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特表2022-549419可変内部抵抗を有するデバイスを保護するためのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-25
(54)【発明の名称】可変内部抵抗を有するデバイスを保護するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20221117BHJP
   H02H 7/18 20060101ALI20221117BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20221117BHJP
   H01M 50/583 20210101ALI20221117BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20221117BHJP
   H01M 50/578 20210101ALI20221117BHJP
【FI】
H02J7/00 S
H02J7/00 Y
H02H7/18
H01M10/48 P
H01M50/583
H01M10/44 A
H01M10/44 Z
H01M50/578
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517948
(86)(22)【出願日】2020-09-08
(85)【翻訳文提出日】2022-05-16
(86)【国際出願番号】 EP2020075103
(87)【国際公開番号】W WO2021058278
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】1910555
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】クレギュー, サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】折口 正人
(72)【発明者】
【氏名】マリンカス, イリーナ
(72)【発明者】
【氏名】サン-マルクー, アントワーヌ
【テーマコード(参考)】
5G053
5G503
5H030
5H043
【Fターム(参考)】
5G053AA01
5G053AA14
5G053BA01
5G053BA08
5G053CA01
5G053DA01
5G053DA03
5G053EA01
5G053EC05
5G053FA04
5G053FA05
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA11
5G503CB11
5G503EA05
5G503EA08
5G503FA06
5G503FA17
5G503GA19
5G503GD03
5G503GD06
5H030AA03
5H030AA06
5H030AS08
5H030FF42
5H043AA04
5H043AA13
5H043BA19
5H043CA05
5H043GA03
5H043LA32E
(57)【要約】
本発明は、強度しきい値よりも大きい強度を有する電流が流れたときに飛ぶことが可能な保護ヒューズ(25)を備える、可変内部抵抗を有するデバイス(20)を保護するための保護システムに関する。本発明によれば、システムは、デバイスの内部抵抗を推定するのに適した推定手段と、それを超えると保護ヒューズが動作不能になる抵抗しきい値よりも内部抵抗が大きいときに、デバイスの使用を制限および/または防止するのに適した安全手段とをさらに備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池(11)の電気化学セルなどの可変の内部抵抗(Ri)を有するデバイス(20)向けの保護システムであって、この保護システムが、強度しきい値よりも大きい強度(Ibatt)の電流が流れたときに溶けることができるヒューズ(25)を備え、
前記保護システムが、
- 前記デバイス(20)の前記内部抵抗(Ri)を推定するように設計された推定手段(12)と、
-前記デバイス(20)が前記ヒューズ(25)を溶かす容量をまだ有するように選択された抵抗しきい値(SR1)よりも前記内部抵抗(Ri)が大きくなるとすぐに、前記デバイス(20)の使用を制限および/または防止するように設計された保護手段(17)と
