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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-25
(54)【発明の名称】耐酸性および耐アルカリ性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20221117BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20221117BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20221117BHJP
   C08G 18/34 20060101ALI20221117BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20221117BHJP
   C08G 18/73 20060101ALI20221117BHJP
   C08G 18/75 20060101ALI20221117BHJP
   C08G 18/38 20060101ALI20221117BHJP
   C08G 18/83 20060101ALI20221117BHJP
   C09D 175/08 20060101ALI20221117BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20221117BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20221117BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20221117BHJP
   D06M 15/564 20060101ALI20221117BHJP
   D06M 11/00 20060101ALI20221117BHJP
   C08J 3/03 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
C08G18/00 C
C08G18/44
C08G18/48 054
C08G18/48 004
C08G18/34 080
C08G18/08 019
C08G18/73
C08G18/75
C08G18/38 057
C08G18/83
C09D175/08
C09D175/04
C09D5/02
C09D7/63
D06M15/564
D06M11/00 110
C08J3/03 CFF
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519076
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(85)【翻訳文提出日】2022-03-24
(86)【国際出願番号】 EP2020076469
(87)【国際公開番号】W WO2021063757
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】201910939340.3
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520204744
【氏名又は名称】コベストロ・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・アンド・コー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】チュー,イン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ジーロン
(72)【発明者】
【氏名】リアン,シーティアン
(72)【発明者】
【氏名】リー,シュエドン
【テーマコード(参考)】
4F070
4J034
4J038
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
4F070AA53
4F070AB13
4F070AB22
4F070AC12
4F070AE28
4F070CB01
4F070CB12
4J034BA01
4J034BA07
4J034BA08
4J034CA01
4J034CA02
4J034CA03
4J034CA04
4J034CA05
4J034CA15
4J034CA16
4J034CA17
4J034CB03
4J034CB04
4J034CB05
4J034CC03
4J034CC08
4J034CC09
4J034CC12
4J034CC23
4J034CC26
4J034CC45
4J034CC52
4J034CC61
4J034CC62
4J034CC65
4J034CC67
4J034CD04
4J034CD05
4J034CD06
4J034DA01
4J034DB01
4J034DB03
4J034DF01
4J034DF02
4J034DF03
4J034DG06
4J034DP18
4J034HA01
4J034HA07
4J034HA13
4J034HA15
4J034HB05
4J034HB07
4J034HB08
4J034HB12
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC33
4J034HC34
4J034HC35
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA30
4J034JA43
4J034LA01
4J034LA16
4J034QA01
4J034QA02
4J034QA03
4J034QA05
4J034QB17
4J034QC03
4J034QC05
4J034RA03
4J034RA05
4J034RA07
4J034RA09
4J034RA12
4J034RA14
4J038DG121
4J038DG131
4J038DG301
4J038GA06
4J038GA09
4J038JB18
4J038KA03
4J038MA10
4J038MA14
4J038NA04
4J038PB06
4J038PB07
4L031AA18
4L031AA20
4L031AB34
4L031CA01
4L033AA07
4L033AA08
4L033AB07
4L033AC15
4L033CA50
(57)【要約】
本発明は、耐酸性および耐アルカリ性組成物、その調製方法、および物品の製造におけるその使用、ならびにそれでコーティングまたは含浸された基材を含む物品、ならびに物品の調製方法および使用に関する。組成物は、カルボキシル基を有する少なくとも1つの水性ポリウレタン分散体;イソシアネート反応性基を有する少なくとも1つの架橋剤;カルボキシル反応性基を有する少なくとも1つの架橋剤;および任意に添加剤;を含み、ここで、前記水性ポリウレタン分散体中のカルボキシル基の量は、前記水性ポリウレタン分散体の量が100重量%であることに基づいて、0.05重量%を超え;イソシアネート反応性基を有する前記架橋剤の量は、前記組成物の量が100重量%であることに基づいて、0.2重量%~10重量%であり;前記組成物のカルボキシル基に対するカルボキシル反応性基のモル比は、0.5を超える。本発明の組成物で形成されたフィルムは、良好な耐酸性および耐アルカリ性を有する。本発明の組成物で処理することによって得られる製品は、平坦な外観および良好な手触りを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
カルボキシル基を有する少なくとも1つの水性ポリウレタン分散体;
イソシアネート反応性基を有する少なくとも1つの架橋剤;
カルボキシル反応性基を有する少なくとも1つの架橋剤;および
任意に添加剤;
を含み、
ここで、前記水性ポリウレタン分散体中のカルボキシル基の量は、前記水性ポリウレタン分散体の量が100重量%であることに基づいて、0.05重量%を超え;イソシアネート反応性基を有する前記架橋剤の量は、前記組成物の量が100重量%であることに基づいて、0.2重量%~10重量%であり;前記組成物のカルボキシル基に対するカルボキシル反応性基のモル比は、0.5を超える、前記組成物。
【請求項2】
前記水性ポリウレタン分散体が、イソシアネートおよびポリマーポリオールを含む系の反応によって得られるポリウレタンを含み、前記ポリマーポリオールが、ポリエーテルポリオールおよびポリカーボネートポリオールのうちの1つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記水性ポリウレタン分散体が、以下の成分:
A1)2以上のイソシアネート官能価を有する少なくとも1つのポリイソシアネート;
A2)少なくとも2つの異なるポリテトラメチレンエーテルグリコールA2a)およびA2b)(ここで、前記A2a)は、1500g/mol以下の数平均分子量を有し、前記A2b)は、1500g/molを超える数平均分子量を有する);
A3)32g/mol~400g/molの数平均分子量を有し、ヒドロキシル基およびカルボキシル基を有する少なくとも1つのアニオン性または潜在的にアニオン性の親水剤;
B)アミノ官能性を有する少なくとも1つのアニオン性または潜在的にアニオン性の親水剤;
C)親水性基を有さず、32g/mol~400g/molの数平均分子量を有する少なくとも1つのアミノ官能性化合物;および
D)任意に中和剤;
を含む系の反応によって得られるポリウレタンを含有し、
