(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-24
(54)【発明の名称】ヘテロ三核金属有機アルキン錯体及びその製造方法並びに用途
(51)【国際特許分類】
C07F 19/00 20060101AFI20221116BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20221116BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20221116BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20221116BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20221116BHJP
C07F 15/00 20060101ALN20221116BHJP
C07F 1/12 20060101ALN20221116BHJP
C07F 1/08 20060101ALN20221116BHJP
【FI】
C07F19/00
H05B33/14 B
H05B33/10
H05B33/22 D
H01L27/32
C09K11/06 660
C07F15/00 F
C07F1/12
C07F1/08 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517409
(86)(22)【出願日】2020-09-16
(85)【翻訳文提出日】2022-03-17
(86)【国際出願番号】 CN2020115623
(87)【国際公開番号】W WO2021052367
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】201910877419.8
(32)【優先日】2019-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516290586
【氏名又は名称】中国科学院福建物質結構研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】陳忠寧
(72)【発明者】
【氏名】肖暉
(72)【発明者】
【氏名】張続
(72)【発明者】
【氏名】王金雲
【テーマコード(参考)】
3K107
4H048
4H050
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC04
3K107DD64
3K107DD67
3K107DD69
3K107DD70
3K107DD72
3K107DD87
3K107GG06
4H048AA01
4H048AA03
4H048AB92
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB92
(57)【要約】
本発明は発光材料及び有機発光ダイオードの技術分野に属し、具体的には、リン光Pt2M(M=Au(I)、Ag(I)、Cu(I))ヘテロ三核金属有機アルキン錯体、その合成方法及び有機発光ダイオードにおけるリン光材料としてその使用に関する。本発明の式(I)に示されるヘテロ三核金属有機アルキン錯体は溶液、固体及び薄膜のいずれにおいても強いリン光を発する。本発明では初めてリン光Pt2Mヘテロ三核金属有機アルキン錯体を発光材料として有機発光素子を組み立てている。本発明のヘテロ三核有機アルキン錯体を発光層ドーパントとして製造した有機発光ダイオードは電界発光効率が高く、外部量子効率(EQE)が12.5%よりも高い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造が下記の式(I)に示されるとおりであることを特徴とするPt
2Mヘテロ三核金属有機アルキン錯体:
[Pt
2M(μ-dpmp)
2(μ-C≡C-R’-C≡C)(C≡CR)
2]
+
mA
m- (I)
そのうち、μは架橋を表す;dpmpはビス(ジフェニルホスフィノメチル)フェニルホスフィンである;
MはAu(I)、Ag(I)、或いはCu(I)から選ばれる;
Rは相同又は相異であり、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基から独立的に選ばれる;前記アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基はいずれも1つ又は複数の置換基によって置換されてもよく、前記置換基はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン、ハロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基から選ばれる;
R’はアルキレン基、アリレン基、ヘテロアリレン基から選ばれる;前記アルキレン基、アリレン基、ヘテロアリレン基はいずれも1つ又は複数の置換基によって置換されてもよく、前記置換基はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン、ハロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基から選ばれる;
A
m-は一価又は二価の陰イオンであり、ここでmは1又は2である。
【請求項2】
前記一価又は二価の陰イオンはClO
4
-、PF
6
-、SbF
6
-、BF
4
-、B(C
6H
5)
4
-、CF
3SO
3
-、或いはSiF
6
2-から選ばれる;
好ましくは、前記式(I)に示されるヘテロ三核金属有機アルキン錯体の立体構造は下記のとおりである:
【化1】
;
好ましくは、前記Rはアリール基、カルバゾリル基、フェノチアジニル基、キナゾリニル基、アリール置換カルバゾリル基、ジアリールアミノフェニル基である;前記アリール基、カルバゾリル基、フェノチアジニル基、キナゾリニル基、アリール置換カルバゾリル基、ジアリールアミノフェニル基は任意選択で1つ又は複数の置換基によって置換される;前記置換基はアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン、ハロアルキル基、アリール基から選ばれる;
