(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-24
(54)【発明の名称】オリゴペプチド修飾ポリ(β-アミノエステル)のDMSOを含まない合成およびナノ粒子送達システムにおけるそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C08G 73/02 20060101AFI20221116BHJP
C12N 15/88 20060101ALI20221116BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20221116BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20221116BHJP
C07K 1/113 20060101ALI20221116BHJP
C07K 5/10 20060101ALI20221116BHJP
C07K 7/08 20060101ALI20221116BHJP
C07K 5/09 20060101ALI20221116BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20221116BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20221116BHJP
C07K 1/34 20060101ALI20221116BHJP
C07K 1/30 20060101ALI20221116BHJP
C07K 1/14 20060101ALI20221116BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20221116BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20221116BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20221116BHJP
C12N 15/49 20060101ALN20221116BHJP
【FI】
C08G73/02
C12N15/88 Z ZNA
C12N15/867 Z
C12N15/86 Z
C07K1/113
C07K5/10
C07K7/08
C07K5/09
C07K14/00
C07K7/06
C07K1/34
C07K1/30
C07K1/14
C12N5/10
C12N15/11 Z
C12N15/12
C12N15/49
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518332
(86)(22)【出願日】2020-09-21
(85)【翻訳文提出日】2022-05-12
(86)【国際出願番号】 IB2020000783
(87)【国際公開番号】W WO2021053400
(87)【国際公開日】2021-03-25
(32)【優先日】2019-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522035443
【氏名又は名称】イグザカ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】テズゲル,エズギュル
(72)【発明者】
【氏名】モウレーン,フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ボッシュ,セシール
(72)【発明者】
【氏名】バイヤン,ルノー
【テーマコード(参考)】
4B065
4H045
4J043
【Fターム(参考)】
4B065AA90Y
4B065AA94X
4B065AA95X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065BA02
4B065BA05
4B065BD30
4B065BD39
4B065CA24
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA12
4H045BA13
4H045BA14
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA18
4H045BA62
4H045CA01
4H045CA40
4H045EA50
4H045FA20
4H045FA51
4H045FA52
4H045GA01
4H045GA05
4H045GA22
4J043PA08
4J043PB02
4J043PC016
4J043PC206
4J043RA08
4J043SA05
4J043SA71
4J043SB03
4J043TA35
4J043TB01
4J043XA06
4J043YB08
4J043YB31
4J043ZB60
(57)【要約】
オリゴペプチド修飾ポリ-β-アミノ-エステル(OM-PBAE)および関連するポリマーを、DMSOを溶媒として使用せずに合成する方法および精製する方法は、生体適合性緩衝液中での改善された保管安定性を有するOM(OM)-PBAEを提供する。上記ポリマーは長期間保管することができ、また核酸およびウイルスベクターのカプセル化に使用すると、トランスフェクション効率および形質導入効率を低下させることがない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端修飾ポリマーを合成する方法であって、
(a)末端修飾剤、および末端ビニル炭素を含む末端アクリレート基を含むポリマーを提供することと、
(b)アセトニトリルに溶解させた前記ポリマーを含む第1の溶液を形成することと、
(c)クエン酸水溶液に溶解させた前記末端修飾剤を含む第2の溶液を形成することと、
(d)前記第1の溶液および前記第2の溶液を混合し、それによって前記末端修飾剤が前記末端ビニル炭素に結合して前記末端修飾ポリマーを形成することと、を含む方法。
【請求項2】
前記第2の溶液がさらにアセトニトリルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記末端修飾剤をクエン酸水溶液に、前記末端修飾剤が前記溶液に溶解されるまで混合し、続いて前記溶液にアセトニトリルを添加することによって前記第2の溶液が形成される、請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記第2の溶液が、約1/1体積/体積~約2/1体積/体積の比率で水/アセトニトリルを含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の溶液が約25mMのクエン酸塩を含み、約pH5.0のpHを有する、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
工程(d)における前記第1の溶液および前記第2の溶液の前記混合によって、約3/2体積/体積の比率でアセトニトリル/水を含む溶液が形成される、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記末端修飾剤がチオールを含み、前記末端修飾剤がチオエーテル結合(-C-S-C-)を介して前記末端ビニル炭素に結合する、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記末端修飾剤が、CRRR(配列番号4)、CKKK(配列番号7)、CHHH(配列番号1)、CDDD(配列番号13)、CEEE(配列番号10)、GRKKRRQRRRPQ(TAT)(配列番号48)、RQIKIWFQNRRMKWKKGG(penetratin)(配列番号49)、CGYGPKKKRKVGG(NLS配列)(配列番号50)、AGYLLGKINLKALAALAKKIL(transportan10)(配列番号51)、RGD、KETWWETWWTEWSQPKKKRRV(pep-1)(配列番号52)、KLALKLALKALKAALKLA(MAP)(配列番号53)、RRRRNRTRRNRRRVR(FHVコート)(配列番号54)およびLLIILRRRIRKQAHAHSK(pVEC)(配列番号55)からなる群から選択されるオリゴペプチドである、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記末端修飾剤が、システイン、ホモシステイン、およびシステインまたはホモシステインを含むオリゴペプチドからなる群から選択され、前記オリゴペプチドが20個以下のアミノ酸を含有する、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記第1の溶液および前記第2の溶液の前記混合によって、約2.2/1~約3/1の範囲のモル比でチオール/アクリレートを含む溶液が形成される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記オリゴペプチドが、塩酸塩、酢酸塩、TFA塩、ギ酸塩またはそれらの組合せとして提供される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の溶液および前記第2の溶液がDMSOを含有しない、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
工程(d)における前記第1の溶液および前記第2の溶液の前記混合が不活性雰囲気中で実施され、前記不活性雰囲気が、前記混合の間の二硫化物の形成を低減させる、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
工程(d)における前記第1の溶液および前記第2の溶液の前記混合が、約20時間実施される、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
工程(d)における前記第1の溶液および前記第2の溶液の前記混合が、約25℃で実施される、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
(i)前記末端アクリレート基を含むポリマーが、式VIもしくは式VIIの構造:
【化1】
を有するポリ(β-アミノエステル)(PBAE)アクリレートである、または(ii)前記末端アクリレート基を含むポリマーが、式VIII、式IXもしくは式Xの構造:
【化2】
を有し、式中、R
1およびR
2はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、フェニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよびヘテロアリールからなる第1の群から選択され、R
1およびR
2では、それぞれ独立して1個以上の炭素がO、N、BまたはSによって置換されてもよく、独立してそれぞれ前記第1の群の構成成分は、所望によりさらに、-OH、ハロゲン、ハロゲン化アシル、炭酸塩、ケトン、アルデヒド、エステル、メトキシ、エーテル、アミド、アミン、ニトリルおよび前記第1の群の任意のその他の構成成分からなる第2の群から選択された1種以上の置換基によって置換されることができ、R
1およびR
2はそれぞれ独立して最大で合計20個の炭素を有し、
nおよびmは独立して2~10000の整数であり、kは1~50000の整数であり、jは1~20000の整数であり、Xは1~5000の整数である、請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
(e)工程(d)で得られた前記末端修飾PBAEから、残留溶媒を除去することをさらに含む、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
工程(e)の結果得られる前記末端修飾ポリマーが、残留クエン酸塩を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の方法から作られる、末端修飾ポリマーを含む組成物。
【請求項20】
DMSOを実質的に含まない、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
水溶液である請求項19または20に記載の組成物であって、前記組成物が約-20℃で保管されるとき、前記末端修飾PBAEが少なくとも10週間の半減期を有する、請求項19または20に記載の組成物。
【請求項22】
前記末端修飾PBAEが少なくとも15週間の半減期を有する、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
ポリマージアクリレートを精製する方法であって、
(a)酢酸エチルに前記ポリマージアクリレートを溶解することと、
(b)約10/1体積/体積の酢酸エチルに対するヘプタンの比率を得るように、ヘプタン中に前記ポリマージアクリレートを滴下して添加することによって前記ポリマージアクリレートを沈殿させることと、
(c)工程(a)および(b)を2回繰り返し、それによって前記精製ポリマージアクリレートが得られることと、を含む、方法。
【請求項24】
ポリマージアクリレートを精製する方法であって、
(a)酢酸エチルに前記ポリマージアクリレートを溶解することと、
(b)約2/1体積/体積の酢酸エチルに対するヘプタンの比率を得るように、工程(a)で得られる前記溶液から、前記溶液にヘプタンを添加することによって前記ポリマージアクリレートを沈殿させ、それによって前記精製ポリマージアクリレートが沈殿物として得られること、とを含む、方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法の生成物を、請求項25に記載の出発物質たるポリマージアクリレートとして用いて、請求項25に記載の方法を実施することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
請求項23~25のいずれかに記載の方法によって得られる、精製ポリマージアクリレート。
【請求項27】
オリゴペプチド修飾PBAE(OM-PBAE)を精製する方法であって、
(a)エタノールを用いて前記OM-PBAEを抽出し、続いて前記抽出されたOM-PBAEを乾燥させることと、
(b)エタノールに工程(a)の結果得られた前記OM-PBAEを再溶解し、約7/3(v/v)の比率のジエチルエーテル/アセトンに前記OM-PBAEを沈殿させることと、
(c)工程(b)の結果得られた前記沈殿物を、ジエチルエーテル/アセトン(約7/3v/v)を用いて洗浄することと、
(d)工程(c)の結果得られた前記OM-PBAEから残留溶媒を除去すること、とを含む、前記方法。
【請求項28】
オリゴペプチド修飾PBAE(OM-PBAE)を精製する方法であって、
