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特表2022-549566粘液を基礎とする植物防疫用産物およびその方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-28
(54)【発明の名称】粘液を基礎とする植物防疫用産物およびその方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 65/22 20090101AFI20221118BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20221118BHJP
   A01N 43/16 20060101ALI20221118BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
A01N65/22
A01P3/00
A01N43/16 C
A01N25/00 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022512375
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(85)【翻訳文提出日】2022-03-23
(86)【国際出願番号】 IL2020050918
(87)【国際公開番号】W WO2021033192
(87)【国際公開日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】62/890,084
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522068108
【氏名又は名称】ボタノヘルス,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】キトロン,ヤニフ
(72)【発明者】
【氏名】キトロン,アミール
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011BA02
4H011BB22
4H011BC08
4H011DF04
(57)【要約】
本願は植物生産産物を提供するものであるが、該製剤は:粘液、バイオ殺真菌剤および少なくとも1種類の界面活性剤を含み;ここで該組成物は植物の感染と蔓延の予防と処置に効果的である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物生産産物であって、該産物が:
(a)粘液;
(b)バイオ殺真菌剤;
および
(c)少なくとも1種類の界面活性剤、
を含み、
ここで該組成物が植物の感染と蔓延の予防と処置に効果的である、産物。
【請求項2】
請求項1の産物であって、ここで該組成物が:
(a)環境に優しく、
(b)無毒であり、
(c)持続性の、
(d)適用表面に薄いフィルムを形成する、
のうちの少なくとも1つを特徴とする組成物である、産物。
【請求項3】
請求項1または2の産物であって、ここで該薄いフィルムまたは該粘液を製剤化する場合には、植物有害生物の呼吸を妨害するように製剤化する、産物。
【請求項4】
請求項1の産物であって、該粘液が該組成物の0.025%~0.5%を占める、産物。
【請求項5】
請求項1の産物であって、ここで該バイオ殺真菌剤が該組成物の0.01~0.5%を占める、産物。
【請求項6】
請求項1の組成物であって、ここで該界面活性剤が該組成物の0.1%~15%を占める、組成物。
【請求項7】
請求項1の産物であって、ここで該粘液が、糖類(saccharides)、多糖類、エキソ多糖類、糖類(sugars)、蛋白質類、糖蛋白質類、脂質類、酸類、脂肪酸類、有機酸類、ペクチン、キトサン、アロエ・ゲルおよびキサンテン類から成る群から選択される化合物を含む、産物。
【請求項8】
請求項5の産物であって、ここで該化合物が天然物、合成物および/または半合成物である、産物。
【請求項9】
請求項1の産物であって、ここで該組成物はポリオールをさらに含む、産物。
【請求項10】
請求項9の産物であって、ここで該ポリオールがグリシンである、産物。
【請求項11】
請求項9の産物であって、ここで該ポリオールが該組成物の0.1~5%を占める、産物。
【請求項12】
請求項1の産物であって、ここで噴霧および洗浄から成る群から選択される方法によって適用するように、該産物を製剤化する、産物。
【請求項13】
請求項12の産物であって、ここで該表面が植物の一部、植物生成物、建物、および温室から成る群から選択される、産物。
【請求項14】
