IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ディ−オルビット・エス・ペー・アーの特許一覧

<>
  • 特表-姿勢判定用の衛星モジュール 図1
  • 特表-姿勢判定用の衛星モジュール 図2
  • 特表-姿勢判定用の衛星モジュール 図3
  • 特表-姿勢判定用の衛星モジュール 図4
  • 特表-姿勢判定用の衛星モジュール 図5
  • 特表-姿勢判定用の衛星モジュール 図6
  • 特表-姿勢判定用の衛星モジュール 図7
  • 特表-姿勢判定用の衛星モジュール 図8
  • 特表-姿勢判定用の衛星モジュール 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-28
(54)【発明の名称】姿勢判定用の衛星モジュール
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/36 20060101AFI20221118BHJP
【FI】
B64G1/36 Z
B64G1/36 300
B64G1/36 500
B64G1/36 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504218
(86)(22)【出願日】2020-07-16
(85)【翻訳文提出日】2022-03-17
(86)【国際出願番号】 IB2020056693
(87)【国際公開番号】W WO2021014293
(87)【国際公開日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】102019000012498
(32)【優先日】2019-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520189773
【氏名又は名称】ディ-オルビット・エス・ペー・アー
【氏名又は名称原語表記】D-ORBIT S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】フェラリオ・ロレンツォ
(72)【発明者】
【氏名】ベヴィラクア・マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ゾルジ・ルカ
(72)【発明者】
【氏名】グリモルディ・ジョルジョ
(57)【要約】
【課題】
従来技術の問題点に対処した姿勢判定用の衛星モジュールを提供する。
【解決手段】
姿勢判定用の衛星モジュール10は、少なくとも1つのデータ取得基板17と接続インターフェース14とを備える収容体11と、太陽センサ、地球センサ、恒星センサ、および地平線センサの中から選択された少なくとも1つの第1種センサ12であって、データ取得基板17と通信する、少なくとも1つの第1種センサ12と、太陽センサ、地球センサ、恒星センサ、および地平線センサの中から選択され、かつ第1種センサとは異なる少なくとも1つの第2種センサ13であって、データ取得基板17と通信する、少なくとも1つの第2種センサ13と、を備える。接続インターフェース14は収容体11の第1面19に取り付けられ、第1種センサ12は収容体11の第2面20に取り付けられ、第2種センサ13は収容体11の第3面21に取り付けられる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
姿勢判定用の衛星モジュール(10)であって、
衛星(100)に取り付けられるように構成された多面収容体(11)であって、少なくとも1つのデータ取得基板(17)と前記データ取得基板(17)が前記衛星(100)に対して信号通信および電気通信することを可能にする接続インターフェース(14)とを備える、多面収容体(11)と、
太陽センサ、地球センサ、恒星センサ、および地平線センサの中から選択された少なくとも1つの第1種センサ(12)であって、前記データ取得基板(17)と通信する、少なくとも1つの第1種センサ(12)と、
太陽センサ、地球センサ、恒星センサ、および地平線センサの中から選択され、かつ前記第1種センサとは異なる少なくとも1つの第2種センサ(13)であって、前記データ取得基板(17)と通信する、少なくとも1つの第2種センサ(13)と、
を備えた衛星モジュール(10)において、
前記接続インターフェース(14)は前記多面収容体(11)の第1面(19)に取り付けられ、前記第1種センサ(12)は前記多面収容体(11)の第2面(20)に取り付けられ、前記第2種センサ(13)は前記多面収容体(11)の第3面(21)に取り付けられる、
衛星モジュール(10)。
【請求項2】
請求項1に記載の衛星モジュール(10)において、
前記第1種センサ(12)は、地球センサまたは太陽センサからなる、衛星モジュール(10)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の衛星モジュール(10)において、
