(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-25
(54)【発明の名称】JWA遺伝子および関連化合物の老化防止のための使用
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6883 20180101AFI20221117BHJP
A61K 31/454 20060101ALI20221117BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221117BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20221117BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20221117BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20221117BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20221117BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20221117BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20221117BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20221117BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20221117BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20221117BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20221117BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20221117BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20221117BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20221117BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20221117BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20221117BHJP
【FI】
C12Q1/6883 Z
A61K31/454 ZNA
A61P43/00
A61P39/06
A61P3/10
A61P3/06
A61P9/12
A61P9/10 101
A61P25/28
A61P25/16
A61P19/10
A61P19/08
A61P1/16
A23L33/10
G01N33/50 Z
G01N33/50 P
G01N33/68
G01N33/15 Z
C12N15/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575264
(86)(22)【出願日】2019-07-24
(85)【翻訳文提出日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 CN2019097393
(87)【国際公開番号】W WO2020252845
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】201910540728.6
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521550840
【氏名又は名称】シンシア・ファーマシューティカル・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジアンウェイ・ジョウ
(72)【発明者】
【氏名】ション・リ
(72)【発明者】
【氏名】イファン・ウェン
(72)【発明者】
【氏名】イェフェイ・フアン
(72)【発明者】
【氏名】ドンイン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】ジンウェン・リウ
(72)【発明者】
【氏名】ジン・シュ
(72)【発明者】
【氏名】アイピン・リ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B018
4B063
4C086
【Fターム(参考)】
2G045AA40
2G045CB01
4B018MD07
4B018ME10
4B018MF10
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ58
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS34
4B063QX01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC71
4C086GA02
4C086GA08
4C086GA09
4C086GA13
4C086GA14
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA36
4C086ZA42
4C086ZA45
4C086ZA75
4C086ZA96
4C086ZA97