をさらに備えることを特徴とする、
保護システム。
【請求項2】
2つの電気接続端子(22、23)を備える前記デバイス(20)では、前記デバイス(20)内の超過圧力の場合に前記2つの電気接続端子(22、23)間の電気回路を自動的に閉じるように設計されたスイッチ(26)が提供される、請求項1に記載の保護システム。
【請求項3】
前記推定手段(12)が、以下の条件:
- 前記デバイス(20)が放電フェーズにあるかどうか、
- 前記デバイス(20)によって供給される前記電流の前記強度(Ibatt)が事前定義された値の範囲内にあるかどうか、
- 前記デバイス(20)によって供給される前記電流の前記強度(Ibatt)の経時的な変動が事前定義された変動しきい値よりも大きいかどうか、
- 前記デバイス(20)の内部温度が事前定義された温度範囲内にあるかどうか
のうちの1つもしくは複数またはすべてが満たされた場合にのみ、前記内部抵抗(Ri)を推定するように設計されている、請求項1または2に記載の保護システム。
【請求項4】
前記推定手段(12)が、前記内部抵抗(Ri)を周期的に推定することを試みるように設計されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の保護システム。
【請求項5】
前記保護手段(17)が、前記内部抵抗(Ri)が第2の抵抗しきい値(SR2)よりも大きい場合に、前記保護手段(17)による前記デバイス(20)の使用の次の制限および/または次の防止をユーザに警告するように設計されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の保護システム。
【請求項6】
前記保護手段(17)が、前記内部抵抗(Ri)が第3の抵抗しきい値(SR3)よりも大きい場合に、前記デバイス(20)の使用を制限するように設計されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の保護システム。
【請求項7】
前記第3の抵抗しきい値(SR3)が、前記第2の抵抗しきい値(SR2)よりも真に大きい、請求項5または6に記載の保護システム。
【請求項8】
前記保護手段(17)が、前記内部抵抗(Ri)が前記抵抗しきい値(SR1)よりも大きい場合に、前記デバイス(20)の使用を防止するように設計されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の保護システム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の保護システムを装備する少なくとも1つの電気化学セル(20)を備える、蓄電池(11)。
【請求項10】
電気化学セルなどの可変の内部抵抗(Ri)を有するデバイス(20)を保護するための方法であって、前記デバイス(20)がヒューズ(25)を装備し、前記方法が、
- 前記デバイス(20)の前記内部抵抗(Ri)を推定するステップ(12)と、
- 少なくとも1つの抵抗しきい値(SR1)と前記内部抵抗(Ri)を比較するステップと、前記内部抵抗(Ri)が前記抵抗しきい値(SR1)よりも大きい場合、
-前記デバイス(20)が前記ヒューズ(25)を溶かす容量をまだ有するように、前記デバイス(20)の使用が防止または制限される、保護ステップ(17)と
を含むことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、蓄電池の安全性に関する。
【0002】
本発明は、より詳細には、蓄電池の電気化学セルなどの可変内部抵抗を有するデバイスを保護するための保護システムに関し、この保護システムは、事前定義された強度しきい値よりも大きい強度の電流が流れたときに溶けることができるヒューズを備える。
【0003】
本発明はまた、そのようなデバイスを保護するための方法に関する。
【0004】
本発明は、電気車両またはハイブリッド車両用の蓄電池の製造における特定の利点に加えられる。
【背景技術】
【0005】
電気車両およびハイブリッド車両は、具体的に、これらの車両を推進させるための電気モータに電流を供給する蓄電池を装備する。
【0006】
文書US2017005384によって教示されているように、そのような蓄電池は、一般に、各々が多数の個別電気化学セルを内蔵する複数のモジュールを備える。
【0007】
