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  • 特表-有機溶媒中のポリチオフェン類 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-24
(54)【発明の名称】有機溶媒中のポリチオフェン類
(51)【国際特許分類】
   C08L 65/00 20060101AFI20221116BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20221116BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20221116BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20221116BHJP
   C08G 61/12 20060101ALI20221116BHJP
   C09D 5/24 20060101ALI20221116BHJP
   C09D 181/02 20060101ALI20221116BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20221116BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20221116BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20221116BHJP
【FI】
C08L65/00
C08K5/00
C08L33/06
C08L83/04
C08G61/12
C09D5/24
C09D181/02
C09D7/20
C09D7/63
C09D7/65
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518881
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(85)【翻訳文提出日】2022-04-27
(86)【国際出願番号】 EP2020077250
(87)【国際公開番号】W WO2021063956
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】19200608.8
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19219007.2
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.SPAN
(71)【出願人】
【識別番号】515131116
【氏名又は名称】ヘレウス ドイチェラント ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ザウアー-シュタイグリッツ リュディガー
(72)【発明者】
【氏名】レーベニヒ ヴィルフリート
(72)【発明者】
【氏名】ザウター アーミン
(72)【発明者】
【氏名】フィーマン フィリップ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J032
4J038
【Fターム(参考)】
4J002CE001
4J002DG046
4J002DH026
4J002EA057
4J002EC037
4J002EH037
4J002EH147
4J002EV236
4J002EW026
4J002EW126
4J002FD206
4J002FD207
4J002GQ00
4J032BA03
4J032BA04
4J032BB01
4J032BB03
4J032BC02
4J032CG01
4J038CG142
4J038DK001
4J038JC13
4J038JC24
4J038KA09
4J038NA20
4J038PB09
4J038PC02
4J038PC08
(57)【要約】
本発明は、i)構造(Ia)又は(Ib)のモノマー単位を含む少なくとも1種のポリチオフェンであって、この式中、*は隣接するモノマー単位への結合を示し、X、ZはO又はSを表し、R~Rは、互いに独立に、水素原子又は有機残基Rを表すが、ただし、残基R~Rの少なくとも1つ、及び残基R及びRの1つは、有機残基Rを表す少なくとも1種のポリチオフェンと、ii)1つ若しくは2つの無機酸基、好ましくは1つ若しくは2つのスルホン酸基、1つ若しくは2つの硫酸基、1つ若しくは2つのホスホン酸基、若しくは1つ若しくは2つのリン酸基を有する少なくとも1種の有機化合物、又はこの有機化合物の塩であって、この有機化合物又はその塩の分子量は1,000g/mol未満である少なくとも1種の有機化合物又はこの有機化合物の塩と、iii)少なくとも1種の有機溶媒とを含む組成物に関する。本発明は、組成物を調製するためのプロセス、このプロセスによって得られる組成物、層構造、層構造の調製のためのプロセス、このプロセスによって得られる層構造、電子部品、及び本発明に係る組成物の使用にも関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)構造(Ia)又は(Ib)のモノマー単位を含む少なくとも1種のポリチオフェンであって、
【化1】
前記構造中、
*は隣接するモノマー単位への結合を示し、
X、ZはO又はSを表し、
~Rは、互いに独立に、水素原子又は有機残基Rを表すが、ただし、残基R~Rの少なくとも1つ、及び残基R及びRの1つは、有機残基Rを表す少なくとも1種のポリチオフェンと、
ii)1つ若しくは2つの無機酸基、好ましくは1つ若しくは2つのスルホン酸基、1つ若しくは2つの硫酸基、1つ若しくは2つのホスホン酸基、若しくは1つ若しくは2つのリン酸基を有する少なくとも1種の有機化合物、又は前記有機化合物の塩であって、前記有機化合物又はその塩の分子量は1,000g/mol未満である少なくとも1種の有機化合物又は前記有機化合物の塩と、
iii)少なくとも1種の有機溶媒と
を含む組成物。
【請求項2】
前記組成物が分散液であり、前記ポリチオフェンi)及び前記有機化合物ii)が、前記有機溶媒iii)中に均一に分散している複合体を形成している請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記有機残基Rがアニオン性基を有さない請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリチオフェンが、X及びZがOを表す構造(Ia)のモノマー単位を含むホモポリマー又はコポリマーであり、R、R、R及びRからなる群から選択される残基のうち3つが水素原子を表し、残りの残基が構造式(IIa)を有するエーテル基を表し、
-(CR-O-R
(IIa)
前記式(IIa)中、
は、H、C~C10-アルキル基、又はC~C10-アルコキシ基、好ましくはHであり、
は、H、C~C10-アルキル基、又はC~C10-アルコキシ基、好ましくはHであり、
nは0~10の範囲の整数であり、
は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、エーテル基又はエステル基、好ましくはC~C30アルキル基である
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリチオフェンが、X及びZがOを表す構造(Ia)のモノマー単位を含むホモポリマー又はコポリマーであり、R、R、R及びRからなる群から選択される残基のうち3つが水素原子を表し、残りの残基が式(IIb)を有するアルキル基を表し、
-C2n+1
(IIb)
前記式(IIb)中、nは1~20の範囲の整数である
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリチオフェンが、X及びZがOを表す構造(Ia)のモノマー単位を含むホモポリマー又はコポリマーであり、R、R、R及びRからなる群から選択される残基のうち3つが水素原子を表し、残りの残基が分枝状のアルキル基又は分枝状のエーテル基を表す請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記残りの残基が、構造式(IIc)を有する分枝状のエーテル基を表し、
-(CR1011-O-R12
(IIc)
前記式(IIc)中、
10は、H、C~C10-アルキル基、又はC~C10-アルコキシ基であり、
11は、H、C~C10-アルキル基、又はC~C10-アルコキシ基であり、
nは0~10の範囲の整数であり、
12は、分枝状の有機残基、好ましくは分枝状のアルキル基又は分枝状のアリールアルキル基、より好ましくはアルキル鎖中に不飽和C=C結合を有さない分枝状のアルキル基又は分枝状のアリールアルキル基である
請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
12が式(IId)を有する有機残基であり、
-(CHR13-R14
(IId)
前記式(IId)中、
mは1、2又は3であり、
13は、H又はC~C12アルキル基であるが、ただし、構造単位-CHR13-残基のただ1つにおいてR13はC~C12アルキル基であり、
14は、C~C10-アルキル基又はアリール基である
請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
iv)少なくとも1種の非導電性のオリゴマーバインダー又はポリマーバインダー、好ましくはポリ(メタ)アクリレート及び/又はポリシリコーン
をさらに含む請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記有機化合物ii)がアニオン性界面活性剤、好ましくは1価のスルホン酸又はその塩である請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1種の有機溶媒iii)が、トルエン、キシレン、アニソール、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸オクチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、酢酸1-メトキシ-2-プロピル、1-メトキシ-2-プロパノール、ブタノール、2-プロパノール、エタノール及びこれらの混合物、又はこれらの非プロトン性溶媒の1種若しくは2種と1種若しくは2種のさらなる溶媒との混合物からなる群から選択される請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物の総重量に基づいて、30ppm未満の鉄含有量を有する請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
組成物の調製方法であって、
I)
i)構造(VIa)又は(VIb)のチオフェンモノマーであって、
【化2】
前記構造中、
X、ZはO又はSを表し、
~Rは、互いに独立に、水素原子又は有機残基Rを表すが、ただし、残基R~Rの少なくとも1つ、及び残基R及びRの1つは、有機残基Rを表すチオフェンモノマー、
ii)1つ若しくは2つの無機酸基、好ましくは1つ若しくは2つのスルホン酸基、1つ若しくは2つの硫酸基、1つ若しくは2つのホスホン酸基、若しくは1つ若しくは2つのリン酸基を有する少なくとも1種の有機化合物、又は前記有機化合物の塩であって、前記有機化合物又はその塩の分子量は1,000g/mol未満である少なくとも1種の有機化合物又は前記有機化合物の塩、
iii)少なくとも1種の有機溶媒、並びに
iv)少なくとも1種の酸化剤、好ましくは少なくとも1種の有機過酸化物
を含む反応混合物を提供する工程と、
II)ポリチオフェンの形成のために、前記チオフェンモノマーを酸化重合させる工程と
を含む方法。
【請求項14】
工程I)で提供される前記反応混合物が、X及びZがOを表す構造(VIa)のチオフェンモノマーを含み、R、R、R及びRからなる群から選択される残基のうち3つが水素原子を表し、残りの残基が構造式(IIa)を有するエーテル基を表し、
-(CR-O-R
(IIa)
前記式(IIa)中、
は、H、C~C10-アルキル基、又はC~C10-アルコキシ基、好ましくはHであり、
は、H、C~C10-アルキル基、又はC~C10-アルコキシ基、好ましくはHであり、
nは0~10の範囲の整数であり、
は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、エーテル基又はエステル基、好ましくはC~C30アルキル基である
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程I)で提供される前記反応混合物が、X及びZがOを表す構造(VIa)のチオフェンモノマーを含み、R、R、R及びRからなる群から選択される残基のうち3つが水素原子を表し、残りの残基が式(IIb)を有するアルキル基を表し、
-C2n+1
(IIb)
前記式(IIb)中、nは1~20の範囲の整数である
請求項13に記載の方法。
【請求項16】
工程I)で提供される前記反応混合物が、X及びZがOを表す構造(VIa)のチオフェンモノマーを含み、R、R、R及びRからなる群から選択される残基のうち3つが水素原子を表し、残りの残基が分枝状のアルキル基又は分枝状のエーテル基を表す請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記残りの残基が、構造式(IIc)を有する分枝状のエーテル基を表し、
-(CR1011-O-R12
(IIc)
前記式(IIc)中、
10は、H、C~C10-アルキル基、又はC~C10-アルコキシ基であり、
11は、H、C~C10-アルキル基、又はC~C10-アルコキシ基であり、
nは0~10の範囲の整数であり、
12は、分枝状の有機残基、好ましくは分枝状のアルキル基又は分枝状のアリールアルキル基、より好ましくはアルキル鎖中に不飽和C=C結合を有さない分枝状のアルキル基又は分枝状のアリールアルキル基である
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
12が式(IId)を有する有機残基であり、
-(CHR13-R14
(IId)
前記式(IId)中、
mは1、2又は3であり、
13は、H又はC~C12アルキル基であるが、ただし、構造単位-CHR13-残基のただ1つにおいてR13はC~C12アルキル基であり、
14はC~C10-アルキル基又はアリール基である
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
基板(101)と、前記基板(101)上に配置された導電層(102)とを含む層構造(100)であって、前記導電層(102)は、請求項1及び請求項4から請求項8のいずれか1項において定義されるポリチオフェンi)、並びに請求項1、請求項3及び請求項10のいずれか1項において定義される1つ若しくは2つの無機酸基、好ましくは1つ若しくは2つのスルホン酸基、1つ若しくは2つの硫酸基、1つ若しくは2つのホスホン酸基、若しくは1つ若しくは2つのリン酸基を有する少なくとも1種の有機化合物ii)、又は前記有機化合物の塩を含む層構造(100)。
【請求項20】
層構造(100)の調製方法であって、
A)基板(101)を提供する工程と、
B)請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の組成物、又は請求項13から請求項18のいずれか1項に記載の方法により得られる組成物で基板(101)をコーティングする工程と、
C)導電層(102)の形成のために、前記有機溶媒iii)を少なくとも部分的に除去する工程と
を含む方法。
【請求項21】
請求項19に記載の層構造(100)又は請求項20に記載の方法によって得ることができる層構造を含む電子部品。
【請求項22】
電子部品における導電層を製造するため、又は帯電防止コーティングを製造するための、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の組成物又は請求項13から請求項18のいずれか1項に記載の方法によって得られる組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のポリチオフェンを含む組成物に関する。本発明は、組成物を調製するためのプロセス、このプロセスによって得られる組成物、層構造、層構造の調製のためのプロセス、このプロセスによって得られる層構造、電子部品、及び本発明に係る組成物の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
