(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-24
(54)【発明の名称】微細構造体を推進および操舵するための装置
(51)【国際特許分類】
A61M 25/082 20060101AFI20221116BHJP
【FI】
A61M25/082 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517819
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(85)【翻訳文提出日】2022-05-11
(86)【国際出願番号】 FR2020051623
(87)【国際公開番号】W WO2021053305
(87)【国際公開日】2021-03-25
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521440482
【氏名又は名称】ロビューテ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ドゥプラット,ベルトランド
(72)【発明者】
【氏名】オウルマス,アリ
(72)【発明者】
【氏名】フランコイズ,クエンティン
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA01
4C267AA32
4C267AA56
4C267BB03
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB26
4C267BB31
4C267BB40
4C267BB42
4C267BB44
4C267BB47
4C267BB48
4C267BB54
4C267CC12
4C267CC19
4C267CC22
4C267GG31
(57)【要約】
本装置(1)は、
-前部(21)および後部(23)を接続する主軸(X
2)に沿って伸長/収縮変形可能な少なくとも1つの部分(20)を含む推進要素(2)と、
-エネルギー供給の影響下で、互いおよび推進要素の主軸(X
2)を横切る第1の回転軸および第2の回転軸それぞれの周りに、推進要素(2)の回転を発生させるように適合された少なくとも2つのガイド要素(3、5、7)と、
-主軸(X
2)に沿って伸長/収縮する推進要素(2)の変形可能要素(20)の変形と協調して、主軸(X
2)を横切る少なくとも1つの軸の周りに推進要素(2)の回転を作動させるように構成された制御ユニット(9)と
を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-推進要素(2)の前部(21)および後部(23)を接続する主軸(X
2)に沿って伸長/収縮変形可能な少なくとも1つの部分(20)を含む推進要素(2)と、
-エネルギー源へのそれぞれの接続(83、85、87;63、65)によるエネルギー供給の影響下で、互いおよび前記推進要素の前記主軸(X
2)を横切る第1の回転軸および第2の回転軸それぞれの周りに、前記推進要素(2)の回転を発生させるように適合された少なくとも2つのガイド要素(3、5、7;43、45)と、
-エネルギー源への前記接続(83、85、87;63、65)の1つ以上を選択的に制御することによって、前記主軸(X
2)に沿って伸長/収縮する前記推進要素(2)の前記変形可能部(20)の変形と協調して、前記主軸(X
2)を横切る少なくとも1つの軸の周りに前記推進要素(2)の回転を作動させるように構成された制御ユニット(9)であって、前記ガイド要素(3、5、7;43、45)は、エネルギー源へのそれぞれの接続(83、85、87)によるエネルギー供給の影響下で可逆的に変形可能な活性材料に基づく少なくとも2つのガイドセグメント(3、5、7)をさらに備え、各ガイドセグメント(3、5、7)は、エネルギー供給の影響下で、その変形によって、前記推進要素の前記主軸(X
2)を横切る回転軸の周りに前記推進要素(2)の回転を発生させるように適合される、制御ユニットと
を備える、可撓管またはマイクロロボットなどの微細構造体(10)を推進および操舵するための装置(1)。
【請求項2】
少なくとも1つのガイドセグメント(3、5、7)は、電気活性材料またはバイメタル要素を含み、前記装置(1)は、その変形を活性化するために前記ガイドセグメント(3、5、7)に接続された電気エネルギー源(83、85、87)を備える、先行する請求項に記載の推進および操舵装置。
【請求項3】
少なくとも1つのガイドセグメント(3、5、7)は、光活性材料を含み、前記装置(1)は、その変形を活性化するために、前記ガイドセグメント(3、5、7)に対向してその放射光が放射される放射源(83’、85’、87’)を備える、請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の推進および操舵装置。
【請求項4】
前記ガイドセグメント(3、5、7)の少なくとも2つは、それらが同時に変形する場合、前記主軸(X
2)に沿って伸長/収縮する前記推進要素(2)の前記変形可能部(20)の変形を作動させ、それらが選択的に変形する場合、前記主軸(X
2)を横切る回転軸の周りに前記推進要素(2)の回転を作動させるように構成される、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の推進および操舵装置。
【請求項5】
前記ガイド要素は、電気エネルギー源へのそれぞれの接続(63、65)を各々設けた少なくとも2つの電磁ガイドコイル(43、45)を備え、これらは、前記推進要素(2)に固定された磁石(41)とともに電磁トランスデューサ(4)を形成し、前記磁石(41)は、静止位置において前記推進要素(2)の前記主軸(X
2)に平行であり、各ガイドコイル(43、45)は、電気エネルギー供給の影響下で、前記磁石(41)のその静止位置に対する回転を発生させて、前記推進要素の前記主軸(X
2)を横切る回転軸の周りに前記推進要素(2)の回転を引き起こすように適合される、先行する請求項のいずれか1項に記載の推進および操舵装置。
【請求項6】
電気エネルギー源へのそれぞれの接続(62)を設けた線形作動電磁コイル(42)をさらに備え、これも、前記推進要素(2)に固定された前記磁石(41)とともに電磁トランスデューサ(4)を形成し、前記線形作動コイル(42)は、電気エネルギー供給の影響下で、前記主軸(X
2)に平行な前記磁石の移動を発生させて、前記主軸(X
2)に沿って伸長/収縮する前記推進要素(2)の前記変形可能部(20)の変形を引き起こすように適合される、請求項5に記載の推進および操舵装置。
【請求項7】
前記制御ユニット(9)は、前記主軸(X
2)に沿った伸長/収縮によって、前記推進要素(2)の前記変形可能部(20)の変形を作動させるようにさらに構成される、先行する請求項のいずれか1項に記載の推進および操舵装置。
【請求項8】
前記主軸(X
2)に沿って伸長/収縮する前記推進要素(2)の前記変形可能部(20)の変形を作動させるように構成された、電磁トランスデューサまたはポンプなどのアクチュエータ(41、42)を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の推進および操舵装置。
【請求項9】
前記少なくとも2つのガイド要素(3、5、7;43、45)は、前記変形可能部(2)の半径方向外側に位置付けられることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の推進および操舵装置。
【請求項10】
前記変形可能部(2)は、前記前部(21)と前記後部(23)との間に配置された揺動ディスク(30)を含み、前記少なくとも2つのガイド要素(3、5、7;43、45)は、前記後部(23)と前記揺動ディスク(30)との間に配置されることを特徴とする、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の推進および操舵装置。
