(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-24
(54)【発明の名称】鋭いエッジを生産するためのシステム、組成物、および方法
(51)【国際特許分類】
B21B 1/22 20060101AFI20221116BHJP
【FI】
B21B1/22 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517433
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(85)【翻訳文提出日】2022-04-12
(86)【国際出願番号】 US2020051519
(87)【国際公開番号】W WO2021055769
(87)【国際公開日】2021-03-25
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ロショーリ・ジャンルカ
(72)【発明者】
【氏名】タサン・セマル・セム
【テーマコード(参考)】
4E002
【Fターム(参考)】
4E002AA07
4E002AA08
4E002BA01
4E002BB01
4E002BB20
(57)【要約】
本開示は、高い強度および硬度を有する鋭いエッジを備えた物体を製造するためのシステム、組成物、および方法に関する。鋭いエッジを形成するために、物体は、圧縮力を受けることができ、圧縮力は、物体を局所的に変形させて鋭いエッジを生成する。いくつかの実施形態では、材料を変形させるための1つ以上のテーパー角度を有する1つ以上の対向したテーパーロールのシステムに材料を通すことによって、変形が生じ得る。テーパーロールは、材料を回転させ、次の対向した対のテーパーロールまで下流に材料を駆動することができる。テーパーロールは、材料のミクロ構造を変化させることによって材料を変形させ、所定の場所において材料の粒子を圧縮して、より均質なミクロ構造を作り出す。結果として生じるミクロ構造の局所的な改質は、材料の硬度および強度だけでなく均質性を増加させ、材料の亀裂および/またはチッピングを防止する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変形材料であって、
ある長さの金属材料を含み、前記長さの金属材料が、少なくともその変形部分に実質的に均質なミクロ構造を有し、前記実質的に均質なミクロ構造が、前記長さの金属材料の非変形部分の1つ以上の中の粒子および変形前の前記変形部分の中の粒子よりもサイズが小さい、実質的に均等なサイズの複数の変形粒子を有する、変形材料。
【請求項2】
前記長さの金属材料が、純鉄、鋼、ステンレス鋼、銅、マルテンサイト、クロム、炭化物、窒化物、金属ガラス、ポリマー、パーライト、セメンタイト、マルテンサイト鋼、アルミニウム、パーライト鋼、チタン、ニッケル、コバルト、ハイドロキシアパタイト、銀、または金のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の変形材料。
【請求項3】
前記複数の変形粒子のサイズが、おおよそ、前記変形粒子の平均粒径の約75%から前記変形粒子の平均粒径の約125%の範囲内である、請求項1に記載の変形材料。
【請求項4】
前記変形粒子のサイズが、前記非変形部分の前記粒子のサイズの約25%である、請求項1に記載の変形材料。
【請求項5】
前記変形粒子のサイズが、変形前の前記粒子のサイズの約25%である、請求項1に記載の変形材料。
【請求項6】
鋭いエッジを製造するためのシステムであって、
第1の対の対向したテーパーロールであって、回転してそれらの間に配置された材料を下流に駆動するように構成されており、前記材料が下流に駆動されている間に前記材料を変形させるように構成された1つ以上の特徴を有する、第1の対の対向したテーパーロールと、
前記第1の対の対向したテーパーロールの横方向下流に配置され、回転して、前記第1の対の対向したテーパーロールから受け取った材料を下流に駆動するように構成された、少なくとも1つの追加の対の対向したテーパーロールと、
を含み、
前記第1の対の対向したテーパーロールの各ロールが、幾分円筒形の構成を含み、前記幾分円筒形の構成が、第1の端部と、第2の端部と、頂部と、を含み、各ロールの対向した表面が、前記第1の端部と前記頂部との間および前記第2の端部と前記頂部との間でテーパー状にされており、
前記第1の対の対向したテーパーロールの各ロールの対向した表面に沿った頂部から測定した、前記第1の対の対向したテーパーロールの各ロール間の距離が、前記少なくとも1つの追加の対の対向したテーパーロールの各ロールの対向した表面に沿った頂部から測定した、前記少なくとも1つの追加の対の対向したテーパーロールの各ロール間の距離よりも大きい、システム。
【請求項7】
前記1つ以上の特徴が、前記テーパーロールの前記頂部と、前記第1の端部および前記第2の端部のうちの1つ以上との間で前記テーパーロールの外側表面に沿って延びる第1のテーパー角度をさらに含み、前記テーパーロールの前記頂部および前記外側表面が、前記材料を変形させるために圧縮力を加えるように構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1のテーパー角度の値が、おおよそ、約3°~約60°の範囲内である、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1のテーパー角度の値が、おおよそ、約5°~約30°の範囲内である、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記テーパーロールが、前記第1のテーパー角度と、前記テーパーロールの前記第1の端部および前記第2の端部のうちの1つ以上との間に延びる第2のテーパー角度を含み、前記テーパー角度が、前記第1のテーパー角度の値とは異なる値を有する、請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの追加の対の対向したテーパーロールが、少なくとも五対の対向したテーパーロールを含み、各対が、互いから下流に配置され、前記少なくとも五対の対向したテーパーロールのうちのそれぞれの対の各ロール間の距離は、前記少なくとも五対の対向したテーパーロールのうちの後続の下流対ごとに減少する、請求項6に記載のシステム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの追加の対の対向したテーパーロールのうちの末端の対の対向したテーパーロールの各ロール間の距離が、事実上ゼロである、請求項6に記載のシステム。
【請求項13】
前記材料が、純鉄、鋼、ステンレス鋼、銅、マルテンサイト、クロム、炭化物、窒化物、金属ガラス、ポリマー、パーライト、セメンタイト、マルテンサイト鋼、アルミニウム、パーライト鋼、チタン、ニッケル、コバルト、ハイドロキシアパタイト、銀、または金のうちの1つ以上を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1の対の対向したテーパーロールの各ロールが、前記材料を下流に駆動するために、前記第1の対の対向したテーパーロールのうちの反対側のテーパーロールとは反対方向に回転する、請求項6に記載のシステム。
【請求項15】
前記材料の実質的にどの部分も変形中に除去されない、請求項6に記載のシステム。
【請求項16】
前記変形材料の質量が、変形前の前記材料の質量と実質的に同じである、請求項6に記載のシステム。
【請求項17】
前記第1の対の対向したテーパーロールのうちの少なくとも1つのロールが、複数のテーパーを含み、各テーパーが、複数のテーパー角度を有する、請求項6に記載のシステム。
【請求項18】
エッジを製造する方法であって、
第1の対の対向したテーパーロール間に、ある長さの金属材料を供給することと、
前記第1の対の対向したテーパーロールを回転させて、前記第1の対の対向したテーパーロールを通して、前記長さの金属材料を前進させることと、
を含み、
前記対の対向したテーパーロールが、前記長さの金属材料の両側に局所的変形を引き起こし、前記長さの金属材料が分割されて2つの金属片を形成し、各金属片が、局所的な変形領域を含む鋭いエッジを有する、方法。
【請求項19】
前記第1の対の対向したテーパーロールの横方向下流に配置された少なくとも1つの追加の対の対向したテーパーロールの間に、前記長さの金属材料を受容することと、
前記少なくとも1つの追加の対の対向したテーパーロールを回転させて、これを通して受容された前記長さの金属材料を下流に前進させることと、
をさらに含み、
前記追加の対の対向したテーパーロールは、前記長さの金属材料の両側にさらなる局所的変形を生じさせる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の対の対向したテーパーロールと、前記少なくとも1つの追加の対の対向したテーパーロールとを回転させて、それらを通して、前記長さの金属材料を横方向に前進させることにより、前記長さの金属材料に沿って2つの鏡面反射性のV字形ノッチを形成する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