ポリチオフェンは、本質的に導電性のポリマーとして広く使用されている。特にポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)は、固体電解キャパシタ、帯電防止コーティング、エレクトロルミネセンスランプ、有機発光ダイオード、有機太陽電池等、多くの産業用途を見出している。これらの用途の多くには、PEDOTは、水又は水と他の溶媒との混合物中に分散された、対イオンとしてポリスチレンスルホン酸を用いたポリマー複合体(「PEDOT/PSS」とも呼ばれる)として使用されている。
【0003】
応用範囲を広げるために、PEDOTを非プロトン性溶媒で供給するための努力がなされている。国際公開第2012/059215A1号パンフレットは、有機非プロトン性溶媒に可溶な分散液を作る対イオンとしてブロックコポリマーを使用することを開示する。このブロックコポリマーの溶解パラメータは、得られるPEDOT複合体の溶解度特性を支配し、制限する。従って、PGMEA又はエタノール等の溶媒を加えると、分散液は不安定になる。
【0004】
韓国特許出願公開第100945056号明細書は、界面活性剤の存在下、水中での3,4-エチレンジオキシチオフェンの重合を記載する。その後、溶媒は除去され、有機溶媒に置き換えられる。しかしながら、このような再分散プロセスは、費用がかかり好ましくない。
【0005】
McCulloughら(「A Simple Method to Prepare Head-to-Tail Coupled, Regioregular Poly(3-alkylthiophenes) Using Grignard Metathesis」、Adv.Mater. 1999、11、250)は、多くの溶媒に分散可能な位置規則性コポリマーの合成を記載する。しかしながら、有機金属化合物を介したカップリングは費用がかかるうえ、得られたポリマーは限られた導電性しか示さない。従って、その用途は、層を介した導電性のみが要求される正孔輸送層に限定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2012/059215A1号パンフレット
【特許文献2】韓国特許出願公開第100945056号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】McCulloughら、「A Simple Method to Prepare Head-to-Tail Coupled, Regioregular Poly(3-alkylthiophenes) Using Grignard Metathesis」、Adv.Mater. 1999、11、250
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、チオフェンモノマー、好ましくは3,4-エチレンジオキシチオフェンモノマーに基づく導電性ポリマーに関する先行技術の欠点を克服することであった。
【0009】
特に、有機溶媒、好ましくは有機非プロトン性溶媒をベースとし、広範囲の溶媒に分散可能なポリチオフェンを含む組成物を提供することが本発明の目的であった。この組成物は、そのような組成物を用いて作製された導電層が高導電性かつ高透明性であることを特徴とするべきでもある。さらには、この組成物は、ポリアクリレート等の不活性ポリマーとブレンドした場合、低いシート抵抗を達成できるべきである。さらには、この組成物は、有機溶媒で容易に希釈することができることを特徴とするべきである。
【0010】
このような有利な組成物をできるだけ少ない工程数で調製できるプロセスを提供することも本発明の目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的の少なくとも1つ、好ましくは2つ以上を少なくとも部分的に解決することへの寄与は、独立請求項によってなされる。従属請求項は、上記目的の少なくとも1つを少なくとも部分的に解決することに寄与する好ましい実施形態を提供する。
【0012】
本発明に係る目的のうちの少なくとも1つを解決することへの寄与は、組成物1の実施形態1であって、
i)構造(Ia)又は(Ib)のモノマー単位を含む、少なくとも1種のポリチオフェン、好ましくは少なくとも1種のカチオン性ポリチオフェンであって、
【化1】
上記構造中、
は隣接するモノマー単位への結合を示し、
X、ZはO又はSを表し、
~Rは、互いに独立に、水素原子又は有機残基Rを表すが、ただし、残基R~Rの少なくとも1つ、及び残基R及びRの1つは有機残基Rを表す少なくとも1種のポリチオフェン、好ましくは少なくとも1種のカチオン性ポリチオフェンと、
ii)1つ若しくは2つの無機酸基、好ましくは1つ若しくは2つのスルホン酸基、1つ若しくは2つの硫酸基、1つ若しくは2つのホスホン酸基、若しくは1つ若しくは2つのリン酸基を有する少なくとも1種の有機化合物、又はこの有機化合物の塩であって、この有機化合物又はその塩の分子量は、1,000g/mol(モル)未満、好ましくは900g/mol未満、より好ましくは800g/mol未満、さらにより好ましくは700g/mol未満、よりさらにより好ましくは600g/mol未満、さらにより好ましくは500g/mol未満である少なくとも1種の有機化合物又はこの有機化合物の塩と、
iii)少なくとも1種の有機溶媒と
を含む組成物1の実施形態1によってなされる。
【0013】
驚くべきことに、上記の構造(Ia)又は(Ib)のモノマー単位を含むポリチオフェン、例えば3,4-エチレンジオキシチオフェンとエチレン基の水素原子の少なくとも1つが有機残基Rによって置換されている3,4-エチレンジオキシチオフェンの誘導体とのコポリマーであって、1つ又は2つの無機酸基、例えばスルホン酸基(-SOOH)、硫酸基(-O-SOOH)、ホスホン酸基(-PO(OH))、リン酸基(-O-PO(OH))、又はこれらの基の少なくとも1つの塩を有し、かつ分子量が1,000g/mol未満である有機化合物、好ましくは1価のスルホン酸アニオンを対イオンとして使用するコポリマーは、広範囲の溶媒に分散させることが可能であるということが見出された。有機残基Rがアルキル基、特にnが1~20の範囲の整数である式-C2n+1を有する直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、好ましくはnが3~15の範囲、より好ましくは3~10の範囲の整数である分枝状のアルキル基に相当する場合、又は有機残基Rが分枝状のエーテル基に相当する場合、このようなポリチオフェンと1つ又は2つの無機酸基を有する上述の有機化合物との複合体は、これらの複合体がプロトン性溶媒又は非プロトン性溶媒中に分散している組成物、好ましくは分散液に、大量の非導電性バインダー、特にポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル樹脂及びポリシリコーンを、これらの組成物の電気伝導率を不当に下げることなく添加できることから特に有利に作用する。
【0014】
本発明に係る組成物1の実施形態2では、組成物1はその実施形態1に従って設計されており、その組成物は、分散液又は溶液の形態で存在し(従って、有機溶媒iii)、好ましくは非プロトン性溶媒iii)は分散媒又は溶媒として機能する)、ポリチオフェンi)及び有機化合物ii)(これは、好ましくはアニオンの形態で存在する)、好ましくはコポリマーi)及び有機化合物ii)は、有機溶媒iii)中に分散又は溶解、好ましくは均質に分散又は溶解した複合体を形成する。最も好ましくは、本発明に係る組成物は、ポリチオフェンi)及び有機化合物ii)の複合体が有機溶媒iii)中に均一に分散した分散液である。しかしながら、本発明に係る組成物において、「分散液」と「溶液」との間の遷移は、ポリチオフェンi)、有機化合物ii)及び有機溶媒iii)の実際の性質に依存して流動的である可能性がある。
【0015】
本発明に係る組成物1の実施形態3では、組成物1はその実施形態2に従って設計されており、ポリチオフェン/有機化合物複合体i)/ii)は、いずれの場合も当該分散液の総重量に基づいて、30%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下の重量含有率で分散される。
【0016】
本発明に係る組成物1の実施形態4では、組成物1はその実施形態1から実施形態3のいずれか1つに従って設計されており、有機残基Rはアニオン性基を有さない。好ましくは、残基Rは、スルホン酸基又はこの基の塩を有さない。
【0017】
本発明に係る組成物1の実施形態5では、組成物1はその実施形態1から実施形態4のいずれか1つに従って設計されており、有機残基Rは、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、エーテル基及びエステル基からなる群から選択される。
【0018】
本発明に係る組成物1の実施形態6では、組成物1はその実施形態1から実施形態5のいずれか1つに従って設計されており、上記ポリチオフェンは、X及びZがOを表す構造(Ia)又は構造(Ib)のモノマー単位、好ましくはX及びZがOを表す構造(Ia)のモノマー単位を含むホモポリマー又はコポリマーであり、R、R、R及びRからなる群から選択される残基のうち3つ、並びにR及びRからなる群から選択される残基のうちの1つは、水素原子を表し、残りの残基は構造式(IIa)を有するエーテル基を表し、
-(CR-O-R
(IIa)
上記式(IIa)中、
は、H、C~C10-アルキル基、好ましくはC~C-アルキル基、より好ましくはメチル基、又はC~C10-アルコキシ基、好ましくはC~C-アルコキシ基、より好ましくはメトキシ基であり、最も好ましくはRはHであり、
は、H、C~C10-アルキル基、好ましくはC~C-アルキル基、より好ましくはメチル基、又はC~C10-アルコキシ基、好ましくはC~C-アルコキシ基、より好ましくはメトキシ基であり、最も好ましくはRはHであり、
nは、0~10の範囲、好ましくは1~6の範囲、より好ましくは1~3の範囲の整数であり、最も好ましくはnは1であり、
は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、エーテル基又はエステル基、好ましくはC~C30アルキル基、より好ましくはC~C25-アルキル基、さらにより好ましくはC~C20-アルキル基である。
【0019】
本発明に係る組成物1の実施形態7では、組成物1はその実施形態1から実施形態5のいずれか1つに従って設計されており、上記ポリチオフェンは、X及びZがOを表す構造(Ia)又は構造(Ib)のモノマー単位、好ましくはX及びZがOを表す構造(Ia)のモノマー単位を含むホモポリマー又はコポリマーであり、R、R、R及びRからなる群から選択される残基のうち少なくとも2つ及びR及びRからなる群から選択される残基のうちの1つ、好ましくはR、R、R及びRからなる群から選択される残基のうち3つ、並びにR及びRからなる群から選択される残基のうちの1つは水素原子を表し、残りの残基、好ましくは残りの残基は、式(IIb)を有するアルキル基を表し、
-C2n+1
(IIb)
上記式(IIb)中、nは、1~20の範囲、好ましくは2~15の範囲、より好ましくは3~15の範囲、さらにより好ましくは3~10の範囲の整数である。特に好ましいアルキル基は、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基又はn-デシル基であり、エチル基、n-ブチル基及びn-デシル基が特に好ましく、n-ブチル基が最も好ましい。
【0020】
分枝状のアルキル基又は2個以上のアルキル基を有する構造(Ia)のモノマー単位の好適な例は、化合物(A)、(B)、(C)及び(D)からなる群から選択される化合物を含む。
【化2】
【0021】
本発明に係る組成物1の実施形態8では、組成物1はその実施形態1から実施形態5のいずれか1つに従って設計されており、上記ポリチオフェンは、X及びZがOを表す構造(Ia)又は構造(Ib)のモノマー単位、好ましくはX及びZがOを表す構造(Ia)のモノマー単位を含むホモポリマー又はコポリマーであり、R、R、R及びRからなる群から選択される残基のうち3つ、並びにR及びRからなる群から選択される残基のうちの1つは水素原子を表し、残りの残基は、分枝状のアルキル基又は分枝状のエーテル基、好ましくは分枝状のエーテル基を表し、本発明の意味での「分枝状のエーテル基」は、酸素原子に結合している2つの有機残基のうち少なくとも一方が分枝状の有機残基である、すなわち、少なくとも3つの炭素原子又は少なくとも2つの炭素原子とエーテル基の一部である酸素原子とに単結合を介して結合している少なくとも1つの炭素原子を含む有機残基であるエーテル基であることが好ましい。より好ましくは、残りの残基は、構造式(IIc)を有する分枝状のエーテル基を表し、
-(CR1011-O-R12
(IIc)
上記式(IIc)中、
10は、H、C~C10-アルキル基、好ましくはC~C-アルキル基、より好ましくはメチル基、又はC~C10-アルコキシ基、好ましくはC~C-アルコキシ基、より好ましくはメトキシ基であり、最も好ましくはR10はHであり、
11は、H、C~C10-アルキル基、好ましくはC~C-アルキル基、より好ましくはメチル基、又はC~C10-アルコキシ基、好ましくはC~C-アルコキシ基、より好ましくはメトキシ基であり、最も好ましくはR11はHであり、
nは、0~10の範囲、好ましくは1~6の範囲、より好ましくは1~3の範囲の整数であり、最も好ましくはnは1であり、
12は、分枝状の有機残基、好ましくは分枝状のアルキル基又は分枝状のアリールアルキル基、より好ましくはアルキル鎖中に不飽和C=C結合を有さない分枝状のアルキル基又は分枝状のアリールアルキル基、さらにより好ましくは式(IId)を有する有機残基であり、
-(CHR13-R14
(IId)
上記式(IId)中、
mは1、2又は3であり、
13は、H又はC~C12アルキル基、好ましくはC~C10アルキル基、より好ましくはC~Cアルキル基、さらにより好ましくはブチル基であるが、ただし、m個の構造単位-CHR13-残基のただ1つにおいて、R13はC~C12アルキル基であり、
14は、C~C10-アルキル基、好ましくはC~C-アルキル基、又はアリール基である。
【0022】
本発明に係る組成物1の実施形態9では、組成物1はその実施形態8に従って設計されており、上記ポリチオフェンは、化合物(E)、(F)及び(G)からなる群から選択されるモノマー単位を含むホモポリマー又はコポリマーである。
【化3】
【0023】
本発明に係る組成物1の実施形態8及び実施形態9に関連して、成分ii)として、3つ以上の無機酸基を有し、分子量が1,000g/molを超える有機化合物、例えばポリスチレンスルホン酸(PSS)を用いることも可能であろう。
【0024】
本発明に係る組成物1の実施形態10では、組成物1はその実施形態1から実施形態9のいずれか1つに従って設計されており、上記少なくとも1種のポリチオフェンi)は、3,4-エチレンジオキシチオフェンと、X及びZがOを表す構造式(Ia)を有する少なくとも1種の3,4-エチレンジオキシチオフェンの誘導体とのコポリマーであり、上記少なくとも1種の有機溶媒iii)は、好ましくは非プロトン性溶媒iii)である。従って、この場合、ポリチオフェンi)は、3,4-エチレンジオキシチオフェンとエチレン基の水素原子の少なくとも1つが有機残基Rによって置換されている3,4-エチレンジオキシチオフェンの少なくとも1種の誘導体とのコポリマーである。
【0025】
本発明に係る組成物1の実施形態11では、組成物1はその実施形態10に従って設計されており、上記3,4-エチレンジオキシチオフェンの誘導体は、構造式(Ia’)を有し、
【化4】
上記式(Ia’)中、Rは、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、エーテル基及びエステル基からなる群から選択される。
【0026】
本発明に係る組成物1の実施形態12では、組成物1はその実施形態11に従って設計されており、有機残基Rはエーテル基である。
【0027】
本発明に係る組成物1の実施形態13では、組成物1はその実施形態12に従って設計されており、上記エーテル基は、構造式(IIa)を有し、
-(CR-O-R
(IIa)
上記式(IIa)中、
は、H、C~C10-アルキル基、好ましくはC~C-アルキル基、より好ましくはメチル基、又はC~C10-アルコキシ基、好ましくはC~C-アルコキシ基、より好ましくはメトキシ基であり、最も好ましくはRはHであり、
