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▶ エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-24
(54)【発明の名称】複素環化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 498/04 20060101AFI20221116BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20221116BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221116BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221116BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20221116BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20221116BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20221116BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20221116BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20221116BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20221116BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20221116BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20221116BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20221116BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20221116BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20221116BHJP
   A61P 1/06 20060101ALI20221116BHJP
   A61K 31/5383 20060101ALI20221116BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20221116BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20221116BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
C07D498/04 112T
C07D498/04 CSP
A61P29/00
A61P25/00
A61P35/00
A61P25/18
A61P25/28
A61P25/16
A61P21/00
A61P9/10
A61P25/08
A61P25/22
A61P25/24
A61P1/16
A61P1/00
A61P15/00
A61P1/06
A61K31/5383
A61P25/04
A61P17/02
A61P25/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518712
(86)(22)【出願日】2020-09-22
(85)【翻訳文提出日】2022-05-19
(86)【国際出願番号】 EP2020076346
(87)【国際公開番号】W WO2021058444
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】19199122.3
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ベンツ,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】ゴッビ,ルカ
(72)【発明者】
【氏名】グレター,ウーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】ホルンスペルガー,ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】クロール,カールステン
(72)【発明者】
【氏名】クーン,ベルント
(72)【発明者】
【氏名】マルティン,ライナー・エー
(72)【発明者】
【氏名】オハラ,フィオン
(72)【発明者】
【氏名】プエルマン,ベルント
(72)【発明者】
【氏名】リヒター,ハンス
(72)【発明者】
【氏名】リッター,マルティン
【テーマコード(参考)】
4C072
4C086
【Fターム(参考)】
4C072AA01
4C072BB02
4C072CC02
4C072CC11
4C072EE07
4C072FF07
4C072GG07
4C072GG09
4C072HH02
4C072HH07
4C072JJ03
4C072UU01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB22
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA06
4C086ZA08
4C086ZA12
4C086ZA16
4C086ZA20
4C086ZA81
4C086ZB11
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、一般式(Ia)及び(Ib)

(式中、A、B及びLは、本明細書に記載の通りである)を有する新規の複素環化合物、該化合物を含む組成物、該化合物の製造方法及び該化合物の使用方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Ia)若しくは(Ib)
【化1】

(式中、
Aは、Rで置換された3~14員複素環であり;
Bは、R、R及びRで置換されたC~C14アリール又は5~14員ヘテロアリールであり;
Lは、共有結合、-C≡C-、-CHR-、-CHCHR-、-O-、-OCH-、及び-CHO-から選択され;
、R、及びRは、水素、ハロゲン、シアノ、C~C-アルキルスルホニル、RN、C~C-アルキル、C~C-アルコキシ、ハロ-C~C-アルキル、ハロ-C-C-アルコキシ、ヒドロキシ-C~C-アルキル、C~C14-アリール、C~C10-シクロアルキル、3~14員ヘテロシクリル、5~14員ヘテロアリール、C~C14-アリールオキシ、C~C10-シクロアルキルオキシ、3~14員ヘテロシクリルオキシ、及び5~14員ヘテロアリールオキシから独立して選択され、前記C~C10-シクロアルキル、C~C14-アリール、3~14員ヘテロシクリル、5~14員ヘテロアリール、C~C14-アリールオキシ、C~C10-シクロアルキルオキシ、3~14員ヘテロシクリルオキシ、及び5~14員ヘテロアリールオキシは、ハロゲン、C~C-アルキル、ハロ-C~C-アルキル、C~C-アルコキシ、ハロ-C~C-アルコキシ、及びカルバモイルから独立して選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
は、水素及びC~C-アルキルから選択され;
及びRは、水素、C~C-アルキル及びC~C14-アリールから独立して選択され;
は、水素、C~C-アルキル、ヒドロキシ-C~C-アルキル、アルコキシ-C~C-アルキル、ハロ-C~C-アルキル、C~C14-アリール、及びハロ-C~C14-アリールから選択される)
の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
式(Ia)又は(Ib)の化合物が、
(4aS,8aS)-6-[4-[[4-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4,4a,5,7,8,8a-ヘキサヒドロピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3-オン;
(4aR,8aR)-6-[4-[[4-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4,4a,5,7,8,8a-ヘキサヒドロピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3-オン;及び
rac-(4aS,8aS)-6-[4-(2-メチルアリル)ピペリジン-1-カルボニル]-4,4a,5,7,8,8a-ヘキサヒドロピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3-オン(CAS 1941372-36-6)
から選択されない、請求項1に記載の式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容される塩:
【請求項3】
Aがアゼチジン又は7-アザスピロ[3.5]ノナン-7-イルであり、Rが水素である、請求項1又は2に記載の式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
Bが、R、R及びRで置換されたフェニルである、請求項1から3のいずれか一項に記載の式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
Lが、共有結合、-CHR-、-CHCH-、-O-、-OCH-、及び-CHO-から選択され;
が、水素又はハロ-C~C14-アリールである、
請求項1から4のいずれか一項に記載の式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
Lが、共有結合、-O-、-CH-、-CHCH-、及び-CHO-から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
Lが共有結合又は-O-である、請求項1から4のいずれか一項に記載の式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
が、ハロゲン、C~C-アルキル、ハロ-C~C-アルキル、ハロ-C~C-アルコキシ、ヒドロキシ-C~C-アルキル、C~C14-アリールオキシ、C~C14-アリール、及びC~C10-シクロアルキルから選択され、前記C~C10-シクロアルキル、C~C14-アリールオキシ、及びC~C14-アリールが、ハロゲン及びハロ-C~C-アルキルから独立して選択される1~2個の置換基で置換されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
が、ハロ-C~C-アルキルで置換された、C~C14-アリールオキシ、ハロ-C~C-アルキル、及びC~C10-シクロアルキルから選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
が、フェノキシ、CF及び(トリフルオロメチル)シクロプロピルから選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
が、水素及びハロゲンから選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
が水素又はフルオロである、請求項1から10のいずれか一項に記載の式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
が水素である、請求項1から12のいずれか一項に記載の式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項14】
Aは、3~14員複素環であり;
Bは、R及びRで置換されたC~C14-アリールであり;
Lは、共有結合、-CHCH-、-CHR-、-O-及び-CHO-から選択され;
は、水素又はハロ-C~C14-アリールであり;
は、ハロゲン、C~C-アルキル、ハロ-C~C-アルキル、ハロ-C~C-アルコキシ、ヒドロキシ-C~C-アルキル、C~C14-アリールオキシ、C~C14-アリール、及びC~C10-シクロアルキルから選択され、前記C~C10-シクロアルキル、C~C14-アリールオキシ及びC~C14-アリールは、ハロゲン及びハロ-C~C-アルキルから独立して選択される1~2個の置換基で置換され;
は、水素及びハロゲンから選択される、
請求項1又は2に記載の式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項15】
Aは、3~14員複素環であり;
Bは、R及びRで置換されたC~C14-アリールであり;
Lは、共有結合又は-O-であり;
は、ハロ-C~C-アルキルで置換された、C~C14-アリールオキシ、ハロ-C~C-アルキル及びC~C10-シクロアルキルから選択され;
は、水素又はハロゲンである、
請求項1に記載の式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項16】
Aは、アゼチジン又は7-アザスピロ[3.5]ノナン-7-イルであり;
Bは、R及びRで置換されたフェニルであり;
Lは、共有結合、-CH-又は-O-から選択され;
は、フェノキシ、CF及び(トリフルオロメチル)シクロプロピルから選択され;
は、水素又はフルオロである、
請求項1に記載の式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項17】
表1に開示される化合物から選択される、請求項1から16のいずれか一項に記載の式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項18】
(4aR,8aR)-6-[3-[4-[1-(トリフルオロメチル)シクロプロピル]フェニル]アゼチジン-1-カルボニル]-4,4a,5,7,8,8a-ヘキサヒドロピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3-オン
【化2】

(4aS,8aS)-6-(3-(4-フェノキシフェニル)アゼチジン-1-カルボニル)ヘキサヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン
【化3】

(-)-又は(+)-トランス-6-[2-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェノキシ]-7-アザスピロ[3.5]ノナン-7-カルボニル]-4,4a,5,7,8,8a-ヘキサヒドロピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3-オン
【化4】

から選択される、請求項1から16のいずれか一項に記載の式(Ia)若しくは(Ib)の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容される塩の製造方法であって、
第1のアミン4a,5,6,7,8,8a-ヘキサヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3-オン(1)
【化5】

を、塩基及び尿素形成試薬の存在下で、式2の第2のアミン
【化6】

(式中、A、L、及びBは請求項1から18のいずれか一項に定義される通りである)と反応させて、前記式(Ia)又は(Ib)の化合物を形成することを含む、製造方法。
【請求項20】
請求項19に記載の製造方法に従って製造した場合の、請求項1から18のいずれか一項に記載の式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項21】
治療活性物質としての使用のための、請求項1から18及び20のいずれか一項に記載の式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項22】
請求項1から18及び20のいずれか一項に記載の式(Ia)若しくは(Ib)の化合物又はその薬学的に許容される塩と、治療的に不活性の担体と、を含む医薬組成物。
【請求項23】
哺乳動物における神経炎症、神経変性疾患、疼痛、がん、精神障害、及び/又は炎症性腸疾患の処置又は予防のための、請求項1から18及び20のいずれか一項に記載の式(I)の化合物若しくはその薬学的に許容される塩の、又は請求項22に記載の医薬組成物の使用。
【請求項24】
哺乳動物における多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、神経毒性、脳卒中、てんかん、不安症、偏頭痛、鬱病、肝細胞癌腫、結腸癌発生、卵巣がん、神経障害性疼痛、化学療法誘発性神経障害、急性疼痛、慢性疼痛、疼痛に伴う痙縮、腹痛、過敏性腸症候群に伴う腹痛、及び/又は内臓痛の処置又は予防のための、請求項1から18及び20のいずれか一項に記載の式(I)の化合物若しくはその薬学的に許容される塩の、又は請求項22に記載の医薬組成物の使用。
【請求項25】
哺乳動物における神経炎症、神経変性疾患、疼痛、がん、精神障害、及び/又は炎症性腸疾患の処置又は予防に使用するための、請求項1から18及び20のいずれか一項に記載の式(I)の化合物若しくはその薬学的に許容される塩、又は請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項26】
哺乳動物における多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、神経毒性、脳卒中、てんかん、不安症、偏頭痛、鬱病、肝細胞癌腫、結腸癌発生、卵巣がん、神経障害性疼痛、化学療法誘発性神経障害、急性疼痛、慢性疼痛、疼痛に伴う痙縮、腹痛、過敏性腸症候群に伴う腹痛、及び/又は内臓痛の処置又は予防において使用するための、請求項1から18及び20のいずれか一項に記載の式(I)の化合物若しくはその薬学的に許容される塩、又は請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項27】
哺乳動物における神経炎症、神経変性疾患、疼痛、がん、精神障害、及び/又は炎症性腸疾患の処置又は予防のための医薬を調製するための、請求項1から18及び20のいずれか一項に記載の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項28】
哺乳動物における多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、神経毒性、脳卒中、てんかん、不安症、偏頭痛、鬱病、肝細胞癌腫、結腸癌発生、卵巣がん、神経障害性疼痛、化学療法誘発性神経障害、急性疼痛、慢性疼痛、疼痛に伴う痙縮、腹痛、過敏性腸症候群に伴う腹痛、及び/又は内臓痛の処置又は予防のための医薬を調製するための、請求項1から18及び20のいずれか一項に記載の式(I)の化合物若しくはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項29】
哺乳動物における神経炎症、神経変性疾患、疼痛、がん、精神障害、及び/又は炎症性腸疾患の処置又は予防のための方法であって、有効量の請求項1から18及び20のいずれか一項に記載の式(I)の化合物若しくはその薬学的に許容される塩、又は請求項22に記載の医薬組成物を、前記哺乳動物に投与することを含む、方法。
【請求項30】
哺乳動物における多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、神経毒性、脳卒中、てんかん、不安症、偏頭痛、鬱病、肝細胞癌腫、結腸癌発生、卵巣がん、神経障害性疼痛、化学療法誘発性神経障害、急性疼痛、慢性疼痛、疼痛に伴う痙縮、腹痛、過敏性腸症候群に伴う腹痛、及び/又は内臓痛の処置又は予防のための方法であって、有効量の請求項1から18及び20のいずれか一項に記載の式(I)の化合物若しくはその薬学的に許容される塩、又は請求項22に記載の医薬組成物を、前記哺乳動物に投与することを含む、方法。
【請求項31】
本明細書に記載されている発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物における処置又は予防に有用な有機化合物に関し、特に、哺乳動物における、神経炎症、神経変性疾患、疼痛、癌、精神障害、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、神経毒性、脳卒中、てんかん、不安症、片頭痛、鬱病、炎症性腸疾患、腹痛、過敏性腸症候群に伴う腹痛及び/又は内臓痛の処置又は予防のための、モノアシルグリセロールリパーゼ(MAGL)阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
エンドカンナビノイド(EC)は、カンナビノイド受容体(CBR)であるCB1及びCB2と相互作用することによって生物学的作用を発揮する、シグナル伝達脂質である。これらは、神経炎症、神経変性及び組織再生を含む複数の生理的過程を調節する(Iannotti,F.A.,et al.,Progress in lipid research 2016,62,107-28.)。脳では、主なエンドカンナビノイドである2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)は、ジアシグリセロールリパーゼ(DAGL)により産生され、モノアシルグリセロールリパーゼであるMAGLにより加水分解される。MAGLは2-AGの85%を加水分解し、残りの15%は、ABHD6及びABDH12により加水分解される(Nomura,D.K.,et al.,Science 2011,334,809.)。MAGLは脳全体、並びにニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイト及びミクログリア細胞を含むほとんどの脳細胞型で発現する(Chanda,P.K.,et al.,Molecular pharmacology 2010,78,996;Viader,A.,et al.,Cell reports 2015,12,798.)。2-AGの加水分解はプロスタグランジン(PG)及びロイコトリエン(LT)の前駆体であるアラキドン酸(AA)の形成をもたらす。AAの酸化的代謝は、炎症組織で増加する。炎症過程に関与するアラキドン酸の酸化の2つの主要な酵素経路には、PGを産生するシクロオキシゲナーゼ、及びLTを産生する5-リポキシゲナーゼが存在する。炎症時に形成される種々のシクロオキシゲナーゼ産物の中で、PGE2は最も重要なものの1つである。これらの産物は、炎症部位、例えば神経変性障害に罹患している患者の脳脊髄液中で検出されており、炎症応答及び疾患進行に寄与すると考えられている。MAGLを欠くマウス(Mgll-/-)は、神経系で2-AGヒドロラーゼ活性の劇的な低下、及び2-AGレベルの劇的の上昇を示すが、一方でアナンダミド(AEA)を含む他のアラキドノイル含有リン脂質及び中性脂質種、並びに他の遊離脂肪酸は変化しなかった。逆に、AA及びAA由来プロスタグランジン、並びにプロスタグランジンE2(PGE2)、D2(PGD2)、F2(PGF2)を含む他のエイコサノイド、並びにトロンボキサンB2(TXB2)のレベルは大きく低下する。ホスホリパーゼA(PLA)酵素はAAの主要な供給源と考えられてきたが、cPLA欠損マウスはそれらの脳においてAAレベルを変化させず、AA産生及び脳炎症過程の調節に対する脳におけるMAGLの役割の重要性が高まっている。
【0003】
神経炎症は、以下に限定されるものではないが、神経変性疾患(例えば、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、神経毒性、脳卒中、てんかん、並びに不安症及び片頭痛等の精神障害)を含む、脳の疾患の一般的な病理学的変化の特徴である。脳では、エイコサノイド及びプロスタグランジンの産生が神経炎症過程を制御する。炎症誘発物質リポ多糖(LPS)は、Mgll-/-マウスにおいて顕著に鈍化した脳エイコサノイドのロバストで時間依存的な増加を生じる。LPS処置はまた、Mgll-/-マウスで抑えられるインターロイキン-1-a(IL-1-a)、IL-1b、IL-6、及び腫瘍壊死因子-a(TNF-a)を含む炎症性サイトカインの広範な上昇も誘導する。
【0004】
神経炎症は、中枢神経系、ミクログリア及びアストロサイトの自然免疫細胞の活性化を特徴とする。抗炎症薬は、前臨床モデルにおいて、グリア細胞の活性化並びにアルツハイマー病及び多発性硬化症を含む疾患の進行を抑制し得ることが報告されている(Lleo A.,Cell Mol Life Sci.2007,64,1403.)。重要なことに、MAGL活性の遺伝的及び/又は薬理学的破壊はまた、脳におけるミクログリア細胞のLPS誘導活性化も阻害する(Nomura,D.K.,et al.,Science 2011,334,809)。
【0005】
その上、MAGL活性の遺伝的及び/又は薬理学的破壊は、以下に限定されるものではないが、アルツハイマー病、パーキンソン病及び多発性硬化症を含む神経変性のいくつかの動物モデルにおいて保護的であることが示された。例えば、不可逆的なMAGL阻害剤は、神経炎症及び神経変性の前臨床モデルにおいて広く使用されている(Long,J.Z.,et al.,Nature chemical biology 2009,5,37.)。このような阻害剤の全身注射は,脳におけるMgll-/-マウス表現型を再現し、これは2-AGレベルの増加、AAレベル及び関連するエイコサノイド産生の減少、並びにLPS誘導神経炎症後のサイトカイン産生及びミクログリア活性化の抑制を含み(Nomura,D.K.,et al.,Science 2011,334,809)、MAGLが新薬につながるような標的であることを確認している。
【0006】
MAGL活性の遺伝的及び/又は薬理学的破壊に続き、脳においてMAGL天然基質、2-AGの内因性レベルが増加する。2-AGは、例えばマウスにおける抗侵害受容効果(Ignatowska-Jankowska B.et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.2015,353,424.)及び慢性ストレスモデルにおける鬱病等の精神障害(Zhong P.et al.,Neuropsychopharmacology 2014,39,1763.)による疼痛に対して有益な効果を示すことが報告されている。
【0007】
さらに、中枢神経系のミエリン化細胞であるオリゴデンドロサイト(OL)及びその前駆体(OPC)は、その膜上にカンナビノイド受容体2(CB2)を発現する。2-AGは、CB1及びCB2受容体の内因性リガンドである。カンナビノイドとMAGLの薬理学的阻害との両方が、興奮毒性傷害に対するOL及びOPCの脆弱性を弱め、よって、神経保護的であり得ることが報告されている(Bernal-Chico,A.,et al.,Glia 2015,63,163.)。加えて、MAGLの薬理学的阻害はマウスの脳におけるミエリン化OLの数を増加させ、MAGL阻害がin vivoでミエリン化OLにおけるOPCの分化を促進する可能性を示唆している(Alpar,A.,et al.,Nature communications 2014,5,4421)。MAGLの阻害はまた、進行型多発性硬化症のマウスモデルにおいて再ミエリン化及び機能回復を促進することも示された(Feliu,A.,et al.,Journal of Neuroscience 2017,37,8385)。
【0008】
さらに、近年では、代謝、特に脂質代謝ががん研究において非常に重要視されている。研究者らは、新規の脂肪酸合成が腫瘍の発生に重要な役割を果たすと考えている。多くの研究は、エンドカンナビノイドが、抗増殖、アポトーシス誘導及び抗転移効果を含む、抗腫瘍作用を有することを示した。脂質代謝及びエンドカンナビノイド系の両方に対する重要な分解酵素としてのMAGLは、更に、遺伝子発現特性の一部として、神経膠芽腫を含む腫瘍形成の様々な態様に寄与する(Qin,H.,et al.,Cell Biochem.Biophys.2014,70,33;Nomura DK et al.,Cell 2009,140(1),49-61;Nomura DK et al.,Chem.Biol.2011,18(7),846-856,Jinlong Yin et al,Nature Communications 2020,11,2978)。
【0009】
内在性カンナビノイド系はまた、多くの胃腸の生理学的作用及び生理病理学的作用に関与するMarquez L.et al.,PLoS One 2009,4(9),e6893)。これらの効果は全て、主にカンナビノイド受容体(CBR)、CB1及びCB2を介して駆動される。CB1受容体は、動物及び健康なヒトの消化管全体、特に腸神経系(ENS)及び上皮内層、並びに結腸壁の血管の平滑筋細胞に存在する(Wright K.et al.,Gastroenterology 2005,129(2),437-453;Duncan,M.et al.,Aliment Pharmacol Ther 2005,22(8),667-683)。CB1の活性化は、制吐作用、抗運動性及び抗炎症効果をもたらし、疼痛を調節するのに役立つ(Perisetti,A.et al.,Ann Gastroenterol 2020,33(2),134-144)。CB2受容体は、形質細胞及びマクロファージ等の免疫細胞、GI管の粘膜固有層(Wright K.et al.,Gastroenterology 2005,129(2),437-453)、及び主に炎症性腸疾患(IBD)に関連するヒト結腸組織の上皮で発現される。CB2の活性化は、炎症促進性サイトカインを減少させることによって抗炎症効果を発揮する。MAGLの発現はUC患者の結腸組織で増加し(Marquez L.et al.,PLoS One 2009,4(9),e6893)、2-AGレベルはIBD患者の血漿で増加する(Grill,M.et al.,Sci Rep 2019,9(1),2358)。いくつかの動物研究は、IBDの対症療法のためのMAGL阻害剤の可能性を実証している。MAGL阻害は、TNBS誘発マウス大腸炎を予防し、CB1/CB2 MoAを介して局所及び循環炎症マーカーを減少させる(Marquez L.et al.,PLoS One 2009,4(9),e6893)。さらに、MAGL阻害は、CB1駆動MoAを介して腸壁の完全性及び腸透過性を改善する(Wang,J.et al.,Biochem Biophys Res Commun 2020,525(4),962-967)。
【0010】
結論として、MAGLの作用及び/又は活性化を抑制することは、神経炎症、神経変性疾患、疼痛、癌、精神障害、炎症性腸疾患、腹痛及び過敏性腸症候群に伴う腹痛を処置又は予防するための有望な新たな治療戦略である。さらに、MAGLの作用及び/又は活性化の抑制は、神経保護及びミエリン再生をもたらすための有望な新たな治療戦略である。このように、新たなMAGL阻害剤に対する満たされていない医学的ニーズは高い。
【発明の概要】
【0011】
第1の態様では、本発明は、一般式(Ia)及び(Ib)
【化1】

