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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-24
(54)【発明の名称】ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   H01F 6/06 20060101AFI20221116BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
H01F6/06 120
H01F6/06 110
H01F6/06 150
H01B1/22 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517494
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(85)【翻訳文提出日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 NZ2020050106
(87)【国際公開番号】W WO2021054846
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】20190100402
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522023831
【氏名又は名称】ビクトリア リンク リミテッド
【氏名又は名称原語表記】VICTORIA LINK LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブーロカキス コンスタンチノス
(72)【発明者】
【氏名】パーキンソン ベンジャミン ジョン
【テーマコード(参考)】
5G301
【Fターム(参考)】
5G301DA03
5G301DA04
5G301DA05
5G301DA06
5G301DA10
5G301DA17
5G301DA18
5G301DA19
5G301DA20
5G301DA33
5G301DA36
5G301DA40
5G301DA51
5G301DA57
5G301DA59
5G301DD01
5G301DD02
5G301DD03
(57)【要約】
高温超伝導体(HTS)コイルを含浸するためのポリマー組成物であって、組成物は、ポリマー樹脂、第1のフィラー材料の複数の粒子、及び第2のフィラー材料の複数の粒子を含み;ここで、第2のフィラー材料の中央粒径は、第1のフィラー材料の中央粒径未満である。ポリマー組成物を使用して、所定のターン間間隔を有する、ポリマーが含浸されたHTSコイルを調製し得る。ポリマー組成物の特性、例えば、組成物の熱収縮係数及び/又は抵抗力をまた変更し得る。また開示されているのは、ポリマーが含浸されたHTSコイル、及びコイルを調製するための方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温超伝導体(HTS)コイルを含浸するためのポリマー組成物であって、
ポリマー樹脂、
第1のフィラー材料の複数の粒子、及び
第2のフィラー材料の複数の粒子を含み;
前記第2のフィラー材料の中央粒径は、前記第1のフィラー材料の中央粒径未満である、組成物。
【請求項2】
第1のフィラー材料の前記粒子のアスペクト比が、約0.80超である、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記第1のフィラー材料の前記粒子が、実質的に球体又は実質的に立方体である、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記第1のフィラー材料の中央粒径が、約5μm~約50μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記第1のフィラー材料の中央粒径が、前記粒径の約40%の標準偏差を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記第2のフィラー材料の最大粒径が、前記第1のフィラー材料の中央粒径未満である、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記第2のフィラー材料の最大粒径が、約3μm未満である、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記第1のフィラー材料及び前記第2のフィラー材料が、低い熱収縮係数を有する材料及び電気伝導性材料からなる群から独立に選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記第1のフィラー材料が、ダイヤモンドである、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記第1のフィラー材料の前記粒子が、電気伝導性材料のコーティングを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
前記コーティングを含む前記電気伝導性材料が、チタンである、請求項10に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
前記ポリマー組成物が、第3のフィラー材料の複数の粒子をさらに含み、前記第3のフィラー材料の中央粒径が、前記第1のフィラー材料の中央粒径未満である、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
前記第3のフィラー材料の最大粒径が、前記第1のフィラー材料の中央粒径未満である、請求項12に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
前記第3のフィラー材料の最大粒径が、約3μm未満である、請求項12又は13に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
前記ポリマー組成物が、第3のフィラー材料の複数の粒子をさらに含み、前記第3のフィラー材料の中央粒径が、前記第1のフィラー材料の中央粒径と実質的に等しい、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項16】
前記第3のフィラー材料が、低い熱収縮係数を有する材料及び電気伝導性材料からなる群から選択される、請求項12~15のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項17】
低い熱収縮係数を有する前記材料が、シリカ、石英、炭素粉、ダイヤモンド、アモルファスダイヤモンド、窒化ホウ素、アルミナ、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム及びこれらの任意の2つ以上の混合物からなる群から選択される、請求項8又は16に記載のポリマー組成物。
【請求項18】
前記電気伝導性材料が、金属、金属酸化物、炭素及びこれらの任意の2つ以上の混合物からなる群から選択される、請求項8又は16に記載のポリマー組成物。
【請求項19】
前記金属又は金属酸化物が、ニッケル、クロム、銅、銀、金、アルミニウム、チタン、これらの酸化物及びこれらの任意の2つ以上の混合物からなる群から選択される、請求項18に記載のポリマー組成物。
【請求項20】
前記炭素が、炭素粉、カーボンブラック、炭素繊維、炭素ナノ繊維、黒鉛、グラフェン及びこれらの任意の2つ以上の混合物からなる群から選択される、請求項18に記載のポリマー組成物。
【請求項21】