は、H、C~C10-アルキル基、好ましくはC~C-アルキル基、より好ましくはメチル基、又はC~C10-アルコキシ基、好ましくはC~C-アルコキシ基、より好ましくはメトキシ基であり、最も好ましくはRはHであり、
nは、0~10の範囲、好ましくは1~6の範囲、より好ましくは1~3の範囲の整数であり、最も好ましくはnは1であり、
は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、エーテル基又はエステル基、好ましくはC~C30アルキル基、より好ましくはC~C25-アルキル基、さらにより好ましくはC~C20-アルキル基である。
【0028】
本発明に係る組成物1の実施形態14では、組成物1はその実施形態13に従って設計されており、上記3,4-エチレンジオキシチオフェンの誘導体は、一般式(III)を有し、
【化5】
上記式(III)中、Rは、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、エーテル基又はエステル基、好ましくはC~C30アルキル基、より好ましくはC~C25-アルキル基、さらにより好ましくはC~C20-アルキル基である。
【0029】
本発明に係る組成物1の実施形態15では、組成物1はその実施形態14に従って設計されており、上記3,4-エチレンジオキシチオフェンの誘導体は、一般式(IV)を有し、
【化6】
上記式(IV)中、mは、0~24の範囲、好ましくは1~19の範囲、より好ましくは4~14の範囲の整数であり、最も好ましくはmは9である。
【0030】
本発明に係る組成物1の実施形態16では、組成物1はその実施形態11に従って設計されており、有機残基Rはアルキル基である。
【0031】
本発明に係る組成物1の実施形態17では、組成物1はその実施形態16に従って設計されており、上記アルキル基は式(IIb)を有し、
-C2n+1
(IIb)
上記式(IIb)中、nは、1~20の範囲、好ましくは2~15の範囲、より好ましくは3~15の範囲、さらにより好ましくは3~10の範囲の整数である。特に好ましいアルキル基は、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基又はn-デシル基であり、エチル基、n-ブチル基及びn-デシル基が特に好ましく、n-ブチル基が最も好ましい。
【0032】
本発明に係る組成物1の実施形態18では、組成物1はその実施形態17に従って設計されており、上記3,4-エチレンジオキシチオフェンの誘導体は、一般式(V)を有し、
【化7】
上記式(V)中、nは、0~19の範囲、好ましくは1~14の範囲、より好ましくは2~9の範囲にある。nが2、3又は4であることが特に好ましく、n=3が最も好ましい。
【0033】
本発明に係る組成物1の実施形態19では、組成物1はその実施形態11に従って設計されており、有機残基Rは、分枝状のアルキル基又は分枝状のエーテル基、好ましくは分枝状のエーテル基、より好ましくは構造式(IIc)を有する分枝状のエーテル基であり、
-(CR1011-O-R12
(IIc)
上記式(IIc)中、
10は、H、C~C10-アルキル基、好ましくはC~C-アルキル基、より好ましくはメチル基、又はC~C10-アルコキシ基、好ましくはC~C-アルコキシ基、より好ましくはメトキシ基であり、最も好ましくはR10はHであり、
11は、H、C~C10-アルキル基、好ましくはC~C-アルキル基、より好ましくはメチル基、又はC~C10-アルコキシ基、好ましくはC~C-アルコキシ基、より好ましくはメトキシ基であり、最も好ましくはR11はHであり、
nは、0~10の範囲、好ましくは1~6の範囲、より好ましくは1~3の範囲の整数であり、最も好ましくはnは1であり、
12は、分枝状の有機残基、好ましくは分枝状のアルキル基又は分枝状のアリールアルキル基、より好ましくはアルキル鎖中に不飽和C=C結合を有さない分枝状のアルキル基又は分枝状のアリールアルキル基、さらにより好ましくは式(IId)を有する有機残基であり、
-(CHR13-R14
(IId)
上記式(IId)中、
mは1、2又は3であり、
13は、H又はC~C12アルキル基、好ましくはC~C10アルキル基、より好ましくはC~Cアルキル基、さらにより好ましくはブチル基であるが、ただし、m個の構造単位-CHR13-残基のただ1つにおいて、R13はC~C12アルキル基であり、
14は、C~C10-アルキル基、好ましくはC~C-アルキル基、又はアリール基である。
【0034】
本発明に係る組成物1の実施形態20では、組成物1はその実施形態19に従って設計されており、上記ポリチオフェンは、化合物(E)、(F)及び(G)からなる群から選択されるモノマー単位を含むホモポリマー又はコポリマーである。
【化8】
【0035】
本発明に係る組成物1の実施形態21では、組成物1はその実施形態1から実施形態20のいずれか1つに従って設計されており、コポリマーi)は、3,4-エチレンジオキシチオフェンの誘導体に基づくモノマー単位を、いずれの場合もモノマー単位の合計数に基づいて(すなわち、3,4-エチレンジオキシチオフェンモノマー単位及び3,4-エチレンジオキシチオフェンの誘導体に基づくモノマー単位の合計数に基づいて)、5~95%モノマー単位、好ましくは10~80%モノマー単位、より好ましくは20~60%モノマー単位の割合で含む。
【0036】
本発明に係る組成物1の実施形態22では、組成物1はその実施形態1から実施形態21のいずれか1つに従って設計されており、コポリマーi)は、3,4-エチレンジオキシチオフェンの誘導体に基づくモノマー単位を、いずれの場合もモノマー単位の合計数に基づいて(すなわち、3,4-エチレンジオキシチオフェン-モノマー単位及び3,4-エチレンジオキシチオフェンの誘導体に基づくモノマー単位の総重量に基づいて)、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも70重量%のモノマー単位の割合で含む。
【0037】
本発明に係る組成物1の実施形態23では、組成物1はその実施形態8に従って設計されており、少なくとも1種のポリチオフェンi)は、
α)構造式(Ia’)を有する3,4-エチレンジオキシチオフェンの少なくとも1種の誘導体であって、
【化9】
上記式(Ia’)中、Rは、分枝状のアルキル基又は分枝状のエーテル基、好ましくは分枝状のエーテル基、より好ましくは上で定義された構造式(IIc)を有する分枝状のエーテル基である誘導体と、
β)構造式(Ia’)を有する3,4-エチレンジオキシチオフェンの少なくとも1種の誘導体であって、
【化10】
上記式(Ia’)中、Rは、上で定義された構造式(IIb)を有するアルキル基であり、2-エチル-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-1,4-ジオキシン、2-プロピル-2,3-ジヒドロチエノ-[3,4-b]-1,4-ジオキシン、2-ブチル-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-1,4-ジオキシン、2-デシル-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシンからなる群から選択されるチオフェン誘導体が好ましく、2-ブチル-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-1,4-ジオキシン(ブチル-EDOT)が特に好ましい誘導体と、
任意に、
γ)3,4-エチレンジオキシチオフェンと
のコポリマーである。
【0038】
本発明に係る組成物1の実施形態24では、組成物1はその実施形態23に従って設計されており、コポリマーi)は、いずれの場合も上記コポリマー中のモノマーα)、β)及びγ)の総量に基づいて、5~99mol%、好ましくは15~70mol%、より好ましくは30~50mol%のモノマーα)に基づくモノマー単位、5~95mol%、好ましくは30~90mol%、より好ましくは50~70mol%のモノマーβ)に基づくモノマー単位、及び0~50mol%、好ましくは0~35mol%、より好ましくは0~20mol%のモノマーγ)に基づくモノマー単位を含み、モノマーα)、β)及びγ)の量は合計すると100mol%である。特に好ましいコポリマーi)によれば、上記コポリマーは、コモノマーとして3,4-エチレンジオキシチオフェンを含まない。
【0039】
本発明に係る組成物1の実施形態25では、組成物1はその実施形態1から実施形態24のいずれか1つに従って設計されており、上記無機酸基は、スルホン酸基(-SOOH)、硫酸基(-O-SOOH)、ホスホン酸基(-PO(OH))又はリン酸基(-O-PO(OH))、好ましくはスルホン酸基(-SOOH)である。
【0040】
本発明に係る組成物1の実施形態26では、組成物1はその実施形態1から実施形態25のいずれか1つに従って設計されており、有機化合物ii)はアニオン性界面活性剤である。
【0041】
本発明に係る組成物1の実施形態27では、組成物1はその実施形態26に従って設計されており、上記アニオン性界面活性剤は、スルホン酸(R-SOOH)、硫酸のエステル(R-O-SOOH)又はこれらのエステルの1つの塩であり、好ましくはスルホン酸である。この文脈において、アニオン性界面活性剤が1価の又は2価のスルホン酸(すなわち、ただ1つのスルホン酸基又は2つのスルホン酸基を有する化合物)であることが特に好ましく、最も好ましくは1価のスルホン酸である。
【0042】
本発明に係る組成物1の実施形態28では、組成物1はその実施形態27に従って設計されており、アニオン性界面活性剤はドデシルベンゼンスルホン酸又はその塩である。本明細書で使用する用語「ドデシルスルホン酸」は、ドデシルベンゼンスルホン酸に加えて、ドデシル基より長い又は短いアルキル鎖を有するアルキルベンゼンスルホン酸をさらに含むアルキルベンゼンスルホン酸の混合物も包含する。
【0043】
本発明に係る組成物1の実施形態29では、組成物1はその実施形態1から実施形態28のいずれか1つに従って設計されており、ポリチオフェンi)と有機化合物ii)又はその塩との重量比、好ましくはコポリマーi)と有機化合物ii)又はその塩との重量比は、1:30~1:0.1の範囲、好ましくは1:20~1:0.2の範囲、より好ましくは1:5~1:0.5の範囲にある。
【0044】
本発明に係る組成物1の実施形態30では、組成物1はその実施形態1から実施形態29のいずれか1つに従って設計されており、少なくとも1種の有機溶媒iii)、好ましくは少なくとも1種の非プロトン性溶媒iii)は、50~300℃の範囲、好ましくは60~250℃の範囲、より好ましくは70~220℃の範囲の沸点(1013mbarの圧力で決定される)を有する。
【0045】
本発明に係る組成物1の実施形態31では、組成物1はその実施形態1から実施形態30のいずれか1つに従って設計されており、上記少なくとも1種の有機溶媒は、非プロトン性溶媒iii)であり、より好ましくは極性非プロトン性溶媒である。
【0046】
本発明に係る組成物1の実施形態32では、組成物1はその実施形態31に従って設計されており、極性非プロトン性溶媒iii)の誘電率は20未満、好ましくは10未満、より好ましくは7未満である。
【0047】
本発明に係る組成物1の実施形態33では、組成物1はその実施形態31又は実施形態32に従って設計されており、極性非プロトン性溶媒iii)は、4D未満、好ましくは2D未満、より好ましくは1.5D未満の双極子モーメントを有する。
【0048】
本発明に係る組成物1の実施形態34では、組成物1はその実施形態1から実施形態33のいずれか1つに従って設計されており、少なくとも1種の有機溶媒iii)は、芳香族炭化水素、エステル、エーテル、アルコール及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0049】
本発明に係る組成物1の実施形態35では、組成物1はその実施形態34に従って設計されており、少なくとも1種の有機溶媒iii)は、トルエン、キシレン、アニソール、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸オクチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、酢酸1-メトキシ-2-プロピル、1-メトキシ-2-プロパノール、ブタノール、2-プロパノール、エタノール及びこれらの混合物、又はこれらの非プロトン性溶媒の1種若しくは2種と1種若しくは2種のさらなる溶媒との混合物からなる群から選択される。2種以上の有機溶媒の混合物である場合、これらの溶媒のうち少なくとも1つが非プロトン性溶媒iii)であることが特に好ましい。
【0050】
本発明に係る組成物1の実施形態36では、組成物1はその実施形態1から実施形態35のいずれか1つに従って設計されており、当該組成物は、
i)0.01~20重量%、好ましくは0.02~10重量%、より好ましくは0.1~5重量%の上記ポリマーと、
ii)0.01~15重量%、好ましくは0.02~10重量%、より好ましくは0.1~5重量%の上記有機化合物と、
iii)50~99.98重量%、好ましくは70~99.86重量%、より好ましくは85~99.3重量%の上記溶媒又は混合溶媒、好ましくは上記非プロトン性の溶媒又は混合溶媒と、
iv)0~15重量%、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~5重量%の、成分i)~iii)とは異なる添加剤と
を含み、成分i)~iv)の総重量は合計すると100重量%である。
【0051】
本発明に係る組成物1の実施形態37では、組成物1はその実施形態1から実施形態36のいずれか1つに従って設計されており、当該組成物は、成分i)~iii)とは異なるさらなる成分iv)として、非導電性のオリゴマー又はポリマー、好ましくは非導電性のオリゴマーバインダー又はポリマーバインダーを含む。本発明の意味での「非導電性のオリゴマーバインダー又はポリマーバインダー」は、好ましくは10-6S/cm未満、好ましくは10-8S/cm未満、最も好ましくは10-10S/cm未満の電気伝導率を有するオリゴマー又はポリマーの層である。対照的に、本発明の意味での本発明に係る組成物中の「導電性ポリマー」(ポリチオフェンi)又はポリチオフェン-コポリマーi))は、少なくとも10-6S/cm、好ましくは少なくとも10-5S/cm、最も好ましくは10-4S/cmの電気伝導率を有するポリマー層であることが好ましい。
【0052】
本発明に係る組成物1の実施形態38では、組成物1はその実施形態37に従って設計されており、上記非導電性ポリマーバインダーは、ポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリビニルブチラール、ポリ(メタ)アクリル酸アミド、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリシリコーン、エポキシ樹脂、スチレン-アクリレート、酢酸ビニル/アクリレート若しくはエチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、又はこれらのポリマーの少なくとも2種を含む混合物からなる群から選択され、ポリ(メタ)アクリレート及びポリシリコーンは特に好ましい非導電性ポリマーバインダーである。ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート等の多官能性(メタ)アクリレートも非導電性ポリマーバインダーとして好適である。
【0053】
本発明に係る組成物1の実施形態39では、組成物1はその実施形態38に従って設計されており、上記ポリ(メタ)アクリレートは、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(アクリル酸n-プロピル)、ポリ(メタクリル酸n-プロピル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(メタクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸n-ブチル)、ポリ(メタクリル酸n-ブチル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(アクリル酸tert.-ブチル)、ポリ(メタクリル酸tert.-ブチル)、ポリ(アクリル酸2-エチルヘキシル)、ポリ(メタクリル酸2-エチルヘキシル)、ポリ(アクリル酸シクロヘキシル)、ポリ(メタクリル酸シクロヘキシル)、ポリ(アクリル酸フェニル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸ベンジル)、ポリ(メタクリル酸ベンジル)、及びこれらのポリアクリレート又はポリメタクリレートのコポリマーからなる群から選択される。
