(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-24
(54)【発明の名称】可撓性多層フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20221116BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
B32B27/32 Z
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519755
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(85)【翻訳文提出日】2022-04-11
(86)【国際出願番号】 US2020052472
(87)【国際公開番号】W WO2021067114
(87)【国際公開日】2021-04-08
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【氏名又は名称】新井 剛
(72)【発明者】
【氏名】ブルネリ、クレーベル
(72)【発明者】
【氏名】マッツォーラ、ニコラス カルドソ
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB01
3E086BB51
3E086CA01
3E086CA04
3E086CA16
3E086CA22
4F100AK01A
4F100AK04
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4F100JK17C
4F100JL11
4F100JL11A
4F100JL11C
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
本開示は、可撓性多層フィルムを提供する。可撓性多層フィルムは、少なくとも3つの層を含む。層のうちの1つはシール層であり、層のうちの1つはバリア層である。シール層は、アイオノマーである。裏当て層は、シール層と直接接触する。裏当て層は、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つの層
アイオノマーを含むシール層、
前記シール層と直接接触する裏当て層であって、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーを含む前記裏当て層、を含む、可撓性多層フィルム。
【請求項2】
前記アイオノマーが、金属アイオノマーである、請求項1に記載の可撓性多層フィルム。
【請求項3】
前記シール層が、1ミクロン~30ミクロンの厚さを有する、請求項1または2に記載の可撓性多層フィルム。
【請求項4】
前記エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーが、エチレンモノマーおよびC
4-C
8α-オレフィンコモノマーからなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の可撓性多層フィルム。
【請求項5】
前記裏当て層が、1ミクロン~30ミクロンの厚さを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の可撓性多層フィルム。
【請求項6】
前記裏当て層と直接接触する結合層を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の可撓性多層フィルム。
【請求項7】
前記結合層と直接接触するバリア層を含む、請求項6に記載の可撓性多層フィルム。
【請求項8】
前記バリア層が、エチレン/ビニルアセテートコポリマー、ポリ塩化ビニリデン、およびポリアミドからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーを含む、請求項7に記載の可撓性多層フィルム。
【請求項9】
可撓性パウチであって、
対向する可撓性多層フィルムであって、前記可撓性多層フィルムが共通周辺縁部を規定し、
少なくとも3つの層
アイオノマーを含むシール層、
前記シール層と直接接触する裏当て層であって、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーを含む前記裏当て層、および
前記共通周辺縁部の少なくとも一部分に沿って延伸する周辺シールであって、貯蔵区画を有する閉じた可撓性パウチを形成する前記周辺シール、を含む、各可撓性多層フィルムを含む、可撓性パウチ。
【請求項10】
前記周辺シールは、互いに直接接触する各可撓性多層フィルムの対向するシール層を含み、前記周辺シールが、ASTM F 88に従って測定した場合、9N/25.4mm~25N/25.4mmのシール強度を有する、請求項9に記載の可撓性パウチ。
【請求項11】
前記貯蔵区画内に食料品を含み、前記食料品が、前記対向するシール層と直接接触する、請求項9~10のいずれか一項に記載の可撓性パウチ。
【請求項12】
前記アイオノマーが、金属アイオノマーである、請求項9~11のいずれかに一項に記載の可撓性パウチ。
【請求項13】
前記エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーが、エチレンモノマーおよびC
4-C
8α-オレフィンコモノマーからなる、請求項9~12のいずれか一項に記載の可撓性パウチ。
【請求項14】
前記シール層が、8ミクロン~15ミクロンの厚さを有する、請求項9~13のいずれか一項に記載の可撓性パウチ。
【請求項15】
前記裏当て層が、1ミクロン~30ミクロンの厚さを有する、請求項9~14のいずれか一項に記載の可撓性パウチ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
「クックイン」プロセスとは、食品製品を含有しながら、高温(例えば、50℃~100℃)の水中において、長くゆっくりとした調理条件(例えば、2~12時間)に対する曝露に耐えることができる材料に、パッケージ化された製品を調理するプロセスを指す。クックインパッケージ化食品は、本質的に予めパッケージ化され、予め調理された食品の形態で、消費者に直接渡され得る。クックインプロセスは、食品製品を支持し、漏れを回避する強力なシールを有する食品パッケージを必要とする。
【0002】
クックインプロセスはまた、パッケージが、短期間の高レベルの熱(すなわち、電子レンジ調理)または長期間の低熱(すなわち、オーブンベーキング)に耐えることを必要とする。シール層は、様々なシール条件にわたってシールを閉じたまま、または別様にシールしたまま保持するように、適切なシール強度を有しなければならない。通常、これは、厚いアイオノマーシール層に接着された、複数の成分のブレンドで構成される厚い裏当て層を使用することによって達成されている。しかしながら、厚い裏当て層を有するクックインフィルムは、裏当て層が厚いほどパッケージを開くのにより多くの力が必要になり、パッケージ内部の製品が損傷するリスクが増加するため、不利である。
【0003】
クックイン製品が肉である場合、厚いアイオノマーシール層は、タンパク質の付着を不利に示し、棚のアピールおよび貯蔵寿命を低減させる可能性がある。
【0004】
アイオノマーは高価であるため、クックインパウチのシール強度を犠牲にすることなく、より少ないアイオノマーを使用してシール層を作製することが望ましいであろう。当技術分野は、クックインプロセスのための適切なシール強度を依然として維持することができる、より薄いフィルム厚を有するクックイン製品パッケージの必要性を認識している。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、可撓性多層フィルムを提供する。一実施形態では、可撓性多層フィルムは、少なくとも3つの層を含む。層のうちの1つはシール層であり、層のうちの1つはバリア層である。シール層は、アイオノマーで構成される。裏当て層は、シール層と直接接触しており、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーで構成されている。
【0006】
本開示はまた、可撓性パウチも提供する。一実施形態では、可撓性パウチは、共通縁部を規定する対向する可撓性多層フィルムを含む。各多層フィルムは、少なくとも3つの層を含む。層のうちの1つはシール層であり、層のうちの1つはバリア層である。シール層は、アイオノマーで構成される。裏当て層は、シール層と直接接触しており、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーで構成されている。周辺シールは、共通周辺縁部の少なくとも一部分に沿って延伸する。周辺シールは、格納区画を有する、閉鎖された可撓性パウチを形成する。
【0007】
定義
元素周期表へのいずれの参照も、CRC Press,Inc.によって1990~1991年に発行されたときのものである。この周期表の元素の族への参照は、族の番号付与の新しい表記法による。
【0008】
米国特許慣行の目的のため、いかなる参照される特許、特許出願、または刊行物の内容も、特に定義の開示(本開示に具体的に提供されるいかなる定義とも矛盾しない程度において)および当該技術分野の一般知識に関して、それらの全体が参照により組み込まれる(またはその米国版に相当するものが、参照により同様に組み込まれる)。
【0009】
本明細書に開示される数値範囲は、下限値および上限値からのすべての値を含み、また上限値および下限値を含む。明示的な値を含有する範囲(例えば、1、または2、または3~5、または6、または7の範囲)の場合、任意の2つの明示的な値の間の任意の部分範囲が含まれる(例えば、上記の範囲1~7には、1~2、2~6、5~7、3~7、5~6などを含む)。
【0010】
相反する記載がない限り、文脈から黙示的でない限り、または当該技術分野で慣習的でない限り、すべての部およびパーセントは、重量に基づき、すべての試験方法は、本開示の出願日時点で最新のものである。
【0011】
フィルムおよび/またはフィルム層に適用される、「バリア」という用語および「バリア層」という句は、1種以上のガスおよび/または湿気に対するバリアとして機能する、フィルムまたはフィルム層の能力に関して使用される。
【0012】
本明細書で使用される「ブレンド」または「ポリマーブレンド」という用語は、2つ以上のポリマーのブレンドである。そのようなブレンドは、混和性(分子レベルで相分離しない)であってもなくてもよい。そのようなブレンドは、相分離してもしなくてもよい。そのようなブレンドは、透過電子分光法、光散乱、X線散乱、および当技術分野で知られている他の方法から決定されるような1つ以上のドメイン構成を含有してもしなくてもよい。
【0013】
「ブロックコポリマー」または「セグメント化コポリマー」という用語は、線状方式で接合された2つ以上の化学的に異なる領域またはセグメント(「ブロック」と呼ばれる)を含むポリマー、すなわち、ペンダントまたはグラフト様式ではなく、重合官能基に関して端部と端部とが接合(共有結合)している化学的に区別された単位を含むポリマーを指す。実施形態では、ブロックは、その中に組み込まれたコモノマーの量またはタイプ、密度、結晶化度の量、結晶化度のタイプ(例えば、ポリエチレン対ポリプロピレン)、そのような組成のポリマーに起因する結晶子サイズ、立体規則性のタイプまたは程度(アイソタクチックもしくはシンジオタクチック)、位置規則性または位置不規則性、長鎖分岐または超分岐を含む分岐の量、均一性、または任意の他の化学的もしくは物理的特性で異なる。ブロックコポリマーは、その調製に用いられる触媒と組み合わせたシャトリング剤の効果により、ポリマー多分散性(PDIまたはMw/Mn)およびブロック長分布の両方の特有の分布によって特徴付けられる。