4C086ZC33
4C086ZC35
4C086ZC41
4C086ZC52
(57)【要約】
JWA遺伝子および関連化合物の老化防止のための使用を提供する。JWA遺伝子のGenBank番号はAF070523である。JWA遺伝子、JWA蛋白質は、老化防止、老化関連疾患の治療、酸化防止、生体内安定状態の維持の標的として有用である。式Iの化合物は、老化防止、老化関連疾患の治療、酸化防止、生体内安定状態の維持のための製品の製造に用いられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GenBank番号がAF070523であるJWA遺伝子の使用であって、
老化防止製品の製造またはスクリーニング、あるいは老化関連疾患の治療製品の製造またはスクリーニング、あるいは酸化防止製品の製造またはスクリーニング、あるいは生体内安定状態の維持のための製品の製造またはスクリーニング、あるいは老化防止または老化関連疾患の治療または酸化防止または生体内安定状態の維持方法のスクリーニング、あるいは老化または老化関連疾患の診断製品のスクリーニング、あるいはJWA遺伝子アゴニストのスクリーニングであることを特徴とする、
JWA遺伝子の使用。
【請求項2】
JWA遺伝子によってコードされる、SEQ ID No:2に示す配列を有するJWA蛋白質の使用であって、
老化防止製品の製造またはスクリーニング、あるいは老化関連疾患の治療製品の製造またはスクリーニング、あるいは酸化防止製品の製造またはスクリーニング、あるいは生体内安定状態の維持のための製品の製造またはスクリーニング、あるいは老化防止または老化関連疾患の治療または酸化防止または生体内安定状態の維持方法のスクリーニング、あるいは老化または老化関連疾患の診断製品のスクリーニング、あるいはJWA蛋白質分解酵素阻害剤のスクリーニングであることを特徴とする、
JWA蛋白質の使用。
【請求項3】
式Iで表される化合物の使用であって、
【化1】
老化防止または老化関連疾患の治療または酸化防止または生体内安定状態の維持のための製品を製造することを特徴とする、式Iの化合物の使用。
【請求項4】
前記化合物の形態は、化合物または化合物の薬学的に許容される塩であることを特徴とする、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記薬学的に許容される塩は、塩酸、硫酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、リン酸、臭化水素酸、マレイン酸、フマル酸またはリンゴ酸と化合物とを反応させて得られる塩であることを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記化合物は、式Iの化合物の異性体または同族体であることを特徴とする、請求項3に記載の使用。
【請求項7】
前記製品は、製剤、チップ、試薬、キット、健康食品、医薬または医薬組成物であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記老化防止は、老化の遅延、寿命の延長、老化関連外観変化の改善を含み、前記生体内安定状態の維持は、生体内の酸化還元安定状態の維持、糖脂質代謝安定状態の維持、内分泌安定状態の維持を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記老化関連疾患は、高血圧、アテローム性動脈硬化症を含む老化関連心血管疾患、パーキンソン病、アルツハイマー病を含む神経変性疾患、骨粗鬆症、骨奇形を含む骨疾患、II型糖尿病、非アルコール性脂肪肝を含む慢性代謝性疾患を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記酸化防止は、スーパーオキシドディスムターゼSOD、カタラーゼCAT、グルタチオンペルオキシダーゼGSH-pxを含む生体内酸化防止因子の蓄積増加と、活性酸素ラジカルROS、スーパーオキシドアニオンO
2-、過酸化水素H
2O
2、ヒドロキシラジカルOH-を含む生体内酸化性物質の除去とを含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、JWA遺伝子の老化防止使用、およびJWA遺伝子を活性化することができる関連化合物の老化防止使用に関し、老化防止およびその関連疾患の医薬分野に属する。
【背景技術】
【0002】
老衰(ここで加齢や老化とも言う)は、複雑な生物学的過程であり、一般的に生体の生理的完全性が加齢とともに進行性に喪失し、最終的に生体機能の悪化して死亡に向かうことと定義され、不可逆的な現象である。高齢化は、世界的な注目を集めている重要な公衆衛生問題であり、世界的な医療衛生レベルの向上に伴い、人類の期待寿命は絶えず延長しており、世界も急速に高齢化社会に突入している。
【0003】
中国に限って言えば、高齢者は急速に発展しており、今世紀半ばまでに65歳以上の人口は4億人に達すると予測されている。年齢の増加に伴い、一連の老化関連疾患には、心血管疾患(高血圧、アテローム性動脈硬化症を含む)、神経変性疾患(例えばパーキンソン病、アルツハイマー病)、慢性代謝性疾患(例えばII型糖尿病、非アルコール性脂肪肝)、悪性腫瘍などの発病率と罹患率も上昇しつつある。そのため、有効な老化防止または老化関連疾患の医薬の探索や研究開発は、ヒトの健康な加齢を確保する重要な保障であり、すでに世界中の各国の政府と関連分野の科学者の広範な注目を集めている。
【0004】
