(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-24
(54)【発明の名称】二酸化チタン非含有白色フィルムコーティング組成物、その調製方法及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C09D 101/08 20060101AFI20221116BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20221116BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20221116BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20221116BHJP
A61K 9/36 20060101ALI20221116BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20221116BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20221116BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20221116BHJP
A61K 9/62 20060101ALI20221116BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20221116BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20221116BHJP
A23L 29/262 20160101ALI20221116BHJP
A23G 3/34 20060101ALI20221116BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20221116BHJP
A01G 9/14 20060101ALI20221116BHJP
A01G 13/02 20060101ALI20221116BHJP
A01C 1/06 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
C09D101/08
C09D7/61
C09D7/63
C09D7/65
A61K9/36
A61K47/14
A61K47/12
A61K47/10
A61K9/62
A61K9/16
A23L5/00 F
A23L29/262
A23G3/34 101
B05D7/24 301E
A01G9/14 S
A01G13/02 B
A01C1/06 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519411
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(85)【翻訳文提出日】2022-05-12
(86)【国際出願番号】 US2020052724
(87)【国際公開番号】W WO2021062158
(87)【国際公開日】2021-04-01
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591223105
【氏名又は名称】ハーキュリーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173473
【氏名又は名称】高井良 克己
(72)【発明者】
【氏名】カピッシュ カラン
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド ハッチ
【テーマコード(参考)】
2B024
2B029
2B051
4B014
4B035
4B041
4C076
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
2B024DA02
2B024DB07
2B024DB10
2B029EC09
2B029EC15
2B051BA17
4B014GB06
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4J038BA021
4J038DF012
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4J038KA10
4J038KA20
4J038MA06
4J038PB01
4J038PB02
4J038PB04
4J038PC01
4J038PC05
(57)【要約】
本出願は、水溶性セルロースエーテル、水溶性アニオン性セルロースエーテル、炭酸カルシウム、可塑剤を組み合わせた二酸化チタン非含有フィルムコーティング組成物を提供する。本発明はさらに、フィルムコーティング組成物を調製する方法及びこのようなコーティング組成物で固体基材をコーティングする方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む二酸化チタン非含有白色フィルムコーティング組成物:
