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特表2022-549442レーザー光源を使用する付加製造のための付加経路
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-25
(54)【発明の名称】レーザー光源を使用する付加製造のための付加経路
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/366 20210101AFI20221117BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20221117BHJP
   B29C 64/268 20170101ALI20221117BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20221117BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20221117BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20221117BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20221117BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20221117BHJP
   B22F 10/85 20210101ALI20221117BHJP
【FI】
B22F10/366
B29C64/153
B29C64/268
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
B22F10/28
B22F10/85
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518716
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(85)【翻訳文提出日】2022-03-23
(86)【国際出願番号】 FR2020051665
(87)【国際公開番号】W WO2021058913
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】1910742
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517160927
【氏名又は名称】アッドアップ
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】521328847
【氏名又は名称】エコール ノルマル シュペリウール パリ-サクレー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルラント ジル
(72)【発明者】
【氏名】トゥルニエ クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ラヴェルヌ シルヴァン
(72)【発明者】
【氏名】エタイエブ カメル
【テーマコード(参考)】
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
4F213AC04
4F213AM23
4F213AR06
4F213AR07
4F213AR11
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL13
4F213WL45
4F213WL76
4F213WL95
4K018CA44
(57)【要約】
本発明は、3次元物体の選択的付加製造のためにレーザービームがたどる軌跡を決定する方法(P)に関し、レーザービームは、粉体層に向かって放射され、粉体層を溶融させるために、複数の隣接経路で構成されている軌跡に沿って移動することが意図されており、経路は、以下のステップを実施することによって決定されることを特徴とする。
a)所定の基準経路(Ti)上で、複数の基準ポイント(Tij)を決定するステップと、
b)準経路の同じ側に位置する複数の隣接ポイント(Ti+1j)を決定するステップであって、各隣接ポイント(Ti+1j)は基準ポイント(Tij)に関連付けられ、隣接ポイント(Ti+1j)を囲むシミュレートされた隣接溶融ゾーン及び基準ポイント(Tij)を囲むシミュレートされた基準溶融ゾーンが、所定の最小割合(αmin)と所定の最大割合(αmax)との間で含まれる、シミュレートされた基準溶融ゾーンの横方向幅の割合に対応する重複を有するようなものである、ステップと、
c)決定された複数の隣接ポイントを通過する隣接経路(Ti+1)を決定するステップと、
d)新しい基準経路として定義された隣接経路を使用して、ステップa)からc)を反復するステップであって、各反復において、新しい隣接経路を決定するようになっており、こうして決定されたすべての隣接経路は、レーザービームがたどることが意図された軌跡を定義し、軌跡は、選択的付加製造装置の制御ユニットに記憶及び/又は伝送させる、ステップと、
を実行することで決定される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元物体の選択的付加製造のためのレーザービームがたどる軌跡を決定する方法(P)であって、前記レーザービームは、粉体層に向かって放射され、前記粉体層を溶融させるために、複数の隣接経路で構成されている軌跡に沿って移動することが意図されており、前記隣接経路は、
a)所定の基準経路(Ti)上で、複数の基準ポイント(Tij)を決定するステップであって、前記決定するステップは、前記軌跡の1つの移動方向における隣接ポイント(Ti+1j)の各々に対して、
-前記隣接ポイント(Ti+1j)に関連する前記基準ポイント(Tij)について、シミュレートされた基準溶融ゾーンの横方向幅(Lij)を推定するステップと、
-前記隣接ポイント(Ti+1j)の可能な位置を決定するステップであって、前記隣接ポイント(Ti+1j)の可能な位置と前記基準ポイント(Tij)の位置とを隔てる距離は、前記シミュレートされた基準溶融ゾーンの前記横方向幅と所定の目標重複度(αc)との積に等しく、前記隣接ポイント(Ti+1j)は、前記基準ポイント(Tij)での前記基準経路(Ti)と直交し、前記粉体層の平面に含まれ、前記基準経路(Ti)から前記隣接経路(Ti+1)に向けられる方向で、前記基準ポイント(Tij)に対して配置されるステップと、
-2次ステップをループで実行するステップと、
を連続的に含み、
前記2次ステップは、
--前記シミュレートされた隣接溶融ゾーンの可能な横方向幅(Li+1j)を推定するステップと、
--前記シミュレートされた基準溶融ゾーンと前記シミュレートされた隣接溶融ゾーンとの間の可能な重複を推定するステップと、
--前記推定された可能な重複が、前記シミュレートされた基準溶融ゾーンの所定の最小割合よりも小さいか又は所定の最大割合より大きい割合に対応する場合、前記隣接ポイント(Ti+1j)の可能な位置を修正しながら、前記二次ステップのループを再開するステップと、を含む、ステップと、
b)前記基準経路の同じ側に位置する複数の隣接ポイント(Ti+1j)を決定するステップであって、前記隣接ポイント(Ti+1j)の各々は、前記基準ポイント(Tij)と関連付けられ、前記隣接ポイント(Ti+1j)を囲むシミュレートされた隣接溶融ゾーン及び前記基準ポイント(Tij)を囲むシミュレートされた基準溶融ゾーンが、所定の最小割合(αmin)と所定の最大割合(αmax)との間に含まれる、前記シミュレートされた基準溶融ゾーンの横方向幅の割合に対応する重複を有するようなものである、ステップと、
c)前記決定された複数の隣接ポイントを通過する隣接経路(Ti+1)を決定するステップと、
d)新しい基準経路として定義された前記隣接経路を使用して、ステップa)からc)を反復するステップであって、各反復において、新しい隣接経路を決定するようになっており、このようにして決定されたすべての前記隣接経路は、レーザービームがたどることが意図された軌跡を定義し、前記軌跡は、選択的付加製造装置の制御ユニットに記憶及び/又は伝送される、ステップと、
を実行することによって決定される、
ことを特徴とする選択的付加製造レーザービームがたどる軌跡を決定する方法(P)
【請求項2】
前記推定された可能な重複と、前記シミュレートされた基準溶融ゾーンの前記横方向幅と目標重複度(αc)の積に等しい目標重複との間の非類似値を決定するステップをさらに含む、
請求項1に記載の選択的付加製造レーザービームがたどる軌跡を決定する方法(P)。
【請求項3】
前記目標重複度(αc)は15%に等しく、前記最小割合(αmin)は12%に等しく、前記最大割合(αmax)は18%に等しい、
請求項1に記載の選択的付加製造レーザービームがたどる軌跡を決定する方法(P)。
【請求項4】
前記シミュレートされた基準溶融ゾーンと前記シミュレートされた隣接溶融ゾーンとの間の可能な重複を推定するために、前記隣接ポイントの可能な位置(Ti+1j)と前記基準ポイントの位置(Tij)とを隔てる距離が、前記シミュレートされた基準溶融ゾーンの横方向幅と前記シミュレートされた隣接溶融ゾーンの可能な横方向幅の合計の半分から減算される、
請求項2又は3に記載の選択的付加製造レーザービームがたどる軌跡を決定する方法(P)。
【請求項5】
前記2次ステップのループを再開する際に、前記隣接ポイント(Ti+1j)の可能な位置と前記基準ポイント(Tij)の位置とを隔てる距離が、前記距離と非類似値との間の差分に置き換えられるように前記隣接ポイントの可能な位置が修正され、前記非類似値は、前記推定された可能な重複と、前記シミュレートされた基準溶融ゾーンの横方向幅と前記目標重複度の積との間の非類似値である、
請求項2から4のいずれかに記載の選択的付加製造レーザービームがたどる軌跡を決定する方法(P)。
【請求項6】
粉体層上に位置する調査ポイントを囲むシミュレートされた溶融ゾーンの横方向幅を推定するステップは、
-前記調査ポイントの近傍に位置する前記粉体層のポイントである複数の計算ポイントを決定するステップと、
