(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-28
(54)【発明の名称】室温未満から室温を超えるまでの間において強誘電性の超伝導体
(51)【国際特許分類】
H01L 39/12 20060101AFI20221118BHJP
H01L 39/20 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
H01L39/12 C
H01L39/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560544
(86)(22)【出願日】2020-04-06
(85)【翻訳文提出日】2021-12-07
(86)【国際出願番号】 IB2020053276
(87)【国際公開番号】W WO2020208499
(87)【国際公開日】2020-10-15
(32)【優先日】2019-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513303795
【氏名又は名称】ウニベルシダージ ド ポルト
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSIDADE DO PORTO
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソウザ ソアレス ジ オリベイラ ブラガ,マリア ヘレーナ ブラガ
【テーマコード(参考)】
4M113
4M114
【Fターム(参考)】
4M113AC06
4M113CA12
4M113CA31
4M114AA30
4M114BB04
4M114CC03
4M114DB02
4M114DB12
4M114DB52
(57)【要約】
本開示は、室温未満から室温を超えるまでの間の温度での誘電率が非常に高い強誘電体を含み、強誘電体の双極子の自然な動的配列によって界面に超伝導が惹起される超伝導体に関する。革新的な超伝導体の使用、及び発生電流を事後採取する事象の用途において、強誘電体は、2つの同一の導体又は半導体の間、2つの異種の導体又は半導体の間、又は、導体の絶縁体コアとして、若しくは空気などの絶縁体と単に接触させて適用できる。したがって、本発明は、エネルギー、採取、貯蔵、センサ、トランジスタ、コンピュータの部品、光起電性の電池若しくはパネル、風力タービン、SQUID、MRI、質量分析計、粒子加速器、スマートグリッド、送電、変圧器、電力貯蔵装置、及び/又は電動機の分野において、損失のない電力の送電を可能にする用途において有用である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強誘電体と、
1以上の他の材料との界面と
を含み、
誘電率ε
rは、前記界面で10
3より大きく、
温度は、-40℃~170℃であり、
前記強誘電体の双極子は自然な動的配列を呈する
超伝導体。
【請求項2】
前記強誘電体の材料は、
0≦y≦1であり、M=Be、Ca、Mg、Sr、及びBaであるLi
3-2yM
yClO、
M=B、AlであるLi
3-3yA
yClO、
0≦y≦1であり、M=Be、Ca、Mg、Sr、及びBaであるNa
3-2yM
yClO、
0≦y≦0.5であり、M=B、AlであるNa
3-3yA
yClO、
若しくは、
0≦y≦0.5であり、0≦z≦2であり、M=Be、Ca、Mg、Sr、及びBaである逆ペロブスカイト(結晶性物質)のLi
3-2y-zM
yH
zClO、
0≦y≦0.5であり、0≦z≦2であり、M=B、AlであるLi
3-3y-zA
yH
zClO、
これらの混合物、
若しくは、
これらとLi
2S、Na
2S、Si
2O、Li
2O、Na
2O、若しくはH
2Sとの混合物、
又は、
これらと重合体との複合混合物
である
請求項1に記載の超伝導体。
【請求項3】
前記強誘電体は、空気又は真空といった絶縁体と接触している
請求項1又は2に記載の超伝導体。
【請求項4】
前記強誘電体は、同種又は異種の導体である2つの界面と接触している
請求項1~3のいずれか一項に記載の超伝導体。
【請求項5】
前記強誘電体は、Na系のNa
2.99Ba
0.005ClOであり、
前記導体は、Cuである
請求項1~4のいずれか一項に記載の超伝導体。
【請求項6】
