及び/又は水素若しくは窒素などのキャリアガスと、を含む。
【0094】
接触は、触媒組成物を重合反応器内に供給し、オレフィンを重合反応器内に導入することによって起こり得る。助触媒は、プロ触媒組成物を重合反応器内に導入する前に、プロ触媒組成物と混合(予備混合)することができる。別の実施形態では、助触媒は、プロ触媒組成物とは独立して重合反応器に添加される。助触媒の重合反応器内への独立した導入は、プロ触媒組成物の供給と同時に、又は実質的に同時に生じることができる。
【0095】
気相重合プロセスに加えて、本開示の触媒組成物はまた、バルク相プロセスで使用することもできる。バルク重合プロセスでは、触媒組成物を、液体プロピレンなどの1つ以上の液体モノマーと接触させる。得られるポリマーの分子量を制御するために、水素を反応媒体内に含有することもできる。
【0096】
一実施形態では、重合プロセスは、予備重合ステップを含み得る。予備重合は、助触媒及び選択性制御剤及び/又は活性制限剤と接触させた後、固体プロ触媒成分1グラム当たり約0.5~約1000グラムのポリマーの低い変換度をもたらすオレフィン重合ステップにおいて、プロ触媒組成物を添加することを含む。予備重合ステップは、連続重合プロセスの一部として、又はバッチプロセスで別々に実施することができる。連続プロセスの一部として実施する場合、予備重合触媒成分の変換は、固体触媒成分1グラム当たり約50~約500gのポリマーであることが好ましい。次いで、予備重合触媒流を主要重合反応ゾーン内に導入し、重合させるオレフィンモノマーの残りと接触させ、任意選択的に、助触媒及び選択性制御剤成分のうちの1つ以上の追加の量と接触させる。予備重合により、プロ触媒組成物が、助触媒及び選択性制御剤及び/又は活性制限剤と組み合わされ、この組み合わせは、フォルマントポリマーのマトリックス中に分散される。任意選択的に、追加の量の助触媒、選択性制御剤及び/又は活性制限剤を添加してもよい。
【0097】
重合プロセスは、予備活性化ステップを含み得る。予備活性化は、プロ触媒組成物を助触媒及び選択性制御剤及び/又は活性制限剤と接触させることを含む。続いて、得られた予備活性化触媒流を重合反応ゾーン内に導入し、重合させるオレフィンモノマーと接触させ、任意選択的に、選択性制御剤成分のうちの1つ以上と接触させる。予備活性化により、プロ触媒組成物が、助触媒及び選択性制御剤及び/又は活性制限剤と組み合わされる。任意選択的に、追加の量の選択性制御剤及び/又は活性制限剤を添加してもよい。
【0098】
ある実施形態では、ポリプロピレンホモポリマーは、第1の反応器内で生成される。続いて、第1の反応器の内容物を、エチレンが導入される第2の反応器に移す。これにより、第2の反応器内でプロピレン-エチレンコポリマーの生成が生じる。
【0099】
一実施形態では、オレフィンは、プロピレンである。本プロセスは、約0.01g/10分~約800g/10分、又は約0.1g/10分~約200g/10分、又は約0.5g/10分~約150g/10分のメルトフローレート(MFR)を有するプロピレン系ポリマーを形成することを含む。更なる実施形態では、プロピレン系ポリマーは、ポリプロピレンホモポリマーである。
【0100】
上記のように、一態様では、本開示の触媒組成物を使用して、ポリマー、特にポリプロピレンポリマーのキシレン可溶分含有量を低減させることができる。例えば、得られたポリプロピレンポリマーは、約6重量%未満、例えば約5重量%未満、例えば約4重量%未満、例えば約3重量%未満、例えば約2重量%未満、及び一般に、約0.1重量%超のキシレン含有量を有し得る。
【0101】