ここで、前記A2a)の数平均分子量の前記A2b)の数平均分子量に対する比が、1:9~4:1であり、前記A3)32g/mol~400g/molの数平均分子量を有し、ヒドロキシル基およびカルボキシル基を有するアニオン性または潜在的にアニオン性の親水剤の重量が、前記系の親水剤の重量の20%~70%であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記A1)のポリイソシアネートが、脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環式ポリイソシアネートのうちの1つ以上であることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記A1)のポリイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートのうちの1つ以上であることを特徴とする、請求項3または4に記載の組成物。
【請求項6】
前記A2a)が、400g/mol~1500g/mol、好ましくは600g/mol~1200g/mol、最も好ましくは1000g/molの数平均分子量を有することを特徴とする、請求項3~5にいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記A2b)が、1500g/molを超え且つ8000g/mol以下、好ましくは1800g/mol~4000g/mol、最も好ましくは2000g/molの数平均分子量を有することを特徴とする、請求項3~6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記A3)32g/mol~400g/molの数平均分子量を有し、ヒドロキシル基およびカルボキシル基を有するアニオン性または潜在的にアニオン性の親水剤が、ジメチロールプロピオン酸であることを特徴とする、請求項3~7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記A2a)の数平均分子量の前記A2b)の数平均分子量に対する比が、1:4~7:3であることを特徴とする、請求項3~8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記A3)32g/mol~400g/molの数平均分子量を有し、ヒドロキシル基およびカルボキシル基を有するアニオン性または潜在的にアニオン性の親水剤の重量が、前記系の親水剤の重量の20%~60%、さらに好ましくは20%~35%、最も好ましくは20%~30%であることを特徴とする、請求項3~9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記B)のアミノ官能性を有するアニオン性または潜在的にアニオン性の親水剤が、2-[(2-アミノエチル)アミノ]エタンスルホン酸ナトリウムであることを特徴とする、請求項3~10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記D)の中和剤のモル量が、前記A3)32g/mol~400g/molの数平均分子量を有し、ヒドロキシル基およびカルボキシル基を有するアニオン性または潜在的にアニオン性の親水剤のモル量が100mol%であることに基づいて、50mol%以下、好ましくは30mol%以下であることを特徴とする、請求項3~11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
イソシアネート反応性基を有する前記架橋剤が、親水性に変性された脂肪族イソシアネート架橋剤であることを特徴とする、請求項1~12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
カルボキシル反応性基を有する前記架橋剤が、親水性に変性されたカルボジイミドであることを特徴とする、請求項1~13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
カルボキシル基を有する前記水性ポリウレタン分散体、イソシアネート反応性基を有する前記架橋剤、カルボキシル反応性基を有する前記架橋剤および任意に前記添加剤を任意の方法で混合する工程を含む、請求項1~14のいずれかに記載の組成物の調製方法。
【請求項16】
前記水性ポリウレタン分散体を調製する方法が、以下の工程:
I) A1)2以上のイソシアネート官能価を有する少なくとも1つのポリイソシアネート;A2)少なくとも2つの異なるポリテトラメチレンエーテルグリコールA2a)およびA2b)(ここで、前記A2a)は、1500g/mol以下の数平均分子量を有し、前記A2b)は、1500g/molを超える数平均分子量を有する);およびA3)32g/mol~400g/molの数平均分子量を有し、ヒドロキシル基およびカルボキシル基を有する少なくとも1つのアニオン性または潜在的にアニオン性の親水剤を混合して反応させて、イソシアネート官能性プレポリマーを得る工程;
II) 前記イソシアネート官能性プレポリマー、B)アミノ官能性を有する少なくとも1つのアニオン性または潜在的にアニオン性の親水剤、C)親水性基を有さず、32g/mol~400g/molの数平均分子量を有する少なくとも1つのアミノ官能性化合物、およびD)任意に中和剤を反応させて、ポリウレタンを得る工程;および
III) 工程II)の前、工程II)の間または工程II)の後に水を導入して前記水性ポリウレタン分散体を得る工程;
を含み、
ここで、前記A2a)の数平均分子量の前記A2b)の数平均分子量に対する比が、1:9~4:1であり、前記A3)32g/mol~400g/molの数平均分子量を有し、ヒドロキシル基およびカルボキシル基を有するアニオン性または潜在的にアニオン性の親水剤の重量が、前記系の親水剤の重量の20%~70%であることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
物品を製造するための、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項18】
請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物でコーティングまたは含浸された基材を含む物品。
【請求項19】
前記基材が、超極細繊維、好ましくは超極細繊維不織布および超極細繊維のうちの1つ以上であることを特徴とする、請求項18に記載の物品。
【請求項20】
自動車、装飾、衣類、靴および家庭用電化製品の分野における請求項18または19に記載の物品の使用。
【請求項21】
物品の製造方法であって、以下の工程:
i) 海島型二成分超極細繊維を請求項1~14のいずれかに記載の組成物に含浸させる工程;
ii) 工程i)で処理した海島型二成分超極細繊維を取り出して乾燥して、次に前記海島型二成分超極細繊維を熱アルカリまたは熱水に含浸させて繊維中の海成分を除去して超極細繊維を得る工程;および
iii) 前記超極細繊維を取り出して乾燥して前記物品を得る工程
を含む、前記方法。
【請求項22】
工程ii)で処理した超極細繊維を取り出して乾燥して、次いで染料に超極細繊維を含浸させる工程iv)が、前記工程ii)と前記工程iii)との間でさらに完了することを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
物品の製造方法であって、以下の工程:
a) 海島型二成分超極細繊維を熱アルカリまたは熱水に含浸させて、繊維中の海成分を除去し、超極細繊維を得る工程;
b) 工程a)で処理した超極細繊維を取り出して乾燥して、次いで、請求項1~14のいずれかに記載の組成物に前記超極細繊維を含浸させる工程;および
c) 前記超極細繊維を取り出して乾燥して前記物品を得る工程
を含む、前記方法。
【請求項24】
工程b)で処理した超極細繊維を取り出して乾燥して、次いで染料に超極細繊維を含浸させる工程d)が、前記工程b)と前記工程c)との間でさらに完了することを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐酸性および耐アルカリ性組成物、その調製方法、および物品の製造におけるその使用、ならびにそれでコーティングまたは含浸された基材を含む物品、ならびに物品の調製方法および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
超極細繊維、すなわち0.3デニール(直径5ミクロン)未満の繊度を有する繊維は、構造シミュレーション、高い通気性、良好な柔らかい手触り、高い物理的および機械的特性などの特性を有し、本革の理想的な代替材料の1つであり、装飾、自動車、バッグ、靴、衣類などの分野に適用することができる。
【0003】
超極細繊維は、一般に、ふっくらとした弾力のある手触りを得るためにポリウレタンを含浸させる必要がある。溶媒型ポリウレタン(ポリウレタンジメチルホルムアミド溶液)は、工業的に広く使用されている。しかしながら、ジメチルホルムアミド(DMF)溶液は毒性があり、発癌リスクを有するため、超極細繊維に水性ポリウレタン分散体を含浸させる試みがなされてきた。
【0004】