前記強誘電体は、Na系のNa
2.99Ba
0.005ClOであり、
前記導体は、Zn及びCuである
請求項1~5のいずれか一項に記載の超伝導体。
【請求項7】
前記強誘電体は、Na系のNa
2.99Ba
0.005ClOであり、
前記導体は、Zn及びCの発泡体、スポンジ、ワイヤ、ナノチューブ、グラフェン、グラファイト、カーボンブラック、又は不純物を有する若しくは有しない他の同素体若しくは炭素構造である
請求項1~6のいずれか一項に記載の超伝導体。
【請求項8】
前記強誘電体は、0≦x≦1であるLi系の(1-x)Li
2.99Ba
0.005ClO+xLi
3-2y-zM
yH
zClOであり、
一方の導体は、Liであり、
他方の導体は、MnO
2とカーボンブラック及び/又は結合剤との混合物であることを特徴とする前記請求項1~7のいずれか一項に記載の超伝導体。
【請求項9】
前記強誘電体は、0≦x≦1であるNa系の(1-x)Na
2.99Ba
0.005ClO+xNa
3-2y-zM
yH
zClOであり
一方の導体は、Naであり、
他方の導体は、Na
3V
2(PO
4)
3とカーボンブラック及び/又は結合剤との混合物である
請求項1~8のいずれか一項に記載の超伝導体。
【請求項10】
前記強誘電体は、同種又は異種の半導体、又は導体及び半導体である2つの界面と接触している
請求項1~9のいずれか一項に記載の超伝導体。
【請求項11】
前記強誘電体は、Li系のLi
2.99Ba
0.005ClO+Li
2Sであり、
前記導体は、Alであり、
前記半導体は、Siである
請求項1~10のいずれか一項に記載の超伝導体。
【請求項12】
前記強誘電体は、Li系のLi
2.99Ba
0.005ClO+Li
3-2y-zM
yH
zClOであり、
前記導体は、Liであり、
前記半導体は、MnO
2、又は硫黄と炭素との混合物である
請求項1~11のいずれか一項に記載の超伝導体。
【請求項13】
前記強誘電体は、2つの界面に接触しており、
一方は、半導体又は導体であり、
他方は、導体接点又は集電極を有する絶縁体である
請求項1~12のいずれか一項に記載の超伝導体。
【請求項14】
前記強誘電体は、Na系又はLi系であり、
前記導体は、Zn若しくはCu、Li、Na、Li合金若しくは複合体、Na合金若しくは複合体であり、
前記強誘電体の表面領域は、空気、真空、重合体、可塑剤、絶縁テープ、接着剤、結合剤といった絶縁体と接触している
請求項1~13のいずれか一項に記載の超伝導体。
【請求項15】
前記強誘電体は、Li系のLi
2.99Ba
0.005ClO又はLi
2.99Ba
0.005ClO+Li
3-2y-zM
yH
zClOの混合物又は複合体であり、
前記導体は、Li又はLiMgといったLi合金又は(Li)の固溶体であり、
前記強誘電体の表面領域は、空気、真空、重合体、可塑剤、絶縁テープ、接着剤、結合剤といった絶縁体と接触している
請求項1~14のいずれか一項に記載の超伝導体。
【請求項16】
強誘電体を充填した導電線を含む
請求項1~15のいずれか一項に記載の超伝導体。
【請求項17】
強誘電体と絶縁体との間に1以上の界面を含む
請求項1~16のいずれか一項に記載の超伝導体。
【請求項18】
前記絶縁体は、Si
2O、重合体、スクシノニトリルといった可塑剤、及び/又は空気である
請求項1~17のいずれか一項に記載の超伝導体。
【請求項19】
前記絶縁体は、2つの強誘電体の材料との界面を有する
請求項1~18のいずれか一項に記載の超伝導体。
【請求項20】
強誘電性の超伝導体と超伝導体との間に1以上の界面を含む
請求項1~19のいずれか一項に記載の超伝導体。
【請求項21】
前記強誘電体は、Li系又はNa系であり、
前記超伝導体は、ともに、Al若しくはTi若しくはSn、Li及びAl、又はLi及びTi若しくはSnである
請求項1~20のいずれか一項に記載の超伝導体。
【請求項22】
前記強誘電体は、Li系又はNa系であり、
前記超伝導体は、HgBa
2Ca
2Cu
3O
x、FeSe、又はH
2Sである
請求項1~21のいずれか一項に記載の超伝導体。
【請求項23】
前記強誘電体は、強誘電体と接着剤との混合物といった重合体との複合混合物である
請求項1~22のいずれか一項に記載の超伝導体。
【請求項24】
前記強誘電体は、CaCuTiO