を有する新たな複素環化合物、又はその薬学的に許容され得る塩(式中、A、B及びLは本明細書に記載の通りである)を提供する。
【0012】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載の式(Ia)又は(Ib)の化合物を製造するプロセスであって、
第1のアミン4a,5,6,7,8,8a-ヘキサヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3-オン(1)
【化2】

を、塩基及び尿素形成試薬の存在下で、式2(式中、A、L及びBは本明細書に記載の通りである)の第2のアミンと反応させて、
【化3】

と、塩基及び尿素形成試薬の存在下で反応させて、
上記式(Ia)又は(Ib)の化合物を形成することを含む、プロセスを提供する。
【0013】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載のプロセスに従って製造される場合の、本明細書に記載の式(Ia)又は(Ib)の化合物を提供する。
【0014】
更なる態様では、本発明は、治療活性物質としての使用のための、本明細書に記載の式(Ia)又は(Ib)の化合物を提供する。
【0015】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載の式(Ia)又は(Ib)の化合物と治療上の不活性担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0016】
更なる態様では、本発明は、哺乳動物におけるモノアシルグリセロールリパーゼ(MAGL)を阻害するための、本明細書に記載される式(Ia)又は(Ib)の化合物又は本明細書に記載される医薬組成物の使用を提供する。
【0017】
更なる態様では、本発明は、哺乳動物における神経炎症、神経変性疾患、疼痛、癌、精神障害、及び/又は炎症性腸疾患の処置又は予防のための、本明細書に記載の式(I)の化合物又は本明細書に記載の医薬組成物の使用を提供する。
【0018】
更なる態様では、本発明は、哺乳動物における多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、神経毒性、脳卒中、てんかん、不安症、偏頭痛、鬱病、肝細胞癌腫、結腸癌発生、卵巣癌、神経障害性疼痛、化学療法誘発性神経障害、急性疼痛、慢性疼痛、疼痛に関連する痙縮、腹痛、過敏性腸症候群に伴う腹痛、及び/又は内臓痛の処置又は予防のための、本明細書に記載の式(I)の化合物、又は本明細書に記載の医薬組成物の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
本発明の特定の態様、実施形態又は実施例に関連して記載される特徴、整数、特色、化合物、化学的部分又は基は、それらと両立しない場合を除き、本明細書に記載の任意の他の態様、実施形態又は実施例に適用可能であると理解されるべきである。本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約及び図面を含む)に開示された特徴の全て、及び/又はそのように開示された任意の方法若しくはプロセスの工程の全ては、そのような特徴及び/又は工程の少なくとも一部が相互に排他的である組合せを除き、任意の組合せで組み合わせることができる。本発明は、前述のいずれの実施形態の詳細にも限定されない。本発明は、本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約及び図面を含む)に開示された特徴の任意の新規なもの若しくは任意の新規な組合せ、又はそのように開示された任意の方法若しくはプロセスの工程の任意の新規なもの若しくは任意の新規な組合せに及ぶ。
【0020】
「アルキル」という用語は、一価又は多価、例えば、1~12個の炭素原子を有する一価又は二価の直鎖又は分岐飽和炭化水素基を指す。いくつかの好ましい実施形態では、アルキル基は、1~6個の炭素原子(「C1-6-アルキル」)、例えば、1、2、3、4、5、又は6個の炭素原子を含む。他の実施態様では、アルキル基は、1~3個の炭素原子、例えば、1、2、又は3個の炭素原子を含む。アルキルのいくつかの非限定的な例としては、メチル、エチル、プロピル、2-プロピル(イソプロピル)、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、及び2,2-ジメチルプロピルが挙げられる。アルキルの特に好ましいが非限定的な例は、メチル及びtert-ブチルである。
【0021】
「アルコキシ」という用語は、酸素原子を介して親分子部分に結合した、上で定義されたアルキル基を指す。アルコキシ基は、特に指示されない限り、1~12個の炭素原子を含む。いくつかの好ましい実施形態では、アルコキシ基は、1~6個の炭素原子(「C1-6-アルコキシ」)を含む。他の実施形態では、アルコキシ基は、1~4個の炭素原子を含む。更に他の実施形態では、アルコキシ基は、1~3個の炭素原子を含む。アルコキシ基のいくつかの非限定的な例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ及びtert-ブトキシが挙げられる。アルコキシの特に好ましいが非限定的な例は、メトキシである。
【0022】
「ハロゲン」又は「ハロ」という用語は、フルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)、又はヨード(I)を指す。好ましくは、「ハロゲン」又は「ハロ」という用語は、フルオロ(F)、クロロ(Cl)又はブロモ(Br)を指す。「ハロゲン」又は「ハロ」の特に好ましいが非限定的な例は、フルオロ(F)及びクロロ(Cl)である。
【0023】
「シアノ」という用語は、-CN(ニトリル)基を指す。
【0024】
「ヒドロキシ」という用語は、-OH基を指す。
【0025】
「アルキルスルホニル」という用語は、SO基を介して親分子部分に結合した、上で定義されたアルキル基を指す。
【0026】
「カルバモイル」という用語は、基HN-C(O)-を指す。
【0027】
「ヒドロキシアルキル」という用語は、アルキル基の少なくとも1個の水素原子が、ヒドロキシ基によって置き換えられている、アルキル基を指す。好ましくは、「ヒドロキシアルキル」は、アルキル基の1、2又は3個の水素原子、最も好ましくは1個の水素原子が、ヒドロキシ基によって置き換えられている、アルキル基を指す。ヒドロキシアルキルの好ましいが非限定的な例は、ヒドロキシメチル及びヒドロキシエチル(例えば、2-ヒドロキシエチル)である。ヒドロキシアルキルの特に好ましいが非限定的な例は、2-ヒドロキシエチルである。
【0028】
「アルコキシアルキル」という用語は、アルキル基の少なくとも1個の水素原子が、アルコキシ基によって置き換えられている、アルキル基を指す。好ましくは、「アルコキシアルキル」は、アルキル基の1、2又は3個の水素原子、最も好ましくは1個の水素原子が、アルコキシ基によって置き換えられている、アルキル基を指す。アルコキシアルキルの好ましいが非限定的な例は、2-メトキシエチルである。
【0029】
本明細書で使用する「シクロアルキル」という用語は、3~10個の環炭素原子の、飽和又は部分不飽和の、単環式又は二環式の炭化水素基を指す(「C~C10-シクロアルキル」)。いくつかの好ましい実施形態では、シクロアルキル基は、3~8個の環炭素原子の飽和単環式炭化水素基である。「二環式シクロアルキル」とは、共通した2個の炭素原子を有する2つの飽和炭素環からなるシクロアルキル部分、すなわち、2つの環を分離する架橋が、単結合であるか、又は1個若しくは2個の環原子の鎖であるかのいずれかであり、スピロ環部分、すなわち、2つの環が1個の共通の環原子を介して結合されているシクロアルキル部分を指す。好ましくは、シクロアルキル基は、3~6個の環炭素原子、例えば、3、4、5又は6個の炭素原子の飽和単環式炭化水素基である。シクロアルキルのいくつかの非限定的な例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロヘプチルが挙げられる。
【0030】
「ヘテロシクリル」及び「ヘテロシクロアルキル」という用語は、本明細書において交換可能に使用され、3~14個の環原子、好ましくは4~7個の環原子からなる飽和又は部分的に不飽和な単環式又は二環式、好ましくは単環式の環系を指し、1、2、又は3個の該環原子は、N、O及びSから選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子は炭素である。好ましくは、前記環原子の1~2個はN及びOから選択され、残りの環原子は炭素である。より好ましくは、当該環原子の1つはNであり、残りの環原子は炭素である。「二環式ヘテロシクリル」とは、共通した2個の環原子を有する2つの環からなる複素環部分、すなわち、2つの環を分離する架橋が、単結合であるか、又は1個若しくは2個の環原子の鎖であるかのいずれかであり、スピロ環部分、すなわち、2つの環が1個の共通の環原子を介して結合されている複素環部分を指す。ヘテロシクリル基のいくつかの非限定的な例としては、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジル、モルホリニル、2-アザスピロ[3.3]ヘプタニルおよび2,3,3a,4,6,6a-ヘキサヒドロ-1H-ピロロ[3,4-c]ピロリルが挙げられる。ヘテロシクリルの好ましいが非限定的な例としては、アゼチジン-1-イル、2-アザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル、2,3,3a,4,6,6a-ヘキサヒドロ-1H-ピロロ[3,4-c]ピロール-5-イル及び7-アザスピロ[3.5]ノナン-7-イルが挙げられる。ヘテロシクリルの特に好ましいが非限定的な例としては、アゼチジン-1-イルが挙げられる。
【0031】
「アリール」という用語は、合計6~14個の環員、好ましくは6~12個の環員、より好ましくは6~10個の環員を有する単環式、二環式、又は三環式の炭素環系を指し、ここで、系の少なくとも1つの環は、芳香族である。アリールのいくつかの非限定的な例としては、フェニル及び9H-フルオレニル(例えば、9H-フルオレン-9-イル)が挙げられる。アリールの特に好ましい。但し非限定的な例はフェニルである。
【0032】
「ヘテロアリール」という用語は、合計5~14個の環員、好ましくは5~12個の環員、より好ましくは5~10個の環員を有する多価の単環式、二環式、又は三環式、好ましくは単環式環系を指し、ここで、系の少なくとも1つの環は芳香族であり、系の少なくとも1つの環は1つ以上のヘテロ原子を含む。好ましくは、「ヘテロアリール」は、O、S及びNから独立して選択される1、2、3又は4個のヘテロ原子を含む5~10員のヘテロアリールを指す。最も好ましくは、「ヘテロアリール」は、O及びNから独立して選択される1~2個のヘテロ原子を含む5~10員のヘテロアリールを指す。ヘテロアリールのいくつかの非限定的な例としては、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、インドール-1-イル、1H-インドール-2-イル、1H-インドール-3-イル、1H-インドール-4-イル、1H-インドール-5-イル、1H-インドール-6-イル、1H-インドール-7-イル、1,2-ベンゾキサゾール-3-イル、1,2-ベンゾキサゾール-4-イル、1,2-ベンゾキサゾール-5-イル、1,2-ベンゾキサゾール-6-イル、1,2-ベンゾキサゾール-7-イル、1H-インダゾール-3-イル、1H-インダゾール-4-イル、1H-インダゾール-5-イル、1H-インダゾール-6-イル、1H-インダゾール-7-イル、ピラゾール-1-イル、1H-ピラゾール-3-イル、1H-ピラゾール-4-イル、1H-ピラゾール-5-イル、イミダゾール-1-イル、1H-イミダゾール-2-イル、1H-イミダゾール-4-イル、1H-イミダゾール-5-イル、オキサゾール-2-イル、オキサゾール-4-イル及びオキサゾール-5-イルが挙げられる。ヘテロアリールの特に好ましいが非限定的な例は、ピリジル、特に3-ピリジル及びオキサゾリル、特にオキサゾール-2-イルである。
【0033】
「ハロアルキル」という用語は、アルキル基の少なくとも1個の水素原子が、ハロゲン原子、好ましくはフルオロによって置き換えられている、アルキル基を指す。好ましくは、「ハロアルキル」とは、アルキル基の1、2又は3個の水素原子が、ハロゲン原子、最も好ましくはフルオロによって置き換えられている、アルキル基を指す。ハロアルキルの特に好ましいが非限定的な例は、トリフルオロメチル(CF)及びトリフルオロエチル(例えば、2,2,2-トリフルオロエチル)である。
【0034】
「ハロアルコキシ」という用語は、アルコキシ基の少なくとも1個の水素原子が、ハロゲン原子、好ましくはフルオロによって置き換えられている、アルコキシ基を指す。好ましくは、「ハロアルコキシ」とは、アルコキシ基の1、2又は3個の水素原子が、ハロゲン原子、最も好ましくはフルオロによって置き換えられている、アルコキシ基を指す。ハロアルコキシの特に好ましいが非限定的な例は、トリフルオロメトキシ(-OCF)である。
【0035】
「ハロアリール」という用語は、アリール基を指す。ここで、アリール基の水素原子の少なくとも1つは、ハロゲン原子、好ましくはフルオロ又はクロロによって置換されている。好ましくは、「ハロアリール」は、アリール基の1、2又は3個の水素原子が、ハロゲン原子、最も好ましくはフルオロによって置き換えられている、アリール基を指す。ハロアリールの特に好ましいが非限定的な例は、4-フルオロフェニルである。
【0036】
「アリールオキシ」という用語は、酸素原子を介して親分子部分に結合した、上で定義されたアリール基を指す。アリールオキシの好ましいが非限定的な例は、フェノキシである。
【0037】
「シクロアルキルオキシ」という用語は、酸素原子を介して親分子部分に結合した、先に定義されたシクロアルキル基を指す。シクロアルキルオキシの好ましいが非限定的な例は、シクロプロポキシである。
【0038】
「ヘテロアリールオキシ」という用語は、酸素原子を介して親分子部分に結合した、先に定義されたヘテロアリール基を指す。ヘテロアリールオキシの好ましいが非限定的な例は、ピリジルオキシ(例えば、2-ピリジイルオキシ)である。
【0039】
「ヘテロシクリルオキシ」という用語は、酸素原子を介して親分子部分に結合した、先に定義されたヘテロシクリル基を指す。ヘテロシクリルオキシの好ましいが非限定的な例は、ピロリジニルオキシ(例えば、ピロリジン-3-イル-オキシ)である。
【0040】
「薬学的に許容され得る塩」という用語は、生物学的に又は別様に望ましくないものではない、遊離塩基又は遊離酸の生物学的有効性及び特性を保持する塩を指す。塩は、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等、特に塩酸、並びに有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、N-アセチルシステイン等により形成される。加えて、これらの塩は、無機塩基又は有機塩基を遊離酸に添加することにより調製され得る。無機塩基に由来する塩には、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム及びマグネシウム塩等が含まれるがこれらに限定されない。有機塩基に由来する塩には、第一級、第二級、及び第三級アミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環式アミン及び塩基性イオン交換樹脂、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、リジン、アルギニン、N-エチルピペリジン、ピペリジン、ポリイミン樹脂等の塩が含まれるがこれらに限定されない。式(Ia)又は(Ib)の化合物の特定の薬学的に許容され得る塩は、塩酸塩である。
【0041】
「保護基」(PG)という用語は、化学反応が、合成化学の関連する慣用的な意味において、別の保護されていない反応性部位で選択的に行われ得るように、多官能性化合物中の反応部位を選択的にブロックする基を意味する。保護基は適切な時に除去され得る。例示的な保護基は、アミノ保護基、カルボキシ保護基又はヒドロキシ保護基である。特定の保護基は、tert-ブトキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)及びベンジル(Bn)である。更なる特定の保護基は、tert-ブトキシカルボニル(Boc)及びフルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)である。より特定の保護基は、tert-ブトキシカルボニル(Boc)である。例示的な保護基及び有機合成におけるそれらの用途は、例えば、“Protective Groups in Organic Chemistry”by T.W.Greene and P.G.M.Wutts,5th Ed.,2014,John Wiley&Sons,New Yorkに記載されている。
【0042】
「尿素形成試薬」という用語は、第1のアミンを第2のアミンと反応させ、それによって尿素誘導体を形成する種にすることができる化合物を指す。尿素形成試薬の非限定的な例としては、ビス(トリクロロメチル)カーボネート、ホスゲン、クロロ蟻酸トリクロロメチル、(4-ニトロフェニル)カーボネート、及び1,1’-カルボニルジイミダゾールが挙げられる。Sartori,G.,et al.,Green Chemistry 2000,2,140に記載されている尿素形成試薬は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0043】
式(Ia)又は(Ib)の化合物は、数個の不斉中心を含むことができ、光学的に純粋なエナンチオマー、例えばラセミ体等のエナンチオマーの混合物、光学的に純粋なジアステレオ異性体、ジアステレオ異性体の混合物、ジアステレオ異性のラセミ体又はジアステレオ異性のラセミ体の混合物として存在することができる。
【0044】
Cahn-Ingold-Prelog則により、不斉炭素原子は、「R」又は「S」配置のものであり得る。
【0045】
略語「MAGL」とは、酵素モノアシルグリセロールリパーゼを指す。「MAGL」及び「モノアシルグリセロールリパーゼ」という用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0046】
「処置」という用語は、本明細書で使用される場合、以下を含む:(1)状態、障害又は状況を抑制すること(例えば、維持処置の場合、その少なくとも1つの臨床的症状又は無症状の疾患の発症又は再発の停止、低減又は遅延させること)、及び/又は(2)状況を緩和すること(すなわち、状態、障害若しくは状況、又はその臨床的症状若しくは無症状のうちの少なくとも1つの退行を引き起こすこと)。処置されるべき患者に対する利益は、統計的に有意であるか、又は少なくとも患者若しくは医師にとって認識可能であるかのいずれかである。しかしながら、疾患を処置するために患者に医薬が投与される場合、転帰は必ずしも有効な処置でなくともよいことが理解されるであろう。
【0047】
「予防」という用語は、本明細書で使用される場合、哺乳動物において、特に、状態、障害若しくは状況に罹患しているか又は罹患しやすいが、その状態、障害若しくは状況の臨床的症状又は無症状をまだ経験していないか又は示していないヒトにおいて発症する状態、障害又は状況の臨床的症状の出現を防止又は遅延させることを含む。
【0048】
「神経炎症」という用語は、本明細書で使用される場合、神経系の2つの部分(中枢神経系(CNS)の脳及び脊髄、及び末梢神経系(PNS)の分岐末梢神経)の主要な組織成分である神経組織の急性及び慢性炎症に関する。慢性神経炎症は、アルツハイマー病、パーキンソン病及び多発性硬化症等の神経変性疾患と関連している。急性神経炎症は、通常、例えば外傷性脳損傷(TBI)の結果として、中枢神経系の損傷直後に起こる。
【0049】
「外傷性脳損傷」(「TBI」、「頭蓋内損傷」としても公知)という用語は、急速な加速若しくは減速、衝撃、爆風、又は発射体による貫通等の外部の機械的力に起因する、脳の損傷に関する。
【0050】
「神経変性疾患」という用語は、ニューロンの死を含む、ニューロンの構造又は機能の進行性喪失に関連する疾患に関連する。神経変性疾患の例としては、以下に限定されるものではないが、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病及び筋萎縮性側索硬化症が挙げられる。
【0051】
「精神障害」(精神疾病又は精神系障害とも呼ばれる)という用語は、生活において苦痛又は機能不良を引き起こす可能性のある行動又は精神パターンに関する。このような特徴は、持続性、再発性及び寛解性、又は単回エピソードとして生じることがある。精神障害の例としては、不安症及び鬱病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
「疼痛」という用語は、実際の又は潜在的な組織損傷に関連する不快な感覚的及び感情的経験に関する。疼痛の例としては、侵害受容性疼痛、慢性疼痛(特発性疼痛を含む)、化学療法誘発性神経障害を含む神経障害性疼痛、幻肢痛及び心因性疼痛が挙げられるが、これらに限定されない。疼痛の特定の例は、神経障害性疼痛であり、これは、身体的感情(すなわち、体性感覚系)に関与する神経系のいずれかの部分に影響を及ぼす損傷又は疾患によって引き起こされる。一実施形態では、「疼痛」は、切断術又は開胸術から生じる神経障害性疼痛である。一実施形態では、「疼痛」は、化学療法誘発性神経障害である。
【0053】
「神経毒性」という用語は、神経系における毒性に関連する。これは、天然又は人工の毒性物質(神経毒)に曝されると、神経系の正常な活動が変化して、神経組織に損傷が生じることで発生する。神経毒性の例としては、化学療法、放射線処置、薬物療法、薬物乱用、及び臓器移植に使用される物質への曝露、並びに重金属、ある特定の食品及び食品添加物、農薬、工業用及び/又は洗浄用溶媒、化粧品、及びいくつかの天然に存在する物質への曝露から生じる神経毒性が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
「がん」という用語は、新生物又は腫瘍の存在を特徴とする疾患であって、細胞の異常で制御不能な増殖に起因する疾患を指す(そのような細胞は「がん細胞」である)。本明細書で使用される場合、がんという用語は、明示的に、肝細胞癌腫、結腸がん発生及び卵巣がんを含むが、これらに限定されない。
【0055】
「哺乳動物」という用語には、本明細書で使用される場合、ヒト及び非ヒトの両方が含まれ、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ネズミ、ウシ、ウマ、及びブタが含まれるが、これらに限定されない。特に好ましい実施形態では、「哺乳動物」という用語は、ヒトを指す。
本発明の化合物
【0056】
第1の態様(A1)では、本発明は、式(Ia)又は(Ib)の化合物:
【化4】

