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特表2022-549445吸入用乾燥粉末製剤のための新規担体粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-25
(54)【発明の名称】吸入用乾燥粉末製剤のための新規担体粒子
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/72 20060101AFI20221117BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20221117BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20221117BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20221117BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221117BHJP
   A61P 11/04 20060101ALI20221117BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20221117BHJP
   A61P 11/08 20060101ALI20221117BHJP
   A61P 11/14 20060101ALI20221117BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20221117BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20221117BHJP
   A61K 31/40 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
A61K9/72
A61K9/14
A61K9/12
A61K47/26
A61K45/00
A61P11/04
A61P11/06
A61P11/08
A61P11/14
A61K31/167
A61K31/573
A61K31/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518755
(86)(22)【出願日】2020-09-22
(85)【翻訳文提出日】2022-05-20
(86)【国際出願番号】 EP2020076369
(87)【国際公開番号】W WO2021058454
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】19199337.7
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591095465
【氏名又は名称】キエシ・フアルマチエウテイチ・ソチエタ・ペル・アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100221578
【弁理士】
【氏名又は名称】林 康次郎
(72)【発明者】
【氏名】グイディ,トマーゾ
(72)【発明者】
【氏名】ベナッシ,アンドレア
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA24
4C076AA29
4C076AA93
4C076BB21
4C076CC15
4C076DD67A
4C076GG04
4C084AA17
4C084MA13
4C084MA43
4C084MA55
4C084NA10
4C084ZA61
4C084ZA62
4C084ZA63
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC07
4C086DA10
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA43
4C086MA55
4C086NA10
4C086ZA61
4C086ZA62
4C086ZA63
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA01
4C206GA31
4C206KA15
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA63
4C206MA75
4C206NA10
4C206ZA59
4C206ZA61
4C206ZA62
4C206ZA63
(57)【要約】
本発明は、吸入のための乾燥粉末製剤のための担体粒子およびその製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥粉末吸入器(DPI)による投与のための乾燥粉末製剤であって、
a)1以上の有効成分の微粒子および生理学的に許容される賦形剤の微粒子を適切な重量比で含む、100~800マイクロメートルを含む質量径を有する球状化粒子のフラクション;
b)150~400マイクロメートルを含む質量径を有する生理学的に許容される賦形剤を含む粗粒子のフラクション;
を含み、ここでフラクションa)とフラクションb)の比が5:95~50:50重量パーセント含むものである、乾燥粉末製剤。
【請求項2】
球状化粒子が200~800マイクロメートルを含む質量径を有する、請求項1に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項3】
フラクションa)の球状化粒子が1以上の有効成分の微粒子および生理学的に許容される賦形剤の微粒子のみから成る、請求項1または2に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項4】
フラクションa)とフラクションb)の比が10:90~30:70重量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項5】
1以上の有効成分が、0.5~100重量%を含む全体の割合で球状化粒子a)中に存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項6】
1以上の有効成分の割合が1.0~99.5重量%を含む、請求項5に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項7】
生理学的に許容される賦形剤がα-ラクトース一水和物である、請求項1~6のいずれか一項に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項8】
フラクションb)の粗粒子の質量径が210~355マイクロメートルを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項9】
フラクションa)の球状化粒子の質量径が200~350マイクロメートルを含み、フラクションb)の粗粒子の質量径が210~355マイクロメートルを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項10】