(a)水を含む溶離液を用いて、前記OM-PBAEをサイズ排除カラムに通過させることと、
(b)前記サイズ排除カラムを通過させた後に、前記OM-PBAEを回収することと、
(c)工程(b)の結果得られた前記OM-PBAEから残留溶媒を除去すること、とを含む、前記方法。
【請求項29】
工程(c)が、真空を適用することもしくは凍結乾燥、沈殿、ろ過、遠心分離を実施すること、ジエチルエーテル/アセトンを用いて前記OM-PBAEを洗浄すること、またはこれらの組合せを含む、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
請求項19~22または請求項27~29のいずれかに記載の方法によって得られるOM-PBAE。
【請求項31】
請求項30に記載の前記OM-PBAEでカプセル化される核酸またはウイルスベクターを含む、ナノ粒子。
【請求項32】
前記ウイルスベクターが、レンチウイルスベクターである、請求項31に記載のナノ粒子。
【請求項33】
溶媒としてのDMSOの使用を含む方法によって作られるOM-PBAEを含むナノ粒子と比較して、より高い形質導入効率を有する、請求項32に記載のナノ粒子。
【請求項34】
溶媒としてのDMSOの使用を含む方法によって作られるOM-PBAEを含むナノ粒子と比較して、細胞の形質導入を行い、より高い細胞生存率をもたらすことができる、請求項32に記載のナノ粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
オリゴペプチド修飾ポリ-β-アミノ-エステル(OM-PBAE)および関連するポリマーを、DMSOを溶媒として使用せずに合成する方法および精製する方法に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年9月21日に出願された米国仮出願第62/903799号の優先権を主張し、その全内容が参照として本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0003】
遺伝子治療は、幅広い遺伝性または非遺伝性の状態の治療のための、新規の治療的手法を提案している。遺伝子治療領域においては、いくつかのウイルスベクターおよび非ウイルスベクターが探索されている。ウイルスベクターは、トランスフェクション効率が高く、また長期的な遺伝子発現を提供するため、最も評判の良いツールの1つである。しかしウイルスベクターには、毒性の、免疫原性プロファイルおよび非特異性に関して、重大な安全性の懸念がある。非ウイルスベクターは、その相対的な安全性、製造の容易性および特定の細胞を標的化するための修飾を考慮すると、有望な選択肢であるが、低いトランスフェクション効率のために、臨床での利用への移行が制限されている。別の選択肢は、ウイルス性システムおよび非ウイルス性システムの障壁を克服し、相乗効果によって全体的な効率を高める可能性がある、ポリマーを用いたウイルスのコーティングまたは修飾を含む、ナノテクノロジーを介した解決策である。
【0004】
遺伝子治療分野では、カチオン性合成ポリマー、多糖類およびポリペプチドをはじめとするいくつかのポリマー系が適用されている(Lv、H et al.2006)。ポリ(β-アミノエステル)(PBAE)は、生分解性およびpH感受性の特性のために、ポリマー性遺伝子送達システムにおいては、ここ数十年間、最も有望な候補として認識されている。異なるジアクリレートモノマーおよびアミンモノマーを使用して、2000種を超えるPBAEが合成されている。さらに、アミン分子、ペプチド分子および糖分子など異なる官能基を用いて末端基修飾が実施されている。異なるPBAEのスクリーニングによって、ポリマー上の末端基の構造が、遺伝子送達システムの性能および細胞毒性において重要な役割を果たしていることが示された(Zugates, GT, et al., 2007; Green, JJ, et al., 2008, Anderson DG, et al., 2005)。
【0005】
現在に至るまで、大部分のPBAEの末端修飾反応は、反応溶媒としてのDMSO中で実施されている。反応がDMSO中で実施されなかった場合でも、ポリマーはDMSOに溶解され、その後の使用までDMSO中で保管された(Green, JJ, et al., 2008)。DMSOは、治療的適用において、極性薬剤または無極性薬剤を可溶化するために一般的に用いられる物質であるが、薬剤配合物におけるDMSOの使用に関しては安全性の懸念がある。DMSOの使用に関する明確な見解の一致はないが、DMSOの潜在的な細胞毒性は報告されている(de Abreau Costa, et al., 2017, Galvao, J., et al., 2013)。最近では、低い残留濃度のDMSOさえも望ましくない効果を誘発する可能性があり、そのためDMSOの使用は回避されるべきであるということも明らかにされている(Verheijem, M, et al., 2019)。したがって、DMSOを含まない条件を使用した末端修飾PBAEを調製する方法が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本技術は、DMSOを含まない条件での、オリゴペプチド末端修飾PBAEおよび関連ポリマーの新規の合成を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
新しい方法によって合成されたPBAEを使用してレンチウイルス粒子をコーティングし、ナノ粒子遺伝子送達システムを作り出した。さらに、このポリマーコーティングしたウイルス粒子を細胞形質導入実験において使用した。システムの有効性および細胞毒性を評価し、従来通りDMSO中で合成されたポリマーによって調製されたシステムと比較した。加えて、DMSOを含まない条件下でのOM-PBAEの製造は、大規模に実施することができる。
【0008】
本技術によって合成されたOM-PBAEは、例えば、下記の式Iまたは式IIに示すような構造を有することができる。
【化1】
末端のRは、それぞれ2~20個のアミノ酸残基を含有する同一のまたは異なるオリゴペプチドを示し、「m」および「n」は、それぞれ脂肪族の側鎖または水酸化された側鎖を有する反復単位の数を示し、「x」は、OM-PBAE中の脂肪族ブロックおよび水酸化ブロックの反復単位の合計数を示す。
【0009】
本技術によって合成され得るその他のポリマーとしては、下記の式III、式IVおよび式Vで示されるものが含まれる。
【化2】
これらのポリマーでは、kは1~50000の整数であり、jは1~20000の整数である。末端のRは、それぞれ2~20個のアミノ酸残基を含有する同一のまたは異なるオリゴペプチドを示す。
【0010】
オリゴペプチド中のアミノ酸残基は、任意の、天然に存在するアミノ酸、または合成アミノ酸であることができる。アミノ酸残基は、天然に存在するL-アミノ酸であることができる。ペプチドは、正電荷を帯びたアミノ酸、中性アミノ酸、疎水性アミノ酸、極性無電荷アミノ酸、または負電荷を帯びたアミノ酸、またはこれらの任意の組合せを含有することができる。オリゴペプチドは末端システインを含有することができ、この末端システインを使用して、チオール-アクリレートマイケル付加反応を介してオリゴペプチドと反応するPBAEのアクリレート前駆体またはジアクリレート前駆体のアクリレート末端基に、オリゴペプチドをカップリングすることができる。
【0011】
オリゴペプチドは、任意のアミノ酸配列を有することができる。この配列は、例えば、N末端システインと、H、RおよびKの任意の組合せなどの1個以上の正電荷を帯びたアミノ酸と、最大で20個のアミノ酸残基を含有することができる。この配列は、例えば、N末端システインと、DおよびEの任意の組合せなどの1個以上の負電荷を帯びたアミノ酸と、最大で20個のアミノ酸残基を含有することができる。この配列は、例えば、N末端システインと、H、RおよびKなどの1個以上の正電荷を帯びたアミノ酸とを、任意の順序でDまたはEなどの任意の負電荷を帯びたアミノ酸と組み合わせて、最大で20個のアミノ酸残基を含有することができる。例示的なアミノ酸配列としては、CH、CHH、CHHH(配列番号1)、CHHHH(配列番号2)、CHHHHH(配列番号3)、CR、CRR、CRRR(配列番号4)、CRRRR(配列番号5)、CRRRRR(配列番号6)が挙げられる。CK、CKK、CKKK(配列番号7)、CKKKK(配列番号8)、CKKKKK(配列番号9)、CE、CEE、CEEE(配列番号10)、CEEEE(配列番号11)、CEEEEE(配列番号12)、CD、CDD、CDDD(配列番号13)、CDDDD(配列番号14)、CDDDDD(配列番号15)、CHRH(配列番号16)、CHRR(配列番号17)、CHKH(配列番号18)、CHKK(配列番号19)、CHEH(配列番号20)、CHEE(配列番号21)、CHDH(配列番号22)、CHDD(配列番号23)、CRHR(配列番号24)、CRHH(配列番号25)、CRKR(配列番号26)、CRKK(配列番号27)、CRER(配列番号28)、CREE(配列番号29)、CRDR(配列番号30)、CRDD(配列番号31)、CKHK(配列番号32)、CKHH(配列番号33)、CKRK(配列番号34)、CKRR(配列番号35)、CDHD(配列番号36)、CDHH(配列番号37)、CDRD(配列番号38)、CDRR(配列番号39)、CDKD(配列番号40)、CDKK(配列番号41)、CEHE(配列番号42)、CEHH(配列番号43)、CERE(配列番号44)、CERR(配列番号45)、CEDE(配列番号46)およびCEDD(配列番号47)。
【0012】
本技術のオリゴペプチドはまた、細胞膜透過性ペプチド、例えば、GRKKRRQRRRPQ(TAT)(配列番号48)、RQIKIWFQNRRMKWKKGG(penetratin)(配列番号49)、CGYGPKKKRKVGG(NLS配列)(配列番号50)、AGYLLGKINLKALAALAKKIL(transportan10)(配列番号51)、KETWWETWWTEWSQPKKKRRV(pep-1)(配列番号52)、KLALKLALKALKAALKLA(MAP)(配列番号53)、RRRRNRTRRNRRRVR(FHV coat)(配列番号54)、およびLLIILRRRIRKQAHAHSK(pVEC)(配列番号55)であることができる。本技術のオリゴペプチドはまた、インテグリン結合ペプチド、例えばRGDまたはその他のインテグリン結合ペプチドであることができる。
【0013】
本技術は、末端修飾ポリ-β-アミノ-エステル(PBAE)を合成する方法を含む。本方法は、(a)オリゴペプチドなどの末端修飾剤、および末端アクリレート基を含むPBAE(PBAEアクリレートまたはPBAEジアクリレート)を提供する工程と、(b)アセトニトリルに溶解させたPBAEを含有する第1の溶液を形成または提供する工程と、(c)クエン酸水溶液に溶解させた末端修飾剤を含有する第2の溶液を形成または提供する工程と、(d)第1の溶液および第2の溶液を混合し、それによって末端修飾剤が末端ビニル炭素に結合して末端修飾PBAEを形成する工程と、を含む。
【0014】
上述の合成に用いられるPBAEジアクリレートは、例えば、下記の式VIまたは式VIIに従う構造を有することができる。
【化3】
【0015】
PBAEジアクリレートの主鎖構造は、合成での使用に異なるジアクリレート出発物質を選択することによって、さらに変化させることができる。例えば、式VIII、式IXまたは式Xの以下のポリマージアクリレートを合成に使用することができる。
【化4】
式中、R
1およびR
2はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、フェニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよびヘテロアリールからなる第1の群から選択され、R
1およびR
2では、それぞれ独立して1個以上の炭素がO、N、BまたはSによって置換されてもよく、独立してそれぞれ第1の群の構成成分は、所望によりさらに、-OH、ハロゲン、ハロゲン化アシル、炭酸塩、ケトン、アルデヒド、エステル、メトキシ、エーテル、アミド、アミン、ニトリルおよび第1の群の任意のその他の構成成分からなる第2の群から選択された1種以上の置換基によって置換されることができ、R
1およびR
2はそれぞれ独立して最大で合計20個の炭素を有し、nおよびmは独立して2~10000の整数であり、kは1~50000の整数であり、jは1~20000の整数であり、Xは1~5000の整数である。
【0016】
本明細書で使用される場合、「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素から選択される元素である。「アルキル」基は、非分岐鎖または分枝鎖であることができ、分子構造への置換基として、任意の水素原子との置換によって所望により追加されることができる。結合されるアルキル鎖原子は炭素でもよく、またはアルキルが1種以上のヘテロ原子を含有する場合、O、N、BもしくはSでもよい。
【0017】
本技術はまた、PBAE-ジアクリレートポリマーを精製する方法を含む。
本方法は、(a)PBAE-ジアクリレートポリマーを酢酸エチルに溶解する工程と、(b)約10/1体積/体積の酢酸エチルに対するヘプタンの比率を得るように、ヘプタン中に上記酢酸エチルを滴下して添加することによって、PBAE-ジアクリレートポリマーを沈殿させる工程と、(c)工程(a)および(b)を2回繰り返し、それによって精製PBAE-ジアクリレートポリマーが得られる工程と、を含む。
【0018】
本技術はまた、PBAE-ジアクリレートポリマーを精製する別の方法を含む。本方法は、(a)PBAE-ジアクリレートポリマーを酢酸エチルに溶解する工程と、(b)約2/1体積/体積の酢酸エチルに対するヘプタンの比率を得るように、工程(a)で得られる溶液から、溶液にヘプタンを添加することによってPBAE-ジアクリレートポリマーを沈殿させ、それによって精製PBAE-ジアクリレートポリマーが沈殿物として得られる工程と、を含む。
【0019】
本技術はまた、オリゴペプチド修飾PBAE(OM-PBAE)を精製する方法を含む。本方法は、(a)エタノールを用いてOM-PBAEを抽出し、続いて抽出されたOM-PBAEを乾燥させる工程と、(b)エタノールに工程(a)の結果得られたOM-PBAEを再溶解し、約7/3(v/v)の比率のジエチルエーテル/アセトンにOM-PBAEを沈殿させる工程と、(c)工程(b)の結果得られた沈殿物を、ジエチルエーテル/アセトン(約7/3v/v)を用いて洗浄する工程と、(d)工程(c)の結果得られたOM-PBAEから残留溶媒を除去する工程と、を含む。