【請求項11】
可撓管またはマイクロロボットなどの微細構造体(10)を推進および操舵するための方法であって、
-請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の推進および操舵装置(1)を備える前記微細構造体(10)が、10
-5~10
-1の間に含まれる低いレイノルズ数を有する流体中に導入され、
-エネルギー源への接続(83、85、87;63、65)の1つ以上を、制御ユニット(9)を使用して選択的に制御することによって、主軸(X
2)に沿って伸長/収縮する推進要素(2)の変形可能部(20)の変形と協調して、前記主軸(X
2)を横切る少なくとも1つの軸の周りの前記推進要素(2)の回転が作動される、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体中、特に、動脈もしくは静脈などの被検体の血管中、または脳、心臓、肝臓、膵臓などの被検体の臓器中を移動することを意図された微細構造体、例えば、ステントもしくはカテーテルなどの可動性可撓管、またはさらにはマイクロロボットを推進および操舵するための装置に関する。可動性可撓管またはマイクロロボットは、特に低侵襲手術または標的療法に関連する様々な生物医学的操作を行うために使用され得る。
【背景技術】
【0002】
損傷を与えずに深部構造および機能性構造に到達する能力は、低侵襲手術、特に脳神経外科手術における主要な課題である。マイクロテクノロジーのおかげで、完全自律型微小医療装置を被験体の血管または臓器の内部に送ることが可能となっている。しかし、そのような微小医療装置は、不均一かつ敏感な環境中でも、少なくとも装置のサイズに等しい正確度で、3次元でのその推進および操舵を可能とするシステムを必要とする。
【0003】
これに関連して、本発明は、微細構造体が移動する環境の完全性を可能な限り維持しながら、少なくとも微細構造体のサイズに等しい正確度で、低レイノルズ数の流体環境中を含めて微細構造体の効果的かつ信頼性の高い推進および操舵を可能とする、可撓管またはマイクロロボットなどの微細構造体を推進および操舵するための装置を提供することを目標とする。
【発明の概要】
【0004】
この目標のために、本発明は、
-推進要素の前部および後部を接続する主軸に沿って伸長/収縮変形可能な少なくとも1つの部分を含む推進要素と、
-エネルギー源へのそれぞれの接続によるエネルギー供給の影響下で、互いおよび推進要素の主軸を横切る第1の回転軸および第2の回転軸それぞれの周りに、推進要素の回転を発生させるように適合された少なくとも2つのガイド要素と、
-エネルギー源への接続の1つ以上を選択的に制御することによって、主軸に沿って伸長/収縮する推進要素の変形可能部の変形と協調して、主軸を横切る少なくとも1つの軸の周りに推進要素の回転を作動させるように構成された制御ユニットであって、ガイド要素は、エネルギー源へのそれぞれの接続によるエネルギー供給の影響下で可逆的に変形可能な活性材料に基づく少なくとも2つのガイドセグメントをさらに備え、各ガイドセグメントは、エネルギー供給の影響下で、その変形によって、推進要素の主軸を横切る回転軸の周りに推進要素の回転を発生させるように適合される、制御ユニットと
を備える、可撓管またはマイクロロボットなどの微細構造体を推進および操舵するための装置を目的とする。
【0005】
本発明に係る推進および操舵装置は、推進要素の変形可能部の変形によって得られる微細構造体の推進と協調して、互いおよび主軸を横切る少なくとも2つの回転軸の周りの推進要素の回転を作動させる能力により、微細構造体の3次元での操舵を可能とする。本発明の文脈では、2つの軸は、平行でない場合に互いを横切り、これは2つの軸が互いに垂直な場合を含むが、それに限定されない。
【0006】
本発明の文脈では、回転の作動は、移動する環境中、特に低レイノルズ数の流体環境中での微細構造体の所望の運動および軌道を得るために、推進要素の変形可能部の変形と協調して、特に同時にまたは順次に実行される。より具体的には、回転の作動は、推進要素の変形可能部の変形と同時に、または推進要素の変形可能部の変形と順次に、すなわち、回転および変形が次々と、特に繰り返して行われるように、実行され得る。
【0007】
本発明の文脈では、本発明に係る推進および操舵装置を備える微細構造体は、典型的には、5mm以下、具体的には2mmまたは1mm以下の外径を有する。
【0008】
1つの特徴によれば、推進要素は、少なくとも第1のガイドセグメントおよび第2のガイドセグメントを備え、その結果、第1のガイドセグメントの変形が、推進要素の主軸に垂直な第1の回転軸の周りの推進要素の回転を発生させ、第2のガイドセグメントの変形が、推進要素の主軸および第1の回転軸の両方に垂直な第2の回転軸の周りの推進要素の回転を発生させる。
【0009】
ガイドセグメントの実施形態によれば、当該セグメントは、活性材料でコーティングされた、推進要素の変形可能部の領域である。ガイドセグメントの別の実施形態によれば、当該セグメントは、推進要素の変形可能部に取り付けられた、活性材料を設けた支持体を備えるセグメントである。
【0010】
一実施形態によれば、推進要素の変形可能部は、0.1~10GPa、好ましくは0.5~2GPaの範囲に含まれるヤング率を有する材料で作製される。一実施形態では、推進要素の前部、後部、および変形可能部の全てが、同じ材料で作製される。一実施形態では、前部、後部、および変形可能部の構成材料は、生体適合性ポリマーである。前部、後部、および/または変形可能部に適した材料の例は、MICRO RESIST TECHNOLOGY GmbH社製の製品ORMOCLEARなどの、UV硬化性無機-有機ハイブリッドポリマーである。
【0011】
一実施形態では、少なくとも1つのガイドセグメントは、電気活性材料またはバイメタル要素を含み、推進および操舵装置は、その変形を活性化するためにガイドセグメントに接続された電気エネルギー源を備える。具体的には、エネルギー源は、ガイドセグメントの電気活性材料またはバイメタル要素に電線またはケーブルで接続された電源である。
【0012】
本発明の文脈では、電気活性材料は、電気エネルギー供給の影響下で、特にその形状またはそのサイズを変化させることによって変形する材料である。本発明の文脈における好適な電気活性材料の例としては、ニチノールなどの形状記憶合金、または電気活性ポリマー(EAP)、特に誘電性電気活性ポリマーおよびはイオン性電気活性ポリマーが挙げられる。非限定的な例として、本発明に関連して使用することができるイオン性電気活性ポリマーは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)である。
【0013】
本発明の文脈では、バイメタル要素は、材料が導電性である場合には特に電流によってもたらすことができる熱供給の影響下で、異なる機械的特性に従って個々に弾性変形する2つの材料を含む要素であり、それらの緊密な接触によって、バイメタル要素の極めて著しい変形を生み出す。そのようなバイメタル要素は、特に、2つの金属ストリップの共圧延によって形成され得る。本発明の文脈における好適なバイメタル要素の例は、銅および鋼のバイメタル、または鉄およびニッケルのバイメタルであるが、それは、これらが全く異なる熱膨張係数を有する金属材料を組み合わせたバイメタルであるからである。
【0014】
一実施形態では、少なくとも1つのガイドセグメントは、光活性材料を含み、推進および操舵装置は、その変形を活性化するために、ガイドセグメントに対向してその放射光が放射される放射源を備える。具体的には、放射源は、レーザ光源またはLED(発光ダイオード)であり、その放射光は、ガイドセグメントの光活性材料に対向して位置付けられた遠位端を有する光ファイバを使用して、ガイドセグメントの光活性材料まで透過される。
