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特表2022-549386信号再送信のためのシステムおよび方法
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  • 特表-信号再送信のためのシステムおよび方法 図1A
  • 特表-信号再送信のためのシステムおよび方法 図1B
  • 特表-信号再送信のためのシステムおよび方法 図1C
  • 特表-信号再送信のためのシステムおよび方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-24
(54)【発明の名称】信号再送信のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/38 20060101AFI20221116BHJP
【FI】
G01S7/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543815
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(85)【翻訳文提出日】2022-04-11
(86)【国際出願番号】 IL2020051042
(87)【国際公開番号】W WO2021059274
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】269678
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(31)【優先権主張番号】63/080,840
(32)【優先日】2020-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/081,945
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519423194
【氏名又は名称】エルビット システムズ イーダブリュー アンド シギント-エリスラ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】アルシュ,ヘンリー ビクター
(72)【発明者】
【氏名】カンター,エラン
(72)【発明者】
【氏名】アントマン,メナヘム アビシェイ
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AH31
5J070AK29
5J070BH12
(57)【要約】
チャネライザ、信号効果プロセッサ、およびコントローラを含む、信号再送信のためのシステム。信号効果プロセッサは、複数のサブバンドプロセッサおよび加算器を含む。チャネライザは、第1のサンプリングレートを示すサンプリングされた中間周波数信号を受信する。チャネライザは、中間周波数信号のそれぞれのサブバンドに各々が関連付けられた複数のサブバンド信号を生成する。各サブバンド信号は、第1のサンプリングレートよりも低い第2のサンプリングレートを示す。少なくとも1つの選択されたサブバンドプロセッサの各々は、それぞれのサブバンド信号を受信し、それぞれのサブバンド信号に少なくとも1つの効果をもたらし、それぞれのサブバンド信号のサンプリングレートを第1のサンプリングレートまで増加させることにより、それぞれの影響を受けたサブバンド再送信信号を生成する。各選択されたサブバンドプロセッサは更に、それぞれの影響を受けたサブバンド再送信信号を加算器のそれぞれの入力に提供する。加算器は、影響を受けた広帯域再送信信号を生成するために入力を合算する。コントローラは、選択されたサブバンドプロセッサを選択し、少なくとも1つの効果の設定を制御する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号再送信のためのシステムであって、
第1のサンプリングレートを示すサンプリングされた中間周波数信号を受信するように構成されたチャネライザであって、前記サンプリングされた中間周波数信号のそれぞれのサブバンドに各々が関連付けられた複数のサブバンド信号を生成するように更に構成され、各サブバンド信号は、前記第1のサンプリングレートよりも低い第2のサンプリングレートを示す、チャネライザと、
前記チャネライザに結合され、複数のサブバンドプロセッサおよび加算器を含む信号効果プロセッサであって、少なくとも1つの選択されたサブバンドプロセッサの各々は、それぞれのサブバンド信号を受信し、前記それぞれのサブバンド信号に少なくとも1つの効果をもたらし、前記それぞれのサブバンド信号の前記サンプリングレートを前記第1のサンプリングレートまで増加させることにより、それぞれの影響を受けたサブバンド再送信信号を生成するように構成され、前記少なくとも1つの選択されたサブバンドプロセッサは更に、前記それぞれの影響を受けたサブバンド再送信信号を前記加算器のそれぞれの入力に提供するように構成され、前記加算器は、その入力を合算し、影響を受けた広帯域再送信信号を生成するように構成される、信号効果プロセッサと、
