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特表2022-549492電磁放射の偏光における空間的変動を明らかにする装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-25
(54)【発明の名称】電磁放射の偏光における空間的変動を明らかにする装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/08 20060101AFI20221117BHJP
【FI】
G01R29/08 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519090
(86)(22)【出願日】2020-09-16
(85)【翻訳文提出日】2022-05-19
(86)【国際出願番号】 FR2020051601
(87)【国際公開番号】W WO2021058895
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】1910495
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518023164
【氏名又は名称】オフィス ナショナル デテュード エ ドゥ ルシェルシュ アエロスパシアル
(71)【出願人】
【識別番号】522116029
【氏名又は名称】ソントゥル ナシオナル デチュドゥ スパシアル セ エヌ ウ エス
(71)【出願人】
【識別番号】511307616
【氏名又は名称】ウニヴェルシテ ポール サバティエ トゥールーズ トロワジェーム
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PAUL SABATIER TOULOUSE III
【住所又は居所原語表記】118,ROUTE DE NARBONNE,F‐31400 TOULOUSE,FRANCE
(71)【出願人】
【識別番号】513015441
【氏名又は名称】サントゥル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック - セーエヌエールエス
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE - CNRS
【住所又は居所原語表記】3,rue Michel Ange,F-75016 Paris 16,France
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】プロスト,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ロミエ,マキシム
(72)【発明者】
【氏名】ブロ,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】シモン,パトゥリス
(72)【発明者】
【氏名】ブルッス,ケヴァン
(72)【発明者】
【氏名】タベルナ,ピエール-ルイ
(57)【要約】
装置(10)は、電磁放射の偏光における空間的変動を、局在する温度変動の形態において明らかにするのに適している。前記装置は、熱的および電気的に絶縁性である担体(1)の表面を備え、かつ、複数のパターン(M)の配列であって、その各々が感光材料の少なくとも1つの直線セグメント(2)から構成される複数のパターン(M)の配列を備える。当該少なくとも1つの直線セグメント(2)の向きは、各パターン内、または隣り合う複数のパターン間において、さまざまである。かかる装置は、当該放射の直線偏光の局所的な方向に対して垂直でない複数のセグメントに局在する温度変動を複数の赤外線画像において明らかにするために、サーモカメラと共に使用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁放射(R)の偏光における空間的変動を、局在する温度変動の形態において明らかにするのに適した装置(10)であって、
熱的および電気的に絶縁性である担体(1)の表面を備え、かつ、複数のパターン(M)の配列であって、その各々が感光材料と称される材料の少なくとも1つの直線セグメント(2)から構成される複数のパターン(M)の配列を、前記担体の前記表面内または前記担体の前記表面上に備え、
前記感光材料は、前記感光材料が前記電磁放射(R)の電場または磁場に曝されるときに、前記担体(1)の前記表面における各セグメント(2)の向きに対する前記電磁放射の前記偏光にしたがって変化する電磁放射パワーに対する加熱パワーの比の値となるように熱を生み出すのに適しており、
前記電磁放射パワーに対する加熱パワーの比は、前記電磁放射(R)の前記偏光にかかわらず、前記感光材料の前記セグメント(2)の外部の前記担体において実質的にゼロであり、
各パターン(M)が複数のセグメントを含む場合、各パターン内のこれらのセグメント(2)は、少なくとも2つの異なる向きを有するか、または、各パターンが1つのセグメントのみを含む場合、隣り合う2つのパターンの前記セグメントは、異なる向きを有し、
前記配列は、同一の複数のパターン(M)の二次元配列を形成するように、前記担体(1)の前記表面上の異なる複数の繰り返し方向(D1、D2)において複数のオフセットを有する基本パターンの複数の繰り返しから構成される、装置(10)において、
前記感光材料は、導電性材料であり、前記感光材料の導電率値は、10S/m~500S/mであることを特徴とする、装置(10)。
【請求項2】
各パターン(M)は、感光材料の複数の直線セグメント(2)を含み、
各パターンの複数の前記セグメントは、前記パターン内で、前記担体(1)の前記表面において少なくとも3つの異なる向きを有する、請求項1に記載の装置(10)。
【請求項3】
同一の複数のパターン(M)の前記二次元配列が、異なる2つの繰り返し方向(D1、D2)の各々の繰り返し方向において周期的であり、かつ、複数の前記繰り返し方向の各々の繰り返し方向における空間的周期が、100μm~50mmであり、好ましくは1mm~30mmであるように、前記基本パターンの複数の前記繰り返しの複数の前記オフセットは、前記担体(1)の前記表面における前記2つの繰り返し方向(D1、D2)において組み合わされており、かつ規則的である、請求項1または2に記載の装置(10)。
