(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-24
(54)【発明の名称】フリーハンギングまたはフリースタンディングのマイクロチャネルを含む微小電気機械システム部品またはマイクロ流体部品
(51)【国際特許分類】
B81B 1/00 20060101AFI20221116BHJP
B81C 1/00 20060101ALI20221116BHJP
G01F 1/84 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
B81B1/00
B81C1/00
G01F1/84
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518286
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(85)【翻訳文提出日】2022-05-12
(86)【国際出願番号】 NL2020050578
(87)【国際公開番号】W WO2021054829
(87)【国際公開日】2021-03-25
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596167974
【氏名又は名称】ベルキン ビーブイ
【氏名又は名称原語表記】BERKIN B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】スパレブーム、ウーター
(72)【発明者】
【氏名】グローネステイン、ヤルノ
(72)【発明者】
【氏名】ファン プッテン、ジャック ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】デ ブア、マイント イエレ
(72)【発明者】
【氏名】ウィーゲリンク、レムコ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】フェルトカンプ、ヘンク-ウィレム
(72)【発明者】
【氏名】ユ、チーヒ
(72)【発明者】
【氏名】ヤリースバウエイ、マフディー
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス オルギン、ミゲル エー.
(72)【発明者】
【氏名】レッタース、ヨースト コンラッド
【テーマコード(参考)】
2F035
3C081
【Fターム(参考)】
2F035JA02
3C081AA13
3C081AA17
3C081BA12
3C081BA23
3C081CA14
3C081CA29
3C081CA30
3C081DA03
3C081DA42
3C081EA01
3C081EA04
3C081EA26
(57)【要約】
本発明は、フリーハンギングまたはフリースタンディングのマイクロチャネル(1)を備える微小電気機械システム(MEMS)部品またはマイクロ流体部品、並びにこのようなマイクロチャネルの製造方法、並びにこのような微小電気機械システム部品またはマイクロ流体部品を備える流量センサ、例えば熱式流量センサまたはコリオリ式流量センサ、圧力センサまたはマルチパラメータセンサ、バルブ、ポンプまたはマイクロヒータに関するものである。MEMS部品は、その利点を維持しながら、チャネル径を大きくすることによって、例えばマイクロコリオリ式質量流量計の流量範囲を拡大し、および/または圧力損失を減少させることを可能にする。
【選択図】
図7D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フリーハンギングまたはフリースタンディングのマイクロチャネル(1)を含む微小電気機械システム部品またはマイクロ流体部品であって、
前記チャネル(1)は、実質的に円形の断面を有し、
前記チャネル(1)の直径は、チャネル壁(7)の厚さの10倍以上であり、
前記チャネル(1)の前記直径は、20μm以上である、
ことを特徴とする、微小電気機械システム部品またはマイクロ流体部品。
【請求項2】
前記チャネル(1)の前記直径は、50μm以上、例えば100μm以上、例えば200μm以上、例えば500μm以上、例えば1000μm以上である、
請求項1に記載の微小電気機械システム部品またはマイクロ流体部品。
【請求項3】
前記チャネル壁(7)の前記厚さは、10μmより小さい、
請求項1または2に記載の微小電気機械システム部品またはマイクロ流体部品。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の微小電気機械システム部品またはマイクロ流体部品を含む、流量センサ、例えば熱式流量センサまたはコリオリ式流量センサ;圧力センサ;密度センサ;粘性センサ;マルチパラメータセンサ;バルブ;ポンプ;および/またはマイクロヒータ。
【請求項5】
電気めっき法を用いた、フリーハンギングまたはフリースタンディングのマイクロチャネル(1)の製造方法であって、
導電性または非導電性の電気めっきワイヤ(34)を準備するステップと、
前記電気めっきワイヤ(34)が非導電性である場合、前記電気めっきワイヤ(34)上に導電性コーティング(35)を形成し、陰極を形成するステップと、
前記電気めっきワイヤ(34)または前記導電性コーティング(35)上にチャネル壁(7、37)を電気めっきするステップと、
前記電気めっきワイヤ(34)を除去するステップと、
を含む、方法。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載の微小電気機械システム部品またはマイクロ流体部品に用いられる、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記電気めっきワイヤ(34)は、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)または銅で構成されている、
請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記導電性コーティング(35)は、銀を含む、
請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記チャネル壁(7)が、ニッケルまたは銅(37)を含み、
前記電気めっきするステップが、ニッケルまたは銅の水溶液を使用するニッケルまたは銅の電気めっきセルにおいて実施される、
請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記マイクロチャネル(1)は、微小電気機械システム(MEMS)部品またはマイクロ流体システムに組み込まれる、
請求項5~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記電気めっきワイヤ(34)は、前記電気めっきするステップの前に、MEMSシステムまたはマイクロ流体システムの一部となるように予め形成されている、
請求項5~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記予め形成された電気めっきワイヤ(34)は、前記電気めっきするステップの前に、MEMSシステムまたはマイクロ流体システムに取り付けられる、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項5~12のいずれか一項に記載の方法に従って製造された、フリーハンギングまたはフリースタンディングのマイクロチャネル(1)。
【請求項14】
請求項13に記載のフリーハンギングまたはフリースタンディングのマイクロチャネル(1)を備える、
マイクロ流体システムまたはMEMSシステム。
【請求項15】
請求項13に記載のフリーハンギングまたはフリースタンディングのマイクロチャネル(1)を含む、流量センサ、例えば熱式流量センサまたはコリオリ式流量センサ;圧力センサ;密度センサ;粘度センサ;マルチパラメータセンサ;バルブ;ポンプ;および/またはマイクロヒータ。
【請求項16】
請求項13に記載のフリーハンギングまたはフリースタンディングのマイクロチャネル(1)と、
前記フリーハンギングまたはフリースタンディングのマイクロチャネルを、その共振周波数で振動させる作動手段と、
前記共振周波数を測定し比較するための読み出し手段と、を備える、
マイクロ流体密度センサ。
【請求項17】
特に請求項1~3のいずれか一項に記載の微小電気機械システム部品またはマイクロ流体部品に使用するための、フリーハンギングのマイクロチャネル(1)の製造方法であって、以下のステップを含む方法。
(a)第1の材料の基板(2)を提供するステップ;
(b)前記基板(2)の前面(11)および/または背面(12)上にトレンチエッチング保護層(5)を堆積させるステップ;
(c)トレンチエッチング保護層(5)を通して、第1の材料においてトレンチ(15)をエッチングするステップ;
(d)前記トレンチ(15)内に、前記トレンチ(15)の底壁(16)および側壁(17)を覆うチャネルエッチング保護層(18)を形成するステップ;
(e)前記チャネルエッチング保護層(18)および前記トレンチ(15)の前記底壁(16)を通して前記基板(2)の前記第1の材料をエッチングして、前記トレンチ(15)の前記エッチングされた底壁(16)の位置を中心とするチャネル外形(19)を形成するステップ;
(f)前記トレンチエッチング保護層(5)およびチャネルエッチング保護(18)層を前記基板(2)から除去するステップ;
(g)前記基板(2)上に壁形成層(9)を堆積させるステップであって、前記壁形成層(9)が、前記チャネル外形(19)上にチャネル壁(7)を形成し、前記トレンチ(15)を閉じる、堆積させるステップ;
