(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-25
(54)【発明の名称】運動学的軸結合を伴う同時両側機械加工用の自由形式のツール経路を計画する方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4093 20060101AFI20221117BHJP
A61C 13/00 20060101ALI20221117BHJP
G05B 19/18 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
G05B19/4093 J
A61C13/00 Z
G05B19/18 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518993
(86)(22)【出願日】2020-09-21
(85)【翻訳文提出日】2022-04-15
(86)【国際出願番号】 EP2020076238
(87)【国際公開番号】W WO2021058419
(87)【国際公開日】2021-04-01
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515304558
【氏名又は名称】デンツプライ・シロナ・インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】519410367
【氏名又は名称】シロナ・デンタル・システムズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ファルティン、ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ノバラ、オリバー
【テーマコード(参考)】
3C269
【Fターム(参考)】
3C269AB01
3C269AB25
3C269BB03
3C269BB05
3C269BB14
3C269CC01
3C269CC13
3C269EF02
3C269EF59
(57)【要約】
本発明は、ツール(4)に対して軸(y)に沿って同時に移動可能であり、それによって運動学的軸結合を課す被加工物(2)の異なる側上に配置された少なくとも1つのツール(4)を各々有する少なくとも2つのツールスピンドルを備える歯科ツール機械(3)を使用することによる被加工物(2)からの個々の自由形式のターゲットジオメトリを有する歯科修復物(1)の同時両側機械加工用の自由形式のツール経路(P)の形状の計画のコンピュータ実装方法を提供し、運動学的軸結合がそれによって両方のツール(4)についての共通結合パラメータに変換される個々の自由形式のターゲットジオメトリの変換(T’,T’’)を決定するステップと、これらの変換(T’,T’’)に依存して、共通結合パラメータが同時に駆動される全ての参加しているツールスピンドルについて時間的に同一である自由形式のツール経路(P)の形状を生成するステップとを更に備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツール(4)に対して軸(y)に沿って同時に移動可能であり、それによって運動学的軸結合を課す被加工物(2)の異なる側上に配置された少なくとも1つのツール(4)を各々有する少なくとも2つのツールスピンドルを備える歯科ツール機械(3)を使用することによる前記被加工物(2)からの個々の自由形式のターゲットジオメトリを有する歯科修復物(1)の同時両側機械加工用の自由形式のツール経路(P)の形状の計画のコンピュータ実装方法において、
前記運動学的軸結合がそれによって両方のツール(4)についての共通結合パラメータに変換される前記個々の自由形式のターゲットジオメトリの変換(T’,T’’)を決定するステップと、
これらの変換(T’,T’’)に依存して、前記共通結合パラメータが同時に駆動される全ての参加しているツールスピンドルについて時間的に同一である前記自由形式のツール経路(P)の形状を生成するステップと
を更に備えることを特徴とする、方法。
【請求項2】
基準位置/位置合わせからの結合された前記軸(y)のずれが所望の精度を上回る場合、又は少なくとも一方のツールスピンドルの運動学的設定が所望の精度よりも他方のツールスピンドルの運動学的設定に対してシフト若しくは意図的に修正される場合、前記変換(T’,T’’)中に前記歯科ツール機械(3)の較正を検討するステップを更に備えることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記歯科ツール機械(3)の他の自由度が異なるツールスピンドルに対してそれぞれ異なる場合、結合された前記軸(y)と前記他の自由度との混合を分離するステップを更に備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記自由形式のツール経路(P)は、前記ツール(4)がそれぞれの半径(r’,r’’)を有するそれぞれの回転中心(O’,O’’)を中心とした円弧形状の軸(c’,c’’)に沿って独立して部分的に移動され、被加工物が結合された前記軸(y)に沿って送り込まれる、スライスで機械加工するために生成されることを特徴とする、請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記自由形式のツール経路(P)は、両方のツール(4)に対して隣接するツール経路(P)の距離に関する静的又は動的境界条件で前記歯科修復物(1)の表面上又はその近くで機械加工するために生成されることを特徴とする、請求項1~4のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記自由形式のツール経路(P)は、トロコイド経路に沿って同時に機械加工するために生成されることを特徴とする、請求項1~5のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記自由形式のツール経路(P)は、両方のツール軸(z’,z’’)に対して一定のレベルで輪郭に沿って機械加工するために生成されることを特徴とする、請求項1~6のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも2つのツールスピンドルが反対方向又は同じ方向に移動するときに前記少なくとも2つのツールスピンドルと接続された機械部品との間の衝突を回避するステップを更に備えることを特徴とする、請求項1~7のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記衝突回避ステップでは、前記自由形式のツール経路(P)は、分離的機械加工空間によって互いから分離されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記衝突回避ステップでは、衝突被害エリア及び衝突なしエリアが、前記自由形式のツール経路(P)に沿って決定され、前記自由形式のツール経路(P)は、衝突に関連するツールスピンドル及び機械部品が関連する衝突被害エリア中で決して同時に移動されないような方法で同期されることを特徴とする、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記衝突回避ステップでは、ツール軸(z’,z’’)に沿った後退移動が、一方又は両方のツール軸(z’,z’’)上でそれらを互いに通り過ぎて案内するように実行されることを特徴とする、請求項8~10のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
歯科機械加工システムにおいて、
ツール(4)に対して軸(y)に沿って同時に移動可能であり、それによって運動学的軸結合を課す被加工物(2)の異なる側上に配置された少なくとも1つのツール(4)を各々有する少なくとも2つのツールスピンドルを備える歯科ツール機械(3)
を備え、
請求項1~11のうちのいずれか一項に記載の方法のステップに従って前記少なくとも2つのツールスピンドルの駆動を個々に制御するように適合された制御手段
を更に備えることを特徴とする、歯科機械加工システム。
【請求項13】
2つのスピンドルが、被加工物(2)の両側上に配置されることを特徴とする、歯科機械加工システム。
【請求項14】
コンピュータベースの歯科機械加工システムに、請求項1~11のうちのいずれか一項に記載の方法のステップを実行させるためのコンピュータ可読コードを備える、コンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のコンピュータプログラムを備える、コンピュータ可読記憶手段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツールに対して相対的に移動可能な被加工物についての運動学的軸結合を有するダブルスピンドル歯科ツール機械を使用することによる被加工物からの歯科修復物の同時両側機械加工用のツール経路計画のコンピュータ実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シングルスピンドル歯科ツール機械は、当該技術分野で一般に知られている。シングルスピンドル歯科ツール機械では、歯科修復物は、ツール経路に沿って逐次駆動される少なくとも1つの歯科ツールを有する単一のツールスピンドルを使用することによって被加工物から機械加工される。逐次処理に起因して、シングルスピンドル歯科ツール機械における機械加工プロセスの完了には、比較的長い時間が掛かる。
【0003】
マルチスピンドル歯科ツール機械も、当該技術分野で一般に知られている。マルチスピンドル歯科ツール機械では、歯科修復物は、ツール経路に沿って同時に駆動することができる被加工物の異なる側上に1つ以上の歯科ツールを各々有する複数のツールスピンドルを使用することによって被加工物から機械加工される。従って、マルチスピンドル歯科ツール機械における機械加工プロセスの完了には、一般に比較的短い時間が掛かる。米国特許出願公開第2014/0189991A1号は、ツールスピンドルを3つの自由度で個々に操作することができるダブルスピンドル歯科ツール機械を開示している。しかしながら、そのようなダブルスピンドル歯科ツール機械の機械的構造及び操作は、可動部品の数が増加するため複雑である。
【0004】
米国特許出願公開第2015/0328732A1号は、1つの結合軸と、好ましくは互いに対向する2つの個々のツールとを有するツール機械を開示している。しかしながら、回転する主スピンドル及び2つの軸に沿った制限された移動は、機械加工される物体の形状とは無関係な円形のツール経路をもたらす。送り軸のみを使用してツールの浸漬深さを適合させ、パラメトリックに予め定められた経路を有する自由曲面を形成することができる。このことから、この先行技術の方法は、一般に、同時両側機械加工用の可能なツール経路の選択を低減する。
【0005】
運動学的軸結合を有する別のダブルスピンドル歯科ツール機械は、欧州特許第1060712B1号及び米国特許第6394880B1号に開示されている。これらのダブルスピンドル歯科ツール機械では、各ツールスピンドルは、歯科ツールに対して同時に移動可能であり、それによって運動学的軸結合を課す被加工物の両側上に配置された1つ以上の歯科ツールを有する。各ツールスピンドルは、2つの自由度で、即ち被加工物に対して軸方向及び回転方向に個々に移動することができる。それによって、機械的構造は、運動学的軸結合のないダブルスピンドル歯科ツール機械と比較して単純化される。