第1のテーパー角度を含む、前記第1の対の対向したテーパーロールの頂部と第1の端部および第2の端部のうちの1つ以上との間の前記第1の対の対向したテーパーロールの外側表面の一部が、前記長さの金属材料に係合して、前記長さの金属材料の両側を変形させる、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記長さの金属材料を、前記長さの金属材料に沿った所定の場所で、前記所定の場所にエッジが形成されるように、前記第1の対の対向したテーパーロールに対して位置付けることをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記所定の場所の外側の前記長さの金属材料に沿って、実質的に局所的変形は生じない、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記長さの金属材料の実質的にどの部分も、変形中に除去されない、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
変形後の前記長さの金属材料の質量が、変形前の前記材料の質量と実質的に同じである、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記長さの金属材料が銅を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記長さの金属材料が、ステンレス鋼またはパーライト鋼のうちの1つ以上を含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本開示は、2019年9月18日に出願され、全体が参照により本明細書に組み込まれる、「Systems and Methods for Producing Sharp Edges」と題する米国仮出願第62/902,018号の優先権および利益を主張する。
【0002】
〔分野〕
本開示は、鋭いエッジを有する物体を製造するためのシステム、組成物、および方法に関し、さらに具体的には、材料の組成および/または質量を実質的に変化させることなく、材料の所望の場所に鋭いエッジを形成するための材料の局所的変形に関する。
【0003】
〔背景〕
様々な鋭さを有する材料の製造は、何千年もの間、人間によって行われてきた。狩猟に使われた槍から、刀剣、斧、針、現代の画鋲に至るまで、材料は、生活の質を高めるために日常的な物体を切断したり、突き刺したり、縛ったりする能力を持つツールとして使用されるように設計されてきた。ここ数世紀の間に、包丁、ハサミ、カミソリ刃などの革新が、金属などの材料の能力を利用して、料理、仕事、身繕いの方法を変化させてきた。しかしながら、世界の人口が増加し続ける中で、このようなツールの製造に対する需要が高まり、それに応じて、環境への影響、およびこれらのツールの製造に費やされるエネルギーが増加している。これらの材料の寿命を延ばすことは、環境に好影響を与える可能性がある。例えば、カミソリ刃に関しては、1990年に、環境保護局(EPA)は、世界中で年間約20億枚のカミソリ刃が廃棄されていると推定している。30年後、カミソリ刃の長寿命化に関してはほとんど進展がなかった。最先端のテクノロジーは髭剃りの息苦しさ(closeness)を改善してきたが、カミソリ刃が鈍くなることは、依然として業界、ひいては環境を悩ませている。
【0004】
鋭いエッジを生産するための既存の方法には、いくつかの欠点がある。従来の方法は、材料を剥離して、切断または貫通に使用され得る楔形状を形成することを含む。特にカミソリ刃に関して、鋭いエッジを形成するためのこの種の最も一般的な製造方法は、「ホーニング」と呼ばれるプロセスを含む。ホーニングでは、出発材料はストリップまたはプレートの形態で始まり、所望のミクロ構造および硬度が得られるまで熱処理される。次に、研磨ホイールを使用して特定の場所から材料を除去し、楔外形を形成する。不均一な露出時間、および材料を構成するミクロ構造の不一致により、ホーニングされた材料は、しばしば不均一なエッジを有し、これは、頻繁かつ規則的な応力および歪みにさらされると、時間の経過とともに摩損することがある。例えば、ホーニングされた材料の不均一なエッジと繰り返し接触すると、材料全体に伝播する亀裂およびチッピングを生じ、数回の使用後に材料を鈍くし、非効率にし得る。ホーニング処置はまた、熱処理および研磨を行うために大量のエネルギーを必要とし、除去された材料がしばしば廃棄されるので、しばしば無駄な材料を結果として生じる。
【0005】
したがって、亀裂および/またはチッピングの影響を受けにくい一方で、高い強度および硬度を有する鋭いエッジを生産するためのシステム、組成物および方法が必要とされている。
【0006】
〔概要〕
本出願は、亀裂および/またはチッピングに耐性のある鋭いエッジを有する物体を製造するためのシステム、組成物、および方法を対象とする。少なくともいくつかの例では、材料は、先端部において重塑性変形(severe plastic deformation)を受け、高い強度および硬度を有する鋭いエッジを可能にする。材料の変形は、材料を局所的に変形させて鋭いエッジを生産する1つ以上のテーパーロールのシステムに材料を通すことによって生じ得る。テーパーロールは、材料に圧縮力を加えて材料をその所望の場所で変形させる円筒形の本体を含むことができる。テーパーロールは、材料を変形させるための1つ以上のテーパー角度を有することができる。テーパーロールは、対向する対をなして位置付けられ得、材料は、各対のロール間に受容され、ロールは、それらの対向する表面上で材料に接触する。テーパーロールは、回転して材料を回転方向に駆動するように構成され得る。いくつかの実施形態では、システムは、材料を変形させる、複数対のテーパーロールを含むことができる。このような実施形態では、各対のテーパーロールは互いの下流に位置付けられ得、上流の対のロールの回転が、材料を下流の対のロールまで駆動する。いくつかの実施形態では、最後の一対または最後の複数対のロールのテーパー角度は、最初の一対または最初の複数対のロールのテーパー角度とは異なり、2つの側における可能な「分離」を提供し、かつ/または鋭いエッジのまさに先端部において特定の角度を与えることができる。
【0007】
テーパーロールの使用は、鋭いエッジでの重塑性変形を局所化して、セメンタイト溶解を誘発し、必要な場合には強い均質材料を得ることができる。例えば、変形前の材料のミクロ構造は、個々の粒子の間(粒子境界)に空間または空隙を有して材料全体に散在する、様々なサイズおよび硬度の不均質な粒子から構成される。これらの空間は、材料の全体的な構造の弱さをもたらし、これは、応力が加えられると、粒子を空間内に変位させ、材料内に亀裂を形成させ、したがって鋭いエッジに欠け目を生じさせ得る。テーパーロールとの接触は、所定の場所における粒子をさらに小さなサイズに圧縮し(粒子微細化)、それらが空間を満たし、より均質なミクロ構造を生成することを可能にする。このプロセスは、結果として得られるミクロ構造の均質性ならびに材料の硬度および強度の両方を増加させ、材料の亀裂および/またはチッピングを防止する。
【0008】
変形材料の1つの例示的な実施形態は、ある長さの金属材料を含み、その長さの金属材料は、その少なくとも変形部分に実質的に均質なミクロ構造を有し、この実質的に均質なミクロ構造は、その長さの金属材料の非変形部分の1つ以上の中の粒子および変形前の変形部分の中の粒子よりもサイズが小さい、実質的に均等なサイズの複数の変形粒子を有する。
【0009】
その長さの金属材料は、純鉄、鋼、ステンレス鋼、銅、マルテンサイト、クロム、炭化物、窒化物、金属ガラス、ポリマー、パーライト、セメンタイト、マルテンサイト鋼、アルミニウム、パーライト鋼、チタン、ニッケル、コバルト、ハイドロキシアパタイト、銀、または金のうちの1つ以上を含むことができる。複数の変形粒子のサイズは、おおよそ、変形粒子の平均粒径の約75%から変形粒子の平均粒径の約125%の範囲内とすることができる。いくつかの実施形態において、変形粒子のサイズは、非変形部分における粒子のサイズの約25%であり得る。代替的な実施形態では、変形粒子のサイズは、変形前の粒子のサイズの約25%であり得る。
【0010】
鋭いエッジを製造するためのシステムの1つの例示的な実施形態は、第1の対の対向したテーパーロールと、第1の対の対向したテーパーロールの横方向下流に配置された少なくとも1つの追加の対の対向したテーパーロールと、を含む。第1の対の対向したテーパーロールは、回転してそれらの間に配置された材料を下流に駆動するように構成される。第1の対の対向したテーパーロールはまた、材料が下流に駆動されている間に材料を変形させるように構成された1つ以上の特徴を有する。少なくとも1つの追加の対の対向したテーパーロールは、回転して、第1の対の対向したテーパーロールから受け取った材料を下流に駆動するように構成される。第1の対の対向したテーパーロールの各ロールは、幾分円筒形の構成を含み、これは、第1の端部と、第2の端部と、頂部と、を含み、各ロールの対向した表面は、第1の端部と頂部との間および第2の端部と頂部との間でテーパー状にされている。第1の対の対向したテーパーロールの各ロールの対向した表面に沿った頂部から測定した、第1の対の対向したテーパーロールの各ロール間の距離は、少なくとも1つの追加の対の対向したテーパーロールの各ロールの対向した表面に沿った頂部から測定した、少なくとも1つの追加の対の対向したテーパーロールの各ロール間の距離よりも大きい。
【0011】
1つ以上の特徴は、テーパーロールの頂部と、第1の端部および第2の端部のうちの1つ以上との間でテーパーロールの外側表面に沿って延びる第1のテーパー角度を含むことができる。さらに、テーパーロールの頂部および外側表面は、材料を変形させるために圧縮力を加えるように構成され得る。いくつかの実施形態では、テーパーロールは、第1のテーパー角度と、テーパーロールの第1の端部および第2の端部のうちの1つ以上との間に延びる第2のテーパー角度を含むことができる。このテーパー角度は、第1のテーパー角度の値とは異なる値を有することができる。第1のテーパー角度の値は、おおよそ、約3°~約60°の範囲内とすることができる。いくつかの実施形態では、第1のテーパー角度の値は、おおよそ、約5°~約30°の範囲内とすることができる。
