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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-28
(54)【発明の名称】ココア及び/又は麦芽飲料製品
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/39 20060101AFI20221118BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20221118BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
A23L2/00 Q
A23L2/38 J
A23L2/38 C
A23L2/00 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513245
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(85)【翻訳文提出日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 EP2020076683
(87)【国際公開番号】W WO2021058635
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】10201909063T
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】ジェイン, ヴィシスト クマール
(72)【発明者】
【氏名】テオ, フイ キム
(72)【発明者】
【氏名】ワイング, セイン ラエ
(72)【発明者】
【氏名】アナンタ, エドウィン
(72)【発明者】
【氏名】イェ, リジュアン
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー, ジェローン アンドレ
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC04
4B117LE01
4B117LG13
4B117LG16
4B117LG17
4B117LK01
4B117LK10
4B117LK11
4B117LK12
4B117LK13
4B117LK18
4B117LP01
4B117LP06
(57)【要約】
本発明は、イソマルトオリゴ糖を含むココア及び/又は麦芽飲料製品並びにそのような製品の製造方法に関する。製品は、従来の製品と同様の甘味、食感、及び味をもたらすものでありながら、従来のココア及び/又は麦芽飲料製品と比較して糖が低減され得る。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ココア及び/又は麦芽飲料粉末であって、
10~35重量%の無脂乳固形分と、
0~15重量%のココア固形分と、
6~20重量%の植物油及び/又は乳脂肪と、
0~25重量%のスクロースと、
10~65重量%の加水分解大麦固形分と、を含み、
マルトースの総量が1重量%~8重量%であり、イソマルトース、イソマルトトリオース及びパノースの総量が2重量%~10重量%である、ココア及び/又は麦芽飲料粉末。
【請求項2】
グルコース、スクロース、フルクトース、マルトース、及びイソマルトースの合計量が、20重量%~40重量%である、請求項1に記載の粉末化されたココア及び/又は麦芽飲料粉末。
【請求項3】
液状のココア及び/又は麦芽飲料製品であって、
3~10重量%の無脂乳固形分と、
0~5重量%のココア固形分と、
0.3~5重量%の植物油及び/又は乳脂肪と、
0~5重量%のスクロースと、
1~6重量%の加水分解大麦固形分と、を含み、
マルトースの総量が0.05重量%~0.7重量%であり、イソマルトース、イソマルトトリオース及びパノースの総量が0.1重量%~1重量%である、液状のココア及び/又は麦芽飲料製品。
【請求項4】
グルコース、スクロース、フルクトース、マルトース、及びイソマルトースの合計量が、1重量%~3.5重量%である、請求項3に記載の液状のココア及び/又は麦芽飲料製品。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のココア及び/又は麦芽飲料製品の製造方法であって、
a)大麦を水性液体中に懸濁して、スラリーを製造するステップと、
b)ステップa)の前記スラリーをアルファ-アミラーゼで加水分解するステップと、
c)トランスグルコシダーゼを添加して、該トランスグルコシダーゼを反応させるステップと、