有効成分がβ2アゴニスト、および/または抗ムスカリンおよび/または吸入コルチコステロイドから成る群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項11】
β2アゴニストがフォルモテロールフマレート二水和物である、請求項10に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項12】
吸入用コルチコステロイドがベクロメタゾンジプロピオネート(BDP)である、請求項10に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項13】
ムスカリンアンタゴニストがグリコピロニウムブロマイドである、請求項10に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項14】
有効成分が、フォルモテロールフマレート二水和物、ベクロメタゾンジプロピオネートおよびグリコピロニウムブロマイドの組合せである、請求項10に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項15】
請求項1に記載の粉末製剤を製造する方法であって、
i)有効成分および生理学的に許容される賦形剤の微粒子のフラクションを調製する工程;
ii)場合により、得られた混合物をコンディショニングする工程;
iii)前記混合物を凝集させ、球状化させ、球状化粒子を得る工程;
iv)場合により、ふるい分けして所望の直径を有するフラクションを単離する工程;
v)粗粒子のフラクションb)を添加する工程;
vi)得られた混合物を混合する工程
を含む、方法。
【請求項16】
工程i)のフラクションが、有効成分の微粒子と生理学的に許容される賦形剤の微粒子を混合することにより調製される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程i)のフラクションが、有効成分の粒子と生理学的に許容される賦形剤の粒子を共微粒子化し、その後混合することにより調製される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
請求項1~14のいずれか一項に記載の乾燥粉末医薬製剤を充填した、乾燥粉末吸入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入用乾燥粉末製剤のための担体粒子およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乾燥粉末吸入(DPI)薬物治療は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)およびアレルギー性鼻炎のような呼吸器状態を処置するために、長年使用されている。
【0003】
経口薬物摂取と比較して、初回通過代謝が有意に低減するため、有効な治療のためには比較的少用量しか必要としない。このような少用量は身体の薬物への曝露を低減し、副作用を最小限にする。肺への局所送達は作用部位に直接的に薬剤を到達させるため、全身性の有害作用もまた、低減される。低投与量レジメンはまた、特に、高額な治療剤が懸念される場合には、大幅な経費削減も提供し得る。
【0004】
乾燥粉末形態は典型的に、微粒子化された形態の薬物を担体粗粒子と混合することにより製剤化され、吸入器デバイス内にある間微粒子化された活性粒子が担体粒子の表面に付着する規則的な混合物を生じさせる。
【0005】
担体は微粒子化された粉末の粘着性を低下させ、その流動性を改善し、製造工程(注入、充填など)中の粉末の取り扱いを容易にする。
【0006】
吸入中、薬物粒子は担体粒子の表面から離れており、肺下部に入るが、より大きな担体粒子は、大部分が口腔咽頭腔に残存する。
【0007】
担体表面からの薬物粒子の再分散は、肺への薬剤の利用可能性に影響を与える最も重要な因子であると考えられる。これは粉末混合物の力学的安定性ならびに薬物と担体の間の付着特性および付着している粒子間で形成された非共有結合を切断するために必要な外的な力により影響される方法は依存する。付着している粒子間強すぎる結合は、実際に、微粒子化された薬物粒子の担体粒子表面からの分離を妨げ得る。
【0008】
付着を調節することを目的とする種々のアプローチが、担体粒子からの薬物粒子の切り離しを促進し、それにより吸入性フラクションを増加させるために、当分野で提示されている。
【0009】
例えば、滑沢剤または抗付着特性を有する賦形剤および/または第三薬剤の微小粒子を添加することが示唆されている。
【0010】
前記アプローチの例は、欧州特許第663815号、国際公開第96/02231、国際公開第96/23485号、国際公開第00/33789号、国際公開第01/78693号および米国特許第2015/017248号で報告されている。
【0011】
改善された流動性を有する吸入のための乾燥粉末を製剤化するための別の方法は、制御された方法で微粒子を凝集させ、相対的に高密度かつ小型の球体を形成させることである。その方法は球状化と称され、球状化前に、有効成分を1以上の賦形剤の複数の微小粒子と混合するとき、得られた生成物はまた、軟質ペレットと称される。
【0012】
その例は、国際公開第95/24889号、国際公開第98/31350号、国際公開第98/31351号および国際公開第01/89491号および国際公開第01/89492号で報告されている。
【0013】
国際公開第01/89491号および国際公開第01/89492号において、一般に、25マイクロメートルを超える平均粒子径を有する粗担体を添加する可能性が想定されている。
【0014】
しかしながら、軟質ペレットは、吸入中にそれらの小粒子への分解を危うくするほど高い内部コヒーレンスに達し得て;このような欠点は、中~高抵抗または高抵抗の乾燥粉末吸入器を使用するときに重要な過程であると考えられ得る。
【0015】
前記吸入器とともに、ペレットを有効成分の小さな一次粒子に分解するために利用可能なエネルギーは、実際には少量である。
【0016】
他方で、第三薬剤は患者により吸入さるため、承認申請時に規制上の負担が加わる。
【0017】
したがって、第三薬剤を使用することなく、改善されたエアロゾル性能を有する吸入による乾燥形態での有効成分の投与のためのプラットフォーム技術を提供することは有利である。
【発明の概要】
【0018】
本発明は、乾燥粉末吸入器(DPI)による投与のための乾燥粉末製剤であって、
a)1以上の有効成分の微粒子および生理学的に許容される賦形剤の微粒子を適切な重量比で含む100~800マイクロメートルの質量径を有する球状化粒子のフラクション;
b)150~400マイクロメートルを含む質量径を有する生理学的に許容される賦形剤を含む粗粒子のフラクション
を含み、ここでフラクションa)とフラクションb)の比が5:95~50:50重量パーセントである、乾燥粉末製剤に関する。
【0019】
第二の態様において、本発明は、請求される製剤を製造する方法であって、
i)有効成分および生理学的に許容される賦形剤の微粒子のフラクションを調製する工程;