(i)20重量%~50重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、水溶性セルロースエーテル;
(ii)5重量%~15重量%のカルボキシメチルセルロース(CMC)、水溶性アニオン性セルロースエーテル;
(iii)10重量%~60重量%の炭酸カルシウム(CaCO
3);及び
(iv)5重量%~25重量%の可塑剤。
【請求項2】
前記組成物が、0.0重量%~5重量%の中鎖トリグリセリド(MCT)、及び0.0重量%~2重量%のクエン酸一水和物をさらに含む、請求項1に記載の白色フィルムコーティング組成物。
【請求項3】
前記組成物が、約10重量%~約25重量%の範囲の全固体含量を有する、請求項1に記載の白色フィルムコーティング組成物。
【請求項4】
前記可塑剤が、ポリエチレングリコール (PEG)である、請求項1に記載の白色フィルムコーティング組成物。
【請求項5】
白色フィルムがコートされた基材の調製方法であって、以下を含む方法:
(a)請求項1に記載の白色フィルムコーティング組成物を含むコーティング懸濁物を創出する工程;
(b)工程(a)のコーティング懸濁物を固体基材の表面に適用してコーティング層を形成する工程;
(c)同時に及び/又はその後に前記コーティング層を乾燥してドライコーティングを固体基材の表面上に形成する工程;及び
(d)最終の白色フィルムがコートされた固体基材を得る工程。
【請求項6】
前記固体基材が、農業製品、栄養製品又は医薬製品である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
以下の工程を含む方法によって製造された白色フィルムがコートされた固体製品:
(a)請求項1に記載の白色フィルムコーティング組成物を含むコーティング懸濁物を創出する工程;
(b)工程(a)のコーティング懸濁物を固体製品の表面に適用してコーティング層を形成する工程;
(c)同時に及び/又はその後に前記コーティング層を乾燥してドライコーティングを固体製品の表面上に形成する工程;及び
(d)最終のフィルムコートされた固体製品を得る工程。
【請求項8】
前記コートされた製品が、コートされた農業製品、コートされた栄養製品又はコートされた医薬製品である、請求項7に記載の白色フィルムがコートされた固体製品。
【請求項9】
前記コートされた医薬製品が、医薬経口固体剤形へと製剤化された、請求項8に記載の白色フィルムがコートされた固体基材。
【請求項10】
前記経口固体剤形が、錠剤、カプセル、顆粒、ロゼンジ、キャンディ及びシードからなる群から選択される、請求項8に記載の白色フィルムがコートされた固体基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、コーティング組成物に関し、より具体的には、二酸化チタン非含有白色フィルムコーティング組成物、その調製方法及び固体基材のコーティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コーティングは、医薬品、獣医学、農業、栄養学、自動車、生化学、化学、コンピュータ、消費財、食品、エレクトロニクス、材料、及びヘルスケアを含む多くの産業分野において主要な役割を果たす。非常に多くの適用分野にわたるコーティングの存在はコーティングが付与する広範囲の機能、例えば、保護(例えば、吸水率、紫外線損傷から)、分離(例えば、化学的不適合性)、活性成分の放出の変化(例えば、即時、延長、遅延、制御放出)、及び感覚知覚の改変(例えば、滑らかさ/粗さ、味、色)による。
【0003】
二酸化チタン(TiO2)は種々の理由で世界的に好ましくない着色料になっており、二酸化チタンの必要性及び用途に取って代わることができる新規又は代替の成分及び成分の検索は、多くの工業セグメント内のコーティングに関して重要になっている。二酸化チタンのためのこのような新しい代替的な成分は、特に農業、微量栄養、及び/又は医薬品活性成分等の活性成分を含む錠剤、カプセル、顆粒、ロゼンジ、キャンディ又はシードのような基材又は物質の視覚的な魅力、白さ及び明度を向上させることを目的とする。
【0004】
米国特許第4,931,286号(Aqualon companyに譲渡)は、錠剤の0.1~5.0質量%のカルボキシメチルセルロースナトリウム及びポリエチレングリコールの外側コーティングを有する高光沢医薬錠剤を開示している。
【0005】
米国特許第10,159,650号(Sensient Colors LLCに譲渡)は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、セルロースポリマー、沈降炭酸カルシウム、不透明剤及び脂肪酸からなるフィルムコーティング組成物を開示する。
