(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-28
(54)【発明の名称】充電深度設定装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/385 20190101AFI20221118BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20221118BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20221118BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20221118BHJP
G01R 31/382 20190101ALI20221118BHJP
G01R 31/378 20190101ALI20221118BHJP
【FI】
G01R31/385
H02J7/00 A
H01M10/48 P
H01M10/44 P
G01R31/382
G01R31/378
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517830
(86)(22)【出願日】2021-05-11
(85)【翻訳文提出日】2022-03-18
(86)【国際出願番号】 KR2021005914
(87)【国際公開番号】W WO2021230639
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】10-2020-0058601
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク、サン-ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】クウォン、ジュン-ヨウン
(72)【発明者】
【氏名】ヨー、セオル
(72)【発明者】
【氏名】パク、ミン-スー
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジン-ウク
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA01
2G216BA04
2G216CB04
2G216CB34
5G503BB02
5G503FA19
5H030AA01
5H030AS20
5H030BB01
5H030BB21
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
本発明の一実施形態による充電深度設定装置は、バッテリーを設定された目標電圧まで充電し、充電が完了したバッテリーを放電させるように構成された充放電部と、バッテリーが充電または放電する過程でバッテリーの容量と電圧に対する電圧プロファイルを取得し、取得した電圧プロファイルからバッテリーの容量と微分電圧に対する微分プロファイルを取得するように構成されたプロファイル取得部と、充放電部と電気的に接続され、予め設定された複数の電圧のうちいずれか一つを順次に選択して目標電圧として設定し、プロファイル取得部が複数の電圧に対応する複数の微分プロファイルをすべて取得した場合、複数の微分プロファイルのそれぞれからターゲットピークに対する特徴値を取得し、取得された複数の特徴値に基づいてバッテリーに対する充電深度を設定するように構成されたプロセッサと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーを設定された目標電圧まで充電し、充電が完了した前記バッテリーを放電させるように構成された充放電部と、
前記バッテリーが充電または放電する過程で前記バッテリーの容量と電圧に対する電圧プロファイルを取得し、取得した前記電圧プロファイルから前記バッテリーの容量と前記バッテリーの電圧を前記バッテリーの容量で微分した微分電圧に対する微分プロファイルを取得するように構成されたプロファイル取得部と、
前記充放電部と電気的に接続され、予め設定された複数の電圧のうちいずれか一つを順次に選択して前記目標電圧として設定し、前記プロファイル取得部が前記複数の電圧に対応する複数の微分プロファイルをすべて取得した場合、前記複数の微分プロファイルのそれぞれからターゲットピークに対する特徴値を取得し、取得された複数の前記特徴値に基づいて前記バッテリーに対する充電深度を設定するように構成されたプロセッサと、を含む、充電深度設定装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記取得された複数の特徴値の大きさを比較し、比較結果に応じて、前記取得された複数の特徴値にそれぞれ対応する複数の目標電圧のうちいずれか一つを基準電圧として選択し、選択された基準電圧を前記充電深度として設定するように構成された、請求項1に記載の充電深度設定装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
対応する前記目標電圧が隣接した複数の前記特徴値同士の大きさの差を算出し、算出された大きさの差が最大である複数の基準特徴値を選択し、選択された前記複数の基準特徴値同士の大きさの差に応じて、前記複数の目標電圧のうちいずれか一つを前記基準電圧として選択するように構成された、請求項2に記載の充電深度設定装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記対応する目標電圧を基準にして前記隣接した二つの特徴値同士の大きさを比較して前記大きさの差を算出するように構成された、請求項3に記載の充電深度設定装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記選択された複数の基準特徴値に対応する複数の目標電圧のうち最も低電位側の目標電圧を前記基準電圧として選択するように構成された、請求項3または4に記載の充電深度設定装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、
前記選択された複数の基準特徴値同士の大きさの差が所定の大きさ値以上である場合、前記低電位側の目標電圧を前記基準電圧として選択するように構成された、請求項5に記載の充電深度設定装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、
前記選択された複数の基準特徴値同士の大きさの差が所定の大きさ値未満である場合、前記複数の目標電圧のうち最も高電位側の目標電圧を前記基準電圧として選択するように構成された、請求項3に記載の充電深度設定装置。
【請求項8】
前記プロファイル取得部は、
前記微分電圧と前記バッテリーの容量とに対する微分プロファイルを取得するように構成された、請求項1に記載の充電深度設定装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、
前記複数の微分プロファイルのそれぞれから一つ以上のピーク対を決定し、決定されたピーク対のうち、含まれる複数のピークの微分電圧同士の差が最も大きいピーク対を選択し、選択されたピーク対に含まれた複数のピークのうち低容量側のピークを前記ターゲットピークとして選択するように構成された、請求項8に記載の充電深度設定装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、