【0015】
本発明の文脈では、光活性材料は、放射光の影響下、特に光エネルギー供給の影響下で変形する材料である。本発明の文脈における好適な光活性材料の例は、アゾベンゼン分子を含む液晶のネットワークを含む。放射源は、可視スペクトルの全波長を含む白色光源であり得る。非限定的な例として、本発明に関連して使用することができる光活性材料は、特に酸処理によってヒドロキシアゾピリジニウム形態に局所的に変換されたアゾメロシアニン色素を含有する、二重感光性液晶に基づくアクチュエータである。
【0016】
1つの特徴によれば、前述のガイドセグメントの少なくとも2つは、それらが同時に変形する場合、主軸に沿って伸長/収縮する推進要素の変形可能部の変形を作動させ、それらが選択的に変形する場合、主軸を横切る回転軸の周りに推進要素の回転を作動させるように構成される。ガイドセグメントに選択的にエネルギーを供給することによって、推進要素の回転および伸長/収縮変形を作動させることが可能であり、これは、微細構造体の方向操舵および推進を確実に行うことを可能とする。
【0017】
1つの特徴によれば、ガイドセグメントは、推進要素の主軸の周りに等方的に分配される。これは、推進要素の方向操舵の改善された制御をもたらす。
【0018】
一実施形態によれば、推進要素の変形可能部は、推進要素の前部と後部との間で主軸の周りに螺旋状に配置された単一の可撓性脚を備え、可撓性脚は、可撓性脚に沿って分配され、それらの変形によって、互いおよび推進要素の主軸を横切る第1の回転軸および第2の回転軸それぞれの周りに、推進要素の回転を発生させるように構成された、少なくとも2つのガイドセグメントを含む。
【0019】
別の実施形態によれば、推進要素の変形可能部は、推進要素の前部と後部との間で主軸の周りに螺旋状に配置された少なくとも2つの可撓性脚を備え、推進および操舵装置は、それらの変形によって、互いおよび推進要素の主軸を横切る第1の回転軸および第2の回転軸それぞれの周りに、推進要素の回転を発生させるように構成された、少なくとも1対のガイドセグメントを、第1の可撓性脚および第2の可撓性脚それぞれに含む。
【0020】
本発明の態様によれば、ガイド要素は、電気エネルギー源へのそれぞれの接続を各々設けた少なくとも2つの電磁ガイドコイルを備え、これらは、推進要素に固定された磁石とともに電磁トランスデューサを形成し、磁石は、静止位置において推進要素の主軸に実質的に平行であり、各ガイドコイルは、電気エネルギー供給の影響下で、磁石のその静止位置に対する回転を発生させて、推進要素の主軸を横切る回転軸の周りに推進要素の回転を引き起こすように適合される。
【0021】
1つの特徴によれば、ガイドコイルおよび推進要素に固定された磁石を備える各電磁トランスデューサについて、磁石は、推進要素の回転の作動のためにガイドコイルの内側に挿入される。そのような構成は、各ガイドコイルの電気的接続に作用することによって、推進要素の回転を確実かつ正確に制御することを可能とする電磁変換効率を確保する。もちろん、磁石の極性および各ガイドコイルの電力供給は、推進要素の所望の回転を得るために適合される。
【0022】
一実施形態によれば、推進および操舵装置は、電気エネルギー源へのそれぞれの接続を設けた線形作動電磁コイルをさらに備え、これも、推進要素に固定された磁石とともに電磁トランスデューサを形成し、線形作動コイルは、電気エネルギー供給の影響下で、主軸に平行な磁石の移動を発生させて、主軸に沿って伸長/収縮する推進要素の変形可能部の変形を引き起こすように適合される。ガイドコイルおよび線形作動コイルに選択的に電力供給することによって、推進要素の回転および伸長/収縮変形を作動させることが可能であり、これは、微細構造体の方向操舵および推進を確実に行うことを可能とする。
【0023】
別の実施形態によれば、前述の電磁ガイドコイルの少なくとも2つは、それらが電気エネルギーを同時に供給される場合、主軸に沿って伸長/収縮する推進要素の変形可能部の変形を作動させ、それらが選択的に電力供給される場合、磁石のその静止位置に対する回転を発生させて、主軸を横切る回転軸の周りに推進要素の回転を引き起こすように構成される。例えば同時にまたは順次に、ガイドコイルに選択的に電力供給することによって、推進要素の回転および伸長/収縮変形を作動させることが可能であり、これは、微細構造体の方向操舵および推進を確実に行うことを可能とする。
【0024】
一実施形態によれば、各ガイドコイルは、推進要素の主軸に実質的に平行なその中心軸を有する。別の実施形態によれば、各ガイドコイルは、推進要素の主軸に実質的に垂直なその中心軸を有する。
【0025】
ガイドコイルの数は、2つ以上の任意の数であり得る。具体的には、非限定的に以下の配置を本発明に関連して考慮することができる:推進要素の主軸の方向に沿って縦に並んで配置され、それらの中心軸が推進要素の主軸と一致せずかつそれに実質的に平行である2つのガイドコイル;横に並んで配置され、それらの中心軸が推進要素の主軸に実質的に平行である2つのガイド;推進要素の主軸の方向に沿って縦に並んで配置され、それらの中心軸が推進要素の主軸と一致せずかつそれに実質的に平行である少なくとも3つのガイドコイル、具体的には、3つ、4つ、5つ、または6つのガイドコイル;推進要素の主軸の周りに分配され、それらの中心軸が推進要素の主軸に実質的に平行である少なくとも3つのガイドコイル、具体的には、3つ、4つ、5つ、または6つのガイドコイル;推進要素の主軸の周りに分配され、それらの中心軸が推進要素の主軸に実質的に垂直である少なくとも3つのガイドコイル、具体的には、3つ、4つ、5つ、または6つのガイドコイル。
【0026】
1つの特徴によれば、制御ユニットは、主軸に沿った伸長/収縮によって、推進要素の変形可能部の変形を作動させるようにさらに構成される。したがって、推進要素の回転の作動と推進要素の伸長/収縮変形の作動とを最適に協調させることが可能である。
【0027】
1つの特徴によれば、推進および操舵装置は、主軸に沿って伸長/収縮する推進要素の変形可能部の変形を作動させるように構成された線形アクチュエータを備える。一実施形態によれば、線形アクチュエータは、変形可能部の一方の端部に固定された電磁コイルと変形可能部の他方の端部に固定された永久磁石との組み合わせを含む電磁トランスデューサを備える。一実施形態によれば、線形アクチュエータはポンプを備える。この実施形態は、推進要素の変形可能部がその内部容積に流体を含有することができる場合、特に、変形可能部が連続周壁を形成する外被を有する場合に適している。一実施形態では、推進要素の変形可能部はベローズを備え、アクチュエータはポンプを備える。
【0028】
一実施形態では、推進および操舵装置は、推進要素の前部に固定された少なくとも1つの推進繊毛を備え、推進繊毛の一方の端部は、前部に固定されているが、推進繊毛の他方の端部は、特に10-5~10-1の間に含まれる低いレイノルズ数を有する流体中で、微細構造体の非往復運動を発生させるために自由に動くように構成された自由端である。そのような繊毛の存在により、粘性または粘弾性物質中、特に脳などの被検体の臓器中でも、微細構造体の推進運動が得られる。推進要素の変形可能部の連続的な伸長/収縮サイクルは、粘性または粘弾性物質中での推進繊毛の運動を引き起こし、したがって、推進繊毛と粘性または粘弾性物質との相互作用により、正味の推進力をもたらす。
【0029】