前記第1種センサ(12)は、角直径が少なくとも60度である視野を有する、衛星モジュール(10)。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の衛星モジュール(10)において、
前記第2種センサ(13)は恒星センサである、衛星モジュール(10)。
【請求項5】
請求項4に記載の衛星モジュール(10)において、
前記恒星センサ(13)は、角直径が15度よりも大きい視野を有する、衛星モジュール(10)。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の衛星モジュール(10)において、
前記第1種センサおよび前記第2種センサとは異なる第3種センサ(15)であって、前記多面収容体(11)の第4面(22)に取り付けられた第3種センサ(15)をさらに備える、衛星モジュール(10)。
【請求項7】
請求項6に記載の衛星モジュール(10)において、
前記第3種センサ(15)は、太陽センサ、地球センサ、および地平線センサの中から選択される、衛星モジュール(10)。
【請求項8】
請求項7に記載の衛星モジュール(10)において、
第1種センサ(12)と第3種センサ(15)との両方が、前記第2面(20)および前記第4面(22)に取り付けられる、衛星モジュール(10)。
【請求項9】
請求項6または7に記載の衛星モジュール(10)において、
前記多面収容体(11)は、上面(24)と前面(25)とを有し、前記上面(24)および前記前面(25)の間には複数の接続面(23)が延在し、
前記第2面(20)または前記第4面(22)は、前記複数の接続面(23)のうちの2つにより特定される、衛星モジュール(10)。
【請求項10】
請求項9に記載の衛星モジュール(10)において、
少なくとも1つの第1種センサ(12)が、各接続面(23)に取り付けられる、衛星モジュール(10)。
【請求項11】
請求項10に記載の衛星モジュール(10)において、
第1種センサ(12)と第3種センサ(15)との両方が、各接続面(23)に取り付けられる、衛星モジュール(10)。
【請求項12】
請求項9~11のいずれか一項に記載の衛星モジュール(10)において、
前記複数の接続面(23)は4つの接続面(23)からなり、前記4つの接続面(23)のそれぞれが、隣接する接続面と10度から25度の範囲の角度を形成する、衛星モジュール(10)。
【請求項13】
請求項9~12のいずれか一項に記載の衛星モジュール(10)において、
前記多面収容体(11)は、
側面(21)と、
前記側面(21)および前記前面(25)の間を延びる少なくとも1つの中間面(26)と、
を有し、
少なくとも1つの第1種センサ(12)または第3種センサ(15)が、前記中間面(26)に取り付けられる、
衛星モジュール(10)。
【請求項14】
請求項13に記載の衛星モジュール(10)において、
2つの中間面(26)を備え、
第1中間面は、第2中間面(26)と20度から40度の範囲の角度を形成する、衛星モジュール(10)。
【請求項15】
請求項1~14のうちの1項以上に記載の衛星モジュール(10)を少なくとも2つ備える衛星(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、姿勢判定用の、言い換えると、宇宙において衛星をどの方向に向けるかを判定するための、衛星モジュールに関する。この姿勢判定モジュール(AD)は、衛星における姿勢判定制御システム(ADCS)の一部として用いられ得る。
【背景技術】
【0002】
ADCSシステムは、衛星が軌道上に配置されたまたは宇宙に打ち上げられた目的である任務を当該衛星が成し遂げられるよう当該衛星の姿勢を設定および/または修正するために、当該姿勢を判定する。
【0003】
AD姿勢判定は、通常、センサおよびプロセッサによって行われる。これらのセンサおよびプロセッサは、特定の物理量を測定および処理して、(例えば、衛星若しくは地球と一体の)相対基準系または(例えば、星と一体の)慣性基準系に対する衛星の空間的向きについての正確な情報を処理できる。
【0004】
姿勢判定に一般的に用いられるセンサとしては、地球の磁界の強度および方向を測定する磁力計、ジャイロスコープ、太陽の方向および/または位置を特定する太陽センサ、一組の星を特定し認識する恒星センサ、地球の中心に向かう方向を特定する地球センサ、および地球の地平線を特定する地平線センサ、がある。
【0005】
これらのセンサのうちの2つ以上から(好ましくは、これらのセンサのうちの少なくとも3つから)得られる情報を組み合わせることにより、宇宙における衛星の向きを判定できる。
【0006】
これらのセンサは、衛星に搭載することで、当該衛星の動作寿命中または任務中にその機能を果たすことができる。
【0007】