前記複数のピークのうち、前記バッテリーの容量が増加するほど前記微分電圧が増加する区間で上端及び下端に位置する二つのピークを一つのピーク対として決定するように構成された、請求項9に記載の充電深度設定装置。
【請求項11】
前記ターゲットピークは、
負極活物質として黒鉛を含むバッテリーにおいて、充電深度に応じたLiC
12の挙動に関連するピークである、請求項9に記載の充電深度設定装置。
【請求項12】
前記プロセッサは、
前記複数の微分プロファイルをそれぞれ正規化して複数の正規分布プロファイルを取得し、前記取得された複数の正規分布プロファイルのそれぞれから対応するターゲットピークに対する半値全幅を前記特徴値として取得するように構成された、請求項9に記載の充電深度設定装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の充電深度設定装置を含む、バッテリー製造装置。
【請求項14】
予め設定された複数の電圧のうちいずれか一つを順次に選択して目標電圧として設定する目標電圧設定段階と、
バッテリーを前記目標電圧まで充電し、充電が完了したバッテリーを放電させる充放電段階と、
前記バッテリーが充電または放電する過程で前記バッテリーの容量と電圧に対する電圧プロファイルを取得する電圧プロファイル取得段階と、
取得した電圧プロファイルから前記バッテリーの容量と前記バッテリーの電圧を前記バッテリーの容量で微分した微分電圧に対する微分プロファイルを取得する微分プロファイル取得段階と、
前記複数の電圧に対応する複数の微分プロファイルをすべて取得する微分プロファイル反復取得段階と、
前記複数の微分プロファイルのそれぞれからターゲットピークに対する特徴値を取得する特徴値取得段階と、
取得された複数の前記特徴値に基づいて前記バッテリーに対する充電深度を設定する充電深度設定段階と、を含む、充電深度設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電深度設定装置及び方法に関し、より詳しくは、バッテリーの充電深度を設定することができる充電深度設定装置及び方法に関する。
【0002】
本出願は、2020年5月15日付け出願の韓国特許出願第10-2020-0058601号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
近年、ノートパソコン、ビデオカメラ、携帯電話などのような携帯用電子製品の需要が急激に伸び、電気自動車、エネルギー貯蔵用蓄電池、ロボット、衛星などの開発が本格化するにつれて、繰り返して充放電可能な高性能バッテリーに対する研究が活発に行われている。
【0004】
現在、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池、リチウムバッテリーなどのバッテリーが商用化しているが、中でもリチウムバッテリーはニッケル系のバッテリーに比べてメモリ効果が殆ど起きず充放電が自在であって、自己放電率が非常に低くてエネルギー密度が高いという長所から脚光を浴びている。
【0005】
しかし、このようなバッテリーは、生産工程で逆電圧不良によって収率が低下する問題がある。バッテリーに逆電圧が発生する原因のうち一つは、バッテリーの負極内のLiC6とLiC12との不均一であると指摘されている(非特許文献1)。したがって、バッテリーの逆電圧を防止するため、バッテリーの負極内のLiC6とLiC12との不均一を解消する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J Wilhelm et al., In Situ Neutron Diffraction Study of Lithiation Gradients in Graphite Anodes during Discharge and Relaxation, Journal of The Electrochemical Society, 165 (9) A1846-A1856 2018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、LiC12の挙動が最も顕著なターゲットピークに基づいてバッテリーの充電深度を設定する充電深度設定装置及び方法を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の他の目的及び長所は、下記の説明によって理解でき、本発明の実施形態によってより明らかに分かるであろう。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示される手段及びその組合せによって実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による充電深度設定装置は、バッテリーを設定された目標電圧まで充電し、充電が完了したバッテリーを放電させるように構成された充放電部と、バッテリーが充電または放電する過程でバッテリーの容量と電圧に対する電圧プロファイルを取得し、取得した電圧プロファイルからバッテリーの容量と前記バッテリーの電圧を前記バッテリーの容量で微分した微分電圧に対する微分プロファイルを取得するように構成されたプロファイル取得部と、充放電部と電気的に接続され、予め設定された複数の電圧のうちいずれか一つを順次に選択して目標電圧として設定し、プロファイル取得部が複数の電圧に対応する複数の微分プロファイルをすべて取得した場合、複数の微分プロファイルのそれぞれからターゲットピークに対する特徴値を取得し、取得された複数の特徴値に基づいてバッテリーに対する充電深度を設定するように構成されたプロセッサと、を含む。
【0010】
プロセッサは、取得された複数の特徴値の大きさを比較し、比較結果に応じて、取得された複数の特徴値にそれぞれ対応する複数の目標電圧のうちいずれか一つを基準電圧として選択し、選択された基準電圧を充電深度として設定するように構成され得る。
【0011】
プロセッサは、対応する目標電圧が隣接した複数の特徴値同士の大きさの差を算出し、算出された大きさの差が最大である複数の基準特徴値を選択し、選択された複数の基準特徴値同士の大きさの差に応じて、複数の目標電圧のうちいずれか一つを基準電圧として選択するように構成され得る。
【0012】
プロセッサは、対応する目標電圧を基準にして隣接した二つの特徴値同士の大きさを比較して大きさの差を算出するように構成され得る。
【0013】
プロセッサは、選択された複数の基準特徴値に対応する複数の目標電圧のうち最も低電位側の目標電圧を基準電圧として選択するように構成され得る。
【0014】
プロセッサは、選択された複数の基準特徴値同士の大きさの差が所定の大きさ値以上である場合、低電位側の目標電圧を基準電圧として選択するように構成され得る。
【0015】
プロセッサは、選択された複数の基準特徴値同士の大きさの差が所定の大きさ値未満である場合、複数の目標電圧のうち最も高電位側目標電圧を基準電圧として選択するように構成され得る。
【0016】
プロファイル取得部は、前記微分電圧とバッテリーの容量とに対する微分プロファイルを取得するように構成され得る。
【0017】
プロセッサは、複数の微分プロファイルのそれぞれから一つ以上のピーク対を決定し、決定されたピーク対のうち、含まれる複数のピークの微分電圧同士の差が最も大きいピーク対を選択し、選択されたピーク対に含まれた複数のピークのうち低容量側のピークをターゲットピークとして選択するように構成され得る。
【0018】