1つの特徴によれば、その主軸に沿った推進要素の変形可能部の各伸長/収縮変形サイクルについて、10-5~10-1の間に含まれる低いレイノルズ数を有する流体中での、推進要素の収縮相における推進繊毛または各推進繊毛の自由端の経路は、前述の流体中での推進要素の伸長相における推進繊毛または各推進繊毛の自由端の経路と異なる。変形可能部の伸長相および収縮相に対する推進繊毛のそのような実装は、微細構造体の非往復運動を得ることを可能とし、これは、低レイノルズ数の流動性物質中での効率的な移動を可能とする。
【0030】
具体的には、非限定的な実施形態において、粘性または粘弾性物質中での推進繊毛(単数または複数)の自由端の経路は、変形可能部の各伸長/収縮サイクルについて、楕円経路または円形経路とトポロジー的に同等である。直線線分とトポロジー的に同等な自由端の経路は、たとえ異なるダイナミクスが経路に沿って適用されたとしても、微細構造体の非往復運動を得るのに適していないことに留意すべきである。
【0031】
一実施形態によれば、推進要素の後部は、少なくとも1つの推進繊毛を備える。本発明の文脈では、推進要素の前部のみに推進繊毛が存在すれば十分であることを理解すべきである。しかしながら、後部にも推進繊毛が設けられた構成は、粘性または粘弾性物質中での微細構造体の推進に寄与し得る。一実施形態によれば、推進要素の後部がその表面に少なくとも1つの推進繊毛を含む場合、後部の推進繊毛または各推進繊毛は、推進要素の前部の推進繊毛(単数または複数)と同一であり得るか、または異なり得る。
【0032】
一実施形態によれば、推進要素の前部および/または後部の推進繊毛または各推進繊毛は、0.1~10GPa、好ましくは0.5~2GPaの範囲に含まれるヤング率を有する材料で作製される。一実施形態によれば、推進繊毛または各推進繊毛は、推進要素の変形可能部と同じ材料で作製される。一実施形態では、推進繊毛の材料は、生体適合性ポリマーである。推進繊毛(単数または複数)に適した材料の例は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、シリコン、またはORMOCLEARなどのUV硬化性無機-有機ハイブリッドポリマーを含む。
【0033】
一実施形態によれば、少なくとも2つのガイド要素は、変形可能部の半径方向外側に位置付けられる。
【0034】
一実施形態によれば、変形可能部は、前部と後部との間に配置された揺動ディスクを含み、少なくとも2つのガイド要素は、後部と揺動ディスクとの間に配置される。
【0035】
一実施形態によれば、推進および操舵装置は、縦に並んで配置された少なくとも2つの推進要素を備え、制御ユニットは、特に10-5~10-1の間に含まれる低いレイノルズ数を有する流体中で、微細構造体の非往復運動を発生させるように、所定の時間的順序に従って、それらの主軸に沿って伸長/収縮する推進要素の変形のサイクルを作動させるように構成される。そのような構成は、低レイノルズ数の流体中での効率的な移動を可能とする微細構造体の非往復運動を得るための別の方法である。この構成は、単独で、または上述したような非往復運動を発生させるための少なくとも1つの推進繊毛と組み合わせて、使用され得る。
【0036】
本発明の別の目的は、上述したような推進および操舵装置を備える微細構造体である。本発明の態様によれば、微細構造体は、低レイノルズ数の流動性物質中、具体的には10-5~10-1の間に含まれるレイノルズ数Reを有する流動性物質中を移動するように構成される。周知のように、レイノルズ数Reは、所与の流れ条件に対する慣性力および粘性力の相対的な大きさを定量化する無次元量である。レイノルズ数Reは、流体中の慣性力と粘性力との比:Re=uL/νによって表すことができ、式中、uは、物体に対する流体の平均速度であり、Lは、特性長さ寸法であり、νは、流体の動粘度である。
【0037】
本発明の別の目的は、上述したような推進および操舵装置を備える、可撓管またはマイクロロボットなどの微細構造体を推進および操舵するための方法であり、方法は、
-推進および操舵装置を備える微細構造体が、特に10-5~10-1の間に含まれる低いレイノルズ数を有する流体中に導入されるステップと、
-エネルギー源への接続の1つ以上を、制御ユニットを使用して選択的に制御することによって、主軸に沿って伸長/収縮する推進要素の変形可能部の変形と協調して、推進要素の主軸を横切る少なくとも1つの軸の周りの推進要素の回転が作動されるステップと
を含む。
【0038】
本発明の特徴および利点は、単なる例として提供され、添付図面を参照しながら行われる、本発明に係る微細構造体を推進および操舵するための装置および方法のいくつかの実施形態の以下の説明において明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】3つの可撓性脚を含む螺旋ばねの形態の推進要素を備え、各可撓性脚が、それぞれの電気的接続を設けた電気活性材料に基づくガイドセグメントを備える、本発明の第1の実施形態に係る推進および操舵装置を備えるマイクロロボットの概略断面図である。
【
図2】マイクロロボットの回転運動の活性化を示す、
図1と同様の断面図である。
【
図3】
図1および
図2のマイクロロボットの推進要素の拡大した部分斜視図である。
【
図4】3つの可撓性脚を含む螺旋ばねの形態の推進要素を備え、各可撓性脚が、それぞれの放射光を透過する光ファイバに関連付けられた光活性材料に基づくガイドセグメントを備える、本発明の第2の実施形態に係る推進および操舵装置を備えるマイクロロボットについての
図2と同様の断面図である。
【
図5】2つの可撓性脚を含む螺旋ばねの形態の推進要素を備え、各可撓性脚が、電気活性材料に基づく複数のガイドセグメントを備え、各可撓性脚の各ガイドセグメントに、電源によって独立して電力供給することができるようにそれぞれの電気的接続が設けられる、本発明の第3の実施形態に係る推進および操舵装置を備えるマイクロロボットについての
図2と同様の断面図である。
【
図6】電気活性材料に基づく複数のガイドセグメントを備える単一の可撓性脚を含む螺旋ばねの形態の推進要素を備え、可撓性脚の各ガイドセグメントに、電源によって独立して電力供給することができるようにそれぞれの電気的接続が設けられる、本発明の第4の実施形態に係る推進および操舵装置を備えるマイクロロボットについての
図2と同様の断面図である。
【
図7】縦に並んで配置された2つの推進要素を備え、制御ユニットが、微細構造体の非往復運動を発生させるように、所定の時間的順序に従って、それらの主軸に沿って伸長/収縮する推進要素の変形のサイクルを作動させるように構成される、本発明の第5の実施形態に係る推進および操舵装置を備えるマイクロロボットについての
図2と同様の断面図である。
【
図8】3つの可撓性脚を含む螺旋ばねの形態の推進要素、ならびにそれぞれの電気的接続を各々設けた線形作動コイルおよび2つの回転ガイドコイルを含む3つのコイルを有する電磁トランスデューサを備える、本発明の第6の実施形態に係る推進および操舵装置を備えるマイクロロボットについての
図1と同様の断面図である。
【
図9】マイクロロボットの回転運動の活性化を示す、
図8と同様の断面図である。
【
図10】
図8および
図9のマイクロロボットの推進要素の一部の拡大した斜視図である。
【
図11】本発明の第7の実施形態に係る推進および操舵装置を備えるマイクロロボットの推進要素の一部の、
図10と同様の斜視図である。
【
図12】本発明の第8の実施形態に係る推進および操舵装置を備えるマイクロロボットの推進要素の一部の、
図10と同様の斜視図である。
【
図13】本発明の第9の実施形態に係る推進および操舵装置を備えるマイクロロボットの推進要素の、
図3と同様の部分斜視図である。
【
図14】本発明の第10の実施形態に係る推進および操舵装置を備えるマイクロロボットの推進要素の、
図13と同様の部分斜視図である。
【
図15】本発明の第11の実施形態に係る推進および操舵装置を備えるマイクロロボットの推進要素の、
図13と同様の部分斜視図である。
【
図16】本発明の同じ実施形態の