又はその薬学的に許容され得る塩(式中、
Aは、Rで置換された3~14員複素環であり、
Bは、R、R及びRで置換されたC~C14アリール又は5~14員ヘテロアリールであり、
Lは、共有結合、-C≡C-、-CHR-、-CHCHR-、-O-、-OCH-、及び-CHO-から選択され、
、R、及びRは、水素、ハロゲン、シアノ、C~C-アルキルスルホニル、RN、C~C-アルキル、C~C-アルコキシ、ハロ-C~C-アルキル、ハロ-C-C-アルコキシ、ヒドロキシ-C~C-アルキル、C~C14-アリール、C~C10-シクロアルキル、3~14員ヘテロシクリル、5~14員ヘテロアリール、C~C14-アリールオキシ、C~C10-シクロアルキルオキシ、3~14員ヘテロシクリルオキシ、及び5~14員ヘテロアリールオキシから独立して選択され、前記C~C10-シクロアルキル、C~C14-アリール、3~14員ヘテロシクリル、5~14員ヘテロアリール、C~C14-アリールオキシ、C~C10-シクロアルキルオキシ、3~14員ヘテロシクリルオキシ、及び5~14員ヘテロアリールオキシは、ハロゲン、C~C-アルキル、ハロ-C~C-アルキル、C~C-アルコキシ、ハロ-C~C-アルコキシ、及びカルバモイルから独立して選択される1つ以上の置換基で任意に置換され、
は、水素及びC~C-アルキルから選択され、
及びRは、水素、C~C-アルキル及びC~C14-アリールから独立して選択され、
は、水素、C~C-アルキル、ヒドロキシ-C~C-アルキル、アルコキシ-C~C-アルキル、ハロ-C~C-アルキル、C~C14-アリール、及びハロ-C~C14-アリールから選択される)。
【0057】
本発明はまた、本発明の第1の態様(A1)の以下の列挙される実施形態(E)を提供する。
【0058】
E1.A1による式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩であって、式中、
Aは、Rで置換された3~14員複素環であり、
Bは、R、R及びRで置換されたC~C14アリール又は5~14員ヘテロアリールであり、
Lは、共有結合、-C≡C-、-CHR-、-CHCHR-、-O-、-OCH-、及び-CHO-から選択され、
、R、及びRは、水素、ハロゲン、シアノ、C-C-アルキルスルホニル、RN、C~C-アルキル、C~C-アルコキシ、ハロ-C~C-アルキル、ハロ-C~C-アルコキシ、C~C14-アリール、C~C10-シクロアルキル、3~14員ヘテロシクリル、5~14員ヘテロアリール、C~C14-アリールオキシ、C~C10-シクロアルキルオキシ、3~14員ヘテロシクリルオキシ、及び5~14員ヘテロアリールオキシから独立して選択され、前記C~C10-シクロアルキル、C~C14-アリール、3~14員ヘテロシクリル、5~14員ヘテロアリール、C~C14-アリールオキシ、C~C10シクロアルキルオキシ、3~14員ヘテロシクリルオキシ、及び5~14員ヘテロアリールオキシは、ハロゲン、C~C-アルキル、ハロ-C~C-アルキル、C~C-アルコキシ、ハロ-C~C-アルコキシ、及びカルバモイルから独立して選択される1つ以上の置換基で任意に置換され、
は、水素及びC~C-アルキルから選択され、
及びRは、水素、C~C-アルキル及びC~C14-アリールから独立して選択され、
は、水素、C~C-アルキル、ヒドロキシ-C~C-アルキル、アルコキシ-C~C-アルキル、ハロ-C~C-アルキル、C~C14-アリール、及びハロ-C~C14-アリールから選択される。
【0059】
E2.A1又はE1による式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩であって、式中、
Aは、3~14員複素環であり、
Bは、R、R、及びRで置換されたC~C14-アリールであり、
Lは、共有結合、-CH-、-CHCH-、-OCH-、及び-CHO-から選択され、
、R、及びRは、水素、ハロゲン、C~C-アルキル、C~C-アルコキシ、ハロ-C~C-アルキル、ハロ-C~C-アルコキシ、C~C14-アリールオキシ、C~C14-アリール、及びC~C10-シクロアルキルから独立して選択され、前記C~C10-シクロアルキル及びC~C14-アリールは、ハロゲン及びハロ-C~C-アルキルから独立して選択される1つ以上の置換基で任意に置換される。
【0060】
E3.式(Ia)又は(Ib)の化合物が、以下から選択されないA1及びE1~E2のいずれか1つによる式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩:
(4aS,8aS)-6-[4-[[4-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4,4a,5,7,8,8a-ヘキサヒドロピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3-オン、
(4aR,8aR)-6-[4-[[4-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4,4a,5,7,8,8a-ヘキサヒドロピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3-オン、及び
rac-(4aS,8aS)-6-[4-(2-メチルアリル)ピペリジン-1-カルボニル]-4,4a,5,7,8,8a-ヘキサヒドロピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3-オン(CAS 1941372-36-6)。
【0061】
E4.Aが4~9員複素環であり、1、2又は3個の環原子がN、O及びSから選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子が炭素である、A1及びE~E3のいずれか1つによる式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【0062】
E5.Aが4~9員複素環であり、1個の環原子が窒素であり、残りの環原子が炭素である、A1及びE~E3のいずれか1つによる式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【0063】
E6.Aが、アゼチジン-1-イル、2-アザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル、2,3,3a,4,6,6a-ヘキサヒドロ-1H--ピロロ[3,4-c]ピロール-5-イル及び7-アザスピロ[3.5]ノナン-7-イルから選択される4~9員複素環である、A1及びE1~E3のいずれか1つによる式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【0064】
E7.Aが4~8員複素環であり、1、2又は3個の環原子がN、O及びSから選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子が炭素である、A1及びE~E3のいずれか1つによる式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【0065】
E8.Aが4~8員複素環であり、1個の環原子が窒素であり、残りの環原子が炭素である、A1及びE~E3のいずれか1つによる式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【0066】
E9.Aが、アゼチジン-1-イル、2-アザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル、及び2,3,3a,4,6,6a-ヘキサヒドロ-1H-ピロロ[3,4-c]ピロール-5-イルから選択される4~8員複素環である、A1及びE1~E3のいずれか1つによる式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【0067】
E10.Aがアゼチジン又は7-アザスピロ[3.5]ノナン-7-イルである、A1及びE1~E3のいずれか1つによる式(Ia)又は(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【0068】
E11.Aがアゼチジンである、A1及びE1~E3のいずれか1つによる式(Ia)又は(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【0069】
E12.Rが水素である、A1及びE1~E11のいずれか1つによる式(Ia)又は(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【0070】
E13.Bが、R、R及びRで置換されたフェニルである、A1及びE1~E12のいずれか1つによる式(Ia)若しくは(Ib)の化合物又はその薬学的に許容され得る塩。
【0071】
E14.Lが、共有結合、-CHR-、-CHCH-、-O-、-OCH-、及び-CHO-から選択され、
が、水素又はハロ-C~C14-アリールである、A1及びE1~E13のいずれか1つによる式(Ia)若しくは(Ib)の化合物又はその薬学的に許容され得る塩。
【0072】
E15.Lが、共有結合、-O-、-CH-、-CHCH-、-OCH-、及び-CHO--から選択される、A1及びE1~E13のいずれか1つによる式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【0073】
E16.Lが、共有結合、-CH-、-CHCH-、-OCH-及び-CHO-から選択される、A1及びE1~E13のいずれか1つによる式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【0074】
E17.Lが、共有結合、-CHCH-、及び-CHO-から選択される、A1及びE1~E13のいずれか1つによる式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【0075】
E18.Lが共有結合又は-O-である、A1及びE1~E13のいずれか1つによる式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【0076】
E19.Lが共有結合である、A1及びE1~E13のいずれか1つによる式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【0077】
E20.Rが、C~C-アルキル、ハロ-C~C-アルキル、ハロ-C~C-アルコキシ、C~C14-アリールオキシ、C~C14-アリール、及びC~C10-シクロアルキルから選択され、前記C~C10-シクロアルキル及びC~C14-アリールが、ハロゲン及びハロ-C~C-アルキルから独立して選択される1~2個の置換基で置換されている、A1及びE1~E19のいずれか1つによる式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【0078】
E21.Rが、ハロゲン、C~C-アルキル、ハロ-C~C-アルキル、ハロ-C~C-アルコキシ、ヒドロキシ-C~C-アルキル、C~C14-アリールオキシ、C~C14-アリール、及びC~C10-シクロアルキルから選択され、前記C~C10-シクロアルキル、C~C14-アリールオキシ、及びC~C14-アリールが、ハロゲン及びハロ-C~C-アルキルから独立して選択される1~2個の置換基で置換されている、A1及びE1~E19のいずれか1つによる式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【0079】
E22.Rが、ハロ-C~C-アルキルで置換された、C~C14-アリールオキシ、及びC~C10-シクロアルキルから選択される、A1及びE1~E19のいずれか1つによる式(Ia)若しくは(Ib)の化合物又はその薬学的に許容され得る塩。
【0080】
E23.Rが、ハロ-C~C-アルキルで置換された、C~C14-アリールオキシ、ハロ-C~C-アルキル、及びC~C10-シクロアルキルから選択される、A1及びE1~E19のいずれか1つによる式(Ia)若しくは(Ib)の化合物又はその薬学的に許容され得る塩。
【0081】
E24.Rが、フェノキシ及び(トリフルオロメチル)シクロプロピルから選択される、A1及びE1~E19のいずれか1つによる式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【0082】
E25.Rが、フェノキシ、CF及び(トリフルオロメチル)シクロプロピルから選択される、A1及びE1~E19のいずれか1つによる式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【0083】
E26.Rが、水素及びハロゲンから選択される、A1及びE1~E25のいずれか1つによる式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【0084】
E27.Rが、水素及びフルオロから選択される、A1及びE1~E25のいずれか1つによる式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【0085】
E28.Rが水素である、A1及びE1~E25のいずれか1つによる式(Ia)又は(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【0086】
E29.Rが水素である、A1及びE1~E28のいずれか1つによる式(Ia)又は(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【0087】
E30.Bは、R及びRで置換されたC~C14-アリールであり、
は、C~C-アルキル、ハロ-C~C-アルキル、ハロ-C~C-アルコキシ、C~C14-アリールオキシ、C~C14-アリール、及びC~C10-シクロアルキルから選択され、前記C~C10-シクロアルキル及びC~C14-アリールは、ハロゲン及びハロ-C~C-アルキルから独立して選択される1~2個の置換基で置換され、
は、水素及びハロゲンから選択される、A1及びE1~E29のいずれか1つによる式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。水素、及びハロゲンから選択される)の化合物である、請求項1に記載の式(I)の化合物又はその薬学的に許容され得る塩。
【0088】
E31.Bは、R及びRで置換されたC~C14-アリールであり、
は、ハロゲン、C~C-アルキル、ハロ-C~C-アルキル、ハロ-C~C-アルコキシ、ヒドロキシ-C~C-アルキル、C~C14-アリールオキシ、C~C14-アリール、及びC~C10-シクロアルキル空選択され、前記C~C10-シクロアルキル、C~C14-アリールオキシ、及びC~C14-アリールは、ハロゲン及びハロ-C~C-アルキルから独立して選択される1~2個の置換基で置換され、
は、水素及びハロゲンから選択される、A1及びE1~E29のいずれか1つによる式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。水素、及びハロゲンから選択される)の化合物である、請求項1に記載の式(I)の化合物又はその薬学的に許容され得る塩。
【0089】
E32.Bは、Rで置換されたC~C14-アリールであり、
は、ハロ-C~C-アルキルで置換された、C~C14-アリールオキシ及びC-C10-シクロアルキルから選択される、A1及びE1~E29のいずれか1つによる式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【0090】
E33.Bは、R及びRで置換されたC~C14-アリールであり、
は、ハロ-C~C-アルキルで置換された、C~C14-アリールオキシ、ハロ-C~C-アルキル及びC~C10-シクロアルキルから選択され、
は、水素及びハロゲンから選択される、A1及びE1~E29のいずれか1つによる式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。水素、及びハロゲンから選択される)の化合物である、請求項1に記載の式(I)の化合物又はその薬学的に許容され得る塩。
【0091】
E34.Bは、Rで置換されたフェニルであり、
は、フェノキシ及び(トリフルオロメチル)シクロプロピルから選択される、A1及びE1~E29のいずれか1つによる式(Ia)又は(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【0092】
E35.Bは、R及びRで置換されたフェニルであり、
は、フェノキシ、CF及び(トリフルオロメチル)シクロプロピルから選択され、
は、水素又はフルオロである、A1及びE1~E29のいずれか1つによる式(Ia)又は(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【0093】
E36.Aは、3~14員複素環であり、
Bは、R及びRで置換されたC~C14-アリールであり、
Lは、共有結合、-CHCH-、-CHR-、-O-及び-CHO-から選択され、
は、水素又はハロ-C~C14-アリールであり、
は、ハロゲン、C~C-アルキル、ハロ-C~C-アルキル、ハロ-C~C-アルコキシ、ヒドロキシ-C~C-アルキル、C~C14-アリールオキシ、C~C14-アリール、及びC~C10-シクロアルキル、から選択され、前記C~C10-シクロアルキル、C~C14-アリールオキシ及びC~C14-アリールは、ハロゲン及びハロ-C~C-アルキルから独立して選択される1~2個の置換基で置換され、
は、水素及びハロゲンから選択される、A1及びE1~E3のいずれか1つによる式(Ia)又は(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。水素、及びハロゲンから選択される)の化合物である、請求項1に記載の式(I)の化合物又はその薬学的に許容され得る塩。
【0094】
E37.Aは、3~14員複素環であり、
Bは、R及びRで置換されたC~C14-アリールであり、
Lは、共有結合、-CHCH-、及び-CHO-から選択され、
は、C~C-アルキル、ハロ-C~C-アルキル、ハロ-C~C-アルコキシ、C~C14-アリールオキシ、C~C14-アリール、及びC~C10-シクロアルキルから選択され、前記C~C10-シクロアルキル及びC~C14-アリールは、ハロゲン及びハロ-C~C-アルキルから独立して選択される1~2個の置換基で置換され、
は、水素、及びハロゲンから選択される)の化合物である、請求項1に記載の式(I)の化合物又はその薬学的に許容され得る塩。
【0095】
E38.Aは、3~14員複素環であり、
Bは、R及びRで置換されたC~C14-アリールであり、
Lは、共有結合又は-O-であり、
は、ハロ-C~C-アルキルで置換された、C~C14-アリールオキシ、ハロ-C~C-アルキル及びC~C10-シクロアルキルから選択され、
は、水素又はハロゲンである、A1及びE1~E3のいずれか1つによる式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【0096】
E39.Aは、3~14員複素環であり、
Bは、Rで置換されたC~C14-アリールであり、
Lは、は共有結合であり、
は、ハロ-C~C-アルキルで置換された、C~C14-アリールオキシ及びC-C10-シクロアルキルから選択される、A1及びE1~E3のいずれか1つによる式(Ia)又は(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【0097】
E40.Aは、アゼチジン又は7-アザスピロ[3.5]ノナン-7-イルであり、
Bは、R及びRで置換されたフェニルであり、
Lは、共有結合、-CH-又は-O-から選択され、
は、フェノキシ、CF及び(トリフルオロメチル)シクロプロピルから選択され、
は、水素又はフルオロである、A1及びE1~E29のいずれか1つによる式(Ia)又は(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【0098】
E41.Aは、アゼチジンであり、
Bは、Rで置換されたフェニルであり、
Lは、は共有結合であり、
は、は、フェノキシ及び(トリフルオロメチル)シクロプロピルから選択される、A1及びE1~E3のいずれか1つによる式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【0099】
E42.表1に開示される化合物から選択される、A1及びE1~E41のいずれか1つによる式(Ia)又は(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【0100】
E43.(4aR,8aR)-6-[3-[4-[1-(トリフルオロメチル)シクロプロピル]フェニル]アゼチジン-1-カルボニル]-4,4a,5,7,8,8a-ヘキサヒドロピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3-オン
【化5】

