(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-25
(54)【発明の名称】噴射器堆積物を低減するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
F02M 37/32 20190101AFI20221117BHJP
【FI】
F02M37/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517935
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(85)【翻訳文提出日】2022-03-18
(86)【国際出願番号】 EP2020076525
(87)【国際公開番号】W WO2021058537
(87)【国際公開日】2021-04-01
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023685
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【氏名又は名称】新井 規之
(74)【代理人】
【識別番号】100220098
【氏名又は名称】宮脇 薫
(72)【発明者】
【氏名】ワードル,ロバート・ウィルフレッド・マシューズ
(72)【発明者】
【氏名】デン-ボエステルト,ヨハネス・レーンデルト・ウィレム・コルネリス
(72)【発明者】
【氏名】ラウンスウェイト,ニコラス・ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,ヒュー・ロイド
(57)【要約】
燃料組成物を燃料とする内燃エンジンにおける噴射器堆積物を低減するためのプロセスであって、燃料組成物を、燃料送達システム中に配置された金属選択膜と接触させることを含む、プロセス。そのような堆積物の減少は、燃料効率および燃料熱安定性の増加、エンジン清浄度の向上を提供し、燃費を改善し、かつ燃料組成物に使用する高価な洗浄剤の量を低減する可能性を与える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料組成物を燃料とする内燃エンジンにおける噴射器堆積物を低減するためのプロセスであって、前記燃料組成物を、前記内燃エンジン中に配置された噴射器から燃料タンクまで前記燃料組成物を供給するように構成された燃料送達システムの戻り経路中に配置された金属選択膜と接触させることを含む、プロセス。
【請求項2】
前記金属選択膜が、一般式:-Si(R)(R’)-O-による単位を含む高分子から選択され、式中、RおよびR’は、水素部分、ハロゲン部分、アルキル部分、アリール部分、シクロアルキル部分、およびアラルキル部分からなる群から選ばれる部分を表す、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記金属選択膜が、ポリジメチルシロキサン、ポリ(3,3,3)トリフルオロプロピルメチルシロキサン、およびそれらの混合物から選択される、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記金属選択膜が、ポリジメチルシロキサンである、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記金属が、遷移金属、ポスト遷移金属、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属、ならびにそれらの混合物から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記金属が、Zn、Cu、Fe、Na、K、Ca、およびMg、ならびにそれらの混合物から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記金属が、Zn、Cu、Ca、およびNa、ならびにそれらの混合物から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記金属が、Znである、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記エンジンが、ディーゼル、ガソリン、ジェット、ハイブリッド、およびLTC(低温燃焼)エンジンから選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