図15と同様であるが作動している、部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1~3に示される第1の実施形態では、マイクロロボット10は、粘性または粘弾性物質中、例えば、マイクロロボット向けの低レイノルズ数の流動性物質である、脳脊髄液または被検体の脳の細胞外マトリックス中を移動するように構成される。
【0041】
マイクロロボット10は、例えば、センサ、アクチュエータ、薬物を放出するように適合されたリザーバなどであり得るマイクロロボットの活性部11が固定される、本発明に係る推進および操舵装置1を備える。
【0042】
図1および
図2に明確に示されるように、推進および操舵装置1は、前部21、後部23、ならびに前部21および後部23を接続する変形可能部20を含む推進要素2を備える。この第1の実施形態では、変形可能部20は、推進要素2の主軸X
2に沿って伸長/収縮変形可能な螺旋ばねである。推進要素2の主軸X
2は、本明細書では、変形可能部20が固定される後部23の遠位プレート230の平面に実質的に垂直な、変形可能部20の中心軸と定義される。
【0043】
変形可能部20を形成する螺旋ばねは、推進要素の前部21と後部23との間で主軸X2の周りに螺旋状に配置された3つの可撓性脚22、24、26を備える。各可撓性脚22、24、26に、例えばイオン性電気活性ポリマーであるPEDOTなどの電気活性材料に基づくそれぞれのガイドセグメント3、5、7が設けられる。3つのガイドセグメント3、5、7の各々は、電気エネルギー供給の影響下で可逆的に変形可能であり、それぞれの電気ケーブル83、85、87によって電源8に接続される。
【0044】
各ガイドセグメント3、5、7は、電気エネルギーの供給時に、その変形によって、対応する可撓性脚の変形および推進要素2の回転を発生させるように適合される。各ガイドセグメント3、5、7について、ガイドセグメントの変形によって発生する回転の軸は、推進要素の主軸X
2、および他の2つのガイドセグメントの各々の変形によって発生する回転の軸を横切る。
図3の拡大図に明確に示されるように、ガイドセグメント3、5、7は、推進要素2の主軸X
2の周りに等方的に分配され、これは、推進要素の方向操舵の最適化を可能とする。したがって、本発明では、ガイドセグメント3、5、7は、可撓性脚22、24、26とともに、回転および推進の両方を確実に行う単一の多機能性群を形成する。本発明は、各々が別個の機能を確実に行う異なる要素の任意の結合を特徴としていない。
【0045】
推進および操舵装置1は、推進要素2の変形可能部20の伸長/収縮サイクルを連続的に作動させるように構成された線形アクチュエータ4も備える。アクチュエータ4は、永久磁石41および電磁コイル42を備える電磁トランスデューサである。磁石41が、変形可能部20の前端で推進要素2の前部21に固定される一方で、コイル42は、後部23に取り付けられ、したがって変形可能部20の後端に固定される。コイル42に印加される電流に応じて、磁石41はコイル42と近づくかまたは離れ、これは、変形可能部20の収縮または伸長を引き起こす。
【0046】
図1および
図2に示されるように、推進要素2の前部21は、マイクロロボット10が移動する物質と相互作用するように構成された複数の推進繊毛28をその表面に備える。電磁トランスデューサ4によって作動される変形可能部20の連続的な伸長/収縮サイクルは、物質中での推進繊毛28の運動を引き起こし、推進力を生成し、マイクロロボット10の移動を引き起こす。
【0047】
電磁トランスデューサ4によって作動される変形可能部20の各伸長/収縮サイクルについて、各推進繊毛28は、変形可能部20の収縮相における粘性または粘弾性物質中での推進繊毛28の自由端29の経路が、変形可能部20の伸長相における粘性または粘弾性物質中での自由端29の経路と異なるように構成される。有利には、粘性または粘弾性物質中での推進繊毛28の自由端29の経路は、各伸長/収縮サイクルについて、楕円経路または円形経路とトポロジー的に同等である。このようにして、脳脊髄液または脳の細胞外マトリックスなどの低レイノルズ数の流動性物質中でのマイクロロボット10の効率的な移動を可能とする、マイクロロボット10の非往復運動が得られる。
【0048】
推進および操舵装置1は、電気的接続83、85、87の1つ以上を選択的に制御することによって、主軸X2を横切る少なくとも1つの軸の周りに、推進要素2の回転を作動させるように構成された制御ユニット9も備える。制御ユニット9はまた、主軸X2に沿って伸長/収縮する変形可能部20の変形を作動させるように構成される。したがって、移動する物質中でのマイクロロボット10の所望の運動および軌道を得るために、推進要素2の回転の作動と主軸X2に沿った変形可能部20の伸長/収縮変形の作動とを最適に協調させることが可能である。したがって、制御ユニット9は、単一要素である推進要素2を作動させ、この単一要素の作動によって装置1の推進および回転を発生させることを可能とする。
【0049】
特に10-5~10-1の間に含まれる低いレイノルズ数を有する流体中でマイクロロボット10を推進および操舵するための方法は、主軸X2に沿って伸長/収縮する変形可能部20の変形と同時か順次かにかかわらず協調して、主軸X2を横切る少なくとも1つの軸の周りの推進要素2の回転を作動させるための、制御ユニット9を使用した電気的接続83、85、87の1つ以上の選択的制御を含む。
【0050】
非限定的な例として、以下の特徴を有するマイクロロボット10は、低レイノルズ数の流動性物質中で良好な推進および誘導性能を有する:
-マイクロロボット10の全長:2mm、
-マイクロロボット10の直径:2mm、
-推進要素2の変形可能部20の長さ:0.5mm、
-線形アクチュエータコイル42の長さ:0.5mm、
-磁石41の長さ:0.8mm、
-各推進繊毛28の断面:2,500μm2。
【0051】
製造プロセス
前部21、後部23、および変形可能部20を、フォトレジストとしてUV硬化性無機-有機ハイブリッドポリマーであるORMOCLEARを使用して、3Dレーザリソグラフィによって一体に製造した。フォトレジストをガラス基板上に塗布し、点レーザが3D CAD計画に従ってフォトレジストを選択的に硬化させた。推進繊毛28を、前部21と一体に作製し、すなわち前部21と同じ材料で製造した。ガイドセグメント3、5、7を、変形可能部20の可撓性脚22、24、26の各々に、イオン性電気活性ポリマーであるPEDOTの層の堆積によって得た。線形作動コイル42を、後部23に銅線を巻き付けることによって得た。磁石41は、前部21にアクリル系接着剤で付けることによって固定されたネオジム永久磁石である。
【0052】
図4に示される第2の実施形態では、第1の実施形態の要素と同様の要素は、同一の参照符号を有する。第2の実施形態のマイクロロボット10は、ガイドセグメント3、5、7が電気活性材料の代わりに光活性材料を含むという点で、第1の実施形態と異なる。推進および操舵装置1は、光活性材料に基づく各ガイドセグメント3、5、7のために、その変形を活性化するようにガイドセグメントに対向してその放射光が導かれる専用の放射源を備える。例として、この第2の実施形態では、各ガイドセグメント3、5、7の光活性材料は、アゾベンゼン分子を含む液晶のネットワークであり、各ガイドセグメント3、5、7のための放射源は、白色光源であり、異なる供給源が同じケース8’の中に収容される。
【0053】