プロセッサは、複数のピークのうち、バッテリーの容量が増加するほど微分電圧が増加する区間で上端及び下端に位置する二つのピークを、一つのピーク対として決定するように構成され得る。
【0019】
ターゲットピークは、負極活物質として黒鉛を含むバッテリーにおいて、充電深度に応じたLiC12の挙動に関連するピークであり得る。
【0020】
プロセッサは、複数の微分プロファイルをそれぞれ正規化して複数の正規分布プロファイルを取得し、取得された複数の正規分布プロファイルのそれぞれから対応するターゲットピークに対する半値全幅を特徴値として取得するように構成され得る。
【0021】
本発明の他の態様によるバッテリー製造装置は、本発明の一態様による充電深度設定装置を含む。
【0022】
本発明のさらに他の態様による充電深度設定方法は、予め設定された複数の電圧のうちいずれか一つを順次に選択して目標電圧として設定する目標電圧設定段階と、バッテリーを目標電圧まで充電し、充電が完了したバッテリーを放電させる充放電段階と、バッテリーが充電または放電する過程でバッテリーの容量と電圧に対する電圧プロファイルを取得する電圧プロファイル取得段階と、取得した電圧プロファイルからバッテリーの容量と前記バッテリーの電圧を前記バッテリーの容量で微分した微分電圧に対する微分プロファイルを取得する微分プロファイル取得段階と、複数の電圧に対応する複数の微分プロファイルをすべて取得する微分プロファイル反復取得段階と、複数の微分プロファイルのそれぞれからターゲットピークに対する特徴値を取得する特徴値取得段階と、取得された複数の特徴値に基づいてバッテリーに対する充電深度を設定する充電深度設定段階と、を含む。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様によれば、バッテリーに逆電圧が発生することを効果的に防止することができる。
【0024】
また、本発明の一態様によれば、バッテリーの逆電圧発生を抑制するとともに、バッテリーの性能を最大に発揮可能な充電深度を設定することができる。
【0025】
本発明の効果は上記の効果に制限されず、他の効果は特許請求の範囲の記載から当業者に明確に理解できるであろう。
【0026】
本明細書に添付される次の図面は、発明の詳細な説明と共に本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするものであるため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態による充電深度設定装置を概略的に示した図である。
【
図2】本発明の一実施形態による充電深度設定装置を含むバッテリー製造装置の例示的構成を概略的に示した図である。
【
図3】本発明の一実施形態による充電深度設定装置で取得した微分プロファイルの一例を概略的に示した図である。
【
図4】本発明の一実施形態による充電深度設定装置で取得した複数の微分プロファイルの一例を概略的に示した図である。
【
図5】本発明の一実施形態による充電深度設定装置で取得した複数のターゲットピークの特徴点の一例を概略的に示した図である。
【
図6】本発明の他の実施形態による充電深度設定方法を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0029】
したがって、本明細書に記載された実施形態及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0030】
また、本発明の説明において、関連公知構成または機能についての具体的な説明が本発明の要旨を不明瞭にし得ると判断される場合、その詳細な説明は省略する。
【0031】
第1、第2などのように序数を含む用語は、多様な構成要素のうちある一つをその他の要素と区別するために使われたものであり、これら用語によって構成要素が限定されることはない。
【0032】
明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは特に言及されない限り、他の構成要素を除外するものではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0033】
また、明細書に記載されたプロセッサのような用語は、少なくとも一つの機能や動作を処理する単位を意味し、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアとソフトウェアとの組合せで具現され得る。
【0034】
さらに、明細書の全体において、ある部分が他の部分と「連結(接続)」されるとするとき、これは「直接的な連結(接続)」だけでなく、他の素子を介在した「間接的な連結(接続)」も含む。
【0035】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施形態を詳しく説明する。
【0036】
図1は、本発明の一実施形態による充電深度設定装置100を概略的に示した図である。
図2は、本発明の一実施形態による充電深度設定装置100を含むバッテリー製造装置1の例示的構成を概略的に示した図である。
【0037】
具体的には、バッテリー製造装置1は、バッテリーBの製造過程で適用され得る。望ましくは、バッテリー製造装置1は、バッテリーBを製造する過程のうち、活性化工程過程で適用され得る。
【0038】
図1を参照すると、充電深度設定装置100は、充放電部110、プロファイル取得部120、及びプロセッサ130を含み得る。
【0039】
ここで、バッテリーBは、負極端子及び正極端子を備え、物理的に分離可能な一つの独立したセルを意味する。一例として、一つのパウチ型リチウムポリマーセルをバッテリーBとして見なし得る。
【0040】
充放電部110は、バッテリーBを設定された目標電圧まで充電するように構成され得る。
【0041】
ここで、バッテリーBの充電が完了する目標電圧は、プロセッサ130によって設定され得る。そして、充放電部110は、プロセッサ130から目標電圧に関する情報を取得し、バッテリーBを目標電圧まで充電し得る。
【0042】
例えば、
図2の実施形態において、充放電部110は、バッテリーBと電気的に接続され得る。そして、充放電部110は、バッテリーBの電圧が目標電圧に到達するまでバッテリーBを充電し得る。
【0043】
また、充放電部110は、充電が完了したバッテリーBを放電させるように構成され得る。
【0044】
ここで、充電が完了したとは、バッテリーBの電圧が目標電圧に到達したことを意味する。すなわち、充放電部110は、バッテリーBを目標電圧まで充電した後、再びバッテリーBを放電させ得る。例えば、生産したバッテリーBを出荷する前に、充放電部110による充電及び放電を経てバッテリーBに対する活性化工程が行われ得る。
【0045】
望ましくは、充放電部110は、低率でバッテリーBを放電させ得る。例えば、充放電部110は、0.33C以下のC-レートでバッテリーBを放電させ得る。より望ましくは、充放電部110は、0.05CのC-レートでバッテリーBを放電させ得る。具体的には、充放電部110によってバッテリーBが放電する過程で、プロファイル取得部120は微分プロファイル20を取得し得、このような微分プロファイル20にはバッテリーBの電圧挙動を示す複数のピークが含まれ得る。このようなピークは、低率で放電する場合に、潰されるか又は省略されることなくより正確に現れるため、充放電部110は低率でバッテリーBを放電させ得る。
