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特表2022-549473小児用トラゾドン組成物およびその治療法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-25
(54)【発明の名称】小児用トラゾドン組成物およびその治療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/496 20060101AFI20221117BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221117BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20221117BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221117BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20221117BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20221117BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20221117BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221117BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221117BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20221117BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20221117BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20221117BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20221117BHJP
【FI】
A61K31/496
A61P25/00
A61P25/20
A61P43/00 121
A61P25/18
A61P25/24
A61P25/08
A61K45/00
A61K9/08
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/12
A61K47/34
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518971
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(85)【翻訳文提出日】2022-05-09
(86)【国際出願番号】 EP2020077017
(87)【国際公開番号】W WO2021058810
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】62/906,166
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522115170
【氏名又は名称】アンジェリーニ ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】カリスティ ファブリツィオ
(72)【発明者】
【氏名】ラーニ ロレッラ
(72)【発明者】
【氏名】トンジャーニ セレーナ
(72)【発明者】
【氏名】ピコッロ ロッセッラ
(72)【発明者】
【氏名】オッジャーヌ ラウラ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA22
4C076BB01
4C076CC01
4C076DD38
4C076DD42
4C076DD45
4C076EE23
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA23
4C084MA52
4C084NA14
4C084ZA01
4C084ZA051
4C084ZA052
4C084ZA062
4C084ZA122
4C084ZA182
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA23
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZC41
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は小児集団における不眠症の治療における使用のためのトラゾドンに関し、前記小児集団は、知的障害または神経発達障害に罹患している。本発明はまた、トラゾドン濃度の0.1~4%および小児に適切な賦形剤で構成される小児用製剤に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
知的障害または神経発達障害(NDD)に罹患した小児集団における不眠症を0.2~0.6mg/kg患者の用量で治療する方法における使用のためのトラゾドンまたはその塩。
【請求項2】
NDDが、自閉症スペクトル障害(ASD)、知的障害および注意欠陥多動性障害(ADHD)を含む群から選択される、請求項1に記載の方法における使用のためのトラゾドン。
【請求項3】
前記方法が、1日1回の投与を含む、請求項1~2のいずれか1項に記載の方法における使用のためのトラゾドン。
【請求項4】
前記投与が就寝前である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法における使用のためのトラゾドン。