燃料組成物を燃料とする内燃エンジンにおける噴射器堆積物を低減するためのプロセスであって、前記燃料組成物を、燃料タンクに作用するように構成されたキドニーループ濾過システム中に配置された金属選択膜と接触させることを含む、プロセス。
【請求項11】
燃料組成物を燃料とする内燃エンジンにおける噴射器堆積物を低減するためのプロセスであって、前記燃料組成物を、前記内燃エンジン中に配置された噴射器から燃料フィルタまで前記燃料組成物を供給するように構成された燃料送達システムの戻り経路中に配置された金属選択膜と接触させることを含む、プロセス。
【請求項12】
燃料組成物を燃料とする内燃エンジンにおける噴射器堆積物を低減するためのプロセスであって、前記燃料組成物を、燃料タンクから噴射器まで前記燃料組成物を供給するように構成された燃料送達システムの低圧経路中に配置された金属選択膜と接触させることを含む、プロセス。
【請求項13】
前記噴射器堆積物が、内部ディーゼル噴射器堆積物(IDID)である、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃エンジン(ICE)における噴射器堆積物を低減するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン内の燃料の燃焼から生じる堆積物の蓄積は、さらなる燃焼の効率を低下させ、エンジンの寿命にわたって燃料の非効率的な使用につながる。ディーゼルエンジンの一般的な問題は、噴射器、特に噴射器本体および噴射器ノズルのファウリングである。噴射器ノズルのファウリングは、ディーゼル燃料からの堆積物でノズルが塞がれると発生する。堆積物は、噴射器の先端に発生することも知られている。流量の減少および動力損失につながる、ノズル穴および噴射器先端でのこれらの「外部」噴射器堆積物に加えて、堆積物は、噴射器本体内で発生し、さらなる問題を引き起こすことがある。これらの堆積物は、内部ディーゼル噴射器堆積物、またはIDIDと呼ばれることがある。IDIDには、ニードル弁座および噴射器内の上流の堆積物が含まれ、噴射器ノズル穴の堆積物は除外される。IDIDは、重要な可動部品の噴射器内部で発生する。IDIDは、燃料噴射のタイミングおよび量に影響を与えるこれらの部品の動きを妨げ、他の望ましくない影響を与える可能性がある。現代のディーゼルエンジンは非常に精密な条件下で動作するため、これらの堆積物は性能に大きな影響を及ぼす可能性がある。IDIDは、燃料調整および燃焼が最適ではないため、動力損失、エンジンの故障、ラフアイドル、および燃費の低下を含む、いくつかの問題を引き起こす可能性がある。最初に、ユーザは冷間始動の問題および/またはエンジン回転ムラを経験することがある。最終的に、これらの堆積物は、より深刻な噴射器の固着につながる可能性がある。これは、堆積物が噴射器の一部の動きを停止し、その後、噴射器が機能しなくなったときに発生する。1つ以上の噴射器が固着すると、エンジンが完全に故障することがある。
【0003】
燃料、より具体的には燃料組成物は、いくつかの微量金属を含有し得る。このような金属の含有量は、様々な要因によって異なり、例えば、燃料の原料である原油の供給源、採用される精製プロセスのタイプ、ならびに燃料の取り扱い、貯蔵、および配送の履歴などである。この一例は、車両の燃料送達システム内に配置された燃料タンク内の燃料組成物の貯蔵から生じる、金属汚染であり得る。別の例は、油で潤滑された高圧ポンプから生じる金属汚染であり得る。高圧ポンプの壁を覆う潤滑油は、亜鉛および/またはカルシウムなどの金属を含有し得ることが知られており、潤滑油は、高圧ポンプのシールを通過し、燃料送達システムの燃料経路内の燃料を汚染することがある。燃料技術の分野では、金属の存在が燃料の熱安定性に悪影響を及ぼすことが知られている。燃焼中、これは、例えば、燃料噴射器上にガム状の物質が形成される、ファウリング現象を引き起こすこととなる。したがって、燃料組成物の金属含有量を低減し、それによって車両の内燃エンジンに位置する噴射器内の堆積物の形成を低減することが望ましいであろう。
【0004】
炭化水素混合物から様々な金属を分離するために、ポリジメチルシロキサン膜などの膜を使用することが知られている。そのような用途は、米国特許第5,133,851号に記載されている。