【0006】
しかしながら、先行技術のコーティング組成物を含むカルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)又は沈澱炭酸カルシウム(CaCO3)は、良好な不透明度を提供するのに効果的ではなく、結果として生じるコートされた製品又は基材の鈍く灰色化した外観を示すことが観察されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、農業、栄養、及び/又は医薬活性物を含むが、それに限らない活性成分を担持する錠剤、顆粒、ロゼンジ、キャンディ又はシードのようなコーティング固体基材に適した有効な白く明るい二酸化チタン非含有フィルムコーティング組成物のための技術が必要である。
【0008】
驚くべきことに、我々は、(i)光沢と明るい外観を改善し、(ii)コーティングされた固体基材の白さを改善する、二酸化チタンのないフィルムコーティング組成物を発見した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の概要)
従来技術のものよりも良好な特性を最終製品又は完成製品に付与するフィルムコーティングの向上が見出された。これらのコーティングは、(i)水溶性セルロースエーテル、(ii)水溶性アニオン性セルロースエーテル、(iii)炭酸カルシウム(CaCO3)、及び(iv)可塑剤を含む。
【0010】
本発明の1態様では、以下:(i)20重量%~50重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、水溶性セルロースエーテル;(ii)5重量%~15重量%のカルボキシルメチルセルロース(CMC)、水溶性アニオン性セルロースエーテル;(iii)10重量%~60重量%の炭酸カルシウム(CaCO3);及び(iv)0.0重量%~5重量%の可塑剤を含む二酸化チタン非含有白色フィルムコーティング組成物が提供される。
【0011】
本出願の別の態様によれば、全組成物の約10重量%~約25重量%の範囲の全固体含量を有する白色フィルムコーティング組成物が提供される。
【0012】
別の態様では、組成物が0.001重量%~25重量%の、赤色酸化鉄、黒酸化鉄又はこれらの組合せを包含するがこれらに限定されない任意追加の二次顔料をさらに含む、着色料コーティング組成物が開示される。
【0013】
なお別の態様では、白色フィルムがコートされた基材の調製方法であって、以下の工程:(a)上述した白色フィルムコーティング組成物を含むコーティング懸濁物を調製する工程、(b)工程(a)のコーティング懸濁物を固体基材の表面に適用してコーティング層を形成する工程、(c)同時に及び/又はその後に前記コーティング層を乾燥してドライコーティングを固体基材の表面上に形成する工程、及び(d)最終のフィルムコートされた固体基材を得る工程を含む方法が開示される。
【0014】
別の態様によれば、以下の工程:(a)上述した白色フィルムコーティング組成物を含むコーティング懸濁物を調製する工程、(b)工程(a)のコーティング懸濁物を固体製品の表面に適用してコーティング層を形成する工程、(c)同時に及び/又はその後に前記コーティング層を乾燥してドライコーティングを固体製品の表面上に形成する工程、及び(d)所望の最終のフィルムコートされた固体製品を得る工程を含む方法によって製造された白色フィルムがコートされた固体製品が開示される。
【0015】
本発明の目的、特徴、及び利点は、図面/図と併せて以下の説明を読むことによって明らかになるのであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)とヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を塗った比較錠剤で、不透明度が悪く、見た目が鈍いことを示している。
【
図2】
図2は、先行技術のコーティングのイメージを、より白く、より明るい本出願人のコーティングと比較したものである。
【
図3】
図3は、本出願人のコーティング(より白く、より明るい)と比較した、従来技術のコーティング(灰色がかった、鈍い外観)の画像を示す錠剤の白さの正面図である。
【
図4】
図4は、本出願人のコーティングされた錠剤対標準の画像を示す、錠剤の白色度の対比の正面図である。
【
図5】
図5は、本出願人のフィルムコーティングと標準フィルムコーティングの不透明度を示す図である。
【
図6】
図6は、本出願人のフィルムコーティングと標準フィルムコーティングの光沢と表面粗さのパラメータをグラフィックで表したものである。
【
図7】
図7は、コーティング不透明度に対する炭酸カルシウムの粒径の影響を示す走査型電子顕微鏡像である。
【
図8】
