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特表2022-549603マイクロメトリック強磁性体を含む触媒アセンブリ及び不均一系触媒反応のための前記アセンブリの使用
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  • 特表-マイクロメトリック強磁性体を含む触媒アセンブリ及び不均一系触媒反応のための前記アセンブリの使用 図1A
  • 特表-マイクロメトリック強磁性体を含む触媒アセンブリ及び不均一系触媒反応のための前記アセンブリの使用 図1B
  • 特表-マイクロメトリック強磁性体を含む触媒アセンブリ及び不均一系触媒反応のための前記アセンブリの使用 図2
  • 特表-マイクロメトリック強磁性体を含む触媒アセンブリ及び不均一系触媒反応のための前記アセンブリの使用 図3
  • 特表-マイクロメトリック強磁性体を含む触媒アセンブリ及び不均一系触媒反応のための前記アセンブリの使用 図4
  • 特表-マイクロメトリック強磁性体を含む触媒アセンブリ及び不均一系触媒反応のための前記アセンブリの使用 図5
  • 特表-マイクロメトリック強磁性体を含む触媒アセンブリ及び不均一系触媒反応のための前記アセンブリの使用 図6
  • 特表-マイクロメトリック強磁性体を含む触媒アセンブリ及び不均一系触媒反応のための前記アセンブリの使用 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-28
(54)【発明の名称】マイクロメトリック強磁性体を含む触媒アセンブリ及び不均一系触媒反応のための前記アセンブリの使用
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/83 20060101AFI20221118BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20221118BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20221118BHJP
   B01J 23/755 20060101ALI20221118BHJP
   C10L 3/08 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
B01J23/83 Z
B01J35/02 G ZAB
B01J35/04 331A
B01J23/755 Z
C10L3/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517500
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(85)【翻訳文提出日】2022-05-13
(86)【国際出願番号】 FR2020051626
(87)【国際公開番号】W WO2021053307
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】1910344
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508242067
【氏名又は名称】アンスティテュ・ナショナル・デ・シヤンス・アプリケ・ドゥ・トゥールーズ
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DES SCIENCES APPLIQUEES DE TOULOUSE
(71)【出願人】
【識別番号】514255523
【氏名又は名称】サントレ ナティオナル ド ラ ルシェルシェ シアンティフィク
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルベクス、ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】カレ、スミート
(72)【発明者】
【氏名】フォーレ、ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ソウランティカ、アイカテリーニ
(72)【発明者】
【氏名】ショドレ、ブリュノ
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA11
4G169BA01A
4G169BA02A
4G169BA03B
4G169BA04A
4G169BA05A
4G169BA17