この第2の実施形態では、全てのガイドセグメント3、5、7は、同じ光活性材料に基づき、専用の放射源に関連するもの以外にガイドセグメントの変形を活性化する可能性がある放射相互作用を避けるために、放射光は、ガイドセグメント3、5、7の光活性材料に対向して位置付けられた遠位端を有するそれぞれの光ファイバ83’、85’、87’を使用して、各ガイドセグメント3、5、7の光活性材料まで透過される。一変形例によれば、ガイドセグメント3、5、7は、異なる波長の放射光によって活性化されるように適合された異なる光活性材料に基づいてもよい。この場合、各ガイドセグメント3、5、7は、それに固有の波長範囲で放射する放射源に関連付けられる。本明細書ではこの場合も、放射光を、ガイドセグメントの光活性材料に対向して位置付けられた遠位端を有する光ファイバを使用して、ガイドセグメント3、5、7の光活性材料まで透過することができる。
【0054】
図5に示される第3の実施形態では、第1の実施形態の要素と同様の要素は、同一の参照符号を有する。第3の実施形態のマイクロロボット10は、推進要素2の変形可能部20が、第1の実施形態のような3つの可撓性脚の代わりに2つの可撓性脚22、24を備える螺旋ばねであるという点で、第1の実施形態と異なる。2つの可撓性脚22、24は、推進要素の前部21と後部23との間で主軸X
2の周りに螺旋状に配置され、各々に、電気活性材料に基づく3つのガイドセグメント、それぞれ3
1、3
2、3
3および5
1、5
2、5
3が設けられる。2つの可撓性脚22、24の各々について、ガイドセグメント3
1、3
2、3
3または5
1、5
2、5
3は、可撓性脚に沿って分配され、それぞれの電線によって電源8に接続され、可撓性脚22または24の異なるガイドセグメントの全ての電線は、ケーブル83または85の中を通る。
【0055】
図6に示される第4の実施形態では、第1の実施形態の要素と同様の要素は、同一の参照符号を有する。第4の実施形態のマイクロロボット10は、推進要素2の変形可能部20が、推進要素の前部21と後部23との間で主軸X
2の周りに螺旋状に配置された単一の可撓性脚22を備える螺旋ばねであるという点で、第1の実施形態と異なる。可撓性脚22は、電気活性材料に基づく4つのガイドセグメント3
1、3
2、3
3、3
4を含み、それらは、可撓性脚22に沿って分配され、それぞれの電線によって電源8に各々接続され、可撓性脚22の異なるガイドセグメントの全ての電線は、ケーブル83の中を通る。ガイドセグメント3
1、3
2、3
3、3
4は、それらの変形によって、互いおよび推進要素の主軸X
2を横切る第1の回転軸および第2の回転軸それぞれの周りに、推進要素2の回転を発生させるように構成される。
【0056】
図7に示される第5の実施形態では、第1の実施形態の要素と同様の要素は、同一の参照符号を有する。第5の実施形態のマイクロロボット10は、推進および操舵装置1が、縦に並んで配置された2つの推進要素2
1および2
2を備え、制御ユニット9が、マイクロロボット10の非往復運動を発生させるように、所定の時間的順序に従って、2つの推進要素の変形可能部20
1および20
2の伸長/収縮変形サイクルを作動させるように構成されるという点で、第1の実施形態と異なる。そのような構成は、低レイノルズ数の流体中での効率的な移動を可能とするマイクロロボット10の非往復運動を達成するための、推進繊毛以外の手段である。
【0057】
この第5の実施形態では、2つの推進要素21および22の各々について、変形可能部201または202は、第1の実施形態の変形可能部20と同一であり、すなわち、推進要素の主軸X21またはX22の周りに螺旋状に配置された3つの可撓性脚221、241、261、または222、242、262を備える。各可撓性脚221、241、261、または222、242、262に、電気エネルギー供給の影響下で可逆的に変形可能であり、それぞれの電気ケーブル831、851、871または832、852、872によって電源81または82に接続される、電気活性材料に基づくそれぞれのガイドセグメント31、51、71または32、52、72が設けられる。
【0058】
この第5の実施形態の推進および操舵装置1は、推進要素の変形可能部201または202の伸長/収縮サイクルを連続的に作動させる、前述の実施形態の電磁トランスデューサ4と同様の線形アクチュエータを備えていない。実際、この第5の実施形態では、2つの推進要素21および22の各々について、電気活性材料に基づくガイドセグメント31、51、71または32、52、72は、それらが同時に変形する場合、主軸X21またはX22に沿って伸長/収縮する変形可能部201または202の変形を作動させ、それらが選択的に変形する場合、主軸X21またはX22を横切る回転軸の周りに推進要素21または22の回転を作動させるように構成される。ガイドセグメント31、51、71、32、52、72に選択的に電気エネルギーを供給することによって、各推進要素21、22の回転および/または伸長/収縮変形を作動させることが可能であり、これは、マイクロロボット10の方向操舵および推進の両方を確実に行うことを可能とする。
【0059】
図8~10に示される第6の実施形態では、第1の実施形態の要素と同様の要素は、同一の参照符号を有する。第6の実施形態のマイクロロボット10は、ガイド要素が、活性材料に基づくガイドセグメントの代わりに2つの電磁ガイドコイル43および45を備えるという点で、第1の実施形態と異なる。ガイドコイル43および45の各々は、電気エネルギー源6へのそれぞれの接続63、65が設けられ、推進要素2の前部21に固定された永久磁石41とともに電磁トランスデューサを形成する。磁石41は、静止位置において推進要素の主軸X
2に実質的に平行である。2つのガイドコイル43、45の各々は、電気エネルギー供給の影響下で、磁石41のその静止位置に対する回転を発生させるように適合され、これが、主軸X
2を横切る回転軸の周りに推進要素2の回転を引き起こす。
【0060】
この第6の実施形態の推進および操舵装置1は、電気エネルギー源6へのそれぞれの接続62が設けられ、また、磁石41とともに電磁トランスデューサを形成する、前述の実施形態のコイル42と同様の線形作動電磁コイル42も備える。線形作動コイル42は、電気エネルギー供給の影響下で、主軸X2に平行な磁石41の移動を発生させるように適合され、これが、主軸X2に沿って伸長/収縮する変形可能部20の変形を引き起こす。ガイドコイル43、45および線形作動コイル42に選択的に電力供給することによって、推進要素2の回転および伸長/収縮変形を作動させることが可能であり、これは、マイクロロボット10の方向操舵および推進を確実に行うことを可能とする。
【0061】
線形作動コイル42およびガイドコイル43、45の相対的な配置が、
図10の拡大図に示される。この図は、コイル42、43、45を受け入れるためのそれぞれの溝23
2、23
3、23
5を示す。溝23
2に受け入れられる線形作動コイル42の中心軸は、推進要素2の主軸X
2と位置合わせされる。溝23
3に受け入れられるガイドコイル43の中心軸は、推進要素2の主軸X
2に対して、上方向および
図10のシートの平面の中に伸びる方向に沿ってオフセットされる。最後に、溝23
5に受け入れられるガイドコイル45の中心軸は、推進要素2の主軸X
2に対して、下方向および
図10のシートの平面から出る方向に沿ってオフセットされる。
【0062】
図11に示される第7の実施形態では、第6の実施形態の要素と同様の要素は、同一の参照符号を有する。この第7の実施形態では、推進および操舵装置1は、電気エネルギー源へのそれぞれの接続を各々設け、推進要素2の前部に固定された永久磁石41とともに電磁トランスデューサを形成するように構成された、3つのガイドコイル43、45、47(図示せず)を備える。
図11に、ガイドコイル43、45、47を受け入れるためのそれぞれの溝23
3、23
5、23
7が示される。3つのガイドコイル43、45、47は、推進要素2の主軸X
2の方向に沿って縦に並んで配置され、それらの中心軸は、主軸X
2と一致せず、主軸X
2に実質的に平行である。