前記第1及び第2のフィラー材料が、低い熱収縮係数を有し、前記第3のフィラー材料が、電気伝導性である、請求項12~20のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項22】
前記第1のフィラー材料が、ダイヤモンドであり、前記第2のフィラー材料が、アルミナであり、前記第3のフィラー材料が、銅フレークである、請求項12~21のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項23】
前記第1のフィラー材料が、チタンコーティングされたダイヤモンドであり、前記第2のフィラー材料が、アルミナであり、前記第3のフィラー材料が、ダイヤモンドである、請求項12~20のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項24】
前記ポリマー樹脂が、エポキシ、ポリイミド、ポリエチレン、ポリアクリレート、ポリウレタン及びこれらの任意の2つ以上の組合せからなる群から選択される、請求項1~23のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項25】
前記ポリマー樹脂が、エポキシである、請求項1~24のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項26】
HTS材料を含む巻線コンポーネントを含むポリマーが含浸されたHTSコイルであって、
請求項1~25のいずれか一項に記載のポリマー組成物で含浸されている、コイル。
【請求項27】
ポリマーが含浸されたHTSコイルを生成する方法であって、
a)HTS材料を含む巻線コンポーネントを提供するステップと、
b)請求項1~25のいずれか一項に記載のポリマー組成物を前記巻線コンポーネントへと付着させるステップと、
c)ステップb)から得たコーティングされた巻線コンポーネントをコイルに巻線するステップと、
d)ステップc)から得た前記コイルを硬化させ、前記ポリマーが含浸されたHTSコイルを提供するステップと
を含む、方法。
【請求項28】
前記巻線コンポーネントが、1種以上の同時巻線材料をさらに含む、請求項26に記載のポリマーが含浸されたHTSコイル又は請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記1種以上の同時巻線材料が、銅、銅合金、銀、チタン、鋼及びニッケル-モリブデン合金からなる群から独立に選択される、請求項28に記載のポリマーが含浸されたHTSコイル又は方法。
【請求項30】
前記HTS材料が、REBCOテープである、請求項26~29のいずれか一項に記載のポリマーが含浸されたHTSコイル又は請求項27~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
所定のターン間間隔を有する、ポリマーが含浸されたHTSコイルを調製するための、請求項1~25のいずれか一項に記載のポリマー組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、高温超伝導体(HTS)コイルを含浸するためのポリマー組成物に関する。本発明はまた、ポリマーが含浸されたHTSコイル、及びコイルを調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HTSコイルは、限定された電力損を伴う強い磁場を生じさせる好都合な手段であり、伝統的な低温超伝導体(LTS)と比較してより高い磁場又はより高い動作温度を実現する。この技術は、医用画像、核磁気共鳴分光法、粒子加速器、発電機、例えば、風力発電機、及びエネルギー貯蔵を含めた様々な用途において有用である。
【0003】
HTSコイルの設計に伴う1つの問題は、機械的応力を管理することである。磁場において電流を運ぶ伝導体は、ローレンツ力を経験する。超伝導磁石について、高い電流密度、大きな磁場及び大きなサイズは、相当なローレンツ力が生じることを意味することができる。これらのローレンツ力は、コイル構造内で管理しなければならない。
【0004】
HTSコイルを機械的に安定化させる一般の方法は、コイルをポリマー樹脂で含浸することによる。しかし、HTS伝導体は、コーティングされた伝導体として製造されることが多く、コーティングされた伝導体スタック内での結果として生じる乏しい層間(c軸)強度を伴う。HTSの低温動作温度へのコイルの冷却の間に、ポリマー樹脂及びコイルの他の材料の熱収縮係数の間のミスマッチによって、歪みがHTS伝導体スタックのc軸に沿って加えられることをもたらす。伝導体スタックにおけるこのように得られた応力がスタック内の層間結合を超えるのに十分である場合、これは、コーティングされた伝導体の層状剥離及び超伝導度の結果的な喪失をもたらす。層状剥離を防止するためにコイルをポリマー樹脂で含浸するいくつかのアプローチが探求されてきた。1つのアプローチは、低弾性樹脂系を使用することであるか、又は伝導体表面への樹脂系の結合を防止することであり、それによって、いずれにしても、コーティングされた伝導体スタックへの歪みの移転が防止される。別のアプローチは、ポリマー樹脂中に(ポリマー樹脂と比較して)低い又はゼロの熱収縮係数を有する充填材料を加え、熱収縮係数を低減させることである。このようなアプローチは、ポリマー樹脂へのシリカ粉末(Barth et al.Supercond Sci Technol 2013,26(5),1-10)又はアルミナ粉末(Park et al.J Electr Eng Technol 2018,13(3),1166-1172)の添加によって例示されてきたが、これらの両方は、冷却の間の伝導体の層状剥離を低減させることが示されてきた。
【0005】
HTSコイルの設計における別の重要な要素は、クエンチを管理することである。超伝導体が超伝導状態から正常(抵抗性)状態へと移行するとき、クエンチが起こる。クエンチによって、超伝導体によって運ばれるエネルギーは、以前に超伝導性であったワイヤーの抵抗性セクションにおけるジュール加熱によって消散する。コイルのターンの間の良好な電気絶縁を伴うコイルにおける局所クエンチの結果は、コイルの貯蔵されたエネルギーがこの領域において熱として消散し始めることである。低い最小クエンチエネルギーを有する伝統的なLTSについて、局部加熱は隣接する超伝導エリアが正常(抵抗性)となり、コイル内に大きな正常ゾーンを生じさせるのに十分である。この機序を通して、コイルの貯蔵されたエネルギーは大容量のコイルに亘り安全に消散し、コイルにおける許容されるホットスポット温度をもたらし得る。対照的に、HTS最小クエンチエネルギーは非常により高く、そのため、正常ゾーンはLTS正常ゾーンが広がり得る同じ容易さで広がらない。結果的に、クエンチされた領域に隣接した領域は正常とならず、小さな正常ゾーンをもたらし得る。コイルエネルギーはコイル容量の非常により小さな割合に亘り消散するため、ホットスポット温度は損傷的に高くなり得る。
【0006】
HTSコイルにおけるクエンチを管理するための浮上しつつある戦略は、有限のターン間抵抗を有するコイルを調製することである。コイルのターン間抵抗を低減させることは、自己防護コイルを生成することが示されてきたが、コイルへの損傷を伴わずにコイルの臨界電流の何倍もの電流を支持する(Hahn et al.IEEE Trans.Appl.Supercond.2011 21(3)1592-1595を参照されたい)。有限のターン間抵抗を有するコイル中への固定された電流の注入によって、そのコイルにおける電流は、電流が受ける電圧の誘導性及び抵抗性(すなわち、ターン間)コンポーネントの間の差異によって、半径方向に流れるコンポーネント及び円周方向に流れるコンポーネントへと分裂する。しかし、この現象の望ましくない成り行きは、ターンの間の抵抗が低減し、全ての電流が円周方向から半径方向への流れにシフトするのにかかる時間である「荷電遅延」がもたらされることである。したがって、異なる用途の必要条件に基づいてHTSコイルのターン間抵抗を変更することが望ましい。