好ましくは、前記R’はアリレン基、窒素含有ヘテロアリレン基(例えば、カルバゾリレン基)、酸素含有ヘテロアリレン基(例えば、ジベンゾフラニレン基)、硫黄含有ヘテロアリレン基(例えば、ジベンゾチエニレン基)、硫黄と窒素含有ヘテロアリレン基(例えば、フェノチアジニレン基など)であり、前記アリレン基、窒素含有ヘテロアリレン基、酸素含有ヘテロアリレン基、硫黄含有ヘテロアリレン基、硫黄と窒素含有ヘテロアリレン基は任意選択で1つ又は複数の置換基によって置換される;前記置換基はアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン、ハロアルキル基、アリール基から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の錯体。
【請求項3】
前記Rはフェニル基、アルキル置換フェニル基、フェニル置換カルバゾリル基、又はハロアルキルフェニル基、アルコキシ置換フェニル基、アルキル置換フェノチアジニル基である;前記R’はアルキル置換カルバゾリレン基、ジベンゾフラニレン基、及びジベンゾチエニレン基であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の錯体。
【請求項4】
前記式(I)に示されるヘテロ三核金属有機アルキン錯体は下記の構造から選ばれ、ただしそれらに限定されないことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の錯体:
【化2】
。
【請求項5】
下記のステップを含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の錯体の製造方法:
dpmpと、Mを含むイオン結合型錯体とを溶剤において反応させて、中間体M(dpmp)
2を得る;
次にM(dpmp)
2とPt
2(PPh
3)
4(μ-C≡C-R’-C≡C)(C≡CR)
2を溶剤において反応させて、式(I)に示されるヘテロ三核金属有機アルキン錯体を得る;
ここで、Mを含むイオン結合型錯体は[Au(tht)
2]
+
m(A
m-)、[Ag(tht)]
+
m(A
m-)、又は[Cu(MeCN)
4]
+
m(A
m-)から選ばれる;
前記PPh
3はトリフェニルホスフィンを表し、thtはテトラヒドロチオフェンであり、MeCNはアセトニトリルであり、前記dpmp、A
m-、R、R’、Mは請求項1~4のいずれか1項で定義したとおりである。
【請求項6】
dpmpと、Mを含むイオン結合型錯体と、Pt
2(PPh
3)
4(μ-C≡CR’C≡C)(C≡CR)
2とのモル比は1.5~2.5:1~1.5:1~1.5であることを特徴とする、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
有機発光ダイオードを製造するための、請求項1~5のいずれか1項に記載の錯体の用途。
【請求項8】
発光層を含む有機発光ダイオードであって、前記発光層は請求項1~5のいずれか1項に記載の錯体を含む。
【請求項9】
1)溶液法を用いて有機発光ダイオードの正孔注入層を製造することと;
2)溶液法を用いて請求項1~5のいずれか1項に記載の錯体がドープされた発光層を製造することと;
3)次に真空熱蒸着法を利用して電子輸送層、電子注入層、及びカソード層をこの順に製造することとを含む、請求項8に記載の有機発光ダイオードの製造方法。
【請求項10】
フラットパネルディスプレイ又は日常照明の分野における請求項8に記載の有機発光ダイオードの用途。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は2019年9月17日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が201910877419.8で、発明名称が「ヘテロ三核金属有機アルキン錯体及びその製造方法並びに用途」である先行出願の優先権を主張する。当該出願の全文が引用により本願に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は発光材料及び有機発光ダイオードの技術分野に属し、具体的には、リン光Pt2M(M=Au(I)、Ag(I)、Cu(I))ヘテロ三核金属有機アルキン錯体、その合成方法及び有機発光ダイオードにおけるリン光材料としてその使用に関する。
【0003】
〔背景技術〕
有機発光ダイオード(OLED)は薄膜発光素子であり、そのカソードとアノードの間には一般に発光層などの複数の有機薄膜中間層を含み、低い駆動電圧(3-12V)の作用下で電気エネルギーを光エネルギーに変換する、即ち、電界発光することができるため、フラットパネルディスプレイと照明分野で幅広い利用が見込まれる。有機発光ダイオードのコアは発光薄膜材料であり、発光材料の飛躍的な進歩も電界発光効率の高い表示と照明の普及を実現するための鍵であり、電界発光技術をめぐる競争で焦点となっている。従来OLEDの商用発光材料は主にリン光環状金属化されたイリジウム(III)錯体であり、そのエネルギー利用効率は100%に達しているが、価格が高い、色度が不完全である(青色リン光材料の不足のため)、イリジウム資源が不足するなどの難しい課題がある。そのために、新しい構造を有し、製造方法がシンプルで、合成収率が高い新規な低コスト発光材料を開発することは極めて現実的に大きな意義がある。
【0004】
〔発明の概要〕
本発明は上記の課題を解決するために、リン光Pt2M(M=Au(I)、Ag(I)、Cu(I))ヘテロ三核金属有機アルキン錯体、その製造方法及び有機発光ダイオードにおける高効率のリン光材料としてのその使用を提供する。
【0005】
本発明の上記の目的は下記の技術案により実現される。
【0006】
Pt2Mヘテロ三核金属有機アルキン錯体であって、その構造は下記の式(I)に示されるとおりである:
[Pt2M(μ-dpmp)2(μ-C≡C-R’-C≡C)(C≡CR)2]+
mAm-(I)
そのうち、μは架橋を表す;dpmpはビス(ジフェニルホスフィノメチル)フェニルホスフィンである;
MはAu(I)、Ag(I)、或いはCu(I)から選ばれる;