図8は、コーティング白色度に対する炭酸カルシウムの粒径の影響を示すコーティング錠剤の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書は本発明とみなされるものを特に指摘し、明確に主張する特許請求の範囲で終わるが、本発明の以下の詳細な説明を読み、含まれる実施例を検討することによって、本発明をより容易に理解できることが予想される。
【0018】
開示に従って使用される場合、別段の指示がない限り、以下の用語は、以下の意味を有するものと理解されるものとする。
【0019】
本明細書で別段の定義がない限り、開示及び/又は特許請求される発明概念に関連して使用される技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈によって特に必要とされない限り、単数の用語は複数を含むものとし、複数の用語は単数を含むものとする。
【0020】
単数形「a」、「an」、及び「the」は文脈が明確に他に特定されていない限り、又は参照がなされる文脈によって反対に明確に示唆されていない限り、複数形を含む。本明細書で使用されるように、「含む(comprising)」(及び「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」などのcomprisingの任意の形態)、「有する(having)」(及び「有する(have)」及び「有する(has)」などのhavingの任意の形態)、「含む(including)」(及び「含む(includes)」及び「含む(include)」などのincludingの任意の形態)又は「含む(containing)」(及び「含む(contains)」及び「含む(contain)」などのcontainingの任意の形態)という用語は包括的又はオープンエンドであり、追加の非記載の要素又は方法ステップを除外しない。
【0021】
以下の詳細な説明の目的のために、任意の操作例における以外に、又は別段の指示がある場合には例えば、本明細書及び特許請求の範囲において使用される成分の量を表す数字はすべての場合において、用語「約(about)」によって改変されると理解されるべきである。本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明を実施する際に得られるべき所望の特性に応じて変化し得る近似値である。
【0022】
本明細書中で使用される全てのパーセンテージ、部、割合及び比率は特に明記しない限り、全組成物物の質量による。列挙された食材に関連するこのような重量はすべて、活性レベルに基づいており、したがって、特に明記しない限り、市販の材料に含まれ得る溶媒又は副生成物を含まない。
【0023】
本明細書に引用される全ての刊行物、論文、論文、特許、特許公報、及び他の参考文献は、本明細書の開示と一致する程度まで、全ての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。
【0024】
「本明細書で使用される用語「本出願人のコーティング」、「試供品」及び「発明的コーティング」は交換可能であり、現クレームのコーティング組成物を参照する。同様に、用語「固体基材」及び「固体物質」は、は現出願では交換可能である。
【0025】
本明細書で使用される用語「HPC」とは、ヒドロキシプロピルセルロースをいう。
【0026】
本明細書で使用される用語「HPMC」とは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースをいう。
【0027】
本明細書で使用される用語「MCT」とは、中鎖トリグリセリドをいう。
【0028】
本明細書で使用される用語「PEG」とは、ポリエチレングリコールをいう。
【0029】
本明細書で使用される用語「NaCMC」とは、カルボキシメチルセルロースナトリウムをいう。
【0030】
本明細書で使用される用語「固体基材」又は「固体物質」又は「固体製品」とは、錠剤、顆粒、ロゼンジ、キャンディ、シード等をいうがこれらに限定されない。
【0031】
本出願は特に、先行技術では見られない独特の利点又は特性を提供する白色フィルムコーティング及びそれでコーティングされた製品を記載する。コーティングは、水溶性セルロースポリマー、水溶性アニオン性セルロースポリマー、炭酸カルシウム、可塑剤及び他の任意成分の組合せに基づく。これらのコーティングは、既存のコーティングと比較して、外観がより白く、より明るく、光沢のある改善されたフィルムコーティングを提供する。
【0032】
1実施形態では、本出願は、以下:(i)20重量%~50重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、水溶性セルロースエーテル;(ii)5重量%~15重量%のカルボキシメチルセルロース(CMC)、水溶性アニオン性セルロースエーテル;(iii)10重量%~60重量%の炭酸カルシウム;及び(iv)5重量%~25重量%の可塑剤を含む二酸化チタン非含有白色フィルムコーティング組成物を提供する。