【0007】
有限のターン間抵抗を有するHTSコイルを調製するための様々な技術が研究されてきた。1つの技術は、コイルを、ターンの間のさらなる絶縁を伴わずに超伝導体ワイヤーの両側上の銅メッキと共に同時巻線することである(Wang et al.Supercond Sci Technol 2013,26,1-6を参照されたい)。他の人は、ターン間抵抗を増加させるために隣接するターンの間に非銅金属を設置することを研究してきた(Markiewicz et al.Supercond Sci Technol 2016,29,1-11を参照されたい)。1つのアプローチは、2つの超伝導体ワイヤーの中間に金属のさらなるターンを加えることである。別のアプローチは、超伝導ワイヤー上の銅メッキの上にさらなる金属の薄層、例えば、ステンレス鋼を付着させることである。研究されてきた最終的なアプローチは、樹脂の電気伝導度を増加させるためのエポキシが含浸されたコイルのエポキシ樹脂への銀粉末の添加である(Hwang et al.IEEE Trans Appl Supercond 2017,27(4),1-5を参照されたい)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ポリマーが含浸されたコイルは、湿式巻線方法又は真空含浸方法によって調製し得る。湿式巻線は、伝導体がコイルに巻線される直前に、コイル巻線コンポーネントの1つ以上、例えば、超伝導体の表面上へとポリマー樹脂を直接塗布することが関与する。コイルが巻線されると、ポリマーは硬化される。コイル設計者は通常、コイルが達成しなければならない特定のターン間厚さを特定して、望ましい電流密度及びコイル寸法を得る。ポリマーを湿式で伝導体の表面へと付着させる不正確なプロセスによって、調整できて正確なターン間厚さは達成することが困難である。代替の方法は、真空含浸方法である。この方法を使用して、コイルはポリマーを伴わずに、したがって、良好な寸法管理を伴って巻線され、次いで、真空気密モールド中に配置される。空気をモールド及びコイルから排除し、ポリマー樹脂をモールド及びコイル中へと流動させ、コイル構造における空隙を完全に充填する。このような樹脂注入において、樹脂がコイル構造を完全に浸透することができることを確実にするように低粘度樹脂系を使用しなければならない。結果的に、湿式巻線方法は、粘性のあるポリマー系で含浸されたコイルを調製するのにより適している。
【0009】
本発明の1つの目的は、上記の不都合を回避する方向に向かうこと;及び/又は少なくとも公共に有用な選択を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、ほんの一例として示す以下の説明から明らかとなり得る。
【0011】
他に記述しない限り、本明細書において引用した任意の文献の全内容は、参照により本明細書中に組み込まれている。本明細書に含まれている文献、法令、材料、装置、物品などの考察は、単に本発明についての背景を提供する目的のためである。これらの事項のいずれか又は全ては、先行技術基準の部分を形成するか、又は優先日の前に存在したために本発明と関連する分野における周知の一般知識であったことを認めるものであるとは考えない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一態様において、本発明は、ポリマー樹脂、第1のフィラー材料の複数の粒子、及び第2のフィラー材料の複数の粒子を含むポリマー組成物を提供し;ここで、第2のフィラー材料の中央粒径は、第1のフィラー材料の中央粒径未満である。
【0013】
別の態様において、本発明は、高温超伝導体(HTS)コイルを含浸するためのポリマー組成物を提供し、組成物は、ポリマー樹脂、第1のフィラー材料の複数の粒子、及び第2のフィラー材料の複数の粒子を含み;ここで、第2のフィラー材料の中央粒径は、第1のフィラー材料の中央粒径未満である。
【0014】
一部の実施形態では、第1のフィラー材料の粒子のアスペクト比は、約0.80超、又は約0.85超、又は約0.90超、又は約0.95超、又は約0.99超である。
【0015】
一部の実施形態では、第1のフィラー材料の粒子は、実質的に球体又は実質的に立方体である。一部の実施形態では、第1のフィラー材料は、実質的に立方体である。
【0016】
一部の実施形態では、第1のフィラー材料の中央粒径は、約5μm~約100μm、又は約5μm~約50μm、又は約5μm~約40μm、又は約5μm~約30μm、又は約9.5μm~約50μm、又は約9.5μm~約40μm、又は約9.5μm~約29μm、又は約25.2μm、又は約25μm、又は約12.5μm、又は約12.4μmである。
【0017】
一部の実施形態では、第1のフィラー材料の中央粒径は、約10μm、又は約9μm、又は約8μm、又は約7μm、又は約6μm、又は約5μm、又は約4μm、又は約3μm、又は約2μm、又は約1μmの標準偏差を有する。
【0018】
一部の実施形態では、第1のフィラー材料の中央粒径は、粒径の約40%の標準偏差を有する。好ましくは、第1のフィラー材料の中央粒径は、粒径の約50%未満、又は粒径の約40%未満、又は粒径の約30%未満、又は粒径の約25%未満、又は粒径の約20%未満、又は粒径の約15%未満、又は粒径の約10%未満、又は粒径の約5%未満の標準偏差を有する。より好ましくは、第1のフィラー材料は、粒径の約10%未満の標準偏差を有する。
【0019】
一部の実施形態では、第2のフィラー材料の最大粒径は、第1のフィラー材料の中央粒径未満である。
【0020】
一部の実施形態では、第2のフィラー材料の最大粒径は、第1のフィラー材料の中央粒径より少なくとも約30%より小さい。
【0021】
一部の実施形態では、第2のフィラー材料の最大粒径は、約3μm未満である。
【0022】
一部の実施形態では、第1のフィラー材料及び第2のフィラー材料は、低い熱収縮係数を有する材料及び電気伝導性材料からなる群から独立に選択される。
【0023】
一部の実施形態では、低い熱収縮係数を有する材料は、シリカ、石英、炭素粉、ダイヤモンド、アモルファスダイヤモンド、窒化ホウ素、アルミナ、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム及びこれらの任意の2つ以上の混合物からなる群から選択される。一部の実施形態では、低い熱収縮係数を有する材料は、シリカ、石英、炭素粉、アモルファスダイヤモンド、窒化ホウ素、アルミナ、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム及びこれらの任意の2つ以上の混合物からなる群から選択される。
【0024】
一部の実施形態では、低い熱収縮係数を有する材料は、シリカ、石英、炭素粉、ダイヤモンド、アモルファスダイヤモンド、窒化ホウ素、アルミナ、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム及び酸化マグネシウムからなる群から選択される。一部の実施形態では、低い熱収縮係数を有する材料は、シリカ、石英、炭素粉、アモルファスダイヤモンド、窒化ホウ素、アルミナ、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム及び酸化マグネシウムからなる群から選択される。
