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特表2022-549191電気アーク炉内における液体金属の撹拌方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-24
(54)【発明の名称】電気アーク炉内における液体金属の撹拌方法
(51)【国際特許分類】
   F27D 27/00 20100101AFI20221116BHJP
   F27B 3/10 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
F27D27/00
F27B3/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517742
(86)(22)【出願日】2020-09-15
(85)【翻訳文提出日】2022-05-09
(86)【国際出願番号】 IT2020050223
(87)【国際公開番号】W WO2021053701
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】102019000016790
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512288949
【氏名又は名称】ダニエリ アンド チ.オフィチーネ メカーニク エッセピア
【氏名又は名称原語表記】DANIELI&C.OFFICINE MECCANICHE SPA
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】パトリツィオ ダミアーノ
(72)【発明者】
【氏名】コドゥッティ アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ブリン パオロ
(72)【発明者】
【氏名】セラン ロマーノ
(72)【発明者】
【氏名】ガッリアルディ ニコラ
【テーマコード(参考)】
4K045
4K056
【Fターム(参考)】
4K045AA04
4K045BA01
4K045DA01
4K045RA09
4K045RB02
4K045RC01
4K045RC10
4K056AA05
4K056BA02
4K056BB08
4K056CA01
4K056EA13
(57)【要約】
電磁撹拌の第1の軸(X1)に沿った第1の電磁場と電磁撹拌の第2の軸(X2)に沿った第2の電磁場とが配されている連続投入型の電気アーク炉(10)内で液体金属を電磁撹拌するための方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁撹拌機(23,24;123,124)によって電磁撹拌の第1の軸(X1)に沿った少なくとも1つの第1の電磁場と電磁撹拌の第2の軸(X2)に沿った少なくとも1つの第2の電磁場とが生成される連続投入型の電気アーク炉(10)内における液体金属を電磁撹拌するための方法であって、
前記電気アーク炉におけるサイクルの第1のステップにおいて、前記第1の電磁場及び前記第2の電磁場によって、互いに不一致のセンスを有する混合力(F1,F2)を前記液体金属(L)に加えることと、
前記電気アーク炉における前記サイクルの第2のステップにおいて、前記第1の電磁場及び前記第2の電磁場によって、互いに一致するセンスを有する力(F1,F2)を前記液体金属(L)に加えることと、を含み、
前記第1のステップが投入ステップであり、前記第2のステップが精錬ステップである、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの投入ステップ中と前記精錬ステップ中との両方において、前記電磁撹拌の第1の軸(X1)及び前記電磁撹拌の第2の軸(X2)は、互いに平行であり、かつ、前記電気アーク炉(10)の中心と前記電気アーク炉(10)の出湯孔(17)とを通過する鉛直中央面(P)に対して平行である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの投入ステップ中に、前記混合力(F1,F2)によって、反時計回り周縁方向の液体金属(L)流が定められる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの投入ステップ中に、前記混合力(F1,F2)によって、時計回り周縁方向の液体金属(L)流が定められる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記精錬ステップ中に、前記混合力(F1,F2)