前記チャネライザおよび前記信号効果プロセッサに結合され、前記少なくとも1つの選択されたサブバンドプロセッサを選択し、前記少なくとも1つの効果の設定を制御するように構成されたコントローラと
を備えるシステム。
【請求項2】
前記サブバンドプロセッサの各々は、サブバンド信号効果プロセッサおよび補間器を含み、
サブバンド信号効果プロセッサは、前記それぞれのサブバンド信号に前記少なくとも1つのそれぞれの効果をもたらすように構成され、
前記補間器は、前記それぞれのサブバンド信号の前記サンプリングレートを前記第1のサンプリングレートまで増加させるように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記効果は、
周波数変調、
振幅変調、
位相変調、
ドップラー効果、および
遅延
の1つである、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記サブバンド信号効果プロセッサは、
前記サブバンド信号に遅延をもたらすように構成された遅延と、
前記遅延に結合され、前記周波数変調、位相変調、およびドップラー効果の少なくとも1つに対応する位相シフトをもたらすように構成された位相シフタと、
前記位相シフタに結合され、前記サブバンド信号の受信複素数値を直交形式から極形式に変換するように構成された直交極変換器と、
前記直交極変換器に結合され、前記サブバンド信号の振幅を増幅するように構成された増幅器と
を含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記チャネライザは、複数の周波数表現ベクトルを生成することによって前記複数のサブバンド信号を生成し、各周波数表現ベクトルは、複数のサブバンドを含み、それぞれの時間タグに関連付けられており、
連続する周波数表現ベクトルのk番目のエントリがサブバンド信号を定義する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記チャネライザは、
短時間高速フーリエ変換、
一般化スライド高速フーリエ変換、
スライディング離散フーリエ変換、および
デシメーションを用いる時間フィルタのバンク
の1つを用いることによって、前記複数のサブバンド信号を生成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
信号再送信のための方法であって、サンプリングされた受信中間周波数信号のそれぞれのサブバンドに各々が関連付けられた複数のサブバンド信号を決定する手順であって、前記サンプリングされた受信中間周波数信号は第1のサンプリングレートを示し、各サブバンド信号は、前記第1のサンプリングレートよりも低い第2のサンプリングレートを示す手順と、
対象となる少なくとも1つの選択されたサブバンドの各々について、前記それぞれのサブバンド信号に少なくとも1つの選択された効果をもたらすことにより、前記対象となる少なくとも1つのサブバンドの各々について影響を受けたサブバンド信号を生成する手順と、
少なくとも1つの影響を受けたサブバンド再送信信号を生成するために、各影響を受けたサブバンド信号のサンプルレートを前記第1のサンプリングレートまで増加させる手順と、
影響を受けた広帯域再送信信号を生成するために、全ての影響を受けたサブバンド再送信信号を合算する手順と
を備える方法。
【請求項8】
前記効果は、
周波数変調、
振幅変調、
位相変調、
ドップラー効果、および
遅延
の1つである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記複数のサブバンド信号を決定する手順の前に、前記受信したサンプリングされた広帯域中間周波数信号の各サンプルグループから複数の周波数表現ベクトルを決定する手順を含み、
連続する周波数表現ベクトルのk番目のエントリがサブバンド信号を定義する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の周波数表現ベクトルを決定する手順の前に、前記受信中間周波数信号を前記第1のサンプリングレートでサンプリングする手順を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記複数のサブバンド信号は、
短時間高速フーリエ変換、
一般化スライド高速フーリエ変換、
スライディング離散フーリエ変換、および
デシメーションを用いる時間フィルタのバンク