【0046】
プロファイル取得部120は、バッテリーBが充電または放電する過程で、バッテリーBの容量と電圧に対する電圧プロファイルを取得するように構成され得る。
【0047】
具体的には、プロファイル取得部120は、バッテリーBの両端電圧とバッテリーBの電流を測定し得る。例えば、
図2の実施形態において、プロファイル取得部120は、第1センシングラインSL1と第2センシングラインSL2を通じてバッテリーBの電圧を測定し得る。そして、プロファイル取得部120は、バッテリーBの大電流経路に備えられた電流測定ユニットAと第3センシングラインSL3を通じて接続され得る。したがって、プロファイル取得部120は、第3センシングラインSL3を通じてバッテリーBの電流を測定し得る。
【0048】
例えば、電圧プロファイルは、バッテリーBの容量に対するバッテリーBの電圧を示すプロファイルであり得る。より具体的には、電圧プロファイルは、X軸がバッテリーBの容量であり、Y軸がバッテリーBの電圧である2次元グラフで示され得る。
【0049】
プロファイル取得部120は、バッテリーBの充電及び/または放電中に電圧プロファイルを取得し得るが、以下では説明の便宜上、バッテリーBの放電過程で電圧プロファイルを取得すると仮定して説明する。
【0050】
プロファイル取得部120は、取得した電圧プロファイルからバッテリーBの容量と微分電圧に対する微分プロファイル20を取得するように構成され得る。具体的には、プロファイル取得部120は、バッテリーBの電圧を容量で微分した微分電圧とバッテリーBの容量とに対する微分プロファイル20を取得するように構成され得る。
【0051】
例えば、微分プロファイル20は、バッテリーBの容量に対するバッテリーBの微分電圧を示すプロファイルであり得る。ここで、微分電圧とは、バッテリーBの電圧をバッテリーBの容量で微分した値(dV/dQ)であり得る。より具体的には、微分プロファイル20は、X軸がバッテリーBの容量であり、Y軸がバッテリーBの微分電圧である2次元グラフで示され得る。
【0052】
図3は、本発明の一実施形態による充電深度設定装置100で取得した微分プロファイル20の一例を概略的に示した図である。
【0053】
具体的には、
図3は、4.3Vまで充電したバッテリーBを2.0Vまで放電する過程で、プロファイル取得部120によって取得された微分プロファイル20である。該当微分プロファイル20に対応するバッテリーBの目標電圧は4.3Vである。
【0054】
図3の実施形態において、微分プロファイル20には複数のピークが含まれ、このような複数のピークが明確に現れるようにするため、バッテリーBは0.05CのC-レートで放電した。ここで、ピークとは、電圧プロファイルにおいて変曲点に対応する地点であって、微分プロファイル20で瞬間の傾きが0である地点を意味し得る。例えば、
図3の実施形態の微分プロファイル20には、第1ピークP1、第2ピークP2、第3ピークP3、第4ピークP4、第5ピークP5、第6ピークP6、及び第7ピークP7が含まれ得る。
【0055】
プロセッサ130は、充放電部110と電気的に接続され、予め設定された複数の電圧のうちいずれか一つを順次に選択して目標電圧として設定するように構成され得る。
【0056】
具体的には、予め設定された複数の電圧は、バッテリーBの最大可用電圧に応じて設定され得る。例えば、バッテリーBに対して予め設定された複数の電圧は、4.0Vの第1目標電圧、4.1Vの第2目標電圧、4.2Vの第3目標電圧、及び4.3Vの第4目標電圧であり得る。以下では、複数の電圧が0.1Vの電圧間隔で4個設定されたことにして説明するが、より正確にバッテリーBの充電深度を設定するためには、複数の電圧間の電圧間隔をより狭くし、設定された電圧の個数も増加し得ることを理解せねばならない。
【0057】
例えば、
図3の実施形態において、プロセッサ130は、目標電圧を4.3Vに設定し、設定した目標電圧(4.3V)を充放電部110に送信し得る。その後、充放電部110は、バッテリーBの電圧が4.3Vに到達するまでバッテリーBを充電した後、バッテリーBの電圧が2.0Vに到達するまでバッテリーBを放電させ得る。バッテリーBが放電する過程で、プロファイル取得部120は、バッテリーBの電圧及び電流を測定し、測定された電圧及び電流に基づいて微分プロファイル20を取得し得る。
【0058】
また、プロセッサ130は、プロファイル取得部120が複数の電圧に対応する複数の微分プロファイルをすべて取得した場合、複数の微分プロファイルのそれぞれからターゲットピークに対する特徴値を取得するように構成され得る。
【0059】
図2の実施形態において、プロセッサ130は、プロファイル取得部120と電気的に接続され得る。すなわち、プロセッサ130は、プロファイル取得部120がいずれか一つの目標電圧に対応する微分プロファイル20を取得したか否かを判断し得る。そして、プロセッサ130は、プロファイル取得部120がいずれか一つの目標電圧に対応する微分プロファイル20を取得した場合、予め設定された複数の電圧のうち該当目標電圧と重複しない電圧を目標電圧として設定し得る。
【0060】
図4は、本発明の一実施形態による充電深度設定装置100で取得した複数の微分プロファイル(21~24)の一例を概略的に示した図である。
【0061】
図4の実施形態において、複数の電圧は4.0Vの第1目標電圧、4.1Vの第2目標電圧、4.2Vの第3目標電圧、及び4.3Vの第4目標電圧に予め設定されたと仮定する。
【0062】
まず、プロセッサ130は、複数の電圧のうち4.0Vを第1目標電圧として設定し、充放電部110に設定した第1目標電圧を送信し得る。そして、プロファイル取得部120は、第1目標電圧まで充電されたバッテリーBが放電する過程で第1微分プロファイル21を取得し得る。
【0063】
次いで、プロセッサ130は、複数の電圧のうち4.1Vを第2目標電圧として設定し、充放電部110に設定した第2目標電圧を送信し得る。そして、プロファイル取得部120は、第2目標電圧まで充電されたバッテリーBが放電する過程で第2微分プロファイル22を取得し得る。
【0064】
次いで、プロセッサ130は、複数の電圧のうち4.2Vを第3目標電圧として設定し、充放電部110に設定した第3目標電圧を送信し得る。そして、プロファイル取得部120は、第3目標電圧まで充電されたバッテリーBが放電する過程で第3微分プロファイル23を取得し得る。
【0065】
最後に、プロセッサ130は、複数の電圧のうち4.3Vを第4目標電圧として設定し、充放電部110に設定した第4目標電圧を送信し得る。そして、プロファイル取得部120は、第4目標電圧まで充電されたバッテリーBが放電する過程で第4微分プロファイル24を取得し得る。
【0066】
その後、プロセッサ130は、第1微分プロファイル21~第4微分プロファイル24のそれぞれからターゲットピーク(Tp1~Tp4)を選択し、選択したターゲットピークの特徴値を算出し得る。
【0067】
ここで、ターゲットピークとは、微分プロファイルに含まれた複数のピークから選択されたいずれか一つのピークであり得る。具体的には、ターゲットピークは、負極活物質として黒鉛を含むバッテリーBにおいて、充電深度に応じたLiC12の挙動に関連するピークであり得る。
【0068】
例えば、
図3の実施形態において、複数のピーク(P1~P7)のうち第4ピークP4がターゲットピークに選択され得る。プロセッサ130がターゲットピークを選択する具体的な内容は後述する。