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC22A
4G169BC31A
4G169BC35A
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC62A
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BC70A
4G169BC71A
4G169BC72A
4G169BC74A
4G169BC75A
4G169CB02
4G169CB62
4G169CC22
4G169DA06
4G169EA01X
4G169EA01Y
4G169EA02X
4G169EA02Y
4G169EA03X
4G169EA03Y
4G169EB11
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169EC28
4G169EE03
4G169FA02
4G169FA04
4G169FC08
(57)【要約】
本発明は、所定の温度範囲Tで不均一系触媒反応を実施するための触媒アセンブリであって、温度範囲Tにおいて前記反応を触媒することができる少なくとも1つの触媒化合物と、マイクロメートル粒子及び/又はワイヤーの形状の強磁性体の集合体を含み、前記強磁性体がフィールドインダクターを用いた磁気誘導によって加熱できることを特徴とする、触媒アセンブリに関する。また本発明は、メタン化反応などの不均一系触媒反応を実施するための前記触媒アセンブリの使用に関する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の温度範囲Tで不均一系触媒反応を実施するための触媒アセンブリであって、
金属粒子で形成され、温度範囲Tにおいて前記反応を触媒することができる、少なくとも1つの触媒化合物、並びに、1μm~1000μmの粒径を有するマイクロメートル粒子の形状及び/又は1μm~1mmのワイヤー径を有する鉄もしくは鉄合金をベースとするワイヤーの形状の強磁性体の組み合わせを含み、
前記強磁性体が、フィールドインダクターを用いた磁気誘導によって加熱できることを特徴とする、触媒アセンブリ。
【請求項2】
微粒子状の少なくとも1つの触媒化合物と、強磁性体のマイクロメートル粒子の混合物を含む粉末の形状であることを特徴とする、請求項1に記載の触媒アセンブリ。
【請求項3】
強磁性体のマイクロメートル粒子が、1μm~100μm、好ましくは1μm~50μm、より好ましくは1μm~10μmの粒径を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の触媒アセンブリ。
【請求項4】
前記触媒化合物が、触媒-酸化物化合物を構成する元素(ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、セリウム)の酸化物などの、触媒用の担体を形成する酸化物の表面に配置された金属触媒粒子で形成されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の触媒アセンブリ。
【請求項5】
前記触媒化合物が、ワイヤーの形状である強磁性体の表面に配置された金属触媒粒子を含むことを特徴とする、請求項1に記載の触媒アセンブリ。
【請求項6】
ワイヤーの形状である強磁性体が、鉄又は鉄合金をベースとするワイヤーを含むスチールウールを含み、ワイヤー径が20μm~500μm、好ましくは50μm~200μmであることを特徴とする、請求項5に記載の触媒アセンブリ。
【請求項7】
強磁性体が、鉄、又は好ましくは少なくとも50wt%の鉄、より好ましくは少なくとも80wt%の鉄を含む鉄合金をベースとすることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の触媒アセンブリ。
【請求項8】
強磁性体が、少なくとも90wt%の鉄で構成される絡んだワイヤーを含み、そのワイヤーの直径が50μm~100μmである超極細スチールウールで構成されることを特徴とする、請求項1、5及び6のいずれか一項に記載の触媒アセンブリ。
【請求項9】
触媒化合物の金属触媒粒子が、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金、スズ、又はこれらの金属の1つ以上を含む合金から選択されることを特徴とする、請求項4又は5に記載の触媒アセンブリ。
【請求項10】