によって、前記出湯孔(17)の方向の液体金属(L)流が決定され、続いて、前記出湯孔(17)の方向とは反対方向の、前記電気アーク炉(10)の中央ゾーンに向かう液体金属(L)流が定められる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの投入ステップ中及び前記精錬ステップ中に、制御ユニット(27)は、前記ステップの一方又は他方に応じて適切に方向付けられた前記第1の電磁場及び前記第2の電磁場をそれぞれ生成するように少なくとも1つの第1の電磁撹拌機(23)に第1の電流を印加するとともに少なくとも1つの第2の電磁撹拌機(24)に第2の電流を印加する動作信号を電源装置(26)に送信する、請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記制御ユニット(27)は、前記電気アーク炉(10)内に導入される金属投入物(25)の量に比例する投入信号を供給手段(13)から受信し、前記第1の電流及び前記第2の電流が前記導入される金属投入物(25)の量に比例する強度を有するように前記動作信号を前記電源装置(26)に送信する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの投入ステップ中及び前記精錬ステップ中に、前記第1の電流及び前記第2の電流は同じ強度を有する、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの投入ステップ中及び前記精錬ステップ中に、前記第1の電流及び前記第2の電流は異なる強度を有する、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの投入ステップ中に、前記第1の電流及び第2の電流は、前記精錬ステップ中における前記第1の電流及び第2の電流よりも大きい強度を有する、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的に連続的な投入により金属材料を溶融するプロセスにおいて使用可能な、電気アーク炉内における液体金属を電磁撹拌するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続投入型の金属材料を溶融するためのプラントが知られており、このプラントは、内部で金属投入物が溶融される少なくとも1つの容器又はシェルを備えた電気アーク炉を含む。
【0003】
また、電気アーク炉は、電極の通過のための開口を有する覆い屋根を備え、電極がシェルに進入して電気アークを引き起こすことを可能にし、したがって、金属投入物を溶融することを可能にする。また、屋根は、煙霧を取り出すための開口を有し、一方、シェルの底部又は側部には、通常、液体金属を出湯させるための手段がある。
【0004】
電気アーク炉は、連続投入型のシステムであり得る金属材料を供給する手段と関連付けられている。
【0005】
連続投入型のソリューションは、サイクル開始時に炉の底部において溶融されるべき金属材料の塊を作り出すために、炉のスイッチが切断された状態で第1の開始投入を行うためのバスケット付き投入システムを通常使用する。通常、この塊が完全に溶融されると、炉内にスクラップを連続的に投入するプロセスが開始される。
【0006】
最も一般的なソリューションでは、電気アーク炉は、シェルの底部に「偏心ボトムタッピング」又はEBTと呼ばれる偏心出湯孔を有するか、あるいは代替的に、出湯ステップ中にシェルから溶融金属を取り出すための出湯口を有する。
【0007】
出湯ステップは精錬ステップの後に続くステップであって、この出湯ステップ中に、得ようとする鋼のレシピに応じて特定の成分が溶融金属内に導入され、これにより、溶融金属の品質が向上する又は溶融金属に所望の特性が与えられる。
【0008】
このタイプの溶融プロセスにおける最も一般的な欠点の1つは、シェル内部の溶融金属の温度の均一化に関するものである。
【0009】
溶融金属の塊の温度における均一性の欠如は、いくつかの成分の望ましくない濃度、プロセスパラメータの不正確な測定、局在的温度ピーク、部品の早すぎる摩耗又は当該分野で知られている他の問題などの問題を生じさせ得る。
【0010】
これらの問題を解決するために電磁撹拌機を使用することが知られており、これは通常、炉の底部の下に配置されるか、又はせいぜい炉の側壁に関連付けられる。
【0011】
例えば、国際公開第WO2018/145754号明細書には、シェルの底部の下の略中央位置に配置され、シェルの中心及び出湯孔若しくは出湯口を通過する中央鉛直面と交差する電磁撹拌軸を有する電磁撹拌機を備える電気アーク炉が記載されている。