これらのセルは化合物を使用して電気エネルギーを蓄積し、セルが過充電された場合潜在的に危険である。
【0008】
蓄電池を保護するための1つの一般的なシステムは、各セルの端子の両端の電圧を個別に監視すること、および過充電の場合に電流を遮断することから構成される。この技術的解決策を実施することは、残念なことに、所望の安全度を達成するために冗長に接続された多数の高価な構成部品の使用を必要とする。
【0009】
文書US2017005384に記載された別の解決策は、それ自体の一体化された安全デバイスを有する各セルを装備することから構成される。この安全デバイスは、第1に、化合物とセルの正端子との間に接続されたヒューズを備え、第2に、この同じセルの2つの端子間に接続された圧力スイッチを備える。
【0010】
すなわち、セルの超過圧力の場合、スイッチが閉じ、それにより、セル内に短絡が作られ、ヒューズが溶かされ、したがって蓄電池が安全状態に入る。
【0011】
この解決策の第1の欠点は、この溶解が車両を停止させる故障をもたらすことである。
【0012】
出願人が観察し、第1の欠点よりも深刻であることが判明した第2の欠点は、セルが短絡したときにヒューズが溶けないことであり、蓄電池が発火または爆発する危険がもたらされる。
【発明の概要】
【0013】
従来技術の上述された欠点を是正するために、本発明は、バッテリの経年劣化を検出するためのコンピュータ化された手段を加えることにより、蓄電池の安全性を向上させることを提案する。
【0014】
より詳細には、本発明によって提案されたのは、導入部で定義された保護システムであり、該保護システムにおいて、デバイスの内部抵抗(たとえば、電気化学セルの内部抵抗)を推定するように設計された推定手段、ならびに、デバイスがヒューズを溶かす容量をまだ有するように選択された抵抗しきい値よりも前記内部抵抗が大きくなるとすぐに、このデバイスの使用を制限および/または防止するように設計された保護手段が提供される。
【0015】
具体的には、出願人は、電気化学セルの経年劣化の状態が進行し、したがってその内部抵抗が過度に高くなると、このセルによって発生することができる電力がヒューズを溶かすのに常に十分であるとは限らないことを観察した。
【0016】
(望ましくない様子でヒューズが溶ける可能性があるので、セルに高い負荷がかかったときに問題となり得る)より小さいヒューズを使用するよりも、その代わりとして本発明は、ヒューズを溶かすのに必要な電力をセルがもはや発生できなくなる前に、ユーザが自らの蓄電池を、好ましくは予防的に保守点検することを促され得るように、セルの経年劣化の状態を監視することを提案する。
【0017】
個々に、または任意の技術的に可能な組合せで見て、本発明による保護システムの有利で非限定的な他の特徴は、以下の通りである。
- 前記抵抗しきい値は、それを超えるとデバイスがヒューズを溶かす容量をもはやもたない内部抵抗に等しく、安全マージン以内である。
- 2つの電気接続端子を備える前記デバイスでは、前記デバイス内の超過圧力の場合に2つの端子間の電気回路を自動的に閉じるように設計されたスイッチが提供される。
- 推定手段は、以下の条件のうちの1つもしくは複数またはすべてが満たされた場合にのみ、前記内部抵抗を推定するように設計されている。
- >デバイスが放電フェーズにあるかどうか。
- >デバイスによって供給される電流の強度が事前定義された値の範囲内にあるかどうか。
- >デバイスによって供給される電流の強度の経時的な変動が事前定義された変動しきい値よりも大きいかどうか。
- >前記デバイスの内部温度が事前定義された温度範囲内にあるかどうか。
- 推定手段は、前記内部抵抗を周期的に推定することを試みるように設計されている。
- 保護手段は、内部抵抗が第2の抵抗しきい値よりも大きい場合に、保護手段によるデバイスの使用の次の制限および/または次の防止をユーザに警告するように設計されている。
-保護手段は、内部抵抗が第3のしきい値よりも大きい場合にデバイスの使用を制限するように設計されている。
- 第3のしきい値は、第2のしきい値よりも真に大きい。
- 保護手段は、内部抵抗が前記抵抗しきい値よりも大きい場合にデバイスの使用を防止するように設計され、その抵抗しきい値は、第3のしきい値よりも真に大きい。
【0018】
本発明はまた、上述された保護システムを装備する電気化学セルを備える蓄電池に関する。
【0019】