の1つを用いることによって決定される、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示される技術は、一般にトランシーバに関し、特に、再送信される信号に効果をもたらすための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
当技術分野において、デジタル無線周波数メモリ(DRFM)を用いてジャミング効果を有する信号を再送信することが知られている。一般に、DRFMが受信信号を記録し、ジャミングプロセッサがジャミング効果(たとえば遅延、振幅変調、位相変調、ドップラー効果)をもたらし、修正信号が発信源に向けて再送信される。信号がレーダ信号である場合、修正信号を受信するレーダは、DRFMを用いる物体(たとえば航空機)の位置およびドップラー周波数に関する誤ったインジケーションを生成することになる。DRFMシステムの欠点の1つは、そのようなシステムが、対象となる信号または複数の信号の帯域幅よりも広い帯域幅で動作する点である。言い換えると、当技術分野で知られているDRFMシステムは、対象となる信号を必ずしも含まない帯域で動作する。
【0003】
Wang Zongbo氏他の“Design and Application of DRFM System Based on Digital Channelized Reciever”と題された出版物は、ジャミング信号変調のために用いられるDRFMシステムに関する。Wang Zongbo氏他によるこのシステムにおいて、デジタルチャネライズド受信器は、アナログデジタル変換器(ADC)とメモリとの間に追加される。ADCサンプリング周波数は、受信信号の瞬時帯域幅に対応する。チャネライズド受信器は、受信信号の瞬時帯域幅をD個の均一なサブチャネルに分割し、各サブチャネルが帯域幅を均等にカバーする。またチャネライズド受信器は、送信周波数を設定するために用いられるチャネル数も提供する。受信信号はD個のチャネルにチャネル化されるため、データフロー速度はサンプリング周波数の1/Dである。fをサンプリング周波数とするとf/Dの変換速度を有する、各サブチャネルのそれぞれのデジタルアナログ変換器は、ジャミング変調信号をアナログ信号に変換する。変換信号は、そのサブチャネルによって決定されたそれぞれの送信周波数に従ってアップコンバートされる。
【0004】
“Wide Band Alias resolving digitally Channelized reciever and a Memory for Use Therewith”と題された、Wiegand氏の米国特許第6,473,474号は、各チャネル内の信号が個々に感知または変調されるように広周波数帯域をチャネルに分割するチャネライズド広帯域受信器に関する。Wiegand氏の出版物は、チャネル化およびフィルタリングを行うデジタル信号プロセッサ(DSP)とコンバータ(すなわちアナログデジタルおよびデジタルアナログ)との間で異なる動作クロックレートの問題に対処することに関する。そのために、Wiegand氏の出版物は、信号を複数のチャネルに分離するデマルチプレクサ、分離した信号をフィルタリングおよび位相シフトするフィルタ、およびフィルタ信号を合算する加算器を用いるDSPを提案する。
【発明の概要】
【0005】
開示される技術の目的は、信号再送信のための新規的な方法およびシステムを提供することである。開示される技術の態様によると、信号再送信のためのシステムが提供される。このシステムは、チャネライザ、信号効果プロセッサ、およびコントローラを含む。信号効果プロセッサは、チャネライザに結合される。コントローラは、チャネライザおよび信号効果プロセッサに結合される。信号効果プロセッサは、複数のサブバンドプロセッサおよび加算器を含む。チャネライザは、サンプリングされた中間周波数信号を受信するように構成される。サンプリングされた中間周波数信号は、第1のサンプリングレートを示す。チャネライザは更に、複数のサブバンド信号を生成するように構成される。各サブバンド信号は、サンプリングされた中間周波数信号のそれぞれのサブバンドに関連付けられる。各サブバンド信号は、第1のサンプリングレートよりも低い第2のサンプリングレートを示す。少なくとも1つの選択されたサブバンドプロセッサの各々は、それぞれのサブバンド信号を受信し、それぞれのサブバンド信号に少なくとも1つの効果をもたらし、それぞれのサブバンド信号のサンプリングレートを第1のサンプリングレートまで増加させることにより、それぞれの影響を受けたサブバンド再送信信号を生成するように構成される。少なくとも1つの選択されたサブバンドプロセッサの各々は更に、それぞれの影響を受けたサブバンド再送信信号を加算器のそれぞれの入力に提供するように構成される。加算器は、その入力を合算し、影響を受けた広帯域再送信信号を生成するように構成される。コントローラは、少なくとも1つの選択されたサブバンドプロセッサを選択し、少なくとも1つの効果の設定を制御するように構成される。