【請求項4】
前記担体(1)の前記表面における複数の前記パターン(M)のうちの隣り合う2つの任意の前記パターンは、互いに交錯している、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項5】
前記担体(1)の前記表面における隣り合う複数のパターン(M)の任意の対に係る複数の前記セグメント(2)は、前記対の第1のパターンに係る複数の前記セグメントのうちの任意の1つの前記セグメントと、前記対の他方のパターンに係る複数の前記セグメントのうちの任意の1つの前記セグメントとの間の、感光材料のないパターン間ギャップにより離隔している、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項6】
同じ1つのパターン(M)の任意の2つのセグメント(2)は、感光材料のないパターン内ギャップにより、互いに絶縁されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項7】
各パターン(M)は、前記担体(1)の前記表面に配置されたN個のセグメント(2)から構成され、
Nは、値3および値16を含む3~16の整数であり、
複数の前記パターンのうちの任意の1つの前記パターンの前記N個のセグメントのそれぞれの向きは、均一な角度で分布している、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項8】
複数の前記パターン(M)の各パターンの複数の前記セグメント(2)は、前記担体(1)の前記表面に規則的なN個の尖端を有する星形を形成するように、前記パターンの中心の周りに放射状に配置されている、請求項7に記載の装置(10)。
【請求項9】
各セグメント(2)は、50μm~40mmの長さ、好ましくは1mm~30mmの長さを有し、かつ、10μm~500μmの幅、好ましくは100μm~300μmの幅を有し、
前記長さおよび前記幅は、前記担体(1)の前記表面に対して平行に測定されたものである、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項10】
前記担体(1)の前記表面は、熱的および電気的に絶縁性である有機材料、例えばポリイミド系の有機材料から構成され、
前記感光材料は、前記有機材料の変質から生じる少なくとも1つの化合物、特に前記有機材料の熱分解により生じる化合物を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項11】
前記担体の前記表面が前記電磁放射(R)に曝されている間に前記担体(1)の前記表面の複数の赤外線画像を捕捉するように構成され、
その結果、感光材料の複数の前記セグメント(2)のうちの少なくとも一部の前記セグメントの複数の部分が、前記セグメントの複数の前記部分のそれぞれの温度値に依存する強度で、捕捉された複数の前記赤外線画像内に現れるようにするサーモカメラ(11)をさらに備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項12】
-前記担体(1)の前記表面を曝す前記電磁放射(R)に対して一時的変調シーケンスを加えるように構成された変調システム(12);および、
-前記一時的変調シーケンスにしたがって、前記担体の前記表面の複数の連続する画像内に捕捉された複数の強度をフィルタリングするように構成された同期検波システム(13)、
をさらに備える、請求項11に記載の装置(10)。
【請求項13】
電磁放射(R)の偏光における空間的変動を明らかにするのに適した請求項1~12のいずれか一項に記載の装置(10)の製造方法であって、
-熱的および電気的に絶縁性である有機材料、例えばポリイミド系の材料から構成される表面を有する担体(1)を準備する工程;および、
-感光材料の複数の前記セグメント(2)を構成するために、特に前記有機材料の熱分解によって前記有機材料を局所的に変質させて前記感光材料を形成するように、前記担体(1)の前記表面の複数の所定のゾーンにおいて前記有機材料を、例えば複数の前記ゾーン内に向けられるレーザービームによって、選択的に加熱する工程、
を含む、製造方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本明細書は、電磁放射の偏光における空間的変動(バリエーション)を明らかにする装置、および、かかる装置の製造方法に関する。
【0002】
[従来技術]
電磁放射を、特にマイクロ波振動数と称されるスペクトル範囲内において、その強度によってだけではなく、その電場のベクトルの向きまたはその磁場のベクトルの向きによって特性評価することは、時に有用である。放射の電場または磁場のベクトルの向きは、その偏光に対応することが知られている。これは、固定ベクトルに沿った場の2つの成分のそれぞれの振幅に応じて、また、これらの2つの成分の間に存在する位相差に応じて、直線、円、または楕円であり得る。直線偏光および円偏光は楕円偏光の特定の場合であることが知られている。当該直線偏光および円偏光は、必ずしも厳密に実現するわけではない。
【0003】
文献FR2787583には、特性評価しようとする電磁放射に対して透明であるかまたは実質的に透明である二次元担体を用いることが記載されている。当該二次元担体は、その複数の表面のうちの1つの表面上に光熱材料(photothermal material)の平行なストリップの周期的配列を含む。この光熱材料は、ジュール効果、または誘電損失の機構もしくは磁気損失の機構のうちのいずれか1つにより、電磁放射の影響下で加熱される。しかしながら、二次元担体上の平行なストリップにおける光熱材料の分布のため、その熱容量は、当該材料が感度のよい(sensitive)電場または磁場の方向の関数として、異方性を有する。すなわち、直線偏光した電磁放射の場合、光熱材料が感度のよい場の直線偏光の方向が当該ストリップに対して平行であるとき、この加熱は最大となる。光熱材料の加熱は、サーモグラフィによって明らかとなる。例えば、光熱材料のストリップを備える二次元担体の像を形成する赤外線イメージセンサが使用される。しかしながら、このようにして形成される、電磁放射の場の方向に対して感度がよい検出器は、電磁放射の偏光における空間的変動を検出することはできない。