JWA遺伝子は、ARL6IP5(GenBank AF070523、1998)としても知られており、本発明者である周建偉らにより初めてレチノイン酸誘導のヒト気管支上皮細胞分化モデルから見出され、クローン化され、長期的に焦点を絞って研究された新規な環境応答遺伝子(ストレス応答遺伝子)であり、それがコードする蛋白質は、細胞骨格結合蛋白質である。JWAは活発な生物学的機能を有し、正常な組織細胞内にJWA遺伝子の適度な発現が一般的であり、環境の物理化学的要素が細胞に作用すると、JWA遺伝子は急速に応答し、発現を増加し、酸化ストレスの抑制、DNA損傷の修復などの作用を発揮する(Nucleic Acids Res 2009,37(6):1936-1950;Free Radic Biol Med 2007,42(11):1704-1714)。
【0005】
本発明者らは、先行研究の中で、JWAが新しい癌抑制遺伝子であり、複数の下流ノード分子(下流調節因子)を調節することによって、腫瘍細胞の血管新生と転移を抑制し、アポトーシスを促進することができることを発見した。JWAポリペプチド(PJP1)をスクリーニングして得られ、さらにインテグリン(integrin)を標的とする特異的ポリペプチド(PJP1-RGD)を設計することによって、この標的ポリペプチド自体は、細胞や動物に明らかな毒性効果を持たないが、黒色腫や胃癌細胞などの担癌マウスの腫瘍成長をよく抑制でき、黒色腫転移を有効に阻止できることを発見した。同研究成果は、すでに中国で発明の特許が付与されており、その出願番号はCN201310178099.X、授権公告番号はCN103239710Bである。
【0006】
その後、本発明者らは、JWA遺伝子の研究成果をめぐって、中国で次々と発明の出願番号CN201610164491.2、および出願番号CN201610857409.4として出願してきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】CN201310178099.X
【特許文献2】CN201610164491.2
【特許文献3】CN201610857409.4
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Nucleic Acids Res 2009,37(6):1936-1950
【非特許文献2】Free Radic Biol Med 2007,42(11):1704-1714
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の主な目的は、従来技術の問題点を克服し、老化防止医薬の標的となるように、JWA遺伝子の老化防止のための使用を提案し、さらにJWA遺伝子を活性化して老化防止作用を発揮することができる関連化合物の老化防止の使用(老化防止使用)を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の課題を解決するための技術的解決手段は以下の実施形態の通りである。
【0011】
GenBank番号がAF070523であるJWA遺伝子の使用であって、老化防止製品の製造またはスクリーニング、あるいは老化関連疾患の治療製品の製造またはスクリーニング、あるいは酸化防止製品の製造またはスクリーニング、あるいは生体内安定状態の維持のための製品の製造またはスクリーニング、あるいは老化防止または老化関連疾患の治療または酸化防止または生体内安定状態の維持方法のスクリーニング、あるいは老化または老化関連疾患の診断製品のスクリーニング、あるいはJWA遺伝子アゴニストのスクリーニングであることを特徴とする、JWA遺伝子の使用。
【0012】
JWA遺伝子によってコードされる、SEQ ID No:2に示す配列を有するJWA蛋白質の使用であって、老化防止製品の製造またはスクリーニング、あるいは老化関連疾患の治療製品の製造またはスクリーニング、あるいは酸化防止製品の製造またはスクリーニング、あるいは生体内安定状態の維持のための製品の製造またはスクリーニング、あるいは老化防止または老化関連疾患の治療または酸化防止または生体内安定状態の維持方法のスクリーニング、あるいは老化または老化関連疾患の診断製品のスクリーニング、あるいはJWA蛋白質分解酵素阻害剤のスクリーニングであることを特徴とする、JWA蛋白質の使用。
【0013】
なお、上記使用には、JWA遺伝子の全長遺伝子または遺伝子断片、あるいはJWA蛋白質の全長蛋白質または蛋白質断片について、各種活性化(例えば転写活性化)や分解低減(例えばJWA蛋白質を分解する各種酵素の阻害)を行う技術的手段を用いることが含まれていてもよいと留意されたい。
【0014】
下記の式Iで表される化合物の使用であって、
【化1】
老化防止または老化関連疾患の治療または酸化防止または生体内安定状態の維持のための製品の製造であることを特徴とする、式Iの化合物の使用。
【0015】
前記化合物の形態は、化合物または化合物の薬学的に許容される塩であることが好ましい。前記薬学的に許容される塩は、塩酸、硫酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、リン酸、臭化水素酸、マレイン酸、フマル酸またはリンゴ酸と反応して形成される塩である。
【0016】
好ましくは、前記化合物は、式Iの化合物の異性体または同族体である。
【0017】
好ましくは、前記製品は、製剤、チップ、試薬、キット、健康食品、医薬または医薬組成物である。
【0018】
好ましくは、前記老化防止は、老化の遅延、寿命の延長、老化関連外観変化の改善を含み、前記生体内安定状態の維持は、生体内の酸化還元安定状態の維持、糖脂質代謝安定状態の維持、内分泌安定状態の維持を含む。
【0019】