【0014】
「組成物」という用語は、組成物を含む材料の混合物、ならびに組成物の材料から形成される反応生成物および分解生成物を指す。
【0015】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する」という用語、およびそれらの派生語は、同じことが具体的に開示されているかどうかにかかわらず、いかなる追加の成分、ステップ、または手順の存在を除外することを意図しない。疑義を回避するために、「含む(comprising)」という用語の使用を通じて特許請求されるすべての組成物は、反対の記載がない限り、ポリマーであろうとなかろうと、任意の追加の添加剤、アジュバント、または化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、あらゆる続く記述の範囲からあらゆる他の成分、ステップ、または手順を除く。「からなる」という用語は、具体的に描写または列挙されていないあらゆる成分、ステップ、または手順も除く。「または」という用語は、特に明記しない限り、列挙されたメンバーを個別に、ならびに任意の組み合わせで指す。単数形の使用には複数形の使用が含まれ、逆もまた同様である。
【0016】
本明細書で使用される「クックイン」という用語は、パッケージ内に食品製品を含有しながら、温水/熱水(50℃~100℃)中において、漏れることなく、長くゆっくりとした調理条件(2~12時間)に対する曝露に耐えることができる可撓性ポリマーフィルム材料に、パッケージ化された製品、例えば食料品を調理するプロセスを指す。クックインパッケージ化食品は、可撓性ポリマーフィルムで作製されたシールされたパウチである。クックインのシールされたパウチは、-10℃(冷凍庫貯蔵)~100℃(沸騰水調理)の広い温度範囲にわたってシールの完全性を維持する。
【0017】
本明細書で使用される「直接的に接触する」もしくは「直接接触する」という用語、または同様の用語は、第1のフィルム層が第2のフィルム層に直接隣接して配置され、第1のフィルム層が第2のフィルム層に接触し、第1のフィルム層と第2のフィルム層との間に介在層、および/または介在構造体が存在しないフィルム層構成を指す。本明細書で使用される「間接的に接触する」または「間接接触する」という用語、または同様の用語は、第1のフィルム層と第2のフィルム層との間に介在層、または介在構造体が存在するフィルム層構成を指す。
【0018】
「エチレン」系ポリマー」は、(重合可能モノマーの総量に基づいて)50重量パーセント(重量%)超の重合エチレンモノマーを含有し、任意選択で少なくとも1つのコモノマーを含有し得るポリマーである。エチレン系ポリマーは、エチレンホモポリマー、およびエチレンコポリマー(エチレンおよび1つ以上のコモノマーに由来する単位を意味する)を含む。「エチレン系ポリマー」および「ポリエチレン」という用語は、交換可能に使用され得る。エチレン系ポリマー(ポリエチレン)の非限定的な例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)および直鎖状ポリエチレンが挙げられる。直鎖状ポリエチレンの非限定的な例としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ultra-low density polyethylene)(ULDPE)、超低密度ポリエチレン(very low density polyethylene)(VLDPE)、多成分エチレン系コポリマー(EPE)、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマー(オレフィンブロックコポリマー(OBC)としても既知)、シングルサイト触媒の直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、実質的に直鎖状、または直鎖状のプラストマー/エラストマー、および高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。一般に、ポリエチレンは、チーグラ-・ナッタ触媒のような不均質触媒系、第4族遷移金属およびメタロセン、非メタロセン金属中心、ヘテロアリール、ヘテロバレントアリールオキシエーテル、ホスフィンイミン、などのリガンド構造を含む均質触媒系、およびその他を使用して、気相、流動床反応器、液相スラリープロセス反応器、または液相溶液プロセス反応器で生成することができる。不均一触媒および/または均一触媒の組み合わせもまた、単一反応器または二重反応器構成のいずれかにおいて使用され得る。
【0019】
「エチレンプラストマー/エラストマー」は、エチレンから誘導される単位および少なくとも1つのC3-C10α-オレフィンコモノマーから誘導される単位を含む均一な短鎖分岐分布を含有する、実質的に直鎖状または直鎖状エチレン/α-オレフィンコポリマーである。エチレンプラストマー/エラストマーは、0.870g/cc~0.917g/ccの密度を有する。エチレンプラストマー/エラストマーの非限定的な例としては、AFFINITY(商標)プラストマーおよびエラストマー(The Dow Chemical Companyから入手可能)、EXACT(商標)プラストマー(ExxonMobil Chemicalから入手可能)、Tafmer(商標)(Mitsuiから入手可能)、Nexlene(商標)(SK Chemicals Co.から入手可能)、およびLucene(商標)(LG Chem Ltd.から入手可能)が挙げられる。
【0020】
「インターポリマー」は、少なくとも2つの異なるモノマーの重合によって調製されるポリマーである。この総称は、2つの異なるモノマーから調製されたポリマー、および3つ以上の異なるモノマーから調製されたポリマー、例えばターポリマー、テトラポリマーなどを指すために通常用いられるコポリマーを含む。
【0021】
「線状低密度ポリエチレン」(または「LLDPE」)は、エチレンに由来する単位および少なくとも1つのC3-C10α-オレフィンコモノマーに由来する単位を含む不均一な短鎖分岐分布を含有する線状エチレン/α-オレフィンコポリマーである。LLDPEは、従来のLDPEとは対照的に、長鎖分岐があるとしてもわずかであることを特徴とする。LLDPEは、0.910g/cc~0.940g/cc未満の密度を有する。LLDPEの非限定的な例としては、TUFLIN(商標)直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(The Dow Chemical Companyから入手可能)、DOWLEX(商標)ポリエチレン樹脂(Dow Chemical Companyから入手可能)、およびMARLEX(商標)ポリエチレン(Chevron Phillipsから入手可能)が挙げられる。
【0022】
「低密度ポリエチレン」(または「LDPE」)は、エチレンホモポリマー、または少なくとも1つのC3-C10α-オレフィンを含むエチレン/α-オレフィンコポリマーからなり、0.915g/cc~0.940g/cc未満の密度を有し、広いMWDを有する長鎖分岐を含有する。LDPEは、通常、高圧フリーラジカル重合(フリーラジカル開始剤を用いる管状反応器またはオートクレーブ)によって作製される。LDPEの非限定的な例としては、Marlex(商標)(Chevron Phillips)、LUPOLEN(商標)(LyondellBasell)、ならびにBorealis、Ineos、ExxonMobil、などのLDPE製品が挙げられる。
【0023】
「オレフィン系ポリマー」または「ポリオレフィン」は、(重合性モノマーの総量に基づいて)50重量パーセント超の重合オレフィンモノマーを含有するポリマーであり、任意で少なくとも1つのコモノマーを含有し得る。オレフィン系ポリマーの非限定的な例は、エチレン系ポリマーである。
【0024】
本明細書で使用される「外層」という用語は、多層パッケージフィルムの層であり、多層フィルムの他の層と相対的に、パッケージ内の製品から最も遠いフィルム層である。同様に、パッケージ物品(すなわち、バッグ)の「外側表面」は、物品内にパッケージ化されている製品から離れた表面である。
【0025】
「ポリマー」は、同一のタイプまたは異なるタイプであるかに関わらず、重合形態でポリマーを構成する複数のおよび/もしくは繰り返しの「単位」または「mer単位」を提供するモノマーを重合することによって調製される化合物である。したがって、ポリマーという総称は、1つのタイプのモノマーのみから調製されたポリマーを指すために通常用いられるホモポリマーという用語、および少なくとも2つのタイプのモノマーから調製されたポリマーを指すために通常用いられるコポリマーという用語を包含する。それはまた、例えばランダム、ブロックなどのすべての形態のコポリマーを包含する。「エチレン/α-オレフィンポリマー」および「プロピレン/α-オレフィンポリマー」という用語は、それぞれ、エチレンまたはプロピレンと、1つ以上の追加の重合性α-オレフィンモノマーとを重合することから調製された上述のコポリマーを示す。ポリマーは、多くの場合、1つ以上の特定のモノマー「で作製され」、特定のモノマーまたはモノマータイプに「基づいて」、特定のモノマー含有量を「含有する」などと称されるが、この文脈では、「モノマー」という用語は、特定のモノマーの重合残留物を指し、非重合種を指すものではないと理解されることに留意する。一般に、本明細書におけるポリマーは、対応するモノマーの重合形態である「単位」に基づくものと称される。
【0026】
「プロピレン系ポリマー」は、(重合性モノマーの総量に基づいて)50重量パーセント超の重合プロピレンモノマーを含有するポリマーであり、任意で、少なくとも1つのコモノマーを含み得る。プロピレン系ポリマーには、プロピレンホモポリマー、およびプロピレンコポリマー(プロピレンおよび1つ以上のコモノマーに由来する単位を意味する)が含まれる。「プロピレン系ポリマー」および「ポリプロピレン」という用語は、交換可能に使用され得る。
【0027】
本明細書で使用される「結合層」という用語は、2つのフィルム層を互いに接着するのに役立つフィルム層であり、そうでなければ、これらの層は互いに接着しないか、または十分な結合強度を用いて互いに接着しない。
【0028】
試験方法
1H NMR法
原液(3.26g)を10mmのNMR管中の「0.133gのポリマー試料」に添加した。原液は、テトラクロロエタン-d2(TCE)およびペルクロロエチレン(50:50、w:w)と0.001MのCr3+との混合物であった。管内の溶液を5分間N2でパージして酸素量を低減させた。蓋をした試料管を、室温で一晩放置して、ポリマー試料を膨潤させた。試料を110℃で周期的にボルテックス混合しながら溶解した。試料は、不飽和の一因となり得る添加剤、例えば、エルカミドなどのスリップ剤を含まなかった。各1H NMR分析を、Bruker AVANCE 400MHz分光計で、120℃で、10mmの凍結プローブを用いて実行した。
【0029】
2つの実験、すなわち対照実験および二重前飽和実験を実行して不飽和を得た。対照実験では、データをLB=1Hzの指数窓関数で処理し、ベースラインを7~-2ppmに補正した。TCEの残留1Hからの信号を100に設定し、対照実験において全ポリマーからの信号として-0.5~3ppmの積分値I合計を使用した。ポリマー中の「CH2基の数、NCH2」を、以下のとおり、等式1Aで計算した。
NCH2=I合計/2(等式1A)
【0030】