請求項1の産物であって、ここで感染/汚染/接触の前または後に適用するように、該産物を製剤化する、産物。
【請求項15】
請求項1の産物であって、ここで植物の該蔓延が真菌に起因するものである、産物。
【請求項16】
請求項15の産物であって、ここで該真菌がボトリティス・シネレア菌、うどん粉病菌、黒斑病菌、アスペルギルス、菌核病菌から成る群から選択される、産物。
【請求項17】
請求項1の産物であって、ここで該有害生物の呼吸能力に影響を与えるように、該産物を製剤化する、産物。
【請求項18】
請求項1の産物であって、ここで該組成物が:
(a)粘性の範囲が100~500cPであること;
(b)揮発性/沸点の範囲が50℃超であること;
(c)pHの範囲が6~9であること;
(d)密度の範囲が0.8~1.2であること、
の少なくとも1つによって特徴付けられる、産物。
【請求項19】
請求項1の産物であって、ここで有効成分と界面活性剤との間に相乗効果が存在する、産物。
【請求項20】
植物防疫の方法であって、該方法が:
(a)請求項1の製剤を取得すること;
および
(b)請求項1の該製剤を表面に適用して、薄いフィルム層を生成させること、
を含み、
ここで該薄いフィルム層が、有害生物による障害から該植物を保護する、方法。
【請求項21】
請求項20の方法であって、ここで該表面が植物の一部であり、該植物の一部が葉、茎、花、および果実である、方法。
【請求項22】
請求項20の方法であって、ここで該有害生物が真菌である、方法。
【請求項23】
請求項22の方法であって、ここで該真菌が、ボトリティス・シネレア菌、うどん粉病菌、黒斑病菌、アスペルギルス、菌核病菌から成る群から選択される、方法。
【請求項24】
請求項20の方法であって、ここで該適用期間が収穫前、収穫後、感染前、または感染後である、方法。
【請求項25】
植物生産産物送達媒体/送達プラットフォームであって、該組成物が:
(a)粘液;
(b)少なくとも1種類の界面活性剤、
を含み、
ここで該組成物が植物の感染と蔓延の予防と処置に関する産物の送達に効果的である、送達媒体/送達プラットフォーム。
【請求項26】
請求項25の産物であって、ここで該組成物が:
(a)環境に優しく、
(b)無毒であり、
(c)持続性の、
(d)適用表面に薄いフィルムを形成する、
のうちの少なくとも1つを特徴とする組成物である、産物。
【請求項27】
請求項25または26の産物であって、ここで該薄いフィルムまたは該粘液を製剤化する場合には、植物有害生物の呼吸を妨害するように製剤化する、産物。
【請求項28】
請求項25の産物であって、ここで該粘液が該組成物の0.025%~0.5%を占める、産物。
【請求項29】
請求項25の組成物であって、ここで該界面活性剤が該組成物の0.1%~15%を占める、組成物。
【請求項30】
請求項25の産物であって、ここで該粘液が糖類(saccharides)、多糖類、エキソ多糖類、糖類(sugars)、蛋白質類、糖蛋白質類、脂質類、酸類、脂肪酸類、有機酸類、ペクチン、キトサン、アロエ・ゲルおよびキサンテンから成る群から選択される化合物を含む、産物。
【請求項31】
請求項30の産物であって、ここで該化合物が天然物、合成物および/または半合成物である、産物。
【請求項32】
請求項25の産物であって、ここで噴霧および洗浄から成る群から選択される方法によって適用するように、該プラットフォームを製剤化する、産物。
【請求項33】
請求項25の産物であって、ここで該表面が植物の一部、植物生成物、建物、および温室から成る群から選択される、産物。
【請求項34】
請求項25の産物であって、ここで感染/汚染/接触の前または後に適用するように、該産物を製剤化する、産物。
【請求項35】
請求項25の産物であって、ここで該組成物が:
(a)粘性の範囲が100~500cPであること;
(b)揮発性/沸点の範囲が50℃超であること;
(c)pHの範囲が6~9であること;
(d)密度の範囲が0.8~1.2であること、
の少なくとも1つによって特徴付けられる、産物。
【請求項36】
請求項25の産物であって、ここで該組成物はポリオールをさらに含む、産物。
【請求項37】
請求項36の産物であって、ここで該ポリオールがグリシンである、産物。
【請求項38】