Rは相同又は相異であり、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基から独立的に選ばれる;前記アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基はいずれも1つ又は複数の置換基によって置換されてもよく、前記置換基はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン、ハロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基から選ばれる;
R’はアルキレン基、アリレン基、ヘテロアリレン基から選ばれる;前記アルキレン基、アリレン基、ヘテロアリレン基はいずれも1つ又は複数の置換基によって置換されてもよく、前記置換基はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン、ハロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基から選ばれる;
Am-は一価又は二価の陰イオンであり、ここでmは1又は2である。
【0007】
本発明の実施形態において、前記一価又は二価の陰イオンはClO4
-、PF6
-、SbF6
-、BF4
-、B(C6H5)4
-、CF3SO3
-、或いはSiF6
2-などから選ばれる。
【0008】
本発明の実施形態において、前記式(I)に示されるヘテロ三核金属有機アルキン錯体の立体構造は下記のとおりである:
【0009】
【0010】
本発明の実施形態において、前記Rはアリール基、カルバゾリル基、フェノチアジニル基、キナゾリニル基、アリール置換カルバゾリル基、ジアリールアミノフェニル基であることが好ましい;前記アリール基、カルバゾリル基、フェノチアジニル基、キナゾリニル基、アリール置換カルバゾリル基、ジアリールアミノフェニル基は任意選択で1つ又は複数の置換基によって置換される;前記置換基はアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン、ハロアルキル基、アリール基から選ばれる;
本発明の実施形態において、前記R’はアリレン基、窒素含有ヘテロアリレン基(例えば、カルバゾリレン基)、酸素含有ヘテロアリレン基(例えば、ジベンゾフラニレン基)、硫黄含有ヘテロアリレン基(例えば、ジベンゾチエニレン基)、硫黄と窒素含有ヘテロアリレン基(例えば、フェノチアジニレン基)などであることが好ましく、前記アリレン基、窒素含有ヘテロアリレン基、酸素含有ヘテロアリレン基、硫黄含有ヘテロアリレン基、硫黄と窒素含有ヘテロアリレン基は任意選択で1つ又は複数の置換基によって置換される;前記置換基はアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン、ハロアルキル基、アリール基から選ばれる;
より好ましくは、前記Rはフェニル基、アルキル置換フェニル基、フェニル置換カルバゾリル基、又はハロアルキルフェニル基、アルコキシ置換フェニル基、アルキル置換フェノチアジニル基である;前記R’はアルキル置換カルバゾリレン基、ジベンゾフラニレン基、ジベンゾチエニレン基である。
【0011】
一例として、前記式(I)に示されるヘテロ三核金属有機アルキン錯体は下記の構造から選ばれ、ただしそれらに限定されない:
【0012】
【0013】
本発明はまた、下記のステップを含む、式(I)に示されるヘテロ三核金属有機アルキン錯体の製造方法を提供する:
dpmpと、Mを含むイオン結合型錯体とを溶剤において反応させて、中間体M(dpmp)2を得る;
次に中間体とPt2(PPh3)4(μ-C≡C-R’-C≡C)(C≡CR)2を溶剤において反応させて、式(I)に示されるヘテロ三核金属有機アルキン錯体を得る;
ここで、Mを含むイオン結合型錯体は[Au(tht)2]+
m(Am-)、[Ag(tht)]+
m(Am-)、又は[Cu(MeCN)4]+
m(Am-)から選ばれる;
前記PPh3はトリフェニルホスフィンを表し、thtはテトラヒドロチオフェンであり、MeCNはアセトニトリルであり、前記dpmp、Am-、R、R’、Mは上記で定義したとおりである。
【0014】
本発明の実施形態において、前記溶剤はハロゲン化炭化水素溶剤であることが好ましく、例えば、ジクロロメタンである。
【0015】
本発明の実施形態において、dpmpと、Mを含むイオン結合型錯体と、Pt2(PPh3)4(μ-C≡CR’C≡C)(C≡CR)2とのモル比は1.5~2.5:1~1.5:1~1.5であり、好ましくはモル比が2:1:1である。
【0016】
本発明の実施形態において、前記反応は室温下で行われる。
【0017】
本発明の実施形態において、反応時間は12~16時間であることが好ましい;
本発明の実施形態において、前記製造方法は反応終了後にシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて、得られた中間体及び/又は生成物を分離、精製することをさらに含む。
【0018】
本発明はまた、有機発光ダイオードを製造するための、式(I)に示されるヘテロ三核金属有機アルキン錯体の用途を提供する。
【0019】
本発明はまた、発光層を含む有機発光ダイオードを提供し、前記発光層が上記の式(I)に示されるヘテロ三核金属有機アルキン錯体を含む。
【0020】
本発明の実施形態において、前記発光層では、式(I)に示されるヘテロ三核金属有機アルキン錯体が有機発光ダイオードの発光層の全ての材料の3~20%(重量パーセント)を、好ましくは5~10%を、より好ましくは6%を占める。
【0021】
本発明の実施形態において、前記有機発光ダイオードの構造は従来の技術で知られている様々な構造であってもよい。好ましくは、ガラス基板、アノード、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、カソード層を含む。
【0022】
前記アノードはインジウム・スズ酸化物(ITO)であってもよい;
前記正孔注入層又は正孔輸送層はPEDOT:PSS(PEDOT:PSS=ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸))、又はm-PEDOT:PSS[PEDOT:PSS(0.8 wt%):PSS-Na(15 mg/mL、H2Oに溶解)を含む]であってもよい;