本開示の触媒組成物及び触媒システムはまた、ゴム様又はエラストマー特性を有する耐衝撃性ポリマーを生成するのに十分に適している。これらのポリマーは、典型的には、触媒が高い活性レベルを維持することが望ましい2つの反応器システムにて作製される。ある実施形態では、例えば、重合は、直列に接続された2つの反応器内で行われる。活性プロピレン系ポリマーを形成するために、プロピレンホモポリマー又はプロピレンコポリマーを第1の反応器内で形成することができる。次いで、第1の重合反応器からの活性プロピレン系ポリマーを第2の重合反応器内に導入し、第2の重合条件下で、第2の反応器内の少なくとも1つの第2のモノマーと接触させ、プロピレン衝撃コポリマーを形成する。ある実施形態では、本プロセスは、重合条件下で、第2の重合反応器内にて活性プロピレン系ポリマーをプロピレン及びエチレンと接触させ、プロピレン/エチレンコポリマーの不連続相を形成することを含む。
【0102】
上記のように、第1の相のポリマーは、ポリプロピレンホモポリマーを含み得る。しかしながら、代替的実施形態では、第1の相のポリマーは、ポリプロピレンのランダムコポリマーを含み得る。
【0103】
ランダムコポリマーは、例えば、プロピレンと、エチレンなどのアルファ-オレフィンとのコポリマーであり得る。ポリプロピレンランダムコポリマーは、ポリプロピレン組成物中にマトリックスポリマーを形成し、約12重量%未満の量、例えば約5重量%未満の量、例えば約4重量%未満の量、及び一般に、約0.5重量%超の量、例えば約1重量%超の量、例えば約1.5重量%超の量、例えば約2重量%超の量でアルファ-オレフィンを含有し得る。第1の相のポリマーは、一般に、約12重量%未満、例えば約10重量%未満の量、例えば約8重量%未満の量、例えば約6重量%未満の量、例えば約4重量%未満の量のキシレン可溶分含有量を有し得る。キシレン可溶分含有量は、一般に、約0.5重量%超、例えば約3重量%超である。
【0104】
第1の相のポリマーは、比較的広い分子量分布を有し得る。例えば、約3.8超、例えば約4超、例えば約4.3超、例えば約4.5超、例えば約4.8超、例えば約5超、例えば約5.2超、例えば約5.5超、例えば約5.7超、例えば約6超、及び一般に、約9未満、例えば約8.5未満、例えば約8未満の分子量分布(Mw/Mn)。第1の相のポリマーの重量平均分子量(GPCによって決定される)は、一般に、約100,000超、例えば約120,000超である。
【0105】
ある実施形態では、第1の相のポリマーを構成するポリプロピレンランダムコポリマー又はポリプロピレンホモポリマーは、比較的高いメルトフローレートを有する。例えば、第1の相のポリマーは、約5g/10分超、例えば約10g/10分超、例えば約15g/10分超、例えば約20g/10分超、例えば約25g/10分超のメルトフローレートを有し得る。第1の相のポリマーのメルトフローレートは、一般に、約1000g/10分未満、例えば約500g/10分未満である。
【0106】
第2の相のポリマーは、プロピレン及びアルファ-オレフィンコポリマーである。しかしながら、第2の相のポリマーは、エラストマー又はゴム様特性を有する。したがって、第2の相のポリマーは、ポリマーの耐衝撃強度を劇的に改善することができる。
【0107】
ポリマー組成物中に分散相を形成する第2の相のポリマーは、一般に、約10重量%超の量、例えば約12重量%超の量、例えば約14重量%超の量、及び一般に、約35重量%未満、例えば約20重量%未満、例えば約17重量%未満の量でアルファ-オレフィン又はエチレンを含有する。第2の相のポリマーは、少なくとも約130,000、例えば少なくとも約140,000、例えば少なくとも約150,000、及び一般に、約500,000未満の重量平均分子量を有し得る。
【0108】
本開示は、以下の実施例を参照してよりよく理解され得る。
一般手順
【0109】
70℃でのホモ重合。オーバーヘッド撹拌機及び温度調節ジャケット(thermostating jacket)を備えた2Lステンレス鋼オートクレーブを、90℃で1時間、アルゴンを用いてパージした後、20℃に冷却し、アルゴンをプロピレンガスと交換した。2.3mモルのトリエチルアルミニウム及び0.078mモルのジシクロペンチルジメトキシシランを15mlのヘキサン中に混合することによって、助触媒溶液を調製した。6mlの助触媒溶液を、充填チューブAに添加し、残りを約3mgの固体触媒とともに充填チューブBに添加した。水素(57mモル)を反応器に添加し、充填チューブAの内容物を600mlのプロピレンを用いて反応器内にフラッシュした。撹拌を開始し、充填チューブBの内容物を450mlのプロピレンを用いて反応器内にフラッシュした。反応器を10分間で70℃に加熱し、重合を1時間続けた。重合の終わりに、撹拌機をオフにし、反応器を冷却しながら未反応のプロピレンを通気した。ポリマーを回収し、50℃の真空オーブン中で乾燥させた後、秤量及び分析した。