(h)前記チャネル(1)がフリーハンギングになるように、前記チャネル壁(7)を囲む前記第1の材料を除去するために、前記基板(2)をエッチングするステップ。
【請求項18】
特に請求項1~3のいずれか一項に記載の微小電気機械システム部品またはマイクロ流体部品に使用するための、ゾル-ゲル法を使用する、フリーハンギングまたはフリースタンディングのマイクロチャネル(1)の製造方法であって、
円形チャネル(37)を有する型(29)を形成するステップと、
洗浄液(30)を用いて前記円形チャネル(37)を流して、酸化したチャネル内壁(31)を形成するステップと、
前記酸化したチャネル内壁(31)を洗浄し、乾燥させるステップと、
前記円形チャネル(37)をゾル-ゲル溶液(32)で流すステップと、
所望のチャネル壁(7、33)の厚さが実現されるまで、ゲル化反応を起こすステップと、
残りのゾル-ゲル溶液(32)を洗い流すステップと、
前記チャネル壁(7、33)の周囲から前記型(29)の材料を除去するステップと、を含む、
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、フリーハンギングまたはフリースタンディングのマイクロチャネルを含む微小電気機械システム(MEMS)部品またはマイクロ流体部品、ならびにマイクロチャネルの製造方法、およびそのような微小電気機械システム部品を含む、流量センサ、例えば熱センサまたはコリオリ式流量センサ、圧力センサまたはマルチパラメータセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
先行技術より、マイクロコリオリ式質量流量計(MEM)は、2g/hさらには4g/hの流体流量の計測で知られている。これらのセンサは、いわゆる表面チャネル技術(SCT)を用いて製造されており、これにより、様々なサイズおよび形状のフリーハンギングの半円形チャネルを実現することが可能である。
【0003】
例えば、EP2078936B1には、流量計のためのシステムチップの製造方法が開示されており、SiN蒸着ステップおよび部分的なエッチングアウトおよびエッチングによる部分的な露出によって、少なくとも1つの側面で固定され、それ以外は自由であるチューブ構造が実現されるSiNチューブが実現され、そのためにマイクロSCTが使用される単結晶シリコン基板が提供される。チャネルの幅および深さは、スリットの位置と量によって決定される。その結果、チャネルの断面は、上面が平らな部分的に円形のチャネルとなる。このSCTによって、最大チャネル径を300μm程度に制限できる。SCTでは、スリットを通したシリコンのエッチング時間およびスリットの配列位置が、表面チャネルの形状および大きさを決定するのに重要である。
【0004】
しかしながら、液体クロマトグラフィーまたは「ラボオンチップ」のような多くのアプリケーションは、マイクロ流体流量計の低容量および低圧損を要求する一方で、より高い流速を使用する。これは、SCTプロセスで製造された微小電気機械システム(MEMS)部品を用いても実現できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の目的
本発明の目的は、マイクロ流体流量計の低容量および比較的低い圧力損失を提供しながら、より高い流量を達成できる、フリーハンギングまたはフリースタンディングのマイクロチャネルを含む微小電気機械システム(MEMS)部品またはマイクロ流体部品、およびそのようなマイクロチャネルの製造方法を提供することにある。
【0006】
発明の概要
本発明によれば、フリーハンギングまたはフリースタンディングのマイクロチャネルを含む微小電気機械システム部品またはマイクロ流体部品が提供され、チャネルが、実質的に円形の断面を有し、チャネルの直径が、チャネル壁の厚さの10倍以上、例えば15倍以上、例えば20倍以上、例えば25倍以上、例えば30倍以上、例えば35倍以上、例えば50倍以上、例えば55倍以上、例えば60倍以上、例えば65倍以上、例えば70倍以上、例えば75倍以上、例えば80倍以上、例えば85倍以上、例えば90倍以上、例えば100倍以上などであり、チャネルの直径は、20μm以上であることを特徴とする。上記の比率について選択された下限に応じて、比率の上限は、用途に応じて、100、90、85、80、75、70、65、60、55、50、35、30、25、20、15などであり得る。したがって、例えば10~100、15~90などの比率のような様々な範囲を定義できる。
【0007】
「フリーハンギング」または「フリースタンディング」とは、製造後、最終チャネルが、例えばまだそこに埋め込まれているのではなく、チャネルが製造された基板、型などの周囲の構造体に接続されていない、または最小限の接続しかないことを意味する。「実質的に円形」とは、例えば(先行技術のような)平坦な上面や(正方形のような)明確に識別できる角がない、比較的高度な円形または回転対称性を示すが、多少の不規則性は許容される。これは、使用される技術、結晶格子および様々な製造プロセスによる不規則性に依存する。したがって、好ましくは、六角形または同様の多角形の形状が丸みを帯びた角を有する場合には、六角形または同様の多角形の形状も考えられる。
【0008】
上記のMEMS部品またはマイクロ流体部品は、その利点(高速、正確、少量、小さなフォームファクタ)を維持しながら、チャネル径を大きくすることによって、例えばマイクロコリオリ式MFMの流量範囲を拡大し、および/または圧力損失を減少させることを可能にする。
【0009】
上記のMEMS部品またはマイクロ流体部品は、チャネルが平坦な上面および最大チャネル壁厚を有するSCTプロセスとは対照的に、チャネル径が増加するとき圧力に対する感度を低下させる、実質的に円形の断面を有する。これらの両方は、フリーハンギングのチャネルの最大サイズを制限し、チャネルのサイズが増加したときに圧力に対する感度を増加させる。
【0010】
一実施形態は、前述のMEMS部品またはマイクロ流体部品に関し、圧力損失が比較的低く、より高い流量を可能にするために、チャネルの直径は、5μm以上、例えば10μm以上、例えば20μm以上、例えば30μm以上、例えば40μm以上、例えば50μm以上、例えば60μm以上、例えば70μm以上、例えば80μm以上、例えば90μm以上、例えば100μm以上、例えば200μm以上、例えば500μm以上、例えば1000μm以上などである。チャネル径の上限は、用途に応じて、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、200μm、500μm、1000μmなどであってよい。したがって、例えば5~1000μm、10~500μmのチャネル径など、様々なチャネル径の範囲を定義できる。
【0011】
一実施形態は、チャネル壁の厚さが、50μm、または20μm、または10μmより小さく、例えば5μmより小さく、例えば2.5μmより小さく、例えば2μmより小さく、例えば1.5μmより小さく、例えば1.4μmより小さく、例えば1.3μmより小さく、例えば1.2μmより小さく、例えば1.1μmより小さく、例えば1.0μmより小さい前述のMEMS部品またはマイクロ流体部品に関連するものである。壁厚の選択された上限に応じて、チャネル径の下限は、用途に応じて、5μm、2.5μm、2μm、1.5μm、1.4μm、1.3μm、1.2μm、1.1μm、1.0μmなど、様々な値になり得る。したがって、例えば1.0~10μm、1.2~5μmの壁厚など、さまざまな厚み範囲を定義できる。
【0012】
本発明の別の態様は、前述の微小電気機械システム部品またはマイクロ流体部品を含む、流量センサ、例えば熱センサまたはコリオリ式流量センサ、または圧力センサ、密度センサ、粘度センサ、またはマルチパラメータセンサ、または(マイクロ)バルブ、または(マイクロ)ポンプ、またはマイクロヒータ、またはマイクロクーラ、またはラボオンチップ、例えばバイオセンサまたは化学センサに関するものである。
【0013】
本発明のさらなる態様は、予め成形されているマイクロ流体部品またはMEMS部品に関する。したがって、チャネルは、追加の曲げ工程なしに、最終形状を有するように製造される。
【0014】
第1の方法
本発明の別の態様は、特に前述の微小電気機械システム部品またはマイクロ流体部品に使用するための、フリーハンギングのマイクロチャネルを製造する第1の方法に関し、以下のステップを含む。
(a)第1の材料の基板を提供するステップ;
(b)該基板の前面および/または背面上にトレンチエッチング保護層を堆積させるステップ;
(c)トレンチエッチング保護層を通して、第1の材料においてトレンチをエッチングするステップ;
(d)トレンチ内に、トレンチの底壁および側壁を覆うチャネルエッチング保護層を形成するステップ;
(e)チャネルエッチング保護層およびトレンチの底壁を通して基板の第1の材料をエッチングして、トレンチのエッチングされた底壁の位置を中心とするチャネル外形を形成するステップ;
(f)トレンチエッチング保護層およびチャネルエッチング保護層を基板から除去するステップ;
(g)基板上に壁形成層を堆積させるステップであって、壁形成層が、チャネル外形上にチャネル壁を形成し、トレンチを閉じる、堆積させるステップ;
(h)チャネルがフリーハンギングとなるように、チャネル壁を囲む第1の材料を除去するために、基板をエッチングするステップ。
【0015】