【0006】
運動学的軸結合を有する上述したダブルスピンドル歯科ツール機械では、同時両側機械加工用のツール経路は、典型的には、結合軸、即ち被加工物が歯科修復物のターゲットジオメトリとは独立して決定された形態で移動される方法を通して計画される。この形態は、開始/終了点及びツール経路の密度などのパラメータを通じて更に適合可能である。この先行技術の方法で生成された同時両側機械加工用のツール経路は、典型的には、円弧形状又は円形の経路を辿る。このことから、この先行技術の方法は、一般に、同時両側機械加工用の可能なツール経路の選択を低減する。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、上述した先行技術の問題を克服し、ツールに対して相対的に移動可能な被加工物についての運動学的軸結合を有する少なくともダブルスピンドル歯科ツール機械を使用することによる被加工物からの個々の自由形式のターゲットジオメトリを有する歯科修復物の同時両側機械加工用の自由形式のツール経路の形状の計画のコンピュータ実装方法を提供することである。
【0008】
この目的は、請求項1に記載の方法及び請求項12に記載の歯科機械加工システムを通して達成される。従属請求項の主題は、更なる展開に関する。
【0009】
本発明は、ツールに対して軸に沿って同時に移動可能であり、それによって運動学的軸結合を課す被加工物の異なる側上に配置された少なくとも1つのツールを各々有する少なくとも2つのツールスピンドルを備える歯科ツール機械を使用することによる被加工物からの個々の自由形式のターゲットジオメトリを有する歯科修復物の同時両側機械加工用の自由形式のツール経路の形状の計画のコンピュータ実装方法を提供する。本方法は、運動学的軸結合がそれによって両方のツールについての共通結合パラメータに変換される個々の自由形式のターゲットジオメトリの変換を決定するステップと、これらの変換に依存して、共通結合パラメータが同時に駆動される全ての参加しているツールスピンドルについて時間的に同一である自由形式のツール経路の形状を生成するステップとを備える。
【0010】
本発明の主な有利な効果は、歯科修復物の個々の自由形式のターゲットジオメトリに一致する自由形式のツール経路を生成することを可能にすることである。本発明の別の主要な有利な効果は、先行技術と比較して、同時両側機械加工用のより多種のツール経路を生成することを可能にすることである。本発明の別の主要な有利な効果は、反対のツールスピンドル方向での同時両側機械加工を可能にすることである。
【0011】
本発明の実施形態によると、歯科ツール機械の較正は、結合軸が所望の精度よりも基準位置からずれるときに変換において考慮される。これは、例えば、歯科ツール機械が製造公差を有するときに有用である。同様に、歯科ツール機械の較正は、少なくとも一方のツールスピンドルの運動学的設定が他方のツールスピンドルの運動学的設定に対して意図的に修正されているときにも変換において考慮される。これは、例えば、ツールスピンドルのホーム位置が互いに正確に対向しておらず、例えば調整手段を通して操作者によってオフセットされているときに有用である。
【0012】
本発明の実施形態によると、結合軸と歯科ツール機械の他の自由度との混合は、他の自由度が異なるツールスピンドルに対してそれぞれ異なる場合に分離される。1つ以上のツールのための軸が線形独立ではない場合、混合が与えられる。この分離は、歯科ツール機械が異なるツールスピンドルに対して異なる構造的配置を有するときに特に有用である。
【0013】
本発明の実施形態によると、自由形式のツール経路は、結合軸に沿った被加工物の送り込みを伴ってスライスで機械加工するために生成される。送り込みは、高速研削及び精密研削のために調整することができる。スライスは、ツールスピンドル運動のジオメトリに一致するように円弧形状であり得る。代替として、スライスは、被加工物のジオメトリと一致するように矩形状であり得る。
【0014】
本発明の実施形態によると、自由形式のツール経路は、歯科修復物の表面に対するオフセット上又はオフセットで機械加工するために生成される。ツール経路間の距離は、静的又は動的に調整可能であり得る。それによって、歯科修復物のターゲットジオメトリは、完全に機械加工されるか、又は部分的に機械加工されるかのうちのいずれかであり、ターゲットジオメトリを仕上げるための後機械加工を受けることができる。
【0015】
本発明の実施形態によると、自由形式のツール経路は、トロコイド経路に沿って同時に機械加工するために生成される。それによって、歯科修復物をより迅速に機械加工することができ、このことから、材料を被加工物からより素早く除去することができる。
【0016】
本発明の実施形態によると、自由形式のツール経路は、一定のレベルで輪郭に沿って機械加工するために生成される。一定のレベルは、好ましくは、ツール軸に対して垂直である。代替として、一定のレベルは、好ましくは、ターゲットジオメトリに最も良く一致する方向に対して配置され得る。それによって、ターゲットジオメトリを精密に機械加工することができ、歯科修復物の表面を滑らかに仕上げることができる。
【0017】