好ましくは、前記老化関連疾患は、老化関連心血管疾患(高血圧、アテローム性動脈硬化症を含む)、神経変性疾患(パーキンソン病、アルツハイマー病を含む)、骨疾患(骨粗鬆症、骨奇形を含む)、慢性代謝性疾患(II型糖尿病、非アルコール性脂肪肝を含む)が挙げられる。
【0020】
好ましくは、前記酸化防止は、生体内酸化防止因子の蓄積増加と、生体内酸化性物質の除去とを含む。前記生体内酸化防止因子は、スーパーオキシドディスムターゼSOD、カタラーゼCAT、グルタチオンペルオキシダーゼGSH-pxが挙げられ、前記生体内酸化性物質は、活性酸素ラジカルROS、スーパーオキシドアニオンO2-、過酸化水素H2O2、ヒドロキシラジカルOH-が挙げられる。
【0021】
実際の研究において、本発明者らは、JWA遺伝子と老化との間の密接な関連性を初めて発見し、実証した。JWA遺伝子は、一新して老化防止、老化関連疾患の治療、酸化防止、生体内安定状態の維持のための新たな標的となることができる。
【0022】
現在、世界中において、生体内JWAの発現を活性化することによって老化防止作用を発揮する小分子化合物はまだ報告されておらず、JWA分子標的に基づき老化防止医薬を開発することは非常に良い応用価値がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る実施例1において異なる週齢別のマウス肝臓および脾臓の組織においてJWA蛋白質の発現レベルを示す図であり、GAPDHはロードコントロールとする内部標準蛋白質である。
【
図2】本発明に係る実施例1において異なる週齢別のマウス肝臓および脾臓の組織においてJWA蛋白質の発現レベルを示す図であり、GAPDHはロードコントロールとする内部標準蛋白質である。
【
図3】本発明に係る実施例1において異なる週齢別のマウス肝臓および脾臓の組織においてJWA蛋白質の発現レベルを示す図であり、GAPDHはロードコントロールとする内部標準蛋白質である。
【
図4】本発明に係る実施例2においてJWA
-/-マウスおよび野生型マウスの体重曲線、外観画像および生存曲線を示す図である。
【
図5】本発明に係る実施例2においてJWA
-/-マウスおよび野生型マウスの体重曲線、外観画像および生存曲線を示す図である。
【
図6】本発明に係る実施例2においてJWA
-/-マウスおよび野生型マウスの体重曲線、外観画像および生存曲線を示す図である。
【
図7】本発明に係る実施例3においてJWA
-/-マウスおよび野生型マウスの組織器官老化表現型の画像を示す図である。
【
図8】本発明に係る実施例3においてJWA
-/-マウスおよび野生型マウスの組織器官老化表現型の画像を示す図である。
【
図9】本発明に係る実施例3においてJWA
-/-マウスおよび野生型マウスの組織器官老化表現型の画像を示す図である。
【
図10】本発明に係る実施例3においてJWA
-/-マウスおよび野生型マウスの組織器官老化表現型の画像を示す図である。
【
図11】本発明に係る実施例4においてJWA遺伝子ノックアウトによる誘導の細胞老化に関する表現型の画像を示す図である。
【
図12】本発明に係る実施例4においてJWA遺伝子ノックアウトによる誘導の細胞老化に関する表現型の画像を示す図である。
【
図13】本発明に係る実施例4においてJWA遺伝子ノックアウトによる誘導の細胞老化に関する表現型の画像を示す図である。
【
図14】本発明に係る実施例4においてJWA遺伝子ノックアウトによる誘導の細胞老化に関する表現型の画像を示す図である。
【
図15】本発明に係る実施例4においてJWA遺伝子ノックアウトによる誘導の細胞老化に関する表現型の画像を示す図である。
【
図16】本発明に係る実施例4においてJWA遺伝子ノックアウトによる誘導の細胞老化に関する表現型の画像を示す図である。
【
図17】本発明に係る実施例4においてJWA遺伝子ノックアウトによる誘導の細胞老化に関する表現型の画像を示す図である。
【
図18】本発明に係る実施例5においてJWA遺伝子ノックアウトによる誘導のマウス肝細胞のDNAコピー数変化(コピー数多型)が増加した結果を示す図である。
【
図19】本発明に係る実施例5においてJWA遺伝子ノックアウトによる誘導のマウス肝細胞のDNAコピー数変化(コピー数多型)が増加した結果を示す図である。
【
図20】本発明に係る実施例5においてJWA遺伝子ノックアウトによる誘導のマウス肝細胞のDNAコピー数変化(コピー数多型)が増加した結果を示す図である。
【
図21】本発明に係る実施例5においてJWA遺伝子ノックアウトによる誘導のマウス肝細胞のDNAコピー数変化(コピー数多型)が増加した結果を示す図である。
【
図22】本発明に係る実施例6においてJWA遺伝子ノックアウトよるマウスの基礎代謝低下の結果を示す図である。
【
図23】本発明に係る実施例6においてJWA遺伝子ノックアウトよるマウスの基礎代謝低下の結果を示す図である。
【
図24】本発明に係る実施例6においてJWA遺伝子ノックアウトよるマウスの基礎代謝低下の結果を示す図である。
【
図25】本発明に係る実施例6においてJWA遺伝子ノックアウトよるマウスの基礎代謝低下の結果を示す図である。
【
図26】本発明に係る実施例6においてJWA遺伝子ノックアウトよるマウスの基礎代謝低下の結果を示す図である。
【
図27】本発明に係る実施例6においてJWA遺伝子ノックアウトよるマウスの基礎代謝低下の結果を示す図である。
【
図28】本発明に係る実施例6においてJWA遺伝子ノックアウトよるマウスの基礎代謝低下の結果を示す図である。
【
図29】本発明に係る実施例7においてJWA遺伝子ノックアウトによるマウスの心血管機能変化の結果を示す図である。
【