-前記計算ポイントの各々における最高到達温度を推定するステップであって、前記推定は、前記調査ポイントへの前記レーザービームの経路の上流の複数の経路上に位置する上流ポイントを囲む前記粉体層のゾーンを固化するようなレーザービームの放射に起因する温度変化に依存し、さらに、前記推定は、前記調査ポイントを囲む前記粉体層のゾーンを固化するようなレーザービームの放射に起因する、前記計算ポイントでの前記粉体の温度変化に依存する、ステップと、
-このように推定された前記最高到達温度と、前記粉体の融点とを比較するステップと、
-前記計算ポイントのうち、前記最高到達温度の前記推定値が前記粉体の融点以上である溶融ポイントを特定するステップと、
-前記溶融ポイントが占めるゾーンの横方向幅を推定するステップと、
を含む、
請求項1から5のいずれかに記載の選択的付加製造レーザービームがたどる軌跡を決定する方法(P)。
【請求項7】
前記計算ポイントでの最高温度を推定するステップは、
-前記上流ポイントの各々について、前記上流ポイントを囲む前記粉体層のゾーンを固化するようなレーザービームの放射に起因する、前記計算ポイントでの前記粉体の温度変化の推定値を計算するステップと、
-前記上流ポイントを囲む前記粉体層のゾーンを固化するようなレーザービームの放射に起因する、前記計算ポイントでの前記粉体の温度変化の推定値を計算するステップと、
-前記調査ポイントを囲む前記粉体層のゾーンを固化するようなレーザービームの放射に起因する、前記計算ポイントでの前記粉体の温度変化の推定値を計算するステップと、
-前記調査ポイント又は前記上流ポイントを囲む前記粉体層のゾーンを固化するようなレーザービームの放射に起因する、前記温度変化の推定値に応じて、前記計算ポイントでの前記粉体の温度の推定値を計算するステップと、
-前記計算ポイントでの最高温度の推定値を計算するステップと、
を含む、
請求項6に記載の選択的付加製造レーザービームがたどる軌跡を決定する方法(P)。
【請求項8】
前記上流ポイントについて、前記上流ポイントを囲む前記粉体層のゾーンを固化するようなレーザービームの放射に起因する、前記計算ポイントでの前記粉体の温度変化を推定するステップは、
-前記上流ポイントの各々について、前記調査ポイントと前記上流ポイントを隔てる距離を計算するステップと、
-前記距離を所定の空間的近接距離と比較するステップと、
-前記調査ポイントから前記空間的近接距離以上離れた前記上流ポイントの各々について、前記上流ポイントを囲む前記粉体層を固化するようなレーザービームの放射に起因する、前記計算ポイントでの前記粉体の温度変化をゼロと推定するステップと、
を含む、
請求項6又は7に記載の選択的付加製造レーザービームがたどる軌跡を決定する方法(P)。
【請求項9】
前記上流ポイントについて、前記上流ポイントを囲む前記粉体層のゾーンを固化するようなレーザービームの放射に起因する、前記計算ポイントでの前記粉体の温度変化を推定するステップは、
-前記上流ポイントに各々について、前記上流ポイント囲む前記粉体層のゾーンを固化するようなレーザービームの放射と、前記調査ポイントへのレーザービームの移動とを分離する持続時間を計算するステップと、
-前記持続時間を所定の時間的近傍持続時間と比較するステップと、
-前記計算された持続時間が前記時間的近傍持続時間よりも大きい前記上流ポイントの各々について、前記上流ポイントを囲む前記粉体層のゾーンを固化するようなレーザービームの放射に起因する、前記計算ポイントでの前記粉体の温度変化をゼロと推定するステップと、を含む、
請求項6から8のいずれかに記載の選択的付加製造レーザービームがたどる軌跡を決定する方法(P)。
【請求項10】
粉体層から3次元物体を選択的に付加製造するためのプロセスであって、選択的付加製造装置において、
-付加製造用の粉体層をキャリア又は先に固化された層に施すステップと、
-複数の隣接経路で構成されている軌跡に沿って粉体層にレーザービームを放射するステップであって、前記経路上での前記レーザービームの移動が前記粉体層を溶融させるステップと、
を含み、
前記軌跡は、請求項1から9のいずれかに記載のプロセスを実行することにより決定され、前記軌跡は、前記選択的付加製造装置の制御ユニットに記憶及び/又は伝送されることを特徴とする、粉体層から3次元物体を選択的に付加製造するためのプロセス。
【請求項11】
粉体層から3次元物体(122)を選択的に付加製造するための選択的付加製造装置(121)であって、
水平プレート(123)の上方に位置する粉体リザーバ(127)と、
前記金属粉体を前記プレートに分配するための機構(124)であって、粉体の複数の層を連続的に広げるように構成された機構(124)と、
レーザー光源(1212)と、前記レーザービームを複数の隣接経路で構成されている軌跡をたどって前記粉体層に照射するように前記レーザー光源を制御するように構成され、前記経路上の前記レーザービームの移動が前記粉体層を溶融させるようになっている、制御ユニット(129)と、
前記制御ユニットと通信し、請求項1から9のいずれかに記載の方法を実行することによって決定される軌跡が格納されているメモリ(M)と、を備えている、
ことを特徴とする選択的付加製造装置。
【請求項12】
請求項1から9のいずれかに記載の軌跡決定方法を実行するように構成されたコンピュータ(C)をさらに備える、請求項11に記載の選択的付加製造装置。
【請求項13】
コンピュータ上で実行されるときに、請求項1から9のいずれかに記載の方法の少なくとも1つのステップを実行するのに適した命令を含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択的付加製造の一般分野に関する。
【背景技術】
【0002】
選択的付加製造は、粉末材料(金属粉体、セラミック粉体など)の連続層において選択したゾーンを固化することによって、3次元物体を作成するものである。固化されたゾーンは、3次元物体の連続した断面に相当する。固化は、例えば、エネルギー源を使って行われる全体的又は部分的な選択的溶融によって層ごとに行われる。
【0003】
従来から、粉体層を溶融させるエネルギー源として、高出力レーザー光源又は電子ビーム源が使用されてきた。
高出力レーザー光源を用いる3次元物体の製造プロセスの場合、レーザースキャン軌跡は、粉体の各層においてレーザービームが移動する隣接経路のすべてと規定することが可能であり、その経路に沿って材料が溶融され、部品の外形を定めると共にその内側を満たすようになっている。
【0004】
レーザースキャン軌跡は、一方で部品の幾何学的品質及び機械的特性に影響を与え、他方で速度及び生産性の点でプロセスの効率性にも影響を与える重要な役割を担う。
スキャンピッチは、レーザースキャン方法で定義される重要なパラメータである。これは、軌跡の隣接する2つの経路を分離する距離である。
【0005】
一般に、選択的レーザー溶融(SLM)プロセスで部品を製造する間に、設定されたスキャンピッチで分離された隣接経路で構成されている軌跡を使用すると、特定の問題が発生する場合がある。
軌跡の形状又は部品の形状によっては、熱的に隔離されたゾーンが存在する可能性があり、これは、熱の蓄積及び過熱ゾーンの発生を引き起こす。
このような局所ゾーンでの温度上昇は、大きな熱勾配を引き起こす。この熱勾配は残留応力の発生につながり、これは部品の機械的特性に悪影響を与える。
【0006】
また、過熱の場合、「キーホール」領域が現れる場合がある。この現象は、部品の気孔の原因になる。具体的には、この場合、溶融プールの深さが大きくなり、温度が材料の気化温度に到達する。これは、プール底部での気化及びガスの発生をもたらし、そこで反跳圧を引き起こす。溶融プールの不安定性及び急冷に起因して、生成されたガスは逃げることができず、材料中に閉じ込められる。形成された気孔の深さを考慮すると、次の層を溶融しても、周囲の材料を溶融させること及びガスを放出させることができない。
【0007】
加えて、溶融プール内の反跳圧によりマランゴニ効果が現れ、これは、飛沫の発生及び溶融プールからの材料の飛散及び放出につながる。このように引き出された材料ビーズは、次に、既に固化した表面に再付着し、次の層の堆積を妨げる場合があり、粉体堆積装置に損傷を与えて製造プロセスを妨げる場合もある。
【0008】
特に熱伝導率の低い材料の場合、スキャンピッチを非常に大きくすると、隣接する経路の間に未溶融ゾーンが生じ、部品内の気孔につながる。この問題は、得られた部品の機械的特性及びその表面品質に直接影響を与える。
レーザーで粉体を溶融するプロセスの場合、スキャンピッチ(p)は、一般にレーザービームの直径(D)の関数として、式p=(1-λ)×D(λはオーバーラップ係数)によって計算される。オーバーラップ係数の値は、0から1の間に含まれる。
【0009】
隣接する2つの経路の説明
図1は、一定の直径24のレーザービームで一定のスキャンピッチ2の場合の、隣接する2つの経路3、5で構成されているレーザースキャン軌跡1を概略的に示す。図1は、30%に等しい重複係数λに対応する。100μmに等しいレーザービーム24の直径の場合、スキャンピッチ2は70μmに等しい。
レーザービームは、粉体層に向かって放射され、隣接経路に沿って移動するので、隣接経路5のポイント9は、ある瞬間にレーザースポット11によって照射される。
レーザースポットは、レーザービームと粉体層との交点に位置するレーザービームの断面に対応するレーザースポットである。
【0010】
レーザーは、粉体層を溶融させるのに十分なエネルギーを局所的に供給する。スキャン時、粉体は、隣接経路3を囲む粉体層の溶融領域12内、及び隣接経路5を囲む粉体層の溶融領域14内で溶融される。
領域12の横方向幅は、レーザービームのスキャン方向と直交する方向の全幅13aで特徴付けることができる。領域12の横方向幅により、レーザーのスキャン方向でもある、基準経路の方向と直交する方向における領域12の寸法を評価することができる。
領域14の横方向幅は、全幅15aによって特徴付けられる。
【0011】