(4aS,8aS)-6-(3-(4-フェノキシフェニル)アゼチジン-1-カルボニル)ヘキサヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン
【化6】

(-)-又は(+)-トランス-6-[2-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェノキシ]-7-アザスピロ[3.5]ノナン-7-カルボニル]-4,4a,5,7,8,8a-ヘキサヒドロピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3-オン
【化7】

から選択される、A1及びE1~E41のいずれか1つによる式(Ia)又は(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【0101】
E44.(4aR,8aR)-6-[3-[4-[1-(トリフルオロメチル)シクロプロピル]フェニル]アゼチジン-1-カルボニル]-4,4a,5,7,8,8a-ヘキサヒドロピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3-オン
【化8】

(4aS,8aS)-6-(3-(4-フェノキシフェニル)アゼチジン-1-カルボニル)ヘキサヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン
【化9】

から選択される、A1及びE1~E41のいずれか1つによる式(Ia)又は(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【0102】
特定の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の式(Ia)又は(Ib)による化合物の薬学的に許容され得る塩を提供する。更に特定の実施形態では、本発明は、遊離塩基として本明細書に記載の式(Ia)又は(Ib)による化合物を提供する。
【0103】
いくつかの実施形態では、式(Ia)又は(Ib)の化合物は、異なる原子質量又は質量数を有する原子によって置き換えられる1個以上の原子をその中に有することにより同位体標識される。このような同位体標識された(すなわち、放射性標識された)式(Ia)又は(Ib)の化合物は、本開示の範囲内であると考えられる。式(Ia)又は(Ib)の化合物に組み込むことができる同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、塩素、及びヨウ素の同位体、それぞれ、例えばH、H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、31P、32P、35S、18F、36Cl、123I、及び125Iが挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の同位体標識された式(Ia)又は(Ib)の化合物、例えば、放射性同位体を組み込んでいるものは、薬物及び/又は基質の組織分布研究に有用である。放射性同位体トリチウム、すなわち、H及び炭素-14、すなわち、14Cは、それらの組込みの容易さ及び即時検出手段を考慮すると、この目的に対して特に有用である。例えば、式(Ia)又は(Ib)の化合物は、所与の同位体の1、2、5、10、25、50、75、90、95、又は99%で濃縮することができる。
【0104】
重水素、即ちHのようなより重い同位体による置換は、より高い代謝安定性から生じるある種の治療上の利点、例えばin vivo半減期の延長又は必要投与量の低減をもたらしうる。
【0105】
11C、18F、15O及び13N等の陽電子放出同位体での置換は、基質の受容体占有を検査するための陽電子放出断層撮影(PET)研究において有用であり得る。同位体標識された式(Ia)又は(Ib)の化合物は、一般的に、当業者に公知の従来の技法により、又は前に用いられた同位体標識されていない試薬の代わりに適切な同位体標識された試薬を使用して、以下に記述される実施例に記載されるものに類似するプロセスにより調製され得る。
製造プロセス
【0106】
本発明の式(Ia)又は(Ib)の化合物の調製は、逐次的又は収束的な合成経路で行うことができる。本発明の合成を以下の一般的なスキームに示す。得られる生成物の反応及び精製を行うために必要な技能は、当業者に公知である。以下のプロセスの説明において使用される置換基及びインデックスは、正反対に示されない限り、本明細書で与えられる意義を有する。
【0107】
出発物質、中間体又は式(Ia)又は(Ib)の化合物のうちの1つが、1つ以上の反応工程の反応条件下で安定でないか又は反応性である1つ以上の官能基を含む場合、適切な保護基(“Protective Groups in Organic Chemistry”by T.W.Greene and P.G.M.Wutts,5th Ed.,2014,John Wiley&Sons,New Yorkに記載される)を、重要な工程の前に、当該技術分野で周知の方法を適用して導入することができる。このような保護基は、文献に記載の標準的な方法を使用して、合成の後の段階で除去することができる。
【0108】
出発物質又は中間体が立体中心を含む場合、式(Ia)又は(Ib)の化合物はジアステレオマー又はエナンチオマーの混合物として得ることができ、これは、当該技術分野で周知の方法、例えばキラルHPLC、キラルSFC又はキラル結晶化によって分離することができる。ラセミ化合物は、例えば、光学的に純粋な酸との結晶化によって、又はキラル吸着剤若しくはキラル溶出剤のいずれかを使用する特異的なクロマトグラフ方法により対掌体を分離することによって、ジアステレオマー塩を介してそれらの対掌体に分離することができる。立体中心を含む出発物質及び中間体を分離して、ジアステレオマー的/エナンチオマー的に濃縮された出発物質及び中間体を得ることも、同様に可能である。式(Ia)又は(Ib)の化合物の合成において、このようなジアステレオマー的/エナンチオマー的に濃縮された出発物質及び中間体を使用すると、一般的には、式(Ia)又は(Ib)のそれぞれのジアステレオマー的/エナンチオマー的に濃縮された化合物が得られる。
【0109】
当業者は、式(Ia)又は(Ib)の化合物の合成において(そうでなければ望まない限り)、「直交保護基戦略(orthogonal protection group strategy)」を適用することで、分子中の他の保護基に影響を与えることなく、いくつかの保護基を一度に1つずつ切断することができることを認識するであろう。直交保護の原理は当該技術分野で周知であり、また、文献にも記載されている(例えば、Barany,G.,Merrifield,R.B.,J.Am.Chem.Soc.1977,99,7363;Waldmann,H.,et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1996,35,2056)。
【0110】
当業者は、反応の順序が中間体の反応性及び性質に応じて変化し得ることを認識するであろう。
【0111】
より詳細には、式(Ia)又は(Ib)の化合物は、以下に示す方法、実施例に示す方法、又は類似の方法によって製造することができる。個々の反応工程のための適切な反応条件は、当業者に公知である。また、記載された反応に影響を及ぼす文献に記載の反応条件については、例えば、以下を参照されたい:“Comprehensive Organic Transformations:A Guide to Functional Group Preparations”,Richard C.Larock,2nd Ed.,1999,John Wiley&Sons,N.Y.)。溶媒の有無にかかわらず、反応は容易に行うことができた。用いた溶媒の性質に関しては、それが反応又は関与する試薬に悪影響を及ぼさず、かつそれが試薬を少なくともある程度溶解することができるならば、特に制限はない。記載された反応は広範囲の温度にわたって起こる可能性があり、正確な反応温度は本発明にとって重要ではない。-78℃~還流までの温度範囲で、記載された反応を行うのが好都合である。反応に要する時間もまた、多くの要因、特に反応温度及び試薬の性質に依存して、大きく変動し得る。しかしながら、記載された中間体及び化合物を得るには、通常、0.5時間~数日の期間で十分である。反応順序はスキームに示された順序に限定されないが、出発物質及びそれらそれぞれの反応性に応じて、反応工程の順序を自由に変更することができる。
【0112】
出発物質若しくは中間体が市販されていない場合、又はそれらの合成が文献に記載されていない場合には、類似のアナログについての既存の手順と同様に、又は実験の項目で概説されているように、調製することができる。
【0113】
本明細書では以下の略語が使用される。
AcOH=酢酸、Boc=tert-ブチルオキシカルボニル、CAS RN=化学要約登録番号、Cbz=ベンジルオキシカルボニル、DME=ジメトキシエタン、DMF=N,N-ジメチルホルムアミド、DIPEA=N,N-ジイソプロピルエチルアミン、ESI=エレクトロスプレーイオン化、EtOAc=酢酸エチル、EtOH=エタノール、h=時間(複数可)、HO=水、HCl=塩化水素、HPLC=高速液体クロマトグラフィー、IPA=2-プロパノール、KCO=炭酸カリウム、KPO=リン酸三カリウム、LiHMDS=リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、MgSO=硫酸マグネシウム、min=分(複数可)、mL=ミリリットル、MPLC=中圧液体クロマトグラフィー、MS=質量スペクトル、NaH=水素ナトリウム、NaHCO=炭酸水素ナトリウム、NaOH=水酸化ナトリウム、NaCO=炭酸ナトリウム、NaSO=硫酸ナトリウム、nBuLi=n-ブチルリチウム、NEt=トリエチルアミン(TEA)、NHCl=塩化アンモニウム、OAc=アセトキシ、PG=保護基、Pd/C=活性炭上パラジウム、Pd(OH)=水酸化パラジウム、R=任意の基、rt=室温、SFC=超臨界流体クロマトグラフィー、TEA=トリエチルアミン、TFA=トリフルオロ酢酸、THF=テトラヒドロフラン。
【0114】
A、B及びLが本明細書に記載されている式Iの化合物は、文献の手順に類似して、及び/又は例えばスキーム1に示されているように、合成することができる。
【化10】
【0115】
したがって、4a,5,6,7,8,8a-ヘキサヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3-オン1を、ビス(トリクロロメチル)カーボネートのような尿素形成試薬の存在下において、好適な塩基、及び、例えばDCM中の炭酸水素ナトリウム等の溶媒を用いて中間体2と反応させて、式Iの化合物を得る(工程a)。更なる尿素形成試薬としては、ホスゲン、クロロ蟻酸トリクロロメチル、(4-ニトロフェニル)カーボネート、又は1,1’-カルボニルジイミダゾールが挙げられるが、これらに限定されない。この種の反応及びこれらの試薬の使用は、文献に広く記載されている(例えば、Sartori,G.,et al.,Green Chemistry2000,2,140)。当業者は、中間体として形成された塩化カルバモイルの反応性及び安定性のために、並びに望ましくない対称的な尿素副産物の形成を回避するために、試薬の添加順序がこの種の反応において重要であり得ることを認識するであろう。
【0116】
中間体1は、例えばスキーム2に示す通りに、及び/又は文献に記載される方法に類似して、合成することができる。
【化11】
【0117】
したがって、「PG」がCbz又はBoc保護基等の好適な保護基を示す3-アミノピペリジン-4-オール誘導体3は、例えばクロロ-又はブロモアセチルクロリド4でアシル化することができ、「LG」は好適な脱離基(例えば、Cl又はBr)を示し、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウム、水酸化ナトリウム又は酢酸ナトリウム等の好適な塩基を、THF、水、アセトン、又はそれらの混合物等の適切な溶媒中で使用して、中間体5を提供する(工程a)。
【0118】
中間体5は、当該技術分野で周知の方法を用いて、例えば、5をTHF中の水素化ナトリウム又はIPA及び水中のカリウムtert-ブトキシドで処理することによって、中間体6に環化することができる(工程b)。そのタイプの反応は、文献(例えば、Rafinski,Z.,et al.,J.Org.Chem.2015,80,7468;Dugar,S.,et al.,Synthesis 2015,47,712;国際公開第2005/066187号)に記載されている。
【0119】
当技術分野で公知の方法(例えば、0℃~室温の間の温度で、DCM中のTFA、ジオキサン若しくはジエチルエーテル中のHCl、又は酢酸エチル中の4-メチルベンゼンスルホン酸水和物、又はそれらの混合物を使用するBoc基、MeOH、EtOH、酢酸エチル若しくはそれらの混合物等の好適な溶媒中の活性炭上のPd又はPd(OH)等の好適な触媒の存在下で水素を使用するCbz基であり、例えば、“Protective Groups in Organic Chemistry”by T.W.Greene and P.G.M.Wuts,4th Ed.,2006,Wiley,New Yorkに記載されている)を適用して、中間体6中の保護基を除去して、中間体1を得る(工程c)。
【0120】
中間体1は、それぞれ、ジアステレオマー及びエナンチオマーの混合物として、又はラセミ混合物か、若しくはcis-若しくはtrans-3-アミノピペリジン-4-オール誘導体3のエナンチオマー的に純粋な形態かのいずれがそれらの合成に使用されるかに応じて、単一の立体異性体として、得ることができる。中間体3は市販されており、その合成は文献(例えば、国際公開第2005/066187号、国際公開第2011/0059118号、国際公開第2016/185279号)にも記載されている。
【0121】
光学的に純粋なトランス構成中間体1B及び1Cは、例えばスキーム3に従って得ることができる。適切に保護されたrac-トランス-4a,5,6,7,8,8a-ヘキサヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3-オン(7)(「PG」は、Cbz又はBoc等の好適な保護基を示す)の、当技術分野で公知の方法を用いた、例えば、ジアステレオマー塩結晶化又はキラルクロマトグラフィーによるキラル分離は、エナンチオマー的に純粋な立体異性体8及び9を提供する(工程a)。当技術分野で公知の方法(例えば、0℃~室温の間の温度でDCM中のTFA又はジオキサン若しくはジエチルエーテル中のHClを使用するBoc基、MeOH、EtOH、酢酸エチル又は混合物等の好適な溶媒中の活性炭上のPd又はPd(OH)等の好適な触媒の存在下で水素を使用するCbz基であり、例えば、“Protective Groups in Organic Chemistry”by T.W.Greene and P.G.M.Wuts,4th Ed.,2006,Wiley,New Yorkに記載されている)を適用して、中間体8及び9の保護基を除去すると、純粋なトランス配置の中間体1B及び1Cが得られる。
【化12】
【0122】
いくつかの実施形態では、中間体2は、m及びnが本明細書に記載の通りであり、Bが任意にさらに置換されたアリール又はヘテロアリール環であり、R~Rがそれぞれ独立して、水素、置換又は非置換の(シクロ)アルキル、(シクロ)アルコキシ、置換又は非置換のアリール、RN、シアノ、複素環、メチルスルホニル及びハロゲンから選択され、置換されたアルキル、アリール及びヘテロアリールが本明細書に定義の通りであり、Rが水素、アルキル又はアリールであり、Rがアルキル若しくはアリールであるか、又はR及びRが、それらが結合している窒素原子と共に、任意にさらに置換された4~11員単環又は二環の複素環を形成する、タイプIIの中間体である。このタイプの中間体は、当該技術分野で周知の方法により、スキーム4に概説される一般的な合成手順により例示されるように、調製することができる。