【0020】
本技術はまた、オリゴペプチド修飾PBAE(OM-PBAE)を精製する方法を含む。本方法は、(a)水を含む溶離液を用いて、OM-PBAEをサイズ排除カラムに通過させる工程と、(b)サイズ排除カラムを通過させた後に、OM-PBAEを回収する工程と、(c)工程(b)の結果得られたOM-PBAEから残留溶媒を除去する工程と、を含む。
【0021】
本技術は、以下の特徴によってさらに要約することができる。
1.末端修飾ポリマーを合成する方法であって、
(a)末端修飾剤、および末端ビニル炭素を含む末端アクリレート基を含むポリマーを提供することと、
(b)アセトニトリルに溶解させた上記ポリマーを含む第1の溶液を形成することと、
(c)クエン酸水溶液に溶解させた上記末端修飾剤を含む第2の溶液を形成することと、
(d)第1の溶液および第2の溶液を混合し、それによって末端修飾剤が末端ビニル炭素に結合して末端修飾ポリマーを形成すること、とを含む方法。
2.第2の溶液がアセトニトリルをさらに含む、特徴1に記載の方法。
3.末端修飾剤をクエン酸水溶液に、末端修飾剤が上記溶液に溶解されるまで混合し、続いて上記溶液にアセトニトリルを添加することによって第2の溶液が形成される、特徴2のいずれかに記載の方法。
4.第2の溶液が、約1/1体積/体積~約2/1体積/体積の比率で水/アセトニトリルを含む、特徴2または特徴3に記載の方法。
5.第2の溶液が約25mMのクエン酸塩を含み、約pH5.0のpHを有する、特徴1~特徴4のいずれかに記載の方法。
6.工程(d)における第1の溶液および第2の溶液の混合によって、約3/2体積/体積の比率でアセトニトリル/水を含む溶液が形成される、特徴1~特徴5のいずれかに記載の方法。
7.末端修飾剤がチオールを含み、末端修飾剤がチオエーテル結合(-C-S-C-)を介して末端ビニル炭素に結合する、特徴1~特徴6のいずれかに記載の方法。
8.末端修飾剤が、CRRR(配列番号4)、CKKK(配列番号7)、CHHH(配列番号1)、CDDD(配列番号13)、CEEE(配列番号10)、GRKKRRQRRRPQ(TAT)(配列番号48)、RQIKIWFQNRRMKWKKGG(penetratin)(配列番号49)、CGYGPKKKRKVGG(NLS、SV-40 largeT抗原の核内移行配列)(配列番号50)、AGYLLGKINLKALAALAKKIL(transportan10)(配列番号51)、RGD、KETWWETWWTEWSQPKKKRRV(pep-1)(配列番号52)、KLALKLALKALKAALKLA(MAP)(配列番号53)、RRRRNRTRRNRRRVR(FHVコート)(配列番号54)およびLLIILRRRIRKQAHAHSK(pVEC)(配列番号55)からなる群から選択されるオリゴペプチドである、特徴1~特徴7のいずれかに記載の方法。
9.末端修飾剤が、システイン、ホモシステイン、およびシステインまたはホモシステインを含むオリゴペプチドからなる群から選択され、オリゴペプチドが20個以下のアミノ酸を含有する、特徴1~特徴8のいずれかに記載の方法。
10.第1の溶液および第2の溶液の混合によって、約2.2/1~約3/1の範囲のモル比でチオール/アクリレートを含む溶液が形成される、特徴8または特徴9に記載の方法。
【0022】
11.オリゴペプチドが、塩酸塩、酢酸塩、TFA塩、ギ酸塩またはそれらの組合せとして提供される、特徴8または特徴9に記載の方法。
12.第1の溶液および第2の溶液がDMSOを含有しない、特徴1~特徴11のいずれかに記載の方法。
13.工程(d)における第1の溶液および第2の溶液の混合が不活性雰囲気中で実施され、不活性雰囲気が、混合中の二硫化物の形成を低減させる、特徴1~特徴12のいずれかに記載の方法。
14.工程(d)における第1の溶液および第2の溶液の混合が約20時間実施される、特徴1~特徴13のいずれかに記載の方法。
15.工程(d)における第1の溶液および第2の溶液の混合が約25℃で実施される、特徴1~特徴14のいずれかに記載の方法。
16.(i)末端アクリレート基を含むPBAEが、式VIもしくは式VIIの構造:
【化5】
を有する、または(ii)末端アクリレート基を含むポリマーが、式VIII、式IXもしくは式Xの構造:
【化6】
を有し、式中、R1およびR2はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、フェニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよびヘテロアリールからなる第1の群から選択され、R1およびR2では、それぞれ独立して1個以上の炭素がO、N、BまたはSによって置換されてもよく、独立してそれぞれ第1の群の構成成分は、所望によりさらに、-OH、ハロゲン、ハロゲン化アシル、炭酸塩、ケトン、アルデヒド、エステル、メトキシ、エーテル、アミド、アミン、ニトリルおよび第1の群の任意のその他の構成成分からなる第2の群から選択された1種以上の置換基によって置換されることができ、R1およびR2はそれぞれ独立して最大で合計20個の炭素を有し、
nおよびmは独立して2~10000の整数であり、kは1~50000の整数であり、jは1~20000の整数であり、Xは1~5000の整数である、特徴1~特徴15のいずれかに記載の方法。
17.(e)工程(d)で得られた末端修飾ポリマーから、残留溶媒を除去することをさらに含む、特徴1~特徴16のいずれかに記載の方法。
18.工程(e)の結果得られる末端修飾ポリマーが、残留クエン酸塩を含む、特徴17に記載の方法。
19.特徴1~特徴18のいずれか1項に記載の方法によって作られる、末端修飾ポリマーを含む組成物。
20.DMSOを実質的に含まない、特徴19に記載の組成物。
【0023】
21.水溶液である特徴19または特徴20に記載の組成物であって、組成物が約-20℃で保管されるとき、末端修飾PBAEが少なくとも10週間の半減期を有する、特徴19または特徴20に記載の組成物。
22.末端修飾PBAEが少なくとも15週間の半減期を有する、特徴21に記載の組成物。
23.ポリマージアクリレートを精製する方法であって、
(a)酢酸エチルにポリマージアクリレートを溶解することと、
(b)約10/1体積/体積の酢酸エチルに対するヘプタンの比率を得るように、ヘプタン中に上記ポリマージアクリレートを滴下して添加することによってポリマージアクリレートを沈殿させることと、
(c)工程(a)および(b)を2回繰り返し、それによって精製ポリマージアクリレートが得られること、とを含む方法。
24.ポリマージアクリレートを精製する方法であって、
(a)酢酸エチルにポリマージアクリレートを溶解することと、
(b)約2/1体積/体積の酢酸エチルに対するヘプタンの比率を得るように、工程(a)で得られる溶液から、溶液にヘプタンを添加することによってポリマージアクリレートを沈殿させ、それによって精製ポリマージアクリレートが沈殿物として得られること、とを含む方法。
25.特徴24の方法の生成物を、特徴25の出発ポリマージアクリレートとして用いて特徴25の方法を実施することをさらに含む、特徴24に記載の方法。
26.特徴23~特徴25のいずれかに記載の方法によって得られる、精製ポリマージアクリレート。
27.オリゴペプチド修飾PBAE(OM-PBAE)を精製する方法であって、
(a)エタノールを用いてOM-PBAEを抽出し、続いて抽出されたOM-PBAEを乾燥させることと、
(b)エタノールに工程(a)の結果得られたOM-PBAEを再溶解し、約7/3(v/v)の比率のジエチルエーテル/アセトン中でOM-PBAEを沈殿させることと、
(c)工程(b)の結果得られた沈殿物を、ジエチルエーテル/アセトン(約7/3v/v)を用いて洗浄することと、
(d)工程(c)の結果得られたOM-PBAEから残留溶媒を除去すること、とを含む方法。
28.オリゴペプチド修飾PBAE(OM-PBAE)を精製する方法であって、
(a)水を含む溶離液を用いて、OM-PBAEをサイズ排除カラムに通過させることと、
(b)サイズ排除カラムを通過させた後に、OM-PBAEを回収することと、
(c)工程(b)の結果得られたOM-PBAEから残留溶媒を除去すること、とを含む方法。
29.工程(c)が、真空を適用することもしくは凍結乾燥、沈殿、ろ過、遠心分離を実施すること、ジエチルエーテル/アセトンを用いてOM-PBAEを洗浄すること、またはこれらの組合せを含む、特徴27または特徴28に記載の方法。
30.特徴19~特徴22または特徴27~特徴29のいずれかに記載の方法によって得られるOM-PBAE。
【0024】
31.特徴30に記載のOM-PBAEでカプセル化される核酸またはウイルスベクターを含む、ナノ粒子。
32.ウイルスベクターが、レンチウイルスベクターである、特徴31に記載のナノ粒子。
33.溶媒としてのDMSOの使用を含む方法によって作られたOM-PBAEを含むナノ粒子と比較して、より高い形質導入効率を有する、特徴32に記載のナノ粒子。
34.溶媒としてのDMSOの使用を含む方法によって作られるOM-PBAEを含むナノ粒子と比較して、細胞の形質導入を行い、より高い細胞生存率をもたらすことができる、特徴32に記載のナノ粒子。
【0025】
本明細書で使用する場合、用語「約」は、記載された値の10%、5%、1%または0.5%以内の値を含む。
【0026】
本明細書で使用される場合、「本質的にからなる」とは、特許請求の範囲の基本的かつ新規の特徴に実質的に影響を及ぼさない材料または工程を含めることを可能にする。本明細書の「含む」という用語の任意の記述は、特に組成物の成分の説明において、または装置の要素の説明において、代替的な表現である、「本質的にからなる」または「からなる」と交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】一般有機溶媒および溶媒混合物における、PBAE-ジアクリレート、ペプチド-HCl塩およびOM-PBAEの溶解度に関する溶媒スクリーニングの結果を示す(作業濃度約10~20mg/mL)。CIT=pH5.0の25mMクエン酸塩緩衝液。陰影パターン:X=可溶性、黒=可溶性でない、白=試験せず。べたの灰色で示される組合せは、溶解度試験(1時間以内)の間は不溶であると見なされたが、後に反応およびワークアップの間に可溶であるのが観察されたものである。これが、溶解時間、濃度、固体の表面積の違いおよび/またはその他の溶質の存在に起因したかどうかは不明である。
【
図2】古典的プロトコルによって得られた粗PBAE-ジアクリレート(レーン1)、1/10の酢酸エチル/ヘプタンによる精製PBAE-ジアクリレート(レーン2)および、本明細書に記載される新規な合成プロトコルによって得られた1/2の酢酸エチル/ヘプタンによる精製PBAE-ジアクリレート(レーン3)で点を付けた薄層クロマトグラフィープレートを示す。ジクロロメタン/メタノール(12/1、v/v)を移動相として使用し、KMnO
4で染色した。
【
図3A】古典的方法によって得られた粗PBAE-ジアクリレートのGPCトレースを示す。
【
図3B】本明細書に記載の新たな合成プロトコルを経て得られた精製PBAE-ジアクリレートポリマーのGPCトレースを示す。
【
図4A】クエン酸塩緩衝液(25mM、pH5.0)において、t=0での粗PBAE-ジアクリレートポリマー溶液および精製PBAE-ジアクリレートポリマー溶液を用いて実施される物理的外観試験を示す。
【
図4B】クエン酸塩緩衝液(25mM、pH5.0)において、t=20時間での粗PBAE-ジアクリレートポリマー溶液および精製PBAE-ジアクリレートポリマー溶液を用いて実施される物理的外観試験を示す。
【
図5】粗PBAE-ジアクリレートを出発物質として使用して、アセトニトリル/クエン酸塩(25mM、pH5.0)(3/2、v/v)中で合成される、PBAE-CR3のNMRスペクトルを示す。CH
3ピークに対するアクリレートの積分値の比率を使用して、アクリレート変換率を算出した。
【
図6】精製PBAE-ジアクリレートを出発物質として、および2倍濃縮ペプチド溶液を使用して、アセトニトリル/クエン酸塩(25mM、pH5.0)(3/2、v/v)中で合成されたPBAE-CR3のNMRスペクトルを示す。CH
3ピークに対するアクリレートの積分値の比率を使用して、アクリレート変換率を算出した。
【
図7A】古典的プロトコル(先行技術)における、OM-PBAE合成工程および精製工程の概要を示す。
【
図7B】本技術の新たなDMSOを含まない方法における、OM-PBAE合成工程および精製工程の概要を示す。
図8A、
図8Bおよび
図8C~
図8Jは、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードし、粗PBAE-ジアクリレートを用いて得られたDMSO中のPBAE-CR3(エントリ3);粗PBAE-ジアクリレートを用いて得られたPBAE-CH3(エントリ2);粗PBAE-ジアクリレートを用いて得られたPBAE-CR3/PBAE-CH3の60/40または40/60の混合物;精製PBAE-ジアクリレートを用いて得られたPBAE-CR3(エントリ8);粗PBAE-ジアクリレートを用いて得られたPBAE-CH3(エントリ7);精製PBAE-ジアクリレートを用いて得られたPBAE-CR3/PBAE-CH3の60/40または40/60の混合物でコーティングした、レンチベクターによって形質導入された、凍結ヒトリンパ球調製物を用いて得られたインビトロの結果を示す。
【
図8B】形質導入後、72時間での細胞の細胞生存率を示す。
【
図8C】異なるポリマーでコーティングしたレンチウイルスベクターによって形質導入され、T(CD3
+)特異的抗体およびB(CD19
+)特異的抗体によって染色され、フローサイトメトリーによって分析されるリンパ球集団を比較する。対照には、形質導入されなかったが、実験全体にわたって培養物中に維持された細胞(NT)、および非カプセル化VSV-G(-)(「禿(Bald)」)レンチウイルスベクター粒子によって形質導入された細胞(LV)が含まれる。
【
図8D】異なるポリマーでコーティングしたレンチウイルスベクターによって形質導入され、T(CD3
+)特異的抗体およびB(CD19
+)特異的抗体によって染色され、フローサイトメトリーによって分析されるリンパ球集団を比較する。対照には、形質導入されなかったが、実験全体にわたって培養物中に維持された細胞(NT)、および非カプセル化VSV-G(-)(「禿(Bald)」)レンチウイルスベクター粒子によって形質導入された細胞(LV)が含まれる。
【
図8E】異なるポリマーでコーティングしたレンチウイルスベクターによって形質導入され、T(CD3
+)特異的抗体およびB(CD19