ii)場合により、得られた混合物をコンディショニングする工程;
iii)前記混合物を凝集させ、球状化させ、球状化粒子を得る工程;
iv)場合により、ふるい分けして所望の直径を有するフラクションを単離する工程;
v)粗粒子のフラクションb)を添加する工程;
vi)得られた混合物を混合する工程
を含む、方法に関する。
【0020】
ある実施態様において、工程i)のフラクションは有効成分の微粒子および生理学的に許容される賦形剤の微粒子を混合することにより調製される。
【0021】
別の実施態様において、工程i)のフラクションは、有効成分の微粒子と生理学的に許容される賦形剤の粒子をともに共微粒子化し、その後混合することにより調製される。
【0022】
第四の態様は、乾燥粉末吸入器(DPI)による投与のための乾燥粉末製剤であって、
a)1以上の有効成分の微粒子および生理学的に許容される賦形剤の微粒子を適切な重量比で含む100~800マイクロメートルの質量径を有する球状化粒子のフラクション;
b)150~400マイクロメートルを含む質量径を有する生理学的に許容される賦形剤を含む粗粒子のフラクション
を含み、ここでフラクションa)とフラクションb)の比が5:95~50:50重量%であり、前記製剤が、
i)有効成分の微粒子および生理学的に許容される賦形剤のフラクションを調製する工程;
ii)場合により、得られた混合物をコンディショニングする工程;
iii)混合物を凝集させ、球状化させ、球状化粒子を得る工程;
iv)場合により、ふるい分けして所望の直径を有するフラクションを単離する工程;
v)粗粒子のフラクションb)を添加する工程;および
vi)得られた混合物を混合する工程
を含む方法により得ることができるものである、乾燥粉末製剤に関する。
【0023】
第五の態様は、乾燥粉末吸入器(DPI)による投与のための乾燥粉末製剤であって、
a)1以上の有効成分の微粒子および生理学的に許容される賦形剤の微粒子を適切な重量比で含む質量径100~800マイクロメートルを有する球状化粒子のフラクション;
b)150~400マイクロメートルを含む質量径を有する生理学的に許容される賦形剤を含む粗粒子のフラクション
を含み、ここでフラクションa)とフラクションb)の比が5:95~50:50重量%であり、前記製剤が、
i)有効成分の微粒子および生理学的に許容される賦形剤のフラクションをコンディショニングする工程;
ii)場合により、得られた混合物を調製する工程;
iii)混合物を凝集させ、球状化させ、球状化粒子を得る工程;
iv)場合により、ふるい分けして所望の直径を有するフラクションを単離する工程;
v)粗粒子のフラクションb)を添加する工程;および
vi)得られた混合物を混合する工程
を含む方法により得られるものである、乾燥粉末製剤に関する。
【0024】
第六の態様において、本発明は請求される乾燥粉末医薬製剤を充填した乾燥粉末吸入器に関する。
【0025】
第七の態様において、本発明は、本発明による乾燥粉末医薬製剤および乾燥粉末吸入器を含む包装に関する。
【0026】
さらなる態様において、本発明とは、医薬として使用するための、好ましくは、呼吸器疾患、より好ましくは喘息およびCOPDから選択される呼吸器疾患の予防および/または処置のための上記製剤をいう。
【0027】
発明の詳細な説明
定義
用語「ミクロン」および「マイクロメートル」は、同義語として使用される。
【0028】
用語「生理学的に許容される」とは、安全な、薬理学的に不活性な物質を意味する。
【0029】
「一日治療有効量」とは、吸入器の作動による吸入により投与される有効成分の量を意味する。
【0030】
前記一日用量は、吸入器の1以上の作動(吹き出しまたは吹き込み)で送達され得る。
【0031】
用語「微小粒子」とは、ミクロンの最大数十分の一のサイズを有する粒子を意味する。
【0032】
用語「微粒子化された」とは、数ミクロン、典型的には1~15ミクロンを含むサイズを有する物質をいう。
【0033】
「粗い」とは、30ミクロンを超える、典型的には百または数百ミクロンのサイズを有する粒子を意味する。
【0034】
一般的な用語において、粒子の粒子径は、体積径として知られる特徴的な球相当径をレーザー回折により測定することにより定量化される。
【0035】
粒子径はまた、適切な既知の機器、例えば、ふるい分析器により質量径を測定することにより定量化され得る。
【0036】
体積径(VD)は、粒子の密度(粒子のサイズと独立した密度と仮定)による質量径(MD)と関連する。
【0037】
本明細書において、有効成分の粒子径は体積径の観点で表現されるが、賦形剤の粒子径は質量径の観点で表現される。
【0038】
粒子は、粒子の50重量%の体積または質量径に対応する体積または質量中央径(VMDまたはMMD)の観点で、および場合により、粒子のそれぞれ10%および90%の体積または質量径の観点で定義される、正規(ガウス)分布を有する。
【0039】
粒径分布を定義するための別の一般的なアプローチは、3つの値を利用する:i)分布の50%がこの値より上であり、50%がこの値より下である体積径である、体積中央値d(v、0.5);ii)体積分布の90%がこの値より下である、d(v、0.9);iii)体積分布の10%がこの値より下である、d(v、0.1)。スパンは10%、50%および90%分位数に基づく分布の幅であり、次の式により計算される。
【数1】
【0040】
エアロゾル化後、粒径は質量空気動力学径(MAD)として表され、粒径分布は質量中央空気動力学径(MMAD)として表される。MADは、気流中で浮遊した輸送される粒子の能力を示す。MMADは、粒子の50重量%の質量空気動力学径に対応する。
【0041】
本明細書で使用される用語「球状化された」とは、国際公開第98/31351号に開示された例についての軟質ペレットを示すための、当分野で使用される用語をいう。
【0042】
用語「球状化」とは、球状化粒子を製造するための工程をいい、混合および振動のような種々の工程を含む。
【0043】
それは、賦形剤粗粒子を添加する前に実施される。著しく対照的に、国際公開第01/78693号および国際公開第2013/110632号では、前記用語は、最終製剤の製造の最後に賦形剤粗粒子を仕上げる工程を示すために使用された。微小粒子の量が最終製剤の20重量%未満であるとき、この工程中に球状化粒子は形成されない。
【0044】
用語「積載能力」とは、特定の量の賦形剤および/または有効成分の微小粒子を表面に収容する賦形剤粗粒子の能力をいう。本発明の内容において、それは粉末から偏析することなく、20%を超えるが60%未満、好ましくは、約30~40%の球状化粒子の量を収容する賦形剤粗粒子の能力をいう。
【0045】
用語「良好な流動性」とは、製造工程中に取り扱いが容易であり、正確かつ再現性が高く治療有効用量を送達することができる製剤をいう。
【0046】
フロー特徴化は、安息角、カー指数、ハウスナー比または開口部を通過する流速のような種々の試験により評価され得る。
【0047】