各種のセンサは特定の量を検出するよう設計されているので、各センサは、通常は独立型センサである。すなわち、各センサは、他のセンサとは独立に動作可能なセンサであり、電力供給(センサ動作に必要な場合)およびデータ送信の両方についてADCSシステムとやり取りするための専用接続を必要とする。
【0008】
各種のセンサは、衛星において、当該センサが検出するように設計された特定の情報を任務中に検出するのに最も適した位置に設置される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
出願人は、そのため、ADシステムのセンサの位置決めが極めて重要となり、大抵の場合、この位置決めには、衛星が実行する任務の詳細および任務中に衛星がとることになる姿勢を前もって把握しておくことが必要になることに気付いた。
【0010】
例として、出願人は、地球は地表から約500Kmの距離において約85度の角直径を有することから、通常、恒星センサ(一般的には、カメラまたは望遠カメラ)は、地球、太陽、または地球の反射能に影響されることなく、どんなに小さい星々であろうとも、それらの星々の一部をフレームに収められるようにするために、極めて狭い視野(FOV)を有し、例えば角直径が4度から7度であるということを確認した。
【0011】
恒星センサの限られた視野を考慮すると、恒星センサを設置する衛星の部位を慎重に選択し、任務中に恒星センサが地球に向けられることなく、地球とは反対側に向けられるようにする必要がある。特定の任務の場合、2つ以上の恒星センサを設置することが必要となる場合があるが、設計面(追加の恒星センサのための追加の専用接続を設ける必要がある)とコスト面の両方で極めて負担が大きくなる。これに関して、出願人は、限られた視野内でフレームに収められた星々の一部が明るい星を含むことを先験的に保証できないことから、恒星センサは、薄暗い星をも識別するように、感度が極めて高くなくてはならない(よって高価である)ということを実際に確認した。
【0012】
同様に、出願人は、地球の近傍から見た太陽の角直径が約0.5度であるので、太陽センサを慎重に位置決めして、地球の反射能が太陽センサの測定値をマスキング等して歪めるのを防がなければならないということを確認した。いずれにしても、季節が移り替わるときおよび地球に対する相対的な位置が変化するときの地球の反射能を記述しようとする数学的モデルに頼ることで、地球の反射能を考慮するように太陽センサの測定値を修正することが必要な場合も多い。これら数学的モデルは、ADシステムによる高い演算コストを必要とする上、常に信頼できるものではなく、数学的モデルにおいて検討されないものの実際の反射能に影響し得る事象を考慮することができない。よって、太陽センサの場合でも、太陽の位置の判定を保証できるように、衛星に2つ以上のセンサを準備および設置することが必要となる場合があるが、これには、さらなる設計および少なくとも部分的にさらなるコストが伴う。
【0013】
同様の考察が、ADシステムにおいて用いられるその他の種類のセンサにも当てはまる。
【0014】
従って、出願人の経験では、各衛星には、特定の衛星において且つ特定の任務のために動作できるよう特別に設計および構築された専用の姿勢判定システムが必要となる。
【0015】
出願人は、衛星に設置されるセンサの数を増加させることにより、これらのセンサの位置決めの自由度が高まり、任務中に衛星がとることになる姿勢と任務とに関する情報が少なくなると考えた。
【0016】
しかし、出願人は、このようにすることで、センサ自体を適正に動作させるのに必要な専用接続に関して、より大きな費用が必要になり、衛星のADシステムの設計が複雑化し、衛星にセンサを組み込むことがより一層きわどくなるということに気付いた。
【0017】
一方で、出願人は、ADシステムの異種センサ群を独立化且つ自立化することで、この異種センサ群を、モジュール全体を適正に動作させるために単一のデータ接続および単一の電気接続しか必要としない独立衛星モジュールとして動作させることができると考えた。これにより、衛星にセンサを組み込むための設計の複雑さが大幅に低減され得る。
【0018】
また、出願人は、互いに向きが異なる(つまり、異なる方向に向けられた)少なくとも2つの異種センサを当該衛星モジュールに装着することによって、互いに同一かつ互いに向きが異なるより多くの衛星モジュールを衛星に装着できるので、各種センサは全体として、あらゆる(360度をも含む)角直径の観測視野を有し得ると考えた。
【0019】
また、出願人は、そのような衛星モジュールはADシステムのコストを大幅に減少させると考えた。実際、一種類のAD衛星モジュールであっても、任意の衛星に装着することができ、互いに全く同じAD衛星モジュールの大量生産が可能となる。異種衛星モジュールのそれぞれに特定のセンサを装着したと仮定しても、各種類のAD衛星モジュールを量産でき、使用する衛星モジュールを随時選択できる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