【0004】
[技術的課題]
この状況を踏まえて、本発明の一目的は、電磁放射の場の方向に対して感度がよく、電磁放射の偏光における空間的変動を明らかにすることを可能とする、新規の検出器を提案することである。
【0005】
本発明の副次的な目的は、高感度で製造コストの安価な上述の検出器を提供することである。
【0006】
[発明の概要]
これらの目的または他の複数の目的のうちの少なくとも1つの目的を達成するため、本発明の第1の態様は、電磁放射の偏光における空間的変動(バリエーション)を、局在する温度変動の形態において明らかにするのに適した新規の装置を提案する。この装置は、熱的および電気的に絶縁性である担体の表面を備え、かつ、複数のパターンの配列であって、その各々が感光材料と称される材料の少なくとも1つの直線セグメント(好ましくは、少なくとも2つの直線セグメント)から構成される複数のパターンの配列を、前記担体のこの表面内または前記担体のこの表面上に備える。この感光材料は、当該感光材料が前記電磁放射の電場または磁場に曝されるときに熱を生み出すのに適しており、前記担体の前記表面における各セグメントの向きに対する前記電磁放射の前記偏光にしたがって変化する電磁放射パワーに対する加熱パワーの比の値を有する。加えて、この電磁放射パワーに対する加熱パワーの比は、前記電磁放射の前記偏光にかかわらず、前記感光材料の前記セグメントの外部の前記担体においてゼロであるか、または実質的にゼロである。このように定められる前記感光材料は、特に、上述の光熱材料に対応し得る。
【0007】
本発明の第1の特徴によれば、各パターンが複数のセグメントを含む場合、各パターン内のこれらのセグメントは、少なくとも2つの異なる向きを有する。あるいは、各パターンが1つのセグメントのみを含む場合、隣り合う2つのパターンの前記セグメントは、異なる向きを有する。言い換えれば、感光材料の複数の前記直線セグメントは、各パターン内において、または隣り合う別々の複数のパターン間において、異なる複数の向きを有する。したがって、向きの異なる複数のセグメントは各々、別のセグメントが最大の感度を示す前記放射の直線偏光成分とは異なる前記放射の直線偏光成分に対して、より感度がよい。
【0008】
本発明の第2の特徴によれば、前記配列は、同一の複数のパターンの二次元配列を形成するように、前記担体の前記表面上の異なる複数の繰り返し方向において複数のオフセットを有する基本パターンの複数の繰り返しから構成される。したがって、複数の前記パターンが個々に複数のセグメントを含む場合、各パターンは、前記担体の前記表面内または前記担体の前記表面上において、他の複数の前記パターンとは別個な局所検出器であって、このパターンの位置に存在する前記電磁放射の偏光の方向に対して感度のよい局所検出器を構成する。そして、異なる複数のパターン間に現れる加熱における変動は、前記偏光における空間的変動が前記担体の前記表面において所与の瞬間に存在するときの、前記電磁放射の前記偏光におけるこの空間的変動を明らかにする。また、各パターンが1つのセグメントのみを含む場合、少なくとも2つの隣り合うパターンが、偏光の方向の局所検出器を構成するために組み合わせられる必要がある。
【0009】
本発明の第3の特徴によれば、前記感光材料は、導電性材料であり、この感光材料の導電率値は、10S/m(ジーメンス毎メートル)~500S/mである。
【0010】
一般に、前記担体の前記表面内または前記担体の前記表面上の複数の前記パターンの前記配列は、規則的またはランダムであってよい。
【0011】
本発明による装置は、以下の複数の利点を有する:
-この偏光が直線であるとき、当該装置により、局所的に有効な前記電磁放射の偏光の方向を特定することができる。楕円偏光の場合、当該装置により、局所的に有効な楕円率のレベルを評価することができる;
-当該装置は、前記電磁放射の前記偏光の二次元マップを提供することができる;
-複数の前記パターンを備える前記担体は、サイズが大きくてもよく、場合によっては、数平方メートルまでサイズが大きくてもよい。これにより、大きな表面における偏光のマップの利用が可能になる;
-当該装置は、非常に広範囲で変化し得る電磁放射振動数に対して有効である:電場に対して感度のよいパターン材料の場合は、数十Hzから約1THz(テラヘルツ)までであり、磁場に対して感度のよいパターン材料の場合は、約1GHz(ギガヘルツ)まで、である;
-特に複数の前記パターンが前記担体の前記表面のほんの小さな部分を覆っている場合、前記電磁放射は、当該装置によってわずかに変化させられ得る。特に、当該装置は、測定が控えめ(discreet)であり本発明の装置を用いて特性評価される前記放射の源と干渉し得ないように、反射される放射をほとんど生成しなくてもよい;および、
-当該装置は、前記電磁放射の構造の詳細を特徴付ける(特性評価する)ことを可能にし、これは、この放射の波長よりも小さな寸法を有するものである。
【0012】
本発明の特定の実施形態では、以下の追加的な複数の特徴のうちの少なくとも1つの特徴が、任意選択的にそして好ましいとき、単独でまたはその組み合わせにおいて、再現され得る:
-各パターンが感光材料の複数の直線セグメントを含む場合、各パターンのこれらのセグメントは、好ましくは、前記パターン内で、前記担体の前記表面において少なくとも3つの異なる向きを有してもよい。その結果、直線偏光の方向は、各パターンから曖昧さなしに決定することができる;
-同一の複数のパターンの前記二次元配列が、異なる2つの繰り返し方向の各々の繰り返し方向において周期的であり、かつ、これらの繰り返し方向の各々の繰り返し方向における空間的周期が、100μm(マイクロメートル)~50mm(ミリメートル)であり、好ましくは1mm~30mmであるように、前記基本パターンの複数の前記繰り返しの複数の前記オフセットは、前記担体の前記表面における前記2つの繰り返し方向において組み合わされており、かつ規則的であってもよい。この空間的周期は、前記電磁放射の前記偏光における空間的変動を決定するための、対応する繰り返し方向における当該装置の分解能に対応する。さらに、複数の前記パターンの前記2つの繰り返し方向は、必ずしも垂直ではない。例えば、複数の前記パターンの前記2つの繰り返し方向は、複数の前記パターンの前記2つの繰り返し方向の間で60°(度)の角度を形成してもよい。このようにして、複数の前記パターンは、正三角形配列にしたがって、前記担体の前記表面内に分布することができる;