【0012】
システムの少なくとも1つの追加の対の対向したテーパーロールは、少なくとも五対の対向したテーパーロールを含むことができる。少なくともいくつかのそのような実施形態では、各対は、互いから下流に配置され得、少なくとも五対の対向したテーパーロールのうちのそれぞれの対の各ロール間の距離は、少なくとも五対の対向したテーパーロールのうちの後続の下流対ごとに減少することができる。第1の対の対向したテーパーロールの各ロールは、材料を下流に駆動するために、第1の対の対向したテーパーロールのうちの反対側のテーパーロールとは反対方向に回転することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加の対の対向したテーパーロールのうちの末端の対の対向したテーパーロールの各ロール間の距離は、事実上ゼロであり得る。いくつかの実施形態では、第1の対の対向したテーパーロールの少なくとも1つのロールは、複数のテーパーを含むことができ、各テーパーは複数のテーパー角度を有する。
【0013】
システムは、材料の実質的にどの部分も変形中に除去されないようにすることができる。いくつかの実施形態では、変形材料の質量は、変形前の材料の質量と実質的に同じであり得る。材料は、純鉄、鋼、ステンレス鋼、銅、マルテンサイト、クロム、炭化物、窒化物、金属ガラス、ポリマー、パーライト、セメンタイト、マルテンサイト鋼、アルミニウム、パーライト鋼、チタン、ニッケル、コバルト、ハイドロキシアパタイト、銀、または金のうちの1つ以上を含むことができる。
【0014】
エッジを製造する1つの例示的な方法は、第1の対の対向したテーパーロール間に、ある長さの金属材料を供給することと、第1の対の対向したテーパーロールを回転させて、第1の対の対向したテーパーロールを通して、その長さの金属材料を前進させることと、を含む。この対の対向したテーパーロールは、その長さの金属材料の両側に局所的変形を引き起こす。さらに、その長さの金属材料が分割されて2つの金属片を形成し、各金属片は、局所的な変形領域を含む鋭いエッジを有する。
【0015】
いくつかの実施形態において、本方法は、第1の対の対向したテーパーロールの横方向下流に配置された少なくとも1つの追加の対の対向したテーパーロールの間に、その長さの金属材料を受容することをさらに含み得る。このような実施形態では、本方法は、追加の対の対向したテーパーロールを回転させて、ロールを通して受容された、その長さの金属材料を下流に前進させることをさらに含むことができる。追加の対の対向したテーパーロールは、その長さの金属材料の両側にさらなる局所的変形を生じさせることができる。第1の対の対向したテーパーロールと、追加の対の対向したテーパーロールとを回転させて、それらの対を通して、その長さの金属材料を横方向に前進させることにより、その長さの金属材料に沿って2つの鏡面反射性のV字形ノッチを形成することができる。この方法は、その長さの金属材料を、その長さの金属材料に沿った所定の場所で、その所定の場所にエッジが形成されるように、第1の対の対向したテーパーロールに対して位置付けることをさらに含み得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、第1のテーパー角度は、第1の対の対向したテーパーロールの頂部と、第1の端部および第2の端部のうちの1つ以上との間で、第1の対の対向したテーパーロールの外側表面に沿って延びることができる。第1のテーパー角度を含む外側表面の一部は、その長さの金属材料に係合して、その長さの金属材料の両側を変形させることができる。少なくともいくつかのそのような実施形態では、所定の場所の外側では、その長さの金属材料に沿って、実質的に局所的変形は生じない。
【0017】
いくつかの実施形態において、その長さの金属材料の実質的にどの部分も、変形中に除去することができない。代替的または追加的に、変形後のその長さの金属材料の質量は、変形前の材料の質量と実質的に同じであり得る。いくつかの実施形態において、その長さの金属材料は、ステンレス鋼またはパーライト鋼のうちの1つ以上を含むことができる。いくつかの実施形態において、その長さの金属材料は、銅を含むことができる。
【0018】
本開示は、添付図面と共に理解される以下の詳細な説明からより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】従来のカミソリ刃の、表面の硬度の変動を示す拡大概略側面図である。
【
図2】金属を変形させるためにまさに今開示されるシステムにおいて使用されるテーパーロールの例示的な一実施形態の斜視図である。
【
図3】
図2の複数のテーパーロールを利用する連続テーパーロールシステムの概略側面図である。
【
図4】材料を間で変形させる一組のテーパーロールの例示的な一実施形態の概略斜視図である。
【
図5A】変形前の
図4の材料の一部の断面図の走査型電子顕微鏡画像である。
【
図5B】変形後の
図4の材料の一部の断面図の走査型電子顕微鏡画像であり、その中に形成されたノッチを示す。
【
図6A】テーパーロールの例示的な一実施形態の概略正面図であり、テーパーロールはテーパー角度を有する。
【
図6B】テーパーロールの別の例示的な実施形態の概略正面図であり、テーパーロールはテーパー角度を有する。
【
図6C】テーパーロールのさらに別の例示的な実施形態の概略正面図であり、テーパーロールは2つのテーパー角度を有する。
【
図6D】テーパーロールの別の例示的な実施形態の概略正面図であり、テーパーロールは三組のテーパーを有する。
【
図8】変形後の
図4の材料の一部の断面図の走査型電子顕微鏡画像であり、材料内の硬度の変動を示す。
【0020】
〔詳細な説明〕
ここで、本明細書に開示されたシステム、デバイス、および方法の構造、機能、製造、および使用の原理を全体的な理解を提供するために、ある例示的な実施形態について説明する。これらの実施形態の1つ以上の実施例を添付図面に示す。当業者であれば、本明細書に具体的に記載され、添付図面に示されるシステム、組成物、および方法が、非限定的な例示的な実施形態であること、ならびに、本開示の範囲が、特許請求の範囲によってのみ定義されることを理解するであろう。例示的な一実施形態に関連して図示または説明された特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。そのような改変および変形は、本開示の範囲内に含まれることが意図される。
【0021】
本開示が、開示された組成物、システム、方法などの構成要素および/またはプロセスに関する種々の用語を含む限りにおいて、当業者は、特許請求の範囲、本開示、および当業者の知識を考慮して、かかる用語が、かかる構成要素および/またはプロセスの単なる例であること、ならびに、他の構成要素、設計、プロセス、および/またはアクションが可能であることを理解するであろう。非限定的な例として、当業者は、本開示に照らして、任意の数のテーパーロールまたはドラム対が使用され得、「ロール」および「ドラム」という用語が、本開示内で交換可能に使用されることを理解するであろう。さらに、当業者は、本開示を考慮すると、「空間」および「空隙」という用語が、本開示内で交換可能に使用されて、材料のミクロ構造内の粒子間のギャップを指すことができることを理解するであろう。さらに、本開示におけるシステム、組成物、および方法は、カミソリ刃のための鋭いエッジの製造に関して議論されるが、当業者は、本開示の鋭いエッジが、他の分野および/または鋭いエッジが望まれる他の目的のために使用され得ることを認識するであろう。例えば、カミソリ刃に加えて、本開示から得られる鋭いエッジは、様々な構成、サイズ、形状などを有することができ、いくつかある用途の中でも特に、メス、ナイフ、戦闘ナイフ、および、砂糖精製、塩精製、プラスチックの切断、木材の切断、金属の切断、および岩の切断のための切断ツールを含むがこれらに限定されない、多くの異なる物体のための鋭いエッジの作製に関連して利用され得る。
【0022】
本開示は、一般に、鋭いエッジを有する材料を製造するためのシステム、組成物、および方法に関する。この材料は、その先端部において重塑性変形を受けて、高い強度および硬度を有する鋭いエッジがその上に形成されることを可能にすることができる。変形は、不均質な微粒子に圧縮力を加えてそれらの間の粒子境界を狭くすることによって材料のミクロ構造を変化させ、それによって、より均質なミクロ構造を生成することができる。いくつかの実施形態において、均質性の増加は、材料を除去したり、または別様に材料の質量を実質的に変化させたりすることなく、達成され得る。例えば、エッジにおける変形は、材料の粒状ミクロ構造内のギャップのサイズを減少させ、これにより、変形材料は、改善された硬度および耐亀裂性を有することができる。例示的な実施形態では、材料は、圧力を加えて材料を局所的に変形させるために、1つ以上の対の対向したテーパーロールを通過することができる。テーパーロールは、回転し、材料を回転方向に駆動して、複数対の対向したテーパーロールの間に材料を通すように構成され得る。変形材料は、カミソリ、メスなどの鋭いエッジとして使用され得る、変形材料内に形成された少なくとも1つのノッチを有し得る。
【0023】