【0054】
本発明に係る組成物1の実施形態40では、組成物1はその実施形態37から実施形態39のいずれか1つに従って設計されており、当該組成物は、非導電性ポリマーバインダーiv)、好ましくはポリ(メタ)アクリレート及び/又はポリシリコーンと、ポリチオフェン/有機化合物複合体i)/ii)とを、少なくとも20:1、好ましくは少なくとも25:1、より好ましくは少なくとも30:1の質量比で含む。
【0055】
本発明に係る組成物1の実施形態41では、組成物1はその実施形態37から実施形態40のいずれか1つに従って設計されており、当該組成物を用いて調製された導電層は、最高1×1010Ω/sq、好ましくは最高5×10Ω/sq、より好ましくは最高1×10Ω/sqのシート抵抗を有する。
【0056】
本発明に係る組成物1の実施形態42では、組成物1はその実施形態1から実施形態41のいずれか1つに従って設計されており、当該組成物は、いずれの場合も当該組成物の総重量に基づいて2重量%未満、好ましくは1重量%未満、最も好ましくは0.1重量%未満の水を含む。
【0057】
本発明に係る組成物1の実施形態43では、組成物1はその実施形態1から実施形態42のいずれか1つに従って設計されており、当該組成物は、いずれの場合も当該組成物の総重量に基づいて30ppm未満、好ましくは15ppm未満、より好ましくは5ppm未満の総金属含有量を有する。金属は特に、ナトリウム、カリウム及び鉄を含む。最も好ましくは、当該組成物は、いずれの場合も当該組成物の総重量に基づいて30ppm未満、好ましくは15ppm未満、より好ましくは5ppm未満の鉄含有量を有する
【0058】
本発明に係る組成物1の実施形態44では、組成物1はその実施形態1から実施形態43のいずれか1つに従って設計されており、当該組成物を用いて調製された導電層は、1S/cm超、好ましくは2S/cm超、最も好ましくは5S/cm超の電気伝導率を有する。
【0059】
本発明に係る目的のうちの少なくとも1つを解決することへの寄与は、組成物、好ましくは分散液を調製するためのプロセス1の実施形態1であって、
I)
i)構造(VIa)又は(VIb)のチオフェンモノマー単位であって、
【化11】
上記構造中、
X、ZはO又はSを表し、
~Rは、互いに独立に、水素原子又は有機残基Rを表すが、ただし、残基R~Rの少なくとも1つ、及び残基R及びRの1つは、有機残基Rを表すチオフェンモノマー単位、
ii)1つ若しくは2つの無機酸基、好ましくは1つ若しくは2つのスルホン酸基、1つ若しくは2つの硫酸基、1つ若しくは2つのホスホン酸基、若しくは1つ若しくは2つのリン酸基を有する少なくとも1種の有機化合物、又はこの有機化合物の塩であって、この有機化合物又はその塩の分子量は、1,000g/mol未満、好ましくは900g/mol未満、より好ましくは800g/mol未満、さらにより好ましくは700g/mol未満、さらにより好ましくは600g/mol未満、さらにより好ましくは500g/mol未満である少なくとも1種の有機化合物又はこの有機化合物の塩、
iii)少なくとも1種の有機溶媒、並びに
iv)少なくとも1種の酸化剤、好ましくは少なくとも1種の有機の金属非含有酸化剤、より好ましくは少なくとも1種の有機過酸化物
を含む反応混合物を提供する工程と、
II)ポリチオフェンの形成のために、好ましくはカチオン性ポリチオフェンの形成のために、より好ましくはポリチオフェンと有機化合物ii)(これは好ましくはアニオンの形態で存在する)との複合体の形成のために、上記チオフェンモノマーを酸化重合させる工程と
を含むプロセス1の実施形態1によってもなされる。
【0060】
本発明に係るプロセス1の実施形態2では、プロセス1はその実施形態1に従って設計されており、有機残基Rはアニオン性基を有さない。好ましくは、残基Rは、スルホン酸基又はこの基の塩を有さない。
【0061】
本発明に係るプロセス1の実施形態3では、プロセス1はその実施形態1又は実施形態2に従って設計されており、有機残基Rは、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、エーテル基及びエステル基からなる群から選択される。
【0062】
本発明に係るプロセス1の実施形態4では、プロセス1はその実施形態1から実施形態3のいずれか1つに従って設計されており、工程I)で提供される反応混合物は、X及びZがOを表す構造(VIa)又は構造(VIb)のチオフェンモノマー、好ましくはX及びZがOを表す構造(VIa)のチオフェンモノマーを含み、R、R、R及びRからなる群から選択される残基のうち3つ、並びにR及びRからなる群から選択される残基のうちの1つは、水素原子を表し、残りの残基は、構造式(IIa)を有するエーテル基を表し、
-(CR-O-R
(IIa)
上記式(IIa)中、
は、H、C~C10-アルキル基、好ましくはC~C-アルキル基、より好ましくはメチル基、又はC~C10-アルコキシ基、好ましくはC~C-アルコキシ基、より好ましくはメトキシ基であり、最も好ましくはRはHであり、
は、H、C~C10-アルキル基、好ましくはC~C-アルキル基、より好ましくはメチル基、又はC~C10-アルコキシ基、好ましくはC~C-アルコキシ基、より好ましくはメトキシ基であり、RがHであることが最も好ましく、
nは、0~10の範囲、好ましくは1~6の範囲、より好ましくは1~3の範囲の整数であり、最も好ましくはnは1であり、
は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、エーテル基又はエステル基、好ましくはC~C30アルキル基、より好ましくはC~C25-アルキル基、さらにより好ましくはC~C20-アルキル基である。
【0063】
本発明に係るプロセス1の実施形態5では、プロセス1はその実施形態1から実施形態3のいずれか1つに従って設計されており、工程I)で提供される反応混合物は、X及びZがOを表す構造(VIa)又は構造(VIb)のチオフェンモノマー、好ましくはX及びZがOを表す構造(VIa)のチオフェンモノマーを含み、R、R、R及びRからなる群から選択される残基のうち少なくとも2つ及びR及びRからなる群から選択される残基のうちの1つ、好ましくはR、R、R及びRからなる群から選択される残基のうち3つ、並びにR及びRからなる群から選択される残基のうちの1つは水素原子を表し、残りの残基、好ましくは残りの残基は、式(IIb)を有するアルキル基を表し、
-C2n+1
(IIb)
上記式(IIb)中、nは1~20の範囲、好ましくは2~15の範囲、より好ましくは3~15の範囲、さらにより好ましくは3~10の範囲の整数である。特に好ましいアルキル基は、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基又はn-デシル基であり、エチル基、n-ブチル基及びn-デシル基が特に好ましく、n-ブチル基が最も好ましい。
【0064】
分枝状のアルキル基又は2個以上のアルキル基を有する構造(Ia)のモノマー単位の好適な例は、化合物(A)、(B)、(C)及び(D)からなる群から選択される化合物を含む。
【化12】
【0065】
本発明に係るプロセス1の実施形態6では、プロセス1はその実施形態1から実施形態3のいずれか1つに従って設計されており、工程I)で提供される反応混合物は、X及びZがOを表す構造(VIa)又は構造(VIb)のチオフェンモノマー、好ましくはX及びZがOを表す構造(VIa)のチオフェンモノマーを含み、R、R、R及びRからなる群から選択される残基のうち3つ、並びにR及びRからなる群から選択される残基のうちの1つは水素原子を表し、残りの残基は、分枝状のアルキル基又は分枝状のエーテル基、好ましくは分枝状のエーテル基、より好ましくは構造式(IIc)を有する分枝状のエーテル基を表し、
-(CR1011-O-R12
(IIc)
上記式(IIc)中、
10は、H、C~C10-アルキル基、好ましくはC~C-アルキル基、より好ましくはメチル基、又はC~C10-アルコキシ基、好ましくはC~C-アルコキシ基、より好ましくはメトキシ基であり、最も好ましくはR10はHであり、
11は、H、C~C10-アルキル基、好ましくはC~C-アルキル基、より好ましくはメチル基、又はC~C10-アルコキシ基、好ましくはC~C-アルコキシ基、より好ましくはメトキシ基であり、最も好ましくはR11はHであり、
nは、0~10の範囲、好ましくは1~6の範囲、より好ましくは1~3の範囲の整数であり、最も好ましくはnは1であり、
12は、分枝状の有機残基、好ましくは分枝状のアルキル基又は分枝状のアリールアルキル基、より好ましくはアルキル鎖中に不飽和C=C結合を有さない分枝状のアルキル基又は分枝状のアリールアルキル基、さらにより好ましくは式(IId)を有する有機残基であり、
-(CHR13-R14
(IId)
上記式(IId)中、
mは1、2又は3であり、
13は、H又はC~C12アルキル基、好ましくはC~C10アルキル基、より好ましくはC~Cアルキル基、さらにより好ましくはブチル基であるが、ただし、m個の構造単位-CHR13-残基のただ1つにおいて、R13はC~C12アルキル基であり、
14は、C~C10-アルキル基、好ましくはC~C-アルキル基、又はアリール基である。
【0066】
本発明に係るプロセス1の実施形態7では、プロセス1はその実施形態6に従って設計されており、上記ポリチオフェンは、化合物(E)、(F)及び(G)からなる群から選択されるモノマー単位を含むホモポリマー又はコポリマーである。
【化13】
【0067】
本発明に係るプロセスの実施形態6及び実施形態7に関連して、成分ii)として、3つ以上の無機酸基を有し、分子量が1,000g/molを超える有機化合物、例えばポリスチレンスルホン酸(PSS)を用いることも可能であろう。
【0068】
本発明に係るプロセス1の実施形態8では、プロセス1はその実施形態1から実施形態7に従って設計されており、上記反応混合物は、成分i)として3,4-エチレンジオキシチオフェン、並びにX及びZがOを表す構造式(VIa)を有する3,4-エチレンジオキシチオフェンの少なくとも1種の誘導体を含み、少なくとも1種の有機溶媒iii)は非プロトン性溶媒iii)であり、工程II)において、3,4-エチレンジオキシチオフェン及び上記3,4-エチレンジオキシチオフェンの誘導体は、コポリマーの形成のために酸化重合される。従って、工程I)で提供される反応混合物は、成分i)として3,4-エチレンジオキシチオフェンと、エチレン基の水素原子の少なくとも1つが有機残基Rによって置換されている3,4-エチレンジオキシチオフェンの少なくとも1種の誘導体とを含む。
【0069】
本発明に係るプロセス1の実施形態9では、プロセス1はその実施形態8に従って設計されており、上記3,4-エチレンジオキシチオフェンの誘導体は、構造式(Ia’)を有し、
【化14】
上記式(Ia’)中、Rは、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、エーテル基及びエステル基からなる群から選択される。
【0070】
本発明に係るプロセス1の実施形態10では、プロセス1はその実施形態9に従って設計されており、有機残基Rはエーテル基である。
【0071】
本発明に係るプロセス1の実施形態11では、プロセス1はその実施形態10に従って設計されており、上記エーテル基は、構造式(IIa)を有し、
-(CR-O-R
(IIa)
上記式(IIa)中、
は、H、C~C10-アルキル基、好ましくはC~C-アルキル基、より好ましくはメチル基、又はC~C10-アルコキシ基、好ましくはC~C-アルコキシ基、より好ましくはメトキシ基であり、最も好ましくはRはHであり、
は、H、C~C10-アルキル基、好ましくはC~C-アルキル基、より好ましくはメチル基、又はC~C10-アルコキシ基、好ましくはC~C-アルコキシ基、より好ましくはメトキシ基であり、最も好ましくはRはHであり、
nは、0~10の範囲、好ましくは1~6の範囲、より好ましくは1~3の範囲の整数であり、最も好ましくはnは1であり、
は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、エーテル基又はエステル基、好ましくはC~C30アルキル基、好ましくはC~C25-アルキル基、より好ましくはC~C20-アルキル基である。
【0072】
本発明に係るプロセス1の実施形態12では、プロセス1はその実施形態11に従って設計されており、上記3,4-エチレンジオキシチオフェンの誘導体は、一般式(III)を有し、
【化15】
上記式(III)中、Rは、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、エーテル基又はエステル基、好ましくはC~C30アルキル基、好ましくはC~C25-アルキル基、より好ましくはC~C20-アルキル基である。
【0073】
本発明に係るプロセス1の実施形態13では、プロセス1はその実施形態12に従って設計されており、上記3,4-エチレンジオキシチオフェンの誘導体は、一般式(IV)を有し、
【化16】
上記式(IV)中、mは、0~24の範囲、好ましくは1~19の範囲、より好ましくは4~14の範囲の整数であり、最も好ましくはmは9である。
【0074】
本発明に係るプロセス1の実施形態14では、プロセス1はその実施形態9に従って設計されており、有機残基Rはアルキル基である。
【0075】
本発明に係るプロセス1の実施形態15では、プロセス1はその実施形態14に従って設計されており、上記アルキル基は、式(IIb)を有し、
-C2n+1
(IIb)
上記式(IIb)中、nは、1~20の範囲、好ましくは2~15の範囲、より好ましくは3~15の範囲、さらにより好ましくは3~10の範囲の整数である。特に好ましいアルキル基は、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基又はn-デシル基であり、エチル基、n-ブチル基及びn-デシル基が特に好ましく、n-ブチル基が最も好ましい。
【0076】
本発明に係るプロセス1の実施形態16では、プロセス1はその実施形態15に従って設計されており、上記3,4-エチレンジオキシチオフェンの誘導体は一般式(V)を有し、
【化17】
上記式(V)中、nは、0~19の範囲、好ましくは1~14の範囲、より好ましくは3~9の範囲にある。nが2、3又は4であることが特に好ましく、n=3が最も好ましい。
【0077】
本発明に係るプロセス1の実施形態17では、プロセス1はその実施形態9に従って設計されており、有機残基Rは、分枝状のアルキル基又は分枝状のエーテル基、好ましくは分枝状のエーテル基、より好ましくは構造式(IIc)を有する分枝状のエーテル基であり、
-(CR1011-O-R12
(IIc)
上記式(IIc)中、
10は、H、C~C10-アルキル基、好ましくはC~C-アルキル基、より好ましくはメチル基、又はC~C10-アルコキシ基、好ましくはC~C-アルコキシ基、より好ましくはメトキシ基であり、最も好ましくはR10はHであり、
11は、H、C~C10-アルキル基、好ましくはC~C-アルキル基、より好ましくはメチル基、又はC~C10-アルコキシ基、好ましくはC~C-アルコキシ基、より好ましくはメトキシ基であり、最も好ましくはR11はHであり、
nは、0~10の範囲、好ましくは1~6の範囲、より好ましくは1~3の範囲の整数であり、最も好ましくはnは1であり、
12は、分枝状の有機残基、好ましくは分枝状のアルキル基又は分枝状のアリールアルキル基、より好ましくはアルキル鎖中に不飽和C=C結合を有さない分枝状のアルキル基又は分枝状のアリールアルキル基、さらにより好ましくは式(IId)を有する有機残基であり、
-(CHR13-R14
(IId)
上記式(IId)中、
mは1、2又は3であり、
13は、H又はC~C12アルキル基、好ましくはC~C10アルキル基、より好ましくはC~Cアルキル基、さらにより好ましくはブチル基であるが、ただし、m個の構造単位-CHR13-残基のただ1つにおいて、R13はC~C12アルキル基であり、
14は、C~C10-アルキル基、好ましくはC~C-アルキル基、又はアリール基である。
【0078】