上記の方法は、SCTにいくつかの重要な変更を加えるものである。ウェハの表面ではなく、溝の底からチャネルを(等方的に)エッチングすることで、SCTに固有の上面の平坦化を回避できる。
【0016】
チャネルは、例えば最大180μmの直径を持ち、チャネル壁の厚さは、最大10μmであってよい。集積化された金属電極は、マイクロ流量センサの作動および読み出しに使用できる。したがって、例えば、高流量のマイクロコリオリ式質量流量センサを実現できる。
【0017】
一実施形態は、さらに以下を含む、前述の方法に関する。
(i)好ましくは、ステップ(a)の後、ステップ(b)の前に、基板の前面および/または背面上にインレットエッチング保護層を形成すること。
【0018】
したがって、保護層は、基板内のチャネルのためのインレットをエッチングする前に形成されてよい。
【0019】
したがって、一実施形態は、以下をさらに含む、前述の方法に関する。
(j)好ましくは、ステップ(a)および(i)の後、ステップ(b)の前に、インレットエッチング保護層を通して、基板の前面および/または背面において、基板内のインレットをエッチングすること、
(k)ステップ(g)の間に、基板上に壁形成層を堆積させることであって、壁形成層が、インレットの側壁を覆い、チャネル外形上にチャネル壁を形成し、トレンチを閉じ、インレットおよびチャネルが、連続フローチャネルを形成すること。
【0020】
一実施形態は、さらに以下を含む、前述の方法に関する。
(l)インレットエッチング保護層および/またはトレンチエッチング保護層および/または金属層の上にフォトレジスト層を堆積させること。
【0021】
一実施形態は、以下をさらに含む、前述の方法に関する。
(m)好ましくはステップ(b)の前に、基板の前面および/または背面からインレットエッチング保護層を除去すること。
【0022】
一実施形態は、以下をさらに含む、前述の方法に関する。
(n)好ましくは、ステップ(b)の後、ステップ(c)の前に、トレンチエッチング保護層上に、さらなるトレンチエッチング保護層を堆積させること。
【0023】
一実施形態は、以下をさらに含む、前述の方法に関する。
(o)チャネルの上の壁形成層の上に金属層を堆積させ、ステップ(h)の前に、基板をエッチングしてチャネル壁を囲む第1の材料を除去する。
【0024】
すなわち、チャネルが「閉じられた」後、前述の金属層が、堆積され、コリオリ式センサの作動および読み出しのための例えば電極を形成するようにパターン化される。
【0025】
一実施形態は、前述の方法に関し、金属層が、クロム付着層を有する金層を含む。
【0026】
一実施形態は、前述の方法に関し、第1の材料は、シリコンである。シリコンは、好ましくは、高濃度ドープシリコンを含み、および/または、シリコンウェハは、高濃度ドープシリコンウェハである。
【0027】
したがって、一実施形態は、前述の方法に関し、基板がシリコンウェハである。
【0028】
一実施形態は、前述の方法に関し、シリコンウェハが、200~2000μm、好ましくは400~600μm、より好ましくは500~550μm、例えば525μmの厚さを有する。
【0029】
一実施形態は、前述の方法に関し、インレットエッチング保護層が、熱SiO2を含む。熱SiO2(t-SiO2)を有するインレットエッチング保護層は、後述するように、インレットエッチングの間に、ウェハの背面などからハードマスクとして使用されてよい。
【0030】
一実施形態は、前述の方法に関し、トレンチエッチング保護層が、減圧化学気相成長法(LPCVD)を使用して堆積される。トレンチエッチング酸化物層は、以下で議論するように、チャネルの外形を形成する、例えば幅10μmなどの幅5~20μmおよび50μmなどの長さ25~75μmの、1つまたは複数の矩形トレンチでパターン化されてよい。
【0031】
一実施形態は、前述の方法に関し、さらなるトレンチエッチング保護層が、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS、Si(OC2H5)4)を用いて堆積される。
【0032】
一実施形態は、前述の方法に関し、トレンチエッチング保護層は、トレンチをエッチングするためのハードマスクとして使用される。トレンチエッチング保護層は、例えば、100~150μm、例えば110μmの深さの1つ以上のトレンチをエッチングするためのハードマスクとして使用されてよい。トレンチエッチング保護層は、好ましくは、チャネルエッチング中にそれらを保護するために、インレット(複数可)の内部にも堆積される。
【0033】
一実施形態は、前述の方法に関し、チャネルエッチング保護層は、熱SiO2を含む。この層は、チャネルエッチングの間、トレンチ側壁を保護する。
【0034】
一実施形態は、前述の方法に関し、トレンチエッチング保護層は、プラズマ化学気相成長法(PECVD)を使用して堆積される。PECVDプロセスは、好ましくは、コンフォーマルでなく、これは、実質的にSiO2がトレンチ(複数可)の内部に堆積されない一方で、非常に厚い層がウェハの表面に堆積されることを意味する。
【0035】
一実施形態は、前述の方法に関し、チャネル外形を形成するためにトレンチの底壁を通して基板をエッチングすることは、チャネルエッチング保護層を除去するために方向性プラズマエッチングを使用することを含む。このプロセスのエッチング速度はトレンチ(複数可)内部で大きく低下するので、表面のトレンチエッチング保護層(PECVD層)は、トレンチの底部の熱SiO2層よりはるかに厚くする必要がある。
【0036】
一実施形態は、前述の方法に関し、トレンチの底壁を通して基板をエッチングしてチャネル外形を形成することは、等方性気相XeF2を使用して第1の材料を除去することを含む。このエッチングプロセスは、本質的に等方性であり、したがって、エッチングトレンチの底部を中心とする丸いチャネルをもたらす。しかし、他のガスを使用することも考えられる。HNA(69%のHNO3、50%のHFおよびH2Oを2:1:2の割合で混合したもの)のような流体さえも使用することが可能である。
【0037】
一実施形態は、前述の方法に関し、基板から保護層のいずれか1つを除去することは、後述するように、壁形成層を堆積するための準備をするために、例えばウェットHFエッチングを使用することを含む。
【0038】
一実施形態は、前述の方法に関し、基板上に壁形成層を堆積させることは、以下のステップを含む。
- 熱SiO2を含む第1の壁形成層を堆積させるステップ;
- 減圧化学気相成長法(LPCVD)を使用して、シリコンリッチな窒化シリコン(SiRN)を含む第2の壁形成層を堆積させるステップ;
- 多結晶シリコン(ポリシリコン)を含む第3の壁形成層を堆積させるステップ;および
- シリコンリッチな窒化シリコン(SiRN)を含む第4の壁形成層を堆積させるステップ。
【0039】
全「スタック」の厚さは、最大10μm(エッチングトレンチ幅に依存)であり、コンフォーマルに堆積させることができる、つまり、チャネルの内側、基板またはウェハの前面と背面に堆積させることができる。壁形成層は、チャネルがエッチングされるトレンチ(複数可)を閉じ、密閉された漏れのないチャネルを実現する。チャネル内の唯一の接液材質は、シリコンリッチな窒化シリコン(SiRN)である。
【0040】
一実施形態は、前述の方法に関し、トレンチが第1、第2、第3および/または第4の壁形成層によって塞がれるのを防ぐために、好ましくは第3の壁形成層を堆積した後および第4の壁形成層を堆積する前に、1または複数の穴または凹部をトレンチに形成することを含む。
【0041】
一実施形態は、前述の方法に関し、チャネル壁を囲む第1の材料を除去するために基板をエッチングすることが、第1の材料に到達するために基板の前面および/または背面の壁形成層をエッチングすること、例えばチャネルの隣のバルク基板、例えばシリコンに到達するために、ウェハの上の層スタックをエッチングすることを含む。
【0042】
一実施形態は、前述の方法に関し、第1の材料に到達するために基板の前面の壁形成層をエッチングすることが、方向性プラズマエッチングを使用することを含む。
【0043】
一実施形態は、前述の方法に関し、チャネルがフリーハンギングになるように、チャネル壁の周囲の第1の材料を除去するために基板をエッチングすることが、半等方性SF6プラズマエッチングおよび等方性気相XeF2エッチングを使用して第1の材料を除去することを含む。ただし、前述したように、他のガスを用いることも考えられる。また、流体であっても、以下に説明するように、HNAなどを用いることができる。
【0044】
一実施形態は、前述したいずれかの方法で製造されたMEMS部品またはマイクロ流体部品に関するものである。
【0045】
以下、本発明のさらなる実施形態について説明する。
【0046】
一実施形態は、特に上述のような微小電気機械システム部品に使用するための、フリーハンギングのマイクロチャネルを製造する前述の方法に関し、以下のステップを含む。(a)第1の材料の基板を提供するステップ;(b)基板の前面および/または背面上にトレンチエッチング保護層を堆積させるステップ;(c)トレンチエッチング保護層を通して、第1の材料においてトレンチをエッチングするステップ;(d)トレンチ内に、トレンチの底壁および側壁を覆うチャネルエッチング保護層を形成するステップ;(e)チャネルエッチング保護層およびトレンチの底壁を通して基板の第1の材料をエッチングして、トレンチのエッチングされた底壁の位置を中心とするチャネル外形を形成するステップ;(f)トレンチエッチング保護層およびチャネルエッチング保護層を基板から除去するステップ;(g)基板上に壁形成層を堆積させ、壁形成層が、チャネル外形上にチャネル壁を形成してトレンチを閉じるステップ;(h)チャネルがフリーハンギングとなるように、チャネル壁の周囲の第1の材料を除去するために、基板をエッチングするステップ;を行う。