【化13】
【0123】
PGが好適な保護基を示し、Xが臭化物又はヨウ化物である市販の中間体10は、市販されているか又は当技術分野で公知の方法によって調製された化合物11との根岸、ヘック、スティル、鈴木、薗頭又はバックワルド・ハートウィッグ(Buchwald-Hartwig)のカップリング反応等のクロスカップリング反応に供することができ、FGは、例えばクロロ、ブロモ、ヨード、-OSOアルキル(例えば、メシレート(メタンスルホネート))、-OSOフルオロアルキル(例えば、トリフレート(トリフルオロメタンスルホネート))又は-OSOアリール(例えば、トシレート(p-トルエンスルホネート))等の好適な官能基を示す(工程a)。このタイプの反応は文献に広く記載されており、当業者に周知である。
【0124】
例えば、室温から溶媒又は溶媒混合物の沸点の間の温度で、適切な溶媒(例えば、ジオキサン、ジメトキシエタン、水、トルエン、DMF又はそれらの混合物)及び適切な塩基(例えば、NaCO、NaHCO、KF、KCO又はTEA)中、好適な触媒(例えば、トリフェニルホスフィンとのジクロロ[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-フェロセン]パラジウム(II)ジクロロメタン付加物、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)又は酢酸パラジウム(II))を使用して、中間体10を、市販されているか、又は例えば‘‘Boronic Acids-Preparation and Applications in Organic Synthesis and Medicine’’by Dennis G.Hall(ed.),1st Ed.,2005,John Wiley&Sons,New Yorkに記載され文献の手順を使用して調製された、アリール又はヘテロアリールボロン酸11a(FG=B(OH))又はボロン酸エステル11b(FG=例えば、4,4,5,5-テトラメチル-2-フェニル-1,3,2-ジオキサボロラン(ピナコール)エステル)と反応させて、中間体12を得ることができる(工程a)。このタイプの鈴木反応は文献(例えば、Suzuki,A.,Pure Appl.Chem.1991,63,419;Suzuki,A.,Miyaura,N.,Chem.Rev.1995,95,2457;Suzuki,A.,J.Organomet.Chem.1999,576,147;Polshettiwar,N.,Decottignies,A.,Len,C.,Fihri,A.,ChemSusChem 2010,3,502)に広く記載されており、当業者に周知である。あるいは、アリール-又はヘテロアリール-トリフルオロボレート11c(FG=BF)を、室温から溶媒又は溶媒混合物の沸点の間の温度で、トルエン、THF、ジオキサン、水又はそれらの混合物等の溶媒中、炭酸セシウム又はリン酸カリウム等の好適な塩基の存在下で、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)-パラジウム(0)、酢酸パラジウム(II)又はジクロロ[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]-パラジウム(II)ジクロロメタン付加物等のパラジウム触媒を適用して、クロスカップリング反応に使用することができる。
【0125】
あるいは中間体10を、室温から溶媒又は溶媒混合物の沸点の間の温度で、好適な触媒及び溶媒、例えばDMF中のテトラキス(トリフェニルホスフィン)-パラジウム(0)を用いて、アリール又はヘテロアリールスタンナン11d(FGはSn(アルキル)であり、アルキルが置換可能なn-ブチル又はメチルである)と反応させて、中間体12を得ることができる(工程a)。そのタイプのスティル反応は当該技術分野で周知であり、文献、例えば、Farina,V.,Krishnamurthy,V.,Scott,W.J.,Org.React.1997,50,1-652;Cordovilla,C.,Bartolome,C.,Martinez-Ilarduya,J.M.,Espinet,P.,ACS Catal.2015,5,3040に記載されている。
【0126】
さらに、中間体10を、室温から溶媒の沸点の間の温度で、適切な触媒及び溶媒系、例えば、DMA中の[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)及びヨウ化銅(I)、又はTHF若しくはDMF中のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を使用して、商業的に入手可能であるか、又は文献の方法によって調製されるかのいずれかの、アリール又はヘテロアリール亜鉛ハロゲン化物11e(FGはZnHal及びHal、好ましくは臭化物又はヨウ化物である)と反応させて、中間体12を得ることができる(工程a)。そのタイプの根岸反応は当該術分野で周知であり、文献、例えばGayryushin,A.,Kofink,C.,Manolikakes,G.,Knochel,P.,Org.Lett.2005,7,4871;Haas,D.,Hammann,J.M.,Greiner,R.,Knochel,P.,ACS Catal.2016,6,1540;Negishi,E.-I.,Acc.Chem.Res.1982,15,340にも記載されている。
【0127】
あるいは、中間体12は、文献の方法(例えば、DMA等の好適な溶媒中のクロロトリメチルシラン及び1,2-ジブロモエタンの存在下での10とZn粉末との反応)を適用することによって、Xが例えばヨージドである中間体10を対応する亜鉛種に変換し、亜鉛種をアリール-又はヘテロアリールブロミド-又はヨージドと前に述べた条件下でカップリングすることによって調製し得る。
【0128】
あるいは、Xが好ましくは臭化物である中間体10を、DMEのような溶媒中の無水炭酸ナトリウム等の好適な塩基の存在下で、ビス[3,5-ジフルオロ-2-[5-(トリフルオロメチル)-2-ピリジ]フェニル]イリジウム(1+)4-tert-ブチル-2-(4-tert-ブチル-2-ピリジル)ピリジンヘキサフルオロホスフェート(Ir[dF(CF)ppy](dtbbpy))PF)等の適切な光触媒、NiClグライム(ジクロロ(ジメトキシエタン)ニッケル)のようなニッケル触媒、4,4’-ジ-tert-ブチル-2,2’-ジピリジル及びトリス(トリメチルシリル)シランを使用して、420nm青色光ランプの照射下でFGが臭化物を示すアリール-又はヘテロアリールブロミド11fとの交差求電子カップリングに供することができる。このタイプの反応は、文献、例えばZhang,P.,Le,C.,MacMillan,D.W.C.,J.Am.Chem.Soc.2016,138,8084(step a)に記載されている。
【0129】
当該技術分野で周知の方法を適用し、例えばスキーム2(工程c)に記載されるように中間体12から保護基を除去すると、中間体IIが得られる(工程b)。
【0130】
あるいは、中間体12は、中間体10及びアリール又はヘテロアリールブロミド13から調製することができ、商業的に入手可能であるか、又は当技術分野で公知の方法によって調製し、工程aで上述した変換を適用して中間体14を得る(工程c)。
【0131】
あるいは、中間体14は、中間体10及びアリール又はヘテロアリールボロン酸16a(FG=B(OH))又はボロン酸エステル16b(FG=例えば、4,4,5,5-テトラメチル-2-フェニル-1,3,2-ジオキサボロラン(ピナコール)エステル)から、市販されているか又は当技術分野で公知の方法によって、当該技術分野で周知であり、文献(例えば、Duncton,M.A.J.,Estiarte,M.A.,Tan,D.,Kaub,C.,O’Mahony,D.J.R.,Johnson,R.J.,Cox,M.,Edwards,W.T.,Wan,M.,Kincaid,J.,Kelly,M.G.,Org.Lett.2008,10,3259;Gonzalez-Bobes,F.,Fu,G.C.,J.Am.Chem.Soc.2006,128,5360)にも記載されているニッケル媒介アルキル-アリール鈴木カップリング反応によって調製され得る(工程e)。
【0132】
中間体14を、工程aで上述したのと同じ合成戦略を適用して化合物15と更に反応させて、中間体12を得ることができる(工程d)。
【0133】
が、Rが水素、アルキル若しくはアリールであり、Rがアルキル若しくはアリールであるRNタイプのアミン基を示すか、又はR及びRが、それらが結合している窒素原子と共に、任意に更に置換されている4~11員の単環式若しくは二環式複素環を形成する中間体12は、例えば、14第一級又は第二級アミンRNHとの反応から、例えば好適な触媒(例えば、Pd(OAc)、Pd(dba))、配位子(例えば、BINAP、Xphos、BrettPhos、RuPhos)、塩基(例えば、CsCO、KCO、KOt-Bu、LiHMDS、KPO)及び溶媒(例えば、トルエン、THF、ジオキサン)を使用して合成することができる。そのタイプのバックワルド・ハートウィッグ反応は当技術分野で公知であり、文献(例えば、Surry,D.S.,Buchwald,S.L.,Angew.Chem.Int.Ed.2008,47,6338;Evano,G.,Blanchard,N.,Toumi,M.,Chem.Rev.2008,108,3054;Heravi,M.M.,Kheilkordi,Z.,Zadsirjan,V.,Heydari,M.,Malmir,M.,J.Organomet.Chem.2018,861,17)に記載されている(工程d)。
【0134】
が本明細書に定義される通りであるタイプIIIの中間体は、スキーム5に概説される一般的な合成手順によって例示され得る様々な条件によって調製することができる。
【化14】
【0135】
中間体18は、ホスホニウム塩又はホスホネートカルバニオン20a若しくは20bとアルデヒド又はケトン19とを使用する、広く記載されているウィッティヒ又はホーナー・ワズワース・エモンズ(HWE)反応等のオレフィン化反応によって調製することができ、これらは市販されているか、又は当技術分野で公知の方法によって調製される。
【0136】
例えば、THF、メチル-THF又はDMSO等の好適な溶媒中でのタイプ20aのアルキリデントリフェニルホスホランとのウィッティヒ反応により、中間体18が得られる(工程a)。ホスホラン20a、対応するホスホニウム塩を、THF、ジオキサン、又はメチルTHF等の好適な溶媒中にてBuLi、NaH、又はKOtBu等の好適な塩基で処理することによって形成することができ、これを単離してもよく、又はin situで使用してもよい。次いで、ホスホニウム塩は、トルエン等の好適な溶媒中のハロゲン化アリール17(式中、LGはCl、Br又はIから選択されるハロゲンであり、Bは本明細書で定義される通りである)及びトリフェニルホスフィンから容易に入手可能である(工程aa)。反応を加速するため、又は反応を完了まで駆動するために、加熱を行ってもよい(例えば、H.J.Cristau,F.Plenat in PATAI’S Chemistry of Functional Groups,Frank R.Hartleyr(ed.),7th August 2006,Saul Patai(series ed.))。
【0137】
あるいは、中間体18は、アルデヒド/ケトン19及びホスホネート20bを用いるホーナー・ワズワース・エモンズ(Horner-Wadsworth-Emmons:HWE)反応を使用して得ることができ、Rは、アルキル、例えばメチル又はエチルである。ホスホネート20bは、THF中のNaH、nBuLi、又はKOtBu等の好適な塩基及び溶媒を用いてin situでα金属化される(工程a)。ホスホネート20bは、例えば、ハロゲン化アリール17(式中、LGは、Cl、Br又はIから選択されるハロゲンであり、Bは本明細書に定義される通りである)の市販の亜リン酸トリアルキルによるアルキル化によるアルブーゾフ反応(工程ab、例えば、Brill,T.B.,Landon,S.J.,Chem.Rev.1984,84,577を参照)を用いて容易に調製される。
【0138】
両方のタイプのオレフィン化反応は、文献(例えば、Maryanoff,B.E.,Reitz,A.B.,Chem.Rev.1989,89,863;Boutagy,J.,Thomas,R.,Chem.Rev.1974,74,87;Bisceglia,J.A.,Orelli,L.R.,Current Org.Chem.2015,19,744;Wadsworth Jr.,W.S.,Org.React.1977,25,73;Nicolaou,K.C.,Harter,M.W.,Gunzner,J.L.,Nadin,A.,Liebigs Ann./Recueil 1997,1283;Stec,W.J.,Acc.Chem.Res.1983,16,411)(工程a)に広く記載されている。
【0139】
中間体18中の二重結合を、例えばMeOH、EtOH若しくはEtOAc又はそれらの混合物等の好適な溶媒中、Pd(OH)又はPd/C等の好適な触媒の存在下、大気圧下での水素化によって還元して、中間体21を得ることができる(工程b)。
【0140】
当該技術分野で周知の方法を適用し、例えばスキーム2(工程c)に記載されるように中間体21から保護基を除去すると、中間体IIIが得られる(工程c)。
【0141】
タイプIVの中間体は、スキーム6に概説される一般的な合成手順によって例示され得る様々な条件によって調製することができる。
【化15】
【0142】
LGがCl、Br又はIから選択され、Bが本明細書で定義される通りであるアリール又はハロゲン化ヘテロベンジル17から出発して、中間体22は、オレフィン化反応、例えばホスホニウム塩又はホスホネートカルバニオンとスピロケトン21とを使用する広く記載されているウィッティヒ又はホーナー・ワズワース・エモンズ(HWE)反応によって調製することができ、これらは市販されているか、又は上記のように当技術分野で公知の方法によって調製される(工程a)。
【0143】
中間体22中の二重結合を、例えばMeOH、EtOH若しくはEtOAc又はそれらの混合物等の好適な溶媒中、Pd(OH)又はPd/C等の好適な触媒の存在下、大気圧下での水素化によって還元して、中間体23を得ることができる(工程b)。
【0144】
当該技術分野で周知の方法を適用し、例えばスキーム2(工程c)に記載されるように中間体23から保護基を除去すると、中間体IVが得られる(工程c)。
【0145】
が本明細書に定義される通りであるタイプVの中間体は、スキーム7に概説される一般的な合成手順によって例示され得る様々な条件によって調製することができる。
【化16】
【0146】
中間体26は、PGが、好適な保護基、例えばCbz、Boc、又はBnであるアルコール25から調製することができ、好適な塩基、例えば水素化ナトリウム、KOtBu等を使用して、適切な溶媒(例えば、DMF又はTHF)中で、0℃と溶媒の沸点との間の温度において、LGが好適な脱離基、例えば塩素、臭素、ヨウ素、OSOアルキル(例えば、メタンスルホネート)、OSOフルオロアルキル(例えば、トリフルオロメタンスルホネート)、又はOSOアリール(例えば、p-トルエンスルホネート)である化合物24でアルキル化することができる(工程a)。
【0147】
当該技術分野で周知の方法を適用し、例えばスキーム2(工程c)に記載されるように中間体23から保護基を除去すると、中間体Vが得られる(工程b)。
【0148】
一態様では、本発明は、本明細書に記載の式(Ia)又は(Ib)の化合物を製造するプロセスであって、
第1のアミン4a,5,6,7,8,8a-ヘキサヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3-オン(1)
【化17】