3、又は請求項2に記載の強誘電体の材料の複合体又は混合物である
請求項1~23のいずれか一項に記載の超伝導体。
【請求項25】
前記誘電率ε
rは、前記界面で、及び、-40℃~170℃の温度、-35℃~170℃の温度、0℃~100℃の温度、0℃~75℃の温度、又は室温で、10
4よりも大きいか、10
5よりも大きいか、10
6よりも大きいか、10
7よりも大きいか、10
8よりも大きいか、あるいは10
9よりも大きいか、である
請求項1~24のいずれか一項に記載の超伝導体。
【請求項26】
環境発電装置、エネルギー蓄積装置、センサの一部、トランジスタの一部、コンピュータの一部、光起電性の電池若しくはパネルの一部、風力タービンの一部、SQUID、MRI、質量分析計、若しくは粒子加速器の一部、スマートグリッドの一部、送電装置、変圧器、電力貯蔵装置、及び/又は電動機としての請求項1~25のいずれか一項に記載の超伝導体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、室温未満から室温を超えるまでの間の温度での誘電率が非常に高い強誘電体を含み、強誘電体の双極子の自然な動的配列によって界面に超伝導が惹起される超伝導体に関する。
【0002】
革新的な超伝導体の使用、及び発生電流を事後採取する事象の用途において、強誘電体は、2つの同一の導体又は半導体の間、2つの異種の導体又は半導体の間、又は、導体の絶縁体コアとして、若しくは空気などの絶縁体と単に接触させて適用できる。
【0003】
したがって、本開示は、エネルギー、採取、貯蔵、トランジスタ、センサ、コンピュータの部品、光起電性の電池若しくはパネル、風力タービン、SQUID、MRI、質量分析計、粒子加速器、スマートグリッド、送電、変圧器、電力貯蔵装置、及び/又は電動機の分野において、損失のない電力の送電を可能にする用途において有用である。
【背景技術】
【0004】
超伝導体とは、ゼロの抵抗値を呈示可能な物質であり、電子関連の特性である。超伝導体は、電圧の印可なしに電流を維持でき、その特性は、MRIの機械で見られるような超伝導電磁石に利用されている。超伝導コイルにおける電流は、劣化せずに数年間持続しうることを、複数の実験が実証している。低温(50K未満)での、Be、Ti、Zr、Zn、及びSn、並びに、高温(135K以下)での、HgBa2Ca2Cu3Oxなどの銅酸化物超伝導体、又は鉄系のFeSeのように、超伝導を示す様々な材料が報告されている。最高温度(150K)での超伝導体は、H2Sであるが、更に高圧が要求される。
【0005】
よって、超伝導体は、損失なく電力を送電でき、熱損失(ジュール効果)を呈しない。エネルギーを採取し、次いで蓄積する新規構成の開発は、人類に重要な利益をもたらす。
【0006】
強誘電体は、外部電界を印加することにより反転可能な、自然な電気分極を呈する物質である。全ての強誘電体は焦電体であり、自然な電気分極は可逆的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0058105号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】“The high energy electromagnetic field generator”,Int.J.SpaceScience and Engineering,Vol.3,No.4,2015,pp.312-317
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
超伝導は、金属と強誘電体との界面で発生しうる。金属と絶縁体の真空界面で急激な相転移が生じ(誘電率が例えば105から1に急激に変化し)、対称性が自然に崩れて超伝導を誘発するからである。これは、位相数学においては、1977年の物理学ノーベル賞を受賞したPhilip Anderson(フィリップ・アンダーソン)により決められたような、カタストロフィ現象として知られるものであり、更に、強誘電体が室温で超伝導体になることが予測されていた。ここでは、そのような超伝導の性能を有する強誘電体が存在し、室温以上であっても表面超伝導体であることが、初めて示されている。
【0010】
よって、超伝導は、従来と異なる超伝導体を構成する、以降に提示する素子においても同様に、多くの場合は、金属と強誘電体との界面に沿って生じうる。
