(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-24
(54)【発明の名称】直接還元浸炭金属を生産する方法および装置
(51)【国際特許分類】
C21B 13/00 20060101AFI20221116BHJP
C22B 5/12 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
C21B13/00
C22B5/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518316
(86)(22)【出願日】2020-09-22
(85)【翻訳文提出日】2022-05-19
(86)【国際出願番号】 SE2020050885
(87)【国際公開番号】W WO2021061038
(87)【国際公開日】2021-04-01
(32)【優先日】2019-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521441283
【氏名又は名称】グリーンアイロン エイチツー アクチエボラグ
【氏名又は名称原語表記】GREENIRON H2 AB
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】マレー,ハンズ イー エイチ
【テーマコード(参考)】
4K001
4K012
【Fターム(参考)】
4K001AA10
4K001BA02
4K001DA05
4K001HA09
4K001HA11
4K012DA02
4K012DA05
(57)【要約】
直接還元金属材料の製造方法およびシステムは、以下のステップを含む:a)還元すべき金属材料を炉内空間(120)に装入する;b)炉内のガス圧を1バール未満にするために、炉内の既存の雰囲気を排出する;c)加熱された水素ガスが、装入金属材料を十分に高い温度に加熱して、金属材料中に存在する金属酸化物を還元し、その結果、水蒸気が形成されるように、炉空間に熱および水素ガスを供給し、この水素ガスの供給は、炉空間内に1バールを超える圧力を蓄積するように行われ;および、d)蓄積された過圧を排出する前に、装入金属材料の下方にある凝縮器(160)で、ステップc)で形成された水蒸気を凝縮して収集する。本発明は、さらに以下のステップを含むことを特徴とする:e)蓄積された過圧を排出する前に、炭素含有ガスを炉空間に供給し、加熱および還元された金属材料を前記炭素含有ガスにより浸炭させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接還元金属材料を製造するための方法であって、
a)還元すべき金属材料を炉空間(120)に装入し;
b)前記炉空間(120)内のガス圧を1バール未満にするために、前記炉空間(120)から既存の雰囲気を排気し;
c)加熱された水素ガスが装入金属材料を十分に高い温度に加熱して、前記金属材料に存在する金属酸化物を還元し、その結果、水蒸気が形成されるように、前記炉空間(120)に熱および水素ガスを供給し、この水素ガスの供給は、前記炉空間(120)の内部に1バールを超える圧力を蓄積するように行われ;および、
d)前記炉空間(120)から大気圧に戻るガスの排出前に、前記装入金属材料の下方の凝縮器(160)で、ステップc)で生成された水蒸気を凝縮して回収する、ことを含み、さらに、以下のステップを含むことを特徴とする方法。
e)前記炉空間(120)から大気圧に戻るガスの排出前に、前記炉空間(120)に炭素含有ガスを供給し、加熱および還元された金属材料を前記炭素含有ガスにより浸炭させる。
【請求項2】
前記ステップc)およびd)は、少なくとも前記炉空間(120)内で1バールを超える水素分圧に到達するまで行われ、1バールを超える前記分圧に到達するまで前記炉空間(120)から水素ガスを排気しない、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップc)が、初期加熱ステップにおいて、前記炉空間(120)に熱および水素ガスを供給し、加熱された水素ガスが前記装入金属材料を金属材料に含まれる水の沸点より高い温度に加熱し、前記含まれる水を蒸発させることをさらに含む、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記初期加熱ステップにおける前記炉空間(120)への水素ガスの供給は、前記初期加熱ステップの実行に亘って圧力平衡が実質的に維持されるように、非常に遅くなるように制御される、
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップb)の排気は、前記炉空間(120)の内部で最大0.5バールの圧力に達するように行われる、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップc)で供給される熱の少なくとも一部が、前記ステップc)で供給される水素ガスに直接供給される、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップc)で供給される熱の少なくとも一部が、前記ステップe)で供給される炭素含有ガスに直接供給される、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記熱は、前記炉内空間(120)の頂部に配置された発熱体(121)によって当該供給されるガスに供給される、
ことを特徴とする請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップc)で提供されるべき水素ガスが熱交換器(160)において予熱され、前記熱交換器(160)は、蒸発した水から前記ステップc)で供給されるべき水素ガスに熱エネルギーを伝達するように配置されている、
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップc)で供給されるべき炭素含有ガスが熱交換器(160)で予熱され、前記熱交換器(160)は、蒸発した水から前記ステップe)で供給されるべき炭素含有ガスに熱エネルギーを伝達するように配置されている、
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップc)における水素ガスの供給および/または前記ステップe)における炭素含有ガスの供給が、所定の圧力に達するまで行われる、
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記所定の圧力が、少なくとも2.3バール、例えば少なくとも2.5バール、例えば少なくとも3バールの圧力である、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップc)における水素ガスおよび熱の供給、および前記ステップd)における凝縮が、前記炉空間(120)内の到達した定常状態のガス圧力を維持するために、より多くの水素ガスを供給する必要がなくなるという観点から、定常状態に到達するまで行われる、
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記定常状態のガス圧力が、少なくとも2.3バール、例えば少なくとも2.5バール、例えば少なくとも3バールの圧力である、
ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ステップc)の熱の供給および前記ステップd)の凝縮は、還元されるべき前記装入金属材料が所定の温度に到達するまで行われる、
ことを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記ステップc)の実行中に、前記装入金属材料を通過して水蒸気の下向きの純流がある、
ことを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記ステップc)、d)およびe)が少なくとも0.25時間の間に実行される、
ことを特徴とする請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記ステップc)の前記主還元および浸炭ステップは、反復して実行され、各反復において、熱および水素ガスの追加量を供給する前に、前記炉空間(120)内で定常状態の圧力に達することを可能にする、
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記炭素含有ガスがガス状炭化水素であり、前記ステップe)において一酸化炭素が前記炉空間(120)に供給されない、
ことを特徴とする請求項1から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記ステップe)が、少なくとも部分的に前記ステップc)およびd)と同時に実行される、
ことを特徴とする請求項1から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記ステップe)で前記炭素含有ガスの供給を開始する前に、前記金属材料が少なくとも500℃、例えば少なくとも600℃の温度に到達するまで、前記ステップc)で前記熱が供給される、
ことを特徴とする請求項1から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記ステップe)は、前記金属材料が350~450℃の間の温度に到達した後にのみ開始される、