本発明の実施形態によると、歯科修復物の両側機械加工中に、ツールスピンドルと接続された機械部品との間の衝突が回避される。衝突回避は、1つ又は様々な手段を組み合わせて達成することができる。例えば、同時両側機械加工用の自由形式のツール経路は、分離的機械加工空間によって互いから分離され得る。例えば、衝突被害エリア及び衝突なしエリアは、自由形式のツール経路に沿って決定され得る。そして、自由形式のツール経路は、衝突関連機械部品が関連する衝突被害エリア中で決して同時に移動されないような方法で同期され得る。例えば、ツール軸に沿った後退移動は、一方又は両方のツール軸に対して、それらを互いに通り過ぎて案内するように実行され得る。
【0018】
本発明はまた、マルチスピンドルツール機械、好ましくはダブルスピンドルツール機械を含む歯科機械加工システムを提供する。マルチスピンドル歯科ツール機械は、ツールに対して軸に沿って同時に移動可能であり、それによって運動学的軸結合を課す被加工物の異なる側上に配置された少なくとも1つのツールを各々有する少なくとも2つのツールスピンドルを有する。マルチスピンドル歯科ツール機械は、本発明の方法に従って少なくとも2つのツールスピンドルの駆動を個々に制御するように適合された制御手段を更に含む。
【0019】
本発明の実施形態によると、2つのツールスピンドルは、被加工物の両側上に配置される。2つのツールスピンドルは、ホーム位置において互いに対向する。代替として、2つのツールスピンドルは、ホーム位置においてオフセットされる。オフセットは、固定量であり得るか、又は調整可能であり得る。
【0020】
本発明はまた、コンピュータベースの歯科機械加工システムに本発明の方法を実行させるためのコンピュータプログラムを提供する。コンピュータプログラムは、コンピュータ可読コードを有する。コンピュータプログラムは、歯科機械加工システムの内部又は外部にあるコンピュータ可読記憶手段上に提供され得る。歯科機械加工システムは、コンピュータプログラムを実行するためのCAD/CAMモジュールを有し得る。
【0021】
後続の説明では、例証的な実施形態を使用し、図面を参照することによって、本発明の更なる態様及び有利な効果をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態による歯科ツール機械の運動学の概略部分図である。
【
図2A】本発明の実施形態による歯科修復物のターゲットジオメトリの概略上面図である。
【
図3A】
図1の歯科ツール機械の運動学についての本発明の実施形態による変換の概略図である。
【
図3B】
図1の歯科ツール機械の運動学についての本発明の実施形態による変換の概略図である。
【
図3C】
図1の歯科ツール機械の運動学についての本発明の実施形態による変換の概略図である。
【
図3D】
図1の歯科ツール機械の運動学についての本発明の実施形態による変換の概略図である。
【
図4】本発明の実施形態による生成されたツール経路のコースの概略図である。
【
図5】本発明の別の実施形態による生成されたツール経路のコースの概略図である。
【
図6A】本発明の別の実施形態による、
図2Aの歯科修復物用のツール経路の分布の概略図である。
【
図7A】本発明の実施形態による、1つの結合軸を含む直交機械軸を有する歯科ツール機械の運動学の概略図である。
【
図7B】
図7Aに示す機械のための結合軸の固定位置に対する例証的な修復物を通る非結合軸の経路(破線/点線の水平線)を示す。
【
図7C】本発明の実施形態による、
図7Aに示す運動学及び
図7Bに示す修復物についての軸結合を考慮して、両方の非結合軸のための共通空間に変換された修復物を視覚化する。
【
図7D】本発明の実施形態による、この図に示す、両方の非結合軸のための修復物を取り囲む例証的な自由形式のツール経路を示し、それは、空間中で同時に機械加工及び計算することができる。
【
図8A】非結合軸のうちの1つが
図7Aに示す運動学と比較してその方向及び位置において意図的に修正される1つの結合軸を含む直交機械軸を有する歯科ツール機械の運動学の概略図である。
【
図8B】本発明の実施形態による、結果として生じるツール経路を示す。
【
図8C】本発明の実施形態による、所与の修復物用の共通空間を示す。
【
図8D】本発明の実施形態による、
図8Aに示す運動学に対して生成された例証的な自由形式のツール経路を示す。
【
図9A】非結合軸のうちの1つの位置が
図8Aに示す運動学と比較してシフト又は修正される1つの結合軸を含む直交機械軸を有する歯科ツール機械の運動学の概略図である。
【
図9B】本発明の実施形態による、結果として生じるツール経路を示す。
【
図9C】本発明の実施形態による、所与の修復物用の共通空間を示す。
【
図9D】本発明の実施形態による、
図9Aに示す運動学に対して生成された例証的な自由形式のツール経路を示す。
【
図10A】結合軸が
図7Aの非結合軸に対して非直交である1つの結合軸を含む歯科ツール機械の運動学の概略図である。
【
図10B】本発明の実施形態による、結果として生じるツール経路を示す。
【
図10C】本発明の実施形態による、所与の修復物用の共通空間を示す。
【
図10D】本発明の実施形態による、
図10Aに示す運動学に対して生成された例証的な自由形式のツール経路を示す。
【
図11A】本発明の実施形態による、円弧形状のツール経路をもたらす2つの回転非結合軸を包含する1つの結合軸を含む歯科ツール機械の運動学の概略図である。
【
図11B】本発明の実施形態による、結果として生じるツール経路を示す。
【
図11C】本発明の実施形態による、所与の修復物用の共通空間を示す。
【
図11D】本発明の実施形態による、
図11Aに示す運動学に対して生成された例証的な自由形式のツール経路を示す。
【