【0033】
さらに、白色フィルムコーティング組成物は、0.0重量%~5重量%の中鎖トリグリセリド(MCT)、及び0.0重量%~2重量%のクエン酸一水和物を含む。
【0034】
本出願の別の実施形態では、白色フィルムコーティング組成物は、全組成物の約10重量%~約25重量%の範囲の全固体含量を有する。本出願の非限定的実施形態では、固体含量の他の取り得る範囲としては、全組成物の約10重量%~約15重量%;全組成物の約15重量%~約20重量%;又は全組成物の約20重量%~約25重量%が挙げられたであろうがこれらに限定されない。
【0035】
別の実施形態では、水溶性セルロースエーテルは、下記に表される一般構造を有する:
【化1】
式中、各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6は独立して、置換されて適当な官能部分を持つセルロースエーテル誘導体を形成する。このような誘導体の例としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びメチルセルロース(MC)が挙げられるがこれらに限定されない。これらのセルロースエーテルは、種々のR官能基、ヒドロキシル基置換の度合いの点で、及びそれらの分子量範囲で、相違する。
【0036】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、その頭字語HPMCによっても知られ、医薬品グレードは一般化学名ヒプロメロースによっても知られる。HPMCは、部分的にO-メチル化されかつO-(2-ヒドロキシプロピル化)されたセルロースであり、式中R
1、R
2、R
4、及びR
5はOH、OCH
3、及び/又はO[CH
3CH(OH)CH
2]yであり;かつR
3及びR
6はCH
2OH、CH
2OCH
3及び/又はCH
2O[CH
3CH(OH)CH
2]
yであり、式中添字「y」はヒドロキシプロピルモノマー単位の数を表す。本発明の目的のために、市販のHPMCは、Dow Chemical(Methocel(商標)グレードE3、E5、E6、E15、E50、E4M、E10M、F50、K3、K100、K4M、K15M、K100M)、Shin-Etsu Chemical Company(Pharmacoatグレード603、606、615、904)、及びHercules Inc.(Benecel(登録商標) MP 843、814、及び844)から正式に入手することができる。
【化2】
HPMCは、コーティング組成物の全重量に基づく重量での20-50%、好ましくは20-45%及びより好ましくは25-45%の量で存在する。HPMCの2以上の異なるグレードが存在することができる。
【0037】
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)はセルロースの部分的に置換されたポリ(ヒドロキシエチル)エーテルであり、式中、R
1、R
2、R
4及びR
5はOH及び/又はO[CH
2(CH(CH
3)O]
yHであり;R
3及びR
6がCH
2OH又はCH
2O[CH
2CH(CH
3)O]
yHであり、ここで、下付き文字「y」は、ヒドロキシプロピルモノマー単位の数を表す。Ashland LLCによって製造されたHPCグレードとしては、Klucel(登録商標)EF、LF、HF、JF、LF、MF、GFが挙げられる。
【化3】
【0038】
カルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)は、水溶性アニオン性セルロースポリマーである。カルボキシメチルセルロースナトリウムはセルロースのポリカルボキシメチルエーテルのナトリウム塩であり、式中、R
1、R
2、R
4及びR
5はOHであり;R
3及びR
6はCH
2OCH
2COONaである。市販のNaCMCとしては、これらに限定されないが、Hercules Inc.の商品名Aqualon(登録商標)及びBlanose(登録商標)が挙げられる。NaCMCの化学的・物理的特性は、食品、医薬品、パーソナルケアなどに幅広く適用されていることを見出している。カルボキシメチルセルロースは、以下の構造を有する:
【化4】
カルボキシメチルセルロースは、コーティング組成物物の総重量を基準にして5~15重量%、5~10重量%又は10~15重量%の量で存在する。2つ以上の異なる級のカルボキシメチルセルロースが存在し得る。
【0039】