【0005】
燃料精製に関連するナノ濾過の使用を説明する、より最近の特許出願は、US2005/119517Aである。
【0006】
米国特許出願第2006/0156620号には、堆積物の形成を低減するための方法が開示されている。この特許出願は、その後の堆積物の形成を低減するために、金属吸着または吸収材料で処理された、燃料組成物に言及している。それは、金属吸着または吸収材料が高分子吸着剤または吸収剤を含み得ることをさらに開示している。
【0007】
燃料管理システム内のキドニーループ構成にフィルタを位置決めすることが知られている。米国特許第9,388,777号は、キドニーループシステムが、タンクから燃料移送ポンプに燃料を供給するように構成されている、燃料管理システム用のキドニーループ濾過システムを開示している。不純物または汚染物質を除去するために、フィルタがポンプの下流に位置決めされている。
【発明の概要】
【0008】
本明細書で説明されるのは、燃料組成物を燃料とする内燃エンジンにおける噴射器堆積物、特に内部ディーゼル噴射器堆積物(IDID)を低減するためのプロセスであって、燃料組成物を、燃料送達システム内の様々な場所に配置した金属選択膜と接触させる、プロセスである。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、燃料組成物を燃料とする内燃エンジンにおける噴射器堆積物を低減するためのプロセスであって、燃料組成物を、内燃エンジン中に配置された噴射器から燃料タンクまで燃料組成物を供給するように構成された燃料送達システムの戻り経路中に配置された金属選択膜と接触させることを含む、プロセスが提供される。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、燃料組成物を燃料とする内燃エンジンにおける噴射器堆積物を低減するためのプロセスであって、燃料組成物を、燃料タンクに作用するように構成されたキドニーループ濾過システム中に配置された金属選択膜と接触させることを含む、プロセスが提供される。
【0011】
本発明の第3の態様によれば、燃料組成物を燃料とする内燃エンジンにおける噴射器堆積物を低減するためのプロセスであって、燃料組成物を、内燃エンジン中に配置された噴射器から燃料フィルタまで燃料組成物を供給するように構成された燃料送達システムの戻り経路中に配置された金属選択膜と接触させることを含む、プロセスが提供される。
【0012】
本発明の第4の態様によれば、燃料組成物を燃料とする内燃エンジンにおける噴射器堆積物を低減するためのプロセスであって、燃料組成物を、燃料タンクから噴射器まで燃料組成物を供給するように構成された燃料送達システムの低圧経路中に配置された金属選択膜と接触させることを含む、プロセスが提供される。
【0013】
本発明は、燃料組成物の金属含有量を低減する方法を提供し、内燃エンジン内の内部ディーゼル噴射器堆積物(IDID)などの噴射器堆積物を低減する。したがって、本発明はさらに、燃料効率の増加、燃料熱安定性の増加、エンジン清浄度の向上、改善された燃費を提供し、かつ燃料組成物に使用する高価な洗浄剤の量を低減する可能性を与える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】金属選択膜が、内燃エンジン中に配置された噴射器から燃料タンクまで燃料組成物を供給するように構成された戻り経路中に配置されている、燃料送達システムを示すブロック図である。
【
図2】金属選択膜が、キドニーループ構成中に配置されている、燃料送達システムを示すブロック図である。
【
図3】金属選択膜が、内燃エンジン中に配置された噴射器から燃料フィルタまで燃料組成物を供給するように構成された戻り経路中に配置されている、燃料送達システムを示すブロック図である。
【
図4】金属選択膜が、低圧経路中に配置されている、燃料送達システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の目的は、燃料組成物を燃料とする内燃エンジンにおける噴射器堆積物を低減するためのプロセスを提供することである。この目的は、非多孔質(細孔なし)またはナノ濾過(平均サイズが最大でも5nmの細孔)膜を使用して、燃料組成物から微量金属を除去することによって達成される。そのような非多孔質およびナノ濾過膜は、当技術分野では一般的に緻密膜と呼ばれ、膜障壁の溶解性および拡散性の側面に基づき、同様の方法で機能する。