近年、島成分としてポリエステル(PET)および海成分としてアルカリ可溶性ポリエステル(Co-PET)を、島成分としてナイロン(ナイロン)および海成分としてアルカリ可溶性ポリエステル(Co-PET)を、または島成分としてポリエステル(PET)および海成分としてポリビニルアルコール(PVA)を用いた海島型二成分超極細繊維製品が市場に登場している。トルエン等の溶剤ではなく、熱アルカリや熱水のみが、開繊に必要とされるので、より環境に優しく、市場でますます好まれている。このような方法は、水性ポリウレタン分散体で形成されたフィルムが優れた耐熱アルカリ性を有することを必要とする。さらに、超極細繊維製品はより良好な外観および使用性能を得るために、開繊後に染色する必要がある場合があり、染色工程は通常、高温の酸性条件を必要とし、これはまた、含浸のための水性ポリウレタン分散体で形成されたフィルムの耐熱酸性に対する高い挑戦を提起する。
【0005】
EP1353006A1は、多孔質不織スエード皮革の製造方法を開示している。選択された水性ポリウレタン分散体は、海成分を除去するための条件、染色条件下での高温、酸およびアルカリに耐えるための条件などの製造工程の要件を満たすべきであり、架橋剤は、水性ポリウレタン分散体の物理的および機械的特性、耐溶剤性および耐久性を改善するように選択することができることが言及されている。候補の架橋剤は、メラミン、アジリジン、カルボジイミド、エポキシド、ジルコニウム化合物、イソシアネートまたはブロックイソシアネートを含む。
【0006】
WO2019025964A1は、0.5~10%の架橋剤を使用することができる、水性ポリウレタン分散体を使用して多孔質不織スエード皮革を製造する方法を開示しており、候補の架橋剤はメラミン、アジリジン、カルボジイミド、エポキシド、ジルコニウム化合物またはイソシアネート、好ましくはカルボジイミドおよび低温非ブロック化イソシアネート架橋剤を含み、それは、それらがより長期間安定なままであり、製造がより管理しやすいからである。
【0007】
JP2011042896A1は、カルボキシル基またはカルボキシレート塩基を含有する水性ポリウレタン分散体、およびこのポリウレタンで繊維生地材料を含浸させる方法を開示している。この方法は、架橋剤を使用しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】EP1353006A1
【特許文献2】WO2019025964A1
【特許文献3】JP2011042896A1
【発明の概要】
【0009】
用語「ポリウレタン」は、ポリウレタンウレアおよび/またはポリウレタンポリウレアおよび/またはポリウレアおよび/またはポリチオウレタンを意味する。
本発明の水性ポリウレタン分散体は、組成物に分散液として直接加えられてもよいし、組成物にポリウレタンポリマーおよび水の形態で加え、混合して分散体を形成してもよい。
【0010】
用語「含浸」は、液が可撓性吸収体に浸透することを意味し、該可撓性吸収体は、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル、セルロース、ポリアクリルアミド、ポリウレタン等で出来ている吸収体であってもよい。
【0011】
本発明の目的は、耐酸性および耐アルカリ性組成物、その調製方法、および物品の製造におけるその使用、ならびにそれでコーティングまたは含浸された基材を含む物品、ならびに物品の調製方法および使用を提供することである。
【0012】
本発明の組成物は、
カルボキシル基を有する少なくとも1つの水性ポリウレタン分散体;
イソシアネート反応性基を有する少なくとも1つの架橋剤;
カルボキシル反応性基を有する少なくとも1つの架橋剤;および
任意に添加剤;
を含み、
ここで、前記水性ポリウレタン分散体中のカルボキシル基の量は、前記水性ポリウレタン分散体の量が100重量%であることに基づいて、0.05重量%を超え;イソシアネート反応性基を有する前記架橋剤の量は、前記組成物の量が100重量%であることに基づいて、0.2重量%~10重量%であり;前記組成物のカルボキシル基に対するカルボキシル反応性基のモル比は0.5を超える。
【0013】
本発明の態様によれば、カルボキシル基を有する前記水性ポリウレタン分散体、イソシアネート反応性基を有する前記架橋剤、カルボキシル反応性基を有する前記架橋剤および任意に前記添加剤を任意の方法で混合する工程を含む、本発明に従って提供される組成物の調製方法が提供される。
【0014】
本発明の一態様によれば、物品の製造における、本発明に従って提供される組成物の使用が提供される。
【0015】
本発明の一態様によれば、本発明により提供される組成物でコーティングまたは含浸された基材を含む物品が提供される。
【0016】
本発明の一態様によれば、自動車、装飾、衣類、靴、および家庭用電化製品の分野における、本発明に従って提供される物品の使用が提供される。
【0017】
本発明の一態様によれば、以下の工程:
i) 海島型二成分超極細繊維を本発明により提供される組成物に含浸させる工程;
ii) 工程i)で処理した海島型二成分超極細繊維を取り出して乾燥して、次いで海島型二成分超極細繊維を熱アルカリまたは熱水に含浸させて繊維中の海成分を除去し、超極細繊維を得る工程;および
iii) 超極細繊維を取り出して乾燥して前記物品を得る工程;
を含む、物品の製造方法が提供される。
【0018】
本発明の一態様によれば、以下の工程:
a) 海島型二成分超極細繊維を熱アルカリまたは熱水に含浸させて、繊維中の海成分を除去し、超極細繊維を得る工程;
b) 工程a)で処理された超極細繊維を取り出して乾燥して、次いで超極細繊維を本発明に従って提供される組成物に含浸させる工程;および
c) 超極細繊維を取り出して乾燥して前記物品を得る工程;
を含む、物品の製造方法が提供される。
【0019】
本発明の組成物で形成されたフィルムは、良好な耐酸性および耐アルカリ性、特に耐熱アルカリ性および耐熱酸性を有する。本発明の組成物で処理して得られる製品は平坦な外観と良好な手触りを有するため、本発明の組成物は、超極細繊維含浸プロセスの過酷な条件:開繊プロセスの熱アルカリ条件と染色プロセスの熱酸条件(pH<6)、に特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例6の組成物の含浸により得られた超極細繊維不織布サンプルの外観図であり、ここで、超極細繊維不織布サンプルは平坦な外観を有し、しわが少ない。
図2】比較例12の比較組成物の含浸により得られた超極細繊維不織布サンプルの外観図であり、ここで、超極細繊維不織布サンプルは、不均一な外観を有し、しわが多い。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明によって提供される組成物は、カルボキシル基を有する少なくとも1つの水性ポリウレタン分散体;イソシアネート反応性基を有する少なくとも1つの架橋剤;カルボキシル反応性基を有する少なくとも1つの架橋剤;および任意の添加剤を含み;ここで、前記水性ポリウレタン分散体中のカルボキシル基の量は、前記水性ポリウレタン分散体の量が100重量%であることに基づいて、0.05重量%を超え;イソシアネート反応性基を有する前記架橋剤の量は、前記組成物の量が100重量%であることに基づいて、0.2重量%~10重量%であり;前記組成物のカルボキシル基に対するカルボキシル反応性基のモル比は0.5を超える。本発明はさらに、前記組成物を調製するための方法、物品の製造におけるその使用、およびそれでコーティングまたは含浸された基材を含む物品、ならびに物品の調製方法および使用を提供する。
【0022】
カルボキシル基を有する水性ポリウレタン分散体
カルボキシル基を有する前記水性ポリウレタン分散体の量は、前記組成物の量が100重量%であることに基づいて、80重量%~98重量%である。
【0023】
前記水性ポリウレタン分散体のカルボキシル基の量は、前記水性ポリウレタン分散体の量が100重量%であることを基準として、好ましくは0.05重量%を超え且つ1重量%以下であり、さらに好ましくは0.1重量%~0.5重量%である。
【0024】
前記水性ポリウレタン分散体のpHは、好ましくは8.0未満、さらに好ましくは7.5未満、最も好ましくは6.5~7.5である。
【0025】
前記水性ポリウレタン分散体の固形分は、前記水性ポリウレタン分散体の量が100重量%であることに基づいて、好ましくは30重量%~55重量%である。
【0026】
前記水性ポリウレタン分散体の粘度は、好ましくは15mPa・s~4000mPa・sである。
【0027】
前記水性ポリウレタン分散体の粒径は、好ましくは50nm~7000nm、最も好ましくは150nm~7000nmである。
【0028】
前記水性ポリウレタン分散体は、好ましくはイソシアネートおよびポリマーポリオールを含む系の反応によって得られるポリウレタンを含有し、前記ポリマーポリオールは、ポリエーテルポリオールおよびポリカーボネートポリオールのうちの1つ以上である。
【0029】
前記ポリマーポリオールがポリカーボネートポリオールである場合、前記水性ポリウレタン分散体は、好ましくは水性アニオン性脂肪族ポリカーボネートポリウレタン分散体である。
【0030】
前記ポリマーポリオールがポリエーテルポリオールである場合、前記水性ポリウレタン分散体は、好ましくは以下の成分:
A1)2以上のイソシアネート官能価を有する少なくとも1つのポリイソシアネート;
A2)少なくとも2つの異なるポリテトラメチレンエーテルグリコールA2a)およびA2b)(ここで、前記A2a)は、1500g/mol以下の数平均分子量を有し、前記A2b)は、1500g/molを超える数平均分子量を有する);および
A3)32g/mol~400g/molの数平均分子量を有し、ヒドロキシル基およびカルボキシル基を有する少なくとも1つのアニオン性または潜在的にアニオン性の親水剤;
B)アミノ官能性を有する少なくとも1つのアニオン性または潜在的にアニオン性の親水剤;