ことを特徴とする請求項1から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記ステップe)は、前記金属材料が450~550℃の間の温度に到達した後にのみ開始され、前記ステップc)はその後終了し、前記ステップe)はまた、前記炉空間(120)に熱を供給する、
ことを含むことを特徴とする請求項1から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記金属材料が700~1100℃の間、例えば800~1100℃の間の温度に到達するまで、前記ステップc)において前記熱が供給される、
ことを特徴とする請求項1から23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記ステップd)は、一定の圧力で前記炉空間(120)に熱を供給することを含み、この圧力は、炭素含有ガスの制御された供給によって制御され、この炭素含有ガスは、水素ガスと混合されてもよい、
ことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ステップe)の完了の後、最終的に浸炭された金属材料が、1~4重量%の炭素含有量を有する、
ことを特徴とする請求項1から25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
直接還元金属材料を製造するためのシステム(100;200)であって、
還元すべき金属材料を収容するよう構成された閉鎖炉空間(120)と;
前記炉空間(120)内のガス圧が1バール未満となるように、前記炉空間(120)から既存の雰囲気を排気するよう構成された雰囲気排気手段(260)と;
前記炉空間(120)に熱および水素ガスを供給するよう構成された熱および水素供給手段(171;280,290)と;
加熱された水素ガスが、装入金属材料を十分に高い温度まで加熱して、前記金属材料中に存在する金属酸化物を還元し、その結果、水蒸気が形成されるように、前記熱および水素供給手段(171;280,290)を制御するよう構成された制御ユニット(201)と;この水素ガスの供給は、前記炉空間(120)の内部に1バールを超える圧力を蓄積するように行われ、および、
前記装入金属材料の下方に配置され、前記炉空間(120)から大気圧に戻るガスの排出前に、前記水蒸気を凝縮して回収するよう構成された冷却および回収手段(160,161)と、を備え、
前記システム(100;200)がさらに、
前記炉空間(120)に炭素含有ガスを供給するよう構成された炭素含有ガス供給手段(171;310,320)を備え、
前記制御ユニット(201)が、前記炉空間(120)から大気圧に戻るガスの排出前に、炭素含有ガスを供給し、前記炭素含有ガスによって加熱および還元された金属材料が浸炭されるよう前記炭素含有ガス供給手段(171;310,320)を制御するよう構成される、
ことを特徴とするシステム(100;200)。
【請求項28】
前記制御ユニット(201)は、初期加熱ステップにおいて、加熱された水素ガスが前記装入金属材料を前記金属材料に含まれる水の沸点以上の温度に加熱し、前記含まれる水を蒸発させるように、前記熱および水素供給手段(171;280,290)を制御するよう構成される、
ことを特徴とする請求項27記載のシステム(100;200)。
【請求項29】
前記システム(100;200)がさらに、前記炉空間(120)内の圧力を測定するように構成された圧力センサ(123,124)を備え、
前記制御ユニット(201)が、定常状態の圧力に到達するまで水素ガスを供給するように、前記熱および水素供給手段(171;280,290)を制御するよう構成される、
ことを特徴とする請求項27または28に記載のシステム(100;200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接還元され浸炭された金属、特に浸炭された直接還元鉄(海綿鉄とも呼ばれる)を製造する方法および装置に関するものである。特に、本発明は、制御された水素雰囲気下で金属鉱石を直接還元してそのような直接還元金属を製造すること、および還元金属材料を浸炭するために同工程の一部として炭素含有ガスを供給することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような還元剤として水素を用いた直接還元金属の製造は公知である。例えば、SE7406174-8およびSE7406175-5には、金属鉱石の装入に水素雰囲気を流して通過させ、その結果、還元されて直接還元金属が形成される方法が記載されている。
【0003】
さらに、本願の優先日において未公開のスウェーデン出願SE1950403-4には、閉鎖された水素雰囲気下で金属材料を直接還元する工程が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、特に、還元および浸炭すべき材料を一括して(バッチで)装入および処置する場合に適用される。
【0005】
先行技術には、熱損失に関する効率や水素ガスの使用量など、いくつかの問題がある。また、還元が完了したタイミングを測定する必要があるため、制御上の問題もある。
【0006】
さらに、金属材料を浸炭するための公知の方法は、浸炭用炭素の供給源として一酸化炭素を使用することを含む。これは、二酸化炭素の生成および放出をもたらし、典型的には、一酸化炭素の生成ももたらす。
【0007】
そのため、一酸化炭素や二酸化炭素を大気中に放出しない、熱的およびエネルギー的に効率の良い金属材料を直接還元および浸炭する方法の実現が望まれている。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、直接還元金属材料を製造するための方法であって、以下のステップを含む方法に関する。a)還元すべき金属材料を炉空間に装入し;b)前記炉空間内のガス圧を1バール未満にするために、前記炉空間から既存の雰囲気を排気し;c)加熱された水素ガスが装入金属材料を十分に高い温度に加熱して、前記金属材料に存在する金属酸化物を還元し、その結果、水蒸気が形成されるように、前記炉空間に熱および水素ガスを供給し、この水素ガスの供給は、前記炉空間の内部に1バールを超える圧力を蓄積するように行われ;および、d)前記炉空間から大気圧に戻るガスの排出前に、前記装入金属材料の下方の凝縮器で、ステップc)で生成された水蒸気を凝縮して回収する。この方法はさらに、e)前記炉空間から大気圧に戻るガスの排出前に、前記炉空間に炭素含有ガスを供給し、加熱および還元された金属材料を前記炭素含有ガスにより浸炭させるステップを含むことを特徴とする。
【0010】
本発明はまた、直接還元金属材料を製造するためのシステムであって、還元すべき金属材料を収容するよう構成された閉鎖炉空間と;前記炉空間内のガス圧が1バール未満となるように、前記炉空間から既存の雰囲気を排気するよう構成された雰囲気排気手段と;前記炉空間に熱および水素ガスを供給するよう構成された熱および水素供給手段と;加熱された水素ガスが、装入金属材料を十分に高い温度まで加熱して、前記金属材料中に存在する金属酸化物を還元し、その結果、水蒸気が形成されるように、前記熱および水素供給手段を制御するよう構成された制御ユニットと;この水素ガスの供給は、前記炉空間の内部に1バールを超える圧力を蓄積するように行われ、および、前記装入金属材料の下方に配置され、前記炉空間から大気圧に戻るガスの排出前に、前記水蒸気を凝縮して回収するよう構成された冷却および回収手段と、を備える。このシステムはさらに、前記炉空間に炭素含有ガスを供給するよう構成された炭素含有ガス供給手段を備え、前記制御ユニットが、前記炉空間から大気圧に戻るガスの排出前に、炭素含有ガスを供給し、前記炭素含有ガスによって加熱および還元された金属材料が浸炭されるよう前記炭素含有ガス供給手段を制御するよう構成される、ことを特徴とする。
【0011】
以下では、本発明の例示的な実施形態および添付の図面を参照しながら、本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1a】
図1aは、本発明によるシステムで使用するための簡略化された炉の断面図であり、第1の動作状態中のものである。
【
図1b】
図1bは、
図1aの簡略化された炉の第2の動作状態における断面図である。
【
図2】
図2は、本発明によるシステムの概略を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明による方法のフローチャートである。
【
図4a】
図4aは、本発明の第1の実施形態による加熱炉空間におけるH
2分圧、浸炭ガス分圧、および温度の可能な関係を示す模式図である。
【
図4b】
図4bは、本発明の第2の実施形態に係る加熱炉空間におけるH
2分圧、浸炭ガス分圧、および温度の可能な関係を示す模式図である。
【
図4c】
図4cは、本発明の第3の実施形態による加熱炉空間におけるH
2分圧、浸炭ガス分圧、および温度の間の可能な関係を示す模式図である。
【
図5】
図5は、還元される金属材料に対するH
2の、温度の関数としての還元性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1a、
図1bでは、同じ部品には同じ参照番号を付している。それゆえ、
図1aおよび