図12A】一定のレベル上のツール経路を示し、ここで、異なるレベルが、異なる時点で機械加工される。
【
図12B】反対の場所から
図12Aに示すツール経路に同時に機械加工することができる一定のレベル上のツール経路を示し、ここで、各時点でのレベルは、両側間で異なり得る。
【
図13】修復物を取り囲むトロコイド経路を示し、それは、異なるツールを用いて両側から同時に処理することができ、ここで、異なるツールは、破線及び点線によって示す。
【
図14A】経路間の最大距離を制限して、頂部方向から例証的な修復物の表面を覆うために生成されたツール経路を示す。
【
図14B】
図14Aの経路に使用されたのと同じ方法で底部方向から例証的な修復物の表面を覆うために生成されたツール経路を示し、それは、それらの経路に同時に機械加工することができる。
【0023】
図面に示す参照番号は、以下に列挙される要素を示し、例証的な実施形態の後続の説明において参照されるであろう。
【0024】
1.歯科修復物
2.被加工物
3.歯科ツール機械
4.歯科ツール
5.固定式機械ベッド
P:自由形式のツール経路
y:被加工物の結合軸
yt:共通結合パラメータ
z,z’,z’’:歯科ツール軸
x’t,x’’t:変換された機械軸
d’,d’’:回転中心のオフセット
T’,T’’:変換
c’,c’’:円弧形状の軸
O’,O’’:回転中心
r’,r’’:半径
t1,t2,t3,t4:時点
δ:結合軸と非結合軸との間の角度
Δ:所望のシステムと実際の/修正されたシステムとの間の位置の差
【発明を実施するための形態】
【0025】
図7Aは、直交軸を有する歯科ツール機械(3)の運動学を示す。歯科ツール機械(3)は、歯科ツール(4)を各々有する2つのツールスピンドルを備える。ツール(4)は、ツール(4)に対して軸(y)に沿って同時に移動可能な被加工物(2)の両側上に配置される。それによって、移動可能な被加工物(2)は、2つの軸(x’,x’’)を考慮して運動学的軸結合を課し、それは、結合軸(y)の方向に2つの軸(x’,x’’)に対して独立して移動することができず、結合軸によって同時にのみ移動することができる。ツールスピンドルは、ツール(4)をそれぞれ回転させるツールモータを有する。
【0026】
図7Bでは、例証的な「D」形状の歯科修復物(1)が、被加工物(2)中に視覚化されている。結合軸(y)の固定位置に対して、可能なツールの移動を、
図7Aに示す運動学について破線及び点線によって示す。被加工物(2)の座標空間では、同時ツール経路を修復物(1)に適合させることができず、そのため、これらは、先行技術の方法を適用することによって自由形式のツール経路を辿る。
【0027】
結合軸の移動を含め、修復物に適合される自由形式のツール経路を作成するために、変換が必要とされる。これは、両方のツール(4)に対して別個に実行され、変換(T’,T’’)と、
図7Cに示す新しい座標空間とをもたらす。この変換された空間内で、本発明の実施形態によると、共通結合パラメータ(y
t)の任意の所与の位置について、両方のツール(4)は、変換された機械軸(x
t’,x
t’’)によってアドレス可能な全ての位置に同時に到達することができる。
図7Aに示すこの特定の場合、変換(T’,T’’)は、関係(x’
t,y
t)=T’(x’,y),(x’
t,y
t)=T’(x’’,y)を、例えばT’(x’,y)=(x’,y)
T及びT’’(x’’,y)=(x’’,y+a)
Tを用いて記述する。
【0028】
図7Bに与えられたシナリオに対する歯科修復物(1)の周りの例証的な自由形式のツール経路(P)を
図7Dに示す。両方のツール(4)は、連続的に切断することができ、任意の所与の位置で停止又は持ち上げられる必要がない。しかしながら、両方の自由形式のツール経路(P)は、結合パラメータ(y
t)を考慮しなければならず、結合パラメータ(y
t)は、各時点で両方のツール(4)について同一でなければならない。それが、
図7Dの両方の例証的な経路が、修復物(1)全体を覆うために両方のツール(4)に必要とされる結合パラメータ(y
t)の全範囲を覆うための補償移動(両方とも修復物の右側で)を包含する理由である。それが、補償移動が結合パラメータ(y
t)の可能な限り最小の値を有する点での一方のツール(4)に対するものであり、他方のツール(4)の自由形式のツール経路(P)についての結合パラメータ(y
t)の可能な限り最小の値で終了し、結合パラメータ(y
t)の可能な限り最大の値に対して逆も同様である理由である。
【0029】
図8Aでは、
図7Aからの運動学と比較して異なる運動学を示す。この場合、非結合軸のうちの1つ(x’’)は、意図的に反転される。従って、ツール(4)は、結合軸(y)の固定位置に対して同じ線で修復物を横断し、修復物は、
図8Cに示す変換された空間中で反転して見える。この例における変換は、例えば、T’(x’,y)=(x’,y)
T及びT’’(x’’,y)=(-x’’,y)
Tによって記述することができる。修復物(1)の変換された形状は、両方のツール(4)についての共通結合パラメータ(y
t)の同じ範囲を覆う。
図7Dに示すセットアップとは対照的に、
図8Dの結果として生じる自由形式の経路は、補償移動を必要としない。このセットアップでは、両方のツール(4)が衝突する可能性があるので、衝突回避も必要となり得る。
【0030】
図9Aに示す運動学は、
図8Aからの運動学と比較して僅かに異なる。任意の意図的な修正の他に、所望の精度を上回る軸の位置の意図しない差(Δ)(シフトなど)も導入される。これは、歯科ツール機械(3)の製造プロセスにおける制限された精度によって誘発される可能性がある。結合軸(y)の固定位置に対する結果として生じるツールセットアップを