C)親水性基を有さず、32g/mol~400g/molの数平均分子量を有する少なくとも1つのアミノ官能性化合物;および
D)任意に中和剤;
を含む系の反応によって得られるポリウレタンを含有し、
ここで、前記A2a)の数平均分子量の前記A2b)の数平均分子量に対する比は1:9~4:1であり、前記A3)32g/mol~400g/molの数平均分子量を有し、ヒドロキシル基およびカルボキシル基を有するアニオン性または潜在的にアニオン性の親水剤の重量は、前記系の親水剤の重量の20%~70%である。
【0031】
A1)ポリイソシアネート
前記ポリイソシアネートは、好ましくは2~4、さらに好ましくは2~2.6、なお好ましくは2~2.4、最も好ましくは2のイソシアネート官能価を有する。
【0032】
前記ポリイソシアネートは、好ましくは、脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環式ポリイソシアネートの1つ以上であり、さらに好ましくは、1,4-ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,2,4および/または2,4,4-トリメチルーヘキサメチレンジイソシアネート、異性体ビス(4,4’-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート。4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-ビス(2-イソシアナトプロパ-2-イル)ベンゼン(TMXDI)、1,4-ビス(2-イソシアナトプロパ-2-イル)ベンゼン(TMXDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(XDI)、C1-C8アルキル基を有するアルキル2,6-ジイソシアナトヘキサノエート(リジンジイソシアネート)およびウレトジオン、イソシアヌレート、ウレタン、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジン-トリオン構造を有するそれらの誘導体の1つ以上であり、最も好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートのうちの1つ以上である。
【0033】
前記ポリイソシアネートの量は、系の量が100重量%であることに基づいて、好ましくは5重量%~40重量%、さらに好ましくは5重量%~35重量%、最も好ましくは10重量%~30重量%である。
【0034】
ポリテトラメチレンエーテルグリコールA2a)およびA2b)
本発明のポリテトラメチレンエーテルグリコールA2a)およびA2b)は、それぞれ独立して、一般式:(HO-(CH-CH-CH-CH-O)-H)に対応する。
【0035】
前記ポリテトラメチレンエーテルグリコール(ポリテトラメチレングリコールポリエーテル)は、例えば、テトラヒドロフランのカチオン開環重合によって得ることができる。
【0036】
前記ポリテトラメチレンエーテルグリコールA2a)は、好ましくは400g/mol~1500g/mol、さらに、好ましくは600g/mol~1200g/mol、最も好ましくは1000g/molの数平均分子量を有する。
【0037】
前記ポリテトラメチレンエーテルグリコールA2b)は、好ましくは1500g/molを超え且つ8000g/mol以下、さらに好ましくは1800g/mol~4000g/mol、最も好ましくは2000g/molの数平均分子量を有する。
【0038】
前記ポリテトラメチレンエーテルグリコールA2a)の数平均分子量の前記ポリテトラメチレンエーテルグリコールA2b)の数平均分子量に対する比は、好ましくは1:4~7:3、最も好ましくは1:4~1:1である。
【0039】
数平均分子量は、ポリスチレン標準に対して23℃のテトラヒドロフラン中でのゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される。
【0040】
前記ポリテトラメチレンエーテルグリコールA2a)の前記ポリテトラメチレンエーテルグリコールA2b)に対する質量比は、好ましくは1:15~2:1、最も好ましくは1:10~1:1である。
【0041】
前記A2)のポリテトラメチレンエーテルグリコールの量は、系の量が100重量%であることに基づいて、好ましくは55重量%~90重量%、さらに好ましくは60重量%~90重量%、最も好ましくは65重量%~85重量%である。
【0042】
A3)32g/mol~400g/molの数平均分子量を有し、ヒドロキシル基およびカルボキシル基を有するアニオン性または潜在的にアニオン性の親水剤
前記A3)は、好ましくはジメチロールプロピオン酸である。
【0043】
前記A3)32g/mol~400g/molの数平均分子量を有し、ヒドロキシル基およびカルボキシル基を有するアニオン性または潜在的にアニオン性の親水剤の重量は、前記系の親水剤の重量の好ましくは20%~60%、さらに好ましくは20%~35%、最も好ましくは20%~30%である。
【0044】
A4)他のポリマーポリオール
前記系は、A2)の前記ポリテトラメチレンポリエーテルグリコール以外のポリマーポリオールをさらに含有することができる。
【0045】
前記ポリマーポリオールは、好ましくは、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリエステルポリオール、ポリウレタンポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリカーボネートポリオールおよびポリエステルポリカーボネートポリオールのうちの1つ以上である。
【0046】
前記ポリマーポリオールの含有量は、前記A2)に基づいて、好ましくは0~20重量%、さらに好ましくは0~10重量%、最も好ましくは0~5重量%である。
【0047】
A5)62~399g/molの数平均分子量を有するヒドロキシル官能性化合物
前記系はさらに、62~399g/molの数平均分子重量を有するヒドロキシル官能性化合物を含んでいてもよい。
【0048】
62~399g/molの数平均分子量を有する前記ヒドロキシル官能性化合物は、好ましくは、20個までの炭素原子を有する非ポリマーポリオール、エステルジオールおよび単官能性イソシアネート反応性ヒドロキシル含有化合物のうちの1つ以上である。
【0049】
前記20個までの炭素原子を有する非ポリマーポリオールは、好ましくは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキノンジヒドロキシルエチルエーテル、ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシルフェニル)プロパン)、水素化ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシルシクロヘキシル)プロパン)、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセロール、およびペンタエリスリトールのうちの1つ以上である。
【0050】
前記エステルジオールは、好ましくは、α-ヒドロキシルブチル-ε-ヒドロキシルヘキサノエート、ω-ヒドロキシルヘキシル-γ-ヒドロキシルブチレート、(β-ヒドロキシルエチル)アジペートおよびジ(β-ヒドロキシルエチル)テレフタレートのうちの1つ以上である。
【0051】
前記単官能性イソシアネート反応性ヒドロキシル含有化合物は、好ましくは、エタノール、n-ブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、2-エチルヘキサノール、1-オクタノール、1-ドデカノールおよび1-ヘキサデカノールのうちの1つ以上である。
【0052】
62~399g/molの数平均分子重量を有する前記ヒドロキシル官能性化合物の量は、前記水性ウレタン分散体の固形分重量が100重量%であることに基づいて、好ましくは0~10重量%、最も望ましくは0~5重量%である。
【0053】
A6)イソシアネート反応性非イオン性親水剤
前記系は、イソシアネート反応性非イオン性親水剤をさらに含有することができる。
【0054】
前記イソシアネート反応性非イオン性親水剤は、好ましくは、ヒドロキシル基を有するポリオキシアルキレンエーテル、アミノ基を有するポリオキシアルキレンエーテル、およびチオール基を有するポリオキシアルキレンエーテルのうちの1つ以上である。
【0055】
前記イソシアネート反応性非イオン性親水剤は、最も好ましくは、モノヒドロキシル官能性を有するポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールであり、これは、好ましくは5~70、特に好ましくは7~55の、分子当たりのエチレンオキシド単位の統計平均数を有する。この化合物は、好適な出発分子のアルコキシル化によって公知の方法で得ることができる(例えば、Ullmanns Encyclopaedie der technischen Chemie、第4版、第19巻、Verlag Chemie、Weinheim、31~38頁)。モノヒドロキシル官能性を有する前記ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールは、好ましくは、40~100mol%のエチレンオキシド単位および0~60mol%のプロピレンオキシド単位を有する。
【0056】