を、塩基及び尿素形成試薬の存在下で、式2(式中、A、L、及びBは本明細書に記載の通りである)の第2のアミンと反応させて、
【化18】

と、塩基及び尿素形成試薬の存在下で反応させて、
前記式(Ia)又は(Ib)の化合物を形成することを含む、プロセス。
【0149】
一実施形態では、該塩基が炭酸水素ナトリウムである、本発明による方法が提供される。
【0150】
一実施形態では、該尿素形成試薬が、ビス(トリクロロメチル)カーボネート、ホスゲン、クロロ蟻酸トリクロロメチル、(4-ニトロフェニル)カーボネート、及び1,1’-カルボニルジイミダゾールから選択され、好ましくは該尿素形成試薬がビス(トリクロロメチル)カーボネートである、本発明にかかる方法が提供される。
【0151】
一態様では、本発明は、本明細書に記載のプロセスのいずれか1つに従って製造される場合、本明細書に記載の式(Ia)又は(Ib)の化合物を提供する。
MAGL阻害活性
【0152】
本発明の化合物は、MAGL阻害剤である。したがって、一態様では、本発明は、哺乳動物におけるMAGLを阻害するための、本明細書に記載の式(Ia)又は(Ib)の化合物の使用を提供する。
【0153】
更なる態様では、本発明は、哺乳動物におけるMAGLを阻害する方法で使用するための、本明細書に記載の式(Ia)又は(Ib)の化合物を提供する。
【0154】
更なる態様では、本発明は、哺乳動物におけるMAGLを阻害する医薬を調製するための、本明細書に記載の式(Ia)又は(Ib)の化合物の使用を提供する。
【0155】
更なる態様では、本発明は、哺乳動物におけるMAGLを阻害するための方法を提供し、この方法は、有効量の本明細書に記載の式(Ia)又は(Ib)の化合物を哺乳動物に投与することを含む。
【0156】
アラキドン酸を生じる天然基質である2-アラキドノイルグリセロールの加水分解に続いて酵素活性を決定することで、MAGL阻害活性について化合物をプロファイリングした。続いて、質量分析を行ってもよい。このアッセイを、以下「2-AGアッセイ」と略記する。
【0157】
2-AGアッセイを、384ウェルのアッセイプレート(PP、Greiner、カタログ番号784201)中で、総体積20μLで実施した。化合物希釈物を、ポリプロピレンプレート中、100%DMSO(VWR Chemicals 23500.297)中にて3倍希釈ステップで作成して、アッセイにおける最終濃度範囲を12.5μM~0.8pMとした。0.25μLの化合物希釈物(100%DMSO)を、アッセイ緩衝液(50mM TRIS(GIBCO、15567-027)、1mM EDTA(Fluka、03690-100ml)、及び0.01%(体積/体積)Tween)中の9μLのMAGLに加えた。振盪後、プレートを室温で15分間インキュベートした。反応を開始するために、アッセイ緩衝液中の10μLの2-アラキドノイルグリセロールを添加した。アッセイにおける最終濃度は、50pM MAGL及び8μM 2-アラキドノイルグリエロール(arachidonoylglyerol)であった。振盪及び室温で30分間インキュベーションした後、4μMのd8-アラキドン酸を含有する40μLのACNを添加することによって、反応をクエンチした。アラキドン酸の量を、オンラインSPEシステム(Agilent Rapidfire)をトリプル四重極質量分析計(Agilent 6460)と組み合わせて追跡した。C18 SPEカートリッジ(G9205A)を、ACN/水液体セットアップで使用した。質量分析計は、アラキドン酸について303.1→259.1、d8-アラキドン酸について311.1→267.0の質量遷移に従って、負エレクトロスプレーモードで操作した。化合物の活性は、強度比[アラキドン酸/d8-アラキドン酸]に基づいて算出した。
【表1】
【0158】
一態様では、本発明は、本明細書に記載の式(Ia)又は(Ib)の化合物及びそれらの薬学的に許容され得る塩を提供し、当該式(Ia)又は(Ib)の化合物及びそれらの薬学的に許容され得る塩は、本明細書に記載のMAGLアッセイで測定した場合、MAGL阻害に対するIC50が25μM未満、好ましくは10μM未満、より好ましくは5μM未満である。
【0159】
一実施形態では、本明細書に記載の式(Ia)又は(Ib)の化合物及びそれらの薬学的に許容され得る塩は、本明細書に記載のMAGLアッセイで測定した場合、IC50(MAGL阻害)値が0.000001μM~25μMの間であり、特定の化合物は、IC50値が0.000005μM~10μMの間であり、更に特定の化合物は、IC50値が0.00005μM~5μMの間である。
本発明の化合物の使用
【0160】
一態様では、本発明は、治療活性物質として使用するための、本明細書に記載の式(I)の化合物を提供する。
【0161】
更なる態様では、本発明は、哺乳動物における神経炎症、神経変性疾患、疼痛、癌、精神障害、及び/又は炎症性腸疾患の処置又は予防のための、本明細書に記載の式(I)の化合物の使用を提供する。
【0162】
一実施形態では、本発明は、哺乳動物における神経炎症及び/又は神経変性疾患の処置又は予防のための、本明細書に記載の式(I)の化合物の使用を提供する。
【0163】
一実施形態では、本発明は、哺乳動物における神経変性疾患の処置又は予防のための、本明細書に記載の式(I)の化合物の使用を提供する。
【0164】
一実施形態では、本発明は、哺乳動物における癌の処置又は予防のための、本明細書に記載の式(I)の化合物の使用を提供する。
【0165】
一実施形態では、本発明は、哺乳動物における炎症性腸疾患の処置又は予防のための、本明細書に記載の式(I)の化合物の使用を提供する。
【0166】
一実施形態では、本発明は、哺乳動物における疼痛の処置又は予防のための、本明細書に記載の式(I)の化合物の使用を提供する。
【0167】
一態様では、本発明は、哺乳動物における多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、神経毒性、脳卒中、てんかん、不安症、偏頭痛、鬱病、肝細胞癌腫、結腸癌発生、卵巣癌、神経障害性疼痛、化学療法誘発性神経障害、急性疼痛、慢性疼痛、疼痛に伴う痙縮、腹痛、過敏性腸症候群に伴う腹痛、及び/又は内臓痛の処置又は予防のための、本明細書に記載の式(I)の化合物の使用を提供する。
【0168】
好ましい実施形態では、本発明は、哺乳動物における多発性硬化症、アルツハイマー病及び/又はパーキンソン病の処置又は予防のための、本明細書に記載の式(I)の化合物の使用を提供する。
【0169】
特に好ましい実施形態では、本発明は、哺乳動物における多発性硬化症を処置又は予防するための、本明細書に記載の式(I)の化合物の使用を提供する。
【0170】
一態様では、本発明は、哺乳動物における神経炎症、神経変性疾患、疼痛、癌、精神障害、及び/又は炎症性腸疾患の処置又は予防で使用するための、本明細書に記載の式(I)の化合物を提供する。
【0171】
一実施形態では、本発明は、哺乳動物における神経炎症及び/又は神経変性疾患の処置又は予防で使用するための、本明細書に記載の式(I)の化合物を提供する。
【0172】
一実施形態では、本発明は、哺乳動物における癌の処置又は予防で使用するための、本明細書に記載の式(I)の化合物を提供する。
【0173】
一実施形態では、本発明は、哺乳動物における神経変性疾患の処置又は予防で使用するための、本明細書に記載の式(I)の化合物を提供する。
【0174】
一実施形態では、本発明は、哺乳動物における炎症性腸疾患の処置又は予防で使用するための、本明細書に記載の式(I)の化合物を提供する。
【0175】
一実施形態では、本発明は、哺乳動物における疼痛の処置又は予防で使用するための、本明細書に記載の式(I)の化合物を提供する。
【0176】
一態様では、本発明は、哺乳動物における多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、神経毒性、脳卒中、てんかん、不安症、偏頭痛、鬱病、肝細胞癌腫、結腸癌発生、卵巣癌、神経障害性疼痛、化学療法誘発性神経障害、急性疼痛、慢性疼痛、疼痛に伴う痙縮、腹痛、過敏性腸症候群に伴う腹痛、及び/又は内臓痛の処置又は予防で使用するための、本明細書に記載の式(I)の化合物を提供する。
【0177】
好ましい実施形態では、本発明は、哺乳動物における多発性硬化症、アルツハイマー病、及び/又はパーキンソン病の処置又は予防で使用するための、本明細書に記載の式(I)の化合物を提供する。
【0178】
特に好ましい実施形態では、本発明は、哺乳動物における多発性硬化症の処置又は予防で使用するための、本明細書に記載の式(I)の化合物を提供する。
【0179】
一態様では、本発明は、哺乳動物における神経炎症、神経変性疾患、疼痛、癌、精神障害、及び/又は炎症性腸疾患の処置又は予防のための医薬を調製するための、本明細書に記載の式(I)の化合物の使用を提供する。
【0180】
一実施形態では、本発明は、哺乳動物における神経炎症及び/又は神経変性疾患の処置又は予防のための医薬を調製するための、本明細書に記載の式(I)の化合物の使用を提供する。
【0181】
一実施形態では、本発明は、哺乳動物における神経変性疾患の処置又は予防のための医薬を調製するための、本明細書に記載の式(I)の化合物の使用を提供する。
【0182】
一実施形態では、本発明は、哺乳動物における癌の処置又は予防のための医薬を調製するための、本明細書に記載の式(I)の化合物の使用を提供する。
【0183】
一実施形態では、本発明は、哺乳動物における炎症性腸疾患の処置又は予防のための医薬を調製するための、本明細書に記載の式(I)の化合物の使用を提供する。
【0184】
一実施形態では、本発明は、哺乳動物における疼痛の処置又は予防のための医薬を調製するための、本明細書に記載の式(I)の化合物の使用を提供する。
【0185】
更なる態様では、本発明は、哺乳動物における多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、神経毒性、脳卒中、てんかん、不安症、偏頭痛、鬱病、肝細胞癌腫、結腸癌発生、卵巣癌、神経障害性疼痛、化学療法誘発性神経障害、急性疼痛、慢性疼痛、疼痛に伴う痙縮、腹痛、過敏性腸症候群に伴う腹痛、及び/又は内臓痛の処置又は予防のための医薬を調製するための、本明細書に記載の式(I)の化合物の使用を提供する。
【0186】
好ましい実施形態では、本発明は、哺乳動物における多発性硬化症、アルツハイマー病及び/又はパーキンソン病の処置又は予防のための医薬を調製するための、本明細書に記載の式(I)の化合物の使用を提供する。
【0187】
特に好ましい実施形態では、本発明は、哺乳動物における多発性硬化症の処置又は予防のための医薬を調製するための、本明細書に記載の式(I)の化合物の使用を提供する。
【0188】
一態様では、本発明は、哺乳動物における神経炎症、神経変性疾患、疼痛、癌、精神障害、及び/又は炎症性腸疾患の処置又は予防のための方法を提供し、この方法は、有効量の本明細書に記載の式(I)の化合物を哺乳動物に投与することを含む。
【0189】
一実施形態では、本発明は、哺乳動物における神経炎症及び/又は神経変性疾患の処置又は予防のための方法を提供し、この方法は、有効量の本明細書に記載の式(I)の化合物を哺乳動物に投与することを含む。
【0190】
一実施形態では、本発明は、哺乳動物における神経変性疾患の処置又は予防のための方法を提供し、この方法は、有効量の本明細書に記載の式(I)の化合物を哺乳動物に投与することを含む。
【0191】
一実施形態では、本発明は、哺乳動物における癌の処置又は予防のための方法を提供し、この方法は、有効量の本明細書に記載の式(I)の化合物を哺乳動物に投与することを含む。
【0192】
一実施形態では、本発明は、哺乳動物における炎症性腸疾患の処置又は予防のための方法を提供し、この方法は、有効量の本明細書に記載の式(I)の化合物を哺乳動物に投与することを含む。
【0193】
一実施形態では、本発明は、哺乳動物における疼痛の処置又は予防のための方法を提供し、この方法は、有効量の本明細書に記載の式(I)の化合物を哺乳動物に投与することを含む。
【0194】
更なる態様では、本発明は、哺乳動物における多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、神経毒性、脳卒中、てんかん、不安症、偏頭痛、鬱病、肝細胞癌腫、結腸癌発生、卵巣癌、神経障害性疼痛、化学療法誘発性神経障害、急性疼痛、慢性疼痛、疼痛に伴う痙縮、腹痛、過敏性腸症候群に伴う腹痛、及び/又は内臓痛の処置又は予防のための方法であって、有効量の本明細書に記載の式(I)の化合物を該哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。
【0195】
好ましい実施形態では、本発明は、哺乳動物における多発性硬化症、アルツハイマー病及び/又はパーキンソン病の処置又は予防のための方法を提供し、この方法は、有効量の本明細書に記載の式(I)の化合物を哺乳動物に投与することを含む。
【0196】
特に好ましい実施形態では、本発明は、哺乳動物における多発性硬化症の処置又は予防のための方法を提供し、この方法は、有効量の本明細書に記載の式(I)の化合物を哺乳動物に投与することを含む。
医薬組成物及び投与
【0197】
一態様では、本発明は、本明細書に記載の式(Ia)又は(Ib)の化合物と治療上の不活性担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0198】
一実施形態では、本発明は、それぞれ実施例32及び33に開示される医薬組成物を提供する。
【0199】
式(Ia)又は(Ib)の化合物及びそれらの薬学的に許容され得る塩は、医薬品として(例えば、医薬製剤の形態で)使用することができる。医薬製剤は、経口(例えば、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬質ゼラチンカプセル剤及び軟質ゼラチンカプセル剤、液剤、乳剤又は懸濁剤の形態)、経鼻(例えば、点鼻スプレー剤の形態)、又は直腸(例えば、坐剤の形態)等で、体内に投与することができる。しかしながら、投与は、筋肉内又は静脈内(例えば、注射液の形態)等で親的に行うこともできる。
【0200】
式(Ia)又は(Ib)の化合物、及びそれらの薬学的に許容され得る塩を、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、及び硬質ゼラチンカプセル剤の生産のために薬学的に不活性な無機又は有機アジュバントで処理することができる。ラクトース、コーンスターチ又はそれらの誘導体、タルク、ステアリン酸又はその塩等は、例えば、錠剤、糖衣錠及び硬質ゼラチンカプセル剤のアジュバントとして使用することができる。
【0201】
軟質ゼラチンカプセルに好適なアジュバントは、例えば、植物油、ワックス、脂肪、半固体物質及び液体ポリオール等である。
【0202】
液剤及びシロップ剤の生産に好適なアジュバントは、例えば、水、ポリオール、サッカロース、転化糖、グルコース等である。
【0203】
注射液に好適なアジュバントは、例えば、水、アルコール、ポリオール、グリセロール、植物油等である。
【0204】
座剤に好適なアジュバントは、例えば、天然又は硬化油、ワックス、脂肪、半固体又は液体ポリオール等である。
【0205】
さらに、医薬製剤は、防腐剤、可溶化剤、粘度増加物質、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、着香剤、浸透圧を変化させるための塩、緩衝剤、マスキング剤、又は酸化防止剤を含むことができる。また、更に他の治療上有用な物質を含有することもできる。
【0206】
投与量は広範に変化させることができ、当然、各特定の症例における個々の要件に適合させる。一般に、経口投与の場合、約0.1mg~20mg/kg体重、好ましくは約0.5mg~4mg/kg体重(例えば、約300mg/人)の毎日の投与量を、好ましくは1~3の個々の投与量に分けて、例えば同じ量で構成し得るのが適切であろう。しかしながら、示されている場合には、本明細書で与えられる上限を超えることができることは明らかである。
【実施例
【0207】
本発明は、以下の実施例を参照することによって、より完全に理解されるであろう。しかしながら、特許請求の範囲は、本実施例の範囲に限定されるものと解釈されるべきではない。
【0208】
調製例がエナンチオマーの混合物として得られる場合、純粋なエナンチオマーは、本明細書に記載の方法によって、又は当業者に公知の方法、例えばキラルクロマトグラフィー(例えば、キラルSFC)若しくは結晶化等によって、分離することができる。
【0209】
特に記載のない場合、全ての反応例及び中間体は、アルゴン雰囲気下で調製した。
実施例1及び実施例2
【0210】
(+)-又は(-)-トランス-6-[3-(4-tert-ブチルフェニル)アゼチジン-1-カルボニル]-4,4a,5,7,8,8a-ヘキサヒドロピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3-オン
及び
(-)-又は(+)-トランス-6-[3-(4-tert-ブチルフェニル)アゼチジン-1-カルボニル]-4,4a,5,7,8,8a-ヘキサヒドロピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3-オン
【化19】