本願の内容において、European Pharmacopeia (Eur. Ph.) 7.3, 7th Editionに記載の方法に従って、または米国薬局方、1174頁による安息角により開口部を通過する流速を測定することにより、フロー特性を試験した。
【0048】
表現「良好な均一性」とは、混合後、相対標準偏差(RSD)としても知られる変動係数(CV)として表現される有効成分の分布の均一性が2.5%未満、好ましくは、1.5%以下である製剤をいう。
【0049】
表現「使用前のデバイスにおいて物理的に安定な」とは、乾燥粉末の製造中および使用前の送達デバイス中の両方で、活性粒子が実質的に担体粒子から分離および/または剥離しない製剤をいう。分離の傾向は、Staniforth et al. J. Pharm. Pharmacol. 34, 700-706, 1982に従って測定され得て、相対標準偏差(RSD)で表される試験後の粉末製剤中の有効成分の分布が、試験前の製剤中の分布と比較して大きく変化しなければ供されると考えられる。
【0050】
表現「吸入性フラクション」とは、患者の肺深部まで到達し得る活性粒子の割合の指数をいう。
【0051】
微小粒子フラクション(FPF)とも称される吸入性フラクションは、アンデルセンカスケードインパクター(ACI)、マルチステージリキッドインピンジャー(MLSI)または次世代インパクター(NGI)のような適切なインビトロ装置を用いて、好ましくはACIにより、一般的な薬局方、特に欧州薬局方(Eur. Ph.) 7.3, 7th Editionに報告された方法に従って評価される。
【0052】
それは、微小粒子質量(先の微小粒子用量)と送達用量の割合比により計算される。
【0053】
送達された用量は装置内での累積的沈着から計算され、微小粒子質量は直径<5.0ミクロンを有する粒子の沈着から計算される。
【0054】
用語「予防」とは、疾患の発症リスクを低減するためのアプローチを意味する。
【0055】
用語「処置」とは、臨床的結果を含む有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチを意味する。有益なまたは所望の臨床的結果は、限定されないが、検出可能か否かにかかわらず、1以上の症状もしくは状態の軽減または改善、疾患の程度の減退、疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しない)、疾患の拡大の予防、疾患進行の遅延または鈍化、疾患の状態の改善または緩和および寛解(一部または全体)を含み得る。当該用語はまた、処置を受けていないと仮定したときの予想される生存期間と比較して、生存期間を延長することを意味し得る。
【0056】
用語「治療量」とは、本明細書に記載の乾燥粉末製剤により肺に送達されるとき、所望の生物学的効果を提供する有効成分の量を意味する。
【0057】
用語「表面コーティング」とは、賦形剤粒子の周囲に第三薬剤の薄いフィルムを形成することにより、前記粒子の表面を覆うことをいう。
【0058】
用語「乾燥粉末吸入器(DPI)」とは、乾燥粉末形態で肺へ医薬を送達するデバイスをいう。DPIは2つの基本形に分けられ得る:
i)予め細分化した単回用量の活性化合物を投与するための単回用量吸入器;
ii)予め細分化した単回用量を有する、または複数回用量に十分な有効成分の量を予め充填した複数回用量乾燥粉末吸入器(MDPI);各用量は、吸入器中の単位を計測することにより与えられる。
【0059】
それらの設計と力学的特徴に厳密に依存する必要な吸入流速(l/分)に応じて、DPIもまた、次のように分けられる:
i)低抵抗デバイス(>90l/分);
ii)中抵抗デバイス(約60~90l/分);
iii)中~高抵抗デバイス(約50~60l/分);
iv)高抵抗デバイス(30l/分未満)。
【0060】
報告された分類は、欧州薬局方(Eur Ph)に従って、4KPa(キロパスカル)の圧力降下を生み出すために必要な流速について生じる。
【0061】
「高単回用量」とは、1mg以上の用量を意味する。
【0062】
本発明は:
a)1以上の有効成分の微粒子および生理学的に許容される賦形剤の微粒子を適切な重量比で含む、100~800マイクロメートルの直径を有する球状化粒子のフラクション;
b)150~400マイクロメートルを含む質量径を有する生理学的に許容される賦形剤から成る粗粒子のフラクション
を含む、乾燥粉末吸入器(DPI)における使用のための乾燥粉末製剤であって、ここでフラクションa)とフラクションb)の比が5:95~50:50重量パーセントである、乾燥粉末製剤に関する。
【0063】
実際に、賦形剤微粒子が予め有効成分粒子とともに球状化され、その後賦形剤粗粒子と組み合わせられたならば、吸入による投与後に高吸入性フラクションを達成し、第三薬剤の使用を回避することが可能である。
【0064】
選択された直径を有する球状化粒子は、有効成分の分布の良好な均一性および少量の薬物用量変動または換言すると、送達された用量の適切な精度を達成することを可能にする。球状化粒子の丸形はまた、本明細書において詳細に定義される粉末製剤の流動性を向上させる。
【0065】
実際に、予め球状化された微小粒子を含む本発明による製剤は、球状化されていない微粒子を含む対応する製剤より良好なフロー特性を示す。
【0066】
粒子から成る粗担体による前記球状化粒子の希釈は、せん断応力および圧縮に耐性であり、例えば、担体ベースの粉末製剤に通常適しており、純粋な軟質ペレットには便利ではない充填技術を用いて、それをカプセルまたはDPIデバイスに分配することを可能にする。
【0067】
前記粒子はまた、リザーバーベースの複数回用量吸入器のカップサイズに特に適切であることが分かった。前記粒子は、有利に、計量チャンバーへの充填中に粉体が失われるのを実質的に回避し得ることが分かった。
【0068】
所望の粒子径は、既知の方法に従ってふるい分けすることにより得られ得る。
【0069】
さらに、本発明の他の利点は、選択された、明確に規定された粒子径を有する賦形剤粗粒子の存在が、吸入中に球状化された粒子の小粒子への崩壊に有利であり、本発明の技術を中~高抵抗または高抵抗の乾燥粉末吸入器による活性成分の投与に特に有用にする。
【0070】
本発明のプラットフォーム技術を開発することにより、すなわち、球状化粒子と粗粒子を請求される比で組み合わせることにより、使用前のデバイスにおける良好な流動性および十分な安定性を達成することもまた、可能である。
【0071】
有利に、微粒子化された賦形剤粗粒子は、吸入使用に適切な任意の生理学的に許容される物質またはその組合せから構成され得て、そのため、本発明の製剤の製造は、便利かつ用途が広い方法をもたらす。
【0072】
例えば、前記粒子は、ポリオール、例えば、ソルビトール、マンニトールおよびキシリトールならびにモノサッカライドおよびジサッカライドを含む結晶糖;塩化ナトリウムおよび炭酸カルシウムのような無機塩;乳酸ナトリウムのような有機塩;尿素のような有機化合物、ポリサッカライド、例えば、デンプンおよびその誘導体;オリゴサッカライド、例えば、シクロデキストリンおよびデキストリンから選択される1以上の物質から構成され得る。