隣接経路は、スキャンピッチ2によって隔てられている。隣接経路3のポイント20では、隣接経路3に対する接線19が示されている。ベクトル21は、接線19に直交し、スキャンピッチ2に等しい長さである。ベクトル21は、隣接経路3のポイント20から隣接経路5のポイント22に移ることを可能にする。経路3及び5は、このような局所的な構成により、あらゆる場所で接続され、ベクトルの長さは、一定でピッチ2と等しいままで経路3上のポイントから経路5上のポイントへ移ることを可能にする。
【0012】
経路3、5を分離するピッチ2を考慮しかつ領域12、14の幅13b、15bを考慮すると、領域12、14の間には、重複23が存在する。
重複23は、溶融領域又は溶融ゾーンの一部の横方向の長さである。これは、第1の経路3上をレーザービームが通過する間に溶融し、第2の経路5上をレーザービームが通過する間に再溶融した粉体層の一部の横方向の長さである。換言すると、重複は、2つの隣接経路を囲む溶融領域の間の共通部分の横方向の長さである。重複は、隣接経路に沿っていずれの場所においても一定の値ではないので、局所的に評価する必要がある。
【0013】
図1では、重複23は、溶融領域12及び14の共通部分の横方向の長さである。
2つの隣接経路の間の重複度は、レーザービームによって最初にスキャンされた隣経路の横方向幅、ここでは全幅13aに対する重複23の比率に等しい。
一般に、隣接経路は、レーザービームによってスキャンされる時系列順のiでインデックス付けされたTiの形式で表すことができる。
【0014】
経路Tiのj番目のポイントは、Tijで示すことができ、位置ベクトルによって識別することができる。
【数1】
スキャンピッチpが一定であれば、関係は、互いに向き合って配置されるポイントTij及びTi+1jに関連し、以下の通りであり、
【数2】
【数3】
は、ポイントTijにおいて経路Tiに局所的に直交する単位ベクトルであり、粉体層の平面に含まれ、経路Tiから経路Ti+1へ向かう。
【0015】
設定されたピッチの軌跡の場合、重複度の値及び不均一性は、材料、プロセスパラメータ、及び軌跡の幾何形状に依存する。
例えば、同じ軌跡のパラメータ、特に同じ重複係数に対応する同じ設定ピッチでの、第1の材料の領域及び伝導率の高い第2の材料の別の領域のスキャンは、各々の場合で異なる重複度を生じる。
第2の材料の場合、溶融領域がより広いため、重複度はより大きくなる。
【0016】
重複度の不均一性に関して、湾曲部の存在は熱の蓄積をもたらし、結果的に溶融領域の横方向幅の増大をもたらす。これは、この局所的な湾曲領域においてより大きな重複度を発生させる。
【0017】
同心円で形成された軌跡の場合
図2は、円盤形状の部品を製造するために選択されたレーザースキャン軌跡を概略的に示す。これは円形及び同心円の隣接経路で構成されている軌跡である。隣接経路は、70μmの一定ピッチで規則正しく相隔たっている。
図3は、図2に示したレーザースキャン軌跡に沿ってレーザービームがスキャンされた場合の、粉体が到達する最高温度のフィールドを概略的に示す。レーザービームが最初にスキャンした隣接経路は、部品の中心に位置する。
スキャン速度及びレーザー出力は、スキャン中に一定のままである。
【0018】
図3は、製造プロセス中の温度のデジタルシミュレーションによって作成されたものである。
各調査ポイントに関して、プロセス中にそのポイントで粉体が到達した温度の時系列を生成することができる。
この時系列から、その値の最大値を抽出することができる。この最大値は、プロセス中に調査したポイントにおいて粉体が到達した最高温度に相当する。
【0019】
図3に示される領域内の各ポイントでの最高温度のフィールドは、製造中の熱挙動に対する軌跡の影響を示す。最高温度フィールドのマップは、部品の中心部での高い最高温度及び部品の端部での低い最高温度を示す。記録された最高温度は3300K、最低温度は2000Kに相当する。
レーザースキャン軌跡により得られた重複度を特定することができ、図3の場合、重複度の値は、中心部での100%と端部での39%との間で変化する。
【0020】
この観察結果は、固化前の粉体の温度への軌跡の影響によって説明でき、この温度は、レーザーが通過する直前の粉体層の温度の推定値である。この推定値は、レーザーが通過する直前の粉体層の特定のポイントにおいて、そのポイントの上流側に位置するレーザースキャン軌跡の部分のスキャン中にレーザービームによって与えられるエネルギーの拡散を特徴付ける。
【0021】
部品の中心にある粉体層のレーザースキャンの開始時には、隣接経路の長さが小さく、従って、1つの隣接経路から次の隣接経路へのレーザーの移動の間に、ほとんど時間が経過せず、固化前の粉体の温度が高くなる。
これは、高い最高温度につながり、隣接経路をスキャンするたびに部品中心部のゾーン全体が再溶融する原因になる。
【0022】
さらにレーザースキャン軌跡に沿って中心から離れると、隣接経路の長さが長くなり、従って、1つの隣接経路から次の隣接経路へレーザーが通過するまでの時間が長くなり、固化前の粉体の温度が低くなる。
これは、低い最高温度及び溶融ゾーンの横方向幅の安定化につながり、すなわち材料の飛散が少なくなり、最終的に低い重複度につながる。
【0023】
重複品質の指標
軌跡に沿った重複を特徴付けるために、最適な重複ゾーン、過熱ゾーン(すなわち過大な重複ゾーン)、及び隣接する溶融ゾーンの間に十分な溶融がないゾーン(すなわち不十分な重複ゾーン)を決定し評価するための指標を定義することができる。
最適品質指標Iqopにより、重複が最適なゾーンを評価することができる。重複は、重複度が、所定の最小割合と所定の最大割合との間に定義される許容間隔に含まれる場合に最適と言われる。
【0024】
次の隣接経路に対する1つの隣接経路の粉体層の溶融の連続性を保証するためには、15%に等しい重複度で十分であると推定することができる。15%に等しい目標重複度を中心にした、12%に等しい所定の最小割合及び18%に等しい所定の最大割合の許容間隔を選択することが可能である。
【0025】
最適品質指標Iqopは、軌跡の全長に対する、重複度が許容間隔に含まれる隣接経路セグメントの長さの比率を求めることによって計算される。
過大品質指標Isqは、軌跡の全長に対する、重複度が許容間隔を超えている隣接経路セグメントの長さの比率を求めることにより算出される。
不十分品質指標Inqは、軌跡の全長に対する、重複度が許容間隔以下である隣接経路セグメントの長さの比率を求めることによって計算される。
【0026】
所定のレーザースキャン軌跡に関して、これら3つの指標の合計は常に100%である(Iqop+Isq+Inq=100%)。
指標Iqopが100%でありかつ他の指標Isq及びInqがゼロの場合に、レーザースキャン軌跡は重複に関して最適である。
図3に対応するレーザースキャン軌跡で70μmに等しい一定ピッチの場合、測定された最小重複度は39%に等しい。従って、過大品質指標Isqは100%に等しく、他の指標はゼロである。換言すると、軌跡のいたるところに過熱ゾーンが存在する。
【0027】
軌跡の品質を向上させるためには、第1の選択肢は、スキャンピッチを大きくすることにある。同心円で形成された軌跡の形状は維持され、これらの円は図2の場合よりも互いに離れている。一定のスキャンピッチの新しい値は、重複度が許容間隔内にあるゾーンを得るように及び重複度が許容間隔外にあるゾーンを防ぐように計算することができる。
【0028】
新しいスキャンピッチの計算値は95μmであり、図2のレーザースキャン軌跡よりも大きい。
このとき、記録された最高温度は3200Kに等しく、最低温度は1750Kに等しい。
重複度を測定することで、指標の値を設定することができ、Isq=50.91%及びIqop=49.09%である。
過大品質ゾーン及び最適品質ゾーンの2種類のみ存在する。不十分品質ゾーンは存在しない。
スキャンピッチを大きくすることで重複は改善されたが、これは十分ではない。
【0029】
95μm以上の一定ピッチでは、不十分品質領域が発生し、これは粉体層内に未溶融ゾーンを生成することに留意されたい。
重複度が大きいと、過熱ゾーンに加えて、スパッタリング及び部品の欠陥が発生し、長い生産時間につながることに留意されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
従って、未溶融ゾーンを回避しかつ製造時間を短縮しながら、粉体層内により均一な熱分布を保証するために、隣接経路の重複を最適化するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明の全体的な目的は、従来技術の付加製造プロセスの問題点を解消することである。
特に、本発明の1つの目的は、プロセス中の温度フィールドをより良く制御する方法、及び粉体層内でより均一な熱分布を保証する方法を提供することである。
【0032】
本発明の別の目的は、未溶融ゾーンを回避しながら、レーザースキャン軌跡の隣接経路の重複を最適にする方法を提供することである。
本発明の他の目的は、生産時間を短縮する方法を提供することである。
【0033】
この目的は、3次元物体の選択的付加製造のためにレーザービームがたどる軌跡を決定する方法によって本発明の文脈内で達成され、レーザービームは、粉体層に向かって放射され、粉体層を溶融させるために、複数の隣接経路で構成されている軌跡に沿って移動することが意図され、隣接経路は、
a)所定の基準経路上で、複数の基準ポイントを決定するステップと、
b)基準経路の同じ側に位置する複数の隣接ポイントを決定するステップであって、各隣接ポイントは基準ポイントに関連付けられ、隣接ポイントを囲むシミュレートされた隣接溶融ゾーン及び基準ポイントを囲むシミュレートされた基準溶融ゾーンが、所定の最小割合と所定の最大割合との間に含まれる、シミュレートされた基準溶融ゾーンの横方向幅の割合に対応する重複を有するようなものである、ステップと、
c)決定された複数の隣接ポイントを通過する隣接経路を決定するステップと、
d)新しい基準経路として定義された隣接経路を使用して、ステップa)からc)を反復するステップであって、各反復において、新しい隣接経路を決定するようになっており、こうして決定されたすべての隣接経路は、レーザービームがたどることが意図された軌跡を定義し、軌跡は、選択的付加製造装置の制御ユニットに記憶及び/又は伝送される、ステップと、