図1bは、直接還元および浸炭された金属材料を製造するための炉100を図示している。
図2では、そのような2つの炉210、220が図示されている。炉210、220は、炉100と同一であってもよいし、細部が異なっていてもよい。しかしながら、炉100に関して本明細書で述べていることは全て、炉210および/または220にも同様に適用可能であり、その逆もまた然りであることが理解される。
【0014】
さらに、本方法に関して本明細書で述べていることはすべて、本システム200および/または炉100;210、220、およびその逆にも同様に適用可能であることが理解される。
【0015】
このような炉100は、SE7406174-8及びSE7406175-5に記載された炉と多くの類似点を有し、可能な設計詳細に関してこれらの文書を参照する。しかしながら、これらの炉と本発明の炉100との重要な違いは、本発明の炉100が、水素ガスが炉100を通って炉100の外側に配置された回収コンテナに戻るように再循環される方法で動作するよう構成されない、特に、還元されるべき装入材料の1つの同じバッチ(一括)処理中に水素ガスを炉100(又は加熱炉空間120)から出して炉100(又は加熱炉空間120)に戻すように再循環させる方法では動作しない、ということである。
【0016】
その代わりに、そして以下の説明から明らかなように、炉100は、一度に材料の1回の装入(チャージ)のバッチ式還元浸炭動作のために配置され、そして、バッチ式還元浸炭工程中に水素ガスが炉100に供給されるがそこから除去されないという意味で、および、バッチ式還元浸炭工程中に炭素含有ガスが炉100に供給されるがそこから除去されないという意味で、そのような個々のバッチ処理中に閉鎖系として動作するように、炉100は配置される。
【0017】
つまり、還元工程の間、炉100の内部に存在する水素ガスの量は常に増加する。還元が完了した後、もちろん水素ガスは炉100内から排出されるが、還元ステップ中に水素ガスの再循環はない。いくつかの実施形態では、以下で明らかになるように、この点は、炭素含有ガスについても当てはまる。
【0018】
それゆえ、炉100は、例えば、1バールより高い圧力、例えば、少なくとも1.5バール、または少なくとも2バール、または少なくとも3バール、または少なくとも4バール、または少なくとも5バール、または少なくとも6バールの圧力に加圧するように構成されている加熱炉空間120からなる閉鎖系の一部である。いずれにしても、炉空間120は、本明細書に記載された動作圧力に耐えられるように構築されている。炉100の上部110は、ベル形状を有する。炉100の上部110は、処理すべき材料を装入するために開放することができ、締結手段111を用いて気密的に閉鎖することができる。炉空間120は、レンガ材130のような耐火物で封止されている。
【0019】
特に断らない限り、本明細書における「圧力」という用語は、特定のガスのガス分圧を指す「分圧」とは対照的に、特に炉空間120の内部の、ガスの全圧を示すものとする。
【0020】
さらに、大気圧は約1バールであるため、「1バールより高い圧力」という表現と「大気圧より高い圧力」という表現は同じ意味を持つことが意図されている。また、「1バール未満の圧力」と「大気圧未満の圧力」という表現も同じ意味を持つことが意図されている。
【0021】
炉内空間120は、1つまたは複数の発熱体121を用いて加熱されるように構成されている。好ましくは、発熱体121は、電気加熱要素である。しかし、ラジエータ燃焼管または同様の燃料加熱要素を使用することも可能である。しかしながら、発熱体121は、本目的のために化学的に制御された状態に保たれなければならない、炉内空間120と直接化学的に相互作用する燃焼ガスを発生させることはない。後述の主加熱工程で炉空間に供給されるガス状物質は、水素ガスと、金属材料を浸炭するための炭素源として使用される任意の炭素含有ガスだけであることが好ましい。
【0022】
発熱体121は、好ましくは、モリブデン合金などの耐熱性金属材料で構成されてもよい。
【0023】
また、加熱された炉空間120に追加の発熱体を配置してもよい。例えば、炉空間120の側壁、例えば装入材料に対応する高さ、少なくともコンテナ140に対応する高さに、発熱体121と同様の発熱体を設けてもよい。このような発熱体は、ガスを加熱するだけでなく、熱放射によって装入材料を加熱することも補助することができる。
【0024】
また、炉100は下部150を備え、この下部150は、締結手段111を用いて炉を閉鎖したときに上部110とともに密閉されたコンテナを形成する。
【0025】
炉100の下部150には、処理(還元、浸炭)すべき材料のためのコンテナ140が存在する。コンテナ140は、コンテナ140の下をガスが通過できるように、例えば床に形成された開閉チャンネル172に沿って、炉空間120の耐火床上に支持されてもよく、ここで、チャンネル172は、水素ガスおよび炭素含有ガスの入口171から、例えば炉の床で炉空間120の中央部から炉空間120の半径方向外側に、その後上方に炉空間120の上部に通過している。これらの流れは、後述する初期工程および主還元および浸炭工程における
図1aに示す流れ矢印を参照されたい。
【0026】
コンテナ140は、好ましくは開放型構造であり、これは、コンテナ140の少なくとも底部/床部をガスが自由に通過できることを意味する。これは、例えば、コンテナ140の底部を貫通する孔を形成することによって達成され得る。
【0027】
処理される材料は、金属酸化物からなり、好ましくは、Fe2O3および/またはFe3O4のような酸化鉄である。材料は、ペレットまたはボールの形など、粒状であってもよい。バッチ式還元に装入される好適な材料の1つは、水中でボール径約1~1.5cmに圧延された鉄鉱石の圧延ボールである。このような鉄鉱石が、本方法における装入材料の最終温度以下の温度で蒸発する酸化物をさらに含む場合、このような酸化物は凝縮器160で凝縮し、粉末状で容易に回収することができる。このような酸化物は、Zn酸化物、Pb酸化物などの金属酸化物から構成されていてもよい。
【0028】
有利には、炉空間120は、非常に大量の還元すべき材料を装入されない。各炉100は、好ましくは、各バッチにおいて、せいぜい50トン、例えばせいぜい25トン、例えば5トンから10トンの間で装入される。この装入材料は、炉空間120内の1つの単一のコンテナ150に貯蔵されてもよい。スループット要件に応じて、複数の炉100を並行して使用することができ、その後、1つの炉220におけるあるバッチからの残留熱は、別の炉210(
図2および下記参照)を予熱するために使用することができる。
【0029】
これにより、還元前の鉱石の高価な輸送を必要としない、採掘現場での直接設置および使用に適したシステム200が提供される。その代わりに、直接還元され浸炭された金属材料は、現場で製造され、保護雰囲気下で包装され、さらなる処理のために別の場所に輸送され得る。
【0030】
それゆえ、水上圧延鉄鉱石ボールの場合、炉100のコンテナ140内への金属材料の装入が全自動で行われるように、炉100を鉄鉱石ボール生産システムに関連して設置することができることが予見される。コンテナ140は、鉄鉱石ボール生産システムからシステム100に自動的に循環して戻り、ここで、コンテナ140は、還元および浸炭される鉄鉱石ボールで満たされ、炉空間120に挿入され、本明細書で説明する還元浸炭用水素/熱/炭素含有ガス処理を施され、炉空間120から取り出して空にされ、鉄鉱石ボール生産システムに戻され、再充填され、等がされる。炉100よりも多くのコンテナ140を使用して、各バッチスイッチにおいて、特定のコンテナ内の還元および浸炭された装入材料が、まだ還元および浸炭されていない材料を運ぶ別のコンテナと炉100内で直ちに交換されるようにしてもよい。採掘場のようなこのような大規模なシステムは、完全に自動化され、また、1つの非常に大きな炉ではなく、いくつかの小さな炉100を使用して、スループットの点で非常に柔軟であるように実施することができる。
【0031】
容器140の下方において、炉100は、それ自体公知である管状熱交換器であることが有利な気体-気体型熱交換器160を備える。熱交換器160は、好ましくは、向流型熱交換器である。熱交換器160には、熱交換器160の下方に、熱交換器160からの凝縮水を回収して収容するための密閉されたトラフ161が接続されている。また、トラフ161は、炉内空間120の動作圧力に気密な方式で耐えられるように構成されている。
【0032】
熱交換器160は、炉空間120に接続されており、好ましくは、炉空間120に到達した冷却/冷却されたガスは、外部/周辺に設けられた熱交換器管に沿って熱交換器160を通過し、さらにチャンネル172を通って発熱体121に至るようにされる。そして、炉空間120から流出する加熱ガスは、装入材料(後述)を通過および加熱した後、内部/中心に設けられた熱交換器管を介して熱交換器160を通過し、上記の冷却/冷却されたガスを加熱する。したがって、送出されるガスは、送出されるガスと流入するガスの両者の温度差による熱伝導と、送出されるガスに含まれる水蒸気の凝縮熱によって、送出されるガスが流入するガスを効果的に加熱することの双方により、流入するガスを加熱する。
【0033】
形成された送出されるガスからの凝縮水は、トラフ161に回収される。
【0034】