前記出発分子は、好ましくは、飽和モノアルコール、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、不飽和アルコール、芳香族アルコール、芳香脂肪族アルコール、第二級モノアミンおよび複素環式第二級アミンであり、最も好ましくは、飽和モノアルコールである。
【0057】
前記飽和モノアルコールは、好ましくは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソ-プロパノール、n-ブタノール、イソ-ブタノール、sec-ブタノール、異性体ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、n-デカノール、n-ドデカノール、n-テトラデカノール、n-ヘキサデカノール、n-オクタデカノール、シクロヘキサノール、異性体メチルシクロヘキサノール、ヒドロキシルメチルシクロヘキサン、3-エチル-3-ヒドロキシルメチルオキセタン、テトラヒドロフルフリルアルコールおよびジエチレングリコールモノアルキルエーテルのうちの1つ以上であり、最も好ましくは、n-ブタノールおよびジエチレングリコールモノブチルエーテルのうちの1つ以上である。
【0058】
前記不飽和アルコールは、好ましくは、アリルアルコール、1,1-ジメチルアリルアルコールおよびオレイルアルコールのうちの1つ以上である。
【0059】
前記芳香族アルコールは、好ましくは、フェノール、異性体クレゾールおよびメトキシフェノールのうちの1つ以上である。
【0060】
前記芳香脂肪族アルコールは、好ましくは、ベンジルアルコール、アニシルアルコールおよびシンナミルアルコールのうちの1つ以上である。
【0061】
前記第二級モノアミンは、好ましくは、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ビス(2-エチルヘキシル)アミン、N-メチルシクロヘキシルアミン、N-エチルシクロヘキシルアミンおよびジシクロヘキシルアミンのうちの1つ以上である。
【0062】
前記複素環式第二アミンは、好ましくは、モルホリン、ピロリジン、ピペリジンおよび1H-ピラゾールのうちの1つ以上である。
【0063】
本発明の組成物は、本発明の要件を満たす1つの水性ポリウレタン分散体を含有していてもよく、本発明の要件を満たす2つ以上の水性ポリウレタン分散体を含有していてもよい。
【0064】
B)アミノ官能性を有するアニオン性または潜在的にアニオン性の親水剤
前記B)アミノ官能性を有するアニオン性または潜在的にアニオン性の親水性剤は、好ましくは、以下の基の1つ以上を含む:スルホン酸基、スルホネート塩基、カルボン酸基、およびカルボキシレートエステル基、最も好ましくはスルホネート塩基。前記スルホネート塩基は、好ましくはスルホン酸ナトリウム基である。
【0065】
前記B)アミノ官能性を有するアニオン性または潜在的にアニオン性の親水剤は、好ましくは、モノアミンスルホン酸のアルカリ金属塩、ジアミノスルホン酸のアルカリ金属塩、ジアミノカルボン酸およびジアミノカルボキシレート塩の1つ以上であり;さらに好ましくは、スルホネート塩基をイオン基として含有しおよび2つのアミノ基を有する化合物、およびカルボキシレート塩基をイオン基として含有しおよび2つのアミノ基を含有する化合物の1つ以上であり;さらに好ましくは、2-(2-アミノエチルアミノ)エタンスルホネート塩、1,3-プロパンジアミン-β-スルホネート塩、ジアミノカルボキシレート塩および2,6-ジアミノカルボン酸の1つ以上であり;さらに好ましくは、2-(2-アミノエチルアミノ)エタンスルホネート塩、エチレンジアミンプロピルスルホネート塩、エチレンジアミンブチルスルホネート塩、1,2-プロパンジアミン-β-エタンスルホネート塩、1,2-プロパンジアミン-β-タウレート塩、1,3-プロパンジアミン-β-エタンスルホネート塩、1,3-プロパンジアミン-β-タウレート塩、シクロヘキシルアミノプロパンスルホネート塩(CAPS)、ジアミノカルボン酸ナトリウムおよび2,6-ジアミノヘキサン酸の1つ以上であり;最も好ましくは2-[(2-アミノエチル)アミノ]エタンスルホン酸ナトリウムである。
【0066】
C)親水基を有さず、32g/mol~400g/molの数平均分子量を有するアミノ官能性化合物
親水基を有さず、32g/mol~400g/molの数平均分子量を有する前記アミノ官能性化合物は、好ましくはイオン基またはイオン化基を有さないアミンである。
【0067】
前記イオン基またはイオン化基を有さないアミンは、好ましくは、有機ジアミン、有機ポリアミン、第一級第二級アミン、アルカノールアミンおよび単官能性イソシアネート反応性アミン化合物のうちの1つ以上である。
【0068】
前記有機ジアミンまたは有機ポリアミンは、好ましくは、1,2-エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン、イソホロンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、4,4-ジアミノジシクロヘキシルメタン、水和ヒドラジンおよびジメチルエチレンジアミンのうちの1つ以上である。
【0069】
前記第一級第二級アミンは、好ましくは、ジエタノールアミン、3-アミノ-1-メチルアミノプロパン、3-アミノ-1-エチルアミノプロパン、3-アミノ-1-シクロヘキシルアミノプロパンおよび3-アミノ-1-メチルアミノブタンのうちの1つ以上である。
【0070】
前記アルカノールアミンは、好ましくは、N-アミノエチルエタノールアミン、エタノールアミン、3-アミノプロパノールおよびネオペンタノールアミンのうちの1つ以上である。
【0071】
前記単官能性イソシアネート反応性アミン化合物は、好ましくは、以下の1つ以上である:メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、イソノニルオキシプロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、N-メチルアミノプロピルアミン、ジエチル(メチル)アミノプロピルアミン、モルホリン、ピペリジン、およびそれらの適した置換誘導体、例えば、ジ第一級アミンおよびモノカルボン酸から形成されるアミド-アミン、およびジ第一級アミンおよび第一級/第三級アミンのモノケト-イミドなど。
【0072】
前記イオン基またはイオン化基を有さないアミンは、最も好ましくは、1,2-エチレンジアミン、ジ(4-アミノシクロヘキシル)メタン、1,4-ジアミノブタン、イソホロンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミンおよびジエチレントリアミンのうちの1つ以上である。
【0073】
前記A5)および前記C)の重量合計は、系の量が100重量%であることに基づいて、好ましくは0.5重量%~20重量%、さらに好ましくは0.5重量%~15重量%、最も好ましくは0.5重量%~14重量%である。
【0074】
前記A6)および前記B)の重量合計は、系の量が100重量%であることに基づいて、好ましくは0.1重量%~25重量%、さらに好ましくは0.1重量%~15重量%、最も好ましくは0.1重量%~13.5重量%である。
【0075】
D)中和剤
前記中和剤のモル量は、前記A3)32g/mol~400g/molの数平均分子量を有し、ヒドロキシル基およびカルボキシル基を有するアニオン性または潜在的にアニオン性の親水剤のモル量が100mol%であることに基づいて、好ましくは50mol%以下、最も好ましくは30mol%以下である。
【0076】
前記中和剤は、好ましくは、アンモニア、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、硫酸ジメチルエーテル、コハク酸および炭酸ナトリウムのうちの1つ以上であり、最も好ましくは、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ジイソプロピルエチルアミン、硫酸ジメチルエーテルおよびコハク酸のうちの1つ以上である。
【0077】
イソシアネート反応性基を有する架橋剤
イソシアネート反応性基を有する前記架橋剤の量は、前記組成物の量が100重量%であることに基づいて、好ましくは0.5重量%~10重量%、最も好ましくは2重量%~6重量%である。
【0078】
イソシアネート反応性基を有する前記架橋剤は、好ましくは親水性に変性された脂肪族イソシアネート架橋剤である。
【0079】
前記親水性に変性された脂肪族イソシアネート架橋剤は、好ましくはブロックされているおよび/またはブロックされていない。
【0080】
前記親水性に変性された脂肪族イソシアネート架橋剤のイソシアネート基含有量は、前記親水性に変性された脂肪族イソシアネート架橋剤の量が100重量%であることに基づいて、好ましくは、10重量%~20重量%である。
【0081】
前記親水性に変性された脂肪族イソシアネート架橋剤の粘度は、好ましくは8000mPa・s以下である。
【0082】
カルボキシル反応性基を有する架橋剤
カルボキシル反応性基を有する前記架橋剤の活性成分の量は、前記組成物の量が100重量%であることに基づいて、好ましくは0.5重量%~10重量%である。
【0083】
カルボキシル反応性基を有する前記架橋剤は、好ましくは親水性に変性されたカルボジイミドである。
【0084】
前記親水性に変性されたカルボジイミドのNCO基含有量は、前記親水性に変性されたカルボジイミドの量が100重量%であることに基づいて、好ましくは、3重量%~5重量%である。
【0085】