【0025】
一部の実施形態では、電気伝導性材料は、金属、金属酸化物、炭素及びこれらの任意の2つ以上の混合物からなる群から選択される。
【0026】
一部の実施形態では、電気伝導性材料は、金属、金属酸化物及び炭素からなる群から選択される。
【0027】
一部の実施形態では、金属又は金属酸化物は、クロム、ニッケル、銅、銀、金、アルミニウム、チタン、これらの酸化物及びこれらの任意の2つ以上の混合物からなる群から選択される。
【0028】
一部の実施形態では、金属又は金属酸化物は、クロム、ニッケル、銅、銀、金、アルミニウム、チタン及びこれらの酸化物からなる群から選択される。
【0029】
一部の実施形態では、炭素は、炭素粉、カーボンブラック、炭素繊維、炭素ナノ繊維、黒鉛、グラフェン及びこれらの任意の2つ以上の混合物からなる群から選択される。
【0030】
一部の実施形態では、炭素は、炭素粉、カーボンブラック、炭素繊維、炭素ナノ繊維、黒鉛及びグラフェンからなる群から選択される。
【0031】
一部の実施形態では、第1のフィラー材料は、ダイヤモンドである。好ましくは、第1のフィラー材料は、アモルファスダイヤモンドである。
【0032】
一部の実施形態では、第1のフィラー材料の粒子は、電気伝導性材料のコーティングを含む。好ましくは、電気伝導性材料は、金属及び金属酸化物からなる群から選択される。より好ましくは、金属及び金属酸化物は、クロム、ニッケル、銅、銀、金、アルミニウム、チタン、これらの酸化物及びこれらの任意の2つ以上の混合物からなる群から選択される。最も好ましくは、金属は、チタンである。
【0033】
したがって、一部の実施形態では、第1のフィラー材料の粒子は、電気伝導性材料でコーティングされた低い熱収縮係数を有する材料を含む。好ましくは、第1のフィラー材料は、チタンコーティングされたダイヤモンドである。一部の実施形態では、ポリマー組成物は、第3のフィラー材料の複数の粒子をさらに含み、ここで、第3のフィラー材料の中央粒径は、第1のフィラー材料の中央粒径未満である。
【0034】
一部の実施形態では、第3のフィラー材料の最大粒径は、第1のフィラー材料の中央粒径未満である。
【0035】
一部の実施形態では、第3のフィラー材料の最大粒径は、第1のフィラー材料の中央粒径より少なくとも約30%より小さい。
【0036】
一部の実施形態では、ポリマー組成物は、第3のフィラー材料の複数の粒子を含み、ここで、第3のフィラー材料の中央粒径は、第1のフィラー材料の中央粒径と実質的に等しい。
【0037】
一部の実施形態では、第3のフィラー材料は、低い熱収縮係数を有する材料及び電気伝導性材料からなる群から選択される。
【0038】
一部の実施形態では、第1及び第2のフィラー材料は、低い熱収縮係数を有し、第3のフィラー材料は、電気伝導性である。
【0039】
一部の実施形態では、第1のフィラー材料は、アモルファスダイヤモンドであり、第2のフィラー材料は、アルミナであり、第3のフィラー材料は、銅フレークである。
【0040】
一部の実施形態では、第1のフィラー材料は、チタンコーティングされたダイヤモンドであり、第2のフィラー材料は、アルミナであり、第3のフィラー材料は、アモルファスダイヤモンドである。
【0041】
一部の実施形態では、第1のフィラー材料の粒子は、電気伝導性材料でコーティングされた低い熱収縮係数を有する材料を含み、第2のフィラー材料の粒子は、電気伝導性材料でコーティングされた低い熱収縮係数を有する材料を含む。第1のフィラー材料の粒子中の低い熱収縮係数を有する材料は、第2のフィラー材料の粒子中の低い熱収縮係数を有する材料と同じであり得る。代わりに、第1のフィラー材料の粒子中の低い熱収縮係数を有する材料は、第2のフィラー材料の粒子中の低い熱収縮係数を有する材料と異なり得る。同様に、第1のフィラー材料の粒子のコーティングを含む電気伝導性材料は、第2のフィラー材料の粒子のコーティングを含む電気伝導性材料と同じであり得る。代わりに、第1のフィラー材料の粒子のコーティングを含む電気伝導性材料は、第2のフィラー材料の粒子のコーティングを含む電気伝導性材料と異なり得る。
【0042】
一部の実施形態では、ポリマー樹脂は、エポキシ、ポリイミド、ポリエチレン、ポリアクリレート、ポリウレタン及びこれらの任意の2つ以上の組合せからなる群から選択される。
【0043】
一部の実施形態では、ポリマー樹脂は、エポキシ、ポリイミド、ポリエチレン、ポリアクリレート、及びポリウレタンからなる群から選択される。
【0044】
一部の実施形態では、ポリマー樹脂は、エポキシである。
【0045】
別の態様において、本発明は、HTS材料を含む巻線コンポーネントを含むポリマーが含浸されたHTSコイルを提供し、ここで、コイルは、本発明のポリマー組成物で含浸されている。
【0046】
別の態様において、本発明は、ポリマーが含浸されたHTSコイルを調製する方法を提供し、この方法は、
a)HTS材料を含む巻線コンポーネントを提供するステップと、
b)本発明のポリマー組成物を巻線コンポーネントに付着させるステップと、
c)ステップb)から得たコーティングされた巻線コンポーネントをコイルに巻線するステップと、
d)ステップc)から得たコイルを硬化させ、ポリマーが含浸されたHTSコイルを提供するステップとを含む。
【0047】
別の態様において、本発明は、所定のターン間間隔を有する、ポリマーが含浸されたHTSコイルを調製する方法を提供し、この方法は、
a)HTS材料を含む巻線コンポーネントを提供するステップと、
b)本発明のポリマー組成物を巻線コンポーネントに付着させるステップと、
c)ステップb)から得たコーティングされた巻線コンポーネントをコイルに巻線するステップと、
d)ステップc)から得たコイルを硬化させ、ポリマーが含浸されたHTSコイルを提供するステップとを含む。
【0048】
一部の実施形態では、ステップb)及びステップc)は、併行的に行われる。
【0049】
一部の実施形態では、巻線コンポーネントは、1種以上の同時巻線材料をさらに含む。
【0050】
一部の実施形態では、1種以上の同時巻線材料は、アルミニウム、銅、銅合金(例えば、黄銅)、銀、チタン、鋼及びニッケル-モリブデン合金からなる群から独立に選択される。一部の実施形態では、1種以上の同時巻線材料は、アルミニウム、銅、銀、チタン、鋼及びニッケル-モリブデン合金からなる群から独立に選択される。
【0051】
一部の実施形態では、HTS材料は、REBCOテープである。
【0052】
別の態様において、本発明は、ポリマーが含浸されたHTSコイルを調製するための本発明のポリマー組成物の使用を提供する。
【0053】
別の態様において、本発明は、所定のターン間間隔を有する、ポリマーが含浸されたHTSコイルを調製するための本発明のポリマー組成物の使用を提供する。
【0054】
本発明はまた、本出願の明細書において、個々に又は集団的に言及又は示された部分、要素及び特色、並びに任意の2つ若しくはそれより多い前記部分、要素又は特色の任意又は全ての組合せに存すると広範に考えてもよく、本発明が関連する当技術分野において既知の等価物を有する特定の整数が本明細書において記述される場合、このような既知の等価物は、本明細書において個々に示されているかのように組み込まれていると見なされる。
【0055】
さらに、本発明の特色又は態様がマーカッシュ群に関して記載される場合、それによって、本発明はまた、マーカッシュ群の任意の個々のメンバー又はメンバーの部分群に関して記載されることを当業者は認識する。
【0056】
本明細書において使用するように、名詞に続く「(s)」は、名詞の複数形及び/又は単数形を意味する。