【0110】
重合を4Lオートクレーブ中で実施した場合、充填チューブA及びBに1400ml及び600mlのプロピレンを充填したこと以外は、同じ一般手順に従った。4Lの重合の試薬量は、2.0Lのプロピレン、252mモルの水素、3.4mモルのトリエチルアルミニウム、0.131mモルのジシクロペンチルジメトキシシラン、及び8.0mgの触媒であった。
【0111】
メルトフローレートを、ASTM D1238-01試験方法に従って、プロピレン系ポリマーについて230℃で2.16kgの重量により測定した。キシレン可溶分(XS)を、Polymer CharによるCrystex自動化機器を使用して測定した。ASTM D5492-10試験方法によって、XSについて分析したポリプロピレンホモポリマー試料を用いてCrystexを較正した。
【0112】
MgCl EtOH付加物を、米国特許第5468698号に既に記載されているように調製した。58ミクロンの平均粒子サイズを有するMgCl EtOH付加物、及び2.2のモル比のEtOH/Mgを、触媒E-12、E-13、C-6、及びC-7に使用した。実施例C8、E14、及びE115を、モル比3.2のEtOH/MgClを含有するMgCl EtOHを用いて調製した。
【0113】
実施例の内部供与体構造を表1に示す。
【表1】
実施例1~3、二次供与体としてのエチルベンゾエート
【0114】
4.0gのMagTi担体(米国特許第5,124,298号及び米国特許第5,962,361号)を100mlのSchlenkフラスコに添加し、20mlのモノクロロベンゼン(monochloro benzene、MCB)を用いてスラリー化する。スラリーを純粋なN下で反応器に移す。別の20mlのMCBを、担体のフラスコに添加し、任意の残りの担体を反応器内にすすぐために使用して、スラリーを12℃に冷却する。次いで、10℃に冷却された40ml(70g)のTiClを、反応器に迅速に添加する。スラリーを25℃に加熱し、この温度で5分間撹拌する。
【0115】
7mlのo-クロロトルエン(o-chlorotoluene、OCT)中に溶解した、2.37(±0.03)mモルの供与体ID-1、ID-2、又はID-3のいずれかを、反応器に添加する。次いで、温度を100℃に上昇させ(40分間)、それを50分間保持する。撹拌を停止し、反応器を100℃に維持しながらスラリーを沈降させる。上澄みをデカントし、続いて100℃に予熱された、50:50の体積のTiCl及びMCBの混合物80mlsを添加する。反応器を115℃に加熱する。加熱中に、2mlのOCT中に溶解した0.17mlのエチルベンゾエート(1.18mモル)を添加する。反応混合物を115℃で25分間保持する。
【0116】
撹拌を停止し、反応器を115℃に維持しながらスラリーを沈降させる。上澄みをデカントし、続いて100℃に予熱された、50:50の体積のTiCl及びMCBの混合物80mlsを添加する。反応器を115℃に再加熱し、この温度で25分間保持する。撹拌を停止し、反応器を115℃に維持しながらスラリーを沈降させる。上澄みをデカントする。
【0117】
反応器の温度を25℃に設定する。次いで、100mlのヘプタンを添加し、10分間撹拌した後、沈降させ、洗浄物をデカントする。反応器の冷却を伴いながら、これを更に4回繰り返し、最後の2回の洗浄を25℃における反応器によって行う。湿潤固体を、真空下にて40℃で2時間乾燥させる。2.8g~2.9gの触媒を収集する。触媒組成データ及び重合結果を表2に示す。