炉100は、トラフ161(122)に、コンテナ140(123)の下など炉空間120の底部に、及び/又は炉空間120(124)の頂部に、温度及び/又は圧力センサのセットを備えてよい。これらのセンサは、後述するように、還元及び浸炭プロセスを制御するために制御ユニット201によって使用されてもよい。
【0035】
符号171は、加熱/冷却用ガスの入口導管を示す。符号173は、使用済みの冷却ガスの出口導管を示す。
【0036】
トラフ161と入口導管171との間には、弁163を有する過圧平衡チャンネル162が存在してもよい。トラフ161に大量の水が流れ込むことによって、トラフ161内に所定の圧力差、例えば少なくとも1バールの圧力差が蓄積された場合、そのような圧力差は、その後、入口導管171へのガス放出によって部分的に又は完全に平衡化されてもよい。弁163は、トラフ161内の圧力が、導管171内の圧力との関係で上記所定の圧力差よりも高い場合に開くように構成された、単純な過圧弁であってよい。あるいは、圧力センサ122からの測定値に基づいて、制御ユニット201(後述)により弁を動作させてもよい。
【0037】
凝縮水は、凝縮器/熱交換器160から注ぎ口164などを介してトラフ内に下向きに導かれ、トラフ161の底部、例えばトラフの局所的な低点165で流出し、好ましくは、
図1aに示されるようなトラフ161の主底部166の下に注ぎ口164の開口(オリフィス)が完全に配置されるようにされてもよい。これにより、トラフ161内の液水乱流が減少し、より制御可能な動作状態が提供される。
【0038】
トラフ161は、有利には、装入材料の還元中に形成された全ての水を受け取り、収容することができるような寸法にされている。トラフ161の大きさは、それゆえ、還元された材料の1つのバッチの種類と量に適合させることができる。例えば、1000kgのFe3O4を完全に還元する場合、結果として310リットルの水が形成され、1000kgのFe2O3を完全に還元する場合、結果として338リットルの水が形成される。
【0039】
図2において、
図1aおよび1bに例示されたタイプの炉が使用され得るシステム200が例示されている。特に、炉210および220の一方または両方は、
図1aおよび1bに図示されたタイプのものであってもよく、少なくとも本請求項1によるものであってもよい。
【0040】
符号230は、気体-気体タイプの熱交換器を示す。符号240は気体-水タイプの熱交換器を示す。符号250はファンを示す。符号260は、真空ポンプを示す。符号270は、凝縮器を示す。符号280は、使用済み水素ガス用コンテナを示す。符号290は、新鮮/未使用水素ガス用コンテナを示す。符号310は、新鮮/未使用炭素含有ガス用コンテナを示す。符号320は、コンテナ310に貯蔵された種類のガスと水素ガスとの混合ガスなど、使用済みの炭素含有ガス用のコンテナを示す。符号V1~V19は、弁を示す。
【0041】
符号201は、センサ122、123、124および弁V1~V19に接続され、一般に本明細書に記載されるプロセスを制御するために配置される、制御ユニットを示す。制御ユニット201はまた、監視およびさらなる制御のためにシステム200のユーザにコンピュータ(図示せず)によって提示されるグラフィカルユーザインタフェースのようなユーザ制御ユニットに接続されてもよい。
【0042】
図3は、本発明による方法を示し、この方法は、
図3に概略図示されるタイプのシステム100、特に
図1aおよび
図1bに概略図示されるタイプの炉100を使用する。特に、この方法は、還元剤として水素ガスを用い、浸炭炭素源として炭素含有ガスを用いて、直接還元浸炭金属材料を製造するための方法である。
【0043】
このような直接還元および浸炭の後、金属材料は、浸炭海綿金属を形成してもよい。特に、金属材料は、酸化鉄材料であってもよく、直接還元後に得られる生成物は、その後、浸炭海綿鉄であってもよい。得られた還元浸炭金属材料は、その後の方法ステップで、鉄鋼などを製造するために使用されてもよい。
【0044】
最初のステップで、方法の実行が開始される。
【0045】
後続のステップにおいて、還元される金属材料は、炉空間120に装入される。この装入は、装填されたコンテナ140が
図1a及び1bに図示された向きで炉空間120に入れられることによって行われてもよく、その後、炉空間120は締結手段111を用いて気密的に閉鎖及び密閉されてもよい。
【0046】
後続のステップにおいて、既存の雰囲気が炉空間120から排気され、炉空間120の内部で1バール未満のガス圧が達成されるようにする。この低いガス圧力は、大気圧よりも低いことに留意されたい。これは、弁1~8、11および13~19が閉じられ、弁9~10および12が開かれ、真空ポンプが熱交換器240およびファン250を通る導管を介して炉空間120の内部の含有雰囲気を吸い出し、それゆえ排気することによって行われてもよい。そして、弁9は、炉内空間120が空気で満たされている場合には、この排気されたガスを周囲の雰囲気に流出させるために開かれてもよい。炉空間120が使用済みの水素および/または炭素含有ガスで満たされている場合、これは代わりに、場合により、コンテナ280または320に排気される。
【0047】
この例では、炉100に配置された任意の他の適切な出口導管が使用され得ることが実現されても、炉の雰囲気は導管173を介して排気される。
【0048】
この排気ステップ、ならびに以下に説明するような他のステップにおいて、制御ユニット201は、圧力センサ122、123および/または124からの読み取りに基づくなどして、炉空間120内の圧力を制御するために使用されてもよい。
【0049】
最大で0.5バールの圧力、好ましくは最大で0.3バールの圧力が炉空間120で達成されるまで、排出を進めてよい。
【0050】
続く初期加熱ステップでは、炉空間120に熱と水素ガスが供給される。水素ガスは、コンテナ280および/または290から供給されてもよい。炉100は前述のように閉鎖されているため、供給された水素ガスは、プロセス中、実質的に全く漏れない。言い換えれば、水素ガスの損失(還元反応で消費される水素は別として)は、非常に少ないか、あるいは存在しないことさえある。その代わりに、還元プロセス中に還元反応で化学的に消費される水素のみが使用されることになる。さらに、還元プロセスで必要な水素ガスは、還元プロセスで必要な圧力と、水素ガスと水蒸気との化学平衡とを維持するために必要な量のみである。
【0051】
上述したように、コンテナ290は新鮮な(未使用の)水素ガスを保持し、コンテナ280は、1つまたはいくつかの還元ステップで既に使用され、その後システム200に回収された水素ガスを保持する。還元プロセスが初めて実行されるときは、コンテナ290から供給される新鮮な水素ガスのみが使用される。その後の還元プロセスの間、コンテナ280(または320、下記参照)からの、再利用された水素ガスが使用され、これは必要に応じてコンテナ290からの新鮮な水素ガスで補充される。
【0052】
初期加熱ステップの任意の初期段階(この初期段階は、約2バールの炉空間120の圧力まで熱供給なしで行われる水素ガス導入の1つである)の間、弁2、4~9、11および13~19は閉じられ、弁10および12は開かれる。新鮮な水素ガスまたは再利用された水素ガスのいずれを使用するかによって、弁V1および/またはV3が開かれる。
【0053】
炉空間120内の圧力が大気圧(約1バール)に達するか、または大気圧に近づくと、発熱体121のスイッチがオンになる。好ましくは、供給された水素ガスを加熱することにより、炉空間120に熱を供給するのは、発熱体121であり、これによりコンテナ140内の材料が加熱される。好ましくは、発熱体121は、炉空間120に供給される水素/炭素含有ガスが通過する位置に配置されており、これにより、還元および浸炭プロセスの間、発熱体121が新たに供給される水素/炭素含有ガスに実質的に浸漬する(完全にまたは実質的に完全に囲まれる)ことになる。言い換えれば、熱は、有利には、水素ガスおよび/または炭素含有ガスのうち、炉空間120に(上記初期または後期のステップで)同時に供給される方に対して、直接、供給され得る。
図1aおよび
図1bでは、発熱体121が炉空間120の頂部に配置されている好ましい場合が示されている。
【0054】
しかしながら、本発明者は、供給された水素/炭素含有ガスが炉空間120に入る位置から離れた位置で、炉空間120内の混合ガスに直接熱を与えるなど、他の方法で炉空間120に熱を与えてもよいことを予見している。他の例では、熱は、こうして加熱された水素/炭素含有ガスが炉空間120に入り得る前に、炉空間120の外部にある位置において供給された水素/炭素含有ガスに提供されてもよい。
【0055】
上記初期加熱ステップの残りの間、弁5及び7~19は閉じられ、弁1~4及び6は、凝縮器270と共に、制御ユニットによって制御され、以下に説明するように、再利用及び/又は新鮮な水素ガスの制御された供給を達成することが可能である。
【0056】
したがって、この初期加熱ステップの間、制御ユニット201は、加熱された水素ガスが、装入された金属材料を金属材料に含まれる水の沸点より高い温度に加熱するように、炉空間120に熱および水素ガスを供給するよう、熱および水素供給手段121、280、290を制御するよう構成される。その結果、含有される水分が蒸発する。
【0057】
