(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-25
(54)【発明の名称】グリコシル化CTLA-4に対して特異的な抗体およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20221117BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221117BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221117BHJP
G01N 33/531 20060101ALI20221117BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20221117BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20221117BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61P35/00
A61K39/395 N
G01N33/531 A
G01N33/53 D
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519492
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(85)【翻訳文提出日】2022-05-25
(86)【国際出願番号】 US2020052949
(87)【国際公開番号】W WO2021062323
(87)【国際公開日】2021-04-01
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522120174
【氏名又は名称】エスティーキューブ アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100181168
【氏名又は名称】丸山 智裕
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ステファン エス.
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG06
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA71
4H045BA72
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
非グリコシル化CTLA-4と比較して、グリコシル化CTLA-4と選択的に結合する抗体が提示される。一部の態様では、グリコシル化されたアミノ酸位置を含むCTLA-4ポリペプチドも提示される。そのような抗体およびポリペプチド(例えば、がん処置用)を作製および使用するための方法も提示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CTLA-4の非グリコシル化形態と比較して、グリコシル化CTLA-4と選択的に結合する単離されたモノクロナール抗体。
【請求項2】
非グリコシル化CTLA-4と比較して、N113位もしくはN145位、またはN113位およびN145位においてグリコシル化されたCTLA-4と選択的に結合する、請求項1に記載の単離された抗体。
【請求項3】
グリコシル化CTLA-4に対する抗glycCTLA-4抗体の結合親和性が、下限値および上限値を含め、0.1~10nMである、請求項1または2に記載の単離された抗体。
【請求項4】
イピリムマブに対して示されるK
dの10分の1のK
dでグリコシル化CTLA-4と結合する、請求項1または3に記載の単離された抗体。
【請求項5】
ライブセルイメージングシステムにおいて、非グリコシル化CTLA-4を発現する細胞と結合する抗体により示されるEC
50よりも2~10高い中和活性(50%効果濃度EC
50の減少)をもって、CTLA-4がCD86に結合するのをブロックする、請求項1~4のいずれか一項に記載の単離された抗体。
【請求項6】
N113またはN145のうちの1つまたは複数において、CTLA-4のグリコシル化をマスクする、請求項1~5のいずれか一項に記載の単離された抗体。
【請求項7】
グリコシル化CTLA-4に対する特異的結合について、MAb STC1807と競合または交叉競合する、請求項1~6のいずれか一項に記載の単離された抗体。
【請求項8】
V
Hドメインが配列番号3のアミノ酸配列を有し、かつV
Lが配列番号5のアミノ酸配列を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の単離された抗体。
【請求項9】
V
Hドメインが、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の単離された抗体。
【請求項10】
V
Lドメインが、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項1~6、または9のいずれか一項に記載の単離された抗体。
【請求項11】
配列番号6のアミノ酸配列を有するChothiaのCDR H1、配列番号7のアミノ酸配列を有するCDR H2、および配列番号8のアミノ酸配列を有するCDR H3を含むV
Hドメインを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の単離された抗体。
【請求項12】
配列番号9のアミノ酸配列を有するAbMのCDR H1、配列番号10のアミノ酸配列を有するCDR H2、および配列番号8のアミノ酸配列を有するCDR H3を含むV
Hドメインを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の単離された抗体。
【請求項13】
配列番号11のアミノ酸配列を有するKabatのCDR H1、配列番号12のアミノ酸配列を有するCDR H2、および配列番号8のアミノ酸配列を有するCDR H3を含むV
Hドメインを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の単離された抗体。
【請求項14】
配列番号13のアミノ酸配列を有するContactのCDR H1、配列番号14のアミノ酸配列を有するCDR H2、および配列番号15のアミノ酸配列を有するCDR H3を含むV
Hドメインを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の単離された抗体。
【請求項15】
配列番号16のアミノ酸配列を有するCDR L1、配列番号17のアミノ酸配列を有するCDR L2、および配列番号18のアミノ酸配列を有するCDR L3を含むV
Lドメインを有する、請求項1~6、または12~14のいずれか一項に記載の単離された抗体。
【請求項16】
配列番号19のアミノ酸配列を有するContactのCDR L1、配列番号20のアミノ酸配列を有するCDR L2、および配列番号21のアミノ酸配列を有するCDR L3を含むV
Lドメインを有する、請求項1~6、または12~14のいずれかに記載の単離された抗体。
【請求項17】
配列番号6、配列番号7、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有する、または配列番号9、配列番号10、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有する、または配列番号11、配列番号12、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有する、または配列番号13、配列番号14、および配列番号15のアミノ酸配列をそれぞれ有するCDRのうちの1、2、または3つにおいて、1、2、3、4個、または5個のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を有するCDR H1、H2、およびH3を含むV
Hドメインを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の単離された抗体。
【請求項18】
配列番号16、配列番号17、および配列番号18のアミノ酸配列をそれぞれ有するか、または配列番号19、配列番号20、および配列番号21のアミノ酸配列をそれぞれ有するCDRのうちの1、2、または3つにおいて、1、2、3、4個、または5個のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を有するCDR L1、L2およびL3を含むV
Lドメインを有する、請求項1~6または17のいずれか一項に記載の単離された抗体。
【請求項19】
ヒトフレームワーク領域を有する、請求項1~6または11~18のいずれか一項に記載の単離された抗体。
【請求項20】
1、2、3、4、5、または6個のアミノ酸置換を有する重鎖または軽鎖ヒトフレームワーク領域を有する、請求項1~6または11~18のいずれか一項に記載の単離された抗体。
【請求項21】
ヒト定常ドメインを含む、請求項1~6または11~20のいずれか一項に記載の単離された抗体。
【請求項22】
IgG、IgM、IgA、またはその抗原結合断片である、請求項1~6または11~21のいずれかに記載の単離された抗体。
【請求項23】
Fab’、F(ab’)2、F(ab’)3、1価のscFv、2価のscFv、または単一ドメイン抗体である、請求項1~6または11~22のいずれか一項に記載の単離された抗体。
【請求項24】
ヒト抗体またはヒト化抗体である、請求項1~6または11~23のいずれか一項に記載の単離された抗体。
【請求項25】
イメージング剤、化学療法剤、毒素、または放射性核種にコンジュゲートしている、請求項1~24のいずれかに記載の単離された抗体。
【請求項26】
薬学的に許容される担体内に請求項1~25のいずれか一項に記載の単離された抗体を含む、組成物。
【請求項27】
がんを有する対象を処置するための方法であって、薬学的に許容される組成物における有効量の請求項1~26のいずれか一項に記載の単離された抗体を、前記対象に投与するステップを含む方法。
【請求項28】
前記がんが、乳がん、肺がん、頭頸部がん、前立腺がん、食道がん、気管がん、皮膚がん、脳腫瘍、肝がん、膀胱がん、胃がん、膵がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頸がん、精巣がん、結腸がん、直腸がん、または皮膚がんである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記単離された抗体が、静脈内、皮膚内、腫瘍内、筋肉内、腹腔内、皮下、または局所に投与される、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
少なくとも1つの第2の抗がん療法を前記対象に投与するステップをさらに含む、請求項27~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記第2の抗がん療法が、外科療法、化学療法、放射線療法、冷凍療法、ホルモン療法、免疫療法、またはサイトカイン療法である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第2の抗がん療法が、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、または抗CTLA-4抗体である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記第2の抗がん療法が、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、ピディリズマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、またはイピリムマブである、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記第2の抗がん療法が、非グリコシル化CTLA-4と比較したときに、グリコシル化CTLA-4と優先的に結合する抗CTLA-4抗体である、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記第2の抗がん療法が、抗グリコシル化CTLA-4モノクロナール抗体のヒト化またはキメラ化されたものであり、V
Hドメインが配列番号3のアミノ酸配列を有し、かつV
Lが配列番号5のアミノ酸配列を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
CTLA-4のグリコシル化を評価するための方法であって、CTLA-4含有試料を、請求項1~25のいずれか一項に記載の抗体と接触させるステップを含む方法。
【請求項37】
In vitroでの方法としてさらに定義される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記試料が、細胞試料である、請求項36に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列リスト
本出願は、ASCIIフォーマットで電子出願され、そして参照によりその全体が本明細書に組み込まれている配列リストを含有する。前記ASCIIコピーは2020年9月25日に作成され、24258_0013P1_Sequence_Listing.txtと命名され、そのサイズは9,405バイトである。
【0002】
本発明は、医学、分子生物学、および腫瘍学の分野と一般的に関連する。より具体的には、本発明はがんを処置するための抗体に関する。
【背景技術】
【0003】
T細胞の活性化を恒久化することで、広範囲にわたる悪性がんの処置が新たな形へと劇的に変化した。例えば、CTLA4特異抗体であり、またFDAより最初に承認されたT細胞応答を標的とするチェックポイント遮断薬であるイピリムマブの開発により、転移性メラノーマの処置が可能になった(Hodi et al., The New England Journal of Medicine 363, 711-723 (2010))。
【0004】
CTLA-4のような免疫チェックポイントの翻訳後修飾(PTM)は、がん患者において免疫抑制を調節する重要な制御機構であることが明らかになってきている。最近の試験では、PTMのなかでもグリコシル化が、免疫チェックポイントタンパク質の安定性制御とトランスロケーション、およびタンパク質間相互作用において重要な役割を演ずることが示唆されている。CTLA4を含む、共阻害性(免疫抑制シグナル伝達を誘発する)リガンド/受容体の対は、脱グリコシル化により、結合の有意な喪失を示した一方、共刺激性(免疫活性化シグナル伝達を誘発する)の対はそのような喪失を示さなかった(Li et al., 2018, Cancer Cell 33, 187-201)。
【0005】
これに基づき、グリコシル化CTLA4特異抗体は、がん療法において有用である可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
グリコシル化CTLA-4(本明細書における抗glycCTLA-4抗体)と選択的に結合し、そしてCD80および/またはCD86を阻害する単離されたモノクロナール抗体が、本明細書に提示される。一部の態様では、抗体は、非グリコシル化CTLA-4と比較して、N113および/またはN145位においてグリコシル化されたCTLA-4と選択的に結合する。一部の実施形態では、単離された抗体は、N113グリコシル化を有するヒトCTLA-4と選択的に結合する。一部の実施形態では、単離された抗体は、N145グリコシル化を有するヒトCTLA-4と選択的に結合する。一部の実施形態では、単離された抗体は、N113およびN145グリコシル化を有するヒトCTLA-4と選択的に結合する。
【0007】
ある特定の態様では、抗glycCTLA-4抗体はCTLA-4と結合し、そして1つまたは複数のグリコシル化モチーフをマスクまたは遮蔽して、分子と当該モチーフとの結合またはその他の相互作用をブロックし、当該グリコシル化部位におけるCTLA-4のグリコシル化をブロックすることができる。特殊な実施形態では、抗glycCLTA-4抗体は、N113およびN145のうちの一方または両方におけるグリコシル化部位をマスクする。
【0008】
一実施形態では、抗体は、CTLA-4とCD80との相互作用を阻害し、特にエフェクターT細胞により発現されるグリコシル化CTLA-4と抗原提示細胞により発現されるCD80との相互作用を阻害する。一実施形態では、抗体は、CTLA-4とCD86との相互作用を阻害し、特にエフェクターT細胞により発現されるグリコシル化CTLA-4と抗原提示細胞により発現されるCD86との相互作用を阻害する。一実施形態では、抗体は、CTLA-4とCD86およびCD80との相互作用を阻害し、特にエフェクターT細胞により発現されるグリコシル化CTLA-4と抗原提示細胞により発現されるCD86およびCD80との相互作用を阻害する。
【0009】
一部の態様では、抗体は、1つまたは複数のグリコシル化モチーフと、例えば選択的に結合する。一部の態様では、抗体は、グリコシル化モチーフを含むグリコペプチドおよび隣接するペプチドと結合する。一部の態様では、抗体は、三次元においてグリコシル化モチーフのうちの1つまたは複数の近傍に位置するペプチド配列と結合する。
【0010】
ある特定の態様では、グリコシル化CTLA-4に対する抗glycCTLA-4抗体の結合親和性は、下限値および上限値を含め、0.1~13nMまたは0.1~10nMまたは0.1nM~5nMである。ある特定の態様では、抗体は、非グリコシル化CLTA-4に対して示されるKdの半分よりも小さいKdでグリコシル化CTLA-4と結合する。さらなる態様では、非グリコシル化CLTA-4に対して示されるKdの10分の1以下のKdで抗体はグリコシル化CTLA-4と結合する。
【0011】
特別な態様では、配列番号3および配列番号5のアミノ酸配列をそれぞれ有する重鎖および軽鎖可変ドメイン(シグナル配列を一切含まない成熟したVHおよびVL領域アミノ酸配列)、ならびにその抗原結合部分、ならびにそのヒト化キメラ形態を有する抗glycCLTA-4モノクロナール抗体STC1807が提示される。グリコシル化CTLA-4に対する結合についてSTC1807MAbと競合し、および/またはSTC1807と同じエピトープに結合する抗glycCTLA-4抗体が、本明細書に提示される。その他の態様では、抗glycCTLA-4重鎖抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインを有する。
【0012】
STC1807MAbの重鎖および軽鎖可変(V)ドメインの核酸(DNA)配列および対応するアミノ酸配列が提示され、下記の表3に示す。配列番号2および配列番号3は、STC1807VHドメインのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列であり、ならびに配列番号4および配列番号5は、STC1807κ軽鎖可変ドメインの成熟形態のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列である。表4は、Chothia、AbM、Kabat、およびContactによる、STC1807の重鎖および軽鎖VドメインCDRを提示する。
【0013】
一実施形態では、グリコシル化CTLA-4に特異的かつ優先的に結合する抗glycCTLA-4抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を有するVHドメイン、および/または配列番号5のアミノ酸配列を有するVLドメインを含む。一実施形態では、抗glycCTLA-4抗体は、グリコシル化CTLA-4に対する特異的結合について、配列番号3のVHドメインおよび配列番号5のVLドメインを含む抗体と競合する。その他の実施形態では、抗glycCTLA-4抗体は、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一であるVHドメイン、および/または配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一であるVLドメインを含む。これらの抗glycCTLA-4抗体はキメラ抗体であり得るが、また例えばヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4に由来するヒト定常ドメインを含む。
【0014】
一実施形態では、グリコシル化CTLA-4に特異的かつ優先的に結合する抗glycCTLA-4抗体は、配列番号6、配列番号7、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有するChothiaのCDR1~3を含み;配列番号9、配列番号10、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有するAbMのCDR1~3を含み;配列番号11、配列番号12、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有するKabatのCDR1~3を含み;または配列番号13、配列番号14、および配列番号15のアミノ酸配列をそれぞれ有するContactのCDR1~3を含む、またはその組合せを含むVHドメインを含む。一実施形態では、抗glycCTLA-4抗体は、グリコシル化CTLA-4に対する特異的結合について、配列番号6、配列番号7、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有するChothiaのCDR1~3を含み;配列番号9、配列番号10、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有するAbMのCDR1~3を含み;配列番号11、配列番号12、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有するKabatのCDR1~3を含み;または配列番号13、配列番号14、および配列番号15のアミノ酸配列をそれぞれ有するContactのCDR1~3を含む、またはその組合せを含むVHドメインを含む抗体と競合する。好ましくは、VHおよびVLドメインは、同一クラスのCDRを有し、すなわち両者は、Chothia、AbM、Kabat、またはContactのCDRを有する。
【0015】
その他の実施形態では、抗glycCTLA-4-1抗体は、配列番号6、配列番号7、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有するChothiaのCDR、または配列番号9、配列番号10、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有するAbMのCDR、または配列番号11、配列番号12、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有するCabatのCDR、または配列番号13、配列番号14、および配列番号15のアミノ酸配列をそれぞれ有するContactのCDRの1、2、または3つにおいて、1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を有するCDR H1、H2、およびH3を含むVHドメインを有する。抗glycCTLA-4抗体は、VHおよびVLドメインの両方についてCDR内にアミノ酸置換を有し得る。一部の実施形態では、アミノ酸置換は保存的置換である。
【0016】
好ましくは、上記抗体は、ヒトフレームワーク領域を有し、すなわちSTC1807のヒト化形態であり、任意選択で、例えばヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4由来のヒト定常ドメインを含む。
【0017】
1つまたは複数のアミノ酸置換が、結合親和性またはその他のパラメーターを改善するために、ヒト化抗体のCDRおよび/またはフレームワーク領域においてなされ得るものと当業者により認識される。複数の実施形態では、抗glycCTLA-4-1抗体は、グリコシル化CTLA-4に対する特異的結合について、上記VHおよびVLドメインならびにその中のCDRを含む抗体と競合する。一実施形態では、抗glycCTLA-4抗体は、グリコシル化CTLA-4と、下限値および上限値を含む0.1~10nMまたは1~20nMのKdで結合する。複数の実施形態では、抗glycCTLA-4抗体は、該抗体が非グリコシル化CTLA-4と結合することにより示されるKdの半分より小さいKdで、グリコシル化CTLA-4と結合する。一実施形態では、抗glycCTLA-4抗体は、非グリコシル化CTLA-4に対して示されるKdの5分の1以下のKdでグリコシル化CTLA-4タンパク質と結合する。一実施形態では、抗glycCTLA-4抗体は、該抗体が非グリコシル化CTLA-4タンパク質と結合することにより示されるKdの10分の1以下のKdでグリコシル化CTLA-4タンパク質と結合する。
【0018】
一実施形態では、抗体は、抗体中和アッセイにおいて、非グリコシル化CTLA-4を発現する細胞に対する結合についての1mm2当たりの緑色カウント体よりも3倍、5倍、10倍、20倍、50倍、または100倍大きい、野生型CTLA-4を発現する細胞に対する結合についての1mm2当たりの緑色カウント体として表現される、CTLA-4と組換えヒトCD86-Fcタンパク質との間の相互作用を阻害する。
【0019】
一実施形態では、抗体は、蛍光標識またはマーカーにより、直接的または間接的に検出可能である。一実施形態では、抗体は、蛍光標識またはマーカー、例えばFITC等を用いて直接標識され、または蛍光標識された二次抗体により検出される。一実施形態では、グリコシル化CTLA-4に対するSTC1807MAbまたはそのキメラもしくはヒト化形態の結合親和性は、下限値および上限値を含め、0.1~13nMまたは1~5nMである。一実施形態では、抗体は、CD86および/またはCD80に対するCTLA-4の相互作用を阻害する。
【0020】
複数の実施形態では、抗glycCTLA-4抗体は、グリコシル化CTLA-4に対する特異的結合について、上記VHおよびVLドメインならびにその中のCDRを含む抗体と競合する。好ましくは、これらの抗体は、ヒトフレームワーク領域を有し、すなわちSTC1807のヒト化形態であり、また任意選択で、例えばヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4由来のヒト定常ドメインを含む。結合親和性またはその他のパラメーターを改善するために、1つまたは複数のアミノ酸置換が、ヒト化抗体のCDRまたはフレームワーク領域内になし得るものと、当業者により認識される。複数の実施形態では、抗glycCTLA-4抗体は、非グリコシル化CTLA-4に対して示されるKdの半分よりも小さいKdでグリコシル化CTLA-4と結合する。複数の実施形態では、抗glycCTLA-4抗体は、非グリコシル化CTLA-4に対して示されるKdの半分よりも小さいKdでグリコシル化CTLA-4と結合する。一実施形態では、抗glycCTLA-4抗体は、該抗体が非グリコシル化CTLA-4と結合することにより示されるKdの5分の1以下のKdで、グリコシル化CTLA-4タンパク質と結合する。一実施形態では、抗glycCTLA-4抗体は、該抗体が非グリコシル化CTLA-4タンパク質と結合することにより示されるKdの10分の1以下のKdで、グリコシル化CTLA-4タンパク質と結合する。一実施形態では、セルフローサイトメトリー結合アッセイにおいて、抗体は、非グリコシル化CTLA-4を発現する細胞に対する結合についての1mm2当たりの緑色カウント体よりも3倍、5倍、10倍、20倍、または50倍大きい、野生型CTLA-4を発現する細胞に対する1mm2当たりの緑色カウント体として表現される結合性を示す。一実施形態では、抗体は、蛍光標識またはマーカーにより直接的または間接的に検出可能である。一実施形態では、抗体は、蛍光標識またはマーカー、例えばFITC等を用いて直接標識される。一実施形態では、グリコシル化CTLA-4に対する、STC1807MAb、またはその結合ドメイン、またはヒト化もしくはキメラ形態の結合親和性は、下限値および上限値を含め、0.1~13nMまたは0.1~10nMまたは0.1~5nMである。一実施形態では、抗体は、CTLA-4とCD86との相互作用を阻害し、特にエフェクターT細胞により発現されるグリコシル化CTLA-4と抗原提示細胞により発現されるCD86との相互作用を阻害する。一実施形態では、抗体は、CTLA-4とCD80との相互作用を阻害し、特にエフェクターT細胞により発現されるグリコシル化CTLA-4と抗原提示細胞により発現されるCD80との相互作用を阻害する。
【0021】
一部の態様では、抗体は組換え体である。ある特定の態様では、抗体は、IgG、IgM、IgA、またはその抗原結合断片である。その他の態様では、抗体は、Fab’、F(ab’)2、F(ab’)3、1価のscFv、2価のscFv、二重特異性抗体、二重特異性scFv、または単一ドメイン抗体である。一部の態様では、抗体は、ヒト抗体またはヒト化抗体である。さらなる態様では、抗体は、造影剤、化学療法剤、毒素、または放射性核種にコンジュゲートしている。
【0022】
さらなる実施形態では、薬学的に許容される担体内に、複数の実施形態の抗体(例えば、非グリコシル化CTLA-4と比較してグリコシル化CTLA-4と選択的に結合する抗体)を含む組成物が本明細書に提示される。
【0023】
なおもさらなる実施形態では、ヒトCTLA-4のN113位またはN145位に対応する少なくとも1つのアミノ酸を含む、ヒトCTLA-4の少なくとも7個の(例えば、少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個、またはそれを上回る)連続したアミノ酸からなる断片を含む単離されたポリペプチドが提示される。さらなる態様では、複数の実施形態の単離されたポリペプチドは、ヒトCTLA-4のN113位またはN145位に対応する少なくとも1つのアミノ酸を含む、ヒトCTLA-4の少なくとも7個の(例えば、少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれを上回る)連続したアミノ酸からなる断片であって、ヒトCTLA-4のN113位またはN145位に対応する前記アミノ酸の少なくとも1つがグリコシル化されている断片を含む。一部の態様では、複数の実施形態のポリペプチドは、免疫原性ポリペプチド(例えば、スカシガイヘモシアニン、KLH)と融合し、またはコンジュゲートしている。ある特定の態様では、ポリペプチドは、C末端またはN末端にCys残基をさらに含む。例えば、一部の態様では、ポリペプチドは、Cys残基においてジスルフィド結合により免疫原性ポリペプチドにコンジュゲートしている。
【0024】
なおもさらなる実施形態では、ヒトCTLA-4のN113位またはN145位置に対応する少なくとも1つのアミノ酸を含む、ヒトCTLA-4の少なくとも7個の(例えば、少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれを上回る)連続したアミノ酸からなる断片を含むポリペプチドであって、ヒトCTLA-4のN113位またはN145位に対応する前記アミノ酸の少なくとも1つがグリコシル化されており、薬学的に許容される担体中で製剤化されるポリペプチドを含む組成物が提示される。一部の態様では、組成物は免疫原性組成物である。一部の態様では、免疫原性組成物は、アジュバント、例えばミョウバンまたはフロイントアジュバント等をさらに含む。
なおもさらなる実施形態では、がんを有する対象を処置するための方法であって、有効量の、複数の実施形態の抗体または単離されたポリペプチドを対象に投与するステップを含む方法が本明細書に提示される。ある特定の態様では、がんを処置するための方法は、有効量のポリペプチド(例えば、グリコシル化CTLA-4ポリペプチド)を対象に投与するステップを含む。さらなる態様では、がんを処置する方法は、有効量の、複数の実施形態の抗体(例えば、非グリコシル化CTLA-4と比較してグリコシル化CTLA-4と選択的に結合する抗体)、例えば、非限定的にSTC1807のヒト化またはキメラ形態、またはグリコシル化CTLA-4に対する結合について、STC1807と競合する抗体等を対象に投与するステップを含む。一部の態様では、がんは、乳がん、肺がん、頭頸部がん、前立腺がん、食道がん、気管がん、皮膚がん、脳腫瘍、肝がん、膀胱がん、胃がん、膵がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頸がん、精巣がん、結腸がん、直腸がん、または皮膚がんである。ある特定の態様では、がんは、副腎がん、肛門がん、胆管がん、膀胱がん、骨がん、成人の脳/CNS腫瘍、小児の脳/CNS腫瘍、乳がん、男性の乳がん、未成年者のがん、小児のがん、若年成人のがん、原発不明のがん、キャッスルマン病、子宮頸がん、結腸/直腸がん、子宮内膜がん、食道がん、ユーイングファミリー腫瘍、眼のがん、胆嚢がん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、妊娠性絨毛性疾患、ホジキン病、カポジ肉腫、腎がん、喉頭または下咽頭がん、白血病(例えば、成人急性リンパ性(ALL)、急性骨髄性(AML)、慢性リンパ性(CLL)、慢性骨髄性(CML)、慢性骨髄単球性(CMML)、小児白血病)、肝がん、肺がん(例えば、非小細胞、小細胞)、肺カルチノイド腫瘍、リンパ腫、皮膚のリンパ腫、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、鼻腔がん、副鼻腔がん、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、小児の非ホジキンリンパ腫、口腔がん、中咽頭がん、骨肉腫、卵巣がん、膵がん、陰茎がん、下垂体腫瘍、前立腺がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、肉腫(例えば、成人軟組織がん)、皮膚がん(例えば、基底および扁平上皮細胞、黒色腫、メルケル細胞)、小腸がん、胃がん、精巣がん、胸腺がん、甲状腺がん、子宮肉腫、腟がん、外陰部がん、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、またはウィルムス腫瘍である。ある特定の態様では、抗体は薬学的に許容される組成物中にある。さらなる態様では、抗体は全身的に投与される。特別な態様では、抗体は、静脈内、皮膚内、腫瘍内、筋肉内、腹腔内、皮下、または局所に投与される。
【0025】
一部の態様では、方法は、少なくとも第2の抗がん療法を対象に投与するステップをさらに含む。ある特定の態様では、第2の抗がん療法は、外科療法、化学療法、放射線療法、冷凍療法、ホルモン療法、免疫療法、またはサイトカイン療法である。
【0026】
それでもなおもさらなる実施形態では、CTLA-4グリコシル化、N-結合型グリコシル化またはNグリコシル化を評価するための方法であって、CTLA-4含有試料を、複数の実施形態の抗体(例えば、抗体は、非グリコシル化CTLA-4と比較してグリコシル化CTLA-4と選択的に結合する)と接触させるステップを含む方法が本明細書に提示される。一部の態様では、方法はin vitro方法である。ある特定の態様では、試料は細胞試料である。
【0027】