実施例4及び5
【0118】
4.0gのMagTi担体を100mlのSchlenkフラスコに添加し、20mlのモノクロロベンゼン(MCB)を用いてスラリー化する。スラリーを室温で純粋なN下で反応器に移す。別の20mlのMCBを、担体のフラスコに添加し、任意の残りの担体を反応器内にすすぐために使用する。次いで、室温における、又は10℃に冷却された40ml(70g)のTiClを、反応器に迅速に添加する。スラリーを25℃に加熱し、この温度で5分間撹拌する。
【0119】
次いで、7mlのo-クロロトルエン(OCT)中に溶解した、2.35(±0.02)mモルのID-1又はID-2供与体のいずれかを、反応器に添加する。次いで、温度を100℃に上昇させ(40分間)、それを50分間保持する。撹拌を停止し、反応器を100℃に維持しながらスラリーを沈降させる。上澄みをデカントし、続いて50:50の体積のTiCl及びMCBの混合物80mlsを添加する。反応器を115℃に加熱する。加熱中に、3.5mlのOCT中に溶解した、1.18mモルのID-1又はID-2供与体のいずれかを添加する。反応混合物を115℃で25分間保持する。
【0120】
撹拌を停止し、反応器を115℃に維持しながらスラリーを沈降させる。上澄みをデカントし、続いて50:50の体積のTiCl及びMCBの混合物80mlsを添加する。反応器を115℃に再加熱し、この温度で25分間保持する。撹拌を停止し、反応器を115℃に維持しながらスラリーを沈降させる。上澄みをデカントする。
【0121】
反応器の温度を25℃に設定する。次いで、100mlのヘプタンを添加し、10分間撹拌した後、沈降させ、洗浄物をデカントする。反応器の冷却を伴いながら、これを更に4回繰り返し、最後の2回の洗浄を25℃における反応器によって行う。湿潤固体を、真空下にて40℃で2時間乾燥させる。2.9g~3.0gの触媒を収集する。触媒組成データ及び重合結果を表3に示す。
実施例6
【0122】
4.0gのMagTi担体を100mlのSchlenkフラスコに添加し、20mlのモノクロロベンゼン(MCB)を用いてスラリー化する。スラリーを室温で純粋なN下で反応器に移す。別の20mlのMCBを、担体のフラスコに添加し、任意の残りの担体を反応器内にすすぐために使用する。次いで、室温における、又は10℃に冷却された40ml(70g)のTiClを、反応器に迅速に添加する。スラリーを25℃に加熱し、この温度で5分間撹拌する。
【0123】
次いで、5.1mlのo-クロロトルエン(OCT)中に溶解した3.55mモルのID-3供与体を、反応器に添加する。次いで、温度を100℃に上昇させ(40分間)、それを50分間保持する。撹拌を停止し、反応器を100℃に維持しながらスラリーを沈降させる。上澄みをデカントし、続いて50:50の体積のTiCl及びMCBの混合物80mlsを添加する。反応器を115℃に加熱する。加熱中に、2.3mlのOCT中に溶解した1.60mモルのA0供与体を添加する。反応混合物を115℃で25分間保持する。
【0124】
撹拌を停止し、反応器を115℃に維持しながらスラリーを沈降させる。上澄みをデカントし、続いて50:50の体積のTiCl及びMCBの混合物80mlsを添加する。反応器を115℃に再加熱し、この温度で25分間保持する。撹拌を停止し、反応器を115℃に維持しながらスラリーを沈降させる。上澄みをデカントする。
【0125】
反応器の温度を25℃に設定する。次いで、100mlのヘプタンを添加し、10分間撹拌した後、沈降させ、洗浄物をデカントする。反応器の冷却を伴いながら、これを更に4回繰り返し、最後の2回の洗浄を25℃における反応器によって行う。湿潤固体を、真空下にて40℃で2時間乾燥させる。2.9g~3.0gの触媒を収集する。触媒組成データ及び重合結果を表3に示す。
実施例7及び8
【0126】
第2のチタン化に供与体を添加しなかったこと以外は、実施例4及び5の手順に従った。触媒組成データ及び重合結果を表3に示す。
【表2】
【表3】
【0127】