従って、本発明は、第1の様態において、姿勢判定用の衛星モジュールであって、
衛星に取り付けられるように構成された多面収容体であって、少なくとも1つのデータ取得基板と前記データ取得基板が前記衛星に対して信号通信および電気通信することを可能にする接続インターフェースとを備える、多面収容体と、
太陽センサ、地球センサ、恒星センサ、および地平線センサの中から選択された少なくとも1つの第1種センサであって、前記データ取得基板と通信する、少なくとも1つの第1種センサと、
太陽センサ、地球センサ、恒星センサ、および地平線センサの中から選択され、かつ前記第1種センサとは異なる少なくとも1つの第2種センサであって、前記データ取得基板と通信する、少なくとも1つの第2種センサと、
を備えた衛星モジュールにおいて、
前記接続インターフェースは前記多面収容体の第1面に取り付けられ、前記第1種センサは前記多面体状立体物の第2面に取り付けられ、前記第2種センサは前記多面体状立体物の第3面に取り付けられる、姿勢判定用の衛星モジュールに関する。
【0021】
本発明は、第2の様態において、本発明の第1の様態に係る前記衛星モジュールを、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも4つ、さらにより好ましくは8つ備える衛星に関する。
【0022】
多面収容体であることにより、この衛星モジュールにおいて、互いに向きが異なる表面(面)であって、異種センサを取り付けるのに用いられ得る表面(面)を設けることができる。そして、これらの異種センサは、互いに向きが異なるように収容体に取り付けられる。
【0023】
データ取得基板により、センサから得られる電気信号を収集できる。前記データ取得基板は、受信した信号を調整して当該信号をデジタル値に変換する回路、場合によってはアナログ-デジタル変換器を用いて前記変換を行う回路をさらに備え得る。前記データ取得基板は、前記デジタル信号を処理して、衛星姿勢制御システムにより受信されるよう設定された出力を生成するように構成されたマイクロコントローラをさらに備えてもよいし、前記マイクロコントローラと信号通信していてもよい。前記マイクロコントローラは、収容体内に搭載してもよいし、衛星において収容体の外部に搭載してもよい。
【0024】
前記接続インターフェースにより、前記データ取得基板と前記衛星姿勢制御システムとの間で信号をやり取りでき、前記データ取得基板と、場合によっては前記センサ(センサが電力供給を必要とする場合)とに通電できる。
【0025】
前記接続インターフェースは、1つの接続プラグであってもよいし、複数の接続プラグから構成されてもよい。いずれにしても、前記接続インターフェースは、前記収容体において、前記センサを収容する面とは異なる面に取り付けられる。これにより、前記モジュールが衛星と接続されているときに、センサの視野が損なわれない。
【0026】
従って、前記衛星モジュールは、自立型かつ独立型のモジュールとして構成される。すなわち、前記衛星モジュールは、センサを適正に動作させるために単一のデータ接続および単一の電気接続しか必要としない独立衛星モジュールとして構成される。
【0027】
本明細書および以降の特許請求の範囲において、用語「多面体」は、有限数の多角形によって規定される物体であって、各多角形が面を規定し、2つの面が交わる箇所が角または頂点であり、各角が2つの面のみに属し、2つの隣接する面が同一平面上にない物体をいう。各多角形は、好ましくは1つの平面に含まれる。代替的に、多角形のうちの少なくとも1つまたは全てが、平面ではなくて曲面であってもよい。
【0028】
本明細書および以降の特許請求の範囲において、用語「衛星」は、宇宙または高層大気において移動可能な任意の乗り物をいい、この乗り物には、天体の周りを周回する物体や、宇宙においてまたは軌道の周りを進むことができる宇宙船が含まれる。
【0029】
本明細書および以降の特許請求の範囲において、視野について言及する場合、用語「角直径」(ad)は、観測者からの距離をDとし、視野に完全に含まれる物体に外接可能な、より小径の円の直径(d)の測定値を意味し、式ad=2*arctan(d/2*D)で表される。
【0030】
第1または第2の様態に係る本発明は、以下の特徴のうちの1つ以上を、別箇にまたは組み合わせとして有し得る。
【0031】
好ましくは、前記第1種センサは、地球センサまたは太陽センサからなる。
【0032】
好ましくは、前記第2種センサは恒星センサである。
【0033】
出願人は、少なくとも2つの同一の衛星モジュールを衛星に装着し、一方の衛星モジュールの多面収容体を他方の衛星モジュールの多面収容体に対して異なる方向に向けることにより、衛星のとる姿勢にかかわらず、衛星の形状に応じて、各量について正確な測定値を得ることができるような各類センサの視野を得ることができるということを確認した。