【0012】
また、公知の欧州特許第2616560号明細書には、炉の中心軸に対して対向する2つの電磁撹拌機を備える電気アーク炉が記載されている。
【0013】
また、公知の米国特許第3,409,726号明細書には、概して、溶融金属を通過する直流の極性又は電磁石の励磁電流を反転させることにより、溶融金属の移動方向を容易に反転できることが示されている。上記米国特許第3,409,726号明細書には、シェルの底部の中心に軸を有する磁極を使用すること、あるいはこの中心磁極に加えて、電気炉の外周上に径方向にかつ等距離に配置された3つの磁極を使用することが記載されている。
【0014】
特開平62-73591号公報には、電気アーク炉用の磁気撹拌装置が記載されている。この装置は、溶融サイクルの異なるステップに関連して炉の下で移動してさまざまな位置をとることができる電磁撹拌機を備えている。
【0015】
撹拌機を用いて炉内の溶融金属を撹拌するよう構成されたソリューションでは、通常、撹拌機自体の作用と溶融サイクルのステップとの間の相関関係はない。
【0016】
そのため、液体金属の速度がより速い場所にあるシェルの内壁が過度に摩耗する可能性があり、また、液体金属が周囲の液体金属と最適に融着せず停滞する傾向にあるデッドゾーンがもたらされる可能性がある。
【0017】
したがって、従来技術の欠点を克服することができる、電気アーク炉内で液体金属を電磁撹拌するための方法を完璧にする必要がある。
【0018】
特に、本発明の1つの目的は、電気アーク炉内の液体金属の電磁撹拌のための方法を完璧にすることであり、それは、炉の壁及び底部における差異のある摩耗の問題を防止し、液体金属の塊全体にわたって温度を均一にし、炉内の溶融及び精錬ステップの効率を高める。
【0019】
本出願人は、最新技術の欠点を克服し、上記の及び他の目的及び利点を得るために、本発明を考案し、試験し、具体化した。
【発明の概要】
【0020】
本発明は、独立請求項において記載され特徴付けられる。従属請求項は、本発明の他の特徴又は本発明の主な概念の変形を記載する。
【0021】
上記目的に従って、本発明は、電気アーク炉内の溶融サイクルに関連して液体金属を電磁撹拌するための方法であって、金属投入物が炉内に導入される少なくとも1つの投入ステップと、溶融ステップと、電気アーク炉内の液体金属を精錬するステップと、を提供する方法に関する。
【0022】
本発明の一態様では、このような電磁撹拌は、炉床又は炉の底部の下に配置された少なくとも2つの電磁撹拌機によって電磁撹拌の第1の軸に沿った少なくとも1つの第1の電磁場と電磁撹拌の第2の軸に沿った少なくとも1つの第2の電磁場とが生成される連続投入型の電気アーク炉において適用される。
【0023】
本発明の一態様によれば、前記炉のサイクルの少なくとも第1のステップにおいて、第1の電磁場及び第2の電磁場によって互いに不一致のセンスを有する混合力を液体金属に加え、前記炉のサイクルの少なくとも第2のステップにおいて、前記第1の電磁場及び第2の電磁場によって互いに一致するセンスを有する上記力を液体金属上に加える。
【0024】
本明細書における「不一致」との用語は、第1の電磁撹拌機によって生成される混合力の軸が、第2の電磁撹拌機によって生成される混合力の軸に対して反対のセンス(sense、意味)を有することを示す。一方、「一致」との用語は、両方の電磁撹拌機によって生成される混合力の軸が同じセンスを有する即ち同じ方向であることを示す。
【0025】
このように、力の軸のセンスが不一致、即ち反対方向である場合、鋼の撹拌はシェルの周縁全体に向かって広がり、鋼が略円形にかつシェルの耐火壁に対して接線方向に移動することとなる。
【0026】
一方、電磁力の軸のセンスが一致する場合、両方の撹拌機によって炉の同じ周縁ゾーンに向かう鋼の動きが促進され、鋼は縁部で跳ね返り中心に向かって戻る。
【0027】
溶融プロセスのステップに関連して混合作用を異ならせることにより、非常に均一な熱物理特性及び化学成分特性を有する液体金属が得られることに加えて、電気アーク炉の全体的なエネルギー消費を最適化でき、全体的なサイクル時間を減少させることができる。
【0028】
本発明の上記の及び他の態様、特徴及び利点は、添付の図面を参照して非限定的な例として与えられるいくつかの実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【0029】