前記発光層は式(I)に示されるヘテロ三核金属有機アルキン錯体と、正孔輸送特性を有するTCTA(トリス(4-(9-カルバゾール)フェニル)アミン)、mCP(1,3-ビス(9-カルバゾリル)ベンゼン)、CBP(4,4’-ビス(9-カルバゾール)-1,1’-ビフェニル)、或いは2,6-DCZPPY(2,6-ビス(3-(9-カルバゾール)フェニル)ピリジン)の少なくとも1種と、電子輸送特性を有するOXD-7(1,3-ビス(5-(4-(tert-ブチル)フェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)ベンゼン)とを含む;
前記電子輸送層はTPBi(1,3,5-トリス(1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)ベンゼン)、BmPyPb(3,3’’,5,5’’-テトラキス(3-ピリジニル)-1,1’:3’,1’’-テルフェニル)、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントレン)、或いはOXD-7のうちの少なくとも1種であってもよい;
前記電子注入層はLiFである;前記カソードはAlである。
【0023】
本発明の実施形態において、前記有機発光ダイオードの構造は、ITO/m-PEDOT:PSS(20 nm)/62%のmCP:32%のOXD-7:6% wtの式(I)に示されるヘテロ三核金属有機アルキン錯体(50 nm)/BmPyPb(50 nm)/LiF(1 nm)/Al(100 nm)であることが好ましく、そのうちITOはインジウム・スズ酸化物導電性フィルムであり、m-PEDOT:PSSは改良されたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)であり、mCPは(1,3-ビス(9-カルバゾリル)ベンゼン)であり、OXD-7は1,3-ビス(5-(4-(tert-ブチル)フェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)ベンゼンであり、BmPyPbは3,3’’,5,5’’-テトラキス(3-ピリジニル)-1,1’:3’,1’’-テルフェニルである。
【0024】
本発明はまた、下記を含む前記有機発光ダイオードの製造方法を提供する:
1)溶液法を用いて有機発光ダイオードの正孔注入層を製造する;
2)溶液法を用いて式(I)に示されるヘテロ三核金属有機アルキン錯体がドープされた発光層を製造する;
3)次に真空熱蒸着法を利用して電子輸送層、電子注入層、及びカソード層をこの順に製造する。
【0025】
1つの好ましい実施形態において、前記方法は、まず水溶性のm-PEDOT:PSSを利用して正孔注入層を製造することと、次に正孔輸送特性を有するmCPと電子輸送特性を有するOXD-7を混合ホスト材料として、式(I)に示されるヘテロ三核金属有機アルキン錯体をドープして発光層を製造することと、次に真空熱蒸着法を利用してBmPyPb電子輸送層、LiF電子注入層、及びAlカソード層をこの順に製造することとを含む。
【0026】
本発明の実施形態において、前記方法では、m-PEDOT:PSS正孔注入層及びmCP:OXD-7ドープ型発光層にはそれぞれ溶液スピンコート法を利用して薄膜を製造し、BmPyPb電子輸送層及びLiF電子注入層には真空熱蒸着法を用いて薄膜を製造する。
【0027】
式(I)に示されるヘテロ三核金属有機アルキン錯体によって製造された有機発光ダイオードは優れた特性を有し、高い電気光変換効率を有する。
【0028】
本発明はまた、フラットパネルディスプレイと日常照明の分野における前記有機発光ダイオードの用途を提供する。
【0029】
本発明は従来の技術と比べて、下記の利点を有する。
【0030】
1)本発明の式(I)に示されるヘテロ三核金属有機アルキン錯体は溶液、固体及び薄膜のいずれにおいても強いリン光を発し、しかも発するのは黄色の光である;
2)本発明では初めてリン光Pt2Mヘテロ三核金属有機アルキン錯体を発光材料として有機発光素子を組み立てている。本発明のヘテロ三核有機アルキン錯体を発光層ドーパントとして製造した有機発光ダイオードは電界発光効率が高く、外部量子効率(EQE)が12.5%よりも高い;
3)本発明では改良されたm-PEDOT:PSSを利用して正孔注入層を製造し、素子の電界発光効率が明らかに向上している。
【0031】
(用語の定義と説明):
他に定義されない限り、本明細書の全ての技術用語は特許請求の範囲の主題の属する分野の技術者が理解しているのと同じ意味である。なお、上記の概要と次の詳細な説明は例示的で解釈するためにだけ使用されるもので、本願の主題を限定するものではない。本願では、特に明記しない限り、「又は」、「或いは」は「及び/又は」を表すように使用される。また、用語「含む」と類似する形態のもの、例えば、「含有する」などは限定するために使用されるものではない。
【0032】
用語「アルキル基」とは1~12個、好ましくは1~10個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基を指し、前記アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基である。
【0033】
用語「アルケニル基」とは、好ましくは1つ又は複数の二重結合を含み且つ2~12個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖の一価炭化水素基を表すものと理解され、好ましくは「C2-10アルケニル基」である。「C2-10アルケニル基」とは、好ましくは1つ又は複数の二重結合を含み且つ2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の炭素原子、特に2又は3個の炭素原子(「C2-3アルケニル基」)を有する直鎖又は分枝鎖の一価炭化水素基を表すものと理解され、なお、前記アルケニル基が2つ以上の二重結合を含む場合は、前記二重結合が互いに分離し又は共役していてもよい。前記アルケニル基は、例えば、エテニル基、アリル基、(E)-2-メチルエテニル基、(Z)-2-メチルエテニル基、(E)-ブト-2-エニル基、(Z)-ブト-2-エニル基、(E)-ブト-1-エニル基、(Z)-ブト-1-エニル基、ペント-4-エニル基、(E)-ペント-3-エニル基、(Z)-ペント-3-エニル基、(E)-ペント-2-エニル基、(Z)-ペント-2-エニル基、(E)-ペント-1-エニル基、(Z)-ペント-1-エニル基、ヘキサ-5-エニル基、(E)-ヘキサ-4-エニル基、(Z)-ヘキサ-4-エニル基、(E)-ヘキサ-3-エニル基、(Z)-ヘキサ-3-エニル基、(E)-ヘキサ-2-エニル基、(Z)-ヘキサ-2-エニル基、(E)-ヘキサ-1-エニル基、(Z)-ヘキサ-1-エニル基、イソプロペニル基、2-メチルプロプ-2-エニル基、1-メチルプロプ-2-エニル基、2-メチルプロプ-1-エニル基、(E)-1-メチルプロプ-1-エニル基、(Z)-1-メチルプロプ-1-エニル基である。