図30】本発明に係る実施例7においてJWA遺伝子ノックアウトによるマウスの心血管機能変化の結果を示す図である。
【
図31】本発明に係る実施例7においてJWA遺伝子ノックアウトによるマウスの心血管機能変化の結果を示す図である。
【
図32】本発明に係る実施例7においてJWA遺伝子ノックアウトによるマウスの心血管機能変化の結果を示す図である。
【
図33】本発明に係る実施例7においてJWA遺伝子ノックアウトによるマウスの心血管機能変化の結果を示す図である。
【
図34】本発明に係る実施例7においてJWA遺伝子ノックアウトによるマウスの心血管機能変化の結果を示す図である。
【
図35】本発明に係る実施例8において既知のJWA遺伝子の転写開始点の上流2012bpのDNA配列を示す図である。
【
図36】本発明に係る実施例8において得られた、JWAプロモーター配列を含む標的pGL3-JWA-Neoベクターのマップを示す図である。
【
図37】本発明に係る実施例10において、異なる濃度の小分子化合物JAC-4でHBE細胞を処理してJWA蛋白質の発現の活性化によるのWestern Blot結果を示す図である。ここで、tubulinは内部標準蛋白質である。
【
図38】本発明に係る実施例11において特注飼料(カスタム飼料)中の小分子化合物JAC-4の含有量の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による検出結果を示す図である。
【
図39】本発明に係る実施例11において特注飼料(カスタム飼料)中の小分子化合物JAC-4の含有量の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による検出結果を示す図である。
【
図40】本発明に係る実施例11において特注飼料(カスタム飼料)中の小分子化合物JAC-4の含有量の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による検出結果を示す図である。
【
図41】本発明に係る実施例12において、特注飼料(JAC-4 1g/kg含有)と通常飼料を給餌したマウス(12月齢)の体重曲線を示す図である。
【
図42】本発明に係る実施例12において、特注飼料(JAC-4 1g/kg含有)と通常飼料を給餌したマウス(12月齢)の体重曲線を示す図である。
【
図43】本発明に係る実施例12において、特注飼料(JAC-4 1g/kg含有)と通常飼料を給餌したマウス(12月齢)の老化表現型のスコア曲線を示す図である。
【
図44】本発明に係る実施例12において、特注飼料(JAC-4 1g/kg含有)と通常飼料を給餌したマウス(12月齢)の老化表現型のスコア曲線を示す図である。
【
図45】本発明に係る実施例12において、特注飼料(JAC-4 1g/kg含有)と通常飼料を給餌したマウス(12月齢)との給餌前後の外観比較を示す図である。
【
図46】本発明に係る実施例13において、特注飼料(JAC-4 2g/kg含有)を給餌した自然老化マウス(24月齢)の肝臓および脾臓の組織におけるJWA蛋白質の発現の活性化によるWestern blotの結果を示す図である。ここで、GAPDHは内部標準蛋白質である。
【
図47】本発明に係る実施例13において、特注飼料(JAC-4 2g/kg含有)と通常飼料を給餌した自然老化マウス(24月齢)の肝臓、脾臓、腎臓のHE染色図を示す図である。ここで、肝臓のHE染色図における矢印は炎症性細胞浸潤を示す。
【
図48】本発明に係る実施例13において、特注飼料(JAC-4 2g/kg含有)を給餌した自然老化マウス(24月齢)の血清ブドウ糖とトリグリセリドのレベルの低下結果を示す図である。
【
図49】本発明に係る実施例13において、特注飼料(JAC-4 2g/kg含有)と通常飼料を給餌した自然老化マウス(24月齢)の肝臓PAS染色を示す図である。矢印はPAS染色陽性細胞を示し、グリコーゲン蓄積を示唆している。
【
図50】本発明に係る実施例13において、特注飼料(JAC-4 2g/kg含有)を給餌した自然老化マウス(24月齢)の肝臓におけるブドウ糖代謝関連律速酵素レベルの調整結果を示す図である。
【
図51】本発明に係る実施例13において、特注飼料(JAC-4 2g/kg含有)を給餌した自然老化マウス(24月齢)の肝臓におけるブドウ糖代謝関連AKT/GSK3βシグナル伝達経路および肝臓組織細胞膜ブドウ糖輸送蛋白質Glut 2の調節によるWestern blotの結果を示す図である。ここで、GAPDHは内部標準蛋白質である。
【
図52】本発明に係る実施例13において、特注飼料(JAC-4 2g/kg含有)を給餌した自然老化マウス(24月齢)の血清と肝臓におけるスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の蓄積の増加結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は上記の例に限定されない。使用方法は、特に断らない限り常法であり、使用する試薬や材料は特に断らない限り市販品である。JWA遺伝子のGenBank番号はAF070523であり、JWA遺伝子の配列はSEQ ID No:1に示す通りである。JWA蛋白質はJWA遺伝子によってコードされ、JWA蛋白質の配列はSEQ ID No:2に示す通りである。
【0025】
実施例1:マウス肝臓、脾臓組織におけるJWA発現は週齢の増加に伴う低下
本実施例は、週齢別マウス組織におけるJWAの発現レベルを検出し、JWA発現が週齢と相関しているかどうかを観察することを目的とする。
【0026】