触媒化合物の金属触媒粒子が、ニッケル又はルテニウム粒子であることを特徴とする、請求項9に記載の触媒アセンブリ。
【請求項11】
不均一系触媒反応の実施のための請求項1~10のいずれか一項に記載の触媒アセンブリの使用であって、
反応器(1)内で、少なくとも1つの反応物を前記触媒アセンブリと接触させること、及び、前記反応を温度範囲Tで触媒するように、反応器の外部のフィールドインダクターによる磁気誘導によって前記強磁性体を加熱することを含む、使用。
【請求項12】
不均一系触媒反応が、炭化水素合成反応であることを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
不均一系触媒反応が、気体状酸化炭素の水素化反応、例えば二酸化炭素と二水素から出発するメタン化反応である、請求項11又は12に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不均一系触媒作用の分野、特に、気体-固体不均一系触媒反応を実施するための触媒アセンブリ、及び当該触媒反応、特に炭化水素合成反応のためのその使用に関する。
【0002】
気体-固体不均一系触媒反応は、少なくとも1つの気体状反応物と固体触媒化合物を接触させることを含む。これらの触媒作用のプロセスは、反応を実施するために、時として高温での加熱ステップが必要であり、したがって高価でエネルギー消費が大きい。そのため、研究はより経済的な解決策、特にエネルギー集約型ではない反応に着目してきた。
【背景技術】
【0003】
これらの解決策のうち、特許文献1は、反応に必要な温度に到達するために、磁気誘導によって加熱を行う不均一系触媒作用のプロセスを提案している。より詳細には、このプロセスでは、反応物と、その表面が少なくとも部分的に前記反応の触媒である化合物からなる強磁性ナノ粒子成分を含む触媒組成物を接触させる。前記ナノ粒子成分は、所望の温度範囲に到達させるために磁気誘導によって加熱される。この加熱は、反応器の外部のフィールドインダクターを用いて行うことができる。このシステムでは、ナノ粒子は、それ自体の磁気モーメントによって加熱され、触媒の加熱と触媒反応の開始を可能にする。このように、加熱は、最小限のエネルギー投入で迅速に反応器のまさに中心部で開始する。その結果、大幅な節約となる。
【0004】
しかしながら、これらの強磁性ナノ粒子は、高い加熱電力を必要とする:例えば、FeCナノ粒子では100kHzで1100~2100W/gである(Kaleらによる最近の公表文献;非特許文献1)
【0005】
さらに、特許文献1は、ナノメートル粒子のサイズの最適化を重視し、鉄の場合の最適サイズを20nmとして、5nm~50nmの強磁性ナノ粒子成分のサイズを示唆する。
【0006】
したがって、これらの反応のコストは、特に加熱電力が必要なため、そして、ナノメートルの形状の触媒粒子、特に磁性ナノ粒子のコストのために、依然として高いことが判明した。
【0007】
さらに、通常、これらのナノメートルサイズの材料は取り扱いに注意が必要である。
【0008】
ナノ粒子の使用に関連する別の問題は、一方では高温反応中のそれらの焼結傾向に起因し、他方では前記ナノ粒子内の化学秩序の変化(構造と局所的化学組成の変化)によって生じる経時変化に起因するそれらの加熱特性の変化である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際出願 WO2014/162099
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Kale et al.,Iron carbide or iron carbide/cobalt nanoparticles for magnetically-induced CO2 hydrogenation over Ni/SiRAlOx catalysts,Catal.Sci.Technol.,2019,9,2601
【発明の概要】
【0011】
[発明の目的]
したがって、本発明の第1の目的は、その反応性能を維持しながら、これらの不均一系触媒反応のコストをさらに低減することを可能とする触媒成分を提案することにより、前述の欠点を克服することである。
【0012】
本発明の別の目的は、反応器中のナノメートル粒子の割合を低減することを可能とする触媒成分を提案することである。
【0013】
本発明の別の目的は、非常に長期間にわたって加熱特性及び触媒特性の維持を可能とし、同時に断続的操作に適した触媒成分を提案することである。
【0014】
[発明の詳細な説明]