【0034】
用語「アルキニル基」とは、1つ又は複数の三重結合を含み且つ2~12個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖の一価炭化水素基を表すものと理解され、好ましくは「C2-C10アルキニル基」である。用語「C2-10アルキニル基」とは、好ましくは1つ又は複数の三重結合を含み且つ2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の炭素原子、特に2又は3個の炭素原子(「C2-3-アルキニル基」)を有する直鎖又は分枝鎖の一価炭化水素基を表すものと理解される。前記アルキニル基は、例えば、エチニル基、プロプ-1-イニル基、プロプ-2-イニル基、ブト-1-イニル基、ブト-2-イニル基、ブト-3-イニル基、ペント-1-イニル基、ペント-2-イニル基、ペント-3-イニル基、ペント-4-イニル基、ヘキサ-1-イニル基、ヘキサ-2-イニル基、ヘキサ-3-イニル基、ヘキサ-4-イニル基、ヘキサ-5-イニル基、1-メチルプロプ-2-イニル基、2-メチルブト-3-イニル基、1-メチルブト-3-イニル基、1-メチルブト-2-イニル基、3-メチルブト-1-イニル基である。
【0035】
用語「アリール基」とは、好ましくは5~20個の炭素原子有する芳香族性又は部分的に芳香族性の単環式、二環式又は三環式の環式炭化水素を表すものと理解され、好ましくは「C6-14アリール基」である。用語「C6-14アリール基」とは、好ましくは6、7、8、9、10、11、12、13又は14個の炭素原子を有する一価芳香族性又は部分的に芳香族性の単環式、二環式又は三環式の環式炭化水素(「C6-14アリール基」)を表すものと理解され、特に、6個の炭素原子を有する環(「C6アリール基」)、例えば、フェニル基、又はビフェニル基、或いは9個の炭素原子を有する環(「C9アリール基」、例えば、インダニル基又はインデニル基)、又は10個の炭素原子を有する環(「C10アリール基」)、例えば、テトラヒドロナフチル基、ジヒドロナフチル基又はナフチル基、又は、13個の炭素原子を有する環(「C13アリール基」)、例えば、フルオレニル基、又は14個の炭素原子を有する環(「C14アリール基」)、例えば、アントリル基である。
【0036】
用語「ヘテロアリール基」とは、5~20個の環原子、5~14個の環原子、又は5~12個の環原子、或いは5~10個の環原子、又は5~6個の環原子を含む単環式、二環式及び三環式の環系と理解され、少なくとも1つの環系が芳香族で、且つ少なくとも1つの環系は1つ又は複数のヘテロ原子(例えば、N、O、S、Seなど)を含み、各環系は5~7個の原子からなる環を含み、且つ1つ又は複数の結合点が分子の残りの部分に接続されている。前記ヘテロアリール基は任意選択で1つ又は複数の本発明に記載の置換基によって置換される。いくつかの実施形態において、5~10個の原子からなるヘテロアリール基はO、S、Se及びNから独立的に選ばれる1、2、3又は4個のヘテロ原子を含む。またいくつかの実施形態において、5~6個の原子からなるヘテロアリール基はO、S、Se及びNから独立的に選ばれる1、2、3又は4個のヘテロ原子を含む。
【0037】
単環式のヘテロアリール基の例はチエニル基、フラニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、オキサジアゾリル基、トリアゾリル基、チアジアゾリル基、チア-4H-ピラゾリル基など、及びそれらのベンゾ誘導体(例えば、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、インダゾリル基、インドリル基、イソインドリル基など);又はピリジニル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基など、及びそれらのベンゾ誘導体(例えば、キノリニル基、キナゾリニル基、イソキノリニル基など);又はアゾシニル基、インドリジニル基、プリニル基など、及びそれらのベンゾ誘導体;又はシンノリニル基、フタラジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、ナフチリジニル基、プテリジニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、アクリジニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基などを含み、ただしそれらに限定されない。
【0038】
用語「アルコキシ基」とはアルキル-O-基を指し、アルキル基は上記で定義したとおりである。同様に、アルキル基の定義はアルキル基を含む基、例えば、「ハロアルキル基」などにも適用する。
【0039】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、実施例13の電界発光素子の構造模式図及びその一部の部品を構成する有機材料の化学構造である。
【0040】
〔発明を実施するための形態〕
本発明の目的、技術案及び有益な効果が一層明瞭になるよう、以下、図面と実施例を用いて本発明をより詳しく説明する。なお、本明細書に記載の実施例は本発明を限定するものではなく、本発明を解釈するためのものである。
【0041】