【0011】
本開示に記載のような、M=Be、Ca、Mg、Sr、及びBaであるLi3-2yMyClO、M=B、AlであるLi3-3yAyClO、M=Be、Ca、 Mg、Sr、及びBaであるNa3-2yMyClO(M=Be、Ca、Mg、Sr、及びBa)、M=B、AlであるNa3-3yAyClO、又はM=Be、Ca、Mg、Sr、及びBaである逆ペロブスカイト(結晶性物質)のLi3-2y-zMyHzClO、M=B、AlであるLi3-3y-zAyHzClO、これらの混合物、若しくは、これらとLi2S、Na2S、若しくはH2Sとの混合物、又は、更に重合体を混合したこれらのガラス材料若しくは結晶材料を含む複合材料のような、誘電率が非常に高い強誘電性のガラスは、誘電率が実質的に異なる材料との界面で超伝導体となり、当該材料は、更に、「素子」なしで強誘電体の材料を超伝導体にする空気であってもよい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、室温未満から室温を超えるまでの間において作動可能な強誘電性を惹起する超伝導体に関する。
【0013】
本開示は、金属と強誘電体とのような、誘電率が非常に異なる2以上の材料の界面を含む、強誘電性の超伝導体である室温超伝導体に関する。金属の誘電率は、金属部分の電界がゼロであるから無限大と見なされる。実質上、強誘電性の材料は、金属との界面で比誘電率が1である真空と接触する可能性が高い。
【0014】
界面で接触している材料の特性の急激な変化により得られる、強誘電性を惹起する超伝導を提供することが、本開示の特徴である。
【0015】
数年間の損失のない電力の送電を可能にする、強誘電性を惹起する超伝導を提供することが、本開示の特徴である。強誘電性を惹起する超伝導は、素子が他の材料及び界面で構成されているため、素子全体の抵抗値をゼロに低減できない。しかしながら、当該素子は、一部の素子の損失はあるものの数年間作動できる。
【0016】
本願は、強誘電体と、1以上の他の材料との界面とを含み、誘電率εrは、界面で103より大きく、温度は、-40℃から170℃であり、強誘電体の双極子が自然な動的配列を呈する超伝導体を開示する。
【0017】
更に、本開示は、強誘電体の材料が、0≦y≦1であり、M=Be、Ca、Mg、Sr、及びBaであるLi3-2yMyClO、M=B、AlであるLi3-3yAyClO、0≦y≦1であり、M=Be、Ca、Mg、Sr、及びBaであるNa3-2yMyClO、0≦y≦0.5であり、M=B、AlであるNa3-3yAyClO、若しくは0≦y≦0.5であり、0≦z≦2であり、M=Be、Ca、Mg、Sr及びBaである、逆ペロブスカイト(結晶性物質)のLi3-2y-zMyHzClO、0≦y≦0.5であり、0≦z≦2であり、M=B、AlであるLi3-3y-zAyHzClO、これらの混合物、若しくは、これらとLi2S、Na2S、Si2O、Li2O、Na2O、H2Sとの混合物、又は、これらと重合体との複合混合物である超伝導体を明らかにしている。
【0018】
更に、超伝導体は、強誘電体が、空気又は真空といった絶縁体に接触するように提供できる。
【0019】
更に、本開示の超伝導体は、強誘電体が同種又は異種の導体である2つの界面と接触している可能性がある。
【0020】
本願は、強誘電体が、Na系のNa2.99Ba0.005ClOであり、導体が、Cuである超伝導体を更に開示している。
【0021】
超伝導体は、強誘電体が、Na系のNa2.99Ba0.005ClOであり、導体が、Zn及びCuである構成を提供できる。
【0022】
超伝導体は、強誘電体が、Na系のNa2.99Ba0.005ClOであり、導体がZn及びCの発泡体、スポンジ、ワイヤ、ナノチューブ、グラフェン、グラファイト、カーボンブラック、又は不純物を有する若しくは有しない他の同素体若しくは炭素構造である、更なる構成を提供できる。
【0023】
超伝導体は、強誘電体が、0≦x≦1であるLi系の(1-x)Li2.99Ba0.005ClO+xLi3-2y-zMyHzClOであり、一方の導体が、Liであり、他方の導体が、MnO2とカーボンブラック及び/又は結合剤との混合物である、更なる構成を提供できる。
【0024】