+)特異的抗体によって染色され、フローサイトメトリーによって分析されるリンパ球集団を比較する。対照には、形質導入されなかったが、実験全体にわたって培養物中に維持された細胞(NT)、および非カプセル化VSV-G(-)(「禿(Bald)」)レンチウイルスベクター粒子によって形質導入された細胞(LV)が含まれる。
【
図8F】異なるポリマーでコーティングしたレンチウイルスベクターによって形質導入され、T(CD3
+)特異的抗体およびB(CD19
+)特異的抗体によって染色され、フローサイトメトリーによって分析されるリンパ球集団を比較する。対照には、形質導入されなかったが、実験全体にわたって培養物中に維持された細胞(NT)、および非カプセル化VSV-G(-)(「禿(Bald)」)レンチウイルスベクター粒子によって形質導入された細胞(LV)が含まれる。
【
図8G】異なるポリマーでコーティングしたレンチウイルスベクターによって形質導入され、T(CD3
+)特異的抗体およびB(CD19
+)特異的抗体によって染色され、フローサイトメトリーによって分析されるリンパ球集団を比較する。対照には、形質導入されなかったが、実験全体にわたって培養物中に維持された細胞(NT)、および非カプセル化VSV-G(-)(「禿(Bald)」)レンチウイルスベクター粒子によって形質導入された細胞(LV)が含まれる。
【
図8H】異なるポリマーでコーティングしたレンチウイルスベクターによって形質導入され、T(CD3
+)特異的抗体およびB(CD19
+)特異的抗体によって染色され、フローサイトメトリーによって分析されるリンパ球集団を比較する。対照には、形質導入されなかったが、実験全体にわたって培養物中に維持された細胞(NT)、および非カプセル化VSV-G(-)(「禿(Bald)」)レンチウイルスベクター粒子によって形質導入された細胞(LV)が含まれる。
【
図8I】異なるポリマーでコーティングしたレンチウイルスベクターによって形質導入され、T(CD3
+)特異的抗体およびB(CD19
+)特異的抗体によって染色され、フローサイトメトリーによって分析されるリンパ球集団を比較する。対照には、形質導入されなかったが、実験全体にわたって培養物中に維持された細胞(NT)、および非カプセル化VSV-G(-)(「禿(Bald)」)レンチウイルスベクター粒子によって形質導入された細胞(LV)が含まれる。
【
図8J】異なるポリマーでコーティングしたレンチウイルスベクターによって形質導入され、T(CD3
+)特異的抗体およびB(CD19
+)特異的抗体によって染色され、フローサイトメトリーによって分析されるリンパ球集団を比較する。対照には、形質導入されなかったが、実験全体にわたって培養物中に維持された細胞(NT)、および非カプセル化VSV-G(-)(「禿(Bald)」)レンチウイルスベクター粒子によって形質導入された細胞(LV)が含まれる。
【
図9A】
図8A~
図8Bに示された実験と類似しているが、単離したてのヒトPBMCで実施された実験の形質導入効率の結果を示す。
【
図9B】
図8A~
図8Bに示された実験と類似しているが、単離したてのヒトPBMCで実施された実験の細胞生存率の結果を示す。
【
図10A】
図8A~
図8Bに示された実験と類似しているが、GFPをコードし、図示されるように、DMSO中で粗PBAE-ジアクリレートを用いて得られた、PBAE-CR3(エントリ3)/PBAE-CH3(エントリ2)(左のバー、濃い灰色)、粗PBAE-ジアクリレートを用いてカップリング後の精製無しで得られた、DMSOを含まないPBAE-CR3/PBAE-CH3(中央のバー、薄い灰色)、または粗PBAE-ジアクリレートおよびカップリング後の精製を用いて得られた、DMSOを含まないPBAE-CR3(エントリ13)/PBAE-CH3(エントリ12)(右のバー、白色)の100/0、60/40、40/60もしくは0/100の混合物でコーティングされたレンチベクターを用いて形質導入された、単離したてのヒトPBMCで実施された形質導入効率の結果を示す。
【
図10B】
図8A~
図8Bに示された実験と類似しているが、GFPをコードし、図示されるように、DMSO中で粗PBAE-ジアクリレートを用いて得られた、PBAE-CR3(エントリ3)/PBAE-CH3(エントリ2)(左のバー、濃い灰色)、粗PBAE-ジアクリレートを用いてカップリング後の精製無しで得られた、DMSOを含まないPBAE-CR3/PBAE-CH3(中央のバー、薄い灰色)、または粗PBAE-ジアクリレートおよびカップリング後の精製を用いて得られた、DMSOを含まないPBAE-CR3(エントリ13)/PBAE-CH3(エントリ12)(右のバー、白色)の100/0、60/40、40/60もしくは0/100の混合物でコーティングされたレンチベクターを用いて形質導入された、単離したてのヒトPBMCで実施された細胞生存率の結果を示す。
【
図11A】
図8A~
図8Bに示された実験と類似しているが、GFPをコードし、DMSO中で粗PBAE-ジアクリレートを用いて得られた、PBAE-CR3(エントリ3)/PBAE-CH3(エントリ2)の60/40の混合物、および粗PBAE-ジアクリレートおよびカップリング後の精製を用いて得られた、DMSOを含まないPBAE-CR3(エントリ13)/PBAE-CH3(エントリ12)の60/40の混合物でコーティングされたレンチベクターを用いて形質導入された、単離したてのヒトPBMCで実施された形質導入効率の結果を示す。
【
図11B】
図8A~
図8Bに示された実験と類似しているが、GFPをコードし、DMSO中で粗PBAE-ジアクリレートを用いて得られた、PBAE-CR3(エントリ3)/PBAE-CH3(エントリ2)の60/40の混合物、および粗PBAE-ジアクリレートおよびカップリング後の精製を用いて得られた、DMSOを含まないPBAE-CR3(エントリ13)/PBAE-CH3(エントリ12)の60/40の混合物でコーティングされたレンチベクターを用いて形質導入された、単離したてのヒトPBMCで実施された細胞生存率の結果を示す。本技術の新規合成プロトコルを用いて調製され、水中に再懸濁したての、または-20℃で5週間もしくは15週間、水中で保管したポリマーの生物的性質を、古典的プロトコルを用いてDMSO中で調製されたポリマーと比較する。
【
図12A】
図8A~
図8Bに示された実験と類似しているが、GFPをコードし、DMSO中で粗PBAE-ジアクリレートを用いて得られた、PBAE-CR3(エントリ3)/PBAE-CH3(エントリ2)の60/40の混合物(灰色のバー);粗PBAE-ジアクリレートおよびカップリング後の精製を用いて得られた、DMSOを含まないPBAE-CR3(エントリ13)/PBAE-CH3(エントリ12)の60/40の混合物(右から3番目のバー);精製PBAE-ジアクリレートを用いてカップリング後の精製無しで得られた、DMSOを含まないPBAE-CR3(エントリ16)/PBAE-CH3(エントリ22)の60/40の混合物(右から2番目のバー);精製PBAE-ジアクリレートおよびカップリング後の精製を用いて得られた、DMSOを含まないPBAE-CR3(エントリ17)/PBAE-CH3(エントリ23)の60/40の混合物(最も右のバー)でコーティングされたレンチベクターを用いて形質導入された、単離したてのヒトPBMCで実施された形質導入効率の結果を示す。
【
図12B】
図8A~
図8Bに示された実験と類似しているが、GFPをコードし、DMSO中で粗PBAE-ジアクリレートを用いて得られた、PBAE-CR3(エントリ3)/PBAE-CH3(エントリ2)の60/40の混合物(灰色のバー);粗PBAE-ジアクリレートおよびカップリング後の精製を用いて得られた、DMSOを含まないPBAE-CR3(エントリ13)/PBAE-CH3(エントリ12)の60/40の混合物(右から3番目のバー);精製PBAE-ジアクリレートを用いてカップリング後の精製無しで得られた、DMSOを含まないPBAE-CR3(エントリ16)/PBAE-CH3(エントリ22)の60/40の混合物(右から2番目のバー);精製PBAE-ジアクリレートおよびカップリング後の精製を用いて得られた、DMSOを含まないPBAE-CR3(エントリ17)/PBAE-CH3(エントリ23)の60/40の混合物(最も右のバー)でコーティングされたレンチベクターを用いて形質導入された、単離したてのヒトPBMCで実施された細胞生存率の結果を示す。
【
図13A】
図8A~
図8Bに示された実験と類似しているが、GFPをコードし、DMSO中で粗PBAE-ジアクリレートを用いて得られた、PBAE-CR3(エントリ3)/PBAE-CH3(エントリ2)の60/40の混合物;精製PBAE-ジアクリレートおよびカップリング後の精製を用いて得られた、DMSOを含まないPBAE-CR3(エントリ17)/PBAE-CH3(エントリ23)の60/40の混合物でコーティングされたレンチベクターを用いて実施された形質導入効率の結果を示す。
【
図13B】
図8A~
図8Bに示された実験と類似しているが、GFPをコードし、DMSO中で粗PBAE-ジアクリレートを用いて得られた、PBAE-CR3(エントリ3)/PBAE-CH3(エントリ2)の60/40の混合物;精製PBAE-ジアクリレートおよびカップリング後の精製を用いて得られた、DMSOを含まないPBAE-CR3(エントリ17)/PBAE-CH3(エントリ23)の60/40の混合物でコーティングされたレンチベクターを用いて実施された細胞生存率の結果を示す。各条件について、左のバーは、DMSOを含まない緩衝液中での保管時間0時間を示し、中央のバーは、-20℃でのDMSOを含まない緩衝液中での保管時間2週間を示し、右のバーは、-20℃でのDMSOを含まない緩衝液中での保管時間10週間を示す。新規合成プロトコルを用いて調製され、水中に再懸濁したての、または-20℃で2週間もしくは10週間、水中で保管したポリマーの生物的性質を、古典的プロトコルを用いてDMSO中で調製されたポリマーと比較する。
【
図14A】
図8A~
図8Bに示された実験と類似しているが、GFPをコードし、DMSO中で粗PBAE-ジアクリレートを用いて得られたPBAE-CR3(エントリ3)/PBAE-CH3(エントリ2)の60/40の混合物;精製PBAE-ジアクリレートおよびカップリング後の精製を用いて得られた、DMSOを含まないPBAE-CR3(エントリ17)/PBAE-CH3(エントリ23)の60/40の混合物;精製PBAE-ジアクリレートを用いて得られ、カップリング反応には2倍濃縮ペプチド溶液を使用し、カップリング後の精製を使用した、DMSOを含まないPBAE-CR3(エントリ18)/PBAE-CH3(エントリ23)の60/40の混合物;精製PBAE-ジアクリレートを用いて得られ、カップリング反応には2倍濃縮CRRRペプチド溶液を使用し、エタノール抽出を3回繰り返し、エタノール中に乾燥エタノール抽出物を溶解するカップリング後の精製を使用した、DMSOを含まないPBAE-CR3(エントリ19)/PBAE-CH3(エントリ23)の60/40の混合物;精製PBAE-ジアクリレートを用いて得られ、カップリング反応には2倍濃縮CRRRペプチド溶液を使用し、エタノール抽出を2回繰り返し、エタノール/水(4/1、v/v)中に乾燥エタノール抽出物を溶解するカップリング後の精製を使用した、DMSOを含まないPBAE-CR3(エントリ20)/PBAE-CH3(エントリ23)の60/40の混合物;精製PBAE-ジアクリレートを用いて得られ、カップリング反応には2倍濃縮CRRRペプチド溶液を使用し、エタノール抽出を2回繰り返し、エタノール/水(3/2、v/v)中に乾燥エタノール抽出物を溶解するカップリング後の精製を使用した、DMSOを含まないPBAE-CR3(エントリ21)/PBAE-CH3(エントリ23)の60/40の混合物でコーティングされたレンチベクターを用いて実施された形質導入効率の結果を示す。
【
図14B】
図8A~
図8Bに示された実験と類似しているが、GFPをコードし、DMSO中で粗PBAE-ジアクリレートを用いて得られたPBAE-CR3(エントリ3)/PBAE-CH3(エントリ2)の60/40の混合物;精製PBAE-ジアクリレートおよびカップリング後の精製を用いて得られた、DMSOを含まないPBAE-CR3(エントリ17)/PBAE-CH3(エントリ23)の60/40の混合物;精製PBAE-ジアクリレートを用いて得られ、カップリング反応には2倍濃縮ペプチド溶液を使用し、カップリング後の精製を使用した、DMSOを含まないPBAE-CR3(エントリ18)/PBAE-CH3(エントリ23)の60/40の混合物;精製PBAE-ジアクリレートを用いて得られ、カップリング反応には2倍濃縮CRRRペプチド溶液を使用し、エタノール抽出を3回繰り返し、エタノール中に乾燥エタノール抽出物を溶解させるカップリング後の精製を使用した、DMSOを含まないPBAE-CR3(エントリ19)/PBAE-CH3(エントリ23)の60/40の混合物;精製PBAE-ジアクリレートを用いて得られ、カップリング反応には2倍濃縮CRRRペプチド溶液を使用し、エタノール抽出を2回繰り返し、エタノール/水(4/1、v/v)中に乾燥エタノール抽出物を溶解するカップリング後の精製を使用した、DMSOを含まないPBAE-CR3(エントリ20)/PBAE-CH3(エントリ23)の60/40の混合物;精製PBAE-ジアクリレートを用いて得られ、カップリング反応には2倍濃縮CRRRペプチド溶液を使用し、エタノール抽出を2回繰り返し、エタノール/水(3/2、v/v)中に乾燥エタノール抽出物を溶解するカップリング後の精製を使用した、DMSOを含まないPBAE-CR3(エントリ21)/PBAE-CH3(エントリ23)の60/40の混合物でコーティングされたレンチベクターを用いて実施された細胞生存率の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
詳細な説明
本技術は、反応中に溶媒としてDMSOを使用せずに、末端修飾PBAEまたはオリゴペプチド修飾PBAE(OM-PBAE)を合成する方法を提供する。また、本技術は、合成されたポリマーを含有する組成物、上記組成物を利用する方法、ならびに合成の反応物および生成物の精製方法も提供する。
【0029】