本発明はまた、保護ヒューズを装備する、電気化学セルなどの可変の内部抵抗を有するデバイスを保護するための方法を提案し、方法は、
- 前記デバイスの内部抵抗を推定するステップと、
- それを超えると保護ヒューズが動作不能になる少なくとも1つの抵抗しきい値と内部抵抗を比較するステップと、内部抵抗が前記抵抗しきい値よりも大きい場合、
- デバイスがヒューズを溶かす容量をまだ有するように、デバイスの使用が防止または制限される保護ステップと
を含む。
【0020】
当然、本発明の様々な特徴、変形形態、および実施形態は、それらが互いに互換性がないか、または相互に排他的であるという条件で、様々な組合せで互いに組み合わされる場合がある。
【0021】
非限定的な例によって与えられる、添付図面を参照して以下に続く説明は、本発明が何から構成され、どのように実装され得るかを理解することを容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明による、蓄電池を装備する自動車の概略図である。
図2図1の畜電池の電気化学セルの概略図である。
図3図2の電気化学セルの回路図である。
図4図2の電気化学セルの端末の両端の、後者がステップ電流を受けたときの電圧の変動を示すグラフである。
図5】このステップ電流を示すグラフである。
図6図2の電気化学セルに対して実行された検査の結果をポイントの形で示すグラフであり、縦座標は測定された電圧差を示し、横座標はセルによって供給された電流の差を示す。
図7】これらの検査において図2の電気化学セルによって供給された電流の経時的な変動を示すグラフである。
図8】これらの検査において図2の電気化学セルによって供給された電流の変動率を時間の関数として示すグラフである。
図9図2の電気化学セルの測定された内部抵抗の変動をその充電レベルの関数として示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、2つの駆動輪16を備える自動車10を非常に概略的に示す。
【0024】
この場合、自動車は電気車両である。変形形態として、自動車はハイブリット車両の可能性もある。
【0025】
したがって、図1に示された自動車10は、2つの駆動輪16を駆動して回転させるための少なくとも1つの電気モータ15を備える。自動車10は、インバータ14を介してこの電気モータ15に電流を供給することを可能にする蓄電池11も備える。
【0026】
蓄電池11は、多数の電気化学セル20を収納する収納筐体を備える。
【0027】
自動車1は、たとえば、蓄電池11の収納筐体の内部に取り付けられた温度プローブの形態の、この蓄電池11の温度を測定するための測定手段18も備える。
【0028】
自動車10は、各電気化学セル20の端子の両端の電圧Ubattおよびこれらの電気化学セル20の各々によって供給または受信された電流Ibattを収集するための収集手段19も備える。
【0029】
その様々なユニットを管理するために、自動車1は、プロセッサおよびメモリを備え、様々な入力および出力のインターフェース13を装備するコンピュータ12を備える。
【0030】
その入力インターフェースを介して、コンピュータ10は、それぞれ、測定手段18および収集手段19から入力信号を受信するように設計される。したがって、コンピュータ12は、各電気化学セル20の端子の両端の電圧Ubattおよびこれらの電気化学セル20の各々によって供給または受信された電流Ibattとともに、蓄電池11の内部温度Tを収集するように設計される。
【0031】
そのメモリを介して、コンピュータ12は、プロセッサによって実行されると、コンピュータ12が以下に記載される方法を実施することを可能にする命令を含むコンピュータプログラムから構成されるコンピュータ化アプリケーションを記憶する。
【0032】
最後に、その出力インターフェースを介して、コンピュータ12は、蓄電池11を保護するための安全システム17と通信するように設計される。本明細書では、この安全システム17は、特に、蓄電池の充電を制御するための制御素子17”とともに、車両のダッシュボードに配置されたディスプレイスクリーン17’を備える。
【0033】
図2は、図1の蓄電池の電気化学セル20のうちの1つを示す。
【0034】
本明細書では、これらのセルは、すべて同じ参照記号を有し、互いに直列に接続されると考えられる。本開示では、それらのうちのただ1つに対してより詳細に焦点を合わせる。