初期加熱ステップおよび主還元および浸炭ステップ(後述)を通じて、制御ユニット201の制御の下、水素ガスがゆっくりと供給される。その結果、装入材料を通して、垂直下方に、連続的に存在する、比較的遅いが安定した、水素ガスの流れが存在することになる。一般に、制御ユニットは、炉空間120内の所望の増加する(単調に増加するような)水素分圧曲線(および全圧曲線も)を維持するように、特に、熱交換器160内の水蒸気の一定の凝縮から生じる炉空間120の下部(および熱交換器160の下部)での圧力減少に対抗するために、水素ガスを連続的に加えるように構成される(以下を参照されたい)。総エネルギー消費量は、熱交換器160の効率、特に、熱交換器160を流れる高温ガスと凝縮する水蒸気の凝縮熱の両方から熱エネルギーを、流入する水素ガスに伝達するその能力に依存する。例示したFe2O3の場合、酸化物を加熱し、吸熱反応を熱的に補償し、酸化物を還元するのに必要な理論上のエネルギーは、Fe2 O3の1000kgあたり約250kWhである。Fe3O4の場合、これに対応する数値は、Fe3O4の1000kgあたり約260kWhである。
【0058】
本発明の重要な側面は、還元プロセス中に水素ガスの再循環がないことである。これは上記で概略的なレベルで議論されてきたが、
図1aに示す例では、これは、水素ガスが、例えば凝縮器270を介して、入口導管171を通って炉空間121の頂部に供給され、そこで発熱体121によって加熱され、その後ゆっくりと下方へ、コンテナ140内の還元されるべき金属材料を通過し、熱交換器130を通ってさらに下方に、トラフ161まで通過していることを意味している。しかしながら、炉空間120からの利用可能な出口孔はなく、特にトラフ161からの出口孔はない。導管173は、例えば弁V10、V12、V13、V14が閉じられることにより、閉鎖される。したがって、供給された水素ガスは、一部が還元プロセスで消費され、一部が炉空間120内のガス圧の上昇をもたらす。そして、このプロセスは、以下に詳述するように、金属材料の完全なまたは所望の還元が起こるまで続けられる。
【0059】
したがって、コンテナ140内の装入材料上方の炉空間120に存在する加熱された水素ガスは、ゆっくりと下方に移動するガス流を形成する水素ガスの遅い供給を介して、装入材料に降ろされることになる。そこにおいて、装入材料からの水蒸気と、それまで添加された炭素含有ガス(下記参照)との混合ガスを形成する。
【0060】
その結果、高温のガス混合物は、熱交換器160に下り、熱交換器160を通過するガス流を形成することになる。熱交換器160では、次に、炉空間120から到来する高温ガスから、導管171から到来する低温の新たに供給される水素/炭素含有ガスへの熱交換が行われ、それによって後者が前者によって予熱されることになる。すなわち、初期ステップで供給される水素ガス、さらには主還元および浸炭ステップ(および/または後述の炭素供給ステップ)で供給される水素および/または炭素含有ガスは、熱交換器160で予熱される。
【0061】
高温のガス流の冷却により、冷却されたガスに含まれる水蒸気は凝縮する。この凝縮は、トラフ161に集められる液体の水となるが、凝縮熱も生じる。熱交換器160は、凝縮した水から、炉空間120内に供給される冷却水素/炭素含有ガスに、このような凝縮熱エネルギーを伝達するようにさらに構成されることが好ましい。
【0062】
また、含有する水蒸気の凝縮により、炉空間120から下方に流れる高温ガスの圧力が低下し、熱交換器160を下方に通過する高温ガスのための空間がより多く確保されることになる。
【0063】
加熱された水素ガスがゆっくりと追加供給され、水素ガスの熱伝導率が比較的高いため、装入材料は比較的早く、例えば10分以内に、装入材料に含まれる液体の水の沸点に達し、このとき100℃をわずかに超える沸点となる。その結果、この含有液体水は蒸発し、高温の水素ガスと混合して水蒸気を形成する。
【0064】
熱交換器160での水蒸気の凝縮は、構造体の下端での水蒸気のガス分圧を低下させ、装入材料で発生した水蒸気を平均的に下向きに流すことになる。この効果に加え、水蒸気は、混合される水素ガスよりも密度が実質的に低い。
【0065】
このようにして、コンテナ140内の装入材料の水分が徐々に蒸発し、熱交換器160を介して下方に流れ、そこで冷却されて凝縮し、トラフ161内で液体状態となる。
【0066】
熱交換器160に供給される冷却水素ガス、さらには供給される炭素含有ガスは、室温または室温より若干低い温度であることが好ましい。
【0067】
装入材料がそれ故に含有するあらゆる液体水から乾燥されるこの初期加熱ステップは、本方法における好ましいステップであることが理解される。特に、これにより、炉空間120への材料の装入に先立って高価で複雑な乾燥ステップを導入することなく、装入材料を、材料の圧延ボールの形態などの粒状材料として容易に製造および提供することができる。
【0068】
しかしながら、既に乾燥しているまたは乾燥した材料を炉空間120に装入することが可能であろうことが理解される。この場合、本明細書に記載されるような初期加熱ステップは実行されないであろうが、本方法は、主還元および浸炭ステップ(下記)に直ちにスキップするであろう。
【0069】
さらに、この初期加熱ステップのいくつかのメカニズムは、追加(添加)された水素ガスと炭素含有ガスの両方を参照して上述されている。これらのメカニズムは、その後の主還元および浸炭ステップ(後述)においても存在する。しかし、初期加熱ステップでは、炭素含有ガスを添加しないことが好ましい。特に、初期加熱ステップにおいて添加されるガスは、水素ガスのみであることが好ましい。
【0070】
本発明の一実施形態では、上記初期加熱ステップ中の炉空間120への水素ガスの供給は、初期加熱ステップの実行中、圧力平衡が実質的に維持されるように、好ましくは、炉空間120およびトラフ161の液体充填されていない部分の全体に亘り常に実質的に等圧が支配的となるよう、非常に遅くなるように制御される。特に、初期加熱ステップの間、上記平衡ガス圧力が上昇しないように、または非実質的にしか上昇しないように、水素ガスの供給が制御されてもよい。この場合、その後、コンテナ140内の装入材料から液体水が全てまたは実質的に全て蒸発した後にのみ、炉空間120の圧力を経時的に上昇させるように、水素ガスの供給が制御される。これが発生した時点は、例えば、温度センサ123及び/又は124によって測定される温度-時間曲線の傾斜の上方への変化点として決定されてよく、ここで、傾斜の変化点は、実質的に全ての液体の水が蒸発したが還元がまだ開始されていない時点を示すものである。あるいは、温度センサ123および/または124によって測定される炉空間120内の測定温度が所定の限界を超えると、水素ガス供給は、圧力を上昇させるように制御されてもよく、この限界は、100℃と150℃の間、例えば120℃と130℃の間であってもよい。
【0071】
続く主還元および浸炭ステップでは、加熱された水素ガスが、金属材料中に存在する金属酸化物を還元するために十分高い温度まで装入金属材料を加熱し、その結果、水蒸気が形成されるように、上述の初期加熱ステップ中の供給に対応する方法で、炉空間120にさらに熱および水素ガスが供給される。
【0072】
この主還元・浸炭工程の間、それゆえ、炉空間120の内部で徐々に圧力を上昇させながら、追加の水素ガスを供給して加熱することにより、装入された金属材料が今度は還元化学反応を開始し維持する温度まで加熱される。
【0073】
図1aおよび
図1bに示された例では、最上部の装入材料がそれゆえ最初に加熱されることになる。酸化鉄材料の場合、水素ガスは約350~400℃で装入材料を還元し始めて金属鉄を形成し、以下の式に従って自然発火性鉄と水蒸気を形成する。
Fe
2O
3 + 3H
2 = 2Fe + 3H
2O
Fe
3O
4 + 4H
2 = 3Fe + 4H
2O
【0074】
この反応は吸熱反応であり、炉空間120において上方から下方に流れる高温の水素ガスを介して供給される熱エネルギーによって駆動される。
【0075】
したがって、初期加熱ステップと主還元および浸炭ステップの両方で、装入材料中に水蒸気が生成される。この生成された水蒸気は、装入された金属材料の下方に配置された凝縮器において連続的に凝縮され、収集される。
図1aに示す例では、凝縮器は、熱交換器160の形態である。
【0076】
本発明によれば、上記凝縮を含む主還元および浸炭ステップは、炉空間120内に大気圧に対して1バールより高い圧力が構成されるように実行される。特に、1バールより高い圧力が達成され維持されるように、水 素ガスが供給される。このような1バールより高い圧力は、大気圧よりも高い圧力であることに留意されたい。
【0077】
さらに本発明によれば、この方法は、炭素供給ステップ、すなわち、炉空間120に炭素含有ガスを供給して、供給される熱により加熱され、水素ガスとの反応により還元された金属材料を、炭素含有ガスにより浸炭させるステップをさらに備える。この炭素含有ガスの供給は、主還元および浸炭ステップの一部として行われ、炉空間120において炉空間120から大気圧に戻るガスの排出前に行われる。このような排気は、以下に説明するように、本方法のステップとして、例えば材料冷却サブステップの一部として実行されてもよい。
【0078】