OM-PBAEのDMSOを含まない合成方法は、少なくとも1個の末端アクリレート基を有するPBAEポリマーを、溶媒または溶媒混合物に溶解することを含むことができる。オリゴペプチドなどの末端修飾剤は、上記と同一の溶媒または溶媒混合物に溶解することができるか、または上記可溶性ポリマーと混合される、別の溶液中に提供することができる。末端修飾剤は、反応時間の間、ポリマーとの反応溶液中にあった後、末端修飾剤の少なくとも一部は、ポリマーの末端ビニル炭素と反応し、末端修飾PBAEまたは末端修飾OM-PBAEを形成する。反応は、任意の好適な反応時間、任意の好適な反応温度および圧力で実施されることができる。その他の好適な反応条件は、触媒の使用、電磁放射線(例えばUV/可視光線、マイクロ波)の適用、超音波混合、撹拌、pH、還流またはこれらの任意の組合せなど、所望に応じて選択することができる。反応は、マイケル付加またはその他の反応機構を通して行うことができる。
【0030】
少なくとも1個の末端アクリレート基を含む出発物質のPBAEポリマー、および末端修飾剤は、反応方法のための選択した溶媒または溶媒混合物に、少なくとも部分的に可溶性であるべきである。後述のように、反応性末端ビニル基または末端アクリレート基を有する任意の可溶性ポリマーが、好適な求核試薬を有する末端修飾剤とともに本方法に適用されることができる。例えば、本技術を任意の特定の反応機構に限定することは意図しないが、本明細書の反応は、ビニル基の末端炭素に求核攻撃を行い、合成工程における結合を形成することができる。その他の条件は、この工程の前か後に使用され得る。当該反応の反応速度は、例えば、ゲルまたは粘性の溶媒条件、立体障害効果、温度、基質、粒子または添加剤の利用によって変えることができる。別の例では、末端修飾剤を、保護基、固定基質または粒子に結合していないポリマーまたはPBAEの一端に選択的に結合させるために、末端アクリレート基を含むポリマーまたはPBAEは、保護基とともに、または固定基質もしくは粒子への結合とともに提供され得る。このように、立体効果を本明細書における方法に含めることができる。
【0031】
末端修飾剤はオリゴペプチドであることができる。オリゴペプチドは、ビニル基の末端炭素と、末端炭素の還元によって反応することができる。オリゴペプチドは、求核性の炭素、硫黄、窒素、酸素またはその他の原子を含むことができる。求核試薬は、オリゴペプチドの末端にあることができ、例えばシステイン上のチオールなどである。どの求核試薬が受容体(末端ビニル炭素)に結合するかという決定は、選択された反応条件によって変えることができる。
【0032】
末端修飾PBAEを作る方法は、1段階合成戦略を含むことができ、末端アクリレート基を含むポリマーまたはPBAEの少なくとも一部が、単一の合成工程において末端修飾PBAE、すなわち反応生成物に変換される。例えば、ポリマーの溶液は、本明細書における単一の合成工程で、少なくとも部分的に末端修飾PBAEに変換されてよい。末端修飾PBAEを合成する方法は、末端修飾剤と、末端アクリレート基を含み、末端ビニル炭素を含むポリマーまたはPBAEとを提供することと、PBAEおよび末端修飾剤を溶解させた溶液を形成し、それによって末端修飾剤が末端ビニル炭素に結合し、末端修飾PBAEを形成すること、とを含むことができる。上記溶液は、アセトニトリルとクエン酸水溶液との混合物、またはその他の好適な溶媒もしくは溶媒混合物であることができる。好ましくは、溶媒または溶媒混合物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含まない。好ましくは、溶媒または溶媒混合物は、体積または重量基準で、10%未満、5%未満、2%未満、1%未満、または0.1%未満、またはさらに0.01%未満のDMSO、または0%のDMSOを含有する。溶液が形成された後、1段階合成は、しばらくの時間、混合もしくはその他の条件とともに、またはそれら無しで実施されることができる。末端修飾PBAE形成の後、末端修飾PBAEの単離または精製を、任意の既知の手段によって実施することができる。
【0033】
図7Aは、溶媒としてDMSOを使用して実施される、ペプチドを末端にカップリングさせたPBAEの古典的な合成方法を示す。
図7Aの上部では、主鎖重合によってポリマーが形成される。
図7Aの中央では、ペプチド末端カップリングがDMSO中でなされ、
図7Aの下部では、反応生成物は-20℃でDMSO中に保管される。
図7Bでは、本明細書の、ペプチドが末端にカップリングしたPBAEの、DMSOを含まない合成方法が示されている。黒色の背景に示される精製工程は任意である。
図7Bの中央では、ペプチド末端カップリングがDMSOを含まない反応条件で実施される。アセトニトリル/クエン酸塩溶媒混合物(ACN/クエン酸塩)の使用により、オリゴペプチド修飾PBAE(OM-PBAE)の、DMSOを全く含まない合成が可能となり得る。
【0034】
本明細書に記載される合成方法は、複数工程で実施されることができる。末端アクリレート基を有するPBAEおよび末端修飾剤などの出発物質は、例えば溶解を促進するために、塩として提供されることができる。出発物質は、1段階合成戦略を形成するために、別々の溶液に提供され、混合されることができる。合成後に実施される精製、保管またはその他の方法は、例えば毒性を低減させ、保管安定性を高めるために、またはトランスフェクション効率もしくは形質導入効率を保つもしくは高めるために、さらに有利であり得る。
【0035】
本明細書にて開示される方法または組成物はいずれも、任意の塩の形態、任意の結晶の形態、任意の共結晶の形態、非晶質の形態、任意の多形体の形態またはこれらの組合せで提供される、または保管されることができる。
【0036】
合成が起こるための、反応物および生成物の効果的な可溶化がもたらされるように、異なる溶媒、異なる溶媒混合物、または異なる溶媒の比率の溶解度の比較を実施することができる。溶解度比較の例が
図1(実施例2)で提供される。PBAEジアクリレートおよび末端修飾剤などの出発物質は、塩とともに、または塩無しで試験されることができる。反応生成物は試験されることができる。低い溶解度を有する溶媒または溶媒混合物は、より遅い反応条件を提供することができる。反応速度は所望により変更することができる。以下で実施例2において論じるように、反応溶媒としてのエタノールは、低い反応率を提供し得る。メタノールは分子量の低下をもたらし得る。
【0037】
本明細書にて開示される方法または組成物はいずれも、不活性雰囲気において実施することができる、または反応物もしくは生成物は不活性雰囲気において保管することができる。不活性雰囲気は、副産物、不純物または望ましくないジスルフィド結合の形成を防ぐことができる。不活性雰囲気は、望ましくない結果を防ぐ任意のガス体、例えば真空、窒素、アルゴン、ヘリウム、クリプトン、キセノンおよびラドンであることができる。
【0038】
末端アクリレート基を有するPBAEを溶解でき、さらにオリゴペプチドもまた溶解できる溶媒の例は、クエン酸水溶液(クエン酸塩緩衝液)と組み合わせたアセトニトリル(ACN)である。クエン酸塩緩衝液は、任意の望ましい濃度であることができ、例えば約25ミリモルのクエン酸塩を含有し、約5.0のpHを有することができる。組み合わせる前に体積で測定したACN/クエン酸塩緩衝液の比率は、任意の望ましい比率であることができ、例えば約1:1~約2:1であることができる。この比率は、約1.25:1、約1.5:1、約1.75:1または約2:1であることができる。この比率は約3:2であることができる。PBAEアクリレートをACNに溶解することができ、末端修飾剤をクエン酸塩緩衝液に溶解することができ、続いて2種の溶液を組み合わせることができる。追加のACNを、クエン酸塩緩衝液中の末端修飾剤の溶液に所望により添加し、その後、それをPBAEアクリレートの溶液と組み合わせることができる。所望により添加されるACNの量(水の体積:ACNの体積)は、約1:0.5、約1:1、約1.5:1、約2:1または約2.5:1であることができ、添加されるACNの望ましい量は、例えば温度またはpHに依存し得る。出発物質が混ぜられた後、その他の操作、例えば混合、撹拌、温度変化またはその他の条件の変更をなし得る。末端修飾剤はチオール官能基を含むことができ、反応はC-S-C結合を形成することができる。
【0039】
反応用の出発物質は、反応前に、任意の既知の方法によって精製されることができる。例えば、PBAE-ジアクリレートポリマーは、酢酸エチルへの溶解およびヘプタン中の沈殿によって精製することができる。PBAE-ジアクリレートポリマーまたは末端修飾剤は、逆相、順相、フラッシュ、イオン交換、疎水性相互作用、ゲルろ過、サイズ排除もしくは親水性相互作用(HILIC)クロマトグラフィーなどによって、または透析、凍結乾燥、沈殿、遠心分離、分別または沈降によって精製することができる。
【実施例】
【0040】
実施例1:DMSO中のOM-PBAEの合成、精製およびキャラクタリゼーション-古典的方法。
ポリ(β-アミノエステル)(PBAE)を、Dosta et al.によって記載されているような2段階製法に、わずかな変更を加えて調製した。第1の工程はPBAE-ジアクリレートポリマーの合成であり、第2の工程にはDMSO中のペプチド修飾PBAE(OM-PBAE)の合成が含まれる。
【0041】
PBAE-ジアクリレートポリマーの合成、精製およびキャラクタリゼーション
ポリ(β-アミノエステル)-ジアクリレートポリマーを、付加型の重合を介して、第1級アミンモノマーおよびジアクリレート官能性モノマーを使用して合成した。5-アミノ-1-ペンタノール(Sigma-Aldrich、95.7%の純度、3.9g、36.2mmol)、1-ヘキシルアミン(Sigma-Aldrich、99.9の純度、3.8g、38mmol)および1,4-ブタンジオールジアクリレート(Sigma-Aldrich、89.1%の純度、18g、81mmol)を、第1級アミン基に対するアクリレートのモル比2.2:1で、丸底フラスコ中で混合した。混合物を90℃で20時間撹拌した。次に、反応混合物を室温まで冷却することによって、粗生成物、すなわち薄黄色の粘性の油状物が得られ、さらに使用するまで-20℃で保管した。
【0042】
1H-NMR分光法を使用して構造を確認し、GPCを使用して分子量特性を決定して、合成されたPBAE-ジアクリレートポリマーの特徴付けを行った。5mmのBruker製PABBO BBプローブを備えたBruker 400MHz Avance III NMR分光計中にNMRスペクトルを集め、DMSO-d6を重水素化溶媒として使用した。分子量測定を、GPC SHODEX KF-603カラム(6.0×約150mm)、および移動相としてのTHFおよびRI検出器を備えたWaters HPLCシステムで実施した。ポリスチレン標準により得られた従来の較正曲線を用いて、分子量を決定した。粗PBAE-ジアクリレートポリマーの重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を、それぞれ4900g/molおよび2900g/molと決定した。
【0043】
DMSO中におけるOM-PBAEの合成、精製およびキャラクタリゼーション
OM-PBAEポリマーを、DMSOにおける、2.8:1の比率のチオール/ジアクリレート中のチオール-アクリレートマイケル付加反応を介する、PBAE-ジアクリレートポリマーのペプチド末端修飾によって得た。一例として、トリ-アルギニン修飾PBAEポリマー(PBAE-CR3)の合成を挙げる。粗PBAE-ジアクリレートポリマー(199mg、0.08mmol)をDMSO(1.1mL)中に溶解し、NH2-Cys-Arg-Arg-Arg-COOHペプチド(配列番号4)の塩酸塩(CR3―95%の純度―Ontores Biotechnologies(浙江省、中国)から購入)(168mg、0.23mmol)をDMSO(1mL)中に溶解した。続いて、ポリマー溶液およびペプチド溶液を混合し、温度制御された恒温水槽において、25℃で20時間撹拌した。ペプチド修飾PBAEを20mLのジエチルエーテル/アセトン(7/3、v/v)中で沈殿させ、続いて生成物を7.5mLのジエチルエーテル/アセトン(7/3、v/v)を用いて2回洗浄し、その後、真空乾燥し、得られた生成物を100mg/mLの濃度でDMSO中に再懸濁させ、さらなる使用のために-20℃で保管した。
【0044】
さらに他の例では、DMSO(1.1mL)に溶解した粗PBAE-ジアクリレート(199mg、0.08mmol)の溶液、およびDMSO(1mL)に溶解したNH2-Cys-Lys-Lys-Lys-COOH(配列番号7)(CK3)の塩酸塩(149mg、0.23mmol)の溶液を混合し、その後、PBAE-CR3に対して上述した精製工程を行うことによって、トリ-リシン末端修飾PBAEポリマーを得た。トリ-ヒスチジン末端修飾PBAEポリマー、すなわちPBAE-CH3では、DMSO(1.1mL)中に溶解したPBAE-ジアクリレート(199mg、0.08mmol)の溶液を、DMSO(1.0mL)中に溶解したNH2-Cys-His-His-His-COOH(配列番号1)(CH3)の塩酸塩(154mg、0.23mmol)の溶液と混合した。トリ-アスパルテート末端修飾PBAEポリマー、すなわちPBAE-CD3では、DMSO(1.1mL)中に溶解したPBAE-ジアクリレート(199mg、0.08mmol)の溶液を、DMSO(1mL)中に溶解したNH2-Cys-Asp-Asp-Asp-COOH(配列番号13)(CD3)の塩酸塩(114mg、0.23mmol)の溶液と混合した。最後に、トリ-グルタメート末端修飾PBAEポリマー、すなわちPBAE-CE3では、DMSO(1.1mL)中に溶解したPBAE-ジアクリレート(199mg、0.08mmol)の溶液を、DMSO(1mL)中に溶解したNH2-Cys-Glu-Glu-Glu-COOH(配列番号10)(CE3)の塩酸塩(124mg、0.23mmol)の溶液と混合した。
【0045】
1H-NMR解析で、予想される構造を確認した。さらに、アクリレートの変換率を、残留アクリレートのピーク(5.75~6.5ppm)に対する、出発物質のスペクトルと同じ値に較正されたポリマー主鎖上のCH3プロトン(0.8ppm)の比率から決定した。したがって、アクリレートピークの積分値が6(アクリレート基上のプロトンの数である)になるように割ると、残留アクリレート量が得られた。粗PBAE-ジアクリレートからペプチド修飾PBAEへのマイケル付加反応の効率は、PBAE-CR3:84%、PBAE-CK3:93%、PBAE-CH3:93%、PBAE-CD3:96%、およびPBAE-CE3:98%であると決定された。ただし、すべての場合について、反応の全体的な収率は100%を超えており、これは大過剰の残留DMSOが存在していることを示している(表1)。さらに、それぞれのペプチド修飾PBAE中の残留ペプチド含有量を、BEH C18カラム(130A、1.7μm、2.1×50mm、温度35℃)を備え、0.1%TFA入りのアセトニトリル/水をグラジエントとして使用したUPLC ACQUITYシステム(Waters)による分離後、UV検出(波長220nm)によって定量化した。