【請求項5】
前記方法が、第1世代抗精神病薬、好ましくはハロペリドール、第2世代抗精神病薬、好ましくはオランザピン、抗うつ薬、好ましくはアミトリプチリン、ベンゾジアゼピン、好ましくはロラゼパム、抗てんかん薬、好ましくはガバペンチン、気分安定薬、好ましくは、リチウム、精神刺激薬、好ましくはメチルフェニデート、抗痙攣薬、好ましくはビペリデンおよびアトモキセチンからなる群から選択される少なくとも1つの薬物の同時投与を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法における使用のためのトラゾドン。
【請求項6】
0.1~4%w/Vの量のトラゾドンと、水と、小児に許容される賦形剤とを含む液体小児用医薬組成物であって、前記小児に許容される賦形剤が、ADI(許容1日摂取量)よりも低い最大1日摂取量(MDI)を提供する、液体小児用医薬組成物。
【請求項7】
トラゾドンが知的障害または神経発達障害に罹患した小児集団における不眠症を治療する方法における使用のため1%w/V~3%w/Vの濃度を有し、適切な液体中での滴下希釈によって0.2~0.6mg/kgの用量を提供する、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
以下の賦形剤:プロピレングリコール20~40%w/V、好ましくは25~35%w/V、PEG、好ましくはPEG-400 20~30%w/V、抗酸化剤としての没食子酸プロピルおよび緩衝剤としてのクエン酸を含む、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記用量が、1.5%または3%w/Vトラゾドン製剤のいずれかの5~30からなる滴数によって提供される、請求項6~8のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項10】
0.1~0.9%w/Vの濃度でトラゾドンまたはその塩を含むシロップ剤形態の、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項11】
トラゾドン濃度が0.18~0.3%w/Vである、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
以下の賦形剤をさらに含む、請求項10~11のいずれか一項に記載の医薬組成物:PEG 0~5%w/V、好ましくはPEG400 2~4%w/V、グリセロール20~30%w/V、好ましくは23~28%w/V、プロピレングリコール5~10%w/V、好ましくは6~8%w/V、およびスクロース30~40%w/V、好ましくは33~38%w/V。
【請求項13】
知的障害または神経発達障害(NDD)に罹患した小児集団における不眠症を治療し、0.2~0.6mg/kgの用量を提供する方法における使用のための、請求項10~12のいずれか一項に記載のシロップ剤。
【請求項14】
神経発達障害(NDD)に罹患した小児患者における不眠症を治療するための方法であって、それを必要とする前記小児患者に0.2~0.6mg/kg患者のトラゾドン用量を投与することを含む方法。
【請求項15】
治療が慢性である、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小児集団における不眠症の治療方法、および小児集団への投与に適した安定な医薬組成物の開発に関する。
【背景技術】
【0002】
トラゾドンはセロトニンきっ抗薬、再取り込み阻害薬として活性を発揮する抗うつ薬である。主に、選択的セロトニン再取り込み阻害薬などの抗うつ薬が奏効しない患者のうつ病治療に適応される。セロトニン作動性受容体拮抗作用とセロトニン再取り込み阻害作用が組み合わさったことにより、トラゾドンには独特の治療柔軟性が実証されており、これにより大うつ病性障害の広範な併存疾患、ならびに不眠症を含む適応外疾患に使用される可能性が生じている。トラゾドンの催眠作用は速やかに達成され、うつ病患者の睡眠構築および睡眠の質に有益な影響を及ぼす可能性がある。
【0003】
トラゾドンは鎮静作用も示しており、不眠症がその適応外処方および成人および小児集団における使用の最も一般的な理由であることを示しているレビューがある(Blackmer A. B、およびFeinstein J. A. “Management of Sleep Disorders in Children with Neurodevelopmental Disorders: A Review"、Pharmacotherapy 2016, 36(1): 84-98 2016)。
【0004】
実際、不眠症は神経発達障害のある子供によくみられる問題で、小児と家族の両方の生活の質に影響を与え、行動障害を悪化させる一因となっている。
【0005】
Owens J. A. et Al, "Use of pharmacotherapy for insomnia in child psychiatry practice: A national survey", Sleep Medicine 2010, 11: 692-700では、トラゾドンは気分・不安障害(MDおよびAD)の小児に最も多く処方される適応外不眠症治療薬であり、注意欠陥多動性障害(ADHD)と精神遅滞/発達遅滞(MR/DD)の両者を有する小児に2番目に多く処方される薬剤であることが開示されている。
【0006】