二重前飽和実験では、データをLB=1Hzの指数窓関数で処理し、ベースラインを約6.6から4.5ppmに補正した。TCEの残留1Hからの信号を100に設定し、不飽和についての対応する積分(Iビニレン、Iトリ置換、Iビニル、およびIビニリデン)を積分した。ポリエチレン不飽和を決定するためにNMR分光法を使用することは周知であり、例えば、Busico,V.,et al.,Macromolecules,2005,38,6988を参照されたい。ビニレン、トリ置換、ビニル、およびビニリデンの不飽和単位の数を、以下のように計算した。
Nビニレン=Iビニレン/2(等式2A)、
Nトリ置換=Iトリ置換(等式3A)、
Nビニル=Iビニル/2(等式4A)、
Nビニリデン=Iビニリデン/2(等式5A)
【0031】
炭素1,000個あたりの不飽和単位、主鎖炭素および分岐炭素を含むすべてのポリマー炭素を、以下のように計算した。
Nビニレン/1,000C=(Nビニレン/NCH2)*1,000(等式6A)、
Nトリ置換/1,000C=(Nトリ置換/NCH2)*1,000(等式7A)、
Nビニル/1,000C=(Nビニル/NCH2)*1,000(等式8A)、
Nビニリデン/1,000C=(Nビニリデン/NCH2)*1,000(等式9A)
【0032】
TCE-d2からの残留プロトンからの1H信号について化学シフト基準を6.0ppmに設定した。対照は、ZGパルス、NS=4、DS=12、SWH=10,000Hz、AQ=1.64秒、D1=14秒で実行した。二重前飽和実験は、修正されたパルスシーケンス、O1P=1.354ppm、O2P=0.960ppm、PL9=57db、PL21=70db、NS=100、DS=4、SWH=10,000Hz、AQ=1.64秒、D1=1秒(D1は前飽和時間)、D13=13秒を用いて実行した。以下の表2にはビニルレベルのみを報告した。
【0033】
13C NMR法
試料を、0.025MのCr(AcAc)3を含有するテトラ-クロロエタン-d2/オルトジクロロベンゼンの50/50混合物約3gを、10mmのNMR管中の「ポリマー試料0.25g」に添加することにより、調製する。窒素で管ヘッドスペースをパージすることにより、試料から酸素を除去する。次いで、加熱ブロックおよびヒートガンを使用して、チューブおよびその内容物を約150℃に加熱することにより、試料を溶解し、均質化する。各溶解試料を目視検査して均質性を確認する。
【0034】
すべてのデータは、Bruker 400MHz分光計を使用して収集する。データは、6秒パルス反復遅延、90度フリップ角、および120℃の試料温度を用いた逆ゲート付きデカップリングを使用して収集する。すべての測定をロックモードの非回転試料で行う。試料はデータ収集前に7分間熱平衡化させる。13C NMR化学シフトは、30.0ppmでEEEトライアドを内部参照した。
【0035】
C13 NMRコモノマー含有量:ポリマー組成物を決定するためにNMR分光法を使用することはよく知られている。ASTM D 5017-96、J.C.Randall et al.,”NMR and Macromolecules”ACS Symposium series 247、J.C.Randall,Ed.,Am.Chem.Soc.,Washington,D.C.,1984,Ch.9、およびJ.C.Randall”Polymer Sequence Determination”,Academic Press,New York(1977)は、NMR分光法によるポリマー分析の一般的な方法を提供する。
【0036】
従来のゲル浸透クロマトグラフィー(従来のGPC)
PolymerChar(Valencia、Spain)のGPC-IR高温クロマトグラフィーシステムには、精密検出器(Amherst、MA)、2角度レーザー光散乱検出器モデル2040、IR5赤外線検出器および4細管粘度計(いずれもPolymerChar)が備えられていた。データ収集は、PolymerChar Instrument Controlソフトウェアおよびデータ収集インターフェースを使用して実施した。このシステムには、Agilent Technologies(Santa Clara,CA)のオンラインの溶媒脱気デバイスおよびポンプシステムが備えられていた。
【0037】
注入温度を摂氏150度に制御した。使用したカラムは、Polymer Laboratories(Shropshire、UK)からの3つの10ミクロン「Mixed-B」カラムであった。使用した溶媒は、1,2,4-トリクロロベンゼンであった。試料は、「50ミリリットルの溶媒中0.1グラムのポリマー」の濃度で調製した。クロマトグラフィー溶媒および試料調製溶媒は各々、「200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)」を含有した。両溶媒源を窒素スパージした。エチレン系ポリマー試料を摂氏160度で3時間静かに撹拌した。注入容量は、「200マイクロリットル」であり、流速は、「1ミリリットル/分」であった。GPCカラムセットは、21の「狭い分子量分布」ポリスチレン標準を実行することによって較正した。標準物の分子量(MW)は、580~8,400,000g/モルの範囲であり、標準物を6つの「カクテル」混合物に含有させた。各標準混合物は、個々の分子量間で少なくとも一桁の間隔を有した。標準混合物は、Polymer Laboratoriesから購入した。ポリスチレン標準物は、1,000,000g/モル以上の分子量については、「50mLの溶媒中0.025g」、および1,000,000g/モル未満の分子量については、「50mLの溶媒中0.050g」で調製した。
【0038】
ポリスチレン標準物を、穏やかに撹拌しながら80℃で30分間溶解した。分解を最小限に抑えるために、狭い標準混合物を最初に、かつ「最高分子量成分」が減少する順に流した。ポリスチレン標準物ピーク分子量を、等式1を使用してポリエチレン分子量に変換した(Williams and Ward,J.Sci.,Polym.Letters,6,621(1968))に説明されているとおり)等式(1)を使用してポリエチレン分子量に変換した。
【0039】
Mポリエチレン=A×(Mポリスチレン)B(等式1)を使用してポリエチレン分子量に変換し、
式中、Mは、分子量であり、Aは、0.4316に等しく、Bは、1.0に等しい。
【0040】
数平均分子量(Mn(従来のgpc))、重量平均分子量(Mw-従来のgpc)、およびz平均分子量(Mz(従来のgpc))を、以下の等式2~4に従って計算した。
【数1】
【数2】
【数3】
【0041】
等式2~4において、RVは、「1秒あたり1点」で収集されたカラム保持容積(直線的に離間される)であり、IRは、GPC計器のIR5測定チャネルからの、ボルト単位でのベースライン減算IR検出器信号であり、MPEは、等式1から決定されたポリエチレン当量MWである。データ計算は、PolymerCharからの「GPC Oneソフトウェア(バージョン2.013H)」を使用して実施した。
【0042】
クリープゼロ剪断粘度測定法
ゼロ剪断粘度を、「直径25mm」の平行板を使用して、190℃でAR-G2応力制御レオメーター(TA Instruments、New Castle、Del)で実施したクリープ試験により得た。固定具をゼロにする前に、レオメーターオーブンを少なくとも30分間試験温度に設定した。その試験温度で、圧縮成形された試料ディスクをプレート間に挿入し、5分間平衡させた。次いで、上側プレートを所望の試験間隙(1.5mm)を超えて50μm(機器設定)まで下げた。余分な材料をトリミングして除去し、上側プレートを所望の間隙まで下げた。測定は、5L/分の流速で、窒素パージ下で行った。デフォルトのクリープ時間を2時間に設定した。各試料は、空気中で、10MPaの圧力下で、5分間、177℃で「厚さ2mm×直径25mm」の円形プラークに圧縮成形した。次いで、試料を圧縮機から取り出し、カウンター上に置き、冷却した。
【0043】
定常状態の剪断速度がニュートン領域になるように十分な低さであることを確実にするために、試料のすべてに20Paの一定の低剪断応力を加えた。得られた定常状態の剪断速度は、この試験における試料については10-3~10-4s-1の範囲であった。定常状態は、「log(J(t))対log(t)」(J(t)は、クリープコンプライアンスであり、tは、クリープ時間である)のプロットの最後の10%の時間窓内のすべてのデータについて直線回帰を取ることによって決定した。直線回帰の傾きが0.97を超える場合、定常状態に達したとみなし、次いでクリープ試験を停止した。この試験におけるすべての場合において、傾きは、1時間以内に基準を満たす。定常状態の剪断速度は、「ε対t」(εは歪みである)のプロットの最後の10%の時間窓におけるすべてのデータ点の直線回帰の傾きから決定した。ゼロ剪断粘度は、加えられた応力と定常状態の剪断速度との比から決定した。
【0044】
クリープ試験中に試料が劣化しているかどうかを決定するために、同一の試料についてクリープ試験の前後に0.1~100ラジアン/秒で小振幅振動剪断試験を行った。2つの試験の複素粘度値を比較した。0.1ラジアン/秒における粘度値の差が5%を超える場合、クリープ試験中に試料は劣化したとみなされ、結果を廃棄した。
【0045】
密度は、ASTM D792、方法Bに従って測定される。結果は、1立方センチメートル当たりのグラム(g/cc)で記録される。
【0046】
示差走査熱量測定(DSC)
示差走査熱量測定(DSC)を使用して、広範囲にわたる温度のポリマーの溶融、結晶化、およびガラス転移挙動を測定し得る。例えば、RCS(冷蔵冷却システム)およびオートサンプラーを備えるTA Instruments Q1000 DSCを使用して、この分析を実施する。試験中、50mL/分の窒素パージガス流を使用する。各試料を約175℃で薄フィルムに溶融圧縮し、その後、溶融試料を室温(約25℃)まで空冷する。3~10mg、6mmの直径の試料は、冷却されたポリマーから抽出され、秤量され、軽いアルミニウムパン(約50mg)内に載置され、圧着閉鎖される。次いで、その熱的特性を決定するために分析を行う。
【0047】
試料の熱挙動は、試料温度を昇降して熱流量対温度プロファイルを作成することにより決定する。熱履歴を除去するために、まず、試料を180℃まで急速に加熱し、3分間等温保持する。次に、試料を10℃/分の冷却速度で-40℃まで冷却し、-40℃で3分間等温保持する。次いで、試料を10℃/分の加熱速度で180℃まで加熱する(これは「第2の加熱」勾配である)。冷却および第2の加熱曲線を記録する。冷却曲線は、結晶化の開始から-20℃までのベースライン終点を設定することによって分析される。熱曲線は、ベースライン終点を-20℃から溶融終点に設定することによって分析される。決定した値は、外挿された融解開始Tm、および外挿された結晶化開始Tcである。融解熱(Hf)(ジュール/グラム)、および次の等式を使用して計算されるポリエチレン試料の結晶化度%:結晶化度%=((Hf)/292J/g)x100
【0048】
融解熱(Hf)(融解エンタルピーとしても知られている)およびピーク融解温度は、第2の加熱曲線から報告する。ピーク結晶化温度は、冷却曲線から決定される。
【0049】
メルトインデックス(MI)(I2)は、ASTM D1238に従って測定される(190℃/2.16kg)。結果は、10分(g/10分)あたりの溶出グラム数で報告される。メルトインデックス(I10)は、ASTM D1238に従って測定され(190℃/10kg)、結果は、g/10分で報告される。メルトインデックス比(I10/I2)は、ASTM D1238に従って、190℃の温度で10kgおよび2.16kgで得られた値の比を取って測定される。