超伝導体は、強誘電体が、0≦x≦1であるNa系の(1-x)Na2.99Ba0.005ClO+xNa3-2y-zMyHzClOであり、一方の導体が、Naであり、他方の導体が、Na3V2(PO4)3とカーボンブラック及び/又は結合剤との混合物である、更なる構成を提供できる。
【0025】
超伝導体は、強誘電体が、同種又は異種の半導体、又は導体と半導体である2つの界面と接触している、更なる構成を提供できる。
【0026】
超伝導体は、強誘電体が、Li系のLi2.99Ba0.005ClO+Li2Sであり、導体が、Alであり、半導体が、Siである、更なる構成を提供できる。
【0027】
超伝導体は、強誘電体が、Li系のLi2.99Ba0.005ClO+Li3-2y-zMyHzClOであり、導体が、Liであり、半導体が、MnO2又は硫黄と炭素との混合物である、更なる構成を提供できる。
【0028】
超伝導体は、強誘電体が、2つの界面に接触しており、一方が、半導体又は導体であり、他方が、導体接点又は集電極を有する絶縁体である、更なる構成を提供できる。
【0029】
超伝導体は、強誘電体が、Na系又はLi系であり、導体が、Zn若しくはCu、Li、Na、Li合金若しくは複合体、Na合金若しくは複合体であり、強誘電体の表面領域が、空気、真空、重合体、可塑剤、絶縁テープ、接着剤、結合剤といった絶縁体と接触している、更なる構成を提供できる。
【0030】
超伝導体は、強誘電体が、Li系のLi2.99Ba0.005ClO又はLi2.99Ba0.005ClO+Li3-2y-zMyHzClOの混合物又は複合物であり、導体が、Li又はLiMgといったLi合金又は(Li)の固溶体であり、強誘電体の表面領域が、空気、真空、重合体、可塑剤、絶縁テープ、接着剤、結合剤といった絶縁体と接触している、更なる構成を提供できる。
【0031】
超伝導体は、強誘電体を充填した導電線を含む、更なる構成を提供できる。
【0032】
超伝導体は、強誘電体と絶縁体との間に1以上の界面を含む、更なる構成を提供できる。
【0033】
超伝導体は、絶縁体が、Si2O、重合体、スクシノニトリルといった塑剤、及び/又は空気である、更なる構成を提供できる。
【0034】
超伝導体は、絶縁体が、2つの強誘電体との界面を有する、更なる構成を示すことができる。
【0035】
超伝導体は、強誘電体と超伝導体の間の1以上の界面を構成するという更なる構成を提供できる。
【0036】
超伝導体は、強誘電体が、Li系又はNa系であり、超伝導体が、ともに、Al若しくはTi若しくはSn、Li及びAl、又はLi及びTi若しくはSnである、更なる構成を提供できる。
【0037】
超伝導体は、強誘電体が、Li系又はNa系であり、超伝導体が、HgBa2Ca2Cu3Ox、FeSe、又はH2Sである、更なる構成を提供できる。
【0038】
超伝導体は、強誘電体が、強誘電体と接着剤との混合物といった重合体との複合混合物である、更なる構成を提供できる。
【0039】
超伝導体は、強誘電体が、CaCuTiO3、又は上述の強誘電体の材料の複合体又は混合物である、更なる構成を提供できる。
【0040】
上述の構成のいずれか1つに記載の超伝導体において、誘電率εrは、界面で、及び、-40℃~170℃の温度、-35℃~170℃の温度、0℃~100℃の温度、0℃~75℃の温度、又は室温で、104よりも大きいか、105よりも大きいか、106よりも大きいか、107よりも大きいか、108よりも大きいか、あるいは109よりも大きいか、である。
【0041】
上述の超伝導体の使用は、例えば、環境発電装置、エネルギー貯蔵装置、センサの一部、トランジスタの一部、コンピュータの一部、光起電性の電池若しくはパネルの一部、風力タービンの一部、SQUID、MRI、質量分析計、粒子加速器の一部、スマートグリッドの一部、送電装置、変圧器、電力貯蔵装置、及び/又は電動機など、複数の用途を提提供する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
本開示の上述及びその他の特徴、態様、及び利点は、以下の記載及び添付の特許請求の範囲、並びに、添付の図面により、更に明確に理解されるであろう。
【0043】
【
図1a】
図1aは、誘電率が非常に高いLi系の強誘電体の実施形態である。グラフは、10Hzでの温度の関数としての比誘電率を示している。グラフにおいて、ε’は実部の比誘電率又は誘電率を示す。ε”は虚部の比誘電率を示している。ε