-前記担体の前記表面における複数の前記パターンのうちの隣り合う2つの任意の前記パターンは、互いに交錯(インターレース:interlaced)していてもよい。その結果、前記電磁放射の前記偏光における前記空間的変動を決定するために、より精細な分解能を得ることができる;
-前記担体の前記表面における隣り合う複数のパターンの任意の対に係る複数の前記セグメントは、前記対の第1のパターンに係る複数の前記セグメントのうちの任意の1つの前記セグメントと、前記対の他方のパターンに係る複数の前記セグメントのうちの任意の1つの前記セグメントとの間の、感光材料のないパターン間ギャップにより離隔していてもよい。その結果、隣接するパターンによるパターン検出動作との干渉が低減する;
-同じ1つのパターンの任意の2つのセグメントは、感光材料のないパターン内ギャップにより、互いに絶縁されていてもよい。その結果、直線偏光の垂直方向間の複数のパターン検出動作の寄生的混合(parasitic blending)を低減することができる;
-各パターンは、前記担体の前記表面に配置されたN個のセグメントから構成されてもよく、Nは好ましくは、値3および値16を含む3~16の整数であってもよく、複数の前記パターンのうちの任意の1つの前記パターンの前記N個のセグメントのそれぞれの向きは、均一な角度で分布していてもよい。特に、複数の前記パターンの各パターンの複数の前記セグメントは、前記担体の前記表面に規則的なN個の尖端を有する星形を形成するように、前記パターンの中心の周りに放射状に配置されてもよい;および、
-各セグメントは、50μm~40mmの長さ、好ましくは1mm~30mmの長さを有してもよく、かつ、10μm~500μmの幅、好ましくは100μm~300μmの幅を有してもよい。これらの長さおよび幅は、前記担体の前記表面に対して平行に測定されたものである。各セグメントについてこのように得られる複数の形状因子(form factor)値は、前記セグメントに対してそれぞれ平行および垂直である前記電磁放射の直線偏光成分間において、このセグメントの検出動作における良好な選択性を提供する。
【0013】
本発明の好ましい実施形態では、前記担体の前記表面は、熱的および電気的に絶縁性である有機材料、例えばポリイミド系の有機材料から構成されてもよい。前記感光材料は、前記有機材料の変質から生じる少なくとも1つの化合物、特に前記有機材料の熱分解(thermal degradation)により生じる化合物を含んでもよい。その結果、本発明に係る装置は、電磁放射の複数の直線偏光成分を検出するために、特に高い感度を有することができる。本発明に係る装置はまた、単純かつ経済的な方法で製造することができる。
【0014】
一般に、当該装置は、前記担体のこの表面が前記電磁放射に曝されている間に前記担体の前記表面の複数の赤外線画像を捕捉するように構成されたサーモカメラをさらに備えてもよい。その結果、感光材料の複数の前記セグメントのうちの少なくとも一部の前記セグメントの複数の部分を、これらの前記セグメントの複数の前記部分のそれぞれの温度値に依存する強度で、捕捉された複数の前記赤外線画像内において明らかにすることが可能になる。しかしながら、その他の赤外線サーモグラフィシステムが代わりに用いられてもよい。
【0015】
前記電磁放射の複数の前記偏光成分を検出するための感度、特に複数の直線偏光成分を検出するための感度をさらに向上させることを目的とする、本発明の一改良によれば、当該装置は、以下のものをさらに備えてもよい:
-前記担体の前記表面を曝す前記電磁放射に対して一時的変調シーケンス(手順)を加えるように構成された変調システム;
-前記一時的変調シーケンスにしたがって、前記担体の前記表面の複数の連続する(successive)画像内に捕捉された複数の強度をフィルタリングするように構成された同期検波システム;および、
-捕捉された画像の特定の複数の点における前記電磁放射の偏光特徴を自動的に決定するように設計され、場合によっては、これらの点に関する前記電磁放射の前記強度の値をさらに決定するように設計された画像処理システム。
【0016】
本発明の第2の態様は、電磁放射の偏光における空間的変動を明らかにするのに適した装置の製造方法であって、
-熱的および電気的に絶縁性である有機材料、例えばポリイミド系の材料から構成される表面を有する担体を準備する工程;および、
-感光材料の複数の前記セグメントを構成するために、特に前記有機材料の熱分解によって前記有機材料を局所的に変質させて前記感光材料を形成するように、前記担体の前記表面の複数の所定のゾーンにおいて前記有機材料を、例えばこれらのゾーン内に向けられるレーザービームによって、選択的に加熱する工程、を含む製造方法を提案する。
【0017】
かかる製造方法は、本発明の第1の態様による装置を提供するのに適している。しかしながら、その他の複数の製造方法もまた可能である。例えば、複数の前記パターンの複数の位置において、複数の前記パターンの形状にしたがって、前記感光材料の複数の部分を選択的に堆積させる工程を含む複数の方法が可能である。
【0018】
[図面の簡単な説明]
本発明の特徴および利点は、添付の図面を参照しつつ非限定的な実施形態を以下に詳細に説明することで、より明らかとなるだろう。
【0019】
図1]は、本発明による装置の斜視図である。
【0020】
図2a]~[図2c]は、[図1]の装置に代替的に使用され得る異なるパターンを示す。
【0021】
図3a]~[図3e]は、[図1]の装置に代替的に使用され得る異なるパターン分布を示す。
【0022】
図4]は、電磁放射の偏光における空間的変動を明らかにするための、本発明による装置の使用を示す。
【0023】
図5a]および[図5b]は、この装置が[図2a]のパターンで実装されるときの、[図1]の装置に誘導される電流密度の大きさを示す2つの図である。
【0024】
図6]は、[図2b]のパターンで実装された[図1]の装置を使用して、電磁放射の直線偏光の局所的な方向を決定する一方法を示す。
【0025】
