(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-28
(54)【発明の名称】アルコール性肝炎の処置
(51)【国際特許分類】
A61K 31/575 20060101AFI20221118BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
A61K31/575
A61P1/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518230
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(85)【翻訳文提出日】2022-05-20
(86)【国際出願番号】 US2020053315
(87)【国際公開番号】W WO2021067297
(87)【国際公開日】2021-04-08
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508027589
【氏名又は名称】デュレクト コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リン,ウェイチー
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ジェームズ イー.
(72)【発明者】
【氏名】ブラシュケ,テレンス
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA11
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA75
(57)【要約】
アルコール性肝炎(AH)を処置する方法が提供される。例えば、該方法は、5-コレステン-3,25-ジオール, 3-スルフェート(25HC3S)またはその塩を投与することを含んでいてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール性肝炎を処置する必要があるヒト対象においてアルコール性肝炎を処置する方法であって、該対象に5-コレステン-3,25-ジオール, 3-スルフェート(25HC3S)またはその塩を、該アルコール性肝炎を処置するのに十分な量で投与することを含む、該方法。
【請求項2】
前記投与が、約1 mg~約1000 mgである前記25HC3Sまたはその塩の総量を投与することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記投与が、約10 mg/月~約400 mg/月である前記25HC3Sまたはその塩の総量を投与することを含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、前記ヒト対象に総量約10 mg~約400 mgの25HC3Sまたはその塩を、1ヶ月の期間内に投与することを含み、ここで
-該総量が前記アルコール性肝炎を処置するのに十分なものであり、
-該総量を少なくとも第1用量を含む1以上の別々の用量で投与し、かつ
-該1ヶ月の期間を該第1用量の投与の開始から測定する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記総量を、1用量で、または2つの別々の用量で、好ましくは単一用量として投与する、請求項2~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記の1以上の別々の用量のうちの少なくとも1つ、および好ましくは各々が、約10 mg~約200 mgの25HC3Sまたはその塩を含む、請求項4~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記の1以上の別々の用量のうちの少なくとも1つ、および好ましくは各々が、約20 mg~約100 mgの25HC3Sまたはその塩を含む、請求項4~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記総量を、毎日~週に1回の投与頻度で投与する2以上の別々の用量で投与する、請求項2~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
以下の、すなわち、
-前記総量を1用量で、または2つの別々の用量で投与し、
-該1用量が約10 mg~約200 mgの25HC3Sまたはその塩を含み、
-該2つの別々の用量の各々が約10 mg~約200 mgの25HC3Sまたはその塩を含み、かつ
-該2つの別々の用量を、2日に1回~4日に1回の投与頻度で投与する、
請求項4記載の方法。
【請求項10】
前記投与を非経口的に、静脈内に、筋肉内に、または皮下に実施する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記投与を注射により実施する、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記25HC3Sまたはその塩を、前記25HC3Sまたはその塩および製薬上許容される担体を含む製剤で投与する、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記25HC3Sまたはその塩が25HC3Sの塩を含み、該25HC3Sの塩が好ましくはナトリウム塩である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
アルコール性肝炎を、その必要があるヒト対象において処置する方法に使用するための5-コレステン-3,25-ジオール, 3-スルフェート(25HC3S)またはその塩であって、ここで該方法が請求項1~13のいずれか1項に記載された方法である、該25HC3Sまたはその塩。
【請求項15】
アルコール性肝炎をその必要があるヒト対象において処置する方法に使用するための医薬を製造するための方法における5-コレステン-3,25-ジオール, 3-スルフェート(25HC3S)またはその塩の使用であって、ここで該方法が請求項1~13のいずれか1項に記載された方法である、該使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アルコール性肝炎(AH)を処置する方法が提供される。例えば、該方法は、5-コレステン-3,25-ジオール, 3-スルフェート(25HC3S)またはその塩を投与することを含んでいてもよい。
【背景技術】
【0002】
アルコール性肝炎(AH)は、アルコール(エタノール)の長期摂取により引き起こされるアルコール性肝疾患である。AHの徴候および症状としては、急性黄疸、発熱および体重減少、ならびに肝硬変につながる腹水および肝性脳症などの幾つかの合併症が挙げられる。AHは30日で最大15%という高い死亡負荷と関連があるが、これは受診時の疾患の重症度に左右される。重症型AHの1ヶ月死亡率は30%~50%もの高さである。