【0034】
いずれにしても、出願人は、衛星がどのような形状をしていても、衛星のとる姿勢にかかわらず、各量について正確な測定値を得ることができるような各類センサの視野を保証する個数の衛星モジュールを選択することが常に可能であるということを確認した。
【0035】
例として、立方体状の衛星の8つの頂点に8つの衛星モジュールを配置することにより、第1種センサと第2種センサとの両方が立方体状の衛星の6つの面に対して垂直に向けられるとともに、各種類の少なくとも2つのセンサが冗長的に方向づけられるように、各モジュールを方向づけることができる。
【0036】
これにより、衛星にADシステムを正確に装着するために、任務の詳細および衛星がとることになる姿勢を先験的に把握しておく必要はない。
【0037】
また、出願人は、本発明に係る衛星モジュールにより、極めて低コストの恒星センサを使用できると考えた。
【0038】
実際、通常用いられる恒星センサは、十分な数の星または十分に明るい星を検出して恒星目録との比較を進めるために、極めて狭い視野(FOV)を有し(角直径が4度から7度であり)、それゆえに、極めて高感度である必要があり、高価である。
【0039】
出願人は、各恒星センサが他の恒星センサとは異なる方向に向くように前記衛星モジュールを衛星に取り付けることで、衛星のとる姿勢にかかわらず、地球にも太陽にも向けられていない恒星センサが少なくとも1つ存在する確率が極めて高くなることに気付いた。衛星(例えば、立方体状の衛星)の8つの頂点に8つの衛星モジュールを配置することで、地球にも太陽にも向けられていない恒星センサが少なくとも1つ存在する確率は、100%である。
【0040】
従って、出願人は、広い視野の面においても、ほぼ確実に、少なくとも1つの恒星センサが地球も太陽も含まない宇宙の部分をフレームに収めているので、恒星センサの視野が大幅に広がり得るということに気付いた。
【0041】
出願人は、視野が広いと、恒星目録との比較を進められるように、十分な数の極めて明るい星が常にフレームに収められる可能性が極めて高いことから、恒星センサの視野を広げることで、その感度を低くする(従って、恒星センサのコストを下げる)ことができると考えた。
【0042】
また、出願人は、視野が広く低感度の恒星センサを用いることで、ADシステムのエネルギー支出を減少させることもできると考えた。
【0043】
実際のところ、より狭い視野を有する恒星センサによってフレームに収められた星部分は、フレームに収められた小さな星部分を確実に認識できるようにするために、極めて正確な恒星目録と比較されなければならない。一般的に、角直径が約4度である視野を有する恒星センサは、何十万もの星からなる恒星目録を必要とする。フレームに収められた星部分をこうした恒星目録と比較するための演算はコストが極めて高く、比較のために実装されたプロセッサに電力を供給するためにかなりの量の電気(最大で数十ワット)を必要とする。
【0044】
これに対して、出願人は、広い視野を有する恒星センサによってフレームに収められた星部分は、精度のはるかに低い恒星目録と比較できるということに気付いた。出願人は、数百個(例えば、約500個)の星からなる恒星目録で十分であると確認した。従って、比較のための演算は、コストが極めて低く、必要とされるエネルギーがはるかに少ない。
【0045】
好ましくは、前記恒星センサは、角直径が15度よりも大きい視野を有する。
【0046】
さらにより好ましくは、前記恒星センサは、角直径が約20度から約60度の範囲、好ましくは約40度である視野を有する。
【0047】
好ましくは、前記第1種センサは、角直径が少なくとも60度である視野を有する。
【0048】
好ましくは、前記衛星モジュールは、前記第1種センサおよび前記第2種センサとは異なる第3種センサであって、前記多面収容体の第4面に取り付けられた第3種センサをさらに備える。
【0049】
前記第3種センサは、異なる測定量に基づく追加的データであって姿勢を判定するために処理され得る追加的データを提供するので、姿勢判定の精度を向上させる。
【0050】
さらに、前記多面体の第4面に前記第3種センサを取り付けることで、前記第1種センサまたは第2種センサが(例えば、前記収容体の第2面または第3面の前方を物体が通過して、関連するセンサの視野が暗くなったことにより)暗くなっても、姿勢判定に有益なデータを入手することができる。
【0051】
好ましくは、前記第3種センサは、太陽センサ、地球センサ、および地平線センサの中から選択される。
【0052】
例として、前記第1種センサが地球センサである場合、前記第3種センサは太陽センサである。
【0053】
好ましくは、第1種センサと第3種センサとの両方が、前記第2面および前記第4面に取り付けられる。
【0054】
これにより、2つの異なる量(例えば、地球の中心に向けられたベクトルおよび太陽に向けられたベクトル)の測定値を同時に得ることができ、姿勢判定の精度が向上する。