【0006】
開示される技術の他の態様によると、信号再送信のための方法が提供される。この方法は、サンプリングされた受信中間周波数信号のそれぞれのサブバンドに各々が関連付けられた複数のサブバンド信号を決定する手順を含む。サンプリングされた受信中間周波数信号は、第1のサンプリングレートを示す。各サブバンド信号は、第1のサンプリングレートよりも低い第2のサンプリングレートを示す。またこの方法は、対象となる少なくとも1つのサブバンドの各々について、それぞれのサブバンド信号に少なくとも1つの選択された効果をもたらすことにより、対象となる少なくとも1つのサブバンドの各々について影響を受けたサブバンド信号を生成する手順も含む。この方法は更に、少なくとも1つの影響を受けたサブバンド再送信信号を生成するために、各影響を受けたサブバンド信号のサンプリングレートを第1のサンプリングレートまで増加させる手順と、影響を受けた広帯域再送信信号を生成するために、全ての影響を受けたサブバンド再送信信号を合算する手順とを含む。
【0007】
開示される技術は、図面と共に示される以下の詳細な説明から、より完全に理解および認識される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】開示される技術の実施形態に従って構成され動作可能な信号再送信のためのシステムの概略図である。
図1B】開示される技術の実施形態に従って構成され動作可能な信号再送信のためのシステムの概略図である。
図1C】開示される技術の実施形態に従って構成され動作可能な信号再送信のためのシステムの概略図である。
図2】開示される技術の別の実施形態に従って動作可能な信号再送信のための方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
開示される技術は、受信帯域幅のスパース性を利用する信号再送信のためのシステムおよび方法を提供することによって、従来技術の欠点を克服する。言い換えると、受信帯域幅は疎らであるため、必ずしも受信帯域幅全体を処理する必要はなく、信号が存在する選択されたサブバンドのみを処理すればよい。開示される技術によると、広帯域受信IF信号がサンプリングされる。ただし、狭い(すなわち、受信広帯域IF信号の帯域幅と比較して狭い)帯域幅を示す、広帯域受信IF信号の選択されたサブバンドのみが処理される。その結果、処理要件(たとえば処理時間、電力消費)は、広帯域IF信号の帯域幅全体が処理される場合の処理要件と比較して低い。
【0010】
ここで、開示される技術の実施形態に従って構成され動作可能な、全体として100で参照される信号再送信のためのシステムの概略図である図1A図1B、および図1Cを参照する。一般に、システム100は、広帯域IF信号(たとえばレーダ信号または通信信号)を受信し、様々なジャミング効果(たとえば遅延、振幅変調、周波数変調)をもたらし、影響を受けた信号を再送信する。
【0011】
システム100は、アナログデジタル変換器(ADC)102、チャネライザ104、コントローラ105、信号効果プロセッサ106、およびデジタルアナログ変換器(DAC)108を含む。信号効果プロセッサ106は、複数のサブバンド信号効果プロセッサ110、110、・・・、110および加算器112を含む。サブバンドプロセッサ110、110、・・・、110の各々は、それぞれのサブバンド信号効果プロセッサ114、114、・・・、114およびそれぞれの補間器116、116、・・・、116を含む。
【0012】
サブバンド信号効果プロセッサ114、114、・・・、114の各々の入力は、チャネライザ104の出力に結合され、サブバンド信号効果プロセッサ114、114、・・・、114の各々の出力は、それぞれの補間器116、116、・・・、116の入力に結合される。補間器116、116、・・・、116の出力は、加算器112の入力に結合される。チャネライザ104の入力は、ADC102の出力に結合される。加算器112の出力は、DAC108の入力に結合される。コントローラ105は、チャネライザ104および信号効果プロセッサ106に結合される。
【0013】