しかしながら、小児不眠症におけるトラゾドンの使用に関する好ましい逸話的報告にもかかわらず、その有効性と安全性を評価し、次いで小児における適切な用量を評価するための対照臨床試験はまだ不足している。実際、トラゾドンの臨床薬物動態(PK)は成人で広く研究されているが、トラゾドンの代謝に関連する詳細は不明のままである。In vitro試験において、それは主にCYP3A4およびCYP3A5により活性代謝物m-クロロフェニルピペラジン(mCPP)に代謝され、CYP2C19およびCYP2D6もまた、他の(不活性)代謝物へのトラゾドン代謝に寄与することが示されている。したがって、代謝経路が成人と大きく異なる可能性がある小児を対象とした試験が必要である。
【0007】
液体トラゾドン組成物が記載されており、市販されている。例えば、WO2009/016069は、トラゾドンHClが6%w/Vまたは1%w/Vの濃度を有する液体医薬組成物を開示している。さらに、インド特許出願1242/MUM/2005は、トラゾドンが少なくとも理論的には0.5~5%w/Vからなる濃度である液体医薬組成物を開示している。
【0008】
6% w/wのトラゾドン溶液が市販されており、5~6のpH範囲で安定であり、成人の投与のために3年まで安定である。
【0009】
この分野では、小児用に許容される賦形剤を含み、この非常に不均一な集団における用量の微調整を可能にする、低トラゾドン濃度で、安定で、口当たりのよい、小児用医薬組成物を開発する必要性が非常に感じられている。
【発明の概要】
【0010】
発明の詳細な説明
第1の実施形態によれば、本発明は、好ましくは神経発達障害によって引き起こされる、小児集団における不眠症を、低用量のトラゾドンで治療するための方法に関する。
【0011】
この実施形態は、小児集団における使用のためのトラゾドンを提供する。この実施形態によれば、トラゾドンは、知的障害(ID)または神経発達障害(NDD)、特に自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)などのNDDに続発する不眠症の小児患者において0.2~0.6mg/kgからなる用量で使用される。
【0012】
不眠症の治療から利益を得られ得る他のIDは、Tic障害、脆弱X症候群、脳性麻痺、アンジェルマン症候群、学習障害、行為障害、ダウン症候群、レット症候群である(Thapar A, Cooper M, Rutter M. Neurodevelopmental disorders. Lancet Psychiatry. 2017 Apr;4(4):339-346; Angriman M, Caravale B, Novelli L, Ferri R, Bruni O. Sleep in children with neurodevelopmental disabilities. Neuropediatrics.2015 Jun;46(3):199-210 )。
【0013】
本発明の方法では、小児集団が2~17歳であり、2つの亜集団:6~17歳(18回目の誕生日まで)の最初の亜集団および2~5歳(6回目の誕生日まで)の亜集団を含む。
【0014】
この治療的処置から利益を得る可能性があり、IDおよびNDDの不眠エピソードおよび他の症状を解決し得る患者は、上述のような知的障害(ID)または神経発達障害(NDD)、特に以下のような神経発達障害:自閉症スペクトラム障害(ASD)、知的障害および注意欠陥/多動性障害(ADHD)を患う小児患者である。
【0015】
NDDを有する小児集団において睡眠時間を増加させることが予備的に見出されている用量は、特に、滴剤による0.4および0.5mg/kg/日であるか、またはシロップ剤による同等の用量である。
【0016】
本発明はまた、毎日、0.4、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、0.49、0.50、0.6mg/kgまでのような全ての中間用量を包含する。例えば、小児治療スキームは年齢群、患者の体重、疾患の重症度などに応じて、毎日、好ましくは少なくとも1週間、またはさらにより好ましくは慢性的に、1.5%または3%w/V液体製剤のいずれかの5~30滴の滴剤組成物の投与を含み得る。
【0017】
上記のIDおよびNDD病理に続発する不眠症の治療のための、小児集団におけるこれらの用量および関連する治療スケジュールは、低トラゾドン用量組成物での他の投与経路に適合させることができる。
【0018】
トラゾドンは、好ましくは小児が典型的に好む飲料、クリームまたは半固体食品組成物中に希釈される味覚シロップ剤または滴剤のような小児に適した医薬製剤中で就寝前に投与される。
【0019】
トラゾドンは、IDまたはNDDにおいて典型的に使用される他の薬物と同時投与され得る。このさらなる実施形態によれば、トラゾドンは、ハロペリドールなどの第1世代抗精神病薬、オランザピンなどの第2世代抗精神病薬、アミトリプチリンなどの抗うつ薬、ロラゼパムなどのベンゾジアゼピン、ガバペンチンなどの抗てんかん薬、リチウムなどの気分安定薬、メチルフェニデートなどの精神刺激薬、ビペリデンおよびアトモキセチンなどの鎮痙薬からなる群で選択される少なくとも1つの薬物で投与される。
【0020】
トラゾドンの小児用使用のための手段を提供する目的で、安定で、口当たりが良く、特定の賦形剤またはエタノールなどの共溶媒を回避し、小児用に許容される賦形剤のみが存在し、年齢、体重、疾患およびその重症度に応じて小児における用量の微調整を可能にする、低トラゾドン濃度の医薬組成物が開発された。
【0021】