【0050】
分子量コモノマー分布指数(MWCDI)
PolymerChar(Valencia、Spain)のGPC-IR高温クロマトグラフィーシステムには、精密検出器(Amherst、MA)2角度レーザー光散乱検出器モデル2040、ならびにIR5赤外線検出器(GPC-IR)および4細管粘度計(いずれもPolymerChar)が備えられていた。光散乱検出器の「15度の角度」を計算目的に使用した。データ収集は、PolymerChar Instrument Controlソフトウェアおよびデータ収集インターフェースを使用して実施した。このシステムには、Agilent Technologies(Santa Clara,CA)のオンラインの溶媒脱気デバイスおよびポンプシステムが備えられていた。
【0051】
注入温度を摂氏150度に制御した。使用されたカラムは、Polymer Laboratories(Shropshire、UK)の4つの20ミクロンの「混合-A」光散乱カラムであった。溶媒は1,2,4-トリクロロベンゼンであった。試料は、「50ミリリットルの溶媒中0.1グラムのポリマー」の濃度で調製した。クロマトグラフィー溶媒および試料調製溶媒は各々、「200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)」を含有した。両溶媒源を窒素スパージした。エチレン系ポリマー試料を摂氏160度で3時間穏やかに撹拌した。注入容量は「200マイクロリットル」であり、流速は「1ミリリットル/分」であった。
【0052】
GPCカラムセットの較正は、580~8,400,000g/モルの範囲の分子量を有する、21の「狭い分子量分布」のポリスチレン標準で実施した。これらの標準は、個々の分子量間に少なくとも一桁の間隔を置いて、6つの「カクテル」混合物中に配置した。標準はPolymer Laboratories(Shropshire UK)から購入した。1,000,000g/モル以上の分子量については「50ミリリットルの溶媒中に0.025グラム」で、また、1,000,000g/モル未満の分子量については「50ミリリットルの溶媒中に0.050グラム」でポリスチレン標準を調製した。ポリスチレン標準を摂氏80度で30分間穏やかに撹拌しながら溶解した。分解を最小限に抑えるために、狭い標準混合物を最初に、かつ「最高分子量成分」が減少する順に流した。ポリスチレン標準ピーク分子量を、等式1Bを使用してポリエチレン分子量に変換した(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)に説明されているとおり)。
Mポリエチレン=Ax(Mポリスチレン)B(等式1B)、
【0053】
式中、Mは、分子量であり、Aは、およそ0.40の値を有し、Bは、1.0に等しい。NBS1475A(NIST)直鎖ポリエチレンの重量平均分子量が以下の等式3Bによって計算して52,000g/モルに相当するように、A値を0.385と0.425との間で調節した(特定のカラムセット効率に依存する)。
【数4】
【数5】
【0054】
等式2Bおよび等式3Bにおいて、RVは、「1秒あたり1点」で収集されたカラム保持容積(直線的に離間される)である。IRは、GPC計器の測定チャネルからの、ベースライン減算IR検出器信号(ボルト単位)であり、MPEは、等式1Bから決定されたポリエチレン当量MWである。データ計算は、PolymerCharからの「GPC Oneソフトウェア(バージョン2.013H)」を使用して実施した。
【0055】
IR5検出器比の較正は、ホモポリマー(0SCB/総炭素数1000個)からおよそ50SCB/総炭素数1000個(ここで、総炭素数=主鎖中の炭素+分岐中の炭素)までの範囲の既知の短鎖分岐(SCB)頻度(上で考察されるように、
13C NMR法で測定される)の少なくとも10個のエチレン系ポリマー標準(ポリエチレンホモポリマーおよびエチレン/オクテンコポリマー、狭い分子量分布および均一コモノマー分布)を使用して、実施した。各標準は、上記のGPC-LALS処理法によって決定された36,000g/モル~126,000g/モルの重量平均分子量を有していた。各標準は、上述したGPC-LALS処理法により決定された2.0~2.5の分子量分布(Mw/Mn)を有していた。SCB標準のポリマー特性を表1に示す。
【表1】
【0056】
「IR5メチルチャネルセンサのベースライン減算領域応答」の「IR5測定チャネルセンサのベースライン減算領域応答」に対する「IR5領域比(または「IR5メチルチャネル領域/IR5測定チャネル領域」)」(PolymerCharによって供給された標準フィルターおよびフィルターホイール:Part Number IR5_FWM01は、GPC-IR機器の一部として含まれていた)は、「SCB」標準の各々について計算された。SCB頻度対「IR5領域比」の直線近似を、以下の等式4Bの形態で構築した。
【0057】
SCB/総炭素数1000個=A0+[A1×(IR5メチルチャネル領域/IR5測定チャネル領域)](等式4B)、式中、A0は、ゼロの「IR5領域比」における「SCB/総炭素数1000個」の切片であり、A1は、「SCB/総炭素数1000個」対「IR5領域比」の傾きであり、「IR5領域比」の関数としての「SCB/総炭素数1000個」における増加を表す。
【0058】
「IR5メチルチャネルセンサ」によって発生させられたクロマトグラムについての一連の「直線的なベースライン減算クロマトグラフィー高さ」を、カラム溶出体積の関数として確立して、ベースライン補正クロマトグラム(メチルチャネル)を発生させた。「IR5測定チャネル」によって発生させられたクロマトグラムの一連の「線形ベースライン減算クロマトグラフィー高さ」をカラム溶出体積の関数として確立して、ベースライン補正クロマトグラム(測定チャネル)を発生させた。
【0059】
「ベースライン補正クロマトグラム(メチルチャネル)」の「ベースライン補正クロマトグラム(測定チャネル)」に対する「IR5高さ比」は、サンプル統合境界にわたって各カラム溶出体積指数(1ml/分の溶出で1秒あたり1データポイントを表す)で計算された。「IR5高さ比」に係数A1を掛け、係数A0をこの結果に加えて、試料の予測SCB頻度を得た。以下の等式5Bのように、結果をモルパーセントコモノマーに変換した。
モルパーセントコモノマー(等式5B)={SCBf/[SCBf+((1000-SCBf*コモノマーの長さ)/2)]}*100(等式5B)、式中、「SCBf」は、「総炭素数1000個当たりのSCB」であり、「コモノマーの長さ」=オクテンの場合8、ヘキセンの場合6などである。
【0060】
Williams and Wardの方法(上記、等式1B)を使用して、各溶出体積指数を分子量値(Mwi)に変換した。「モルパーセントコモノマー(y軸)」は、Log(Mwi)の関数としてプロットされ、傾きは、15,000のMwi~150,000g/モルのMwiで計算された(鎖末端に対する末端基の補正はこの計算では省略された)。EXCEL直線回帰を使用して、15,000~150,000g/モルの間(境界値を含む)のMwiの傾きを計算した。この傾きは、分子量コモノマー分布指数(MWCDI=分子量コモノマー分布指数)として定義される。
【0061】
MWCDIの代表例の決定
MWCDIの決定を例示するために、MWCDIの代表的な決定を試料組成物について提供する。測定された「1000個の総炭素数あたりのSCB(=SCB
f)」対SCB標準の観察された「IR5領域比」のプロットを生成し(
図1を参照されたい)、切片(A
0)および勾配(A
1)を決定した。ここで、A
0=-90.246SCB/総炭素数1000個、A
1=499.32SCB/総炭素数1000個。
【0062】
試料組成物について「IR5高さ比」を決定した。上記のように、この高さ比(試料組成物のIR5高さ比)に係数A1を掛け、その結果に係数A0を足して、各溶出体積指数において、この実施例の予測SCB頻度を得た(A0=-90.246SCB/総炭素数1000個、およびA1=499.32SCB/総炭素数1000個)。SCBfを、上で考察されるように、等式1Bを使用して決定されたポリエチレン当量分子量の関数としてプロットした。
【0063】
SCBfを、等式5Bにより「モルパーセントコモノマー」に変換した。「モルパーセントコモノマー」を、上で考察されるように、式1Bを用いて決定されたポリエチレン当量分子量の関数としてプロットした。直線近似は15,000g/モルのMwiから150,000g/モルのMwiまでであり、「2.27モルパーセントコモノマー×モル/g」の傾きが得られた。したがって、MWCDI=2.27である。EXCEL直線回帰を使用して、15,000~150,000g/モルの間(境界値を含む)のMwiの傾きを計算した。
【0064】
シール強度とは、熱シールを引き離すのに必要な力を指し、指定されたシール温度でのピーク荷重のニュートンとして表されている(N/25.4mm)。シール強度は、一般的に幅25.4mmを有する試験片を使用して、ASTM F-88に従って測定される。
【0065】
ゼロ剪断粘度比(ZSVR)は、以下の等式5に従って当量平均分子量(Mw(従来のgpc))における分岐ポリエチレン材料のゼロ剪断粘度(ZSV)対直鎖状ポリエチレン材料のZSVの比として定義される(以下のANTECの議事録を参照):
【数6】
【0066】
ZSV値を、上述した方法により、190℃でのクリープ試験から得た。Mw(従来gpc)値を、上記に考察したように、従来のGPC法(等式3)により決定した。直鎖状ポリエチレンのZSVとそのMw(従来のgpc)との間の相関は、一連の直鎖状ポリエチレン参照材料に基づいて確立された。ZSV-Mwの関係についての説明は、ANTECの議事録:Karjala et al.,Detection of Low Levels of Long-chain Branching in Polyolefins,Annual Technical Conference-Society of Plastics Engineers(2008),66th 887-891に見出すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本開示は、可撓性多層フィルムを提供する。可撓性多層フィルムは、少なくとも3つの層を有する。可撓性多層フィルムは、シール層および裏当て層を含む。シール層は、アイオノマーを含む。裏当て層は、シール層と直接接触する。裏当て層は、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーを含む。
【0068】
1.可撓性多層フィルム
可撓性多層フィルムは、弾力性、可撓性、変形可能、かつ柔軟である。可撓性多層フィルムは、(i)共押出多層構造体、(ii)積層体、または(iii)(i)と(ii)との組み合わせであり得る。可撓性多層フィルムは、少なくとも3つの層を含む。可撓性多層は、少なくとも3つ、または4つ、または5つ、または6つ、または7つ、または8つ、または9つ、または10つ、または11つ、またはそれ以上の層を有する。可撓性多層フィルムは、シール層、および裏当て層を有する。
【0069】