上述したように、鋭いエッジを作るための従来のプロセスは、金属材料をホーニングすることを含み、これは、金属の一部を除去することによって金属の質量を減少させる。ホーニングでは、刃の不均質性は変化せず、これでは、硬度または亀裂の発生しやすさは改善されない。さらに、ホーニング処置は、材料の形状を楔へと改変するが、刃を構成する材料は、熱処理を通じて生産されたものと同じ材料、通常は、炭化物に富むマルテンサイト系ステンレス鋼である。場合によっては、金属をホーニングすると過度に薄くなる場合があり、これにより材料は亀裂が入りやすくなることがある。
【0024】
当業者は、従来のカミソリ刃の先端部の鋼が高度に不均質であり得ることを認識するであろう。例えば、従来のカミソリ刃は、耐摩耗性を改善するための硬質ダイヤモンド様炭素コーティングおよび摩擦を低減するためのテフロンコーティングを含む、いくつかの層でコーティングされた先端部を有する。これらのカミソリ刃は、切断に使用される鋭いエッジを形成するために楔外形へとホーニングされたマルテンサイト系ステンレス鋼を使用する。しかし、マルテンサイトの場合、機械的性質は点ごとに変化し得る。さらに、鋼は高い平均硬度を有するが、強度および/または硬度は、存在するいくつかのミクロ構造特徴、例えば、材料内に含有されるマルテンサイト、残留オーステナイト、および/または炭化物に応じて、材料内の領域ごとに変化する。これらの硬度および/または強度の変動は、刃の先端部における変動につながる可能性があり、これは、これらの鋭いエッジを意図された目的に対してあまり効果的でなくする隆起につながる可能性がある。
【0025】
耐摩耗性を向上させるためのこれらの措置、また、鋼が人間の毛髪よりも50倍硬いという事実にもかかわらず、カミソリは、廃棄および交換が必要になるまでに数週間を超えて持ちこたえることはめったにない。毛髪と鋼は、チッピングを伴う複雑な相互作用を有する。例えば、髭剃りまたは他の身繕い手順の間に、従来の髭剃り方法で使用される場合に一般的であるように、刃が毛髪に対してある角度で傾斜している場合、毛髪は、繰り返し使用した後にチッピングにつながる面外応力をカミソリに及ぼす。
【0026】
図1は、従来のカミソリ刃10のエッジの不均質性を示す。図示のように、従来のカミソリ刃10は、異なる硬度の複数の領域12を有する材料で構成されている。例えば、刃10の領域12は、「軟質」、「半硬質」、「超硬質」などと特徴付けられ得る。当業者であれば、従来のカミソリに使用される材料の場合、「軟質」領域Aの硬度の範囲はおおよそ、約4,000ニュートン/平方ミリメートル~約7,000ニュートン/平方ミリメートルの範囲内であり得、「半硬質」領域Bの硬度の範囲はおおよそ、約7,000ニュートン/平方ミリメートル~約10,000ニュートン/平方ミリメートルの範囲内であり得、「超硬質」領域Cの硬度の範囲はおおよそ、約10,000ニュートン/平方ミリメートル~約15,000ニュートン/平方ミリメートルの範囲内であり得ることを認識するであろう。
【0027】
従来のカミソリ刃10の材料は、典型的には非常に不均質である。図示のように、材料の表面は、使用前に隆起でまだらになっている。材料は、材料全体にランダムに散在する領域A、B、およびCを有することができ、領域A、B、およびCのそれぞれは、一貫性なしに領域A、B、およびCのうちの別の領域と境界を接する。毛髪または別の材料が様々な硬度の領域間の多くの境界の1つに接触すると、分裂または亀裂が発生し、材料全体に伝播する可能性がある。例えば、カミソリ刃10の場合、軟質領域Aと半硬質領域B、または軟質領域Aと超硬質領域Cとの境界14で軟質領域Aに毛髪が押し付けられると、境界14に応力が加わる。境界14に繰り返し応力が加わると、刃10内に亀裂が形成され得る。当業者は、領域Aと領域B、領域Aと領域C、および領域Bと領域Cとの境界14など、硬度の異なる領域間の境界に亀裂がより形成されやすいことを認識するであろう。
図1に示されるように、刃10の不均質な性質のために、エッジは、材料がホーニングされても不均質なままである。さらに、領域A、B、およびCは、
図1に示されるように、刃10全体に散在しているので、毛髪および他の材料が領域A、B、Cの1つ以上に接触するとき、刃は、全体にわたって亀裂の形成および伝播を受けやすい。上述したように、特に半径長さスケール(radius length scale)で先端部における材料の不均質性を減少させることは、刃の品質を改善し、刃の破断および/または亀裂の可能性を減少させることができる。
【0028】
図2は、材料102を変形させるために使用され得るテーパーロールまたはドラム100の例示的な実施形態を示す。テーパーロール100は、材料102の表面104に当接して、重塑性変形によってその表面104を局所的に変形させる力を加えるように構成され得る。図示のように、テーパーロール100は、実質的に円筒形の外側本体106を含むことができ、これに沿って材料102が移動することができる。当業者であれば、材料102がロール上を通過する際にロール100が回転して、材料102に実質的に均等な力を加えることができることを認識するであろう。テーパーロール100は、窒化物もしくは炭化タングステンなどの炭化物を含むがこれらに限定されない、鋼、ステンレス鋼、および/またはセラミック材料で作られ得る。
【0029】
ロール100は、例えば材料が一組のロールの間を通過するように対もしくは組で、かつ/または、所望の刃パラメータが達成されるまで材料を変形させるためにテーパーロールが順次および/もしくは例えば次々に横方向に整列されたシステムにおいて、使用され得る。
図3は、鋭いエッジを製造するそのようなシステム110の例示的な実施形態を示す。図示のように、システム110は、連続的に位置付けられた対または組のテーパーロール100を使用して、それらの間で駆動された材料102を変形させることができる。システム110は、材料102を変形させるために、例えば組み立てライン形態で、横方向に位置付けられた1つ以上の対のテーパーロール100を有することができる。図示のように、一対のテーパーロールの各ロール100は、材料102がそれらの間に位置付けられるように材料102の反対の側に位置付けられ、各ロール100は材料102の反対の表面104a、104bに接触する。テーパーロール100は、回転して、材料102を下流対のテーパーロールまで下流に駆動するかまたは移動させるように構成され得る。一対のロールの各ロール100は、それぞれ反対の方向に回転して、材料102を次の対の対向したロール100まで下流に駆動することができる。
【0030】
各対の下流ロール100は、材料102が下流に駆動されるときに、材料102に力を加えて材料102を局所的に変形させる。図示のように、システム110の第1の対の対向したロール100の間に配置された材料102は、材料102がシステム110を通って移動するにつれて徐々に減少する厚さTを有する。さらに、各下流対の対向したロール100間の距離は、それらの間に材料のより小さな厚さTを収容するように、減少させることができる。例えば、図示された実施形態では、第1の対の対向したテーパーロールの各ロール100の対向した表面106に沿った頂部120から測定される、第1の対の対向したテーパーロールにおけるロール100間の距離D1は、第1の対の対向したテーパーロールの下流に位置する少なくとも1つの追加の対の対向したテーパーロール100の各ロールの対向した表面に沿った頂部から測定される、少なくとも1つの追加の対の対向したテーパーロールの各ロール100間の距離D2よりも大きい。図示の実施形態では、後続の各下流対の対向したテーパーロール間の距離、例えばD3、D4、D5、D6は、材料がシステム110を通って下流に移動するにつれて減少する。当業者であれば、ロール間の距離は頂部120から測定されるものとして記載されているが、ロール100間の距離は、任意の対応する点、例えばロールの中心、ロールの上部表面または底部表面などの間で測定され得ることを認識するであろう。
【0031】
さらに、上記の実施形態は、六対の対向したテーパーロールを含むが、当業者は、システム110が任意の数の対向したテーパーロール100を含み得ることを認識するであろう。例えば、他の例では、七対、八対、九対、十対、またはそれを超える(もしくはそれ未満の)対が存在してもよい。複数対の対向したテーパーロールが使用される実施形態では、各対の対向したテーパーロールは、過剰な力による材料102の急激な亀裂を防止するために、材料に緩やかな変形を与えることができることが理解されよう。さらに、当業者は、本開示を考慮すると、1つの対の中の2つのロール間の距離、ならびに複数対のロールのラインにおける連続する対のロール間(すなわち、第1の対のロールから下流にある第2の対のロール)の距離は、1つの対の前および後の対間の距離、材料の所望の構成、ならびにその対の各ロールの構成を含むがこれらに限定されない様々な要因に基づいて、変更されるか、または別様に調整され得ることを理解するであろう。末端の対のロール100tの間の距離は、例えば、実質的にゼロであり得、これは、ロールが接触しているか、またはほとんど接触していてよく(例えば、互いの1mm以内にある)、それを通過する材料が2つ以上の別々の部分に分離し得ることを意味する。末端の対のロールの間の距離は、2つの刃がロール自体によって分割されるか(例えば、ロールが接触しているとき、ロールは材料を2つの刃に分割することができる)、または変形後に分割されるか(例えば、末端の対のロール間の距離が、刃を分割しないように十分離れている場合)に影響を与える可能性がある。
【0032】
テーパーロール100は、ロール100がどの方向に回転するか、または材料102が駆動される方向を示す、1つ以上のインジケータ130を含むことができる。例えば、