知られているように、これは重要なタスクであり、なぜなら、成人製剤に許容される特定の賦形剤、例えば、経口液体中のエタノールまたは静脈内製剤中のベンジルアルコールは、特に新生児には適切でないかもしれないからである。実際、小児患者は成人と同様に成分の代謝や排泄ができない可能性があり、場合によっては有害な副作用につながる可能性がある(CHMP,2006)。賦形剤の毒性は成人患者と小児患者の間で、また小児のサブセット間で異なる可能性がある。例えば、新生児は他の小児集団よりもプロピレングリコールの代謝効率が低いことが実証されており、それにより蓄積や有害事象の可能性がある(FDA,2011)。さらに、複数の医薬品を服用している小児では、通常の複数の治療を受けている間に、毒性の可能性のある複数の賦形剤の投与に曝露される可能性があるため、有害作用のより高いリスクを考慮すべきである。例えば、ベンジルアルコール、プロピレングリコールおよびポリソルベート80の同時投与は、小児集団、特に新生児において種々の毒物学的症候群をもたらした。
【0022】
この実施形態によれば、滴剤またはシロップ剤のいずれかの小児用液体溶液が開発されている。それらは小児に許容される賦形剤を含み、許容1日摂取量(ADI)より十分に低い最大1日摂取量(MDI)を提供し、エタノールを含まず、好ましくは以下の共溶媒の組み合わせを含む:滴剤組成物のについてPEG400およびプロピレン-グリコール、またはシロップ剤についてグリセロール、スクロースおよびPEG400、ならびに減らした量のプロピレングリコール。
【0023】
予備データは0.1%~4%w/Vトラゾドン濃度の小児用医薬トラゾドン組成物が自閉症スペクトラム障害(ASD)、知的障害および注意欠陥/多動性障害(ADHD)などの神経発達障害に起因する不眠症の治療に有用であり、甘味のため、小児によって非常に良く受け入れられていることを示す。
【0024】
この治療の利益を受ける小児集団は2~17歳であり、18回目の誕生日までである。2つの亜集団が確認されている:最初の1つは6~17歳、2つ目は2~5歳。第1の亜集団は3%w/w、第2の亜集団は1.5%w/Vのトラゾドン溶液で治療することができる。
【0025】
シロップ組成物による別の投与も、この医薬形態の甘味を享受する小児への投与に適している。
【0026】
実際、小児薬物および小児治療処置、特に不眠症の分野では、小児に認可された賦形剤の大部分を含み、より幼い小児への低用量を容易に可能にし、トラゾドンの苦味が便利にマスクされる安定な組成物を開発する必要性が非常に感じられている。これらの組成物は、好ましくは上記のような滴剤、またはシロップ剤である。
【0027】
典型的には液体で希釈される滴剤は、液体(または半固体食品組成物)および小児が典型的に好む飲料、例えばフルーツジュース、ヨーグルト、クリーム、またはソフトドリンク、すなわち乳化剤、防腐剤などの極めて多種多様な添加剤を含む食品組成物中で安定であるという技術的課題を克服する必要がある。
【0028】
これらは液体トラゾドン溶液の公知の欠点に加えて、小児用組成物の開発中に直面する問題であり、その物理的側面は酸化現象のために黄色に変わることがあり、極めて苦い味を有し、これまでは小児におけるそれらの使用の可能性を強く制限していた。
【0029】
さらに、6.61のpKaを有するトラゾドンは酸性pHでのみ完全に可溶性であり、中性に近いpH値で沈殿する。
【0030】
したがって、一実施形態によれば、本発明は、0.1%w/Vおよび4%w/Vからなる濃度のトラゾドン塩を含む小児用滴剤組成物に関する。好ましくは、トラゾドンはトラゾドンHClであり、1%w/V以上、より好ましくは1~3%w/Vの濃度を有する。小児用の滴剤組成物は溶媒または共溶媒としてアルコールを含まず、より濃縮された形態で安定であり、経時的に黄色に変わらず、小児への投与に適した液体、例えばフルーツジュースまたは糖水、ヨーグルトまたはクリームに希釈された場合にも安定である。
【0031】
本出願人によって開発されたトラゾドン組成物において、賦形剤は小児集団において、小児への使用が承認されており、既知の禁忌はない。賦形剤は適切なトラゾドン用量を提供するために投与される場合、管轄官庁によれば、許容1日摂取量(ADI)より十分に低い最大1日摂取量(MDI)で存在する。本発明の医薬組成物に使用されるほとんどの賦形剤についてのADIおよびMDIを表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
注目すべきことに、小児への投与に適した滴剤のトラゾドン溶液は、果汁、糖水、ヨーグルトおよびクリームのような小児が典型的に好む液体飲料と適合する。
【0034】
【表2】
【0035】
代替の共溶媒として、組成物は、グリセロール-PEG200、PEG6000、他のPEGを含んでいてもよい。
代替酸化防止剤として:アスコルビン酸ビタミンE-パルミチン酸アスコルビルを含んでいてもよい。
代替甘味料として:スクロース-アスパルテーム-ネオテムサッカリン-ステビア-シクラミン酸ナトリウム-アセスルファムKを含んでいてもよい。
代替キレート剤として:クエン酸-酒石酸を含んでいてもよい。
代替緩衝剤として:クエン酸ナトリウム-K-リン酸を含んでいてもよい。
【0036】
したがって、好ましい態様によれば、滴剤製剤は:
・活性成分
・グリコール、好ましくは5~45%(w/V)、好ましくは20~40%から構成される%のプロピレングリコールを、場合によりスクロースまたはスクラロースなどの糖と組み合わせて含む。グリセロールのような単純なポリオールを、例えばスクロースのようなアルジトールと一緒に、共溶媒として使用することもできる。
【0037】
滴剤製剤は4.5~5.5、より好ましくは4.5~5.2、より好ましくは4.5~5からなるpH値を有し、好ましくは以下の混合物からなる群:プロピレングリコール+PEG200、プロピレングリコール+ EG400、プロピレングリコール+PEG6000、プロピレングリコール+PEG200+PEG6000、プロピレングリコール+PEG400+PEG6000、PEG200+PEG6000、およびPEG400+PEG6000から選択される、少なくとも2つの共溶媒を50~60%w/Vの総量で含む。好ましい組み合わせは、プロピレングリコール+PEG400である。オリゴ糖、好ましくはスクラロースが甘味料として存在してもよい。