【0069】
また、
図4の実施形態において、プロセッサ130は、第1微分プロファイル21から第1ターゲットピークTp1を選択し、第2微分プロファイル22から第2ターゲットピークTp2を選択し得る。そして、プロセッサ130は、第3微分プロファイル23から第3ターゲットピークTp3を選択し、第4微分プロファイル24から第4ターゲットピークTp4を選択し得る。
【0070】
また、ターゲットピークの特徴値とは、複数の微分プロファイル(21~24)のそれぞれから選択されたターゲットピーク(Tp1~Tp4)同士の差を求めるために選択された値であり得る。例えば、ターゲットピークの特徴値は、ターゲットピークの容量値、微分電圧値、または半値全幅(Full width at half maximum、FWHM)などを含み得る。望ましくは、ターゲットピークの特徴値は半値全幅であり得る。ここで、半値全幅は、半値幅などとも称され得る。
【0071】
図5は、本発明の一実施形態による充電深度設定装置100で取得した複数のターゲットピーク(Tp1~Tp4)の特徴点の一例を概略的に示した図である。
【0072】
図5を参照すると、プロセッサ130は、第1ターゲットピークTp1、第2ターゲットピークTp2、第3ターゲットピークTp3、及び第4ターゲットピークTp4のそれぞれの特徴値を算出し得る。具体的には、
図5の実施形態で算出される特徴値は、ターゲットピークに対する半値全幅であり得る。
【0073】
そして、プロセッサ130は、取得された複数の特徴値に基づいてバッテリーBに対する充電深度を設定するように構成され得る。
【0074】
ここで、充電深度とは、バッテリーBの活性化工程で設定される値であって、バッテリーBに逆電圧が発生することを防止するために設定される、バッテリーBに対する最大充電許容電圧を意味し得る。
【0075】
例えば、同一生産ラインで製造されたバッテリーBであっても、多様な原因によって一部のバッテリーBでは逆電圧が発生し得る。逆電圧が発生するバッテリーBは、経時的に電圧が増加する問題があるため、逆電圧が発生しないバッテリーBと異なって、工程段階(特に、活性化工程段階)から充電深度を低く設定することが重要である。また、バッテリーBにおける逆電圧発生如何は、実験的に確認しなければならないため、プロセッサ130は、一つのバッテリーBに対する複数のターゲットピークの特徴値に基づいて、逆電圧が発生する可能性のあるバッテリーBであるかを判断し、判断結果に応じてバッテリーBの充電深度を適切に設定し得る。
【0076】
例えば、
図5の実施形態において、プロセッサ130は、第1ターゲットピークTp1の特徴値、第2ターゲットピークTp2の特徴値、第3ターゲットピークTp3の特徴値、及び第4ターゲットピークTp4の特徴値を比較し、比較結果に基づいて第3微分プロファイル23に対応する目標電圧である4.2VをバッテリーBに対する充電深度として設定し得る。
【0077】
したがって、本発明の一実施形態による充電深度設定装置100は、活性化工程段階からバッテリーBに対応する充電深度を設定することで、バッテリーBに逆電圧が発生することを予め防止することができる。したがって、バッテリーBの退化速度が遅くなってバッテリーBをより長期間使用できるため、経済性及び環境への負担を改善することができる。また、バッテリーBのそれぞれに対して適切な充電深度が設定されるため、バッテリーBの逆電圧発生によって生じ得る事故を予め防止することができる。
【0078】
一方、充電深度設定装置100に備えられたプロセッサ130は、本発明で実行される多様な制御ロジックを実行するため、当業界に知られたプロセッサ130、ASIC(application-specific integrated circuit)、他のチップセット、論理回路、レジスタ、通信モデム、データ処理装置などを選択的に含み得る。また、制御ロジックがソフトウェアとして具現されるとき、プロセッサ130はプログラムモジュールの集合として具現され得る。このとき、プログラムモジュールはメモリに保存され、プロセッサ130によって実行され得る。メモリはプロセッサ130の内部または外部に備えられ得、周知の多様な手段でプロセッサ130と接続され得る。
【0079】
また、充電深度設定装置100は、保存部140をさらに含み得る。保存部140は、プロセッサ130がバッテリーBの充電深度を設定するのに必要なプログラム及びデータなどを保存し得る。すなわち、保存部140は、充電深度設定装置100の各構成要素が動作及び機能を遂行するのに必要なデータ、若しくは、プログラムまたは動作及び機能が行われる過程で生成されるデータなどを保存し得る。保存部140は、データを記録、消去、更新及び読出できると知られた公知の情報記録手段であれば、その種類に特に制限がない。一例として、情報記録手段にはRAM、フラッシュ(登録商標)メモリ、ROM、EEPROM、レジスタなどが含まれ得る。また、保存部140は、プロセッサ130によって実行可能なプロセスが定義されたプログラムコードを保存し得る。
【0080】
例えば、保存部140には、プロファイル取得部120によって取得された複数の電圧プロファイル及び複数の微分プロファイル(21~24)が保存され得る。そして、プロセッサ130は、プロファイル取得部120から直接微分プロファイル(21~24)を取得するか、または、保存部140にアクセスして保存された微分プロファイル(21~24)を取得し得る。
【0081】
また、プロセッサ130によって設定されたバッテリーBの充電深度は、保存部140に保存され得る。例えば、保存部140には、プロセッサ130によって設定された充電深度がバッテリーB毎に保存され得る。その後、保存部140に保存されたバッテリーBの充電深度は、バッテリーBを管理するように構成されたバッテリー管理システム(Battery Management System 、BMS)、または、バッテリー管理システムと接続された保存ユニットに保存され得る。
【0082】
すなわち、本発明の一実施形態による充電深度設定装置100は、個別バッテリーBに対応する充電深度を設定し、設定された充電深度により個別バッテリーBを管理するように構成されたバッテリー管理システムに提供し得る。したがって、バッテリーBが出荷されて使用される場合、充電深度設定装置100によって設定された充電深度によって、バッテリーBに逆電圧が発生することが防止できる。また、バッテリーBの退化の進行が遅くなって、バッテリーBの寿命が延長できる。
【0083】
以下、プロセッサ130がターゲットピークを選択する過程についてより具体的に説明する。
【0084】
プロセッサ130は、取得された複数の特徴値の大きさを比較するように構成され得る。
【0085】
具体的には、プロセッサ130は、対応する目標電圧が隣接した複数の特徴値同士の大きさの差を算出し得る。より具体的には、プロセッサ130は、対応する目標電圧を基準にして隣接した二つの特徴値同士の大きさを比較して大きさの差を算出し得る。
【0086】
例えば、
図5の実施形態において、対応する目標電圧が隣接した特徴値は、第1ターゲットピークTp1の特徴値と第2ターゲットピークTp2の特徴値、第2ターゲットピークTp2の特徴値と第3ターゲットピークTp3の特徴値、及び第3ターゲットピークTp3の特徴値と第4ターゲットピークTp4の特徴値である。プロセッサ130は、第1ターゲットピークTp1の特徴値と第2ターゲットピークTp2の特徴値との第1大きさの差D1を算出し得る。そして、プロセッサ130は、第2ターゲットピークTp2の特徴値と第3ターゲットピークTp3の特徴値との第2大きさの差D2を算出し得る。そして、プロセッサ130は、第3ターゲットピークTp3の特徴値と第4ターゲットピークTp4の特徴値との第3大きさの差D3を算出し得る。