前記組成物のカルボキシル基に対するカルボキシル反応性基のモル比は、好ましくは0.5を超え且つ2以下であり、最も好ましくは0.75~2である。
【0086】
添加剤
前記添加剤は、消泡剤、増粘剤、チキソトロピック剤、酸化防止剤、光安定剤、乳化剤、可塑剤、顔料、充填剤、かせ安定化のための添加剤、殺生物剤、pH調節剤および流動調節剤のうちの1つ以上であり得る。
【0087】
添加剤の量は、当業者によく知られた量であってよい。
【0088】
方法
前記水性ポリウレタン分散体を調製するための方法は、好ましくは以下の工程:
I) A1)2以上のイソシアネート官能価を有する少なくとも1つのポリイソシアネート;A2)少なくとも2つの異なるポリテトラメチレンエーテルグリコールA2a)およびA2b)(ここで、前記A2a)は、1500g/mol以下の数平均分子量を有し、前記A2b)は、1500g/molを超える数平均分子量を有する);およびA3)32g/mol~400g/molの数平均分子量を有し、ヒドロキシル基およびカルボキシル基を有する少なくとも1つのアニオン性または潜在的にアニオン性の親水剤を混合して反応させてイソシアネート官能性プレポリマーを得る工程;
II) 前記イソシアネート官能性プレポリマー、B)アミノ官能性を有する少なくとも1つのアニオン性または潜在的にアニオン性の親水剤、C)親水性基を有さず、32g/mol~400g/molの数平均分子量を有する少なくとも1つのアミノ官能性化合物、およびD)任意に中和剤を反応させてポリウレタンを製造する工程;および
III) 工程II)の前、工程II)の間または工程II)の後に水を導入して前記水性ポリウレタン分散体を製造する工程;
を含み、
ここで、前記A2a)の数平均分子量の前記A2b)の数平均分子量に対する比は1:9~4:1であり;前記A3)32g/mol~400g/molの数平均分子量を有し、ヒドロキシル基およびカルボキシル基を有するアニオン性または潜在的にアニオン性の親水剤の重量は、前記系の親水剤の重量の20%~70%である。
【0089】
前記水性ポリウレタン分散体を調製するための方法は、好ましくは以下の工程:
I) A1)2以上のイソシアネート官能価を有する少なくとも1つのポリイソシアネート;A2)少なくとも2つの異なるポリテトラメチレンエーテルグリコールA2a)およびA2b)(ここで、前記A2a)は1500g/mol以下の数平均分子量を有し、前記A2b)は1500g/molを超える数平均分子量を有する);A3)32g/mol~400g/molの数平均分子量を有し、ヒドロキシルおよびカルボキシル官能基を有する少なくとも1つのアニオン性または潜在的にアニオン性の親水剤;A4)任意に他のポリマーポリオール;A5)任意に62~399g/molの数平均分子量を有するヒドロキシル官能性化合物;およびA6)任意にイソシアネート反応性非イオン性親水剤を混合して反応させてイソシアネート官能性プレポリマーを得る工程;
II) 前記イソシアネート官能性プレポリマー、B)アミノ官能性を有する少なくとも1つのアニオン性または潜在的にアニオン性の親水剤、C)親水性基を有さず、32g/mol~400g/molの数平均分子量を有する少なくとも1つのアミノ官能性化合物およびD)任意に中和剤を反応させてポリウレタンを製造する工程;および
III) 工程II)の前、工程II)の間または工程II)の後に水を導入して前記水性ポリウレタン分散体を得る工程;
を含み、
ここで、前記A2a)の数平均分子量の前記A2b)の数平均分子量に対する比は1:9~4:1であり、前記A3)32g/mol~400g/molの数平均分子量を有し、ヒドロキシル基およびカルボキシル基を有するアニオン性または潜在的にアニオン性の親水剤の重量は、前記系の親水剤の重量の20%~70%である。
【0090】
前記水性ポリウレタン分散体の調製は、均質相中で1つ以上の工程で実施することができ、または多段階反応で、部分的に分散相中で実施することができる。A1)~A6)の重付加反応が完全または部分的に完了した後、分散、乳化または溶解工程を行うことが好ましい。場合により、分散相中でのさらなる重付加または変性反応が、続いて実施される。
【0091】
前記水性ポリウレタン分散体は、プレポリマー混合法、アセトン法または溶融分散法等の、当技術分野で公知の全ての方法を使用して調製することができ、最も好ましくはアセトン法を使用することである。
【0092】
アセトン法における調製に関して、イソシアネート官能性プレポリマーを調製するために、一般に、最初に成分A1)~A6)を完全にまたは部分的に加え、場合により水混和性溶媒であるがイソシアネート基に対して不活性である溶媒で希釈し、50℃~120℃の範囲の温度に加熱する。イソシアネート付加反応を促進するために、ポリウレタン化学において公知の触媒を使用することができる。
【0093】
適した溶媒は、アセトンまたは2-ブタノン等の通常の脂肪族ケト官能性溶媒であり、これは、調製の開始時のみならず、場合によってはその後に部分的に添加することもできる。イソシアネート反応性基を含まない他の溶媒を添加してもよい。
【0094】
添加されていないA1)~A6)の成分は、場合により反応の開始時に計量供給されてもよい。
【0095】
前記工程I)のイソシアネート官能性プレポリマーの調製において、イソシアネート基のイソシアネート反応性基に対するモル比は、好ましくは1.05~3.5、さらに好ましくは1.1~3.0、最も好ましくは1.1~2.5である。
【0096】
前記工程I)においてプレポリマーの形成のために実施される成分A1)~A6)の反応は、部分的にまたは完全に行うことができるが、好ましくは完全に行われる。このようにして、遊離イソシアネート基を含有するイソシアネート官能性ポリウレタンプレポリマーは、バルク自体または溶液中で得られる。本発明における「遊離」は、遊離および潜在的に遊離を含む。
【0097】
分散用水が既に前記中和剤を含有している場合には、中和反応は分散と同時に行うこともできる。
【0098】
その後の処理工程において、イソシアネート官能性プレポリマーの溶解が起こっていないか、または部分的にしか起こっていない場合、得られたプレポリマーは、アセトンまたは2-ブタノンなどの脂肪族ケトンの助けを借りて溶解される。
【0099】
前記工程II)は鎖延長および停止反応であり、前記B)アミノ官能性を有する少なくとも1つのアニオン性または潜在的にアニオン性の親水剤、C)親水性基を有さず、32g/mol~400g/molの数平均分子量を有する少なくとも1つのアミノ官能性化合物、およびD)任意に中和剤を、前記工程Iで得られたイソシアネート官能性プレポリマーの遊離イソシアネート基と反応させる。
【0100】
前記工程II)の鎖延長反応の程度、すなわち、鎖延長および停止反応に使用される化合物のイソシアネート反応性基の遊離イソシアネート基に対する当量比は、好ましくは40%~150%、さらに好ましくは50%~110%、最も好ましくは60%~100%である。
【0101】
前記工程II)の成分B)およびC)は、場合により、水または溶媒で希釈された形態で、個別にまたは混合物として使用することができ、添加の順序は、原則として考えられる任意の順序とすることができる。水または有機溶媒が希釈剤として使用される場合、希釈剤の量は、前記工程II)において鎖延長に使用される成分の量の40重量%~95重量%である。
【0102】
前記工程II)は、好ましくは水との分散の前に実施される。この目的のために、溶解され鎖延長されたプレポリマーを、場合により強い剪断、例えば激しく撹拌しながら水に添加することができ、または逆に、撹拌しながら水を、溶解され鎖延長されたポリウレタンポリマーに添加することができる。水は、好ましくは溶解され鎖延長されたポリウレタンポリマーに添加される。
【0103】
分散体中にまだ含まれている溶媒は、一般に蒸留によって除去される。溶媒はまた、分散工程の間に除去されてもよい。
【0104】
本発明の方法により調製された水性ポリウレタン分散体中の有機溶媒の残留含有量は、前記水性ポリウレタン分散体の量が100重量%であることに基づいて、好ましくは0~10重量%であり、最も好ましくは0~3重量%である。
【0105】
基材
前記基材は、好ましくは超極細繊維であり、最も好ましくは、超極細繊維不織布および超極細繊維のうちの1つ以上である。
【0106】
前記物品は、前記組成物を前記基材上で硬化させることによって形成されたフィルムを含む。
【0107】
前記フィルムは、好ましくは80を超える重量/体積比を有する。
【0108】
物品の製造方法
好ましくは、工程ii)で処理された超極細繊維を取り出して乾燥して、次いで染料に超極細繊維を含浸させる工程iv)は、前記工程ii)と前記工程iii)との間でさらに完了する。
【0109】
好ましくは、工程b)で処理された超極細繊維を取り出して乾燥して、次いで染料に超極細繊維を含浸させる工程d)は、前記工程b)と前記工程c)との間でさらに完了する。
【0110】
前記繊維は、好ましくは乾燥前にきれいにする。
【0111】
前記含浸は、繊維が前記組成物中に部分的または完全に置かれ、最も好ましくは繊維が前記組成物中に完全に置かれることであり得る。
【0112】
前記海島型二成分超極細繊維の海成分と島成分とは異なる。
【0113】