【0003】
コルチコステロイドは、AHの重症例を処置するために一般に使用されている。しかし、コルチコステロイドによる処置は相反する結果を示し、感染リスクの増大を伴い、また胃腸管出血がある患者またはステロイドにアレルギーを持つ患者には不適である。コルチコイドステロイドは、典型的には、使用する特定のコルチコステロイドに応じて、30 mg~40 mg程度の量で毎日摂取する。患者はその薬を摂取すべき時に摂取しないことが多いため、患者のコンプライアンスは低い傾向にある。
【0004】
肝移植はAHの治癒的処置の1選択肢であるが、患者はその要件を満たすためにアルコール飲用を6ヶ月間控えなければならない。しかし重症型AHの6ヶ月死亡率は高い(およそ40%)。肝移植は処置の1選択肢ではあるものの、重症型AH患者はその移植基準を満たす前に死亡することが多い。
【0005】
本明細書中に参照により組み込まれる米国特許第8,399,441号には、高コレステロールおよび/または高トリグリセリドおよび/または炎症に関連する状態(例えば、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、非アルコール性脂肪性肝疾患、アテローム性動脈硬化症など)の処置のための、5-コレステン-3,25-ジオール, 3-スルフェート(25HC3S)およびその塩の使用が開示されている。
【0006】
本明細書中に参照により組み込まれる米国特許第9,034,859号には、肝障害または肝疾患の予防および処置のための、25HC3Sおよびその塩の使用が開示されている。
【0007】
本明細書中に参照により組み込まれるものとする米国特許第10,272,097号には、虚血、臓器機能障害および/または臓器不全、例えば多臓器機能障害症候群(MODS)、ならびに臓器機能障害/不全に伴う壊死およびアポトーシスを予防および/または処置するための、酸化コレステロールスルフェート、例えば、25HC3Sおよびその塩が開示されている。
【0008】
ClinicalTrials.govには、3用量:30 mg、90 mg、および150 mgを含む用量漸増を利用した、AHを患う患者における25HC3Sの安全性、薬物動態学および薬力学を評価するための調査研究の開示内容が含まれる。ClinicalTrials.gov識別番号:NCT03432260を参照されたい。
【0009】
AHを処置するための改善された方法が至急必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第8,399,441号
【特許文献2】米国特許第9,034,859号
【特許文献3】米国特許第10,272,097号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】ClinicalTrials.gov識別番号:NCT03432260
【発明の概要】
【0012】
本開示は、アルコール性肝炎(AH)を処置する様々な方法を提供する。該方法は、有効量の5-コレステン-3,25-ジオール, 3-スルフェート(25HC3S)またはその塩を投与することを伴う。特定の場合には、該方法は、有効量の5-コレステン-3,25-ジオール, 3β-スルフェートまたはその塩を投与することを伴う。
【0013】
本開示の結果は、幾つかの理由で驚くべきものである。例えば、幾つかの実施形態における、本開示の低用量は驚くべきものである。さらに、幾つかの実施形態における、その低投与頻度は驚くべきものである。さらにまた、幾つかの実施形態における、AHの処置において効果を得るための低用量数(low number of doses)は驚くべきものである。かかる低投与量、低投与頻度、および低用量数が、より多くの投与量、より頻繁な投与、および/もしくはより多くの総用量数を必要とするコルチコステロイドと同様であるかまたはより良好な結果をもたらしうるという点で、本開示の結果はさらに驚くべきものである。さらにまた、本開示は、特定の診断基準、例えば末期肝疾患モデル(Model for End-stage Liver Disease)(MELD)スコアおよび/または本明細書中の他の箇所で検討する他の基準により特徴付けられるAH患者において、有効な結果を得ることもできる。
【0014】
本開示のさらなる態様は以下の通りである:
【0015】
1.アルコール性肝炎を、その必要があるヒト対象において処置する方法であって、該方法が該対象に5-コレステン-3,25-ジオール, 3-スルフェート(25HC3S)またはその塩を、該アルコール性肝炎を処置するのに十分な量で投与することを含む、該方法。
【0016】
2.前記投与が、約1 mg~約1000 mgである25HC3Sまたはその塩の総量を投与することを含む、態様1記載の方法。
【0017】
3.前記投与が以下(a)または(b)、すなわち(a)約10 mg/月~約500 mg/月、または(b)約10 mg/月~約400 mg/月のいずれかの25HC3Sまたはその塩の総量を投与することを含む、態様1または2に記載の方法。
【0018】
4.前記方法が前記ヒト対象に以下(a)または(b)、すなわち(a)約10 mg/月~約400 mg/月、または(b)約10 mg~約400 mgの25HC3Sまたはその塩、のいずれかの総量を1ヶ月の期間内に投与することを含み、ここで
-該総量が前記アルコール性肝炎を処置するのに十分なものであり、
-該総量を、少なくとも第1用量を含む1以上の別々の用量で投与し、かつ
-該1ヶ月の期間を該第1用量の投与の開始から測定する、
態様1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0019】
5.前記総量を1~15の別々の用量で投与する、態様2~4のいずれか1つの方法。
【0020】
6.前記総量を1~5の別々の用量で投与する、態様2~4のいずれか1つの方法。
【0021】
7.前記総量を1用量で、または2つの別々の用量で、好ましくは単一用量として投与する、態様2~4のいずれか1つの方法。
【0022】
8.前記総量が少なくとも約20 mgである、態様2~7のいずれか1つの方法。
【0023】
9.前記総量が約300 mg以下である、態様2~8のいずれか1つの方法。
【0024】
10.前記総量が約200 mg以下である、態様2~8のいずれか1つの方法。
【0025】
11.前記総量が約140 mg以下である、態様2~8のいずれか1つの方法。
【0026】
12.前記の1以上の別々の用量のうちの少なくとも1つ、および好ましくは各々が、約10 mg~約200 mgの25HC3Sまたはその塩を含む、態様4~11のいずれか1つの方法。
【0027】
13.前記の1以上の別々の用量のうちの少なくとも1つ、および好ましくは各々が、約10 mg~約120 mgの25HC3Sまたはその塩を含む、態様4~12のいずれか1つの方法。
【0028】