図3に示すように、ロール100は、回転方向を示すラベルまたは画像をその上に含むことができる。いくつかの実施形態では、各対のロールは、ある方向を指す矢印132の第1の画像を含むことができる。例えば、一対のロールの下側ロール100は時計回りの方向を指すことができ、一方、その一対のロールの上側ロール100は反時計回りの方向を指して、材料が左から右に移動していることを示すことができる。当業者であれば、右から左に移動する材料については、一対のロールの下側ロール100は反時計回りの方向を指すことができ、一方、その一対のロールの上側ロール100は時計回りの方向を指すことができることを認識するであろう。例えば「時計回りに回転する」と書いてあるテキストラベル、他の図面などといった他の画像が、代わりにまたは追加して使用され得ることが理解されるであろう。ラベルは、一対のロールの1つのロール100上にのみ現れてもよく、システム100内の1つのロール上に現れてもよく、全く現れなくてもよいことも理解されるであろう。
【0033】
一対の対向したロールにおける各ロール100は、同じ構成を有するものとして示されているが、対向した一対のテーパーロールにおける各ロールのサイズ、形状、材料などのような特性は、異なっていてよいことが理解されよう。同様に、追加の対の対向したテーパーロールにおける各ロールのサイズ、形状、材料などは、互いに、第1の対のテーパーロールにおけるロールと、かつ/または、後続の対の対向したテーパーロールにおけるロールと、異なっていてよい。まさに今開示されるシステムで使用され得るロール100の様々な特性は、以下でさらに詳細に論じる。
【0034】
まさに今開示されるシステム110を使用して変形され得る材料102のいくつかの非限定的な例としては、純鉄、鋼、ステンレス鋼、銅、マルテンサイト、クロム、炭化物、窒化物、金属ガラス、ポリマー、パーライト、セメンタイト、マルテンサイト鋼、アルミニウム、パーライト鋼、チタン、ニッケル、コバルト、ハイドロキシアパタイト、銀、および/または金、ならびにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。使用される材料のタイプは、少なくとも部分的に、材料102の意図された目的および/または鋭さに依存し得る。例えば、メスに使用される鋭いエッジでは、外科処置中に人体に受容されるのに適した他の生体適合性材料を考慮したい場合がある。さらに、いくつかの実施形態において、重塑性変形は、パーライト鋼におけるセメンタイト溶解を誘発し、また、M23C6炭化物を、マトリックス中の原子の溶解によりM6Cに変態させることができる。そのような実施形態では、応力レベルが増加すると、炭化物の完全な溶解が達成され得る。
【0035】
テーパーロール100との接触から生じる材料102の変形は、ロール100間に配置された材料102の一部を変形させる一対のロール100を示す
図4においてより詳細に見られる。上述のシステム110を介した材料102の変形は、以下に示すように、初期材料102を、矩形断面を有するものから「砂時計断面」へと累積的に変形させることができる。材料102の変形は、材料102が一対の対向したロール100の間に配置され、矢印の方向へと下流に駆動されるときに生じる。材料102に対するテーパーロール100の向きは、中央領域134、例えば2つのロール100と接触している領域に、変形を局所化することができ、一方、残りの表面104は、典型的には、いかなる意味でも改変されず、したがって、出発材料の特性を保持する。いくつかの実施形態において、材料に対するロール100の向きは、例えば材料102の表面に沿った変形の所望の位置に基づいて、変化し得ることが理解されよう。前述のように、変形中に材料は除去されない。むしろ、材料102は、材料102のミクロ構造を圧縮することによって局所的に変形されて最終的な楔形状を形成する。変形後、材料102は、
図3に関して上述したように、さらなる変形のために、次の対の対向したテーパーロール100まで下流に駆動され得る。
【0036】
図5Aおよび
図5Bは、
図4のテーパーロール100による変形の前および後の材料102の断面図を示す。
図5Aに示すように、材料102のミクロ構造は、様々なサイズおよび形状の大きな粒子140から構成される。粒子140のサイズにより、それらは材料102全体に分散され、それらの間に1つ以上の空間142がある。個々の粒子140の形状が不規則であるため、2つ以上の粒子140の間の粒子境界144が不均一となり、それにより、これらの粒子境界144に空間142が形成される。さらに、
図1に関して上述したように、これらの材料を構成する粒子140は、硬度が異なり得る。これらの粒子境界144での応力は、特定の角度で実施されると、粒子境界144に不均一な力を加え、境界144での粒子140の摩擦および相対運動を引き起こす。
【0037】
図5Bは、材料の遠位端部102dにおいてテーパーロール100によって局所的変形を受けた材料102の例示的な実施形態である。図示のように、遠位端部102は、鋭いエッジを形成するノッチ150を含む微細化領域146を含む。図示のように、微細化領域146は、実質的に均質なミクロ構造を生成するためにそのサイズを縮小するように圧縮された変形粒子140’を含み、例えば微細化領域146における変形粒子140’は、実質的に均等なサイズである。図示のように、微細化領域146における変形粒子140’のサイズは、材料102の近位端部102pにおける未微細化領域よりもかなり小さい。さらに、微細化領域146における変形粒子140’のサイズは、材料102の長さにわたって減少し、変形粒子140’はノッチ150に近接して位置する。当業者であれば、実質的に均質なミクロ構造を有する材料102、および/または微細化領域146内の変形粒子140’が実質的に均等なサイズであることは、変形粒子140’中の各粒子のサイズが変形粒子の平均粒径の約75%であるか、または変形粒子140’中の各粒子のサイズが変形粒子の平均粒径の約90%であるか、または変形粒子140’中の各粒子のサイズが変形粒子の平均粒径の約95%であるか、または変形粒子140’中の各粒子のサイズが変形粒子の平均粒径の約100%であるか、または変形粒子140’中の各粒子のサイズが変形粒子の平均粒径の約110%であるか、または変形粒子140’中の各粒子のサイズが変形粒子の平均粒径の約115%であるか、または変形粒子140’中の各粒子のサイズが変形粒子の平均粒径の約125%であることを示唆していることを認識するであろう。さらに、変形粒子140’のサイズは、粒子140のサイズの約25%であり得るが、いくつかの実施形態では、変形粒子140’のサイズは、粒子140のサイズの約15%であり得るか、または変形粒子140’のサイズは、粒子140のサイズの約10%であり得るか、または変形粒子140’のサイズは、粒子140のサイズの約5%であり得るか、または変形粒子140’のサイズは、粒子140のサイズの約1%以下であり得る。
【0038】
変形粒子140’のサイズを小さくすることにより、粒子を一緒に密に詰め込んで以前の空間142を満たすことができ、それによって、変形粒子140’間のこれらの空間を実質的に排除する。変形粒子140’間に空間が存在しないことにより、材料102は、それらの間に優れた整列を示すことができ、中央領域134に、それらの巨視的な対応物よりも破損を生じにくい粒子境界144’を生成する。また、変形粒子140’の詰め込みは、少なくとも部分的には、微細化領域146の中の荷重を支持すけるミクロ構造の密度が高いことに起因して、微細化領域146内の材料102を強化することができる。例えば、材料102がパーライト鋼である実施形態では、微細化領域146の強化は、ホールペッチ効果(塑性変形中の相境界での転位の蓄積)、複合効果(ナノサイズのセメンタイト板とフェライト板との塑性共変形(plastic co-deformation))、界面強化(炭素含有量が2つの相間で徐々に変化する)、および/または固溶体強化(過飽和フェライト)を通じて生じ得る。図示された実施形態では、材料102の強度および硬度は、遠位端部102dのノッチ150の近くで最大であり、遠位端部102dから離れるにつれて徐々に減少する。
【0039】
当業者であれば、微細化領域146のサイズは、少なくとも部分的に、材料102に対するテーパーロール100の場所、ならびに材料102自体に基づいて、変化し得ることを認識するであろう。図示のように、微細化領域146は、テーパーロール100によって圧縮された材料102の部分に限定される。例えば、いくつかの実施形態では、微細化領域146は、約350μmの大きさにすることができるが、このサイズは、少なくとも部分的に、テーパーロール100のサイズ、システム110内のロールの数、材料102に対するロール100の配置などに基づいて、増減することができる。
【0040】
図示のようなノッチ150は鏡面反射性のV字形を有するが、いくつかの他の実施形態では、ノッチはU字形、楔形などであってもよい。ノッチ150のサイズおよび角度は、少なくとも部分的に、材料102の先端部の所望の鋭さに基づいて、改変され得る。例えば、材料102の先端部の鋭さを変化させるために、テーパーロール100におけるテーパーの角度を変化させることができる。