それでもなおもさらなる実施形態では、抗体を作製する方法であって、複数の実施形態によるポリペプチド(例えば、ヒトCTLA-4のN113位またはN145位に対応する少なくとも1つのアミノ酸を含む、ヒトCTLA-4の少なくとも7個の連続したアミノ酸からなる断片を有するポリペプチド。ただし、ヒトCTLA-4のN113位またはN145位に対応する前記アミノ酸の少なくとも1つがグリコシル化されている)を動物に投与するステップおよび該動物から抗体を単離するステップを含む方法が提示される。例えば、動物は、マウス、ラット、ウサギ、またはヒトであり得る。ある特定の態様では、方法は、抗体のCDRを特定するステップ、およびCDR周辺の配列をヒト化させてヒト化抗体を生成するステップをさらに含む。なおもさらなる態様では、方法はヒト化抗体を組換え発現させるステップを含む。したがって、さらなる実施形態では、上記方法により生成される、単離された抗体が本明細書に提示される。したがって、一部の実施形態では、複数の実施形態のポリペプチド(例えば、ヒトCTLA-4のN113位またはN145位に対応する少なくとも1つのアミノ酸を含む、ヒトCTLA-4の少なくとも7個の連続したアミノ酸からなる断片を含むポリペプチド。ただし、ヒトCTLA-4のN113位またはN145位に対応する前記アミノ酸の少なくとも1つがグリコシル化されている)と、非グリコシル化CTLA-4と比較して選択的に結合する単離された抗体が本明細書に提示される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1-1】(
図1A及び
図1B)CD80と結合するCTLA-4は、グリコシル化特異的であることを示す図である。緑色蛍光標識されたCD80-FcとCTLA-4との間の動的相互作用の経時的顕微鏡検査および定量。(A)経時的顕微鏡画像(20時間の時点)は、CTLA-4と野生型CLTA-4およびCLTA-4 2NQ突然変異体(すなわち、非グリコシル化CTLA-4)発現293T細胞との間の動的相互作用を示す。CTLA-4WT(A)、または2NQ CTLA-4突然変異体(B)発現細胞の緑色蛍光(緑色蛍光標識されたCTLA-4/Fcタンパク質)統合画像(20×)を示す。
【
図1-2】(
図1C)CD80と結合するCTLA-4は、グリコシル化特異的であることを示す図である。緑色蛍光標識されたCD80-FcとCTLA-4との間の動的相互作用の経時的顕微鏡検査および定量。(C)グラフは、CLTA-4WTまたはCTLA-4 2NQ発現HEK293T細胞に対するCTLA-4/Fcタンパク質の定量的結合を各時点において示す。
【
図2-1】(
図2A及び
図2B)CD86と結合するCTLA-4はグリコシル化特異的であることを示す図である。緑色蛍光標識されたCD86-FcとCTLA-4との間の動的相互作用の経時的顕微鏡検査および定量。(A)経時的顕微鏡画像(20時間の時点)は、CTLA-4と野生型CLTA-4およびCLTA-4 2NQ突然変異体(非グリコシル化の形態)発現293T細胞との間の最終時点における相互作用を示す。CTLA-4WT(A)または2NQ CTLA-4突然変異体(B)発現細胞の緑色蛍光(緑色蛍光標識されたCTLA-4/Fcタンパク質)統合画像(20×)を示す。
【
図2-2】(
図2C)CD86と結合するCTLA-4はグリコシル化特異的であることを示す図である。緑色蛍光標識されたCD86-FcとCTLA-4との間の動的相互作用の経時的顕微鏡検査および定量。(C)グラフは、CLTA-4WTまたはCTLA-4 2NQ発現HEK293T細胞に対するCTLA-4/Fcタンパク質の各時点における定量的結合を示す。
【
図3-1】(
図3A)グリコシル化CTLA4に対して特異的なモノクロナール抗体の開発を示す図である。精製されたCTLA4、またはPNGaseF処理後のCTLA4を使用するCTLA4抗体のドットブロット分析。(A)STC1807およびSTC1810を含む、いくつかの抗体のグリコ特異的結合活性を図示するドットブロットメンブレン。
【
図3-2】(
図3B)グリコシル化CTLA4に対して特異的なモノクロナール抗体の開発を示す図である。精製されたCTLA4、またはPNGaseF処理後のCTLA4を使用するCTLA4抗体のドットブロット分析。(B)対応する96ウェルドットブロットアッセイプレートのサンプルレイアウト。
【
図4】抗glycCTLA-4-1抗体の中和活性を示す図である。時間経過に伴う、CTLA-4を発現する細胞へのCD86-Fcタンパク質の結合をブロックする65個の精製されたモノクロナール抗体の活性。10μg/mLの抗体を使用した。
【
図5】Octetにより分析した抗CTLA4抗体のセンサーグラムを示す図である。ハイスループットK
Dスクリーニングから得られたデータの要約。会合速度および解離速度を抽出するために、データを1:1結合モデルに当て嵌めた。kd:kaの比を使用してKDを計算した。グラフは、時間に対する応答を示し、相互作用の進行を表す。
【
図6】野生型および突然変異体CTLA-4タンパク質を発現する293T細胞に対するSTC1807および対照抗体の結合性分析を示す図である。A.フラッグタグ化された野生型および突然変異体CTLA-4タンパク質を発現する293T細胞、ならびに対照293T細胞に対する抗glycCTLA-4抗体STC1807の結合性。STC1807は、N113グリコシル化を認識したが、しかしN145および2NQのいずれも認識しなかった。CTLA-4(配列番号1)の113位においてNがQに置換されたN113、145位においてNがQに置換されたN145、ならびに113位および145位のそれぞれにおいてNがQに置換された2NQ、または対照293T細胞。アンチフラッグをローディング対照として示す。
【
図7-1】(
図7A及び
図7B)抗glycCTLA-4抗体STC1807の中和活性およびEC
50を示す図である。(A)抗体濃度別に示す、CTLA-4を発現する細胞に対するCD86-Fcタンパク質の結合をブロックするSTC1807の活性。(B)STC1807濃度の関数として表す、CTLA-4-CD86結合阻害。EC
50は、2.189μg/mlである。
【
図7-2】(
図7C及び
図7D)抗glycCTLA-4抗体STC1807の中和活性およびEC
50を示す図である。(C)抗体濃度別に示す、CTLA-4を発現する細胞に対するCD86-Fcタンパク質の結合をブロックするSTC1808の活性。(D)抗体濃度別に示す、CTLA-4を発現する細胞に対するCD86-Fcタンパク質の結合をブロックするSTC1813の活性。
【
図8-1】(
図8A及び
図8B)抗glycCTLA-4抗体hSTC1807およびFDA承認済み抗CTLA4イピリムマブの中和活性およびEC
50を示す図である。(A)抗体濃度別に示す、CTLA-4を発現する細胞へのCD86-Fcタンパク質の結合をブロックするヒトキメラSTC1807(hSTC1807)の活性。(B)STC1807濃度の関数として表すCTLA-4-CD86結合阻害。EC
50は0.3313μg/mlである。
【
図8-2】(
図8C及び
図8D)抗glycCTLA-4抗体hSTC1807およびFDA承認済み抗CTLA4イピリムマブの中和活性およびEC
50を示す図である。(C)抗体濃度別に示す、CTLA-4を発現する細胞へのCD86-Fcタンパク質の結合をブロックするイピリムマブの活性。(D)イピリムマブ濃度の関数として表すCTLA-4-CD86結合阻害。EC
50は0.3068μg/mlである。
【
図9】(
図9Aおよび
図9B)イピリムマブとSTC1807との間の異なる結合部位を示す図である。エピトープビンニング実験により、STC1807とイピリムマブとの間の競合的結合を評価した。第2抗体がさらに結合すれば、未占有エピトープ(非競合物)が示唆され、また結合しなければ、エピトープのブロッキング(競合物)が示唆される。(A)STC1807のローディング。(B)イピリムマブのローディング
【
図10】(
図10Aおよび
図10B)STC1807の結合親和性は、イピリムマブと比較してそれより増加していることを示す図である。Biacore結合アッセイ法を使用した、イピリムマブとSTC1807との結合親和性比較(平衡解離定数[KD]値は減少)。グラフは時間に対する応答を表し、(A)STC1807(KD 0.47nM)、および(B)イピリムマブ(KD 13.4nM)について相互作用の進行を示す。
【
図11】(
図11Aおよび
図11B)STC1807存在下でのIFN-γおよびIL-2の分泌量増加を示す図である。スティミュレーター細胞(DC、樹状細胞)に応答する、hSTC1807のT細胞増殖(T)に対する効果。グラフは、STC1807および対照マウスIgG存在下でのIFN-γ(A)およびIL-2(B)サイトカインレベルを表す。サイトカインを、5日目に、ELISAにより、上清において定量した。
【発明を実施するための形態】
【0029】
N-グリコシル化は、細胞質内網状構造(ER)において開始され、その後ゴルジ内で処理される翻訳後修飾である(Schwarz & Aebi, Current Opinion in Structural Biology 21, 576-582(2011))。この種の修飾は、オリゴ糖から構成される事前成形されたグリカンを、NXTモチーフ(-Asn-X-Ser/Thr-)内に位置するアスパラギン(Asn)側鎖受容体に転移する膜結合性オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)複合体により最初に触媒される(Cheung and Reithmeier, Methods 41(4): 451-59 (2007)、Helenius and Aebi, Science 291 (5512): 2364-69 (2001))。事前成形されたグリカンに対する糖の付加またはそれからの除去は、細胞依存性および場所依存性の様式でNグリコシル化カスケードを厳密に制御するグリコトランスフェラーゼおよびグリコシダーゼの群によりそれぞれ媒介される。
【0030】
CTLA-4とCD86およびCD80との間の細胞外相互作用は、腫瘍関連の免疫逃避に対して顕著な影響を有する。CTLA-4のN-結合型グリコシル化は、CD80および/またはCD86に対するその結合を強化することができ、T細胞媒介式の免疫応答の抑制を引き起こす。したがって、抗CTLA-4抗体は、より一般的なCTLA-4抗体と比較して、それよりも強化された阻害効果を発揮することができる。
【0031】
本明細書で使用される場合、および別途規定されない限り、用語「細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4」、または「CTLA-4」とは、哺乳動物、例えば霊長類(例えば、ヒト、カニクイザル(cyno))、イヌ、および齧歯類(例えば、マウスおよびラット)等を含む、任意の脊椎動物起源のCTLA-4を指す。別途規定されない限り、CTLA-4には、そのSNPバリアント、ならびにリン酸化CTLA-4、グリコシル化CTLA-4、およびユビキチン化CTLA-4を含む、ただしこれらに限定されないCTLA-4の修飾された異なる形態を含む、様々なCTLA-4アイソフォーム、関連するCTLA-4ポリペプチドも含まれる。
【0032】
ヒトCTLA-4の代表的なアミノ酸配列が下記に提示され、N-結合型グリコシル化に関する部位を下線付きの太字で表す(N113およびN145):
【0033】
【0034】
下記の表1に示すように、両方のNグリコシル化部位は、CTLA-4の細胞外ドメインに位置する。
【0035】
【0036】
特定のCTLA-4アイソフォームまたはバリアントの特異的グリコシル化部位は、当該特定のCTLA-4アイソフォームまたはバリアントの113位または145位に位置するアミノ酸とは異なる可能性もある。
【0037】
そのような状況では、当業者は、特定のCTLA-4アイソフォームまたはバリアントのいずれについても、上記例示のヒトCTLA-4のN113およびN145に対応するグリコシル化部位を、配列アラインメントおよび当技術分野におけるその他の一般的な知識に基づき決定することができる。したがって、非グリコシル化CTLA-4アイソフォームまたはバリアントと比較して、CTLA-4アイソフォームまたはバリアントのグリコシル化された形態と選択的に結合する抗体も本明細書に提示される。CTLA-4アイソフォームまたはバリアントのグリコシル化される部位は、上記で提示したようなヒトCTLA-4配列のN113およびN145の対応する部位であり得る。上記で提示したような代表的ヒトCTLA-4配列のN113位またはN145位に対応する少なくとも1つのアミノ酸を含むCTLA-4アイソフォームまたはバリアントの少なくとも7個の(例えば、少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個、またはそれを上回る)連続したアミノ酸からなる断片を含むポリペプチドも、本明細書に提示される。
【0038】
本明細書で使用される場合、および別途規定されない限り、冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」とは、該冠詞の文法的目的語の1つまたは複数を指す。例として、抗体(an antibody)とは、1つの抗体または複数の抗体を指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、および別途規定されない限り、用語「または」は、代替語のみを指す、または代替語が相互排他的であると明示的に示唆されない限り、「および/または」と交換可能に使用される。本明細書で使用される場合、および別途規定されない限り、「別の(another)」とは、少なくとも2番目またはそれ以降を指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、および別途規定されない限り、用語「約」は、数値が、該数値を決定するために採用されたデバイス、方法における固有の誤差変動、または試験対象に存在する変動を含むことを示唆する。
【0041】
本明細書で使用される場合、および別途規定されない限り、用語「抗体」とは、免疫グロブリン(または「Ig」)クラスのポリペプチドに該当するB細胞のポリペプチド産物であって、特異的分子抗原と結合することができるポリペプチド産物、例えばIgG、IgM、IgA、IgD、IgE等、ならびにその抗原結合断片を有するその他の分子を指す。抗体は、2つの同一のポリペプチド鎖の対から構成され得るが、各対は、1本の重鎖(約50~70kDa)および1本の軽鎖(約25kDa)を有し、そして各鎖の各アミノ末端部分は、約100~約130個、またはそれを上回るアミノ酸からなる可変領域を含み、また各鎖の各カルボキシ末端部分は定常領域を含む(Borrebaeck (ed.) (1995) Antibodies Engineering, Second Edition, Oxford University Press.; Kuby (1997) Immunology, Third Edition, W.H. Freeman and Company, New Yorkを参照)。ここでは、特異的分子抗原としてグリコシル化ヒトCTLA-4が挙げられる。本明細書に提示される抗体として、ポリクロナール抗体、モノクロナール抗体、合成抗体、組換え生成抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、キメラ抗体、イントラボディ、抗イディオタイプ(抗Id)抗体が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。
【0042】
本明細書で使用される場合、および別途規定されない限り、抗体、抗原結合断片、またはポリヌクレオチドと関連して使用されるとき、用語「単離された」とは、引用された分子は、自然界で見出される少なくとも1つのコンポーネントを含まないことを意味する。該用語は、その自然環境において見出されるようなその他のコンポーネントの一部または全部が除去されている抗体、抗原結合断片、またはポリヌクレオチドを含む。抗体の自然環境のコンポーネントとして、例えば赤血球、白血球、血小板、血漿、タンパク質、核酸、塩、および栄養分が挙げられる。抗原結合断片またはポリヌクレオチドの自然環境のコンポーネントとして、例えば脂質膜、細胞オルガネラ、タンパク質、核酸、塩、および栄養分が挙げられる。本発明の抗体、抗原結合断片、またはポリヌクレオチドは、それが単離または組換え生成された細胞のそのようなコンポーネントまたは任意のその他のコンポーネントのすべてを含まず、または詰まるところ実質的に含まない場合もある。
【0043】
本明細書で使用される場合、および別途規定されない限り、用語「モノクロナール抗体」とは、単一細胞クローン、またはハイブリドーマ、または単一細胞に由来する細胞集団の産物である抗体を指す。モノクロナール抗体は、単分子免疫グロブリン種を生成する免疫グロブリン遺伝子をコードする重鎖および軽鎖から、組換え方法により生成される抗体を指すようにも意図される。モノクロナール抗体調製物内の抗体に対するアミノ酸配列は、実質的に均質であり、またそのような調製物内の抗体の結合活性は、実質的に同一の抗原結合活性を示す。対照的に、ポリクロナール抗体はある集団内の異なるB細胞から得られ、ある特異抗原に結合する複数の免疫グロブリン分子の組合せである。ポリクロナール抗体の各免疫グロブリンは、同一抗原の異なるエピトープと結合することができる。モノクロナール抗体およびポリクロナール抗体の両方を生成する方法は、当技術分野において周知されている(Harlow and Lane., Antibody: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989) and Borrebaeck (ed.), Antibody Engineering: A Practical Guide, W.H. Freeman and Co., Publishers, New York, pp. 103-120 (1991))。
【0044】
本明細書で使用される場合、および別途規定されない限り、用語「ヒト抗体」とは、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に対応するヒト可変領域および/またはヒト定常領域、またはその一部分を有する抗体を指す。そのようなヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列は、Kabat et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242に記載されている。ここでは、ヒト抗体は、グリコシル化ヒトCTLA-4と結合し、かつヒト生殖細胞系免疫グロブリン核酸配列の天然に存在する体細胞バリアントである核酸配列によりコードされる抗体を含み得る。
【0045】
本明細書で使用される場合、および別途規定されない限り、用語「キメラ抗体」とは、所望の生物学的活性を示す限り、重鎖および/または軽鎖の一部分が、特定の種に由来する、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一または相同である一方、鎖(複数可)の残りの部分は、別の種に由来する、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体、ならびにそのような抗体の断片内の対応する配列と同一またはと相同である抗体を指す(米国特許第4,816,567号明細書;およびMorrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984)を参照)。
【0046】
本明細書で使用される場合、および別途規定されない限り、用語「ヒト化抗体」とは、天然の相補性決定領域(「CDR」)残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有する、ヒト以外の種、例えばマウス、ラット、ウサギ、またはヒト以外の霊長類等の対応するCDR(例えば、ドナー抗体)に由来する残基に置き換わっているヒト免疫グロブリン(例えば、レシピエント抗体)を含むキメラ抗体を指す。一部の事例では、ヒト免疫グロブリンの1つまたは複数のFR領域残基が、対応するヒト以外の残基に置き換わっている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体に見出されない残基を有し得る。これらの改変は、抗体の性能をさらに精緻化するためになされる。ヒト化抗体の重鎖または軽鎖は、CDRのすべてまたは実質的にすべてがヒト以外の免疫グロブリンのCDRに対応し、およびFRのすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリン配列のものである、少なくとも1つまたはそれより多くの可変領域の実質的にすべてを有し得る。ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)、一般的にヒト免疫グロブリンのFcの少なくとも一部分を有し得る。さらなる詳細については、Jones et al., Nature, 321:522-525 (1986)、Riechmann et al., Nature, 332:323-329 (1988)、およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol., 2:593-596 (1992)、Carter et al., Proc. Natl. Acd. Sci. U.S. 89:4285-4289 (1992)、ならびに米国特許第6,800,738号明細書、同第6,719,971号明細書、同第6,639,055号明細書、同第6,407,213号明細書、および同第6,054,297号明細書を参照。
【0047】
本明細書で使用される場合、および別途規定されない限り、用語「組換え抗体」とは、組換え手段により調製、発現、創出、または単離される抗体を指す。組換え抗体は、宿主細胞中にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現される抗体、組換え、コンビナトリアル抗体ライブラリーから単離された抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックおよび/またはトランスクロモソマルである動物(例えば、マウスまたはウシ)から単離された抗体(例えば、Taylor, L. D. et al., Nucl. Acids Res. 20:6287-6295(1992)を参照)、または免疫グロブリン遺伝子配列を他のDNA配列にスプライシングすることと関係する、任意のその他の手段により調製、発現、創出、または単離される抗体であり得る。そのような組換え抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来するものを含む、可変および定常領域を有し得る(Kabat, E. A. et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242を参照)。組換え抗体には、in vitroでの突然変異誘発(または、ヒトIg配列についてトランスジェニックな動物が使用されるときには、in vivoでの体細胞突然変異誘発)を施すことも可能であり、したがって組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系VHおよびVL配列に由来しそれと関連するものの、in vivoにおいて、ヒト抗体生殖細胞系レパートリー内では自然に存在しない配列であり得る。
【0048】
本明細書で使用される場合、および別途規定されない限り、用語「抗原結合断片」および類似した用語は、抗原と免疫特異的に結合し、ならびに抗原に対するその特異性および親和性を抗体に付与するアミノ酸残基を含む抗体の一部分を指す。抗原結合断片は、抗体の機能的断片と呼ばれる場合もある。抗原結合断片は、1価、2価、または多価であり得る。
【0049】
抗原結合断片を有する分子として、例えば、Fd、Fv、Fab、F(ab’)、F(ab)2、F(ab’)2、F(ab)3、F(ab’)3、単鎖Fv(scFv)、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、または単一ドメイン抗体が挙げられる。scFvは、1価のscFv、または2価のscFvであり得る。抗原結合断片を有するその他の分子として、例えば重鎖または軽鎖ポリペプチド、可変領域ポリペプチドもしくはCDRポリペプチド、またはそのような抗原結合断片が結合活性を保持する限りその一部分を挙げることができる。そのような抗原結合断片は、例えばHarlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York (1989)、Myers (ed.), Molec. Biology and Biotechnology: A Comprehensive Desk Reference, New York: VCH Publisher, Inc.、Huston et al., Cell Biophysics, 22:189-224 (1993)、Pluckthun and Skerra, Meth. Enzymol., 178:497-515 (1989)、およびDay, E.D., Advanced Immunochemistry, Second Ed., Wiley-Liss, Inc., New York, NY (1990)に記載されていることが見出され得る。抗原結合断片は、少なくとも5個の連続したアミノ酸残基、少なくとも10個の連続したアミノ酸残基、少なくとも15個の連続したアミノ酸残基、少なくとも20個の連続したアミノ酸残基、少なくとも25個の連続したアミノ酸残基、少なくとも40個の連続したアミノ酸残基、少なくとも50個の連続したアミノ酸残基、少なくとも60個の連続したアミノ残基、少なくとも70個の連続したアミノ酸残基、少なくとも80個の連続したアミノ酸残基、少なくとも90個の連続したアミノ酸残基、少なくとも100個の連続したアミノ酸残基、少なくとも125個の連続したアミノ酸残基、少なくとも150個の連続したアミノ酸残基、少なくとも175個の連続したアミノ酸残基、少なくとも200個の連続したアミノ酸残基、または少なくとも250個の連続したアミノ酸残基からなるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり得る。
【0050】
抗体の重鎖とは、アミノ末端部分が約120~130個またはそれを上回るアミノ酸からなる可変領域を含み、およびカルボキシ末端部分が定常領域を含む、約50~70kDaのポリペプチド鎖を指す。定常領域は、重鎖定常領域のアミノ酸配列に基づき、アルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)、およびミュー(μ)と呼ばれる5つの異なるタイプの1つであり得る。異なる重鎖はサイズにおいて異なり:α、δ、およびγはおよそ450個のアミノ酸を含有する一方、μおよびεはおよそ550個のアミノ酸を含有する。軽鎖と組み合わせたとき、これらの異なる種類の重鎖から、周知されている5クラスの抗体、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが、IgGの4つのサブクラス、すなわちIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含め、それぞれ生ずる。重鎖はヒト重鎖であり得る。
【0051】
抗体の軽鎖とは、アミノ末端部分が約100~約110個またはそれを上回るアミノ酸からなる可変領域を含み、およびカルボキシ末端部分が定常領域を含む、約25kDaのポリペプチド鎖を指す。軽鎖の近似的な長さは、アミノ酸211~217個である。定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)またはラムダ(λ)と呼ばれる2つ異なるタイプが存在する。軽鎖アミノ酸配列は当技術分野において周知されている。軽鎖はヒト軽鎖であり得る。
【0052】
抗体の可変ドメイン、または可変領域とは、軽鎖または重鎖のアミノ末端に一般的に位置し、そして重鎖においてアミノ酸約120~130個分、および軽鎖においてアミノ酸約100~110個分の長さを有し、また特定の抗体のそれぞれがその特定抗原に対する結合性および特異性において使用される軽鎖または重鎖抗体の一部分を指す。可変ドメインは、配列において、抗体が異なればその間で幅広く異なる。配列の変動性はCDRにおいて濃縮されている一方、可変ドメイン内のそれほど可変的でない部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。軽鎖および重鎖のCDRは、抗体と抗原との相互作用に主に関与する。本明細書で使用されるアミノ酸位置のナンバリングは、Kabat et al. (1991) Sequences of proteins of immunological interest(米国保健福祉省、Washington,D.C.)第5版に記載されているEUインデックスに基づく。可変領域はヒト可変領域であり得る。
【0053】
CDRとは、免疫グロブリン(Igまたは抗体)VHβシートフレームワークの非フレームワーク領域内にある3つの高度可変領域(H1、H2、またはH3)の1つ、または抗体VLβシートフレームワークの非フレームワーク領域内にある3つの高度可変領域(L1、L2、またはL3)の1つを指す。したがって、CDRは、フレームワーク領域配列内に点在する可変領域配列である。CDR領域は当業者に周知されており、また例えばKabatにより、抗体可変ドメイン内の超可変性が最も高い領域として定義されている(Kabat et al., J. Biol. Chem. 252:6609-6616 (1977)、Kabat, Adv. Prot. Chem. 32:1-75 (1978))。CDR領域配列は、Chothiaにより、保存されたβシートフレームワークの部分ではない、したがって異なる立体構造を採ることができる残基としても構造的に定義されている(Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。両専門用語は、当技術分野において十分に認識されている。カノニカル抗体可変ドメイン内のCDRの位置は、非常に多くの構造の比較により決定されている(Al-Lazikani et al., J. Mol. Biol. 273:927-948 (1997); Morea et al., Methods 20:267-279 (2000))。高度可変領域内の残基数は抗体が異なれば変化するので、カノニカル位置と比較して追加の残基は、カノニカル可変ドメインナンバリングスキーム内の残基番号の次にa、b、c(以下同様)を付して慣習的に番号付けがなされる(Al-Lazikani et al.、前出(1997))。そのような命名法は、同様に当業者に周知されている。
【0054】
汎用のナンバリングシステムが開発され、幅広く採用されている。ImMunoGeneTics(IMGT) Information System(登録商標)(Lafranc et al., 2003, Dev. Comp. Immunol., 27(1):55-77)。IMGTは、ヒトおよびその他の脊椎動物の免疫グロブリン(Ig)、T細胞受容体(TR)、および主要組織適合複合体(MHC)に特化した統合型情報システムである。本明細書において、CDRと呼ぶ場合、それは軽鎖または重鎖内のアミノ酸配列および場所の両方に関する。免疫グロブリンVドメイン構造内のCDRの「場所」は種間で保存されており、またループと呼ばれる構造内に存在するので、構造的特徴に基づき、可変ドメイン配列をアライメントするナンバリングシステムを使用することにより、CDRおよびフレームワーク残基は容易に特定される。この情報は、1つの種の免疫グロブリンに由来するCDR残基を、一般的にはヒト抗体に由来するアクセプターフレームワーク中にグラフティングしたり、またそれと置換したりする際に使用可能である。追加のナンバリングシステム(AHon)が、Honegger et al., 2001, J. Mol. Biol., 309: 657-670により開発された。例えば、KabatのナンバリングシステムおよびIMGT固有ナンバリングシステムを含むナンバリングシステム間の対応は、当業者に周知されている(例えば、Kabat, Id; Chothia et al., Id.、Martin, 2010, Antibody Engineering, Vol. 2, Chapter 3, Springer Verlag、および Lefranc et al., 1999, Nuc. Acids Res., 27:209-212を参照)。
【0055】
CDR領域の配列は、AbM法およびContact法によっても定義されている。AbM高度可変領域は、KabatのCDRとChothiaの構造的ループの間の妥協案を代表し、Oxford Molecular’s AbMモデリングソフトウェアにより使用されている(例えば、Martin, 2010, Antibody Engineering, Vol. 2, Chapter 3, Springer Verlagを参照)。「contact」の高度可変領域は、入手可能な複合体結晶構造の分析に基づく。これらの高度可変領域またはCDRのそれぞれに由来する残基を以下に記載する。
【0056】
CDR領域配列の代表的表現を下記の表2において例証する。カノニカル抗体可変領域内のCDRの位置は、非常に多くの構造の比較により決定されている(Al-Lazikani et al., 1997, J. Mol. Biol., 273:927-948)、Morea et al., 2000, Methods, 20:267-279)。高度可変領域内の残基数は抗体が異なれば変化するので、カノニカル位置と比較して追加の残基は、カノニカル可変領域ナンバリングスキーム内の残基番号の次にa、b、c(以下同様)を付して慣習的に番号付けがなされる(Al-Lazikani et al.、前出(1997))。そのような命名法は、同様に当業者に周知されている。
【0057】
【0058】
1つまたは複数のCDRは、それをイムノアドヘシンとするために、ある分子中に共有結合的または非共有結合的に組み込むことも可能である。イムノアドヘシンは、より大型のポリペプチド鎖の一部としてCDR(複数可)を組み込むことができ、CDR(複数可)を別のポリペプチド鎖に対して共有結合的にリンクさせることができ、またはCDR(複数可)を非共有結合的に組み込むことができる。CDRは、イムノアドヘシンが目的とする特定の抗原と結合するのを可能にする。
【0059】
本明細書で使用される場合、および別途規定されない限り、用語「結合する」または「結合すること」とは、分子間相互作用を指す。相互作用は、例えば水素結合、イオン結合、疎水的相互作用、および/またはファンデルワールス相互作用を含む、非共有結合性の相互作用であり得る。抗体と、標的分子、例えばグリコシル化ヒトCTLA-4等の単一エピトープとの間の全非共有結合性相互作用の強度は、当該エピトープに対する抗体の親和性である。「結合親和性」とは、分子(例えば結合タンパク質、例えば抗体等)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば抗原)との間で生ずる非共有結合性相互作用を合計した強度を一般的に指す。
【0060】
結合分子X、例えば抗体等の、その結合パートナーY、例えば抗体の同種抗原等に対する親和性は、解離定数(Kd)または平衡解離定数(KD)により一般的に表すことができる。低親和性抗体は、一般的にゆっくりと抗原に結合し、また容易に解離する傾向を有する一方、高親和性抗体は、一般的により迅速に抗原に結合し、またより長時間結合した状態を保持する傾向を有する。結合親和性を測定する様々な方法が当技術分野において公知であり、そのいずれかが本開示の目的に使用可能である。「KD」または「KD値」は、当技術分野において公知のアッセイにより、例えば結合アッセイにより測定可能である。KDは、例えば目的とする抗体のFab形態(version)とその抗原を用いて実施される放射標識抗原結合アッセイ(RIA)において測定可能である(Chen, et al., (1999) J. Mol. Biol. 293:865-881)。KDまたはKD値は、例えば、BIAcoreTM-2000またはBIAcoreTM-3000(BIAcore,Inc.社、Piscataway、NJ)を使用する、Biacore社製の表面プラズモン共鳴アッセイを使用することによって、または例えば、OctetQK384システム(ForteBio社、Menlo Park、CA)を使用するバイオレイヤー干渉法によっても測定可能である。本明細書で使用される場合、および別途規定されない限り、抗体が、第1の分子抗原に対して、第2の分子抗原よりも高い親和性をもって結合する場合には、抗体は、第2の分子抗原と比較して第1の分子抗原に「選択的に結合する」ことができると言われる。抗体は全く無関係の抗原と一般的に結合しない。