【0057】
本明細書において使用するように、用語「及び/又は」は、「及び」又は「又は」又は両方を意味する。
【0058】
用語「含むこと」は、本明細書において使用するように、「から少なくとも部分的になること」を意味する。本明細書において用語「含むこと」を含むそれぞれの記述を解釈するとき、その用語によって前置きをされたもの以外の特色がまた存在し得る。関連する用語、例えば、「含む」、「含まれる」及び「含む」は、同じ様式で解釈される。
【0059】
本明細書において開示される数の範囲(例えば、1~10)への言及はまた、その範囲内の全ての有理数(例えば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9及び10)への言及を組み込むことが意図され、またその範囲内の有理数の任意の範囲(例えば、2~8、1.5~5.5及び3.1~4.7)、及びしたがって、本明細書において明確に開示されている全ての範囲の全ての部分範囲は、これによって明確に開示されている。これらは特に意図されるものの単に例であり、列挙された最も低い値及び最も高い値の間の数値の全ての可能な組合せは、本明細書において同様の様式で明確に記述されると考えられる。
【0060】
用語「ゲージング粒子」は、本明細書において使用する場合、HTSコイルのターン間間隔を設定するための本発明において有用な粒子を指す。
【0061】
用語「最大粒径」は、本明細書において使用する場合、粒子の集団分布のD95値を指す。
【0062】
本明細書において使用する場合、用語「ターン間間隔」は、超伝導体材料の対向面から測定したコイルのターンの間の距離を指す。この距離はまた、「ターン間距離」と称し得る。
【0063】
本発明は広範に上記に定義されている通りであるが、本発明はそれだけに限定されず、且つ本発明はまた以下の説明が実施例を示す実施形態を含むことを当業者は認識する。
【0064】
本発明を、図を参照してこれから説明する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1】ゲージング粒子を含有しないポリマー組成物で含浸されたHTSコイルの断面である。
図2】ゲージング粒子を含むポリマーが含浸されたHTSコイルの断面を示す。図2Aは、コイルの全体的な断面である。図2Bは、内径近くのコイルの断面である。図2Cは、巻線の中央近くのコイルの断面である。図2Dは、巻線の外径近くのコイルの断面である。
図3】銅の濃度に対する3つの試験コイルについての接触抵抗力のグラフである。
図4】反復する熱サイクルによる、ゲージング粒子及び低い熱収縮係数を有する材料を含むポリマーが含浸されたHTSコイルの臨界電流性能のグラフである。
図5】チタンコーティングされたダイヤモンドの濃度に対する4つの試験コイルについての接触抵抗力のグラフである。
図6】温度に対する4つの試験コイルについての接触抵抗力のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0066】
特定のフィラー材料は、ポリマー組成物中に組み込まれたとき、ポリマーが含浸されたHTSコイルのターン間間隔を設定するのに有用であることを本発明者らは驚いたことに決定した。
【0067】
したがって、一態様において、本発明は、ポリマー樹脂、第1のフィラー材料の複数の粒子、及び第2のフィラー材料の複数の粒子を含むポリマー組成物を提供し;ここで、第2のフィラー材料の中央粒径は、第1のフィラー材料の中央粒径未満である。より特定すると、ポリマー組成物は、HTSコイルを含浸するのに有用である。
【0068】
第1のフィラー材料は、すなわち、ゲージング粒子として、このように得られたポリマーが含浸されたHTSコイルのターン間間隔を設定するためにポリマー組成物中に含まれる。有利なことには、第1のフィラー材料は、ポリマー組成物中に含まれる任意のさらなるフィラー材料の中央粒径より大きな中央粒径を有する。当業者は、第1のフィラー材料の粒径を選択して、ポリマーが含浸されたHTSコイルの望ましいターン間間隔を実現することができる。
【0069】
一部の実施形態では、第1のフィラー材料の中央粒径は、約5μm~約100μm、又は約5μm~約50μm、又は約5μm~約40μm、又は約5μm~約30μm、又は約9.5μm~約50μm、又は約9.5μm~約40μm、又は約9.5μm~約29μm、又は約25.2μm、又は約25μm、又は約20μm、又は約12.5μm、又は約12.4μmである。
【0070】
好ましくは、第1のフィラー材料の粒子は、狭い粒径分布を有する。例えば、粒径は、粒径の約50%、又は粒径の約40%、又は粒径の約30%、又は粒径の約25%、又は粒径の約20%、又は粒径の約15%、又は粒径の約10%、又は粒径の約5%の中央粒径からの標準偏差を有し得る。一部の実施形態では、粒径は、粒径の約50%未満、又は粒径の約40%未満、又は粒径の約30%未満、又は粒径の約25%未満、又は粒径の約20%未満、又は粒径の約15%未満、又は粒径の約10%未満、又は粒径の約5%未満の中央粒径からの標準偏差を有する。一部の実施形態では、第1のフィラー材料の中央粒径は、約10μm、又は約9μm、又は約8μm、又は約7μm、又は約6μm、又は約5μm、又は約4μm、又は約3μm、又は約2μm、又は約1μmの標準偏差を有する。
【0071】
好ましくは、第1のフィラー材料の粒子は、高いアスペクト比、すなわち、1に近づくアスペクト比を有する。例えば、第1のフィラー材料の粒子は、約0.80超、又は約0.85超、又は約0.90超、又は約0.95超、又は約0.99超のアスペクト比、又は1のアスペクト比を有し得る。一部の実施形態では、第1のフィラー材料の粒子は、実質的に球体又は実質的に立方体である。一部の実施形態では、第1のフィラー材料の粒子が実質的に立方体であることが好ましい。例えば、第1のフィラー材料が電気伝導性材料であるとき、又は第1のフィラー材料の粒子が、電気伝導性材料のコーティングを含むとき。
【0072】
ポリマー組成物は、少なくとも1種のさらなるフィラー材料、すなわち、第2のフィラー材料を含む。ポリマー組成物は、任意の数のさらなるフィラー材料、例えば、第3のフィラー材料、第4のフィラー材料などを含み得るが、ただし、任意のさらなるフィラー材料の中央粒径は実質的に、第1のフィラー材料の中央粒径と等しいか若しくはこれ未満である。
【0073】
一部の実施形態では、それぞれのさらなるフィラー材料は、第1のフィラー材料の中央粒径未満の中央粒径を有する。好ましくは、それぞれのさらなるフィラー材料は、第1のフィラー材料の中央粒径未満の最大粒径を有する。一部の実施形態では、それぞれのさらなるフィラー材料の最大粒径は、第1のフィラー材料の中央粒径より少なくとも約10%より小さく、又は第1のフィラー材料の中央粒径より少なくとも約20%より小さく、又は第1のフィラー材料の中央粒径より少なくとも約30%より小さく、又は第1のフィラー材料の中央粒径より少なくとも約40%より小さく、又は第1のフィラー材料の中央粒径より少なくとも約50%より小さく、又は第1のフィラー材料の中央粒径より少なくとも約60%より小さく、又は第1のフィラー材料の中央粒径より少なくとも約70%より小さく、又は第1のフィラー材料の中央粒径より少なくとも約80%より小さく、又は第1のフィラー材料の中央粒径より少なくとも約90%より小さい。複数種のさらなるフィラー材料が存在するこのような実施形態では、それぞれのさらなるフィラー材料の最大粒径は、任意の他のさらなるフィラー材料の粒径とは独立に選択し得る。一部の実施形態では、それぞれのさらなるフィラー材料の最大粒径は、約5μm未満、又は約4μm未満、又は約3μm未満、又は約2μm未満、又は約1μm未満、又は約0.5μm未満である。