週齢別(16週齢、19週齢、48週齢、96週齢を含む)のマウスを安楽死させ、肝臓、脾臓組織を-80℃で凍結保存した。プロテアーゼ阻害剤を添加した組織溶解液を用いて肝臓と脾臓組織の総蛋白質を抽出し、12.5%ポリアクリルアミドゲル電気泳動で総蛋白質を分離し、蛋白質分子量マーカー(Marker)の指示で20~25kDaのゲルを切り出し、ゲル上の蛋白質をPVDF膜に定電流湿式回転法で移し、マウス抗JWA抗体とHPRヤギ抗マウスIgG抗体JWA蛋白質をブロット(インプリント)し、HPR基質と化学発光計でJWA蛋白質の発現レベルを検出した。
【0027】
その結果、
図1~
図3に示すように、マウスの週齢の増加に伴って肝臓や脾臓組織でのJWA蛋白質の発現レベルが徐々に低下している。
【0028】
実施例2:JWA遺伝子ノックアウトマウスによる体重減少と寿命短縮
本実施例は、Cre-Loxp系で構築した全体のJWA遺伝子ノックアウトマウスを観察コホートに組み入れたものであり、コホート中927匹のマウスのうち、ホモ接合体(JWA
-/-)マウス215匹、野生型(JWA
+/+)マウス236匹、ヘテロ接合体(JWA
+/-)マウス476匹を長期観察したところ、約90.7%(195/215)のホモ接合体マウスと約4.2%(20/476)のヘテロ接合体マウスに明らかな老化表現型が認められた。
図4~
図6に示すように、生後4週目(初回検査)から、ホモ接合体マウスの体重は野生型マウスよりも有意に低くなり、寿命は野生型マウスよりも有意に低くなり、生存期間の中央値はわずかに5.8月(1.4~11.8月)であり、野生型マウスの寿命は約2.5年(30月)であった。
【0029】
実施例3:JWA遺伝子ノックアウト後のマウスの組織器官老化表現型
実施例2で述べたように、JWA遺伝子ノックアウトホモ接合体マウスでは、約90.7%に顕著な体重減少と寿命低下の老化表現型が認められた。生体組織器官は常に退化して老化し、最終的には生体全体の機能が失われ、死に向かっているが、本実施例では、6月齢のJWA遺伝子ノックアウトホモ接合型マウスおよび野生型マウスに対し、大まかな形態学的観察、組織切片のヘマトキシリン-エオシン(HE)染色、X線造影などの方法により、JWA遺伝子ノックアウトマウスに明らかな免疫器官萎縮、皮膚萎縮、骨格奇形、小腸粘膜上皮の絨毛と陰窩構造萎縮などの組織器官の老化表現型が認められ、その結果を
図7~
図10に示す。
【0030】
実施例4:JWA遺伝子ノックアウトによる誘導の細胞老化表現型
細胞老化は組織器官の老化の基礎であり、本実施例では、まず6月齢のJWA-/-マウスおよび野生型マウスの肝臓組織切片を老化指標β-ガラクトシダーゼ(SA-β-gal)で染色し、RT-PCR法により肝臓細胞の相対的テロメアの長さを検出した後、JWA-/-マウスおよび野生型マウスの胚線維芽細胞(MEFs)を抽出して体外で培養し、過酸化水素(H2O2)処理により細胞老化を誘導し、SA-β-gal染色により老化細胞を示し、細胞分裂周期の構成とアポトーシス細胞の割合をフローサイトメトリーにより検出し、細胞計数により継代過程に伴う細胞倍増比率(cell doubling rate、細胞倍増率)の変化を計算し、RT-PCR法により細胞継代に伴う老化関連遺伝子p21の発現変化を検出した。
【0031】
その結果、
図11~
図17に示すように、6月齢のJWA
-/-マウス肝臓切片SA-β-gal染色陽性細胞は野生型マウスよりも有意に多くなり(
図11)、JWA
-/-マウス肝細胞のテロメアの長さは野生型マウスよりも有意に短くなり(
図12)、JWA
-/-マウス由来のMEFs細胞はH
2O
2などで刺激された後、SA-β-gal陽性老化細胞は野生型MEFsよりも有意に増加しており(
図13)、継代数の増加に伴い、JWA
-/-マウス由来のMEFsのうち、SA-β-gal陽性老化細胞は野生型MEFsよりも有意に増加しており(
図14)、フローサイトメトリー解析の結果では、JWA
-/-マウス由来のMEFs細胞は分裂期(S期)の細胞数とアポトーシス細胞数が野生型由来のマウスよりも有意に少なくなり(
図15)、JWA
-/-MEFs細胞は細胞周期停止状態にあることが示唆され、これは細胞老化の主要なマーカーの一つであるため、継代が増加するにつれ、JWA
-/-MEFs細胞の倍増速度も野生型よりも有意に低くなり(
図16)、RT-PCRの結果では、JWA
-/-MEFsにおける老化関連遺伝子p21の発現も野生型よりも有意に低くなることが示された(
図17)。
【0032】
実施例5:JWA遺伝子ノックアウトマウスの肝臓染色体DNAコピー数変化の増加
DNAコピー数変化の増加も老化のマーカーの一つであり、本実施例では、肝臓における染色体DNAのコピー数変化を検出するために、比較ゲノムハイブリダイゼーションマイクロアレイ分析を用いたが、
図18~
図21に示すように、JWA
-/-マウスの肝臓におけるDNAのコピー数変化(挿入または欠失)は、野生型マウスよりも有意に多くなった。
【0033】
実施例6:JWA遺伝子ノックアウトがマウス基礎代謝過程を遅らせること
基礎代謝異常も老化のマーカーの一つであり、本実施例では6月齢のJWA-/-マウスおよび野生型マウスの代謝過程をTSE Phenomaster小動物代謝モニタリングシステムでモニタリングした。主なモニタリング指標は毎日の摂食量、毎日の飲水量、酸素吸入速度、二酸化炭素呼出速度、運動速度と熱産生速度などを含む。
【0034】
その結果、
図22~
図28に示すように、JWA
-/-マウスの基礎代謝率は、野生型マウスに比べて有意に低くなり、具体的には、毎日の摂食量(
図22)および毎日の飲水量(
図23)の低下、呼吸交換率(