本発明に係るプロセス1の実施形態18では、プロセス1はその実施形態17に従って設計されており、上記ポリチオフェンは、化合物(E)、(F)及び(G)からなる群から選択されるモノマー単位を含むホモポリマー又はコポリマーである。
【化18】
【0079】
本発明に係るプロセス1の実施形態19では、プロセス1はその実施形態1から実施形態18のいずれか1つに従って設計されており、工程I)で提供される反応混合物は、上記3,4-エチレンジオキシチオフェンの誘導体を、いずれの場合も3,4-エチレンジオキシチオフェン及び3,4-エチレンジオキシチオフェンの誘導体の総モル量に基づいて、5~95%、好ましくは10~80%、より好ましくは20~60%の相対量で含む。
【0080】
本発明に係るプロセス1の実施形態20では、プロセス1はその実施形態1から実施形態18のいずれか1つに従って設計されており、工程I)で提供される反応混合物は、3,4-エチレンジオキシチオフェンの誘導体に基づくモノマー単位を、いずれの場合もモノマー単位の総重量に基づいて(すなわち、3,4-エチレンジオキシチオフェン-モノマー単位及び3,4-エチレンジオキシチオフェンの誘導体に基づくモノマー単位の総重量に基づいて)、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも70重量%のモノマー単位の割合で含む。
【0081】
本発明に係る組成物1の実施形態21では、組成物1はその実施形態6に従って設計されており、上記反応混合物は、成分i)として
α)構造式(Ia’)を有する3,4-エチレンジオキシチオフェンの少なくとも1種の誘導体であって、
【化19】
上記式(Ia’)中、Rは、分枝状のアルキル基又は分枝状のエーテル基、好ましくは分枝状のエーテル基、より好ましくは上で定義された構造式(IIc)を有する分枝状のエーテル基である誘導体と、
β)構造式(Ia’)を有する3,4-エチレンジオキシチオフェンの少なくとも1種の誘導体であって、
【化20】
上記式(Ia’)中、Rは、上で定義された構造式(IIb)を有するアルキル基であり、2-エチル-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-1,4-ジオキシン、2-プロピル-2,3-ジヒドロチエノ-[3,4-b]-1,4-ジオキシン、2-ブチル-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-1,4-ジオキシン、2-デシル-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシンからなる群から選択されるチオフェン誘導体が好ましく、2-ブチル-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-1,4-ジオキシン(ブチル-EDOT)が特に好ましい誘導体と、
任意に、
γ)3,4-エチレンジオキシチオフェンと
を含む。
【0082】
本発明に係るプロセス1の実施形態22では、プロセス1はその実施形態21に従って設計されており、上記反応混合物は、いずれの場合も反応混合物中のモノマーα)、β)及びγ)の総量に基づいて、5~99mol%、好ましくは15~70mol%、より好ましくは30~50mol%のモノマーα)に基づくモノマー単位、5~95mol%、好ましくは30~90mol%、より好ましくは50~70mol%のモノマー単位β)に基づくモノマー単位、及び0~50mol%、好ましくは0~35mol%、より好ましくは0~20mol%のモノマーγ)に基づくモノマー単位を含み、モノマーα)、β)及びγ)の量は合計すると100mol%である。プロセス1の特に好ましい実施形態によれば、上記反応混合物は、コモノマーとして3,4-エチレンジオキシチオフェンを含まない。
【0083】
本発明に係るプロセス1の実施形態23では、プロセス1はその実施形態1から実施形態22のいずれか1つに従って設計されており、工程I)、工程II)、又は両方の工程において、有機化合物ii)は遊離酸の形態で存在する。
【0084】
本発明に係るプロセス1の実施形態24では、プロセス1はその実施形態1から実施形態23のいずれか1つに従って設計されており、上記無機酸基は、スルホン酸基(-SOOH)、硫酸基(-O-SOOH)、ホスホン酸基(-PO(OH))又はリン酸基(-O-PO(OH))、好ましくはスルホン酸基(-SOOH)である。
【0085】
本発明に係るプロセス1の実施形態25では、プロセス1はその実施形態1から実施形態24のいずれか1つに従って設計されており、有機化合物ii)はアニオン性界面活性剤である。
【0086】
本発明に係るプロセス1の実施形態26では、プロセス1はその実施形態1から実施形態25のいずれか1つに従って設計されており、上記アニオン性界面活性剤は、スルホン酸(R-SOOH)、硫酸のエステル(R-O-SOOH)又はこれらのアニオン性界面活性剤の1つの塩であり、好ましくはスルホン酸の塩である。この文脈において、アニオン性界面活性剤が1価の又は2価のスルホン酸(すなわち、ただ1つのスルホン酸基又は2つのスルホン酸基を有する化合物)であることがここでも特に好ましく、最も好ましくは1価のスルホン酸である。
【0087】
本発明に係るプロセス1の実施形態27では、プロセス1はその実施形態26に従って設計されており、アニオン性界面活性剤はドデシルベンゼンスルホン酸又はその塩である。
【0088】
本発明に係るプロセス1の実施形態28では、プロセス1はその実施形態1から実施形態27のいずれか1つに従って設計されており、工程I)で提供される反応混合物中のチオフェンモノマー(成分i)の総量、好ましくは3,4-エチレンジオキシチオフェン及び3,4-エチレンジオキシチオフェンの誘導体(成分i)の総量と有機化合物ii)の重量比は、1:30~1:0.1の範囲、好ましくは1:20~1:0.2の範囲、より好ましくは1:5~1:0.5の範囲にある。
【0089】
本発明に係るプロセス1の実施形態29では、プロセス1はその実施形態1から実施形態28のいずれか1つに従って設計されており、少なくとも1種の有機溶媒iii)、好ましくは少なくとも1種の非プロトン性溶媒iii)は、50~300℃の範囲、好ましくは60~250℃の範囲、より好ましくは70~220℃の範囲の沸点(1013mbarの圧力で決定される)を有する。
【0090】
本発明に係るプロセス1の実施形態30では、プロセス1はその実施形態1から実施形態29のいずれか1つに従って設計されており、上記少なくとも1種の有機溶媒は、非プロトン性溶媒iii)であり、より好ましくは極性非プロトン性溶媒である。
【0091】
本発明に係るプロセス1の実施形態31では、プロセス1はその実施形態30に従って設計されており、極性非プロトン性溶媒iii)の誘電率は20未満、好ましくは10未満、より好ましくは7未満である。
【0092】
本発明に係るプロセス1の実施形態32では、プロセス1はその実施形態30又は実施形態31に従って設計されており、極性非プロトン性溶媒iii)は、4D未満、好ましくは2D未満、より好ましくは1.5D未満の双極子モーメントを有する。
【0093】
本発明に係るプロセス1の実施形態33では、プロセス1はその実施形態1から実施形態32のいずれか1つに従って設計されており、少なくとも1種の有機溶媒iii)は、芳香族炭化水素、エステル、エーテル、アルコール及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0094】
本発明に係るプロセス1の実施形態34では、プロセス1はその実施形態33に従って設計されており、少なくとも1種の有機溶媒iii)は、トルエン、キシレン、アニソール、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸オクチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、酢酸1-メトキシ-2-プロピル、1-メトキシ-2-プロパノール、ブタノール、2-プロパノール、エタノール及びこれらの混合物、又はこれらの非プロトン性溶媒の1種若しくは2種と1種若しくは2種のさらなる溶媒との混合物からなる群から選択される。2種以上の有機溶媒の混合物の場合、これらの溶媒のうち少なくとも1つは非プロトン性溶媒iii)であることが特に好ましい。
【0095】
本発明に係るプロセスの実施形態35では、プロセス1はその実施形態1から実施形態34のいずれか1つに従って設計されており、プロセス1は、
III)モノマーi)、アニオンii)、非プロトン性溶媒iii)及び酸化剤iv)とは異なる添加剤v)を、工程I)で提供される反応混合物に添加する工程
というさらなる工程を含む。
【0096】
本発明に係るプロセスの実施形態36では、プロセス1はその実施形態1から実施形態35のいずれか1つに従って設計されており、プロセス1は、
IV)工程II)の後に得られた、又は任意に工程III)の後若しくは工程IV)の後に得られた組成物を、溶媒iii)とは異なるさらなる有機溶媒vi)で希釈する工程
というさらなる工程を含む。
【0097】
本発明に係るプロセスの実施形態37では、プロセス1はその実施形態36に従って設計されており、上記組成物とさらなる溶媒vi)との重量比は、50:1~0.02:1の範囲にある。
【0098】
本発明に係るプロセスの実施形態38では、プロセス1はその実施形態36又は実施形態37に従って設計されており、さらなる有機溶媒vi)は、プロセス1の実施形態31から実施形態37のいずれか1つで規定された有機溶媒、好ましくは非プロトン性溶媒である。
【0099】
本発明に係るプロセス1の実施形態39では、プロセス1はその実施形態1から実施形態38のいずれか1つに従って設計されており、工程I)で提供される組成物は、
i)総量で0.01~20重量%、好ましくは0.02~10重量%、より好ましくは0.1~5重量%の構造(VIa)又は(VIb)を有するチオフェンモノマー、好ましくはこれらの範囲内の総量の3,4-エチレンジオキシチオフェン及び3,4-エチレンジオキシチオフェンの誘導体(従ってこれらの量は3,4-エチレンジオキシチオフェン及び3,4-エチレンジオキシチオフェンの誘導体の総重量に相当する)と、
ii)0.01~15重量%、好ましくは0.02~10重量%、より好ましくは0.1~5重量%の上記有機化合物と、
iii)50~99.98重量%、好ましくは70~99.86重量%、より好ましくは85~99.3重量%の上記溶媒又は混合溶媒、好ましくは上記非プロトン性の溶媒又は混合溶媒と、
iv)0.01~15重量%、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~5重量%の成分i)~iv)とは異なる添加剤と
を含み、成分i)~v)の総重量は合計すると100重量%である。
【0100】
本発明に係るプロセス1の実施形態40では、プロセス1はその実施形態1から実施形態39のいずれか1つに従って設計されており、プロセス1は、
V)工程II)、III)又はIV)で得られた生成物に非導電性のオリゴマー又はポリマー、好ましくは非導電性のオリゴマーバインダー又はポリマーバインダーを添加する工程
というさらなる工程を含む。
【0101】
本発明に係るプロセス1の実施形態41では、プロセス1はその実施形態40に従って設計されており、上記非導電性ポリマーバインダーは、ポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリビニルブチラール、ポリ(メタ)アクリル酸アミド、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリシリコーン、エポキシ樹脂、スチレン-アクリレート、酢酸ビニル/アクリレート若しくはエチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、又はこれらのポリマーの少なくとも2種を含む混合物からなる群から選択され、ポリ(メタ)アクリレート及びポリシリコーンは特に好ましい非導電性ポリマーバインダーである。ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート等の多官能性(メタ)アクリレートも非導電性ポリマーバインダーとして好適である。
【0102】
本発明に係るプロセス1の実施形態42では、プロセス1はその実施形態41に従って設計されており、上記ポリ(メタ)アクリレートは、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(アクリル酸n-プロピル)、ポリ(メタクリル酸n-プロピル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(メタクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸n-ブチル)、ポリ(メタクリル酸n-ブチル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(アクリル酸tert.-ブチル)、ポリ(メタクリル酸tert.-ブチル)、ポリ(アクリル酸2-エチルヘキシル)、ポリ(メタクリル酸2-エチルヘキシル)、ポリ(アクリル酸シクロヘキシル)、ポリ(メタクリル酸シクロヘキシル)、ポリ(アクリル酸フェニル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸ベンジル)、ポリ(メタクリル酸ベンジル)、及びこれらのポリアクリレート又はポリメタクリレートのコポリマーからなる群から選択される。
【0103】
本発明に係るプロセス1の実施形態43では、プロセス1はその実施形態40から実施形態42のいずれか1つに従って設計されており、上記非導電性ポリマーバインダー、好ましくはポリ(メタ)アクリレート及び/又はポリシリコーンは、非導電性ポリマーバインダー及びポリチオフェン/有機化合物複合体が少なくとも20:1、好ましくは少なくとも25:1、より好ましくは少なくとも30:1の質量比で存在するような量で添加される。
【0104】
本発明に係るプロセス1の実施形態44では、プロセス1はその実施形態1から実施形態43のいずれか1つに従って設計されており、工程I)で提供される反応混合物は、上記組成物の総重量に基づいて、2重量%未満、好ましくは1重量%未満、最も好ましくは0.1重量%未満の水を含む。
【0105】
本発明に係る目的のうちの少なくとも1つを解決することへの寄与は、実施形態1から実施形態44のいずれか1つに係るプロセス1によって得られる、組成物2の実施形態1によってもなされる。
【0106】
本発明に係る目的のうちの少なくとも1つを解決することへの寄与は、基板と、この基板上に配置(付与、塗布)された導電層とを含む層構造1の実施形態1であって、この導電層は、
i)構造(Ia)又は(Ib)のモノマー単位を含む少なくとも1種のポリチオフェンであって、
【化21】
上記構造中、
*は隣接するモノマー単位への結合を示し、
X、ZはO又はSを表し、
~Rは、互いに独立に、水素原子又は有機残基Rを表すが、ただし、残基R~Rの少なくとも1つ、及び残基R及びRの1つは、有機残基Rを表し、好ましくは3,4-エチレンジオキシチオフェンとエチレン基の水素原子の少なくとも1つが有機残基Rによって置換されている3,4-エチレンジオキシチオフェンの少なくとも1種の誘導体との少なくとも1種のコポリマーである少なくとも1種のポリチオフェンと、
ii)1つ若しくは2つの無機酸基、好ましくは1つ若しくは2つのスルホン酸基、1つ若しくは2つの硫酸基、1つ若しくは2つのホスホン酸基、若しくは1つ若しくは2つのリン酸基を有する少なくとも1種の有機化合物、又はこの有機化合物の塩であって、この有機化合物又はその塩の分子量は、1,000g/mol未満、好ましくは900g/mol未満、より好ましくは800g/mol未満、さらにより好ましくは700g/mol未満、さらにより好ましくは600g/mol未満、さらにより好ましくは500g/mol未満である少なくとも1種の有機化合物又はこの有機化合物の塩と
を含む層構造1によってもなされる。
【0107】
好ましいポリチオフェン又はコポリマーi)及びアニオンii)は、本発明に係る組成物1及びプロセス1に関連して既に説明したポリチオフェン又はコポリマー及びアニオンである。
【0108】
本発明に係る層構造1の実施形態2では、層構造1はその実施形態1に従って設計されており、上記導電層におけるポリチオフェンi)、好ましくはコポリマーi)と有機化合物ii)又はその塩との重量比は、1:30~1:0.1の範囲、好ましくは1:20~1:0.2の範囲、より好ましくは1:5~1:0.5の範囲にある。