上記のデータは、第2のチタン化において供与体を除外すると、より高いTi、より低い活性、及びより高いXSを有する触媒をもたらすことを示している。驚くべきことに、触媒に組み込まれた供与体の量は、供与体の完全な充填を使用した場合とほぼ同じままであった。
【0128】
いかなる特定の仮説によっても制約されていないが、第2のチタン化における供与体の機能は、より多量の供与体を用いる第2のチタン化後に残った種よりも、活性が低く、立体規則能力(steroregulating ability)が悪いチタン種を抽出するのを助けることであるように思われる。
実施例9~16
【0129】
以下の実施例では、第1及び第2のチタン化で使用された供与体及びその量が表4に列挙されたとおりであること以外は、実施例1~3に使用される手順に従った。組成及び重合結果はまた、表4に示される。
【表4】
実施例17~19
【0130】
20gのMgCl EtOH前駆体及び73mlのヘプタンを、オーバーヘッド撹拌機を備える1Lのジャケット付きガラス反応器に添加し、混合物を-20℃に冷却した。-20℃に予冷した350gのTiCl4を添加し、撹拌を1時間続けた。反応器の温度を0.33℃/分の速度で20℃に上昇させた。5mlのヘプタン中の1.5gのエチルベンゾエートの溶液をカニューレによって添加した。添加が完了した後、反応器の温度を0.54℃/分の速度で85℃に上昇させた。温度の上昇中に、30mlのトルエン中の1.8gの内部供与体の溶液を0.4mL/分の速度で計量供給した。85℃に達した後、撹拌を1時間続けた後に、触媒固体を沈降させ、上澄みをデカントした。70gの予熱されたTiCl及び140gのトルエンを添加し、続いて10mlのトルエン中の1.2gの内部供与体を添加し、混合物を105℃で1時間撹拌した後、沈降及びデカントステップを繰り返した。TiCl/トルエン処理を120℃で1時間繰り返した。沈降及びデカントの後、反応器を65℃に冷却した。触媒固体を、65℃で各洗浄200mlのヘプタンを用いて5回洗浄した。次いで、触媒を真空下にて40℃で4時間乾燥させた。触媒組成、内部供与体のタイプ、及びバルク重合の試験データを表5に列挙する。
実施例20
【0131】
20gのMgCl EtOH前駆体及び73mlのヘプタンを、オーバーヘッド撹拌機を備える1Lのジャケット付きガラス反応器に添加し、混合物を-20℃に冷却した。-20℃に予冷した350gのTiClを添加し、撹拌を1時間続けた。反応器の温度を0.33℃/分の速度で20℃に上昇させ、15分間撹拌した。反応器の温度を0.54℃/分の速度で85℃に上昇させ、30mlのトルエン中の2.0gのID-1の溶液を、加熱中に0.4mL/分の速度で計量供給した。85℃に達した後、撹拌を1時間続けた後に、触媒固体を沈降させ、上澄みをデカントした。70gの予熱されたTiCl及び140gのトルエンを添加し、続いて7mlのヘプタン中の1.5gのエチルベンゾエートを添加し、混合物を105℃で1時間撹拌した後、沈降及びデカントステップを繰り返した。TiCl/トルエン処理を120℃で1時間繰り返した。沈降及びデカントの後、反応器を65℃に冷却した。触媒固体を、65℃で各洗浄200mlのヘプタンを用いて5回洗浄した。次いで、触媒を真空下にて40℃で4時間乾燥させた。触媒組成及びバルク重合の試験データを表5に列挙する。
実施例21
【0132】
エチルベンゾエート添加ステップを省略したこと以外は、E-17手順に従った。触媒組成及びバルク重合の試験データを表5に列挙する。
実施例22
【0133】