【0061】
本明細書で使用される場合、および別途規定されない限り、用語「ポリペプチド」には、本明細書で使用される場合、2~30個の間のアミノ酸(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、25、または30個のアミノ酸)、ならびにより長いアミノ酸鎖、例えば30個を超えるアミノ酸、50個を超えるアミノ酸、100個を超えるアミノ酸、150個を超えるアミノ酸、200個を超えるアミノ酸、300個を超えるアミノ酸、400個を超えるアミノ酸、500個を超えるアミノ酸、または600個を超えるアミノ酸を有するオリゴペプチドが含まれる。ポリペプチドは、例えば、組換え発現または化学合成により生成可能である。本開示のポリペプチドは、翻訳後修飾または化学修飾され得る(例えば、グリコシル化、カルバミル化、リン酸化、ビオチン化、蛍光色素の連結等)。ポリペプチドは、特定部位においてグリコシル化され得る。ポリペプチドは、天然の遺伝子コードによりコードされない非天然アミノ酸を含み得る。例えば、ポリペプチドは、メチル化骨格構造、ペプトイド骨格構造(ポリ-N置換型グリシン)、L-アミノ酸、R-アミノ酸等を含み得る。ポリペプチドは、野生型配列、天然に存在するバリアント配列、突然変異配列(例えば、点突然変異体、欠失突然変異体)等を有し得る。
【0062】
抗glycCTLA-4抗体
非グリコシル化CTLA-4と比較して、グリコシル化CTLA-4と選択的に結合する、単離された抗体が本明細書に提示される。CTLA-4はヒトCTLA-4であり得る。グリコシル化CTLA-4は、CTLA-4の特定のN-グリカン構造、またはCTLA-4のグリコペプチドであり得る。一部の実施形態では、本明細書に提示される抗体は、非グリコシル化CTLA-4と比較してグリコシル化CTLA-4と選択的に結合する抗原結合断片である。
【0063】
一部の実施形態では、本明細書に提示される単離された抗体は、非グリコシル化CTLA-4と比較して、N113、N145、またはN113およびN145においてグリコシル化されたヒトCTLA-4と選択的に結合する。一部の実施形態では、単離された抗体は、N113グリコシル化を有するヒトCTLA-4と選択的に結合する。一部の実施形態では、単離された抗体は、N145グリコシル化を有するヒトCTLA-4と選択的に結合する。一部の実施形態では、単離された抗体は、N113およびN145グリコシル化を有するヒトCTLA-4と選択的に結合する。
【0064】
ある特定の態様では、抗glycCTLA-4抗体は、エフェクターT細胞により発現されるグリコシル化CTLA-4と抗原提示細胞により発現されるCD86またはCD80との相互作用を阻害する。ある特定の態様では、抗glycCTLA-4抗体は、CTLA-4と結合し、そして1つまたは複数のグリコシル化モチーフをマスクまたは遮蔽して、当該モチーフを有する分子の結合、またはその他の相互作用をブロックし、そして当該グリコシル化部位におけるCTLA-4のグリコシル化をブロックすることができる。特殊な実施形態では、抗glycCTLA-4抗体は、N113およびN145のうちの1つまたは複数においてグリコシル化部位をマスクする。
【0065】
一部の実施形態では、CTLA-4の1つまたは複数のグリコシル化モチーフと選択的に結合する抗体が本明細書に提示される。一部の実施形態では、抗体は、グリコシル化モチーフおよび隣接ペプチドを有するグリコペプチドと選択的に結合する。一部の実施形態では、抗体は、非グリコシル化PD-1に対して示されるKdの少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%より小さいKdで、グリコシル化CTLA-4と選択的に結合する。ある特定の実施形態では、抗原結合断片は、非グリコシル化CTLA-4に対して示されるKdの50%未満のKdで、グリコシル化CTLA-4と結合する。一部の実施形態では、抗体は、非グリコシル化CTLA-4に対して示されるKdの1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、30%、40%、50%よりも小さいKdで、グリコシル化CTLA-4と結合する。さらなる態様では、抗体は、非グリコシル化CTLA-4に対して示されるKdの10分の1以下のKdでグリコシル化CTLA-4と結合する。
【0066】
本明細書に記載されるグリコシル化CTLA-4、特にSTC1807に優先的に結合するモノクロナール抗体が提示される。STC1807のヒト化およびキメラ形態、ならびにSTC1807に対する結合において競合する抗体も提示される。STC1807の重鎖および軽鎖可変ドメインが下記の表3に提示される。
【0067】
特別な態様では、配列番号3および5のアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖可変ドメイン(シグナル配列を一切含まない成熟したVHおよびVL領域アミノ酸配列)をそれぞれ有する抗glycCTLA-4モノクロナール抗体STC1807およびその抗原結合部分、ならびにそのヒト化およびキメラ形態が提示される。CTLA-4に対する結合について、STC1807MAbと競合し、および/またはSTC1807と同一のエピトープと結合する抗glycCTLA-4抗体が本明細書に提示される。
【0068】
STC1807mAbの重鎖および軽鎖可変(V)ドメインについて、そのモノクロナールな核酸(DNA)および対応するアミノ酸配列が提示され、下記の表3に示す。配列番号2および3は、STC1807VHドメインのヌクレオチドおよびアミノ酸配列であり、ならびに配列番号4および5は、STC1807カッパVLドメインの成熟形態のヌクレオチドおよびアミノ酸配列である。表4は、STC1807のChothia、AbM、Kabat、およびCotactの重鎖および軽鎖VドメインCDRを提示する。
【0069】
一実施形態では、グリコシル化CTLA-4に特異的かつ優先的に結合する抗glycCTLA-4抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を有するVHドメイン、および/または配列番号5のアミノ酸配列を有するVLドメインを含む。一実施形態では、抗glycCTLA-4抗体は、グリコシル化CTLA-4に対する特異的結合について、配列番号3のVHドメインおよび配列番号5のVLドメインを含む抗体と競合する。その他の実施形態では、抗glycCTLA-4抗体は、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一であるVHドメイン、および/または配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一であるVLドメインを含む。これらの抗glycCTLA-4抗体はキメラ抗体であり得るが、また例えばヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4由来のヒト定常ドメインを含み得る。
【0070】
一実施形態では、グリコシル化CTLA-4に特異的かつ優先的に結合する抗glycCTLA-4抗体は、配列番号6、配列番号7、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有するChothiaのCDR1~3を含み;配列番号9、配列番号10、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有するAbMのCDR1~3を含み;配列番号11、配列番号12、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有するKabatのCDR1~3を含み;または配列番号13、配列番号14、および配列番号15のアミノ酸配列をそれぞれ有するContactのCDR1~3を含む、またはその組合せを含むVHドメインを含む。一実施形態では、抗glycCTLA-4抗体は、グリコシル化CTLA-4に対する特異的結合について、配列番号6、配列番号7、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有するChothiaのCDR1~3を含み;配列番号9、配列番号10、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有するAbMのCDR1~3を含み;配列番号11、配列番号12、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有するKabatのCDR1~3を含み;または配列番号13、配列番号14、および配列番号15のアミノ酸配列をそれぞれ有するContactのCDR1~3を含む、またはその組合せを含むVHドメインを含む抗体と競合する。一実施形態では、グリコシル化CTLA-4に特異的かつ優先的に結合する抗glycCTLA-4抗体は、配列番号16、配列番号17、および配列番号18のアミノ酸配列をそれぞれ有するChothia、AbM、またはKabatのCDR1~3を含み;または配列番号19、配列番号20、および配列番号21のアミノ酸配列をそれぞれ有するContactのCDR1~3を含む、またはその組合せを含むVLドメインを含む。一実施形態では、抗glycCTLA-4抗体は、グリコシル化CTLA-4に対する特異的結合について、配列番号16、配列番号17、および配列番号18のアミノ酸配列をそれぞれ有するChothia、AbM、またはKabatのCDR1~3を含み;または配列番号19、配列番号20、および配列番号21のアミノ酸配列をそれぞれ有するContactのCDR1~3を含む、またはその組合せを含むVLドメインを含む抗体と競合する。一実施形態では、抗glycCTLA-4抗体は、配列番号6、配列番号7、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有するChothiaのCDR1~3を含み;配列番号9、配列番号10、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有するAbMのCDR1~3を含み;配列番号11、配列番号12、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有するKabatのCDR1~3を含み;または配列番号13、配列番号14、および配列番号15のアミノ酸配列をそれぞれ有するContactのCDR1~3を含むVHドメインを含み、かつ配列番号16、配列番号17、および配列番号18のアミノ酸配列をそれぞれ有するChothia、AbM、もしくはKabatのCDR1~3を含み;または配列番号19、配列番号20、および配列番号21のアミノ酸配列をそれぞれ有するContactのCDR1~3を含むVLドメインを含む抗体を含む、またはそれに対する結合について競合する。好ましくは、VHおよびVLドメインは、同一クラスのCDRを有し、すなわち両者は、Chothia、AbM、Kabat、またはContactのCDRを有する。
【0071】
その他の実施形態では、抗glycCTLA-4抗体は、配列番号6、配列番号7、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR、または配列番号9、配列番号10、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR、または配列番号11、配列番号12、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR、または配列番号13、配列番号14、および配列番号15のアミノ酸配列をそれぞれ有するCDRのうちの1、2、または3つにおいて、1、2、3、4個、または5個のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を有するCDR H1、H2およびH3を含むVHドメインを有する。抗glycCTLA-4抗体は、配列番号16、配列番号17、および配列番号18のアミノ酸配列をそれぞれ有する、または配列番号19、配列番号20、および配列番号21のアミノ酸配列をそれぞれ有するCDRのうち1、2、または3つのCDRにおいて、1、2、3、4個、または5個のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を有するCDR L1、L2およびL3を含むVLドメインを有し得る。抗glycCTLA-4抗体は、VHおよびVLドメインの両方について、CDR内にアミノ酸置換を有し得る。一部の実施形態では、アミノ酸置換は保存的置換である。
【0072】
好ましくは、上記抗体は、ヒトフレームワーク領域を有し、すなわちSTC1807のヒト化の形態であり、および任意選択で、例えばヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4由来のヒト定常ドメインを含む。
【0073】
1つまたは複数のアミノ酸置換は、結合親和性またはその他のパラメーターを改善するために、ヒト化抗体のCDRおよび/またはフレームワーク領域内になされ得るものと当業者により認識される。複数の実施形態では、抗glycCTLA-4抗体は、グリコシル化CTLA-4に対する特異的結合について、上記VHおよびVLドメイン、ならびにその中のCDRを含む抗体と競合する。複数の実施形態では、抗glycCTLA-4抗体は、非グリコシル化CTLA-4に対して示されるKdの半分より小さいKdでグリコシル化CTLA-4と結合する。複数の実施形態では、抗glycCTLA-4抗体は、非グリコシル化CTLA-4に対して示されるKdの半分より小さいKdでグリコシル化CTLA-4と結合する。一実施形態では、抗glycCTLA-4抗体は、該抗体が非グリコシル化CTLA-4と結合することにより示されるKdの5分の1以下のKdでグリコシル化CTLA-4タンパク質と結合する。一実施形態では、抗glycCTLA-4抗体は、該抗体が非グリコシル化CTLA-4タンパク質と結合することにより示されるKdの10分の1以下のKdでグリコシル化CTLA-4タンパク質と結合する。一実施形態では、セルフローサイトメトリー結合アッセイにおいて、抗体は、非グリコシル化CTLA-4を発現する細胞に対する結合についての1mm2当たりの緑色カウント体よりも3倍、5倍、10倍、20倍、または50倍大きい、WT CTLA-4を発現する細胞に対する1mm2当たりの緑色カウント体として表現される結合性を示す。一実施形態では、抗体は、蛍光標識またはマーカーにより直接的または間接的に検出可能である。一実施形態では、抗体は、蛍光標識またはマーカー、例えばFITC等を用いて直接標識される。一実施形態では、グリコシル化CTLA-4に対する、STC1807 MAb、またはその結合ドメイン、またはヒト化もしくはキメラ形態の結合親和性は、下限値および上限値を含め、0.1~13nMまたは0.1~5nMである。一実施形態では、抗体は、CTLA-4とCD86との相互作用を阻害し、特にエフェクターT細胞により発現されるグリコシル化CTLA-4と抗原提示細胞により発現されるCD86との相互作用を阻害する。一実施形態では、抗体は、CTLA-4とCD80との相互作用を阻害し、特にエフェクターT細胞により発現されるグリコシル化CTLA-4と抗原提示細胞により発現されるCD80との相互作用を阻害する。
【0074】
一実施形態では、抗体は、CD86とCTLA-4との相互作用を阻害し、特にエフェクターT細胞により発現されるグリコシル化CTLA-4と抗原提示細胞により発現されるCD86との相互作用を阻害する。一実施形態では、抗体は、CD80とCTLA-4との相互作用を阻害し、特にエフェクターT細胞により発現されるグリコシル化CTLA-4と抗原提示細胞により発現されるCD80との相互作用を阻害する。
【0075】
なおも別の実施形態は、配列番号2と少なくとも90~98%同一であるヌクレオチド配列を含む、抗glycCTLA-4VHドメイン、および/または配列番号4と少なくとも90~98%同一であるヌクレオチド配列を含む、抗glycCTLA-4抗体VLドメインをそれぞれコードする単離された核酸分子を提示する。複数の実施形態では、VHおよび/またはVLドメインをコードするヌクレオチド配列は、配列番号2または配列番号4と、それぞれ90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを上回り同一である。
【0076】
下記の表3は、STC1807の重鎖および軽鎖可変ドメインのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を提示する。
【0077】
【0078】
Chothia、AbM、Kabat、およびContactのCDRに基づくSTC1807抗体のCDR配列を、下記の表4に提示する。したがって、非グリコシル化CTLA-4と比較してグリコシル化CTLA-4に優先的に結合する、ヒトフレームワーク領域中にグラフト化された下記表4のCDRを含むSTC1807のヒト化形態が提示される。
【0079】
【0080】
一部の実施形態では、本明細書に提示される抗glycCTLA-4-1抗体は、IgG、IgM、IgA、IgD、またはIgEであり得る。抗glycCTLA-4-1抗体は、キメラ抗体、親和性成熟型抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体でもあり得る。抗glycCLTA-4抗体は、ラクダ化抗体、イントラボディ、抗イディオタイプ(抗Id)抗体でもあり得る。一部の実施形態では、抗glycCTLA-4抗体は、ポリクロナール抗体またはモノクロナール抗体であり得る。
【0081】
一部の実施形態では、本明細書に提示される抗体は、非グリコシル化CTLA-4と比較して、グリコシル化CTLA-4と選択的に結合する抗原結合断片である。抗原結合断片は、Fd、Fv、Fab、F(ab’)、F(ab)2、F(ab’)2、F(ab)3、F(ab’)3、単鎖Fv(scFv)、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、または単一ドメイン抗体であり得る。scFvは、1価scFv、または2価scFvであり得る。
【0082】
公知の手段により、また本明細書に記載されるように、ポリクロナールまたはモノクロナール抗体、抗原結合断片、および結合ドメイン、およびCDR(上記いずれかの改変された(engineered)形態を含む)は、グリコシル化CTLA-4、その各エピトープのうちの1つまたは複数、または上記いずれかのコンジュゲートに対して特異的であるように創出され得るが、ただしそのような抗原またはエピトープは、天然起源から単離されるか、または合成誘導体もしくは天然化合物のバリアントであるかを問わない。
【0083】
抗体は、鳥類および哺乳動物を含む、任意の動物起源から生成可能である。一部の実施形態では、抗体は、ヒツジ、ネズミ(例えば、マウスおよびラット)、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマ、またはニワトリである。それに加えて、より新しい技術により、ヒトコンビナトリアル抗体ライブラリーからのヒト抗体の開発およびそれに対するスクリーニングが可能になる。例えば、バクテリオファージ抗体発現技術により、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,946,546号明細書に記載されるように、動物を免疫化しなくても特異抗体を生成することが可能になる。これらの技術は、Marks et al., Bio/Technol., 10:779-783(1992)、Stemmer, Nature, 370:389-391(1994)、Gram et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:3576-3580 (1992)、Barbas et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91:3809-3813(1994)、およびSchier et al., Gene, 169(2):147-155(1996)にさらに記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0084】
様々な動物種においてポリクロナール抗体を生成するための、ならびにヒト化、キメラ、および完全にヒトのタイプを含む、様々なタイプのモノクロナール抗体を生成するための方法は、当技術分野において周知されている。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる下記の米国特許:米国特許第3,817,837号明細書;同第3,850,752号明細書;同第3,939,350号明細書;同第3,996,345号明細書;同第4,196,265号明細書;同第4,275,149号;同4,277,437号明細書;同第4,366,241号明細書;同第4,469,797号明細書;同第4,472,509号明細書;同第4,606,855号明細書;同第4,703,003号明細書;同第4,742,159号明細書;同第4,767,720号明細書;同第4,816,567号明細書;同第4,867,973号明細書;同第4,938,948号明細書;同第4,946,778号明細書;同第5,021,236号明細書;同第5,164,296号明細書;同第5,196,066号明細書;同第5,223,409号明細書;同第5,403,484号明細書;同第5,420,253号明細書;同第5,565,332号明細書;同第5,571,698号明細書;同第5,627,052号明細書;同第5,656,434号明細書;同第5,770,376号明細書;同第5,789,208号明細書;同第5,821,337号明細書;同第5,844,091号明細書;同第5,858,657号明細書;同第5,861,155号明細書;同第5,871,907号明細書;同第5,969,108号明細書;同第6,054,297号明細書;同第6,165,464号明細書;同第6,365,157号明細書;同第6,406,867号明細書;同第6,709,659号明細書;同第6,709,873号明細書;同第6,753,407号明細書;同第6,814,965号明細書;同第6,849,259号明細書;同第6,861,572号明細書;同第6,875,434号明細書;同第6,891,024号明細書;同第7,407,659;および同第8,178,098号明細書は、そのような方法の説明を可能にし、参照により本明細書に組み込まれる。
【0085】
一部の実施形態では、抗glycCTLA-4抗体は、モノクロナール抗体であり得る。一部の実施形態では、抗glycCTLA-4は、ポリクロナール抗体であり得る。グリコシル化CTLA-4ポリペプチドに対して特異的な抗体を産生するように、動物は、抗原、例えばグリコシル化CTLA-4ポリペプチド等でイノキュレーションされ得る。多くの場合、抗原は、免疫応答を強化するために、別の分子に結合またはコンジュゲートしている。コンジュゲートは、動物において免疫応答を誘発するのに使用される抗原に結合した任意のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、または非タンパク質物質であり得る。抗原イノキュレーションに応答して動物内で産生された抗体は、様々な個々の抗体産生Bリンパ球から作られた多様な非同一分子(ポリクロナール抗体)を有する。動物内ポリクロナール抗体産生にとって条件が適正であるならば、動物血清中のほとんどの抗体は、動物が免疫化された抗原化合物上の総合的なエピトープを認識する。
【0086】
この特異性は、目的とする抗原またはエピトープを認識する抗体のみを選択するアフィニティー精製によりさらに強化され得る。モノクロナール抗体(MAb)を生成する方法は、ポリクロナール抗体を調製するためのラインと同一のラインに沿って開始することができる。一部の実施形態では、齧歯類、例えばマウスおよびラット等が、モノクロナール抗体を生成する際に使用される。一部の実施形態では、ウサギ、ヒツジ、またはカエルの細胞が、モノクロナール抗体を生成する際に使用される。ラットの使用は周知されており、またある特定の長所を提供し得る。マウス(例えば、BALB/cマウス)がルーチン的に使用され、また一般的に高い割合(%)の安定した融合体をもたらす。
【0087】
ハイブリドーマ技術は、グリコシル化CTLA-4ポリペプチドでこれまでに免疫化したマウスに由来する単一のBリンパ球を、不死ミエローマ細胞(通常マウスミエローマ)と融合させることと関係する。この技術は、同一の抗原またはエピトープ特異性を有する、構造的に同一の抗体が(モノクロナール抗体)無制限量生成可能であるように、不定数の世代にわたり、単一の抗体産生細胞を繁殖させる方法を提供する。
【0088】
抗glycCTLA-4抗体は、ポリペプチドの生成に有用な、当技術分野において公知の任意の方法、例えばin vitro合成法、組換えDNA生成法等により生成可能である。ヒト化抗体は、組換えDNA技術により生成可能である。本明細書に記載される抗体は、組換え免疫グロブリン発現技術を使用して生成することも可能である。ヒト化抗体を含む、免疫グロブリン分子の組換え生成は、米国特許第4,816,397号明細書(Bossら)、同第6,331,415号明細書および同第4,816,567号明細書(いずれもCabillyら)、英国特許出願公開第2,188,638号明細書(Winterら)、および英国特許出願公開第2,209,757号明細書に記載されており、それらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ヒト化免疫グロブリンを含む免疫グロブリンを組換え発現するための技術は、Goeddel et al., Gene Expression Technology Methods in Enzymology Vol. 185 Academic Press (1991)、およびBorreback, Antibody Engineering, W. H. Freeman (1992)においても見出すことができ、それらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。組換え抗体の生成、設計、および発現に関する追加の情報は、Mayforth, Designing Antibodies, Academic Press, San Diego (1993)に見出すことができる。
【0089】
外来抗体の可変領域はそのままにして、モノクロナール抗体の軽鎖および重鎖定常ドメインを、ヒト起源の類似するドメインと置き換える方法が開発されている。あるいは、完全ヒトモノクロナール抗体が、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックなマウスまたはラットにおいて生成される。齧歯類およびヒトの両方のアミノ酸配列を有する抗体可変ドメインを組換えで構築することにより、モノクロナール抗体の可変ドメインを、ヒトにより近い形態に変換する方法も開発されている。ヒト化モノクロナール抗体では、高頻度可変CDRのみがヒト以外(例えば、マウス、ラット、ニワトリ、ラマ)のモノクロナール抗体に由来し、そしてフレームワーク領域がヒトアミノ酸配列に由来する。齧歯類に特徴的である抗体内のアミノ酸配列を、ヒト抗体の対応する位置に見出されるアミノ酸配列に置き換えることで、治療使用期間中に有害な免疫反応が生ずる可能性が低下すると考えられている。抗体を産生するハイブリドーマまたはその他の細胞は、遺伝子突然変異またはその他の変更(ハイブリドーマにより産生される抗体の結合特異性を変化させる場合もあればさせない場合もある)の対象となり得る。
【0090】
改変された(engineered)抗体は、モノクロナールおよびその他の抗体、ならびに組換えDNA技術を使用して、オリジナルの抗体の抗原またはエピトープ特異性を保持するその他の抗体またはキメラ分子(すなわち分子は結合ドメインを有する)を生成することにより創出可能である。そのような技術は、免疫グロブリン可変領域または抗体のCDRをコードするDNAを、異なる抗体のフレームワーク領域、定常領域、または定常領域+フレームワーク領域に対応する遺伝物質に導入することと関係し得る。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,091,513号および同第6,881,557号を参照。
【0091】
特定の実施形態では、抗glycCTLA-4抗体はヒト抗体である。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体ライブラリーを使用する上記ファージディスプレイ方法を含む、当技術分野において公知の様々な方法により作製され得る(米国特許第4,444,887号明細書および同第4,716,111号明細書;および国際公開番号、国際公開第98/46645号パンフレット、国際公開第98/50433号パンフレット、国際公開第98/24893号パンフレット、国際公開第98/16654号パンフレット、国際公開第96/34096号パンフレット、国際公開第96/33735号パンフレット、および国際公開第91/10741号パンフレットを参照)。ヒト抗体は、機能的内因性免疫グロブリンを発現することができないが、しかしヒト免疫グロブリン遺伝子を発現することができるトランスジェニックマウスを使用して生成可能である。例えば、ヒト重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子複合体が、ランダムにまたはマウス胚性幹細胞中への相同的組換えにより導入可能である。あるいは、ヒト可変領域、定常領域、および多様性領域が、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子に付加してマウス胚性幹細胞中に導入可能である。相同的組換えによるヒト免疫グロブリン遺伝子座の導入とは別にまた同時に、マウス重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子を非機能性にすることができる。特に、JH領域のホモ接合型欠失は、内因性抗体産生を防止する。改変された胚性幹細胞を増殖させ、そして胚盤胞に微量注射してキメラマウスを生成する。次に、キメラマウスを繁殖させて、ヒト抗体を発現するホモ接合型の子孫を生成する。トランスジェニックマウスは、選択された抗原、例えばグリコシル化CTLA-4ポリペプチドの全部または一部を用いながら、従来法を使用して免疫化される。抗原を標的とするモノクロナール抗体は、従来のハイブリドーマ技術を使用して、免疫化されたトランスジェニックマウスから取得可能である(例えば、米国特許第5,916,771号明細書を参照)。トランスジェニックマウスが担持するヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化期間中に再配列し、その後クラススイッチングおよび体細胞突然変異を受ける。したがって、そのような技術を使用して、治療上有用なIgG、IgA、IgM、およびIgE抗体が生成可能である。ヒト抗体を生成するためのこのような技術の概要については、LonbergおよびHuszar(参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、1995, Int. Rev. Immunol. 13:65-93)を参照。ヒト抗体およびヒトモノクロナール抗体を生成するためのこのような技術の詳細な考察、およびそのような抗体を生成するためのプロトコールについては、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、国際公開番号、国際公開第98/24893号パンフレット、国際公開第96/34096号パンフレット、および国際公開第96/33735号パンフレット;ならびに米国特許第5,413,923号明細書、同第5,625,126号明細書、同第5,633,425号明細書、同第5,569,825号明細書、同第5,661,016号明細書、同第5,545,806号明細書、同第5,814,318号明細書、および同第5,939,598号明細書を参照。それに加えて、会社、例えばAbgenix、Inc.社(Freemont、Calif.)およびMedarex社(Princeton、N.J.)等が、上記記載の技術と類似した技術を使用して、選択された抗原を標的とするヒト抗体を提供することに関係し得る。
【0092】
1つの実施形態では、抗体は、キメラ抗体、例えば、非相同的な非ヒト、ヒト、またはヒト化の配列(例えば、フレームワーク配列および/または定常ドメイン配列)にグラフト結合した、非ヒトドナーに由来する抗原結合配列を含む抗体である。1つの実施形態では、非ヒトドナーはラットである。1つの実施形態では、抗原結合配列は合成的であり、例えば突然変異誘発(例えば、ヒトファージライブラリーのファージディスプレイスクリーニング等)により取得される。1つの実施形態では、本明細書に提示されるキメラ抗体は、マウスV領域およびヒトC領域を有する。1つの実施形態では、マウス軽鎖V領域がヒトカッパ軽鎖に融合している。1つの実施形態では、マウス重鎖V領域がヒトIgG1のC領域に融合している。
【0093】
キメラ抗体を生成する方法は当技術分野において公知である。例えば、Morrison, Science 229:1202 (1985)、Oi et al., BioTechniques 4:214 (1986)、Gillies et al., J. Immunol. Methods 125:191-202(1989)、および米国特許第6,311,415号明細書、同第5,807,715号明細書、同第4,816,567号明細書、および同第4,816,397号明細書を参照;そのすべては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ヒト以外の種に由来する1つまたは複数のCDR、およびヒト免疫グロブリン分子に由来するフレームワーク領域を含むキメラ抗体が、例えば、CDRグラフティング(欧州特許第239,400号明細書;国際公開番号、国際公開第91/09967号パンフレット;および米国特許第5,225,539号明細書、同第5,530,101号明細書、および同第5,585,089号明細書)、ベニヤリングまたはリサーフェイシング(欧州特許第592,106号明細書;同第519,596号明細書;Padlan, Molecular Immunology 28(4/5):489-498 (1991)、Studnicka et al., Protein Engineering 7:805 (1994)、およびRoguska et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:969 (1994))、およびチェインシャフリング(米国特許第5,565,332号明細書)を含む、当技術分野において公知の様々な技術を使用して生成可能であり、上記文献のすべてが参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
【0094】
組換えキメラ抗glycCTLA-4抗体の代表的な生成方法は、下記のステップ:a)従来の分子生物学の方法により、マウス抗glycCTLA-4モノクロナール抗体のCDRおよび可変領域がヒト免疫グロブリンに由来するFc領域に融合している抗体重鎖をコードおよび発現する発現ベクターを構築し、これによりキメラ抗体重鎖を発現させるためのベクターを生み出すステップ;b)従来の分子生物学の方法により、マウス抗glycCTLA-4モノクロナール抗体の抗体軽鎖をコードおよび発現する発現ベクターを構築し、これによりキメラ抗体軽鎖を発現させるためのベクターを生み出すステップ;c)従来の分子生物学の方法により、発現ベクターを宿主細胞に移して、キメラ抗体を発現させるためのトランスフェクトされた宿主細胞を生み出すステップ;ならびにd)キメラ抗体を生成するために、従来の細胞培養技術によりトランスフェクト細胞を培養するステップを含み得る。