図24)の低下、酸素吸入速度(
図25)および二酸化炭素呼出速度(
図26)の低下、運動速度(
図27)の有意な変化は見られなかったが、JWA
-/-マウスの熱産生速度(
図28)は、野生型マウスに比べて有意に低くなった。
【0035】
実施例7:JWA遺伝子ノックアウトによるマウスの心臓血管機能の変化
老化は慢性心血管疾患の主要な危険因子の一つであり、本実施例はBP-2000ラット及びマウスの非侵襲血圧モニターにより6月齢のマウスの血圧、脈拍などの指標を検出し、Vevo2100小動物の高周波カラー超音波システムによりマウスの心臓機能を検出する。
【0036】
その結果、
図29~
図34に示すように、心臓臓器体重比(心臓重量/体重)には有意な変化は見られなかったが(
図29)、JWA
-/-マウスの左心室重量は、野生型マウス(
図30)よりも有意に低く、JWA
-/-マウスの収縮期圧(
図31)および脈拍(
図32)の低下をもたらし、左心室駆出率(
図33)および短軸収縮指数(
図34)も代償性に増加した。
【0037】
実施例8:ネオマイシン耐性を持つ環境応答遺伝子のJWAプロモーターレポーター遺伝子プラスミドの構築
本実施例は、JWAプロモーターを有するレポーターベクタープラスミドを構築し、JWA遺伝子の発現を効率的に活性化する化合物の後続のスクリーニングに用いることを目的とする。
【0038】
ヒト由来のJWAプロモーター配列(
図35)から、まずRT-PCR法によりJWA転写開始部位より2012bp上流の断片を増幅し、KpnIとNheIの2つの制限酵素部位を用いてpGL3-Neoベクターにクローン配列を挿入し、プロモーター配列を含む目的ベクターを得た(
図36)。連結して得られた組換えベクターをEColi.(DH5α)大腸菌に形質転換し、さらに形質転換陽性クローン配列の正確性を配列決定により確認し、ネオマイシン耐性JWAプロモーターレポータープラスミドの構築に成功し、構築に成功したプラスミドと対応する菌株を-70℃で保存した。
【0039】
実施例9:JWAの特異的調節分子のスクリーニング
本実施例は、JWAプロモーターレポーター遺伝子実験により、化合物ライブラリーからJWA発現を有意に活性化する化合物をスクリーニングすることを目的とする。
【0040】
384ウェルプレートを用いて細胞播種を行い、ウェルあたり3000個の細胞を播種し、壁に付着した後にトランスフェクトした。プラスミドDNA(0.04μg)とウミシイタケルシフェラーゼphRL-tk(0.01μg)を4:1の割合で6.25μLの無血清無抗生物質のDMEMをA溶液として加え、均一に混合し、室温で5分間インキュベートした。1μLのlipofe2000トランスフェクション試薬を6.25μLの無血清無抗生物質のDMEMをB溶液として加え、均一に混合し、室温で5minインキュベートした。A溶液とB溶液(A+B:AにBを加える)を均一に混合し、室温で20minインキュベートした。384ウェルプレートから培養液を吸引し、PBSで2~3回洗浄し、血清あり抗生物質なしのDMEM25μLを加えた。インキュベーション時間が終了すると、AとBの混合液を加え、均一に振動し、細胞培養インキュベーターで培養し、24h後、培養液を廃棄し、完全なDMEMに置換した。化合物別に一定濃度で細胞を24h処理した。
【0041】
インキュベーション時間が終了したら、384細胞培養プレートを取り出し、18℃~22℃の室温まで試薬と細胞を平衡化し、培養液60μL/ウェルを吸引し(残りの培養液は20μL/ウェルにし)、そして等体積(20μL)の検出試薬を加え、室温で暗所で30分間振盪機上でインキュベートした。Promega社の二重レポーター遺伝子検出キット(Dual-Luciferase Reporter Assay kit)を用いてルシフェラーゼ活性を検出した。検出装置は、化学発光計(3010C化学発光モニター)であり、すべての実験は厳密に三重反復で平行に操作した(3平行)。
【0042】
蛍光値>x+3Sを基準にしてJWA発現を有意に活性化する化合物を選択し、本発明が提供する式Iの化合物は良好な用量-効果関係を有し、JAC-4と命名し、以下の実施例でさらに検討した。
【化2】
【0043】
実施例10:ヒト気管支上皮細胞(HBE)におけるJWA蛋白質の発現レベルに対する小分子化合物JAC-4の影響
本実施例は、細胞モデルによってスクリーニング結果の正確性を検証し、JAC-4がJWA蛋白質の発現を確実に向上させる役割を有意にすることを目的とする。
【0044】
対数増殖期にあるHBE細胞を常規消化し、5×105/ウェルで60mm細胞培養皿に均一に接種し、異なる用量の小分子化合物JAC-4で細胞を24hと48h処理した後、0.18mLのRIPA(0.5% PMSFを含む)細胞溶解液を加えて蛋白を採集し、12000×gで15分間遠心分離した後、上清を取って、蛋白濃度を検出し、蛋白質を加熱した。12.5%濃度のポリアクリルアミドゲルを選択して蛋白質を電気泳動を行い、各ウェルに70μgの蛋白質を加え、電気泳動条件は60Vで30min、90Vで1~1.5hを選択した。電気泳動終了後、半乾燥転写装置で行い、蛋白質をゲルからPVDF膜に転写した。転写後、5%スキムミルクは常温で1~2hブロックし、TBST(0.1% Tween20含有)で5minずつ3回洗浄し、そして対応する抗体を4℃で一晩インキュベートした。翌日、TBS(0.1% Tween20含有)で膜を5minずつ3回洗浄し、室温で二次抗体を1~2hインキュベートし、TBST(0.1% Tween20含有)で膜を5minずつ8回洗浄した。膜上にECL発光液を滴下し、露光した。
【0045】
実験結果は、