図9Bに示す。修復物(1)形状を両方のツール(4)についての共通結合パラメータ(y
t)を有する空間に変換することは、
図9Cに視覚化されるように、差(Δ)だけ反転及びシフトされた形状をもたらす。修復物形状を取り囲むためにこの空間中にツール経路(P)を作成することは、例えば、
図9Dに示す自由形式の経路をもたらす。これらの経路(P)は、差(Δ)に対する補償移動(両方とも修復物の右側で)を必要とする。この例における変換は、例えば、T’(x’,y)=(x’,y)
T及びT’’(x’,y)=(-x’’,y+Δ)
Tによって記述することができる。
【0031】
図10Aは、結合軸(y)が角度(δ)だけ傾斜し、それが非直交系をもたらす運動学を示す。結合軸(y)の所与の位置に対して、ツール(4)は、
図10Bに示すように、角度(δ)だけ傾斜された線上の全ての位置に到達することができる。この空間では、結合軸(y)は、2つの非結合軸(x’,x’’)と混合される。結果として、混合を分離する空間への変換は、例えば以下によって与えられる。
T’(x’,y)=(x’cos(δ)-ysin(δ),x’sin(δ)+ycos(δ))
T、及び、
T’’(x’’,y)=(x’’cos(δ)-ysin(δ),x’’sin(δ)+ycos(δ)+α)
T。
【0032】
ここにおいて、例えばa=Δである。ここで傾斜及びシフトされた修復物形状を有する結果として生じる空間を、
図10Cに示す。この空間中に作成された例証的な自由形式のツール経路(P)を
図10Dに示し、それは、補償移動(両方とも修復物の右側で)を必要とする。
【0033】
前述の機械とは対照的に、
図11Aは、異なる半径(r’,r’’)を有する円弧形状の軸(c’,c’’)をもたらす2つの非結合回転アームを含む運動学を示す。半径は、同じでもあり得る。回転中心(O’,O’’)は、意図的に異なる位置を有し、それは、
図11Bに示す非結合軸(c’,c’’)の著しく異なる経路をもたらす。回転中心(O’,O’’)は、一致もし得る。回転中心(O’,O’’)は、半径方向にも調節可能であり得る。円弧形状の軸(c’,c’’)と結合軸(y)との混合を分離する結合パラメータ(y
t)をもたらす変換は、修復物形状を円弧形状に歪ませる空間をもたらす。そのような変換の例証的な結果を
図11Cに示す。これらの非線形変換(x’
t,y
t)=T’(c’,y),(x’’
t,y
t)=T’(c’’,y)は、例えば
図11Aに示すように、機械運動学によって与えられる。結果として生じる変形された自由形式の経路(P)を
図11Dに示す。結合パラメータ(y
t)の範囲全体を覆うために、両方のツール(4)についての経路(P)は、補償移動を必要とする。この場合、移動は、一方のツールについての結合パラメータ(y
t)の最低値であるこのツールにとっての右側上に位置し、修復物の中間のどこかに、他方のツールについての結合パラメータ(y
t)の最大値に位置する。
【0034】
図1は、本発明の実施形態による歯科機械加工システムのダブルスピンドル歯科ツール機械(3)の運動学を示す。歯科ツール機械(3)は、歯科ツール(4)を各々有する2つのツールスピンドルを備える。ツール(4)は、ツール(4)に対して軸(y)に沿って同時に移動可能な被加工物(2)の両側上に配置される。それによって、移動可能な被加工物(2)は、2つのツールスピンドルに対して運動学的軸結合を課す。各ツールスピンドルは、それぞれの半径(r’,r’’)を有するそれぞれの回転中心(O’,O’’)を中心とするそれぞれの円弧形状の軸(c’,c’’)に沿っていずれかの方向にそれぞれのツール(4)を独立して移動させることができる。ツールスピンドルは、ツール(4)をそれぞれ回転させるツールモータを有する。それぞれのツールスピンドルの各ツール(4)を、それぞれの歯科ツール軸(z’,z’’)に沿って個々に移動させることができる。被加工物(2)を、軸(y)を中心として回転させることもできる。回転中心(O’,O’’)は、オフセット(d’,d’’)によってそれぞれ分離され、オフセット(d’,d’’)は、製造公差又は構造を通して異なり得る。同様に、ツールスピンドルの半径(r’,r’’)は、製造公差又は構造を通して異なり得る。他方では、円弧形状の軸(c’,c’’)に沿ったツール(4)の移動と軸(y)に沿った被加工物(2)の移動との混合があり、即ち、円弧形状の軸(c’,c’’)は、結合軸(y)から線形独立していない。この混合は、ツールスピンドル構造が異なる場合、両方の機械加工側上で必ずしも同一ではない。歯科ツール機械(3)は、後続の説明で更に説明する本発明の方法に従ってツールモータを含むツールスピンドルの駆動を個々に制御するように適合された制御手段を有する。
【0035】
本発明は、歯科ツール機械(3)を使用することによる被加工物(2)からの個々の自由形式のターゲットジオメトリを有する歯科修復物(1)の同時両側機械加工用の自由形式のツール経路(P)の形状の計画のコンピュータ実装方法を提供する。
【0036】
図2Aは、歯科修復物(1)のターゲットジオメトリの概略上面図を示す。
図2Aのターゲットジオメトリは、切り取られた円錐で歯科ツール軸(z)に沿って位置合わせされた円錐台に対応する。ターゲットジオメトリは、例示を容易にするために単純に保持されている。
図2Bは、
図2Aのターゲットジオメトリの概略断面図を示す。後の説明では、
図2A及び
図2Bのターゲットジオメトリを参照して、同時両側機械加工用のツール経路(P)を例示する。
【0037】