可撓性多層フィルムは、シール層を含む。シール層は、アイオノマーを含む。本明細書で使用される「アイオノマー」は、イオン含有ポリマーである。「イオン」は、正または負のいずれかの電荷を有する原子である。アイオノマーは、過半数の重量パーセント(通常は85%~90%)の非イオン性(非極性)の繰り返しモノマー単位、および少数の重量パーセント(通常は10%~15%)のイオン性または極性(すなわち、正に帯電または負に帯電された)である繰り返しコモノマー単位を有する。イオン基の正電荷は、イオン基の負電荷を引き付け、イオン結合を作る。アイオノマー樹脂は、「可逆的架橋」挙動として知られている、すなわち、アイオノマーが加熱されると、ポリマー鎖の移動度が増加し、正電荷と負電荷が互いに引き離されるため、イオン結合が不完全になるという挙動を示す。
【0070】
アイオノマーが誘導されるモノマーおよびコモノマーの非限定的な例には、少なくとも1つのアルファ-オレフィンと、少なくとも1つのエチレン性不飽和カルボン酸および/または無水物とのコポリマーが含まれる。好適なアルファ-オレフィンの非限定的な例には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、および3-メチルブテンが含まれる。好適なカルボン酸および無水物の非限定的な例には、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、および無水マレイン酸が含まれる。
【0071】
一実施形態では、アイオノマーは、エチレンとメタクリル酸とのコポリマーである。
【0072】
一実施形態では、アイオノマーは、エチレンとアクリル酸とのコポリマーである。
【0073】
一実施形態では、アイオノマーは金属アイオノマーである。本明細書で使用される「金属アイオノマー」は、アルファ-オレフィンと、エチレン性不飽和カルボン酸および/または無水物とのコポリマーの金属塩をベースとするコポリマーを指す。金属アイオノマーは、金属イオンによって完全にまたは部分的に中和され得る。アイオノマーを中和するのに好適な金属の非限定的な例としては、アルカリ金属、すなわち、ナトリウム、リチウム、およびカリウムなどのカチオン、アルカリ土類金属、すなわち、カルシウム、マグネシウムなどのカチオン、亜鉛などの遷移金属が挙げられる。
【0074】
一実施形態では、金属アイオノマーは、0.93~0.96g/ccの密度、85℃~105℃のTm、および0.5~6.0g/10分のMIを有する。
【0075】
一実施形態では、アイオノマーはナトリウムアイオノマーである。本明細書で使用される「ナトリウムアイオノマー」(または「NaI/O」)という用語は、エチレンと、カルボン酸/または無水物を有するビニルコモノマーとのコポリマーのナトリウム塩をベースとするコポリマーを指す。酸基を有するビニルコモノマーを有する好適なコモノマーの非限定的な例には、メチル/メタクリル酸、ビニルアクリル酸、メタクリレート、n-ブチルアクリル酸、およびアクリル酸が含まれる。
【0076】
一実施形態では、金属アイオノマーは亜鉛アイオノマーである。本明細書で使用される「亜鉛アイオノマー」(または「ZnI/O」)という用語は、エチレンと、カルボン酸/または無水物を有するビニルコモノマーとのコポリマーの亜鉛塩をベースとするコポリマーを指す。酸基を有するビニルコモノマーを有する好適なコモノマーの非限定的な例には、メチル/メタクリル酸、ビニルアクリル酸、メタクリレート、n-ブチルアクリル酸、およびアクリル酸が含まれる。
【0077】
好適な亜鉛アイオノマーの非限定的な例にはエチレン/アクリル酸コモノマーの亜鉛塩、エチレン/メチル-メタクリル酸コポリマーの亜鉛塩、エチレン/ビニルアクリル酸コポリマーの亜鉛塩、エチレン/メタクリレートコポリマーの亜鉛塩、エチレン/n-ブチルアクリル酸コポリマーの亜鉛塩、およびそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0078】
一実施形態では、アイオノマーは、エチレンおよびメタクリル酸(「MAA」)コポリマーの亜鉛塩であり、次の特性のうちの1つ、いくつか、またはすべてを有する:
(i)0.93g/cc~0.96g/ccの密度、および/または
(ii)95℃~99℃のTm、および/または
(iii)01.0g/10分~2.0g/10分のMI、および/または
(iv)亜鉛アイオノマーの総重量に基づいて、5%~20%の%MAA。
【0079】
好適な亜鉛アイオノマーの非限定的な例には、Dow-DuPontから入手可能な、エチレンおよびメタクリル酸コポリマーの亜鉛塩であるSurlyn(登録商標)1650が含まれる。
【0080】
シール層は、1μm~40μm、または2μm~38μm、または3μm~26μm、または3μm~24μm、または5μm~22μm、または6μm~20μm、または7μm~12μm、または8μm~14μm、または8μm~15μm、または9μm~16μm、または8μm~18μm、または10μm~15μm、または10μm~20μm、または10μm~30μmの厚さを有し得る。
【0081】
一実施形態では、シール層は、1μm~20μmの厚さを有する。
【0082】
一実施形態では、シール層は、8μm~18μm、または10μm~15μmの厚さを有する。
【0083】
可撓性多層フィルムは、シール層と直接接触する裏当て層を含む。裏当て層は、エチレン-α-オレフィンマルチブロックコポリマーで構成される。一実施形態では、裏当て層は、単一のポリマー材料、すなわち、エチレン-α-オレフィンマルチブロックコポリマーで構成される。
【0084】
エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーである。用語「エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマー」は、重合形態の、エチレンと1つの共重合性C4-C8α-オレフィンコモノマー(および任意選択的な添加剤)とからなるエチレン/C4-C8α-オレフィンマルチブロックコポリマーを指し、ポリマーが、化学的または物理的特性が異なる2つの重合モノマー単位の多数のブロックまたはセグメントを特徴とし、ブロックが、線状の様式で接合(または共有結合)している、すなわち、ポリマーが、重合性エチレン官能基に対して端部と端部が接合されている化学的に異なる単位を含む。エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、2つのブロック(ジブロック)および3つ以上のブロック(マルチブロック)を有するブロックコポリマーを含む。C4~C8のα-オレフィンは、ブテン、ヘキセン、およびオクテンから選択される。エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、スチレン(すなわち、スチレンを含まない)、および/またはビニル芳香族モノマー、および/または共役ジエンを含まないか、そうでなければ除外する。コポリマー中の「エチレン」または「コモノマー」の量を指す場合、これはその重合単位を指すと理解される。いくつかの実施形態では、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、以下の式によって表すことができる:(AB)n、式中、nは少なくとも1、好ましくは2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100以上などの1より大きい整数であり、「A」はハードブロックまたはセグメントを表し、「B」はソフトブロックまたはセグメントを表す。AおよびBは、実質的に分岐または実質的に星形の様式とは対照的に、実質的に線状様式で、または線状方式で、連結または共有結合される。他の実施形態では、AブロックおよびBブロックは、ポリマー鎖に沿ってランダムに分布している。言い換えれば、ブロックコポリマーは、通常、次のような構造を有さない:AAA-AA-BBB-BB。一実施形態では、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、異なるコモノマーを含む第3のタイプのブロックを有さない。別の実施形態では、ブロックAおよびブロックBの各々は、ブロック内に実質的にランダムに分布したモノマーまたはコモノマーを有する。言い換えれば、ブロックAもブロックBも、ブロックの残りの部分とは実質的に異なる組成を有する先端セグメントなど、別個の組成の2つ以上のサブセグメント(またはサブブロック)を含まない。
【0085】
エチレンは、全エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーの大部分のモル分率を構成する、すなわち、エチレンは、全エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーの少なくとも50重量%を構成する。より好ましくは、エチレンは、C4-C8α-オレフィンコモノマーを含むエチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマー全体の実質的に残りの部分で、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、または少なくとも80重量%を構成する。実施形態では、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、50重量%~90重量%のエチレン、または60重量%~85重量%のエチレン、または65重量%~80重量%のエチレンを含有する。多くのエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーの場合、組成物は、全エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーの80重量%超のエチレン含有量および全マルチブロックコポリマーの10重量%~15重量%、または15重量%~20重量%のオクテン含有量を含む。
【0086】
エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、様々な量の「ハード」セグメントおよび「ソフト」セグメントを含む。「ハード」セグメントは、エチレンが、ポリマーの重量に基づいて、90重量%超、または95重量%、または95重量%超、または98重量%超、最大100重量%の量で存在する重合単位のブロックである。言い換えれば、ハードセグメント中のコモノマー含有量(エチレン以外のモノマーの含有量)は、ポリマーの重量に基づいて、10重量%未満、または5重量%、または5重量%未満、または2重量%未満であり、最低でゼロであり得る。いくつかの実施形態では、ハードセグメントは、エチレンに由来するすべてまたは実質的にすべての単位を含む。「ソフト」セグメントは、コモノマー含有量(エチレン以外のモノマーの含有量)が、ポリマーの重量に基づいて、5重量%超、または8重量%超、10重量%超、または15重量%超である重合単位のブロックである。一実施形態では、ソフトセグメント中のコモノマー含有量は、20重量%超、25重量%超、30重量%超、35重量%超、40重量%超、45重量%超、50重量%超、または60重量%超であり、最大100重量%であり得る。
【0087】