[発明の詳細な説明]
明瞭さのため、これらの図面に示された要素の寸法は、実際の寸法および実際の寸法比のいずれにも対応するものではない。さらに、異なる図面に示された同一の参照符号は、同一の要素か、または同一の機能を有する要素を指す。
【0026】
図1]によれば、本発明による装置10は、電気的に絶縁性である担体1の表面を含む。例えば、Kapton(登録商標)フィルムの名称で知られるもの等の、ポリイミド系のフィルムである。担体1は、例えば約100μm(マイクロメートル)に等しい厚さを有し得る。好ましくは、担体1の材料は、それを断熱材と見なすことができるように、低い熱伝導率かまたは非常に低い熱伝導率を有する。さらに、それは、装置10を用いて特性評価しようとする電磁放射に対して、好ましくは、透明であるかまたは実質的に透明である。
【0027】
電磁放射に対して感度のよい材料のパターンMは、担体1の表面上に分布している。これらのパターンMは、それらの各々が基本パターンの再現であり、かつ担体1の表面に配列を形成するように、同一である。この配列は、周期的であってもよいか、または周期的でなくてもよい。周期的である場合、複数のパターンMは、D1で示される第1の繰り返し方向およびD2で示される第2の繰り返し方向に対してそれぞれ平行である、2つの空間的周期の任意の組み合わせにおいて、互いに対してオフセットして(ずれて)いてもよい。例えば、2つの空間的周期は24mmに等しくてもよいが、これは非限定的な一例である。
【0028】
各パターンMは、感光材料と称される、電磁放射に対して感度のよい材料の複数の直線セグメントから構成される。これらは、担体1の表面内において、異なる向きを有する。一般に、感光材料の各セグメントは、50μm~40mmの長さ、例えば1mmに等しい長さを有し、10μm~500μmの幅、例えば200μmに等しい幅を有してもよい。これらのセグメントの長さおよび幅は、担体1の表面に対して平行に測定される。
【0029】
例えば、[図1]は、各々が4つの直線セグメント2から構成される複数のパターンMを示す。担体1の表面に対して平行なそれらの向きは、同じ1つのパターンMの任意の2つのセグメント間で45°(度)オフセットして(ずれて)いる。
【0030】
図2a]は、[図1]の装置に使用され得る別のパターンMを示す。パターンMの感光材料の4つの直線セグメントは、規則的な8個の尖端を有する星形を形成するように、それらの中央で交差するよう配置構成されている。[図2a]のパターンMを構成する感光材料の4つのセグメントは、2、2、2および2と表され、各々、20mmに等しい長さを有してもよい。
【0031】
図2b]は、[図1]の装置に使用され得るさらに別のパターンMを示す。それは、規則的な12個の尖端を有する星形を形成するように、それらの中央で交差するよう配置構成された感光材料の6つの直線セグメントから構成されている。[図2b]のパターンMを構成する感光材料の6つのセグメントは、2~2と表される。それらの各々は、やはり20mmに等しい長さを有してもよい。
【0032】
図2c]は、[図2b]のパターンMの変形例を示す。[図2b]のパターンの各直線セグメントは、その中央付近で断絶している。したがって、パターンMは、規則的な12個の尖端を有する星形の中心で互いに分離した、12個のセグメント2から構成されることとなる。このとき、12個のセグメント2の各々は、これも一例であるが、8mmに等しい個々の長さを有してもよい。複数のセグメントが交差する点に感光材料がない複数のかかるパターンは、各パターンについて測定される温度の最大値を低減することを可能にする。その結果、このように離隔した複数のセグメントに対して温度測定のダイナミクスを増大させることが可能である。
【0033】
図3a]は、担体1の表面におけるパターンMの分布の第1の可能な例を示す。この場合、D1およびD2の2つの繰り返し方向は、互いに垂直である。図示の例では、方向D1および方向D2における2つの空間的周期は等しいが、このことは必須ではない。これらの空間的周期は、100μm~50mm、好ましくは1mm~30mmであってもよく、例えば、25mmに等しくてもよい。
【0034】
図3b]は、[図3a]に対応するが、この場合、パターンMの2つの繰り返し方向D1およびD2は互いに垂直ではなく、例えば互いに対して約60°となるように向き付けられている。
【0035】
一般に、担体1の表面におけるパターンMの配列のコンパクトさは、装置10によって提供される電磁放射の特性評価の空間分解能を決定する。実際、各パターンMは、当該パターンMの位置に存在する電磁放射について、当該電磁放射の特性評価を、その偏光、および、場合によってはその強度に関して、別々に提供することを意図するものである。周期的配列の場合、この空間分解能は、方向D1および方向D2におけるパターンMの繰り返し周期により決定される。
【0036】
各パターンMが各パターン内で異なる複数の向きを有する複数の直線セグメントを含む本発明の全ての実施形態について、偏光の回転の方向が円または楕円である場合の当該偏光の回転の方向を別として、各パターンMは、このパターンの位置における電磁放射の偏光を決定するのに十分である。このとき、装置10の空間分解能は、担体1の表面における隣り合う複数のパターンのそれぞれの中心を隔てる距離に、実質的に等しい。
【0037】
図3c]は、規則的な3個の尖端を有する星形から構成されるパターンMのさらに別の例を示す。この特定のパターンの利点は、[図3c]に見られるように、複数のパターンの配列が担体1の表面内において特にコンパクトになるように、隣り合う複数のパターンMが互いに交錯(インターレース)することを可能にすることである。その結果、装置10によって提供される電磁放射の特性評価の空間分解能は、特に精細であり得る。
【0038】
図3d]は、「Y」に配置構成された3つの枝から構成される、パターンMのさらに別の例を示す。パターンMの枝は、参照符号2、2および2により示される。複数のパターンMは、依然として交錯し得るが、担体1の表面内においてランダムに、分布し向き付けられている。
【0039】