【0074】
一部の実施形態では、ポリマー組成物は、第1のフィラー材料、第2のフィラー材料、及び第3のフィラー材料を含み、ここで、第2のフィラー材料は、第1のフィラー材料の中央粒径未満の中央粒径を有し、第3のフィラー材料は、第1のフィラー材料の中央粒径と実質的に等しい中央粒径を有する。
【0075】
本発明によるフィラー材料のいずれかは、ポリマー組成物の特性、例えば、ポリマー組成物の熱収縮係数及び/又は電気伝導度を変更する機能材料であり得る。代わりに、フィラー材料のいずれかは、不活性な材料であり得る。
【0076】
一部の実施形態では、少なくとも1種のフィラー材料は、低い熱収縮係数を有する材料である。このような材料を使用して、ポリマー組成物の熱収縮係数を変更し得、好ましくは、ポリマー組成物の熱収縮係数をHTSコイルの他のコンポーネントのそれと一致又は概ね一致させ得る。有利なことには、これは、低温でのコイルの層状剥離を低減し得る。本発明における使用に適した低い熱収縮係数を有する材料は、例えば、シリカ、石英、炭素粉、ダイヤモンド(例えば、アモルファスダイヤモンド)、窒化ホウ素、アルミナ、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム及び酸化マグネシウムを含む。しかし、本発明はそれらに限定されず、他の材料を使用し得る。有利なことには、低い熱収縮係数を有する材料は、相対的に良好な熱伝導度を有し得る。一部の実施形態では、低い熱収縮係数を有する材料は、ダイヤモンド(例えば、アモルファスダイヤモンド)、アルミナ又は酸化マグネシウムである。
【0077】
一部の実施形態では、少なくとも1種のフィラー材料は、電気伝導性材料である。電気伝導性材料はポリマー組成物中に含まれ、ポリマー組成物の抵抗力を変更し得る。有利なことには、当業者は、このように得られたポリマーが含浸されたHTSコイルにおける望ましいターン間抵抗力を達成する適切な電気伝導性材料を選択することができる。ターン間抵抗力は、例えば、電気伝導性材料の粒径、電気伝導性材料の濃度、任意の非伝導性材料の濃度、及びコイルのターン間間隔によって影響を受けることを当業者は認識する。
【0078】
適切な電気伝導性材料は、例えば、金属及び金属酸化物、例えば、クロム、ニッケル、銅、銀、金、アルミニウム、チタン、これらの酸化物及びこれらの任意の2つ以上の混合物;並びに、例えば、炭素粉、カーボンブラック、炭素繊維、炭素ナノ繊維、黒鉛、グラフェン及びこれらの任意の2つ以上の混合物の形態であり得る炭素を含む。一部の実施形態では、金属又は金属酸化物は、銅、銀、金、アルミニウム、これらの酸化物及びこれらの任意の2つ以上の混合物からなる群から選択される。一部の実施形態では、金属又は金属酸化物は、銅、銀、金、アルミニウム及びこれらの酸化物からなる群から選択される。しかし、本発明はそれらに限定されず、他の材料を使用し得る。例えば、他の非強磁性金属は、本発明において有用である得ることを当業者は認識する。一部の実施形態では、電気伝導性フィラー材料は、銅粉、銅フレーク又は銀コーティングされた銅フレークである。
【0079】
一部の実施形態では、少なくとも1種のフィラー材料は、低い熱収縮係数を有する材料であり、少なくとも1種のフィラー材料は、電気伝導性材料である。一部の実施形態では、第1のフィラー材料は、低い熱収縮係数を有する材料であり、第2のフィラー材料は、電気伝導性材料である。一部の他の実施形態では、第1のフィラー材料及び第2のフィラー材料は、低い熱収縮係数を有する材料であり、第3のフィラー材料は、電気伝導性材料である。
【0080】
特定のフィラー材料はまた、ポリマー組成物の複数の特性を変更し得る。例えば、炭素粉は、低い熱収縮係数を有し、電気伝導性である。
【0081】
本発明によるフィラー材料のいずれかは、コーティングを含み得る。
【0082】
したがって、第1のフィラー材料の粒子は、電気伝導性材料のコーティングを含み得る。適切な電気伝導性材料は、例えば、金属及び金属酸化物、例えば、クロム、ニッケル、銅、銀、金、アルミニウム、チタン、これらの酸化物及びこれらの任意の2つ以上の混合物を含む。しかし、他の電気伝導性材料、例えば、他の非強磁性金属は、本発明において有用であり得ることを当業者は認識する。好ましくは、電気伝導性材料は、チタンである。好ましくは、第1のフィラー材料は、電気伝導性材料でコーティングされた低い熱収縮係数を有する材料である。一部の実施形態では、第1のフィラー材料は、チタンコーティングされたダイヤモンドである。一部の実施形態では、ポリマー組成物は、チタンコーティングされたダイヤモンドである第1のフィラー材料、アルミナである第2のフィラー材料、及びダイヤモンドである第3のフィラー材料を含む。有利なことには、電気伝導性材料のコーティングを含むフィラー材料の粒子を含む組成物の温度による抵抗力における変動は、電気伝導性材料からなるフィラー材料の粒子を含む組成物のそれと比較して低減し得る。一部の実施形態では、電気伝導性材料でコーティングされたフィラー材料の粒子を含む組成物の抵抗力は、温度と共に実質的に変化しない。
【0083】
適切なコーティングされたフィラー材料は、これらに限定されないが、無電解メッキ及び蒸着を含めた当業者には公知の様々な技術を使用して調製し得る。
【0084】
一部の実施形態では、少なくとも1種のフィラー材料の粒子は、異なる電気伝導性材料でコーティングされた電気伝導性材料を含む。例えば、一部の実施形態では、少なくとも1種のフィラー材料は、銀コーティングされた銅である。
【0085】
一部の実施形態では、電気伝導性材料のコーティングを含む第1のフィラー材料の中央粒径は、約5μm~約100μm、又は約5μm~約50μm、又は約5μm~約40μm、又は約5μm~約30μm、又は約9.5μm~約50μm、又は約9.5μm~約40μm、又は約9.5μm~約29μm、又は約25.2μm、又は約25μm、又は約20μm、又は約12.5μm、又は約12.4μmである。
【0086】
当業者は、ポリマー組成物中に含まれる各フィラー材料の量を選択することができる。当業者は、フィラー材料の性質、並びにポリマー組成物及び結果として生じたポリマーが含浸されたHTSコイルの所望特性を考慮にいれてもよい。ポリマー組成物中に含まれるフィラー材料の総量は、ポリマー組成物の重量によって、約10%~約70%の範囲、例えば、約10%、又は約15%、又は約20%、又は約25%、又は約30%、又は約35%、又は約40%、又は約45%、又は約50%、又は約55%、又は約60%、又は約65%、又は約70%の量であり得る。
【0087】
一部の実施形態では、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の重量によって、約10%~50%、又は約20%~約40%、又は約30%の量で第1のフィラー材料を含む。一部の実施形態では、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の重量によって、約1%~40%、又は約10%~約30%、又は約20%の量で低い熱収縮係数を有するフィラー材料を含む。一部の実施形態では、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の重量によって、約30%~約70%、又は約40%~60%、又は約50%の量で低い熱収縮係数を有するフィラー材料を含む。一部の実施形態では、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の重量によって、約1%~約40%、又は約5%~約30%、又は約10%~約20%の量で電気伝導性フィラー材料を含む。