【0095】
組換えヒト化抗glycCTLA-4抗体を生成するための代表的方法は、下記のステップ:a)従来の分子生物学の方法により、CDRおよびドナー抗体の結合特異性を保持するのに必要とされる可変領域フレームワークの最小部分が、非ヒト免疫グロブリン、例えばマウス抗glycCTLA-4モノクロナール抗体等に由来し、および抗体の残りの部分が、ヒト免疫グロブリンに由来する、抗体重鎖をコードおよび発現する発現ベクターを構築し、これによりヒト化抗体重鎖を発現させるためのベクターを生み出すステップ;b)従来の分子生物学の方法により、CDRおよびドナー抗体の結合特異性を保持するのに必要とされる可変領域フレームワークの最小部分が、非ヒト免疫グロブリン、例えばマウス抗glycCTLA-4モノクロナール抗体等に由来し、および抗体の残りの部分が、ヒト免疫グロブリンに由来する、抗体軽鎖をコードおよび発現する発現ベクターを構築し、これによりヒト化抗体軽鎖を発現させるためのベクターを生み出すステップ;c)従来の分子生物学の方法により、発現ベクターを宿主細胞に移して、ヒト化抗体を発現させるためのトランスフェクトされた宿主細胞を生み出すステップ;ならびにd)ヒト化抗体を生成するために、従来の細胞培養技術により、トランスフェクト細胞を培養するステップを含み得る。
【0096】
代表的方法のいずれかに関して、宿主細胞は、そのような発現ベクター(異なる選択マーカーを含有し得るが、重鎖コーディング配列と軽鎖コーディング配列とを例外として、好ましくは同一である)と共に同時トランスフェクトされ得る。この手順は、重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドの等しい発現を実現する。あるいは、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドの両方をコードする単一のベクターが使用され得る。重鎖および軽鎖に対するコーディング配列は、cDNAもしくはゲノムDNA、またはその両方を含み得る。組換え抗体を発現するのに使用される宿主細胞は、細菌細胞、例えば大腸菌(Escherichia coli)等、またはより好ましくは真核細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはHEK-293細胞)であり得る。発現ベクターの選択は、宿主細胞の選択に依存するが、また選択された宿主細胞におい所望の発現および制御特性を有するように選択され得る。使用可能であるその他の細胞系として、CHO-K1、NSO、およびPER.C6(Crucell社、Leiden、オランダ)が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。さらに、コドン利用は、宿主細胞が種固有のコドン利用の偏りを相殺し、そしてタンパク質の発現を強化するように選択されるとき、最適化することができる。例えば、CHO細胞発現の場合、抗体をコードするDNAには、チャイニーズハムスター(Cricetulus griseus)(チャイニーズハムスター卵巣細胞の起源)により優先的に使用されるコドンを組み込むことができる。コドン最適化の方法は、所望の宿主細胞による発現の改善を促進するのに採用され得る(例えば、Wohlgemuth et al., Philos. Trans. R. Soc. Lond. B Biol. Sci. 366(1580):2979-2986 (2011)、Jestin et al., J. Mol. Evol. 69(5):452-457 (2009)、Bollenbach et al., Genome Res. 17(4):401-404(2007)、Kurland et al., Prog. Nucleic Acid Res. Mol. Biol. 31:191-219 (1984)、Grosjean et al., Gene 18(3): 199-209(1982)を参照)。
【0097】
1つの実施形態では、抗体は、ラクダ類抗体、好ましくは重鎖ラクダ類抗体(軽鎖が欠損しており、VHHドメイン配列またはナノボディ(商標)として公知)に由来する免疫グロブリン単一可変ドメインである。ナノボディ(商標)(Nb)は、天然に存在する単鎖抗体の最小機能的断片または単一可変ドメイン(VHH)であり、当業者にとって公知である。ナノボディ(商標)(Nb)は、ラクダ類に認められる重鎖のみ抗体に由来する(Hamers-Casterman et al., Nature 363: 446-448 (1993)、Desmyter et al., Nat. Struct. Biol., 803-811 (1996))。「ラクダ」科では、軽鎖ポリペプチドが欠損している免疫グロブリンが見出されている。「ラクダ類」として、旧世界ラクダ類(フタコブラクダ(Camelus bactrianus)およびヒトコブラクダ(Camelus dromedarius))、および新世界ラクダ類(例えば、ラマ・パッコス(Lama paccos)、ラマ・グラマ(Lama glama)、ラマ・グアニコエ(Lama guanicoe)、およびラマ・ビカグナ(Lama vicugna))が挙げられる。単一可変ドメイン重鎖抗体は、ナノボディ(商標)、またはVHH抗体と本明細書において命名される。Nbは、その小型のサイズおよび固有の生物物理学的特性により、まれなまたは隠れたエピトープの認識、およびタンパク質標的のキャビティーまたは活性部位中への結合において、従来型の抗体断片よりも優れる。さらに、Nbは、レポーター分子に連結した多重特異性および多価抗体として設計され、またはヒト化され得る。Nbは安定であり、胃腸系内で存続し、また容易に生成可能である。そのような実施形態は、配列番号6、配列番号7、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR、または配列番号9、配列番号10、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR、または配列番号11、配列番号12、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR、または配列番号13、配列番号14、および配列番号15のアミノ酸配列をそれぞれ有するCDRのうちの1、2、または3つにおいて、1、2、3、4個、または5個のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を有するCDR H1、H2、およびH3を含む重鎖を含むglyc-CTLA-4と結合する単一の可変ドメイン抗体を含み得る。
【0098】
単一のコンストラクト中に特異性の異なる2つの抗原結合部位を統合することで、二重特異性抗体は、優れた特異性を有する2つの別個の抗原をひとつにまとめる能力を有し、したがって治療剤として優れた能力を有する。二重特異性抗体は、異なる免疫グロブリンを生成する能力をそれぞれ有する2つのハイブリドーマを融合させることにより、そもそも作製可能である。二重特異性抗体は、完全免疫グロブリン中に存在するFc部分を省略しつつ、2つのscFv抗体断片を結びつけることによっても生成可能である。そのようなコンストラクト内の各scFvユニットは、合成ポリペプチドリンカーを介して相互に結びついた、抗体重鎖(VH)および軽鎖(VL)のそれぞれに由来する1つの可変ドメインからなり得るが、ただし合成ポリペプチドリンカーは、多くの場合、タンパク質分解に対する耐性を最大限保持しながら、免疫原性は最低限となるように遺伝子工学的に改変される。各scFvユニットは、2つのscFvユニットを架橋し、これにより二重特異性単鎖抗体を創出する、短鎖(通常、アミノ酸10個未満)ポリペプチドスペーサーの組込みを含む、いくつかの技術により結びつけることができる。得られた二重特異性単鎖抗体は、したがって単一のポリペプチド鎖上に特異性が異なる2組のVH/VLを含有する種であり、その場合、各scFvユニット内のVHおよびVLドメインは、これら2つのドメイン間の分子内会合を可能にするのに十分長いポリペプチドリンカーにより分離しており、またそのように形成されたscFvユニットは、例えば一方のscFvユニットのVHドメインと他方のscFvユニットのVLとの間で望ましくない会合が生ずるのを防止するように十分短く保たれたポリペプチドスペーサーを通じて相互に連続して繋留される。
【0099】
抗原結合断片の例として、非限定的に:(i)VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなるFab断片;(ii)VHおよびCH1ドメインからなる「Fd」断片;(iii)単一抗体のVLおよびVHドメインからなる「Fv」断片;(iv)VHドメインから構成される「dAb」断片;(v)単離されたCDR領域;(vi)F(ab’)2断片、リンクした2つのFab断片を含む2価の断片;(vii)単鎖Fv分子(「scFv」)、2つドメインが会合して結合ドメインを形成するのを可能にするペプチドリンカーによりリンクしたVHドメインおよびVLドメイン;(viii)二重特異性単鎖Fvダイマー(米国特許第5,091,513号明細書);および(ix)遺伝子融合により構築されたダイアボディ、多価または多重特異性断片(米国特許出願公開第20050214860号明細書)が挙げられる。Fv、scFv、またはダイアボディ分子は、VHおよびVLドメインをリンクさせるジスルフィド架橋の組込みにより安定化され得る。CH3ドメインに結びついたscFvを有するミニボディも作製可能である(Hu et al., Cancer Res., 56:3055-3061 (1996))。
【0100】
抗体様結合ペプチド模倣体も、複数の実施形態において検討される。Liu et al., Cell Mol. Biol., 49:209-216(2003)は、ペアードダウン抗体(pared-down antibody)として作用し、またより長い血清半減期の他にそれほど煩雑でない合成方法といったある種の長所を有するペプチドである「抗体様結合ペプチド模倣物」(ABiP)について記載する。
【0101】
グリコシル化CTLA-4ポリペプチド
なおもさらなる実施形態では、ヒトCTLA-4のN113位またはN145位に対応する少なくとも1つのアミノ酸を含む、ヒトCTLA-4の少なくとも7個の(例えば、少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個、またはそれを上回る)連続したアミノ酸の断片を含むポリペプチドを含む組成物であって、ヒトCTLA-4のN113位またはN145位に対応する前記アミノ酸の少なくとも1つがグリコシル化されており、該ポリペプチドが薬学的に許容される担体内に製剤化される、組成物が提示される。
【0102】
一部の実施形態では、ヒトCTLA-4のN113位またはN145位に対応する少なくとも1つのアミノ酸を有する、ヒトCTLA-4の少なくとも7個の連続したアミノ酸からなるポリペプチドであって、ヒトCTLA-4のN113位またはN145位に対応する前記アミノ酸の少なくとも1つがグリコシル化されている、ポリペプチドも本明細書に提示される。一部の実施形態では、ポリペプチドは、グリコシル化されているN113位に対応するアミノ酸を有する、ヒトCTLA-4の少なくとも7個の連続したアミノ酸を有する。一部の実施形態では、ポリペプチドは、グリコシル化されているN145位に対応するアミノ酸を有する、ヒトCTLA-4の少なくとも7個の連続したアミノ酸を有する。
【0103】
例えば、ポリペプチドは、N113がグリコシル化されている、ヒトCTLA-4のアミノ酸107~114または110~116の断片であり得る。別の例では、ポリペプチドは、N145がグリコシル化されている、ヒトCTLA-4のアミノ酸140~146または143~149の断片であり得る。なおも別の例では、ポリペプチドは、N113およびN145がグリコシル化されている、ヒトCTLA-4のアミノ酸112~146の断片であり得る。
【0104】
一部の実施形態では、ポリペプチドは、ヒトCTLA-4の少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個の連続したアミノ酸を有する。一部の実施形態では、ポリペプチドは、ヒトCTLA-4の少なくとも25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、または270、280個の連続したアミノ酸を有する。一部の実施形態では、本明細書に提示される少なくとも2つポリペプチドを有する組成物が本明細書に提示される。少なくとも2つポリペプチドは、別の分子であり得る、または1つの分子としてリンクし得る。一部の実施形態では、組成物は、少なくとも3つのポリペプチド、少なくとも4つのポリペプチド、または少なくとも5つのポリペプチドを有する。一部の実施形態では、組成物は、2つのポリペプチド、3つのポリペプチド、4つのポリペプチド、または5つのポリペプチドを有する。
【0105】
一部の実施形態では、本明細書に提示されるポリペプチドは非天然アミノ酸を含む。一部の実施形態では、非天然アミノ酸は、αアミノ基においてメチル化されて、メチル化骨格を有するペプチドが生成する。一部の実施形態では、非天然アミノ酸は、R-アミノ酸である。一部の実施形態では、非天然アミノ酸は、色素(例えば、蛍光色素)またはアフィニティータグを含み得る。一部の実施形態では、本明細書に提示されるポリペプチドは、化学修飾を含む。化学修飾として、例えば、ビオチン、蛍光色素を用いた化学修飾が挙げられる。当業者は、非天然アミノ酸をポリペプチド中に導入し、およびポリペプチドを化学的に修飾するための方法が当技術分野において周知されていることを認識する。
【0106】
一部の実施形態では、複数の実施形態のポリペプチドは、免疫原性ポリペプチド(例えば、スカシガイヘモシアニン、KLH)と融合し、またはそれにコンジュゲートしている。ある特定の態様では、ポリペプチドは、C末端またはN末端にCys残基をさらに含む。例えば、一部の態様では、ポリペプチドは、Cys残基においてジスルフィド結合により免疫原性ポリペプチドにコンジュゲートしている。
【0107】
なおもさらなる実施形態では、ヒトCTLA-4のN113位またはN145位に対応する少なくとも1つのアミノ酸を含む、ヒトCTLA-4の少なくとも7個の連続したアミノ酸からなる断片を含むポリペプチドを有する免疫原性組成物であって、ヒトCTLA-4のN113位またはN145位に対応する前記アミノ酸の少なくとも1つがグリコシル化されており、該ポリペプチドが薬学的に許容される担体内に製剤化される、免疫原性組成物が本明細書に提供される。一部の態様では、免疫原性組成物は、アジュバント、例えばミョウバンまたはフロイントアジュバント等をさらに含む。
【0108】
一部の実施形態では、ポリペプチドを動物に投与するステップ、および動物から抗体を単離するステップを含む、抗体を作製する方法であって、該ポリペプチドが、ヒトCTLA-4のN113位またはN145位に対応する少なくとも1つのアミノ酸を有する、ヒトCTLA-4の少なくとも7個の連続したアミノ酸からなる断片を有し、かつヒトCTLA-4のN113位およびN145位に対応する前記アミノ酸の少なくとも1つがグリコシル化されている、方法が提示される。動物は、マウス、ラット、ウサギ、またはヒトであり得る。ある特定の態様では、方法には、抗体のCDRを特定するステップと、CDR周辺の配列をヒト化してヒト化抗体を生成するステップとがさらに含まれる。なおもさらなる態様では、方法は、ヒト化抗体を組換え発現させるステップを含む。したがって、さらなる実施形態では、上記方法により生成される単離された抗体が提示される。したがって、一部の実施形態では、非グリコシル化CTLA-4と比較して、複数の実施形態のポリペプチド(例えば、ヒトCTLA-4のN113位またはN145位に対応する少なくとも1つのアミノ酸を含む、ヒトCTLA-4の少なくとも7個の連続したアミノ酸からなる断片を含むポリペプチドであって、ヒトCTLA-4のN113位またはN145位に対応する前記アミノ酸の少なくとも1つがグリコシル化されている、ポリペプチド)と選択的に結合する、単離された抗体が本明細書に提示される。
【0109】
本明細書に提示されるポリペプチドは、当技術分野において公知の任意の方法により調製され得る。例えば、ポリペプチドは、化学合成または組換え生成により調製され得る。組換えポリペプチドを発現および精製するための代表的な方法は、例えば、Scopes R.K., Protein Purification - Principles and Practice, Springer Advanced Texts in Chemistry, 3rd Edition (1994)、Simpson R.J. et al., Basic Methods in Protein Purification and Analysis: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1st Edition (2008)、Green M.R. and Sambrook J., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 4st Edition (2012)、Jensen K.J. et al., Peptide Synthesis and Applications (Methods in Molecular Biology), Humana Press, 2nd Edition (2013)に見出され得る。ポリペプチドの化学的合成は、当技術分野において周知の方法を使用することにより実現可能である(Kelley and Winkler, 1990, In: Genetic Engineering Principles and Methods, Setlow J. K, ed., Plenum Press, N.Y., Vol. 12, pp 1-19、Stewart et al., 1984, J. M. Young, J. D., Solid Phase Peptide Synthesis, Pierce Chemical Co., Rockford, Ill、Marglin and Merrifield, Ann. Rev. Biochem, 39:841-866, at 862 (1970). Merrifield, R.B., 1963, J. Am. Chern. Soc. 85:2149-2154、Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins, Williams et al., Eds., 1997, CRC Press, Boca Raton Fla.、Solid Phase Peptide Synthesis: A Practical Approach, Atherton & Sheppard, Eds., 1989, IRL Press, Oxford, Englandを参照;米国特許第4,105,603号明細書、同第3,972,859号明細書、同第3,842,067号明細書、および同第3,862,925も参照)。
【0110】
改変および誘導体
グリコシル化CTLA-4に対する抗体は、動物種、モノクロナール細胞系、またはその他の抗体起源を問わず、グリコシル化CTLA-4の効果を中和または相殺する能力を有し得る。ある特定の動物種は、抗体のFc部分を通じて補体系が活性化することに起因して、アレルギー反応を引き起こす可能性がより高いと考えられるので、治療抗体を生成するのにそれほど好ましくないと考えられる。しかしながら、全抗体は、Fc(補体結合)断片と、結合ドメインまたはCDRを有する抗体断片とに酵素的に消化され得る。Fc部分を除去することで、抗体断片が望ましくない免疫応答を誘発する可能性が低下し、したがって、Fcを有さない抗体は、予防処置または治療処置に使用可能である。上記したように、抗体は、キメラ、部分的または完全にヒトであるように構築され、その他の種内で生成されまたはそれに由来する配列を有する抗体を動物に投与することに起因する有害な免疫学的結果を低減し、または取り除くように構築される場合もある。
【0111】
抗glycCTLA-4抗体の結合特性は、所望の特性を示すバリアントについてスクリーニングすることによりさらに改善し得る。例えば、そのような改善は、当技術分野において公知の様々なファージディスプレイ方法を使用して実施可能である。ファージディスプレイ方法では、機能的抗体ドメインが、それらをコードするポリヌクレオチド配列を担持するファージ粒子の表面上に提示される。特別な実施形態では、そのようなファージは、レパートリーまたはコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えば、ヒトまたはマウス)から発現される抗原結合断片、例えばFabおよびFv等、またはジスルフィド結合安定化Fvを提示するのに利用可能である。目的とする抗原に結合する抗原結合断片を発現するファージは、抗原を用いて、例えば標識抗原、または固体表面もしくはビーズに結合しもしくは捕捉された抗原を使用して、選択または同定可能である。これらの方法で使用されるファージは、一般的にfdおよびM13を含む線状ファージである。抗原結合断片は、ファージ遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIタンパク質に対する組換え融合タンパク質として発現される。本明細書に記載されるような抗体またはポリペプチドを作製するのに使用可能であるファージディスプレイ方法の例として、Brinkman et al., J Immunol Methods, 182:41-50 (1995)、Ames et al., J. Immunol. Methods, 184:177-186 (1995)、Kettleborough et al., Eur. J. Immunol., 24:952-958(1994)、Persic et al., Gene, 187:9-18 (1997)、Burton et al., Adv. Immunol. 57:191-280 (1994)、PCT公開、国際公開第92/001047号パンフレット;国際公開第90/02809号パンフレット;国際公開第91/10737号パンフレット;国際公開第92/01047号パンフレット;国際公開第92/18619号パンフレット;国際公開第93/11236号パンフレット;国際公開第95/15982号パンフレット;国際公開第95/20401;および米国特許第5,698,426号明細書;同第5,223,409号明細書;同第5,403,484号明細書;同第5,580,717号明細書;同第5,427,908号明細書;同第5,750,753号明細書;同第5,821,047号明細書;同第5,571,698号明細書;同第5,427,908号明細書;同第5,516,637号明細書;同第5,780,225号明細書;同第5,658,727号明細書;同第5,733,743号明細書、および同第5,969,108号明細書に開示されているものが挙げられるが、そのすべては参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0112】
上記参考資料に記載されるように、ファージ選択後、ファージに由来する抗体コード領域が単離され、そしてヒト化抗体または任意その他の所望の断片を含む全抗体を生成するのに使用され得るが、また例えば、以下に詳記するように、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母菌、および細菌を含む任意所望の宿主において発現され得る。例えば、Fab、Fab’およびF(ab’)2断片を組換え生成する技術は、当技術分野において公知の方法、例えばPCT公開、国際公開第92/22324号パンフレット;Mullinax, R. L. et al., BioTechniques, 12(6):864-869 (1992)、およびSawai et al., Am. J. Reprod. Immunol. 34:26-34 (1995)、およびBetter, M. et al. Science 240:1041-1043(1988)で開示される方法等(そのすべては参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を使用ながらやはり採用され得る。単鎖Fvsおよび抗体を生成するのに使用可能である技術の例として、そのすべてが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第4,946,778号明細書および同第5,258,498号明細書;Huston, J. S. et al., Methods in Enzymology 203:46-88(1991)、Shu, L. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 90:7995-7999、およびSkerra. A. et al., Science 240:1038-1040 (1988)に記載されている技術が挙げられる。
【0113】
ファージディスプレイ技術は、本明細書に記載されるような抗glycCTLA-4抗体の親和性を増加させるのに使用可能である。この技術は、本明細書に記載されるコンビナトリアル方法において使用され得る高親和性抗体を取得する際に使用可能である。この技術は親和性成熟と呼ばれ、初期抗体または親抗体と比較したとき、それよりも高い親和性をもって抗原に結合する抗体を同定するために、そのような受容体もしくはリガンド(またはその細胞外ドメイン)、またはその抗原性断片を使用しながら、突然変異誘発またはCDRウォーキングおよび再選択を採用する(例えば、Glaser, S. M. et al., J. Immunol. 149:3903-3913(1992)を参照)。単一のヌクレオチドではなく全コドンに対して突然変異誘発することで、アミノ酸突然変異のセミランダム化レパートリーがもたらされる。バリアントクローンのプールからなるライブラリーが構築可能であるが、バリアントクローンのそれぞれは、単一のCDRにおいてアミノ酸1個分の変化によって異なり、また各CDR残基について、可能な各アミノ酸置換を代表するバリアントを含有する。抗原に対する結合親和性が増加している突然変異体は、固定された突然変異体を標識抗原と接触させることによりスクリーニング可能である。当技術分野において公知の任意のスクリーニング方法が、抗原に対するアビディティーが増加している突然変異体抗体を同定するのに使用可能である(例えば、ELISA)(例えば、Wu, H. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 95(11):6037-6042(1998)、Yelton, D. E. et al., J. Immunol. 155:1994-2004 (1995)を参照)。軽鎖をランダム化するCDRウォーキングも使用可能である(Schier et al., J. Mol. Biol. 263:551-567(1996)を参照)。
【0114】
ランダム突然変異誘発は、CDRおよび/または可変領域が改善したことを確認するために、ファージディスプレイ方法と連携して使用可能である。あるいは、ファージディスプレイ技術は、指定突然変異誘発(例えば、親和性成熟または「CDRウォーキング」)によりCDRの親和性を増加(または減少)させるのにも使用可能である。この技術は、標的抗原またはその抗原性の断片を使用して、初期抗体または親抗体と比較したとき、該抗原に対してそれよりも高い(または低い)親和性で結合するCDRを有する抗体を特定する(例えば、Glaser, S. M. et al., J. Immunol. 149:3903-3913(1992)を参照)。
【0115】
そのような親和性成熟を実現する方法は、例えばKrause, J. C. et al., MBio. 2(1) pii: e00345-10. doi: 10.1128/mBio.00345-10(2011)、Kuan, C. T. et al., Int. J. Cancer 10.1002/ijc.25645、Hackel, B. J. et al., J. Mol. Biol. 401(1):84-96(2010)、Montgomery, D. L. et al., MAbs 1(5):462-474(2009)、Gustchina, E. et al., Virology 393(1):112-119 (2009)、Finlay, W. J. et al., J. Mol. Biol. 388(3):541-558 (2009)、Bostrom, J. et al., Methods Mol. Biol. 525:353-376 (2009)、Steidl, S. et al., Mol. Immunol. 46(1):135-144 (2008)、およびBarderas, R. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 105(26):9029-9034 (2008)に記載されており、そのすべては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0116】
「親」(または野生型)分子と比較して、1、2、3、4、5個、またはそれを上回るアミノ酸置換、付加、欠失、または修飾を有する抗glycCTLA-4抗体またはグリコシル化CTLA-4ポリペプチドの誘導体も本明細書に提示される。そのようなアミノ酸置換または付加は、天然に存在する(すなわち、DNAによりコードされる)または天然に存在しないアミノ酸残基の導入を可能にする。そのようなアミノ酸は、グリコシル化(例えば、マンノース、2-N-アセチルグルコサミン、ガラクトース、フコース、グルコース、シアル酸、5-N-アセチルノイラミン酸、5-グリコールノイラミン酸(5-glycolneuraminic acid)等について含有量が変化している)、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化され、公知の保護基/ブロッキング基、タンパク質分解切断により誘導体化され、細胞リガンドまたはその他のタンパク質等にリンクし得る。一部の実施形態では、炭水化物の修飾を変化させることで、下記事項:抗体の可溶性、細胞内輸送および抗体分泌の亢進、抗体アセンブリの促進、高次構造的完全性、および抗体媒介式のエフェクター機能のうちの1つまたは複数を調節する。一部の実施形態では、炭水化物の修飾を変化させることで、炭水化物の修飾を欠いている抗体と比較して、抗体媒介式のエフェクター機能が強化される。抗体媒介式のエフェクター機能の変化をもたらす炭水化物の修飾は、当技術分野において周知されている(例えば、そのすべてが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Shields, R. L. et al., J. Biol. Chem. 277(30): 26733-26740 (2002)、Davies J. et al. Biotechnology & Bioengineering 74(4): 288-294(2001)を参照)。炭水化物含有量を変化させる方法は当業者にとって公知であり、例えば、そのすべてが参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWallick, S. C. et al., J. Exp. Med. 168(3): 1099-1109(1988)、Tao, M. H. et al., J. Immunol. 143(8): 2595-2601 (1989)、Routledge, E. G. et al., Transplantation 60(8):847-53 (1995)、Elliott, S. et al., Nature Biotechnol. 21:414-21(2003)、Shields, R. L. et al., J. Biol. Chem. 277(30): 26733-26740 (2002)を参照。
【0117】
置換バリアントは、本明細書に提示されるような抗体またはポリペプチド内の1つまたは複数の部位において、1つのアミノ酸と別のアミノ酸との交換を含有し得るが、またその他の機能または特性の喪失を伴い、または伴わないで抗体またはポリペプチドの1つまたは複数の特性を調節するように設計可能である。置換は保存的であり得、すなわち、ある1つのアミノ酸は、類似した形状および電荷のアミノ酸で置換される。保存的置換は当技術分野において周知されており、例えば、アラニンからセリン;アルギニンからリジン;アスパラギンからグルタミンまたはヒスチジン;アスパラギン酸からグルタミン酸;システインからセリン;グルタミンからアスパラギン;グルタミン酸からアスパラギン酸;グリシンからプロリン;ヒスチジンからアスパラギン、またはグルタミン;イソロイシンからロイシン、またはバリン;ロイシンからバリン、またはイソロイシン;リジンからアルギニン;メチオニンからロイシン、またはイソロイシン;フェニルアラニンからチロシン、ロイシン、またはメチオニン;セリンからトレオニン;トレオニンからセリン;トリプトファンからチロシン;チロシンからトリプトファン、またはフェニルアラニン;およびバリンからイソロイシンまたはロイシンへの変化が含まれる。あるいは、置換は、ポリペプチドの機能または活性が影響を受けるように、非保存的であり得る。非保存的変化は、ある残基を化学的に異なる残基で置換すること、例えば非極性または非荷電性のアミノ酸に対する極性または荷電性のアミノ酸等、およびその逆と一般的に関係する。
【0118】
一部の実施形態では、抗体は、表4に定めるCDRの第1のセットを含み得るが、ただし、その他のCDRセット(複数可)の1つまたはすべてにおいて保存されていない残基において置換(例えば、保存的置換)を有する。例えば、抗体は、CDRのAbM、Kabat、またはContactのセットを含み得るが、ただしChothiaタイプのCDR2配列(配列番号7)内の残基に対応しない残基において、1つまたは複数の置換をCDR2配列(配列番号10、12、または14)内に有する。同様に、配列番号18上のテーリング残基は、例えば保存的置換等により置換され得る。同様に、配列番号20上の残基1~4は、保存的置換等により置換され得る。これらはほんの数例にすぎないが、しかし当業者は、表4に示す置換に基づき、どのような置換をなし得るか理解することができる。
【0119】
一部の実施形態では、CDRの第1のセット(例えば、Chothia、AbM、Kabat、およびContact)を有する抗体は、1つまたは複数のアミノ酸置換を有するフレームワーク領域を含む場合があり、そのようなアミノ酸置換は、1つまたは複数の置換残基を、対応する位置(Kabatに基づく配列アラインメントおよび/またはナンバリングにより評価されるような)において、CDRの第1のセットには存在しないリーディング残基(すなわち、N末端側)またはテーリング残基(すなわち、C末端側)を有するCDRの第2のセットと一致させる。例えば、重鎖のContactタイプCDR2のC末端に隣接するフレームワーク領域は、配列番号12(KabatタイプのCDR2)のアミノ酸配列のテーリング残基12~18のうちの1つまたは複数に対応する置換残基を有する。同様に、一部の実施形態では、重鎖のAbMタイプCDR2のC末端に隣接するフレームワーク領域は、配列番号12(KabatタイプCDR2)のアミノ酸配列のテーリング残基11~18のうちの1つまたは複数に対応する置換残基を有する。一部の実施形態では、重鎖のChothiaタイプCDR2のC末端に隣接するフレームワーク領域は、配列番号12(KabatタイプCDR2)のアミノ酸配列のテーリング残基8~18のうちの1つまたは複数に対応する置換残基を有する。一部の実施形態では、軽鎖のChothia、AbM、またはKabatタイプCDR1のC末端に隣接するフレームワーク領域は、配列番号19(ContactタイプCDR1)のアミノ酸配列のテーリング残基5~6のうちの1つまたは複数に対応する置換残基を有する。一部の実施形態では、重鎖のKabatまたはAbMタイプCDR2のN末端に隣接するフレームワーク領域は、配列番号14(ContactタイプCDR2)のアミノ酸配列のリーディング残基1~3のうちの1つまたは複数に対応する置換残基を有する。一部の実施形態では、重鎖のChothiaタイプCDR2のN末端に隣接するフレームワーク領域は、配列番号14のアミノ酸配列のリーディング残基1~5のうちの1つまたは複数に対応する置換残基を有する。一部の実施形態では、重鎖のChothia、AbM、またはKabatタイプCDR3のN末端に隣接するフレームワーク領域は、配列番号15(ContactタイプCDR3)のアミノ酸配列のリーディング残基1~2のうちの1つまたは複数に対応する置換残基を有する。一部の実施形態では、軽鎖のChothia、AbM、またはKabatタイプCDR2のN末端に隣接するフレームワーク領域は、配列番号20(ContactタイプCDR2)のアミノ酸配列のリーディング残基1~4のうちの1つまたは複数に対応する置換残基を有する。