ソフトセグメントは、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーの総重量の1重量%~99重量%、またはエチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーの総重量の5重量%~95重量%、10重量%~90重量%、15重量%~85重量%、20重量%~80重量%、25重量%~75重量%、30重量%~70重量%、35重量%~65重量%、40重量%~60重量%、または45重量%~55重量%のエチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーで存在することができる。逆に、ハードセグメントは、同様の範囲で存在することができる。ソフトセグメントの重量割合およびハードセグメントの重量割合は、DSCまたはNMRから取得したデータに基づいて計算することができる。そのような方法および計算は、例えば、2006年3月15日にColin L.P.Shan,Lonnie Hazlitt,et.al.の名前で出願され、Dow Global Technologies Inc.に譲渡された「Ethylene/α-Olefin Block Inter-Polymers」と題するUSP7,608,668に開示されており、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。特に、ハードおよびソフトセグメントの重量パーセント、ならびにコモノマー含有量は、米国特許第7,608,668号の57欄~63欄に記載されているように決定され得る。
【0088】
エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、線状方式で結合(または共有結合)した2つ以上の化学的に異なる領域またはセグメント(「ブロック」と称される)を含み、つまり、それはペンダントまたはグラフト化された様式ではなく、重合エチレン性官能基に関して端から端まで結合されている化学的に区別された単位を含有する。一実施形態では、ブロックは、組み込まれたコモノマーの量またはタイプ、密度、結晶化度の量、そのような組成のポリマーに起因する結晶子サイズ、立体規則性のタイプまたは程度(アイソタクチックもしくはシンジオタクチック)、部位規則性もしくは部位不規則性、分岐(長鎖分岐もしくは超分岐を含む)の量、均一性、または他の任意の化学的もしくは物理的特性で異なる。連続的なモノマー添加、流動触媒、またはアニオン重合技術によって生成されるインターポリマーを含む、従来技術のブロックインターポリマーと比較して、本発明のエチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、一実施形態では、ポリマー多分散性(PDIまたはMw/MnまたはMWD)、多分散ブロック長分布、および/またはそれらの調製に使用される複数の触媒と組み合わせたシャトル剤の効果による多分散ブロック数分布の両方の独特の分布によって特徴付けられる。
【0089】
一実施形態では、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、連続プロセスで製造され、1.7~3.5、または1.8~3、または1.8~2.5、または1.8~2.2の多分散指数(Mw/Mn)を有する。バッチまたはセミバッチプロセスで製造される場合、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、1.0~3.5、または1.3~3、または1.4~2.5、または1.4~2のMw/Mnを有する。
【0090】
加えて、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、ポアソン分布ではなく、シュルツ・フロリー分布に適合するPDI(またはMw/Mn)を有する。本発明のエチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、多分散ブロック分布と並んでブロックサイズの多分散分布の両方を有する。これにより、改善された区別可能な物理的特性を有するポリマー生成物が形成される。多分散ブロック分布の理論的利点は、Potemkin,Physical Review E(1998)57(6),pp.6902-6912、およびDobrynin,J.Chem.Phvs.(1997)107(21),pp9234-9238において以前にモデル化され、考察されている。
【0091】
一実施形態では、本エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、ブロック長の最確分布を持つ。
【0092】
さらなる実施形態では、本開示のエチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマー、特に連続溶液重合反応器で作製されたものは、ブロック長の最確分布を持つ。本開示の一実施形態では、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、以下を有すると定義される:
(A)約1.7~約3.5のMw/Mn、摂氏温度での少なくとも1つの融点Tm、およびグラム/立方センチメートルでの密度d、Tmおよびdの数値は、以下の関係に対応する:
Tm>-2002.9+4538.5(d)-2422.2(d)2、ならびに/または
(B)約1.7~約3.5のMw/Mn、J/gでの融解熱ΔH、および最も高いDSCピークと最も高い結晶化分析分別(CRYSTAF)ピークとの間の温度差と定義される摂氏温度でのデルタ量ΔTを特徴とし、ΔTおよびΔHの数値が、以下の関係式を有する:
ΔHがゼロ超かつ最大130J/gの場合、ΔT>-0.1299ΔH+62.81
ΔHが130J/gを超える場合、ΔT≧48℃
ここで、CRYSTAFピークは、累積ポリマーの少なくとも5パーセントを使用して決定され、ポリマーの5パーセント未満が特定可能なCRYSTAFピークを有する場合、CRYSTAF温度は、30℃である、ならびに/または
(C)エチレン/α-オレフィンインターポリマーの圧縮成形フィルムで測定した300%歪みおよび1サイクルでの弾性回復率Re、ならびにグラム/立方センチメートルでの密度d、エチレン/α-オレフィンインターポリマーが架橋相を実質的に有しない場合、Reおよびdの数値は、以下の関係を満たし、
Re>1481-1629(d)、ならびに/または
(D)TREFを使用して分画したときに40℃~130℃で溶出する分子分画を有し、分画は、同じ温度間で溶出する同程度のランダムエチレンインターポリマー分画のものよりも少なくとも5パーセント高いコモノマーモル含有量を有することを特徴とし、ここで、この同程度のランダムエチレンインターポリマーは、同じコモノマーを有し、エチレン/α-オレフィンインターポリマーのものの10パーセント(ポリマー全体に基づいて)以内でメルトインデックス、密度、およびコモノマーモル含有量を有する、ならびに/または
(E)25℃での貯蔵弾性率G’(25℃)、および100℃での貯蔵弾性率G’(100℃)を有し、G’(25℃)対G’(100℃)の比率は1:1~9:1の範囲である。
【0093】
エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーはまた、以下を有し得る:
(F)TREFを使用して分画したときに40℃~130℃で溶出する分子分画であって、分画は、少なくとも0.5および最大1までのブロック指数かつ1.3を超える分子量分布Mw/Mnを有することを特徴とし、ならびに/または
(G)ゼロ超かつ最大1.0の平均ブロック指数および1.3を超える分子量分布Mw/Mn。
【0094】
エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、特性(A)~(G)のうちの1つ、いくつか、すべて、または任意の組み合わせを有し得ることが理解される。ブロックインデックスは、その目的のために参照により本明細書に組み込まれるUSP7,608,668号に詳細に記載されているように決定することができる。特性(A)~(G)を決定するための分析方法は、例えば、USP7,608,668、31欄26行目~35欄44行目に開示されており、その目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0095】
一実施形態では、エチレン/αオレフィンマルチブロックコポリマーは、ハードセグメントおよびソフトセグメントを有するスチレン-フリーであり、(i)エチレンと、(ii)C4-C8α-オレフィン(および任意選択の添加剤)とのみからなり、1.7~3.5のMw/Mn、摂氏温度での少なくとも1つの融点Tm、およびグラム/立方センチメートルでの密度dを有すると定義され、Tmおよびdの数値は、以下の関係に対応する:
Tm>-2002.9+4538.5(d)-2422.2(d)2
式中、密度dは、0.850g/cc、または0.860g/cc、または0.870g/cc~0.875g/cc、または0.877g/cc、または0.880g/cc、または0.890g/ccであり、融点Tmは、110℃、または115℃、または120℃~125℃、または130℃、または135℃である。
【0096】
一実施形態では、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、エチレン/1-オクテンマルチブロックコポリマー(エチレンおよびオクテンコモノマーのみからなる)であり、次の特性の1つ、いくつか、またはすべてを有する:
(i)1.7、もしくは1.8~2.2、もしくは2.5、もしくは3.5のMw/Mn、および/または
(ii)0.860g/cc、もしくは0.865g/cc、もしくは0.870g/cc、もしくは0.877g/cc、もしくは0.880g/ccの密度、および/または
(iii)115℃、もしくは118℃、もしくは119℃、もしくは120℃~120℃、もしくは123℃、もしくは125℃の融点Tm、ならびに/または
(iv)0.1g/10分、もしくは0.5g/10分~1.0g/10分、もしくは2.0g/10分、もしくは5g/10分、もしくは10g/10分のメルトインデックス(MI)、および/または
(v)50~85重量%のソフトセグメントおよび40~15重量%のハードセグメント、ならびに/または
(vi)ソフトセグメント中の10mol%、もしくは13mol%、もしくは14mol%、もしくは15mol%~16mol%、もしくは17mol%、もしくは18mol%、もしくは19mol%、もしくは20mol%のC4-C12α-オレフィン、ならびに/または
(vii)ハードセグメント中の0.5mol%、もしくは1.0mol%、もしくは2.0mol%、もしくは3.0mol%~4.0mol%、もしくは5mol%、もしくは6mol%、もしくは7mol%、もしくは9mol%のオクテン、および/または
(viii)ASTM D 1708に従って測定される、21℃での300%300%分-1の変形率で50%、もしくは60%~70%、もしくは80%、もしくは90%の弾性回復(Re)、ならびに/または
(ix)ブロックの多分散分布およびブロックサイズの多分散分布。
【0097】
一実施形態では、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーである。エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、米国ミシガン州ミッドランドのThe Dow Chemical Companyから入手可能な商品名INFUSE(商標)で販売されている。
【0098】
エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、参照により本明細書に組み込まれるUSP7,858,706に記載されているような連鎖シャトリングプロセスを介して生成することができる。特に、好適な連鎖シャトリング剤および関連情報は、16欄39行目~19欄44行目に列挙されている。好適な触媒は、19欄45行目~46欄19行目に記載されており、好適な共触媒は、46欄20行目~51欄28行目に記載されている。プロセスは、文書の全体にわたって記載されているが、特に、51欄29行目~54欄56行目に記載されている。プロセスは、例えば、次のUSP7,608,668、USP7,893,166、およびUSP7,947,793にも記載されている。