【0047】
一実施形態は、さらに以下を含む、前述の方法に関する。(i)好ましくはステップ(a)の後、ステップ(b)の前に、基板の前面および/または背面上にインレットエッチング保護層を形成するステップ。
【0048】
一実施形態は、以下をさらに含む、前述の方法に関する。(j)好ましくはステップ(a)および(i)の後、ステップ(b)の前に、基板の前面および/または背面において、インレットエッチング保護層を通して、基板内のインレットをエッチングするステップ;(k)ステップ(g)の間に基板上に壁形成層を堆積し、壁形成層がインレットの側壁を覆い、チャネルの外形上にチャネル壁を形成してトレンチを閉じ、インレットおよびチャネルが連続フローチャネルを形成するステップ。
【0049】
一実施形態は、さらに以下を含む、前述の方法に関する。(l)インレットエッチング保護層および/またはトレンチエッチング保護層および/または金属層の上にフォトレジスト層を堆積させること。
【0050】
一実施形態は、さらに以下を含む、前述の方法に関する。(m)好ましくはステップ(b)の前に、基板の前面および/または背面からインレットエッチング保護層を除去すること。
【0051】
一実施形態は、以下をさらに含む、前述の方法に関する。(n)好ましくはステップ(b)の後、ステップ(c)の前に、トレンチエッチング保護層上に、さらなるトレンチエッチング保護層を堆積させること。
【0052】
一実施形態は、以下をさらに含む、前述の方法に関する。(o)チャネルの上の壁形成層の上に金属層を堆積させ、ステップ(h)の前に、チャネル壁を囲む第1の材料を除去するために基板をエッチングする。
【0053】
一実施形態は、前述の方法に関し、金属層が、クロム付着層を有する金層を含む。
【0054】
一実施形態は、前述の方法に関し、第1の材料がシリコンである。
【0055】
一実施形態は、前述の方法に関し、基板がシリコンウェハである。
【0056】
一実施形態は、前述の方法に関し、シリコンウェハが、200~2000μm、好ましくは400~600μm、より好ましくは500~550μm、例えば525μmの厚さを有する。
【0057】
一実施形態は、前述の方法に関し、インレットエッチング保護層が熱SiO2を含む。
【0058】
一実施形態は、前述の方法に関し、トレンチエッチング保護層が、減圧化学気相成長法(LPCVD)を使用して堆積される。
【0059】
一実施形態は、前述の方法に関し、さらなるトレンチエッチング保護層は、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS、Si(OC2H5)4)を使用して堆積される。
【0060】
一実施形態は、前述の方法に関し、トレンチエッチング保護層は、トレンチをエッチングするためのハードマスクとして使用される。
【0061】
一実施形態は、前述の方法に関し、チャネルエッチング保護層は、熱SiO2を含む。
【0062】
一実施形態は、前述の方法に関し、トレンチエッチング保護層は、プラズマ化学気相成長法(PECVD)を使用して堆積される。
【0063】
一実施形態は、前述の方法に関し、チャネル外形を形成するためにトレンチの底壁を通して基板をエッチングすることは、チャネルエッチング保護層を除去するために方向性プラズマエッチングを使用することを含む。
【0064】
一実施形態は、前述の方法に関し、トレンチの底壁を通して基板をエッチングしてチャネルの外形を形成することは、等方性気相XeF2を使用して第1の材料を除去することを含む。
【0065】
一実施形態は、前述の方法に関し、保護層のいずれか1つを基板から除去することは、ウェットHFエッチングを使用することを含む。
【0066】
一実施形態は、前述の方法に関し、基板上に壁形成層を堆積させることは、以下のステップを含む。
- 熱SiO2を含む第1の壁形成層を堆積させるステップ;
- 減圧化学気相成長法(LPCVD)を使用して、シリコンリッチな窒化シリコン(SiRN)を含む第2の壁形成層を堆積させるステップ;
- 多結晶シリコン(ポリシリコン)を含む第3の壁形成層を堆積させるステップ;および
- シリコンリッチな窒化シリコン(SiRN)を含む第4の壁形成層を堆積させるステップ。
【0067】
一実施形態は、前述の方法に関し、トレンチが第1、第2、第3および/または第4の壁形成層によって塞がれるのを防ぐために、好ましくは第3の壁形成層を堆積させた後、第4の壁形成層を堆積させる前に、1または複数の穴または凹部をトレンチに形成することを含む。
【0068】
一実施形態は、前述の方法に関し、チャネル壁を取り囲む第1の材料を除去するために基板をエッチングすることが、第1の材料に到達するために基板の前面および/または背面の壁形成層をエッチングすることを含む。
【0069】
一実施形態は、前述の方法に関し、基板の前面の壁形成層をエッチングして第1の材料に到達させることが、方向性プラズマエッチングを使用することを含む。
【0070】
一実施形態は、前述の方法に関し、チャネルがフリーハンギングになるように、チャネル壁の周囲の第1の材料を除去するために基板をエッチングすることが、半等方性SF6プラズマエッチングおよび等方性気相XeF2エッチングを使用して第1の材料を除去することを含む。
【0071】
第2の方法
本発明の別の態様は、特に前述の微小電気機械システム部品に使用するための、ゾル-ゲル法を使用する、フリーハンギングまたはフリースタンディングのマイクロチャネルの第2の製造方法に関し、以下のステップを含む。
- 円形チャネルを有する型を形成するステップ;
- 洗浄液を用いて円形チャネルを流して、酸化したチャネル内壁を形成するステップ;
- 酸化したチャネル内壁を洗浄し、乾燥させるステップ;
- 円形チャネルをゾル-ゲル溶液で流すステップ;
- 所望のチャネル壁の厚さが実現されるまで、ゲル化反応を起こすステップ;
- 残りのゾル-ゲル溶液を洗い流すステップ;および
- チャネル壁の周囲から型の材料を除去するステップ。
【0072】
上記の方法によれば、圧力感度が低下し、流量範囲が拡大した、チャネル断面がより円形となる、フリーハンギングまたはフリースタンディングのマイクロチャネルを製造できる。さらに、チャネルの直径は、例えば1000μmまで増加させることができる。
【0073】
一実施形態は、前述の方法に関し、型の材料がポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む。型自体は、ESCARGOT(Embedded SCAffold RemovinG Open Technology)法を用いて形成できる。
【0074】
一実施形態は、前述の方法に関し、洗浄液がピラニア溶液を含む。
【0075】
一実施形態は、前述の方法に関し、円形チャネルが35~70秒間洗浄液で流される。
【0076】
このように、水酸基は、共有結合を形成するように促される。
【0077】
一実施形態は、前述の方法に関し、酸化したチャネル内壁の洗浄および乾燥は、脱イオン(DI)水および窒素を用いて実施される。
【0078】
一実施形態は、前述の方法に関し、ゾル-ゲル溶液が、TEOS、MTES(メチルトリエトキシシラン)、エタノールおよび水を、好ましくは1:1:1:1の比率で混合することによって作製され、より好ましくは、HClを添加してpHを4に調整することを含む。
【0079】
好ましくは、ゾル-ゲル混合物は、シリンジポンプを使用して、円形チャネルを通してゆっくりと流される。ゲル化反応を起こすために、チャネルは、例えば、55℃のホットプレート上に置かれてよい。この温度は、チャネルを不均一にするエタノールの蒸発と、型の材料としてPDMSを使用する場合にはPDMSのガラス転移温度という2つの要因によって制限されることがある。
【0080】
また、残ったゾルゲル溶液を洗い流すために、空気流を利用してよい。
【0081】
本発明者らは、ゲル化反応の時間、温度および例えばシリンジポンプの送液速度によって、チャネル壁の厚さを制御できることを見出した。ただし、PDMSを用いた場合、PDMSはピラニア溶液に溶解しにくく、また、チャネル壁の一部が溶解する可能性があることに留意すべきである。
【0082】
一実施形態は、前述したいずれかの方法により製造されたMEMS部品に関するものである。
【0083】
以下、本発明のさらなる実施形態について説明する。
【0084】
一実施形態は、以下のステップを含むゾル-ゲル法を用いて、特に上述の微小電気機械システム部品またはマイクロ流体部品に使用するための、フリーハンギングまたはフリースタンディングのマイクロチャネルを製造する前述の方法に関するものである。
- 円形チャネルを有する型を形成するステップ;
- 洗浄液を用いて円形チャネルを流して、酸化したチャネル内壁を形成するステップ;
- 酸化した内側チャネル壁を洗浄し、乾燥させるステップ;
- 円形チャネルをゾル-ゲル溶液で流すステップ;
- 所望のチャネル壁の厚さが実現されるまで、ゲル化反応を起こすステップ;
- 残りのゾル-ゲル溶液を洗い流すステップ;および
- チャネル壁の周囲から型の材料を除去するステップ。
【0085】
一実施形態は、前述の方法に関し、型の材料がポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む。
【0086】
一実施形態は、前述の方法に関し、洗浄流体がピラニア溶液を含む。