【0046】
実施例2:OM-PBAEの新規合成、精製およびキャラクタリゼーション。
PBAE-ジアクリレートポリマーの精製工程の実施
実施例1に記載されているようにPBAE-ジアクリレートポリマーを合成した後、ジクロロメタン/メタノール(12/1、v/v)を移動相として用いた薄層クロマトグラフィー(TLC)によって、反応を監視した。続いて、重合中にアミン官能性モノマーが完全に消費されたことを、ニンヒドリン染色によって確認した。過マンガン酸カリウム(KMnO
4)を用いた追加の染色によって、古典的合成からの粗生成物中に無極性不純物が存在することが示された(
図2、レーン1)。PBAEに関連するすべての科学的および技術的レポートにおいては、粗生成物は、さらに精製されることなく、得られたままで使用されていた。本実施例では、PBAE-ジアクリレートポリマーの精製の性能を試験し、精製PBAE-ジアクリレートの、OM-PBAEの合成および生物活性への作用をさらに試験した。
【0047】
したがって、合成されたPBAE-ジアクリレートポリマーの一部をヘプタン中の沈殿によって精製した。粗生成物を酢酸エチルに溶解し、これを過剰量のヘプタン(1/10、v/v)に滴下して添加し、この手順を2回繰り返した。またはポリマーを酢酸エチルに溶解し、2/1(v/v)の酢酸エチルに対するヘプタンの比率で、ヘプタンを徐々に添加して、ポリマーを沈殿させた。精製PBAE-ジアクリレートポリマーをTLCによって監視し、続いてKMnO
4染色を行った。沈殿による精製後、ほとんどの無極性不純物が除去されたことが、TLCプレートによって示された(
図2、レーン2およびレーン3)。加えて、1/2(v/v)の比率での酢酸エチル/ヘプタンによる精製は、分子量特性に大きく影響するようであった。NMRにより得られた粗生成物の重合度(DP)は7であり、1/2の比率の酢酸エチル/ヘプタンによって精製されるPBAE-ジアクリレートのDPは17であり、1/10の比率の酢酸エチル/ヘプタンによって精製されるPBAE-ジアクリレートのDPは10であった。したがって、1/10(v/v)の比率での酢酸エチル/ヘプタンをPBAE-ジアクリレートの精製のための溶媒系として選択した。酢酸エチル/ヘプタン(1/10、v/v)を用いた精製PBAE-ジアクリレートは86%の収率で得られ、GPCによって、それぞれ5200g/molおよび3300g/molのM
wおよびM
nを有すると特徴付けされた。加えて、古典的方法によって得られた粗PBAE-ジアクリレートおよび精製PBAE-ジアクリレートポリマーのGPC曲線によって、粗生成物のGPCトレース上の低分子量領域の低いピークが、精製後に消え、ピーク分子量が高い値にわずかに移動した(粗ポリマーおよび精製ポリマーに対して、それぞれ4900および5000)ことが示された(
図3Aと
図3Bとの比較)。
【0048】
さらに、物理的外観試験を実施し、機能的細胞アッセイで使用される溶媒系である、pH5.0の25mMクエン酸塩緩衝液において、粗ポリマー対精製PBAE-ジアクリレートポリマーの安定性を測定した。両方のポリマーをクエン酸塩緩衝液に溶解し、25℃にて20時間撹拌した。t=0では、両方のポリマーが可溶であり、澄んだ透明な溶液が得られた。しかしt=20時間では、粗PBAE-ジアクリレートの溶液は濁った。一方で、t=20時間で、精製ポリマーの溶液は透明なままであった(
図4Aおよび
図4Bを参照)。
【0049】
精製PBAE-ジアクリレートを出発物質として使用したOM-PBAEの、DMSO中での合成
OM-PBAEポリマーを、DMSOにおける、2.8:1の比率のチオール/ジアクリレート中のチオール-アクリレートマイケル付加反応を介する、PBAE-ジアクリレートポリマーのペプチド末端修飾によって得た。一例として、トリ-アルギニン修飾PBAEポリマー(PBAE-CR3)の合成を挙げる。精製PBAE-ジアクリレートポリマー(199mg、0.08mmol)をDMSO(1.1mL)中に溶解し、NH2-Cys-Arg-Arg-Arg-COOHペプチド(配列番号4)の塩酸塩(CR3―95%の純度―Ontoresから購入)(168mg、0.23mmol)をDMSO(1mL)中に溶解した。続いて、ポリマー溶液およびペプチド溶液を混合し、温度制御された恒温水浴において、25℃で20時間撹拌した。ペプチド修飾PBAEを20mLのジエチルエーテル/アセトン(7/3、v/v)中で沈殿させ、続いて生成物を7.5mLのジエチルエーテル/アセトン(7/3、v/v)を用いて2回洗浄し、その後、真空乾燥し、得られた生成物を100mg/mLの濃度でDMSO中に再懸濁させ、さらなる使用のために-20℃で保管した。
【0050】
さらに他の例では、DMSO(1.1mL)に溶解した精製PBAE-ジアクリレート(199mg、0.08mmol)の溶液、およびDMSO(1mL)に溶解したNH2-Cys-Lys-Lys-Lys-COOH(配列番号7)(CK3)の塩酸塩(149mg、0.23mmol)の溶液を混合し、その後、上述したPBAE-CR3での精製工程を行うことによって、トリ-リシン末端修飾PBAEポリマーを得た。トリ-ヒスチジン末端修飾PBAEポリマー、すなわちPBAE-CH3では、DMSO(1.1mL)中に溶解した精製PBAE-ジアクリレート(199mg、0.08mmol)の溶液を、DMSO(1.0mL)中に溶解したNH2-Cys-His-His-His-COOH(配列番号1)(CH3)の塩酸塩(154mg、0.23mmol)の溶液と混合した。トリ-アスパルテート末端修飾PBAEポリマー、すなわちPBAE-CD3では、DMSO(1.1mL)中に溶解した精製PBAE-ジアクリレート(199mg、0.08mmol)の溶液を、DMSO(1mL)中に溶解したNH2-Cys-Asp-Asp-Asp-COOH(配列番号13)(CD3)の塩酸塩(114mg、0.23mmol)の溶液と混合した。最後に、トリ-グルタメート末端修飾PBAEポリマー、すなわちPBAE-CE3では、DMSO(1.1mL)中に溶解したPBAE-ジアクリレート(199mg、0.08mmol)の溶液を、DMSO(1mL)中に溶解したNH2-Cys-Glu-Glu-Glu-COOH(配列番号10)(CE3)の塩酸塩(124mg、0.23mmol)の溶液と混合した。
【0051】
1H-NMR解析で、予想される構造を確認した。さらに、アクリレートの変換率を、残留アクリレートのピーク(5.75~6.5ppm)に対する、出発物質のスペクトルと同じ値に較正されたポリマー主鎖上のCH3プロトン(0.8ppm)の比率から決定した。したがって、アクリレートピークの積分値が6(アクリレート基上のプロトンの数である)になるように割ると、残留アクリレート量が得られた。精製PBAE-ジアクリレートを使用したペプチド修飾PBAEのマイケル付加反応の効率は、PBAE-CR3:92%、PBAE-CK3:98%、PBAE-CH3:94%、PBAE-CD3:96%、およびPBAE-CE3:>95%であると報告された。表1は、PBAE-ジアクリレートの合成において実施された精製工程が、マイケル付加反応の効率に負の影響を与えず、むしろ出発物質として精製された主鎖を使用することで、特に塩基性ペプチド(CK3、CH3およびCR3(表1、エントリ6、7および8)でのアクリレート変換率をさらに高めたことを示す。
【0052】
【0053】
OM-PBAEのDMSOを含まない合成のための新たな溶媒系の選別
ペプチド修飾PBAEの、DMSOを含まない合成をさらに試みるために、溶解度試験を実施し、PBAE-ジアクリレート、テトラペプチド塩酸塩およびOM-PBAEの共通の溶媒を決定した。試験する化合物を、10~20mg/mLの濃度で異なる溶媒に溶解し、25℃にて1時間保温静置した後、溶液の巨視的外観を視覚的に確認した。
図1に示されるPBAE-ジアクリレート、ペプチドおよびOM-PBAEの溶解度に基づいて、3種の異なる溶媒系(メタノール、エタノールおよびアセトニトリル/クエン酸塩(25mM、pH5.0)(3/2、v/v)を選択した。
【0054】
メタノール、エタノールおよびアセトニトリル/クエン酸塩(25mM、pH5.0)(3/2、v/v)におけるPBAE-ジアクリレートの安定性
最初に、メタノール(100mg/mL)、エタノール(100mg/mL)およびアセトニトリル/クエン酸塩(25mM、pH5.0)(3/2、v/v)(50mg/mL)中にPBAE-ジアクリレートポリマーを溶解し、25℃にて20時間保温静置した。減圧下でのロータリーエバポレーターによって、すべての残留溶媒を除去した後、PBAE-ジアクリレートポリマーの分子量を、GPC SHODEX KF-603カラム(6.0×約150mm)、移動相としてのTHF、および屈折率(RI)検出器を備えたWaters HPLCシステムを用いるGPCシステムによって決定した。ポリスチレン標準により得られた従来の較正曲線を用いて、分子量を算出した。エタノールおよびアセトニトリル/クエン酸塩(25mM、pH5.0)(3/2、v/v)中で保温静置したPBAE-ジアクリレートは、分子量に大きな変化を示さなかった(エタノールでの保温静置前:Mw=5600g/mol、Mn=3400g/mol、エタノールでの保温静置後:Mw=5700g/mol、Mn=3400g/mol、アセトニトリル/クエン酸塩での保温静置前:Mw=7000g/mol、Mn=3800g/mol、アセトニトリル/クエン酸塩での保温静置後:Mw=6300g/mol、Mn=3400g/mol)。一方で、メタノールでの保温静置は分子量を大きく低下させた(メタノールでの保温静置前:Mw=5200g/mol、Mn=3300g/mol、メタノールでの保温静置後:Mw=2700g/mol、Mn=1800g/mol)。したがって、メタノールは使用可能な反応溶媒として選択しなかった。
【0055】
エタノールにおける、OM-PBAEのDMSOを含まない合成
OM-PBAEポリマーを、エタノールにおいて、2.8:1の比率のチオール/ジアクリレートでのチオール-アクリレートマイケル付加反応を介する、PBAE-ジアクリレートポリマーのペプチド末端修飾によって調製した。一例として、トリ-アルギニン修飾PBAEポリマー(PBAE-CR3)の合成を挙げる。粗PBAE-ジアクリレートポリマー(199mg、0.08mmol)をエタノール(2mL)中に溶解し、NH2-Cys-Arg-Arg-Arg-COOHペプチド(配列番号4)の塩酸塩(CR3―95%の純度―Ontoresから購入)(168mg、0.23mmol)をエタノール(2mL)中に溶解した。続いて、ポリマーおよびペプチドの溶液を混合し、それによって懸濁液を形成した。得られた懸濁液を25℃で1日撹拌し、続いて、反応混合物を11mLの追加のエタノールを用いて希釈(最終的な体積は25mLであった)し、遠心分離にかけた。得られたペレットを、7.5mLのエタノールを用いて2回抽出し、エタノール抽出物を乾燥させ、1H-NMRによって分析し、残留アクリレートピーク(5.75~6.5ppm)に対するポリマー主鎖上のCH3プロトン(0.8ppm)の比率から、アクリレート変換効率を算出した。CK3、CH3およびCD3ペプチドでも同一の手順を行った。試験したすべてのペプチドで、マイケル付加反応の効率は30%未満であったため、エタノールは低い反応率を有する反応溶媒であることが示された。
【0056】
アセトニトリル/クエン酸塩(25mM、pH5.0)(3/2、v/v)における、カップリング後の精製工程を用いた、OM-PBAEのDMSOを含まない合成
OM-PBAEポリマーを、アセトニトリル/クエン酸塩(25mM、pH5.0)(3/2、v/v)における、2.8:1の比率のチオール/ジアクリレートでのチオール-アクリレートマイケル付加反応を介する、PBAE-ジアクリレートポリマーのペプチド末端修飾によって得た。使用したのは、粗PBAE-ジアクリレートであった。一例として、トリ-アルギニン修飾PBAEポリマー(PBAE-CR3)の合成を挙げる。粗PBAE-ジアクリレートポリマー(199mg、0.08mmol)をアセトニトリル(2mL)中に溶解し、NH2-Cys-Arg-Arg-Arg-COOHペプチド(配列番号4)の塩酸塩(CR3―95%の純度―Ontoresから購入)(168mg、0.23mmol)を、pH5.0の25mMクエン酸塩緩衝液(4mL)中に溶解した。ペプチドが完全に溶解した後、4mLのアセトニトリルをペプチド溶液に添加した。続いて、ポリマー溶液をペプチド溶液に添加し、温度制御された恒温水槽において25℃で20時間撹拌した。続いて、すべての溶媒を、減圧下、40℃で蒸発させた。古典的プロトコルのさらなる改善として、抽出工程を追加し、最終生成物から未反応のテトラペプチド塩およびその他の副産物を除去した。得られたペレットを、10mLのエタノールを用いて2回抽出した。エタノール抽出物を乾燥させた。得られた生成物を5mLのエタノール中に再溶解し、20mLのジエチルエーテル/アセトン(7/3、v/v)中で沈殿させた。続いて、生成物を7.5mLのジエチルエーテル/アセトン(7/3、v/v)を用いて2回洗浄し、その後真空乾燥し、さらなる使用のために-20℃で保管した。
【0057】
さらに他の例では、アセトニトリル(2mL)に溶解した粗PBAE-ジアクリレート(199mg、0.08mmol)の溶液、およびpH5.0の25mMクエン酸塩緩衝液(4mL)に溶解したNH2-Cys-Lys-Lys-Lys-COOH(CK3)(配列番号7)の塩酸塩(149mg、0.23mmol)を混合することによって、トリ-リシン末端修飾PBAEポリマーを得た。ペプチドが完全に溶解した後、4mLのアセトニトリルをペプチド溶液に添加した。続いて、アセトニトリル中のポリマー溶液を、アセトニトリル/クエン酸塩(25mM、pH5.0)(1/1、v/v)中のペプチド溶液に添加し、室温で20時間撹拌した。PBAE-CR3で上述したような、精製工程を行った。トリ-ヒスチジン末端修飾PBAEポリマー、すなわちPBAE-CH3では、アセトニトリル(2mL)中に溶解したPBAE-ジアクリレート(199mg、0.08mmol)の溶液を、アセトニトリル/クエン酸塩(25mM、pH5.0)(1/1、v/v)(8mL)中のNH2-Cys-His-His-His-COOH(配列番号1)(CH3)塩酸塩(154mg、0.23mmol)の溶液と混合した。トリ-アスパルテート末端修飾PBAEポリマー、すなわちPBAE-CD3では、アセトニトリル(2mL)中に溶解したPBAE-ジアクリレート(199mg、0.08mmol)の溶液を、アセトニトリル/クエン酸塩(25mM、pH5.0)(1/1、v/v)(8mL)中のNH2-Cys-Asp-Asp-Asp-COOH(配列番号13)(CD3)塩酸塩(114mg、0.23mmol)の溶液と混合した。最後に、トリ-グルタメート末端修飾PBAEポリマー、すなわちPBAE-CE3では、アセトニトリル(2mL)中に溶解したPBAE-ジアクリレート(199mg、0.08mmol)の溶液を、アセトニトリル/クエン酸塩(25mM、pH5.0)(1/1、v/v)(8mL)中のNH2-Cys-Glu-Glu-Glu-COOH(配列番号13)(CE3)塩酸塩(124mg、0.23mmol)の溶液と混合した。PBAE-CD3およびPBAE-CE3では、PBAE-CD3およびPBAE-CE3の溶解度特性が異なるため、上記のPBAE-CR3、PBAE-CH3およびPBAE-CK3の反応後の精製プロトコルとはわずかに異なる反応後の精製プロトコルを適用した。得られたポリマーを水(1mL)に溶解し、エタノール(10mL)中で2回沈殿させ、真空下にてさらに乾燥させ、さらなる使用のために-20℃で固体の状態で保管した。