【0055】
好ましくは、前記多面収容体は、上面と前面とを有し、前記上面および前記前面の間には複数の接続面が延在し、前記第2面または前記第4面は、前記複数の接続面のうちの2つにより特定される。
【0056】
換言すると、前記収容体の(例えば、前面および上面などの)2つの略垂直な面の間には、接続面が設けられており、前記接続面は、1つ目の面(例えば、上面)から、当該接続面が他方の面(例えば、前面)に繋がるまで下向きに傾斜している。この構成において、前記第1種センサおよび前記第3種センサは、これらの接続面のうちの少なくとも2つの接続面に配置される。
【0057】
好ましくは、前記複数の接続面は4つの接続面からなり、前記4つの接続面のそれぞれが、隣接する接続面と10度から25度の範囲の角度を形成する。
【0058】
好ましくは、少なくとも1つの第1種センサが、各接続面に取り付けられる。
【0059】
これにより、接続面の数に応じて、前記第1種センサが感受する量の冗長測定値を得ることができる。よって、センサのあらゆる定誤差、視誤差、またはその他の種類の測定誤差が、収集されたデータの統計処理によって修正され得る。
【0060】
好ましくは、第1種センサと第3種センサとの両方が、各接続面に取り付けられる。
【0061】
これにより、両方の測定誤差を低減し、姿勢判定の精度を高めることが可能になる。
【0062】
好ましくは、前記多面収容体は、側面と、前記側面および前記前面の間を延びる少なくとも1つの中間面とを有し、少なくとも1つの第1種センサまたは第3種センサが、前記中間面に取り付けられる。
【0063】
前記側面および前記前面は、前記上面の下方に配置され、好ましくは互いに略垂直かつ前記上面に対して略垂直である。前記少なくとも1つ(好ましくは、2つ)の中間面は、前記側面から延び、当該中間面が前記前面に繋がるまで下向きに傾斜している。この構成では、前記第3種センサが、これらの接続面のうちの少なくとも2つの接続面に配置される。
【0064】
好ましくは、2つの中間面が設けられ、第1中間面は、第2中間面と20度から40度の範囲の角度を形成する。
【0065】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付図面を参照してなされる、本発明の好ましい実施形態についての以下の詳細な説明からより明瞭になる。以下の説明は、あくまでも説明のための非限定的な例である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】本発明に係る衛星モジュールの概略斜視図である。
図2図1の衛星モジュールのいくつかの部品の機能概略図である。
図3】本発明に係る衛星モジュールを8つ備える衛星の概略斜視図である。
図4図3の衛星の底面図である。
図5図3の衛星の上面図である。
図6図3の衛星の側面図である。
図7図3の衛星の側面図である。
図8図3の衛星の側面図である。
図9図3の衛星の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
添付図面に関して、本発明に係る衛星モジュール全体を、符号10で示す。
【0068】
前記衛星モジュールは、金属材料(例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、またはチタン)からなる収容体11を備える。本発明の好ましい実施形態では、収容体は、10センチメートル、好ましくは約5センチメートルの短辺を有して、立方体に内接し得る。
【0069】
少なくとも1つの第1種センサ12、少なくとも1つの第2種センサ13、および少なくとも1つの接続インターフェース14が、収容体11に固定される。
【0070】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1つの第3種センサ15も、収容体11に固定される。
【0071】
第1種センサ、第2種センサ、および(第3種センサがある場合には)第3種センサは、測定される量に対して直に(つまり、測定される量を鑑みて、直に)露出している必要があるセンサに属する。第1種センサ12、第2種センサ13、および(設けられている場合には)第3種センサ15は、収容体11の外面に取り付けられることで、測定される量を感知するそれぞれの装置が収容体11の外部の環境に面する。
【0072】
本発明の好ましい実施形態では、第1種センサ12は太陽センサである。つまり、第1種センサ12は、太陽を当該センサ自体と結ぶ方向を提供できるセンサである。例として、太陽センサ12は、入射光を電気信号に変換可能なフォトダイオード(若しくは、フォトダイオードアレイ)または光検出器(若しくは、光検出器アレイ)とすることができ、続いて、この電気信号を処理し比較することで入射光の方向を判定する。太陽センサ12の視野の角直径は、60度から90度の範囲であり、好ましくは約80度である。