アセトニトリル(1.0mL)中のrac-trans-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン塩酸塩(49.8mg、233μmol、1.0当量;BB1)及びトリメチルアミン(145mg、200μL、1.43mmol、6.2当量)の溶液に、1,1’-カルボニル-ジ(1,2,4トリアゾール)(38.2mg、233μL、1.0当量)を添加し、反応混合物を室温で撹拌した。1時間後、3-(4-(tert-ブチル)フェニル)アゼチジン4-メチルベンゼンスルホネート(84.1mg、233μmol、当量1.0;BB2)を添加し、撹拌を50℃で1時間続けた。反応混合物を濃縮し、残渣を分取HPLCによって精製して、所望の生成物を白色の固体として得た(42.8mg、50%)。エナンチオマーをキラルSFC(Chiralpak AD-Hカラム、220nm、5μm、250×20mm)によって分離して、実施例1(11.0mg、13%;第1の溶出異性体)及び実施例2(11.0mg、13%;第2の溶出異性体)を白色固体として得た。どちらの実施例についても、MS(ESI):m/z=372.3 [M+H]
実施例3及び実施例4
【0211】
(+)-又は(-)-トランス-6-[3-[4-[1-(トリフルオロメチル)シクロプロピル]フェニル]アゼチジン-1-カルボニル]-4,4a,5,7,8,8a-ヘキサヒドロピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3-オン
及び
(-)-又は(+)-トランス-6-[3-[4-[1-(トリフルオロメチル)シクロプロピル]フェニル]アゼチジン-1-カルボニル]-4,4a,5,7,8,8a-ヘキサヒドロピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3-オン
【化20】

アセトニトリル(1.0mL)中のrac-trans-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン塩酸塩(49.8mg、233μmol、1.0当量;BB1)及びトリメチルアミン(145mg、200μL、1.43mmol、6.2当量)の溶液に、1,1’-カルボニル-ジ(1,2,4トリアゾール)(38.2mg、233μL、1.0当量)を添加し、反応混合物を室温で撹拌した。1時間後、3-[4-[1-(トリフルオロメチル)シクロプロピル]フェニ]アゼチジン4-メチルベンゼンスルホネート((96.3mg、233μmol、当量1.0;BB 3)を添加し、撹拌を50℃で1時間続けた。反応混合物を濃縮し、残渣を分取HPLCによって精製して、所望の生成物を白色の固体として得た(60.6mg、55%)。エナンチオマーをキラルSFC(Chiralpak AD-Hカラム、220nm、5μm、250×20mm)によって分離して、実施例3(12.9mg、23%;第1の溶出異性体)及び実施例4(12.1mg、22%;第2の溶出異性体)を白色固体として得た。どちらの実施例についても、MS(ESI):m/z=424.4 [M+H]
実施例5及び実施例6
【0212】
(+)-又は(-)-トランス-6-[3-[[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]メトキシ]アゼチジン-1-カルボニル]-4,4a,5,7,8,8a-ヘキサヒドロピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3-オン
及び
(-)-又は(+)-トランス-6-[3-[[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]メトキシ]アゼチジン-1-カルボニル]-4,4a,5,7,8,8a-ヘキサヒドロピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3-オン
【化21】

DCM(4mL)中のビス(トリクロロメチル)カーボネート(97mg、0.33mmol、0.7当量)の氷冷溶液に、重炭酸ナトリウム(157mg、1.87mmol、4.0当量)及び3-[[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]メトキシ]アゼチジン4-メチルベンゼンスルホン酸(236mg、561μmol、1.2当量;BB 4)を添加し、反応混合物を室温で撹拌した。8時間後、rac-トランス-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン塩酸塩(90mg、467μmol、1.0当量;BB1)及びDIPEA(242mg、326μL、1.87mmol、4.0当量)を添加し、室温で5時間撹拌を続けた。反応混合物を水及びDCM上に注ぎ、層を分離した。水層をDCMで2回抽出した。有機層を水で2回洗浄し、MgSO上で乾燥し、フィルタにかけ、蒸発させた。粗生成物を分取HPLCによって精製して、所望の生成物を無色固体として得た(86mg、42%)。エナンチオマーをキラルSFC(Chiralpak AD-Hカラム、220nm、5μm、250×20mm)によって分離して、実施例5(41mg、51%;第1の溶出異性体)及び実施例6(36mg、45%;第2の溶出異性体)を淡褐色固体として得た。実施例5についてはMS(ESI):m/z=432.3 [M+H]及び実施例6についてはMS(ESI):m/z=432.2 [M+H]
実施例7
【0213】
(+)-又は(-)-トランス-6-[3-[3-クロロ-4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]アゼチジン-1-カルボニル]-4,4a,5,7,8,8a-ヘキサヒドロピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3-オン
【化22】

アセトニトリル(1.0mL)中の(+)-トランス-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン塩酸塩(17.3mg、90μmol、1.0当量;BB 5A)及びトリメチルアミン(64.2mg、89μL、630μmol、7.0当量)の溶液に、1,1’-カルボニル-ジ(1,2,4トリアゾール)(14.8mg、90μmol、1.0当量)を添加し、反応混合物を室温で撹拌した。1時間後、3-[3-クロロ-4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]アゼチジン2,2,2-トリフルオロ酢酸(39.5mg、108μmol、当量1.2;CAS RN 1260891-17-5)を添加し、60℃で1時間撹拌を続けた。反応混合物を濃縮し、残渣を分取HPLCによって精製して、所望の生成物を灰白色の固体として得た(3.4mg、9%)。MS(ESI):m /z=434.3 [M+H]
実施例8
【0214】
(-)-又は(+)-トランス-6-[3-[3-クロロ-4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]アゼチジン-1-カルボニル]-4,4a,5,7,8,8a-ヘキサヒドロピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3-オン
【化23】

アセトニトリル(1.0mL)中の(-)-トランス-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン塩酸塩(17.3mg、90μmol、1.0当量;BB 5B)及びトリメチルアミン(64.2mg、89μL、630μmol、7.0当量)の溶液に、1,1’-カルボニル-ジ(1,2,4トリアゾール)(14.8mg、90μmol、1.0当量)を添加し、反応混合物を室温で撹拌した。1時間後、3-[3-クロロ-4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]アゼチジン2,2,2-トリフルオロ酢酸(39.5mg、108μmol、当量1.2;CAS RN 1260891-17-5)を添加し、60℃で1時間撹拌を続けた。反応混合物を濃縮し、残渣を分取HPLCによって精製して、所望の生成物を灰白色の固体として得た(2.6mg、7%)。MS(ESI):m/z=434.3[M+H]
【0215】
別途示されない場合、以下の実施例を、それぞれ好適なビルディングブロックを使用して、実施例7及び実施例8について記載される合成と同様に合成した。
【表2】









構成要素の合成
【0216】
BB 1
rac-トランス-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン塩酸塩
【化24】

工程1:tert-ブチルrac-トランス-3-[(2-クロロアセチル)アミノ]-4-ヒドロキシ-ピペリジン-1-カルボキシレート
【0217】
アセトン(8mL)及び水(1mL)の混合物中のトランス-3-アミノ-1-boc-4-ヒドロキシピペリジン(1.01g、4.69mmol、1.0当量;CAS RN 1268511-99-4)及び酢酸ナトリウム三水和物(1.28g、9.38mmol、2.0当量)の懸濁液に、シリンジポンプを介して2-クロロアセチルクロリド(0.53g、0.37mL、4.69mmol、1.0当量)を室温で3時間にわたって滴下した。反応混合物を蒸発させ、粗生成物を、n-ヘプタン:EtOH/酢酸エチル(1:3)(70:30~10:90)の勾配で溶出するMPLCシステムを使用するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を無色泡状物として得た(0.44g、64%)。MS(ESI):m/z=237.1 [M+2H-tBu]
工程2:tert-ブチルrac-トランス-3-オキソ-4,4a,5,7,8,8a-ヘキサヒドロピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-6-カルボキシレート
【0218】
DCM(18mL)のtert-ブチルrac-トランス-3-[(2-クロロアセチル)アミノ]-4-ヒドロキシ-ピペリジン-1-カルボキシレート(1.18g、4.03mmol、1.0当量)の氷冷溶液に、カリウムtert-ブトキシド(1.81g、16.1mmol、4.0当量)を含む2-プロパノール(46mL)の溶液を滴下した。氷浴を取り外し、混合物を白色懸濁液を得ながら室温で24時間撹拌した。反応混合物を蒸発させ、残渣を酢酸エチル及び水に取った。水層を酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥させ、フィルタにかけ、蒸発させた。粗生成物を、DCM:メタノール(100:0~90:10)の勾配で溶出するMPLCシステムを使用するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を無色泡状物として得た(0.84g、75%)。MS(ESI):m/z=201.1 [M+2H-tBu]
工程3:rac-トランス-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン塩酸塩
【0219】
ジエチルエーテル中のHClの2M溶液(15.5mL、31.0mmol、10当量)に、tert-ブチルrac-トランス-3-オキソ-4,4a,5,7,8,8 a-ヘキサヒドロピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-6-カルボキシレート(0.80g、3.11mmol、1.0当量)を添加し、反応混合物を室温で24時間撹拌した。無色の懸濁液を冷蔵庫で0℃で2時間冷却し、沈殿をフィルタにかけ、ジエチルエーテルで洗浄し、真空下で乾燥させた。表題化合物を無色固体として得た(0.62g、98%)。MS(ESI):m/z=157.1 [M+H]
BB 2
3-(4-(tert-ブチル)フェニル)アゼチジン4-メチルベンゼンスルホネート
【化25】
【0220】
酢酸エチル(15mL)中のtert-ブチル3-(4-tert-ブチルフェニル)アゼチジン-1-カルボキシレート(1.8g、6.22mmol、1.0当量;CAS RN 1629889-13-9)の溶液に、4-メチルベンゼンスルホン酸水和物(1.66g、8.70mmol、1.4当量)を添加し、混合物を12時間加熱還流した。溶液を蒸発させ、表題化合物を褐色油状物(1.69g、66%)として得た。MS(ESI):m/z=190.2 [M+H-Ts]
BB 3
3-[4-[1-(トリフルオロメチル)シクロプロピル]フェニル]アゼチジン4-メチルベンゼンスルホネート
【化26】

工程1:tert-ブチル3-[4-[1-(トリフルオロメチル)シクロプロピル]フェニル]アゼチジン-1-カルボキシレート
【0221】
撹拌棒を備えた20mLバイアルに、1-ブロモ-4-(1-(トリフルオロメチル)シクロプロピル)ベンゼン(561mg、2.12mmol、1.0当量;CAS RN 1227160-18-0)、tert-ブチル3-ヨードアゼチジン-1-カルボキシレート(600mg、2.12mmol、1.0当量;CAS RN 254454-54-1)、トリス(トリメチルシリル)シラン(527mg、653μL、2.12mmol、1.0当量)、光触媒ビス[3,5-ジフルオロ-2-[5-(トリフルオロメチル)-2-ピリジル]フェニル]イリジウム(1+)4-tert-ブチル-2-(4-tert-ブチル-2-ピリジル)ピリジンヘキサフルオロホスフェート(23.8mg、21.2μmol、0.01当量;Ir[dF(CF3)ppy]2(dtbbpy))PF6、CAS RN 870987-63-6)及び無水炭酸ナトリウム(449mg、4.24mmol、2.0当量)を添加した。バイアルを密封し、Ar下に置いた後、ジメトキシエタン(9mL)を添加した。別のバイアルに、塩化ニッケル(II)エチレングリコールジメチルエーテル錯体(4.65mg、21.2μmol、0.01当量;CAS RN 29046-78-4)及び4,4’-ジ-tert-ブチル-2,2’-ビピリジン(5.68mg、21.2μmol、0.01当量)を添加した。バイアルを密封し、Arでパージし、ジメトキシエタン(4mL)を添加した。プレ触媒溶液を5分間超音波処理し、その後、2mLを反応容器に注入した。反応混合物をArで脱気し、青色LEDランプ(420nm)で1時間照射した。空気に曝露することによって反応をクエンチし、フィルタにかけ、溶媒を蒸発させた。粗反応混合物を、n-ヘプタン:酢酸エチル(100:0~70:30)の勾配で溶出するMPLCシステムを使用するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を無色固体として得た(0.51g、66%)。MS(ESI):m/z=286.1 [M+2H-tBu]
工程2:3-[4-[1-(トリフルオロメチル)シクロプロピル]フェニル]アゼチジン4-メチルベンゼンスルホネート
【0222】
酢酸エチル(5mL)中のtert-ブチル3-[4-[1-(トリフルオロメチル)シクロプロピル]フェニル]アゼチジン-1-カルボキシレート(0.5g、1.46mmol、1.0当量)の溶液に、4-メチルベンゼンスルホン酸水和物(0.29g、1.54mmol、1.1当量)を添加し、混合物を2時間加熱還流した。懸濁液を0℃の冷蔵庫で1時間冷却し、フィルタにかけた。沈殿を酢酸エチルで洗浄し、乾燥させて、表題化合物を無色固体として得た(0.52g、82%)。MS(ESI):m/z=242.2 [M+H]
BB 4
3-[[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]メトキシ]アゼチジン4-メチルベンゼンスルホン酸
【化27】

工程1:tert-ブチル3-[[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]メトキシ]アゼチジン-1-カルボキシレート
【0223】
DMF(25mL)中のtert-ブチル3-ヒドロキシアゼチジン-1-カルボキシレート(2.02g、11.7mmol、1.0当量)の氷冷溶液に、水素化ナトリウム(0.56g、12.8mmol、1.1当量;鉱油中55%)を分割して添加し、反応混合物を30分間撹拌した。DMF(5mL)中の1-(ブロモメチル)-2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)ベンゼン(3.0g、11.7mmol、1.0当量)の溶液を反応混合物に滴下し、撹拌を室温で3時間続けた。反応混合物を飽和NHCl水溶液(70mL)及び酢酸エチル(70mL)の混合物に注ぎ、水層を酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥させ、フィルタにかけ、蒸発させた。粗生成物を、n-ヘプタン:酢酸エチル(100:0~60:40)の勾配で溶出するMPLCシステムを使用するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を淡黄色油状物として得た(3.66g、90%)。MS(ESI):m/z=294.1 [M+2H-tBu]
工程2:3-[[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]メトキシ]アゼチジン4-メチルベンゼンスルホン酸
【0224】
酢酸エチル(130mL)中のtert-ブチル3-[[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]メトキシ]アゼチジン-1-カルボキシレート(7.8g、22.3mmol、1.0当量)の溶液に、4-メチルベンゼンスルホン酸水和物(4.61g、26.8mmol、1.2当量)を添加し、混合物を2時間加熱還流した。懸濁液を0℃の冷蔵庫で1時間冷却し、フィルタにかけた。沈殿を酢酸エチルで洗浄し、乾燥させて、表題化合物を無色固体として得た(7.3g、81%)。MS(ESI):m/z=250.2 [M+H]
BB 5A及びBB 5B
(+)-トランス-4a,5,6,7,8,8a-ヘキサヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3-オン塩酸塩及び(-)-トランス-4a,5,6,7,8,8a-ヘキサヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3-オン塩酸塩
【化28】