14.前記の1以上の別々の用量のうちの少なくとも1つ、および好ましくは各々が、約20 mg~約100 mgの25HC3Sまたはその塩を含む、態様4~13のいずれか1つの方法。
【0029】
15.前記総量を毎日~週に1回の投与頻度で投与する2以上の別々の用量で投与する、態様2~14のいずれか1つの方法。
【0030】
16.前記投与頻度が2日に1回~週に1回である、態様15の方法。
【0031】
17.前記投与頻度が2日に1回~5日に1回である、態様15の方法。
【0032】
18.前記投与頻度が2日に1回~4日に1回である、態様15の方法。
【0033】
19.以下の、すなわち
-前記総量を1用量で、または2つの別々の用量で投与し、
-該1用量が約10 mg~約200 mgの25HC3Sまたはその塩を含み、
-該2つの別々の用量の各々が約10 mg~約200 mgの25HC3Sまたはその塩を含み、かつ
-該2つの別々の用量を、2日に1回~4日に1回の投与頻度で投与する、
態様4の方法。
【0034】
20.前記総量を1用量で投与し、かつ該1用量が以下(a)~(c)、すなわち(a)約20 mg~約40 mgの25HC3Sもしくはその塩、または(b)約80 mg~約100 mgの25HC3Sもしくはその塩、または(c)約140 mg~約160 mgの25HC3Sもしくはその塩、を含む、態様19の方法。
【0035】
21.前記総量を2つの別々の用量で投与し、かつその2つの別々の用量の各々が以下(a)~(c)、すなわち(a)約20 mg~約40 mgの25HC3Sもしくはその塩、または(b)約80 mg~約100 mgの25HC3Sもしくはその塩、または(c)約140 mg~約160 mgの25HC3Sまたはその塩、を含む、態様19の方法。
【0036】
22.前記期間中に投与される25HC3Sまたはその塩の総量/kgが約0.05 mg/kg~約20 mg/kgである、態様4~21のいずれか1つの方法。
【0037】
23.前記総量/kgが約0.1 mg/kg~約10 mg/kgである、態様22の方法。
【0038】
24.前記総量/kgが約0.2 mg/kg~約6 mg/kgである、態様22の方法。
【0039】
25.前記総量/kgが約0.3 mg/kg~約1.5 mg/kgである、態様22の方法。
【0040】
26.前記投与を非経口的に、静脈内に、筋肉内に、または皮下に実施する、態様1~25のいずれか1つの方法。
【0041】
27.前記投与を注射により実施する、態様1~26のいずれか1つの方法。
【0042】
28.前記25HC3Sまたはその塩を、前記25HC3Sまたはその塩および製薬上許容される担体を含む製剤で投与する、態様1~27のいずれか1つの方法。
【0043】
29.前記25HC3Sまたはその塩が25HC3Sの塩を含み、該25HC3Sの塩が好ましくはナトリウム塩である、態様1~28のいずれか1つの方法。
【0044】
30.前記の1以上の別々の用量を14日以下の投与期間にわたり投与する、態様4~29のいずれか1つの方法。
【0045】
31.前記ヒト対象が少なくとも11の末期肝疾患モデル(MELD)スコアを有する、態様1~30のいずれか1つの方法。
【0046】
32.前記ヒト対象が11~45のMELDスコアを有する、態様1~31のいずれか1つの方法。
【0047】
33.前記ヒト対象が15~40のMELDスコアを有する、態様1~32のいずれか1つの方法。
【0048】
34.前記ヒト対象が少なくとも20のMELDスコアを有する、態様1~33のいずれか1つの方法。
【0049】
35.前記ヒト対象が少なくとも30のMELDスコアを有する、態様1~34のいずれか1つの方法。
【0050】
36.前記ヒト対象が少なくとも32のMaddrey判別関数(MDF)を有する、態様1~35のいずれか1つの方法。
【0051】
37.前記アルコール性肝炎が、発症から13週間以内に生じる肝機能の低下により特徴付けられる、態様1~36のいずれか1つの方法。
【0052】
38.前記アルコール性肝炎が、発症から10週間以内に生じる肝機能の低下により特徴付けられる、態様1~36のいずれか1つの方法。
【0053】
39.前記アルコール性肝炎が、前記対象がアルコール性肝炎を有していない対象と比較して25HC3Sのクリアランス率の低下を示すような肝機能の低下により特徴付けられる、態様1~38のいずれか1つの方法。
【0054】
40.前記アルコール性肝炎が、前記対象がアルコール性肝炎を有していない対象による血漿からの25HC3Sのクリアランス率の50%以下、40%以下、30%以下、もしくは25%以下である25HC3Sのクリアランス率を示すような肝機能の低下により特徴付けられる、態様39の方法。
【0055】
41.前記アルコール性肝炎が、前記対象がアルコール性肝炎を有していない対象と比較して、1.5倍以上長い、または2倍以上長い投与後の血漿中の25HC3Sの半減期時間(T1/2)を示すような肝機能の低下により特徴付けられる、態様1~40のいずれか1つの方法。
【0056】
42.前記対象が、約1.5時間~約6時間または約2時間~約5時間である、投与後の血漿中の25HC3Sの半減期時間(T1/2)を示す、態様1~41のいずれか1つの方法。
【0057】
43.前記対象が、約500 ng/mL~約10,000 ng/mL、約600 ng/mL~約7000 ng/mL、または約700 ng/mL~約5000 ng/mLである25HC3SのCmaxを示す、態様1~42のいずれか1つの方法。
【0058】
44.前記対象が、静脈内投与した25HC3Sまたはその塩100 mg当たり、約500 ng/mL~約10,000 ng/mL、約600 ng/mL~約7000 ng/mL、または約700 ng/mL~約5000 ng/mLである25HC3SのCmaxを示す、態様1~43のいずれか1つの方法。
【0059】
45.前記対象が、約3000 ng*h/mL~約50,000 ng*h/mL、約4000 ng*h/mL~約40,000 ng*h/mL、または約5000 ng*h/mL~約30,000 ng*h/mLである25HC3SのAUCinfを示す、態様1~44のいずれか1つの方法。
【0060】
46.前記対象が、静脈内投与した25HC3Sまたはその塩100 mg当たり、約3000 ng*h/mL~約50,000 ng*h/mL、約4000 ng*h/mL~約40,000 ng*h/mL、または約5000 ng*h/mL~約30,000 ng*h/mLである25HC3SのAUCinfを示す、態様1~45のいずれか1つの方法。
【0061】
47.前記対象が、約10 L~約50 L、約15 L~約45 L、または約20 L~約40 Lである25HC3Sの分布容積を示す、態様1~46のいずれか1つの方法。
【0062】
48.前記対象が、約2 L~約8 L/h、約2.5 L/h~約7.5 L/h、または約3 L/h~約7 L/hである25HC3Sのクリアランスを示す、態様1~47のいずれか1つの方法。