【0109】
本発明に係る層構造1の実施形態3では、層構造1はその実施形態1又は実施形態2に従って設計されており、上記導電層は、
iii)非導電性のオリゴマー又はポリマー、好ましくは非導電性のオリゴマーバインダー又はポリマーバインダー
をさらに含み、好ましい非導電性のオリゴマーバインダー又はポリマーバインダーは、本発明に係る組成物1の実施形態37から実施形態39において既に言及したものである。
【0110】
本発明に係る層構造1の実施形態4では、層構造1はその実施形態3に従って設計されており、上記導電層は、非導電性ポリマーバインダーiv)、好ましくはポリ(メタ)アクリレート及び/又はポリシリコーンと、ポリチオフェン/有機化合物複合体i)/ii)とを、少なくとも20:1、好ましくは少なくとも25:1、より好ましくは少なくとも30:1の質量比で含む。
【0111】
本発明に係る層構造1の実施形態5では、層構造1はその実施形態3又は実施形態4に従って設計されており、上記導電層は、最高1×1010Ω/sq、好ましくは最高5×10Ω/sq、さらにより好ましくは最高1×10Ω/sqのシート抵抗を有する。
【0112】
本発明に係る目的のうちの少なくとも1つを解決することへの寄与は、層構造の調製のためのプロセス2の実施形態1であって、
A)基板を提供する工程と、
B)基板を、実施形態1から実施形態44のいずれか1つに係る組成物1、又は実施形態1に係る組成物2でコーティングする工程と、
C)導電層の形成のために、有機溶媒iii)、好ましくは非プロトン性溶媒iii)を少なくとも部分的に除去する工程と
を含むプロセス2の実施形態1によってもなされる。
【0113】
本発明に係るプロセス2の実施形態2では、プロセス2は、
D)工程B)を実行する前に、接着剤層又はプライマー層等の中間コーティングを基板上に設置(付与、塗布)する工程
をさらに含む。
【0114】
本発明に係る目的のうちの少なくとも1つを解決することへの寄与は、本発明に係るプロセス2によって得られる層構造2の実施形態1によってもなされる。
【0115】
本発明に係る層構造1又は層構造2の実施形態2では、当該層構造は、その対応する実施形態1に従って設計されており、導電層は、少なくとも1S/cm、好ましくは少なくとも2S/cm、最も好ましくは少なくとも5S/cmの電気伝導率を有する。
【0116】
本発明に係る目的のうちの少なくとも1つを解決することへの寄与は、実施形態1若しくは実施形態2に係る層構造1若しくは実施形態1に係る層構造2を含む電子部品、特に有機発光ダイオード、有機太陽電池又はキャパシタ(コンデンサ)の実施形態1によってもなされる。
【0117】
本発明に係る目的のうちの少なくとも1つを解決することへの寄与は、電子部品、特に有機発光ダイオード、有機太陽電池若しくはキャパシタにおいて導電層を製造するため、又は帯電防止コーティングを製造するための、実施形態1から実施形態46のいずれか1つに係る組成物1又は実施形態1に係る組成物2の使用によってもなされる。
【0118】
有機化合物ii)
本発明に係る組成物若しくは層構造中に存在するか、又は本発明に係るプロセスの工程I)で提供される反応混合物中に存在する、1つ若しくは2つの無機酸基を有する有機化合物i)又はその塩は、好ましくはアニオン性界面活性剤であり、このアニオン性界面活性剤が、有機ホスホン酸、有機リン酸、アルキルアリールスルホン酸等の有機スルホン酸、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、及びこれらの塩又は混合物からなる群から選択されることがさらに好ましい。以下のアニオン性界面活性剤の各々は、アルキル鎖の長さが異なる化合物の混合物を含んでいてもよい。
好適なアルキル硫酸塩としては、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸リチウム、ドデシル硫酸アンモニウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、7-エチル-2-メチル-4-ウンデシル硫酸ナトリウム、及び2-エチルヘキシル硫酸ナトリウム等のC~C18アルキル硫酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
好適なアルキルエーテル硫酸塩としては、ラウレス硫酸ナトリウム及びミレス硫酸ナトリウム等のC~C18アルキルエーテル硫酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
好適なアルキルスルホン酸塩としては、テトラデシルスルホン酸ナトリウム、オクタデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ヘキサデシルスルホン酸ナトリウム及びその対応するスルホン酸等のC~C18アルキルスルホン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
アルキル置換基若しくはアリール置換基で任意に置換された好適なアリールスルホン酸塩又はアリールスルホン酸としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸及びドデシルベンゼンスルホン酸イソプロピルアミン塩等のC~C18アルキルベンゼンスルホン酸塩又はC~C18アルキルベンゼンスルホン酸;ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム及びヘキシルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のC~C18アルキルナフタレンスルホン酸塩又はC~C18アルキルナフタレンスルホン酸、とりわけドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム又はドデシルベンゼンスルホン酸が挙げられるが、これらに限定されない。任意にアルキル置換基で置換されている場合、アリールスルホン酸塩又はアリールスルホン酸は、アルキル鎖に沿った任意の点、例えば1級炭素、2級炭素又は3級炭素上に位置してもよい。好適なアルキルエステルスルホン酸塩又はアルキルエステルスルホン酸としては、メチルエステルスルホン酸塩、ドデシルメチルエステルα-スルホン酸ナトリウム、テトラデシルメチルエステルα-スルホン酸ナトリウム及びヘキサデシルメチルエステルα-スルホン酸ナトリウム等のC~C18アルキルメチルエステルスルホン酸塩又はC~C18アルキルメチルエステルスルホン酸が挙げられるが、これらに限定されない。硫酸塩基、スルホン酸塩基又はスルホン酸基は、アルキル鎖又はアリール環に沿った任意の点、例えば、1級炭素、2級炭素又は3級炭素上に位置してもよい。
ドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸ナトリウム等のC~C16アルキルジフェニルオキシドジスルホン酸塩又はC~C16アルキルジフェニルオキシドジスルホン酸等の2つのスルホン酸基を有する界面活性剤も好適である。
好適な有機ホスホン酸としては、フェニルホスホン酸、11-ヒドロキシウンデシルホスホン酸、2,4-キシリルホスホン酸、4-エチルフェニルホスホン酸、オクチルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、ウンデシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、p-(ジフェニルメチル)ホスホン酸、11-ホスホノウンデカン酸、及びp-(1-ナフタレニルメチル)ホスホン酸等の1価のホスホン酸、又は(12-ホスホノデシル)ホスホン酸、1,8-オクタンジホスホン酸等のジホスホン酸が挙げられる。
【0119】
しかしながら、アニオン性界面活性剤が1価のスルホン酸であることが特に好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸又はその塩であることが特に好ましい。
【0120】
添加剤iv)
本発明に係る組成物中に存在することもできる好適な添加剤iv)としては、酸化剤(好ましくはその還元された形態で)、導電性向上剤、接着促進剤、バインダー、及び架橋剤が挙げられる。
導電性を高める添加剤は、例えばテトラヒドロフラン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン基含有化合物、カプロラクタム、N-メチルカプロラクタム、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルホルムアミド、N-メチルホルムアニリド、N-メチルピロリドン(NMP)、N-オクチルピロリドン、ピロリドン等のアミド基又はラクタム基含有化合物、例えばスルホラン(テトラメチレンスルホン)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホン及びスルホキシド、例えばスクロース、グルコース、フルクトース、ラクトース等の糖又は糖誘導体、Tween又はSpan60等の砂糖ベースの界面活性剤、例えばソルビトール、マンニトール等の糖アルコール、例えば2-フランカルボン酸、3-フランカルボン酸等のフラン誘導体、及び/又は例えばエチレングリコール、グリセロール、若しくはジエチレングリコール若しくはトリエチレングリコール等のジアルコール若しくはポリアルコール(多価アルコール)等の化合物を含む。テトラヒドロフラン、N-メチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド又はソルビトールは、導電性上昇添加剤として特に好ましく使用される。
好適な接着促進剤は、例えば有機官能性シラン又はその加水分解生成物、例えば3-グリシドオキシプロピルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン又はオクチルトリエトキシシラン等の化合物である。
バインダーは、特に有機溶媒に可溶な有機バインダーを含み、例えば、ポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸アミド、ポリメタクリル酸エステル、ポリメタクリル酸アミド、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリシリコーン、エポキシ樹脂、スチレン-アクリレート、酢酸ビニル/アクリレート及びエチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルアルコール又はセルロース誘導体を上記組成物に添加することも可能である。上述したポリマーのコポリマーもバインダーとして好適である。特に、残基Rとしてアルキル基を有するチオフェンモノマーを含むポリチオフェンの場合、上記組成物が非導電性のオリゴマーバインダー又はポリマーバインダー、特にポリ(メタ)アクリレート及び/又はポリシリコーンをさらに含むことが特に好ましい。
好適な架橋剤は、メラミン化合物、ブロックイソシアネート、官能性シラン、例えばテトラエトキシシラン、例えばテトラエトキシシランに基づくアルコキシシラン加水分解生成物、又は3-グリシドオキシプロピルトリアルコキシシラン等のエポキシシランを含む。
【0121】
本発明に係る組成物の製造プロセス
本発明に係るプロセスでは、チオフェンモノマーは、有機化合物ii)(これは、好ましくはアニオンの形態で存在する)及び非プロトン性溶媒iii)の存在下で酸化的に重合される。ピロールの酸化重合に適した酸化剤iv)を酸化剤として使用することができる。実用上の理由から、安価で取り扱いの容易な酸化剤を用いることができ、例えば、FeCl、Fe(ClO等の鉄(III)塩、有機酸の鉄(III)塩、有機ラジカルを含む無機酸の鉄(III)塩を挙げることができる。有機ラジカルを含む無機酸の鉄(III)塩としては、C~C20アルカノールの硫酸ヘミエステルの鉄(III)塩、例えばラウリル硫酸の鉄(III)塩が挙げられる。有機酸の鉄(III)塩としては、例えば、以下のものが挙げられる:メタンスルホン酸、ドデカンスルホン酸等のC~C20アルキルスルホン酸の鉄(III)塩;2-エチルヘキシルカルボン酸等の脂肪族C~C20カルボン酸の鉄(III)塩;トリフルオロ酢酸、パーフルオロオクタン酸等の脂肪族パーフルオロカルボン酸の鉄(III)塩;シュウ酸等の脂肪族ジカルボン酸の鉄(III)塩、とりわけベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のC~C20アルキル基で任意に置換された芳香族スルホン酸の鉄(III)塩。有機酸の鉄(III)塩は、それらが有機溶媒、特に水と混和しない有機溶媒に部分的又は完全に溶解するという大きい応用上の利点を有する。例えばtert-ブチルペルオキシド、ジイソブチリルペルオキシド、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート、過酸化デカノイル、過酸化ベンゾイル、ペルオキシ安息香酸tert-ブチル、ジ-tert-アミルペルオキシド等の有機過酸化物も酸化剤として使用することができる。例えば2,2’-アゾジイソブチロニトリル等の有機アゾ化合物も使用することができる。特に好ましい酸化剤は、有機過酸化物のような有機の金属非含有酸化剤であり、過酸化ベンゾイルが最も好ましい。
【0122】
理論的には、チオフェンモノマーの酸化重合には、チオフェン1モル当たり、2.25当量の酸化剤が必要である(例えば、J.Polym.Sc.,Part A,Polymer Chemistry、第26巻、1287頁(1988)を参照)。しかしながら、先行技術では、酸化剤は、通常、ある過剰量、例えば、チオフェン1モル当たり0.1~2当量の過剰量で使用される。
【0123】
本発明に係るプロセスの工程II)において、チオフェンモノマーは、有機化合物ii)の存在下で、酸化剤の還元生成物への還元及びチオフェンモノマーの酸化により酸化的に重合され、好ましくはカチオン性ポリチオフェンコポリマーi)及び還元生成物を含む組成物を形成し、この重合は、好ましくは0℃~100℃の範囲の温度で行われる。この文脈では、反応温度が、25℃から、反応混合物中に含まれる溶媒の最低沸点未満の温度までの範囲にあることが特に好ましい。
【0124】
工程I)で提供される反応混合物中に存在するアニオンii)は、ポリチオフェンi)、好ましくはコポリマーi)のその正電荷を補償する対イオンとして機能する。アニオンii)及びポリチオフェンi)は、好ましくは、ポリチオフェン/アニオン複合体の形態で存在する。この文脈では、工程II)において、このような複合体の形態でポリチオフェンi)及びアニオンii)を含む組成物が得られることも好ましく、この組成物が、この複合体が分散している非プロトン性溶媒iii)を含む分散物の形態で存在することが特に好ましい。
【0125】
次に、本発明を、図、試験方法及び非限定的な実施例を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0126】
図1図1は、本発明に係る層構造100、例えば帯電防止フィルムの構造を一般的な形態で示す。PE、PP又はPETの層であることが多い帯電防止フィルムの場合、基板101の基板表面には、本発明に係る組成物を用いて調製された導電層102が存在する。
【発明を実施するための形態】
【0127】
試験方法
電気伝導率の測定
電気伝導率は、比抵抗の逆数を意味する。比抵抗は、導電性ポリマー層の表面抵抗と層厚さの積から算出される。表面抵抗は、導電性ポリマーについてDIN EN ISO 3915に準拠して決定される。具体的には、検討対象の組成物が、上記の基板洗浄プロセスで十分に洗浄した大きさ50mm×50mmのガラス基板に、スピンコーターで均質な膜として塗布される。この手順において、コーティング組成物は、上記領域を完全に覆うようにピペットによって基板に塗布され、そのままスピンコーティングで振り落とされる。コーティング組成物のスピン条件は、大気中、約1,000rpmで20秒であった。その後、ホットプレート上で乾燥工程が行われた(大気中、130℃で10分間)。2.0cmの距離を空けた2.0cmの長さの銀電極がシャドウマスクを介してポリマー層上に蒸着される。電極間の正方形の領域は、メスで2本の線を掻き取ることによって、層の残りから電気的に分離される。Ag電極間の表面抵抗は、絶縁抵抗計(Keithley(ケースレー) 614)を用いて測定される。ポリマー層の厚さは、触針式表面形状測定装置(Dektac(ディクタク) 150、Veeco(ビーコ))を用いて、掻き取った場所で測定される。