下記の実施例では、dpmpはビス(ジフェニルホスフィノメチル)フェニルホスフィン基を表し、deczは3,6-ジtert-ブチル-カルバゾリル-1,8-ジエチニル基を表し、debfはジベンゾフラニル-4,6-ジエチニル基を表し、debtはジベンゾチエニル-4,6-ジエチニル基を表し、Phはフェニル基を表し、thtはテトラヒドロチオフェンを表し、9-Ph-carb-3は9-フェニル-カルバゾール-3-イルを表し、Ph-(OMe)2-2,4は2,4-ジメトキシフェニル基を表し、10-Me-PTZ-3は10-メチル-フェノチアジン-3-イルを表し、PPh3はトリフェニルホスフィンを表し、MeCNはアセトニトリルであり、ClO4は過塩素酸イオンである。
【0042】
下記の実施例でdecz-2Hは当該基deczに対応する相応の化合物を表し、他の化合物、例えば、debf-2Hなどは同様である。
【0043】
実施例1:Pt2錯体Pt2(PPh3)4(μ-decz)(C≡CPh)2の製造
decz-2H(32.8mg、0.1mmol)を溶解した20mLのクロロホルム溶液にPt(PPh3)2(C≡CPh)Cl(180mg、0.21mmol)、ヨウ化第一銅(1mg)、トリエチルアミン(1mL)を加え、摂氏50度下で18時間反応させた。黄色の透明な溶液を得た。反応液を濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを利用して生成物を精製して、石油エーテル-ジクロロメタン(2:1)を溶離液として淡黄色の生成物を回収し、収率は78%であった。元素分析:C112H93NP4Pt2。計算値:C68.39、H4.77。測定値:C68.14、H4.82。高分解能質量スペクトルm/z(%):1967.5549(100)[M+H]+(計算値1967.5627)。プロトン核磁気共鳴(400MHz,CD2Cl2,ppm):7.85-7.77(m,24H),7.60(m,2H),7.32(t,24H,J=7.36),7.24(t,12H,J=7.32),6.94-6.88(m,6H),6.73-6.70(m,2H),6.69(s,1H),6.30-6.22(m,4H),1.29(s,18H)。リン同位体核磁気共鳴(162MHz,CD2Cl2,ppm):17.9(JPt-P=2641Hz)。赤外分光スペクトル(KBr,cm-1):2109m(C≡C)。
【0044】
実施例2:Pt2錯体Pt2(PPh3)4(μ-decz)(C≡C-(9-Ph-carb-3))2の製造
製造方法は実施例1の方法と基本的に同じであり、Pt(PPh3)2(C≡CPh)Clの代わりにPt(PPh3)2(C≡C-(9-Ph-carb-3)Clを使用し、収率は72%であった。元素分析:C136H107N3P4Pt2。計算値:C71.10、H4.69。測定値:C70.99、H4.81。高分解能質量スペクトルm/z(%):2297.6781(100)[M+H]+(計算値2297.6793)。プロトン核磁気共鳴(CD2Cl2,ppm):7.95-7.80(m,24H),7.64-7.53(m,6H),7.51-7.39(m,12H),7.39-7.32(m,24H),7.31-7.21(m,12H),6.97(d,2H,J=8.48),6.85(s,1H),6.74(s,2H),6.33(d,2H,J=8.44),1.29(s,18H)。リン同位体核磁気共鳴(162MHz,CD2Cl2,ppm):18.0(JPt-P=2645Hz)。赤外分光スペクトル(KBr,cm-1):2117(w)。
【0045】
実施例3:Pt2錯体Pt2(PPh3)4(μ-debf)(C≡CPh)2の製造
製造方法は実施例1の方法と基本的に同じであり、decz-2Hの代わりにdebf-2Hを使用し、収率は70%であった。元素分析:C104H76OP4Pt2。計算値:C67.31、H4.13。測定値:C67.21、H4.08。高分解能質量スペクトルm/z(%):1854.4132(100)[M+H]+(計算値1854.4140)。プロトン核磁気共鳴(CD2Cl2,ppm):7.72-7.68(m,26H),7.61-7.57(m,4H),7.36-7.32(m,26H),7.27-7.24(m,14H),6.97-6.92(t,2H,J=8.38),6.53-6.51(d,2H,J=8),6.46-6.45(d,2H,J=8.38)。リン同位体核磁気共鳴(162MHz,CD2Cl2,ppm):17.77(JPt-P=2134Hz)。赤外分光スペクトル(KBr,cm-1):2110(w)。
【0046】
実施例4:Pt2錯体Pt2(PPh3)4(μ-debf)(C≡CPh-(OMe)2-2,4)2の製造
製造方法は実施例1の方法と基本的に同じであり、decz-2Hの代わりにdebf-2Hを、Pt(PPh3)2(C≡CPh)Clの代わりにPt(PPh3)2(C≡CPh-(OMe)2-2,4)Clを使用し、収率は81%であった。元素分析:C108H84O5P4Pt2。計算値:C65.65、H4.29。測定値:C65.79、H4.20。高分解能質量スペクトルm/z(%):1974.4532(100)[M+H]+(計算値1974.4553)。プロトン核磁気共鳴(CD2Cl2,ppm):7.74-7.69(m,24H),7.62-7.60(d,2H,J=8.30),7.40-7.36(m,24H),7.29-7.23(m,10H),6.97-6.93(t,2H,J=7.68),6.53-6.49(d,2H,J=9),6.13-6.11(d,2H,J=8),3.61(s,12H)。リン同位体核磁気共鳴(162 MHz,CD2Cl2,ppm):19.21(JPt-P=1634Hz)。赤外分光スペクトル(KBr,cm-1):2102(w)。
【0047】
実施例5:Pt2錯体Pt2(PPh3)4(μ-debt)(C≡C-(10-Me-PTZ-3)2の製造
製造方法は実施例1の方法と基本的に同じであり、decz-2Hの代わりにdebt-2Hを、Pt(PPh3)2(C≡CPh)Clの代わりにPt(PPh3)2(C≡C-(10-Me-PTZ-3)Clを使用し、収率は69%であった。元素分析:C118H86N2P4Pt2S3。計算値:C66.16、H4.05。測定値:C66.09、H4.10。高分解能質量スペクトルm/z(%):2140.4225(100)[M+H]+(計算値2140.4210)。プロトン核磁気共鳴(CD2Cl2,ppm):7.70-7.65(m,26H),7.54-7.51(m,40H),7.18-7.14(d,2H,J=8),7.09-7.08(d,2H,J=4),6.93-6.84(m,4H),6.49-6.47(d,2H,J=6.8),5.91-5.89(d,2H,J=8.2),5.54-5.53(d,2H,J=2),3.15(s,6H)。リン同位体核磁気共鳴(162MHz,CD2Cl2,ppm):19.64(JPt-P=1334Hz)。赤外分光スペクトル(KBr,cm-1):2111(w)。