【0016】
したがって、本発明のプロセスにおいて、微量金属は、膜が0.5~5nmの平均細孔径を有する、膜分離によって燃料組成物から除去される。好ましくは、本発明で使用される膜は、ガソリンまたはディーゼル燃料組成物に対して耐性がある。これは、膜が精製しなければならない燃料組成物に溶解しないことを意味する。
【0017】
本発明で使用される緻密膜は、高分子タイプのものであってもよい。好ましくは、処理される流れは、膜を通過することができるはずの炭化水素の流れであるゆえに、使用される膜は疎水性である。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、緻密膜は高分子膜である。そのような高分子膜は、好ましくは、燃料と接触するときに膜の溶解を回避するための必要なネットワークを提供するために、架橋される。一般に、架橋は、いくつかの方法で、例えば、架橋剤との反応(化学的架橋)および/または照射によって行うことができる。好ましくは、膜層は、例えば、WO-A-9627430に記載されているように、照射によって架橋されたシロキサン構造を有する。好適な、現在利用可能な架橋非多孔質またはナノ濾過膜の例は、架橋シリコーンゴムベースの膜であり、その中で、架橋ポリシロキサン膜は、膜のうちの特に有用な群である。そのような架橋ポリシロキサン膜は、当技術分野において、例えば、米国特許第5,102,551号から知られている。
【0019】
典型的には、使用されるポリシロキサンは、繰り返し単位-Si-O-を含有し、ケイ素原子は水素または炭化水素基を有する。
好ましくは、繰り返し単位は、式(I)であり、
-Si(R)(R’)-O- (I)
式中、RおよびR’は、同じであっても異なっていてもよく、水素、ハロゲン、またはアルキル基、アラルキル基、シクロアルキル基、アリール基、およびアルカリル基から選択される炭化水素基を表す。
【0020】
好ましくは、基RおよびR’のうちの少なくとも1つは、アルキル基であり、さらに好ましくは、両方の基は、アルキル基であり、最も好ましくは、メチル基である。アルキル基はまた、3,3,3-トリフルオロプロピル基を含み得る。
【0021】
緻密膜は、典型的には、少なくとも1つの、必要な機械的強度を提供するためのベース層として機能する多孔質基板層上に支持される。好適には、多孔質基板層は、細孔が5nmを超える平均サイズを有する多孔質材料から作製される。このような多孔質材料は、通常、精密濾過または限外濾過に使用される、ポリ(アクリロニトリル)などの、ミクロ多孔質、メソ多孔質、またはマクロ多孔質の材料であり得る。
【0022】
ベース層の厚さは、必要な機械的強度を提供するのに十分でなければならない。さらに、この基板は、必要な機械的強度を提供するために、さらなる多孔質支持体上で支持され得る。典型的には、ベース層の厚さは、100μm~250μm、好ましくは20μm~150μmである。非多孔質膜がそのようなベース層と組み合わされる場合、膜は、好ましくは0.5μm~10μm、より好ましくは1μm~5μmの厚さを有する。
【0023】
薄い上部膜層および厚い多孔質支持層の組み合わせは、多くの場合、複合膜または薄膜複合材料と呼ばれる。膜は、透過液が最初に膜の最上層を通り抜けて流れ、次にベース層を通り抜けて流れるように好適に配設され、その結果、膜上の圧力差が最上層をベース層に押し付ける。
【0024】
平均細孔径が5nmを超えるベース層に好適な多孔質材料は、ポリ(アクリロニトリル)、ポリ(アミドイミド)+TiO2、ポリ(エーテルイミド)、ポリフッ化ビニリデン、およびポリ(テトラフルオロエチレン)である。ポリ(アクリロニトリル)が特に好ましい。本発明で使用するための好ましい組み合わせは、ポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(アクリロニトリル)の組み合わせである。
【0025】
多孔質膜よりも非多孔質膜を使用する利点は、目詰まりの影響がないことである。これは、細孔に詰まったより大きな分子によって膜が塞がれる可能性がないことを意味する。これは、多孔質膜を使用する場合に起こる可能性があり、その結果、安定したフラックスを再生することが次第に困難になる。したがって、本発明の目的のために、非多孔質または緻密膜を使用することが好ましい。この用途に好適な膜のさらなる詳細は、米国特許出願第2010/0105959号において見ることができる。