*は比誘電率を表す。
【
図1b】
図1bは、誘電率が非常に高い、Na系の強誘電体及び導体1=Zn/Na系の強誘電体/導体2=C+Cuの実施形態である。グラフは、交流(AC)については0.1Hzで、及び、直流(DC)校正によって得られた、温度の関数としての比誘電率を示している。
【
図1c】
図1cは、-30~0℃の間でセルの抵抗値が急激に低減する、強誘電体の表面での表面超伝導を呈した導体1=Zn/Na系の強誘電体/導体2=C+Cuの実施形態である。
【
図2】
図2は、導体/強誘電体/導体の界面を有する、強誘電性を惹起する超伝導体の実施形態である。
【
図3】
図3は、導体/強誘電体/半導体の界面を有する、強誘電性を惹起する超伝導体の別の実施形態である。
【
図4】
図4は、強誘電体の大部分が空気/絶縁体に曝露されている導体/強誘電体/導体の界面を有する、強誘電性を惹起する超伝導体の別の実施形態である。
【
図5】
図5は、電線が強誘電体で充填された、強誘電性を惹起する超伝導体の別の実施形態である。
【
図6】
図6は、強誘電体/絶縁体/強誘電体の界面を有する、強誘電性を惹起する超伝導体の別の実施形態である。
【
図7】
図7は、超伝導体/強誘電体/超伝導体の界面を有する、強誘電性を惹起する超伝導体の別の実施形態である。発明の説明
【0044】
本開示の好適な実施形態は、以下の例及び
図1~7に示されている。
図1に示すように、強誘電性の超伝導体は、非常に高い誘電率を有している必要があり、低温(233~273K)と室温(273~282K)又は高温(T≦500K)との間の温度範囲であることが好ましい。
図2に示すように、強誘電性を惹起する超伝導体10は、同種又は異種の2つの導体100及び110と、強誘電体の材料200とを含む。
図3に示すように、強誘電性を惹起する超伝導体20は、導体100と、強誘電体の材料200と、半導体300とを含む。
図4に示すように、強誘電性を惹起する超伝導体30は、同種又は異種である2つの導体100及び110と、強誘電体の材料200と、同種又は異種である2つの絶縁体400及び410とを含む。導体110は、集電極である。
図5に示すように、強誘電体性を惹起する超伝導体40は、強誘電体200を有する導電線120を含む。強誘電体200は、表層部の電線を埋めることができる。強誘電体200は、導体120によって被覆できる。
図6に示すように、強誘電性を惹起する超伝導体50は、2つの強誘電体200及び210と、絶縁体400とを含む。
図7に示すように、強誘電性を惹起する超伝導体60は、2つの超伝導体500及び510と、強誘電体絶縁体200とを含む。素子10~60は、超伝導を惹起できる。
【0045】
本開示の説明においては、実験室環境においての本開示の説明であるが、本発明は、素子10~60を必要とする任意の種類の用途に用いることができる。
【0046】
特許文献1は、絶縁体コアと金属コーティングとを有する電線を通るパルス電流を素子が必要とし、電線が振動している間に室温超伝導が惹起される、圧電で惹起される室温超伝導を開示している。本開示とは全体的に異なるが、双方ともに、非線形現象と対称性の破壊とによるものである。本開示においては、外部からの電流や振動を要せず、または用いず、全ての過程が自然に行われる。すなわち、強誘電体の配向は自然に行われ、誘電率の高い強誘電体が、例えば金属との接合を形成した場合、金属/絶縁体の界面で急激な相転移が起こり、対称性が自然に破壊し、超伝導が惹起される。更に、特許文献1は、圧電材料が必須であることが開示している。本開示は、強誘電体という全く異なる種類の材料に基づくものである。
【0047】
強誘電体の材料は、非結晶、ガラス、及び結晶の構造にできるため、強誘電性を惹起する超伝導を実施可能にするには、強誘電体の構造は関係ない。しかしながら、超伝導を可能にする双極子の動的な併合及び配列は大きく関係する。当該材料がこの過程にある場合、当該材料は、平衡ではない状態(熱力学における非平衡状態)にある。
【0048】
超伝導に影響を与えるパラメータは3つある。当該パラメータは、温度、電流密度、外部から印加される磁界強度である。上述のパラメータは、電子の協調運動という1つの共通事項を有している。強誘電体を構成する双極子の併合及び配列を介した当該運動の制御により、帯電した物質が不均一な場合は特に、室温超伝導を達成しうる。現在、超伝導の機構は、バイポーラロン又はクーパー対のいずれかによって引き起こされると考えられている。