【0088】
ポリマー樹脂は、HTSコイルを含浸するのに適した任意の熱硬化性ポリマー樹脂であり得ることを当業者は認識する。好ましいポリマー樹脂は、長いポットライフ、高いヤング率及び極低温での実用性を有する。ポリマー樹脂のポットライフは、樹脂のはっきりと認識できる硬化を伴わずに完全コイルの巻線を可能にするように十分に長いはずである。一部の実施形態では、低い硬化温度、例えば、60℃未満を有するポリマー樹脂を使用する。有利なことには、このような使用は、硬化プロセスの間のコイルの他のコンポーネントへの損傷を最小化し得る。例えば、コイルが低温はんだで調製されるとき、低い硬化温度を有するポリマー樹脂は、硬化プロセスの間にはんだ接合を不安定化することを回避するように選択し得る。適切なポリマー樹脂は、例えば、エポキシ、ポリイミド、ポリエチレン、ポリアクリレート、ポリウレタン及びこれらの任意の2つ以上の組合せを含む。一部の実施形態では、ポリマー樹脂は、エポキシ、ポリイミド、ポリエチレン、ポリアクリレート及びポリウレタンからなる群から選択される。好ましい実施形態では、ポリマー樹脂は、エポキシ樹脂、例えば、第一級アミン硬化ビスフェノール-A/ビスフェノール-Fブレンドエポキシ樹脂、例えば、CTD-521である。
【0089】
本発明のポリマー組成物を使用して、ポリマーが含浸されたHTSコイルを調製し得る。コイルは、単一のパンケーキコイル、二重パンケーキコイル又はレーストラックコイルなどのコイルの形状へと形成される巻線コンポーネントを含む。ポリマー組成物が巻線コンポーネントのターンの間に層を形成し、複合サンドイッチ構造がもたらされるように、ポリマー組成物はコイル中に含浸される。
【0090】
巻線コンポーネントは、HTS材料を含む。適切なHTS材料は、例えば、希土類バリウム銅酸化物(REBCO)超伝導体材料;ビスマス、タリウム又は水銀をベースとする超伝導体材料(例えば、BSCCO、TBCCO及びHBCCO);他の銅塩をベースとする超伝導体材料;二ホウ化マグネシウム及びFeをベースとする超伝導体材料を含む。好ましくは、HTS材料は、例えば、イットリウム、サマリウム、ネオジム、ガドリニウム又はこれらの組合せ、例えば、YBaCu7-δ(YBCO)又はGdBaCu7-δ(GdBCO)を含有するREBCO材料である。しかし、本発明は、それらに限定されず、他のHTS材料を使用し得る。
【0091】
コイルは、1種以上の同時巻線材料をさらに含み得る。適切な同時巻線材料は、例えば、銅、銅合金(例えば、黄銅)、銀、チタン及び鋼(例えば、ステンレス鋼)、又は合金、例えば、ニッケル-モリブデン合金(例えば、Hastelloy C276)を含む。
【0092】
HTS材料、及び存在するとき、同時巻線材料は、コイルを形成するのに適した任意の幾可学的形状、例えば、ケーブル、ストリップ、テープ又はワイヤーでよい。一部の実施形態では、HTS材料、及び存在するとき、同時巻線材料は、層の間の境界面が実質的に平面状であるように、それぞれ独立にコイルの巻線方向を横断する実質的に平面状の表面を有する。一般に、高アスペクト材料が好ましい。一部の実施形態では、HTS材料、及び存在するとき、同時巻線材料は、少なくとも10の幅と厚さの比をそれぞれ独立に有し得る。
【0093】
本発明のポリマーが含浸されたHTSコイルは、通常の「湿式巻線」方法によって調製し得る。例えば、本発明のポリマー組成物は、巻線コンポーネントの表面へと付着し得る。次いで、コーティングされた巻線コンポーネントをコイルに巻線し、ポリマーを硬化させて、ポリマーが含浸されたHTSコイルを提供し得る。一部の実施形態では、巻線コンポーネントの表面へポリマー組成物を付着させるステップ及びコイルを巻線するステップは、併行的に行われる。
【0094】
下記の非限定的実施例は、本発明を例示するために提供し、その範囲を決して限定しない。
【実施例
【0095】
下記の実施例において、他に断りのない限り、HTSコイルは、両面上を20μmの銅で電気メッキされ、CTD-521樹脂(Composite Technology Developmentによって供給)でコーティングされた商業的に供給された4mm幅のREBCO超伝導体テープを湿式巻線することによって調製した。CTD-521樹脂は、第一級アミン硬化ビスフェノール-A/ビスフェノール-Fブレンドエポキシ樹脂である。樹脂は、2つの部分、A及びBで供給され、これは使用の前に混合される。樹脂は、供給業者が充填し得る。例えば、CTD-521-A20は、20重量%まで1μm未満の最大サイズを有するアルミナ粉末で充填される。
【0096】
他に断りのない限り、下記の実施例において使用するアモルファスダイヤモンドは、概ね5μmの標準偏差を伴って12.5μmの中央粒径を有した。
【0097】
銀コーティングされた銅フレークは、電気伝導性材料として使用した。銀コーティングは、銅の表面酸化を最小化する。銅フレークは、3μm未満の最大粒径を有した。
【0098】
実施例1:ゲージング粒子を有する及び有さないポリマー組成物の比較
2つのポリマー組成物を調製し、組成物が含浸されたHTSコイルのターン間間隔上のゲージング粒子の効果を評価した。第1のポリマー組成物は、ゲージング粒子を含有した。組成物は、CTD-521-A20樹脂、3μmの最大粒径を有する銅フレーク、及び概ね5μmの標準偏差を伴って12.5μmの中央粒径を有するアモルファスダイヤモンド粒子から調製した。ダイヤモンド粒子を、エポキシの部分Aへの60重量%のダイヤモンドの量でエポキシのビスフェノール(部分A)に加え、均一に分散させた。第2のポリマー組成物は、ゲージング粒子を含有しない比較例であった。比較上のポリマー組成物は、CTD-521-A20及び3μmの最大粒径を有する銅フレークから調製した。SEMを使用して、各ポリマー組成物が含浸されたHTSコイルの画像を得た。図2は、第1のポリマー組成物が含浸されたHTSコイルの断面を示す。白色の領域は伝導体であり、黒色の領域はエポキシである。図2Aは、第1のポリマー組成物を使用して巻線されたコイルの断面を示す。図2B~2Dは、コイルの中心、中間及び外側領域の近くのランダムに選択した場所において、ターン間間隔がダイヤモンド粒子のサイズによって設定されることを示す。図1は、ゲージング粒子を含有しない比較上のポリマー組成物が含浸されたHTSコイルの断面を示す。小さな斑点がエポキシ領域において見ることができるが、これらは主に銅フレーク又はアルミナである。2つのコイルの比較は、ターン間間隔の均一性が、ゲージング粒子を含むポリマー組成物が含浸されたHTSコイルにおいて相当に改善することを示す。
【0099】
実施例2:異なるゲージング粒子の評価
ゲージング粒子を含むエポキシ樹脂のゲージング効果が観察及び測定されると、より単純な技術を開発し、使用して、異なるサイズのゲージング材料についてのゲージング効果を検証した。最初に、金属テープを使用して、既知の内径(ID)のコイルを乾式巻線した。テープは、均一な厚さ、及び超伝導体のそれと同様の寸法を有した。ターンの必要数が巻線されると、コイルの外径(OD)を測定した。次いで、乾燥コイルを巻き戻した。下記の式を使用して、各コイルターンの厚さを計算することができ、これはまた、金属テープの厚さである。
【数1】
【0100】
次いで、金属テープの同じピース長さを使用して、エポキシが含浸されたコイルを巻線した。コイルを乾式巻線されたコイルと同じプロセスを使用して巻線したが、巻線の直前にゲージング材料を充填したエポキシ樹脂を金属テープの表面上へと塗布するさらなるステップを伴った。完全長のテープがコイル上に巻線されると、エポキシが含浸されたコイルのODを測定し、同じ式を使用して、平均ターン厚さを計算した。ターン厚さは、テープ厚さ及びエポキシ厚さの両方を含む。したがって、2つの外径の間の差異は、エポキシ厚さを与えるはずであり、これは、ゲージング材料のサイズによって設定される。