前記海島型二成分超極細繊維の島成分は、繊維製品用途における通常のポリマーであってもよく、好ましくは、エチレンテレフタレート、ポリ(トリメチレンテレフタレート)などの変性ポリエステル、カチオン性ポリエステル、ナイロン、他の種類のポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、および他の種類のポリオレフィンのうちの1つ以上である。前記海島型二成分超極細繊維の海成分は、水、アルカリ水溶液または酸水溶液などの処理手段で溶解除去可能なポリマーであってよく、好ましくは、ナイロン、他のポリアミド、変性ポリエステル、および水、酸水溶液またはアルカリ水溶液への溶解性などの基礎的な特性を有する他の紡糸可能なポリマーのうちの1つ以上であり、最も好ましくは、アルカリ水溶性ポリエステル(CO-PET)および熱水溶性ポリビニルアルコール(PVA)のうちの1つ以上である。
【0114】
前記物品は、好ましくは自動車の内装、装飾(壁、ソファ、肘掛け椅子、カーペット)、ハンドバッグ、スーツケース、カバー、ボックス、楽器および電子装置における表面および構造における使用に適している。上記のリストは単に例として提供されるものであり、網羅的なリストであることを意図するものではない。
【0115】
図面の説明
本発明は、添付の図面を使用することによって、さらなる特異性および詳細を伴って記載され、説明される:
図1は、実施例6の組成物の含浸により得られた超極細繊維不織布サンプルの外観図であり、ここで、超極細繊維不織布サンプルは平坦な外観を有し、しわが少ない。
図2は、比較例12の比較組成物を含浸させて得られた超極細繊維不織布サンプルの外観図であり、ここで、超極細繊維不織布サンプルは、不均一な外観を有し、しわが多い。
【実施例
【0116】
異なる定義がなされていない限り、ここで使用するすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者が通常理解するものと同じ意味を有する。本明細書中の用語の定義が、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と矛盾する場合、本明細書中に記載される定義が支配的である。
【0117】
特に断らない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される成分量、反応条件などを表す全ての数字は、「約」という用語で修飾されていると理解されるべきである。したがって、反対に示されない限り、ここに記載される数値パラメータは、得られる必要がある所望の特性に応じて変化し得る近似値である。
【0118】
ここで使用される「および/または」の表現は、言及された要素の1つまたはすべてを指す。
【0119】
ここで使用されるように、表現「以上(...or more)」および「以下(...or less)」は、別段の指示がない限り、列挙された値自体を含む。
【0120】
ここで使用されるように、用語「含む(comprising)」および「含有する(containing)」は、言及された要素のみが存在する状況、ならびに言及された要素に加えて他の記載されていない要素が存在する状況を包含する。
【0121】
本発明における分析測定は、特に断らない限り、23℃で行う。
【0122】
本発明において使用されるパーセンテージは、特に断らない限り、重量による。
【0123】
水性ポリウレタン分散体の固形分は、DIN-EN ISO 3251に従って、Mettler Toledo社のHS153水分計を用いて測定する。
【0124】
数平均分子量は、ポリスチレン標準に対して23℃でテトラヒドロフラン中でゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定する。
【0125】
ヒドロキシル価は、ASTM D4274に従って測定される。
【0126】
イソシアネート基(NCO)含有量は、DIN-EN ISO 11909に従って、体積で決定され、決定されたデータは、遊離および潜在的に遊離のNCO含有量を含む。
【0127】
イソシアネート基の官能価は、GPCに従って決定される。
【0128】
水性ポリウレタン分散体の粒径は、脱イオン水で希釈した後、レーザー分光法(Malvern instrument companyからのZatasizer Nano ZS 3600レーザー粒子サイザーで測定)を用いて測定する。
【0129】
粘度は、DIN 53019に従って、Brookfield社のDV-II+Pro.回転粘度計を用いて23℃で測定する。
【0130】
水性ポリウレタン分散体のpH値は、Sartorius社(ドイツ)のPB-10pHメーターを用いて23℃で測定する。
【0131】
原材料および試薬
Impranil(登録商標)1701:水性アニオン性脂肪族ポリカーボネートポリウレタン分散体であって、40重量%の固形分を有し、およびポリカーボネートポリオールに基づいて、0.3重量%のカルボン酸基を有し、Covestro Co.,Ltd.から市販されているもの。
Impranil(登録商標)DLU:水性アニオン性/非イオン性脂肪族ポリカーボネート-ポリエーテルポリウレタン分散体であって、60重量%の固形分を有し、ポリエーテルポリオールとポリカーボネートポリオールとを合わせたポリオールに基づいて、カルボキシル基を含まない、Covestro Co.,Ltd.から市販されているもの。
Imprafix(登録商標)2794:親水性に変性されたブロックト脂肪族イソシアネート架橋剤であって、38重量%の固形分、12.7重量%のイソシアネート基(NCO)含量(固形分に基づいて)、および<1500mPa.sの粘度を有する、Covestro Co.,Ltd.から市販されているもの。
Imprafix(登録商標)3025:親水性に変性された非ブロックト脂肪族イソシアネート架橋剤であって、100重量%の固形分、16.2重量%のイソシアネート基含有量、および6500±1500mPa.sの粘度を有し、Covestro Co.,Ltd.から市販されているもの。
Desmodur(登録商標)2802:親水性に変性されたカルボジイミド架橋剤であって、40重量%の固形分、および4.2重量%のNCN基含有量を有し、Covestro Co.,Ltd.から市販されているもの。
Desmodur(登録商標)H:1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートであって、Covestro Co.,Ltd.(ドイツ)から市販されているもの。
Desmodur(登録商標)I:イソホロンジイソシアネートであって、Covestro Co.,Ltd.(ドイツ)から市販されているもの。
ポリテトラメチレンエーテルグリコール1000:112mg KOH/gのヒドロキシル価、2のヒドロキシル官能価、および1000g/molの数平均分子量を有し、BASF Corp.(ドイツ)から市販されている。
ポリテトラメチレンエーテルグリコール2000:56mg KOH/gのヒドロキシル価、2のヒドロキシル官能価、および数平均分子量2000g/molを有し、BASF Corp.(ドイツ)から市販されている。
ジメチロールプロピオン酸、Aldrich Chemical Co.Inc.(ドイツ)から市販されている。
ナトリウム2-[(2-アミノエチル)アミノ]エタンスルホネート溶液:NH-CHCH-NH-CHCH-SONaであって、水中45%の濃度を有し、Covestro Co.,Ltd.(ドイツ)から市販されているもの。
エチレンジアミン、Jiaxing Jinyan chemical Co.,Ltd.,Chinaから市販されている。
水酸化ナトリウム:分析的に純粋であり、Sinopharm Chemical Reagent Co.Ltd.から市販されている。
酢酸:分析的に純粋であり、Kelin Reagent Co.Ltd.から市販されている。
Borchi gel(登録商標)ALA:ポリアクリル酸型増粘剤であって、9重量%~11重量%の不揮発性成分含量を有し、Borchers GmbHから市販されている。
LYOPRINT(登録商標)PTF:ポリアクリル酸型増粘剤であって、<60重量%の活性成分含有量を有し、Xianhua(Shanghai)Bio Chemical Co.,Ltd.から市販されている。
BYK(登録商標)333:ポリエーテル変性シリコンであって、BYK Additives & Instrumentsから入手可能なもの。
超極細繊維不織布、商業的に入手可能。
【0132】
水性ポリウレタン分散体Aの調製
1015gのポリテトラメチレンエーテルグリコール2000、217.5gのポリテトラメチレンエーテルグリコール1000、15.6gのジメチロールプロピオン酸、144.4gのDesmodur(登録商標)Iおよび109.3gのDesmodur(登録商標)Hを70℃で混合し、110℃に加熱し、プレポリマーのイソシアネート基(NCO)の実際の値がNCOの理論値以下になるまでこの温度で撹拌した。プレポリマーを2669.7gのアセトンに90℃で溶解し、20分間撹拌し、次いで40℃に冷却した。次に、12.4gのエチレンジアミン、50.2gの2-[(2-アミノエチル)アミノ]エタンスルホン酸ナトリウム溶液および310.1gの水を計量供給し、20分間撹拌した。次に、1967.3gの水を加えて分散させ、真空蒸留により溶媒を除去し、水性ポリウレタン水性分散体Aであり、41.8重量%の固形分、159mPa.s(23℃)の粘度、pH6.7、0.13重量%のカルボキシル基含有量、163.5nmの粒径を有するものを得た。
【0133】
実施例1~5および比較例1~11の組成物
表1は、実施例1~5および比較例1~11の組成物の成分を列挙する。
【0134】
【表1】
【0135】