d)ステップb)を行った後に前記スラリーから使用済み穀粒を除去して、麦汁を得るステップと、
e)ステップd)で得られた前記麦汁を、無脂乳固形分、ココア固形分、スクロース、植物油及び/又は乳脂肪と組み合わせて、ココア及び/又は麦芽飲料粉末を得るステップと、を含み、
ステップc)が、ステップb)の前、最中及び/又は後、並びに、ステップd)の前、最中及び/又は後に行われる、方法。
【請求項6】
ステップb)の前記酵素調製物が、セルラーゼ、キシラナーゼ、ベータ-グルカナーゼ、プルラナーゼ、プロテイナーゼ及び/又はリパーゼを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップc)が、ステップb)の開始から10~60分後に開始される、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記スラリーの温度を、ステップb)の開始後、ステップc)の開始前に5~30℃上昇させる、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記スラリーの温度を、ステップc)の後に70~90℃に上昇させて、酵素を不活性化する、請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップb)がステップc)の前に開始され、ステップc)の開始前のステップb)の最中の前記スラリーの温度が45~60℃である、請求項5~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップd)で得られた前記麦汁が、ステップe)で得られた最終的な前記ココア及び/又は麦芽飲料粉末の乾燥固形分の20~65重量%を構成する、請求項5~10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソマルトオリゴ糖を含むココア及び/又は麦芽飲料製品並びにそのような製品の製造方法に関する。
【0002】
[背景技術]
多くの食品製品は、従来、多量の糖を含んでおり、この多量の糖は、消費者が製品に期待する甘味及び食感を達成するために重要である。健康上の理由から、多くの食品製品中の糖の量を低減すること、及び例えば繊維のような健康によい成分と置き換えることが望ましいが、消費者による製品の選好を確保するために、味及び食感を犠牲にせずにこれらを達成することが望ましい。1つの解決策は、糖によるエネルギー付与はもたらさずに甘味をもたらす人工甘味料を使用することであるが、人工甘味料は糖のような食感に寄与するものではないことに加えて、多くの消費者は人工甘味料などの人工成分を回避することを望む。例えば、ココア及び/又は麦芽飲料などの多くの食品製品は、従来、スクロースを含むことで所望の味及び食感を達成する。上記の理由から、元の製品の味及び食感を保ったままで糖の量を低減し、好ましくは糖を健康によい原材料で置き換えることが望まれている。
【0003】
イソマルトオリゴ糖は、短鎖炭水化物の一種であり、その一部はヒト腸内での消化に対して抵抗性があり、プレバイオティクス効果及び低グリセミックインデックスを有し得る。
【0004】
[発明の概要]
本発明者らは、大麦由来デンプンの一部がイソマルトオリゴ糖に変換されたココア及び/又は麦芽飲料製品が、従来の全糖製品と同様の味、甘味、及び食感を維持したままで、低減された糖含有量で製造され得ることを見出した。したがって、本発明は、10~35重量%の無脂乳固形分と、0~15重量%のココア固形分と、6~20重量%の植物油及び/又は乳脂肪と、0~25重量%のスクロースと、10~65重量%の加水分解大麦固形分と、を含み、マルトースの総量が1重量%~8重量%であり、イソマルトース、イソマルトトリオース及びパノースの総量が2重量%~10重量%である、ココア及び/又は麦芽飲料製品に関する。
【0005】
別の態様では、本発明は、3~10重量%の無脂乳固形分と、0~5重量%のココア固形分と、0.3~5重量%の植物油及び/又は乳脂肪と、0~5重量%のスクロースと、1~6重量%の加水分解大麦固形分と、を含み、マルトースの総量が0.05重量%~0.7重量%であり、イソマルトース、イソマルトトリオース及びパノースの総量が0.1重量%~1重量%である、液状のココア及び/又は麦芽飲料製品に関する。
【0006】
更なる態様では、本発明は、本発明のココア及び/又は麦芽飲料製品の製造方法に関する。
【0007】
[発明を実施するための形態]