ここで有効な炭酸カルシウム(CaCO3)は天然堆積物から得ることができ、その後、微粉砕されるか、又は沈殿物の化学沈殿及び乾固によって得られる。炭酸カルシウムは絵画、ゴム、紙、食品、医薬、プラスチックなどの詰め物として用いられる。炭酸カルシウムは不透明化剤であり、重金属を含む化合物を使用することなく、優れた輝度、白色度、及び/又は不透明度を有するフィルムコーティングを提供する。沈殿した炭酸カルシウムのモルフォロジーは、増加した表面面積を与え、水媒体中により均一に分散する。炭酸カルシウムの形態及び粒径は、フィルムコーティングの白色度及び不透明度に影響を及ぼす。炭酸カルシウムモルフォロジーには、角形構造及び縮尺構造が含まれる。本コーティング組成物で使用する炭酸カルシウムの粒子サイズは、0.5ミクロンから20ミクロンである。従って、炭酸カルシウムの粒径は、0.5ミクロン~約5ミクロン;5ミクロン~10ミクロン;10ミクロン~15ミクロン;15ミクロン~20ミクロンであり得る。より好ましくは、本出願が1.8~2.0ミクロンの平均粒径及びスカレノヘドラルモルフォロジーを有する炭酸カルシウムを使用する。炭酸カルシウムは、組成物物の10~60質量%、好ましくは15~55質量%、より好ましくは20~50質量%の量で存在する。異なる粒子サイズ及びモルフォロジーのブレンドが意図される。
【0040】
可塑剤は可塑性又は流動性を増大させるために、約5重量%~約30重量%で存在する。可塑剤は例えば、組成物のガラス転移温度(Tg)を低下させることによって可撓性及び/又は耐久性を増大させることによって、ポリマー組成物の塑性特性を向上させる。いくつかの可塑剤は、いくつかのエンドユーザ製品を介して、直接的又は間接的な人間の使用のために承認されている。このような可塑剤の例としては、アセチルトリブチル、アセチルトリエチル、トリブチル及びトリエチルシトレートから選択されるクエン酸塩;ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール及びグリセリンから選択されるグリコール;ジブチル、ジエチル及びジメチルフタレートから選択されるフタレート;グリセリルモノステアリン酸から選択されるステアリン酸;ならびにトリアセチンが挙げられる。1つ以上の実施形態において、コーティング組成物としては、PEG200、PEG300、PEG400、PEG600、PEG1000、PEG1500、PEG4000、PEG3350、PEG6000及びPEG8000を含むがこれらに限定されない群から選択されるPEGが挙げられる。本出願の別の非限定的実施形態では、可塑剤の他の取り得る範囲としては、約5重量%から約10重量%、約10重量%から約15重量%、約15重量%から約20重量%、約20重量%から約25重量%、又は可塑剤%から約30重量%などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
別の実施形態では、本出願が8から12の炭素原子の連鎖長さを持つグリセロールと3つの脂肪酸から得られたエステルを中鎖トリグリセリド(MCT)として提供する。適切な脂肪酸成分は、カプリル酸、カプリン酸、及びラウリン酸である。8個の炭素原子を有する中鎖脂肪酸は、本明細書ではC8脂肪酸又はC8と呼ぶことができる。10個の炭素原子を有する中鎖脂肪酸は、本明細書ではC10脂肪酸又はC10と呼ぶことができる。MCTは食品添加物、神経障害の治療などの種々の用途において使用されている。白色フィルムコーティング組成物は、通常、0.0重量%~5重量%の中鎖トリグリセリド(MCT)を含む。
【0042】
別の実施形態では、本出願はさらに、一水和物又は無水物のいずれかの形態のクエン酸を提供する。クエン酸は、酸性化剤、酸化防止剤、緩衝剤、キレート剤又は香味増強剤として医薬製剤及び食品に広く使用されている。クエン酸一水和物は、乾燥空気中での結晶化又は約40℃に加熱されると水分を失う。発明のフィルムコーティング組成物には、0.0重量%から2.0重量%までのクエン酸一水和物が含まれることができる。
【0043】
適切な顔料としては酸化鉄、例えば、FD&Cレーキ、カーミンレーキ、FD&C青色1号、FD&C青色2号、FD&C赤色3号、FD&C赤色40号、FD&C黄色5号、FD&C黄色6号、FD&C緑色3号、赤色酸化鉄、アルミナ、タルク、ウコンオレシン、コキナール抽出物、クチネラルエキス、クチナシ黄色、クチナシ青、ビートパウダー等を含むが、実施例に限定されない着色料、染料及びレーキが挙げられる。本出願の本発明のフィルムコーティング組成物物中に存在する顔料は、0.001重量%~25重量%、好ましくは0.01重量%~10重量%であってよく、赤色酸化鉄、黒酸化鉄又はこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない群から選択することができる。
【0044】
別の実施形態では、本出願が高せん断ミキサーを含む商用グレードのミキサーを用いて食材を乾式ブレンドするコーティング調製物を提供する。ポリエチレングリコール(PEG)や中鎖トリグリセリド(MCT)などの固体成分を可塑剤として使用することができる。
【0045】