【0026】
本発明に関連して本明細書全体を通して使用される「金属」または「微量金属」という用語は、遷移金属、ポスト遷移金属、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属、ならびにそれらの混合物から選択される金属を指す。
【0027】
一般に、膜分離によって燃料組成物から金属を除去するプロセスにおいて、Zn、Cu、Fe、Na、K、Ca、およびMg、ならびにそれらの混合物から好適に選択される微量金属を含有する燃料組成物を含む液体供給物は、膜によって、微量金属を含まない、または供給物中の金属濃度よりも低い濃度の微量金属を含む燃料組成物を含む透過液と、供給物中の金属濃度よりも高い濃度の金属を含有する燃料組成物を含む保持液とに分離される。
【0028】
本発明の別の実施形態では、除去される微量金属は、Zn、Cu、Na、Ca、およびそれらの混合物から選択される。
【0029】
本発明の特に好ましい実施形態では、除去される微量金属は、Znである。
【0030】
本発明は、本明細書に開示される微量金属の組み合わせを除去するために使用することができる。
【0031】
本発明は、燃料組成物を燃料とする内燃エンジンにおける噴射器堆積物を低減するためのプロセスを提供し、好ましくは、燃料組成物は、ガソリンまたはディーゼルを含む。
【0032】
本発明によるプロセスは、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン、ジェットエンジン、ハイブリッドエンジン、および低温燃焼(LTC)エンジンなどを含むが、これらに限定されない、様々なエンジンタイプに適用することができる。
【0033】
本明細書に記載のプロセスは、サプライチェーンの任意の時点でZnおよび/または他の金属を除去するために使用され得、これは、例えば、船、パイプライン、貯蔵トラック、および/もしくはタンク自動車による小売ステーションへの燃料の輸送の前または輸送中のいずれか、小売ステーションに配置された燃料タンク内、路上車両の燃料補給プロセス中、または本明細書に開示される任意の組み合わせに適用される、金属選択膜を備え得る。
【0034】
図1は、本開示の概念による、車両の燃料送達システム101の第1の構成のブロック図を示している。燃料送達システムは、燃料を保持する燃料タンク1、燃料を燃料フィルタ3に向けてポンプ圧送する低圧ポンプ2、燃料が高圧ポンプ4に到達する前に、燃料中に存在し得る大きな汚染物質を濾過して取り除く燃料フィルタ3、共通レール5を介して燃料を燃料噴射器6内にポンプ圧送する高圧ポンプ4、および燃料を内燃エンジン7内に噴射する燃料噴射器6を備え得る。あらゆる余分な燃料は、戻り経路8を介して輸送され、戻り経路8は、金属選択膜9を介して、燃料を供給し、金属選択膜9は燃料組成物から微量金属を除去する。次に、透過液は、燃料タンクに輸送し戻され、保持液は、廃棄物タンク10内に捕捉される。
【0035】
図2は、本開示の概念による、車両の燃料送達システム102の第2の構成のブロック図を示している。燃料送達システムは、燃料を保持する燃料タンク1、燃料を燃料フィルタ3に向けてポンプ圧送する低圧ポンプ2、燃料が高圧ポンプ4に到達する前に、燃料中に存在し得る大きな汚染物質を濾過して取り除く燃料フィルタ3、共通レール5を介して燃料を燃料噴射器6内にポンプ圧送する高圧ポンプ4、および燃料を内燃エンジン7内に噴射する燃料噴射器6を備え得る。あらゆる余分な燃料は戻り経路8を介して輸送され、戻り経路8は燃料を燃料フィルタ3に戻し、よって、燃料がシステム内に輸送され、戻される。同時に、燃料は、燃料タンク1からキドニーループ濾過システム11に移送することができ、キドニーループ濾過システム11は、キドニーループ濾過システム11を通して燃料を金属選択膜9にポンプ圧送する燃料ポンプ12を備え、金属選択膜9は、燃料から微量金属を除去する透過液は、燃料タンク1に輸送し戻され、一方、保持液は、廃棄物タンク10に収集され、その内容物は、車両の燃料補給時または定期的なメンテナンス中に処分することができる。
【0036】