本発明では、組成物を使用してフィルムを調製し、フィルムの重量/体積比を試験して、組成物で形成されたフィルムの耐酸性および耐アルカリ性、特に耐熱酸性および耐熱アルカリ性を特徴付ける。超極細繊維不織布含浸法を用いて物品を調製し、物品の外観を観察する。
【0136】
実施例1~5および比較例1~11の組成物を用いてフィルムを調製する方法、ならびにフィルムの重量/体積比の試験方法
1.実施例および比較例の組成物は、表1に従う組成物の成分を均一に混合することによって得られ、組成物の粘度は、Borchi gel(登録商標)ALAを使用することによって約5000mPa.sに調整された。
【0137】
この組成物をフィルムスクレーパーで平滑面上にこすり付け、厚さ500μmの湿潤フィルムを調製し、湿潤フィルムを50℃で30分間、150℃で3分間順次乾燥させて乾燥フィルムサンプルを得た;
【0138】
2.乾燥フィルムの半分を採取し、そこから5cm×2cmの片を切り取った。乾燥フィルムの前記片の厚さおよび重量を測定し、フィルムサンプルの厚さをTとして記録し、フィルムサンプルの重量をSとして記録した;
【0139】
3.乾燥フィルムの重量を測定した後、乾燥フィルムを試験染色カップに入れた。濃度1.5%のNaOH溶液を、乾燥フィルムの重量の15倍の量で添加した。試験染色カップを実験室用サンプル染色機に入れ、次のプロセス条件に従って高温アルカリ処理を行った:
4℃/分の加熱速度で室温から90℃に加熱し、90℃で15分間保持し、3℃/分の冷却速度で90℃から50℃に冷却する。実験室用サンプル染色機は、Shanghai Qianli automation equipment Co.,Ltd.から市販されているモデルDYE-24であった;
【0140】
4.高温アルカリ条件での処理が完了した後、フィルムを取り出してきれいにした(フィルムが損傷した場合は、以降の工程は不要であった)。紙で水を吸収することによってフィルムを乾燥させた。このフィルムを再び試験染色カップに入れ、pH4の酢酸溶液をフィルムの重量の15倍の量で添加した。試験染色カップを実験室用サンプル染色機に入れ、次のプロセス条件に従って高温酸処理を行った:
室温から80℃まで3℃/分の加熱速度で加熱し、80℃から130℃まで1℃/分の加熱速度で加熱し、130℃で40分間保持した後、130℃から80℃まで1℃/分の冷却速度で冷却し、80℃から50℃まで3℃/分の冷却速度で冷却する;
【0141】
5.高温酸条件での処理が完了した後、フィルムを取り出してきれいにし、フィルムの長さ、幅および厚さを測定し、ここで、処理されたフィルムサンプルの長さをLとして記録し、処理されたフィルムサンプルの幅をWとして記録し、処理されたフィルムサンプルの厚さをTとして記録し、膨潤率Rを以下の計算式に従って計算した:
R=(L*W*T/(5*2*T))*100%-1
【0142】
6.以上の工程を経て処理した後に得られたフィルムを、紙で吸水して乾燥した後、90℃の乾燥オーブンで10分間乾燥した。乾燥したフィルムを恒温恒湿室に24時間置き、次いで、処理したフィルムサンプルの重量を測定し、Sとして記録した。サンプルの重量損失率Zを以下の計算式に従って算出した:
Z=((S-S)/S)*100%
【0143】
7.以上の工程で処理した後に得られたフィルムサンプルの重量/体積比を以下の計算に従って算出した:
重量/体積比=((1-Z)/(1+R))*100
【0144】
重量/体積比が大きいほど、上記の処理条件下で組成物により形成されたフィルムの耐酸性および耐アルカリ性がより良好であった。組成物により形成されたフィルムの重量/体積比が80を超える場合、フィルムの耐酸性および耐アルカリ性は優れており、組成物は繊維含浸用途に特に適していた。
【0145】
フィルム試験結果
表2は、実施例1~5および比較例1~11の組成物により形成されたフィルムの重量/体積比についての試験結果を列挙する。
【0146】
【表2】
【0147】
実施例1~5の結果から、カルボキシル基を有する水性ポリウレタン分散体、ブロックトまたは非ブロックトイソシアネート反応性基を有する架橋剤およびカルボキシル反応性基を有する架橋剤を含む本発明の組成物で形成されたフィルムの重量/体積比が80を超えることが分かり、これは、本発明の組成物で形成されたフィルムが良好な耐酸性および耐アルカリ性を有することを示した。
【0148】
比較例1、5および9の比較組成物は、カルボキシル基を有する水性ポリウレタン分散体、ブロックトまたは非ブロックトイソシアネート反応性基を有する架橋剤およびカルボキシル反応性基を有する架橋剤を含有していたが、比較組成物のカルボキシル基に対するカルボキシル反応性基のモル比は0.5以下であり、比較組成物で形成されたフィルムの重量/体積比は80未満であり、比較組成物で形成されたフィルムは乏しい耐酸性および耐アルカリ性を有していたことを示した。
【0149】
比較例2、6および8の比較組成物は、カルボキシル反応性基を有する架橋剤を含有せず、比較例3の比較組成物は、イソシアネート反応性基を有する架橋剤を含有せず、比較例4、7および10の比較組成物は、カルボキシル反応性基を有する架橋剤もイソシアネート反応性基を有する架橋剤も含有せず、上記比較組成物で形成されたフィルムの重量/体積比は80未満であり、または上記組成物で形成されたフィルムは損傷しており、すなわち、上記比較組成物で形成されたフィルムは乏しい耐酸性および耐アルカリ性を有した。
【0150】
比較例11の比較組成物中の水性ポリウレタン分散体は、カルボキシル基を有しておらず、比較組成物で形成されたフィルムは損傷しており、すなわち、比較組成物で形成されたフィルムは、耐酸性および耐アルカリ性に乏しかった。
【0151】
超極細繊維不織布の含浸処理
1.組成物の成分を、実施例6および比較例12の組成物に従ってそれぞれ均一に混合した。組成物の粘度は、LYOPRINT(登録商標)PTF増粘剤を用いて約50mPa.sに調整された(粘度測定条件:Brookfield粘度計、63#ローター、100rpm)。超極細繊維不織布を組成物に完全に浸漬した。超極細繊維不織布を取り出し、実験室用圧延機で圧延して余分なスラリーを除去した。次いで、超極細繊維不織布をオーブン中で70℃で乾燥し、最後にオーブン中で150℃で3分間硬化させ、超極細繊維不織布サンプルを得た;
【0152】
2.先の工程1の処理から得られた超極細繊維不織布サンプルの重量を測定した後、試験染色カップに布サンプルを入れた。1.5%の濃度を有するNaOH溶液を、布サンプルの重量の15倍の量で添加した。試験染色カップを実験室用サンプル染色機に入れ、次のプロセス条件に従って高温アルカリ処理を行った:
4℃/分の加熱速度で室温から90℃に加熱し、90℃で30分間保持し、3℃/分の冷却速度で90℃から50℃に冷却する。実験室用サンプル染色機は、Shanghai Qianli automation equipment Co.,Ltd.から市販されているモデルDYE-24であった;
【0153】
3.高温アルカリ条件での処理が完了した後、布サンプルを取り出し、きれいにした(フィルムが損傷した場合、その後の工程は必要なかった)。紙で水を吸収することによってフィルムを乾燥させた。このフィルムを再び試験染色カップに入れ、pH4の酢酸溶液をフィルムの重量の15倍の量で添加した。試験染色カップを実験室用サンプル染色機に入れ、次のプロセス条件に従って高温酸処理を行った:
加熱速度3℃/分で室温から80℃に加熱し、加熱速度1℃/分で80℃から130℃に加熱し、130℃で40分間保持し、冷却速度1℃/分で130℃から80℃に冷却し、冷却速度3℃/分で80℃から50℃に冷却する;
【0154】
4.高温酸処理後、超極細繊維不織布サンプルを取り出してきれいにした後、90℃の乾燥オーブンで乾燥した。乾燥オーブンから超極細繊維不織布サンプルを取り出し、その外観を観察した。
【0155】
実施例6
組成物の成分は以下のとおりであった:100重量部の水性ポリウレタン分散体A、5重量部のDesmodur(登録商標)2802、5重量部のImprafix(登録商標)2794、205重量部の脱イオン水および0.7重量部のBYK(登録商標)333。組成物の固形分は約13重量%であった。上記の超極細繊維不織布含浸処理から得られた超極細繊維不織布サンプルの外観を図1に示した。
【0156】
比較例12
比較組成物の成分は以下のとおりであった:100重量部のImpranil(登録商標)DLU、2重量部のDesmodur(登録商標)2802、5重量部のImprafix(登録商標)2794、約345重量部の脱イオン水および0.7重量部のBYK(登録商標)333。組成物の固形分は約13重量%であった。上記の超極細繊維不織布含浸処理から得られた超極細繊維不織布サンプルの外観を図2に示した。
【0157】
図1および図2から分かるように、比較例12と比較して、実施例6の組成物から調製された超極細繊維不織布サンプルは、より滑らかで、しわがなく、実施例6の組成物が比較例12の比較組成物よりも超極細繊維含浸プロセスにより適していたことを示した。
【0158】
本発明は、上記の特定の詳細に限定されず、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で実施されてもよいことは当業者にとって明らかであろう。したがって、記載された実施形態はすべての点で、例示的であり、限定的ではないと見なされるべきである。したがって、本発明の範囲は、前述の説明ではなく、添付の特許請求の範囲によって示される。したがって、特許請求の範囲の均等物の意味および範囲内に入る限り、いかなる変更も本発明に属するものとみなされるべきである。
図1
図2
【国際調査報告】