【0073】
センサのうち、第2種センサ13は恒星センサである。すなわち、第2種センサ13は、光電セルまたは写真機器を通じて星の位置を検出するセンサである。本発明の好ましい実施形態では、恒星センサ13は光学ヘッド13aを備える。光学ヘッド13aには、バッフル13b(図1を参照)と、検出された画像を処理して、これらの画像を、1000個未満の星を含む予め組み込まれた恒星目録と比較するように構成された電子機器13c(図2)とが設けられている。恒星センサ13の視野の角直径は、15度よりも大きく、好ましくは20度から60度の範囲であり、さらにより好ましくは約40度である。
【0074】
第3種センサ15は地球センサである。すなわち、第3種センサ15は、衛星に対する地球の位置を検出できるセンサである。本発明の好ましい実施形態では、地球センサ15は赤外線熱電対列である。地球センサ15の視野の角直径は、60度および90度の範囲であり、好ましくは約80度である。
【0075】
収容体11の内部には、第1種センサ、第2種センサ、および第3種センサとは異なる更なる第4種センサ16も少なくとも1つ設けられる。
【0076】
第4種センサ16は、磁力計とジャイロスコープとからなる群から選択される。本発明の好ましい実施形態では、2つの第4種センサ16が設けられ、特には、磁力計とジャイロスコープとが設けられる。磁力計は、1つ以上の方向に沿って地球の磁界の成分を測定または地球の磁界のモジュールを測定するように構成される。ジャイロスコープは、電子ジャイロスコープ(例えば、MEMSジャイロスコープ)であり、衛星の向きの変化を検出できる。
【0077】
図2に概略的に示すように、データ取得基板17が収容体11内部に設けられる。データ取得基板17は、第1種センサ12、第2種センサ13、第3種センサ15、および第4種種センサ16から電気信号を受信するように、これらのセンサ自体と信号通信する状態で配置される。
【0078】
本発明の好ましい実施形態では、データ取得基板17は、マイクロコントローラ18を組み込んでいる(又は、マイクロコントローラ18と信号通信可能である)。マイクロコントローラ18は、これらのセンサによって得られた電気信号を処理して、衛星姿勢制御システムにより受信され処理されて衛星の姿勢を変化させるよう設定された出力信号を生成する、ように構成される。
【0079】
データ取得基板17は接続インターフェース14と信号接続および電気接続され、衛星のオンボードシステムから得られた電力供給(例えば、5Vの直流)を接続インターフェース14から受け取り、マイクロコントローラ18により生成された出力信号を受信する。データ取得基板17はまた、前記センサのうちの1つ以上と電気接続されて当該1つ以上のセンサに電力供給する。
【0080】
接続インターフェース14は、衛星コネクタと接続されて、衛星モジュール10を衛星のADCSシステムに組み込むように構成される。
【0081】
図1に表されるように、収容体11は、互いに向きが異なる複数の面を有するように、外側が多面体の形状をしている。
【0082】
具体的には、収容体11は、接続インターフェース14が取り付けられる第1面19と、第1種センサ12が取り付けられる第2面20と、第2種センサ13が取り付けられる第3面21と、第3種センサ15が取り付けられる第4面22と、を有する。
【0083】
図1で示される実施形態では、太陽センサ12は第2面20に取り付けられ、恒星センサ13は第3面21に取り付けられ、地球センサ15は第4面22に取り付けられる。
【0084】
第2面20および第4面22は、収容体11の面のうち、収容体11の上面24および前面25の間を延びる複数の接続面23に含まれる面である。
【0085】
前面25および上面24は、互いに略垂直である。
【0086】
図1における実施形態では、接続面23は4つあり、互いに連続しており、上面24と前面25とを均等に結ぶ。各接続面は、前の接続面および/または次の接続面と約18度の角度を形成する。前面25のすぐ隣の接続面23は、前面25と約18度の角度を形成し、上面24のすぐ隣の接続面23は、上面24と約18度の角度を形成する。
【0087】
接続面23は好ましくは平面であり、上面24および前面25も好ましくは平面である。
【0088】
第1面19は、収容体11の後面を規定する。後面19は、前面25とは反対側にあり、好ましくは前面25と平行である。
【0089】
第3面21は、収容体11の側面を規定する。側面21は、上面24および前面25と略垂直である。図1に図示するように、側面21は、後面19とも略垂直である。
【0090】