請求項36の産物であって、ここで該ポリオールが該組成物の0.1~5%を占める、産物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物防疫および農作物防疫の分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人類が拠り所とする最も重要な農作物にとって、真菌類(カビ)による病害は重大な脅威である。重要農作物(米、小麦、トウモロコシ、ジャガイモ、および大豆)はいずれも、真菌類病原体による感染を受ける。毎年、真菌類病原体に感染する重要農作物の量は、世界の全人口の8%超を養うに充分な量であると推計されている。
【0003】
現在の殺真菌剤に関する世界市場は180億ドルであり、天然殺虫剤の市場は30億ドルと推定されている。市場全体のうち、ボトリティス殺虫剤の市場が大きな割合を占めており15億ドルである。
【0004】
ボトリティスは、大麻栽培における主要な問題の一つである芽腐れ病の原因である。芽腐れ病に罹ると数週間以内に農作物が全滅することがある。米国では、大麻栽培に化学殺虫剤の利用を許可していない。消費者向け製品に少しでも残留物が検出されれば、それは即座に懸念と廃棄の原因となる。
【0005】
真菌類病原体およびその感染に対する農作物防疫の効果的方法の必要性が、長年にわたって存在している。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、植物生産産物を提供することであり、該産物は:
(a)粘液;
(b)バイオ殺真菌剤;
および
(c)少なくとも1種類の界面活性剤、
を含み、
ここで該組成物は植物の感染と蔓延の予防と処置に効果的である。
【0007】
上記のような本発明の他の目的においては、
該組成物が:
(a)環境に優しく、
(b)無毒であり、
(c)持続性の、
(d)適用表面に薄いフィルムを形成する、
のうちの少なくとも1つを特徴とする組成物である。
【0008】
上記のような本発明の他の目的においては、該植物有害生物が呼吸できないように薄いフィルムまたは粘液を製剤化する。
【0009】
上記のような本発明の他の目的においては、粘液が組成物の0.025%~0.5%を占める。
【0010】
上記のような本発明の他の目的においては、バイオ殺真菌剤が組成物の0.01~0.5%を占める。
【0011】
請求項1の組成物において、該界面活性剤は該組成物の0.1%~15%を占める。
【0012】
請求項1の製剤において、該粘液は、糖類(saccharides)、多糖類、エキソ多糖類、糖類(sugars)、蛋白質類、糖蛋白質類、脂質類、酸類、脂肪酸類、有機酸類、ペクチン、キトサン、アロエ・ゲルおよびキサンテン類から成る群から選択される化合物を含む。
【0013】
上記のような本発明の他の目的においては、該化合物は天然物、合成物および/または半合成物である。
【0014】
上記のような本発明の他の目的においては、該組成物はさらにポリオールを含む。
【0015】
上記のような本発明の他の目的においては、該ポリオールはグリシンである。
【0016】
上記のような本発明の他の目的においては、該ポリオールは該組成物の0.1~5%を占める。
【0017】
上記のような本発明の他の目的においては、噴霧および洗浄から成る群から選択される方法によって適用するように、該産物を製剤化する。
【0018】
上記のような本発明の他の目的においては、該表面は植物の一部、植物生成物、建物、および温室から成る群から選択される。
【0019】
上記のような本発明の他の目的においては、感染/汚染/接触の前または後に適用するように、該産物を製剤化する。
【0020】
上記のような本発明の他の目的においては、植物の該蔓延は真菌に起因するものである。
【0021】
上記のような本発明の他の目的においては、該真菌はボトリティス・シネレア菌、うどん粉病菌、黒斑病菌、アスペルギルス、菌核病菌から成る群から選択される。
【0022】
上記のような本発明の他の目的においては、該有害生物の呼吸能力に影響を与えるように、該産物を製剤化する。
【0023】
上記のような本発明の他の目的においては、該組成物が:
(a)粘性の範囲が100~500cPであること;
(b)揮発性/沸点の範囲が50℃超であること;
(c)pHの範囲が6~9であること;
(d)密度の範囲が0.8~1.2であること、
の少なくとも1つによって特徴付けられる。
【0024】
上記のような本発明の他の目的においては、有効成分と界面活性剤との間に相乗効果が存在する。
【0025】
本発明の目的は、植物防疫の方法を提供することであって、該方法は:
(a)請求項1の産物を取得すること;
および
(b)請求項1の該産物を表面に適用して、薄いフィルム層を生成させること、
を含み、
ここで該薄いフィルム層が、有害生物による障害から該植物を保護する。
【0026】
上記のような本発明の他の目的においては、該表面は植物の一部であり、該植物の一部は葉、茎、花、および果実である。