を実行することで決定される。
【0034】
このような方法は、単独で又は組み合わせて実行される以下の様々な特徴によって有利に補われる。
複数の隣接ポイントを決定するステップは、軌跡の1つの移動方向における各隣接ポイントに対して、
-隣接ポイントに関連する基準ポイントについて、シミュレートされた基準溶融ゾーンの横方向幅を推定するステップと、
-隣接ポイントの可能な位置を決定するステップであって、隣接ポイントの可能な位置と基準ポイントの位置とを隔てる距離は、シミュレートされた基準溶融ゾーンの横方向幅と所定の目標重複度との積に等しく、隣接ポイントは、基準ポイントでの基準経路と直交し、粉体層の平面に含まれ、基準経路から隣接経路に向けられた方向で、基準ポイントに対して配置される、ステップと、
-2次ステップをループで実行するステップと、
を連続的に含み、
2次ステップは、
--シミュレートされた隣接溶融ゾーンの可能な横方向幅を推定するステップと、
--シミュレートされた基準溶融ゾーンとシミュレートされた隣接溶融ゾーンの間の可能な重複を推定するステップと、
--推定された可能な重複が、シミュレートされた基準溶融ゾーンの所定の最小割合より小さいか又は所定の最大割合より大きい割合に対応する場合、隣接ポイントの可能な位置を修正しながら、2次ステップのループを再開するステップと、
を含み、
方法は、推定された可能な重複と、シミュレートされた基準溶融ゾーンの横方向幅と目標重複度との積に等しい目標重複との間の非類似度を決定するステップをさらに含み、
目標重複度は15%に等しく、最小比率は12%に等しく、最大比率は18%に等しく、
シミュレートされた基準溶融ゾーンとシミュレートされた隣接溶融ゾーンとの間の可能な重複を推定するために、隣接ポイントの可能な位置と基準ポイントの位置とを隔てる距離が、シミュレートされた基準溶融ゾーンの横方向幅とシミュレートされた隣接溶融ゾーンの可能な横方向幅の合計の半分から減算され、
2次ステップのループを再開する際に、隣接ポイントの可能な位置と基準ポイントの位置とを隔てる距離が、距離と非類似値との間の差分に置き換えられるように隣接ポイントの可能な位置が修正され、非類似値は、推定された可能な重複と、シミュレートされた基準溶融ゾーンの横方向幅と目標重複度の積との間の非類似値であり、
粉体層上に位置する調査ポイントを囲むシミュレートされた溶融ゾーンの横方向幅を推定するステップは、
-複数の計算ポイントを決定するステップであって、計算ポイントは、調査ポイントの近傍に位置する粉体層のポイントであるステップと、
-計算ポイントの各々における最高到達温度を推定するステップであって、推定は、調査ポイントへのレーザービームの経路の上流の複数の経路上に位置する上流ポイントを囲む粉体層のゾーンを固化するようなレーザービームの放射に起因する温度変化に依存し、さらに、推定は、調査ポイントを囲む前記粉体層のゾーンを固化するようなレーザービームの放射に起因する、計算ポイントでの前記粉体の温度変化に依存する、ステップと、
-このように推定された最高到達温度と、粉体の融点とを比較するステップ。
-計算ポイントのうち、最高到達温度の推定値が粉体の融点以上である溶融ポイントを特定するステップと、
-溶融ポイントが占めるゾーンの横方向幅を推定するステップと、
を含み、
計算ポイントにおける最高温度を推定するステップは、
-各上流ポイントについて、上流ポイントを囲む粉体層のゾーンを固化するようなレーザービームの放射に起因する、計算ポイントでの粉体の温度変化の推定値を計算するステップと、
-上流ポイントを囲む粉体層のゾーンを固化するようなレーザービームの放射に起因する計算ポイントでの粉体の温度変化の推定値を計算するステップと、
-調査ポイントを囲む粉体層のゾーンを固化するようなレーザービームの放射に起因する計算ポイントでの粉体の温度変化の推定値を計算するステップと、
-調査ポイント又は上流ポイントを囲む粉体層のゾーンを固化するようなレーザービームの放射に起因する、温度変化の推定値に応じて、計算ポイントでの粉体の温度の推定値を計算するステップと、
-計算ポイントにおける最高温度の推定値を計算するステップと、
を含み、
各上流ポイントについて、上流ポイントを囲む粉体層のゾーンを固化するようなレーザービームの放射に起因する計算ポイントでの粉体の温度変化の推定値を推定するステップは、
-上流ポイントの各々について、調査ポイントと上流ポイントを隔てる距離を計算するステップと、
-距離を所定の空間的近接距離と比較するステップと、
-調査ポイントから空間的近接距離以上離れた上流ポイントの各々について、上流ポイントを囲む粉体層を固化するようなレーザービームの放射に起因する、計算ポイントでの粉体の温度変化をゼロと推定するステップと、
を含み、
上流ポイントについて、上流ポイントを囲む粉体層のゾーンを固化するようなレーザービームの放射に起因する、計算ポイントでの粉体の温度変化を推定するステップは、
-上流ポイントに各々について、上流ポイント囲む粉体層のゾーンを固化するようなレーザービームの放射と、調査ポイントへのレーザービームの移動とを分離する持続時間を計算するステップと、
-持続時間を所定の時間的近傍持続時間と比較するステップと、
-計算された持続時間が時間的近傍持続時間よりも大きい上流ポイントの各々について、上流ポイントを囲む粉体層のゾーンを固化するようなレーザービームの放射に起因する、計算ポイントでの粉体の温度変化をゼロと推定するステップと、
を含む。
【0035】
また、本発明は、粉体層から3次元物体を選択的に付加製造するためのプロセスに関し、このプロセスは、選択的付加製造装置において、
-付加製造用の粉体層をキャリア又は先に固化された層に施すステップと、
-複数の隣接経路で構成されている軌跡に沿って粉体層にレーザービームを放射するステップであって、経路上でのレーザービームの移動が粉体層を溶融させるステップと、
を含み、
軌跡は、上記のような軌跡決定方法により決定され、軌跡は、選択的付加製造装置の制御ユニットに記憶及び/又は伝送される。
【0036】
また、本発明は、粉体層から3次元物体を選択的に付加製造するための選択的付加製造装置に関し、この装置は、
水平プレートの上方に位置する粉体リザーバと、
金属粉体をプレートに分配するための機構であって、粉体の複数の層を連続的に広げるように構成された機構と、
レーザー光源と、レーザービームを複数の隣接経路で構成されている軌跡をたどって粉体層に照射するようにレーザー光源を制御するように構成され、経路上のレーザービームの移動が粉体層を溶融させるようになっている、制御ユニットと、
制御ユニットと通信し、上記のような軌跡決定方法を実行することによって決定される軌跡が格納されているメモリと、
を備える。
【0037】
このような装置は、有利には、上記に示されたような軌跡決定方法を実行するのに適したコンピュータによって補うことができる。
最後に、本発明は、コンピュータ上で実行されるときに、上記に示されたような軌跡決定方法の少なくとも1つのステップを実行するのに適した命令を含むコンピュータプログラムに関する。
【0038】
本発明のさらなる特徴及び利点は、単に例示的かつ非限定的であり、添付の図面と併せて読む必要がある以下の説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】2つの隣接経路を含むレーザースキャン軌跡の概略図であり、すでに提示されている。
図2】公知技術によるレーザースキャン軌跡の概略図であり、すでに提示されている。
図3】公知技術によるレーザービームによって粉体層をスキャンした場合に、粉体によって到達する最高温度のフィールドを概略的に示し、すでに提示されている。
図4】本発明によるレーザースキャン軌跡を決定するための方法を概略図である。
図5】本発明によるレーザースキャン軌跡を決定するための方法の概略図である。
図6】レーザースキャン軌跡を概略的に示す。
図7】レーザースキャン軌跡に関連する重複度を概略的に示す。
図8】レーザースキャン軌跡に関連するスキャンピッチを概略的に示す。
図9】レーザースキャン軌跡に沿って粉体層をレーザービームによってスキャンした場合に粉体が到達する最高温度のフィールドを概略的に示す
図10】公知技術によるレーザースキャン軌跡の概略図である。
図11】公知技術によるレーザースキャン軌跡に関連する重複度を概略的に示す。
図12】公知技術によるレーザースキャン軌跡に関連する重複度を概略的に示す。
図13】レーザースキャン軌跡の概略図である。
図14】レーザースキャン軌跡に関連するスキャンピッチを概略的に示す。
図15】レーザースキャン軌跡に関連する重複度を概略的に示す。
図16】公知技術によるレーザースキャン軌跡の概略図である。
図17】公知技術によるレーザースキャン軌跡に関連する重複度を概略的に示す。
図18】レーザースキャン軌跡の概略図である。
図19】レーザースキャン軌跡に関連するスキャンピッチを概略的に示す。
図20】ある重複構成におけるシミュレートされた溶融ゾーンの概略図である。
図21】別の重複構成におけるシミュレートされた溶融ゾーンの概略図である。
図22】粉体層のあるポイントの空間的近傍及び時間的近傍を決定する方法を概略的に示す。
図23】粉体層のあるポイントの空間的近傍及び時間的近傍を概略的に示す。
図24】本発明の1つの可能性のある実施形態による付加製造装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
隣接経路から形成された付加軌跡
例えば図4に示される、再帰的に決定される複数の隣接経路から形成される軌跡を構築することができる方法が提供される。
この方法は、3次元物体の選択的付加製造のためのレーザービームがたどる軌跡を決定することができ、レーザービームは、粉体層を溶融させるために、粉体層に向かって放射され、複数の隣接経路で構成されている軌跡に沿って移動することが意図され、経路は、以下のステップを実施することによって決定される。すなわち、
a)所定の基準経路Ti上に、複数の基準ポイントTijを決定するステップ、