【0099】
エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0100】
一実施形態では、裏当て層は、1μm~30μm、または5μm~25μmの厚さを有する。
【0101】
一実施形態では、裏当て層は、1μm~30μm、または5μm~25μm、または1μm~20μm、または2μm~18μm、または3μm~16μm、または3μm~14μm、または5μm~12μm、または6μm~10μm、または7μm~12μm、または8μm~14μm、または9μm~16μm、または10μm~15μm、または12μm~20μm、または14μm~25μmの厚さを有する。
【0102】
一実施形態では、裏当て層は、10μm~25μm、または14μm~25μmの厚さを有する。
【0103】
可撓性多層フィルムは、結合層を含む。結合層は、裏当て層と直接接触する。可撓性多層フィルムは、2つ以上の結合層を含み得る。
【0104】
結合層は、1つ以上のポリマー材料で構成され得る。結合層に好適なポリマー材料の非限定的な例としては、エチレン-ビニルアセテート(EVA)コポリマーなどの官能化エチレン系ポリマー;任意のポリエチレン、エチレン-コポリマー、またはポリプロピレンなどのポリオレフィンにグラフト化した無水マレイン酸を有するポリマー;エチレンメチルアクリレート(EMA)などのエチレンアクリレートコポリマー;グリシジル含有エチレンコポリマー;INFUSE(商標)(the Dow Chemical Companyから入手可能なエチレン系オレフィンブロックコポリマー)およびINTUNE(商標)(The Dow Chemical Companyから入手可能なPP系オレフィンブロックコポリマー)などのプロピレンおよびエチレン系オレフィンブロックコポリマー;ならびにDowlex(商標)GM 8070(the Dow Chemical Companyから入手可能なポリエチレン樹脂)およびLDPE 132i(the Dow Chemical Companyから入手可能な低密度ポリエチレン樹脂)のような低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂;BYNEL(商標)41E70(Dow Chemical Companyから入手可能な直鎖状低密度ポリエチレン樹脂などの無水物変性、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ならびにそれらのブレンドが挙げられる。
【0105】
結合層は、1μm~20μm、または2μm~18μm、または3μm~16μm、または3μm~14μm、または5μm~12μm、または6μm~10μmの厚さを有する。
【0106】
一実施形態では、結合層は、5μm~12μmの厚さを有する。
【0107】
一実施形態では、可撓性多層フィルムは、バリア層を含む。バリア層は、結合層と直接接触する。可撓性多層フィルムは、1つのバリア層または2つ以上のバリア層を含む。
【0108】
バリア層に好適な材料の非限定的な例としては、1つ以上のポリアミド(ナイロン)、エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、またはそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられ、スカベンジャー材料およびコバルトなどの重金属とMXD6ナイロンとの化合物を含むことができる。
【0109】
バリア層は、1μm~20μm、または2μm~18μm、または3μm~16μm、または3μm~14μm、または5μm~12μm、または6μm~10μm、または7μm~12μm、または8μm~14μm、または9μm~16μm、または10μm~18μm、または10μm~20μm、または10μm~25μmの厚さを有する。
【0110】
一実施形態では、バリア層は、8μm~14μmの厚さを有する。
【0111】
可撓性多層フィルムは、シール層から最も遠い層である外層を含む。一実施形態では、可撓性多層フィルムは、シール層と外層との間に配置された1つ以上の内層を含んでもよい。外層は、1つ以上のポリマー材料で構成され得る。外層に好適なポリマー材料の非限定的な例としては、積層用の二軸または単軸配向フィルムおよび共押出フィルムを作製するのに使用されるものが挙げられる。外層の非限定的なポリマー材料としては、二軸配向ポリエチレンテレフタレート(OPET)、単軸配向ナイロン(MON)、二軸配向ナイロン(BON)、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)、および二軸または単軸配向ポリエチレン(BOPEおよびMDO PE)が挙げられる。構造上の利益のためのフィルム層を構築するのに有用な他のポリマー材料は、ポリプロピレン(例えばプロピレンホモポリマー、ランダムプロピレンコポリマー、プロピレンインパクトコポリマー、熱可塑性ポリプロピレン(TPO)など、プロピレン系プラストマー(例えば、VER-SIFY(商標)またはVISTAMAX(商標))、ポリアミド(例えばナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,66、ナイロン6,12、ナイロン12など)、ポリエチレンノルボルネン、環状オレフィンコポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、コポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート(PET))、セルロースエステル、ポリエチレンおよびエチレンのコポリマー(例えば、DOWLEX(商標)などのエチレンオクテンコポリマーをベースとするLLDPE)、それらのブレンド、ならびにそれらの多層の組み合わせである。
【0112】
外層は、1μm~20μm、2μm~18μm、3μm~16μm、4~14μm、5μm~12μm、6μm~10μm、7μm~11μm、8μm~12μm、9μm~12μm、10μm~13μm、および11μm~14μm、および12μm~15μmの厚さを有する。
【0113】
一実施形態では、外層の厚さは12μm~15μmである。
【0114】
可撓性多層フィルムは、構造的統合性に寄与するか、または特定の特性を提供し得る追加の層を含んでもよい。追加の層は、直接的手段(例えば、共押出)によって、または隣接するポリマー層に対する適切な結合層を使用することによって追加されてもよい。剛性、堅牢性、または乳白度等の追加の性能利益を提供し得るポリマー、ならびに気体バリア特性または化学物質耐性を提供し得るポリマーが、この構造に追加されてもよい。
【0115】
本発明の可撓性多層フィルムは、3つ、または4つ、または5つ、6つの、または7つ、または8つ、または9つ、または10つ、または11つ、またはそれ以上の層を有する。本発明の多層可撓性フィルムの層構造の非限定的な例を以下に提供し、ここで、「/」は層界面を表す:
シール/裏当て/結合/バリア/結合/外層、
シール/裏当て/結合/バリア/結合/バリア/結合/外層、
シール/裏当て/結合/バリア/バリア/結合/外層、
シール/裏当て/結合/バリア/バリア/結合/外層、
シール/裏当て/結合/バリア/結合/バリア/バリア/結合/外層、および
シール/裏当て/結合/バリア/結合/内層/外層
【0116】
本開示は、別の可撓性多層フィルムを提供する。一実施形態では、可撓性多層フィルムは、少なくとも3つの層を有する。可撓性多層フィルムは、シール層および裏当て層を含む。シール層は、アイオノマーを含む。裏当て層は、シール層と直接接触する。裏当て層は、(i)1.2超の分子量コモノマー分布指数(「MWCDI」)値、および(ii)次の式:I10/I2≧7.0-1.2xlog(I2)を満たすメルトインデックス比(I10/I2)を有する、少なくとも1つのエチレン系ポリマーを含む第1のエチレン組成物(以下「第1の組成物1」と称される)を含む。
【0117】
可撓性多層フィルムは、本明細書で既に開示された任意の可撓性多層フィルムの層構造/組成を有し、裏当て層に、単独で、またはエチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーと組み合わせて第1の組成物1を含む。
【0118】
第1の組成物1は、2つのエチレン-オクテンコポリマーを含有する。第1の組成物1は、溶液重合を介して、2018年6月27日に出願された国際特許公開第WO2019/005930号に従って二重直列ループ反応器システム内で調製され、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0119】
一実施形態では、第1の組成物1は、次の特性のうちの1つ、いくつか、またはすべてを含む:
(i)0.910g/cc~0.920g/ccの密度、および/または
(ii)0.5g/10分~1.0g/10分のI2、および/または
(iii)8.0~8.5のI10/I2、および/または
(iv)2.5~3.0のMWCDI。
【0120】
一実施形態では、第1の組成物1は、以下の表Aの特性を有する。
【表2】
【0121】
一実施形態では、可撓性多層フィルムは、金属アイオノマーで構成されるシール層、およびシール層と直接接触する裏当て層を含み、裏当て層は、第1の組成物1で構成される。可撓性多層フィルムは、裏当て層と直接接触する結合層を含む。結合層は、本明細書で既に開示された任意の結合層であり得る。可撓性多層フィルムは、結合層と直接接触するバリア層を含む。バリア層は、本明細書で既に開示された任意のバリア層であり得る。シール層、裏当て層、結合層、およびバリア層は、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーで構成される裏当て層を有する可撓性多層フィルムについて、本明細書で既に開示されたものと同じそれぞれの厚さを有する。
【0122】
一実施形態では、裏当て層は、唯一のポリマー材料、すなわち第1の組成物1で構成される。
【0123】
2.可撓性パウチ
本開示は、可撓性パウチを提供する。一実施形態では、可撓性パウチは、共通周辺縁部を規定するように互いに重ね合わされた対向する可撓性多層フィルムを含む。各可撓性多層フィルムは、少なくとも3つの層を有する。各可撓性多層フィルムは、シール層および裏当て層を含む。シール層は、アイオノマーを含む。裏当て層は、シール層と直接接触する。裏当て層は、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーおよび/または第1の組成物1を含む。可撓性パウチは、共通周辺縁部の少なくとも一部分に沿って延伸する周辺シールを含む。周辺シールは、格納区画を有する、閉鎖された可撓性パウチを形成する。
【0124】
各可撓性多層フィルムは、本明細書で既に開示された任意の可撓性多層可撓性フィルムである(すなわち、アイオノマーシール層ならびにエチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーおよび/または第1の組成物1の裏当て層を有する少なくとも3つの層を有する多層フィルム)。各可撓性多層フィルムの構造および組成は、同じであっても異なっていてもよい。対向する可撓性多層フィルムは、互いに重ね合わされた2つの別個のまたは2つの個々のフィルムであり得る。あるいは、対向する可撓性多層フィルムは、同じフィルムまたは単一フィルムの2つの異なる一部分であり、単一フィルムは、単一フィルムの一部分が互いに対向するように折り畳まれ、シール層が互いに対向する。