【0063】
49.前記アルコール性肝炎が、発症から13週以内に生じる肝機能の喪失により特徴付けられる、態様1~48のいずれか1つの方法。
【0064】
50.前記アルコール性肝炎が、発症から10週以内に生じる肝機能の喪失により特徴付けられる、態様1~48のいずれか1つの方法。
【0065】
51.アルコール性肝炎をその必要があるヒト対象において処置する方法に使用するための5-コレステン-3,25-ジオール, 3-スルフェート(25HC3S)またはその塩であって、該方法が態様1~50のいずれか1つにおいて定義されるものである、該25HC3Sまたはその塩。
【0066】
52.アルコール性肝炎をその必要があるヒト対象において処置する方法に使用するための医薬を製造するための方法における5-コレステン-3,25-ジオール, 3-スルフェート(25HC3S)またはその塩の使用であって、該方法が態様1~50のいずれか1つにおいて定義されるものである、該使用。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】
図1は、標準治療による処置(左)と5-コレステン-3,25-ジオール, 3-スルフェート(25HC3S)による処置(右)を比較した図である。該標準治療の患者には、コルチコステロイドの有無にかかわらず支持療法を行った。該25HC3Sの患者には、1または2用量の25HC3Sナトリウム塩を投与し、各用量は30 mg、90 mg、または150 mgの量とした。
【
図2】
図2は、中等症アルコール性肝炎および重症型アルコール性肝炎を患う対象の25HC3S用の処置プロトコルのフローダイアグラムを表す図である。
【
図3】
図3Aは、中等症AHを患う対象における25HC3Sの平均血漿濃度を表す図である。
図3Bは、中等症AHを患う対象における25HC3Sの平均血漿濃度を表す図である。
【
図4】
図4Aは、中等症アルコール性肝炎および重症型アルコール性肝炎を患う対象に投与した25HC3Sに関するCmaxの薬物動態パラメータを表す図である。
図4Bは、中等症アルコール性肝炎および重症型アルコール性肝炎を患う対象に投与した25HC3Sに関するAUCの薬物動態パラメータを表す図である。
【
図5】
図5は、健常対象とアルコール性肝炎を患う対象に投与した25HC3Sの薬物動態パラメータの比較を表す図である。
【
図6】
図6は、30 mg、90 mgまたは150 mgの25HC3Sを投与した対象の薬物動態パラメータAUCに対してプロットした、7日目に測定したLilleスコアを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
アルコール性肝炎(AH)を処置するための方法を本明細書中に記載する。該方法は、肝臓を25HC3Sまたはその塩と接触させることを含む。該接触は一般に、ヒト患者に、AHを処置するのに有効または十分である25HC3Sまたはその塩の量を投与することを伴う。
【0069】
前述の通り、本開示の結果は幾つかの理由で驚くべきものである。例えば、幾つかの実施形態における、本開示の低用量は驚くべきものである。さらに、幾つかの実施形態における、低投与頻度は驚くべきものである。さらにまた、幾つかの実施形態における、AHの処置において効果を得るための低用量数は驚くべきものである。かかる低投与量、低投与頻度、および/または低用量数が、より多くの投与量、より頻繁な投与、およびより多くの総用量数を必要とするコルチコステロイドと同様であるかまたはより良好な結果をもたらしうるという点で、本開示の結果はさらに驚くべきものである。さらにまた、本開示は、特定の診断基準、例えばMELDスコアおよび/または本明細書中の他の箇所で検討する他の基準により特徴付けられるAH患者において、有効な結果を得ることもできる。
【0070】
定義
以下の定義を、本明細書全体を通じて使用する:
本明細書中で使用する「処置する(治療する)」(処置(治療)、処置すること(治療すること)など)は、25HC3Sまたはその塩を、以下(1)~(3)、すなわち(1)AHの少なくとも1つの症状を既に示すヒト対象、および/または(2)例えば訓練を受けた臨床専門家により、AHを有すると診断されるヒト対象、および/または(3)1種以上の体液、例えば血液の実験室検査(例えば、分子指標)もしくは臨床検査に基づいてAHを有すると判断されるヒト対象、に投与することを指す。特定の実施形態では、対象は肝組織生検によりAHを有すると診断される。言い換えると、AHと関連することが知られている少なくとも1つのパラメータが、該対象において測定されるか、検出されるかまたは観察される。AHの「処置(治療)」は、25HC3Sまたはその塩の投与前または投与時に存在していたAHの少なくとも1つの症状の、軽減もしくは減弱、または幾つかの例では、完全な根絶を伴う。幾つかの実施形態では、本開示によるAHの処置は、より詳細に後述するように、該対象におけるAHの実験室的または臨床的指標を改善するのに十分なものである。特定の場合には、該対象におけるAHのかかる実験室的または臨床的指標の改善とは、該対象がもはやAHを有していないとみなされるということである。1例では、本開示の方法は、スコア≧32を有する対象のMaddrey判別関数(MDF)スコアを<32であるMDFスコアまで低下させるのに十分なものである。
【0071】
「肝機能障害」は、肝臓がその期待される機能を果たさない容態または健康状態、例えばある特定の生物学的または分子的指標が正常な生理的範囲から外れていると測定される容態または健康状態を意味する。肝機能とは、生理的範囲内にある、肝臓の期待される機能である。当業者は医学検査の際に肝臓の各機能を認識している。肝機能障害は典型的には、場合によっては解剖学的損傷の非存在下で、肝臓における進行性および潜在的に可逆性の生理的機能障害を発症する臨床症候群を伴う。
【0072】
「肝不全」は、外部からの臨床的介入なしには正常な恒常性を維持できない程度までの肝機能障害を意味する。
【0073】
「急性肝機能障害」は、急速に-数日または数週間で(例えば、26週間以内に、13週間以内に、10週間以内に、5週間以内に、4週間以内に、3週間以内に、2週間以内に、1週間以内に、5日以内に、4日以内に、3日以内に、または2日以内に)-通常は基礎疾患がない人において生じる肝機能の低下を指す。
【0074】
「急性肝不全」は、急速に-数日または数週間で(例えば、26週間以内に、13週間以内に、10週間以内に、5週間以内に、4週間以内に、3週間以内に、2週間以内に、1週間以内に、5日以内に、4日以内に、3日以内に、または2日以内に)-通常は基礎疾患がない人において生じる肝機能の喪失を指す。急性肝不全についてはより詳細に後述する。
【0075】
「製薬上許容される」は、活性成分の生物活性の有効性を妨げず、かつ該活性成分を投与するその受容者に対して毒性を示さない物質を指す。
【0076】