b)基準経路の同じ側に位置する複数の隣接ポイントTi+1jを決定するステップであって、各隣接ポイントTi+1jは、基準ポイントTijと関連付けされ、隣接ポイントTi+1jを囲むシミュレートされた隣接溶融ゾーン及び基準ポイントTijを囲むシミュレートされた基準溶融ゾーンは、所定の最小割合αminと所定の最大割合αmaxとの間に含まれる、シミュレートされた基準溶融ゾーンの横方向幅の割合に対応する重複を有するようになっている、ステップ、
c)決定された複数の隣接ポイントを通過する隣接経路Ti+1を決定するステップ、
d)新しい基準経路として定義された隣接経路を使用して、ステップa)からc)を反復するステップであって、各反復において、新しい隣接経路を決定するようになっており、このように決定されたすべての隣接経路は、レーザービームがたどることが意図された軌跡を定義し、この軌跡は、選択的付加製造装置の制御ユニットに記憶及び/又は伝送される、ステップ、
である。
【0041】
基準経路Tiは、本方法の開始時に最初に選択されているので、又は本方法の間に決定され、その後、新しい隣接経路を決定するために使用されるので、予め決定されている。
各基準ポイントに対して、隣接ポイントが決定される。基準経路内で決定される基準ポイントの数は、隣接経路の比較的良好な又は不良な定義を与える。選択された基準ポイントの数が多いほど、隣接経路はより良好に定義される。基準ポイントの数は、特に、隣接経路の予想される長さに応じて選択することができる。
【0042】
各基準ポイントについて、関連する隣接ポイントの決定は、2つのシミュレートされた溶融ゾーンを考慮する。すなわち、隣接ポイントTi+1jを囲むシミュレートされた隣接溶融ゾーン及び基準ポイントTijを囲むシミュレートされた基準溶融ゾーンである。これは、決定された軌跡をレーザーがスキャンした場合に液体になるであろう隣接ポイント又は基準ポイントを囲む粉体層の領域の推定を行うことである。
【0043】
より正確には、本方法は、推定された重複度が所定の最小割合(αmin)と所定の最大割合(αmax)との間に含まれるように、2つのシミュレートされた溶融ゾーンの間の重複を考慮に入れる。
シミュレートされた溶融ゾーンの間の重複度は、レーザービームによって最初にスキャンされた隣接経路(ここでは基準経路)に関連する溶融ゾーンの横方向幅に対する重複の比率に等しい。
【0044】
溶融ゾーンの事前推定により、許容間隔内の重複を得るように、隣接ポイントを基準ポイントに対して配置することができる。
従って、本方法の間に生成される溶融領域の重複が最適化される。従って、最初のレーザースキャンですでに溶融しているゾーンの完全な再溶融、又は粉体層の未溶融部分の存在を回避することができる。
最大割合αmaxを設定することにより、過熱ゾーンを制限することができ、最小割合αminを設定することにより、未溶融ゾーンを制限することができる。このようにして、製造プロセス中の温度フィールドの均一性の制御が向上する。
【0045】
軌跡決定方法は、複数の隣接ポイントTi+1jの決定に規定することができ、この決定方法は、隣接ポイントTi+1jごとに、軌跡の一方向の移動において、以下のステップを順次、含むことができる。すなわち、
-隣接ポイントTi+1jに関連する基準ポイントTijに関して、シミュレートされた基準溶融ゾーンの横方向幅Lijを推定するステップ、
-隣接ポイントTi+1jの可能な位置を決定するステップであって、隣接ポイントTi+1jの可能な位置を基準ポイントTijの位置から分離する距離は、シミュレートされた基準溶融ゾーンの横方向幅と所定の目標重複度αcの積に等しく、隣接ポイントTi+1jは、基準ポイントTijに対して、基準ポイントTijにおける基準経路Tiと直交し、粉体層の平面に含まれて基準経路Tiから隣接経路Ti+1へ向かう方向で配置されている、ステップ、
-以下の2次ステップをループで実行するステップ、すなわち、
--シミュレートされた隣接溶融ゾーンの可能な横方向幅Li+1jを推定するステップ、
--シミュレートされた基準溶融ゾーンとシミュレートされた隣接溶融ゾーンとの間の可能な重複を推定するステップ、
--推定された可能な重複が、シミュレートされた基準溶融ゾーンの所定の最小割合より小さいか又は所定の最大割合より大きい割合に対応する場合、隣接ポイントTi+1jの可能な位置を修正しながら、二次ステップのループを再開するステップ、
である。
【0046】
上記の決定方法のステップb)は、この決定が各隣接ポイントTi+1jについて連続的に実施されるという点で、最初に規定することができる。隣接ポイントが決定されると、次の隣接ポイントが決定され、特に、レーザーによるレーザースキャン軌跡の移動方向における次の隣接ポイントが決定される。
【0047】
この決定は、シミュレートされた基準溶融ゾーンの横方向幅Lijを推定することを含む。この横方向幅は、基準経路に直交する方向における基準溶融ゾーンの全横方向幅である。この横方向幅Lijは、基準ポイントTijの上流に位置するレーザースキャン軌跡の部分に依存する。これは、基準ポイントの上流及び基準ポイント自体までの軌跡に沿ってレーザーによって粉体層に与えられるエネルギーに依存する、固化前の温度に依存する。横方向幅Lijを推定するために、隣接ポイントTi+1jの位置を決定する必要はない。
【0048】
隣接ポイントTi+1jの位置は、反復して決定される。隣接ポイントTi+1jの初期の可能な位置は、シミュレートされた基準溶融ゾーンの横方向幅Lijと、所定の目標重複度αcとに基づいて計算される。
所定の目標重複度は、達成することが望ましい理想的な重複度である。上述したように、これは15%に等しく、次の隣接経路に隣接する経路の粉体層の溶融の連続性を保証することを可能にすることができる。
【0049】
横方向幅Lijに目標重複度αcを乗じた積は、基準ポイントTijと隣接ポイントTi+1jの初期可能位置との間の距離を与える。隣接ポイントTi+1jは、基準ポイントTijでの基準経路Tiと直交し、粉体層の平面に含まれ、基準経路Tiから隣接経路Ti+1へ向かう方向に配置される。
次に、隣接ポイントTi+1jの可能な位置は、2次ステップのループで反復的に改善される。より正確には、基準ポイントTijと可能な隣接ポイントTi+1jとの間の距離が調節され、基準ポイントTijに対する可能な隣接ポイントの位置は、常に、基準経路Tiと直交する方向に配置され、粉体層の平面に含まれ、基準経路Tiから隣接経路Ti+1へ向けられる。
【0050】
2次ステップの最初のステップは、シミュレートされた隣接溶融ゾーンLi+1jの可能な横方向幅を推定するステップを含む。隣接ポイントが軌跡の方向に順次決定されるので、決定される過程で隣接ポイントの上流に位置する軌跡の部分は、既に設定されていることになる。これにより、固化前の温度を決定することができ、この温度は、決定される過程で隣接ポイントの上流の軌跡をスキャンするレーザーによって粉体層に供給されるエネルギーと、隣接ポイントの可能な位置を通過する軌跡の可能な継続部をスキャンするレーザーによって粉体層に供給されるエネルギーとに依存する。この供給されたエネルギーは既知であるので、隣接する溶融ゾーンの可能な横方向幅を推定することが可能である。この横方向幅は、特に、隣接経路に直交する方向における隣接溶融ゾーンの可能な全横方向幅とすることができる。
【0051】
シミュレートされた基準溶融ゾーンの横方向幅Lij、シミュレートされた隣接溶融ゾーンの可能な横方向幅、基準ポイントの位置、及び隣接ポイントの可能な位置が分かっているので、シミュレートされた基準溶融ゾーンとシミュレートされた隣接溶融ゾーンとの間の可能な重複を推定することが可能である。
推定された可能な重複の得られた値に応じて、2次ステップを反復するか否かが決定される。
【0052】
推定された可能な重複が、所定の最小割合と所定の最大割合との間に含まれるシミュレートされた基準溶融ゾーンの割合に対応する場合、隣接ポイントの可能な位置は、隣接ポイントの許容位置であり、これは有効である。本方法は、軌跡のスキャン方向における次の隣接ポイントの決定を継続する。
そうでない場合は、隣接ポイントの新しい可能な位置を使用して、第2のステップが反復される。この新しい位置は、特に、推定された可能な重複の得られた値を考慮することができる。重複が大きすぎる場合、隣接ポイントの新しい可能な位置は基準ポイントから遠くなり、重複が小さすぎる場合、隣接ポイントの新しい可能な位置は基準ポイントに近くなる。
【0053】
以下の表記法を導入することができる。隣接ポイントTi+1jを決定するための2次ステップのループのk番目の反復において、Ti+1j(k)は隣接ポイントの可能な位置、dij(k)は基準ポイントTijと隣接ポイントの可能な位置Ti+1j(k)を隔てる距離、Li+1j(k)はシミュレートされた隣接溶融ゾーンの可能な横方向幅、Lijαij(k)はシミュレートされた基準溶融ゾーンとシミュレートされた隣接溶融ゾーンとの推定された可能な重複、αij(k)は関連重複度である。
【0054】
図5は、上記の方法を説明する。
最初に、プロセスのパラメータ(レーザー出力、レーザービーム又はレーザービームと粉体層との間の交点に位置するレーザービーム断面の半径、レーザースキャン軌跡に沿ったレーザービームの移動速度)、材料の物理パラメータ(熱伝導率、熱容量、密度、融点)、第1の基準経路、最小割合αmin、及び最大割合αmaxを提供することが必要である。
【0055】
次に、熱シミュレーションが経路T1上で行われる。すなわち、一方では、ある数の基準ポイントT1jが選択され、他方では、シミュレートされた基準溶融ゾーンがこれらのポイントの各々に関して推定される。
具体的には、様々な溶融ゾーンの幅L1jが推定される。
次に、決定しようとしている経路T2上の隣接ポイントの最初の可能な位置T2j(1)が決定される。
【0056】
j=1に対応する最初の隣接ポイント、すなわち、軌跡の方向にレーザーによってスキャンされる経路T2の最初のポイントに関して、シミュレートされた隣接溶融ゾーンの可能な横方向幅L21(1)が推定され、これは、ポイントT21(1)の周りの熱シミュレーションの対象である。
ここから重複度α21(1)を抽出して、最小値αmin及び最大値αmaxと比較することができる。
【0057】