【0125】
対向する可撓性多層フィルムは、互いに重ね合わされ、共通周辺縁部を形成する。共通周辺縁部は、可撓性パウチの周囲形状を規定する。可撓性パウチの周囲形状は、多角形(例えば三角形、正方形、長方形、菱形、五角形、六角形、七角形、八角形など)または長円形(例えば卵形、楕円形、または円形)であり得る。
【0126】
周辺シールは、共通周辺縁部の少なくとも一部分に沿って延伸し、可撓性パウチ内の貯蔵区画を形成する。一実施形態では、周辺シールは、共通周辺縁部全体に沿って延伸する。周辺シールは、可撓性パウチ内の貯蔵区画を形成する。
【0127】
周辺シールは、可撓性多層フィルムを可撓性多層フィルムにシールするか、そうでなければ接着する。周辺シールは、超音波シール、熱シール、接着剤シール、およびそれらの組み合わせによって形成される。周辺シールは、互いに直接接触する、各可撓性多層フィルムの対向するシール層(対向するアイオノマー層)を含む。
【0128】
一実施形態では、周辺シールは、熱シールの手順によって形成される。本明細書で使用される場合、「熱シーリング」という用語は、フィルムの対向する内面(シール層)を接触させ、融解させ、熱シールを形成するか、または溶着してフィルムが互いに付着するように、対向する熱シールバーの間にポリマー材料の2つ以上のフィルムを配置し、フィルムを挟持している熱シールバーを互いに向かって移動させ、熱および圧力をフィルムに適用する動作である。熱シーリングは、熱シーリング手順を実施するために、シールバーを互いに向かって、かつ互いに離して動かすのに好適な構造および機構を含む。
【0129】
周辺シールは、9N/25.4mm~25N/25.4mm、または12N/25.4mm~20N/25.4mmのシール強度を有する。
【0130】
対向するシール層は、コロナ処理して、内部にパッケージ化された食料品への湿潤性および接着性を向上させることもできる。
【0131】
一実施形態では、可撓性パウチは、貯蔵区画内に食料品を含む。食料品は、対向するシール層(アイオノマー)のうちの1つまたは両方と直接接触する。食料品は、固体物質および/または液体物質であり得る。好適な液体食料品の非限定的な例としては、ソース、調味料(ケチャップ、マスタード、マヨネーズ)、バター、およびベビーフードが挙げられる。好適な固体食料品の非限定的な例としては、粉末、穀物、肉、粒状固体、動物飼料、およびペットフード、調理ハム、保存肉などが挙げられる。
【0132】
出願人は、予期せずに、(i)エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマー(および/または第1の組成物1)である単一のポリマー(ポリマーブレンドではない)で構成される裏当て層(ii)直接接触する(iii)金属アイオノマー(および特に、亜鉛アイオノマー)であるシール層の組み合わせは、結果的に、調理プロセス中の漏れまたは損傷を防ぐための周辺シールの、シール強度を増加させることを見出した。シール強度の増加は、より薄い裏当て層(エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーおよび/もしくは第1の組成物1)、ならびに/またはより薄いシール層(アイオノマー)を有する多層フィルムの作製を有利に可能にする。
【0133】
例としてであって、これらに限定されるものではないが、ここで、本開示のいくつかの実施形態について、以下の実施例で詳細に説明する。
【実施例】
【0134】
実施例において使用される材料は、下の表2に提供する。
【表3-1】
【表3-2】
【0135】
実施例1-フィルム1の調製
Dr.Colinブローフィルム共押出機を、7層ラインおよび直径60mmのダイとともに使用して、表3に記載されている7層フィルムを作製した。ブローフィルム共押出機は、2.5のブローアップ比を有する。その後、PET外層を7層の上部フィルムに積層する。上部フィルムは、接着剤層を介してPET外層に積層される。PET外層は、12ミクロンの厚さである。接着剤層は、3ミクロンの厚さであり、Morfree 980/CR 137で作製される。
【0136】
フィルム1(PET積層なしの上部フィルム)の組成および構造を以下の表3に示す。
【表4】
【0137】
実施例2-フィルム2の調製
Dr.Colinブローフィルム共押出機を、7層ラインおよび直径60mmのダイとともに使用して、表4に示す7層フィルムを作製した。ブローフィルム共押出機は、2.5のブローアップ比を有する。
【0138】
フィルム2(底部フィルム)の組成および構造を以下の表4に示す。
【表5】
【0139】
実施例3-パウチの作製
調理の用途ためのパウチを、熱成形パッケージライン、および多層可撓性フィルムがバーに粘着するのを防ぐためにテフロンテープにより覆われた150mmx5mmのフラットシールバーを備える、HSG-C Bruggerシーラーを使用して作製する。可撓性パウチを、共通周辺縁部を規定するように互いに対向する関係に配置した、1つの上部フィルム(表3から)および1つの底部フィルム(表4から)を用いて作製し、上部フィルムおよび底部フィルムを次のペアで接合した:
比較1a/比較1b--パウチの比較2Aおよび比較2Bを形成するため;
比較2a/比較2b--パウチの比較3Aおよび比較3Bを形成するため;
本発明1a/本発明1b--本発明のパウチの本発明2Aおよび本発明2Bを形成するため;および
本発明2a/本発明2b--本発明のパウチの本発明3Aおよび本発明3Bを形成するため。
【0140】
各可撓性パウチを、各フィルムのシール層が互いに直接接触するように、上部フィルムおよび底部フィルムを互いにシールすることによって作製する。HSG-C Bruggerシーラー(バーへのフィルムの粘着を防ぐためのテフロンテープにより覆われた150mmx5mmのフラットシールバーを備える)を使用して、上部/底部フィルムの共通周辺縁部に沿って熱シールを形成する。パウチを、140℃~200℃の熱シール温度、ならびに210psiおよび420psiの熱シール圧力の範囲にわたって試験した。熱シールの滞留時間は0.5秒である。シールされたフィルムを、ASTM F88に記載されている条件に従って、25.4mmの幅に切断し、universal testing machineで引っ張った。シールの強度試験の結果を以下の表5に示す。
【表6】
【0141】
底部フィルムに厚いシール層(30μm)を有する、比較の可撓性パウチである比較2Aおよび比較2Bは、本発明の可撓性パウチ、本発明2Aおよび本発明3Bと比較した場合、すべての熱シール条件でより弱いシール強度を示す。各本発明の可撓性パウチ(本発明2A、2B、3A、3B)は、比較2Aの底部フィルムの30μmアイオノマーフィルム層と比較して、底部フィルムにより薄いアイオノマー層(15μm)を有する。
【0142】
本発明2A/3Aはそれぞれ、裏当て層としてAttane(商標)4203を有する可撓性パウチの比較3Aと比較した場合、すべての熱シール条件でより強いシール強度を示す。
【0143】
出願人は、驚くべきことに、亜鉛アイオノマーシール層と直接接触する、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーまたは第1の組成物1である単一のポリマー材料で構成される裏当て層が、同じまたはより薄いアイオノマーシール層の厚さ(10~15μm)において、より厚いアイオノマーシール層および/または従来の裏当て層材料を有するフィルムと比較して、より高いシール強度(12~20N/25.4mm)を示すことを見出した。
【0144】
本開示は、本明細書に含まれる実施形態および例示に限定されず、実施形態の部分、および異なる実施形態の要素の組み合わせを含むこれらの実施形態の変更された形態を、以下の特許請求の範囲の範疇に該当するものとして含むことが、特に意図されている。
【手続補正書】
【提出日】2021-01-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つの層、アイオノマーを含むシール層であって、前記シールは表面層である、前記シール層と直接接触する裏当て層であって、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーを含む前記裏当て層、を含む、可撓性多層フィルム。
【請求項2】
前記アイオノマーが、金属アイオノマーである、請求項1に記載の可撓性多層フィルム。
【請求項3】
前記シール層が、1ミクロン~30ミクロンの厚さを有する、請求項1または2に記載の可撓性多層フィルム。
【請求項4】
前記エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーが、エチレンモノマーおよびC
4-C
8α-オレフィンコモノマーからなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の可撓性多層フィルム。
【請求項5】
前記裏当て層が、1ミクロン~30ミクロンの厚さを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の可撓性多層フィルム。
【請求項6】
前記裏当て層と直接接触する結合層を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の可撓性多層フィルム。
【請求項7】
前記結合層と直接接触するバリア層を含む、請求項6に記載の可撓性多層フィルム。
【請求項8】
前記バリア層が、エチレン/ビニルアセテートコポリマー、ポリ塩化ビニリデン、およびポリアミドからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーを含む、請求項7に記載の可撓性多層フィルム。
【請求項9】
可撓性パウチであって、対向する可撓性多層フィルムであって、前記可撓性多層フィルムが共通周辺縁部を規定し、少なくとも3つの層、アイオノマーを含むシール層であって、前記シールは表面層である、前記シール層と直接接触する裏当て層であって、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーを含む前記裏当て層、および前記共通周辺縁部の少なくとも一部分に沿って延伸する周辺シールであって、貯蔵区画を有する閉じた可撓性パウチを形成する前記周辺シール、を含む、各可撓性多層フィルムを含む、可撓性パウチ。
【請求項10】
前記周辺シールは、互いに直接接触する各可撓性多層フィルムの対向するシール層を含み、前記周辺シールが、ASTM F 88に従って測定した場合、9N/25.4mm~25N/25.4mmのシール強度を有する、請求項9に記載の可撓性パウチ。
【請求項11】
前記貯蔵区画内に食料品を含み、前記食料品が、前記対向するシール層と直接接触する、請求項9~10のいずれか一項に記載の可撓性パウチ。
【請求項12】
前記アイオノマーが、金属アイオノマーである、請求項9~11のいずれかに一項に記載の可撓性パウチ。
【請求項13】
前記エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーが、エチレンモノマーおよびC
4-C
8α-オレフィンコモノマーからなる、請求項9~12のいずれか一項に記載の可撓性パウチ。
【請求項14】
前記シール層が、8ミクロン~15ミクロンの厚さを有する、請求項9~13のいずれか一項に記載の可撓性パウチ。
【請求項15】
前記裏当て層が、1ミクロン~30ミクロンの厚さを有する、請求項9~14のいずれか一項に記載の可撓性パウチ。
【国際調査報告】