【0035】
図2に示されたように、電気化学セル20は、電気化学構成部品21(本明細書では、リチウムイオンベースの電解液に浸された2つの電極)を収納するケーシング29と、これら2つの電極にそれぞれ接続された2つの端子22(負)、23(正)とを備える。
【0036】
本明細書では、電気化学セル20は、部分的に統合され、部分的に遠隔の保護システムを装備する。
【0037】
この保護システムの遠隔部分は、上述された安全システム17を備える。
【0038】
この保護システムの統合部分は、ケーシング29に収納されたヒューズ25およびスイッチ26を備える。
【0039】
スイッチ26は、セルの2つの端子22と23との間に接続される。スイッチ26は開状態で供給され、スイッチ26は、ケーシング29内の超過圧力の場合に自動的に閉じるように設計される。スイッチ26は、この目的のために感圧薄膜を備える。
【0040】
したがって、スイッチ26は、特に火災を引き起こす可能性がある電気過充電の場合に、電気化学セル20を短絡させることを可能にする。
【0041】
統合部分用のヒューズ25は、電気化学セル20の正端子23を対応する電極に接続する。ヒューズ25は、決定された強度しきい値よりも大きい強度Ibattの電流が流れたときに溶ける(かつ回路を開ける)ことを目的とする。
【0042】
したがって、ヒューズ25は、特に、スイッチ26が電気化学セル20を短絡させたときに溶けることを目的とする。
【0043】
このように、このヒューズ25とこのスイッチ26の組合せは、爆発および火災の危険から蓄電池11を保護することを可能にする。
【0044】
知られているように、電気化学セル20は、それが受ける充電および放電のサイクルに沿って経年劣化する。
【0045】
電気化学セル20が経年劣化すると、その内部抵抗Riが増大する。その電気化学構成部品21は、ヒューズ25を溶かすのに十分な電力を発生させることがもはや可能ではないかもしれない。
【0046】
これが、本発明の1つの特に有利な特徴によれば、
-蓄電池11を保護するための保護システムが、各電気化学セル20の内部抵抗Riを推定するように設計された(本明細書では、コンピュータ12によって形成された)推定手段を備え、
-安全システム17が、この内部抵抗Riが第1の抵抗しきい値SR1よりも大きいときに蓄電池11の使用を制限および/または防止するように設計され、このしきい値が、その内部抵抗Riがこの第1の抵抗しきい値SR1よりも小さい限りそのヒューズ25を溶かす容量を各電気化学セル20が有するように選択される
理由である。
【0047】
各電気化学セル20の内部抵抗Riが計算される方法が以下に記載される。
【0048】
これらの計算を理解するために、最初に、図3の電気回路21の形態で電気化学セル20をモデル化することが可能である。
【0049】
この図では、電気回路21は、互いに直列に接続された、架空の電圧源30、抵抗器31、および並列RC回路を備える。
【0050】
架空の電圧源30は、電気化学セル20の充電レベルBSOCに依存する電圧値を有する。本明細書では、充電レベルBSOCは、セルに残っている電気エネルギーの量を割合として表すことが思い出される。したがって、その値は、セルが完全に充電されているときは100%であり、完全に放電されているときは0%である。
【0051】
抵抗器31は、電気化学セル20の内部抵抗Riを表す。これは、特に、このセルの経年劣化の状態に依存する。
【0052】
並列RC回路は、並列に接続された抵抗器32およびコンデンサ33を備える。これは、セルが充電および放電の場合に非ゼロの反応時間を有するという事実を示す。抵抗および静電容量の値は、本明細書では、セルの測定可能な反応時間に基づいて選択される。
【0053】
次いで、図4および図5は、電気化学セル20が値ΔIのステップ電流の形の充電電流を受けたときの、電気化学セル20の端子の両端の電圧Ubattおよび電気化学セル20を流れる電流Ibattを示す。値ΔVの電圧の瞬間的な変動がこの充電中に電気化学セル20の中で観察され、その変動はしきい値に達するまで漸進的に続く。
【0054】
電気化学セル20の考慮中のモデル化が与えられると、セルの内部抵抗Riは、以下の式を使用して取得されてもよい。
[数式1]
Ri=ΔV/ΔI
【0055】