新たな節約の探索において、驚くべきことに、本発明者らは、加熱剤は必ずしもナノメトリックの形状である必要はなく、マイクロメトリック粉末又はマイクロメートル径のワイヤーの形状で反応器内に存在し得ることを発見した。
【0015】
この目的のために、本発明は、所定の温度範囲Tで不均一系触媒反応を実施するための触媒アセンブリを提案する。前記触媒アセンブリは、以下の組み合わせを含むことを特徴とする:
-金属粒子で形成され、温度範囲Tにおいて前記反応を触媒することができる、少なくとも1つの触媒化合物;及び、
-1μm~1000μmの粒径を有するマイクロメートル粒子及び/又は1μm~1mmのワイヤー径を有する鉄もしくは鉄合金をベースとするワイヤーの形状であって、フィールドインダクターを用いた磁気誘導によって加熱することができる、少なくとも1つの強磁性体。
【0016】
本明細書中で後に示す実施例は、加熱剤としての当該マイクロメトリック強磁性体の良好なエネルギー効率を示す。特に、もはやナノメトリックではなく、はるかに大きなサイズの当該加熱剤を用いて得られた結果は、WO2014/162099のプロセスで得られた結果と同等である。
【0017】
本発明の第1の実施形態によれば、触媒アセンブリは、微粒子状の少なくとも1つの触媒化合物と、強磁性体のマイクロメートル粒子の混合物を含む粉末の形状である。
【0018】
強磁性体のマイクロメートル粒子に関しては、それらは有利には、1μm~100μm、好ましくは1μm~50μm、より好ましくは1μm~10μmの粒径、すなわち、WO2014/162099に記載されたナノ粒子のものよりもはるかに大きなサイズを有する。
【0019】
明らかに時々凝集する傾向がある当該マイクロメトリック強磁性粒子では、焼結は観察されず、したがって加熱の効果が維持される。
【0020】
前記触媒化合物は、特に、触媒-酸化物化合物を構成する元素(ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、セリウム)の酸化物など、触媒用の担体を形成する酸化物の表面に配置された触媒の金属粒子(金属、金属酸化物又はその2つの組み合わせ)で形成される。
【0021】
触媒用の酸化物担体は、例えば、触媒-酸化物化合物を構成するAl、SiO、TiO、ZrO、CeOであり、マイクロメートル又はナノメートルサイズの粉末状であり、マイクロメトリック粉末の形状の強磁性体と混合される。したがって、これらの粉末(触媒-酸化物化合物と微粒子状の強磁性体)の混合物により、加熱剤と触媒が密接に接触し、触媒の表面で触媒反応を迅速に開始することが可能になる。
【0022】
本発明の触媒アセンブリの第2の実施形態によれば、触媒化合物は、ワイヤーの形状である強磁性体の表面に配置された触媒の金属粒子(金属、金属酸化物又はその2つの組み合わせの形態)を含む。
【0023】
有利には、ワイヤーの形状の強磁性体は、鉄又は鉄合金をベースとするワイヤーを含むスチールウールを含み、ワイヤー径は10μm~1ミリメートル、好ましくは20μm~500μm、より好ましくは50μm~200μmである。
【0024】
強磁性体は、有利には、鉄、又は少なくとも50wt%の鉄、好ましくは少なくとも80wt%の鉄を含む鉄合金をベースとする。
【0025】
強磁性体は、特に、少なくとも90wt%の鉄で構成される絡んだワイヤーを形成し、そのワイヤーの直径が50μm~100μmであってもよい、超極細スチールウールで構成することができる。
【0026】
触媒化合物の金属触媒粒子は、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金、スズ、又はこれらの金属の1つ以上を含む合金から選択することができる。好ましくは、触媒化合物の金属触媒粒子は、ニッケル粒子又はルテニウム粒子である。
【0027】
本発明はまた、反応器において少なくとも1つの反応物を前記触媒アセンブリと接触させること、及び前記反応を温度範囲Tで触媒するように、反応器の外部のフィールドインダクターによる磁気誘導によって前記強磁性体を加熱することを含む、不均一系触媒反応の実施のための前記触媒アセンブリの使用に関する。
【0028】
非常に驚くべきことに、ホームセンターで購入することができ、安価で簡単に入手できる素材であるスチールウールは、優れた加熱剤であることが実証されている。より具体的には、ワイヤー径が1ミリメートル未満の非常に極細の(超極細)スチールウールは、磁気誘導による前記触媒の加熱を可能にするのに効果的であり、また優れた触媒用の担体であろう。