【0027】
上記のような本発明の他の目的においては、該有害生物は真菌である。
【0028】
上記のような本発明の他の目的においては、該真菌は、ボトリティス・シネレア菌、うどん粉病菌、黒斑病菌、アスペルギルス、菌核病菌から成る群から選択される。
【0029】
上記のような本発明の他の目的においては、適用期間は収穫前、収穫後、感染前、または感染後である。
【0030】
本発明の目的は、植物生産産物送達媒体/送達プラットフォームを提供することであって、該送達媒体/送達プラットフォームは:
(a)粘液;
(b)少なくとも1種類の界面活性剤、
を含み、
ここで該組成物が植物の感染と蔓延の予防と処置に関する産物の送達に効果的である。
【0031】
上記のような本発明の他の目的においては、該組成物は:
(a)環境に優しく、
(b)無毒であり、
(c)持続性の、
(d)適用表面に薄いフィルムを形成する、
のうちの少なくとも1つを特徴とする組成物である。
【0032】
上記のような本発明の他の目的においては、該薄いフィルムまたは該粘液を製剤化する場合には、植物有害生物の呼吸を妨害するように製剤化する。
【0033】
上記のような本発明の他の目的においては、該粘液は該組成物の0.025%~0.5%を占める。
【0034】
上記のような本発明の他の目的においては、該界面活性剤は該組成物の0.1%~15%を占める。
【0035】
上記のような本発明の他の目的においては、該粘液は糖類(saccharides)、多糖類、エキソ多糖類、糖類(sugars)、蛋白質類、糖蛋白質類、脂質類、酸類、脂肪酸類、有機酸類、ペクチン、キトサン、アロエ・ゲルおよびキサンテンから成る群から選択される化合物を含む。
【0036】
上記のような本発明の他の目的においては、該化合物は天然物、合成物および/または半合成物である。
【0037】
上記のような本発明の他の目的においては、噴霧および洗浄から成る群から選択される方法によって適用するように、該プラットフォームを製剤化する。
【0038】
上記のような本発明の他の目的においては、該表面は植物の一部、植物生成物、建物、および温室から成る群から選択される。
【0039】
上記のような本発明の他の目的においては、感染/汚染/接触の前または後に適用するように、該産物を製剤化する。
【0040】
上記のような本発明の他の目的においては、該組成物が:
(a)粘性の範囲が100~500cPであること;
(b)揮発性/沸点の範囲が50℃超であること;
(c)pHの範囲が6~9であること;
(d)密度の範囲が0.8~1.2であること、
の少なくとも1つによって特徴付けられる。
【0041】
上記のような本発明の他の目的においては、該組成物はポリオールをさらに含む。
【0042】
上記のような本発明の他の目的においては、該ポリオールはグリシンである。
【0043】
上記のような本発明の他の目的においては、該ポリオールは該組成物の0.1~5%を占める。
【0044】
本発明のより詳細な理解のために添付され提供される付属の図面は、本明細書に組み込まれて本明細書の一部を構成するものであり、本発明の実施態様を具体的に説明し、また本明細書の記述と共に本発明の原理を説明する一助とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】キサンテン存在下および非存在下でタイム油がボトリティス・シネレア菌の腐生性増殖に及ぼす効果を示す。各種のタイム油/キサンテンおよび対照のポテトデキストロース寒天培地(PDA)プレートにPDAプラグで接種し、45時間後に平均のコロニー・サイズを計測した。
図2】界面活性剤の存在下および非存在下でタイム油がボトリティス・シネレア菌の腐生性増殖に及ぼす効果を示す。各種のタイム油/界面活性剤および対照のポテトデキストロース寒天培地(PDA)プレートにPDAプラグで接種し、45時間後に平均のコロニー・サイズを計測した。
図3】タイム油がトマトの葉への感染発生率に及ぼす効果を示している。ボトリティスの胞子1000個、0.1%タイム油、0.1%溶媒、またはPDBの混合物で、5週齢のトマト苗に接種した。バーは、接種後48時間(左側)または72時間(右側)の、接種症候を示す(黒いバー)または接種症候を示さない(白いバー)全部位の合計を示すものである。接種率はバーの上に赤い文字で示す。
図4】タイム油およびキサンテンがトマトの葉へのボトリティス感染の発生率に及ぼす効果を示している。ボトリティスの胞子1000個、および0.01%タイム油+キサンテン、0.01%キサンテン、またはPDBの混合物で、5週齢のトマト苗に接種した。バーは、接種後48時間(左側)または72時間(右側)の、接種症候を示す(黒いバー)または接種症候を示さない(白いバー)全部位の合計を示すものである。接種率はバーの上に赤い文字で示す。