理解を容易にするために、場合によっては、図面において同一の共通の要素を示すために同一の参照符号が使用される。1つの実施形態の要素及び特徴は、さらなる説明がなくとも他の実施形態に適宜組み込むことができることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の電磁撹拌方法を適用可能な電気アーク炉の概略断面図である。
図2】本発明に係る撹拌方法の概略図である。
図3】本発明に係る撹拌方法の概略図である。
図4a】本発明の電磁撹拌方法が適用可能な電気アーク炉における電磁撹拌機の考え得る代替配置の概略図である。
図4b】本発明の電磁撹拌方法が適用可能な電気アーク炉における電磁撹拌機の考え得る代替配置の概略図である。
図4c】本発明の電磁撹拌方法が適用可能な電気アーク炉における電磁撹拌機の考え得る代替配置の概略図である。
図4d】本発明の電磁撹拌方法が適用可能な電気アーク炉における電磁撹拌機の考え得る代替配置の概略図である。
図4e】本発明の電磁撹拌方法が適用可能な電気アーク炉における電磁撹拌機の考え得る代替配置の概略図である。
図4f】本発明の電磁撹拌方法が適用可能な電気アーク炉における電磁撹拌機の考え得る代替配置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の考え得る実施形態について以下に詳細に説明するが、そのうちの1つ又は複数の例を添付の図面に示す。各例は、本発明を図で説明するために提供されたものであり、本発明を限定するものとして理解されるべきではない。例えば、一実施形態の一部として図示又は記載された特徴は、変更され、他の実施形態に適用又は関連付けられて他の実施形態を作り出すことができる。本発明は、全てのこのような修正及び変更を含むことが理解される。
【0032】
これらの実施形態について説明する前に、本明細書の記載は、その適用が、添付の図面を使用して以下の説明のなかで記載される構成要素の構成及び配置の詳細に限定されないことも明らかにしなければならない。本明細書の記載は他の実施形態を提供することができ、様々な他の方法で取得又は実行することができる。また、本明細書において使用される語法及び用語は、説明のみを目的としたものであり、限定的なものと見なすことはできないことを明らかにしなければならない。
【0033】
添付の図面に示される実施形態は全体として参照符号10で示される電気アーク炉に関し、この電気アーク炉内で液体金属Lが本発明の電磁撹拌方法に従って混合される。
【0034】
電気アーク炉10は交流(AC)によって電力供給されるタイプのものであってもよく、特徴として3つ以上の電極14を有し、これらの間で電気アークが生じて溶融プロセスが開始及び/又は継続されるか、あるいは、電気アーク炉10は直流(DC)によって電力供給されるタイプのものであってもよく、特徴として中央に配置された1つ又は2つの電極14を有し、これが電気アークを生成するために電気アーク炉10の底部に配置されたアノードと協働するカソードとして機能する。
【0035】
本明細書で説明する図面では交流(AC)によって電力供給されるタイプの電気アーク炉10を参照するが、以下に記載する概念は直流(DC)によって電力供給されるタイプの電気アーク炉10にも適用可能であることは明らかである。
【0036】
図1に示す実施形態では、電気アーク炉10は、その本質的な部分において、容器又はシェル11と、シェル11の上方に配置されシェル11を覆うカバー要素又は屋根12と、を備える。
【0037】
電気アーク炉10と共に、例えばスクラップSを含み得る金属投入物25を連続的に供給するための関連手段13が存在する。
【0038】
供給手段13は既定の供給軸Zに従って金属投入物25を移動させるのに適している。
【0039】
いくつかの実施形態では、供給手段13は図1図3のように横方向に配置することができ、電気アーク炉10の側面に対して又は上部において金属投入物25を導入して、屋根12に作られた開口から金属投入物25を導入するよう構成される。
【0040】
金属投入物25は知られた方法で供給手段13上に配置され、大きなばらつきを有し得る既定のサイズを有することができる。
【0041】
電極14を収容及び/又は位置決めするための(複数の)孔が屋根12内に形成されており、電極14はシェル11内に存在する金属投入物を溶融させるための電気アークを発生させるのに適している。
【0042】
屋根12及び電極14は、屋根12及び電極14を場合によっては互いに独立して持ち上げるのに適した持ち上げ及び回転装置に関連付けられている。
【0043】
シェル11には、炉の底部又は炉床15と、溶融ステップにおいて到達する高温及び高反応性環境に耐えるために少なくとも部分的に耐火材料で作られた側壁16と、が設けられている。