【0087】
一実施形態は、前述の方法に関し、円形チャネルが洗浄液で35~70秒間流される。
【0088】
一実施形態は、前述の方法に関し、酸化したチャネル内壁の洗浄および乾燥は、脱イオン(DI)水および窒素を用いて実施される。
【0089】
一実施形態は、前述の方法に関し、ゾルゲル溶液が、TEOS、MTES、エタノールおよび水を、好ましくは1:1:1:1の比率で混合することによって作製され、より好ましくは、HClを添加してpHを4に調整することを含む。
【0090】
第3の方法
本発明の別の態様は、特に前述の微小電気機械システム部品などのマイクロ流体部品で使用するための、電気めっき法を用いる、フリーハンギングまたはフリースタンディングのマイクロチャネルを製造する第3の方法に関し、以下のステップを含む。
- 導電性または非導電性の電気めっきワイヤを提供するステップ;
- 電気めっきワイヤが非導電性である場合、陰極を形成するために、電気めっきワイヤ上に導電性コーティングを形成するステップ;
- 電気めっきワイヤまたは導電性コーティングにチャネル壁を電気めっきするステップ;および
- 電気めっきワイヤを除去するステップ。
【0091】
一実施形態は、前述の方法に関し、電気めっきワイヤが、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)または銅で作られている。ABSは、例えばアセトンを用いることにより、後で溶解させることができる。また、溶解、エッチング除去などの除去が可能な他の材料も使用できる。材料は導電性であってもよく、その場合、追加の導電性コーティングを施す必要はない(以下参照)。
【0092】
一実施形態は、前述の方法に関し、導電性コーティングが銀を含む。導電性陰極を製造するために、例えばABS電気めっきワイヤを銀導電性塗料でコーティングし、室温で乾燥させてよい。線材自体がすでに導電性を有している場合には、追加の導電性塗料を塗布する必要はない。導電性塗料は、フリースタンディングのチャネルを形成する際に、容易に除去できることが好ましい。銀導電性塗料の代わりに、ニッケル導電性塗料、および他の導電性金属塗料を使用してよい。
【0093】
一実施形態は、電解浴槽に浸漬された2つの電極と、直流電源とを有する電気めっきセルに関するものである。陽極は、チャネルを形成することになる金属の棒(好ましくは、ニッケル、例えば純度99.99%の棒、または銅または他の金属)であり、一方、導電性または被覆された非導電性の電気めっきワイヤは、陰極を形成する。
【0094】
一実施形態は、前述の方法に関し、チャネル壁がニッケルまたは銅を含み、電気めっきするステップが、ニッケルまたは銅の水溶液を用いたニッケルまたは銅の電気めっきセルで実施される。そのときの銅の電気めっきセルは、例えば、完全性のために、銅陽極、陰極としての例えばABSワイヤ、銅の水溶液および直流電源を含んでよい。1リットルの銅水溶液は、例えば、0.1kgの銅塩、0.11リットルの96%硫酸、0.15mlの50%塩酸、10mlのHL11スタータおよび0.25mlのHL13粒子微細化剤を含む容器を使用してよい。必要量に達するまで脱イオン(DI)水を加えてもよい。ニッケルや銅以外の金属も、原則的に使用可能である。電解質溶液は、生産効率を最大化するために、それぞれの金属について最適化できる。
【0095】
チャネル壁の構成材料としては、ニッケルが特に好ましい。ニッケルは、水溶液(pH4~10)、一般的なアルコールおよび単純炭水化物に対する耐食性に優れている。用途によっては、銀の特性を生かすために、銀の塗膜を(部分的に)残すことが有利な場合がある。本発明はまた、外部からの環境の悪影響および内部での腐食性流体からチャネル壁を保護するために、外部だけでなくチャネルの内部にも、他のコーティングを行うことを想定している。
【0096】
別の実施形態は、実質的に円形ではなく、(ほぼ)完全な円形である前述の方法によって製造されるチャネルに関するものである。
【0097】
一実施形態は、前述の方法に関し、マイクロチャネルが、マイクロ流体システム部品または微小電気機械システム(MEMS)部品に組み込まれる。マイクロ流体部品は、流量センサ;圧力センサ;密度センサ;粘度センサ;マルチパラメータセンサ;バルブ;ポンプ;および/またはマイクロヒータであってよい。流量センサは、好ましくは、熱式流量センサまたはコリオリ式流量センサである。
【0098】
一実施形態は、前述の方法に関し、電気めっきワイヤが、マイクロチャネルを曲げることなくその形状でフリースタンディングのマイクロチャネルを製造するように、予め形成されている。したがって、電気めっきワイヤは、1つまたは複数の屈曲部を有してよい。屈曲部は、1つの平面内に存在してよい。好ましくは、屈曲部は丸みを帯びている。形状は、電気めっきワイヤを除去するステップを容易にするように、最適化されてよい。特に好ましい実施形態では、形状は、EP1719982B1に開示されているようなコリオリ式流量計のためのU字形状またはループである。好ましくは、電気めっきを行うステップの前に、予め形成された電気めっきワイヤが、MEMSシステムまたはマイクロ流体システムに取り付けられる。
【0099】
別の好ましい実施形態は、マイクロ流体密度センサに関するものであり、このセンサは、めっきされたフリーハンギングまたはフリースタンディングのマイクロチャネル;フリースタンディングマイクロ流体部品をその共振周波数で振動させるための作動手段;および共振周波数を測定および比較するための読み出し手段を備える。マイクロチャネルの形状は、直線、長方形、三角形またはU字形である(Groenesteijn, J.; van de Ridder, B.; Lotters, J. C.; Wiegerink, R.J. / Modelling of a micro Coriolis mass flow sensor for sensitivity improvement.2014 IEEE Sensors, Valencia, Spain で発表された論文)。特に、中央部が直線状のU字形状のマイクロチャネルが好ましく、例えば、Groenesteijn, J, et al., 2012, A: Physical, vol.186, pp.48-53; DOI: 10.1016/j.sna.2012.01.010の
図5に示す作動と組み合わせて使用できる。密度センサは、マイクロ流体装置である。作動手段は、好ましくはローレンツ力を用い、読み出し手段は、当業者に知られているように、好ましくは静電容量式である。読み出し手段は、媒体の重量、したがって密度の変化による共振のいかなる変化にも敏感である。
【0100】
さらなる実施形態は、前述の方法に関し、電気めっきワイヤは、電気めっきの前に、マイクロ流体システム、任意にMEMSシステムに予め形成され、取り付けられる。その後、ワイヤおよび取り付け点が電気めっきされ、その結果、溶接、はんだ付けまたは接着などの他の取り付け手段なしで、チャネルをデバイスに直接形成した接続が得られる。
【0101】
電気めっきは、室温で、例えば3A/dm2の電流密度で1時間行うことができる。電気めっき後、基板は、電気めっき材料、例えば銅の酸化を防ぐために、純水ですすがれてよい。アセトンの入ったビーカーに電気めっきワイヤを12時間浸し、内部のABSワイヤを完全にエッチングしてよい(ABSを使用した場合)。ABSの代わりに、お湯に溶かすことができるポリアミド(PA)ポリマーを使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
次に、添付図面および図の説明により、本発明を説明する。
図1A~
図2Gは、第1の方法によるフリーハンギングのマイクロチャネルの製造における異なる段階を示し、
図1A~
図1Gは、チャネルの長さに沿った基板の断面を用いた異なる段階を示し、
図2A~
図2Gは、チャネルに対して垂直な基板の断面を用いた段階を示す。
図6A~
図6Fは、第2の方法によるフリースタンディングのマイクロチャネルの製造における異なる段階を示す。
図7A~
図7Dは、第3の方法によるフリースタンディングのマイクロチャネルの製造における異なる段階を示す。
【
図1A】
図1Aは、インレットエッチング保護層としての第1の熱SiO
2層の生成およびインレットのエッチングを模式的に示す。
【
図1B】
図1Bは、トレンチエッチング保護層としてのLPCVD法によるSiO
2層と3つのトレンチのエッチングを模式的に示す。
【
図1C】
図1Cは、3つのさらなるトレンチエッチング保護層としてのPECVD法によるSiO
2層の形成と、チャネルエッチング保護層としての第2の熱SiO
2層の形成を模式的に示す。
【
図1D】
図1Dは、チャネル外形を形成するために、3つのトレンチの底壁を通して基板をエッチングしている様子を模式的に示す。
【
図1F】
図1Fは、チャネルの上方の壁形成層の上に金属層を堆積する様子を模式的に示す。
【
図1G】
図1Gは、基板をエッチングしてチャネル壁の周囲の第1の材料を除去し、チャネルをフリーハンギングにする様子を模式的に示す。
【
図2A】
図2Aは、インレットエッチング保護層としての第1の熱SiO
2層の生成およびインレットのエッチングを模式的に示す。
【
図2B】
図2Bは、トレンチエッチング保護層としてのLPCVD法によるSiO
2層と3つのトレンチのエッチングを模式的に示す。
【
図2C】
図2Cは、3つのさらなるトレンチエッチング保護層としてのPECVD法によるSiO
2層の形成と、チャネルエッチング保護層としての第2の熱SiO
2層の形成を模式的に示す。
【