【0048】
実施例6:Pt2Au錯体[Pt2Au(μ-dpmp)2(μ-decz)(C≡CC6H5)2](ClO4)錯体(1)の製造
dpmp(50.6mg、0.1mmol)を溶解した20mLのジクロロメタン溶液に[Au(tht)2](ClO4)(23.6mg、0.05mmol)を加え、5分間攪拌した。実施例1で製造したPt2(PPh3)4(μ-decz)(C≡CPh)2(98.4mg、0.05mmol)を加え、常温下で12時間攪拌して、黄色の透明な溶液を得た。反応液を濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを利用して生成物を精製して、ジクロロメタン-アセトン(10:1)を溶離液として黄色の生成物を回収し、収率は73%であった。元素分析:C104H91AuClNO4P6Pt2。計算値:C53.08、H4.12。測定値:C53.21、H4.02。高分解能質量スペクトルm/z(%):2127.4519(100)[M-ClO4]+(計算値2127.4542)。プロトン核磁気共鳴(400 MHz,CD2Cl2,ppm):8.66(s,1H),7.93-7.82(m,4H),7.81(s,2H),7.81-7.67(m,16H),7.28-7.14(m,16H),7.10-6.96(m,12H),6.91(t,4H,J=7.49),6.77(t,4H,J=7.44),6.52(s,2H),6.24(d,4H,J=7.24),4.55-4.37(m,4H),4.00-3.88(m,4H),1.35(s,18H)。リン同位体核磁気共鳴(162MHz,CD2Cl2,ppm):20.12(m,1P,JP-P=29.5Hz,),3.34(m,2P,JP-P=29.7Hz,JPt-P=2694Hz)。赤外分光スペクトル(KBr,cm-1):2105w(C≡C),1098s(ClO4)。
【0049】
実施例7:Pt2Au錯体[Pt2Au(μ-dpmp)2(μ-decz)(C≡C-(9-Ph-carb-3))2](ClO4)錯体(2)の製造
製造方法は実施例6の方法と基本的に同じであり、Pt2(PPh3)4(μ-decz)(C≡CPh)2の代わりにPt2(PPh3)4(μ-decz)(C≡C-(9-Ph-carb-3))2を使用し、収率は68%であった。元素分析:C128H105AuClN3O4P6Pt2。計算値:C60.11、H4.14。測定値:C59.96、H4.29。高分解能質量スペクトルm/z(%):2457.5667(100)[M-ClO4]+(計算値2457.5699)。プロトン核磁気共鳴(400MHz,CD2Cl2,ppm):8.78(s,1H),8.02-7.88(m,4H),7.88-7.73(m,16H),7.70(d,2H,J=7.60),7.62-7.49(m,8H),7.48-7.30(m,12H),7.30-7.17(m,16H),7.15-7.05(m,8H),6.97-6.90(m,2H),6.89-6.77(m,4H),6.61(s,2H),6.58(s,2H),6.24(d,2H,J=8.44),4.63-4.39(m,4H),4.09-3.89(m,4H),1.37(s,18H)。リン同位体核磁気共鳴(162MHz,CD2Cl2,ppm):19.5(m,1P,JP-P=29.3Hz),3.96(m,2P,JP-P=28.8 Hz,JPt-P=2711Hz)。赤外分光スペクトル(KBr,cm-1):2107w(C≡C),1099s(ClO4)。
【0050】
実施例8:Pt2Au錯体[Pt2Au(μ-dpmp)2(μ-debf)(C≡CC6H5)2](ClO4)錯体(3)の製造
製造方法は実施例6の方法と基本的に同じであり、Pt2(PPh3)4(μ-decz)(C≡CPh)2の代わりにPt2(PPh3)4(μ-debf)(C≡CPh)2を使用し、収率は76%であった。元素分析:C96H74AuClO5P6Pt2。計算値:C54.49、H3.52。測定値:C54.56、H3.60。高分解能質量スペクトルm/z(%):2015.3114(100)[M-ClO4]+(計算値2015.3121)。プロトン核磁気共鳴(400MHz,CD2Cl2,ppm):7.88-7.85(m,8H),7.75-7.66(m,14H),7.25-7.22(m,10H),7.17-7.07(m,8H),7.03-7.00(t,2H,J=8.44),6.95-6.92(t,4H,J=8),6.89-6.85(m,4H),6.62-6.60(d,2H,J=8.44),6.27-6.26(d,2H,J=4),4.44-4.34(m,4H),3.87-3.77(m,4H)。リン同位体核磁気共鳴(162MHz,CD2Cl2,ppm):19.67(m,1P,JP-P=26.3Hz),4.52(m,2P,JP-P=27.7Hz,JPt-P=1336Hz)。赤外分光スペクトル(KBr,cm-1):2106w(C≡C),1135s(ClO4)。
【0051】
実施例9:Pt2Au錯体[Pt2Au(μ-dpmp)2(μ-debf)(C≡CPh-(OMe)2-2,4)2](ClO4)錯体(4)の製造