【0087】
プロセッサ130は、比較結果に応じて、取得された複数の特徴値にそれぞれ対応する複数の目標電圧のうちいずれか一つを基準電圧として選択するように構成され得る。そして、プロセッサ130は、選択された基準電圧を充電深度として設定するように構成され得る。
【0088】
一実施形態として、プロセッサ130は、算出された大きさの差が最大である複数の基準特徴値を選択するように構成され得る。そして、プロセッサ130は、選択された複数の基準特徴値同士の大きさの差に応じて、複数の目標電圧のうちいずれか一つを基準電圧として選択するように構成され得る。
【0089】
例えば、
図5の実施形態において、プロセッサ130は、第1大きさの差D1と第2大きさの差D2と第3大きさの差D3とを比較し得る。第1大きさの差D1及び第2大きさの差D2よりも第3大きさの差D3が大きいため、プロセッサ130は、第3ターゲットピークTp3の特徴値及び第4ターゲットピークTp4の特徴値を基準特徴値として選択し得る。そして、プロセッサ130は、第3ターゲットピークTp3に対応する第3目標電圧及び第4ターゲットピークTp4に対応する第4目標電圧のいずれか一つを基準電圧として選択し得る。
【0090】
具体的には、プロセッサ130は、選択された複数の基準特徴値に対応する複数の目標電圧のうち最も低電位側の目標電圧を基準電圧として選択するように構成され得る。
【0091】
例えば、
図5の実施形態において、プロセッサ130は、第3目標電圧及び第4目標電圧のうち低電位側である第3目標電圧を基準電圧として選択し得る。すなわち、プロセッサ130は、大きさの差が最も大きい二つの基準特徴値を選択し、選択した二つの基準特徴値にそれぞれ対応する二つの目標電圧のうちより低い目標電圧をバッテリーBの充電深度として設定し得る。
【0092】
すなわち、バッテリーBの充電深度が低く設定されるため、バッテリーBの逆電圧発生が抑制できる。また、複数のターゲットピークの特徴値同士の大きさの差が最も大きい二つの基準特徴値に基づいてバッテリーBの充電深度が設定されるため、バッテリーBの充電深度が過度に低く設定されることが防止できる。したがって、本発明の一実施形態による充電深度設定装置100は、バッテリーBの逆電圧が発生することを抑制するとともに、バッテリーBの性能が最大限に発揮可能な充電深度を設定することができる。
【0093】
他の実施形態として、プロセッサ130は、選択された複数の基準特徴値同士の大きさの差が所定の大きさ値以上である場合、低電位側の目標電圧を基準電圧として選択するように構成され得る。
【0094】
例えば、所定の大きさ値は、所定の値に設定され得る。
図5の実施形態において、所定の大きさ値は0.5以上1未満のいずれか一つの値に設定され得る。
【0095】
他の例として、所定の大きさ値は、複数の大きさの差のうち二番目に大きい大きさの差の2倍の値に設定され得る。
図5の実施形態において、複数の大きさの差は、第1大きさの差D1、第2大きさの差D2、及び第3大きさの差D3である。そして、複数の大きさの差のうち、第3大きさの差D3が最も大きく、第1大きさの差D1が二番目に大きい。したがって、所定の大きさ値は、第1大きさの差D1の2倍の値に設定され得る。
【0096】
プロセッサ130は、このような方式で所定の大きさ値を設定し、複数の基準特徴値同士の大きさの差が他の特徴値同士の大きさの差と大きく異なる場合、バッテリーBの充電深度を適切に設定し得る。
【0097】
上述した実施形態と異なって、プロセッサ130は、複数の基準特徴値同士の大きさの差が所定の大きさ値以上である場合のみに、複数の基準特徴値に対応する複数の目標電圧のうち低電位側の目標電圧をバッテリーBの充電深度として設定し得る。逆に、プロセッサ130は、選択された複数の基準特徴値同士の大きさの差が所定の大きさ値未満である場合、複数の目標電圧のうち最も高電位側の目標電圧を基準電圧として選択するように構成され得る。
【0098】
例えば、
図5の実施形態において、第3大きさの差D3が第1大きさの差D1及び第2大きさの差D2よりも大きいため、複数の基準特徴値として第3ターゲットピークTp3の特徴値及び第4ターゲットピークTp4の特徴値が選択され得る。そして、プロセッサ130は、第3大きさの差D3と所定の大きさ値との大小を比較し得る。もし、第3大きさの差D3が所定の大きさ値以上であれば、プロセッサ130は、複数の基準特徴値に対応する第3目標電圧と第4目標電圧のうち低電位側の目標電圧である第3目標電圧をバッテリーBの充電深度として設定し得る。
【0099】
すなわち、プロセッサ130は、複数の基準特徴値同士の大きさの差が所定の大きさ値以上である場合は、もし、複数の基準特徴値に対応する複数の目標電圧のうち高電位側の目標電圧がバッテリーBの充電深度として設定されれば、バッテリーBに逆電圧が発生するおそれがあると判断し得る。したがって、プロセッサ130は、バッテリーBに逆電圧が発生することを防止するため、複数の基準特徴値に対応する複数の目標電圧のうち低電位側の目標電圧をバッテリーBの充電深度として設定し得る。
【0100】
一方、
図5の実施形態において、第3大きさの差D3が所定の大きさ値未満であれば、プロセッサ130は、第1目標電圧(4.0V)、第2目標電圧、第3目標電圧及び第4目標電圧のうち最も高電位側の目標電圧である第4目標電圧をバッテリーBの充電深度として設定し得る。
【0101】
すなわち、プロセッサ130は、複数のターゲットピークの特徴値同士の大きさの差がいずれも所定の大きさ値未満であれば、バッテリーBの逆電圧が発生することはないと判断し得る。したがって、プロセッサ130は、バッテリーBの性能が最大限に発揮されるように、バッテリーBの充電深度を複数の目標電圧のうち最も高電位側の目標電圧として設定し得る。
【0102】
したがって、本発明の一実施形態による充電深度設定装置100は、所定の大きさ値と基準特徴値同士の大きさの差とを比較した結果に基づいてバッテリーBの充電深度を設定することで、バッテリーBの最大性能の発揮とバッテリーBの逆電圧の抑制とをバランスよく達成することができる。
【0103】
以下、プロセッサ130が複数の微分プロファイル(21~24)のそれぞれからターゲットピークを選択する過程について具体的に説明する。
【0104】
プロセッサ130は、複数の微分プロファイル(21~24)のそれぞれから一つ以上のピーク対を決定するように構成され得る。例えば、
図3の実施形態において、プロセッサ130は、第1ピークP1、第2ピークP2、第3ピークP3、第4ピークP4、第5ピークP5、第6ピークP6、及び第7ピークP7を選択し得る。
【0105】
具体的には、プロセッサ130は、複数のピークのうち、バッテリーBの容量が増加するほど微分電圧が増加する区間で上端及び下端に位置する二つのピークを、一つのピーク対として決定するように構成され得る。
【0106】
例えば、
図3の実施形態において、第2ピークP2及び第3ピークP3は、容量が増加するほど微分電圧が増加する区間に含まれる。そして、第2ピークP2及び第3ピークP3は、それぞれ微分電圧が増加する区間の下端及び上端に位置するため、一つのピーク対として決定され得る。