【0120】
一部の実施形態では、ヒト化抗体は派生抗体である。そのようなヒト化抗体は、1つまたは複数の非ヒトCDRにおいて、アミノ酸残基の置換、欠失、または付加を含む。ヒト化抗体の派生体は、非派生的ヒト化抗体と比較したとき、実質的に同一の結合性、より良好な結合性、またはより劣等な結合性を有し得る。一部の実施形態では、CDRの1、2、3、4個、または5個のアミノ酸残基が突然変異しており、例えば置換、欠失、または付加等されている。
【0121】
一部の実施形態では、ポリペプチドは、派生的ポリペプチドである。そのようなポリペプチドは、野生型ヒトCTLA-4と比較して、アミノ酸残基の置換、欠失、または付加を含む。非派生的ポリペプチドと比較して、派生的ポリペプチドは、抗glycCTLA-4抗体に対して実質的に同一の結合性、より良好な結合性、またはより劣等な結合性を有し得る。一部の実施形態では、ヒトCTLA-4の1、2、3、4個、または5個のアミノ酸残基が突然変異しており、例えば置換、欠失、または付加等されている。
【0122】
本明細書に記載されるような抗体またはポリペプチドは、特異的化学切断、アセチル化、製剤化、チュニカマイシンの代謝的合成等を含む、ただしこれらに限定されない、当業者にとって公知の技術を使用する化学的修飾によって修飾され得る。1つの実施形態では、派生的ポリペプチドまたは派生抗体は、親ポリペプチドまたは抗体と類似または同一の機能を有する。別の実施形態では、派生的ポリペプチドまたは派生抗体は、親ポリペプチドまたは親抗体と比較して、活性の変化を示す。例えば、派生抗体(またはその断片)は、そのエピトープと親抗体よりも緊密に結合することができ、またはタンパク質分解に対して耐性であり得る。
【0123】
派生した抗体内の置換、付加、または欠失は、抗体のFc領域内にあり得るが、またこれにより1つまたは複数のFcγRに対する抗体の結合親和性を改変する役目を果たすことができる。1つまたは複数のFcγRに対する改変された結合性を有するように抗体を改変する方法は、当技術分野において公知であり、例えば、そのすべてが参照によりその全体が本明細書に組み込まれるPCT公開番号、国際公開第04/029207号パンフレット、国際公開第04/029092号パンフレット、国際公開第04/028564号パンフレット、国際公開第99/58572号パンフレット、国際公開第99/51642号パンフレット、国際公開第98/23289号パンフレット、国際公開第89/07142号パンフレット、国際公開第88/07089、および米国特許第5,843,597号明細書および同第5,642,821号明細書を参照。一部の実施形態では、抗体またはその他の分子は、活性化FcγR、例えばFcγRIIIAに対して変化した親和性を有し得る。好ましくは、そのような改変は、変化したFc媒介式エフェクター機能も有する。Fc媒介式エフェクター機能に影響を及ぼす改変は、当技術分野において周知されている(米国特許第6,194,551号明細書、および国際公開第00/42072号パンフレットを参照)。一部の実施形態では、Fc領域の改変は、抗体媒介式エフェクター機能が変化した、その他のFc受容体(例えば、Fc活性化受容体)に対する結合性が変化した、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)活性が変化した、C1q結合活性が変化した、補体依存性細胞傷害活性(CDC)、食細胞活性が変化した、またはこれらが任意に組み合わされた抗体をもたらす。
【0124】
派生抗体またはポリペプチドは、哺乳動物、好ましくはヒトにおいて、親分子または抗体の半減期(例えば、血清半減期)から変化した半減期を有する場合もある。一部の実施形態では、そのような変化は、15日を上回る、好ましくは20日を上回る、25日を上回る、30日を上回る、35日を上回る、40日を上回る、45日を上回る、2カ月を上回る、3カ月を上回る、4カ月を上回る、または5カ月を上回る半減期をもたらす。哺乳動物、好ましくはヒトにおいてヒト化抗体またはポリペプチドの半減期が伸びると、その結果、哺乳動物における前記抗体またはポリペプチドの血清力価がより高まり、したがって前記抗体またはポリペプチドの投与頻度が低下し、および/または投与される前記抗体もしくはポリペプチドの濃度が低下する。In vivoでの半減期が伸びた抗体またはポリペプチドは、当業者にとって公知の技術により生成可能である。例えば、in vivoでの半減期が伸びた抗体またはポリペプチドは、FcドメインとFcRn受容体との間の相互作用に関与するものとして特定されたアミノ酸残基を改変(例えば、置換、欠失、または付加)することにより生成可能である。本明細書に記載されるようなヒト化抗体は、生物学的半減期を伸ばすように改変され(engineered)得る(例えば、米国特許第6,277,375号明細書を参照)。例えば、本明細書に記載されるようなヒト化抗体は、in vivoまたは血清半減期を伸ばすために、Fcヒンジドメインにおいて改変され(engineered)得る。
【0125】
In vivoでの半減期が伸びている、本明細書に記載されるような抗体またはポリペプチドは、前記抗体またはポリペプチドを、ポリマー分子、例えば高分子量ポリエチレングリコール(PEG)等に連結することにより生成可能である。PEGは、前記分子または抗体のNもしくはC末端に対するPEGの部位特異的コンジュゲーションを通じて、またはリジン残基に存在するε-アミノ基を介して、多官能性リンカーの有無にかかわらず、抗体またはポリペプチドに連結可能である。生物学的活性を最低限度でしか損なわない直鎖状または分岐状ポリマーの誘導体化が使用可能である。コンジュゲーションの程度は、抗体に対するPEG分子のコンジュゲーションが適切であることを保証するために、SDS-PAGEおよびマススペクトロメトリーにより綿密にモニタリングされ得る。未反応のPEGは、例えばサイズ排除またはイオン交換クロマトグラフィーにより、抗体-PEGコンジュゲートから分離され得る。
【0126】
本明細書に記載されるような抗体またはポリペプチドは、免疫原性応答を実質的に伴わずに哺乳動物の循環系内に注射可能である組成物を提供するために、Davisら(米国特許第4,179,337号明細書を参照)により記載される方法およびカップリング剤によっても改変可能である。Fc部分を除去することで、抗体断片が望ましくない免疫応答を誘発する可能性を低下させることができ、したがって、Fcを有さない抗体は、予防処置または治療処置に使用可能である。上記したように、その他の種において生成され、またはそれに由来する配列を有する抗体を、動物に投与することに起因する有害な免疫学的結果を低下させまたは取り除くために、抗体は、キメラであり、部分的または完全にヒトであるようにも構築可能である。
【0127】
融合およびコンジュゲート
本明細書に提示される抗glycCTLA-4抗体またはグリコシル化CTLA-4ポリペプチドは、その他のタンパク質との融合タンパク質として発現可能、または別の部分に化学的にコンジュゲート可能でもある。
【0128】
一部の実施形態では、Fc部分を有する抗体またはポリペプチドであって、該Fc部分が、アイソタイプもしくはサブクラスによって変化し得る、キメラもしくはハイブリッドであり得る、および/または例えばエフェクター機能、半減期の制御、組織への接近性を改善し、生物物理学的特徴、例えば安定性等を増強し、および生成効率(およびコストの削減)を改善するために改変され得る、ポリペプチドが本明細書に提示される。開示される融合タンパク質の構築およびそれを作製する方法において有用な多くの改変が、当技術分野において公知であり、例えば、Mueller, J. P. et al., Mol. Immun. 34(6):441-452 (1997)、Swann, P. G., Curr. Opin. Immun. 20:493-499 (2008)、およびPresta, L. G., Curr. Opin. Immun. 20:460-470 (2008)を参照。一部の実施形態では、Fc領域は、天然のIgG1、IgG2、またはIgG4のFc領域である。一部の実施形態では、Fc領域は、ハイブリッド、例えばIgG2/IgG4のFc定常領域を有するキメラである。Fc領域に対する改変として、Fcγ受容体および補体に対する結合を阻止するように改変されたIgG4、1つまたは複数のFcγ受容体に対する結合性を改善するように改変されたIgG1、エフェクター機能を最低限に抑えるように改変されたIgG1(アミノ酸の変化)、グリカンが変化した/それを有さないIgG1(一般的に、発現宿主を変更することによる)、およびFcRnに対するpH依存性の結合が変化しているIgG1が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。Fc領域は、全ヒンジ領域または全ヒンジ領域未満を含み得る。
【0129】
別の実施形態は、FcRとの結合性が低下しており、その半減期が伸びているIgG2-4ハイブリッドおよびIgG4突然変異体を含む。代表的なIG2-4ハイブリッドおよびIgG4突然変異体は、そのすべてが参照によりその全体が本明細書に組み込まれるAngal et al., Molec. Immunol. 30(1):105-108 (1993)、Mueller et al., Mol. Immun. 34(6):441-452 (1997)、および米国特許第6,982,323号明細書に記載されている。一部の実施形態では、IgG1および/またはIgG2ドメインが欠失しており、例えば、Angalらは、セリン241がプロリンと置き換わったIgG1およびIgG2について記載する。
【0130】
一部の実施形態では、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、または少なくとも100個のアミノ酸を有する融合タンパク質またはポリペプチドが、本明細書に提示される。
【0131】
一部の実施形態では、少なくとも1つの部分とリンクする、またはそれと共有結合する、または複合体の形態となる抗glycCTLA-4抗体またはグリコシル化CTLA-4ポリペプチドが、本明細書に提示される。そのような部分は、診断または治療用の薬剤としての分子の有効性を増加させる部分であり得るが、ただしこれに限定されない。一部の実施形態では、部分は、画像剤、毒素、治療用酵素、抗生物質、放射標識ヌクレオチド等であり得る。
【0132】
一部の実施形態では、部分は、酵素、ホルモン、細胞表面受容体、毒素(例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス属(Pseudomonas)エキソトキシン(すなわち、PE-40)、ジフテリア毒素、リシン、ゲロニン(gelonin)、またはヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質等)、タンパク質(例えば、腫瘍壊死因子、インターフェロン(例えば、αインターフェロン、βインターフェロン)、神経成長因子、血小板由来増殖因子、組織プラスミノーゲンアクチベーター、またはアポトーシス性の薬剤(例えば、腫瘍壊死因子α、腫瘍壊死因子β)等)、生物学的応答修飾因子(例えば、リンホカイン(例えば、インターロイキン-1(「IL-1」)、インターロイキン-2(「IL-2」)、インターロイキン-6(「IL-6」))、果粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)、果粒球コロニー刺激因子(「G-CSF」)、またはマクロファージコロニー刺激因子(「M-CSF」)等)、または増殖因子(例えば、成長ホルモン(「GH」)))、細胞毒(例えば、細胞増殖抑制または細胞殺傷剤、例えばパクリタキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)、モノメチルアウリスタチンE(MMAE;例えばベドチン)およびピューロマイシン、およびそのアナログまたはホモログ等)、代謝拮抗薬(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオテパクロラムブシル、メルファラン、BiCNU(登録商標)(カルムスチン;BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびシスジクロロジアンミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、または抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)であり得る。
【0133】
そのような治療部分を抗体にコンジュゲートさせる技術は周知されており、例えばAmon et al., “Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”, in MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY、Reisfeld et al. (eds.), 1985, pp. 243-56, Alan R. Liss, Inc.)、Hellstrom et al., “Antibodies For Drug Delivery”, in CONTROLLED DRUG DELIVERY (2nd Ed.), Robinson et al. (eds.), 1987, pp. 623-53, Marcel Dekker, Inc.)、Thorpe, “Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review”, in MONOCLONAL ANTIBODIES '84: BIOLOGICAL AND CLINICAL APPLICATIONS, Pinchera et al. (eds.), 1985, pp. 475-506)、“Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”, in MONOCLONAL ANTIBODIES FOR CANCER DETECTION AND THERAPY, Baldwin et al. (eds.), 1985, pp. 303-16, Academic Press、Thorpe et al., Immunol. Rev. 62:119-158 (1982)、Carter et al., Cancer J. 14(3):154-169 (2008)、Alley et al., Curr. Opin. Chem. Biol. 14(4):529-537 (2010)、Carter et al., Amer. Assoc. Cancer Res. Educ. Book. 2005(1):147-154 (2005)、Carter et al., Cancer J. 14(3):154-169(2008)、Chari, Acc. Chem Res. 41(1):98-107 (2008)、Doronina et al., Nat. Biotechnol. 21(7):778-784(2003、Ducry et al., Bioconjug Chem. 21(1):5-13(2010)、Senter, Curr. Opin. Chem. Biol. 13(3):235-244 (2009)、およびTeicher, Curr Cancer Drug Targets. 9(8):982-1004 (2009). auristatin E) (MMAE)、例えばベドチン、またはその組み合わせを参照。
【0134】
好ましい実施形態では、抗体は、エチオピアの低木メイテナス・オバタス(Maytenus ovatus)の樹皮から最初に単離されたベンゾアンサマクロライドでマイタンシンにコンジュゲートしている。この細胞傷害剤およびその誘導体(例えば、メイタンシノイド)は、ビンカアルカロイド結合部位近傍でチューブリンと結合する。それは、微小管の末端部に位置するチューブリンに対して高親和性を有するが、微小管全体に分布する部位に対してはより低い親和性を有すると考えられている。微小管の動力学を抑制すると、細胞周期のG2/M期において細胞停止を引き起こし、最終的にアポトーシスによる細胞死を引き起こす。(Oroudjev et al., Mol. Cancer Ther., 10L2700-2713 (2010))。2つのメイタンシン誘導体(含チオールメイタンシノイド)はDM1を含み、そしてDM4(ImmunoGen,Inc.社、Waltham、MA)は、不可逆および可逆的リンカーと組み合わせて幅広く使用されている。特に、チオエーテルリンカーにより抗体に連結したDM1は、「エムタンシン」と呼ばれ、SPPリンカーにより抗体に連結したDM1は、「メルタンシン」と呼ばれる。SPDBリンカーにより連結したDM4は、「ラブタンシン」と呼ばれ、そしてsSPDBリンカー連結したDM4は、「ソラブタンシン」と呼ばれる(ImmunoGen,Inc.社、Waltham、MA)。一実施形態では、抗glycCTLA-4抗体-ADCは、チューブリン作用性メイタンシノイドペイロードDM1を含む。一実施形態では、抗glycCTLA-4抗体-ADCは、チューブリン作用性メイタンシノイドペイロードDM4を含む。一実施形態では、抗glycCTLA-4抗体-ADCは、DNA作用性ペイロード、例えばDGN462を含む(ImmunoGen,Inc.社、Waltham、MA)。一実施形態では、抗glycCTLA-4抗体-ADCの抗glycCTLA-4抗体コンポーネントは、STC1807のキメラまたはヒト化の形態、またはその結合部分である。一実施形態では、抗glycCTLA-4抗体-ADCの抗glycCTLA-4抗体コンポーネントは、STC1807のキメラまたはヒト化の形態、またはその結合部分である。
【0135】
特別な実施形態では、抗glycCTLA-4抗体にコンジュゲートした細胞傷害剤は、きわめて有毒な抗腫瘍剤、MMAE(モノメチルアウリスタチンE(またはデスメチルアウリスタチンE))であり、その抗有糸分裂活性は、チューブリンの重合をブロックし、それによって細胞分裂を阻害することと関係する。国際一般名称のベドチンは、MMAE+MMAE-抗体コンジュゲート内の抗体に対するそのリンキング構造を指す。より特別な実施形態では、ADCは、STC1807(キメラまたはヒト化の形態)-MMAE、またはSTC1807(キメラまたはヒト化の形態)-MMAEである。
【0136】
いくつかの化学リンカーが公知であり、また細胞傷害性またはDNA作用性薬物のペイロードを抗体にコンジュゲートさせてADCを生成するのに使用される。抗glycCTLA-4抗体、特に本明細書に記載されるように、その標的に結合した後に内部移行する抗体を含むADCを生成するために、単独使用または併用使用するように組み込まれるある特定のリンカーとして、SMCC(4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル);SPDB(N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)ブチレート);SPP(N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルジチオ)ペンタノエート);スルホ-SPDB、またはsSPDB(N-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルジチオ)-2-スルホブタノエート);チオエーテルリンカースクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(MCC);およびvc(バリン-シトルリンジペプチドリンカー)が挙げられる。例として、改変された(engineered)リンカー(例えば、SMCC、SPDB、S-SPDB)、(Immunogen、Inc.社)が、ADCが腫瘍に結合する前には安定であり、次にACDががん細胞の内側に内部移行したらペイロードの有効性が最適化するように設計されている。その他のリンカー、例えばカテプシン切断可能リンカーであるジペプチドvcリンカーが、抗体を細胞傷害剤、例えばドラスタチン10に由来する分裂阻害剤であるアウリスタチン、例えばモノメチルアウリスタチンE(MMAE)、例えばベドチン等にコンジュゲートさせるために使用され得る。細胞毒素が、1つより多くの毒素分子が各抗体分子に連結するように抗体にコンジュゲートされ得るが、例えば1抗体当たり平均2、3、4、5、6、7個、または8個の毒素分子が存在し得る。
【0137】
特別な実施形態では、MMAEは、マレイミドカプロイル(MC)連結基によって抗体のシステインに間接的にリンクしており、その連結基はバリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシカルボニル-MMAEにカップリングしている(MC-vc-PAB-MMAE)。「MC-vc-PAB-MMAE」の直線構造において、「MC」は、マレイミドおよびカプロン酸から構成され、一般的にH鎖上のシステイン基を介して抗体に連結する部分である。次に「MC」は、バリン(Val)およびシトルリン(Cit)から構成され、そして腫瘍またはがん細胞内部のカテプシンによって切断されるカテプシン切断可能リンカーである「vc」リンカーに連結する。「vc」は、スペーサー「PAB」、すなわちパラアミノ安息香酸に連結し、これにMMAE細胞毒素がリンクする。MC-vc-PAB-MMAE ADCは、プロテアーゼ、例えばカテプシンB等によって切断されたとき、遊離した膜透過性MMAEを放出する。一実施形態では、抗体に対するリンカーは、細胞外液においては安定であるが、しかしADCが腫瘍またはがん細胞に進入するとカテプシンによって切断され、したがってMMAEまたはその他の毒素薬物の抗分裂機構が活性化する。別の実施形態では、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)が、マレイミドカプロイルによって抗体のシステインにリンクする(MC-MMAF)。MC-vc-PAB-MMAE ADCとは対照的に、MC-MMAF ADCは、MMC-DMI ADCと同様に切断不能であり、細胞内に内部移行し、そして分解されて、細胞内部の活性な薬剤としてシステイン-MC-MMAFを放出しなければならない。
【0138】
一実施形態では、細胞傷害性ペイロードは、細胞内へのADCの内部移行後にリソソーム内に放出される。リソソームにおいて、リソソーム酵素がADCの抗体成分を消化する。リソソーム分解後、薬物(および薬物-リンカー)ペイロードが細胞質中に放出され、そこで薬物が細胞内標的と結合し、最終的に細胞死を引き起こす。最適には、放出されたペイロードは、リンカーがなおも連結している状態で完全に活性である。標的がADCに結合することでリソソームへの輸送不良を引き起こすその他の実施形態では、標的細胞の外部では安定であるが、しかし細胞内部では抗体コンポーネントからペイロードを切断するリンカーが、細胞内であるがリソソームの外部においてペイロードを放出するための代替モードを提供する。その他の実施形態では、リンカーは細胞外液内では安定であるが、ADCが腫瘍またはがん細胞に進入するとカテプシンによって切断され、したがって毒素薬物の抗分裂機構またはその他の細胞傷害機構が活性化する。その他の実施形態では、切断可能リンカーの作用によって放出されるペイロードは、隣接するがん細胞に進入し、バイスタンダー作用を介してそれを殺傷することができ、したがってADCの標的活性および腫瘍殺傷活性が増強する。
【0139】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるような抗体およびポリペプチドは、精製を促進するために、マーカー、例えばペプチド等にコンジュゲートし得る。一部の実施形態では、マーカーは、ヘキサヒスチジンペプチド、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質に由来するエピトープに対応するヘマグルチニン「HA」タグ(配列番号22:YPYDVPDYA)(Wilson, I. A. et al., Cell, 37:767-778 (1984))、または「フラッグ」タグ(Knappik, A. et al., Biotechniques 17(4):754-761 (1994))である。
【0140】
一部の実施形態では、部分は、アッセイにおいて検出可能である画像剤であり得る。そのような画像剤は、酵素、補欠基、放射能標識、非放射性常磁性金属イオン、ハプテン、蛍光標識、リン光発光分子、化学発光分子、クロモフォア、発光分子、生物発光分子、光親和性分子、有色粒子、またはリガンド、例えばビオチン等であり得る。
【0141】
一部の実施形態では、酵素として、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが非限定的に挙げられ;補欠基複合体として、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが非限定的に挙げられ;蛍光物質として、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、またはフィコエリトリンが非限定的に挙げられ;発光物質として、例えば、非限定的にルミノール等であり;生物発光物質として、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが非限定的に挙げられ;放射性物質として、ビスマス(213Bi)、炭素(14C)、クロム(51Cr)、コバルト(57Co)、フッ素(18F)、ガドリニウム(153Gd、159Gd)、ガリウム(68Ga、67Ga)、ゲルマニウム(68Ge)、ホルミウム(166Ho)、インジウム(115In、113In、112In、111In)、ヨウ素(131I、125I、123I、121I)、ランタニウム(140La)、ルテチウム(177Lu)、マンガン(54Mn)、モリブデン(99Mo)、パラジウム(103Pd)、亜リン酸(32P)、プラセオジム(142Pr)、プロメチウム(149Pm)、レニウム(186Re、188Re)、ロジウム(105Rh)、ルテニウム(97Ru)、サマリウム(153Sm)、スカンジウム(47Sc)、セレニウム(75Se)、ストロンチウム(85Sr)、イオウ(35S)、テクニチウム(99Tc)、タリウム(201Ti)、錫(113Sn、117Sn)、トリチウム(3H)、キセノン(133Xe)、イッテルビウム(169Yb、175Yb)、イットリウム(90Y)、亜鉛(65Zn)が非限定的に挙げられ;様々な陽電子放射トモグラフィーを使用する陽電子放射金属、および非放射性常磁性金属イオン。
【0142】
画像剤は、当技術分野において公知の技術を使用しながら、中間物質(例えば、当技術分野において公知のリンカー等)を通じて直接的または間接的に、本明細書に提示される抗体またはポリペプチドにコンジュゲートし得る。診断薬として使用される、本明細書に記載されるような抗体およびその他の分子にコンジュゲートし得る金属イオンについては、例えば米国特許第4,741,900号明細書を参照。一部のコンジュゲーション方法は、例えば、ジエチレントリアミンペンタ酢酸無水物(DTPA);エチレントリアミン四酢酸;N-クロロ-p-トルエンスルホンアミド;および/または抗体に連結したテトラクロロ-3-6α-ジフェニルグリコウリル-3のような有機キレート剤を利用する金属キレート錯体の使用と関係する。モノクロナール抗体は、カップリング剤、例えばグルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸等の存在下で、酵素と反応することも可能である。フルオレセインマーカーを含むコンジュゲートが、このようなカップリング剤の存在下で、またはイソチオシアネートを用いた反応により調製され得る。
【0143】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるような抗体またはポリペプチドは、米国特許第4,676,980号明細書においてSegalにより記載されるように、第2抗体にコンジュゲートして抗体ヘテロコンジュゲートを形成し得る。そのようなヘテロコンジュゲート抗体は、ハプテン(例えば、フルオレセイン)、または細胞マーカー(例えば、4-1-BB、B7-H4、CD4、CD8、CD14、CD25、CD27、CD40、CD68、CD163、CTLA4、GITR、LAG-3、OX40、TIM3、TIM4、TLR2、LIGH、ICOS、B7-H3、B7-H7、B7-H7CR、CD70、CD47)、またはサイトカイン(例えば、IL-7、IL-15、IL-12、IL-4 TGF-β、IL-10、IL-17、IFNγ、Flt3、BLys)、またはケモカイン(例えば、CCL21)とさらに結合することができる。
【0144】
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗glycCTLA-4抗体またはグリコシル化CTLA-4ポリペプチドは、固体支持体(標的抗原において、または本明細書に記載されるような抗体もしくは抗原結合断片との結合を介して支持体に固定化された標的抗原と結合する能力を有するその他の分子おいて、そのイムノアッセイまたは精製にとって有用であり得る)にも連結可能である。そのような固体支持体として、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、またはポリプロピレンが挙げられるが、ただしこれらに限定されない。
【0145】
タンパク質の精製
タンパク質の精製技術は当業者に周知されている。この技術は、1つのレベルにおいて、細胞、組織、または臓器のホモジナイゼーション、およびそれらをポリペプチドおよび非ポリペプチド分画に未精製分画化することと関係する。目的とするタンパク質またはポリペプチドは、別途規定されない限り、一部または完全な精製(または均質精製)を実現するために、クロマトグラフィーおよび電気泳動技術を使用してさらに精製され得る。純粋なペプチドの調製に特に適する分析方法は、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、免疫親和性クロマトグラフィー、および等電点電気泳動法である。ペプチドを精製する特に効率的な方法は、高速性能液体クロマトグラフィー(FPLC)、または高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)である。当技術分野において一般的に公知であるように、様々な精製ステップを実施する順序は変化し得る、またはある特定のステップは省略され得るが、なおも実質的に精製されたポリペプチドを調製するための適する方法をもたらすものと考えられている。
【0146】
精製されたポリペプチドとは、その他のコンポーネントから単離可能な組成物を指すように意図され、ポリペプチドは、その自然において取得可能な状態と比較して、任意の程度まで精製される。単離または精製されたポリペプチドとは、したがって、自然に生じ得る環境とは無縁のポリペプチドも指す。一般的に、「精製された」とは、様々なその他のコンポーネントを取り除くために分画化が施されたポリペプチド組成物を指し、該組成物はその発現された生物学的活性を実質的に保持する。用語「実質的に精製された」が使用される場合、この呼称は、ポリペプチドが、例えば、組成物において、タンパク質の約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%等を占め、またはそれを上回る組成物の主要なコンポーネントをなすような組成物を指す。
【0147】
ポリペプチドの精製の程度を定量するための様々な方法が、本開示に照らし、当業者にとって公知である。これには、例えば、活性分画の比活性を決定すること、またはSDS/PAGE分析により分画内のポリペプチドの量を評価することが含まれる。分画の純度を評価するための好ましい方法は、分画の比活性を計算すること、それを初期抽出物の比活性と比較すること、そしてその中の純度を計算すること(「倍精製数」により評価される)である。活性の量を表すのに使用される実際の単位は、もちろん、発現されたポリペプチドが検出可能な活性を示すか示さないかによらず、精製を追跡するために選択された具体的なアッセイ技術に依存する。
【0148】
ポリペプチドはその最も精製された状態で常に提供されるという一般的要件は存在しない。実際、実質的純度がより低い生成物であっても、特定の実施形態では有用性を有し得るものと考えられる。部分的な精製が、より少ない数の精製ステップを組み合わせて使用することにより、または同一の一般的精製スキームの異なる形態を利用することにより実現可能である。例えば、HPLC装置を利用して実施されるカチオン交換カラムクロマトグラフィーは、低圧クロマトグラフィーシステムを利用する同一の技術よりも高「倍率」の精製を一般的にもたらすものと認識される。方法が示す相対的精製度がより低くても、タンパク質生成物の全体的な回収率において、または発現されたタンパク質の活性維持において長所を有し得る。
【0149】
アフィニティークロマトグラフィーは、単離される物質とそれが特異的に結合可能な分子との間の特異的親和性に立脚するクロマトグラフィー手順である。これは、受容体-リガンドタイプの相互作用である。カラム材料は、結合パートナーの1つを不溶性マトリックスに共有結合的にカップリングさせることにより合成される。カラム材料は、次に溶液から物質を特異的に吸着することができる。条件を、結合が生じない条件(例えば、pH、イオン強度、温度等の変化)に変化させることにより溶出が生ずる。マトリックスは、程度にかかわらず有意に分子を吸着せず、ならびに広範囲の化学的、物理的、および熱安定性を有する物質であるべきである。リガンドは、その結合特性に影響を及ぼさないようにカップリングすべきである。リガンドは、比較的緊密な結合も提供すべきである。試料またはリガンドを破壊することなく物質を溶出することが可能であるべきである。
【0150】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、溶液中の分子が、そのサイズ、またはより技術的な用語においてはその流体力学的容積に基づき分離されるクロマトグラフィー方法である。それは、大型の分子または高分子複合体、例えばタンパク質および工業ポリマー等に通常適用される。一般的に、カラムを通じて試料を輸送するのに水溶液が使用されるとき、技術はゲル濾過クロマトグラフィーとして公知である一方、移動相として有機溶媒が使用されるときには、ゲル浸透クロマトグラフィーという名称が使用される。SECの基礎原理は、異なるサイズの粒子が異なる速度で静止相を通じて溶出する(ふるいにかけられる)ことである。これはサイズに基づき、粒子の溶液の分離を引き起こす。すべての粒子が同時またはほぼ同時にローディングされるとすれば、同一サイズの粒子は共に溶出するはずである。
【0151】