別の実施形態では本出願が白色フィルムをコーティングした固体基材の調製方法であって、以下を作成する方法を提供する。この方法は(a)ここに記載された白色フィルムコーティング組成物からなるコーティング懸濁物を準備する、(b)工程(a)のコーティング懸濁物を固体基材の表面に適用してコーティング層を形成する、(c)固体基材の表面にドライコーティングを形成するためにコーティング層を同時に又はその後乾燥させる、(d)最終コーティングした固体製品又は基材を含む方法を提供するのを得るステップを含む。
【0046】
別の実施形態では、本出願の固体のコートされた基材は、農業製品、栄養製品又は医薬製品である。
【0047】
別の実施形態では、本出願が錠剤、ミニ錠剤、ペレット、カプセル、顆粒、ロゼンジ、多粒子等から選択された経口固体剤形にコートされた医薬製品又は基材が製剤化されたのを提供する。
【0048】
なお別の実施形態では、本出願が(a)ここに記載されている白色フィルムコーティング組成物からなるコーティング懸濁物を準備すること、(b)工程(a)のコーティング懸濁物を固体製品の表面に適用してコーティング層を形成する工程、(c)同時に及び/又はその後に前記コーティング層を乾燥してドライコーティングを固体製品の表面上に形成する工程及び(d)最終のフィルムコートされた固体製品を入手することのステップから成る手法によって作成される白色フィルムがコートされた固体製品を提供する。
【0049】
別の実施形態では、本出願が固体製品又は基材がコートされた農業製品、コートされた栄養製品又はコートされた医薬製品である白色フィルムがコートされた固体製品又は基材を提供する。好みの実施形態では、白色フィルムコートされた医薬製品は医薬経口固体剤形に製剤化された。このような形成には錠剤、ミニ錠剤、ペレット、カプセル、顆粒、ロゼンジ及び多粒子が含まれるが、これらに限定されない。
【0050】
別の実施形態では、本出願が光沢、表面ざらつき、不透明度、カラーなどの改良された二酸化チタンフリーコーティングシステムを提供し、品質の向上と加工性の向上に貢献している。
【0051】
(光沢)
限定としてではなく説明のために、錠剤の光沢は、光沢計/表面解析システムによって測定される。許容可能なエッジは明確に定義される。許容できないエッジは定義されない。現行の二酸化チタンフリーフィルムコーティングシステムは、60 gluの標準に対して測定した80光沢単位(glu)の光沢値を与える。結果は
図6に示されており、本出願人のコーティング組成物の方が光沢値が高いことを示している。
【0052】
(表面粗さ)
限定としてではなく説明のために、表面粗さを決定する前に、粗さ画像が分析され、表面曲率について補正され、除去される形態の形状は、錠剤の一般的な形状適合するべきである。サンプル集合の粗さは、サンプル中の16個の錠剤の粗さ値の平均として報告される。結果を
図6に示すが、粗さは約2.5平方ミクロンであることが示され、一方、標準は3平方ミクロンの粗さ値を示し、これは表面粗さが電流コーティング組成物と共に減少することを示す。
【0053】
(色)
製品の色は限定としてではなく、説明の目的のために、反射率測定によって決定される。カラーの変化を視覚的に分析し、5%の体重増加で本出願人のフィルムコーティングが白く明るくなることを
図3に示す。データ色分光光度計による反射率の測定により色の変化が実験的に証明され、結果が
図4に示されている。ここで、反射率値は1.42の反射率を示す標準コーティングに近い本出願人のコーティングに対して0.63であり、黒色着色錠剤に適用した場合、出願人の素TF(チタンフリー)コーティングは、5%の重量増加で白色に転じた。実験結果を
図5に示す。
【0054】
(不透明度・白のコーティング率)
限定ではなく説明のために、不透明度は走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定され、光反射率が高いほど、フィルムはより不透明になり、コートされた基材にはより白色度が付与される。結果を
図7及び
図8に示す。
【0055】
本出願のなお別の実施形態では、それがセルロースエーテル、炭酸カルシウム、可塑剤と本出願の他の食材の組合せは角度反射が可能な表面面積を驚くほど増加させ、光沢を増加させ、高不透明度、明るさ、白さを提供し、コートされた基材又は製品への表面粗さを減少させることを発見した。標準コーティングと共に白色フィルムコーティングのためのこれらの塗装パラメータは、表9で提供されている。このようなフィルムコーティングは、特に関連技術分野の他のタイプのコーティングと比較した場合、当業者によって通常予想されるよりもはるかに有利に処理することができる。明度及び明るさは、当業者に知られている従来のHPCベースのコーティング系と比較した場合に増加する。これらのコーティング組成物のさらなる利点が、実施例に示されている。
【0056】
以下の実施例は本発明による組成物及び方法を例示することを目的とするが、決して本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0057】