【0044】
底部15には、「エキセントリック・ボトム・タッピング」(EBT)とも呼ばれる偏心出湯孔17が設けられてもよい、あるいは代替的に又は付加的に、出湯ステップ中にシェル11から溶融金属を取り出すための出湯口が設けられてもよい。
【0045】
シェル11は不図示の支持体に取り付けられており、シェル11自体を既定の回転軸の周りに回転させるための作動手段が従来の方法で設けられている。
【0046】
また、炉10は、シェル11の上縁に載置される下縁19を有するライニング18を備える。
【0047】
一般に冷却されたパネルからなるライニング18は、シェル11の壁と略連続して延在し、その上に屋根12が配置されてシェル11が閉じられる。
【0048】
ライニング18には第1の開口部20と第2の開口部とが設けられており、金属投入物25を供給するために供給手段13が第1の開口部20を通って配置されており、第2の開口部を介してスラッギング動作を行うことができる。
【0049】
シェル11の内部において、第1の開口部20の下方に、新たに導入された金属投入物25が蓄積する投入ゾーン28がある。
【0050】
投入ゾーン28は電極14が存在する電気アーク炉10の中央ゾーンに対する周縁位置に位置する。
【0051】
第2の開口部は、図2図3に示すように、一般に出湯孔17とは反対の位置に位置するスラッギングドア22によってアクセス可能/アクセス不可能に選択的に構成することができる。
【0052】
図2及び図3に示すいくつかの実施形態では、電気アーク炉10は、製錬プロセス中にシェル11内に存在する液体金属Lに混合力F1,F2を加えるように構成された2つの電磁撹拌機23,24をシェル11の下側に備えている。
【0053】
図面において見られるように、電磁撹拌機23,24は、中央面Pに関して一対の電磁撹拌機を形成するように対向してかつ鏡面的に配置することができる。
【0054】
電気アーク炉10は、電磁撹拌機23,24に電力供給するように構成された電源装置26と、電磁撹拌機23,24の駆動を制御するために電源装置26に動作可能に接続された制御ユニット27と、を備える。
【0055】
いくつかの実施形態では、各電磁撹拌機23,24は導電性材料のコイルが周りに巻かれた磁性材料で作られた本体を備える。コイルは電源装置26によって電流が印加されるように構成され、これにより、電磁撹拌機23,24の電磁撹拌の軸の方向に磁場が発生する。
【0056】
いくつかの実施形態では、制御ユニット27を用いて電源手段13と電極14とを動作可能に関連付けることができる。
【0057】
第1の電磁撹拌機23は、電磁撹拌の第1の軸X1に沿った第1の電磁場を生成するように電流が印加される。
【0058】
第2の電磁撹拌機24は、電磁撹拌の第2の軸X2に沿った第2の電磁場の力を生成するように電流が印加される。
【0059】
図4に示すさらなる実施形態では、3つ以上の多数の電磁撹拌機123,124が設けられてもよく、これにより、電磁撹拌の軸Xに沿った対応する数の電磁場が生成される。
【0060】
いくつかの実施形態では、電磁撹拌機123,124は、例えば2対(図4a及び図4d)以上、例えば3対(図4e)の、対の電磁撹拌機を形成するように配置することができる。
【0061】
代替的な実施形態では、対をなす対向する電磁撹拌機123が中央面Pに対してオフセットして(図4d)又は整列して(図4e)配置されてもよい。
【0062】
他の実施形態では、1対のうちの電磁撹拌機123,124を中央面Pに対して異なる距離に配置することができる(図4d)。
【0063】
他の実施形態では、電磁撹拌機123,124の別々の対を中央面Pから異なる距離に配置することができる(図4a)。
【0064】
さらなる実施形態では、例えば3つ又は5つなどの奇数個の電磁撹拌機123,124を設けてもよい(図4b、図4c)。
【0065】
奇数個の電磁撹拌機123,124が設けられる実施形態では、少なくとも2つの撹拌機を中央面Pに対して対向する対(図4b)として配置することができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の電磁撹拌機123,124を中央面P(図4b、図4c)に実質的に対応して配置することができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、中央面Pによって電磁撹拌機123,124の数が非対称に分けられてもよい(図4c)。
【0068】
他の実施形態では、電磁撹拌機123,124は、それらの撹拌軸Xが中央面Pに対して傾斜するように、例えば直交するように配置されてもよい(図4f)。