高性能液体クロマトグラフィー(または高圧液体クロマトグラフィー、HPLC)は、化合物を分離、同定、および定量するために、生化学および分析化学において頻繁に使用されるカラムクロマトグラフィーの一形態である。HPLCは、クロマトグラフィー用充填材料(静止相)を保持するカラム、カラムを通じて移動相(複数可)を移動させるポンプ、および分子のリテンションタイムを示す検出器を利用する。リテンションタイムは、静止相、分析対象分子、および使用される溶媒(複数可)の間の相互作用に応じて変化する。
【0152】
CTLA-4のグリコシル化、N-結合型グリコシル化、またはN-グリコシル化を評価するための方法であって、CTLA-4含有試料を複数の実施形態の抗体(例えば、抗体は、非グリコシル化CTLA-4と比較して、グリコシル化CTLA-4と選択的に結合する)と接触させるステップを含む方法も本明細書に提示される。一部の態様では、方法は、in vitroでの方法である。ある特定の態様では、試料は細胞試料である。
【0153】
核酸
本開示は、本明細書に記載されるような抗glycCTLA-4抗体またはグリコシル化CTLA-4ポリペプチドのいずれかをコードする核酸分子(DNAまたはRNA)についても検討する。そのような核酸分子を伝達または複製するように構成されるベクター分子(例えば、プラスミド等)も本明細書に提示される。核酸は、一本鎖、二本鎖であり得るが、また一本鎖部分および二本鎖部分の両方を含有し得る。
【0154】
医薬調製物
抗体を含有する医薬組成物の臨床応用が実施される場合、意図した用途に適する医薬組成物または治療組成物を調製することが一般的に有益である。一般的に、医薬組成物は、有効量の、本明細書に記載されるような抗glycCTLA-4抗体もしくはグリコシル化CTLA-4ポリペプチドを有し得る、または追加の薬剤と共に薬学的に許容される担体中に溶解または分散され得る。
【0155】
本明細書に記載されるような抗glycCTLA-4抗体またはグリコシル化CTLA-4ポリペプチドを有する組成物も本明細書に提示される。一部の実施形態では、組成物は、少なくとも0.1重量%の抗体またはポリペプチドを有し得る。一部の実施形態では、組成物は、重量として少なくとも0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、またはそれを上回る抗glycCTLA-4抗体またはグリコシル化CTLA-4ポリペプチドを有し得る。その他の実施形態では、例えば、抗glycCTLA-4またはグリコシル化CTLA-4ポリペプチドは、組成物の重量の約2%~約75%、約25%~約60%、約30%~約50%、またはその中の任意の範囲を占めることができる。各治療上有用な組成物中の活性化合物(複数可)の量は、化合物の所与の単位用量がいずれであっても、適する投薬量がその用量において得られるように調製可能である。要因、例えば溶解度、バイオアベイラビリティー、生物学的半減期、投与経路、製品の使用期限、ならびにその他の薬理学的検討事項等が、そのような医薬製剤を調製する当業者により検討され、したがって様々な投薬量および処置レジメンが望まれ得る。
【0156】
組成物は、有効成分として抗glycCTLA-4抗体またはグリコシル化CTLA-4ポリペプチドならびに薬学的に許容される担体を有する医薬組成物であり得る。医薬組成物は、1つまたは複数の追加の有効成分をさらに含み得る。薬学的に許容される担体は、連邦または州政府の規制当局により承認された担体であり得る、または米国薬局方、欧州薬局方、または動物およびより具体的にはヒトを対象に使用するためのその他の一般的に認められた薬局方に掲載されている。
【0157】
本明細書で使用される場合、および別途規定されない限り、用語「担体」とは、希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントアジュバント(完全または不完全))、賦形剤、安定剤、または媒体を指し、それと共に治療剤が投与される。「薬学的に許容される担体」とは、採用された投薬量および濃度において、それに曝露された細胞または哺乳動物にとって非毒性である担体であり、滅菌性の液体、例えば水およびオイル等であり得、石油、動物、野菜、または合成を起源とするもの、例えばピーナッツ油、ダイズ油、鉱物油、ゴマ油等が含まれる。薬学的に許容される分子実体または組成物は、動物、例えばヒト等に適宜投与されるとき、有害でアレルギー性またはその他の有害反応を生成しない。抗体または追加の有効成分を有する医薬組成物の調製は、参照により本明細書に組み込まれているRemington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., 1990により例示されるように、本開示に照らし、当業者にとって公知である。それに加えて、動物(例えば、ヒト)への投与では、調製物は、FDA生物学標準事務所(FDA Office of Biological Standards)により要求される滅菌性、発熱性、一般的な安全性、および純度標準を満たすべきであるものと理解される。
【0158】
組成物は、1ml当たり抗体またはポリペプチド合計約0.001mgおよび約10mgを含むものと考えられる。したがって、組成物中の抗体またはポリペプチドの濃度は、およそ少なくともまたは最大でも約0.001、0.010、0.050、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0mg/ml、またはそれを上回り得る(またはその中で導かれる任意の範囲)。このうち、およそ少なくともまたは最大でも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%が、抗glycCTLA-4抗体またはグリコシル化CTLA-4ポリペプチドであり得る。
【0159】
本明細書に記載されるような抗体またはその他のポリペプチドを有効成分として有する医薬組成物の調製は、本開示に照らし、参照により本明細書に組み込まれるRemington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., 1990により例示されるように、当業者にとって公知である。それに加えて、動物(ヒトを含む)への投与では、調製物は、FDA生物学標準事務所により要求される滅菌性、発熱性、一般的な安全性、および純度標準を満たすべきであるものと理解される。
【0160】
薬学的に許容される担体には、液体、半固体すなわちペースト、または固体担体が含まれる。担体または希釈剤の例として、脂肪、オイル、水、生理食塩溶液、脂質、リポソーム、樹脂、バインダー、充填剤等、またはその組み合わせが挙げられる。薬学的に許容される担体には、当業者にとって公知であるような水性溶媒(例えば水、アルコール溶液/水性溶液、エタノール、生理食塩溶液、非経口媒体、例えば塩化ナトリウム、リンゲルデキストロース等)、非水性溶媒(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、および注射可能な有機エステル、例えばエチルオレエート等)、分散媒、コーティング(例えば、レシチン)、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤(例えば、抗菌剤、または抗真菌剤、酸化防止剤、キレート剤、不活性気体、パラベン(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール)、等張化剤(例えば、糖、塩化ナトリウム)、吸収遅延剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン)、塩、薬物、薬物安定剤(例えば、バッファー、アミノ酸、例えばグリシンおよびリジン等、炭水化物、例えばデキストロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、ソルビトール、マンニトール等)、ゲル、バインダー、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味料、着香料、色素、液体および栄養補充液、そのような材料、ならびにその組み合わせが含まれ得る。任意の従来の培地、薬剤、希釈剤、または担体が、レシピエントにとって、またはその中に含まれる組成物の治療有効性にとって有害である場合を除いて、方法を実践する際に使用される投与可能な組成物内でそれを使用することは適切である。医薬組成物中の様々なコンポーネントのpHおよび正確な濃度は、周知のパラメーターに従って調整される。本開示のある特定の態様に基づき、組成物は、任意の好都合かつ実用的な方式で、すなわち溶液化、懸濁化、乳化、混合、カプセル化、吸収、グラインディング等により、担体と組み合わせることができる。そのような手順は、当業者にとって日常的である。
【0161】
一部の実施形態では、薬学的に許容される担体は、水性のpH緩衝化溶液であり得る。例として、バッファー、例えばリン酸、クエン酸、およびその他の有機酸等;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(例えば、アミノ酸残基約10未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン等;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン等;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリジン等;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む単糖類、二糖類、およびその他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTA等;糖アルコール、例えばマンニトールまたはソルビトール等;造塩性カウンターイオン、例えばナトリウム等;ならびに/あるいは非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、およびPLURONICS(商標)等が挙げられる。
【0162】
一部の実施形態では、薬学的に許容される担体は、滅菌性の液体、例えば水、および石油、動物、野菜、または合成を起源とするもの、例えばピーナッツ油、ダイズ油、鉱物油、ゴマ油等を含む、オイル等であり得る。特に、医薬組成物が静脈内に投与されるとき、水が担体となり得る。生理食塩溶液および水性デキストロースおよびグリセロール溶液も、液体担体として、特に注射液用として利用可能である。適する薬学的賦形剤として、スターチ、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール、ポリソルベート-80等が挙げられる。組成物は、微量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤も含有することができる。これらの組成物は、溶液、懸濁物質、エマルジョン、錠剤、ピル、カプセル、粉末、徐放性製剤等の形態を採ることができる。
【0163】
本開示のある特定の実施形態は、担体が、固体、液体、またはエアゾールのどの形態で投与されるか、および投与経路、例えば注射等のために滅菌である必要があるかに応じて異なる種類の担体を有し得る。組成物は、当業者にとって公知であるように、静脈内、皮膚内、経皮的、髄腔内、動脈内、腹腔内、鼻腔内、膣内、直腸内、筋肉内、皮下、粘膜、口腔、局部的、局所的に投与し、吸入(例えば、エアゾール吸入)により、注射により、輸液により、連続輸液により、標的細胞を直接浸す局所的潅流により、カテーテルを介して、ラバージュを介して、脂質組成物(例えば、リポソーム)の状態で、またはその他の方法もしくは上記の任意の組み合わせにより投与するために製剤化され得る(例えば、参考として本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., 1990を参照)。一般的に、そのような組成物は、液体溶液または懸濁物質として調製可能であり;注射前に液体を添加して、溶液または懸濁物を調製する用途に適する固体形態も調製可能であり;また調製物を乳化することも可能である。
【0164】
抗glycCTLA-4抗体またはグリコシル化CTLA-4ポリペプチドは、遊離塩基、中性形態、または塩形態で組成物に製剤化可能である。薬学的に許容される塩には、酸付加塩、例えばタンパク質性組成物の遊離アミノ基と共に形成される塩が含まれ、あるいは無機酸、例えば塩化水素もしくはリン酸等、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、またはマンデル酸のような有機酸と共に形成される。遊離カルボキシル基と共に形成される塩は、無機塩基、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、もしくは水酸化第二鉄等;またはイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、もしくはプロカインのような有機塩基にも由来し得る。
【0165】
さらなる実施形態では、脂質を有する医薬組成物が本明細書に提示される。脂質には、水中で不溶性であることが特徴的であり、そして有機溶媒を用いて抽出可能である物質のクラスが広範に含まれ得る。いくつかの例として、長鎖脂肪族炭化水素およびその誘導体を含有する化合物が挙げられる。脂質は、天然に存在する、または合成的(すなわち、ヒトにより設計または生成される)であり得る。脂質は生体物質であり得る。生物学的脂質は当技術分野において周知されており、例えば、中性脂肪、リン脂質、ホスホグリセリド、ステロイド、テルペン、リゾリピド、グリコスフィンゴリピド、糖脂質、スルファチド、エーテルおよびエステルにリンクした脂肪酸を有する脂質、重合可能な脂質、ならびにその組み合わせが挙げられる。本明細書に特に記載されるもの以外の化合物であって、脂質として当業者により理解される化合物も使用可能である。
【0166】
組成物を脂質媒体中に分散するために採用され得る技術の範囲について、当業者は精通している。例えば、抗体またはポリペプチドは、当業者にとって公知の任意の手段により、脂質を含有する溶液に分散され、脂質と共に溶解され、脂質と共に乳化され、脂質と混合され、脂質と組み合わされ、脂質に共有結合し、脂質中に懸濁物として含まれ、ミセルまたはリポソームに含まれまたはそれと複合体形成し、さもなければ脂質または脂質構造と会合し得る。分散は、リポソームの形成を引き起こす場合もあれば、起こさない場合もある。
【0167】
一般的に、組成物の複数の成分は、密封されたコンテナ、例えば活性な薬剤の量を表示するアンプルまたはサシェ等中の、例えば真空凍結乾燥された粉末または無水濃縮物として、単位投与剤形中に個別に、または共に混合して供給される。組成物が輸液により投与される場合、該組成物は、滅菌医薬品グレードの水または生理食塩水を含有する輸液ボトルを用いて小分けされ得る。組成物が注射により投与される場合、注射用滅菌水または生理食塩水のアンプルが、投与前に成分が混合され得るように提供可能である。
【0168】
各治療上有用な組成物中の有効成分の量は、化合物の所与の単位用量がいずれであっても、適する投薬量がその用量において得られるように調製可能である。要因、例えば溶解度、バイオアベイラビリティー、生物学的半減期、投与経路、製品の使用期限、ならびにその他の薬理学的検討事項等が、そのような医薬製剤を調製する当業者により検討され、したがって様々な投薬量および処置レジメンが望まれ得る。
【0169】
単位用量または投薬量とは、対象における使用に適する物理的に独立した単位を指し、各単位は、その投与、すなわちふさわしい経路および処置レジメンと関連して、上記で議論された所望の応答が生成するように算出された医薬組成物の事前決定量を含有する。投与される量は、処置の回数および単位用量の両方に応じて、望まれる効果に依存する。患者または対象に投与される、本実施形態の組成物の実際の投与量は、物理的および生理学的要因、例えば対象の体重、年齢、健康、および性別、処置される疾患の種類、疾患浸透範囲、過去または現在の治療介入、患者の突発性疾患、投与経路、ならびに具体的な治療物質の能力、安定性、および毒性等により決定可能である。その他の非限定的な例では、用量は、1投与当たり、約1マイクログラム/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重、約10マイクログラム/kg/体重、約50マイクログラム/kg/体重、約100マイクログラム/kg/体重、約200マイクログラム/kg/体重、約350マイクログラム/kg/体重、約500マイクログラム/kg/体重、約1ミリグラム/kg/体重、約5ミリグラム/kg/体重、約10ミリグラム/kg/体重、約50ミリグラム/kg/体重、約100ミリグラム/kg/体重、約200ミリグラム/kg/体重、約350ミリグラム/kg/体重、約500ミリグラム/kg/体重~約1000ミリグラム/kg/体重、またはそれ超、およびその中で導かれる任意の範囲を有し得る。本明細書に掲載される数から導出可能な範囲の非限定的な例では、約5ミリグラム/kg/体重~約100ミリグラム/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重~約500ミリグラム/kg/体重等の範囲が、上記記載の数に基づき投与可能である。投与に責任を有する開業医は、何れにせよ、個々の対象に対して、組成物中の有効成分(複数可)の濃度および適する用量(複数可)を決定する。
【0170】
当業者が理解するように、本明細書に記載される組成物は、治療用調製物の特定の性質によって限定されない。例えば、そのような組成物は、生理学的に忍容される液体、ゲル、または固体担体、希釈剤、および賦形剤と共に、製剤中に提供可能である。これらの治療用調製物は、その他の治療剤と類似した方式で、獣医学用途で、例えば飼育動物等について、およびヒトを対象とする臨床用途で、哺乳動物に投与可能である。一般的に、治療効果に必要とされる投薬量は、使用の種類および投与様式、ならびに個々の対象の個別化された要件に応じて変化する。ヒト患者を含む動物患者に投与される組成物の実際の投薬量は、物理的および生理学的要因、例えば体重、状態の重症度、処置される疾患の種類、過去または現在の治療介入、患者の突発性疾患等により、および投与経路に基づき決定可能である。投薬量および投与経路に依存して、好ましい投薬量の投与回数および/または有効量は、対象の応答に基づき変化し得る。投与に責任を有する開業医は、何れにせよ、個々の対象に対して、組成物中の有効成分(複数可)の濃度および適する用量(複数可)を決定する。
【0171】
疾患の処置
本明細書で使用される場合、および別途規定されない限り、用語「対象」とは、処置、観察、および/または実験の対象である動物を指す。「動物」には、脊椎動物および無脊椎動物、例えばサカナ、甲殻類、爬虫類、鳥類等、および特に哺乳動物が含まれる。「哺乳動物」には、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、霊長類、例えばサル、チンパンジー、類人猿、およびヒト等が含まれるが、ただしこれらに限定されない。一部の実施形態では、対象はヒトである。
【0172】
本明細書で使用される場合、および別途規定されない限り、用語「がん」または「がん性」とは、未制御の細胞増殖により一般的に特徴づけられる、哺乳動物における生理状態を指す。がんの例として、血液学的がんおよび固形腫瘍が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。
【0173】
本明細書で使用される場合、および別途規定されない限り、用語「~を処置する」、「~を処置すること」、または「処置」とは、対象に対して治療剤を投与もしくは適用すること、または疾患もしくは健康に関連した状態の治療ベネフィットを取得するために、対象において手順または治療法を実施することを指す。例えば、処置は、治療有効量の抗glycCTLA-4抗体を対象に投与することを含み得る。がん患者と関連して使用されるとき、用語「~を処置する」、「~を処置すること」、または「処置」とは、がんの重症度を低下させ、またはがんの進行を遅延または低速化させる可能性のある措置を指し、(a)がんの増殖を阻害すること、がんの増殖速度を低下させること、発症を阻止すること、がんの侵襲性を低下させること、またはがんの転移を予防すること、および(b)がんの退化を引き起こすこと、またはがんの存在と関連する1つもしくは複数の症状を遅延させ、最低限に抑えること、またはがん患者の生存を延ばすことが含まれる。
【0174】
本明細書で使用される場合、および別途規定されない限り、用語「治療有効量」とは、所与の疾患、障害、もしくは状態、および/またはそれに関連する症状の重症度および/または期間を低下および/または良化させるのに十分な薬剤(例えば、本明細書に記載される抗体もしくはポリペプチド、または本明細書に記載される任意のその他の薬剤)の量を指す。治療剤を含む薬剤の治療有効量は、(i)所与の疾患、障害、または状態の増悪または進行の低下または改善、(ii)所与の疾患、障害、または状態の再発、発症、または発現の低下または改善、ならびに/あるいは(iii)別の療法の予防効果または治療効果を改善または強化すること(例えば、本明細書に提示される抗体の投与以外の療法)に必要な量であり得る。本開示の物質/分子/薬剤(例えば、抗glycCTLA-4抗体またはグリコシル化CTLA-4ポリペプチド)の治療有効量は、要因、例えば個人の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに個人において所望の応答を誘発する物質/分子/薬剤の能力等に応じて変化し得る。治療有効量は、治療上有益な効果が物質/分子/薬剤のあらゆる有毒または有害な効果を凌駕する量を包含する。
【0175】
本明細書で使用される場合、および別途規定されない限り、用語「~を投与する」または「投与」とは、身体外部に存在する物質を、例えば粘膜、皮内、静脈内、筋肉内送達方法等、および/または本明細書に記載される、もしくは当技術分野において公知の任意のその他の物理的送達方法により、患者内部に注入するさもなければ物理的に送達する行為を指す。疾患、障害、もしくは状態、またはその症状を処置する場合、物質の投与は、疾患、障害、もしくは状態、またはその症状が発現した後に一般的に生ずる。疾患、障害、もしくは状態、またはその症状を予防する場合、物質の投与は、疾患、障害、もしくは状態、またはその症状が発現する前に一般的に生ずる。
【0176】
抗glycCTLA-4抗体およびグリコシル化CTLA-4ポリペプチドの治療上の使用も、本明細書に提示される。これらの抗体またはポリペプチドは、CTLA-4/CD86シグナル伝達の活性を調節するのに使用可能である。これらの抗体またはポリペプチドは、CTLA-4/CD80シグナル伝達の活性を調節するのに使用可能である。これらの抗体またはポリペプチドは、T細胞の活性化または増殖において、CTLA-4の抑制的活性を阻害することにより疾患を処置するのにも使用可能である。したがって、CTLA-4シグナル伝達を阻害またはブロックすることによって対象の免疫系を上方調節する際の、そのような抗体またはポリペプチドの使用が本明細書に提示される。一部の実施形態では、CTLA-4がCD86に結合するのをブロックするための、抗体またはポリペプチドの使用が本明細書に提示される。一部の実施形態では、CTLA-4がCD80に結合するのをブロックするための、抗体またはポリペプチドの使用が本明細書に提示される。
【0177】
一部の実施形態では、がんの処置における、抗glycCTLA-4抗体およびグリコシル化CTLA-4ポリペプチドの治療上の使用も、本明細書に提示される。免疫系の上方調節はがんの処置において特に望ましく、したがってがんの処置方法についても本明細書に提示される。がんとは、細胞の異常で未制御の増殖に起因する新生物または腫瘍を指す。がんは、原発がんまたは転移がんであり得る。特殊な実施形態では、がん細胞は、CD86またはCD80について陽性である。
【0178】
ある特定の態様では、複数の実施形態のポリペプチドまたは抗体(例えば、グリコシル化CTLA-4ポリペプチドまたはグリコシル化CTLA-4と結合する抗体)は、がんを処置するために投与可能である。特殊な実施形態では、抗glycCTLA-4抗体は、STC1807のキメラまたはヒト化の形態である。本処置方法が有用であるがんには、任意の悪性細胞のタイプ、例えば固形腫瘍または血液学的腫瘍に見出されるもの等が含まれる。代表的な固形腫瘍として、膵臓、結腸、盲腸、胃、脳、頭部、頸部、卵巣、腎臓、喉頭、肉腫、肺、膀胱、黒色腫、前立腺、および乳房からなる群から選択される臓器の腫瘍を挙げることができるが、ただしこれらに限定されない。代表的な血液学的腫瘍として、骨髄の腫瘍、TまたはB細胞悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、芽細胞腫、ミエローマ等が挙げられる。本明細書に提示される方法を使用して処置され得るがんのさらなる例として、癌、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、白血病、扁平上皮がん、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺癌、および肺の扁平上皮癌を含む)、腹膜のがん、肝細胞がん、胃(gastric)または胃(stomach)のがん(胃腸がんおよび胃腸の間質性がんを含む)、膵がん、神経膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜または子宮の癌、唾液腺癌、腎臓(kidney)がんまたは腎(renal)がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、様々な種類の頭頸部がん、黒色腫、表在拡大型黒色腫、悪性黒子型黒色腫、末端黒子型黒色腫、結節型黒色腫、ならびにB細胞リンパ腫(低グレード/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中間グレード/濾胞性NHL;中間グレード拡散性NHL;高グレード免疫芽細胞性NHL;高グレードリンパ芽球性NHL;高グレード小型非切れ込み核細胞性NHL;巨大腫瘤病変NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;およびワルデンシュトレームマクログロブリン血症を含む)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、有毛状細胞性白血病、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)および慢性骨髄芽球性白血病が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。
【0179】
がんは、具体的には、下記の組織学的タイプ:新生物、悪性;癌;未分化癌;巨大および紡錘細胞癌;小細胞癌;乳頭状癌;扁平上皮癌;リンパ上皮癌;基底細胞癌;石灰化上皮癌;移行上皮癌;乳頭状移行上皮癌;腺癌;悪性ガストリン産生腫瘍;胆管癌;肝細胞癌;肝細胞癌および胆管癌の複合;小柱状腺癌;腺様嚢胞癌;腺腫様ポリープ内の腺癌;腺癌、家族性大腸ポリポーシス;固形癌;悪性カルチノイド腫瘍;ブランキオロ細気管支肺胞上皮癌;乳頭状腺癌;色素嫌性癌;好酸性癌;好酸素性腺癌;好塩基性癌;明細胞腺癌;顆粒細胞癌;濾胞腺癌;乳頭状濾胞腺癌;非被包性硬化性癌;副腎皮質癌;類内膜癌;皮膚付属器癌;アポクリン腺癌;皮脂腺癌;耳垢腺癌;粘膜表皮癌;嚢胞腺癌;乳頭状嚢腺癌;乳頭状漿液嚢胞腺癌;粘液性嚢胞腺癌;粘液性腺癌;印環細胞癌;浸潤性導管癌;髄様癌;小葉癌;炎症性癌;乳房パジェット病;腺房細胞癌;腺扁平上皮癌;扁平上皮化生を伴う腺癌;悪性胸腺癌;悪性卵巣間質腫;悪性卵胞膜細胞腫;悪性顆粒膜細胞腫;悪性アンドロブラストーマ;セルトリ細胞腫;悪性ライディッヒ細胞腫;悪性脂質細胞腫;悪性傍神経節腫;悪性乳房外傍神経節腫;クロム親和細胞腫;血管球血管肉腫;悪性黒色腫;無色素性悪性黒色腫;表在拡大型黒色腫;巨大色素性母斑内の悪性黒色腫;類上皮細胞黒色腫;悪性青色母斑;肉腫;線維肉腫;悪性線維性組織球腫;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉腫;胞巣状横紋筋肉腫;間質性肉腫;悪性混合腫瘍;ミューラー管混合腫瘍;腎芽細胞腫;肝芽細胞腫;癌肉腫;悪性間葉細胞腫;悪性ブレンナー腫瘍;悪性葉状腫瘍;滑膜肉腫;悪性中皮腫;未分化胚細胞腫;胎生期癌;悪性テラトーマ;悪性卵巣甲状腺腫;絨毛癌;悪性中腎腫;血管肉腫;悪性血管内皮腫;カポジ肉腫;悪性血管外皮細胞腫;リンパ肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;悪性軟骨芽細胞腫;間葉性軟骨肉腫;骨巨細胞腫;ユーイング肉腫;悪性歯原性腫瘍;エナメル上皮歯牙肉腫;悪性エナメル上皮腫;エナメル上皮線維肉腫;悪性松果体腫;脊索腫;悪性神経膠腫;上衣腫;星状細胞腫;原形質性星状細胞腫;線維性星細胞腫;星状芽細胞腫;神経膠芽腫;希突起神経膠腫;乏突起膠芽細胞腫;原始神経外胚葉性;小脳肉腫;神経節細胞芽腫;神経芽細胞腫;網膜芽細胞腫;嗅神経腫瘍;悪性髄膜腫;神経線維肉腫;悪性神経鞘腫;悪性顆粒細胞腫;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキン;側肉芽腫;小リンパ球性悪性リンパ腫;大細胞型拡散性悪性リンパ腫;濾胞性悪性リンパ腫;菌状息肉腫;その他の規定された非ホジキンリンパ腫;悪性組織球症;多発性骨髄腫;マスト細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞性白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球白血病;マスト細胞白血病;巨核芽球性白血病;骨髄性肉腫;および有毛状細胞性白血病のいずれかに該当するが、ただしこれらに限定されない。
【0180】
一部の実施形態では、本明細書に提示される抗体またはポリペプチドは、乳がん、肺がん、頭部および頸部がん、前立腺がん、食道がん、気管がん、脳腫瘍、肝がん、膀胱がん、胃がん、膵がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頸がん、精巣がん、結腸がん、直腸がん、または皮膚がんであるがんを処置するのに使用可能である。
【0181】
ポリペプチドまたは抗体は、様々なモダリティーにおける抗腫瘍薬として、本明細書において使用可能である。抗腫瘍薬としてポリペプチドまたは抗体を使用する方法、したがって腫瘍細胞の集団を治療有効量のポリペプチドまたは抗体と、腫瘍細胞の増殖を阻害するのに十分な期間接触させるステップを含む方法が本明細書に提示される。
【0182】
様々な送達システムも公知であり、また抗glycCTLA-4抗体、またはグリコシル化CTLA-4ポリペプチドの関連する分子、または関連する医薬組成物、例えばリポソーム内封入、微粒子、マイクロカプセル、抗体または融合タンパク質を発現する能力を有する組換え細胞等、受容体媒介型のエンドサイトーシス(例えば、Wu and Wu, 1987, J. Biol. Chem. 262:4429-4432を参照)、レトロウイルスベクターまたはその他のベクターの一部として核酸からなる構築物等を投与するのに使用可能である。
【0183】
本明細書に提示されるような投与方法として、非経口投与(例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、および皮下)、硬膜外、および粘膜(例えば、鼻腔内および経口経路)等による注射が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。一部の実施形態では、本明細書に提示される抗体、その他の分子、または医薬組成物は、筋肉内、静脈内、皮下、静脈内、腹腔内、口腔内、筋肉内、皮下、体腔内、経皮、または皮膚に投与される。組成物は、任意の好都合な経路により、例えば、輸液またはボーラス注射により、上皮または皮膚粘膜ライニング(例えば、口腔粘膜、直腸および腸の粘膜等)を通じた吸収により投与可能であり、またその他の生物学的に活性な薬剤と共に投与可能である。投与は全身的または局所的であり得る。それに加えて、例えば、吸入器またはネブライザー、およびエアゾール化剤を含む製剤の使用による肺投与も採用され得る。例えば、米国特許第6,019,968号明細書;同第5,985,20号明細書;同第5,985,309号明細書;同第5,934,272号明細書;同第5,874,064号明細書;同第5,855,913号明細書;同第5,290,540号明細書;および同第4,880,078号明細書;およびPCT公開番号、国際公開第92/19244号パンフレット;同第97/32572号パンフレット;同第97/44013号パンフレット;同第98/31346号パンフレット;および同第99/66903号パンフレットを参照;そのすべては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。一部の実施形態では、本明細書に提示される抗体、その他の分子、または医薬組成物は、処置を必要とするエリアに対して局所的に投与されるが、局所的投与は、例えば、局所的輸液により、注射により、またはインプラントによって達成可能であり、前記インプラントは、メンブレン、例えばシアラスティックメンブレンまたはファイバー等を含む、多孔性、非多孔性、またはゼラチン状の物質に該当する。一部の実施形態では、本明細書に記載されるような抗体またはその他の分子を投与する場合、抗体またはその他の分子が吸着しない材料を使用するように注意が払われる。
【0184】
一部の実施形態では、本明細書に提示される抗体またはポリペプチドは、標的送達用のリポソーム中に製剤化される。リポソームは、同心円状に整列したリン脂質二重層(水相をカプセル化する)から構成される小胞である。リポソームは、様々な種類の脂質、リン脂質、および/または界面活性剤を一般的に有する。リポソームのコンポーネントは、生体膜の脂質の配置と類似した二重層コンフィギュレーションで配置されている。リポソームは、その生体適合性、低免疫原性、および低毒性に一部起因して、有用な送達媒体であり得る。リポソームの調製方法は当技術分野において公知であり、また本明細書に提示され、例えばそのすべてが参照によりその全体が本明細書に組み込まれるEpstein et al., 1985, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82: 3688、Hwang et al., 1980 Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77: 4030-4、米国特許第4,485,045号明細書、および同第4,544,545号明細書を参照。
【0185】
血清半減期が延長された、すなわち循環時間が強化されたリポソーム、例えば米国特許第5,013,556号明細書で開示されるもの等を調製する方法も本明細書に提示される。一部の実施形態では、本明細書に提示される方法で使用されるリポソームは、循環から速やかに排出されない、すなわち単核食細胞系(MPS)中に取り込まれない。当業者にとって公知の一般的な方法を使用して調製される、立体的に安定化したリポソームも本明細書に提示される。立体的に安定化したリポソームは、バルキーで高度に可撓性の親水性部分(リポソームと血清タンパク質との望ましくない反応を低下させ、血清コンポーネントとのオプソニン化を低下させ、およびMPSによる認識を低下させる)を備えた脂質コンポーネントを含有し得る。立体的に安定化したリポソームは、ポリエチレングリコールを使用して調製可能である。リポソームおよび立体的に安定化したリポソームの調製については、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるBendas et al., 2001 BioDrugs, 15(4): 215-224、Allen et al., 1987 FEBS Lett. 223: 42-6、Klibanov et al., 1990 FEBS Lett., 268: 235-7、Blum et al., 1990, Biochim. Biophys. Acta., 1029: 91-7、Torchilin et al., 1996, J. Liposome Res. 6: 99-116、Litzinger et al., 1994, Biochim. Biophys. Acta, 1190: 99-107、Maruyama et al., 1991, Chem. Pharm. Bull., 39: 1620-2、Klibanov et al., 1991, Biochim Biophys Acta, 1062; 142-8、Allen et al., 1994, Adv. Drug Deliv. Rev, 13: 285-309を参照。