【0073】
好ましくは、前記粒子は結晶糖から成り、さらに好ましくは、グルコースもしくはアラビノースのようなモノサッカライド、またはマルトース、サッカロース、デキストロースもしくはラクトースのようなジサッカライドから選択される結晶糖から成る。
【0074】
前記賦形剤は貯蔵時に化学的かつ物理的に安定であり、取り扱いが容易であるため、好ましくは、前記粒子は、ラクトースから成り、より好ましくはα-ラクトース一水和物から成る。
【0075】
有利に、球状化粒子は100~800マイクロメートルを含む質量径を有する。より有利には、これらの直径は200~800マイクロメートル、好ましくは300~700マイクロメートルを含む。実際に、200ミクロンの開始直径を有する粒子は、特に便利な流動性特性を与えられることが分かった。本発明の特定の好ましい実施態様において、球状化粒子は200~350ミクロンを含む質量径を有する。
【0076】
ある実施態様において、賦形剤および有効成分の両方の微粒子は、15マイクロメートル以下、好ましくは10マイクロメートル以下、より好ましくは1~6マイクロメートルの質量中央径を有する。
【0077】
後者の粒子径は、呼吸器疾患の予防/および処置に有用な有効成分に特に適切である。
【0078】
特定の実施態様において、賦形剤および有効成分の両方の粒子の少なくとも90%は、6ミクロン未満、さらにより好ましくは5ミクロン未満の直径を有する。より好ましくは、それらは2~4ミクロンの平均中央径を有し得る。
【0079】
本発明によれば、1以上の有効成分は、0.5~100重量%を含む全体の割合で球状化粒子中に存在し、残りの部分は賦形剤の微小粒子であり、場合により、添加剤粒子である。いくつかの実施態様において、1以上の有効成分の割合は1.0~99.5%、好ましくは2.0~95%を含み、他の実施態様において、その割合は10~90重量%を含むか、20~30重量%を含む。
【0080】
ある実施態様において、球状化粒子は、1以上の有効成分および生理学的に許容される賦形剤の微小粒子のみから構成される。
【0081】
本発明のある実施態様において、フラクションb)の担体粗粒子は、好ましくは175ミクロンを超える質量中央径(MMD)とともに、150~400ミクロン、好ましくはMD200~380ミクロンを含む質量径(MD)を有し、より好ましくは、MDは210~355ミクロンを含み得る。
【0082】
所望の粒径は、既知の方法によりふるい分けすることにより得られ得る。
【0083】
それらのMDが210~355ミクロンを含むとき、担体粗粒子は比較的大きくひび割れた表面を有し得る。すなわち、それらの表面上には、割れ目および窪みならびに他の凹型領域が存在し、これらは本明細書において集合的にひび割れと称される。
【0084】
さらに説明されるとおり、20%を超える割合の有効成分が使用されるとき、前記ひび割れの存在は、混合中に球状化粒子を自発的に形成することを可能にする。
【0085】
さらに、20%を超える割合の有効成分が使用されるとき、球状化粒子は微小粒子より良好なフロー特性を有するが、賦形剤粗粒子の表面における前記ひび割れの存在が、最終製剤の流動性の改善を可能にする。
【0086】
「比較的大きくひび割れた」粗粒子は、参照により本明細書に包含させる国際公開第01/78695号および国際公開第01/78693号の例に記載のとおり、ひび割れ指数または粗度係数で定義され得て、それらはそこに報告された記載に従って特徴付けられ得る。
【0087】
前記担体粗粒子はまた、国際公開第01/78695号の例に記載のとおり測定したタップ密度または総侵入体積で定義され得る。
【0088】
担体粗粒子のタップ密度は、有利に、0.8g/cm未満、好ましくは0.8~0.5g/cmである。
【0089】
好ましい実施態様によれば、粉末からの分離を回避するために、球状化粒子および担体粗粒子は、実質的に類似の質量径を有するものとする。例えば、210~355ミクロンの質量径を有する担体粗粒子が使用されるならば、球状化粒子は、好ましくは200~350ミクロンを含む質量径を有するものとする。
【0090】
好ましい実施態様によれば、フラクションa)は、1以上の有効成分の微粒子および生理学的に許容される賦形剤の微粒子のみから成る。
【0091】
さらなる実施態様において、本発明の製剤はさらに、第三薬剤を含む。
【0092】
存在するとき、第三薬剤は好ましくは、球状化粒子中に含まれる。
【0093】
前記第三薬剤、好ましくは、ロイシン、イソロイシン、リシン、バリン、メチオニンおよびフェニルアラニンから成る群から選択されるアミノ酸であり得る。
【0094】
あるいは、第三薬剤は、1以上の水溶性界面活性剤、例えば、レシチンを含み得るか、またはこれから成り得る。
【0095】
特定の実施態様において、第三薬剤はステアリン酸およびその塩、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリルアルコール、モノパルミチン酸スクロースから成る群から選択される1以上の滑沢剤を含み得るか、またはこれから成り得る。
【0096】
有利に、第三薬剤の粒子は、15マイクロメートル以下、10マイクロメートル以下、より好ましくは1~6マイクロメートルの質量中央径を有する。
【0097】
添加物質の最適な量は、添加物質の化学組成および他の性質に依存するものとする
【0098】
一般に、添加物質の量は、製剤の総重量に基づいて、10重量%を超えないものとする。
【0099】
しかしながら、多くの第三薬剤について、それらの量は、製剤の総重量に基づいて、5%を超えない、好ましくは2%を超えないものであるべきであると考えられる。
【0100】
ステアリン酸マグネシウムを第三薬剤として使用するとき、その量は一般的に、製剤の総重量に基づいて0.01~2%、有利には0.02~1%、より有利には0.1%~0.5重量%を含む。
【0101】
例えば、その量および混合時間に応じて、ステアリン酸マグネシウムは、分子表面コーティングの程度が少なくとも5%、好ましくは10%未満、より好ましくは15%未満、さらにより好ましくは25%以下であるように、賦形剤微粒子の表面をコーティングし得る。
【0102】
β2アゴニスト、抗ムスカリン薬物およびコルチコステロイドのような比較的低い用量強度を有する有効成分が使用されるとき、含まれるステアリン酸マグネシウムの量は、0.1%~0.5重量%が好ましく、15%を超える分子表面コーティングの程度である。
【0103】
ステアリン酸マグネシウムによりコーティングされる賦形剤粒子の全体表面割合を示す分子表面コーティングの程度は、文献、例えば国際公開第2011/120779号に報告される水接触角測定により決定され得る。
【0104】
ある実施態様において、フラクションa)とフラクションb)の比は5:99~50:50重量%、より好ましくは10:90~30:70重量%を含む。さらに好ましい実施態様において、前記比は10:90~15:85重量%を含む。特定の実施態様において、前記比は10:90重量%である。
【0105】