【0069】
不図示のさらなる実施形態では、電気アーク炉10は、互いに対して異なる向きに配された撹拌軸Xを有する電磁撹拌機123,124を備えることができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、電磁撹拌機123,124は、シェル11のサイズに対して及び/又は所望の配置に対して適切なサイズを有することができる。
【0071】
不図示のいくつかの実施形態では、互いに異なるサイズの電磁撹拌機123,124が設けられた電気アーク炉10が提供されてもよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、電磁撹拌の第1の軸X1及び電磁撹拌の第2の軸X2は、互いに平行であり、中央面Pと平行である。
【0073】
中央面Pは鉛直方向に沿っており、かつ、シェル11の底部15の中心を通り、かつ、出湯孔17を通るかあるいは代替的に出湯口を通る。
【0074】
中央面Pは、少なくともシェル11について対称面とすることができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、シェル11は上面断面が、例えば、円周、放物線、楕円、線を含むグループから適切に選択される1つ又は複数の曲線を接続させて画定される湾曲形状を有してもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、シェル11は出湯孔17の方向に細長い湾曲形状を有し、したがって、出湯孔17はシェル11の中心からかなり遠くに位置する。
【0077】
例として図2及び図3を参照すると、電気アーク炉10内で液体金属Lを電磁撹拌するための方法が記載されている。
【0078】
電気アーク炉10内では溶融ステップが実行され、溶融ステップは少なくとも1つの投入ステップを含み、この投入ステップ中に金属投入物25が導入され、溶融されて、これが既に溶融された液体金属Lに加えられ、続いて、電気アーク炉10内の液体金属Lを精錬するステップが行われる。
【0079】
本発明に係る連続投入型の電気アーク炉10内における液体金属を電磁撹拌するための方法では、電磁撹拌の第1の軸X1に沿った第1の電磁場と電磁撹拌の第2の軸X2に沿った第2の電磁場とが生成される。
【0080】
本発明の一態様によれば、第1のステップにおいて、前記第1の電磁場及び前記第2の電磁場によって、互いに不一致のセンスを有する混合力F1,F2が液体金属Lに加えられ、第2のステップにおいて、前記第1及び第2の電磁場によって、互いに一致するセンスを有する力F1,F2が液体金属Lに加えられる。
【0081】
有利なソリューションにおいては、前記第1のステップは投入ステップであり、前記第2のステップは精錬ステップである。
【0082】
図2及び図3に示すいくつかの実施形態では、少なくとも1つの投入ステップ中と精錬ステップ中との両方において、電磁撹拌の第1の軸X1及び電磁撹拌の第2の軸X2は互いに平行であり、かつ、中央面Pに平行であり、かつ、電気アーク炉10の中心を通り電気アーク炉10の出湯孔17を通る。
【0083】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの投入ステップ中において、図2のように、混合力F1,F2によって反時計回り周縁方向の液体金属L流が定められる。
【0084】
換言すると、上記投入ステップにおいて、第1の電磁撹拌機23及び第2の電磁撹拌機24のそれぞれの混合力F1,F2が発生する軸は互いに反対の方向即ち不一致の方向に向いている。図2において、反対の(相対する)センスの力の発生が、電磁撹拌機23についてはF3で示され電磁撹拌機24についてはF4で示されている。
【0085】
このようにして、鋼の撹拌がシェル11の周縁全体に向かって広がり、液体金属Lが略円形にかつシェル11の耐火壁に対して接線方向に移動する。
【0086】
他の実施形態では、混合力F1,F2によって時計回り周縁方向(不図示)の液体金属L流が定められる。
【0087】
電磁撹拌機23,24の位置と、電磁撹拌のそれぞれの軸X1,X2によって規定されるそれらの撹拌作用の反対で不一致の方向とによって、金属投入物25を最適な態様で投入ゾーン28に対応して導入及び蓄積させるような効果をもたらすことができる。撹拌力の方向のおかげで、導入された新たな金属投入物25を先の金属投入物に徐々に組み込ませることができ、したがって、温度の均一性が、電気アーク炉10の中心から遠く離れて配置された出湯孔17のゾーンとも一致するよう向上される。