患者集団
アルコール性肝炎の概要
アルコール性肝炎(AH)は、異常な臨床検査が疾患の徴候だけである軽度の肝炎から、黄疸(ビリルビン貯留に起因する黄色の皮膚)、肝性脳症(肝不全に起因する神経機能障害)、腹水(腹部の体液蓄積)、出血性食道静脈瘤(食道の静脈瘤)、異常な血液凝固および昏睡などの合併症を伴う重症の肝機能障害まで様々でありうる。場合によっては、患者は過去8週間以内、例えば過去7週間以内、例えば過去6週間以内、例えば過去5週間以内、例えば過去4週間以内、例えば過去3週間以内、例えば過去2週間以内に黄疸を発症し、また該患者が過去1週間以内に黄疸を発症する場合を含む。AHは典型的には、患者が飲酒を止める場合は可逆的であるが、肝炎は通常、消散させるのに数ヶ月かかる。AHは肝瘢痕化および肝硬変を引き起こす可能性がある。肝組織像における典型的な所見としては、肝細胞の壊死および風船様変性、ならびにアルコール性Malloryヒアリン体(線維症の徴候である細胞性中間フィラメントタンパク質の異常な凝集体)が挙げられる。胆汁うっ滞は典型的には顕著である。この疾患の重症度は、Maddrey判別関数(MDF)(ビリルビンおよびプロトロンビン時間に基づくもの)、Glasgowアルコール性肝炎スコア(年齢、白血球数、尿素、プロトロンビン時間およびビリルビンに基づくもの)または末期肝疾患モデル(MELD)スコア(クレアチニン、ビリルビン、およびプロトロンビン時間国際標準比(INR)に基づくもの)に従って分類することができる(Luceyら、N. Engl. J. Med., 360(26), 2758-2769 (2009);Vergisら、Gastroenterology, 152(5):1068-1077 (2017))。該MDFが>32である場合、AHは重症と分類される。
【0077】
アルコール消費
幾つかの場合、前記患者は、例えば、黄疸の発症前の<60日(例えば、<8週間)の禁酒と併せて、最低6ヶ月の期間の、女性で>40 g/日または男性で>60 g/日という重度のアルコール乱用歴がある。長年にわたる過度のアルコール摂取は、アルコール性肝疾患およびAHを引き起こす可能性がある。場合によっては、過度のアルコール摂取は、男性で>80 g/日または女性で>60 g/日のアルコール摂取を伴う。従って、1実施形態は、過度のアルコールを消費する男性対象または女性対象においてAHを処置する際の25HC3Sまたはその塩の使用であり、ここで該男性対象は1日当たり>80 gのアルコールを消費するか、または該女性対象は1日当たり>60 gのアルコールを消費するものとする。他の実施形態では、本開示は、過度のアルコール消費歴がある男性対象または女性対象において、例えば該対象が6ヶ月間以上にわたり平均40 g/日以上消費することを該対象が1回以上経験している場合に、AHを処置または緩和する際の、25HC3Sまたはその塩の使用に向けたものである。特定の実施形態では、該対象は、該対象が6ヶ月間以上にわたり平均 60 g/日以上消費することを1回以上経験している。
【0078】
ビリルビン
AHは、胆道閉塞がない場合の肝臓の代謝機能障害を反映する、ビリルビン上昇を特徴とする。場合によっては、前記患者は血清ビリルビン>3 mg/dLを示す。従って、1実施形態は、25HC3Sまたはその塩の投与前の血清ビリルビン値が>50μmol/L、例えば>60μmol/Lまたは>80μmol/Lである対象においてAHの症状を処置または緩和する際の25HC3Sまたはその塩の使用である。場合によっては、処置される患者は、約2 mg/dL~50 mg/dL、例えば約3 mg/dL~約40 mg/dLまたは約4 mg/dL~約30 mg/dLのビリルビン値を有する。特定の場合には、処置される患者は、>8 mg/dLであるビリルビン値を有すると判断される。
【0079】
幾つかの実施形態では、方法は、処置される前記患者の血清ビリルビンを測定することを含む。該患者の該血清ビリルビンは、任意の簡便なプロトコルを利用して、例えば比色分析または蛍光分析を用いて、測定することができる。これらの実施形態では、該患者の該血清ビリルビンを、本開示の方法に従って該患者を処置する10分以上前、例えば15分以上前、例えば30分以上前、例えば60分以上前、例えば2時間以上前、例えば6時間以上前および例えば12時間以上前に測定してもよい。特定の実施形態では、該患者の該血清ビリルビンを、本明細書中に記載した方法に従って該患者を処置する前日に測定する。
【0080】
幾つかの例では、方法は、本開示の方法による処置の1回以上のサイクル後、例えば2回以上のサイクル後、例えば3回以上のサイクル後、例えば4回以上のサイクル後および例えば5回以上のサイクル後に、前記患者の血清ビリルビンを測定することを含む。これらの実施形態では、該血清ビリルビンを、25HC3Sもしくはその塩の最後に実施した投薬の直後またはその後の所定時間に、例えば25HC3Sもしくはその塩の最後に実施した投薬の5分以上後、例えば10分以上後、例えば15分以上後、例えば30分以上後、例えば60分以上後、例えば2時間以上後、例えば6時間以上後および例えば12時間以上後に測定してもよい。特定の実施形態では、該患者の該血清ビリルビンを、25HC3Sまたはその塩の最後に実施した投薬と同日のある時点で測定する。場合によっては、該患者はビリルビンの急激な増加、例えば、8週間以内に≧3 mg/dLの増加を示す。幾つかの例では、本方法は、例えば対象において血清ビリルビンを1 mg/dL以上、例えば2 mg/dL以上および例えば3 mg/dL以上低下させることにより、該対象の該血清ビリルビンを低下させるのに十分なものである。特定の例では、該対象がビリルビンの急激な増加を示す場合、本方法は、ビリルビンの増加を、上昇した量、例えば1 mg/dL以上、例えば2 mg/dL以上および例えば3 mg/dL以上低下させるのに十分なものである。幾つかの実施形態では、本開示の方法は、該患者において血清ビリルビンを、(例えば、処置の開始から7日または28日後に)本明細書中に記載した25HC3Sまたはその塩による処置の前に測定した血清ビリルビンと比較して10%以上、例えば15%以上、例えば20%以上、例えば25%以上、例えば30%以上、例えば35%以上、例えば40%以上、例えば45%以上および例えば50%以上低下させるのに十分なものである。
【0081】
MELD
末期肝疾患モデル(MELD)は、肝疾患の重症度を評価するためのスコアリングシステムである。上昇するMELDスコアはより高い死亡のリスクを反映しており、一方で低下するMELDスコアはリスクの減少を反映している。MELDは生存を予測するために血清ビリルビン、血清クレアチニン、およびプロトロンビン時間国際標準比(INR)に関する患者の値を利用するものであり、次式:
[数1]
MELD=3.78xln[血清ビリルビン(mg/dL)]+11.2xln[INR]+9.57xln[血清クレアチニン(mg/dL)]+6.43
に従って算出される。