【0049】
バイポーラロン(bipolaron)は、限定しないが、2つのポーラロンからなる準粒子と定義できる。
【0050】
ポーラロン(polaron)とは、固体物質中の電子と原子の相互作用を理解するために、物性物理学で用いられるフェルミ粒子の準粒子である。
【0051】
ポーラロンの概念は、フォノン雲として知られる、電荷の効果的な遮蔽をすべく、平衡位置から原子が移動をする誘電体結晶において、移動する電子を記載すべく、Landau(ランダウ)によって最初に紹介された。上述により、電子の移動度が低下し、電子の有効質量が増加する。
【0052】
クーパー対(Cooper pair)又はBCS対は、低温で結合した対となる電子(又は他のフェルミ粒子)である。金属中の電子間の任意の小さな引力により、対となる電子のエネルギーの状態がフェルミエネルギーよりも低くなり、これは、当該対が結合していることを意味する。従来のBCS型の超伝導体では、当該引力は電子とフォノンとの相互作用に起因する。重要な理解は、物理的な機構とは無関係に、観測された超伝導の生命線が、電子と格子(フォノン)との強い相互作用であるということを理解することは重要である。電子と格子との強い相互作用は、有機太陽電池の表面で生じるような誘電率の急激な変化から獲得されるため、強誘電体が惹起する超伝導の実現可能性について説明できる。
【0053】
例えば第二種超伝導体では10
20/cm
3の桁数である超伝導の電荷担体の数密度(n
s)を有する超伝導の電荷担体(質量はm
s、μ0は自由空間の透磁率)が、
である場合、ロンドンの浸透長λ
Lは、式1によって与えられる。
【0054】
【0055】
当該浸透長は、超流動密度によって決定され、超流動密度は、高温超伝導体におけるTcを決定する量である。
【0056】
マイスナー効果(完全反磁性)の状態は室温で可能である。式2に注目されたい。
【0057】
【0058】
上述の式において、n*=n+ikは複素屈折率であり、nは屈折率の実部であり、kは消衰係数又は質量減衰係数であり、ε’ rは実部の比誘電率であり、ε” rは虚部の比誘電率であり、μrは比透磁率である。非磁性体については、μr=1となる。
【0059】
反磁性は、全ての物質において生じる量子力学的な効果であり、当該効果が磁気への唯一の寄与である場合、当該物質は反磁性と称される。
【0060】
水、水性材料、並びに、Cu、C(熱分解物及びグラファイト)、Bi、Hgなどの一部の物質は、反磁性であり、相対透磁率が1以下である。このことは、反磁性であり、磁場に反発することを意味する。超伝導体は、マイスナー効果によって全ての磁場を排除するため、完全反磁性体と見なされる。
【0061】
強誘電体200の内部の磁気誘導はゼロであるから、Bの時間変化率であるdB/dtもゼロである(超伝導状態を記述するロンドン方程式をマクスウェル方程式から導くための2つの条件)。ファラデーの法則から、(dB/dt=0)の条件下において、電界の湾曲がゼロであることが得られる。当該結果と、電界強度を、電流密度と電気抵抗率の積(時間非依存性)と関連付けるオームの法則の形式と組み合わせると、電気抵抗率がゼロ、つまり理想的な電気伝導度の条件下でのみ、(電流があるため)電界はゼロであることを要することが示されうる。したがって、本開示は上述の超伝導の第2の要件を満たしている。
【0062】
超伝導の第3の条件、すなわち、巨視的量子コヒーレンスの実現可能性は、従来のBCS(バーディーン(Bardeen)、クーパー(Cooper)、及びシュリーファー(Schrieffer)による)理論により、最も明確に説明される。例えば、導体100に沿って電流が流れると、強誘電体200の界面に整列した正イオン又は双極子は、通常はクーロン斥力によって相互に反発する(逆向きのスピン及び逆向きの運動量の)電子の間に引力を生成する。このようにして、クーパー対と称される電子対が形成され、次いで、固有の波動関数で表される単一の量子力学的状態に凝縮される。これは巨視的量子コヒーレンスと等価であり、符号50又は符号60のようなジョセフソン接合の「ギャップ」材料における「超伝導電流」の生成によって、更に例示できる。本開示では、室温以上の温度条件下で、熱撹拌(ゆらぎ)が惹起する格子振動は、合併した双極子と結びつき、双極子又はイオンの振動により、双極子が更に整列するのを可能にし、イオン及び/又は双極子の移動に対する内部抵抗を低減させ、誘電率を増加させて、導体100と強誘電体200との界面で、ゆらぎの仮想的な「スープ(soup)」である非線形が高く平衡ではない環境を生成する。