20gのMgCl EtOH前駆体及び73mlのヘプタンを、オーバーヘッド撹拌機を備える1Lのジャケット付きガラス反応器に添加し、混合物を-20℃に冷却した。-20℃に予冷した350gのTiClを添加し、撹拌を1時間続けた。反応器の温度を0.33℃/分の速度で20℃に上昇させた。10mlのヘプタン中の2.4gのエチルベンゾエートの溶液をカニューレによって添加し、15分間撹拌した。反応器の温度を0.54℃/分の速度で85℃に上昇させ、撹拌を1時間続けた後、触媒固体を沈降させ、上澄みをデカントした。70gの予熱されたTiCl及び140gのトルエンを添加し、続いて5mlのヘプタン中の0.9gのエチルベンゾエートを添加し、混合物を105℃で1時間撹拌した後、沈降及びデカントステップを繰り返した。TiCl/トルエン処理を120℃で1時間繰り返した。沈降及びデカントの後、反応器を65℃に冷却した。触媒固体を、65℃で各洗浄200mlのヘプタンを用いて5回洗浄した。次いで、触媒を真空下にて40℃で4時間乾燥させた。触媒組成及びバルク重合の試験データを表5に列挙する。
【表5】
4Lオートクレーブ中で重合を実施した。
【0134】
実施例E-23~E-25は、担体としてMgCl 3.2EtOH、及び内部供与体として1,8-ナフタレンジベンゾエートを用いて調製された触媒の調製及び挙動を示す。
【表6】
実施例23
【0135】
エチルベンゾエートなしで、MgCl EtOH担体及び1,8-ナフタレンジベンゾエートを使用して、実験を実施した。触媒は、中程度の活性(48.2kg/g)及び非常に高いXSレベル(9.29%)を示す。
【0136】
反応器(1)に、MgCl EtOH(16.3g)、ヘプタン(68g)を充填し、-25℃に冷却した。反応器(2)に、TiClのTiCl(207g)を充填し、-23℃に冷却した。反応器(1)からの担体のスラリーを、-20℃の内部温度、及び400rpmのかき混ぜ速度を維持しながら、反応器(2)に移し、反応混合物を1時間保持した。反応器の温度を、2時間で-20℃から20℃、及び3時間で20℃から85℃に上昇させ、85℃で1時間保持し、濾過した。固体をトルエン(130ml)を用いて2回洗浄し、次いで追加トルエンを添加した(130ml)。反応器を105℃に加熱した。1,8-ナフタレンジベンゾエート(1.0g)を80℃で添加した。反応混合物を105℃で1時間かき混ぜた。濾過後、固体部分を、10%(w)のTiCl/トルエンを用いて、105及び110℃で4回処理した。
実施例24
【0137】
TiCl添加の完了後に、20℃で2.0gのエチルベンゾエートを添加したこと以外は、実施例E-23を繰り返した。この実施例は、触媒性能に対するエチルベンゾエートの効果を示す。触媒活性は、74.6kg/gに劇的に増加し、XSレベルは、3.25%に減少した。
実施例25
【0138】
TiClをMgCl EtOHに添加したこと以外は、実施例E-24を繰り返した。この実施例は、エチルベンゾエートの存在に伴う異なるチタン化の方法を示す。触媒は、高い活性(47.8kg/g)及び良好なXSレベル(3.68%)を示す。
【0139】
触媒性能に対する効果を理解するために、触媒のFTIR調査を実施した。
【0140】
1,8-ナフタレンジベンゾエートを用いて、かつエチルベンゾエートを用いて、及びエチルベンゾエートなしで調製された触媒のIRスペクトルを図1及び図2に示す。FTIRスペクトルは異なる。両方の触媒は、わずかに異なる配位(1702cm-1及び1698cm-1での-C=Oバンドに対応して)を有する、MgClとの1,8-ナフタレンジベンゾエート錯体を含有する。実施例E-23からエチルベンゾエートを用いて作製された触媒は、MgClとのエチルベンゾエート錯体(1669cm-1領域)及びTiClとの錯体(1640cm-1領域)のバンドを示す。
【0141】
FTIRデータは、重合プロセスにおける触媒挙動の差を支持する。
【0142】
本発明に対するこれら及び他の修正及び変更は、添付の特許請求の範囲により具体的に記載されている本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者によって実施され得る。加えて、様々な実施形態の態様は、全部又は一部において相互に交換され得ることを理解されたい。更に、当業者は、前述の説明が単なる例示によるものであり、そのような添付の特許請求の範囲に更に記載されるように本発明を限定することを意図するものではないことを理解するであろう。
図1
図2
【国際調査報告】