炭素含有ガスは、還元金属材料を浸炭するように還元金属材料と化学的に反応することができる任意の炭素含有ガスであってよい。適切な炭素含有ガスの例は、メタン、エタン、プロパン、プロペンおよび同様のもののような、様々なガス状の(本方法の実行中に炉空間120で支配的な温度および圧力で)炭化水素から構成される。好ましくは、炭素含有ガスは、一酸化炭素を微量以上含まないことが、本発明の浸炭工程の完了後に一酸化炭素と二酸化炭素の両方が残留生成物を形成することを効率的に防止できるため、好ましい。特に、上記炭素供給ステップにおいて、炉空間120に一酸化炭素が供給されないことが好ましい。
【0079】
以下に説明及び例示するように、炭素供給ステップは、少なくとも一部が、上述した水素ガス及び熱の供給と同時に行われてもよい。特に、炭素供給ステップは、上記主還元および浸炭ステップの一部として行われてもよい。
【0080】
上記のように、鉄の還元時には遊離鉄(Fe)が生成され、この遊離鉄に炭素(C)を受容して、Fe3Cを形成する。
【0081】
図5は、H
2がFe
2O
3を還元する能力を、温度上昇の関数として示している。
図5から理解されるように、水素ガスによる還元は、約400°~700°の温度領域で特に活性であることがわかる。
【0082】
同じFe2O3のガス状炭素源を用いた浸炭は、約650°~900°の区間で最も活性に行われる。
【0083】
例えば、Fe3O4は、還元/浸炭と温度に対して同様の特性を示す。
【0084】
つまり、まず比較的低い温度で金属材料の還元の大部分を行い、さらに加熱した後に金属材料の浸炭の大部分を行うプロセスが効率的である。
【0085】
また、同じ金属材料の還元工程で発生する水蒸気の存在によって、浸炭プロセスが促進されることもある。
【0086】
炭素含有ガスとしてメタンを用い、金属材料としてヘマタイト/マグネタイトを用いた場合、炉空間内では以下のような浸炭化学反応が起こる。
Fe3O4 + 4H2 = 3Fe + 4H2O
3Fe + CH4 = Fe3C + 2H2
【0087】
CH4とFeの反応は、還元性水素ガスによって生成された水蒸気とメタンとが反応する副反応で構成される。
CH4 + H2O = 2CO + 3H2
【0088】
そして、浸炭自体は主に公知の水素-水反応によって行われ、一酸化炭素と水素が形成された鉄表面と反応して水蒸気を形成し、遊離した炭素原子は先に遊離した酸素原子の位置に取り込まれることができる。
【0089】
還元された鉄の表面は還元により多孔質になっているので、鉄の総表面積は通常非常に大きくなり、特に金属材料が粒状材料として提供される場合、効率的な浸炭工程をもたらす。
【0090】
上記の式から理解されるように、浸炭処理によって一定量の水素ガスが発生し、本来であれば必要な量より少ない水素ガスが要求される理由である。
【0091】
炭素供給ステップを終えた後に、最終的な浸炭金属材料は、炭素含有量が1重量%~4重量%であることが好ましい。
【0092】
主還元および浸炭ステップにおける水素ガスの供給は、好ましくは、所定の水素分圧、または1バールよりも高い所定の全圧に炉空間120の内部で到達するまで維持されてもよい。これに対応して、炭素供給ステップにおける炭素含有ガスの供給は、所定の分圧、または1バールより高い所定の全圧に炉空間120の内部で到達するまで行われてもよい。
【0093】
炉空間120内の圧力は、例えば、圧力センサ123および/または124によって測定することができる。上述したように、本発明によれば、1バールを超える圧力に達するまで、炉空間120から水素ガスを排気せず、好ましくは、主還元および浸炭ステップが完全に完了するまで、炉空間120から水素ガスを排気しないようにすることができる。これに対応して、1バールを超える圧力に達するまで、炭素含有ガスを炉空間120から排気しないことが好ましく、主還元および浸炭ステップが完全に完了するまで、炭素含有ガスを炉空間120から排気しないことがより好ましい。
【0094】
いくつかの実施形態では、水素ガスの供給は、少なくとも炉空間120内で1バールより高い水素分圧に達するまで行われ、一方、1バールより高い水素ガス分圧に達するまで炉空間120から水素ガスが排気されることはない。
【0095】
特に、主還元および浸炭ステップにおける水素ガスの供給、および水蒸気の凝縮は、炉空間120内で1バールより高い所定の圧力に達するまで行ってもよく、この所定の圧力は少なくとも2.3バール、より好ましくは少なくとも2.5バール、あるいは約3バール以上である。炭素供給ステップにおける炭素含有ガスの圧力調整可能な供給についても同様である。
【0096】
なお、この所定の圧力に達するまでは、水素または炭素含有ガスの排出を行わないように設計してもよい。
【0097】
あるいは、主還元および浸炭ステップにおける水素ガスの供給、および水蒸気の凝縮は、炉空間120内の到達した定常ガス圧力を維持するために、より多くの水素ガスを供給する必要がもはやないという観点から、定常状態に達するまで行われてもよい。この圧力は、上述したように、対応する方法で測定されてもよい。好ましくは、定常状態のガス圧力は、少なくとも2.3バール、より好ましくは少なくとも2.5バール、またはさらに約3バール以上であってもよい。このようにして、還元工程が完了したことを知る簡単な方法が達成される。
【0098】
さらに代替的に、主還元および浸炭ステップにおける水素ガスと熱の供給、および水蒸気の凝縮は、還元される装入金属材料が所定の温度に達するまで行ってもよく、この温度は少なくとも600℃、例えば640~680℃、好ましくは約660℃であってもよい。装入材料の温度は、例えば、適切なセンサを使用して装入材料からの熱放射を測定することによって直接測定してもよく、または温度センサ123によって間接的に測定してもよい。
【0099】
いくつかの実施形態では、形成された水蒸気の上記凝縮を含む主還元および浸炭ステップは、少なくとも0.25時間、例えば少なくとも0.5時間、例えば少なくとも1時間の連続した時間帯に実行される。この間終始、炉空間120の圧力および温度の両方が単調に上昇してもよい。
【0100】
いくつかの実施形態では、主還元および浸炭ステップはさらに反復的に実行されてもよく、各反復において制御ユニット201は、炉空間内に水素ガスを追加量供給する前に、炉空間120内で定常状態の圧力に到達することを可能にする。また、熱供給は、反復的(パルス的)であってもよいし、主還元および浸炭ステップの全期間においてスイッチオン状態であってもよい。
【0101】
初期の加熱ステップと主還元および浸炭ステップの両方を実行する間、特に少なくともこれらのステップの実質的に全長に亘る期間、コンテナ140内の装入金属材料を通過して水蒸気の下向きの純流が存在することに留意されたい。
【0102】
初期ステップおよび主還元および浸炭ステップの間、炭素供給ステップの開始に関連する、炉空間120の全圧が低下し得る時間帯を例外として、凝縮器270は、制御ユニット201によって、常に、追加の水素ガスおよび/または炭素含有ガスを供給することによって圧力を維持または増加するように制御されてもよい。供給された水素ガスは、還元プロセスで消費された水素を補償するために使用され、また、所望の最終圧力まで徐々に圧力を上昇させるために使用される。炭素含有ガスは、(以下に説明するように)多数の異なるストラテジのうちのいずれか1つを使用して供給することができ、例えば、そのような供給中に炉空間120内の設定された目標全圧を達成するように制御することができる。
【0103】
装入材料中に水蒸気が形成されると、局所的にガス圧が上昇し、実質的に炉空間120とトラフ161の間に圧力変動が生じる。その結果、形成された水蒸気は、装入材料を通過して下に沈み、熱交換器160で凝縮し、今度は熱交換器160の遠い(炉空間120との関係で)側の圧力を低下させることになる。このようにして、これらのプロセスは、装入物を通してガスの下向きの純移動を生じさせ、新たに加えられた水素ガスが炉空間120における圧力損失を補償する。
【0104】
炉空間120から流出するガス中の熱量、特に水蒸気の凝縮熱は、熱交換器160で流入する水素/炭素含有ガスに伝達される。
【0105】
したがって、還元プロセスは、還元すべき金属材料があり、それゆえ水蒸気が生成される限り維持され、上記下向きのガス移動が生じる。水蒸気の生成が停止すると(実質的に全ての金属材料が還元されたため)、圧力は炉100の内部全体で均一化し、測定温度は、追加の炭素含有ガスが供給されない場合には、炉空間120全体で同様となる。例えば、トラフ161のガス充填部分の点と装入材料の上方の点との間の測定された圧力差は、所定量未満であり、最大でも0.1バールであってよい。さらに、または代替的に、装入材料より上方の点と装入材料より下方であって熱交換器の炉空間120側の点との間の測定温度差は、所定量未満となり、それは最大でも20℃であってよい。したがって、このような圧力および/または温度の均一性に到達して測定された場合、水素ガスの供給が遮断されることによって、水素ガスの供給を停止することができる。
【0106】
通常、浸炭が完了するまで、発熱体121のスイッチはオフされないが、これは、通常、後の時点で発生する。
【0107】
したがって、主還元および浸炭ステップにおける水素ガスと熱との組み合わせの供給は、所定の最低温度および/または(過)圧力に達するまで、および/または炉100内の熱量において所定の最大温度差および/または最大圧力差に達するまで行われてもよい。どの基準(複数可)が使用されるかは、炉100の設計や還元される金属材料の種類などの前提条件に依存する。例えば、熱の供給は、所定の最低温度に達するまで行ってもよく、水素ガスの供給は、温度均一性に達するまで行ってもよい。別の例では、熱と水素ガスの組み合わせの供給は、水素ガスの供給がそれ以上必要とされることなく、定常的な圧力状態に達するまで実行され得る。