ADC102は、RFフロントエンド(不図示)から広帯域IF信号を受信し、サンプリング定理および追加のシステム要件および制約(たとえば保護帯域、システムクロック周波数、サンプラの利用可能性など)によって定められたように、それぞれのサンプリングレートで受信広帯域IF信号をサンプリングする。ADC102は、サンプリングされた広帯域IF信号122を生成する。ADC102は、サンプリングされた広帯域IF信号120をチャネライザ104に提供する。図1Bを参照すると、チャネライザ104は、サンプリングされた広帯域IF信号122のスペクトログラム124を生成する。スペクトログラム124は、連続または有限であってよい。スペクトログラム124を生成するために、チャネライザ104は、N個のサンプルの各グループの周波数表現を(たとえば高速フーリエ変換、FFTアルゴリズムを用いて)決定し、連続するサンプルグループ122、122、122、・・・、122、・・・(すなわちN個のサンプルの各々)は、重複するサンプルを含む(すなわち、サンプルグループ122における最初のv個のサンプルは、サンプルグループ122i-1における最後のv個のサンプルであり、vは数を表す)。言い換えると、vは、2つの連続フレーム間で重複するサンプルの数である。N/v(すなわちN割るvの商)という用語は、本明細書において、「重なり因数」と称される。したがって、チャネライザ104は、複数の周波数表現ベクトルを生成し、そのような周波数表現ベクトルの各々は、N/2個の周波数ビン(N/2は、フーリエ変換の共役対称による)を含む。周波数ビンは、本明細書において、サブバンドとも称される。また、各周波数表現ベクトルは、それぞれの時間タグに関連付けられる。周波数表現ベクトル内の各エントリは、X の形式であり、kはサブバンドを表し、nは時間タグを表す(すなわち、上付き文字がビン番号に関連し、下付き文字が時間に関連する)。たとえば、チャネライザ104は、それぞれサンプルグループ122内の第1のインスタンスである周波数表現ベクトルX 、X 、X 、・・・、X N/2を生成する。チャネライザ104は、それぞれサンプルグループ122内の第2の時間インスタンスである周波数表現ベクトルX 、X 、X 、・・・、X N/2を生成する。留意すべき点として、周波数表現ベクトル内の各エントリは、(時間から周波数への変換の結果生じる)複素数である。言い換えると、スペクトログラムは、時間および周波数の関数、典型的には離散関数である。一般に、スペクトログラムは、短時間FFT(SFFT)、一般化スライドFFT、スライディング離散フーリエ変換(SDFT)を用いて、またはデシメーションを用いる時間フィルタのバンクによって決定される。
【0014】
チャネライザ104は、サブバンドプロセッサ110、110、・・・、110のそれぞれ1つに(すなわち、サブバンドプロセッサ110、110、・・・、110の選択された1つに)選択されたサブバンド信号を提供する。一般に、サブバンドプロセッサ110、110、・・・、110の数Mは、N/2以下である(すなわち、M≦N/2であり、N/2は周波数ビンの数である)。サブバンド信号は、連続する周波数表現ベクトルのk番目のエントリのストリームによって定義される。たとえば、スペクトログラム124におけるエントリX 、X 、X 、・・・、X 、・・・は、第1のサブバンド(すなわちサブバンド1)に関連付けられたサブバンド信号を定義し、スペクトログラム124におけるエントリX 、X 、X 、・・・、X 、・・・は、第2のサブバンド(すなわちサブバンド2)に関連付けられたサブバンド信号を定義する。したがって、各サブバンド信号は、IF信号の帯域幅のそれぞれk番目のサブバンドに関連付けられる。また、周波数表現ベクトル内の各エントリは複素数であるため、サブバンド信号の値もまた複素数である。各サブバンド信号のサンプルレートは、
【数1】
によって求められ、式中、SBSRは、サブバンド信号のサンプルレートであり、IFSRは、サンプリングされた広帯域IF信号122のサンプリングレートであり、重なり因数およびNは上記で説明される。周波数表現ベクトル内の各エントリはN個のサンプルのグループから決定されるため、式(1)における重なり因数が用いられ、サンプルの一部は、2つ以上のサブバンド信号によって用いられる。このように、各サブバンド信号のサンプルレートは、サンプリングされた広帯域IF信号のサンプルレートよりも低い。
【0015】
一般に、広帯域IF信号122の帯域幅の一部のみが対象の信号または複数の対象の信号を含む。よって、対象となるこれらの信号の帯域幅に対応するサブバンド信号のみが、サブバンド信号効果プロセッサ114、114、・・・、114のそれぞれ1つに提供される。言い換えると、IF信号の帯域幅の選択された部分(すなわち対象となるサブバンド)のみが処理される。M=N/2である特殊な例において、選択されたk番目のサブバンドに関連付けられた各サブバンド信号は、対応するk番目のサブバンド信号効果プロセッサに割り当てられ得る。一般に、サブバンド信号の選択およびそれぞれの信号効果プロセッサへの割当ては、コントローラ105によって制御される。コントローラ105は、受信IF信号の空間スパース性を利用する。たとえば、コントローラ105は、対象となるサブバンドに関連する事前情報を有してよい。代替または追加として、コントローラ105は、振幅が所定の閾値を超過するサブバンド信号のみを割り当ててよい。
【0016】