【0101】
6つのコイルを異なるサイズ及びタイプのゲージング材料と共に巻線し、この方法を使用して試験し、ゲージング概念を検証した。結果を表1において示す。コイル1及びコイル2は、参照用にさらなるフィラー材料を伴わずに巻線した。コイル3は、9.7μmの公称D50、8μmのD及び12μmのD95を有するフィラーとして6gのダイヤモンドを使用した。コイルは、ダイヤモンドフィラーの公称D50に近い層間厚さを達成した。30μmのD95を有するアルミナフィラーを使用してコイル4を巻線した。他の粒径パラメーターは不明であった。コイルは、24.7μmのゲージングを達成した。同様に、コイル5におけるような15μmのD95を有するアルミナフィラーの添加は、10.7μmのゲージングを達成した。コイル6におけるような第1の(15μm)ゲージング材料より小さなD95を有するさらなるフィラー粒子の添加は、コイル5と同じゲージングを達成したが、ターン間間隔は最も大きな粒径によって設定されることを示す。
【0102】
【表1】
【0103】
第2の一連のコイル巻線の例は、逆のプロセスに従った。コイルの設計、すなわち、ID、OD、伝導体厚さ及びターンの数を特定した。コイルのターン間厚さを固定してから、ターン間厚さを達成するのに必要とされる樹脂層の厚さをまた固定する。ゲージング粒子のサイズを決定して、エポキシ樹脂を充填するために使用し得る。表2は、このプロセスを使用して超伝導体及びチタンテープと共に同時巻線した5つのコイルの詳細を示す。表において報告したターンの数は、超伝導体のみを指す。コイル7、8、9及び10は、12.4μmのD50、並びにそれぞれ、8μm及び18μmのD及びD95を伴うゲージングのためにアモルファスダイヤモンドを使用した。コイル11は、25.2μmのD50、並びにそれぞれ、18μm及び37μmのD及びD95を伴うゲージングのためにアモルファスダイヤモンドを使用した。全ての場合において、銅は、2μmの主要な粒子長D50を有する銅フレーク粒子であった。
【0104】
【表2】
【0105】
コイルの直径を、伝統的なバーニヤキャリパスで測定した。全ての直径測定について+/-0.05mmの測定誤差を予想した。200ターンのコイルについてのこの誤差は、樹脂厚さの計算における+/-0.2μmの誤差に相当する。
【0106】
超伝導コイルを、同様の厚さの超伝導体テープ及びチタンテープと共に湿式同時巻線した。計算におけるコイルターン厚さは、超伝導体(SC)厚さ、チタン厚さ及び2層のエポキシ樹脂を含む。表において報告する樹脂厚さは、HTSの銅クラッディング及びチタンの間の単一の樹脂層を指す。
【0107】
実施例3:電気伝導性材料を含有するポリマー組成物の評価
超伝導コイルを巻線したとき、急激放電測定を行うことによって抵抗力を計算することが可能である。この方法は、その臨界電流(I)未満の電流でコイルを作動させ、コイルによって生じた磁場を安定化させることを可能とすることが関与する。次いで、コイルを開路し、コイル巻線ターン間抵抗を通してマグネット電流が熱として消散することをもたらす。コイルの中心における磁場が減衰する速度を使用して、ターン間抵抗を計算する。抵抗力を計算するための方法は、Wang et al.Supercond Sci Technol 2013,26,1-6において概説されている。
【0108】
HTSコイルの抵抗力を変更するための電気伝導性フィラー粒子の使用を評価するために、変化する量の銅フィラー粒子を伴うポリマーが含浸された一連の小さな試験コイルを調製した。コイルは、50ターンの超伝導ワイヤーを含み、25mmのID及び45mmのODを有した。コイルを、チタンワイヤー(0.175mm)と共に同時巻線した。これらのコイルのためのポリマー組成物は、15gの部分A、5.1gの部分B及び9gの12.5μmアモルファスダイヤモンド粉末を伴うCTD-521-A20エポキシから調製したが、これに、銅フレークを、試験コイル12について4.5g、試験コイル13について13.5g、及び試験コイル14について18gの量で加えた。コイルのターン間抵抗力は、Wang et al.Supercond Sci Technol 2013,26,1-6において概説した方法によって計算した。結果は、図3に示すように、ポリマー組成物へと加える銅フレークの量を変化させることによって、ポリマーが含浸されたHTSコイルのターン間抵抗力を変更し得ることを示す。
【0109】
実施例4:コイル性能の検証
ゲージング粒子及び低い熱収縮係数を有する材料を含むコイルの熱安定性は、2つの試験コイル、コイル13及びコイル15を、反復する熱サイクルに供し、熱分解が起こったかどうかを観察することによって評価した。コイル13は、実施例3からの13.5gの銅を含む同じコイルであった。コイル15は、247mmのID、及び288mmのODを有するより大きなコイルであった。コイル15を、65gの部分A、22.1gの部分B、39gのアモルファスダイヤモンド粉末及び61.1gの銅フレークと共に調製したCTD-A521-A20エポキシで含浸した。
【0110】
超伝導体コイルの超伝導性能を、臨界電流試験を行うことによって測定した。臨界電流は、コイル又は伝導体が超伝導体から通常の伝導体へ移行する電流である。臨界電流のはるかに下で、超伝導体はゼロ抵抗を有し、これは、電圧を測定することなく電流を超伝導体へと注入することができることを意味する。超伝導体がその臨界電流に近づくにつれ、電圧は増加した電流を伴ってべき法則挙動に従う。熱又は任意の他の理由のために損傷が超伝導体に起こる場合、それは、臨界電流性能の低減によって、又は超伝導状態及び正常状態の間の移行の鮮明さの低減によって直ちに観察可能である。
【0111】
有意な性能は、反復する熱サイクルによってコイル13又はコイル15において観察されなかった。
【0112】
図4は、室温及び77Kの間の3つの連続的な熱サイクルについてのコイル13の臨界電流曲線を示す。コイルは、破線によって境界が定められる電圧を超えるとき、超伝導状態及び正常状態の間を移行すると言われる。
【0113】
実施例5:チタンコーティングされたダイヤモンド粒子を含むポリマー組成物
一連の小さなコイルを、変化する量のコーティングされた及びコーティングされていないダイヤモンド粒子を充填したエポキシを使用して巻線した。上で述べたように20重量%の1μmアルミナ粉末(第2のフィラー材料)を含む、100gのCTD-521-A20を使用してコイルを巻線した。コイルは、83.6μmの厚さを有するチタンリボン、及び90μmの厚さを有するREBCO超伝導体を共に同時巻線した50ターンを含んだ。コイルを表3においてさらに詳述する。コイルのそれぞれの接触抵抗力は、40Kでアセスメントした。図5に示すように、チタンコーティングされたダイヤモンドの濃度及び接触抵抗力の間の概ね直線関係が観察された。コイル16、17、18及び19の接触抵抗を、異なる温度においてアセスメントしたが、温度の間で僅かな変動を有することが示された(図6)。
【0114】
【表3】
【0115】
本発明の範囲を上記の実施例のみに限定することは意図しない。当業者が認識するように、本発明の範囲から逸脱することなく、添付の特許請求において示したような多くのバリエーションが可能である。
図1
図2A-2B】
図2C-2D】
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】