β2アゴニスト、抗ムスカリン薬物およびコルチコステロイドのような比較的低い用量強度を有する有効成分が使用されるとき、フラクションa)とフラクションb)の比は、好ましくは10:90である。
【0106】
別の態様において、本発明はまた、:
i)有効成分の微粒子および生理学的に許容される賦形剤のフラクションを調製する工程;
ii)場合により、得られた混合物をコンディショニングする工程;
iii)前記混合物を凝集させ、球状化させ、球状化粒子を得る工程;
iv)場合により、ふるい分けして100~800マイクロメートルを含む直径を有するフラクションを単離する工程;
v)150~400マイクロメートルを含む質量径を有する生理学的に許容される賦形剤を含む粗粒子のフラクションを添加する工程;
vi)得られた混合物を混合する工程
を含む、方法に関する。
【0107】
ある実施態様において、工程i)のフラクションは、有効成分の微粒子および生理学的に許容される賦形剤の微粒子を混合することにより調製される。
【0108】
前記混合することは、TurbulaTMミキサーのような任意の適切なミキサー中で、均一な分布が達成されるまで、適切な実施され得る。典型的には、TurbulaTMミキサーが使用されるとき、混合時間は、例えば、有効成分および賦形剤の量ならびに実験条件に応じて30分~2時間まで変化し得る。
【0109】
別の実施態様において、工程i)のフラクションは、有効成分の粒子と生理学的に許容される賦形剤の粒子を合わせて共微粒子化することにより、好ましくは製粉し、その後混合することにより調製される。
【0110】
これは、微細粉末の混合中に直面する通常の課題、すなわち、ミキサーが粉末凝集体を分解できず、例えば、国際公開第98/31350号に開示される再微粉化のさらなる工程必要とすることを回避することを可能にし得る。
【0111】
製粉は、当分野で既知の方法により、例えば、所望の粒子径を達成するために十分な時間、ボールミルまたはジェットミルを使用することにより実施され得る。
【0112】
工程ii)において、粒子a)のフラクションは場合により、例えば、国際公開第2011/131663号に開示される当分野で既知の条件により調製する工程に供されてよい。
【0113】
工程iii)の球状化は、当分野において、例えば、国際公開第98/31351号もしくは国際公開第95/24889で報告される方法または混合および振動に基づく別の方法により実施され得る。
【0114】
典型的に、商業的に入手可能な振動スクリーニング装置、例えば、Retsch GmbH、ドイツから入手可能な振動スクリーニングAS200が使用され得る。当業者は、所望の球状化粒子を得るための処理時間および他のパラメーターを調整する方法を選択するものとする。実際に、振動時間および振幅は、前記粒子の全体的な質に影響を与え、それらは、粒子径、球形度を調整し、形状の不規則性を制限するために微調整され得る。
【0115】
典型的に、球状化を達成するための時間は5分未満、またはさらに短時間である。
【0116】
本発明の好ましい実施態様において、工程iii)の球状化は、振動頻度:50Hz、振動振幅0.2~1.2mmおよび振動時間60~200秒で作動する振動スクリーニング装置で実施される
【0117】
前記パラメーターを採用することにより、200~350ミクロンを含む直径の球状化粒子を得ることが可能である。
【0118】
球状化粒子の存在および完全な形成は、当業者に既知の方法に従って、顕微鏡解析により、例えば、電子顕微鏡(SEM)により検出され得る。市場で入手可能な任意の顕微鏡は、例えば、装置JSM-F100(日本電子株式会社、東京都、日本)が適切には使用され得る。
【0119】
必要ならば、得られた球状化粒子を、所望の粒子径をより良好な目標として、当業者に既知の方法に従ってふるい分けする。
【0120】
賦形剤粗粒子b)と微小粒子a)を混合する工程vi)は典型的に、適切なミキサー、例えば、TurbulaTM(Willy A. Bachofen AG、スイス)のようなタンブラーミキサーまたは他のミキサー中で、少なくとも30分間、好ましくは4時間以下、より好ましくは3時間実施される。
【0121】
一般的な方法において、当業者は、均一な混合物を得るが、球状化粒子の崩壊を回避するために混合時間およびミキサーの回転速度を調整するものとする。
【0122】
本発明の好ましい実施態様において、工程vi)の混合は、72rpmの回転速度で作動する。実際に、十分に規定された粒子径を有する球状化粒子が望まれるならば、低速で作動させることにより、それらのサイズは混合時間ととともに増大することが分かった。
【0123】
別の方法において、球状化粒子は、全ての成分を少なくとも3時間、好ましくは4時間混合する間に、インサイチュで形成される。
【0124】
有効成分の割合が製剤の20%超、好ましくは25%以上、より好ましくは30重量%以上であり、ひび割れた粗粒子が使用されるとき、球状化粒子は混合中に自発的に形成される。従って、このような場合、本発明の粉末は有利に、賦形剤粗粒子、賦形剤微小粒子および有効成分を全て合わせて混合することにより製造され得る。これは時間の節約およびあるいは、本発明の製剤を製造する工業的実現可能性の増大をもたらす。
【0125】
特に、実際には、前記アプローチは球状化粒子の事前調製が考えられるアプローチより消費時間が少ない。さらに、本明細書に記載の粗担体と直接混合することによる球状化粒子の形成は、それらのサイズの制御および一定性を支持し、このようにしたそれらの製造のための工程の再現性および信頼性を改善する。
【0126】
上記のとおり、得られた混合物は場合により、ふるい分けされ得る。ふるい分けは、選択された、予め規定された粒径が使用されるとき、有用であり得る。
【0127】
有効成分は、乾燥粉末で吸入により投与され得る任意の薬学的に活性な化合物であり得る。
【0128】
例として、それらは短時間作用型および長時間作用型β2アゴニスト、例えば、テルブタリン、レプロテロール、サルブタモール、サルメテロール、フォルモテロール、カルモテロール、ミルベテロール、アベジテロール、インダカテロール、オロダテロール、フェノテロール、クレンブテロール、バンブテロール、ブロキサテロール(broxaterol)、イソプレナリンもしくはヘキソプレナリンまたはその立体異性体、塩および/もしくは溶媒和物形態;短時間作用型および長時間作用型抗ムスカリンアンタゴニスト、例えば、チオトロピウム、イプラトロピウム、オキシトロピウム、オキシブチニン、アクリジニウム、トロスピウム、グリコピロニウム、その塩および/または溶媒和物形態;短時間作用型および長時間作用型コルチコステロイド、例えば、ブチキソカルト、ロフレポニド、フルニソリド、ブデソニド、シクレソニド、モメタゾンおよびそのエステル、すなわち、フロエート、フルチカゾンおよびそのエステル、すなわち、プロピオネートおよびフロエート、ベクロメタゾンおよびそのエステル、すなわち、プロピオネート、ロテプレドノールまたはトリアムシノロンアセトニドおよびその溶媒和物;ロイコトリエンアンタゴニスト、例えば、アンドラスト、イラルカスト、プランルカスト、イミトロダスト、セラトロダスト、ジロートン、ザフィルカストまたはモンテルカスト;ホスホジエステラーゼ阻害剤、例えば、フィラミナスト(filaminast)、ピクラミラストまたはロフルミラスト;好中球エラスターゼ(HNE)阻害剤、例えば、国際公開第2013/037809号および国際公開第2014/095700号に開示される阻害剤;ならびにホスホイノシチド3-キナーゼ阻害剤、例えば、国際公開第2015/091685号に開示される阻害剤から選択され得る。