トランスグルコシダーゼとは、アルファ-グルコシダーゼとも呼ばれる、酵素分類EC3.2.1.20の酵素活性を有する1種以上の酵素であり、非還元末端側の(1->4)結合アルファ-D-グルコース残基の加水分解と、それに伴うアルファ-D-グルコースの放出を触媒するものと理解される。本発明によるトランスグルコシダーゼは、トランスグルコシダーゼ活性のみを有してもよく、又は1つ以上の副次活性を更に有してもよい。特に、本発明のトランスグルコシダーゼは、酵素分類EC2.4.1.24の活性を有しており、(1->4)-アルファ-D-グルカン中のアルファ-D-グルコシル残基の、遊離している又は(1->4)-アルファ-D-グルカンに組み込まれているグルコースの一級ヒドロキシ基への転移を触媒するものであり、例えば、D-グルコースからはイソマルトースを生成し、マルトースからはパノースを生成する。本発明の好ましい実施形態では、トランスグルコシダーゼは、酵素分類EC3.2.1.20及び酵素分類EC2.4.1.24の両方の活性を有する。
【0008】
アルファ-アミラーゼとは、酵素分類EC3.2.1.1の酵素活性を有する1種以上の酵素であり、(1->4)-アルファ結合したD-グルコース単位を3つ以上含む多糖類中の、(1->4)-アルファ-D-グルコシド結合のエンド加水分解を触媒するものと理解される。本発明によるアルファ-アミラーゼは、アルファ-アミラーゼ活性のみを有してもよく、又は1つ以上の副次活性を更に有してもよい。
【0009】
プルラナーゼとは、酵素分類EC3.2.1.41の酵素活性を有する1種以上の酵素であり、プルラン、アミロペクチン及びグリコーゲン中の、並びにアミロペクチン及びグリコーゲンのアルファ限界デキストリン及びベータ限界デキストリン中の、(1->6)-アルファ-D-グルコシド結合の加水分解を触媒するものと理解される。本発明によるプルラナーゼは、プルラナーゼ活性のみを有してもよく、又は1つ以上の副次活性を更に有してもよい。
【0010】
EC(酵素委員会)番号は、2019年8月26日施行の国際生化学分子生物学連合の命名法委員会によって定められた酵素活性及び命名法の定義を指す。
【0011】
イソマルトオリゴ糖は、アルファ-D-(1,6)結合を有するグルコースオリゴマーである。本発明の文脈において、イソマルトオリゴ糖という用語は、イソマルトース、イソマルトトリオース、パノース、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるオリゴ糖を説明するために使用される。
【0012】
ココア及び/又は麦芽飲料製品
一実施形態では、本発明は、ココア及び/又は麦芽飲料製品に関する。ココア及び/又は麦芽飲料製品とは、液状の形態のココア及び/若しくは麦芽飲料を意味し、当該飲料はそのまま摂取され得るものであり、又は、ココア及び/若しくは麦芽飲料粉末を意味し、当該飲料粉末は、例えば水若しくは乳などの水性液体に懸濁することによってココア及び/又は麦芽飲料を調製するために使用され得るものである。本発明のココア及び/又は麦芽飲料製品は、無脂乳固形分、ココア固形分、植物油及び/又は乳脂肪、並びに加水分解大麦固形分を含む。
【0013】
無脂乳固形分は、例えば液状乳、例えば、脱脂乳及び/又は全乳、及び/又は粉ミルク、例えば脱脂粉乳及び/又は全粉乳などの任意の好適な乳原料に由来し得る。液状乳が使用される場合、例えば、蒸発又は濾過によって濃縮され得る。
【0014】
加水分解大麦とは、炭水化物分解酵素により、例えばアルファ-アミラーゼにより酵素加水分解された大麦を意味する。加水分解は、精製酵素及び/若しくは酵素調製物の使用によって行われてもよく、又は例えば従来のマッシングプロセスにおけるように、大麦麦芽の内生酵素を使用して実施されてもよく、又は内生酵素及び添加酵素の使用の組み合わせであってもよい。使用される酵素調製物は、例えば、アルファ-アミラーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、ベータ-グルカナーゼ、プルラナーゼ、プロテイナーゼ及び/又はリパーゼを含み得る。好適な市販の酵素調製物の例は、Ondea(登録商標)ProA(NovozymesA/S,Denmark)である。
【0015】
ココア固形分は、任意の好適なココア原料に由来してよく、例えば、ココア粉末、カカオマス及び/又はココアバターの形態であってよい。植物油は、任意の好適な植物油、好ましくはパーム油であり得る。乳脂肪は、例えば、液状乳若しくはクリーム、例えば、脱脂乳、クリーム、及び/若しくは全乳、及び/若しくは粉ミルク、例えば、脱脂粉乳、クリーム粉末、及び/若しくは全粉乳などの任意の好適な乳原料に由来してよく、並びに/又はバター、バター油及び/若しくは無水乳脂肪の形態であってもよい。液状乳又はクリームが使用される場合、例えば、蒸発又は濾過によって濃縮されてもよい。