推定値α21(1)がその限界値の間の値を有する場合、隣接ポイントT21(1)の現在の可能な位置は有効である。そうでなければ、この可能な位置は新しい位置T21(2)に変更され、隣接ポイントT21に対する熱シミュレーションステップ及び重複度の推定ステップが再び実行される。
【0058】
隣接ポイントT21の位置が有効になった場合、jの値が増加される、すなわち、隣接経路のレーザーのスキャン方向における次の隣接ポイントに移る。このステップは同じであり、今回使用する基準ポイントはポイントT12であり、事前に設定された隣接ポイントT21の位置を考慮して、ポイントT22の周りで熱シミュレーションを行うステップである。
その他、隣接経路T2のスキャン方向に隣接ポイントが決定される。
【0059】
決定される隣接ポイントの数は、最初に選択された基準ポイントの数によって与えられ、図5における値「j final」に相当する。すべての隣接ポイントが決定されると、結果として隣接経路T2が決定される。
本方法は、新しい隣接経路の決定の開始に進み、その基準経路は、直前に決定された隣接経路である。本方法は、経路の数「i final」が決定される場合に中断することができる。
【0060】
推定された重複Lijαij(k)が、所定の最小割合αminと所定の最大の割合αmaxとの間に含まれる、シミュレートされた基準溶融ゾーンの割合に対応するか否かを決定するために、推定された可能な重複と、シミュレートされた基準溶融ゾーンの横方向幅Lijと上述の目標重複度αcとの積に対応する目標重複との間の非類似値を計算することができる。
【0061】
非類似値が、シミュレートされた基準溶融ゾーンの横方向幅と所定の閾値重複度αsとの積よりも絶対値で大きい場合、推定された可能な重複は、シミュレートされた基準溶融ゾーンの、所定の最小割合αminよりも小さい又は所定の最大割合αmaxよりも大きい割合に対応することができる。
この状況は、一方では、最大割合αmaxが、目標重複度αcと閾値重複度αsとの和に等しく、他方では、最小割合αminが、目標重複度αcと閾値重複度αsとの差に等しい場合に可能である。
これは特に、最大割合がαmax=18%に等しく、最小割合がαmin=12%に等しい場合にあてはまり、αc=15%に等しい目標重複度及びαs=3%に等しい閾値重複度を選択することができる。
【0062】
同心円で形成される軌跡への適用
本決定方法は、「背景技術」で提示したように、同心円から形成される軌跡の場合に実行される。
第1の円は、第1の基準経路T1として使用し、本方法を用いて、以下の円形の隣接経路を決定し、それぞれの新しい隣接経路は、先に決定された経路の外側に位置する。本発明は、以下の値を用いて実行した。すなわち、最大割合はαmax=18%、最小割合はαmin=12%、目標重複度はαc=15%、閾値重複度はαs=3%に等しい。
図6に、内側から外側への同心円状の軌跡の計算結果を示す。
【0063】
この決定方法により、最小割合と最大割合との間の許容間隔に常に含まれる重複度に対応する適応軌跡を得ることができる。図7は、様々な同心円で形成される軌跡の長さの関数としての重複度70を示す。軌跡の長さは、様々な円で形成された軌跡上の、軌跡のスキャン方向における曲線位置に対応する。ゼロに等しい軌跡の長さは、第1の経路T1の始まりに相当する。
この状況は、最適品質指標が1に等しい理想的な場合に相当する。従って、適応軌跡は、軌跡に沿ったすべてのポイントで、隣接経路を囲む溶融ゾーンの間の重複に関して等品質をもたらす。
【0064】
図8は、図6に示した軌跡のスキャンピッチの変化を説明する図である。曲線80は、様々な同心円から形成された軌跡の長さの関数として、1つの円と次の外側の円を隔てる距離を示す。曲線80の急変は、1つの円から次の外側の円への移行を反映する。軌跡の開始点でのピッチは85μmに等しく、その後、109μmまで増加する。中心から離れるにつれて、スキャンピッチは全体的に95μmに減少するが、これは溶融ゾーンの横方向幅の減少に対応する。
このように、溶融ゾーンの間の重複は許容間隔内に維持される。
軌跡の特定の円のスキャンピッチを増加させることにより、軌跡の全長を減少させることができ、結果的に製造時間が短くなることに留意されたい。
【0065】
表1は、同心円で形成された軌跡のタイプについて想定される様々なケースの軌跡の長さの概要を示す。
【表1】
【0066】
適応軌跡により、軌跡全長は、初期レシピに対して約29%増加し、ピッチ95μmの修正レシピに対して14%増加することができる。
図9は、図6に示した適応軌跡に沿ってレーザービームによって粉体層をスキャンした場合に粉体が到達した最高温度フィールドを示す。
記録された最高温度は3150Kに等しく、最小値は1700Kに等しい。
最高温度フィールドの最大値は、図3に示された70μmに等しい固定ピッチのレシピの場合に得られた最高温度3300Kと比べると低い。
【0067】
螺旋状軌跡への適用
図10は、円盤形状を有する部品を製造するために選択することができる別のタイプのレーザースキャン軌跡を概略的に示す。円盤形状を連続した螺旋状軌跡でスキャンすることができる。図10は、70μmに等しいスキャンピッチに対応する。レーザーは、領域を内側から外側へスキャンする。
この領域で到達する最大粉体温度のフィールドを規定し、このフィールドで3300Kに等しい最大値及び2350Kに等しい最小値を測定することができる。
【0068】
図10でスキャンピッチ70μmの場合、図10に示す軌跡の重複度の測定値は、図11の曲線110で与えられる。これは、軌跡の開始点(軌跡の長さがゼロに等しい)、すなわち螺旋の中心での100%から変化する。重複度は、螺旋の外縁で40%に減少する。従って、過大品質指標は100%に等しい。
【0069】
重複度を減少させるために、95μmに等しいより大きなセットのスキャンピッチを使用することができる。この新しいピッチでは、その領域で到達する最大粉体温度のフィールドを規定し、このフィールで3200Kに等しい最大値及び1950Kに等しい最小値を測定することができる。
【0070】
図12は、95μmに等しい一定ピッチの螺旋状軌跡の重複度120の測定値を概略的に示す。スキャンピッチを95μmに設定することで、領域の端部、すなわち軌跡長が長い場合に重複度を減少させることができた。最適品質指標は63.96%であった。軌跡の開始点、すなわち螺旋の中心部での重複度は、依然として最大許容値より大きい。過大品質指標は36.04%である。
【0071】
軌跡決定方法の実行は、螺旋状軌跡の場合に適用することができる。プロセスの開始時に設定された基準経路は、重複度が最大割合αmax=18%と最小割合αmin=12%との間に含まれるように大きさが設定された螺旋旋回に対応する。
【0072】
図13は得られた適応軌跡を示し、図14は適応軌跡上の位置の関数としてのスキャンピッチを示す。
軌跡の開始点、すなわち螺旋の中心点におけるピッチは125μmに等しく、ピッチの最小値は103μmに等しい。この適応軌跡に関連する最高温度フィールドにおいて、記録された最大値は3100Kに等しく、最小値は1800Kに等しい。
【0073】
図15は、適応軌跡150上の位置の関数として重複度を示す。曲線150の全体が最適品質ゾーンに含まれており、最適品質比率100%に対応する。
【0074】
また、適応軌跡は、軌跡の長さを減少させることができる。表2には、設定されたピッチレシピの場合と適応軌跡の場合の2つの場合の軌跡の長さが記載されている。
【表2】

適応軌跡は、初期レシピで計算した軌跡に対して、約38%の減少を可能にする。
【0075】
四角星形状の部品への適用
図16は、四角星形状の部品を製造するために選択することができるレーザースキャン軌跡を概略的に示す。図16は、70μmに等しいスキャンピッチに対応する。
軌跡は、ゾーンAの螺旋の中心からレーザーによってスキャンされる。次に、レーザーは、ゾーンB、C、D、及びEの順序でアームをスキャンする。各ゾーンB、C、D、E内の軌跡の部分は、部品の内側から外側に向かってスキャンされる円弧状の隣接経路で構成されている。
【0076】
この軌跡に関して、その領域で到達する最大粉体温度のフィールドを規定し、このフィールドで3500Kに等しい最大値及び2500Kに等しい最小値を測定することができる。
最高到達温度は、ゾーンAの中心部の方がゾーンAの外側よりも高い。四角星のアーム内、すなわちゾーンB、C、D、E内では、最高到達温度はゾーンAの中心部よりも高い。円弧状の隣接経路の長さがアーム内で徐々に減少するにつれて、最高到達温度は上昇し、各アームの外側端で過熱ゾーンが出現する。円弧状に隣接する軌跡の長さが徐々に短くなるにつれて、最高到達温度は上昇し、各軌跡の外側端に過熱ゾーンが出現する。
【0077】
重複度が大きくなると、最高温度が増加する。図17は、軌跡に沿った重複度の変化を概略的に示す。
星の中心、つまり軌跡の開始点(図17では軌跡の長さは0に等しい)において重複度は100%であり、その後40%に減少する。次に、曲線には4つの変動パターンがある。各変動パターンは、80%への増加、それに続く50%以下への急落段階を含む。各変動パターンは、1つのアームのスキャンに対応する。重複度はアームのスキャン中に増大し、スキャンの終わり頃に最高値に達する。次のアームのスキャンの始まりは、重複度の急落に対応する。
過大品質指標Isqは100%に等しい。
【0078】
スキャンピッチを95μmにすることで、最高到達温度及び重複度の両方を減少させることができる。
粉体最高到達温度のフィールドは、95μmピッチの星形軌跡の場合、3200Kに等しい最大値及び2000Kに等しい最小値を示す、
最適品質指標Iopは12.25%に等しい。しかしながら、重複度は、軌跡の大部分において最大割合より大きいままであり、過大品質指標Isqは87.75%である。
【0079】
軌跡決方法の実行は、四角星形状の軌跡の場合に適用することができる。プロセスの開始時に設定された基準経路は、重複度が最大割合αmax=18%と最小割合αmin=12%との間に含まれるようにその大きさが設定された螺旋旋回に対応する。
【0080】
図18は得られた適応軌跡を示し、図19は適応軌跡上の位置の関数としてのスキャンピッチを示す。
ピッチの値は、軌跡の始まり、すなわち図18に示す螺旋の中心Aにおいて125μmで最大である。