【0129】
これらの化合物のいずれかがキラル中心を有する限り、化合物は光学的に純粋な形態で使用され得るか、またはジアステレオマー混合物またはラセミ混合物として存在し得る。
【0130】
吸入のための長時間作用型β2アゴニスト、抗ムスカリンアンタゴニストおよび/またはコルチコステロイドを単独でまたはその任意の組合せで含む製剤は、本発明の特定の実施態様を構成する。
【0131】
有利に、ムスカリンアンタゴニストは、アクリジニウム塩、好ましくは臭化物塩、ダリフェナシン、好ましくは臭化水素酸塩、ダロトロピウム塩、好ましくは臭化物塩、フェソテロジン塩、好ましくはフマル酸塩、グリコピロニウム塩、好ましくは臭化物塩、オキシトロピウム塩、好ましくは臭化物塩、オキシブチリン、好ましくは塩酸塩または臭化水素酸塩、ソリフェナシン塩、好ましくはコハク酸塩、チオトロピウム塩、好ましくは臭化物塩として、トルテロジン塩、好ましくは酒石酸塩、トロスピウム塩、好ましくは塩化物塩、およびウメクリジニウム塩、好ましくは臭化物塩である。(3R,2R’)エナンチオマーまたは(3S,2R’)と(3R,2S’)のラセミ混合物の形態のグリコピロニウムブロマイドおよびチオトロピウムブロマイドがより好ましく、グリコピロニウムブロマイド(以降、rac-グリコピロニウムブロマイド)の(3S,2R’)と(3R,2S’)のラセミ混合物がさらにより好ましい。
【0132】
特定の塩および/または溶媒和物形態で存在し得る長時間作用型β2アゴニストは、好ましくは、フォルモテロールフマレート二水和物、サルメテロールキシナホエート、ミルベテロール塩酸塩、オロダテロール塩酸塩、ツロブテロール塩酸塩およびビランテロールトリフェナテートである。フォルモテロールフマレート二水和物がより好ましい。
【0133】
特定のそのエステル形態および/または溶媒和物形態で存在し得る吸入のためのコルチコステロイドは、例えば、ベクロメタゾンジプロピオネートまたはその一水和物形態、フルチカゾンプロピオネート、フルチカゾンフロエート、シクレソニド、フルニソリドまたはその半水和物形態、モメタゾンフロエートおよびトリアムシノロンアセトニドである。ブデソニドがより好ましく、ベクロメタゾンジプロピオネートがさらにより好ましい。
【0134】
特定の実施態様において、フォルモテロールフマレートの二水和物形態ならびに吸入のためのコルチコステロイドおよび/またはムスカリンアンタゴニスト、特に、ベクロメタゾンジプロピオネートおよび/またはrac-グリコピロニウムブロマイドとのその組合せを含む製剤が好ましい。
【0135】
本発明の別の実施態様において、本発明の乾燥粉末製剤は、1mg以上、すなわち、2mg以上、5mg以上(以降高用量有効成分と称する)の吸入器の作動ごとに単回投与で送達される有効成分の投与に有用である。
【0136】
抗生物質のような高用量有効成分を含む粉末製剤、例えばTobi PodiHalerTMが現在販売されていることが知られている。
【0137】
従って、高用量有効成分の例は、シプロフロキサシン、レボフロキサシンおよびコリスチン、トブラマイシン、アミカシンおよびゲンタマイシンのような抗生物質;インスリンおよびα1-アンチトリプシンのようなタンパク質;ザナミビルおよびリバビリンのような抗ウイルス薬物;イトラコナゾールのような抗真菌剤、ならびにシルデナフィルおよびタダラフィルのようなホスホジエステラーゼ(PDE)-5阻害剤である。
【0138】
粉末製剤中の有効成分の濃度は、例えば、吸入器の作動時に送達される製剤の射出重量のようないくつかの態様に依存する。
【0139】
例えば、1mgの予想される単回用量を考慮すると、吸入器の作動時に送達される製剤の射出重量が10mgならば、これは10%w/wの有効成分の濃度に対応する。同様に、5mgの射出重量については20%w/wの有効成分の濃度であり、20mgの射出重量については5%w/wの有効成分の濃度である。
【0140】
従って、本発明の製剤は、高濃度、例えば、4~30%、好ましくは10~25%w/wで存在する有効成分の投与に特に有用であり得る。
【0141】
ある態様によれば、本発明とは、医薬としての使用のための、より好ましくは、呼吸器疾患の処置のための、本明細書に記載の製剤をいう。好ましい実施態様において、前記呼吸器疾患は喘息およびCOPDから選択される。
【0142】
本発明の製剤はまた、呼吸器疾患、好ましくは、喘息およびCOPDの処置に使用するための医薬の製造に有用である。
【0143】
本発明の吸入のための乾燥粉末製剤は、当業者に現在知られる任意の乾燥粉末吸入器とともに利用され得る。
【0144】
この点において、乾燥粉末吸入器は、一般的に:i)一回分に分割した用量の活性化合物の投与のための単回用量(単位用量)吸入器;ii)より長期間の処置サイクルに十分な有効成分の量を予め充填した予め計量された複数回用量吸入器またはリザーバー吸入器に分類され得る。
【0145】
乾燥粉末製剤は、単位投与形態で存在し得る。
【0146】
吸入による肺への局所送達のための乾燥粉末組成物は、吸入器または吹き入れ器において使用するためのゼラチンのカプセルおよびカートリッジ、またはブリスター、例えば、薄板状アルミニウムホイル中に存在し得る。
【0147】
本発明による吸入のための乾燥粉末製剤は、個々の治療投与量をデバイスの作動を通じて引き出すことができるリザーバーを含む複数回用量乾燥粉末吸入器に特に適切である。
【0148】
好ましい複数回用量デバイスは、国際公開第2004/012801号および国際公開第2016/000983号に記載の吸入器である。
【0149】
使用され得る他の複数回用量デバイスは、例えば、GlaxoSmithKline社のDISKUSTM、AstraZeneca社のTURBOHALERTM、Schering社のTWISTHALERTM、Orion社のEASYHALERTM、Teva社のSPIROMAXTMおよびAIRMAXTMならびにInnovata社のCLICKHALERTMである。
【0150】
単回用量デバイスの市販品の例としては、GlaxoSmithKline社のROTOHALERTMおよびBoehringer Ingelheim社のHANDIHALERTMならびにPlastiape社のRS01が言及され得る。
【0151】
以下の実施例により、本発明を詳細に説明する。
【実施例
【0152】
実施例1
単一組成、すなわち、表1に示す吸入器の1回の射出あたりの組成を有する粉末製剤を製造した。
約300gの微粒子化されたベクロメタゾンジプロピオネート(BDP)と100gの微粒子化されたラクトース一水和物を、振動数50Hzおよび振幅振動0.2mmで、振動スクリーニング装置中で2分間混合した。