図6Aは、テーパーロール100をさらに詳細に示す。テーパーロール100の実質的に円筒形の本体106は、第1の端部156と第2の端部158との間に延びる外側表面154を含むことができる。いくつかの実施形態では、テーパーロール100は、本体106を形成するために互いに当接するように向けられた、円筒の2つのセクションに類似することができる。上述したように、本体106は、テーパーロール100のほぼ中央に位置付けられた頂部120までテーパー状になることができ、その結果、第1の端部156と第2の端部158との間の本体106のテーパーは、図示のように対称である。代替的に、いくつかの実施形態では、頂部120は、第2の端部158よりも第1の端部156に近接していてもよく、またはその逆であってもよい。テーパーロール100の外側表面154は、本体106に沿ってテーパーが形成されるように角度を付けることができる。図示のように、外側表面154は、頂部120から第1の端部156および第2の端部158に向かってテーパー角度αを有することができる。テーパー角度αは、材料102を変形させて、切断中にエッジにおいて高い抵抗を有する先端部を形成することができる。例えば、テーパー角度αはおおよそ、約5°~約30°の範囲内とすることができるが、いくつかの例では、テーパー角度は、さらに小さく、例えば約3°、またはそれより大きく、例えば少なくとも約60°とすることができる。より小さい角度では、一般的に、より鋭いエッジを提供することができ、より大きい角度では、一般的に、より大きな荷重が、刃に、したがって、刃が部品となる物体(例えば、刃を含むナイフ)に与えられることになり得る。例えば、小さい角度を使用して、カミソリ刃およびメスを製造する場合に望ましくなり得る、非常に鋭い刃を生産することができ、中程度の角度を使用して、切断中に高い荷重を支持する必要があるナイフに望ましくなり得る、鋭いが抵抗性でもあるエッジを生産することができ、大きい角度を使用して、商品、例えば、塩精製ツールおよび/もしくはプラスチックおよび木材用の切断ツールの製造に望ましくなり得る、非常に耐損傷性および耐久性がある切断ツールを生産することができる。いくつかの実施形態では、あらゆるすべての対のロールは、平坦なロールおよび本明細書で提供されるようなテーパー角度を有するテーパーロールを含むことができ、最終的な鋭い物体は、「V字形エッジ」ではなく「チゼルエッジ」を呈し、断面図における「チゼルエッジ」は、「V」の半分のように見えるように構成され、一方の側が実質的にまっすぐな垂直部分を(例えば、このように:|/)形成する。
【0041】
当業者であれば、選択されたテーパー角度、テーパーロール対の数、単一の対のロール間の距離、および連続した対のロールの間の距離に影響を与え得る要因のいくつかの非限定的な例は、エッジの所望の硬度および鋭さ、エッジが形成されている材料のタイプ(例えば、アルミニウム、鋼)、および/またはエッジの最終的な用途(すなわち、特に硬い材料、伝統的に切断が困難な材料などを切断するために使用されることになっている、形成されたエッジである)を含み得るが、これらに限定されないことを認識するであろう。
【0042】
図6Bは、テーパー状の中間部分170を含むロール100’を示す。図示のように、テーパーは、頂部120’から、頂部120’と第1の端部156’または第2の端部158’のいずれかとの間の距離よりも小さい本体106’の距離にわたって延びることができる。すなわち、テーパー角度αは、第1の端部156’および/または第2の端部158’の前で終了することができ、外側本体154’は、テーパーから第1の端部156’および第2の端部158’のそれぞれまで実質的に垂直に延びる。このような構成は、特定の領域(例えば刃の鋭いエッジがくる所)においてのみ局所的な変形を与えることができ、これにより、例えば実質的に一定の厚さを有し、最終的な鋭いエッジが特定の位置に位置する、ナイフの大きな本体の生産を可能にすることができる。テーパー角度αのテーパーは、
図6Aに関して上述したものと同じであってもよいが、いくつかの実施形態では、この角度はより小さくても大きくてもよい。
図3に関連して上述したように、当業者は、末端の対のロールのテーパー角度αが、それらから上流の対のテーパー角度と異なり得ることを認識するであろう。例えば、最後の一対または最後の複数対のロールのテーパー角度は、最初の一対または最初の複数対のロールのテーパー角度と異なることができる。このような構成は、2つの側における可能な「分離」を提供し、かつ/または鋭いエッジの最遠位先端部に特定の角度を与えることができる。
【0043】
本開示のテーパーロールは、複数のテーパー角度を有することができる。例えば、
図6Cは、テーパー角度αおよび第2のテーパー角度βを有するテーパーロール100”を示す。図示のように、第2のテーパー角度βは、テーパー角度αが終了すると開始することができ、外側表面154”は、第1の端部156”および第2の端部158”まで、第2のテーパー角度βでテーパー状になり続ける。両方のテーパー角度α、βを有する実施形態における本体106”の外側表面154”の全体的なテーパーは、大きな全体角度をもたらすことができ、そのような実施形態は、包丁、プラスチックシートのための切断ツールの製造などの産業用途、ならびに他の産業用途に有用となる。当業者であれば、いくつかの実施形態において、第2のテーパー角度βは、第1の端部156”および第2の端部158”よりも前に終了することができることを認識するであろう。いくつかの実施形態では、テーパーロールは、第3および/もしくは第4のテーパー角度を含むことができ、かつ/または角度の他の構成が可能である。
【0044】
いくつかの実施形態では、テーパーロールは、各ロールに複数のテーパー170’’’を含むことができる。
図6Dは、3つのテーパー170’’’が形成されたテーパーロール100’’’の実施形態を示す。複数のテーパー170’’’を使用して、以下に説明するように、単一のロールを使用しながら複数の鋭いエッジを生産することができる。例えば、テーパーロール100’’’を使用して、同時に2つ超の鋭いエッジを有する切断器具を生産することができる。3つのテーパー170’’’を使用して、6つの鋭いエッジ、例えばテーパーごとに2つのエッジを製造することができるが、いくつかの実施形態では、テーパーの数および各テーパーのエッジの数が変えられ得ることが理解されよう。いくつかの実施形態では、第3のテーパー角度(不図示)をロール100’’’のテーパー170’’’に使用することができ、その結果、材料はテーパー170’’’ごとに3つのエッジを形成する。さらに、テーパーロール100’’’は、2つまたは4つ以上のテーパーを含むことができ、当業者であれば、これが、それぞれ4つのエッジまたは8つ以上のエッジを有する材料をもたらし得ることを認識するであろう。したがって、テーパーロール100’’’は、システム110内の一連の横方向に配置されたロールの1つとして、または材料102を変形させるのに使用される一組の対向する対のロールのうちの1つのロールとして使用することができる。
【0045】
テーパー170’’’は、互いに1つ以上の距離c1、c2だけ離間され得る。距離c1、c2は、図示のように、各テーパー170’’’の頂部120’’’間で測定することができるが、いくつかの実施形態では、距離c1、c2は、テーパーのそれぞれの始点、テーパーの終端、および/またはテーパーの任意の対応する点の間で測定することができる。さらに、距離c1、c2は実質的に等しいものとして示されているが、いくつかの実施形態では、距離c1は距離c2よりも大きくすることができ、逆もまた同様である。距離c1、c2の値のいくつかの非限定的な例はおおよそ、約1ミリメートル~約500ミリメートルの範囲内、またはおおよそ、約10ミリメートル~約200ミリメートルの範囲内であり得、距離c1、c2の値は、生産されているエッジの目的に基づいて変化される。
【0046】
図示のように、テーパーロール100’’’は、テーパーロール100’’’の各テーパー170’’’が第1のテーパー角度α1、α2、α3および第2のテーパー角度β1、β2、β3を含む点で、テーパーロール100”に類似し得る。いくつかの実施形態では、
図6Cの実施形態と同様に、第2のテーパー角度β1、β2、β3は、第1のテーパー角度α1、α2、α3が終了したときに開始することができ、外側表面154’’’は、第2のテーパー角度β1、β2、β3でテーパー状になり続ける。
【0047】
いくつかの実施形態では、テーパーロール100’’’は、テーパーロール100’’’の外側表面154’’’に、テーパー角度α1、α2、α3、β1、β2、β3が終了する1つ以上の接合部180’’’を含むことができる。例えば、
図6Dに示すように、第1のテーパー角度α1は、第1のテーパー170a’’’の頂部120’’’から、第1の距離a1にわたって延びることができ、a1は、頂部120’’’と第1の接合部180a’’’との間の距離を測定したものである。距離a1の値のいくつかの非限定的な例はおおよそ、約0.001ミリメートル~約100ミリメートルの範囲内であり得る。上述したように、第1のテーパー170a’’’の第2のテーパー角度β1は、第1のテーパー角度α1が終了したとき、例えば第1の接合部180a’’’で、開始することができ、第2の接合部180b’’’で終了する。第2のテーパー角度β1は、第2の距離b1にわたって延びることができ、b1は、第1の接合部180a’’’と第2の接合部180b’’’との間で測定されるものである。距離b1の値のいくつかの非限定的な例はおおよそ、約0.001ミリメートル~約100ミリメートルの範囲内であり得る。第2のテーパー170b’’’および第3のテーパー170c’’’のテーパー角度α2、α3、β2、β3の距離は、それぞれ距離a2、b2、a3、b3で測定される。当業者であれば、上述の構成が、第2のテーパー170b’’’および第3のテーパー170c’’’に同様に適用できることを認識するであろう。さらに、テーパー角度α1、α2、α3、β1、β2、β3、および距離a1、b1、a2、b2、a3、b3の1つ以上の値は、少なくとも本実施形態に関して規定された範囲内で、テーパー角度α1、α2、α3、β1、β2、β3、および距離a1、b1、a2、b2、a3、b3のいずれか他の値と同じであり、かつ/または異なっていてもよい。