その後、レーザーがこのゾーンAをスキャンするとピッチは減少する。
次に、ピッチの曲線には、4つの変動パターンがある。各変動パターンは、120μmまでの増加、それに続く115μm以下への減少を含む。各変動パターンは、1つのアームのスキャンに対応する。
【0081】
ピッチの最小値は100μm(11mmと12mmとの間の曲線長さ)として記録される。この値は、最後のアームEの第1の隣接経路に対応する。先の3つのアームB、C、Dをスキャンするのに要した時間の結果として、レーザーによって供給されたエネルギーが消散してしまっている。従って、アームEの第1の経路に沿った粉体の固化前の温度は、アームBの第1の経路の場合よりもかなり低い。ゾーンAのアームEに近い部分の溶融ゾーン及びアームEの第1の経路の周囲のゾーンが一緒になるのを保証するためには、スキャンピッチを減少させる必要がある。
【0082】
関連する最高温度フィールドにおいて、言及される最大値は3150Kに等しく、最小値は1800Kに等しい。
適応軌跡上の位置の関数としての重複度は、常に最適品質ゾーンに含まれており、最適品質比率100%に対応する。
適応軌跡は、この場合も軌跡の長さを減少させることができる。表3には、設定されたピッチレシピの場合と適応軌跡の場合の2つの場合の軌跡の長さが記載されている。
【表3】

適応軌跡は、初期レシピで計算した軌跡に対して、約36%の減少を可能にする。
【0083】
重複の推定例
シミュレートされた基準溶融ゾーンとシミュレートされた隣接溶融ゾーンとの間の可能な重複を推定するために、隣接ポイントの可能な位置(Ti+1j)と基準ポイントの位置(Tij)を隔てる距離が、シミュレートされた基準溶融ゾーンの横方向幅とシミュレートされた隣接溶融ゾーンの可能な横方向幅の合計の半分(1/2)から減算される。
図20及び図21はこの推定を説明するものであり、これは、位置ベクトル番号31、41の基準ポイントを囲むシミュレートされた基準溶融ゾーン38、48と、位置ベクトル番号32、42の隣接ポイントの可能な位置を囲むシミュレートされた隣接溶融ゾーン39、49との間の重複の2つの異なる構成のシミュレートされた溶融ゾーンの概略表現に基づいて説明される。
【0084】
図20の溶融ゾーン38は、位置ベクトル番号31の基準ポイントTijを囲む。溶融ゾーン38の全横方向幅36は、表現Lijに対応する。
さらに、図20のベクトル番号34の方向には、位置ベクトル番号32の隣接ポイントTi+1jの可能な位置を囲む溶融ゾーン39が見出される。溶融ゾーン39の可能な全幅37は、可能な幅Li+1jに対応する。隣接ポイントの可能な位置(Ti+1j)と基準ポイントの位置(Tij)を隔てる距離は、図20では33で参照され、dijとして表すことができる。
【0085】
図20は、領域38と39とが交差し、共通の領域を有する状況に対応する。この状況では、図20において35で示される重複を推定することが可能であり、その値は次のように推定される。
【数4】
【0086】
図21の溶融ゾーン48は、位置ベクトル番号41の基準ポイントTijを囲む。溶融ゾーン48の全幅46は、表現Lijに対応する。
さらに、図21のベクトル番号44の方向には、位置ベクトル番号42の隣接ポイントTi+1jの可能な位置を囲む溶融ゾーン49が見出される。溶融ゾーン49の可能な幅47は、可能な幅Li+1jに対応する。隣接ポイントの可能な位置(Ti+1j)と基準ポイントの位置(Tij)を隔てる距離は、図21の43で参照され、dijとして表すことができる。
【0087】
図21は、面38と面39が交差せず、共通領域を持たない状況に対応する。この状況では、重複を推定することはできないが、図21において45で示される間隔を定義することが可能である。
【数5】
【0088】
上記のような軌跡決定方法を通して、2次ステップのループを再開する際に、隣接ポイント(Ti+1j)の可能な位置と基準ポイント(Tij)の位置とを隔てる距離が、この距離と非類似値との間の差分によって置き換えられるように隣接ポイントの可能な位置が修正され、非類似値は、推定された可能な重複と、シミュレートされた基準溶融ゾーンの横方向幅と目標重複度の積との間の非類似値である。
この場合、2次ステップを反復する前の隣接ポイントの新しい可能な位置Ti+1j(k+1)は、得られた推定重複度の値を考慮する。すなわち、重複度が大きすぎる場合、隣接ポイントの新しい可能な位置は基準ポイントから遠く、重複度が小さすぎる場合、隣接ポイントの新しい可能な位置は基準ポイントに近い。
【0089】
より正確には、推定された重複と、シミュレートされた基準溶融ゾーンの横方向幅と目標重複度の積との間の非類似値(Lijαij(k)-Lijαc)が用いられる。
隣接ポイントの可能な位置Ti+1j(k)と基準ポイントTijの位置を隔てる距離di+1j(k)は、隣接ポイントの新しい可能な位置Ti+1j(k+1)と基準ポイントTijの位置を隔てる新しい距離di+1j(k+1)に置き換えられる。これらの距離の関係は、以下の式、
i+1j(k+1)=di+1j(k)-(Lijαij(k)-Lijαc)
で与えられる。
これにより、隣接ポイントの新しい可能な位置Ti+1j(k+1)を提供することができる。
【0090】
レーザーでスキャンされた軌跡のポイントを囲むシミュレートされた溶融ゾーンの横方向幅の推定
選択的付加製造レーザービームがたどる軌跡を決定するための上述の方法のうちのいくつかは、特定の経路の特定のポイント、例えば基準経路の基準ポイント又は隣接ポイントの可能な位置にあるポイントを囲むシミュレートされた溶融ゾーンの横方向幅の推定を必要とする場合がある。この特定のポイントは、調査ポイントと呼ぶことができ、調査ポイントを囲むシミュレートされた溶融ゾーンの横方向幅は、以下に説明するステップを実施することによって推定することができる。
【0091】
第1のステップでは、調査ポイントの近傍に位置する粉体層のポイントである複数の計算ポイントが決定される。
調査ポイントの近傍の範囲及びこの近傍内の計算ポイントの数により、一方では、得られた推定値の品質が決まり、他方では、推定値を得るために必要な計算時間が決まる。
推定値の品質及び計算時間の各々は、近傍領域の範囲が大きくなると又は計算ポイントの数が多くなると増加する。
【0092】
第2のステップでは、各計算ポイントにおける粉体の最高到達温度が推定される。この推定は、調査ポイントへのレーザービームの経路の上流に位置する軌跡の部分の上流のポイントを囲む粉体層のゾーンを固化するようなレーザービームの放射に起因する、調査ポイントでの粉体層の温度変化を考慮することができる。調査ポイントは、基準ポイント又は決定途中の隣接ポイントのいずれかであり、調査ポイントより上流に位置する軌跡の部分は、本方法の開始時から既知であるか又は本方法によって既に決定されている。
また、推定は、調査ポイントを囲む粉体層のゾーンを固化するようなレーザービームの放射に起因する、調査ポイントでの粉体層の温度変化を考慮することができる。同様に、推定は、先の粉体層が固化されることに起因する又は粉体層を加熱手段で予熱することに起因する調査ポイントでの粉体層の温度変化を考慮することができる。
【0093】
第3のステップでは、このようにして推定された最高温度と粉体の融点とを比較する。
【0094】
第4のステップでは、推定された最高温度が粉体の融点以上である計算ポイントが特定される。これらは、表現「溶融ポイント」で示すことができる。
これらの溶融ポイントのすべては、調査ポイントの周りにグループ化されて配置される。推定最高温度が粉体の融点よりも厳密に低いすべての計算ポイントは、溶融ポイントが占める領域の外側で、調査ポイントからより離れた場所に位置する。
溶融ポイントの分布が分かると、その内側に溶融ポイントが位置するゾーンの横方向幅を推定することができる。
このゾーンは、シミュレートされた溶融領域に対応する。このゾーンの推定精度は、選択された近傍のサイズが大きくなると及び計算ポイントの数が増えると高くなる。
【0095】
最後に、第5のステップでは、調査ポイントを囲む溶融ゾーンの横方向幅は、基準経路から隣接経路に向く方向で推定される。
【0096】
計算ポイントでの最高到達温度の推定
選択的付加製造レーザービームがたどる軌跡を決定するための上述の方法のいくつかは、レーザービームで粉体をスキャンするプロセス中に粉体層の計算ポイントでの粉体が到達する最高温度の推定を必要とする場合がある。
この推定は、以下に説明するステップの実行に基づいて、レーザースキャン軌跡の上流に位置する粉体層のゾーンを固化するように、計算ポイントで粉体層にレーザーによって与えられるエネルギーの拡散を考慮して実行することができる。
【0097】
第1のステップでは、各上流ポイントついて、上流ポイントを囲む粉体層のゾーンを固化するようなレーザービームの放射に起因する、計算ポイントでの粉体の温度変化を推定するための計算が実行される。
また、この計算は、調査ポイントを囲む粉体層のゾーンを固化するようなレーザービームの放射に起因する、計算ポイントでの粉体の温度変化を推定することができる。
上流ポイント又は調査ポイントを囲む粉体層のゾーンを固化するようなレーザービームの放射に起因する、計算ポイントでの粉体の温度変化は、一連の日付値である。温度変化は、調査ポイントへのレーザービームの通過時刻を含む推定時間間隔に位置する様々な時刻で推定される。推定時間間隔は、粉体の何らかの予熱、又は粉体層のゾーンの最初の固化から、粉体層のゾーンの最後の固化までの推定レシピの全持続時間である。
【0098】
上流ポイント又は調査ポイントのいずれかを囲む粉体層のゾーンを固化するために、レーザービームが時間uで放射されると仮定すると、粉体層のゾーンを固化するようなレーザービームの放射中に粉体層が受けるエネルギーはQで示される。
時間uに続く時間tにおける計算ポイントでの粉体の温度変化ΔTの推定は、以下のように記述することができ、
【数6】
ここで、εは粉体層の熱浸透率、Rはレーザービームの半径、aは粉体層の熱拡散率、t0は所定の時間、rは計算ポイントとポイント(上流ポイント又は調査ポイントであり、時刻uに固化される粉体層のゾーンに属する)との間の距離である。
【0099】