2つの中間面26が、側面21および前面25の間を延びている。中間面26は、互いに連続しており、側面21と前面25とを均等に結ぶ。中間面26は、互いに約33度の角度を形成する。前面25のすぐ隣の中間面26は、前面25と約33度の角度を形成し、側面21のすぐ隣の中間面26は、側面21と約33度の角度を形成する。中間面26は、好ましくは平面である。中間面26はまた、2つの接続面23と角を形成する。具体的には、中間面26は、前面25に最も近い2つの連続する接続面23と角を形成する。
【0091】
本発明の好ましい実施形態では、図1に図示するように、地球センサ15および太陽センサ12が各接続面23に取り付けられる。好ましくは、地球センサ15および太陽センサ12が両方の中間面26にも取り付けられる。
【0092】
衛星モジュール10は、その他の衛星モジュール10とは独立して且つ自立して動作できる独立型ユニットを形成する。
【0093】
図3は、衛星100での複数の衛星モジュール10の考え得る且つ好ましい用途を示す。衛星100は、例えば、立方体状の衛星、またはいずれにしても8つの角を有する衛星である。
【0094】
表示の便宜上、衛星100に装着された衛星モジュール10は、ローマ数字I~VIIで表されており、同一ではあるが互いに区別されている。
【0095】
互いに同一であるが互いに向きが異なる8つの衛星モジュール10が、衛星100に取り付けられる。衛星モジュール10は、衛星100の8つの角に取り付けられる。
【0096】
図4は、図3における衛星100の底面図であり、収容体11に取り付けられた各センサの向きが強調されている。表示の便宜上、1つの恒星センサ13、1つの太陽センサ12、および接続インターフェース14が示されている。さらに、収容体11は、立方体形状で示されている。いずれにしても、上述の衛星モジュールによれば、収容体11は、接続インターフェース14が取り付けられた第1面と、太陽センサ12が取り付けられた第2面と、恒星センサ13が取り付けられた第3面とを有する。当業者であれば、以下の事項は、収容体11およびセンサの配置が図1における衛星モジュールのそれらと同一である衛星モジュール10にも適用される、と容易に理解するであろう。
【0097】
図5は、図3における衛星100の上面図である。図6図9は、図3における衛星100の側面図である。
【0098】
図4においてローマ数字Vで表される衛星モジュール10は、恒星センサ13が当該図を見る者に向けられた状態で示され、太陽センサ12が当該図を見る者にとって下方に向けられた状態で示されている。図4においてローマ数字VIで表される衛星モジュール10は、恒星センサ13が当該図を見る者にとって下方に向けられた状態で示され、太陽センサ12が当該図を見る者に向けられた状態で示されている。図4においてローマ数字VIIで表される衛星モジュール10は、恒星センサ13が当該図を見る者にとって右側に向けられた状態で示され、太陽センサ12が当該図を見る者に向けられた状態で示されている。図4においてローマ数字で表されていない衛星モジュール10は、恒星センサ13が当該図を見る者に向けられた状態で示され、太陽センサ12が当該図を見る者にとって左側に向けられた状態で示されている。
【0099】
太陽センサ12および恒星センサ13の向き表すための同一記号が、図5図9で採用されている。
【0100】
図4図9から分かるように、衛星100の各辺につき、少なくとも1つの恒星センサ13が存在し、この恒星センサ13の視野は、当該辺から離れる方向に向けられる。同様に、衛星100の各辺につき、少なくとも1つの太陽センサ12が存在し、この太陽センサ12の視野は、当該辺から離れる方向に向けられる。
【0101】
よって、任務中に衛星100がどのような姿勢であっても、星のみをフレームに収める視野を有する恒星センサ13が少なくとも1つ常に存在し、太陽のみをフレームに収める視野を有する太陽センサが少なくとも1つ常に存在する。
【0102】
図1に示されるような収容体11を有する衛星モジュールの場合、任務中の衛星100の姿勢にかかわらず、星のみをフレームに収める視野を有する恒星センサ13が少なくとも1つ常に存在し、太陽のみをフレームに収める視野を有する太陽センサが少なくとも4つ常に存在し、地球のみをフレームに収める視野を有する地球センサが少なくとも4つ常に存在するであろう。
【0103】
同時に同一量を測定するセンサにより得られる最小限の冗長性(いくつかの姿勢では、同一量を測定している同種のセンサの数はさらに多くなり得る)により、より低い感度のセンサを使用することができ、加えて、他のセンサの不正確な測定値を修正またはいずれにしてもフィルタすることができる。
【0104】
さらに、同時に同一量を測定するセンサにより得られる最小限の冗長性により、衛星100の姿勢判定における劣化を遅らせることができる。起こり得るセンサ故障が、(少なくとも、センサのうちの少なくとも1つが動作し続ける限り)冗長的なセンサによって補償されることで、各センサ故障について、姿勢判定の精度における劣化が小さくなるからである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】