【0082】
場合によっては、前記患者は約11~約40、例えば約11~約35、約11~約33、または約21~約30のMELDスコアを有する。場合によっては、該患者は≧11、例えば≧15または≧21のMELDスコアを有する。場合によっては、該患者は<35、例えば<30、<25、<20、または<15のMELDスコアを有する。従って、1実施形態は、対象においてAHの症状を処置または緩和する際の25HC3Sまたはその塩の使用であって、ここで該対象は、25HC3Sまたはその塩の投与前の約11~約30または約21~約30のMELDスコアにより特徴付けられるものとする。
【0083】
幾つかの実施形態では、方法は、処置される前記患者の前記MELDスコアを測定することを含む。これらの実施形態では、該患者の該MELDスコアを、該患者を本開示の方法に従って処置する10分以上前、例えば15分以上前、例えば30分以上前、例えば60分以上前、例えば2時間以上前、例えば6時間以上前および例えば12時間以上前に測定してもよい。特定の実施形態では、該患者の該MELDスコアを、該患者を本明細書中に記載した方法に従って処置する前日に測定する。
【0084】
幾つかの例では、方法は、前記患者の前記MELDスコアを、本開示の方法による処置の1回以上のサイクル後、例えば2回以上のサイクル後、例えば3回以上のサイクル後、例えば4回以上のサイクル後および例えば5回以上のサイクル後に測定することを含む。これらの実施形態では、該MELDスコアを、25HC3Sもしくはその塩の最後に実施した投薬の直後またはその後の所定時間に、例えば25HC3Sもしくはその塩の最後に実施した投薬の5分以上後、例えば10分以上後、例えば15分以上後、例えば30分以上後、例えば60分以上後、例えば2時間以上後、例えば6時間以上後および例えば12時間以上後に測定してもよい。特定の実施形態では、該患者の該MELDスコアを、25HC3Sまたはその塩の最後に実施した投薬と同日のある時点で測定する。
【0085】
幾つかの実施形態では、本開示の方法は、前記患者により(例えば、処置の開始から7日目または28日目に)示される前記MELDスコアを、本明細書中に記載した25HC3Sまたはその塩による処置の前に測定したMELDスコアと比較して5%以上、例えば10%以上、例えば15%以上および例えば20%以上低下させるのに十分なものである。
【0086】
MDF
Maddrey判別関数(MDF)は、AHの重症度および予後を評価するためのモデルである。該MDFのスコアは、対象の短期予後、特に30または90日以内の死亡率を予測する上で有用な統計モデルである。32以上のスコア(重症型アルコール性肝炎(SAH))は30日死亡率が35%~45%である不良転帰を意味している。対照的に、MDF<32は支持療法により低いがゼロではない死亡リスクを与える、軽度/中等症AHを患う対象を明らかにする。
【0087】
前記MDFは、次式:
[数2]
MDF=4.6 x (プロトロンビン時間(PT患者-PT対照)+血清ビリルビン(μmol/L)/17.1
に従って算出する。
【0088】
従って、1実施形態は、対象においてAHの症状を処置または緩和する際の25HC3Sまたはその塩の使用であり、ここで該対象は、25HC3Sまたはその塩の投与前の≧32のMDFスコアにより特徴付けられるものとする。従って、場合によっては、患者はMDFスコア≧32を有する。他の場合には、該患者はMDFスコア<32を有する。
【0089】
幾つかの実施形態では、方法は、処置される前記患者の前記MDFスコアを測定することを含む。これらの実施形態では、該患者の該MDFスコアを、該患者を本開示の方法に従って処置する10分以上前、例えば15分以上前、例えば30分以上前、例えば60分以上前、例えば2時間以上前、例えば6時間以上前および例えば12時間以上前に測定してもよい。特定の実施形態では、該患者の該MDFスコアを、該患者を本明細書中に記載した方法に従って処置する前日に測定する。
【0090】
幾つかの例では、方法は、前記患者の前記MDFスコアを、本開示の方法による処置の1回以上のサイクル後、例えば2回以上のサイクル後、例えば3回以上のサイクル後、例えば4回以上のサイクル後および例えば5回以上のサイクル後に測定することを含む。これらの実施形態では、該MDFスコアを、25HC3Sもしくはその塩の最後に実施した投薬の直後またはその後の所定時間に、例えば25HC3Sもしくはその塩の最後に実施した投薬の5分以上後、例えば10分以上後、例えば15分以上後、例えば30分以上後、例えば60分以上後、例えば2時間以上後、例えば6時間以上後および例えば12時間以上後に測定してもよい。特定の実施形態では、該患者の該MDFスコアを、25HC3Sまたはその塩の最後に実施した投薬と同日のある時点で測定する。
【0091】
幾つかの実施形態では、本開示の方法は、前記患者により(例えば、処置の開始から7日目または28日目に)示される前記MDFスコアを、本明細書中に記載した25HC3Sまたはその塩による処置の前に測定したMDFスコアと比較して5%以上、例えば10%以上、例えば15%以上および例えば20%以上低下させるのに十分なものである。
【0092】
1実施形態において提供されるのは、対象においてAHの症状を処置または緩和する際の25HC3Sまたはその塩の使用であり、ここで該対象は、25HC3Sまたはその塩の投与前のMDFスコア≧32および<25のMELDスコアにより特徴付けられるものとする。幾つかの例では、本方法は、対象の該MDFスコアを1以上、例えば2以上および例えば5以上低下させるのに十分なものである。特定の例では、本方法は、スコア≧32を有する対象の該MDFスコアを<32であるMDFスコアまで低下させるのに十分なものである。
【0093】
ABIC
前記MDFは1ヶ月の時点で予測するものであるが、これは中期および長期では精度がさほど高くない。前記MELDスコアならびにより最近になって妥当性が検証された年齢、血清ビリルビン、INR、および血清クレアチニン(ABIC)スコアは、腎機能障害を重視することによってより微細な生存予測を与え、また様々な時点で算出することができる。>9のABICスコアは高い死亡リスクを示し、6.71~9は中程度の死亡リスクを示し、かつ<6.71は低い死亡リスクを示す。従って、場合によっては、前記患者は>9または6.71~9のABICスコアを有する。
【0094】
幾つかの実施形態では、方法は、処置される前記患者の前記ABICスコアを測定することを含む。これらの実施形態では、該患者の該ABICスコアを、該患者を本開示の方法に従って処置する10分以上前、例えば15分以上前、例えば30分以上前、例えば60分以上前、例えば2時間以上前、例えば6時間以上前および例えば12時間以上前に測定してもよい。特定の実施形態では、該患者の該ABICスコアを、該患者を本明細書中に記載した方法に従って処置する前日に測定する。
【0095】