【0048】
図7Aおよび
図7Bは、第1のテーパーロール100による変形を受ける材料102の断面を示す。
図7Aは、例えば第1のテーパーロール100の上流の、変形前の材料102を示し、一方、
図7Bは、例えば第1のテーパーロールの下流の、第1のテーパーロール100による変形後に微細化領域146へと変形された中央領域134を有する材料102を示す。図示のように、材料102は、いったん変形されると、その中央領域134に変形が局所化された砂時計形状を有することができ、この中央領域は、テーパーロール100によって圧縮された領域に対応する。
【0049】
微細化領域146は、変形前と実質的に同じ量の材料および/または質量を有する。すなわち、テーパーロール100との接触の結果、実質的に材料が除去されなかった。当業者であれば、実質的に同じ質量の材料を有し、材料が実質的に除去されていない材料は、変形材料が変形前の材料の質量の少なくとも約90%を有することを示唆していることを認識するであろうが、いくつかの実施形態では、変形材料の質量は、変形前の材料の質量の少なくとも約95%、または変形前の材料の質量の少なくとも約97%、または変形前の材料の質量の少なくとも約99%、または変形前の材料の質量の少なくとも約100%であり得る。次いで、微細化領域146は、追加の対向した対のテーパーロールによるさらなる変形のために下流に駆動され得る。いったん材料102が十分に変形されると、材料は分離され得、
図7Bに示す砂時計形状の各側に1つずつ、2つの鋭いエッジが生産される。これらの鋭いエッジはそれぞれ、カミソリの刃、ナイフの刃として、また他の同様の目的に使用することができる。
【0050】
材料102の局所的変形は、材料の中央領域134に位置する微細化領域146によって示されるように、新たに形成された鋭いエッジの先端部に材料102のミクロ構造を生じ、これは、ノッチ150から遠くに位置するミクロ構造とは異なる。したがって、テーパーロールによる局所的変形は、所望される場合に材料の特定の特性を目標とすることを可能にする。例えば、材料102は、ノッチ150において高い硬度および抵抗を有するようにカスタマイズすることができ、ノッチ150から離れた材料は、より柔らかく、より柔軟である。当業者であれば、ホーニング中に施される熱処理が刃全体にわたって均質であり、したがって材料の全長にわたって施されるため、現在のホーニングプロセスではこのような機械的特性の差が得られないことを認識するであろう。
【0051】
図8は、変形材料102にわたる硬度の変動のヒートマップを示す。図示のように、ノッチ150から離れたところに位置する、より柔らかく、より柔軟な材料は、より大きな粒径の粒子140を維持し、ノッチ150に近い微細化領域146内の材料102に沿って変形粒子140’の広まりが増加するにつれて、材料102の硬度が徐々に増加する。ノッチ150に近い微細化領域146は、最大量の変形を示し、それに応じて最大の硬度を示す。この微細化領域146における変形粒子140’の均質性は、実質的に均等である。
【0052】
上述した実施形態の実施例は、以下を含み得る。
1.変形材料であって、
ある長さの金属材料を含み、前記長さの金属材料が、少なくともその変形部分に実質的に均質なミクロ構造を有し、前記実質的に均質なミクロ構造が、前記長さの金属材料の非変形部分の1つ以上の中の粒子および変形前の前記変形部分の中の粒子よりもサイズが小さい、実質的に均等なサイズの複数の変形粒子を有する、変形材料。
2.前記長さの金属材料が、純鉄、鋼、ステンレス鋼、銅、マルテンサイト、クロム、炭化物、窒化物、金属ガラス、ポリマー、パーライト、セメンタイト、マルテンサイト鋼、アルミニウム、パーライト鋼、チタン、ニッケル、コバルト、ハイドロキシアパタイト、銀、または金のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の変形材料。
3.前記複数の変形粒子のサイズが、おおよそ、前記変形粒子の平均粒径の約75%から前記変形粒子の平均粒径の約125%の範囲内である、請求項1または2に記載の変形材料。
4.前記変形粒子のサイズが、前記非変形部分の前記粒子のサイズの約25%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の変形材料。
5.前記変形粒子のサイズが、変形前の前記粒子のサイズの約25%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の変形材料。
6.鋭いエッジを製造するためのシステムであって、
第1の対の対向したテーパーロールであって、回転してそれらの間に配置された材料を下流に駆動するように構成されており、前記材料が下流に駆動されている間に前記材料を変形させるように構成された1つ以上の特徴を有する、第1の対の対向したテーパーロールと、
前記第1の対の対向したテーパーロールの横方向下流に配置され、回転して、前記第1の対の対向したテーパーロールから受け取った材料を下流に駆動するように構成された、少なくとも1つの追加の対の対向したテーパーロールと、
を含み、
前記第1の対の対向したテーパーロールの各ロールが、幾分円筒形の構成を含み、前記幾分円筒形の構成が、第1の端部と、第2の端部と、頂部と、を含み、各ロールの対向した表面が、前記第1の端部と前記頂部との間および前記第2の端部と前記頂部との間でテーパー状にされており、
前記第1の対の対向したテーパーロールの各ロールの対向した表面に沿った頂部から測定した、前記第1の対の対向したテーパーロールの各ロール間の距離が、前記少なくとも1つの追加の対の対向したテーパーロールの各ロールの対向した表面に沿った頂部から測定した、前記少なくとも1つの追加の対の対向したテーパーロールの各ロール間の距離よりも大きい、システム。
7.前記1つ以上の特徴が、前記テーパーロールの前記頂部と、前記第1の端部および前記第2の端部のうちの1つ以上との間で前記テーパーロールの外側表面に沿って延びる第1のテーパー角度をさらに含み、前記テーパーロールの前記頂部および前記外側表面が、前記材料を変形させるために圧縮力を加えるように構成されている、請求項6に記載のシステム。
8.前記第1のテーパー角度の値が、おおよそ、約3°~約60°の範囲内である、請求項7に記載のシステム。
9.前記第1のテーパー角度の値が、おおよそ、約5°~約30°の範囲内である、請求項8に記載のシステム。
10.前記テーパーロールが、前記第1のテーパー角度と、前記テーパーロールの前記第1の端部および前記第2の端部のうちの1つ以上との間に延びる第2のテーパー角度を含み、前記テーパー角度が、前記第1のテーパー角度の値とは異なる値を有する、請求項7に記載のシステム。
【0053】
11.前記少なくとも1つの追加の対の対向したテーパーロールが、少なくとも五対の対向したテーパーロールを含み、各対が、互いから下流に配置され、前記少なくとも五対の対向したテーパーロールのうちのそれぞれの対の各ロール間の距離は、前記少なくとも五対の対向したテーパーロールのうちの後続の下流対ごとに減少する、請求項6~10のいずれか一項に記載のシステム。
12.前記少なくとも1つの追加の対の対向したテーパーロールのうちの末端の対の対向したテーパーロールの各ロール間の距離が、事実上ゼロである、請求項6~11のいずれか一項に記載のシステム。
13.前記材料が、純鉄、鋼、ステンレス鋼、銅、マルテンサイト、クロム、炭化物、窒化物、金属ガラス、ポリマー、パーライト、セメンタイト、マルテンサイト鋼、アルミニウム、パーライト鋼、チタン、ニッケル、コバルト、ハイドロキシアパタイト、銀、または金のうちの1つ以上を含む、請求項6~12のいずれか一項に記載のシステム。
14.前記第1の対の対向したテーパーロールの各ロールが、前記材料を下流に駆動するために、前記第1の対の対向したテーパーロールのうちの反対側のテーパーロールとは反対方向に回転する、請求項6~13のいずれか一項に記載のシステム。
15.前記材料の実質的にどの部分も変形中に除去されない、請求項6~14のいずれか一項に記載のシステム。
16.前記変形材料の質量が、変形前の前記材料の質量と実質的に同じである、請求項6~15のいずれか一項に記載のシステム。
17.前記第1の対の対向したテーパーロールのうちの少なくとも1つのロールが、複数のテーパーを含み、各テーパーが、複数のテーパー角度を有する、請求項6~16のいずれか一項に記載のシステム。
18.エッジを製造する方法であって、
第1の対の対向したテーパーロール間に、ある長さの金属材料を供給することと、
前記第1の対の対向したテーパーロールを回転させて、前記第1の対の対向したテーパーロールを通して、前記長さの金属材料を前進させることと、
を含み、
前記対の対向したテーパーロールが、前記長さの金属材料の両側に局所的変形を引き起こし、前記長さの金属材料が分割されて2つの金属片を形成し、各金属片が、局所的な変形領域を含む鋭いエッジを有する、方法。
19.前記第1の対の対向したテーパーロールの横方向下流に配置された少なくとも1つの追加の対の対向したテーパーロールの間に、前記長さの金属材料を受容することと、
前記少なくとも1つの追加の対の対向したテーパーロールを回転させて、これを通して受容された前記長さの金属材料を下流に前進させることと、
をさらに含み、
前記追加の対の対向したテーパーロールは、前記長さの金属材料の両側にさらなる局所的変形を生じさせる、請求項18に記載の方法。