【0063】
具体的には、
図11に示される例では、溝23
3に受け入れられるガイドコイル43の中心軸は、推進要素2の主軸X
2に対して、下方向および
図11のシートの平面の中に伸びる方向に沿ってオフセットされる。溝23
5に受け入れられるガイドコイル45の中心軸は、推進要素2の主軸X
2に対して、上方向および
図11のシートの平面の中に伸びる方向に沿ってオフセットされる。最後に、溝23
7に受け入れられるガイドコイル47の中心軸は、推進要素2の主軸X
2に対して、下方向および
図11のシートの平面から出る方向に沿ってオフセットされる。3つのガイドコイル43、45、47は、それらが電気エネルギーを同時に供給される場合、主軸X
2に沿って伸長/収縮する推進要素2の変形可能部20の変形を作動させ、それらが選択的に電力供給される場合、磁石41のその静止位置に対する回転を発生させて、主軸X
2を横切る回転軸の周りに推進要素2の回転を引き起こすように構成される。
【0064】
図12に示される第8の実施形態では、第6の実施形態の要素と同様の要素は、同一の参照符号を有する。この第8の実施形態では、推進および操舵装置1は、電気エネルギー源へのそれぞれの接続を各々設け、推進要素2の前部に固定された永久磁石41とともに電磁トランスデューサを形成するように構成された、線形作動コイル42および3つのガイドコイル43、45、47(図示せず)を備える。
図12に、コイル42、43、45、47を受け入れるためのそれぞれの溝23
2、23
3、23
5、23
7が示される。線形作動コイル42は推進要素2の後部に配置され、その中心軸は推進要素2の主軸X
2に実質的に平行である一方で、3つのガイドコイル43、45、47は、線形作動コイル42の周りに分配されていると同時に互いから等距離であり、それらの中心軸は主軸X
2に実質的に垂直である。
【0065】
この第8の実施形態では、主軸X2に沿って伸長/収縮する変形可能部20の変形の作動は、線形作動コイル42に電力供給することによって得られる一方で、主軸X2を横切る回転軸の周りに推進要素2の回転を引き起こす、磁石41のその静止位置に対する回転の作動は、ガイドコイル43、45、47に選択的に電力供給することによって得られる。
【0066】
図13および
図14にそれぞれ示される第9および第10の実施形態では、第6の実施形態の要素と同様の要素は、同一の参照符号を有する。これらの第9および第10の実施形態では、第9および第10の実施形態に係る推進要素2は、
図3に示される実施形態の推進要素のように、前部21、後部23、ならびに前部21および後部23を接続する変形可能部20を含む。これらの第9および第10の実施形態では、変形可能部20は、推進要素2の主軸X
2に沿って伸長/収縮変形可能な螺旋ばねである。軸X
2は、前と同じように、変形可能部20が固定される後部23の遠位プレート230の平面に実質的に垂直な、変形可能部20の中心軸と定義される。変形可能部20を形成する螺旋ばねは、推進要素2の前部21と後部23との間で主軸X
2の周りに螺旋状に配置された3つの可撓性脚22、24、26を備える。
【0067】
これらの第9および第10の実施形態では、変形可能部20を形成する螺旋ばねは、推進要素2の前部21と後部23との間に各々伸びる少なくとも1つのガイド要素3、5、7と連動する。示されていない実施形態では、ガイド要素は、螺旋ばねの周りに伸びる。第9および第10の実施形態では、螺旋ばねは、少なくとも1つのガイド要素3、4、5の周りに伸びる。より具体的には、第9および第10の実施形態では、装置1は、推進要素の前部21と後部23との間で主軸X
2の周りに螺旋状に配置された、変形可能な足またはセグメントを各々形成する3つのガイド要素3、5、7を含む。
図13に示される第9の実施形態では、変形可能セグメント3、5、7および可撓性脚22、24、26は、推進要素2の周囲にわたって均等に分配され、その結果、推進要素2は、可撓性脚22、24、26および変形可能セグメント3、5、7の円形の交互配置を有する。
図14に示される第10の実施形態では、各変形可能セグメント3、5、7は、螺旋ばねの可撓性脚22、24、26と半径方向に位置合わせされる。したがって、各可撓性脚22、24、26は、
図13、14の実施形態の各々において、ガイド要素3、5、7と連動する。
【0068】
前述の実施形態のように、各変形可能セグメント3、5、7は、例えば電気活性材料、例えばイオン性電気活性ポリマーであるPEDOTを含む。したがって、3つのガイド要素3、5、7の各々は、電気エネルギー供給の影響下で可逆的に変形可能である。各ガイド要素3、5、7は、電気エネルギーの供給時に、その変形によって、対応する可撓性脚22、24、26の変形および推進要素2の回転を発生させるように適合される。各ガイドセグメント3、5、7について、ガイドセグメントの変形によって発生する回転の軸は、推進要素2の主軸X2、および他の2つのガイド要素の各々の変形によって発生する回転の軸を横切る。推進要素2の主軸X2の周りのガイドセグメント3、5、7の等方的な分配は、第1の実施形態のように、推進要素2の方向操舵の最適化を可能とする。したがって、実施形態を問わず、本発明では、ガイドセグメント3、5、7は、可撓性脚22、24、26とともに、回転および推進の両方を確実に行う単一の多機能性群を形成することに留意すべきである。本発明は、各々が別個の機能を確実に行う異なる要素の任意の結合を特徴としていない。
【0069】
図15および
図16に示される第11の実施形態では、第1の実施形態の要素と同様の要素は、同一の参照符号を有する。この第11の実施形態では、マイクロロボット10を推進および操舵するための装置1は、前述の実施形態のように、粘性または粘弾性物質中、例えば、低レイノルズ数の流動性物質である、脳脊髄液または被検体の脳の細胞外マトリックス中を移動するように構成される。
【0070】
図15および
図16に、推進要素2の代替実施形態が示される。この第11の実施形態では、推進要素2は、前部21、後部23、ならびに前部21および後部23を接続する変形可能部20を含む。変形可能部20は、前部サブ部分20Aおよび後部サブ部分20Bに分割され、2つのサブ部分は20A、20Bは、揺動ディスク30によってともに接続される。揺動ディスク30は、前部21と後部23との間に、これらの各々から等距離に位置する。
図15および
図16に示される例では、揺動ディスク30は、遠位プレート230と同様の直径を有する。しかし、示されていない実施形態では、揺動ディスク30の直径は、遠位プレート230の直径より大きくてもよい。
【0071】
静止時、揺動ディスク30は、遠位プレート230に実質的に平行である。この実施形態では、推進要素2の揺動ディスク30は、マイクロロボット10が移動する物質と相互作用するように構成された複数の推進繊毛28をその表面に備える。変形可能部20の連続的な伸長/収縮サイクルは、物質中での推進繊毛28の運動を引き起こし、推進力を生成し、マイクロロボット10の移動を引き起こす。したがって、揺動ディスク30は、そこへの推進繊毛28の取り付けを容易にするように、遠位プレート230より大きい直径を有することが有利であり得る。
【0072】
この第11の実施形態では、変形可能部20の前部サブ部分20Aは、推進要素2の主軸X2に沿って伸長/収縮変形可能な螺旋ばねである。推進要素2の主軸X2は、本明細書では、前述の実施形態と同様に、変形可能部20が固定される後部23の遠位プレート230の平面に実質的に垂直な、変形可能部20の中心軸と定義される。変形可能部20の前部サブ部分20Aを形成する螺旋ばねは、推進要素の前部21と揺動ディスク30との間で主軸X2の周りに螺旋状に配置された3つの可撓性脚22、24、26を備える。
【0073】