【0108】
また、他の基準、例えば、所定の主加熱時間や所定の加熱/水素供給プログラムの終了を用いることも可能であり、これらは実証的に決定されることができる。
【0109】
上記炭素含有ガスは、いくつかの異なるストラテジのうちの1つを用いて供給することができる。
【0110】
実施例1
第1のこうしたストラテジでは、水素ガスを用いた還元に直接続いて、金属材料の浸炭を行う。まず、上記のように水素ガスと熱が供給され、金属材料が還元されるにつれて炉空間120の温度と圧力がゆっくりと上昇する。最終的な圧力は上述のとおりでよく、例えば少なくとも1.1バール、好ましくは少なくとも2.3~2.5バールの間である。
【0111】
この例および他の例では、金属材料装入物の完全な還元が終了したとき、炉空間120は約700℃の温度に達しており、炉空間に入る水素ガスの温度は、熱交換器160に入るガスと同じ温度である。
【0112】
一般に、この第1のストラテジにおいて、上記炭素供給ステップにおいて炭素含有ガスの供給を開始する前に、金属材料が少なくとも500℃、例えば少なくとも600℃の温度に達するまで、上記主還元および浸炭ステップにおいて熱が供給されてもよい。
【0113】
この状態で、還元が完了すると、まだ炭素含有ガスは供給されていない。その前に、あるいはそれに関連して、水素ガスの一部を排出して、水素ガス分圧を下げるようにしてもよい。すなわち、弁V4を閉じて、水素ガスの供給を終了させてもよい。そして、凝縮器270を用いて、弁V6を閉じ、弁V7およびV5を開いて、使用済み水素の貯蔵コンテナ280に、水素ガスの一部を排気してもよい。圧力が、1.1~1.8バール、例えば1.3~1.6バールの間、例えば約1.5バールの低圧に、低下したとき、弁V7およびV5を閉じ、炭素供給ステップを開始する。
【0114】
図4aに示されるように、この部分的な水素ガス排出の後、炉空間120の全圧は、この例では約1.5である。
【0115】
一般に、炭素供給ステップは、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、炉空間120の圧力で実施されてよく、これは、還元工程を完了する時点で支配的である炉空間120の圧力よりも低い。
【0116】
貯蔵コンテナ310には、新鮮な炭化水素ガス、例えばメタンが貯蔵され、コンテナ320には、以前に使用された炭化水素ガス(例えばメタンと水素の混合物)が貯蔵される。浸炭のための最初の使用の間、コンテナ320内の圧力が炉空間120内で支配的な圧力より高い場合、弁V17が開かれなければ、弁V15が開かれる。そうでなければ、弁V18およびV6が開かれ、凝縮器270が、浸炭を実行するように炉空間120内の圧力を維持するために必要な量の炭化水素を圧送することができるようにされる。
【0117】
このとき、新たに還元された金属材料は、供給された炭素を受容することができる。浸炭は、発熱体121を用いた加熱により、炉空間120の温度が上昇した状態で行われる。金属材料の構成にもよるが、約700℃~1100℃に達した時点で浸炭を終了する。上述したように、浸炭の間、一定量の水素が結果として生成される。
【0118】
その後、以下の冷却および排出ステップを開始することができる。
【0119】
図4aは、還元が完了した後に炭素含有ガスが添加される、この第1のストラテジによる工程を概略チャートで示している。このチャートは、工程中の、炉空間(120)温度の関数としての水素ガス分圧(実線)、および炉空間(120)温度の関数としての炭素含有ガス分圧(破線)を示す。
【0120】
図4aは、
図4bおよび
図4cの場合と同様に、最初の排気後に炉空間120に存在する残留ガスを無視するという意味で簡略化されていることに留意されたい。
【0121】
実施例2
第2のストラテジは、還元が完了する前に炭素含有ガスを供給する方法である。
【0122】
加熱および開始された還元の間、水素ガスは、少なくとも1.1バール、好ましくは少なくとも2.3バールの増加する炉空間120の全圧を達成するように供給される。この場合、炭素含有ガスは、還元が開始された直後、換言すれば、炉空間120内の温度が少なくとも350℃、例えば350~450℃、例えば約400℃に到達した後に供給される。この第2のストラテジにおいて一般に、炭素供給ステップは、金属材料が350~450℃の間の温度に達した後にのみ開始される。
【0123】
その後、炭素含有ガスの供給は、弁V1またはV3が閉じられ、弁V15が開かれることによって行われ(これが最初の還元である場合)、そうでなければ弁V17が開かれる。その結果、炉空間120は炭素含有ガスで満たされ始める。つまり、主還元および浸炭ステップでは、還元と浸炭が並行して行われ、供給される炭素含有ガスによって圧力が維持される。コンテナ320内の圧力が炭素含有ガスを供給するのに十分でない場合、代わりに弁V18及びV6が開かれ、弁V12、V13及びV14が閉じられるので、凝縮器270はゆっくりとより多くの炭素含有ガスをもたらし始め、それによって炉空間120内の圧力を少なくとも2.3~3.5バールという所望の最終圧力で維持することができる。
【0124】
全還元工程の間、還元が完了に近づくまで、熱とより多くの炭素含有ガスの両方が、約700℃で行われ、その温度では、装入物から出るガスは、装入物に入るガスと同じ温度を有する。この時点で、水素ガスと炭素含有ガスの混合物を含むコンテナ320からの混合ガスの連続供給によって圧力が維持されている間、温度は700℃以上、好ましくは最大1100℃の最終温度まで上昇される。
【0125】
その後、以下の冷却および排出ステップを開始することができる。
【0126】
図4bは、
図4aに示したものに対応する図であるが、この第2のストラテジを説明するための図である。
【0127】
実施例3
第3のストラテジとして、還元が最大に達した時点で炭素含有ガスの供給を開始する。ヘマタイトとマグネタイトの場合、これは約550~570℃で発生する。
【0128】
このストラテジでは、コンテナ290内の利用可能な水素ガス圧力に応じて、弁V1を介して、または弁V2/V6を開いて凝縮器270を使用して、上記のようにコンテナ290から水素ガスを供給することによって、圧力が少なくとも1.1バールに、好ましくは少なくとも2.3~2.5バールに上昇される。同時に、上述したように、炉空間120に熱が供給される。
【0129】
装入物から出るガスの温度が500℃に近づくと、水素ガスの供給が遮断される。この時点で、装入物の大部分は既に完全に還元され、炭素含有ガスを介して供給される炭素を受容する準備ができた自然発火性鉄から構成されるようになる。これは、水素ガス用の弁V1~V4を制御し、コンテナ310からの新鮮な炭素含有ガス用の弁V15を開くことにより達成される。
【0130】
コンテナ310内の圧力が十分でない場合、弁V15およびV1を閉じる一方、弁V6を開き、凝縮器270を用いて所望の圧力を維持する。浸炭は、還元後または還元と一部並行して行われ、炭素含有ガスの供給により圧力が維持される。上述したように、浸炭の結果、一定量の水素ガスが生成され、それに伴う不要な圧力上昇は、弁V7およびV19を開いて炉空間120の雰囲気の一部をコンテナ320に排気し、凝縮器270が炉空間120からコンテナ320に水素/炭素含有ガスの混合ガスを圧送することによって対処できる。
【0131】
装入物の出口側の温度が入口側と同じ、好ましくは650~750℃、例えば690~700℃であるとき、温度は、一定圧力下、より正確には少なくとも1.1の圧力、好ましくは少なくとも2.3~2.5バールに上昇し、少なくとも800℃、例えば800~1100℃である高温にされる。一定圧力は、炭素含有ガス、好ましくは新鮮な炭素含有ガスを、コンテナ310から弁V15を介して、または必要に応じて凝縮器270を使用して弁V16およびV6を介して供給することによって維持される。
【0132】
その後、以下の冷却および排出ステップを開始することができる。
【0133】
一般に、この第3のストラテジでは、炭素供給ステップは、金属材料が450~550℃の間の温度に達した後にのみ開始され、その後、水素ガスの供給は終了してもよい。一方、炭素供給ステップは、その後、炉空間120に熱を供給し続けることを含んでいてもよい。
【0134】
さらに、この第3のストラテジにおいて一般に、金属材料が700~1100℃の間、例えば800~1100℃の間の温度に達するまで、主還元および浸炭ステップにおいて、特に炭素供給ステップの間、熱が提供される。
【0135】
上述のように、この第3のストラテジにおける炭素供給ステップは、一定の圧力で炉空間120に熱を提供することを含んでよく、この圧力は炭素含有ガスの制御された供給によって制御され、この供給された炭素含有ガスは水素ガスと混合されてもされなくてもよい。
【0136】
図4cは、
図4aに示したものに対応する図であるが、この第3のストラテジを説明するための図である。特に、600℃より上で水素ガスの分圧が低下していることに注目されるが、これは浸炭反応によって生成された水素によるものである。
【0137】