【0038】
特に、本発明による滴剤組成物は、防腐剤を含まない。
【0039】
さらなる実施形態として、本出願人は小児集団における直接投与のために、滴剤製剤よりも低いトラゾドン濃度を有するトラゾドンシロップ製剤を開発した。シロップ組成物において、トラゾドンまたはその塩は、0.1%~0.9%w/V、好ましくは0.2%~0.4%w/V、より好ましくは0.24~0.3%w/V、さらにより好ましくは0.26%w/Vを含む濃度を有する
【0040】
あるいは、シロップ組成物が0.1~0.9mg%(w/V)、好ましくは0.18%~0.3%のトラゾドン濃度を有する。これらの低濃度溶液は化学的および物理的観点から(70℃および4℃で1週間のストレス試験下で)、上記に開示され、以下に要約される滴剤製剤と同様に、比較的安定であることが示されている。
【0041】
また、シロップ組成物は、好ましくは小児への使用に適したもの中から選択される賦形剤を含む。滴剤組成物について上述したように、多くの参考文献は小児用のガイダンスを提供し、そして上記表1に要約されるように、小児集団における賦形剤についての許容1日摂取量(ADI)を規定する。賦形剤間で起こり得る干渉を回避するために、組成物はできるだけ単純に保たれる。
【0042】
シロップ剤はトラゾドン塩が0.1~0.9%w/Vから構成される濃度w/Vで、が4~5.5から構成されるpH値を有する水性組成物である。スクロースは25~38%の濃度で存在する。好ましくは、30~36%の濃度で存在する。有利にはこれらの組成物が安定であり、口当たりがよく、いかなる風味の添加も必要としないが、これは実験の部でより詳細に述べるように、組成物の安定性を変えることなく任意に存在してもよい。
【0043】
共溶媒または共溶媒混合物は、10~60%、好ましくは10~40%w/Vから構成される濃度w/Vを有する。好ましい組み合わせは、グリセロール20~30%w/V、9%w/V未満、好ましくは5~8%w/Vを含むプロピレン-グリコール、および1~5%、好ましくは2~3%w/VのPEG-400である。
【0044】
実際、希釈されずに投与されるシロップ組成物は、有利には9%w/V未満である減少した濃度のプロピレン-グリコールを含むように開発されている。これらの組成物において、スクロースは30%より高い%w/Vで使用することができ、必要とされる嗜好性およびトラゾドン安定性を提供する。
【0045】
シロップ組成物は、好ましくは酸化防止剤、緩衝剤、および好ましくはパラオキシ安息香酸メチルおよびプロピル、ソルビン酸カリウムおよびそれらの混合物を含む群から選択される保存剤を含む。好ましいのは、ソルビン酸カリウム、または代わりに安息香酸ナトリウムである。酸化防止剤は、没食子酸プロピルおよびEDTAならびにそれらの混合物を含む群から選択される。好ましくは、緩衝剤はクエン酸塩である。
【0046】
好ましくは、これらの溶液がトラゾドン塩としてトラゾドンHClを含む。
【0047】
上記のシロップ組成物は、極めて口当たりがよく、小児集団において、経口または経粘膜投与経路によって使用することができる。
【0048】
上記の好ましい実施形態によれば、本発明はまた、不眠症およびその症状(例えば、不安、興奮または錯乱状態、知的障害または神経発達障害を有する小児の運動性興奮)の治療において使用するための、点滴またはシロップのいずれかの医薬組成物に関し、ここで、小児は2~17歳(18回目の誕生日まで)であり、上記の治療処置は好ましい形態、すなわち、小児が最も好む液体中に希釈された滴剤、または希釈せずに投与されるシロップ剤において、睡眠前に0.2~0.6mg/kgの用量を提供するのに適した、好ましい組成物の経口または経粘膜投与を含む。
【0049】
例示的なシロップ組成物を以下の表3に開示する。
【表3】
【0050】
要約すると、シロップ組成物は、好ましくは以下の賦形剤を含む:
・PEG w/V 0~5%、好ましくはPEG400 2~4%w/V
・グリセロール20~30%w/V、好ましくは23~28%w/V
・プロピレングリコール5~10%w/V、好ましくは6~8%w/V
・スクロース30~40%w/V、好ましくは33~38%w/V
【0051】
注目すべきことに、シロップ組成物は非常に低濃度のPEG、好ましくはPEG-400、プロピレングリコールおよび保存剤(すなわち、安息香酸ナトリウム、メチルパラベンまたはソルビン酸カリウム)を含み、MDIはADIよりかなり低い。
【0052】
不眠症を改善するための治療におけるこれらの組成物の使用から利益を受けることができる患者は、自閉症スペクトラム障害(ASD)、知的障害および注意欠陥/多動性障害(ADHD)などの知的障害および神経発達障害に罹患している小児患者である。特に、3つの異なる用量:0.25/0.4および0.5mg/kgが滴剤で、または同等の用量をシロップ剤で使用され得る。例えば、小児治療スキームは、年齢群、患者の体重および疾患の重症度に応じて、1.5%または3%w/V液体製剤のいずれかの5~30滴の滴剤組成物の投与を含み得る。
【0053】
上記の知的障害および神経発達障害に続発する不眠症のための小児集団におけるこれらの用量および関連する治療スケジュールは、他の投与経路および低トラゾドン用量組成物に適合され得、そして慢性的にまたは少なくとも1週間投与され得る。
【0054】
本発明の医薬シロップ組成物は、適切なモノ予備希釈および予備充填剤形で調製することができる。
【0055】