製造方法は実施例6の方法と基本的に同じであり、Pt2(PPh3)4(μ-decz)(C≡CPh)2の代わりにPt2(PPh3)4(μ-debf)(C≡CPh-(OMe)2-2,4)2を使用し、収率は67%であった。元素分析:C100H82AuClO9P6Pt2。計算値:C53.71、H3.70。測定値:C53.66、H3.66。高分解能質量スペクトルm/z(%):2135.3524(100)[M-ClO4]+(計算値2015.3551)。プロトン核磁気共鳴(400MHz,CD2Cl2,ppm):7.93-7.89(m,4H),7.81-7.77(m,8H),7.75-7.73(d,2H,J=8),7.67-7.62(m,8H),7.21-7.19(m,14H),7.14-7.01(m,12H),6.77-6.73(t,4H,J=4.44),6.43-6.38(m,6H),6.01-5.99(d,4H,J=8),4.79-4.76(m,4H),3.73-3.71(m,4H),3.60(s,12H)。リン同位体核磁気共鳴(162MHz,CD2Cl2,ppm):17.05(m,1P,JP-P=16.3Hz),1.35(m,2P,JP-P=29.16Hz,JPt-P=1335Hz)。赤外分光スペクトル(KBr,cm-1):2108w(C≡C),1158s(ClO4)。
【0052】
実施例10:Pt2Au錯体[Pt2Au(μ-dpmp)2(μ-debt)(C≡C-(10-Me-PTZ-3](ClO4)錯体(5)の製造
製造方法は実施例6の方法と基本的に同じであり、Pt2(PPh3)4(μ-decz)(C≡CPh)2の代わりにPt2(PPh3)4(μ-debt)(C≡C-(10-Me-PTZ-3)2を使用し、収率は62%であった。元素分析:C110H84AuN2ClO4P6Pt2S3。計算値:C54.99、H3.52。測定値:C55.06、H3.50。高分解能質量スペクトルm/z(%):2301.3214(100)[M-ClO4]+(計算値2301.3208)。プロトン核磁気共鳴(400MHz,CD2Cl2,ppm):7.70-7.65(m,26H),7.48-7.46(m,4H),7.35-7.33(m,30H),7.12-7.11(t,2H,J=3),7.06-7.05(d,2H,J=8),6.99-6.95(t,2H,J=8.2),6.89-6.81(m,4H),4.69-4.60(m,4H),3.93-3.81(m,4H),3.65(s,6H)。リン同位体核磁気共鳴(162MHz,CD2Cl2,ppm):19.06(m,1P,JP-P=13.5Hz),3.26(m,2P,JP-P=27.26Hz,JPt-P=1453Hz)。赤外分光スペクトル(KBr,cm-1):2109w(C≡C),1103s(ClO4)。
【0053】
実施例11:Pt2Cu錯体[Pt2Cu(μ-dpmp)2(μ-decz)(C≡CC6H5)2](ClO4)錯体(6)の製造
製造方法は実施例6の方法と基本的に同じであり、[Au(tht)2](ClO4)の代わりに[Cu(MeCN)4](ClO4)を使用した。収率は72%であった。元素分析:C104H91ClCuNO4P6Pt2。計算値:C59.66、H4.38。測定値:C59.28、H4.55。高分解能質量スペクトルm/z(%):1993.4160(100)[M-ClO4]+(計算値1993.4172)。プロトン核磁気共鳴(400 MHz,CD2Cl2,ppm):8.73(s,1H),7.90-7.83(m,4H),7.82-7.78(m,2H),7.70-7.57(m,16H),7.28-7.22(m,4H),7.19-7.03(m,22H),6.95(t,4H,J=7.48),6.86-6.75(m,8H),6.64-6.60(m,2H),5.94-5.87(m,2H),4.20-3.96(m,4H),3.78-3.56(m,4H),1.35(s,18H)。リン同位体核磁気共鳴(162MHz,CD2Cl2,ppm):9.6(m,2P,JP-P=37.3Hz,JPt-P=2550 Hz),-13.2(m,1P,JP-P=34.6Hz)。赤外分光スペクトル(KBr,cm-1):2102w(C≡C),1099s
(ClO4)。
【0054】
実施例12:錯体(1)~(6)のフォトルミネッセンス性能試験
蛍光分光計Edinburgh FLS920において実施例で製造した錯体(1)~(6)の異なる状態における励起スペクトル、発光スペクトル、発光寿命及び発光量子収率をそれぞれテストした。直径142mmの積分球を利用してサンプルの発光量子収率を測定した。結果の詳細は表1を参照する。
【0055】
【0056】
実施例13:錯体(1)~(5)による電界発光素子の製造と性能試験
実施例6~10で製造したリン光錯体(1)~(5)をそれぞれ発光材料として6%重量パーセントでmCP(63%):OXD-7(32%)混合ホスト材料にドープしたものを発光層として有機発光ダイオードを製造し、素子構造はITO/m-PEDOT:PSS(20 nm)/62%のmCP:32%のOXD-7:6%wtの錯体(50 nm)/Bmpypb(50 nm)/LiF(1 nm)/Al(100 nm)であった。
【0057】
まずそれぞれガラス用洗剤、アセトン、イソプロパノール、脱イオン水を利用してITO基板を洗浄し、次にUV-オゾンを用いて15分間処理した。PSS-Na水溶液(15mg/mL)とPEDOT:PSSを5:1(体積比)で混合し、濾過してスピンコーターにおいて4000回転/分でITOにスピンコートし、120℃で15分間乾燥して厚さ20nmの正孔輸送層を得た。次にスピンコーターを利用して濾過後の濃度5mg/mLの62%のmCP:32%のOXD-7:6%の錯体(重量パーセント)のジクロロメタン溶液を2100回転/分でPEDOT:PSS-Na薄膜にスピンコートして厚さ50nmの発光層を形成させた。続いて、ITO基板を真空度4×10-4Pa以上の真空チャンバーに入れて、厚さ50nmのBmPyPb電子輸送層、厚さ1nmのLiF電子注入層、及び厚さ100nmのAlを素子のカソードとしてこの順に熱蒸着した。
【0058】
発光ダイオード素子性能試験は室温下で乾燥した空気環境において行われた。電界発光性能パラメータは電界発光波長(λEL)、ターンオン電圧(Von)、最大輝度(Lmax)、最大電流効率(CEmax)、最大電力効率(PEmax)、最大外部量子効率(EQEmax)を含み、表2にまとめた。
【0059】
【0060】
上記では本発明の実施形態について説明した。ただし、本発明は上記の実施形態に限定されない。本発明の趣旨を逸脱せず行った修正、同等な置き換え、改良などは、いずれも本発明の請求範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】実施例13の電界発光素子の構造模式図及びその一部の部品を構成する有機材料の化学構造である。
【国際調査報告】