図3は、本開示の概念による、車両の燃料送達システム103の第3の構成のブロック図を示している。燃料送達システムは、燃料を保持する燃料タンク1、燃料を燃料フィルタ3に向けてポンプ圧送する低圧ポンプ2、燃料が高圧ポンプ4に到達する前に、燃料内の大きな汚染物質を濾過して取り除く燃料フィルタ3、共通レール5を介して燃料を燃料噴射器6内にポンプ圧送する高圧ポンプ4、および燃料を内燃エンジン7内に噴射する燃料噴射器6を備え得る。あらゆる余分な燃料は、戻り経路8を介して輸送され、戻り経路8は、金属選択膜9を介して、燃料を供給し、金属選択膜9は燃料組成物から微量金属を除去する。次に、透過液は、燃料フィルタ3に輸送し戻され、保持液は、廃棄物タンク10内に捕捉される。
【0037】
図4は、本開示の概念による、車両の燃料送達システム104の第4の構成のブロック図を示している。燃料送達システムは、燃料を保持する燃料タンク1、燃料を燃料フィルタ3に向けてポンプ圧送する低圧ポンプ2、燃料が金属選択膜9に到達する前に、燃料内の大きな汚染物質を濾過して取り除く燃料フィルタ3、透過液を高圧ポンプ4に輸送する前に、燃料から金属汚染物質を取り除く金属選択膜9、および保持液が供給される廃棄物タンク10を備え得る。代替的に、燃料送達システムが高応力下にある状況では、弁13が閉じ、燃料の流れが、迂回経路14を通るように導かれ、金属選択膜を迂回し、燃料が燃料経路に輸送し戻る。高圧ポンプ4は、共通レール5を通して燃料をポンプ圧送し、燃料を燃料噴射器6内に輸送し、燃料を内燃エンジン7内に噴射する。あらゆる余分な燃料は、戻り経路8を介して、燃料タンク1に輸送し戻される。
【0038】
図1~
図4において、矢印は、燃料組成物の流れの方向を表している。
【0039】
透過プロセス中、安定した透過を確保するために、膜の表面領域にわたって剪断力が必要である。そのような剪断力を生成するための方法が、本明細書に開示される。
図2に記載されている本発明の実施形態は、金属選択膜9の表面領域を横切るクロスフローを作り出すために利用される、ポンプ12の短回路を含み得る。これにより、安定した透過プロセスを確保するのに十分な剪断力を作り出すことができ、濃度分極効果の誘発を防止し得る。同様に、
図3および
図4による本発明の実施形態は、膜表面に位置するデバイスを組み込むことができ、透過性の低下を防止するのに十分な流体力学を可能にする。好適には、そのようなデバイスは、本質的に振動性および/または超音波性であり得る。
【実施例】
【0040】
実施例1
B0(バイオ成分なし)を含有するディーゼル供給画分を、ネオデカン酸亜鉛で汚染し、その結果、5mg/kgの元素亜鉛を得た。ディーゼル画分を、15barの膜間差圧および30℃の温度で、多孔質ポリ(アクリロニトリル)(PAN)層によって支持された非多孔質ポリジメチルシロキサン(PDMS)膜層と接触させた。フラックス、透過性、および透過液の収率に加えて、得られた透過液および保持液中のZnのレベルを以下の表1に示し、これらの分析は、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)によって完了した。表1に示すように、得られた透過液のZn含有量は0.1mg/kg未満であり、得られた保持液のZn含有量は7.8mg/kg+/-0.8mg/kgであった。
【0041】
実施例2
B0(バイオ成分なし)を含有するディーゼル供給画分を、ネオデカン酸亜鉛で汚染し、その結果、5mg/kgの元素亜鉛を得た。ディーゼル画分を、15barの膜間差圧および60℃の温度で、多孔質ポリ(アクリロニトリル)層によって支持された非多孔質ポリジメチルシロキサン膜層と接触させた。フラックス、透過性、および透過液の収率に加えて、得られた透過液および保持液中のZnのレベルを以下の表1に示し、これらの分析は、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)によって完了した。表1は、得られた透過液のZn含有量は0.1mg/kg未満であり、得られた保持液のZn含有量は15.7mg/kg +/- 1.6mg/kgであったことを示している。
【表1】
【0042】
考察
表1の分析では、両方の透過液でZnレベルが低いことが示された。実施例2の条件は、より高い温度(60℃)で、供給物から除かれたZnのレベルが増加したことを示した。さらに、より高い温度(60℃)では、透過性が0.19kg.m-2.hr-1.bar-1から0.45kg.m-2.hr-1.bar-1に、大幅に増加したことが示された。
【国際調査報告】