図2D】
図2Dは、チャネル外形を形成するために、3つのトレンチの底壁を通して基板をエッチングしている様子を模式的に示す。
【
図2E】
図2Eは、基板上の壁形成層の堆積を模式的に示す。
図2Fは、チャネルの上方の壁形成層の上に金属層を堆積する様子を模式的に示す。
【
図2G】
図2Gは、基板をエッチングしてチャネル壁の周囲の第1の材料を除去し、チャネルをフリーハンギングにする様子を模式的に示す。
【
図3】
図3は、さらに、チャネル壁における層スタックを模式的に示す。
【
図4】
図4は、部分的に解放された別のフリーハンギングのチャネルの隣にある、フリーハンギングのチャネルを模試的に示す。
【
図5】
図5は、フリーハンギングのチャネル上の金属電極を模式的に示す。
【
図6A】
図6Aは、円形チャネルを有する型の一例を模式的に示す。
【
図6B】
図6Bは、円形チャネルをピラニア溶液で流す様子を模式的に示す。
【
図6C】
図6Cは、チャネル内壁に水酸基が形成される様子を模式的に示す。
【
図6D】
図6Dは、円形チャネルをゾル-ゲル溶液で流す様子を模式的に示す。
【
図6E】
図6Eは、円形内壁に二酸化ケイ素層が形成される様子を模式的に示す。
【
図6F】
図6Fは、得られたフリースタンディングのチャネルを模式的に示す。
【
図7B】
図7Bは、陰極を形成するために、電気めっきワイヤに導電層を塗布している様子を模式的に示す。
【
図7C】
図7Cは、導電層上に銅またはニッケル層が施されている様子を模式的に示す。
【
図7D】
図7Dは、フリースタンディングの(銅またはニッケル)チャネルを模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0103】
詳細説明
第1の方法
図1A~
図5に関して示されるように、また前述したように、本出願人は、マイクロコリオリ式質量流量センサの作動および読み出しのための電極23と好ましくは一体化した、比較的大きなフリーハンギングまたはフリースタンディングのマイクロチャネル1を製造するための第1の有利な製造プロセスに想到した。このプロセスは、過去に提示されたSCTを改良したものである。その結果得られるマイクロチャネル1は、ウェハボンディングを使用せずに、例えば180μmまでの直径および例えば10μmまでのチャネル壁7の厚さを有する円形または円形に近い(部分的に六角形のような)断面を有する。このチャネル1は、コリオリ式質量流量計(MFM)に必要な振動運動を可能にするために、バルクから解放されることが可能である。統合された金属電極23は、センサの作動および読み出しに使用できる。
【0104】
しかしながら、前述したように、液体クロマトグラフィーまたは「ラボオンチップ」のような多くのアプリケーションは、マイクロ流体流量計の低容量を必要としながら、より高い流速を使用する。マイクロコリオリ式MFMの利点(高速、高精度、低容量、小型)を維持しつつ、マイクロコリオリ式MFMの流量範囲を拡大および/または圧損を低減するためには、チャネル径を拡大する必要がある。しかしながら、SCTプロセスの特徴として、チャネルは上面が平らであり、最大のチャネル壁の厚さがある。この両者により、フリーハンギングのチャネルの最大サイズが制限され、チャネルサイズが大きいときに圧力に対する感度が高くなる。
【0105】
図1A~
図5に示す製造プロセスでは,SCTに2つの主要な変更を加えている。ウェハ2の表面ではなく、トレンチ15の底16からチャネル1を等方的にエッチングすることによって、SCTに固有の「平らな上面」を回避できる。さらに、好ましくは複数の材料のスタックをチャネル壁7として使用することにより、SCTで使用されるシリコンリッチな窒化シリコン(SiRN)の真性応力が許容する以上に、壁厚を増大させることができる。
【0106】
製造の概要
図1A~
図5は、第1の製造工程の概要を簡略的に示す。
【0107】
図1Aおよび
図2Aに示すように、製造は、好ましくは、基板2として例えば525μm厚の高濃度ドープシリコンウェハ2の湿式熱酸化から始めてよい。この熱SiO
2(t-SiO
2)層4は、インレットエッチング保護層4として機能し、ウェハ2の背面12からのインレット10のエッチングの間、ハードマスクとして使用されてよい。
【0108】
図1Bおよび
図2Bに示すように、インレットエッチング後、インレットエッチング保護層4を剥離し、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS、Si(OC
2H
5)
4)の減圧化学気相成長法(LPCVD)を用いて、新たなSiO
2層5(トレンチエッチング保護層5として)を成膜できる。このトレンチエッチング保護層5には、チャネル1の長手方向の外形を形成し得る、例えば幅10μm、長さ50μmの3つの矩形の孔がパターン形成される。次に、SiO
2層5をハードマスクとして使用して、チャネル1がエッチングされることになる、例えば110μmの深さのトレンチ15をエッチングする。
【0109】
図1Cおよび
図2Cに示すように、このSiO
2層5は、チャネルエッチング中にインレット10を保護するためにインレット10の内部にも成膜できる。次に、熱酸化ステップを実施してもよく、これにより、トレンチ15内のシリコン上にチャネルエッチング保護層18としてのt-SiO
2層18が形成される。このチャネルエッチング保護層18は、チャネルエッチング中にトレンチ側壁17を保護する。例えばプラズマ化学気相成長法(PECVD)を用いて、ウェハ2の前面11上にさらなるトレンチエッチング保護層6としての厚いSiO
2層6を成膜してもよい。
【0110】
PECVDプロセスは、好ましくはコンフォーマルでなく、これは、SiO2がトレンチ15の内部に実質的に成膜されず、一方、比較的厚い層がウェハ2の表面に成膜されることを意味する。トレンチ15の底16のt-SiO2を除去するために、方向性プラズマエッチングを使用してもよい。このプロセスのエッチング速度は、トレンチ15の内部で大きく減少するので、表面(前面11)のPECVD法によるSiO2層6は、底16のt-SiO2層よりはるかに厚い必要がある。
【0111】
図1Dおよび
図2Dに示すように、次に、チャネル1は、例えば等方性気相XeF
2エッチングによって、トレンチ15を通して、ウェハ2のバルクでエッチングされてよい。このエッチングプロセスは一般に等方性であるため、エッチングトレンチ15のエッチングされた底壁16の位置を中心とする円形のチャネル1が形成されることになる。
【0112】
図1Eおよび
図2Eに示すように、ウェットHFエッチングを用いて全てのSiO
2を除去し、チャネル壁7を堆積してもよい。好ましくは、最初の層はt-SiO
2層であり、次いで、シリコンリッチな窒化シリコン(SiRN)層のLPCVD、多結晶シリコン(polySi)層、最後にSiRN層(
図3により明確に示されるように)である。
【0113】
図1Fおよび
図2Fに示すように、全スタックの厚さは、例えば最大10μm(エッチングトレンチ幅に依存する)とすることができ、コンフォーマルに堆積されてもよく、これは、チャネルアウトライン19の内側、およびウェハ2の前面11および背面12に堆積することを意味する。それは、チャネル1がエッチングされるトレンチ15を閉じてもよく、その結果、密閉された漏れのないチャネル1が得られる。チャネル1の内部の接液材質は、シリコンリッチな窒化シリコン(SiRN)のみである。チャネル1が閉じられた後、クロム接着層を有する金層8が堆積され、パターン化されて、例えばコリオリ式センサの作動および読み出しのための電極を形成してもよい。
【0114】
図1Gおよび
図2Gに示すように、最後に、ウェハ2の上の層スタックを、チャネル1の隣のバルクシリコンに達するように、方向性プラズマエッチングを使用してエッチングしてよい。半等方性SF
6プラズマエッチングおよび等方性気相XeF
2エッチングを使用して、チャネル1の周囲のシリコンを除去して、チャネル1の自由な移動を可能にできる。
【0115】
製造結果
エッチング開始時において、反応生成物を除去できる一方で、シリコンの負荷は非常に小さく、エッチング液は十分にシリコンに到達する。この結果、完全に等方的なエッチングが可能となる。しかし、チャネル径が大きくなると、シリコンの負荷も大きくなる一方で、エッチング液および反応生成物が拡散しなければならないトレンチ15は増加しない。その結果、チャネル内部のXeF2濃度が低下し、エッチング動力学が変化し、最終的にはあまり好ましくない六角形の断面が得られることになる。
【0116】
チャネル壁
従来、チャネル壁7は、シリコンリッチな窒化シリコンの単層(SiRN)を用いて作られていた。利用可能な層における真性応力のため、この層は2μmの厚さしかない。これは、チャネル1の直径が増加するとき、チャネル壁7の強度および剛性がそれとともに増加しない可能性があることを意味する。その結果、フリーハンギングのチャネル1の機械的挙動は、加えられる圧力および温度などの外部影響にますます依存することになる。より厚いチャネル壁7を有するフリーハンギングのチャネル1を作製するために、好ましくは、すべての層が機能を有する層スタックが使用される。
【0117】
SiO2は、XeF2リリースエッチングの間、チャネル壁7を保護する。SiO2は、SiRNと比較してはるかに優れた選択性を有し、完成したチャネル1を解放することを可能とする。
【0118】
チャネル壁7の内側にあるSiRNは、化学的に不活性な流路を形成する。真性応力のため、これらのSiRN層は、最大厚さが約2μmであり、したがってチャネル壁7全体に使用できない。また、それは、チャネル壁7の応力がほぼ均衡するように、チャネル壁7の外側に堆積される。