工程1:(+)-tert-ブチルトランス-3-オキソ-4,4a,5,7,8,8a-ヘキサヒドロピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-6-カルボキシレート及び(-)-tert-ブチルトランス-3-オキソ-4,4a,5,7,8,8a-ヘキサヒドロピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-6-カルボキシレート
【0225】
tert-ブチルrac-トランス-3-オキソ-4,4a,5,7,8,8a-ヘキサヒドロピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-6-カルボキシレート(3.93g、13.4mmol;BB1、工程2)のエナンチオマーを、共溶媒としてMeOH(20~40%)を使用してSFC(分取:Chiralpak AD-Hカラム、220nm、5μm、250×20mm;分析:Chiralpak AD-Hカラム、220nm、5μm、150×4.6mm)によって分離した。
第2の溶出エナンチオマー:(-)-tert-ブチル トランス-3-オキソ-4,4a,5,7,8,8a-ヘキサヒドロピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-6-カルボキシレート.灰白色の泡状物(1.0g、81%)。分析SFC:t=2.49分。[α] 20=-16.3°(MeOH中c=1.0)。MS(ESI):m/z=201.1 [M+2H-tBu]
第1の溶出エナンチオマー:(+)-tert-ブチル トランス-3-オキソ-4,4a,5,7,8,8a-ヘキサヒドロピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-6-カルボキシレート.灰白色の泡状物(1.2g、92%)。分析SFC:t=1.36分。[α] 20=+19.1°(MeOH中c=1.0)。MS(ESI):m/z=201.1 [M+2H-tBu]
工程2:(+)-トランス-4a,5,6,7,8,8a-ヘキサヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3-オン塩酸塩(BB 5A)及び(-)-トランス-4a,5,6,7,8,8a-ヘキサヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3-オン塩酸塩(BB 5B)
【0226】
DCM(10mL)中の(-)-tert-ブチルトランス-3-オキソ-4,4a,5,7,8,8a-ヘキサヒドロピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-6-カルボキシレート(1.0g、3.89mmol、1.0当量)の溶液に、ジオキサン中のHClの4M溶液(9.7mL、38.9mmol、10当量)を添加し、反応混合物を5℃で1時間撹拌し、次いで、室温に加温した。16時間後、溶媒を蒸発させ、白色沈殿物をフィルタにかけ、ジエチルエーテルで洗浄し、真空下で乾燥させる。表題化合物を無色固体として得た(0.74g、99%)。[α] 20=+32.9°(MeOH中c=1.0)。MS(ESI):m/z=157.1 [M+H]
【0227】
DCM(10mL)中の(+)-tert-ブチルトランス-3-オキソ-4,4a,5,7,8,8a-ヘキサヒドロピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-6-カルボキシレート(1.1g、4.31mmol、1.0当量)の溶液に、ジオキサン中のHClの4M溶液(10.8mL、43.1mmol、10当量)を添加し、反応混合物を5℃で1時間撹拌し、次いで、室温に加温した。16時間後、溶媒を蒸発させ、白色沈殿物をフィルタにかけ、ジエチルエーテルで洗浄し、真空下で乾燥させる。表題化合物を無色固体として得た(0.82g、99%)。[α] 20=-31.8°(MeOH中c=1.0)。MS(ESI):m/z=157.1 [M+H]
BB 6
3-[2-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]エチル]アゼチジン4-メチルベンゼンスルホン酸
【化29】

工程1:ジエチル(2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)ベンジル)ホスホネート
【0228】
トリエチルホスファイト中の1-(ブロモメチル)-2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)ベンゼン(1.1g、4.28mmol、1.0当量;CAS RN 239087-07-1)の溶液(1.78g、1.83mL、10.7mmol;2.5当量)を3時間撹拌しながら還流した。粗反応混合物を、n-ヘプタン:酢酸エチル(100:0~0:100)の勾配で溶出するMPLCシステムを使用するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を無色の油状物として得た(0.83g、62%)。MS(ESI):m/z=315.2 [M+H]
工程2:tert-ブチル3-[(E)-2-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]ビニル]アゼチジン-1-カルボキシレート
【0229】
THF(5mL)中水素化ナトリウム(122mg、2.8mmol、1.1当量;鉱油中55%)の氷冷懸濁液に、THF(5mL)中のジエチル(2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)ベンジル)ホスホネート(800mg、2.55mmol、1.0当量)を5分以内に添加し、混合物をこの温度で30分間撹拌した。淡褐色混合物に、THF(2.5mL)中のtert-ブチル3-ホルミルアゼチジン-1-カルボキシレート(472mg、2.55mmol、1.0当量)の溶液を滴下し、反応混合物の撹拌を0~6℃で3時間続けた。反応混合物を水上に注ぎ、酢酸エチルを注ぎ、層を分離した。有機層をブラインで1回洗浄し、MgSO4で乾燥させ、フィルタにかけ、シリカゲルで処理し、蒸発させた。化合物を、n-ヘプタン:酢酸エチル(100:0~50:50)の勾配で溶出するMPLCシステムを使用するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を無色の油状物として得た(0.61g、69%)。MS(ESI):m/z=290.1 [M+2H-tBu]
工程3:tert-ブチル3-[2-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]エチル]アゼチジン-1-カルボキシレート
【0230】
MeOH(7mL)及び酢酸エチル(7mL)中のtert-ブチル3-[(E)-2-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]ビニル]アゼチジン-1-カルボキシレート(607mg、1.76mmol、1.0当量)の混合物の溶液に、Pd/C10%(60mg、1.76mmol、1.0当量)を添加し、反応混合物を水素雰囲気下(1bar)、室温で4時間撹拌した。懸濁液をCeliteパッドでフィルタにかけ、酢酸エチルで洗浄し、真空下で乾燥させた。表題化合物を無色の油状物として得た(0.61g、98%)。MS(ESI):m/z=292.1 [M+2H-tBu]
工程4:3-[2-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]エチル]アゼチジン4-メチルベンゼンスルホン酸
【0231】
酢酸エチル(1.2mL)中のtert-ブチル3-[2-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]エチル]アゼチジン-1-カルボキシレート(111mg、0.32mmol、1.0当量)の溶液に、4-メチルベンゼンスルホン酸水和物(66mg、0.38mmol,1.2当量)を添加し、混合物を2時間加熱還流した。懸濁液を0℃の冷蔵庫で1時間冷却し、フィルタにかけた。沈殿を酢酸エチルで洗浄し、乾燥させて、表題化合物を無色固体として得た(96mg、72%)。MS(ESI):m/z=248.2 [M+H]
BB 7
3-[2-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]エチル]アゼチジン4-メチルベンゼンスルホン酸
【化30】

工程1:tert-ブチル3-(4-ブロモフェニル)アゼチジン-1-カルボキシレート
【0232】
2-プロパノール(25mL)中のtert-ブチル3-ヨードアゼチジン-1-カルボキシレート(2.0g、7.06mmol、1.0当量;CAS RN 254454-54-1)及び(4-ブロモフェニル)ボロン酸(2.84g、14.1mmol、2.0当量;CAS RN 5467-74-3)の懸濁液に、rac-トランス-2-アミノシクロヘキサン-1-オール(48.8mg、424μmol、0.06当量)、ヨウ化ニッケル(II)(132mg、424μmol、0.06当量)及びナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(6.48g、14.1mmol、2.0当量;THF中40%)をAr下、室温で添加した。反応混合物をマイクロ波照射によって80℃に30分間加熱した。次いで、混合物を水及び酢酸エチル(不溶性固体を含有する)に注ぎ入れ、水層を酢酸エチルで2回抽出した。有機層をMgSO上で乾燥し、フィルタにかけ、シリカゲルで処理し、蒸発させた。化合物を、n-ヘプタン:酢酸エチル(100:0~50:50)の勾配で溶出するMPLCシステムを使用するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を無色の油状物として得た(1.33g、60%)。MS(ESI):m/z=256.0 [M+2H-tBu]
工程2:tert-ブチル3-[4-(2,4-ジフルオロフェニル)フェニル]アゼチジン-1-カルボキシレート
【0233】
THF(10mL)及び水(1mL)の混合物中のtert-ブチル3-(4-ブロモフェニル)アゼチジン-1-カルボキシレート(1.3g、4.16mmol、1.0当量)、(2,4-ジフルオロフェニル)ボロン酸(658mg、4.16mmol、1.0当量;CAS RN 144025-03-6)、炭酸カリウム(2.88g、20.8mmol、5.0当量)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(241mg、208μmol、0.05当量)の懸濁液をマイクロ波照射によって110℃まで15分間加熱した。次いで、混合物を水及び酢酸エチルに注ぎ入れ、水層を酢酸エチルで3回抽出した。有機層をMgSO上で乾燥し、フィルタにかけ、シリカゲルで処理し、蒸発させた。化合物を、n-ヘプタン:酢酸エチル(100:0~50:50)の勾配で溶出するMPLCシステムを使用するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を黄色油状物として得た(1.20g、79%)。MS(ESI):m/z=290.2 [M+2H-tBu]
工程3:3-[2-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]エチル]アゼチジン4-メチルベンゼンスルホン酸
【0234】
酢酸エチル(5mL)中のtert-ブチル3-[4-(2,4-ジフルオロフェニル)フェニル]アゼチジン-1-カルボキシレート(1.20g、3.47mmol、1.0当量)の溶液に、4-メチルベンゼンスルホン酸水和物(0.72g、4.17mmol、1.2当量)を添加し、混合物を2時間加熱還流した。懸濁液を0℃の冷蔵庫で1時間冷却し、フィルタにかけた。沈殿を酢酸エチルで洗浄し、乾燥させて、表題化合物を無色固体として得た(0.92g、63%)。MS(ESI):m/z=246.2 [M+H]
BB 8
3-[4-(2,2,2-トリフルオロエチル)フェニル]アゼチジン4-メチルベンゼンスルホン酸
【化31】

工程1:tert-ブチル3-[4-(2,2,2トリフルオロエチル)フェニル]アゼチジン-1-カルボキシレート
【0235】
生成物を、無色の油状物として1-ブロモ-4-(2,2,2トリフルオロエチル)ベンゼン(CAS RN 155820-88-5)からBB3/工程1と同様にして得た。MS(ESI):m/z=260.1 [M+2H-tBu]
工程2:3-[4-(2,2,2-トリフルオロエチル)フェニル]アゼチジン4-メチルベンゼンスルホン酸
【0236】
酢酸エチル(12mL)中のtert-ブチル3-[4-(2,2,2トリフルオロエチル)フェニル]アゼチジン-1-カルボキシレート(0.98g、3.09mmol、1.0当量)の溶液に、4-メチルベンゼンスルホン酸水和物(0.64g、3.71mmol、1.2当量)を添加し、混合物を2時間加熱還流した。懸濁液を0℃の冷蔵庫で1時間冷却し、フィルタにかけた。沈殿を酢酸エチルで洗浄し、乾燥させて、表題化合物を無色固体として得た(0.54g、45%)。MS(ESI):m/z=216.1 [M+H]
BB 9
6-[(2,4-ジフルオロフェニル)メチル]-2-アザスピロ[3.3]ヘプタン2,2,2-トリフルオロ酢酸
【化32】

工程1:(2,4-ジフルオロベンジル)トリフェニルホスホニウムブロミド
【0237】
ACN(10mL)中のトリフェニルホスフィン(1.27g、4.83mmol、1.0当量)の溶液に、1-(ブロモメチル)-2,4-ジフルオロベンゼン(1.0g、4.83mmol、1.0当量;CAS RN 23915-07-3)をAr下で添加した。反応混合物を80℃で3時間撹拌し、次いで、室温に冷却した。tert-ブチルメチルエーテル(100mL)を添加し、懸濁液を室温で30分間撹拌した。固体を濾別し、tert-ブチルメチルエーテルで洗浄し、固体を乾燥させた。表題化合物を白色固体(2.02g、98%)として得た。MS(ESI):m/z=439.2 [M+H]
工程2:tert-ブチル6-[(2,4-ジフルオロフェニル)メチレン]-2-アザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボキシレート
【0238】
乾燥THF(10mL)中の(2,4-ジフルオロベンジル)トリフェニルホスホニウムブロミド(1.7g、3.62mmol、1.0当量)の溶液に、LiHMDS(7.24mL、7.24mmol、2.0当量;THF中1M溶液)を-78℃でAr下で添加し、反応混合物を2時間撹拌した。次いで、室温で、tert-ブチル6-オキソ-2-アザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボキシレート(1.53g、7.24mmol、2.0当量;CAS RN 1181816-12-5)を添加し、混合物を85℃で一晩撹拌した。tert-ブチルメチルエーテルを添加し、沈殿(トリフェニルホスフィンオキシド)を濾別した。濾液を濃縮し、n-ヘプタン:酢酸エチル(100:0~70:30)の勾配で溶出するMPLCシステムを使用するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を白色固体として得た(0.35g、30%)。MS(ESI):m/z=266.2 [M+2H-tBu]
工程3:tert-ブチル6-[(2,4-ジフルオロフェニル)メチル]-2-アザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボキシレート
【0239】
酢酸エチル(10mL)中のtert-ブチル6-[(2,4-ジフルオロフェニル)メチレン]-2-アザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボキシレート(0.35g、1.09mmol、1.0当量)の溶液に、Pd/C10%(116mg、0.11mmol、0.1当量)を加え、反応混合物を水素雰囲気下(1bar)、室温で2時間撹拌した。懸濁液をCeliteパッドでフィルタにかけ、酢酸エチルで洗浄し、真空下で乾燥させた。表題化合物を白色固体(0.35g、98%)として得た。MS(ESI):m/z=268.2 [M+2H-tBu]
工程4:6-[(2,4-ジフルオロフェニル)メチル]-2-アザスピロ[3.3]ヘプタン2,2,2-トリフルオロ酢酸
【0240】
DCM(3mL)中のtert-ブチル6-[(2,4-ジフルオロフェニル)メチル]-2-アザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボキシレート(55mg、170μmol、1.0当量)の溶液に、TFA(78mg、52μl、680μmol、4.0当量)を加えた。得られた反応混合物を室温で2時間撹拌し、次いで、真空中で濃縮した(トルエンとの共沸)。表題化合物が無色油状物として得られ、これをさらに精製することなく次の工程に使用した(58 mg、定量的)。MS(ESI):m/z=224.2 [M+H]
BB 10
5-(アゼチジン-3-イル)-2-(2-クロロフェノキシ)ピリジン4-メチルベンゼンスルホン酸
【化33】

工程1:tert-ブチル3-(6-(2-クロロフェノキシ)ピリジン-3-イル)アゼチジン-1-カルボキシレート
【0241】
5-ブロモ-2-(2-クロロフェノキシ)ピリジン(CAS RN 1240670-82-9)及びtert-ブチル3-ブロモアゼチジン-1-カルボキシレート(CAS RN 1064194-10-0)から出発してBB 3/工程1と同様にして生成物を得、所望の化合物を黄色の油状物として得た(0.44g、48%)。MS(ESI):m/z=361.2 [M+H]
工程2:5-(アゼチジン-3-イル)-2-(2-クロロフェノキシ)ピリジン4-メチルベンゼンスルホン酸
【0242】
酢酸エチル(6mL)中のtert-ブチル3-(6-(2-クロロフェノキシ)ピリジン-3-イル)アゼチジン-1-カルボキシレート(436mg、1.21mmol、1.0当量)の溶液に、4-メチルベンゼンスルホン酸水和物(237mg、1.24mmol、1.03当量)を添加し、混合物を18時間加熱還流した。懸濁液を0℃の冷蔵庫で1時間冷却し、フィルタにかけた。沈殿をジエチルエーテルで洗浄し、乾燥させて、表題化合物を白色固体として得た(470mg、89%)。MS(ESI):m/z=261.1 [M+H]
BB 11
2-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェノキシ]-7-アザスピロ[3.5]ノナン2,2,2-トリフルオロ酢酸
【化34】

工程1:tert-ブチル2-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェノキシ]-7-アザスピロ[3.5]ノナン-7-カルボキシレート
【0243】
THF(8mL)中のtert-ブチル2-ヒドロキシ-7-アザスピロ[3.5]ノナン-7-カルボキシレート(442mg、1.83mmol、1.0当量;CAS RN 240401-28-9)の溶液に、2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェノール(330mg、1.83mmol、1.0当量;CAS RN 77227-78-2)及びトリフェニルホスフィン(529mg、2.02mmol、1.1当量)を加えた。室温で5分間撹拌した後、溶液を氷浴中で冷却し、DEAD(351mg、319μl、2.02mmol、1.1当量)を10分間かけて滴下した。氷浴中で1時間撹拌した後、混合物の撹拌を室温で5時間続けた。反応混合物を水及びジエチルエーテル上に注ぎ、層を分離した。有機層を水、NaOH(1M)水溶液及びブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、フィルタにかけ、蒸発させた。粗生成物を、n-ヘプタン:酢酸エチル(100:0~60:40)の勾配で溶出するMPLCシステムを使用するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を無色固体として得た(0.63g、85%)。MS(ESI):m/z=348.1 [M+2H-tBu]
工程2:2-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェノキシ]-7-アザスピロ[3.5]ノナン2,2,2-トリフルオロ酢酸
【0244】
DCM(1mL)中のtert-ブチル2-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェノキシ]-7-アザスピロ[3.5]ノナン-7-カルボキシレート(70mg、174μmol、1.0当量)の溶液に、TFA(66.8μl、868μmol、5.0当量)を加え、混合物を室温で20時間撹拌した。溶液を蒸発させて、表題化合物を無色固体(73mg、100%)として得た。MS(ESI):m/z=304.2 [M+H]
実施例32
【0245】
式(Ia)又は(Ib)の化合物は、以下の組成の錠剤を生産するために、有効成分として、それ自体公知の様式で使用することができる。
錠剤あたり
有効成分 200mg
微結晶セルロース 155mg
コーンスターチ 25mg
タルク 25mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 20mg
425mg
実施例33
【0246】
式(Ia)又は(Ib)の化合物は、以下の組成のカプセルを製造するための有効成分としてそれ自体公知の方法で使用することができる。
カプセル剤あたり
有効成分 100.0mg
コーンスターチ 20.0mg
ラクトース 95.0mg
タルク 4.5mg
ステアリン酸マグネシウム 0.5mg
220.0mg
【国際調査報告】