幾つかの例では、方法は、前記患者の前記ABICスコアを、本開示の方法による処置の1回以上のサイクル後、例えば2回以上のサイクル後、例えば3回以上のサイクル後、例えば4回以上のサイクル後および例えば5回以上のサイクル後に測定することを含む。これらの実施形態では、該ABICスコアを、25HC3Sもしくはその塩の最後に実施した投薬の直後、またはその後の所定時間に、例えば25HC3Sもしくはその塩の最後に実施した投薬の5分以上後、例えば10分以上後、例えば15分以上後、例えば30分以上後、例えば60分以上後、例えば2時間以上後、例えば6時間以上後および例えば12時間以上後に測定してもよい。特定の実施形態では、該患者の該ABICスコアを、25HC3Sまたはその塩の最後に実施した投薬と同日のある時点で測定する。
【0096】
幾つかの実施形態では、本開示の方法は、前記患者により(例えば、処置の開始から7日目または28日目に)示される前記ABICスコアを、本明細書中に記載した25HC3Sまたはその塩による処置の前に測定したABICスコアと比較して5%以上、例えば10%以上、例えば15%以上および例えば20%以上低下させるのに十分なものである。
【0097】
Glasgow AHスコア
Glasgowアルコール性肝炎スコア(GAHS)は、死亡するリスクがある患者を同定するために使用できる(Forrestら、Gut, 56:1743-1746 (2007))。9以上のスコアにより死亡リスクが最も高い患者が同定される。
【0098】
幾つかの実施形態では、方法は、処置される前記患者の前記GAHSを測定することを含む。これらの実施形態では、該患者の該GAHSを、該患者を本開示の方法に従って処置する10分以上前、例えば15分以上前、例えば30分以上前、例えば60分以上前、例えば2時間以上前、例えば6時間以上前および例えば12時間以上前に測定してもよい。特定の実施形態では、該患者の該GAHSを、該患者を本明細書中に記載した方法に従って処置する前日に測定する。
【0099】
幾つかの例では、方法は、前記患者の前記GAHSを、本開示の方法による処置の1回以上のサイクル後、例えば2回以上のサイクル後、例えば3回以上のサイクル後、例えば4回以上のサイクル後および例えば5回以上のサイクル後に測定することを含む。これらの実施形態では、該GAHSを、25HC3Sもしくはその塩の最後に実施した投薬の直後、またはその後の所定時間に、例えば25HC3Sもしくはその塩の最後に実施した投薬の5分以上後、例えば10分以上後、例えば15分以上後、例えば30分以上後、例えば60分以上後、例えば2時間以上後、例えば6時間以上後および例えば12時間以上後に測定してもよい。特定の実施形態では、該患者の該GAHSを、25HC3Sまたはその塩の最後に実施した投薬と同日のある時点で測定する。
【0100】
幾つかの実施形態では、本開示の方法は、前記患者により(例えば、処置の開始から7日目または28日目に)示される前記GAHSを、本明細書中に記載した25HC3Sまたはその塩による処置の前に測定したGAHSと比較して5%以上、例えば10%以上、例えば15%以上および例えば20%以上低下させるのに十分なものである。
【0101】
従って、前記GAHSスコアを改善することは本開示の1態様である。1実施形態は対象においてAHの症状を処置または緩和する際の25HC3Sまたはその塩の使用であり、ここで該対象は、25HC3Sまたはその塩の最初の投与前と比較した、少なくとも7日目、少なくとも14日目、少なくとも21日目、少なくとも28日目、少なくとも42日目または少なくとも90日目のGAHSスコアの低下により特徴付けられるものとする。別の実施形態は対象においてAHの症状を処置または緩和する際の25HC3Sまたはその塩の使用であり、ここで該対象は、25HC3Sまたはその塩の最初の投与前と比較した、少なくとも7日目、少なくとも14日目、少なくとも21日目、少なくとも28日目、少なくとも42日目または少なくとも90日目のGAHSスコアの低下により特徴付けられるものとする。
【0102】
Lille
Lilleスコアは、AHを患う患者の死亡率を予測するものである。該Lilleスコアは次式:
[数3]
Exp(-R)/[1+exp(-R)]
式中、
R=[3.19-(0.101 * 年齢(歳))]+(1 .47 * ベースラインのアルブミン(g/dL))+[0.28215 * (ベースラインのビリルビン-8日目のビリルビン(mg/dL))]-[0.206 * (ベースラインのクレアチニン>=1 .3 mg/dLの場合)]-[0.11115 * ビリルビンベースライン(mg/dL)]-(0.0096 * ベースラインのプロトロンビン時間(秒))
に従って算出される。
【0103】
従って、前記Lilleスコアを改善することは本開示の1態様である。1実施形態は、対象においてAHの症状を処置または緩和する際の25HC3Sまたはその塩の使用であり、かつここで該対象は、25HC3Sまたはその塩の最初の投与から7日目のLilleスコアの低下により特徴付けられるものとする。さらに別の実施形態では、25HC3Sまたはその塩を投与することを含む、対象においてAHの症状を処置または緩和する際の25HC3Sまたはその塩の使用が提供され、かつここで該対象は、25HC3Sまたはその塩の最初の投与から7日目のLilleスコアの低下により特徴付けられるものとする。場合によっては、前記患者は25HC3Sまたはその塩の最初の投与から7日目に<0.45のLilleスコアを有する。
【0104】
MELD+Lille
AHにおける予測を向上させるために静的および動的モデルを組み合わせることで、Louvetらは、MELD 21およびLille 0.45の患者がMELD 21およびLille 0.16の患者よりも2ヶ月目に1.9倍高い死亡リスクを有していた(23.7%対12.5%)ように、MELD+Lilleの複合効果モデル(joint-effect model)が他の組み合わせよりも優れていることを実証した。従って、場合によっては、前記対象はMELD+Lilleの複合効果モデルの利用によりAHと診断される。
【0105】
場合によっては、前記対象はアルコール性肝炎組織学的スコア(AHHS)の利用によりAHと診断される。該AAHSは4つの組織学的パラメータ、すなわち線維症の程度、好中球浸潤の程度、ビリルビンうっ滞の型、および巨大ミトコンドリアの存在に基づくものである。
【0106】
場合によっては、前記患者はアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)>アラニントランスアミナーゼ(ALT)を示すが、300 IU/L未満である。場合によっては、該患者はAST>50、AST/ALT>1.5を示し、かついずれの値も<400 IU/Lである。
【0107】