【0088】
さらに、電磁撹拌機23,24のこの構成及び作動モードによって、速度のより均一な分布を得ることができ、これにより、液体金属Lの流れにおける渦及び/又は不安定性を防ぐことができる。
【0089】
この場合、液体金属Lの流れは略円形でありかつシェル11の側壁16に対して接線方向であることから、運動量の径方向成分が減少している。このことは側壁16に対する侵食作用を制限するのに役立ち、したがって頻繁な保守及び修理介入の必要性を低減する。
【0090】
いくつかの実施形態では、精錬ステップ中において、混合力F1,F2は一致したセンスを有する。即ち、電磁撹拌機23及び24は、生成される電磁力の軸(図3において、電磁撹拌機23については矢印F5で示され、電磁撹拌機24については矢印F4で示されている)が同じ方向及びセンスを有するように電源供給される。
【0091】
この場合、撹拌機23,24の両方によって、炉10の同じ周縁ゾーンに向かって、特に偏心出湯孔17に向かって、液体金属Lが移動することが促進され、液体金属Lはその後、縁部で跳ね返って中心に向かって戻り、図3に示すスラッギングドア22の方向に移動する。
【0092】
このことはまた、シェル11の側壁16に対応して液体金属Lの流れがより速い速度で移動する投入ステップ中に殆ど混合されないシェル11の中央ゾーンについて温度を均一化することも可能にする。
【0093】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの投入ステップ中及び精錬ステップ中に、制御ユニット27は電源装置26に制御信号を送信し、電源装置26は、上記のように、第1の電磁撹拌機23に第1の電流を印加し、第2の電磁撹拌機24に第2の電流を印加して、上記ステップの一方又は他方に応じて互いに不一致の(即ち反対の)センスかあるいは一致したセンス(即ち同じ方向)に適切に向けられた第1の電磁場及び第2の電磁場をそれぞれ生成するよう構成される。
【0094】
いくつかの実施形態では、制御ユニット27は、電気アーク炉10内に導入された金属投入物25の量に比例する投入信号を供給手段13から受信し、動作信号を電源装置26に送信して、導入される金属投入物25の量に基づいて第1の電流及び第2の電流を規定することができる。
【0095】
導入される金属投入物25の量が多いほど、それぞれの混合力F1,F2が大量の液体金属Lを撹拌しなければならないので電流の強度が大きくなる。
【0096】
これにより、電磁撹拌機23,24の撹拌作用を自動的に調整することができ、常に液体金属Lを完全かつ均一に混合することができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの投入ステップ中及び精錬ステップ中に、第1の電流及び第2の電流は同じ強度を有することができる。
【0098】
さらなる実施形態では、少なくとも1つの投入ステップ中及び精錬ステップ中に、第1の電流及び第2の電流は異なる強度を有することができる。
【0099】
特に、投入ステップ中に、第1の電流及び第2の電流は、精錬ステップ中における第1の電流及び第2の電流よりも大きい強度を有することができる。
【0100】
実際、部分的に溶融された及び/又は固体状態にある金属投入物25の存在により、混合力F1,F2は、溶融プロセスの終わり及び精錬ステップ中に液体金属Lを撹拌するのに必要な混合力よりも大きい必要がある。
【0101】
上記のように投入ステップ及び精錬ステップに関連して及び/又は導入される金属投入物25の量に応じて電流の強度を変化させることにより、電気アーク炉10の全体的なエネルギー消費を最適化することができる。
【0102】
本発明の分野及び範囲から逸脱することなく上記の電気アーク炉内で液体金属を電磁撹拌するための方法に対してステップの変更及び/又は追加を行うことができることは明らかである。
【0103】
また、本発明についていくつかの具体例を参照して説明したが、当業者は、特許請求の範囲に記載された特性を有し、したがってそれによって規定された保護分野内にある電気アーク炉内で液体金属を電磁撹拌するための方法の多くの他の同等の形態を確実に達成することができるはずであることも明らかである。
【0104】
以下の特許請求の範囲において、括弧内の参照符号の唯一の目的は読解を容易にすることであり、これらは特定の請求項において請求されている保護分野に関する限定的な要素とみなしてはならない。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図4f
【国際調査報告】