【0128】
水分含量の測定
本発明に係る組成物の水分含量は、カールフィッシャー滴定によって決定することができる。この目的のために、703滴定スタンドを備えたMetrohm(メトローム) 787 KF Titrinoが使用される。滴定容器は、白金電極の約1cmが浸るように、分析用のメタノールで満たされる。その後、約5mlのHydranal(ハイドラナール)バッファー酸がピペットで注入される。KFTプログラムを起動することにより、滴定セルが自動的に乾燥される。「KFT conditioned(KFT調整済み)」のメッセージが表示されたら準備完了である。その後、約5mlの分析対象組成物がシリンジで滴定容器に導入され、使用する分散液の正確な質量がシリンジの逆秤量で決定される。その後、滴定が開始される。測定値は、3回の個別測定値の平均値として決定される。
【0129】
固形分含有量
固形分含有量は、精密秤(Mettler(メトラー) AE240)を用いた重量測定により決定された。まず、蓋を含む空の秤量瓶が秤量される(重量A)。次に、分析される分散液約3gが瓶に素早く充填され、瓶は蓋をして再び秤量され、正確な総重量Bが決定される。次いで、この瓶は、揮発性溶媒を室温で蒸発させるため、約3時間、照明のない換気フード内に置かれる。第2の工程で、瓶は、換気機能付き乾燥炉(Memmert(メムメルト) UNB200)に入れられ、160℃で16~17時間乾燥される。乾燥した分散液材料には吸湿性があるため、試料瓶をオーブンから取り出したら、すぐにガラス蓋をすることが重要である。10~15分の冷却期間後、瓶は、蓋も含めて再度重量測定され、重量Cが求められる。
固形分含有量の算出:重量%固形分含有量=100×(C-A)/(B-A)
結果は2回の測定値の平均値である。
【0130】
PET基材への膜の作製
12μmのギャップ間隔を有するErichsen(エリクセン)製の手動式ドクターブレードを用い、室温でPET基板に分散液が塗布された。ここでいう手動式ドクターブレードのギャップ間隔は、乾燥前膜厚とも呼ばれる、形成される未乾燥膜の厚さを決定する。このようにして形成された塗膜又は膜は、次に130℃の乾燥オーブンで5分間乾燥された。さらなる処理の前に、コーティングされたPET基板は室温まで冷却された。
【0131】
表面抵抗率の測定
表面抵抗率は、Staticide(スタティサイド) ACL 800デジタル式メガオーム計を用い、100V設定にて測定された。シート上の異なる位置で2回の測定が行われ、最も低い値が結果とされた。測定可能な表面抵抗率の最高値は2×1011Ω/sqである。その閾値以上の値は範囲外と判断されるが、2×1011Ω/sqで表示される。
【0132】
有機溶媒中における分散液の安定性の判定
分散液の安定性は、初期分散液に記載の量の溶媒を5分かけてゆっくりと添加することにより判定された。混合物は、溶媒添加の過程の間、及びさらに15分間ゆっくりと撹拌された。この混合物は、機械的な撹拌を行わずに室温で24時間保存された。得られた混合物は、目視評価の結果、3つのカテゴリーに分類された。
+ 粒子のない安定した均質な分散液
0 小さな粒子が見える
- 大きい粒子、及び/又は著しいゲル化、及び/又は相分離
【実施例
【0133】
例1:
(2-[(デシルオキシ)メチル]-2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b]-1,4-ジオキシン)の合成のための参考例)
【化22】
合成は乾燥不活性条件下で行う。
【0134】
THF(6.6L)及び18-クラウン-6(22.0g、88mmol)を反応容器に加える。NaH(166.4g、4.15mol)を油中60%懸濁液として撹拌下で加え、この混合物を室温で撹拌する。0℃でTHF中のEDOT-MeOH(551g、3.2mol)溶液をこのNaH溶液に加える。この溶液の添加後、反応混合物を室温で1.5時間、その後、50℃で1時間撹拌する。反応混合物を0℃に冷却し、1-ブロモデカン(936.7g、4.2mol)溶液を加え、室温で1時間、50℃で15時間撹拌する。反応混合物を室温まで冷却し、イソプロパノール/水 70:30(v/v)の混合物でクエンチする。粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製した。
【0135】
反応生成物(2-[(デシルオキシ)メチル]-2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b]-1,4-ジオキシン、CAS:210476-55-4)が黄色油状物として74~80%の収率で得られる。
【0136】
例2:
(国際公開第2012/059215号パンフレットの教示に従った比較例)
メカニカルスターラーを備えた1L三口丸底フラスコに、294gのアニソール(Aldrich(アルドリッチ))、9.4gの過酸化ベンゾイル(39mmol;Aldrich)、8.25gのスルホン化ブロックコポリマー(Kraton Nexar(登録商標) MD)及び7.2gのパラトルエンスルホン酸(38mmol、Aldrich)を装入した。60℃に加熱後、20gのアニソールに溶解した4.95gの3,4-エチレンジオキシチオフェン(35mmol;Clevios M V2;Heraeus Deutschland GmbH & Co KG(ヘレウス・ドイチェラント)、ドイツ)を40分かけて加えた。この分散液を60℃でさらに3時間撹拌した後、室温まで冷却した。この分散液を分散液2Aとする。
【0137】
濾過後に得られた20gの分散液及び20gの酢酸ブチルを50mlのガラス瓶中で混合し、2分間の超音波処理(Hielscher(ヒールシャー) UP 200 S、サイクル1、振幅100%)を施した。この試料を分散液2Bとする。
分散液2Bの分析:
固形分含有量: 2.5%(重量法)
【0138】
ワイヤーバーを用いて、基板上に分散液2Bの12μmのウェット膜を成膜し、130℃のオーブンで15分間乾燥させた。この導電層は、以下の特性を特徴としていた。
電気伝導率(ガラス上): 7.7S/cm
シート抵抗(PET上の12μm): 17,000Ω/sq
【0139】
例3(本発明に係る)
例3では、以下の複合体を調製する。
【化23】
【0140】
分散液A:
メカニカルスターラー、冷却器及び窒素導入口を備えた100mlの三口丸底フラスコに、29.7gのアニソール(Aldrich)、2.7gの過酸化ベンゾイル(11.1mmol;Aldrich)及び3.7gのドデシルベンゼンスルホン酸(11.5mmol;Aldrich)を装入した。60℃に加熱後、0.705gの3,4-エチレンジオキシチオフェン(5mmol;Clevios M V2;Heraeus Deutschland GmbH & Co KG、ドイツ)及び1.55gの例1で得たEDOT誘導体(5mmol)を加えた。この分散液を窒素下、60℃でさらに3時間撹拌した。その後、35gのアニソールを加えた。室温まで冷却した後、この分散液を一晩静置した。この分散液を分散液3Aとする。
【0141】
分散液3B:
5gの分散液3A及び5gの酢酸ブチルを20mlのガラス瓶中で混合し、1分間の超音波処理(Hielscher UP 200 S、サイクル1、振幅100%)を施した。この材料を分散液3Bとする。
分散液3Bの分析:
固形分含有量: 2.4%(重量法)
【0142】
ワイヤーバーを用いて、PET基板上に12μmのウェット膜を成膜し、130℃のオーブンで15分間乾燥させた。この膜は、以下の特性を特徴としていた。
シート抵抗(PET上の12μm): 20,000Ω/sq
【0143】
分散液3C:
2.5gの分散液+3A、2.5gのアニソール、5gの酢酸ブチルを20mlガラス瓶中で混合し、1分間の超音波処理(Hielscher UP 200 S、サイクル1、振幅100%)を施した。この材料を分散液3Cとする。
分散液3Cの分析:
固形分含有量: 1.2%(重量法)
水分含量: 0.04%
【0144】
イオン含有量は、誘導結合プラズマ発光分光分析により測定した。
Na含有量: 24ppm
Ca含有量: 0.6ppm
Mg含有量: 0.06ppm
K、Fe、Cu、Pb、Al、Cr、Co、Mn、Ni、V、Zn及びCdは検出限界の0.025ppm未満であった。
【0145】
ワイヤーバーを用いて、PET基板上に12μmのウェット膜を成膜し、130℃のオーブンで15分間乾燥させた。この膜は、以下の特性を特徴としていた。
シート抵抗(PET上の12μm) 16,000Ω/sq
透過率(PETを含む) 83.3%
ヘイズ(PETを含む) 0.58
【0146】
分散液3Cをガラス上にスピンコーティングで成膜し、130℃のホットプレート上で10分間乾燥させた。電気伝導率は、上述の試験方法に従って測定した。
この膜は、以下の特性を特徴としていた。
電気伝導率 9.4S/cm
【0147】
例4(本発明に係る)
(例4では、ドデシルベンゼンスルホン酸の濃度を下げている)
メカニカルスターラー、冷却器及び窒素導入口を備えた100ml三口丸底フラスコに、29.7gのアニソール(Aldrich)、2.7gの過酸化ベンゾイル(11.1mmol;Aldrich)、及び3.08gのドデシルベンゼンスルホン酸(9.6mmol;Aldrich)を装入した。60℃に加熱後、0.705gの3,4-エチレンジオキシチオフェン(5mmol;Clevios M V2;Heraeus Deutschland GmbH & Co KG、ドイツ)及び1.55gの例1で得たEDOT誘導体(5mmol)を加えた。この分散液を窒素下、60℃でさらに3時間撹拌した。その後、35gのアニソールを加えた。室温まで冷却した後、この分散液を一晩静置した。この分散液を分散液4Aとする。
【0148】
5gの分散液4A及び5gの酢酸ブチルを20mlのガラス瓶中で混合し、1分間の超音波処理(Hielscher UP 200 S、サイクル1、振幅100%)を施した。この材料を分散液4Cとする。
分散液4Cの分析:
固形分含有量: 2.1%(重量法)
【0149】
ワイヤーバーを用いて、PET基板上に12μmのウェット膜を成膜し、130℃のオーブンで15分間乾燥させた。この膜は、以下の特性を特徴としていた。
シート抵抗(PET上の12μm): 12,000Ω/sq
【0150】
例5(本発明に係る)
(例5ではドデシルベンゼンスルホン酸の濃度をさらに下げている)
メカニカルスターラー、冷却器及び窒素導入口を備えた100ml三口丸底フラスコに、29.7gのアニソール(Aldrich)、2.7gの過酸化ベンゾイル(11.1mmol;Aldrich)及び2.2gのドデシルベンゼンスルホン酸(6.8mmol;Aldrich)を装入した。60℃に加熱後、0.705gの3,4-エチレンジオキシチオフェン(5mmol;Clevios M V2;Heraeus Deutschland GmbH & Co KG、ドイツ)及び1.55gの例1で得たEDOT誘導体(5mmol)を加えた。この分散液を窒素下、60℃でさらに3時間撹拌した。その後、35gのアニソールを加えた。室温まで冷却した後、この分散液を一晩静置した。この分散液を分散液5Aとする。
【0151】
例6
分散液2A及び分散液5Aを溶媒相溶性に関して比較した。試料を、表1に示す追加の溶媒と混合した後、1分間超音波を照射した。
【0152】
ワイヤーバーを用いて、PET基板上に12μmのウェット膜を成膜し、130℃のオーブンで15分間乾燥させた。シート抵抗を測定した。
【0153】
【表1】
表1:異なる溶媒を用いた本発明の分散液5A及び参考分散液2Aの希釈、並びにそれぞれの膜のシート抵抗.
【0154】
表1は、本発明の分散液5Aが各種溶媒で1.5×10Ω/sq以下の低いシート抵抗値を与えるのに対して、分散液2Aは1011Ω/sqまでの値を与えることを示す。
【0155】
例7
アニソール/酢酸ブチル混合物(50%/50%w/w)中のポリ(メタクリル酸イソブチル)の2.5%溶液を調製した。この溶液を、分散液2Bと異なる比率で混合した。両方の溶液は同じ固形分含有量を有するので、溶液/分散液の比率は、得られる膜中の固形分の比率に対応する。
【0156】
加えて、アニソール/酢酸ブチル混合物(50%/50%w/w)中のポリ(メタクリル酸イソブチル)の2.4%溶液を調製した。この溶液を分散液3Bと異なる比率で混合した。両方の溶液は同じ固形分を有するので、溶液/分散液の比率は、得られる膜中の固形分の比率に対応する。
【0157】
ワイヤーバーを用いて、PET基板上に8種類のすべての混合物の12μmウェット膜を成膜し、130℃のオーブンで15分間乾燥させた。
【0158】
【表2】
表2:PETフィルム上のポリチオフェン/ポリ(メタクリル酸イソブチル)コーティングのシート抵抗及びヘイズ
【0159】
表2は、本発明の分散液3Bが、ポリ(メタクリル酸イソブチル)とブレンドした場合、参考分散液2Bと比較して、低いシート抵抗及び低いヘイズを与えることを示す。
【0160】
例8(本発明に係る)
例8では、以下の複合体を調製する。
【化24】
【0161】
分散液8A:
メカニカルスターラー、コンデンサ及び窒素導入口を備えた100mlの三口丸底フラスコに、29.7gのアニソール(Aldrich)、2.7gの過酸化ベンゾイル(11.1mmol;Aldrich)及び3.0gのドデシルベンゼンスルホン酸(9.3mmol;DBSA;Aldrich)を装入した。60℃に加熱後、0.42gの3,4-エチレンジオキシチオフェン(3mmol;Clevios M V2;Heraeus Deutschland GmbH & Co KG、ドイツ)及び1.38gの2-ブチル-2,3-ジヒドロチエノ[3,4b][1,4]ジオキシン(7mmol;ブチルEDOT;CAS 552857-06-4、Synmax Biochemical(駿瀚生化股ふん有限公司)、台湾)を加える。この分散液を窒素下60℃でさらに3時間撹拌した。その後、35gのアニソールを加えた。室温まで冷却した後、この分散液を一晩静置した。この分散液を分散液8Aとする。
【0162】
分散液8B:
5gの分散液6A、3gのアニソール、2gのブタノールを20mlのガラス瓶中で混合し、1分間の超音波処理(Hielscher UP 200 S、サイクル1、振幅100%)を施した。この材料を分散液8Bとする。
【0163】
ワイヤーバーを用いて、PET基板上に12μmのウェット膜を成膜し、130℃のオーブンで15分間乾燥させた。この膜は、以下の特性を特徴としていた。
シート抵抗(PET上の12μm) 17,400Ω/sq
ヘイズ(PET上の12μm) 0.7
【0164】
例9(本発明に係る)
0.846gの3,4-エチレンジオキシチオフェン(6mmol)及び0.79gの2-ブチル-2,3-ジヒドロチエノ[3,4b][1,4]ジオキシン(4mmol)を使用して、例8の合成を繰り返した。他のパラメータはすべて変えないままであった。超音波処理後に得られた最終材料を分散液9Bとする。
【0165】
例10(本発明に係る)
0.705gの3,4-エチレンジオキシチオフェン(5mmol)及び0.98gの2-ブチル-2,3-ジヒドロチエノ[3,4b][1,4]ジオキシン(5mmol)を使用して、例8の合成を繰り返した。他のパラメータはすべて変えないままであった。超音波処理後に得られた最終材料を分散液10Bとする。
【0166】
例11(本発明に係る)
0.56gの3,4-エチレンジオキシチオフェン(4mmol)及び1.18gの2-ブチル-2,3-ジヒドロチエノ[3,4b][1,4]ジオキシン(6mmol)を使用して、例8の合成を繰り返した。他のパラメータはすべて変えないままであった。超音波処理後に得られた最終材料を分散液11Bとする。
【0167】
例12(本発明に係る)
10mmolの量の2-ブチル-2,3-ジヒドロチエノ-[3,4b][1,4]ジオキシンを使用して、例8の合成を繰り返した。3,4-エチレンジオキシチオフェンは使用しなかった。他のパラメータはすべて変えないままであった。室温まで冷却し、一晩静置した後に得られる分散液を分散液12Aとする。超音波処理後に得られる最終材料を分散液12Bとする。
【0168】
ワイヤーバーを用いて、PET基板上に分散液9B~12Bから12μmのウェット膜を例8に従って成膜し、130℃のオーブンで15分間乾燥させた。これらの膜を、そのシート抵抗及びヘイズによって特性評価した。
12Bのイオン含有量は、誘導結合プラズマ発光分光分析により測定した。
Na含有量: 1.4ppm