本方法は、運動学的軸結合がそれによって両方のツール(4)についての共通結合パラメータに変換される個々の自由形式のターゲットジオメトリの変換(T’,T’’)を決定するステップと、これらの変換(T’,T’’)に依存して、共通結合パラメータが同時に駆動される全ての参加しているツールスピンドルについて時間的に同一である自由形式のツール経路(P)の形状を生成するステップとを備える。
【0038】
結合軸(y)を両方のツールスピンドルについての共通空間に変換するための例証的な変換(T’,T’’)は、ツール(4)の円運動、即ちデカルト座標系における円弧形状の軸(c’,c’’)を線上にマッピングすることであり得る。
図3A~3Dは、
図1の歯科ツール機械(3)の運動学についての実施形態による変換(T’,T’’)の概略図を示す。共通結合パラメータは、変換された共通空間中の相対的に移動可能な被加工物(2)の結合軸(y)に対応する。回転中心(O’,O’’)の互いに対するオフセット(d’,d’’)及びツール経路(P)の可能な異なる半径(r’,r’’)は、これらの変換(T’,T’’)において考慮されなければならない。この手順は、被加工物(2)の結合軸(y)の特定の傾斜について
図3A~3Dに示す。
図3A~
図3Dに示すように、歯科修復物(1)は、被加工物(2)の内部に概略的に示す。
図3A及び
図3Bでは、歯科修復物(1)を、
図2Aの底部方向から示す。
図3C及び
図3Dでは、歯科修復物(1)を、
図2Aの頂部方向から示す。円弧形状の軸(c’)に沿ったツール(4)の移動についての自由度は、被加工物(2)を通る実線曲線として示す。円弧形状の軸(c’’)に沿ったツール(4)の移動についての自由度は、被加工物(2)を通る破線曲線として示す。ツール(4)に関連する異なるオフセット(d’,d’’)及び半径(r’,r’’)に起因して、実線曲線と破線曲線とは、一致しないことがある。
図3B及び
図3Cは、それぞれの変換されたターゲットジオメトリを示す。結合軸(y)において到達することができる両方の機械加工側上の全ての点は、1つの線上にある。
【0039】
実施形態では、本方法は、例えば
図10Aに示すような基準位置/位置合わせからの結合軸(y)のずれ(δ)が所望の精度を上回る場合、又は少なくとも一方のツールスピンドルの運動学的設定が、例えば
図9Aに示すような量(Δ)を通して(製造プロセスに起因して)シフトされるか、若しくは他方のツールスピンドルの運動学的設定に対して意図的に修正される場合に、上述の(T’,T’’)中に(3)歯科ツール機械の較正を考慮するステップを更に備える。
【0040】
実施形態では、本方法は、歯科ツール機械(3)の他の自由度が異なるツールスピンドルに対してそれぞれ異なる場合、結合軸(y)と他の自由度との混合を分離するステップを更に備える。
【0041】
図4は、
図2の頂部方向からの本発明の実施形態による生成されたツール経路(P)のコースの概略図を示す。この実施形態では、自由形式のツール経路(P)は、ツール(4)がそれぞれの半径(r’,r’’)を有するそれぞれの回転中心(O’,O’’)を中心とした円弧形状の軸(c’,c’’)に沿って独立して部分的に移動され、被加工物が結合軸(y)に沿って送り込まれる曲線スライスで機械加工するために生成される。
図4は、ツール(4)の円弧形状の軸(c’,c’’)に沿って生成された自由形式の経路(P)のコースを実線及び破線の曲線スライスとして示し、時点t1~t4は、実線の曲線スライスのコースをマークする。両方の機械加工側上での運動学的ずれに起因して、これらの自由形式の経路(P)は、一致する必要はない。この実施形態では、ツール(4)は、自由形式の経路(P)を反対方向に横断する。代替として、それらを、同じ方向に移動させることができる。ツール経路(P)のこの特別な形状は、
図4に示すように、パラメトリックな方法で計算されたツール経路に匹敵するが、これらの経路の計算は異なって実行される。本方法は、修復物(1)の3Dジオメトリ全体を考慮して、パラメータ、例えば蛇行の経路距離を局所的に適合させることを可能にする。ツール(4)が反対方向に移動する場合、衝突回避は、例えば、本発明の実施形態である後退移動によってオプションとして実行することができる。この場合、両方のツールが衝突する直前に、ツールのうちの一方は、その水平移動を停止し、衝突のない位置までツール軸方向(z’又はz’’)に持ち上げられ、他方のツールが通過するまで待機し、後退前の最後の原点で機械加工を開始する。
【0042】
図5は、
図2の頂部方向からの本発明の代替の実施形態による生成された自由形式のツール経路(P)のコースの概略図を示す。この実施形態では、自由形式のツール経路(P)は、ツール(4)が被加工物(2)のジオメトリに従って部分的に移動され、被加工物が結合軸(y)に沿って送り込まれる真っ直ぐなスライスで機械加工するために生成される。
図5は、生成された自由形式の経路(P)のコースを実線及び破線の直線スライスとして示し、時点t1~t4は、実線の直線スライスのコースをマークする。両方の機械加工側上での運動学的ずれに起因して、これらの自由形式の経路(P)は、一致する必要はない。この実施形態では、歯科ツール(4)は、自由形式の経路(P)を反対方向に横断する。代替として、それらを、同じ方向に移動させることができる。前述の円弧形状のツール経路とは対照的に、これらの直線ツール経路は、より短い経路長で、従ってより短い時間で、直線形状を有する被加工物(2)を機械加工することができる。これらの被加工物に適合されたツール経路は、先行技術の方法を適用することによって、円弧形状のツール軸を有する2スピンドル機械上で同時に処理することができなかった。反対方向に移動するツール(4)に対して、衝突なしエリアへの経路の分離は、本発明の実施形態である衝突回避として利用することができる。この場合、修復物を横断するツール経路の各水平部分は、ツール全体が修復物によって覆われる場合、衝突がない。反対側からのツールは、覆われたツールと衝突することができない。それが、ツールをこの衝突なしエリア中で互いに通過するように同期させることができる理由である。実施形態では、本方法は、少なくとも2つのツールスピンドルと接続された機械部品との間の衝突を回避する様々な戦略を備える。この実施形態のバーションでは、衝突回避ステップでは、自由形式のツール経路(P)は、分離的機械加工空間によって互いから分離される。衝突回避のために、平面による