図5】タイム油およびキサンテンがトマトの葉へのボトリティス感染の発生率に及ぼす効果を示している。ボトリティスの胞子1000個、および0.01%タイム油+キサンテン、0.01%キサンテン、またはPDBの混合物で、5週齢のトマト苗に接種した。バーは、接種後48時間(左側)または72時間(右側)の、接種症候を示す(黒いバー)または接種症候を示さない(白いバー)全部位の合計を示すものである。接種率はバーの上に赤い文字で示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
当業者には本発明が利用可能になるように、本発明の全章と共に、以下の説明を提供するものであり、それは、本発明を達成した本発明者が熟考を重ねた最良の方法を示すものでもある。しかしながら、組成物および方法を提供する本発明の一般的原理が具体的に示されているので、当業者にとっては明白であるような様々な変更も適用される。
【0047】
本発明の実施態様の詳細な説明
植物を基礎とする殺真菌剤を利用する植物防疫の工程と手段を説明することは、本願の範疇である。
【0048】
本発明では、バイオ殺真菌剤送達に関する植物生産産物プラットフォームを扱う。
【0049】
ボトリティスによる真菌汚染に対する処置として、葉に適用する収穫前の有効で、環境に優しい/安全な噴霧である本発明。推奨される方法は、粘液および植物抽出物由来バイオ殺真菌剤から成る混合物(乳剤)の噴霧による適用である。粘液によって形成される葉表面のコーティングが、抗真菌性抽出物の急速な蒸発を防ぎ、そのことによって長時間、ボトリティス汚染に対して効果的であることを可能にする。
【0050】
ボトリティスは、1400種を超える植物に感染性の病害をもたらす(Dorby and Lichter、2004)。ブドウ栽培においては、「灰色かび病(botrytis bunch rot)」として一般に知られている;また、園芸では、通常、「灰色かび病(grey mouldまたはgray mold)」とよばれている。
【0051】
園芸作物は、野菜(ひよこ豆、レタス、ブロッコリ、および豆類など)および小型果物の農作物(ブドウ、苺、およびラズベリーなど)を含み、これらは灰色かび病に罹って最も深刻な影響と打撃を受ける作物である。罹患する植物器官としては、果実、花、葉、貯蔵器官、および芽が挙げられる。温室は、感染にとって「理想的な」条件を有している:温度が20~25℃で高湿度である。
【0052】
用語「粘液」は、濃厚で粘着性の物質を説明する際に用いられる。自然界では、ほぼ全種類の植物および一部の微生物が粘液を分泌する。天然の粘液は、極性糖蛋白質およびエキソ多糖である。粘液は、キトサン、アロエ、糖類(saccharides)、多糖類、エキソ多糖類、糖類(sugars)、蛋白質類、糖蛋白質類、脂質類、酸類、脂肪酸類、有機酸類、キサンテンおよびキサンテン誘導体などの有機化合物を含むことがある。これらの化合物は、天然の資源に由来することもあれば、合成物でもあり得る。いくつかの実施態様においては、該化合物は混成物、半合成物に由来するものである。
【0053】
該産物は、ポリオール(グリセロールなど)の水溶液で希釈することもできる。
【0054】
本来、植物の粘液は、水分と栄養の貯蔵、種子発芽、および膜の肥厚において役割を果たしている。
いくつかの実施態様においては、収穫後において、保存可能期間を延長する目的で、該産物を植物生産物(果物または野菜など)に適用する。
【0055】
いくつかの実施態様においては、薄いフィルムを形成させるために、該産物を噴霧および洗浄によって適用する。感染を止めるために、植物の一部(葉など)または植物に連絡する表面に、該産物を適用することもできる。
【0056】
タイム油を基礎とする産物で、ボトリティスに関して適用する産物を評価し、人力噴霧器を用いて、水1リットル当たり10mlの用量で、良好な結果を得た。果実に染みを作ることなく、またボトリティス・シネレア菌による重症度を低下させるために有効であることが、明らかになった。花への適用に関しては、処理はさらに込み入っており、その適用は生体組織おいてのみに推奨される。
【0057】
実施例
プラットフォームを植物防疫効率に関して評価した:
(1)ペトリ皿中における、ボトリティス・シネレア菌に対する防疫に関して、上記配合を評価した:
(i)18℃の暗所において、ポテトデキストロース寒天培地を基礎とする増殖mtrix(2%PDA、0.25w/vクロラムフェニコール)を含むペトリ皿中で、ボトリティス・シネレア菌を増殖させた。
(ii)ペトリ皿を、感染PDAプラグおよび試験用量で処理した:
[i]陽性対照:
1.活性物質(タイム油)+溶媒、
2.活性物質(タイム油)+界面活性剤、
3.活性物質(タイム油)+キサンテン、
[ii]陰性対照:
1.溶媒、
2.界面活性剤、
3.キサンテン
[iii]処理後、真菌感染を1日当たり3~5回、3~4日間、計測した。
【0058】
図1は、キサンテン存在下および非存在下でタイム油がボトリティス・シネレア菌の腐生性増殖に及ぼす効果を示す。各種のタイム油/キサンテンおよび対照のポテトデキストロース寒天培地(PDA)プレートにPDAプラグで接種し、45時間後に平均のコロニー・サイズを計測した。
【0059】
図2は、界面活性剤の存在下および非存在下でタイム油がボトリティス・シネレア菌の腐生性増殖に及ぼす効果を示す。各種のタイム油/界面活性剤および対照のポテトデキストロース寒天培地(PDA)プレートにPDAプラグで接種し、45時間後に平均のコロニー・サイズを計測した。
【0060】
このことは、界面活性剤およびキサンテンがタイム油の殺真菌能を増強することを実証した。
【0061】
(2)トマト植物体全体に対するボトリティス・シネレア菌防疫に関して、上記配合を評価した:
[i]4週齢のトマト植物体(Brightgate)を得て、植え替えをして馴化させた(22~28℃、16時間光に当てる)。
[ii]活性物質であるタイム油+溶媒、タイム油+界面活性剤、タイム油+キサンテン、陰性対照(溶媒、界面活性剤、キサンテン)で植物体を処理した。植物体は、4枚の葉を、各葉の上の6箇所について1000個の胞子を含む溶液で処理した。感染させた植物体(および非感染対照)を、湿潤な環境下で保持した。
[iii]真菌の蔓延を3日間24時間毎に評価した。
【0062】
図3は、タイム油がトマトの葉への感染発生率に及ぼす効果を示している。ボトリティスの胞子1000個、0.1%タイム油、0.1%溶媒、またはPDBの混合物で、5週齢のトマト苗に接種した。バーは、接種後48時間(左側)または72時間(右側)の、接種症候を示す(黒いバー)または接種症候を示さない(白いバー)全部位の合計を示すものである。接種率はバーの上に赤い文字で示す。
【0063】
図4および5は、タイム油およびキサンテンがトマトの葉へのボトリティス感染の発生率に及ぼす効果を示している。ボトリティスの胞子1000個、および0.01%タイム油+キサンテン、0.01%キサンテン、0.01%タイム油+界面活性剤、0.01%界面活性剤またはPDBの混合物で、5週齢のトマト苗に接種した。バーは、接種後48時間(左側)または72時間(右側)の、接種症候を示す(黒いバー)または接種症候を示さない(白いバー)全部位の合計を示すものである。接種率はバーの上に赤い文字で示す。
【0064】
これらの実験は、0.01%界面活性剤の添加によって有効成分(タイム油)の殺真菌剤能が増強することを実証している。
【0065】
(3)パプリカ植物体全体に対するうどん粉病菌について、上記配合を評価した:
[i]4週齢のパプリカ植物体を取得して、植え替えを行い馴化させた(22~28℃、16時間光に当てる)。
[ii]植物体を、処理の種類により分割した:本配合/活性物質(タイム油0.1%)+界面活性剤、陰性対照植物(活性殺真菌剤の非存在下)および陽性対照(Penconazole、Ophir 2000)。植物体は、4枚の葉を、各葉の上の6箇所について1000個の胞子を含む溶液で処理した。感染させた植物体を、湿潤な環境下で保持した。
[iii]真菌の蔓延を3日間24時間毎に評価した。
(i)処理植物体:葉の55%が感染;
(ii)陰性対照:葉の97.5が感染;
(iii)陽性対照:葉の40%が感染
【0066】
この実験は、合成殺真菌剤の活性に相当する抗殺真菌活性を、本発明の配合が有していることを実証している。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2021-11-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物生産産物であって、該産物が:
(a)キサンテン;
(b)タイム油;
および
(c)少なくとも1種類の界面活性剤、
を含み、
ここで該組成物が植物に対する真菌の予防と処置に効果的である、産物。
【請求項2】
請求項1の産物であって、ここで該組成物が適用表面に薄いフイルムを形成することを特徴とする、産物。
【請求項3】