【0029】
この素材は非常に使いやすく、また耐用年数が非常に長い。さらに、リサイクルが容易で、公害を起こさない。
【0030】
不均一系触媒反応は、有利には炭化水素合成反応であり、より詳細には、不均一系触媒反応は、気体状酸化炭素の水素化反応、例えば二酸化炭素と二水素から出発するメタン化反応である。
【0031】
本発明は、添付図面を参照しながら非限定的な例示的実施形態の以下の説明を読むことで明確に理解されるであろう:
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1A図1Aは、上方へ向かう気体流の下で、本発明による気体-固体不均一系触媒反応のための本発明による触媒アセンブリを使用するための反応器の簡略化された部分図である。外部の磁場インダクターによって囲まれた管状反応器の部分における触媒+加熱剤アセンブリの位置決めを示す。
図1B図1Bは、下方へ向かう気体流の下で、本発明による気体-固体不均一系触媒反応のための本発明による触媒アセンブリを使用するための反応器の簡略化された部分図である。外部の磁場インダクターによって囲まれた管状反応器の部分における触媒+加熱剤アセンブリの位置決めを示す。
図2図2は、100kHzで、アルゴン下で実施した、様々な強磁性体の性能を比較したグラフである(比吸収率(SARと示す);単位重量当たりの吸収エネルギー量に相当し、mTで表される印加した交番磁場強度の関数として、材料1グラム当たりのワットで表される):3~5μmオーダーのサイズの微粒子の鉄粉、極細スチールウール(ワイヤー径1mm超)、及び超極細スチールウール(ワイヤー径1mm未満、100μmのオーダー)
図3図3は、加熱剤として鉄粉を使用し、SiRAlOx(商標)(SESAL社製の酸化アルミニウムケイ素)上のNi触媒を使用するメタン化反応に、本発明による触媒アセンブリを使用した結果を示すグラフである。
図4図4は、鉄粉とNi/CeOの混合物の存在下、下降流中のメタン化反応について、COとCHの転化率(%)、及び選択率を時間と温度の関数として示すヒストグラムである。
図5図5は、スチールウールとNi/CeOの混合物の存在下、下降流中のメタン化反応について、COとCHの転化率(%)、及び選択率を時間と温度の関数として示すヒストグラムである。
図6図6は、スチールウール上のニッケルの存在下、下降流中のメタン化反応について、COとCHの転化率(%)、及び選択率を時間と温度の関数として示すヒストグラムである。
図7図7は、図4、5、6で示した例で試験した触媒床を形成する3種類の触媒アセンブリについて、温度の関数としてエネルギー効率(%で表示)を比較するグラフである。
【実施例
【0033】
実施例1:触媒の調製
酸化セリウム担体上の触媒の調製
酸化セリウム上の10wt%のニッケル(Ni(10wt%)/CeOと略す)を、メシチレン中、CeOの存在下で、Ni(COD)を分解することにより調製する。
【0034】
従来の調製法に従って、1560mgのNi(COD)を、20mLのメシチレンに溶解し、次いで3gのCeOを添加する。得られた混合物を、アルゴン雰囲気下、150℃で1時間、激しく攪拌しながら加熱する。この混合物は、最初は乳白色であり、反応終了時には黒色となる。デカンテーションの後、半透明の上澄みを除去し、得られた粒子を10mLのトルエンで3回洗浄する。その後、真空下でトルエンを除去することにより、Ni(10wt%)/CeO(3.5g)の高密度粉末を得ることができる。これを回収してグローブボックス内に保存する。誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)を用いた分析では、酸化セリウムのニッケルの9wt%(目標10%)のローディング量を確認する。透過型電子顕微鏡(TEM)及びEDS分析による観察は、ニッケルの小さな単分散粒子(2~4nmのサイズ)の存在を示す。
【0035】
SiRAlOx(商標)上のNiの調製プロセス
Fischer-Porterボトル内で、不活性雰囲気下、0.261gのNi(COD)を20mLのメシチレンに溶解し、0.500gのSiRAlOxを添加する。混合物を攪拌しながら150℃で1時間加熱する。周囲温度に戻した後、放置して粉末を沈殿させ、次に上澄みを除去し、粉末を10mLのTHFで3回洗浄する。その後、粉末を真空下で乾燥させ、不活性雰囲気下で保存する。
【0036】
鉄粉+Ni/CeOの混合物