図37に示すように、JAC-4の濃度が1、10、100μmol/Lでそれぞれ24hおよび48hを処理し、HBE細胞におけるJWAの蛋白発現を活性化することができる。
【0046】
実施例11:小分子化合物JAC-4を含む実験動物飼料の特注
化合物JAC-4(純度>99%)をマウス標準飼料に等量混合し、具体的には、化合物1gを飼料基礎原料1gに均一に混合し、次いでこの混合物2gを飼料基礎原料2gに混合し、次いでこの混合物4gを飼料基礎原料4gに混合するようにして、最終的に小分子化合物JAC-4の含有量が1g/kgと2g/kgとの2種類の試験用混合飼料を得た。飼料メーカーの標準的な操作手順に従って顆粒状飼料を調製し、乾燥し、真空包装し、Co60源照射で滅菌し、特注飼料は専門メーカーに生産を委託した。JAC-4が設計要求通りに飼料中に均一に分布し、かつ加工中に化合物分子が破壊されていないかどうかを検証するために、滅菌後の製品飼料を無作為にサンプリングし、有機溶媒で十分に抽出した後、高速液体クロマトグラフィーにより飼料中の化合物JAC-4の含有量を検出し、分子が破壊されておらずに含有量の要求に達していることを確認した(
図38~
図40)。
【0047】
実施例12:JAC-4含有量1g/kgの特注飼料で12月齢マウスへの給餌
12月齢のマウスをSPF級バリアーシステムで飼育し、環境温度22±2℃、相対湿度40%~60%とし、昼夜周期12h/12hの交替環境を照明でシミュレートし、無菌酸性化水、通常飼料(JAC-4を含まない)または特注飼料(JAC-4を含む)を自由に摂取できるようにした。マウスの1匹あたりの平均体重20g、1日あたりの飼料摂食量が体重の10%すなわち2gとして計算し、マウスの1日あたりのJAC-4摂食量は約100mg/kg体重であった。給餌開始から2週間ごとに体重を量り、6週目から2週間ごとにマウスの老化外観(老化表現型)をスコアし、スコアが高いほど老化が顕著であることを示し、さらにマウスの外観の変化を比較するためにマウスを毎月に造影した。本実施例に係る動物実験は、実験動物の倫理要件を満たしている。
【0048】
その結果、
図41~
図42に示すように、22週目には、特注飼料を給餌したマウスの体重は、通常飼料を給餌したマウスよりもやや低かったが、統計学的な差はなかった。
図43~
図44に示すように、特注飼料を給餌したマウスの老化表現型スコアは、通常飼料を給餌したマウスよりも有意に低くなった。
図45に示すように、通常飼料を給餌したマウスでは明らかな脱毛現象が見られた。以上の結果は、JAC-4が顕著な老化遅延作用を有することを示唆している。
【0049】
実施例13:24月齢の自然老化マウスへの、JAC-4含有量2g/kgの特注飼料による給餌
マウス飼育環境は実施例12と同様であった。マウスの1匹あたりの平均体重20gに対し、1日当たりの飼料摂食量2gを摂取し、マウスの1日あたりの小分子化合物JAC-4摂食量は約200mg/kg体重であった。給餌10週間後、マウスを麻酔し、全血を採取して室温で30min静置し、3000rpmで15min遠心分離し、上清血清を分離し、日立7100全自動生化学分析器を用いて血清生化学分析を行った。マウスの肝臓、脾臓と腎臓の組織を氷上で分離し、4%パラホルムアルデヒドで固定し、または-80℃で凍結保存した。パラホルムアルデヒドで固定した組織を厚さ約5μmのパラフィン切片または凍結切片に作製し、HE染色により肝臓、脾臓と腎臓の形態学的および病理学的変化を観察した。オイルレッドO染色により肝臓中の脂肪沈着を観察した。PAS染色により肝臓中のグリコーゲンの蓄積を観察した。-80℃で肝臓組織を凍結保存して総蛋白質と細胞膜蛋白質をそれぞれに抽出し、脾臓組織から総蛋白質を抽出し、Western blot実験により、肝臓組織と脾臓組織中のJWA蛋白質の発現、肝臓組織中のp-AKT、AKT、p-GSK3βとGSK3β蛋白質の発現および肝臓組織細胞膜蛋白質中のブドウ糖輸送体(Glut2)の発現を検出した。南京建成公司(Nanjing Jiancheng Bioengineering Institute)製造の生化学キットを用いて肝臓組織中のスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、ブドウ糖と脂質代謝の主要な律速酵素のレベルを検出した。本実施例に係る動物実験は、実験動物の倫理要件を満たしている。
【0050】
実験結果が、
図46~
図52に示すように、JAC-4を含む特注飼料を給餌した後、老化マウスの肝臓と脾臓の組織中のJWA蛋白質の発現レベルは、有意に上昇した。JAC-4はマウス肝臓、腎臓と脾臓の形態学に異常な変化がないだけでなく、肝臓中心静脈周囲の加齢に関連する炎症細胞浸潤を有意に減少させた。JAC-4は自然老化マウスの血清ブドウ糖とトリグリセリドのレベルを有意に低下させ、肝臓のグリコーゲン合成を促進した。さらに実験結果により、JAC-4は、肝臓中のブドウ糖分解に関連する律速酵素とグリコーゲン合成酵素を増加し、細胞膜ブドウ糖輸送蛋白質(glucose transporter protein)Glut 2の発現を増加し、AKTリン酸化を活性化し、GSK3βを抑制してグリコーゲン合成を促進したことを示した。
【0051】
以上の実施例から、化合物JAC-4は、JWA遺伝子の発現を活性化することにより、老化の遅延、生体内安定状態の維持等の関連する機能的作用を達成することが示された。
【0052】
本発明は、上記実施形態以外にも他の実施形態も可能である。なお、いずれの等価置換または等価変換を採用して構成された技術案は、本発明の特許請求の範囲に属する。
【配列表】
【国際調査報告】