【0107】
また、第4ピークP4及び第5ピークP5も、容量が増加するほど微分電圧が増加する区間に含まれる。そして、第4ピークP4及び第5ピークP5は、それぞれ微分電圧が増加する区間の下端及び上端に位置するため、一つのピーク対として決定され得る。
【0108】
また、第6ピークP6及び第7ピークP7も、容量が増加するほど微分電圧が増加する区間に含まれる。そして、第6ピークP6及び第7ピークP7は、それぞれ微分電圧が増加する区間の下端及び上端に位置するため、一つのピーク対として決定され得る。
【0109】
すなわち、プロセッサ130は、第2ピークP2及び第3ピークP3を含む第1ピーク対、第4ピークP4及び第5ピークP5を含む第2ピーク対、第6ピークP6及び第7ピークP7を含む第3ピーク対を決定し得る。
【0110】
プロセッサ130は、決定されたピーク対のうち、含まれる複数のピークの微分電圧同士の差が最も大きいピーク対を選択するように構成され得る。
【0111】
例えば、
図3の実施形態において、プロセッサ130は、第1ピーク対に含まれた第2ピークP2の微分電圧と第3ピークP3の微分電圧との差を算出し得る。また、プロセッサ130は、第2ピーク対に含まれた第4ピークP4の微分電圧と第5ピークP5の微分電圧との差を算出し得る。また、プロセッサ130は、第3ピーク対に含まれた第6ピークP6の微分電圧と第7ピークP7の微分電圧との差を算出し得る。そして、プロセッサ130は、第1ピーク対、第2ピーク対及び第3ピーク対のうち、含まれる複数のピークの微分電圧同士の差が最も大きいピーク対として第2ピーク対を選択し得る。
【0112】
そして、プロセッサ130は、選択されたピーク対に含まれた複数のピークのうち低容量側のピークをターゲットピークとして選択するように構成され得る。
【0113】
例えば、
図3の実施形態において、プロセッサ130は、第2ピーク対に含まれた第4ピークP4及び第5ピークP5のうち第4ピークP4をターゲットピークとして選択し得る。具体的には、負極活物質として黒鉛を含むバッテリーBにおいて、充電深度に応じたLiC
12の挙動に関連するピークであり得る。
【0114】
非特許文献1をさらに参照すると、バッテリーBに逆電圧が発生する原因のうち一つは、LiC6とLiC12との不均一であり得る。
【0115】
このような不均一が発生することを防止するため、プロセッサ130は、上述した方式でそれぞれの微分プロファイル20からLiC12の挙動が最も顕著なターゲットピークを選択し、複数のターゲットピークの特徴値を比較してバッテリーBの充電深度を設定し得る。すなわち、プロセッサ130によって充電深度が設定されたバッテリーBでは、LiC6とLiC12とが均一に維持できる。
【0116】
具体的には、LiC
6とLiC
12との相転移は、所定の電圧区間で急激に行われ得、LiC
6とLiC
12との不均一が生じれば、バッテリーBに逆電圧が発生するおそれがある。例えば、
図5の実施形態において、所定の電圧区間は4.2V~4.3Vの区間であり得る。
【0117】
したがって、本発明の一実施形態による充電深度設定装置100は、バッテリーBに対する複数のターゲットピークの特徴値を比較してバッテリーBに適した充電深度を設定することで、Li66とLiC12との急激な相転移を防止することができる。これを通じて、バッテリーBに逆電圧が発生することを効果的に防止することができる。
【0118】
プロセッサ130は、複数の微分プロファイル(21~24)をそれぞれ正規化して複数の正規分布プロファイルを取得するように構成され得る。
【0119】
例えば、
図4の実施形態において、それぞれの微分プロファイル20は正規分布に従わないことがある。したがって、プロセッサ130は、複数の微分プロファイル(21~24)のそれぞれのターゲットピークに対する半値全幅を算出するため、複数の微分プロファイル(21~24)をそれぞれ正規化し得る。このような過程を経て、プロセッサ130は、複数の微分プロファイル(21~24)に基づいた複数の正規分布プロファイルを取得し得る。
【0120】
そして、プロセッサ130は、取得された複数の正規分布プロファイルのそれぞれから、対応するターゲットピークに対する半値全幅を特徴値として取得するように構成され得る。
【0121】
ここで、半値全幅とは、関数の最大値の半分になる二つの独立変数値同士の差で定義され得る。関数F(X)がXmaxで最大値F(Xmax)を有し、X1及びX2で関数F(X)の値が最大値F(Xmax)の半分に減少すると仮定すると、F(X1)及びF(X2)は同様に「F(Xmax)÷2」で表され、このとき、半値全幅はX1とX2との差の絶対値になる。
【0122】
一般に、複数のピーク同士の差を算出するため複数の半値全幅同士の差を算出する方式は、複数のピーク値の大きさを直接比較する方式よりも安定的な方式であると認識される。
【0123】
例えば、
図4の実施形態において、第1ターゲットピークTp1、第2ターゲットピークTp2、第3ターゲットピークTp3、及び第4ターゲットピークTp4の微分電圧は徐々に増加している。同様に、
図5の実施形態において、第1ターゲットピークTp1の特徴値、第2ターゲットピークTp2の特徴値、第3ターゲットピークTp3の特徴値、及び第4ターゲットピークTp4の特徴値も徐々に増加している。
【0124】
しかし、
図4の実施形態では、第1ターゲットピークTp1~第4ターゲットピークTp4の微分電圧が線形的に増加しているため、第3ターゲットピークTp3と第4ターゲットピークTp4との微分電圧差が他のターゲットピーク同士の微分電圧差と大きく異なることを判断できないおそれがある。一方、
図5の実施形態では、第3大きさの差D3が第1大きさの差D1及び第2大きさの差D2と明らかな差を見せることが確認できる。
【0125】
すなわち、プロセッサ130は、複数のターゲットピークをより精密に比較するため、複数の微分プロファイル(21~24)を正規化し、複数のターゲットピークそれぞれの特徴値として複数のターゲットピークそれぞれの半値全幅を算出し得る。したがって、本発明の一実施形態による充電深度設定装置100は、バッテリーBの逆電圧を防止するための最適の充電深度を設定することができる。
【0126】
また、本発明による充電深度設定装置100は、バッテリー製造装置1に備えられ得る。すなわち、本発明によるバッテリー製造装置1は、上述した充電深度設定装置100及び一つ以上のバッテリーBを含み得る。また、バッテリー製造装置1は、電装品(リレー、ヒューズなど)及びケースなどをさらに含み得る。
【0127】
例えば、
図2の実施形態において、充電深度設定装置100は、バッテリー製造装置1に備えられ、バッテリーBと電気的に接続され得る。
【0128】
望ましくは、このようなバッテリー製造装置1は、バッテリーBの活性化工程過程で構成され得る。すなわち、本発明の一実施形態による充電深度設定装置100は、バッテリーBの活性化工程過程でバッテリーBと電気的に接続されてバッテリー製造装置1を構成し得る。そして、活性化工程過程において、充電深度設定装置100はバッテリーBの最適充電深度を設定し得る。
【0129】
図6は、本発明の他の実施形態による充電深度設定方法を概略的に示した図である。
【0130】
充電深度設定方法の各段階は、本発明の一実施形態による充電深度設定装置100によって実行できる。以下では、上述した内容と重なる内容は簡略に説明する。