この第11の実施形態では、変形可能部2の後部サブ部分20Bは、例えばイオン性電気活性ポリマーであるPEDOTなどの電気活性材料に基づく少なくとも1つのガイド要素3、5、7を含む。より具体的には、本発明の第11の実施形態では、変形可能部2は、ガイドセグメント3、5、7を形成する3つのガイド要素3、5、7を含む。3つのガイドセグメント3、5、7の各々は、電気エネルギー供給の影響によって可逆的に変形可能であり、電源に接続される。静止時、3つのガイドセグメント3、5、7は、同じ長さを有する。
図15に明確に示されるように、ガイドセグメント3、5、7は、推進要素2の主軸X
2の周りに等方的に分配され、これは、推進要素の方向操舵の最適化を可能とする。3つのガイドセグメント3、5、7の各々は、変形可能部2の後部23と揺動ディスク30との間に伸びる脚を形成する。より具体的には、3つのガイドセグメントは、推進要素2の後部サブ部分23と揺動ディスク30との間で主軸X
2の周りに螺旋状に配置される。すでに述べたように、各ガイドセグメント3、5、7は、電気エネルギーの供給時に、その変形によって、揺動ディスク30の傾斜を発生させるように適合される。これは、
図16に示される。3つのガイドセグメント3、5、7の各々が活性化されると、揺動ディスク30は異なる方向に傾き、したがって回転揺動運動を発生させる。この回転揺動運動は、推進要素2の回転を引き起こす。各ガイドセグメント3、5、7について、ガイドセグメントの変形によって発生する回転の軸は、推進要素の主軸X
2、および他の2つのガイドセグメントの各々の変形によって発生する回転の軸を横切る。したがって、この実施形態ではまた、揺動ディスク30が存在しているにもかかわらず、ガイドセグメント3、5、7は、可撓性脚22、24、26と直接連動し、これらとともに、回転および推進の両方を確実に行う単一の多機能性群を形成する。本発明は、各々が別個の機能を確実に行う異なる要素の任意の結合を特徴としていない。
【0074】
前述の例から生じるように、本発明に係る推進および操舵装置は、一方では、互いおよび主軸を横切る少なくとも2つの回転軸の周りの推進要素の回転、ならびに他方では、微細構造体の推進を発生させる推進要素の変形可能部の変形を、協調して作動させることによって、微細構造体を3D空間内で確実かつ正確に移動させることを可能とする。有利には、各ガイド要素について、かつ存在する場合は線形アクチュエータについて、エネルギー供給を独立して活性化する能力により、推進要素の変形可能部の回転および変形を作動させるためのあらゆる空間的および時間的組み合わせを考慮することができる。具体的には、回転および変形を、所望のとおりに同時に作動させるかまたは順次作動させることができ、これは、その環境中で所望の軌道に従って微細構造体を移動させることを可能とする。
【0075】
ミリメートルスケールでは、低レイノルズ環境中で移動する最小の要素が多くのエネルギーを必要とすることに留意すべきである。関与する摩擦力は、相当なものである。摩擦のタイプ(乾燥、粘性など)およびロボットのサイズに依存するが、それでも、一般に、低いレイノルズ数は、表面力が体積力と比較して支配的であることを意味することが知られている。この場合、例えばその重量よりもロボットの全体的なサイズを最適化することが、したがってより適切である。
【0076】
したがって、装置が小さくなるほど、かつそれに含まれる機能要素が少なくなるほど、前述の装置を移動させるのに費やすエネルギーは低くなる。その小さいサイズおよび機能要素の数の削減(削減は、異なる要素の多機能的態様、具体的にはガイドセグメントによって可能とされる)により、本発明は、所与の移動について著しいエネルギー節約を可能とする。
【0077】
本発明は、説明され、図示されている例に限定されない。
【0078】
特に、前述の例では、推進要素の変形可能部は、1つ、2つ、または3つの可撓性脚を含む螺旋ばねである。あるいは、推進要素の変形可能部は、任意の数の可撓性脚を有する螺旋状または螺旋状でないばね、そうでなければ、ばね以外の変形可能構造、例えばベローズを備えてもよい。推進要素の変形可能部はまた、ばねおよびベローズの組み合わせを含んでもよく、ベローズの各ひだは、例えば、ばねの巻きに位置付けられ、ベローズの外被は、ばねの連続する巻きの間の空間を充填する。
【0079】
加えて、推進および操舵装置が、伸長/収縮する推進要素の変形可能部の変形を作動させるための専用の線形アクチュエータを備える場合、線形アクチュエータは、電磁コイルおよび永久磁石を含む前述のような電磁トランスデューサ以外のアクチュエータを備えてもよい。特に、例えばベローズを備える場合のように、変形可能部が密封外被を有する場合、伸長/収縮する変形可能部の変形を作動させるためのアクチュエータはポンプであってもよく、変形可能部の伸長/収縮を、ポンプによって作動される変形可能部の内部容積への流体の流入/流出の交互変化によって得ることができる。
【0080】
さらに、活性材料を含むガイドセグメントを実装する前述の例では、異なるガイドセグメントの活性材料は全て同じ性質のものである。あるいは、本発明に係る推進および操舵装置は、異なる組成または性質の活性材料を有するいくつかのガイドセグメントを含んでもよい。例えば、電気活性材料を含むガイドセグメントは、バイメタル要素を含むガイドセグメントと組み合わされてもよく、または光活性材料を含むガイドセグメントは、電気活性材料もしくはバイメタル要素を含むガイドセグメントと組み合わされてもよく、ガイドセグメントを活性化するための異なるエネルギー供給接続がそれに応じて適合される。活性材料に基づくガイドセグメントはまた、
図8~12の実施形態のコイルのタイプのガイドコイルと組み合わされてもよい。
【0081】
推進および操舵装置が、推進要素の回転を発生させるためのガイド要素としてのガイドコイルを備える場合、
図8~12の実施形態のコイル以外のガイドコイルの配置も、もちろん考慮することができる。具体的には、ガイドコイルの数は、2つ以上の任意の数であり、ガイドコイルは、線形作動コイルと組み合わされているかまたは組み合わされていない状態で、場合により縦に並んで、互いに隣り合って、またはさらには同心円状に配置される。
【0082】
図に示されていない有利な配置は、例えば、推進要素の主軸の周りに分配され、それらの中心軸が主軸に実質的に平行であり、互いから等距離に配置されている状態の3つのガイドコイル;推進要素の主軸の周りに分配され、それらの中心軸が主軸に実質的に平行であり、互いから等距離に配置されている状態の6つのガイドコイルを備える。これらの2つの場合では、ガイドコイルは、所望により、推進要素の後部に線形作動コイルなしで配置され、主軸に沿って伸長/収縮する変形可能部の変形の作動は、全てのガイドコイルに電気エネルギーを同時に供給することによって得られる一方で、主軸を横切る回転軸の周りに推進要素の回転を引き起こす、磁石のその静止位置に対する回転の作動は、ガイドコイルに選択的に電力供給することによって得られ、または線形作動コイルと組み合わされている状態で推進要素の後部に配置され、主軸に沿って伸長/収縮する変形可能部の変形の作動は、線形作動コイルに電力供給することによって得られる一方で、主軸を横切る回転軸の周りに推進要素の回転を引き起こす、磁石のその静止位置に対する回転の作動は、ガイドコイルに選択的に電力供給することによって得られる。
【0083】
最後に、粘性または粘弾性物質中、例えば、脳脊髄液または被検体の脳の細胞外マトリックス中を移動することを意図されたマイクロロボットの推進および操舵のための発明が説明された。あるいは、本発明に係る推進および操舵装置は、もちろん、医療分野または他の分野における他のタイプの微細構造体を移動させるように実装され得、特に、本発明に係る装置は、ステントまたはカテーテルなどの可動性可撓管の推進および操舵のために使用され得る。
【国際調査報告】