2gの鉄粉を、前もって調製した酸化セリウムに付着したニッケル触媒1gと混合する。走査型電子顕微鏡による観察とEDSマッピングにより、3~5μmオーダーのサイズの鉄粉の粒子を可視化し、ニッケルが酸化セリウムCeO上に実際に存在することを確認できる。
【0037】
実施例2:スチールウール担体上の触媒の調製
超極細スチールウール(Gerlon、Castoramaから購入)。超極細スチールウールのICP-MS分析により、鉄の組成は94.7wt%であることがわかる。EDSマッピングは、ウール表面上の多数の不純物(主にカリウム、マンガン、ケイ素)の存在を示す。SEM観察により、使用した超極細スチールウールのワイヤー径を測定することができる。それは、約100μmで、表面は粗く凹凸がある。
【0038】
超極細スチールウール(94.7wt%の鉄を含む、直径約100μmの絡んだワイヤー)にニッケル金属を付着させる実験手順は、CeOの場合と実質的に同じである。1560mgのNi(COD)を100mLのメシチレンに溶解し、スチールウール(3g)を完全に浸漬させる。アルゴン下で、150℃で急速に攪拌しながら1時間後、混合物をグローブボックスに入れ、溶液(黒色)を排出する。スチールウール自体も黒色に変色している。その後、スチールウールをトルエンですすぎ、真空下で30分間乾燥させた後、グローブボックス内に保管する。走査型電子顕微鏡(SEM)及びエネルギー分散型X線分光法による観察は、スチールウールのワイヤーの表面にニッケルの多分散粒子(100nm~1000nm)が付着していること示す。
【0039】
3つの異なるゾーンでのICP-MS分析は、様々なニッケルのローディング量を示す:1.23%、1.44%、1.33%(重量パーセント)。これらのローディング量の差は非常に小さく、ウールの表面は均質に見える。それにもかかわらず、付着したニッケルの量は目標パーセンテージである10wt%のNiを下回っている。
【0040】
実施例3:メタン化反応:転化率の測定と選択率の算出
メタン化反応
【0041】
【化1】
【0042】
これは、以下を組み合わせたものある:
【0043】
【化2】
【0044】
及び、
【0045】
【化3】
【0046】
これは、石英固定床管状連続反応器1(Avitec)(内径:1cm、触媒床4の高さは加熱体によって異なり、約2cm、焼結ガラス3上にある)内で行われる(図1参照);気体の流れは、上昇流6(図1A)、又は下降流7(図1B)となりうる。使用したコイル2(Five Celes社製)は、内径40mm、高さ40mmのソレノイドであり、ジェネレータに接続された外部の磁場インダクターを構成する。共鳴周波数は300kHzであり、磁場は10~60mTである。コイル2は水冷式である。
【0047】
温度の関数としての転化率及び選択率の測定は、コイル2に関連するジェネレータの温度サーボ制御によって行われる。この目的のために、ジェネレータに接続された温度プローブ5は、触媒床(加熱剤+触媒集合体)に埋められる。ジェネレータは、一定の温度に達するように磁場を送り、その後、この温度を維持するためのパルスのみを送る。反応は、大気圧で、200℃~400℃の温度で行われる。反応器1にはHとCOが供給され(その流量は流量計(ブルックス流量計)により制御される)、Lab Viewソフトウェアにより制御される。その割合は以下の通りである:全体の一定流量25mL/分は、20mL/分のHと、5mL/分のCOを含む。供給は反応器の上部で行われ、生成した水は反応器の下部(コンデンサーなし)で凝結し、丸底フラスコに回収される。生成したメタンと残りの気体(CO及びH)、さらにCOは、ガスクロマトグラフィーカラム(Perkin Elmer社、Clarus580GCカラム)に送られる。COの転化率、CHの選択率、COとCHの収率は、以下の式に従って計算する:
【0048】
【数1】
【0049】
FCは、ガスクロマトグラフによる反応モニタリングによる各反応物の反応係数である。
Aは、クロマトグラフィーで測定されたピークの面積である。
【0050】
エネルギー効率の測定:
エネルギー効率の測定は、メタン化反応の転化率及び選択率の測定と同時に行われる。コイル2の電力消費量データは、研究室で開発したソフトウェアを用いて復元する。そして、エネルギー効率は以下の方法に従って算出する:
【0051】
【数2】
【0052】
PCS(総発熱量)は、1mgの気体の燃焼によって放出されるエネルギー量を表す。
文献に記載された値は、PCSH2=141.9MJ/kg、及びPCSCH4=55.5MJ/kgである。
CH4は、反応によるCH収率である。