完全な還元および浸炭が起こった後、本発明による方法は、以下に説明する冷却および排出ステップを含んでいる。
【0138】
それゆえ、後続する冷却ステップでは、炉空間120内の水素ガス/炭素含有ガス雰囲気を、最大で100℃、好ましくは約50℃の温度まで冷却し、その後、炉空間120から排気して回収することができる。
【0139】
1つまたは複数の炉に接続されていない単一の炉100/220の場合、装入材料は、気水型冷却器240の下流に配置されているファン250を使用して冷却されてもよく、これは順番に水素/炭素含有ガス(弁V12、熱交換器240、ファン250および弁V10を通過するループにおいて、ファン250による閉ループで循環し、出口導管173を介して炉空間120から出て、入口導管171を介して炉空間120に再び入る)を冷却するために配置される。この冷却循環は、
図1bの矢印で示されている。
【0140】
熱交換器240は、それゆえ、循環した水素/炭素含有ガスから水(または別の液体)に熱エネルギーを伝達し、そこから熱エネルギーは、例えば地域暖房システムにおいて適切な方法で使用されることができる。弁V10とV12を除くすべての弁V1~V19を閉じることにより、閉ループが達成される。
【0141】
この場合の水素/炭素含有ガスは、コンテナ140内の装入材料を通過して循環しているため、装入材料から熱エネルギーを吸収し、水素/炭素含有ガスを閉ループで循環させながら装入材料の冷却を効率的に行うことができる。
【0142】
別の実施例では、炉100/220の冷却から利用可能な熱エネルギーは、別の炉210を予熱するために使用される。そして、これは、上述した冷却閉ループと比較して、制御ユニット201が、弁V12を閉じ、代わりに弁V13,V14を開くことによって達成される。このようにして、炉220から到達した高温の水素/炭素含有ガスは、好ましくは向流式熱交換器である気体-気体型熱交換器230に運ばれ、この熱交換器230では、他の炉210に関連して行われる初期または主還元および浸炭ステップで供給されている水素ガスが予熱される。その後、炉220からの幾分冷却された水素/炭素含有ガスは、炉220に再導入される前に、さらなる冷却のために熱交換器240を通過して循環させることができる。この場合も、炉220からの水素/炭素含有ガスは、ファン250を使用して閉ループで循環される。
【0143】
そのため、冷却ステップにおける水素/炭素含有ガスの冷却は、上述したように、別の炉210の炉空間120に関連して、初期加熱ステップおよび主加熱ステップと凝縮を行うために別の炉210の炉空間120に供給される水素ガスとの熱交換を介して行われてもよい。
【0144】
一旦、水素/炭素含有ガスの温度が炉210に供給される水素ガスを加熱するのに不十分となると、制御ユニット201は再び弁V13,V14を閉じ、弁V12を再び開き、炉220からの水素/炭素含有ガスが直接熱交換器240に取り込まれるようにする。
【0145】
その熱エネルギーがどのように処理されるかに関係なく、炉220からの水素/炭素含有ガスは、後に空気に露出されたときの装入材料の再酸化を避けるために、それ(より重要には、装入材料)が100℃未満の温度に達するまで冷却される。装入材料の温度は、上述したような適切な方法で直接測定することができ、または出口導管173を介して出て行く水素/炭素含有ガスの温度を適切な方法で測定することによって、間接的に測定することができる。
【0146】
水素/炭素含有ガスの冷却は、水素/炭素含有ガスの圧力を維持したまま行われてもよいし、あるいは、一旦、弁V10及びV12が開かれると、高温の水素/炭素含有ガスが(閉ループ導管及び熱交換器の)より大きな容積を占めるようになった結果、水素/炭素含有ガスの圧力が低下することもある。
【0147】
後続するステップで、水素/炭素含有ガスは、炉220空間120から排気され、使用済みガス用の適切なコンテナに回収される。通常、炉空間120はこの時点で水素と炭素含有ガスの混合物を含み、この混合物はその後、真空ポンプ260を、場合によっては凝縮器270と組み合わせて使用して、使用済み炭素含有ガス用のコンテナ320に排気される。制御ユニットは、弁V13、V14、V8およびV19を開き、弁V1~V7およびV15~V18を閉じる。そして、真空ポンプ260と凝縮器270を作動させて、使用済み混合ガスをコンテナ320に圧送する。炉空間120の排気は、好ましくは、炉空間120の内部に最大で0.5バール、あるいは最大で0.3バールの圧力が検出されるまで行われる。
【0148】
炉空間120が閉鎖されているので、化学還元反応で消費された水素/炭素含有ガスのみが系外に排出され、残りの水素ガスは、主還元および浸炭ステップ中に炉空間120内の水素ガス/水蒸気のバランスを維持するために必要であったものである。この排気された水素ガスは、その後の還元すべき金属材料の新たな装入のバッチ動作に十分役立つものである。
【0149】
その後、弁V7,V8,V19を閉じ、弁V9を開いて、装入材料の交換のためにシステム内に空気を入れ、弁V11を開いて凝縮水の排出を行う。
【0150】
後続のステップにおいて、炉空間120は、例えば、締結手段111を解除し、上部110を開くことによって、開放される。コンテナ140は取り外され、還元すべき装入金属材料の新たなバッチが入ったコンテナと交換される。
【0151】
その後のステップでは、輸送や貯蔵中の再酸化を避けるために、除去した還元材料を窒素雰囲気などの不活性雰囲気下に配置してもよい。
【0152】
例えば、不活性ガスが充填された可撓性または剛性の輸送コンテナに、還元金属材料を配置してもよい。このような可撓性または剛性コンテナを複数個、輸送コンテナ内に配置し、可撓性または剛性コンテナの周囲の空間に不活性ガスを封入してもよい。これにより、還元された金属材料が再酸化するリスクなく、安全に輸送することができる。
【0153】
以下の表は、炉空間120の温度が異なる場合の水素ガスH2と水蒸気H2Oの概略の平衡状態を示している。
Temperature(°C): 400 450 500 550 600
H2(vol-%): 95 87 82 78 76
H2O(vol-%): 5 13 18 22 24
【0154】
1000kgのFe2O3を還元するために約417Nm3の水素ガスH2が必要であり、1000kgのFe3O4を還元するために約383m3の水素ガスH2が必要である。
【0155】
以下の表は、1000kgのFe2O3およびFe3O4をそれぞれ、大気圧かつ開放系(先行技術による)で、ただし異なる温度で還元するために必要な水素ガスの量を示している。
Temperature (°C): 400 450 500 550 600
Nm3 H2/ tonne Fe2O3: 8340 3208 2317 1895 1738
Nm3 H2/ tonne Fe3O4: 7660 2946 2128 1741 1596
【0156】
以下の表は、1000kgのFe2O3とFe3O4をそれぞれ、異なる圧力および異なる温度で還元するのに必要な水素ガスの量を示している。
Temperature (°C): 400 450 500 550 600
Nm3 H2/ tonne Fe2O3:
1 bar 8340 3208 2317 1895 1738
2 bar 4170 1604 1158 948 869
3bar 2780 1069 772 632 579
Nm3 H2/ tonne Fe3O4:
1 bar 7660 2946 2128 1741 1596
2 bar 3830 1473 1064 870 798
3 bar 2553 982 709 580 532
【0157】
上述したように、本発明による主還元および浸炭ステップは、好ましくは1バールを超える圧力および高温まで行われる。一部の還元が進行している主還元および浸炭ステップの大部分の間、少なくとも500℃の加熱水素ガス温度と少なくとも2.3バールの炉空間120の圧力との組み合わせを使用することが有利であることが判明している。
【0158】
以上、好ましい実施形態について説明した。しかし、本発明の基本的な考え方から逸脱することなく、開示された実施形態に多くの変更を加えることができることは、当業者にとって明らかである。
【0159】
例えば、炉100の形状は、詳細な前提条件によって異なっていてもよい。
【0160】
熱交換器160は、管状熱交換器として説明されている。これが特に有利であることが判明したとしても、他のタイプの気体-気体熱交換器/凝縮器が可能であることが理解される。熱交換器240は、任意の適切な構成であってよい。
【0161】
冷却された水素/炭素含有ガスからの余剰熱は、熱エネルギーを必要とする他のプロセスで使用することもできる。
【0162】
還元および浸炭される金属材料は、酸化鉄として説明されてきた。しかし、本発明の方法およびシステムは、上記のZnおよびPbを含む金属酸化物のように、約600~700℃未満の温度で蒸発する金属材料を還元および浸炭するために使用することも可能である。
【0163】
また、本発明の直接還元と浸炭を組み合わせる原理は、使用済の建材など炉100の構造を適切に調整すれば、鉄鉱石よりも高い還元温度を有する金属材料でも使用することが可能である。
【0164】
したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されるものではなく、添付の請求項の範囲内で種々の変形が可能である。
【国際調査報告】