【0186】
特定の臓器を標的とし(例えば、米国特許第4,544,545号明細書を参照)、または特定の細胞を標的とする(例えば、米国特許出願公開第2005/0074403号明細書を参照)ように構成されるリポソームも本明細書に提示される(両特許は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。本明細書に提示される組成物および方法で使用するための特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物を用いて、逆相蒸着方法により生成可能である。リポソームは、規定されたポアサイズのフィルターを通じて射出することで所望の直径を有するリポソームを得ることができる。一部の実施形態では、抗原結合断片、例えばF(ab’)を有する分子は、既記載の方法を使用してリポソームにコンジュゲートすることができ、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるMartin et al., 1982, J. Biol. Chem. 257: 286-288を参照。
【0187】
本明細書に記載されるようなヒト化またはキメラ抗体も、イムノリポソームとして製剤化可能である。イムノリポソームとは、抗体またはその断片がリポソームの表面に共有結合的または非共有結合的にリンクしているリポソームの組成物を指す。抗体をリポソームの表面にリンクさせる化学は当技術分野において公知であり、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,787,153号明細書、Allen et al., 1995, Stealth Liposomes, Boca Rotan: CRC Press, 233-44、Hansen et al., 1995, Biochim. Biophys. Acta, 1239: 133-144を参照。一部の実施形態では、本明細書に提示される方法および組成物で使用するためのイムノリポソームは、さらに立体的に安定化されている。一部の実施形態では、本明細書に記載されるようなヒト化抗体は、リポソームの脂質二重層内に安定的に根を生やした疎水性アンカーと共有結合的または非共有結合的にリンクする。疎水性アンカーの例として、リン脂質、例えば、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルイノシトール(PI)が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。抗体と疎水性アンカーの間で共有結合を実現するために、当技術分野において公知の生化学的戦略のいずれかが使用可能であり、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるJ. Thomas August ed., 1997, Gene Therapy: Advances in Pharmacology, Volume 40, Academic Press, San Diego, Calif., p. 399-435を参照。例えば、抗体分子上の官能基は、リポソーム会合疎水性アンカー上の活性な基と反応することができ、例えば抗体上のリジン側鎖のアミノ基は、水溶性カルボジイミドによって活性化したリポソーム会合N-グルタリル-ホスファチジルエタノールアミンとカップリングし得る;または還元された抗体のチオール基は、チオール反応性アンカー、例えばピリジルチオプロピオニルホスファチジルエタノールアミン等を介してリポソームとカップリングし得る。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるDietrich et al., 1996, Biochemistry, 35: 1100-1105; Loughrey et al., 1987, Biochim. Biophys. Acta, 901: 157-160; Martin et al., 1982, J. Biol. Chem. 257: 286-288; Martin et al., 1981, Biochemistry, 20: 4429-38を参照。抗グリコシル化CTLA-4抗体を有するイムノリポソーム製剤は、有効成分を標的細胞、すなわち抗体が結合する受容体を含む細胞の細胞質に送達するので、治療剤として特に有効であり得る。一部の実施形態では、イムノリポソームは、血液、特に標的細胞において延長された半減期を有することができ、そして標的細胞の細質胞中に内部移行することができ、これにより治療剤の喪失またはエンドリソソソーム経路による分解が回避される。
【0188】
本明細書に提示されるイムノリポソーム組成物は、1つまたは複数の小胞形成脂質、本発明の抗体もしくはその他の分子、またはその断片もしくは誘導体、および任意選択で親水性ポリマーを有し得る。小胞形成脂質は、2つ炭化水素鎖、例えばアシル鎖と極性頭部基等を有する脂質であり得る。小胞形成脂質の例として、リン脂質、例えばホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、および糖脂質、例えば、セレブロシド、ガングリオシドが挙げられる。本明細書に提示される製剤において有用な追加の脂質は、当業者にとって公知であり、また本説明に包含される。一部の実施形態では、イムノリポソーム組成物は、リポソームの血清半減期を伸ばす親水性ポリマー、例えばポリエチレングリコール、およびガングリオシドGM1をさらに含む。親水性ポリマーをリポソームにコンジュゲートさせる方法は、当技術分野において周知されており、また本説明に包含される。該組成物を調製する追加の代表的なイムノリポソームおよび方法は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2003/0044407号明細書;PCT国際特許出願番号、国際公開第97/38731号パンフレット、Vingerhoeads et al., 1994, Immunomethods, 4: 259-72、Maruyama, 2000, Biol. Pharm. Bull. 23(7): 791-799、Abra et al., 2002, Journal of Liposome Research, 12(1&2): 1-3、Park, 2002, Bioscience Reports, 22(2): 267-281、Bendas et al., 2001 BioDrugs, 14(4): 215-224、J. Thomas August ed., 1997, Gene Therapy: Advances in Pharmacology, Volume 40, Academic Press, San Diego, Calif., p. 399-435に見出され得る。
【0189】
抗glycCTLA-4抗体を単位用量で患者に投与することにより、がん患者を処置する方法も本明細書に提示される。グリコシル化CTLA-4ポリペプチドを、単位用量で患者に投与することにより、がん患者を処置する方法も本明細書に提示される。単位用量とは、対象に対して一元的に投薬するのに適する物理的に分離した単位を指し、各単位は、必要とされる希釈剤、すなわち担体または媒体と関連して所望の治療効果を生み出すように計算された、活性物質の事前決定量を含有する。
【0190】
抗体、ポリペプチド、または組成物は、投与製剤に適合する方式で、そして治療有効量で投与される。投与される量は、処置される対象、有効成分を利用する対象のシステムの能力、および所望の治療効果の程度に依存する。投与に必要とされる有効成分の正確な量は、開業医の判断に依存し、そして個々の対象それぞれにとって固有である。しかしながら、全身的適用に適する投薬量の範囲が本明細書に開示されるが、それは投与経路に依存する。初回およびブースター投与に適するレジメンも検討され、そして初回投与と、後続する注射またはその他の投与による、1時間またはそれ以上の時間間隔を置いたその後の反復投与による投与が一般的に含まれる。代表的な複数回投与が本明細書に記載され、ポリペプチドまたは抗体の血清および組織レベルを継続して高く維持するのに有用である。あるいは、血液中の濃度を、in vivo治療目的で規定された範囲内に維持するのに十分な連続静脈内輸液が検討される。
【0191】
治療有効量は、所望の効果を実現するように計算された事前決定量である。一般的に、投薬量は、患者の年齢、状態、性別、および患者内の疾患の範囲によって変化し、また当業者により決定可能である。何らかの合併症が生じた場合には、個々の医師によって投薬量を調整することができる。
【0192】
一部の実施形態では、本明細書に提示する抗体、ポリペプチド、または医薬組成物は、密封されたコンテナ、例えばアンプルまたはサシェ等の中に収納される。1つの実施形態では、本明細書に提示する抗体、ポリペプチド、または医薬組成物は、密封されたコンテナ内に、滅菌真空凍結乾燥された粉末または無水濃縮物として供給され、そして例えば水または生理食塩水を用いて、対象への投与に適する濃度に復元され得る。一部の実施形態では、本明細書に提示される抗体、ポリペプチド、または医薬組成物は、密封されたコンテナ内に、少なくとも5mg、より好ましくは少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも25mg、少なくとも35mg、少なくとも45mg、少なくとも50mg、または少なくとも75mgの単位投薬量で、滅菌真空凍結乾燥された粉末として供給される。真空凍結乾燥された、本明細書に提示される抗体、ポリペプチド、または医薬組成物は、そのオリジナルのコンテナ内に2~8℃で保管されるべきであり、また復元後、12時間内、好ましくは6時間内、5時間内、3時間内、または1時間内に投与されるべきである。代替的実施形態では、本明細書に提示される抗体、ポリペプチド、または医薬組成物は、抗体、ポリペプチド、または医薬組成物の量および濃度を表示する密封されたコンテナ内に液体形態で供給される。一部の実施形態では、本明細書に提示される抗体、ポリペプチド、または医薬組成物の液体形態は、少なくとも1mg/ml、より好ましくは少なくとも2.5mg/ml、少なくとも5mg/ml、少なくとも8mg/ml、少なくとも10mg/ml、少なくとも15mg/ml、少なくとも25mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも100mg/ml、少なくとも150mg/ml、少なくとも200mg/mlで密封されたコンテナ内に供給される。
【0193】
製剤において採用される正確な用量も、やはり投与経路および状態の重篤度に依存し、また開業医の判断および各患者の状況に基づき決定されるべきである。有効用量は、in vitroまたは動物モデルテストシステムに由来する用量応答曲線から推定され得る。抗glycCTLA-4抗体またはグリコシル化CTLA-4ポリペプチドの場合、患者に投与される投薬量は、一般的に患者の体重1kg当たり0.01mg~100mgである。一部の実施形態では、患者に投与される投薬量は、患者の体重1kg当たり0.01mg~20mg、0.01mg~10mg、0.01mg~5mg、0.01~2mg、0.01~1mg、0.01mg~0.75mg、0.01mg~0.5mg、0.01mg~0.25mg、0.01~0.15mg、0.01~0.10mg、0.01~0.05mg、または0.01~0.025mgである。患者に投与される投薬量は、0.2mg/kg、0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、6mg/kg、または10mg/kgであり得る。0.01mg/kgほどの低用量でも、明らかな薬力学的効果を示すと予測される。0.10~1mg/kgの用量レベルが最も適すると予測される。より高用量(例えば、1~30mg/kg)も活性であると予想され得る。一般的に、外来のポリペプチドに対して免疫応答が生ずることから、その他の種に由来する抗体よりも、ヒト抗体は人体内でより長い半減期を有する。したがって、ヒト抗体では、より低い投薬量およびより低い頻度の投与が実践可能である。さらに、本明細書に提示される抗体またはポリペプチドの投薬量および投与頻度は、改変、例えば脂質化等によって抗体の取込みおよび組織穿通を強化することにより低下し得る。
【0194】
なおも別の実施形態では、組成物は、制御放出型または持続放出型のシステム内に送達可能である。当業者にとって公知の任意の技術が、1つまたは複数の、本明細書に提示される抗体、分子、または医薬組成物を有する持続放出型製剤を生成するのに使用可能である。例えば、そのすべてが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第4,526,938号明細書;PCT広報、国際公開第91/05548号パンフレット;PCT広報、国際公開第96/20698号パンフレット;Ning et al., Radiotherapy & Oncology 39:179-189 (1996)、Song et al., PDA Journal of Pharmaceutical Science & Technology 50:372-397 (1995)、Cleek et al., Pro. Int'l. Symp. Control. Rel. Bioact. Mater. 24:853-854 (1997)、およびLam et al., Proc. Int'l. Symp. Control Rel. Bioact. Mater. 24:759-760(1997)を参照。1つの実施形態では、ポンプが制御放出型システムにおいて使用可能である(Langer, supra; Sefton, 1987, CRC Crit. Ref Biomed. Eng. 14:20、Buchwald et al., 1980, Surgery 88:507、およびSaudek et al., 1989, N. Engl. J. Med. 321:574を参照)。別の実施形態では、ポリマー材料が、抗体またはポリペプチドの制御放出を実現するのに使用可能である(例えば、Medical Applications of Controlled Release, Langer and Wise (eds.), CRC Pres., Boca Raton, Fla. (1974)、Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance, Smolen and Ball (eds.), Wiley, New York (1984)、Ranger and Peppas, 1983, J., Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61を参照。Levy et al., 1985, Science 228:190、During et al., 1989, Ann. Neurol. 25:351、Howard et al., 1989, J. Neurosurg. 7 1:105、米国特許第5,679,377号明細書;同第5,916,597号明細書;同第5,912,015号明細書;同第5,989,463号明細書;同第5,128,326号明細書;PCT公開番号、国際公開第99/15154号パンフレット;およびPCT公開番号、国際公開第99/20253号明細書も参照);そのすべては参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0195】
持続放出型製剤において使用可能であるポリマーの例として、ポリ(-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレン-co-ビニルアセテート)、ポリ(メタクリル酸)、ポリグリコリド(PLG)、ポリアンヒドリド、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリラクチド(PLA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、およびポリオルトエステルが挙げられるが、ただしこれらに限定されない。なおも別の実施形態では、制御放出型システムは、治療標的(例えば、肺)の近傍に配置することができ、したがって全身投与量の一部分のみを必要とする(例えば、Goodson, in Medical Applications of Controlled Release, supra, vol. 2, pp. 115-138 (1984)を参照)。別の実施形態では、制御放出型インプラントとして有用なポリマー組成物が、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるDunnら(米国特許第5,945,155号明細書を参照)に基づき使用される。生物学的活性物質をポリマー系からin situ制御放出するときの治療効果に基づき、治療処置を必要としている患者の身体内の任意の場所で移植が一般的に行われ得る。
【0196】
別の実施形態では、非ポリマー持続送達システムが使用され、それによって対象の身体内の非ポリマーインプラントが、薬物送達システムとして使用される。身体内に移植されると、インプラントの有機溶媒が組成物から周辺組織液中に放散、拡散、または浸出し、そして非ポリマー物質が徐々に凝固または沈殿して、固体の微多孔性マトリックスを形成する(米国特許第5,888,533号明細書を参照)。制御放出システムも、Langer(1990, Science 249:1527-1533)によるレビューにおいて議論されている。当業者にとって公知の任意の技術が、1つまたは複数の本明細書に提示される治療剤を含む持続放出型製剤を生成するのに使用可能である。例えば、そのすべてが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第4,526,938号明細書;国際公開番号、国際公開第91/05548号パンフレットおよび国際公開第96/20698号パンフレット;Ning et al., 1996, Radiotherapy & Oncology 39:179-189、Song et al., 1995, PDA Journal of Pharmaceutical Science & Technology 50:372-397、Cleek et al., 1997, Pro. Int'l. Symp. Control. Rel. Bioact. Mater. 24:853-854、およびLam et al., 1997, Proc. Int'l. Symp. Control Rel. Bioact. Mater. 24:759-760を参照。
【0197】
組成物が本明細書に提示される抗体またはポリペプチドをコードする核酸を有し、例えば、レトロウイルスベクターの使用により(米国特許第4,980,286号明細書を参照)、または直接注射により、または微粒子銃法(例えば、遺伝子銃;Biolistic、Dupont社)の使用により、または脂質もしくは細胞表面受容体もしくはトランスフェクション剤でコーティングすることにより、核酸が細胞内となるように、核酸を適する核酸発現ベクターの一部として構築し、それを投与することによって、あるいは核に進入することが公知であるホメオボックス様ペプチドと連携してそれを投与することによって(例えば、Joliot et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:1864-1868を参照)、該核酸がin vivoで投与可能となり、それがコードする抗体またはポリペプチドの発現が促進される実施形態も本明細書に提示される。あるいは、核酸は細胞内に導入され、そして相同的組換えにより、発現用として宿主細胞DNA内に組み込まれ得る。
【0198】
治療有効量の本明細書に提示される抗体、ポリペプチド、または医薬組成物を用いた対象の処置は、単回処置、または一連の処置を含み得る。本明細書に提示される抗体、ポリペプチド、または医薬組成物は、疾患を処置するために、例えば局所的に進行したがんまたは転移がんを有するがん患者において、腫瘍細胞の増殖を阻害しまたはがん細胞を殺傷する等のために、全身的または局所的に投与可能であると考えられる。それは、静脈内、髄腔内、および/または腹腔内に投与可能である。それは、単独または抗増殖薬と組み合わせて投与可能である。1つの実施形態では、それは、手術またはその他の手技の前に、患者内のがん負荷を低下させるために投与される。あるいは、それは、残存するあらゆるがん(例えば、手術で取り除くことができなかったがん)が生き残らないことを保証するために、手術後に投与可能である。一部の実施形態では、それは、転移を防止するために、原発がんが退化した後に投与可能である。
【0199】
併用処置
特定の実施形態では、いくつかの実施形態の組成物および方法は、グリコシル化CTLA-4ポリペプチド、またはグリコシル化CTLA-4と選択的に結合する抗体を、第2または追加の療法と組み合わせて投与することと関係する。そのような療法は、CTLA-4またはグリコシル化CTLA-4と関連するあらゆる疾患の処置に適用され得る。例えば、疾患はがんであり得、そして第2の療法は抗がん療法または抗過剰増殖療法である。
【0200】
併用療法を含む方法および組成物は、治療効果もしくは保護効果を強化し、および/または別の抗がん療法または抗過剰増殖療法の治療効果を増加させる。治療および予防方法、ならびに組成物は、所望の効果、例えばがん細胞の殺傷および/または細胞過剰増殖阻害等を実現するのに有効な複合量で提供可能である。このプロセスは、ポリペプチドまたは抗体および第2の療法を投与することと関係し得る。第2の療法は、直接的な細胞傷害効果を有する場合もあれば、また有さない場合もある。例えば、第2の療法は、直接的な細胞傷害効果は有さないで免疫系を上方制御する薬剤であり得る。組織、腫瘍、または細胞は、1つもしくは複数の組成物、または薬剤(例えば、抗体または抗がん剤)の1つもしくは複数を含む薬理学的製剤(複数可)に曝露される場合があり、あるいは組織、腫瘍、および/または細胞を、2つまたはそれより多くの異なる組成物または製剤と共に曝露することにより曝露される場合があり、その場合、1つの組成物は、1)ポリペプチドまたは抗体、2)抗がん剤、または3)ポリペプチドまたは抗体および抗がん剤の両方を提供する。そのような併用療法は、化学療法、放射線療法、外科療法、または免疫療法と連携して使用可能であるものとやはり考えられる。
【0201】
用語「接触される」および「曝露される」は、細胞に適用されるとき、治療用ポリペプチドもしくは抗体、および化学療法剤もしくは放射線療法剤を標的細胞に送達するプロセス、または標的細胞と直接並列して配置するプロセスを記載するために本明細書において使用される。細胞殺傷を実現するために、例えば、両薬剤は、細胞を殺傷し、または細胞が分裂するのを阻止するのに有効な複合量で細胞に送達される。
【0202】
抗glycCTLA-4抗体またはグリコシル化CTLA-4ポリペプチドは、第2または追加の抗がん処置と比較して、その前、期間中、後において、または様々に組み合わせて投与可能である。投与は、同時から数分~数日~数週間の範囲の間隔であり得る。抗体またはポリペプチドが、抗がん剤とは分離して患者に提供される複数の実施形態では、2つの化合物が、患者に対して有利に複合した効果をなおも発揮することができるように、各送達の間の時間に、有効時間が失効しないことが一般的に保証される。そのような事例では、相互に約12~24時間または72時間内、より具体的には、相互に約6~12時間内に、抗glycCTLA-4抗体またはグリコシル化CTLA-4ポリペプチド、および第2の療法を患者に提供可能であると考えられる。状況によっては、各投与の間で数日(2、3、4、5、6、または7)~数週間(1、2、3、4、5、6、7、または8)経過する場合、処置の期間は有意に延長され得る。
【0203】
特殊な実施形態では、抗glycCTLA-4抗体は、がんを有する処置対象患者に対してイピリムマブと併用投与することを含め、1つまたは複数のその他の抗CTLA-4抗体と併用投与される。その他の実施形態では、抗glycCTLA-4抗体は、1つまたは複数の抗PD-1抗体と併用投与され、また特殊な実施形態では、抗PD-1抗体は、がんの処置を目的として患者に投与されるペンブロリズマブ、ニボルマブ、またはピディリズマブである。その他の実施形態では、抗glycCTLA-4抗体は、CTLA-4、PD-L1、またはPD-1の活性を阻害する薬剤、例えば、Fcドメインに融合したPD-1、PD-L1、またはCTLA-4タンパク質の細胞外受容体またはリガンド結合部分を有するイムノアドヘシンと共に投与される。一部の実施形態では、抗glycCTLA-4抗体は、デュルバルマブと併用投与される。
【0204】
特殊な実施形態では、抗glycCTLA-4抗体は、非グリコシル化PD-L1と比較して、グリコシル化PD-L1に優先的に結合する抗体と併用投与される。特に、抗glycCTLA-4抗体は、非グリコシル化PD-L1と比較して、グリコシル化PD-L1に優先的に結合する抗PD-L1抗体STM004またはSTM115のキメラまたはヒト化の形態と併用投与され得るが、また重鎖および軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列(およびコーディングヌクレオチド配列)は、参照により本明細書に組み込まれている、2016年10月6日に公表された、「グリコシル化PD-L1に対して特異的な抗体およびその使用方法」と題するPCT公開、国際公開広報第2016/160792号パンフレットに開示されている。抗glyc-CTLA-4抗体は、非グリコシル化PD-L1と比較して、グリコシル化PD-L1に優先的に結合する抗PD-L1抗体STM073およびSMT108のキメラまたはヒト化の形態とも併用投与されるが、また重鎖および軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列(およびコーディングヌクレオチド配列)は、参照により本明細書に組み込まれている、2016年3月29日出願の、「グリコシル化PD-L1に対して特異的な二重機能抗体およびその使用方法」と題する米国仮特許出願第62/314,652号明細書に開示されている。一部の実施形態では、抗glycCTLA-4抗体は、アテゾリズマブまたはアベルマブと併用投与される。
【0205】
特定の実施形態では、処置のコースは、1~90日間またはそれを上回る期間継続し得る(そのような範囲には中間日も含まれる)。1つの薬剤が、1日目~90日目の任意の日(そのような範囲には中間日も含まれる)または任意のその組み合わせにおいて与えられ、および別の薬剤が、1日目~90日目の任意の日(そのような範囲には中間日も含まれる)、または任意のその組み合わせにおいて与えられ得るものと考えられる。単一日(24時間)内に、薬剤(複数可)の1回または複数回投与を、患者に与えることができる。それに加えて、処置のコースの後に、抗がん処置が投与されない期間が存在するものと考えられる。この期間は、患者の状態、例えばその予後、強度、健康等に応じて、1~7日間、および/または1~5週間、および/または1~12カ月、またはそれを上回る期間継続し得る(そのような範囲には中間日も含まれる)。処置サイクルは必要に応じて反復され得る。
【0206】
様々な組み合わせが採用され得る。抗glycCTLA-4抗体またはグリコシル化CTLA-4ポリペプチドを「A」とし、および第2の抗がん療法を「B」として、これらを用いた処置についてそのいくつかの例を以下に掲載する:
A/B/A B/A/B B/B/A A/A/B A/B/B B/A/A A/B/B/B B/A/B/B B/B/B/A B/B/A/B A/A/B/B A/B/A/B A/B/B/A B/B/A/A B/A/B/A B/A/A/B A/A/A/B B/A/A/A A/B/A/A A/A/B/A
【0207】
第2の療法と併用して、本明細書に提示される任意の抗体、ポリペプチド、または医薬組成物を患者に投与する場合、もしあれば第2の療法の毒性を考慮しながら、そのような第2の療法を投与するための一般的なプロトコールに従う。したがって、一部の実施形態では、併用療法に起因する毒性をモニタリングするステップが存在する。
【0208】
化学療法
多種多様な化学療法剤が、第2の療法として本実施形態に基づき使用可能である。化学療法剤は、がんの処置において投与される化合物または組成物であり得る。これらの薬剤または薬物は、細胞内でのその活性のモード、例えばそれが細胞周期に影響を及ぼすか、またどの段階で影響を及ぼすか、によって分類可能である。あるいは、薬剤は、DNAを直接架橋し、DNA中にインターカレートし、または核酸合成に影響を及ぼすことにより染色体および有糸分裂の異常を誘発するその能力に基づき特徴づけることができる。
【0209】
化学療法剤の例として、アルキル化剤、例えばチオテパおよびシクロホスファミド等;スルホン酸アルキル、例えばブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファン等;アジリジン、例えばベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、およびウレドーパ等;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド、およびトリメチロロメラミンを含む、エチレンイミンおよびメチラメラミン;アセトゲニン(特にブラタシンおよびブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼルシン、およびビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189およびCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンジスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノべムビキン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、およびウラシルマスタード等;ニトロスレアス、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムヌスチン等;抗生物質、例えばエンジイン抗生物質等(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンガンマlIおよびカリケアマイシンオメガI1);ジネマイシンAを含むジネマイシン;ビスホスホネート、例えばクロドロネート等;エスペラミシン;ならびにネオカルジノスタチンクロモフォアおよび関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質クロモフォア、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アウトラマイシン(authrarnycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシニス、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、およびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン(イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えばマイトマイシンC等、マイコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、およびゾルビシン;代謝抵抗物質、例えばトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU)等;葉酸類似体、例えばデノプテリン、プテロプテリン、およびトリメトレキサート等;プリンアナログ、例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、およびチオグアニン等;ピリミジンアナログ、例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、およびフロクスウリジン等;アンドロゲン、例えばカルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、およびテストラクトン等;抗副腎剤、例えばミトタンおよびトリロスタン等;葉酸補充剤、例えばフロリン酸等;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビスアントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルチン;ジアジクオン;エルフォルミチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシノイド、例えばメイタンシンおよびアンサミトシン等;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK多糖類複合体;ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテシン(特にT-2毒素、ベラクリンA、ロリジンA、およびアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;タキソイド、例えば、パクリタキセルおよびドセタキセルゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;白金配位鎖体、例えばシスプラチン、オキサリプラチン、およびカルボプラチン等;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビンノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(例えば、CPT-11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド、例えばレチノイン酸等;カペシタビン;カルボプラチン、プロカルバジン、プリコマイシン、ゲムシタビエン、ナベルビン、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、トランスプラチナ、ならびに上記いずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体が挙げられる。
【0210】
放射線療法
本明細書に記載される方法および組成物と併用使用可能である別の従来式の抗がん療法は、放射線療法(radiotherapy)または放射線放射療法(radiation therapy)である。放射線療法は、γ線、X線の使用、および/または腫瘍細胞に対する放射性同位体の指向送達を含む。DNA傷害因子のその他の形態、例えばマイクロウェーブ、プロトンビーム照射(米国特許第5,760,395号明細書および同第4,870,287号明細書;そのすべては参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、およびUV照射についても検討される。これらすべての要因は、DNA、DNAの前駆体、DNAの複製およびを修復、ならびに染色体のアセンブリおよび維持に対して広範囲の傷害をもたらす可能性が極めて高い。
【0211】