図3e]は、各パターンMが感光材料の単一の直線セグメントから構成される、本発明による装置10のさらに別の例を示す。パターンMは再び、担体1の表面内においてランダムに、分布し向き付けられている。本発明のかかる実施形態の場合、偏光の回転の方向が円または楕円である場合の当該偏光の回転の方向を別として、担体1の表面における点に近接しかつ異なる向きを有する2つまたは3つのパターンMが、この点に入射する電磁放射の偏光を決定するために必要とされる。[図3e]では、点Pにおける電磁放射の偏光を決定するために用いられる複数のパターンMは、矢印によってこの点と結び付いている。
【0040】
電磁放射に対して感度がよく、かつ各パターンMの直線セグメントを構成する材料は、金属で作られた導電性材料、例えば銀または銅で作られた導電性材料であってもよいか、または、例えば有機伝導性材料(organic conducting material)等の、弱導電性材料であってもよい。弱導電性材料とは、導電率値が10S/m(ジーメンス毎メートル)未満である材料、例えば通常、導電率値が約10S/m~500S/mである材料を意味するものと理解される。伝導性材料内において電磁放射により生じる加熱パワー(heating power)は、直線セグメントに対して平行な電場の成分の振幅の二乗に比例し、かつ、当該伝導性材料の電気抵抗率に比例することが知られている。
【0041】
あるいは、電磁放射に対して感度がよく、かつ各パターンMの直線セグメントを構成する材料は、誘電分極による損失を示す誘電材料であってもよく、例えば、アルミナ(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、ルテニウム酸化物(RuO)またはニッケル酸化物(NiO)、リン酸鉄(LiFePO)等であってもよい。この場合には、やはり知られているように、電磁放射により生じる加熱パワーは、直線セグメントに対して平行な電場の成分の振幅の二乗に比例し、かつ、感光材料の電気感受率の虚部に比例する。
【0042】
別の代替形態では、電磁放射に対して感度がよく、かつ各パターンMの直線セグメントを構成する材料は、磁気分極による損失を示す磁性材料であってもよい。かかる材料は特に、強磁性タイプであってもよく、例えば、酸化第二鉄(Fe)等であってもよい。この別の場合には、やはり知られているように、電磁放射により生じる加熱パワーは、直線セグメントに対して平行な磁場の成分の振幅の二乗に比例し、かつ、感光材料の磁化率の虚部に比例する。
【0043】
しかしながら、電磁放射のパワーは、電場の振幅の二乗に比例するか、または同様に、磁場の振幅の二乗に比例する。また、何れのケースにおいても、電磁放射が直線偏光している場合、感光材料の直線セグメントの加熱パワーは、電磁放射のパワーに、直線セグメントの長手方向と電場または磁場(セグメントの材料が電場または磁場のいずれに対して感度がよいのかによる)の方向との間の角度の余弦の二乗を乗じたものにほぼ比例する。言い換えれば、感光材料の直線セグメントの加熱は、直線セグメントの単位ベクトルと電場または磁場(セグメントの材料がこれらの場のいずれに対して感度がよいのかによる)との間のスカラー積の二乗にほぼ比例する。
【0044】
感光材料のパターンMは、当業者に知られている選択的堆積(selective deposition)の方法を使用して、担体1の表面上に形成されてもよい。例えば、かかる公知の方法では、マスクが利用されてもよい。この場合、開口部により、担体1上の複数のパターンMのうちの1つのパターンMの各直線セグメントの寸法および配置が決定される。そして、マスクの開口部を通して、感光材料の堆積が行われる。あるいは、パターンMの各直線セグメントの寸法および配置は、担体1の表面にわたって分布する複数の場所に適用される、感光材料の選択的接着(selective attachment)の方法により決定されてもよい。かかる選択的接着の方法は、担体1上における感光材料の付着(adhesion)をつくり出すために担体1の材料を局所的に活性化する(activating)工程、または、担体1に付着するように適合された接着層であって、感光材料に付着するようにさらに適合された接着層を選択的に堆積させる工程を含んでもよい。さらに別の代替例では、まず、感光材料の連続層が担体1の表面上に形成され、次に、マスクを通しての化学処理を介してまたはレーザーを使用して、選択的にエッチングされ得る。
【0045】
担体1がKapton(登録商標)等の有機材料に基づくものである場合、この有機材料の熱分解化合物(thermal degradation compounds)が感光材料を構成し得る。特に、これらの熱分解化合物は、カーボングラファイトの粒子を含み得る。このようにして得られる感光材料は、低い導電率値を有する導電性材料である。この場合、感光材料のパターンMは、パターンMのための所望の位置において、担体1を局所的かつ選択的に加熱することにより簡単に得ることができる。かかる局所的かつ選択的な加熱は、レーザービームによって、有機材料を感光材料に変換するのに必要な熱パワーを局所的に送達するのに適切な移動スピードでこのレーザービームをパターンMのための所望の位置に移動させることにより、実行され得る。当業者であれば、担体1を構成するために選択される有機材料に応じて、所望の感光材料を得るために、レーザーの波長、そのパワー、および、レーザーが担体1の表面を横切って移動するスピードを選択する方法がわかる。このようにして得られる感光材料は、局所材料分析(local material analysis)の公知の複数の方法のうちの1つの方法、および、導電率の局所測定の公知の複数の方法のうちの1つの方法を実施することによって、特性評価することができる。
【0046】
図4]は、装置10の1つの可能な実装形態を示す。装置10は、例えば感光材料のパターンMを帯びるフィルムの形態において、特性評価しようとする電磁放射R内に配置されている。サーモカメラ11が、パターンMを帯びる装置10の担体の表面の複数の赤外線画像を捕捉するように配置されている。好ましくは、感光材料のパターンMを帯びるこの表面は、サーモカメラ11の方に向けられてもよい。サーモカメラ11は、3μm~5μmの波長に対して感度のよいイメージセンサアレイを有する、市販のモデルのうちの1つであってもよく、例えば、冷却されたInSbタイプのセンサアレイであってもよい。好ましくは、カメラ11の光軸A-Aは、パターンMを帯びる装置10の担体の表面に対して垂直であってもよい。このようにして、装置10の複数のパターンMのうちの全てのパターンMが、カメラ11により捕捉される複数の赤外線画像内に明瞭に現れることができる。