コンピュータ12は、(通常、秒のオーダーの)高すぎもせず低すきもしないサンプリング周波数で、周期的にこの内部抵抗Riを計算するようにプログラムされる。
【0056】
好ましくは、コンピュータ12は、電気化学セル20のいくつかの使用条件が満たされたときにのみ、この内部抵抗Riの推定値を計算するようにプログラムされる。
【0057】
具体的には、この内部抵抗Riの推定値の信頼性はこのセルの使用条件に依存するかもしれないことが観察されている。
【0058】
次いで、この内部抵抗Riの良好な推定値を実現するために必要な条件を判定するために、一連の検査が実行され、それらの結果がポイントの形で図6に示されている。
【0059】
これらの検査では、電気化学セル20の様々な使用条件下で値ΔIおよびΔVが測定された。これらの条件のうちのどれも結果に影響を与えなかった場合、ポイントのすべては、セルの内部抵抗Riに等しい勾配をもつアフィン直線に沿って整列しているはずである。
【0060】
しかしながら、これは当てはまらなかった。
【0061】
次いで、図7および図8は、電気化学セル20によって供給された電流Ibattの経時的な変動およびこの電流の変動率を示す。
【0062】
アフィン直線に沿って位置する図6のポイントに対応する時間は、ポイントによってマークされている。したがって、内部抵抗Riの推定結果が信頼できるために、電流およびこの電流の変動率が特定の使用条件を満たさなければならないことも観察することができた。
【0063】
したがって、セルが放電フェーズにある場合、セルが5Aと10Aとの間の電流を供給する場合、および2つの連続するサンプリング時間の間のこの電流の変動が十分大きい場合(本明細書では、電流の変動率δIbatt/δtが1A/sよりも大きい場合)、内部抵抗Riの推定値が信頼できることも観察することができた。
【0064】
図9も、内部抵抗Riの推定値に対する充電レベルBSOCおよびセルの内部温度の影響を観察するために、検査結果をプロットする。
【0065】
したがって、セルの内部温度Tが十分高くない(曲線C1上の25度)場合、少しの温度変動が内部抵抗Riの推定結果に影響を与える場合があることを観察することができた。したがって、45℃(曲線C2)と55℃(曲線C3)との間で動作することが好ましい。
【0066】
電気化学セル20の充電レベルBSOCは、この充電レベルが40%と75%との間にあるという条件で、内部抵抗Riの推定結果に少ししか影響を与えなかったことも観察することができた。
【0067】
このように、電気化学セル20の様々な使用条件は、内部抵抗Riの信頼できる推定値を得るために必要であるとわかり、選択することができた。
【0068】
これらのデータが今詳細に説明されたので、説明は、自動車10のコンピュータ12が蓄電池11内の各電気化学セル20の使用を保護するために進む道を与えられてもよい。
【0069】
この目的のために、コンピュータ12はループ内を進み、以下に記載されるステップを反復的に繰り返す。これらのステップは、電気化学セル20ごとに同じ方法で実施される。本開示を簡略化するために、以下ではこれらのセルのうちのただ1つに焦点が合わされる。
【0070】
第1のステップにおいて、コンピュータが蓄電池11の内部温度Tを収集する。
【0071】
コンピュータは、電気化学セル20について電圧Ubattおよび電流Ibattの値を収集する。
【0072】
第2のステップにおいて、コンピュータ12が、このセルの内部抵抗Riを推定するために、電気化学セル20の使用条件が満たされたかどうかを判定する。
【0073】
この目的のために、コンピュータは、電気化学セル20が放電フェーズにあるかどうか、セルによって供給される電流の強度Ibattが事前定義された値の範囲内(本明細書では、5Aと40Aとの間)にあるかどうか、デバイス20によって供給される電流の強度Ibattの変動率が事前定義された変動しきい値(本明細書では、1A/s)よりも大きいかどうか、および蓄電池11の内部温度が事前定義された温度範囲(本明細書では、45℃から55℃)内にあるかどうかを判定する。
【0074】
当然、変形形態として、上述された範囲は異なる可能性がある。セルのいくつかの異なる使用条件も考えられる可能性がある。
【0075】
本明細書では、これらの条件が満たされた場合、コンピュータは、値ΔUおよびΔIを測定し、次いで、そこから上述された式[数式1]に基づいて内部抵抗Riの推定値を演繹する。そうでない場合、方法はリセットする。