請求項1の産物であって、ここで該キサンテンが該組成物の0.025%~0.5%を占める、産物。
【請求項4】
請求項1の産物であって、ここで該殺真菌剤が該組成物の0.01~0.5%を占める、産物。
【請求項5】
請求項1の産物であって、ここで該界面活性剤が該組成物の0.1%~15%を占める、産物。
【請求項6】
請求項1の産物であって、ここで該組成物がポリオールをさらに含む、産物。
【請求項7】
請求項9の産物であって、ここで該ポリオールがグリセロールである、産物。
【請求項8】
請求項9の産物であって、ここで該ポリオールが該組成物の0.1~5%を占める、産物。
【請求項9】
請求項1の産物であって、ここで噴霧および洗浄から成る群から選択される方法によって適用するように、該産物が製剤化される、産物。
【請求項10】
請求項12の産物であって、ここで該表面が植物の一部、植物生成物、建物、および温室から成る群から選択される、産物。
【請求項11】
請求項1の産物であって、ここで感染/汚染/接触の前または後に適用するように、該産物が製剤化される、産物。
【請求項12】
請求項1の産物であって、ここで植物の該蔓延が真菌に起因するものである、産物。
【請求項13】
請求項15の産物であって、ここで該真菌がボトリティス・シネレア菌、うどん粉病菌、黒斑病菌、アスペルギルス、菌核病菌から成る群から選択される、産物。
【請求項14】
請求項1の産物であって、ここで該組成物が:
(a)粘性の範囲が100~500cPであること;
(b)揮発性/沸点の範囲が50℃超であること;
(c)pHの範囲が6~9であること;
(d)密度の範囲が0.8~1.2であること、
の少なくとも1つによって特徴付けられる、産物。
【請求項15】
請求項1の産物であって、ここで該有効成分と該界面活性剤との間に相乗効果が存在する、産物。
【請求項16】
植物防疫の方法であって、該方法が:
(a)請求項1の産物を取得する工程;
および
(b)請求項1の該産物を表面に適用して、薄いフイルム層を生成させる工程、
を含み、
ここで該薄いフイルム層が、有害生物による障害から該植物を保護する、方法。
【請求項17】
請求項20の方法であって、ここで該表面が植物の一部であり、該植物の一部が葉、茎、花、および果実である、方法。
【請求項18】
請求項20の方法であって、ここで該有害生物が真菌である、方法。
【請求項19】
請求項22の方法であって、ここで該真菌が、ボトリティス・シネレア菌、うどん粉病菌、黒斑病菌、アスペルギルス、菌核病菌から成る群から選択される、方法。
【請求項20】
請求項20の方法であって、ここで該産物が収穫前、収穫後、感染前、または感染後に適用される、方法。
【請求項21】
植物生産産物送達媒体/送達プラットフォームであって、該組成物が:
(a)キサンテン;
(b)少なくとも1種類の界面活性剤、
を含み、
ここで該組成物が植物感染性真菌の予防と処置に関する産物の送達に効果的である、送達媒体/送達プラットフォーム。
【請求項22】
請求項20の産物であって、ここで該組成物が適用表面に薄いフイルムを形成することを特徴とする、産物。
【請求項23】
請求項21の産物であって、ここで該植物感染性真菌の呼吸を妨害するように、該薄いフイルムが製剤化される、産物。
【請求項24】
請求項20の産物であって、ここで該キサンテンが該組成物の0.025%~0.5%を占める、産物。
【請求項25】
請求項20の産物であって、ここで該界面活性剤が該組成物の0.1%~15%を占める、産物。
【請求項26】
請求項20の産物であって、ここで噴霧および洗浄から成る群から選択される方法によって適用するように、該プラットフォームが製剤化される、産物。
【請求項27】
請求項20の産物であって、ここで該表面が植物の一部、植物生成物、建物、および温室から成る群から選択される、産物。
【請求項28】
請求項20の産物であって、ここで感染/汚染/接触の前または後に適用するように、該産物が製剤化される、産物。
【請求項29】
請求項20の産物であって、ここで該組成物が:
(a)粘性の範囲が100~500cPであること;
(b)揮発性/沸点の範囲が50℃超であること;
(c)pHの範囲が6~9であること;
(d)密度の範囲が0.8~1.2であること、
の少なくとも1つによって特徴付けられる、産物。
【請求項30】
請求項20の産物であって、ここで該組成物がポリオールをさらに含む、産物。
【請求項31】
請求項30の産物であって、ここで該ポリオールがグリセロールである、産物。
【請求項32】
請求項30の産物であって、ここで該ポリオールが該組成物の0.1~5%を占める、産物。
【国際調査報告】