20.前記第1の対の対向したテーパーロールと、前記少なくとも1つの追加の対の対向したテーパーロールとを回転させて、それらを通して、前記長さの金属材料を横方向に前進させることにより、前記長さの金属材料に沿って2つの鏡面反射性のV字形ノッチを形成する、請求項19に記載の方法。
【0054】
21.第1のテーパー角度を含む、前記第1の対の対向したテーパーロールの頂部と第1の端部および第2の端部のうちの1つ以上との間の前記第1の対の対向したテーパーロールの外側表面の一部が、前記長さの金属材料に係合して、前記長さの金属材料の両側を変形させる、請求項19または20に記載の方法。
22.前記長さの金属材料を、前記長さの金属材料に沿った所定の場所で、前記所定の場所にエッジが形成されるように、前記第1の対の対向したテーパーロールに対して位置付けることをさらに含む、請求項18~21のいずれか一項に記載の方法。
23.前記所定の場所の外側の前記長さの金属材料に沿って、実質的に局所的変形は生じない、請求項22に記載の方法。
24.前記長さの金属材料の実質的にどの部分も、変形中に除去されない、請求項18~23のいずれか一項に記載の方法。
25.変形後の前記長さの金属材料の質量が、変形前の前記材料の質量と実質的に同じである、請求項18~24のいずれか一項に記載の方法。
26.前記長さの金属材料が銅を含む、請求項18~25のいずれか一項に記載の方法。
27.前記長さの金属材料が、ステンレス鋼またはパーライト鋼のうちの1つ以上を含む、請求項18~26のいずれか一項に記載の方法。
【0055】
当業者は、上述の実施形態に基づく本開示のさらなる特徴および利点を理解するであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲によって示される場合を除き、特に示され説明されたものによって制限されるものではない。本明細書に引用されるすべての刊行物および参考文献は、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0056】
〔実施の態様〕
(1) 変形材料であって、
ある長さの金属材料を含み、前記長さの金属材料が、少なくともその変形部分に実質的に均質なミクロ構造を有し、前記実質的に均質なミクロ構造が、前記長さの金属材料の非変形部分の1つ以上の中の粒子および変形前の前記変形部分の中の粒子よりもサイズが小さい、実質的に均等なサイズの複数の変形粒子を有する、変形材料。
(2) 前記長さの金属材料が、純鉄、鋼、ステンレス鋼、銅、マルテンサイト、クロム、炭化物、窒化物、金属ガラス、ポリマー、パーライト、セメンタイト、マルテンサイト鋼、アルミニウム、パーライト鋼、チタン、ニッケル、コバルト、ハイドロキシアパタイト、銀、または金のうちの1つ以上を含む、実施態様1に記載の変形材料。
(3) 前記複数の変形粒子のサイズが、おおよそ、前記変形粒子の平均粒径の約75%から前記変形粒子の平均粒径の約125%の範囲内である、実施態様1に記載の変形材料。
(4) 前記変形粒子のサイズが、前記非変形部分の前記粒子のサイズの約25%である、実施態様1に記載の変形材料。
(5) 前記変形粒子のサイズが、変形前の前記粒子のサイズの約25%である、実施態様1に記載の変形材料。
【0057】
(6) 鋭いエッジを製造するためのシステムであって、
第1の対の対向したテーパーロールであって、回転してそれらの間に配置された材料を下流に駆動するように構成されており、前記材料が下流に駆動されている間に前記材料を変形させるように構成された1つ以上の特徴を有する、第1の対の対向したテーパーロールと、
前記第1の対の対向したテーパーロールの横方向下流に配置され、回転して、前記第1の対の対向したテーパーロールから受け取った材料を下流に駆動するように構成された、少なくとも1つの追加の対の対向したテーパーロールと、
を含み、
前記第1の対の対向したテーパーロールの各ロールが、幾分円筒形の構成を含み、前記幾分円筒形の構成が、第1の端部と、第2の端部と、頂部と、を含み、各ロールの対向した表面が、前記第1の端部と前記頂部との間および前記第2の端部と前記頂部との間でテーパー状にされており、
前記第1の対の対向したテーパーロールの各ロールの対向した表面に沿った頂部から測定した、前記第1の対の対向したテーパーロールの各ロール間の距離が、前記少なくとも1つの追加の対の対向したテーパーロールの各ロールの対向した表面に沿った頂部から測定した、前記少なくとも1つの追加の対の対向したテーパーロールの各ロール間の距離よりも大きい、システム。
(7) 前記1つ以上の特徴が、前記テーパーロールの前記頂部と、前記第1の端部および前記第2の端部のうちの1つ以上との間で前記テーパーロールの外側表面に沿って延びる第1のテーパー角度をさらに含み、前記テーパーロールの前記頂部および前記外側表面が、前記材料を変形させるために圧縮力を加えるように構成されている、実施態様6に記載のシステム。
(8) 前記第1のテーパー角度の値が、おおよそ、約3°~約60°の範囲内である、実施態様7に記載のシステム。
(9) 前記第1のテーパー角度の値が、おおよそ、約5°~約30°の範囲内である、実施態様8に記載のシステム。
(10) 前記テーパーロールが、前記第1のテーパー角度と、前記テーパーロールの前記第1の端部および前記第2の端部のうちの1つ以上との間に延びる第2のテーパー角度を含み、前記テーパー角度が、前記第1のテーパー角度の値とは異なる値を有する、実施態様7に記載のシステム。
【0058】
(11) 前記少なくとも1つの追加の対の対向したテーパーロールが、少なくとも五対の対向したテーパーロールを含み、各対が、互いから下流に配置され、前記少なくとも五対の対向したテーパーロールのうちのそれぞれの対の各ロール間の距離は、前記少なくとも五対の対向したテーパーロールのうちの後続の下流対ごとに減少する、実施態様6に記載のシステム。
(12) 前記少なくとも1つの追加の対の対向したテーパーロールのうちの末端の対の対向したテーパーロールの各ロール間の距離が、事実上ゼロである、実施態様6に記載のシステム。
(13) 前記材料が、純鉄、鋼、ステンレス鋼、銅、マルテンサイト、クロム、炭化物、窒化物、金属ガラス、ポリマー、パーライト、セメンタイト、マルテンサイト鋼、アルミニウム、パーライト鋼、チタン、ニッケル、コバルト、ハイドロキシアパタイト、銀、または金のうちの1つ以上を含む、実施態様6に記載のシステム。
(14) 前記第1の対の対向したテーパーロールの各ロールが、前記材料を下流に駆動するために、前記第1の対の対向したテーパーロールのうちの反対側のテーパーロールとは反対方向に回転する、実施態様6に記載のシステム。
(15) 前記材料の実質的にどの部分も変形中に除去されない、実施態様6に記載のシステム。
【0059】
(16) 前記変形材料の質量が、変形前の前記材料の質量と実質的に同じである、実施態様6に記載のシステム。
(17) 前記第1の対の対向したテーパーロールのうちの少なくとも1つのロールが、複数のテーパーを含み、各テーパーが、複数のテーパー角度を有する、実施態様6に記載のシステム。
(18) エッジを製造する方法であって、
第1の対の対向したテーパーロール間に、ある長さの金属材料を供給することと、
前記第1の対の対向したテーパーロールを回転させて、前記第1の対の対向したテーパーロールを通して、前記長さの金属材料を前進させることと、
を含み、
前記対の対向したテーパーロールが、前記長さの金属材料の両側に局所的変形を引き起こし、前記長さの金属材料が分割されて2つの金属片を形成し、各金属片が、局所的な変形領域を含む鋭いエッジを有する、方法。
(19) 前記第1の対の対向したテーパーロールの横方向下流に配置された少なくとも1つの追加の対の対向したテーパーロールの間に、前記長さの金属材料を受容することと、
前記少なくとも1つの追加の対の対向したテーパーロールを回転させて、これを通して受容された前記長さの金属材料を下流に前進させることと、
をさらに含み、
前記追加の対の対向したテーパーロールは、前記長さの金属材料の両側にさらなる局所的変形を生じさせる、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記第1の対の対向したテーパーロールと、前記少なくとも1つの追加の対の対向したテーパーロールとを回転させて、それらを通して、前記長さの金属材料を横方向に前進させることにより、前記長さの金属材料に沿って2つの鏡面反射性のV字形ノッチを形成する、実施態様19に記載の方法。
【0060】
(21) 第1のテーパー角度を含む、前記第1の対の対向したテーパーロールの頂部と第1の端部および第2の端部のうちの1つ以上との間の前記第1の対の対向したテーパーロールの外側表面の一部が、前記長さの金属材料に係合して、前記長さの金属材料の両側を変形させる、実施態様19に記載の方法。
(22) 前記長さの金属材料を、前記長さの金属材料に沿った所定の場所で、前記所定の場所にエッジが形成されるように、前記第1の対の対向したテーパーロールに対して位置付けることをさらに含む、実施態様18に記載の方法。
(23) 前記所定の場所の外側の前記長さの金属材料に沿って、実質的に局所的変形は生じない、実施態様22に記載の方法。
(24) 前記長さの金属材料の実質的にどの部分も、変形中に除去されない、実施態様18に記載の方法。
(25) 変形後の前記長さの金属材料の質量が、変形前の前記材料の質量と実質的に同じである、実施態様18に記載の方法。
【0061】
(26) 前記長さの金属材料が銅を含む、実施態様18に記載の方法。
(27) 前記長さの金属材料が、ステンレス鋼またはパーライト鋼のうちの1つ以上を含む、実施態様18に記載の方法。
【国際調査報告】