【0058】
1H-NMR解析を使用して、予想される構造を確認した。加えて、アクリレート変換率を、残留アクリレートピーク(5.75~6.5ppm)に対するポリマー主鎖上のCH
3プロトン(0.8ppm)の比率から決定した(
図5、PBAE-CR3の典型的なNMRスペクトル)。粗PBAE-ジアクリレートからのペプチド修飾PBAEでのアクリレート変換率は、PBAE-CR3:78%、PBAE-CK3:93%、PBAE-CH3:86%、PBAE-CD3:100%およびPBAE-CE3:100%であると決定された。DMSO中のOM-PBAE合成、およびDMSOを含まない条件でのOM-PBAE合成の総括的結果を表2に示す。
【0059】
それぞれのペプチド修飾PBAE中の残留ペプチド含有量を、BEH C18カラム(130A、1.7μm、2.1×50mm、温度35℃)を備え、0.1%TFA入りのアセトニトリル/水をグラジエントとして使用したUPLC ACQUITYシステム(Waters)による分離後、UV検出(波長220nm)によって定量化した。
【0060】
【0061】
アセトニトリル/クエン酸塩(25mM、pH5.0)(3/2、v/v)における、精製PBAE-ジアクリレートを用いた、反応後の精製工程を含む、OM-PBAEのDMSOを含まない合成
OM-PBAEポリマーを、アセトニトリル/クエン酸塩(25mM、pH5.0)(3/2、v/v)における、2.8:1の比率のチオール/ジアクリレートでのチオール-アクリレートマイケル付加反応を介する、PBAE-ジアクリレートポリマーのペプチド末端修飾によって得た。使用したのは、精製PBAE-ジアクリレートであった。一例として、トリ-アルギニン修飾PBAEポリマー(PBAE-CR3)の合成を挙げる。精製PBAE-ジアクリレートポリマー(199mg、0.08mmol)をアセトニトリル(2mL)中に溶解し、NH2-Cys-Arg-Arg-Arg-COOHペプチド(配列番号4)の塩酸塩(CR3―95%の純度―Ontoresから購入)(168mg、0.23mmol)を、pH5.0の25mMクエン酸塩緩衝液中に溶解した。ペプチドが完全に溶解した後、4mLのアセトニトリルをペプチド溶液に添加した。続いて、ポリマー溶液をペプチド溶液に添加し、温度制御された恒温水槽において25℃で20時間撹拌した。続いて、すべての溶媒を、減圧下、40℃で蒸発させた。得られたペレットを、10mLのエタノールを用いて2回抽出した。エタノール抽出物を乾燥させた。得られた生成物を5mLのエタノール中に再溶解し、20mLのジエチルエーテル/アセトン(7/3、v/v)中で沈殿させた。続いて、生成物を7.5mLのジエチルエーテル/アセトン(7/3、v/v)を用いて2回洗浄し、その後真空乾燥し、さらなる使用のために-20℃で保管した。
【0062】
さらに他の例では、トリ-ヒスチジン末端修飾PBAEポリマー、すなわちPBAE-CH3では、アセトニトリル(2mL)中に溶解したPBAE-ジアクリレート(199mg、0.08mmol)の溶液を、アセトニトリル/クエン酸塩(25mM、pH5.0)(1/1、v/v)(8mL)中のNH2-Cys-His-His-His-COOH(配列番号1)(CH3)塩酸塩(154mg、0.23mmol)の溶液と混合した。PBAE-CR3で記載されているのと同様の精製プロトコルを行った。
【0063】
1H-NMRを使用して、アセトニトリル/クエン酸塩(25mM、pH5.0)(3/2、v/v)におけるマイケル付加反応の効率を決定した。アクリレート変換率を、残留アクリレートピーク(5.75~6.5ppm)に対するポリマー主鎖上のCH3プロトン(0.8ppm)の比率から決定した。精製PBAE-ジアクリレートからのペプチド修飾PBAEでのアクリレート変換率は、PBAE-CR3:85%およびPBAE-CH3:95%であると決定された。
【0064】
アセトニトリル/クエン酸塩(25mM、pH5.0)(3/2、v/v)における、精製PBAE-ジアクリレートおよび2倍濃縮ペプチド溶液を用いた、カップリング後の精製工程を含む、OM-PBAEのDMSOを含まない合成
合成のさらなる開発は、CRRRペプチド末端修飾工程の間のアクリレート変換効率を高めること、および完全に変換されたOM-PBAEから、結合しなかったPBAE-ジアクリレート副生成物を分離する抽出/精製条件を見いだすことで構成された。OM-PBAEポリマーを、アセトニトリル/クエン酸塩(25mM、pH5.0)(3/2、v/v)における、2.8:1の比率のチオール/ジアクリレートでのチオール-アクリレートマイケル付加反応を介する、PBAE-ジアクリレートポリマーのペプチド末端修飾によって得た。精製PBAE-ジアクリレートおよび2倍濃縮ペプチド溶液を使用して、反応体積を低減させ、アクリレートの変換への反応を促進した。一例として、トリ-アルギニン修飾PBAEポリマー(PBAE-CR3)の合成を挙げる。精製PBAE-ジアクリレートポリマー(199mg、0.08mmol)をアセトニトリル(1mL)中に溶解し、NH2-Cys-Arg-Arg-Arg-COOHペプチド(配列番号4)の塩酸塩(CR3―95%の純度―Ontoresから購入)(168mg、0.23mmol)を、pH5.0の25mMクエン酸塩緩衝液中に溶解した。ペプチドが完全に溶解した後、4mLのアセトニトリルをペプチド溶液に添加した。続いて、ポリマー溶液をペプチド溶液に添加し、温度制御された恒温水槽において25℃で20時間撹拌した。続いて、すべての溶媒を、減圧下、40℃で蒸発させた。得られたペレットを、10mLのエタノールを用いて2回抽出した。エタノール抽出物を乾燥させた。乾燥した残部を5mLのエタノール中に再溶解し、20mLのジエチルエーテル/アセトン(7/3、v/v)中で沈殿させた。続いて、生成物を7.5mLのジエチルエーテル/アセトン(7/3、v/v)を用いて2回洗浄し、その後真空乾燥し、さらなる使用のために-20℃で保管した(エントリ18)。あるいは、ペレットを15mLのエタノールを用いて3回抽出し、エタノール抽出物を混ぜ合わせ、乾燥させた。乾燥した残部に5mLのエタノールを溶解し、その後20mLのジエチルエーテル/アセトン(7/3、v/v)中で沈殿させた(エントリ19)。ii)ペレットを10mLのエタノールを用いて2回抽出し、エタノール抽出物を混ぜ合わせ、乾燥させた。乾燥した残部に5mLのエタノール/水(4/1、v/v)を溶解し、その後20mLのジエチルエーテル/アセトン(7/3、v/v)中で沈殿させた(エントリ20)。または、iii)上記の条件で5mLのエタノール/水(3/2、v/v)を使用した(エントリ21)。
【0065】
1H-NMRを使用して、構造を確認し、アセトニトリル/クエン酸塩(25mM、pH5.0)(3/2、v/v)におけるマイケル付加反応の効率を決定した。アクリレート変換率を、残留アクリレートピーク(5.75~6.5ppm)に対するポリマー主鎖上のCH
3プロトン(0.8ppm)の比率から決定した(
図6)。精製PBAE-ジアクリレートおよび濃縮反応混合物からのペプチド修飾PBAEでのアクリレート変換率は、PBAE-CR3:>90%であると決定された。さらに、異なる条件下での、PBAE-CR3およびPBAE-CH3のDMSOを含まない合成および精製の概要を表3に示す。2倍濃縮ペプチド溶液の使用によりアクリレート変換率が90%以上改善された場合、精製工程が多くなるほど、全体的な反応収率は低くなった。
【0066】
【0067】
OM-PBAEの、DMSOを含まない、1g規模での合成
OM-PBAEの1g規模での合成を、表3、エントリ18に記載されるように、アセトニトリル/クエン酸塩(25mM、pH5.0)(3/2、v/v)において、精製PBAE-ジアクリレート前駆体ポリマーおよび2倍濃縮ペプチド溶液を使用して実施した。エントリ18に記載されるプロトコルに加えて、反応媒体中のジスルフィド形成を防ぐために、反応中、不活性窒素(N2)雰囲気を適用した。一例として、トリ-アルギニン修飾PBAEポリマー(PBAE-CR3)の合成を挙げた。精製PBAE-ジアクリレートポリマー(1999mg、0.624mmol)をアセトニトリル(20ml)中に溶解し、NH2-Cys-Asp-Asp-Asp-COOHペプチド(配列番号4)の塩酸塩(CR3―97%の純度―Ontoresから購入)(1684mg、2.3mmol)を、クエン酸塩緩衝液(25mM、pH5.0)(20ml)中に溶解し、ペプチドを完全に溶解させた後、10mlのアセトニトリルを添加した。続いて、アセトニトリル中のポリマー溶液を、クエン酸塩(25mM、pH5.0)/アセトニトリル(2/1、v/v)中のペプチド溶液に添加し、25℃に温度制御された恒温水槽において、N2雰囲気下にて20時間撹拌した。続いて、すべての溶媒を、減圧下、40℃で蒸発させた。得られたペレットを、100mlのエタノールを用いて2回抽出した。エタノール抽出物を乾燥させた。乾燥した残部を50mLのエタノール中に再溶解させ、200mlのジエチルエーテル/アセトン(7/3、v/v)中で沈殿させた。続いて、生成物を75mlのジエチルエーテル/アセトン(7/3、v/v)を用いて2回洗浄した。残留有機溶媒を真空下で除去し、さらに凍結乾燥によって37%(wt%)の収率を有する最終生成物を得て、さらなる使用のために-20℃で保管した。残りの1gの規模でのPBAE-CR3の特性を表4、エントリ24に示す。
【0068】
トリ-ヒスチジン末端修飾PBAEポリマー(PBAE-CH3)に対しては、精製PBAE-ジアクリレートポリマー(1999mg、0.624mmol)をアセトニトリル(20ml)中に溶解し、NH2-Cys-His-His-His-COOHペプチドの塩酸塩(CH3―98%の純度―Ontoresから購入)(1.538mg、2.3mmol)を、pH5.0の25mMクエン酸塩緩衝液20ml中に溶解した。CH3ペプチドが完全に溶解した後、10mLのアセトニトリルを添加した。続いて、アセトニトリル中のポリマー溶液を、アセトニトリル/クエン酸塩(25mM、pH5.0)(2/1、v/v)中のペプチド溶液に添加し、25℃に温度制御された恒温水槽において、不活性N2雰囲気下にて20時間撹拌した。続いて、すべての溶媒を、減圧下、40℃で蒸発させた。得られたペレットを、100mlのエタノールを用いて2回抽出した。エタノール抽出物を乾燥させた。乾燥した残部を50mLのエタノール中に再溶解させ、200mlのジエチルエーテル/アセトン(7/3、v/v)中で沈殿させた。続いて、生成物を75mlのジエチルエーテル/アセトン(7/3、v/v)を用いて2回洗浄した。残留有機溶媒を真空下で除去し、さらに45.3%(wt%)の収率を有する最終生成物を得て、さらなる使用のために-20℃で保管した。残りの1gの規模でのPBAE-CH3の特性を表4、エントリ25に示す。
【0069】
同一手順を使用してトリ-グルタミン酸末端修飾PBAEポリマー(PBAE-CE3)の合成を実施した。すなわち、精製PBAE-ジアクリレートポリマー(3668mg、1.0mmol)をアセトニトリル(24ml)中に溶解し、NH2-Cys-Glu-Glu-Glu-COOHペプチド(配列番号10)の塩酸塩(CE3―97%の純度―Ontoresから購入)(1516mg、2.78mmol)を、pH5.0の25mMクエン酸塩緩衝液48ml中に溶解した。ペプチドが完全に溶解した後、48mlのアセトニトリルをペプチド溶液に添加した。続いて、アセトニトリル中のポリマー溶液を、アセトニトリル/クエン酸塩(25mM、pH5.0)(1/1、v/v)中のペプチド溶液に添加し、25℃に温度制御された恒温水槽において、不活性N2雰囲気下にて20時間撹拌した。続いて、すべての溶媒を、減圧下、40℃で蒸発させた。負に帯電したオリゴペプチドを用いて実施される小規模反応(エントリ14および15)と比較して、未反応のペプチドのより良好な除去を達成するために、PBAE-CE3の精製を変更して、溶離液としてpH7.2の水を使用するSephadex PD Miditrap G-10サイズ排除カラム上に反応生成物を適用した。続いて、回収したポリマー部分を混合、凍結乾燥し、さらなる使用のために-20℃で保管した。CE3-PBAEの設計を表5、エントリ26に示す。
【0070】
【0071】
実施例3:ポリマーコーティングしたレンチウイルスベクター製造のためのOM-PBAEの使用。
上記の異なるプロトコルによって合成したOM-PBAEの機能特性を、細胞形質導入研究にて使用するための、ポリマーコーティングしたレンチウイルスベクターを形成する能力に基づいて評価した。以下の原料および方法を使用して、ポリマーコーティングしたレンチウイルスベクターを調製した。
【0072】
原料
トランスファーベクタープラスミドは、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子を有するpARA-CMV-GFPであった。カナマイシン耐性プラスミドは、プロウイルス(HIV-1、NL4-3株由来の非病原性、非複製性の組換えプロウイルスDNA)をコードし、その中に発現カセットがクローニングされた。インサートには、導入遺伝子、導入遺伝子発現のためのプロモーター、および導入遺伝子発現を高め、レンチウイルスベクターが、非有糸分裂の細胞を含むすべての細胞種を形質導入できるようにするために追加された配列が含有された。プロモーターは、ヒトユビキチンプロモーターまたはCMVプロモーターであった。これらはいかなるエンハンサー配列も欠いており、高いレベルで遍在的に遺伝子発現を促進した。非コード配列および発現シグナルは、5´LTR(U3-R-U5)では全体的なシス活性エレメントを有し、3´LTRではこのエレメントが削除され、それゆえプロモーター域(ΔU3-R-U5)を欠いている長い末端反復配列(LTR)に相当した。転写および組込み実験のために、カプシド形成配列(SDおよび5´Gag)、ベクターの核トランスロケーションのためのセントラルポリプリントラクト/Central Termination Site、およびBGHポリアデニル化部位を加えた。