100μmのカスケードを通過させた後、粉末混合物を底面の皿で回収した。回収した球状化されたペレットを、800μmのふるいにより、穏やかにふるい分けた。
得られた球状化粒子を、212~355ミクロンを含む質量径を有する約600gのα-ラクトース一水和物のひび割れた粗粒子と混合し、40:60重量%の比で得た。
混合をTurbulaTMミキサーで2時間、23rpmで実施した。
【表1】

国際公開第2016/000983号に記載の複数回乾燥粉末吸入器(DPI)に製剤を充填した。
欧州薬局方、第8.5版、2015、2.9.18、309~320頁に報告された条件に従って、次世代インパクター(NGI)を用いてエアロゾル性能の評価を実施した。吸入器デバイスからの3用量のエアロゾル投与の後、NGI装置を分解し、この段階で存在する量の薬物を50:50v/v 水:アセトニトリル混合物で洗浄することにより回収し、その後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量した。
次のパラメーターを計算した:i)インパクターの全てのパーツで回収された、デバイスから送達された薬物の量である送達用量;ii)5.0ミクロン以下の粒子径を有する送達用量の量である微小粒子質量(FPM);iii)微小粒子質量と送達用量間の割合である微小粒子フラクション(FPF);iv)MMAD。
結果(平均値±S.D)を表2に示す。
【表2】

理解できるとおり、ほぼ40%のFPFが達成された。
出願人によって集められたさらなるデータに基づいて、吸入器の1回の射出の総量が20mgならば、同様の結果が得られることが分かった。
先行技術、例えば、国際公開第01/78693号において、賦形剤粗粒子および賦形剤微粒子のみから成る担体を含む、軟質ペレット剤の形態ではない粉末製剤が実施例5に開示され、これはより低いエアロゾル性能をもたらし、20%を上回るFPFはほとんど有さなかった。明確に対照的には、本発明の教示に従って製造された製剤は、驚くべきことに、良好なエアロゾル性能をもたらし、特にほぼ40%のFPFを達成した。
【0153】
実施例2
単一組成、すなわち、表3に示す吸入器の1回の射出あたりの組成を有する粉末製剤が製造され得る。
適切な量の微粒子化されたフォルモテロールフマレート二水和物(約0.3g)、微粒子化されたベクロメタゾンジプロピオネート(約5g)および微粒子化されたラクトース一水和物(約144.7g)をTurbulaTMミキサー中で混合し、表3に示される球状化粒子中の割合を得る。
混合物を温度22±1℃および相対湿度75%で1時間コンディショニングし、その後、50%未満の制御された相対湿度で、室温で球状化し、凝集体にする。
得られた球状化粒子をふるい分けし、200~800ミクロンを含む質量径を有するフラクションを単離し、その後、212~355ミクロンを含む質量径を有する約350gのα-ラクトース一水和物のひび割れた粗粒子と、30:70重量%の比で混合する。
【表3】

国際公開第2016/000983号に記載の複数回乾燥粉末吸入器に製剤を充填する。
【0154】
実施例3
実施例2と同様に、単一組成、すなわち、表4に示す吸入器の1回の射出あたりの組成を有する別の粉末製剤が製造され得る。
適切な量の微粒子化されたフォルモテロールフマレート二水和物(約0.1g)、微粒子化されたベクロメタゾンジプロピオネート(約1.67g)、微粒子化されたグリコピロニウムブロマイド(0.21g)および微粒子化されたラクトース一水和物(約48.02g)をTurbulaTMミキサー中で混合し、表4に示される球状化粒子中の割合を得る。
混合物を温度22±1℃および相対湿度75%で1時間コンディショニングし、その後、50%未満の制御された相対湿度で、室温で球状化し、凝集体にする。
得られた球状化粒子をふるい分けし、200~800ミクロンを含む径を有するフラクションを単離し、その後、212~355ミクロンを含む質量径を有する約450のα-ラクトース一水和物のひび割れた粗粒子と混合し、10:90重量%の比で得る。
【表4】

国際公開第2016/000983号に記載の複数回乾燥粉末吸入器に製剤を充填する。
【0155】
実施例4
国際公開第2014/095700号に開示される、以降本明細書においてCHF6333と称されるヒト好中球エラスターゼ(HNE)阻害剤を有効成分として用いて、別の粉末製剤を製造した。
約800gの微粒子化されたCHF6333を、国際公開第01/78693号に従って製造した約3.2kgの担体に添加した。ブレンドをTurbulaTMミキサー中で3時間混合し、600μmのふるいによりふるい分けした。
得られた混合物は、表5に示す単一組成を有する本発明による製剤を含む。
球状化粒子の存在および完全な形成は、走査電子顕微鏡により検出した。
【表5】

国際公開第2016/000983号に記載の複数回用量乾燥粉末吸入器またはPlastiape SpA(イタリア)の単回用量乾燥粉末吸入器RS01に製剤を充填する。
エアロゾル性能の評価を実施例1に記載のとおり実施した。結果(平均値±S.D)を表6に示す。
【表6】

理解できるとおり、FPFについて良好な性能が、特に、単回用量DPIで達成された。
出願人によって集められたさらなるデータに基づいて、吸入器の1回の射出の総量が20mgならば、同様の結果が得られることが分かった。
【0156】
実施例5
有効成分としてCHF6333を含む2種の類似の製剤を、実施例4に示すとおり製造したが、これらは1mgおよび4mgの単回用量の送達のためのものである。
Plastiape SpA(イタリア)の単回用量乾燥粉末吸入器RS01に製剤を充填する。
エアロゾル性能の評価を実施例1に示すとおり実施した。結果(平均値±S.D)を表7に示す。
【表7】
【0157】
実施例6
単一組成を有する、表1に示すさらなる粉末製剤を製造したが、これらは、200~350ミクロンを含む質量径を有する球状化粒子を含む。
約300gの微粒子化されたベクロメタゾンジプロピオネート(BDP)と100gの微粒子化されたラクトース一水和物を、予め2分間撹拌した。
その後、混合物をRetsch GmbH、ドイツからの振動スクリーニング装置AS200に注いだ。
振動パッド上の2つのふるいのおよび回収皿の系を作製した。
上側のふるい(サイズ>350μm)は、初めに粉末サンプル中に存在した任意の大きなサイズの凝集体または大規模の不均一物を崩壊させると考えられる。
下側のふるい(350μm>サイズ>250μm)は、所望の球状化粒子の特性を設定する。底部の回収皿は、球状化された物質を含む。
微粒子化された粉末は、上側の皿に注がれ、振動システムが稼働され、振動数50Hz、振動振幅0.2~1.2mmおよび振動時間60~200秒で作動した。
得られた球状化粒子を212~355ミクロンを含む質量径を有する約600gのα-ラクトース一水和物のひび割れた粗粒子と混合し、40:60重量%の比を得た。
TurbulaTMミキサーで3時間、75rpmで混合する。
国際公開第2016/000983号に記載の複数回用量乾燥粉末吸入器(DPI)に製剤を充填する。
【国際調査報告】