しかし、他の低用量形態は、当業者によって調製され、小児患者あたり毎日0.2~0.6mg/kgの用量を提供し得る。例えば、低用量錠剤、カプセル、トローチ剤、糖滴剤、ロリポップ剤、コーティング錠剤、顆粒剤または上記の溶液およびシロップ剤を経口投与のために提供することができ;薬用パッチ剤を経皮投与のために提供することができ;直腸投与のための坐剤および注射可能な滅菌溶液剤を提供することができる。
【0056】
他の適切な投薬形態は、放出が改変された投薬形態、および経口、注射または経皮、または経粘膜投与のためのリポソームに基づく投薬形態である。特に好ましい別の投与経路および組成物は、経粘膜経路および経皮パッチである。
【0057】
剤形はまた、他の伝統的な成分、例えば、保存剤、安定剤、界面活性剤、緩衝剤、浸透圧を調節するための塩、乳化剤、甘味剤、着色剤、香味料などを含有することができ、小児用途に適している。
【0058】
用量および投与回数は、病態または症状の種類、疾患の重症度、患者の体重および年齢、代謝速度、適切な医薬品形態の剤形および投与経路などの要因によって、一定の範囲にわたって変動する可能性がある。用量は、0.2~0.6mg/kgからなり、好ましくは0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55mg/kgのトラゾドンは小児への1日1回の使用に有用であり、好ましくは就寝前に投与される。特に好ましいのは、0.4~0~6mg/kgからなるより高い用量である。
【0059】
この技術に精通した医者は、神経発達障害を有する小児患者の特定の状態に本発明を適合させる最適な状態を決定することができる。
【実施例
【0060】
実験部分
実施例1トラゾドン組成物(滴剤)の調製
2つの製剤を、活性成分として2つの異なる濃度のトラゾドン塩酸塩を含有する経口滴剤溶液として開発した:
・トラゾドンHCl 15mg/ml(1,5%w/V)
・トラゾドンHCl 30mg/ml(3%w/V)
【0061】
年齢2~6歳および6~17歳の小児集団の治療にそれぞれ有用である。
【0062】
製剤は、小児用医薬品の医薬品開発に関するEMAガイドラインの要件に従って開発されている。
【0063】
滴剤は投薬の柔軟性に特に適切であり、患者のコンプライアンスを改善するためにジュースまたは糖水と混合され得る。
【0064】
以下の表4は、2つの滴剤製剤を報告する
【表4】
【0065】
この実施形態によれば、1~3%w/Vのトラゾドン濃度を有する好ましい滴剤組成物は、以下の賦形剤をさらに含む:プロピレングリコール20~40%w/V、好ましくは25~35%w/V、PEG、好ましくはPEG400 20~30%w/V、抗酸化剤としての没食子酸プロピル、および緩衝剤としてのクエン酸。特に、これらの組成物は、いかなる防腐剤も含有しない。
【0066】
毒性学的評価
製剤の毒性学的リスク評価を行って、小児用の2つの経口滴剤に使用される賦形剤の安全性を評価した。評価は、小児用医薬品の医薬品開発に関するEMAガイドライン(EMA/CHMP/QWP/805880/2012 Rev.2)に従って行った。
【0067】
評価は、以下の2つの対象集団を考慮して行った:
・トラゾドンHCl 1.5%経口溶液について2歳の小児
・トラゾドンHCl 3.0%経口溶液について6歳からの小児
そして、提案された最大1日治療用量0.5mg/kg/日までの機能として、睡眠前に1日1回の本製品の慢性使用を考慮する。
【0068】
評価の結果は、選択されたすべての賦形剤が小児集団における意図された使用条件下で、安全であり、毒物学的リスクの可能性がないとみなされたことであった。実際、選択された賦形剤は、医薬処方ならびに食品において、および関連するPh. Eur.Monograph.に従って安全に使用される。
【0069】
最後に、選択された賦形剤について、小児集団に対する特定の警告は同定されていない。実際、各賦形剤について、MDI(最大1日摂取量)は以下の表5に報告されるように、推奨されるADI(許容1日摂取量)、または利用可能な場合には規制限度未満である。
【0070】
【表5】
【0071】
以下の表6は、2つのトラゾドン滴剤製剤の仕様を示す
【表6】
【0072】
注目すべきことに、両方の溶液は保存剤を含まない製剤であり、興味のある対象年齢(2~5歳-6回目の誕生日まで、および5~17歳-18回目の誕生日まで)の小児に対して毒物学的に安全であると考えられる。
【0073】
選択される滴剤デバイスは両方について同じであるが、高い用量柔軟性のため、その範囲のために良好なシステムと考えることができる。全ての用量は、5~30滴の投与によってカバーされる。また、正確性と精度が研究され、実証された。
【0074】
開発された両製品は、ICH安定性条件下で2年間貯蔵された場合に安定である。使用中の安定性が良好な結果を示して行われた。製品の味をさらに改善し、その結果、患者による受容性を改善するために、投与前に、糖水またはオレンジジュースなどの多数の飲料および液体中に希釈された滴剤の安定性も実証された。
【0075】
実施例2.トラゾドン組成物(シロップ剤)の調製
同じ濃度のトラゾドン塩酸塩(0.26%w/V)を用いて多くのシロップ製剤を開発し、4、5および6と番号付けした以下の表7に報告する。
【0076】
【表7】
【0077】
他のシロップ製剤を開発し、以下の表に記載するように試験した:
【0078】
【表8】
【0079】
注目すべきことに、全ての製剤のpHは約4.5であった。
【0080】
製剤FおよびGは、香味料を添加しなくても、口当たりがよいと評価されている。しかしながら、試験として、ベリーフレーバーも製剤FおよびGに0.15%w/Vまで添加し、嗜好性を改善した。同じ試験条件におけるこれらの風味付けされた製剤の安定性を確認した。
【0081】
上記の表に報告されるように、両方とも0.2%の原薬(API)を含有する2つの異なる製剤(「F」および「G」)は、溶解性および安定性の点で、製品の全ての初期要件に適合する最良の製品と考えられた。