【0119】
ポリシリコンは、例えば10μmまで堆積でき、一方、その応力はアニーリングによって調整できる。その結果、この層は、チャネル壁7内の応力に影響を与えることなく、特定の壁厚に到達するために使用できる。
【0120】
図3は、このような層スタックからなる壁形成層9で閉じたエッチングトレンチの上面を示す。
図3は、下から上へ、厚さ1μmのt-SiO
2層25、厚さ1μmのSiRN層26、5μmのポリシリコン層27、1μmの第2のSiRN層28、そして最後に上面にあるフォトレジスト層3を示している。
【0121】
この場合、トレンチの幅は10μmしかなく、ポリシリコン層27の堆積中において、完全に閉じられる。その結果、最終的なSiRN層28は、ウェハ2の上面にしか見られず、チャネル壁7の内側にはない。
【0122】
シリコン等方性ウェットエッチング
シリコン等方性ウェットエッチングは、HNAエッチングとも呼ばれ、フッ酸(H)、硝酸(N)および酢酸(A)の混合液によるシリコンの化学エッチングであるが、酢酸の代わりに水を使用することを好む研究者もいる。この方法は、酸化-溶解の順で進行する。完全な反応は、次のように記述できる。
Si+2HNO3+6HF → H2SiF6+2HNO2+2H2O
【0123】
エッチング速度を制限する要因は、混合液の組成に大きく依存する。硝酸の濃度が低く、フッ酸の濃度が高い場合、酸化ステップによってエッチング速度が制限される。逆の場合、制限はSiO2の溶解である。
【0124】
エッチング液の供給が十分で、エッチング液とエッチング生成物の拡散を促進する超音波浴があれば、エッチングされたチャネル1の最大直径は、トレンチ15の深さとSiRNマスクの厚さによってのみ制限される。先の試験から、SiRNはHNA溶液のマスクとして良好な材料であり、エッチング速度は約23nm/分であった。しかしながら、SiRNの厚い層は、エッチング中に長く耐えることができ、トレードオフとして、トレンチ15の底16の層を除去することがより困難になる。このため、HNA溶液のマスクとして機能する代替材料も検討してよい。
【0125】
チャネルの解放
チャネル1の「バルクからの」解放は、3つのステップで行われる。まず、ウェハの上面/前面11にも堆積される層スタック9のチャネル壁7は、方向性プラズマエッチングを使用して、チャネル1の隣にリリースウィンドウをパターン化される。露出したポリシリコン層27がバルクエッチング中に暴露されることを防ぐために、新たなフォトレジスト層3が、より小さいリリースウィンドウで加えられる。このフォトレジストは、10μmのステップを完全に覆うことができ、また、容量性読み出しに使用される櫛形フィンガーのために十分に正確なパターニングを可能にするために、優れた平坦化特性を必要とする。次に、例えば200μmの深さのトレンチを、方向性プラズマエッチングを用いて、リリースウィンドウを通してエッチングしてもよい。チャネル1の下のシリコンを除去するために、これらのトレンチを通して等方性XeF2エッチングが行われる。
【0126】
このエッチング中におけるシリコンの負荷を低く抑える(したがって、エッチング速度を比較的大きくする)ために、フリーハンギングのチャネル1の周囲に平行なチャネル1を作り、エッチングストップとして機能させる。これを
図4に示す。チャネル1の上の「柱」は、例えば10μm間隔の例えば50μm長のエッチングトレンチと一致する周期的なパターンを示す。チャネル壁7は、同じ周期的なパターンを示す。
【0127】
作動と読み出し
図5は、フリーハンギングのチャネル1上の金属電極23、すなわち、
図5は、フリーハンギングのチャネル1の上面にあるいくつかの作動のための金属電極23を示す。その下には、閉じたチャネルエッチングトレンチ21がまだ見える。
図5の中央には、容量性読み出しのための櫛形フィンガ22が示されている。櫛形構造22の片側はフリーハンギングのチャネル1に、もう片側はチップのバルクに取り付けられている。櫛形フィンガ22は、リリースエッチングのエッチング速度を著しく低下させるので、余分なリリースホール24が櫛形フィンガ22の上下にエッチングされる。
【0128】
このように、本出願人は、比較的大きな円形のフリーハンギングのマイクロチャネル1を作製するための製造プロセスを開発した。チャネル1は、例えば10μmまでのチャネル壁7の厚さを有し、例えば180μmまでの直径を有してよい。統合された金属電極23は、例えば、大流量マイクロコリオリ式質量流量センサのようなマイクロ流量センサの作動および読み出しに使用できる。
【0129】
第2の方法
様々な直径およびチャネル壁7の厚さを有する(ほぼ完全な)円形チャネル1をもたらし得る第2の方法は、いわゆる「ゾル-ゲル」法を含む。
【0130】
図6A~
図6Fは、この方法を用いた、例えば二酸化ケイ素のチャネル壁7を有するチャネル1を実現する方法の工程概要を示す。ゾル-ゲル混合物は、例えばTEOS、MTES、エタノールおよび水を1:1:1:1の体積比で混合し、pHを4に調整するためにHClを加えることによって作製できる。
【0131】
図6A~
図6Cを参照すると、混合物は、12時間オーブンに入れられてよい。円形の型29は、好ましくはESCARGOT法を用いて、PDMSで作製される。
図6Bに示すように、次いで、型29は、共有結合を形成する水酸基31を有するために、例えば35~70秒間ピラニア溶液30で流されてもよく、その後、純粋ですすぎ、窒素流で乾燥させてよい。
【0132】
図6Dに示すように、次に、例えばシリンジポンプを用いて、ゾル-ゲル混合物32を、チャネル37を通してゆっくりと流してよい。ゲル化反応を起こすために、チャネル37は、好ましくは、55℃のホットプレート上に置かれる。この温度は、不均一なチャネルをもたらすエタノールの蒸発と、PDMSが使用される場合のPDMSのガラス転移点という2つの要因によって制限される場合がある。所望のコーティング厚さに達したら、空気流で残りの溶液を洗い流してよい。
【0133】
図6Eは、例えば600μmの直径を有する円形チャネル37の内部の得られた二酸化ケイ素層33を示す。次いで、二酸化ケイ素層33の周囲の型29のPDMSを選択的に溶解することによって、フリースタンディングのチャネル1を実現できる。二酸化ケイ素層33の厚さは、例えば、層形成プロセスの時間および温度、ならびにシリンジポンプの速度によって制御できる。しかしながら、当業者が理解するようにPDMSはピラニア溶液に容易に溶解せず、二酸化ケイ素層33も溶解しないように注意しなければならないので、フリースタンディングのチャネル1の作製は困難であることに留意すべきである。
【0134】
第3の方法
第3の方法として、電気めっきを用いることができる。めっきは、例えばアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)のワイヤ34(円形断面を有する)上で行うことができ、これは、その後例えばアセトンによって溶解させることができる。
図7A~
図7Dは、この方法の可能なプロセスステップを示す。銅電気めっきセルは、銅陽極、陰極としてのABSワイヤ34、銅水溶液、および直流電源(図示せず)を含んでよい。ただし、原理的にはニッケルまたは他の金属も使用可能である。
【0135】
導電性の陰極を製造するために、FDM-ABSワイヤ34は、銀導電性塗料35によって被覆され、室温で乾燥されてよい。1リットルの銅水溶液は、好ましくは、0.1kgの銅塩、0.11リットルの96%硫酸、0.15mlの50%塩酸、10mlのHL11スタータおよび0.25mlのHL13粒子微細化剤を含む。必要量になるように純粋を加えてもよい。電気めっきは、例えば室温で、3A/dm
2の電流密度で1時間行ってもよい。電気めっき後、電気めっきされた銅36の酸化を防ぐために、基板を純粋ですすぐ。次に、例えばアセトンの入ったビーカーにワイヤ34を12時間浸漬して、内部のABSワイヤ34を完全に溶解させてよい。ABSの代わりに、お湯に溶かすことができるPAまたはPVAポリマーも使用してよい。
図7Dは、得られたフリースタンディングのチャネル1の模式的な描写を示す。
【0136】
このめっき法は、非常に高い円形度を有するマイクロチャネルを予測通りに製造するために用いることができ、例えば、めっき法によって製造されたチャネル1は、高い回転対称性を有する。円形度の高いワイヤ34を選択することにより、平坦な部分を防止できる。
【0137】
この方法は、直径120~1000μmのABSワイヤ34を用いて、繰り返しテストされた。表1は、ABSワイヤ34のサイズごとに、ニッケル電気めっきを数回行った場合の壁厚の測定例を示している。達成された最も薄い壁厚は、約8μmであった。最も厚い壁は60μmであり、電気めっきステップをさらに長く継続することが許される場合、より厚い壁が達成され得る。
【0138】
【0139】
このように、本方法は、壁厚とチャネル径の比が1:3~1:115程度のチャネルを製造することが可能である。また、チャネル壁が非常に均一であることがわかった。
【0140】
このめっき方法を用いると、低い製造コストで、マイクロ流体密度センサを製造できる。このような密度センサは、好ましくは、丸みを帯びたエッジによって複数の直線状の脚部が直線状の中間部に接続された、フリースタンディングU字型チャネルを備えてよい。この場合、密度センサチューブはニッケルで作製される。
【0141】