図6Bの歯科修復物(1)の単純な水平分離が可能であろう。他のターゲットジオメトリに対しては、しかしながら、2つよりも多くのエリア中の自由曲面による分離も必要又は有用であり得る。その後、自由形式のツール経路(P)は、それらに割り当てられた分離的機械加工空間中でのみ機械加工側に対して生成される。この実施形態の別のバーションでは、衝突回避ステップでは、衝突被害エリア及び衝突なしエリアが、自由形式のツール経路(P)に沿って決定され、自由形式のツール経路(P)は、ツールスピンドル及び衝突に関連する機械部品が関連する衝突被害エリア中で決して同時に移動されないような方法で同期される。衝突被害とは、ツール(4)又は衝突関連機械部品がこれらのエリア中で衝突する可能性があることを意味する。この実施形態の別のバーションでは、衝突回避ステップでは、ツール軸(z’,z’’)に沿った後退移動が、一方又は両方のツール軸(z’,z’’)上でそれらを互いに通り過ぎて案内するように実行される。
【0043】
実施形態では、自由形式のツール経路(P)は、前仕上げ又は仕上げのうちのいずれかのためにターゲットジオメトリに対して生成される。自由形式のツール経路(P)は、両方のツール(4)に対して隣接するツール経路(P)の距離に関する静的又は動的境界条件で歯科修復物(1)の表面上又はその近く、即ち表面へのオフセットで機械加工するために生成される。自由形式のツール経路(P)は、決定されるべき距離でターゲットジオメトリの表面上又はその近くに分布される。ツール経路(P)又はツール(4)の特性に基づいて、距離についての異なる戦略を使用することができる。好ましい戦略は、例えば、表面の均一な被覆を保証するためにツール経路(P)が有し得る最大距離を制限することである。同時両側機械加工では、両側は、好ましくは、近隣ツール経路(P)までのこの最大距離を維持する。
図6Aは、別の実施形態による
図2Aのターゲットジオメトリ用のツール経路の分布の概略図を示す。
図6Bは、
図6Aのツール経路(P)の分布の概略断面図を示す。
図6Bの白丸は、
図2Aの歯科修復物(1)の頂部に対応する機械加工側上のツール経路(P)を示す。黒丸は、
図2Aの歯科修復物(1)の底部に対応する機械加工側上のツール経路(P)を示す。ツール経路(P)は、ここでは、所定の最大距離を有するという戦略で生成された。
図6Bに破線で示すように、両方の機械加工側上のツール経路(P)位置は、可能な限り完全に互いの上にある。
図6Aに示すように、外側の太い円は、歯科修復物(1)の非常に急勾配の外面上にある高密度のツール経路(P)を図示し、それも最大距離戦略を満たす。そのような方法でツール経路で処理されたより複雑な物体が、
図14Aの第1のツール(4)及び
図14Bの第2のツール(4)についての斜視図に示す。
図14A~Bに示すツール経路(P)は、閉ループに分離することができ、これらのループは、両方のツールに対して同じ方向又は反対方向に同期させることができ、それは、本発明の一部としての衝突回避に関連する。経路(P)が同じ方向に同期される場合、ツール(4)は、常に互いを指していることがあり、ツール軸(z’,z’’)の方向における浸漬深さに関して分離的領域に分離されなければならない。又は代替として、経路(P)が反対方向に同期される場合、ツール(4)は、特定の点でのみ互いを通過する。この場合、例えば、これらの点が衝突しないことを確実にしなければならない。この又は同様の経路戦略は、一定のカスプ経路生成(constant cusp path generation)としても知られるシングルスピンドル機械加工用の最新技術であるが、処理時間を節約するための同時機械加工は、先行技術の方法では実行することができない。
【0044】
実施形態では、自由形式のツール経路(P)は、両方のツール軸(z’,z’’)に対して一定のレベルで輪郭に沿って機械加工するために生成される。
図12A~Bに示すように、自由形式のツール経路(P)は、一定のレベル上にある。
図12Aの異なる時点t1~t3によって示すように、ツール軸(z’,z’’)の異なるレベルは、必ずしも時間的に同期されなければならないわけではなく、シングルスピンドル機械のための一定のレベルのツール経路は最新技術である。しかしながら、一定のレベルの自由形式のツール経路は、先行技術の方法では同時に機械加工することができない。
【0045】
本発明の方法によると、これらの同時に機械加工された一定のレベルのツール経路(P)を用いて、機械加工時間が先行技術の方法と比較して短縮される。
【0046】
実施形態では、自由形式のツール経路(P)は、
図13に示すように、修復物(1)の形状を辿るトロコイド経路に沿って同時に機械加工するために生成される。機械加工用のトロコイド経路は、先行技術の方法では2スピンドル機械上で同時に機械加工することができない。トロコイド経路は、一定の振幅又は変動する振幅を有する重ね合わされた動きとして決定することができる。
【国際調査報告】