【0076】
この段階において、コンピュータ12は、この推定値が電気化学セル20の内部抵抗Riの良好な近似値であるとすぐに考えてもよい。
【0077】
しかしながら、本明細書では、この推定値は、内部抵抗Riのより良い推定値を取得するために、以前作成された複数の他の推定値と組み合わされる。したがって、たとえば、数百の以前の結果(たとえば、500または1000)を包含するスライドウィンドウにわたって平均を取り、内部抵抗Riがこの平均に等しいと考えることが可能であり、いかなる虚偽の測定も回避される。
【0078】
内部抵抗Riの評価が得られると、コンピュータ12はこの内部抵抗を少なくとも1つの抵抗しきい値と比較する。
【0079】
実際には、本明細書では、この内部抵抗Riは、3つの抵抗しきい値SR1、SR2、SR3と比較される。
【0080】
これら3つの抵抗しきい値SR1、SR2、SR3は、3つの安全マージン内で、それを超えると電気化学セル20がヒューズ25を溶かすために必要な電力をまだ有することをユーザに保証することがもはや可能ではないと考えられる内部抵抗Riの値に等しい。
【0081】
考慮中の安全マージンは異なる。
【0082】
第1の抵抗しきい値SR1は最も小さい安全マージンを有し、第2のしきい値SR2は最も大きい安全マージンを有し、以下のように書くことが可能であることを意味する。
[数式2]
R1>SR3>SR2
【0083】
内部抵抗がこれらのしきい値によって定義される4つの間隔のうちのどちらかに含まれるかどうかに応じて、4つのケースが考えられる。
【0084】
したがって、内部抵抗Riがこれら3つのしきい値以下である場合、方法はリセットされる。これは、電気化学セル20が良好な状態にあること、およびスイッチ26を閉じた場合にこのセルがヒューズ25を溶かすために必要な電力を有することを内部抵抗Riが示すケースに該当する。
【0085】
内部抵抗Riが第2のしきい値SR2と第3のしきい値SR3との間にある場合、それは、電気化学セル20が経年劣化の進んだ状態にあるが、ヒューズ25を溶かすことがまだできることを意味し、コンピュータ12は、ディスプレイスクリーン17’上でのドライバへのメッセージの表示を命令するようにプログラムされる。このメッセージは、自分の蓄電池11が限定された数の充電サイクル以内に使用不可になることをドライバに警告することが目的である。メッセージは、たとえば、蓄電池11が5回の充電サイクル後にもはや使用不可になり、したがってそれに応じて充電または補修されるべきであるという事実を表示する場合がある。
【0086】
内部抵抗Riが第3のしきい値SR3と第1のしきい値SR1との間にある場合、それは、電気化学セル20が経年劣化のかなり進んだ状態にあり、ヒューズ25を溶かすことが今でもおそらくできることを意味し、コンピュータ12は、自分のバッテリが非常に少ない数の充電サイクル以内に使用不可になることをドライバに警告する、ディスプレイスクリーン17’上でのドライバへのメッセージの表示を命令するようにプログラムされる。コンピュータ12は、少ない数のバッテリ再充電サイクル(たとえば、1回または2回)しか許されず、バッテリのいかなる再充電も防止するべきであることを伝える信号を制御素子17”に送るようにさらにプログラムされる。
【0087】
最後に、内部抵抗Riが第1のしきい値SR1よりも大きい場合、それは、電気化学セル20がヒューズ25を溶かすことがまだできることを確信するには進みすぎた経年劣化の状態にあることを意味し、コンピュータ12は、自分のバッテリがもはや再充電することができないことをドライバに警告する、ディスプレイスクリーン17’上でのドライバへのメッセージの表示を命令するようにプログラムされる。コンピュータ12は、バッテリのいかなる新しい再充電も防止するべきであることを伝える信号を制御素子17”に送るようにさらにプログラムされる。
【0088】
本発明は、記載および図示された実施形態に決して限定されないが、当業者は本発明によるそれらに対するいかなる変形形態も加える方法を知っている。
【0089】
このように、保護システムは、蓄電池の電気化学セル以外のデバイスに対して使用される可能性がある。例として、
図1
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図8
図9
【国際調査報告】