第2のステップでは、計算ポイントでの粉体の温度の推定値が計算される。ここでもこの推定値は一連の日付値である。計算ポイントでの粉体の温度は、推定時間間隔に位置する様々な時間において推定される。
この計算に、調査ポイントの上流に位置する軌跡の部分をスキャンして調査ポイントを囲む粉体層のゾーンを固化するようなレーザービームの放射を考慮する。時刻tにおける計算ポイントでの粉体の温度Tの推定は、以下のように記述することができ、
【数7】
ここで、T0は粉体の初期温度であり、
【数8】
は、時間tにおいて、レーザーによって固化された粉体層のゾーンで囲まれる上記の上流ポイント又は上記の調査ポイントのすべてにわたる合計に対応する。上記の式における表現「r」は、時間「u」の関数として変化することに留意されたい。
【0100】
第3のステップでは、計算ポイントでの粉体の温度の推定値を生じる一連の日付値から、計算ポイントで到達した最高温度として保持される最大値が抽出される。
【0101】
時間的近傍及び空間的近傍
計算ポイントの最高温度を求めるのにかかる時間は、推定の精度が高くなるほど、つまり上流ポイントの数が増えるほど長くなる。
推定品質を損なうことなく計算時間を制限するために、計算で考慮される上流ポイントの数を制限する空間的近傍Vl及び時間的近傍Vtを定めることができる。
【0102】
時間的近傍Vtは、軌跡セグメントのスキャンの熱的影響の持続時間を表す。この時間を超えると、スキャンされたセグメントの環境に拡散され、そのスキャン中に供給されるエネルギーの粉体の温度への影響は無視できると考えることができる。
空間的近傍Vlは、軌跡セグメントのスキャンによる熱的影響の最大距離を表す。この距離を超えると、スキャンされたセグメントの環境に拡散され、そのスキャン中に供給されるエネルギーの粉体の温度への影響は、無視できると考えることができる。
【0103】
無視できる特性は、温度閾値の差分DSを定義することを必要とする。この差分以下の温度変化に対応するスキャンの熱的影響は、無視できると考えられる。
時間的近傍Vt及び空間的近傍Vlは、図22に示される以下の方法を用いて決定することができる。
【0104】
第1のステップでは、以下の情報がコンピュータのメモリに格納される。すなわち、
-レーザースキャンプロセスのパラメータ(レーザー出力及びビーム、レーザースキャン速度)、
-材料のパラメータ(熱伝導率、熱容量、密度、融点、粉体の初期温度T0)、
-直線セグメントタイプの軌跡の座標、
である。
【0105】
第2のステップでは、コンピュータは、前のステップで定義された軌跡を含む予め定義された空間領域での粉体の温度の推定値を提供する。
コンピュータから提供される温度推定値は、レーザーによる軌跡全体のスキャンの終わりの粉体熱化時間の後にある所定の時間での粉体の温度に対応する。
この推定値は、上記で定義した要素、例えば、軌跡のあるポイントを囲む粉体層のゾーンを固化するようなレーザービームの放射に起因する、粉体層での温度変化の合計に基づいて計算することができる。
第2のステップの終わりに、所定の時間における所定の空間領域内の粉体の温度マップが得られる。
【0106】
第3のステップでは、第2のステップで得られた温度マップ内で、粉体の初期温度T0と温度閾値の差分DSの和T0+DSに対応する等温曲線が決定される。この等温曲線は、温度閾値の差分DSの温度上昇に対応する。
【0107】
第4のステップでは、空間的近傍は、前のステップで決定された等温曲線の2つのポイントの間の直線セグメントタイプの軌跡に垂直な方向の最大距離として決定される。
【0108】
第5のステップでは、時間的近傍は、第3のステップで決定された等温曲線の2つのポイントの間の直線セグメントタイプの軌跡の方向の最大距離のレーザーのスキャン速度に対する比率として決定される。
【0109】
図23は、空間的近傍及び時間的近傍を決定するために使用される距離を示す。
図23に示すX軸は、上記方法の第1のステップで規定された軌跡の直線セグメントの方向を表す。軌跡は、Xの値が増加する方向にスキャンされる。Y軸は、直線セグメントタイプの軌跡に垂直な方向を表す。
閉曲線100は、上記方法の第3のステップで規定された等温曲線を表す。
空間的近傍は、セグメント101の長さに対応する。
直線セグメントタイプの軌跡の方向において、第3のステップで決定された等温曲線の2つのポイントの間の最大距離は、セグメント102の長さに対応する。
セグメント102の長さとスキャン速度の比率によって、時間的近傍を規定することができる。
【0110】
空間的近傍V1及び時間的近傍Vtが決定されると、これらのデータは、選択的付加製造プロセス中に粉体が到達する最大温度を計算することを可能にする、温度変化を予め決定するためにかかる計算時間を制限するために使用することができる。
より正確には、各上流ポイントについて、上流ポイントを囲む粉体層のゾーンを固化するようなレーザービームの放射に起因する、計算ポイントでの粉体の温度変化の推定値の計算は、以下のステップを含むことができる。すなわち、
-各上流ポイントついて、調査ポイントとこの上流ポイントを隔てる距離を計算するステップ、
-この距離を所定の空間的近接距離と比較するステップ、
-調査ポイントから空間的近接距離以上離れた各上流ポイントについて、上流ポイントを囲む粉体層の領域を固化するようなレーザービームの照射に起因する、計算ポイントでの粉体の温度変化をゼロと推定するステップ、
である。
【0111】
また、各上流ポイントについて、上流ポイントを取り囲む粉体層のゾーンを固化するようなレーザービームの放射に起因する、計算ポイントでの粉体の温度変化の推定値の計算は、以下のステップを含むことができる。すなわち、
-各上流ポイントについて、上流ポイントを囲む粉体層のゾーンを固化するようなレーザービームの放射と、調査ポイントへのレーザービームの移動とを分離する持続時間を計算するステップ、
-この持続時間を所定の時間的近傍持続時間と比較するステップ、
-計算された持続時間が時間的近傍持続時間よりも大きい各上流ポイントついて、上流ポイントを囲む粉体層のゾーンを固化するようなレーザービームの放射に起因する、計算ポイントでの粉体の温度変化をゼロと推定するステップ、
である。
【0112】
選択的付加製造プロセス及び装置
粉体層から3次元物体を選択的に付加製造するためのプロセスが提供され、このプロセスは、付加製造装置において、
-付加製造用の粉体層をキャリア又は先に固化された層に施すステップと、
-複数の隣接経路で構成されている軌跡に沿って粉体層にレーザービームを放射するステップであって、これらの経路上でのレーザービームの移動が粉体層を溶融させるステップと、
を含み、軌跡は、上記の軌跡決定方法の1つを実施することによって決定され、軌跡は、選択的付加製造装置の制御ユニットに記憶及び/又伝送される。
【0113】
製造プロセスは、特に、粉体層から3次元物体122を選択的に付加製造するための装置121によって実施することができ、この装置は、
-水平プレート123の上方に位置する粉体リザーバ127と、
-金属粉体をプレートに分配するための機構124であって、粉体の複数の層を連続的に広げるように構成された機構124と、
-レーザー光源1212と、レーザービームを複数の隣接経路で構成されている軌跡をたどって粉体層に放射するようレーザー光源を制御するように構成された制御ユニット129と、
を備える。
【0114】
図24は、このような選択的付加製造装置121を示し、以下のものが示されている。
-水平なプレート123のようなキャリア。このキャリア上に付加製造粉体(金属粉体、セラミック粉体など)の様々な層が連続的に堆積され、3次元物体を製造することができる(図24ではもみの木形状の物体122)。
-プレート123の上方に位置する粉体リザーバ127。
-金属粉体をプレート上に分配するための機構124。この機構124は、例えば、粉体の様々な連続層を広げるためのドクターブレード125及び/又は層形成ローラーを備える(両頭矢印Aに沿って移動)。
-広げられた薄層を(完全に又は部分的に)溶融するための少なくとも1つのレーザー光源1212を含む組立体128。レーザー光源1212によって生成されたレーザービームは、粉体平面、すなわち粉体層がドクターブレード125によって広げられた平面において、広げられた薄層と接触する。
-装置121の各構成要素を制御する制御ユニット129。制御ユニット129は、所定の軌跡を記憶することができるメモリMに接続する。
-層が堆積されるとプレート123のキャリアを降下させることができる機構1210(両頭矢印Bに沿って移動)。
【0115】
図24を参照して説明した例では、少なくとも1つのガルバノメータミラー1214は、制御ユニット129から送られた情報に応じて、レーザー光源1212から出力されるレーザービームを物体122に対して配向して移動させることができる。もちろん、他の何らかの偏向システムを想定することができる。
装置121の構成要素は、空気又は不活性ガス処理回路に接続することができる密閉チャンバ1217の内部に配置される。さらに、空気又は不活性ガス処理回路は、密閉チャンバ1217内の圧力を大気圧以下又は大気圧以上に調整するように構成することができる。
【0116】
選択的付加製造装置121は、図24に示すように、製造プロセスが開始されると温度変化の推定値を決定するための、又はより一般的には上記に示したような軌跡決定方法の1つを実施するためのコンピュータCを含むことができる。
コンピュータCは、経路の様々なポイントを高速処理するように構成され、特に、コンピュータが様々なポイントを処理するのに要する時間は、レーザービームがスキャン速度でこれらの同じポイントを照射又はスキャンするのに要する時間より短いか又は少なくとも同等である必要がある、
このようなコンピュータCは、温度変化の推定値が生成されるとこの値を記憶するために、メモリMと協働することができる。
【0117】
最後に、上述した軌跡決定方法の何らかのステップは、コンピュータプログラムの適切な命令によって実行することができる。
このようなタイプの1又は2以上の命令を含むコンピュータプログラムは、コンピュータ上で実行することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
【国際調査報告】