Ca含有量: 2.8ppm
Mg含有量: 0.02ppm
K、Fe、Cu、Pb、Al、Cr、Co、Mn、Ni、V、Zn及びCdは検出限界の0.025ppm未満であった。
【0169】
表3は、分散液2B及び8B~12Bのシート抵抗及びヘイズに関する結果をまとめる。
【0170】
【表3】
表3:分散液2B及び8B~12Bを用いて調製した膜のシート抵抗及びヘイズ
【0171】
例13(本発明に係る)
ポリ(メタクリル酸イソブチル)(PIBM)の溶液を調製した。そのために、13.6gのポリ(メタクリル酸イソブチル)を220gのアニソール、132gの酢酸ブチル及び88gのブタノールの混合物に溶解させた。
【0172】
ブレンドのシリーズ1:
PIBM溶液と分散液2B及び8B~12Bとの一連のブレンドを調製した。9gのPIBM溶液を0.34gの分散液12B並びに0.55gのアニソール、0.33gの酢酸ブチル及び0.22gのブタノールと混合した。非導電性PIBMとポリチオフェン/DBSA複合体との質量比は36:1である。同様に0.34gの分散液2B及び8B~11Bを9gのPIBM溶液及び追加の溶媒とブレンドした。
【0173】
ブレンドのシリーズ2:
ブレンドの第2のシリーズを調製した。4gのPIBM溶液を0.29gの分散液12B並びに0.35gのアニソール、0.21gの酢酸ブチル及び0.14gのブタノールと混合した。非導電性PIBMとポリチオフェン/DBSA複合体との質量比は19:1である。同様に0.29gの分散液2B及び8B~11Bを4gのPIBM溶液及び追加の溶媒とブレンドした。
【0174】
ワイヤーバーを用いて、PET基板上にシリーズ1及び2の分散液の12μmのウェット膜を成膜し、130℃のオーブンで15分間乾燥させた。これらの膜をシート抵抗によって特性評価した。表4は、その結果をまとめる。
【0175】
【表4】
表4:PIBMを加えた分散液2B及び8B~12Bを用いて調製した膜のシート抵抗(1):本発明によるものではない)
【0176】
表4は、アルキル-EDOTを含むポリチオフェンの優位性を明確に示している。
【0177】
例14(本発明に係る)
例12Aで得た分散液を、様々な溶媒で希釈した。表5は混合溶媒を示す。
【0178】
例14B
5gの分散液12Bを、3gのアニソール及び2gのn-ブタノールと混合した。得られた混合溶媒は、80%のアニソール(w/w)及び20%のn-ブタノール(w/w)を含んでいた。ワイヤーバーを用いて、PET基板上に分散液の12μmのウェット膜を成膜し、130℃のオーブンで15分間乾燥させた。固形分含有量は2.2%であった。シート抵抗は8×10Ω/sqであった。
【0179】
例14C:
5gの分散液を10gのアニソール及び5gのn-ブタノールと混合した。得られた混合溶媒は75%のアニソール及び25%のn-ブタノールを含んでいた。固形分含有量は1.1%であった。ワイヤーバーを用いて、PET基板上に分散液の12μmのウェット膜を成膜し、130℃のオーブンで15分間乾燥させた。シート抵抗は16×10Ω/sqであった。
【0180】
例14D、14E、14F及び14Gをしかるべく調製した。
【0181】
表5は組成及び得られたシート抵抗を示す。
【0182】
【表5】
表5:分散液12Aと様々な溶媒とのブレンド
【0183】
6例のすべてで、粒子も沈殿物も形成しない均一な分散液が得られた。表5も、アルキル-EDOTを含むポリチオフェンの優位性を明確に示す。
【0184】
例15(本発明に係る)
メカニカルスターラー、冷却器及び窒素導入口を備えた100ml三口丸底フラスコに、29.7gのアニソール(Aldrich)、2.7gの過酸化ベンゾイル(11.1mmol;Aldrich)及び3.0gのドデシルベンゼンスルホン酸(9.3mmol;DBSA;Aldrich)を装入した。60℃に加熱後、0.56gの2-デシル-2,3-ジヒドロチエノ[3,4b][1,4]ジオキシン(2mmol;デシルEDOT;CAS 126213-55-6)及び1.58gの2-ブチル-2,3-ジヒドロチエノ[3,4b][1,4]ジオキシン(8mmol;ブチルEDOT;CAS 552857-06-4)を加える。この分散液を窒素下、60℃でさらに3時間撹拌した。その後、35gのアニソールを加えた。室温まで冷却した後、この分散液を一晩静置した。この分散液を分散液15Aとする。
【0185】
分散液15B:
5gの分散液15A、3gのアニソール及び2gのブタノールを20mlのガラス瓶中で混合し、1分間の超音波処理(Hielscher UP 200 S、サイクル1、振幅100%)を施した。この材料を分散液15Bとする。
固形分含有量: 2.4%
【0186】
ワイヤーバーを用いて、PET基板上に12μmのウェット膜を成膜し、130℃のオーブンで15分間乾燥させた。この膜は、以下の特性を特徴としていた。
シート抵抗(PET上の12μm) 64,000Ω/sq
ヘイズ(PET上の12μm) 0.8
【0187】
例16(本発明に係る)
ポリ(アクリル酸n-ブチル)は、ガラス転移温度(Tg=-54℃)が低いポリアクリレートの一例である。ポリ(アクリル酸n-ブチル)のトルエン溶液(CAS 9003-49-0;トルエン中25重量%、M99000g/mol;Sigma Aldrich(シグマ・アルドリッチ)製品181404)を分散液15Bとブレンドした。表6は、3種の混合物の配合比を示す。
【0188】
各混合物について、ワイヤーバーを用いて、PET基板上に12μmのウェット膜を成膜し、130℃のオーブンで15分間乾燥させた。シート抵抗を測定した。
【0189】
【表6】
表6:分散液15Bとポリ(アクリル酸n-ブチル)とのブレンド及びそのシート抵抗
【0190】
例17
(3-(2-エチルヘキソキシメチル)-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシンの合成に関する参考例)
【化25】
合成は乾燥不活性条件下で行う。
【0191】
THF(60mL)及び18-クラウン-6(0.200g、0.8mmol)を反応容器に加える。NaH(1.512g、37.8mmol)を油中60%懸濁液として撹拌下で加え、この混合物を室温で撹拌する。0℃で、20mLのTHF中のEDOT-MeOH(5.00g、29.0mmol)溶液をNaH溶液に加える。この溶液の添加後、反応混合物を室温で2.5時間、次いで55℃で0.5時間撹拌する。反応混合物を0℃に冷却し、20mLのTHF中の臭化2-エチルヘキシル(7.300g、37.8mmol)溶液を加える。反応混合物を室温で1時間、50℃で40時間撹拌する。反応混合物を室温まで冷却し、イソプロパノール/水 70:30(v/v)の混合物でクエンチする。粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製した。
【0192】
反応生成物(3-(2-エチルヘキソキシメチル)-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン)が黄色油状物として15%の収率で得られる。
【0193】
例18
(3-(1-フェニルエトキシメチル)-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシンの合成のための参考例)
【化26】
合成は乾燥不活性条件下で行う。
【0194】
DMSO(50mL)、KOH(3.254g、58mmol)、1-(ブロモエチル)ベンゼン(6.700g、37.8mmol)、及びEDOT-MeOH(5.00g、29.0mmol)を反応容器に加える。得られた反応混合物を20℃で24時間撹拌する。反応終了後、反応混合物を脱イオン水(1000mL)に注ぎ、1時間撹拌する。得られた混合物の体積を真空蒸留で半分にする。この混合物を酢酸エチル(150mL)で3回抽出し、合わせた有機相をブライン(150mL)で洗浄し、MgSOで乾燥し、溶媒を真空中で留去する。粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製する。
【0195】
反応生成物3-(1-フェニルエトキシメチル)-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン)を黄色油状物として49%の収率で得る。
【0196】
例19
メカニカルスターラーを備えた250mL三つ口丸底フラスコに、65gのアニソール(Aldrich)、2.699gの過酸化ベンゾイル(11.1mmol;Aldrich)及び2.981gの4-ドデシルベンゼンスルホン酸(9.3mmol、Aldrich)を装入した。60℃に加熱後、20gのアニソールに溶解した1.185gの3-ブチル-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン(6mmol;ブチルEDOT;CAS 552857-06-4、Synmax Biochemical、台湾)及び1.134gの例17の反応から得た生成物(4mmol)を40分かけて加えた。この分散液を60℃でさらに3時間撹拌した後、室温まで冷却した。
【0197】
50gのこの分散液、30gのアニソール、20gのn-ブタノールを100mLフラスコに加え、得られた分散液を穏やかに撹拌しながら混合する。
これを分散液19とする。
分散液19の分析:
固形分含有量: 2.4%(重量法)
シート抵抗(PET上の12μm): 210000Ω/sq
【0198】
分散液19のイオン含有量は、誘導結合プラズマ発光分光分析により測定した。
Na 0.324 ppm
Fe 0.043 ppm
Cu 0.000 ppm
Pb 0.000 ppm
B 0.010 ppm
Mo 0.370 ppm
Al 0.000 ppm
Cr 0.028 ppm
Co 0.000 ppm
Mn 0.000 ppm
Ni 0.000 ppm
V 0.000 ppm
Zn 0.514 ppm
Ca 0.172 ppm
K 0.000 ppm
Mg 0.077 ppm
Cd 0.012 ppm
【0199】
例20
メカニカルスターラーを備えた250mL三つ口丸底フラスコに、65gのアニソール(Aldrich)、2.699gの過酸化ベンゾイル(11.1mmol;Aldrich)及び2.981gの4-ドデシルベンゼンスルホン酸(9.3mmol、Aldrich)を装入した。60℃に加熱後、20gのアニソールに溶解した1.185gの3-ブチル-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン(10mmol;ブチルEDOT;CAS 552857-06-4、Synmax Biochemical、台湾)を40分かけて加えた。この分散液を60℃でさらに3時間撹拌した後、室温まで冷却した。
【0200】
50gのこの分散液、30gのアニソール、及び20gのn-ブタノールを100mLフラスコに加え、得られた分散液を穏やかに撹拌しながら混合する。
これを分散液20とする。
分散液20の分析:
固形分含有量: 2.2%(重量法)
シート抵抗(PET上の12μm): 70000Ω/sq
【0201】
例21
分散液19及び分散液20をその溶媒相溶性に関して試験した。1gの上記の分散液を、9gの表7に示す追加の溶媒と穏やかに撹拌、振盪して混合する。
ワイヤーバーを用いて、PET基板上に12μmのウェット膜を成膜し、130℃のオーブンで15分間乾燥させた。表面抵抗率を測定した。
【0202】
ブランクのPET基板は、測定時に以下のベースライン値を与える。
表面抵抗率: 1.8×1011Ω/sq
透過率: 91%
【0203】
表7:様々な溶媒による分散液19及び分散液20の希釈.
【表7】
【0204】
表7は、本発明例19及び20の分散液は、良好な表面抵抗率を示し、様々な一般有機溶媒中で安定な分散液を形成することを示す。
【0205】
例22
メカニカルスターラーを備えた250mL三口丸底フラスコに、65gのアニソール(Aldrich)、2.699gの過酸化ベンゾイル(11.1mmol;Aldrich)、2.981gの4-ドデシルベンゼンスルホン酸(9.3mmol、Aldrich)を装入した。60℃に加熱後、20gのアニソールに溶解した1.565gの3-ブチル-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン(8mmol;ブチルEDOT;CAS 552857-06-4、Synmax Biochemical、台湾)及び0.565gの3-デシル-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン(2mmol;CAS:210476-55-4)を40分かけて加えた。この分散液を60℃でさらに3時間撹拌した後、室温まで冷却した。
【0206】
50gのこの分散液、30gのアニソール、及び20gのn-ブタノールを100mLフラスコに加え、得られた分散液を穏やかに撹拌しながら混合する。
これを分散液22とする。
【0207】
分散液22の分析:
固形分含有量: 2.3%(重量法)
シート抵抗(PET上の12μm): 63000Ω/sq
【0208】
例23
分散液19及び分散液22をアクリル樹脂との相溶性に関して試験した。表8は、使用した分散液、溶媒、及びジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート(CAS 60506-81-2、Sigma Aldrich)の量を示す。
【0209】
ワイヤーバーを用いて、PET基板上に12μmのウェット膜を成膜し、130℃のオーブンで15分間乾燥させた。表面抵抗率を測定した。
【0210】
表8:アクリル樹脂中の分散液19及び分散液22の表面抵抗率.
【表8】
【0211】
表8は、達成された表面抵抗率値で明らかなように、分散液19及び22のアクリル樹脂との相溶性を示す。
【0212】
例24
分散液19及び分散液2Bをシリコーン系離型性樹脂との相溶性に関して比較した。表は、使用した分散液、溶媒、及びKS 847-H(CAS:63148-53-8;信越シリコーン)の量を示す。溶媒として、トルエン、アルカン及びケトンの混合物を使用する。
【0213】
ワイヤーバーを用いて、PET基板上に12μmのウェット膜を成膜し、130℃のオーブンで15分間乾燥させた。表面抵抗率を測定した。
【0214】
表9:シリコーン系離型性樹脂中での分散液19及び分散液24の表面抵抗率.
【表9】
【0215】
表9は、達成された表面抵抗率の値で明らかなように、分散液19のシリコーン系離型性樹脂との優れた相溶性を示す。
【0216】
例25
分散液19及び分散液22を、ポリアクリル樹脂との相溶性に関して試験した。表10は、使用した分散液、溶媒、及びポリアクリル酸ブチル(CAS 9003-49-0、Sigma Aldrich)の量を示す。
【0217】
ワイヤーバーを用いて、PET基板上に12μmのウェット膜を成膜し、130℃のオーブンで15分間乾燥させた。表面抵抗率を測定した。
【0218】
表10:ポリアクリル系バインダー中の分散液19及び分散液22の表面抵抗率.
【表10】
【0219】
表10は、達成された表面抵抗率で明らかなように、分散液19及び22のポリ(メタ)アクリレートバインダーとの相溶性を示す。
【0220】
例26
メカニカルスターラーを備えた250mLの三つ口丸底フラスコに、65gのアニソール(Aldrich)、2.699gの過酸化ベンゾイル(11.1mmol;Aldrich)及び2.981gの4-ドデシルベンゼンスルホン酸(9.3mmol、Aldrich)を装入した。60℃に加熱後、20gのアニソールに溶解した1.584gの3-ブチル-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン(8mmol;ブチルEDOT;CAS 552857-06-4、Synmax Biochemical、台湾)及び0.553gの例18の反応から得た生成物(2mmol)を40分かけて加えた。この分散液を60℃でさらに3時間撹拌した後、室温に冷却した。
【0221】
5gのこの分散液、3gのアニソール、及び2gのn-ブタノールを緩やかな撹拌によって混合し、1分間の超音波処理(Hielscher UP 200 S、サイクル1、振幅100%)を施し、生じた分散液を得る。
これを分散液26とする。
【0222】
分散液26の分析:
固形分含有量: 2.4%(重量法)
シート抵抗(PET上の12μm): 19000Ω/sq
【符号の説明】
【0223】
100 層本体
101 基板
102 導電層
図1
【国際調査報告】