【0082】
APIの溶解性の問題は、対象集団に対する各賦形剤のADI(許容1日用量)も考慮して、適切な共溶媒およびそれらの最終濃度を選択することによって克服された。
【0083】
スクロースの量は、高温で貯蔵した場合の最終製剤の褐変効果によって強調される不安定性の問題を克服する目的で減らした。
【0084】
製品の甘味は非常に低濃度のスクラロース、より安全な賦形剤を使用し、活性成分との相互作用がないことによって改善された。
【0085】
2つの異なる防腐剤系も選択された:第1は安息香酸ナトリウムのみを使用することによるものであり、第2はメチルパラベンとソルビン酸Kとの間の組み合わせを使用することによるものであり、後者は小児集団により適している。
【0086】
実施例3.小児用量の設計
小児における臨床試験の実施を裏付けるためにトラゾドンの適切な開始用量を推定するために用いたアプローチは、生理学に基づくファーマコキネティクス(PBPK)モデリングであった。
【0087】
Simcyp Population-Based Simulator (Version 14 release 1)を全てのシミュレーションに使用した(Simcyp Ltd, シェフィールド、英国)。成人シミュレーションにはSimcyp 白人健康志願者集団モデルを用い、2~6歳、>6~12歳、>12~17歳の小児のシミュレーションにはSimcyp 小児集団モデルを用いた。トラゾドンのPBPKモデルを、利用可能な物理化学的パラメータ、in vitro実験からのデータ、臨床PKパラメータおよび予測パラメータに基づいて開発した。鍵となるパラメータの導出については後述する。モデルで使用した最終パラメータを表9に示す。
【0088】
【表9】
【0089】
トラゾドンは肝チトクロームにより広範囲に代謝され、入手可能な証拠はCYP3A4がその代謝経路に主に関与することを示唆する。その結果、CYP3A4媒介代謝の推定は、(fmCYP3A4=70%)と決定し、トラゾドン除去を説明するためにモデルに含めた。
【0090】
同様にトラゾドン吸収パラメータを推定し、経口溶液と即時放出(IR)錠剤製剤との間で観察された生物学的同等性に基づいて、IR錠剤の一次吸収モデルを用いて、トラゾドン経口溶液モデルの吸収動態を記述した。
【0091】
次に、成人について開発したモデルを、シミュレーションした血漿濃度を、以下について観察した臨床データと比較することにより検証した:
・50mgIR錠または30mg、60mgもしくは90mg経口溶液の単回経口投与
・IR錠100mgを1日3回、7日間反復経口投与。
【0092】
特に、前述のシミュレーションは全て、対応する臨床研究と一致した。
【0093】
トラゾドンモデルは1日当たり30、75および150mgのIR(即時放出)トラゾドン投与後の成人における同等の定常状態曝露(最高血漿中濃度、C(max)に関して)を、年齢帯(すなわち、2~6歳、>6~12歳、および>12~17歳)ごとに適合させることによって、小児の用量推定のために改良された。このような用量は成人の睡眠障害の治療のために試験された用量の30~90mg/日の範囲の最低用量および中間用量をそれぞれ30mgおよび75mgとして選択したが、150mgは成人の大うつ病性障害の治療のための承認用量範囲の初期用量を示す。
【0094】
さらに、予測は小児集団(ADAMモジュール)における胃腸の生理学的変化を考慮し、一次吸収モデルによるシミュレーションに匹敵した。
【0095】
神経発達障害の小児に頻用される薬物(すなわち、アトモキセチン)とのDDIも評価され、無視できることがわかった。
【0096】
総括すると、PBPKモデルは、血漿濃度時間曲線下面積(AUC)およびCmaxのようなPKパラメータについて、全ての試験用量(すなわち、50mg錠剤および30、60、または90mg経口溶液)での両方のIR製剤について健康成人における利用可能なデータと比較した場合、信頼性があり、予測性があることが見出された。これは特に予測:観察PKパラメータの計算比により示され、この計算比は、常に1.5倍以内であったことから、トラゾドンPBPKモデルによる臨床データの許容可能な回復を示すものであった。
【0097】
さらに、予測濃度ー時間プロファイルを臨床試験(目視検査)で観察されたものと比較したところ、許容可能な対応が示された。次いで、表10(Oggianu)に開示されるように、30、75および150mg(mg/kg q.d.)の関連投与後の成人曝露に対応して小児集団についての最終予測を得た。
【0098】
小児の用量予測はQT/QTc変化の潜在的リスクを最小限に抑えるために、成人における同等の定常状態Cmaxを一致させることに主に焦点を当てた。しかしながら、対応するAUCも評価され、対応する成人範囲内であることが示された。
【0099】
表4は、成人用量1日1回、30、75、150mgに相当する暴露について、以下の年齢群の用量が以下のように予測されたことを示している:
・2-6年齢群、用量はそれぞれ0.35、0.8および1.6mg/kg QD;
・>6-12年齢群、用量はそれぞれ0.4、1.0および1.9mg/kg QD;
・>12-17年齢群、用量はそれぞれ0.4、1.1および2.1mg/kg QD。
QD:1日1回
【0100】
【表10】
【0101】
小児におけるトラゾドンのPKおよび有効性に関する臨床データがないため、PBPKモデルは臨床試験に対する倫理的および規制上の承認を可能にする初期用量予測に有用であった。
【0102】
事実、小児における用量予測の従来の相対成長法は一般に年齢と非線形である身体組成、器官成熟、除去酵素の個体発生における幼児期の成熟の影響を考慮せずに、体重(BW)変化に基づくため、しばしば不正確である。