【0047】
電磁放射Rが装置10に連続的に入射すると、電磁放射Rの偏光に応じて、また、各直線セグメントに対するこの偏光の向きに応じて、電磁放射Rは、パターンMの複数の直線セグメントのうちの一部のセグメントの加熱を引き起こす。放射Rの影響下で温度がこのように増大する直線セグメントは、サーモカメラ11によって捕捉される複数の赤外線画像内でより高い複数の強度で現れる。しかしながら、担体1内への熱の拡散、パターンMを帯びる担体1の表面と接触している空気中への熱の拡散、および、担体1の近くにある空気中で起こり得る熱対流等の、寄生熱現象(parasitic thermal phenomena)が、放射Rによって感光材料の種々の直線セグメント間に発生する温度差を、これらのセグメントが同じパターンMに属するにせよ異なるパターンMに属するにせよ、減少させる傾向がある。また、当該寄生熱現象(parasitic thermal phenomena)は、放射Rによって感光材料の各直線セグメントとパターンMの外部の担体1との間に発生する温度差を減少させる傾向がある。その結果、サーモカメラ11により捕捉される複数の赤外線画像内のコントラストが減少する。捕捉される複数の画像のコントラストのかかる減少を埋め合わせる本発明の一改良によれば、装置10に入射する電磁放射Rは、強度が変調されてもよい。かかる変調は、可能な場合には放射Rの源によって加えられてもよい、または、放射Rが装置10に到達する前の放射Rの経路内に構成された変調システム12によって加えられてもよい。例えば、変調システム12は、少なくとも1つの開口部を有する可動のスクリーンであってもよい。これは例えば、角度方向セクタが放射Rに対して選択的に不透明または透明な材料から構成されるホイールであって、制御されたスピードにおいてモータにより回転されるホイールであってもよい。装置12は、例えば1Hz(ヘルツ)~100Hzであり得る振動数において、装置10に入射する放射Rに対して強度変調を加える。次いで、サーモカメラ11により測定される複数の画像点の複数の強度は、放射Rの源に加えられる変調にしたがって、またはシステム12により加えられる変調にしたがって、同期検波システム13によってフィルタリングされる。同期検波を有するかかる画像捕捉モードにより、上述した複数の寄生熱現象のうちの少なくとも1つの寄生熱現象により生み出される連続的な熱寄与を抑制することができる。典型的には、変調された放射Rは、装置10の複数のパターンMの複数の直線セグメントのうちの一部の直線セグメントにおける温度増加の一連の連続するパルスを引き起こす。これらのパルスは、復調システム13によるフィルタリング後に複数の赤外線画像内で選択的に検出される。
【0048】
図5a]の図表は、[図2a]に示されるようなパターンについて、このパターンに入射する電磁放射Rが直線セグメント2に対して平行である電場の直線偏光を有する場合に、装置10のパターンM内に誘導される電流密度の分布を示す。[図5a]のケースでは、感光材料は、導電率が約1000S/mの金属酸化物であり、セグメント2‐2の各々の幅は200μmに等しい。横軸は、セグメント2-2の各々に沿った位置を、各セグメントの一方の端から他方の端まで、20mmに等しいセグメント長について、特定するものである。この位置はxで示されている。縦軸は、電流密度の大きさを特定するものである。当該電流密度の大きさは、Jで示されており、任意の単位(a.u.)で表されている。[図2a]のパターンMの各セグメントに関する曲線は、このセグメントの参照符号が付されている。[図5a]の図表における曲線で示されているように、セグメント2内に誘導される電流密度は最大である。これは、このセグメント2が放射Rの電場に対して平行であるためである。セグメント2内に誘導される電流密度は、実質的にゼロである。これは、このセグメント2が放射Rの電場に対して垂直であるためである。そして、セグメント2およびセグメント2内に誘導される電流密度は、中間的であり、そして実質的に等しい。これは、2つのセグメント2および2は各々、電場に対して45°にあるためである。しかしながら、高い導電率値を有する感光材料の高い伝導性のゆえに、受信機モードにおけるアンテナ効果型の共振が、セグメント2-2の各々内に現れる。この共振挙動のゆえに、セグメント2-2に関する曲線は各々、誘導電流密度の大きさのピークを示す。セグメント2-2のうちの1つのセグメントの各点において放射Rにより引き起こされる局所的な加熱は、この点に誘導される電流密度の大きさの二乗に比例する。したがって、サーモカメラ11により捕捉される複数の赤外線画像において、セグメント2の両端が最も明るく見える。より正確には、セグメント2の2つの端の各々から約2.5mmのところに位置するこのセグメントの部分が、より明るく見える。セグメント2およびセグメント2は各々、セグメント2と同様に、捕捉された複数の画像内に見えるものの、より明るさが小さい。セグメント2は、担体1の温度にしたがって、暗く見える。ただし、他のセグメント2-2の近くの複数の部分からの熱伝導ゆえに温度が増大するセグメント2の中心を除く。
【0049】
図5b]は[図5a]に対応するが、この場合、感光材料は依然として導電性であるが、約20S/mという、はるかにより小さな導電率値を有する。この値は、レーザーにより局所的に加熱されて感光材料を形成するKapton(登録商標)で作られる担体1に対応する。共振挙動はもはや存在しない。そのため、各セグメント内に誘導される電流密度の大きさは、そのセグメントの中央付近の限定されたエリアの外では、実質的に一定である。前述のように、誘導電流密度のこの大きさは、放射Rの電場の直線偏光の方向に対するセグメントの向きに依存する。[図2b]と[図2c]との間に導入されたように、同じ1つの星形パターン内の複数のセグメント間の交差を除去することは、当該星形の中心が、捕捉された複数の赤外線画像内に強調表示されて現れることを防止する。
【0050】