選択されたサブバンドプロセッサ110、110、・・・、110の各々において、それぞれのサブバンド信号効果プロセッサ114、114、・・・、114は、そこに提供された対応するサブバンド信号にそれぞれの選択された効果をもたらし、それぞれの影響を受けたサブバンド信号を生成する。これらの効果は、たとえば、遅延、振幅変調、位相変調、およびドップラー効果の1つ、またはその任意の組み合わせである。図1Cを参照すると、サブバンド信号プロセッサ110の典型的な実装が示される。サブバンドプロセッサ110は、補間器116およびミクサ144に結合されたサブバンド信号効果プロセッサ114を含む。サブバンド信号効果プロセッサ114は、遅延130(たとえば遅延線)、位相シフタ132、直交極変換器134、および増幅器136を含む。位相シフタ132は、ダイレクトデジタルシンセサイザ138およびミクサ140を含む。補間器116は、余弦ルックアップテーブル(LUT)142を含む。遅延130kおよびDDS138は、ミクサ140の入力に結合される。ミクサ140の出力は、直交極変換器134の入力に結合される。直交極変換器134の位相出力は、補間器116Kの入力に結合され、直交極変換器134の振幅出力は、振幅器136の入力に結合される。補間器116の出力および振幅器136の出力は、ミクサ144のそれぞれの入力に結合される。留意すべき点として、コントローラ105は、サブバンド信号効果プロセッサ114、114、・・・、114の各々によってもたらされる効果の設定(すなわち、遅延の持続時間、振幅変調のレベル、位相変調およびドップラーシフトの量)も制御する。
【0017】
遅延130は、サブバンド信号を受信し、サブバンド信号にそれぞれの遅延をもたらす。遅延130は、サブバンド信号が一定期間格納されるバッファメモリとして実装され得る。遅延130は、遅延サブバンド信号を位相シフタ132に提供する。位相シフタ132において、ミクサ140は、遅延サブバンド信号を選択されたデジタル合成信号と混合し、遅延サブバンド信号を周波数および/または位相変調する。周波数変調は、サブバンド信号にドップラーシフトをもたらすためにも用いられ得る。位相シフタ132は、周波数および/または位相変調信号を直交極変換器134に提供する。直交極変換器134は、受信したサブバンド信号の複素数値を直交形式(すなわちx+iy)から極形式(すなわち振幅および位相の値)に変換する。直交極変換器134は、位相値を補間器116kに提供し、振幅値を増幅器136kに提供する。増幅器136は、サブバンド信号の振幅(すなわち振幅変調)を増幅し、サブ信号の増幅振幅値をミクサ144に提供する。
【0018】
補間器116は、それぞれのサブバンド信号のサンプリング周波数をADC102のサンプリング周波数に再び増加させる。ここで、各サブバンド信号のサンプルレートは、サンプリングされた広帯域IF信号のサンプルレートの「重なり因数」/Nであることが思い出される。そのためには、連続する位相値ペア間の各差に関して、補間器116は、連続する位相値間の差に対応する周波数でN/「重なり因数」(すなわち、N割る重なり因数の商)個のサンプルを含むサンプリングされた正弦波を生成する。補間器116は、このサンプリングされた正弦波を生成するために、余弦LUT142を用いる。補間器116は、サンプリングされた正弦波をミクサ144に提供する。
【0019】
ミクサ144は、正弦波サンプルを増幅器136からの振幅値で乗算し、影響を受けたk番目のサブバンド再送信信号と称される、それぞれサブバンドkの影響を受けたサブバンド再送信信号を生成する。ミクサ144は、影響を受けたk番目のサブバンド再送信信号を加算器112のそれぞれの入力に提供する。加算器112は、それに応じて入力を合算する。したがって、加算器112は、関連するサブバンド信号効果プロセッサ114、114、・・・、114からの影響を受けたサブバンド再送信信号を合算し、影響を受けた広帯域再送信信号を生成する。
【0020】
上述したように、サブバンドプロセッサ110、110、・・・、110のうちの選択された1つは、そこに提供されたそれぞれのサブバンド信号を処理し、信号効果プロセッサ110、110、・・・、110の選択された各1つによって毎秒処理されるサンプルの数(サンプル処理レートとも称される)は、ADC102によって生成されるサンプリングされた広帯域IF信号122のサンプルレートに対しN/「重なり因数」だけ小さい。よって、信号効果プロセッサ106の処理要件(すなわち電力消費および処理速度)は、受信広帯域IF信号の帯域幅全てを処理する場合の処理要件と比べて低減される。また、加算器112は、サンプリングされた広帯域IF信号のサンプルレートで単一の信号を生成するので、DAC108を修正する必要も、各サブバンドにDACを用いる必要もない。言い換えると、開示される技術に係るシステムは、既存のシステムのADCおよびDACの動作レートに修正を加えることなく、既存のDRFMシステムに代わって用いられ得る。