【0103】
実施例4.小児集団における低用量トラゾドンによる治療の臨床評価
2歳から17歳の小児集団を対象に、3種類の用量、0.25/0.4および0.5mg/kg/日を就寝時にフルーツジュース(体積約200mL)で投与した。
【0104】
神経発達障害(NDD:自閉症スペクトラム障害、知的障害または注意欠陥多動性障害)の影響を受ける不眠症に罹患している2歳以上17歳以下の小児を対象に、単回おy反復経口投与後のトラゾドンの薬物動態およびPKPD関係を評価するため、前の実施例3に記載した予測に基づき、多施設共同無作為化並行群間単盲検第II相試験が設計された。単盲検第II相試験は依然として進行中である。
【0105】
本研究の主要目的は、2歳から17歳以下の患者における単回および反復投与後のトラゾドンの薬物動態(PK)を評価することである。
【0106】
本試験の副次的目的の中には、アクチグラフィの測定で評価したトラゾドンの薬物動態ー薬力学(PKPD)関係の確立、および成人における治療曝露量範囲を考慮した2歳以上17歳以下の小児および青少年における用量設定根拠の定義がある。
【0107】
親の日記も結果の評価に使用される。
【0108】
この第II相臨床試験はNDDに罹患した不眠症の小児を対象に、トラゾドンの3用量レベルのPKおよびPDを評価するために設計されている。少なくとも36例の患者を無作為に割り付ける(評価可能な患者30例以上、各治療群10例;2歳以上5歳以下の評価可能な患者10例以上、6歳以上11歳以下の評価可能な患者10例、12歳以上17歳以下の評価可能な患者10例;各年齢および治療群について少なくとも3例以上)。
【0109】
患者は最初に3つの治療群のいずれかに割り付けられる。治療群2および3の患者には、0.25mg/kg/日を3日間投与した後、さらに高い維持用量を7日間投与する:
・治療群1: 0.25mg/kg/日(1日目~10日目)
・治療群2: 0.4mg/kg/日(1~3日目に0.25mg/kg/日、4~10日目に0.4mg/kg/日)
・治療群3: 0.5mg/kg/日(1~3日目に0.25mg/kg/日、4~10日目に0.5mg/kg/日)。
来院1(1日目、無作為化ー初回投与)時に治験への参加が適格であった患者は、患者固有のPKサンプリングスキームに従って、3回の来院のうち2回で入院した。散発的サンプリングが必要であるため、各患者は合計5つのPKサンプルを提供する。
【0110】
睡眠潜時および総睡眠時間は、1回目の来院前の連続する3日間から治療終了時までアクチグラフィにより記録されている。
【0111】
18例の患者の終了後に中間解析を実施し、収集したデータにより適切な精度で関連するPKパラメータを測定できるか否かを評価した。18例の患者は治療群:治療群1では3例、治療群2では5例、治療群3では10例、にしたがって分布している。
【0112】
薬物動態の予備的結論:
トラゾドンの薬物動態は、成人のデータに基づく集団薬物動態モデルを用いて記述することができた。クリアランス推定値の個体間変動は、これまでに成人患者で観察されているものよりもかなり高いことがわかった。全体として、トラゾドンの薬物動態は用量に比例しており、小児集団における薬物分布のばらつきのさらなる原因を示唆するような逸脱は観察されなかった
【0113】
予備的結論:PKPD相関
アクチグラフィデータは、不眠症の診断を受けたにもかかわらず、睡眠潜時がベースライン時に多くの患者でゼロであったことを示した。データの探索的解析から、試験に組み入れられたかなりの割合の患者がベースライン時(7時間以上)に総睡眠時間が高いことが示されている。このサブグループの患者では、治療効果の検出がより困難になる可能性がある。
【0114】
これらすべての考察にもかかわらず、二次PKパラメータと総睡眠時間のベースラインからの相対的変化との間に相関が認められた。トラゾドンの単回および反復経口投与後のトラゾドンの一次PKパラメータには、見かけの経口クリアランス(CL/F)、見かけの分布容積(Vd/F)および吸収速度定数(Ka)が含まれる。二次パラメータはモデル予測プロファイルから導かれる:無限時間に外挿される血漿濃度曲線下面積(AUC)、最大血漿濃度(Cmax)、最小血漿濃度(Cmin)、定常状態での最大血漿濃度(Css)、トラフ血漿濃度(Ctrough)、Cmaxに達する時間(Tmax)。
【0115】
累積総睡眠時間の評価は、トラゾドンへのより高い曝露を示す患者においてわずかに長い睡眠時間を示唆する。総睡眠時間の増加は3回目の来院での総睡眠時間分布のシフトにより明らかであり、その間に0.4および0.5mg/kg用量に割り付けられた患者のごく一部が9時間を超える総睡眠時間に達した。
【0116】
実施例5.治療スキーム(予言的実施例)
急性および慢性の不眠症の治療には、対象とするNDD集団に応じて、以下のように、様々な治療スキームおよび用量が定義される:
【0117】
急性および慢性不眠症の治療のために、対象NDD集団に応じて、様々な治療スキームおよび用量が定義される:2~17歳(18回目の誕生日まで)の患者について0,2~0,6mg/kg/日、好ましくは0.4~0.6mg/kg/日。
【0118】
しかしながら、NDDにおける不眠症の慢性的性質を考慮すると、トラゾドンは使用の最初の日に既に有効であることが証明されているので(Jaffer KY, Chang T, Vanle B, et al. Trazodone for Insomnia: A Systematic Review. Innov Clin Neurosci. 2017; 14(7-8):24-34)、トラゾドンは慢性治療レジメンにおいてより大きな結果を伴って使用され得、患者のニーズに基づいて定期的に再評価され得る。
【国際調査報告】