図6]の図表は、[図2b]のパターンMを帯びる担体1の表面に対して平行な平面において、当該パターンのセグメント2-2の方向(direction)を特定するものである。これらの方向は、それらのそれぞれの実際の向きにしたがって図表内に現れ、対応する直線セグメントの参照符号が付されている。さらに、[図6]の図表の各セグメント方向は、サーモカメラ11によって捕捉された複数の赤外線画像内に読み取られるように、セグメントの加熱に比例する代表長さ(representative length)に結びつけられている。セグメント2およびセグメント2(考慮された例において互いに垂直であるが、このことは必須ではない)は、直線偏光の第1の基底(base)を形成する。同様に、セグメント2およびセグメント2は、直線偏光の第2の基底を形成し、セグメント2およびセグメント2は、直線偏光の第3の基底を形成する。これらの基底の各々について別々に、基底の2つのセグメント方向を表す長さの比が、放射Rの直線偏光について可能性のある2つの明瞭な方向を示す。偏光のこれら2つの可能性のある方向は、基底の複数のセグメント方向について対称である。それゆえ、図表に示すように、第1の基底(セグメント2およびセグメント2)に従うと、放射Rの直線偏光の可能性のある方向は、VおよびVとなる。直線偏光のこれら2つの可能性のある方向は、基底のセグメント方向のうち、より大きな温度上昇に対応するセグメント方向(考慮された例ではセグメント2の方向)に、その角度がより近い。同様に、放射Rの直線偏光に関して可能性のある方向は、第2の基底(セグメント2およびセグメント2)に従うと、VおよびVとなり、第3の基底(セグメント2およびセグメント2)に従うと、VおよびVとなる。パターンMの直線偏光の3つの基底から別々に生じるこれら複数の可能性の一致は、方向V、VおよびVの一致である。したがって、一致するこの方向V=V=Vは、考慮されたパターンMの位置における、電磁放射Rの直線偏光の方向である。この例は、[図6]の12個の尖端を有する星形に対応する。当該12個の尖端を有する星形は、パターンMの平面内に3つの正規直交基底をつくる。同じ議論が、[図2a]の8個の尖端を有する星形にも適用される。当該8個の尖端を有する星形は、2つの正規直交基底をつくる。したがって、当該2つの正規直交基底は、直線偏光の4つの潜在的な方向を与えることとなる。当該4つの潜在的な方向のうちの2つの方向だけが、互いに一致して、直線偏光の実際の方向を示す。[図3d]に示すように、各腕が他の腕と直交していない3個の尖端を有する星形パターンMは、2つの非直交基底をつくる。当該2つの非直交基底は、やはり4つの潜在的な方向を与えることとなる。当該4つの潜在的な方向のうちの2つの方向は、互いに一致して、直線偏光の実際の方向を示す。この議論は、一般に、少なくとも3つの方向を定める任意のN個の尖端を有する星形パターンに適用される。
【0051】
図6]を参照しながら先に述べた直線偏光の方向を決定するための方法は、装置10の複数のパターンMのうちのいくつかのパターンについて、独立に繰り返すことができる。したがって、電磁放射Rの直線偏光の方向は、これらのパターンMの複数の位置において決定される。その結果、この偏光における空間的変動を明らかにすることができる。
【0052】
偏光を決定するためのこの方法はまた、用いられるパターンMの位置において電磁放射の偏光が楕円である場合にも適用され得る。このとき、偏光の楕円の軸の向きが得られるだけでなく、場合によっては、偏光の楕円の長軸および短軸のそれぞれの長さの商についての値が得られる。
【0053】
上記で詳細に説明した複数の実施形態の副次的な態様を変更することにより、挙げられた複数の利点のうちの少なくとも一部の利点を保持しつつ、本発明が再現され得ることを理解されたい。特に、提示された配置構成とは異なる感光材料の直線セグメントの配置構成を有する複数のパターンMが、代わりに用いられてもよい。
【0054】
さらにここで、感光材料の別個の複数の直線セグメントは、その各々が別個のパターンを構成するように用いられてもよいこと、そして、パターン当たり1つのセグメントを有するかかる複数のパターンはランダムな配列で分布し得、その各々が担体の表面内または担体の表面上でランダムに向き付けられ得ることを想起されたい。
【0055】
一般に、複数のパターンは、本発明による同じ1つの装置において、ランダムな向きを有し得る。さらに、それらは担体の表面内または担体の表面上に規則的にまたはランダムに分布し得るが、これには規則的な格子上でランダムに分布することが含まれる。
【0056】
さらに、導電体タイプの感光材料についてより詳細に提示されてきた議論は、誘電感光材料(dielectric sensitive material)または磁性感光材料(magnetic sensitive material)へ困難なく移し変えることができる。
【0057】
最後に、挙げられた全ての数値は、例示の目的のためにのみ挙げられたものであり、想定される用途にしたがって変更されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】本発明による装置の斜視図である。
図2a図1の装置に代替的に使用され得る異なるパターンを示す。
図2b図1の装置に代替的に使用され得る異なるパターンを示す。
図2c図1の装置に代替的に使用され得る異なるパターンを示す。
図3a図1の装置に代替的に使用され得る異なるパターン分布を示す。
図3b図1の装置に代替的に使用され得る異なるパターン分布を示す。
図3c図1の装置に代替的に使用され得る異なるパターン分布を示す。
図3d図1の装置に代替的に使用され得る異なるパターン分布を示す。
図3e図1の装置に代替的に使用され得る異なるパターン分布を示す。
図4】電磁放射の偏光における空間的変動を明らかにするための、本発明による装置の使用を示す。
図5a】この装置が図2aのパターンで実装されるときの、図1の装置に誘導される電流密度の大きさを示す図である。
図5b】この装置が図2aのパターンで実装されるときの、図1の装置に誘導される電流密度の大きさを示す図である。
図6図2bのパターンで実装された図1の装置を使用して、電磁放射の直線偏光の局所的な方向を決定する一方法を示す。
図1
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図4
図5a
図5b
図6
【国際調査報告】