【0016】
本発明のココア及び/又は麦芽飲料粉末は、スクロースを含んでもよい。製品中に存在するグルコース量及びイソマルトオリゴ糖量により、許容可能な味、甘味、及び食感を保持したままで、従来のココア及び/又は麦芽飲料粉末と比較してスクロース量が低減され得る。好ましい実施形態では、本発明のココア及び/又は麦芽飲料製品は、スクロースを含まない。別の好ましい実施形態では、本発明のココア及び/又は麦芽飲料粉末は、1~25重量%のスクロース、より好ましくは5~20重量%のスクロースを含む。
【0017】
本発明のココア及び/又は麦芽飲料粉末は、例えば、ビタミン、ミネラル、緩衝塩、乳化剤、及び安定剤などの当該技術分野において公知の任意の他の好適な原材料を含み得る。
【0018】
本発明のココア及び/又は麦芽飲料粉末は、当該技術分野において公知の任意の好適な方法によって製造され得る。原材料は、例えば粉末形態であってもよく、乾燥状態で混合されてもよく、一部又は全ての原材料を水溶液/懸濁液に混合し、続いて乾燥させて粉末にしてもよく、又は、一部又は全ての粉末原材料を、例えば共凝集させて、可溶性が改善された粉末を製造してもよい。
【0019】
ココア及び/又は麦芽飲料粉末
一実施形態では、本発明のココア及び/又は麦芽飲料製品は、ココア及び/又は麦芽飲料粉末であり、10~35重量%の無脂乳固形分と、0~15重量%のココア固形分と、6~20重量%の植物油及び/又は乳脂肪と、0~25重量%のスクロースと、10~65重量%の加水分解大麦固形分と、を含み、マルトースの総量が1重量%~8重量%であり、イソマルトース、イソマルトトリオース及びパノースの総量が2重量%~10重量%である。
【0020】
好ましい実施形態では、本発明のココア及び/又は麦芽飲料粉末は、10~50重量%の加水分解大麦固形分、より好ましくは10~40重量%の加水分解大麦固形分、更により好ましくは15~30重量%の加水分解大麦固形分を含む。
【0021】
本発明のココア及び/又は麦芽飲料粉末は、スクロースを含み得る。製品中に存在するグルコース量及びイソマルトオリゴ糖量により、許容可能な味、甘味、及び食感を保持したままで、従来のココア及び/又は麦芽飲料粉末と比較してスクロース量が低減され得る。好ましい実施形態では、本発明のココア及び/又は麦芽飲料製品は、スクロースを含まない。別の好ましい実施形態では、本発明のココア及び/又は麦芽飲料粉末は、1~25重量%のスクロース、より好ましくは5~20重量%のスクロースを含む。
【0022】
好ましい実施形態では、本発明のココア及び/又は麦芽飲料粉末は、3重量%~7重量%のマルトースを含む。別の好ましい実施形態では、本発明のココア及び/又は麦芽飲料粉末は、2重量%~8重量%の、イソマルトース、イソマルトトリオース、及びパノースを含む。
【0023】
更に好ましい実施形態では、本発明は、10~35重量%の無脂乳固形分と、0~15重量%のココア固形分と、6~20重量%の植物油及び/又は乳脂肪と、5~20重量%のスクロースと、10~40重量%の加水分解大麦固形分と、を含み、マルトースの総量が3重量%~7重量%であり、イソマルトース、イソマルトトリオース及びパノースの総量が2重量%~8重量%である、ココア及び/又は麦芽飲料粉末に関する。
【0024】
液状のココア及び/又は麦芽飲料製品
一実施形態では、本発明のココア及び/又は麦芽飲料製品は、液状のココア及び/又は麦芽飲料製品であり、3~10重量%の無脂乳固形分と、0~5重量%のココア固形分と、0.3~5重量%の植物油及び/又は乳脂肪と、0~5重量%のスクロースと、1~6重量%の加水分解大麦固形分と、を含み、マルトースの総量が0.05重量%~0.7重量%であり、イソマルトース、イソマルトトリオース及びパノースの総量が0.1重量%~1重量%である。
【0025】
好ましい実施形態では、本発明の液状のココア及び/又は麦芽飲料製品は、1~5重量%の加水分解大麦固形分、より好ましくは1~4重量%の加水分解大麦固形分、更により好ましくは1.5~3重量%の加水分解大麦固形分を含む。
【0026】
本発明の液状のココア及び/又は麦芽飲料製品は、スクロースを含み得る。製品中に存在するグルコース量及びイソマルトオリゴ糖量により、許容可能な味、甘味、及び食感を保持したままで、従来の液状のココア及び/又は麦芽飲料製品と比較してスクロース量が低減され得る。好ましい実施形態では、本発明の液状のココア及び/又は麦芽飲料製品は、スクロースを含まない。別の好ましい実施形態では、本発明の液状のココア及び/又は麦芽飲料製品は、1~5重量%のスクロース、より好ましくは2~4重量%のスクロースを含む。