チャネルは、電気めっきで作製される。めっき浴に浸す前に、直径600μmのABSワイヤをU字型に曲げ(オプションで金型を使用)、銀塗料を深く塗布し、乾燥させる。電気めっきセルの陽極は、純度99.99%のニッケル棒であり、陰極は、導電性または非導電性の電気めっきワイヤで形成される。電気めっきは、所望の壁厚20μmに達するまで続けられてよい。その後、ワイヤを電気めっき浴から取り出し、アセトンからなるABS溶解液に入れ、任意に加熱した。その結果、直径600μm、壁厚20μmの高度に円形の断面を持つチャネルが得られた。
【0142】
U字型の密度センサチャネルは、長さおよび幅が12×12mmであり、前述のGroenesteijn, et al., 2012で言及されたものと同様の組み立てで使用できる。密度センサは、さらに、3つの外部磁石をチャネルの長さに平行に配置し、電源を取り付け、入口を流体供給に、出口を排水口に接続することによって組み立てられた。好ましくは、フィルタおよび脱気装置が入口の前に置かれる。外部磁場の存在下で密度センサチューブに交流電流を流し、ローレンツ力によってチャネルを振動させる。振動するチャネルが液体で満たされると、質量が増加し、この増加は(ねじりモード)共振周波数の変化により検出される。使用するチャネルの形状により、検出モードが変わることがある。この密度センサは、大気圧および室温において、1.56×104N/mのバネ定数および3.78×105のαを有する。また、チャネルの断面が円形であるため、ゲージ圧への依存性が低くなっている。
【符号の説明】
【0143】
1.マイクロチャネル
2.第1の材料(シリコン)の基板
3.フォトレジスト層
4.第1の熱SiO2層
5.LPCVD法によるSiO2層
6.PECVD法によるSiO2層
7.チャネル壁
8.金属層
9.壁面形成層
10.インレット
11.前面
12.背面
13.インレットの側壁
14.インレットの上壁
15.トレンチ
16.トレンチの底壁
17.トレンチの側壁
18.第2の熱SiO2層
19.チャネル外形
20.連続フローチャネル
21.閉じたチャネルエッチングトレンチ
22.櫛形フィンガーによる櫛形構造
23.金属電極
24.リリースホール
25.第1の壁形成層(熱SiO2)
26.第2の壁形成層(SiRN)
27.第3の壁形成層(ポリシリコン)
28.第4の壁形成層(SiRN)
29.円形型
30.ピラニア溶液
31.水酸基
32.ゾル-ゲル混合物
33.二酸化ケイ素層
34.ABSワイヤ
35.銀層
36.銅層
37.型の円形チャネル
【手続補正書】
【提出日】2022-05-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フリーハンギングまたはフリースタンディングのマイクロチャネル(1)を含む微小電気機械システム部品またはマイクロ流体部品であって、
前記チャネル(1)は、実質的に円形の断面を有し、
前記チャネル(1)の直径は、チャネル壁(7)の厚さの10倍以上であり、
前記チャネル(1)の前記直径は、20μm以上である、
ことを特徴とする、微小電気機械システム部品またはマイクロ流体部品。
【請求項2】
前記チャネル(1)の前記直径は、50μm以上、例えば100μm以上、例えば200μm以上、例えば500μm以上、例えば1000μm以上である、
請求項1に記載の微小電気機械システム部品またはマイクロ流体部品。
【請求項3】
前記チャネル壁(7)の前記厚さは、10μmより小さい、
請求項1に記載の微小電気機械システム部品またはマイクロ流体部品。
【請求項4】
請求項1に記載の微小電気機械システム部品またはマイクロ流体部品を含む、流量センサ、例えば熱式流量センサまたはコリオリ式流量センサ;圧力センサ;密度センサ;粘性センサ;マルチパラメータセンサ;バルブ;ポンプ;および/またはマイクロヒータ。
【請求項5】
電気めっき法を用いた、フリーハンギングまたはフリースタンディングのマイクロチャネル(1)の製造方法であって、
導電性または非導電性の電気めっきワイヤ(34)を準備するステップと、
前記電気めっきワイヤ(34)が非導電性である場合、前記電気めっきワイヤ(34)上に導電性コーティング(35)を形成し、陰極を形成するステップと、
前記電気めっきワイヤ(34)または前記導電性コーティング(35)上にチャネル壁(7、37)を電気めっきするステップと、
前記電気めっきワイヤ(34)を除去するステップと、
を含む、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の微小電気機械システム部品またはマイクロ流体部品に用いられる、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記電気めっきワイヤ(34)は、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)または銅で構成されている、
請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記導電性コーティング(35)は、銀を含む、
請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記チャネル壁(7)が、ニッケルまたは銅(37)を含み、
前記電気めっきするステップが、ニッケルまたは銅の水溶液を使用するニッケルまたは銅の電気めっきセルにおいて実施される、
請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記マイクロチャネル(1)は、微小電気機械システム(MEMS)部品またはマイクロ流体システムに組み込まれる、
請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記電気めっきワイヤ(34)は、前記電気めっきするステップの前に、MEMSシステムまたはマイクロ流体システムの一部となるように予め形成されている、
請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記予め形成された電気めっきワイヤ(34)は、前記電気めっきするステップの前に、MEMSシステムまたはマイクロ流体システムに取り付けられる、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項5に記載の方法に従って製造された、フリーハンギングまたはフリースタンディングのマイクロチャネル(1)。
【請求項14】
請求項13に記載のフリーハンギングまたはフリースタンディングのマイクロチャネル(1)を備える、
マイクロ流体システムまたはMEMSシステム。
【請求項15】
請求項13に記載のフリーハンギングまたはフリースタンディングのマイクロチャネル(1)を含む、流量センサ、例えば熱式流量センサまたはコリオリ式流量センサ;圧力センサ;密度センサ;粘度センサ;マルチパラメータセンサ;バルブ;ポンプ;および/またはマイクロヒータ。
【請求項16】
請求項13に記載のフリーハンギングまたはフリースタンディングのマイクロチャネル(1)と、
前記フリーハンギングまたはフリースタンディングのマイクロチャネルを、その共振周波数で振動させる作動手段と、
前記共振周波数を測定し比較するための読み出し手段と、を備える、
マイクロ流体密度センサ。
【請求項17】
特に請求項1に記載の微小電気機械システム部品またはマイクロ流体部品に使用するための、フリーハンギングのマイクロチャネル(1)の製造方法であって、以下のステップを含む方法。
(a)第1の材料の基板(2)を提供するステップ;
(b)前記基板(2)の前面(11)および/または背面(12)上にトレンチエッチング保護層(5)を堆積させるステップ;
(c)トレンチエッチング保護層(5)を通して、第1の材料においてトレンチ(15)をエッチングするステップ;
(d)前記トレンチ(15)内に、前記トレンチ(15)の底壁(16)および側壁(17)を覆うチャネルエッチング保護層(18)を形成するステップ;
(e)前記チャネルエッチング保護層(18)および前記トレンチ(15)の前記底壁(16)を通して前記基板(2)の前記第1の材料をエッチングして、前記トレンチ(15)の前記エッチングされた底壁(16)の位置を中心とするチャネル外形(19)を形成するステップ;
(f)前記トレンチエッチング保護層(5)およびチャネルエッチング保護(18)層を前記基板(2)から除去するステップ;
(g)前記基板(2)上に壁形成層(9)を堆積させるステップであって、前記壁形成層(9)が、前記チャネル外形(19)上にチャネル壁(7)を形成し、前記トレンチ(15)を閉じる、堆積させるステップ;
(h)前記チャネル(1)がフリーハンギングになるように、前記チャネル壁(7)を囲む前記第1の材料を除去するために、前記基板(2)をエッチングするステップ。
【請求項18】
特に請求項1に記載の微小電気機械システム部品またはマイクロ流体部品に使用するための、ゾル-ゲル法を使用する、フリーハンギングまたはフリースタンディングのマイクロチャネル(1)の製造方法であって、
円形チャネル(37)を有する型(29)を形成するステップと、
洗浄液(30)を用いて前記円形チャネル(37)を流して、酸化したチャネル内壁(31)を形成するステップと、
前記酸化したチャネル内壁(31)を洗浄し、乾燥させるステップと、
前記円形チャネル(37)をゾル-ゲル溶液(32)で流すステップと、
所望のチャネル壁(7、33)の厚さが実現されるまで、ゲル化反応を起こすステップと、
残りのゾル-ゲル溶液(32)を洗い流すステップと、
前記チャネル壁(7、33)の周囲から前記型(29)の材料を除去するステップと、を含む、
方法。
【国際調査報告】