【0021】
システム100は、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、または汎用コンピュータで個別の構成要素を用いて実装され得る。DSPまたは汎用コンピュータで実装される場合、システム100は、DSPまたは汎用コンピュータによって実行されるように構成された機械可読命令を格納するためのメモリを含む。
【0022】
ここで、開示される技術の他の実施形態に従って動作可能な信号再送信のための方法の概略図である図2を参照する。手順200において、受信広帯域IF信号は、それぞれのサンプリングレートでサンプリングされる。図1Aを参照すると、ADCが広帯域IF信号をサンプリングする。
【0023】
手順202において、連続するサンプルグループから複数の周波数表現ベクトルが決定され、各グループは、サンプリングされた広帯域IF信号のN個のサンプルを含む。これらの周波数表現ベクトルは、たとえばフーリエ変換を行うことによって決定される。一般に、これらの周波数表現ベクトルのエントリは複素数である。図1Aおよび図1Bを参照すると、チャネライザ104が、複数の周波数表現ベクトルを決定する。
【0024】
手順204において、周波数表現ベクトルから複数のサブバンド信号が決定される。各サブバンド信号は、連続する周波数表現ベクトルのk番目のエントリのストリームによって定義される。よって、各サブバンド信号は、IF信号の帯域幅のそれぞれk番目のサブバンドに関連付けられる。また、周波数表現ベクトル内の各エントリは複素数であるため、サブバンド信号の値もまた複素数である。さらに、各サブバンド信号のサンプルレートは、サンプリングされた広帯域IF信号の「重なり因数」/Nである(これらのエントリの各々がN個のサンプルのグループから決定されるため)。したがって、各サブバンド信号のサンプルレートは、サンプリングされた広帯域IF信号のサンプルレートよりも低い。図1Aおよび図1Bを参照すると、チャネライザ104は、各連続する周波数表現ベクトルのk番目のエントリX 、X 、X 、・・・、X 、・・・、からサブバンド信号を決定する。
【0025】
手順206において、対象となる少なくとも1つの選択されたサブバンドの各々について、それぞれのサブバンド信号に少なくとも1つの選択された効果がもたらされることにより、対象となる少なくとも1つのサブバンドの各々について影響を受けたサブバンド信号が生成される。この効果または複数の効果は、たとえば、遅延、振幅変調、位相変調、およびドップラー効果の少なくとも1つ、またはその任意の組み合わせである。各サブバンド信号にもたらされた効果または複数の効果は、他のサブバンド信号にもたらされた効果または複数の効果と同じである必要はない。たとえば、1つのサブバンド信号にもたらされた効果は遅延のみであるが、他のサブバンド信号にもたらされた効果は遅延およびドップラー効果であり、また他のサブバンド信号にもたらされた効果は、遅延、振幅変調、およびドップラー効果である。図1Aを参照すると、コントローラ105は、対象となる少なくとも1つの選択されたサブバンドに対応する信号効果プロセッサ110、110、・・・、110の1または複数を選択する。信号効果プロセッサ110、110、・・・、110の選択された1または複数は、それぞれのサブバンド信号にもたらされるそれぞれの効果をもたらす。
【0026】
手順208において、各影響を受けたサブバンド信号のサンプルレートは、それぞれの影響を受けたサブバンド再送信信号を生成するために、受信広帯域IF信号のサンプリングレートまで増加される。サンプルレートは、たとえば、各影響を受けたサブバンド信号について、対応する影響を受けたサブバンド信号の2つの連続するサンプル間の位相差に対応する周波数の正弦波のN/「重なり因数」個のサンプルを生成することによって増加される。図1Aを参照すると、補間器112が、各サブバンド信号のサンプリングレートを増加させる。
【0027】
手順210において、影響を受けた広帯域再送信信号を生成するために、全ての(すなわち1または複数の)影響を受けたサブバンド再送信信号が合算される。図1Aを参照すると、加算器112は、関連するサブバンド信号効果プロセッサ114、114、・・・、114からの影響を受けたサブバンド再送信信号を合算し、影響を受けた広帯域再送信信号を生成する。留意すべき点として、手順210は、複数の影響を受けたサブバンド再送信信号が生成された場合のみ行われる。
【0028】
当業者には理解されるように、開示される技術は、本明細書において具体的に図示および説明したものに限定されない。開示される技術の範囲は、以下に示す特許請求の範囲によってのみ定義される。
図1A
図1B
図1C
図2
【国際調査報告】