【0027】
好ましい実施形態では、本発明の液状のココア及び/又は麦芽飲料製品は、0.1重量%~0.5重量%のマルトースを含む。別の好ましい実施形態では、本発明の液状のココア及び/又は麦芽飲料製品は、0.1重量%~0.8重量%の、イソマルトース、イソマルトトリオース及びパノースを含む。
【0028】
更に好ましい実施形態では、本発明は、3~10重量%の無脂乳固形分と、0~5重量%のココア固形分と、0.3~5重量%の植物油及び/又は乳脂肪と、0~5重量%のスクロースと、1~4重量%の加水分解大麦固形分と、を含み、マルトースの総量が0.1重量%~0.5重量%であり、イソマルトース、イソマルトトリオース及びパノースの総量が0.1重量%~0.8重量%である、液状のココア及び/又は麦芽飲料製品に関する。
【0029】
方法
一実施形態では、本発明は、本発明のココア(coca)及び/又は麦芽飲料製品の製造方法に関する。本方法は、以下のステップを含む:
本発明の方法に使用される大麦は、例えば、大麦若葉及び/又は大麦麦芽の形態であり得る。大麦若葉又は大麦麦芽は、加水分解を容易にするための任意の好適な方法で処理されてもよく、通常、前記大麦は粉砕又は磨砕されることで表面積が増し、アルファ-アミラーゼの基質へのアクセスが容易になる。加水分解される大麦は、例えば、タピオカ、キャッサバ、トウモロコシ、又は米のデンプンなどの1つ以上の添加物と組み合わされてもよく、アルファ-アミラーゼによって加水分解されるスラリーは、例えば、30~70重量%の添加物、例えば30~70重量%のタピオカデンプンを含み得る。
【0030】
大麦のスラリーは、アルファ-アミラーゼで加水分解される。大麦スラリーの加水分解は、例えば、純粋アルファ-アミラーゼの形態で、又はアルファ-アミラーゼを含む酵素調製物の形態で、アルファ-アミラーゼをスラリーに添加することによって行われ得る。大麦スラリーの加水分解はまた、スラリーのための大麦麦芽を使用することによって行われ得る。大麦麦芽は、内生アルファ-アミラーゼに加えて他の炭水化物分解酵素を含有し、これを、スラリー中の大麦麦芽の炭水化物と反応させる。加水分解の目的は、大麦に含まれるデンプンを、例えば、グルコース、フルクトース、マルトース及びマルトトリオースなどの低分子炭水化物及び糖に変換することである。
【0031】
アルファ-アミラーゼが酵素調製物として添加される場合、酵素調製物は、更なる酵素活性、例えば、セルラーゼ、キシラナーゼ、ベータ-グルカナーゼ、プルラナーゼ、プロテイナーゼ及び/又はリパーゼを含み得る。大麦のpHは、アルファ-アミラーゼを含む酵素調製物と接触させる前に調整してもよく、pHは、例えば、pH4.8~5.1の範囲のpHに例えば下げられ得る。pH調整は、例えば、塩基、例えば水酸化ナトリウム、及び/又は塩化カルシウムの添加によって、任意の好適な方法で行われ得る。
【0032】
大麦麦芽は、発芽ステップを経た大麦粒であり、アルファ-アミラーゼをはじめとする内生酵素が形成されている。これらの酵素は、デンプン、タンパク質、及び脂肪などの高分子物質を、主にグルコース、フルクトース、マルトース及びマルトトリオースを含む糖、アミノ酸、並びに脂肪酸などの低分子物質に分解することが可能である。大麦麦芽が使用される場合、加水分解を誘導するための任意の好適な方法で処理され得る。「マッシング」としても知られている大麦麦芽の加水分解は、例えば、麦芽抽出物の抽出及び製造に使用される公知のプロセスである。
【0033】
トランスグルコシダーゼを水性液体中大麦のスラリーに添加して、イソマルトオリゴ糖及びグルコースを生成する。例えばトランスグルコシダーゼL「アマノ」(天野エンザイム株式会社)などの、例えば、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)からのトランスグルコシダーゼなどの、任意の好適なトランスグルコシダーゼを使用してよい。添加は、トランスグルコシダーゼの特徴を考慮して、任意の好適な温度で任意の好適な時間にわたって行われ得る。スラリーへのトランスグルコシダーゼの添加は、アルファ-アミラーゼでスラリーを加水分解する前、加水分解中、及び/又は加水分解後に行われ得る。好ましい実施形態では、スラリーへのトランスグルコシダーゼの添加は、アルファ-アミラーゼでの加水分解の開始後に行われる。好ましい実施形態では、トランスグルコシダーゼの添加は、アルファ-アミラーゼでの加水分解の開始から10~60分後に行われる。
【0034】