【0063】
物理系とその周囲(環境)との間の複雑な相互作用は、系の量子力学的性質を破壊し、通常の観察下では古典的なものである。当該過程はデコヒーレンスとして知られている。しかしながら、急加速した過渡電流下においては、帯電した物質のスピン及び/又は振動の加速により、デコヒーレンスを減速(遅延)できる(場合によっては、デコヒーレンスを抑制、すなわち、環境から物理系を無関係にできる)ことが主張されている。これは、巨視的量子コヒーレンスの状態を達成するための真の条件にでき、当該観念は、平衡への緩和の開始を一定に遅延させることにより、系が熱力学的平衡に決して到達しないようにすることである(したがって、最大エントロピーの生成が遅延する)。室温超伝導といった「変則的(anomalous)」な発現現象を発生させることにより、系が「急激(violently)」に反応しうる。例えば、符号10のような好ましい実施形態の1つが、LED又はダイオードに接続されている場合、外部回路において小さな電流が継続的に循環しているため、熱力学的平衡が減速している。-20℃では、強誘電性を惹起する超伝導体10、20、又は30において、帯電した物質の振動が観察され、室温では、強誘電性を惹起する超伝導体10、20、又は30において、3年以上の間、超伝導電流を惹起できる。
【0064】
非特許文献1において言及されているようなPrigogine効果(Ilya Prigogine(イリヤ・プリゴジン)、1977年ノーベル化学賞)は、3つの条件の下において、無秩序系(前述のゆらぎの「スープ」)は、巨視的量子コヒーレンスの状態と等価な、秩序のある状態に自己組織化できることを説明している。当該条件は、非線形性の高い媒体(この場合は強誘電体)の存在と、熱力学的平衡のない急激な散逸と、自己組織化の過程(無秩序からの秩序化)を維持するための、(開回路で、あるいは、外部回路の閉塞により、導体100及び/又は110のフェルミ準位の強誘電体200との整列を要するため、双極子の自然な整列及びイオン伝導により生じる)エネルギー束とである。本開示は巨視的量子コヒーレンスを有し、超伝導の最終条件を満たしていることを、上述は示している。上述したように、本開示では、超伝導の3つの条件が全て満たされているため、結果として、低温から高温までの超伝導が本明細書において、構築及び実現されている。
【0065】
超伝導の生命線は、局所的な巨視的量子コヒーレンスの実現可能性、すなわち、巨視的な物体が、本質的に量子力学的であり、重ね合わせ、もつれ、トンネリングといった事象を呈示するように作用する可能性である。要約すると、3つの物理的メカニズムの合成、すなわちマイスナー効果、クーパー効果(又はバイポーラロンの形成)、Prigogine効果の合成が、少なくとも好ましい実施形態においては、室温から高温の超伝導の可能性に直接もたらすことを主張しうる。したがって、超伝導電流は、導体100、半導体300、絶縁体400、超伝導体500、及び強誘電体200の間の界面(境界)に沿って生成できる。
【0066】
強誘電性を惹起する超伝導体は、超伝導体10、20、30において、導体100のフェルミ準位が強誘電体200のフェルミ準位よりも高い場合に、導体100と強誘電体200の界面で、負の静電容量の事象を呈することができ、(導体の電子と強誘電体の陽イオン又は正の双極子とによって形成される)フェルミ準位が整列する電気二重層キャパシタ(EDLC)と、界面でEDLCと直列接続された逆位の電気二重層キャパシタ(EDL-C’)との形成をもたらす。逆位のキャパシタは、強誘電体の陽イオンと、双極子の負の端によって元の表面に反発されるか、あるいは、EDLCに整列された陽イオン、及び対向する層の双極子の正の端の作用によって、別の層を循環する、負のポーラロン又はクーパー対とによって形成できる。
【0067】
【0068】
素子の抵抗率は、強誘電体の範囲を超え、素子における他の材料及び界面に依存するため、表1の値に限定されないことに留意されたい。
【国際調査報告】