【0131】
図6を参照すると、充電深度設定方法は、目標電圧設定段階S100、充放電段階S200、電圧プロファイル取得段階S300、微分プロファイル取得段階S400、微分プロファイル反復取得段階S500、特徴値取得段階S600、及び充電深度設定段階S700を含み得る。
【0132】
目標電圧設定段階S100は、予め設定された複数の電圧のうちいずれか一つを順次に選択して目標電圧として設定する段階であって、プロセッサ130によって実行できる。
【0133】
例えば、複数の電圧は、4.0V、4.1V、4.2V、及び4.3Vに予め設定され得る。プロセッサ130は、先に4.0Vを第1目標電圧として設定し得る。
【0134】
充放電段階S200は、バッテリーBを目標電圧まで充電し、充電が完了したバッテリーBを放電させる段階であって、充放電部110によって実行できる。
【0135】
例えば、充放電部110は、プロセッサ130によって設定された第1目標電圧(4.0V)までバッテリーBを充電し得る。そして、充放電部110は、バッテリーBの電圧が2.0Vに到達するまで0.05Cの低率でバッテリーBを放電させ得る。
【0136】
電圧プロファイル取得段階S300は、バッテリーBが充電及び放電する過程でバッテリーBの容量と電圧に対する電圧プロファイルを取得する段階であって、プロファイル取得部120によって実行できる。
【0137】
プロファイル取得部120は、バッテリーBの放電中にバッテリーBの電圧及び電流を測定し得る。そして、プロファイル取得部120は、バッテリーBの容量とバッテリーBの電圧に対する電圧プロファイルを取得し得る。
【0138】
微分プロファイル取得段階S400は、取得した電圧プロファイルからバッテリーBの容量と微分電圧に対する微分プロファイル20を取得する段階であって、プロファイル取得部120によって実行できる。
【0139】
プロファイル取得部120は、電圧プロファイル取得段階S300で取得した電圧プロファイルから、バッテリーBの電圧をバッテリーBの容量で微分し得る。すなわち、プロファイル取得部120は、バッテリーBの容量とバッテリーBの微分電圧(バッテリーBの電圧をバッテリーBの容量で微分した値)に対する微分プロファイル20を取得し得る。
【0140】
微分プロファイル反復取得段階S500は、複数の電圧に対応する複数の微分プロファイル(21~24)をすべて取得する段階であって、プロセッサ130、充放電部110、及びプロファイル取得部120によって実行できる。
【0141】
すなわち、微分プロファイル反復取得段階S500は、予め設定された複数の電圧に対して微分プロファイル20がすべて取得されるまで目標電圧設定段階S100、充放電段階S200、電圧プロファイル取得段階S300、及び微分プロファイル取得段階S400を繰り返して行う段階であり得る。
【0142】
具体的には、微分プロファイル反復取得段階S500で複数の電圧に対応する複数の微分プロファイル(21~24)がすべて取得された場合は、特徴値取得段階S600に進み、複数の電圧に対応する複数の微分プロファイル(21~24)のいずれか一つでも取得されていない場合は、目標電圧設定段階S100が行われ得る。
【0143】
例えば、プロファイル取得部120が、第1目標電圧に対する第1微分プロファイル21のみを取得した場合、プロセッサ130は4.1Vを第2目標電圧として設定し得る。そして、充放電部110は、バッテリーBの電圧が第2目標電圧に到達するまでバッテリーBを充電し得る。その後、充放電部110は、バッテリーBの電圧が2.0Vに到達するまで0.05Cの低率でバッテリーBを放電させ得る。プロファイル取得部120は、バッテリーBが放電する過程で第2目標電圧に対応する第2微分プロファイル22を取得し得る。同様に、プロファイル取得部120は、第3目標電圧(4.2V)に対応する第3微分プロファイル23及び第4目標電圧(4.3V)に対応する第4微分プロファイル24を取得し得る。
【0144】
特徴値取得段階S600は、複数の微分プロファイル(21~24)のそれぞれからターゲットピークに対する特徴値を取得する段階であって、プロセッサ130によって実行できる。
【0145】
プロセッサ130は、複数の微分プロファイル(21~24)のそれぞれからターゲットピークを選択し得る。具体的には、ターゲットピークは、充電深度に応じたLiC12の挙動に関連するピークであり得る。
【0146】
そして、プロセッサ130は、複数のターゲットピークそれぞれの特徴値として半値全幅を算出し得る。そのため、プロセッサ130は、複数の微分プロファイル(21~24)をそれぞれ正規化して複数の正規分布プロファイルを取得し、取得した複数の正規分布プロファイルのそれぞれからターゲットピークの半値全幅をそれぞれ算出し得る。
【0147】
充電深度設定段階S700は、取得された複数の特徴値に基づいてバッテリーBに対する充電深度を設定する段階であって、プロセッサ130によって実行できる。
【0148】
例えば、
図5の実施形態において、プロセッサ130は、第1ターゲットピークTp1の特徴値と第2ターゲットピークTp2の特徴値との第1大きさの差D1を算出し得る。そして、プロセッサ130は、第2ターゲットピークTp2の特徴値と第3ターゲットピークTp3の特徴値との第2大きさの差D2を算出し得る。また、プロセッサ130は、第3ターゲットピークTp3の特徴値と第4ターゲットピークTp4の特徴値との第3大きさの差D3を算出し得る。そして、プロセッサ130は、第1大きさの差D1、第2大きさの差D2、及び第3大きさの差D3に基づいて、第3ターゲットピークTp3の特徴値及び第4ターゲットピークTp4の特徴値を基準特徴値として選択し得る。そして、プロセッサ130は、第3ターゲットピークTp3に対応する第3目標電圧及び第4ターゲットピークTp4に対応する第4目標電圧のいずれか一つを基準電圧として選択し得る。
【0149】
上述した本発明の実施形態は、装置及び方法のみによって具現されるものではなく、本発明の実施形態の構成に対応する機能を実現するプログラムまたはそのプログラムが記録された記録媒体を通じても具現され得、このような具現は上述した実施形態の記載から当業者であれば容易に具現できるであろう。
【0150】
以上のように、本発明を限定された実施形態と図面によって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の属する技術分野で通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
【0151】
また、上述した本発明は、本発明が属する技術分野で通常の知識を持つ者により、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で様々な置換、変形及び変更が可能であって、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、多様な変形のため各実施形態の全部または一部が選択的に組み合わせられて構成され得る。
【符号の説明】
【0152】
1:バッテリー製造装置
20:微分プロファイル
21:第1微分プロファイル
22:第2微分プロファイル
23:第3微分プロファイル
24:第4微分プロファイル
100:充電深度設定装置
110:充放電部
120:プロファイル取得部
130:プロセッサ
140:保存部
B:バッテリー
【国際調査報告】