(実施例1:コーティング方式-A)
10%-15%の固形濃度範囲を有するコーティング方式を開発し、成分ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、クエン酸一水和物及びポリエチレングリコールを含有していた。
【0058】
【0059】
(実施例2:コーティング方式-B)
15%-20%の固形濃度範囲を有するコーティング方式を開発し、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、クエン酸一水和物、中鎖トリグリセリド、及びポリエチレングリコールの3種の異なる成分を含有していた。
【0060】
【0061】
(実施例3:コーティング方式C)
コーティング方式を開発し、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、炭酸カルシウム、クエン酸一水和物、ポリエチレングリコール及び中鎖トリグリセリドの2つの相違するグレードの成分を含有していた。
【0062】
【0063】
(実施例4:コーティング方式-D)
コーティング方式を開発し、成分ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、炭酸カルシウム、クエン酸一水和物、ポリエチレングリコール及び中鎖トリグリセリドを含有していた。
【0064】
【0065】
(実施例5:コーティング方式-E)
コーティング方式を開発し、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、炭酸カルシウム、及びポリエチレングリコールの2つの相違するグレードを含有していた。
【0066】
【0067】
(実施例6:コーティング方式-F)
コーティング方式を開発し、成分ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、炭酸カルシウム、クエン酸一水和物、ポリエチレングリコール及び中鎖トリグリセリドを含有していた。
【0068】
【0069】
(実施例7:コーティング方式-G)
15%-20%の固形濃度範囲を有するコーティング方式を開発し、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、炭酸カルシウム、赤色酸化鉄、黒酸化鉄、クエン酸一水和物、中鎖トリグリセリド及びポリエチレングリコールの3種の異なる成分を含有していた。
【0070】
【0071】
(実施例8:色の均一性の向上)
プラセボ錠剤を、25%固形分で高速走行でコーティングした。実施例1~8では、製剤化されたとして白色フィルムコーティング組成物を塗布すると、色調の均一性が改善されることが分かった。
図1と
図2に示すように、本出願人のコーティングの対象となる錠剤は白く明るくなっている。
【0072】
(実施例9:ヒドロキシプロピルセルロースを使用する比較のコーティング方式)
コーティング方式を開発し、成分ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、炭酸カルシウム、黄酸化鉄、クエン酸一水和物、中鎖トリグリセリド及びポリエチレングリコールを含有していた。HPCでコートされた錠剤は、乏しい不透明度及びエッジチッピングを示した。結果を
図3に示す。
【0073】
【0074】
(実施例10:より良い不透明度&より良い白色度のカバレッジ)
二酸化チタンを粉末状にした白色フィルムは、最も白く、最も不透明なフィルムに高反射指数を与えるため、白色フィルムの塗料不透明度は通常、二酸化チタンを使用している。二酸化チタンを使うときと同じ不透明度を得るために、セルロースエーテルと組み合わせて炭酸カルシウムの粒度を変えて本出願人のコーティング式を開発した。角柱構造を有する粒径0.7ミクロン、スカレンヘドラル構造を有する1.8ミクロン及び2.0ミクロンの炭酸カルシウムを試験した。より小さい粒子はより良い被度を与えるが、より大きな平均粒径1.8-2.0ミクロンの炭酸カルシウムとスケノヘドラル構造を使用した本出願人のコーティングは0.7ミクロンプリスマティック炭酸カルシウムと比較して、最終被度はより良い不透明度とより良い被度を示した。結果を
図7及び
図8に示す。
【0075】
【0076】
開示され、かつ/又は請求される発明概念の組成物及び方法は特定の態様の観点から説明されてきたが、開示され、かつ/又は請求される発明概念の概念、趣旨、及び範囲から逸脱することなく、本明細書で説明される方法の組成物及び/又は方法に、ならびにステップ又はステップの配列で、変形形態を適用することができることは当業者には明らかであろう。当業者に明らかな全てのそのような類似の置換及び改変は、開示及び/又は特許請求される発明概念の趣旨、範囲及び概念内であると見なされる。
【国際調査報告】