スラリーの温度は、アルファ-アミラーゼでの加水分解の開始とトランスグルコシダーゼの添加との間に変更され得る。好ましい実施形態では、スラリーの温度を、アルファ-アミラーゼでの加水分解の開始後、トランスグルコシダーゼの添加前に5~30℃上昇させる。
【0035】
アルファ-アミラーゼでの加水分解及びトランスグルコシダーゼでの反応が所望の程度まで進んだ後、酵素反応を、例えば、酵素を不活性化することによって停止させてもよい。好ましい実施形態では、酵素を不活性化するためにトランスグルコシダーゼを添加した後、スラリーの温度を70℃と90℃との間まで上昇させる。
【0036】
一実施形態では、アルファ-アミラーゼでの加水分解は、トランスグルコシダーゼの添加前に開始され、トランスグルコシダーゼの添加前のアルファ-アミラーゼでの加水分解中、スラリーの温度は45~60℃である。
【0037】
使用済み穀粒をスラリーから除去して、麦汁を製造する。使用済み穀粒は、任意の好適な方法によって、例えば濾過又は遠心分離によって除去され得る。使用済み穀粒は、トランスグルコシダーゼの添加前又は添加後に除去されてよく、すなわち、反応に供した磨砕物が存在している間に、及び/又はそれが除去された後に、トランスグルコシダーゼ反応が行われ得る。麦汁は、例えば、蒸発及び/又は濾過によって濃縮されてもよく、更に、例えば噴霧乾燥又はローラー乾燥によって乾燥され得る。トランスグルコシダーゼは、濃縮の前又は後に添加され得る。乾燥後にトランスグルコシダーゼを添加してもよく、この場合、乾燥させた麦汁は、トランスグルコシダーゼを活性なものとするのに好適な条件で水性液体中に懸濁される。
【0038】
麦汁は、更なる加工の前に他の原材料と組み合わされてもよく、例えば、麦汁は、加水分解デンプン、例えば加水分解タピオカデンプンと組み合わされてもよい。
【0039】
麦汁は、無脂乳固形分、ココア固形分、植物油及び/又は乳脂肪、並びに任意選択的にスクロース及び他の原材料と組み合わされて、ココア及び/又は麦芽飲料製品が得られる。これは、当該技術分野において公知の任意の方法によって行われ得る。原材料は、乾燥形態又は液状の形態で組み合わされてもよく、一部の原材料が乾燥形態であり、かつ一部の原材料が液状形態であってもよい。一実施形態では、麦汁は、最終的なココア及び/又は麦芽飲料製品の乾燥固形分の20~65重量%を構成する。
【0040】
最終製品が液状のココア及び/又は麦芽飲料製品である場合、最終的な混合物の含水量は、任意の好適な方法で、例えば水の添加によって最終的に所望される固形分含有量が得られるように調整され得る。製品は、例えば、パスチャライズ、UHT処理、又は滅菌によって常温保存性を改善するために熱処理され、好適な容器に詰められ得る。
【0041】
最終製品がココア及び/又は麦芽飲料粉末である場合、成分は、例えば粉末形態であってもよく、乾燥状態で混合されてもよく、一部又は全ての原材料を水溶液/懸濁液中に混合し、続いて乾燥させて粉末にしてもよく、あるいは、一部又は全ての原材料粉末を、例えば共凝集させて、可溶性が改善された粉末を製造してもよい。
【0042】
[実施例]
実施例1
粉砕大麦粒(barley grist)の水中スラリーを調製し、45~60℃に加熱し、アルファ-アミラーゼ、プルラナーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、プロテアーゼ、及びリパーゼを含む、酵素調製物(Ondea(登録商標)ProA、Novozymes A/S、Denmark)を添加し、反応させた。トランスグルコシダーゼ(トランスグルコシダーゼL「アマノ」、天野エンザイム株式会社)を添加し、温度を60~80℃に上昇させた。トランスグルコシダーゼを反応させた後、温度を80℃超に上げ、酵素を不活性化し、スラリーをフィルタープレスに通して濾過して、使用済み穀粒を除去し、麦汁を製造した。麦汁を、同じ重量の加水分解タピオカデンプンと混合した。麦汁を使用して、表1に示される組成でココア及び麦芽飲料粉末を製造した。加水分解大麦及びトランスグルコシダーゼ処理大麦からの麦汁の代わりに麦芽抽出物を使用したことを除いて、同じ組成で同じ方法にて、参照ココア及び麦芽飲料粉末を製造した。製品及び参照の糖組成を表2に示す。糖(単糖類及び二糖類)の含有量は、参照製品と比較して14重量%超低減されていることが分かる。製品及び参照を再構成し、官能パネルによって試験したところ、同様の甘味、味、及び食感を有することが見出された。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【国際調査報告】