【0073】
パッケージングプラスミドは、pARA-Packであった。カナマイシン耐性プラスミドは、レンチウイルスプロウイルスのカプシド形成のトランスのために使用される、構造レンチウイルスのタンパク質(GAG、POL、TATおよびRev)をコードした。コード配列は、構造タンパク質(マトリックスMA、カプシドCAおよびヌクレオカプシドNC)、酵素タンパク質(プロテアーゼPR、インテグラーゼINおよび逆転写酵素RT)、ならびに制御タンパク質(TATおよびRev)をコードする、ポリシストロン性遺伝子であるgag-pol-tat-revに相当した。非コード配列および発現シグナルは、転写開始のためのCMVからの最小プロモーター、転写終結のためのインシュリン遺伝子からのポリアデニル化シグナル、パッケージングRNAの核外移行に関与するHIV-1 Rev応答配列(RRE)に相当した。
【0074】
VSV-G-(「禿(Bald)」)レンチウイルスベクター粒子の製造
2つの3000mLエルレンマイヤーフラスコ(Corning)中、1000mLのLVmax Production Medium(Gibco Invitrogen)において、LV293細胞を5×105細胞/mLで播種した。2つのエルレンマイヤーフラスコを、37℃、65rpmで、加湿した8%のCO2の下でインキュベートした。播種の翌日、一過性トランスフェクションを行った。PEIProトランスフェクタント試薬(PolyPlus Transfection、イルキルシュ、フランス)を、トランスファーベクタープラスミドpARA-CMV-GFPおよびパッケージングプラスミド(pARA-パック)と混合した。室温でのインキュベーション後、PEIPro/プラスミド混合物を細胞株に滴下し、37℃、65rpmで、加湿した8%のCO2の下でインキュベートした。3日目に、レンチベクターの産生を、5mMの最終濃度の酪酸ナトリウムによって刺激した。バルク混合物を、37℃、65rpmで、加湿した8%のCO2の下で24時間インキュベートした。5μmおよび0.5μmの深層ろ過(Pall Corporation)による清澄化の後、清澄化されたバルク混合物を、DNA分解酵素処置のために、室温で1時間インキュベートした。
【0075】
Q mustangメンブレン(Pall Corporation)でのクロマトグラフィーによってレンチベクター精製を実施し、NaClグラジエントによって溶出させた。100kDaのHYDROSORTメンブレン(Sartorius)でタンジェンシャルフローろ過を実施し、それによって体積を低下させ、pH7の特定の緩衝液中で製剤化して、少なくとも2年の安定性を確保することが可能となった。0.22μmでのろ過滅菌法(Millipore)の後、バルク医薬製品を1ml未満の量で2mLのガラスバイアル中に充填し、続いて標識化し、<-70℃で凍結および保管した。
【0076】
禿(bald)LV数を、物理的な力価定量化によって評価した。HIV-1 p24コアタンパク質に関連するレンチウイルス(Cell Biolabs Inc.)のみの検出および定量化によってアッセイを実施した。試料の前処理によって、破壊されたレンチベクターと遊離p24との区別が可能となる。物理的力価、粒子分布および粒子寸法を、調節可能抵抗パルスセンサ(TRP)技術(qNano instrument、Izon Science、オックスフォード、英国)によって測定した。NP150ナノポア、110nmのキャリブレーションビーズおよび44~47mmの膜を使用した。IZON Control Suiteソフトウエアを使用して、結果を決定した。
【0077】
オリゴペプチド修飾PBAEを用いた、禿(Bald)のレンチウイルスベクターのコーティング
禿(bald)のレンチウイルスベクター(8×109レンチウイルス粒子)のコーティングを、レンチウイルスベクター粒子当たり109のポリマー分子の比率で、以下の通り実施した。禿(bald)のレンチウイルスベクターを、pH5.4の25mMクエン酸塩緩衝液中に希釈し、複製当たり75μlの最終体積で調製した。PBAEポリマーを、同一の緩衝液中(複製当たり75μL)に希釈し、均質化のために2秒ボルテックスした。希釈したベクターに希釈したポリマーを1:1の比率(v/v)で添加し、混合物を10秒間静かにボルテックスし、室温において10分間インキュベートした。最後に、等容積の培養液(150μl)をコーティングした粒子に添加し、その後細胞に移した。
【0078】
実施例4:ポリマーコーティングしたレンチウイルスベクターによる、ヒトリンパ球の形質導入。
OM-PBAEは、真核細胞に遺伝物質(プラスミドまたはその他の核酸分子)を送達できるポリマーカプセル化ビークルを形成するトランスフェクション剤として、すでに記載されている(米国特許出願公開第2016/0145348号明細書、Mangraviti et al.2015、Anderson et al.2004、国際公開第2016/116887号)。ここでは、OM-PBAEを使用して、形質導入欠損レンチウイルスベクターをコーティングし、ヒト細胞がリポーター遺伝子(GFPおよびmCherry)ならびにキメラ抗原受容体(CAR)などの各種の導入遺伝子を安定して発現するように設計した(国際公開第2019145796号)。
【0079】
異なる合成プロトコルを用いて得られたOM-PBAEの特性を比較するために、ポリマーコーティングした、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするレンチウイルスベクターを用いたインビトロのアッセイを実施し、合成および精製プロトコルを変更した際の、ヒトリンパ球の形質導入効率への影響、および細胞生存率への影響を評価した。カプセル化実験に使用されたポリマーは、帯電したペプチドと複合化されたポリ(β-アミノエステル)(PBAE)であった。ポリマーPBAE-CR3は、ペプチドCRRR(配列番号4)と複合化されたPBAE(両端に同一のペプチド)を意味する。PBAE-CH3ポリマーは、ペプチドCHHH(配列番号1)と複合化されたPBAEを意味する。これらのOM-PBAEの60/40v/vおよび40/60v/vの比率での混合物も同様に試験した。
【0080】
調製したての末梢血単核細胞(PBMC)は、健康なドナー(Etablissement Francais du Sang、Division Rhones-Alpes)から入手したバフィーコートから分離された。血液をDPBSで希釈した後、PBMCをFICOLL密度勾配(GE Healthcare)で分離し、DPBSで2回洗浄し、再懸濁して目的の細胞密度を得て、10%FBS(Gibco Invitrogen)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco Invitrogen)を37℃、5%CO2で補充した、RPMI-1640培地(Gibco Invitrogen)中で培養した。インビトロのアッセイはまた、健康なドナーからの凍結ヒトリンパ球調製物(Etablissement Francais du Sang, Division Rhones-Alpes)を用いても実施され、PBMCと同一の条件下で培養した。
【0081】
ヒトPBMCおよびリンパ球調製物を、24ウエルプレートに、ウエル当たり105の細胞密度で、10%FBSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するRPMI培地に播種した。300μLのカプセル化されたベクターを細胞に添加した。37℃、CO25%での2時間のインキュベーション後、500μLの新鮮な完全培地をそれぞれのウエルに添加した。GFPを発現する細胞の率を、形質導入の72時間後に、BL1チャネルを使用したAttune NxTフローサイトメーターを用いて決定した。GFP導入遺伝子を発現する、形質導入された細胞の表現型を、製造業者(BD Biosciences)の説明書に従って、以下の細胞種、CD3(Tリンパ球)およびCD19(Bリンパ球)に特異的な抗体を用いたフローサイトメトリー染色によって決定した。細胞生存率を、形質導入の72時間後に、Attune NxTフローサイトメーター(Thermo Fisher)によって、前方散乱×側方散乱ゲーティングした個体群における、凝集体および細胞片を除外したシングレットの生細胞をカウントすることによって決定した。すべての条件を、独立して3回試験した。
【0082】
最初に、古典的プロトコルによって合成されたPBAE-CH3およびPBAE-CR3の異なる混合物(エントリ2および3)、またはペプチドカップリングの前に1/10のEtOAc/ヘプタン沈殿が行われたPBAE-CH3およびPBAE-CR3の異なる混合物(エントリ7および8)の生物的性質への、PBAE-ジアクリレートの精製による影響を研究した。このような実験系では、「禿(bald)のLV」(LV)は、VSV-Gタンパク質を欠いているため形質導入を行うことができないが、それらはGFP陽性リンパ球をもたらすOM-PBAEポリマーによるカプセル化の後、形質導入できるようになる。非形質導入細胞(NT)を有する別の対照が、実験の間のGFP発現のバックグラウンドレベル、培地構成成分の自己蛍光および細胞生存率を観察するために含まれる。
【0083】
図8Aおよび
図8Bにて示すように、PBAE精製に由来するポリマーと、古典的プロトコルのような未処理のポリマーとの間に、形質導入効率および細胞毒性の差は観察されなかった。PBAE-ジアクリレート精製により、ポリマーコーティングしたレンチウイルスベクターによって形質導入されたリンパ球亜群の分布が変化することはなかった(
図8C~
図8J参照)。凍結ヒトリンパ球から調製した細胞が、調製したてのPBMCによって置き換えられた場合も、同じ結果が得られた(
図9Aおよび
図9B)。
【0084】
次の工程として、オリゴペプチド末端カップリング反応の間、DMSOをアセトニトリル/クエン酸塩によって置き換えたことによる影響を研究し、ここでも未処理の反応生成物が、異なるPBAE-CH3/PBAE-CR3混合物で試験されたときに、形質導入効率および細胞毒性の差は観察されなかった(
図10Aおよび
図10B参照)。プロトコルにカップリング後の精製工程を導入することにより、形質導入効率がわずかに改善された。
【0085】
DMSOを含まないオリゴペプチドカップリング反応により、生物系と適合性がある緩衝液中で再懸濁されることができる、残留クエン酸塩を有する凍結乾燥ポリマーが生成される。PBAE系統のポリマーは、pH7.0の水性緩衝液中で分解することが報告されるように、長期的な安定性の問題がある(Lynn et al.2000)。この安定性の問題は、-20℃でDMSO中でPBAEを保管することによってすでに回避された。したがって、DMSOを含まないカップリングによって得られ、カップリング後の精製(エントリ12および13)を加え、水中に再懸濁したての、または-20℃で5週間もしくは15週間、水中で保管したPBAE-CR3およびPBAE-CH3の60/40の比率での機能についての調査を実施し、それらの安定性を、古典的プロトコルによって合成され(エントリ2および3)、-20℃でDMSO中で同じ期間保管されたポリマーと比較した。
図11Aおよび
図11Bに要約された結果は、水中で製剤化されたポリマーは機能的であり、水中での長期間の保管に際してもそれらの形質導入効率が失われていないことを明らかに示している。3種の異なるPBMC調製物において、DMSOを含まないOM-PBAEは、古典的プロトコルによって得られたOM-PBAEより、細胞に対する毒性が高くなかった。それにより、水性条件での保管中に分解副生成物が生成されないことが示唆される。
【0086】
次に、PBAE-ジアクリレートの精製、DMSOを含まないオリゴペプチドカップリングおよびカップリング後の精製を組み合わせた、新たな合成プロトコルによって得られたOM-PBAEの挙動を確認した。DMSOを含まないポリマーが、古典的プロトコルによって得られたポリマーと比較して、通常PBMCに対して毒性が高いと思われる場合、PBAE-ジアクリレート精製を追加することで、観察される毒性が低下した(
図12B参照)。一方で、
図12Aに示すように、形質導入効率は影響を受けなかった。
【0087】
これらの有望な結果に基づいて、DMSOを含まないカップリングによって得られ、PBAE-ジアクリレートの精製を加え、カップリング後の精製(エントリ17および23)を加え、水中に再懸濁したての、または-20℃で2週間もしくは10週間、水中で保管したPBAE-CR3およびPBAE-CH3の60/40での比率の安定性を評価し、それを、古典的プロトコル(エントリ2および3)によって合成され、-20℃でDMSO中で保管されたポリマーと比較した。異なる試験時点で、古典的方法を用いて得られたポリマーと、新しく実施された合成を用いて得られたポリマーとの間に、形質導入効率または細胞毒性の差は観察されなかった(
図13Aおよび13B参照)。したがって、-20℃で水中に保管されるときの、DMSOを含まないポリマーの安定性を確認した。
【0088】
最後に、残留遊離アクリレート含有量の、最も難しいOM-PBAEであることが分かっている、PBAE-CR3の生物的性質への影響を、ペプチド末端カップリング効率の観点から評価した。ペプチド末端カップリング反応の最適化によって、90%を超えるアクリレート変換収率、および古典的方法を用いて得られたポリマーと同等の形質導入効率または細胞毒性を示したポリマーがもたらされた。結合していないPBAE-ジアクリレートを除去するための、カップリング後の精製のさらなる改善により、より毒性が低いPBAE-CR3誘導体へ変換されたが、これは形質導入剤としては魅力的ではないようだった(
図14Aおよび
図14B参照)。
【0089】
概して、これらの結果により、機能性OM-PBAEは、DMSOを含まない条件でより少ない不純物を伴って合成でき、生物系と適合性がある条件で安定して保管されることができるため、ヒト細胞に対して有毒性ではない、遺伝子送達のための新規の物質を提供することが示される。
【0090】
参考文献
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【国際調査報告】