腫瘍微小環境は、腫瘍に侵入し、そして免疫応答を抑制するように機能する骨髄系由来サプレッサー細胞および調節性T細胞の存在に起因して、本質的に阻害性である。それに加えて、T細胞および抗原提示細胞(APC)上でのある特定の阻害性分子の発現は、有効な免疫応答を制限するおそれがある。照射法は、腫瘍細胞アポトーシス、セネッセンス、自食作用の誘発を通じて抗腫瘍効果に関与し、そして状況によってはより有効な免疫応答を刺激する可能性がある。
【0212】
アブスコパル効果とは生理学的プロセスであり、そのプロセスによって原発腫瘍を標的照射した場合でも、照射の場に収まらない遠隔部位における抗腫瘍応答を誘発する。アブスコパル効果に関係する機構は免疫媒介性であるが、またT細胞に対する腫瘍抗原の提示強化、ならびに局所的および全身的免疫応答を刺激するサイトカインおよびその他の炎症促進因子の放出と関係すると考えられている。アブスコパル効果は、照射処置を受ける原発腫瘍から遠方に位置する腫瘍に影響を及ぼすので、アブスコパル効果のトリガーとなり得る薬剤は、身体内の続発部位に拡散してしまうと多くの場合処置が困難である転移性腫瘍の処置において特に有利となり得る。
【0213】
本明細書に記載される抗glycCTLA-4抗体またはグリコシル化CTLA-4ポリペプチドは、局所的および全身的免疫応答を刺激することができる。一部の実施形態では、治療有効量の、本明細書に記載されるような抗体、ポリペプチド、または医薬組成物は、相乗的なアブスコパル効果を実現するために、放射線療法の前、同時、または後に投与される。
【0214】
一部の実施形態では、治療有効量の、本明細書に記載される抗体、ポリペプチド、または医薬組成物は、宿主内の腫瘍を照射に対して効果的に感受性化するように投与される。照射は、電離照射および特にγ線照射であり得る。一部の実施形態では、γ線照射は、線形加速器または放射性核種により放出される。放射性核種による腫瘍の照射は、外部的であってもまた内部的であってもよい。
【0215】
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体、ポリペプチド、または医薬組成物の投与は、腫瘍の照射前、最長1カ月、特に最長10日または1週間に開始する。さらに、腫瘍の照射は分割されるが、本明細書に記載される抗体、ポリペプチド、または医薬組成物の投与は、初回および最終回の照射セッションの間のインターバルにおいて維持される。
【0216】
照射はX線照射であってもよい。X線の線量範囲は、長期間(3~4週間)の場合、50~200レントゲンの日線量から、単回線量の場合、2000~6000レントゲンに及ぶ。放射性同位体の線量範囲は幅広く変化し、また同位体の半減期、放射される照射の強度および種類、および新生細胞による取込み量に依存する。
【0217】
免疫療法
当業者は、免疫療法は、いくつかの実施形態の方法と併用または連携して使用可能であることを理解する。がん処置の文脈において、免疫療法薬は、がん細胞を標的とし、それを破壊するための免疫エフェクター細胞および分子の使用に一般的に立脚する。リツキシマブ(RITUXAN(商標))がそのような例である。チェックポイント阻害剤、例えば、イピルミマブ(ipilumimab)、ペンブロリズマン(pembrolizuman)、ニボルマブ、およびアテゾリズマブ等が、その他の例である。免疫エフェクターは、例えば腫瘍細胞表面上のいくつかのマーカーに対して特異的な抗体であり得る。抗体は、単独では治療のエフェクターとして働くことができ、またはその他の細胞を導入して、細胞殺傷に対して実際に影響を及ぼすことができる。抗体は、薬物または毒素(例えば、化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素)にコンジュゲートし、そして単に標的薬剤として働くことも可能である。あるいは、エフェクターは、腫瘍細胞標的と直接的または間接的に相互作用する表面分子を担持するリンパ球であり得る。様々なエフェクター細胞には、細胞傷害性T細胞およびNK細胞が含まれる。
【0218】
免疫療法の1つの態様では、腫瘍細胞は、標的としやすい、すなわちその他の細胞の大部分には存在しないいくつかのマーカーを担持する。多くの腫瘍マーカーが存在し、それらのいずれかが、本実施形態の文脈において標的とするのに好適と考えられる。一般的な腫瘍マーカーとして、CD20、癌胎児抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG-72、HMFG、Sialyl Lewis抗原、MucA、MucB、PLAP、ラミニン受容体、erbB、およびp155が挙げられる。免疫療法の代替的態様は、抗がん効果を免疫刺激効果と組み合わせることである。サイトカイン、例えばIL-2、IL-4、IL-12、GM-CSF、γ-IFN等、ケモカイン、例えばMIP-1、MCP-1、IL-8等、および増殖因子、例えばFLT3リガンド等を含む、免疫刺激分子も存在する。
【0219】
現在調査中または使用中の免疫療法の例は、免疫アジュバント、例えばウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)、熱帯熱マラリア原虫(plasmodium falciparum)、ジニトロクロロベンゼン、および芳香族化合物(米国特許第5,801,005号明細書および同第5,739,169号明細書、Hui and Hashimoto, Infect Immun., 66(11):5329-36(1998)、Christodoulides et al., Microbiology, 66(11):5329-36(1998))、サイトカイン療法、例えばインターフェロンα、β、およびγ、IL-1、GM-CSF、およびTNF(Bukowski et al., Clin Cancer Res., 4(10):2337-47 (1998)、Davidson et al., J Immunother.,21(5):389-98(1998)、Hellstrand et al., Acta Oncol. 37(4):347-53(1998))、遺伝子療法、例えばTNF、IL-1、IL-2、およびp53(Qin et al., Proc Natl Acad Sci U S A, 95(24):14411-6(1998)、Austin-Ward and Villaseca, Rev Med Chil, 126(7):838-45 (1998)、米国特許第5,830,880号明細書および同第5,846,945号明細書)、ならびにモノクロナール抗体、例えば抗PD1、抗PDL1、抗CD20、抗ガングリオシドGM2、および抗p185(Topalian et al., The New England journal of medicine, 366:2443-2454 (2012)、Brahmer et al., The New England journal of medicine 366:2455-2465 (2012)、Hollander, Front Immunol (2012): 3:3. doi: 10.3389/fimmu.2012.00003、Hanibuchi et al., Int J Cancer, 78(4):480-5(1998)、米国特許第5,824,311明細書)であり、そのすべては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。1つまたは複数の抗がん療法が、抗glycCTLA-4抗体またはグリコシル化CTLA-4ポリペプチドの使用と関係する、本明細書に記載される療法と共に採用され得るものと考えられる。
【0220】
手術
がんを有する者のおよそ60%が、予防的、診断的、または病期分類的、根治的、および緩和的な手術を含むいくつかのタイプの手術を受ける。根治手術は、がん組織の全部または一部が物理的に除去、切除、および/または破壊される摘出を含み、またその他の療法、例えば本実施形態の処置、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子療法、免疫療法、および/または代替療法等と連携して使用され得る。腫瘍摘出とは、腫瘍の少なくとも一部分の物理的除去を指す。腫瘍摘出に付加して、手術による処置として、レーザー手術、凍結手術、電気手術、および顕微鏡下手術(Mohs術)が挙げられる。
【0221】
がん性の細胞、組織、または腫瘍の一部または全部が切除されると、空洞が身体内に形成され得る。処置は、追加の抗がん療法を用いたエリアへの潅流、直接注射、または局所的適用により実現可能である。そのような処置は、例えば、1、2、3、4、5、6、もしくは7日毎に、または1、2、3、4、および5週間毎に、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12カ月毎に反復され得る。これらの処置では、投薬量もやはり変化し得る。
【0222】
その他の薬剤
その他の薬剤が、処置の治療有効性を改善するために、本実施形態の特定の態様と併用可能であるものと考えられる。この追加の薬剤として、細胞表面受容体およびGAPジャンクションの上方制御に影響を及ぼす薬剤、細胞増殖抑制性および分化剤、細胞接着の阻害剤、アポトーシス誘導物質に対する過剰増殖性細胞の感度を増加させる薬剤、またはその他の生物学的薬剤が挙げられる。GAPジャンクションの数を増やすことにより細胞間シグナリングを増加させることで、隣接する過剰増殖性細胞集団に対する抗過剰増殖効果を増加させることができる。その他の実施形態では、処置の抗過剰増殖性の有効性を改善するために、細胞増殖抑制剤または分化剤が、本実施形態の特定の態様と併用可能である。細胞接着の阻害剤が、本実施形態の有効性を改善するために検討される。細胞接着阻害剤の例は、局所接着キナーゼ(FAK)阻害剤およびロバスタチンである。アポトーシスに対する過剰増殖性細胞の感度を増加させるその他の薬剤、例えば抗体c225等が、処置の有効性を改善するために、本実施形態の特定の態様と併用可能であると考えられる。
【0223】
キットおよび診断
様々な態様では、治療剤および/またはその他の治療および送達剤を含有するキットが本明細書に提示される。一部の実施形態では、本明細書に提示される療法の調製用および/または投与用として、キットが検討される。キットは、本明細書に提示される医薬組成物のいずれかを含有する、1つまたは複数のシールされたバイアルを含み得る。キットは、例えば、少なくとも抗glycCTLA-4抗体またはグリコシル化CTLA-4ポリペプチド、ならびに本明細書に提示されるコンポーネントを調製、製剤化、および/または投与し、あるいは本明細書に提示される方法の1つまたは複数のステップを実施するための試薬を含み得る。
【0224】
一部の実施形態では、キットは、抗glycCTLA-4抗体および少なくとも1つの付随的な試薬を含み得る。一部の実施形態では、キットは、グリコシル化CTLA-4ポリペプチドおよび少なくとも1つの付随的な試薬を含み得る。
【0225】
一部の実施形態では、キットは第2の抗がん剤をさらに含む。第2の抗がん剤は、化学療法剤、免疫療法剤、ホルモン治療剤、またはサイトカインであり得る。
【0226】
一部の実施形態では、キットは、キットのコンポーネントと反応しないコンテナ、例えばエッペンドルフチューブ、アッセイプレート、シリンジ、ボトル、またはチューブ等である適するコンテナ手段も含み得る。コンテナは、滅菌可能な物質、例えばプラスチックまたはガラス等から作製可能である。
【0227】
キットは、本明細書において規定される方法の手順ステップについて概説するインストラクションシートをさらに含むことができ、また本明細書に記載されまたは当業者にとって公知である手順と実質的に同一の手順に従う。コンピューターを使用して実行されるとき、インストラクション情報は、機械読取り可能インストラクションを含有するコンピューター読取り可能媒体中にあり得るが、該媒体は、薬学的に有効な量の、本明細書に提示される抗体またはポリペプチドを送達する実際の手順または仮想の手順を表示させる。キットは、医薬品またはバイオ製品の生成、使用、または販売を規制する政府機関が規定する形式の通知も含む場合があり、その通知は、ヒトへの投与を目的とする生成、使用、または販売を管轄する機関による承認を反映する。
【実施例】
【0228】
本明細書に記載される様々な実施形態の性質および精神を実質的に変化させない改変も検討されるものと理解される。したがって、下記の実施例は例証するように意図されており、いかなる場合においても限定を意図しない。
【0229】
材料および方法
イムノブロット分析、免疫細胞化学、および免疫沈降法。イムノブロット分析をこれまでの記載に従い実施した(Lim et al., 2008, Gastroenterology, 135:2I 28-40、およびLee et al., 2007, Cell, 130:440-455)。バンド強度の画像取得および定量を、Bio-Rad社のChemiDoc画像システム(Bio-Rad社、Hercules、CA、米国)を使用して実施した。免疫細胞化学の場合、細胞を4%パラホルムアルデヒド中、室温で15分間固定し、5%トリトンX-100中で5分間透過処理し、次に一次抗体を使用して染色した。使用した二次抗体は、抗マウスAlexaFluor488もしくは594色素コンジュゲート、および/または抗ウサギAlexa Fluor488もしくは594色素コンジュゲート(Life technologies社)であった。核を、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPIブルー)(Life technologies社)で染色した。マウント化した後、細胞を、多重光子共焦点レーザー走査式顕微鏡(Nikon A1+、Melville、NY、米国)を使用して可視化した。
【0230】
CTLA-4およびCD80/CD86(CD80/CTLA-4またはCD86/CTLA-4)相互作用アッセイ。CTLA-4タンパク質とCD80またはCD86タンパク質との相互作用を測定するために、CTLA-4発現細胞を4%パラホルムアルデヒド中、室温で15分間固定し、次に組換えヒトCD80-Fc、またはCD86-Fcキメラタンパク質(R&D Systems社)と共に1時間インキュベートした。使用した二次抗体は、抗ヒトAlexa Fluor488色素コンジュゲート(Life technologies社)であった。次に、Alexa Fluor488色素の蛍光強度を、リアルタイム顕微鏡IncuCyte(Essen BioScience社、Ann Arbor、Michigan、米国)を使用してモニタリングした。
【0231】
OctetによるKDの決定およびビニング。ハイスループットKDスクリーニングでは、抗体リガンドを、20nM溶液を介してセンサーにローディングした。1mg/mlのウシ血清アルブミンを含有するPBS(アッセイバッファー)においてベースラインを確立し、単一濃度のアナライトを含むアッセイバッファーにセンサーを浸漬することにより、会合ステップを実施した。解離を、新鮮なアッセイバッファー中で実施およびモニタリングした。センサーを1,000rpmで振動させながら、すべての実験を実施した。データを1:1結合モデルに当て嵌めて会合速度および解離速度を抽出するのに、ForteBio社のデータ分析ソフトウェアを使用した。KDをkd/kaの比を使用して計算した。代表的なエピトープビニングアッセイでは、抗原CTLA-4-His(10nM)を、第2抗体(10nM)と共に、室温で1時間プレインキュベートした。対照抗体(20nM)をAMCセンサー(ForteBio社)にローディングし、そしてセンサー上の残存するFc結合部位を、全マウスIgG抗体(Jackson ImmunoResearch社)でブロックした。センサーを、プレインキュベートした抗原-第2抗体混合物に曝露した。生データを、ForteBio社のデータ分析ソフトウェア7.0を使用して処理し、そして抗体の対を競合結合について評価した。第2抗体がさらに結合すれば、それは未占有のエピトープ(非競合物)を示唆する一方、結合しなければ、エピトープのブロッキング(競合物)を示唆する。
【0232】
CTLA-4のグリコシル化分析。CTLA-4タンパク質のグリコシル化を確認するために、製造業者の記載に従い、細胞ライセートを酵素PNGase F、Endo H、O-グリコシダーゼ(New England BioLabs社、Ipswich、MA、米国)で処置した。
【0233】
統計分析。棒グラフのデータは、未処置群または対照群と比較したときの平均倍率変化を、3回の独立した実験の標準偏差と共に表す。統計分析をSPSS(Ver.20、SPSS、Chicago、IL)を使用して実施した。タンパク質発現とBLBCサブセットとの間の相関を、スピアマンの相関およびマン・ホイットニーの検定を使用して分析した。実験データについてスチューデントのt検定を実施した。AP値<0.05を統計的に有意とみなした。
【0234】
[実施例1]
グリコシル化CTLA-4は、CD80/86と結合する
CTLA-4/CD80またはCD86相互作用を測定するために、CTLA-4発現細胞を、組換えヒトCD80-FcまたはCD86-Fcキメラタンパク質(R&D Systems社)と共に1時間インキュベートし、抗ヒトAlexa Fluor488色素コンジュゲート(Life technologies社)とのインキュベーションが後続した。次に、Alexa Fluor488色素の蛍光強度を、製造業者の指示に従い、リアルタイム顕微鏡IncuCyte(Essen BioScience社、Ann Arbor、Michigan、米国)を使用してモニタリングした。CTLA-4グリカン構造が、それとCD80またはCD86との結合において重要であるか調査するために、精製済みのCD80またはCD86-Fcを、フラッグタグ化CTLA-4 WTまたはCTLA-4 2NQ(非グリコシル化形態)を発現する293T細胞に由来するライセートと共にインキュベートし、次にライブセルイメージングにより、CTLA-4/CD80(
図1A~
図1C)およびCTLA-4/CD86(
図2A~
図2C)相互作用を分析した。
図1および
図2に示すように、CD80およびCD86に、CTLA-4 WTのみ(
図1Aおよび
図1C、
図2Aおよび
図2C)が結合し、しかしCTLA4 2NQ(
図1Bおよび
図2B)は結合しないことが判明した。したがって、これらの結果から、CTLA-4のグリカン構造の完全性が、それとCD80およびCD86との相互作用にとって重要であることが示唆される。
【0235】
[実施例2]
抗CTLA-4抗体の生成。
グリコシル化CTLA-4に対して特異的なモノクロナール抗体を開発した。CTLA-4-Hisを、十分にグリコシル化されたCTLA-4を過剰発現する293F細胞から精製した。グリコシル化ヒトCTLA-4に対して生成されるモノクロナール抗体を産生するハイブリドーマを、標準的なプロトコールに従い、SP2/0マウスミエローマ細胞を、ヒトCTLA-4免疫化BALB/cマウス(n=4;Antibody Solutions,Inc.社、Sunnyvale、CA、米国)から単離した脾臓細胞と融合させることにより取得した。融合前に、免疫化されたマウスから得た血清を、CTLA-4免疫原に対する結合性について、FACS分析法を使用して妥当性確認した。3000個を超えるモノクロナール抗体(mAb)産生ハイブリドーマを生成した。抗体を産生したハイブリドーマを特異性について再度テストした。
【0236】
その中で、65個の候補、mAb産生候補ハイブリドーマを、FACSにより、CTLA-4 WT、または2NQ(非グリコシル化形態)発現293T細胞を使用して選択し、そしてDCGF媒体(Antibody Solutions社)中で増殖させ、そしてモノクロナール抗体含有上清を濃縮および精製した。十分にグリコシル化されたCTLA-4を過剰発現する293T細胞からCTLA-4を精製し、そして39を超えるハイブリドーマ上清を、ドットブロットアッセイにおいてスクリーニングした(
図3)。STC1807およびSTC1810を含むそのうちのいくつかが、glyco特異的結合活性を示した。
【0237】
精製されたmAbを、CTLA-4とCD86(CTLA4/CD86結合相互作用)との間の相互作用を中和または阻害するその能力について、ライブセルイメージングアッセイ、Incucyte(Essen Bioscience社)を使用してテストした。この目的を達成するために、CTLA-4を発現する293T細胞を96ウェルプレートに播種し、そしてCTLA-4抗体、組換えヒトCD86-Fcタンパク質、および抗ヒト-Fc Alexa Fluor488色素コンジュゲート(Life technologies社)と共にインキュベートした。緑色蛍光シグナルを2時間毎に測定し、そしてIncuCyte Zoomシステム(Essen BioScience社)を使用して定量した。このアッセイの結果より、テストした65個のmAbのうち、STC1807と命名された1つのmAbのみが、CD86に対するCTLA-4の結合を完全にブロックしたことが明らかとなった(
図4)。STC1807の重鎖および軽鎖可変ドメインの配列を表3に提示する。
【0238】
CTLA-4抗原のグリコシル化に対するSTC1807の特異性をテストするために、ウェスタンブロット分析を、完全にグリコシル化されたヒトCTLA-4タンパク質および非リコシル化または単一グリコシル化CTLA-4(すなわち、N113Q、N145Q、および2NQ)を使用して実施した。STC1807は、N113グリコシル化を認識したが、しかしN145および2NQのいずれも認識しなかった(
図5)。
【0239】
ハイスループットフォーマットでCTLA-4抗体のK
D値を決定するために、抗体リガンドを、20nM溶液を介してOctetセンサーにローディングした。1mg/mLのウシ血清アルブミンを含有するPBS(アッセイバッファー)においてベースラインを確立し、そして単一濃度のアナライトを含むアッセイバッファーにセンサーを浸漬することにより、会合ステップを実施した。新鮮なアッセイバッファー中で解離を実施し、そしてモニタリングした。センサーを1分間当たり1,000回転で振動させながら、すべての実験を実施した。データを1:1結合モデルに当て嵌めて会合速度および解離速度を抽出するのに、ForteBio社(Menlo Park、CA、米国)のデータ分析ソフトウェアを使用した。kd:kaの比を使用してK
Dを計算した。データを
図6および表3にまとめる。
【0240】
【0241】
[実施例3]
抗GlycCTLA-4抗体の中和活性
CTLA-4とCD86との相互作用に対する抗体の阻害効果を測定するために、CTLA-4を発現する293T細胞を96ウェルプレートに播種し、そしてCTLA-4抗体(STC1807、STC1808、またはSTC1813)、組換えヒトCD86-Fcタンパク質、および抗ヒト-Fc Alexa Fluor488色素コンジュゲート(Life technologies社)と共にインキュベートした。緑色蛍光シグナルを2時間毎に測定し、そしてIncuCyte Zoomシステム(Essen BioScience社)を使用して定量した。
図7Aは、濃度が0.125μg/ml~8μg/mlの抗glycCTLA-4抗体TC1807が存在した際の、CTLA-4発現細胞に対するCD86-Fcの結合を示す。
図7Bは、このアッセイにおけるCTLA4/CD86相互作用がSTC1807により強力に阻害され、中和活性(50%効果濃度EC
50の減少)は2.189μg/mLと判明したことを示す。
図7Cは、濃度が0.125μg/ml~8μg/mlの抗glycCTLA-4抗体STC1808が存在した際の、CTLA-4発現細胞に対するCD86-Fcの結合を示す。
図7Dは、濃度が0.125μg/ml~8μg/mlの抗glycCTLA-4抗体STC1813が存在した際の、CTLA-4発現細胞に対するCD86-Fcの結合を示す。
【0242】
STC1807のヒトキメラ(hSTC1807)を、FDA承認済み抗体イピリムマブと比較したとき、hSTC1807は匹敵する中和性を示した。
図8Aは、濃度が0.125μg/ml~8μg/mlのヒトキメラ抗体hSTC1807が存在した際の、CTLA-4発現細胞に対するCD86-Fcの結合を24時間にわたり示す。
図8Bは、このアッセイにおけるCTLA-4/CD86相互作用が、STC1807により強力に阻害され、中和活性は0.3313μg/mLと判明したことを示す。
図8Cは、濃度が0.125μg/ml~8μg/mlのイピリムマブが存在した際の、CTLA-4発現細胞に対するCD86-Fcの結合を24時間にわたり示す。
図8Dは、このアッセイにおけるCTLA-4/CD86相互作用が、イピリムマブにより強力に阻害され、中和活性は0.3068μg/mLと判明したことを示す。
【0243】
[実施例4]
STC1807およびイピリムマブの抗体結合アッセイ
代表的なエピトープビニングアッセイでは、抗原CTLA-4-His(10nM)を、第2抗体(10nM)と共に、室温で1時間、事前インキュベートした。対照抗体(20nM)をAMCセンサー(ForteBio社)にローディングし、そしてセンサー上の残存するFc結合部位を全マウスIgG抗体(Jackson ImmunoResearch社、West Grove、PA、米国)でブロックした。センサーを事前インキュベートした抗原-第2抗体混合物に曝露した。生データを、ForteBioデータ分析ソフトウェア7.0を使用して処理し、そして抗体の対を競合結合について評価した。第2抗体がさらに結合すれば、それは未占有のエピトープ(非競合物)を示唆する一方、結合しなければ、エピトープのブロッキング(競合物)を示唆する。
図9Aは、STC1807がローディングされたセンサー上でのイピリムマブ(CD86-Hisと共に事前インキュベートした第2抗体)のさらなる結合を示す。
図9Bは、イピリムマブがローディングされたセンサー上でのSTC1807(CD86-Hisと共に事前インキュベートした第2抗体)のさらなる結合を示し、その異なる結合エピトープを示唆する。これらの結果より、STC1807およびイピリムマブはCTLA-4の異なるエピトープと結合することが示唆される。
【0244】
[実施例5]
Biocore AssayによるKD測定
STC1807の結合親和性(平衡解離定数[KD]値の低下)を、Biacore結合アッセイ法を使用して、FDA承認済の抗CTLA4抗体イピリムマブのそれと比較した。KDの決定を、Biacore X100装置(GE Healthcare社、Uppsala、スウェーデン)を使用して、表面プラズモン共鳴により実施した。マウスIgG1を、研究グレードのCM5チップ上に標準的な手順を使用して固定化し、そして抗体を、HBS-EP+バッファー中、2μg/mLでチップ上に流した。次に、6濃度のCTLA4をそれぞれ2倍稀釈してチップ上を通過させた。センサーグラムデータを、1:1結合動態を用いて、Biacore X100評価ソフトウェアバージョン2.0.1により分析した。STC1807は非常に強い結合親和性を示唆する0.47nMのKDを有することが判明した一方、イピリムマブはCTLA4タンパク質に対してより低い親和性を示した(13.4nMのKD)(
図10および表5)。
【0245】
【0246】
[実施例6]
T細胞増殖に対する抗Glyc抗体の効果
STC1807のin vitroでの有効性を評価するために、混合リンパ球反応(MLR)を、IL-4(500U/mL)およびGM-CSF(250U/mL)の存在下で7日間培養した樹状細胞(DC、同種異系ドナーのPBMC(Immunospot社#CTL-CP1)から誘発した)を使用して実施した。DCを、製造業者の推奨法に従い、ヒト汎用DC富化キット(Miltenyi Biotech社#130-100-777)により単離し、そして同種異系のメモリーまたはナイーブCD4+T細胞を刺激するのに使用した。CD4ミクロビーズ(Miltenyi Biotech社#130-045-101)により、CD4+T細胞を別の同種異系ドナーのPBMC(Immunospot社#CTL-CP1)からも富化した。DC(1×10
4個のDC/ウェル)を、96ウェル平底プレート(Nunc社)において、培養培地中、1×10
5個のT細胞/ウェルと共に、STC1807の存在下で同時培養した。培養から5日後、培養物上清中のIFN-γおよびIL-2の濃度を、製造業者の指示に従い、サイトカインELISAキット(BioLegend社)により決定した。
図11に示すように、T細胞増殖のマーカーであるIFN-γおよびIL-2の分泌は、STC1807の存在下で有意に増加した。
【0247】
[実施例7]
抗体のヒト化-フレームワーク領域
上記にて示唆したように、例えば、ヒト疾患のin vivoでの処置で使用することを含む、ある特定の目的では、マウスモノクロナール抗体のヒト化派生体を採用することが好ましい。そのようなヒト化抗体を形成するために、マウスモノクロナール抗体(「親」配列)のフレームワーク配列を、一連の「アクセプター」ヒト抗体のフレームワーク配列と最初にアライメントして、フレームワーク配列内の差異を特定する。ヒト化は、親とアクセプターの間の非マッチングフレームワーク残基を置換することにより実現する。重要と考えられる位置、例えばVernierゾーン内の位置、VH/VL鎖間インターフェース、またはCDRカノニカルクラス決定位置等における置換を、前方視的復帰突然変異を目的として分析した(Foote, J. et al., J. Molec. Biol. 224:487-499 (1992)を参照)。
【0248】
保存されたドメイン構造データベース(Conserved Domain Database:COD)(Marchler-Bauer, et al. (2011) Nucleic Acids Res. 39:D225-D229)が、各アミノ酸鎖のドメイン内部および各ドメインのおよその境界を決定するのに使用可能である。可変ドメイン境界は、いくつかの一般的に使用される定義に従い、CDRの境界と共に正確に決定され得る(Kabat, E. A. et al. (1991) “Sequences of Proteins of Immunological Interest,” Fifth Edition. NIH Publication No. 91-3242、Chothia, C. et al., J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987)、Honegger, A. et al., J. Molec. Biol. 309(3):657-670 (2001))。
【0249】
マウスおよびヒト生殖細胞系配列に対する親配列の複数のアライメントが、MAFFT(Katoh, K. et al., Nucleic Acids Res. 30: 3059-3066 (2002))を使用して生成され、そして各アライメントにおけるエントリーは、親配列に対する配列同一性に従って順序づける。参照セットは、100%配列同一性においてクラスタリングし、そして冗長なエントリーを除くことにより、配列の固有のセットまで減少する。
【0250】
最適なアクセプターフレームワークの選択は、両鎖のフレームワークにまたがる、アクセプターに対する全体的な親の抗体配列同一性に基づく;しかしながらVH/VL鎖間インターフェースを構成する位置が特に興味深い。さらに、CDRの5つについて定義されているカノニカル構造の個々のセットに関係するCDRループ長さおよびCDR位置(Chothia, C. et al., J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987)、Martin, A. C. et al., J. Molec. Biol 263:800-815 (1996)、Al-Laziniki, B. et al., J. Molec. Biol. 273:927-948(1997))が、どの生殖細胞系フレームワークが両方同一の界面残基を有し、類似するCDRループの立体構造をサポートすることが知られているか決定するために生殖細胞系と比較される。
【0251】
ヒト生殖細胞系に対する親抗体の配列アラインメントに基づき、最も近い一致を示すエントリーが特定される。好ましいヒト生殖細胞系の選択は、順序づけられた基準:(1)フレームワークを横断する配列同一性;(2)同一のまたは適合性を有する鎖間界面残基;(3)親のCDRカノニカル立体構造を有するサポートループ;(4)重鎖および軽鎖生殖細胞系の組合せが発現抗体に見出される;ならびに(5)除去されなければならないN-グリコシル化部位の存在、に基づく。
【0252】
ヒト化抗体のFv領域の構造的モデルを生成する。FRおよびCDRならびに完全Fvに対する構造的テンプレート断片の候補を、標的に対するその配列同一性、ならびにテンプレート構造の定性的結晶学的指標、例えばオングストローム(Å)で表される解像度等に基づき、スコア化、ランク付けし、そして抗体データベースから選択する。
【0253】
FRテンプレートに対してCDRを構造的にアライメントするために、CDRのいずれかの側にある5つの残基をCDRテンプレートに含める。断片のアライメントを、重複セグメントおよび生成された構造的配列アラインメントに基づき生成する。アライメントと共にテンプレート断片を、MODELLERにより処理した(SalI, A. et al.; J. Molec. Biol. 234:779-815(1993))。このプロトコールは、アライメントされた構造的テンプレートのセットに由来する高次構造的制限を創出する。制約を満した構造の集合を、コンジュゲートグラジエントおよびアニーリング最適化手順のシミュレーションにより創出する。タンパク質構造のスコアおよび高次構造的制約の充足度に由来するエネルギースコアに基づいて、モデル構造をこの集合から選択する。モデルを査定し、そして標的とテンプレートの間で異なる位置の側鎖を、側鎖最適化アルゴリズムを使用して最適化し、そしてエネルギーを最少化する。可視化装置およびコンピューター化ツールが、CDRの高次構造的変動、ローカルパッキング、および1つまたは複数の好ましいモデルを選択するための表面分析を評価するのに使用される。
【0254】
親抗体の構造的モデルを構築し、そして不完全性、例えば原子充填不良、結合長さにおける歪み、結合角、または二面角等について査定する。この不完全性は、抗体の構造的安定性を含む潜在的問題を示唆し得る。モデリングプロトコールは、そのような不完全性を最低限に抑えるように努める。ヒト化Fvの初期の構造的モデルは、すべての安全置換(すなわち、結合親和性または安定性に影響を及ぼすはずのない置換)および慎重置換(すなわち、位置置換がなされるが、しかし位置は結合親和性にとって重要であり得る)を含有する。結合親和性の減少または安定性の低下といったリスクと関連すると考えられる位置における置換には手を付けない。最も近い一致を示す親のバリアントモデルではなく、良好なスタンドアローンモデルを創出するために、テンプレートの探索および選択を親テンプレート探索とは別に実施する。置換の可能性の評価を実施する際には、好ましい置換および復帰突然変異の効果を反映するようにモデルを更新する。
【0255】
[実施例8]
抗体のヒト化-定常領域
STC1807重鎖の可変領域(VH)およびそのκ軽鎖の可変領域(VL)を、pFUSEss-CHIg-hG1およびpFUSEss-CLIg-hKベクター(Invivogen社)において、マウス定常領域をヒトIgG1定常領域(CH1~CH3)でそれぞれ置き換えることにより改変した。重鎖および軽鎖キメラコンストラクトを、293F懸濁細胞に、1:1の比で5日間トランスフェクトした。キメラ抗体(hSTC1807)を、HPLC上、プロテインA親和性カラムにより精製した。
【0256】
本出願全体を通じて、様々な公開資料が引用されている。これらの公開資料の開示は、その全体において、本開示が関係する最新技術分野をより完全に記載するために、本明細書に参照により本出願に組み込まれる。ある特定の特別な実施形態の例が本明細書に提示されるが、様々な変更および改変を加えることができることは当業者にとって明白である。そのような改変も、添付の特許請求の範囲の範囲内に該当するように意図される。
【配列表】
【国際調査報告】