miは、生成物iの質量流量比である。
bobineは、インダクターが動作するために(すなわち、磁場を発生させ、システムを冷却するために)消費されるエネルギーに相当する。
図7では、エネルギー効率を%で表す。
【0053】
実施例4:加熱剤としての様々な強磁性体の比較
鉄粉、極細スチールウール、及び超極細スチールウールを比較した。比吸収率(SAR)(単位質量当たりの吸収エネルギー量に相当し、mTで表される印加した交番磁場強度の関数として、材料1グラム当たりのワットで表される)の測定は、アルゴン下で、100kHzで実施した。結果は図2にまとめられている。
【0054】
これらの結果は、FeCナノ粒子について、100kHzにおけるSAR値が1100~2100W/gであると報告するKaleらによる最近の公表文献「Iron carbide or iron carbide/cobalt nanoparticles for magnetically-induced CO hydrogenation over Ni/SiRAlOx catalysts,Catal.Sci.Technol.,2019,9,2601」で得られた結果と著しく異なっている。図2は、鉄粉やスチールウールなどの微粒子状の強磁性体の場合、これらの値が10~20倍低いことを示す。
【0055】
そうすると、微粒子状の鉄粉とスチールウールには、ナノ粒子に対するよりも高い磁場を与えなければならないことが予想されるであろう。しかし、図3の結果は、そうではないことを示す。炭化鉄のナノ粒子では、90%に近い収率を達成するためには約48mTの磁場を与える必要がある。鉄粉では、反応開始後、必要なのはわずか8mTの磁場である。鉄粉とスチールウールの顕著な特徴は、渦電流が作用して、材料を加熱するための磁場が小さくなることにある。
【0056】
したがって、マイクロメトリック鉄粉とマイクロメトリックスチールウールは、二酸化炭素と二水素から始まるメタン化反応などの気体-固体触媒反応を行う反応器を、磁気誘導によってその場で加熱するための有利な強磁性体を構成する。これは、以下の実施例で示される、
【0057】
実施例5:触媒アセンブリ:鉄粉と触媒の混合物
触媒床は、酸化セリウム上のニッケル粒子からなる:
Ni:0.09g/CeO:0.91gに、2gの鉄粉を混合した。気体流は下向きであり、一定流量(20mL/分のH、及び5mL/分のCO)である。
【0058】
COとCHの転化率の結果を図4に示す。この粉末の集合体(鉄粉+Ni/CeO)によって非常に満足な収率(Y(CH))を得ることが可能となり、300~350℃の温度で100%に達する。
【0059】
実施例6:触媒アセンブリ:スチールウールとNi/CeO触媒の混合物
触媒床は、酸化セリウムに付着させたニッケル粒子からなる。Ni:0.09g/CeO:0.91gと0.35gの超極細スチールウール。気体流は下向きであり、一定流量(20mL/分のH、及び5mL/分のCO)である。
【0060】
COとCHの転化率の結果を図5に示す。このスチールウール+Ni/CeO集合体によって非常に満足な収率(Y(CH))を得ることが可能となり、300~350℃の温度で100%に達する。
【0061】
実施例7:触媒アセンブリ:スチールウールに付着させたNi
触媒床は、2.27gの超極細スチールウールに付着させた0.03gのニッケル粒子からなる。気体流は下向きであり、一定流量(20mL/分のH、及び5mL/分のCO)である。
【0062】
COとCHの転化率の結果を図6に示す。最大収率(Y(CH))は、400℃で90%である。このシステムの実装がより簡単であることが分かっているので、この結果は、非常に心強い。
【0063】
実施例8:エネルギー効率
図7にまとめられた前の3つの実施例(実施例5、6、及び7)のエネルギー効率の計算は、同じ温度に到達するために提供する必要があるエネルギーは、鉄粉を含む触媒アセンブリよりもスチールウールを含む触媒アセンブリの方が少ないことを示す。粉末とウールのこの違いは、特にスチールウール+Ni/CeO系で観察される。スチールウール+Ni触媒アセンブリのエネルギー効率は、加熱するウールの量が多いため、同じ量のメタンの生成に供給するエネルギーが多くなり、あまり良くない。提示された実施例では、ニッケルがほとんど付着していないため、有利な収率(90%)を達成するためには、より多くのスチールウールを導入する必要があった。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】