特定の実施形態では、前記対象は50~400 IU/Lのアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)を有する。特定の実施形態では、該対象は400 IU/L未満、例えば390 IU/L以下、例えば380 IU/L以下、例えば370 IU/L以下、例えば360 IU/Lおよび例えば350 IU/Lのアラニントランスアミナーゼ(ALT)を有する。特定の実施形態では、該対象はALTより多いASTを有し、例えばその場合はASTとALTの比(すなわち、AST/ALT)は1.05以上、例えば1.1以上、例えば1.15以上、例えば1.2以上、例えば1.25以上、例えば1.3以上、例えば1.35以上、例えば1.4以上、例えば1.45以上および例えば1.5以上(例えば、好ましくはここでAST/ALTは1.5よりも大きい)である。例えば、特定の実施形態では、該対象はこれらの特徴のうちの2つ以上の組み合わせ、例えば50~400 IU/LのAST、400 IU/L未満のALT、および1.5より大きいAST/ALTを有していてもよい。その上、患者は1つ以上の追加の臨床特徴、例えば、過去8週間以内の黄疸の発症、血清総ビリルビン>3.0 mg/dL、12秒の対照プロトロンビン時間を仮定するとMaddrey判別関数≧32、および/または21~30のMELDスコアをさらにまた有していてもよい。
【0108】
場合によっては、前記患者は、約1 g/dL~約5 g/dL、例えば約1 g/dL~約4 g/dLまたは約2 g/dL~約3 g/dLのアルブミン値を有する。
【0109】
場合によっては、前記患者は、約10秒~約30秒、例えば約11秒~約25秒または約15秒~約25秒であるプロトロンビン時間の国際標準比(INR)を有する。幾つかの実施形態では、方法は、処置される該患者の該プロトロンビン時間国際標準比(INR)を測定することを含む。これらの実施形態では、該患者の該プロトロンビン時間国際標準比を、該患者を本開示の方法に従って処置する10分以上前、例えば15分以上前、例えば30分以上前、例えば60分以上前、例えば2時間以上前、例えば6時間以上前および例えば12時間以上前に測定してもよい。特定の実施形態では、該患者の該プロトロンビン時間国際標準比を、該患者を本明細書中に記載した方法に従って処置する前日に測定する。
【0110】
幾つかの例では、方法は、前記患者の前記プロトロンビン時間国際標準比を、本開示の方法による処置の1回以上のサイクル後、例えば2回以上のサイクル後、例えば3回以上のサイクル後、例えば4回以上のサイクル後および例えば5回以上のサイクル後に測定することを含む。これらの実施形態では、該プロトロンビン時間国際標準比を、25HC3Sもしくはその塩の最後に実施した投薬の直後、またはその後の所定時間に、例えば25HC3Sもしくはその塩の最後に実施した投薬の5分以上後、例えば10分以上後、例えば15分以上後、例えば30分以上後、例えば60分以上後、例えば2時間以上後、例えば6時間以上後および例えば12時間以上後に測定してもよい。特定の実施形態では、該患者の該プロトロンビン時間国際標準比を、25HC3Sまたはその塩の最後に実施した投薬と同日のある時点で測定する。
【0111】
幾つかの実施形態では、本開示の方法は、前記患者により(例えば、処置の開始から7日目または28日目に)示される前記プロトロンビン時間国際標準比を、本明細書中に記載した25HC3Sまたはその塩による処置の前に測定したプロトロンビン時間国際標準比と比較して5%以上、例えば10%以上、例えば15%以上および例えば20%以上低下させるのに十分なものである。
【0112】
場合によっては、前記患者は約0.2 mg/dL~約3 mg/dL、例えば約0.4 mg/dL~約2.5 mg/dLまたは約0.6 mg/dL~約2 mg/dLの血清クレアチニン値を有する。幾つかの実施形態では、方法は、処置される該患者の該血清クレアチニン値を測定することを含む。これらの実施形態では、該患者の該血清クレアチニン値を、該患者を本開示の方法に従って処置する10分以上前、例えば15分以上前、例えば30分以上前、例えば60分以上前、例えば2時間以上前、例えば6時間以上前および例えば12時間以上前に測定してもよい。特定の実施形態では、該患者の該血清クレアチニン値を、該患者を本明細書中に記載した方法に従って処置する前日に測定する。
【0113】
幾つかの例では、方法は、前記患者の前記血清クレアチニン値を、本開示の方法による処置の1回以上のサイクル後、例えば2回以上のサイクル後、例えば3回以上のサイクル後、例えば4回以上のサイクル後および例えば5回以上のサイクル後に測定することを含む。これらの実施形態では、該血清クレアチニン値を、25HC3Sもしくはその塩の最後に実施した投薬の直後、またはその後の所定時間に、例えば25HC3Sもしくはその塩の最後に実施した投薬の5分以上後、例えば10分以上後、例えば15分以上後、例えば30分以上後、例えば60分以上後、例えば2時間以上後、例えば6時間以上後および例えば12時間以上後に測定してもよい。特定の実施形態では、該患者の該血清クレアチニン値を、25HC3Sまたはその塩の最後に実施した投薬と同日のある時点で測定する。
【0114】
幾つかの実施形態では、本開示の方法は、前記患者の(例えば、処置の開始から7日目または28日目の)前記血清クレアチニン値を、本明細書中に記載した25HC3Sまたはその塩による処置の前に測定した血清クレアチニン値と比較して2%以上、例えば5%以上、例えば10%以上および例えば15%以上低下させるのに十分なものである。
【0115】
場合によっては、前記患者は慢性肝不全の急性憎悪(ACLF)を呈する急性AHを有する。
【0116】
場合によっては、前記対象は、M65およびM30と称される、サイトケラチン-18(CK-18)およびMallory-Denk体の主成分の循環断片に基づいてAHと診断される。
【0117】
上記を考慮すると、AHの診断(すなわち、AHを発症しておりかつ本方法の実践の恩恵を受けうる対象の同定)は、一般に、例えば、精神状態変化、凝固障害、発症の速度、および既往の肝疾患がないことを確認するための身体検査、検査所見、患者病歴、および既往歴に基づいている。場合によっては、かかるAH患者は、他の過去の肝疾患、例えば、胆汁うっ滞性肝障害、自己免疫性肝障害、活動性ウイルス性肝炎、Wilson病、またはアルコール消費を原因としない他の肝障害を有している場合がある。
【0118】
「急速」の定義は、用られる個別の慣習によって決まる。最初の肝症状の発症から脳症の発症までの時間に基づく、様々な下位区分が存在する。場合によっては、「AH」は、何らかの肝症状の発症の26週間以内の、脳症、黄疸、またはビリルビンの>3 mg/dLまでの増加の発現を伴う。これは、8週間以内の脳症、黄疸、またはビリルビンの>3 mg/dLまでの増加の発症を要件とする「劇症肝不全」と、肝症状から8週間以降であるが26週間より前の脳症、黄疸、またはビリルビンの>3 mg/dLまでの増加の発症を表す「亜劇症」に細分される。他の事例では、「超急性」肝不全を肝症状から7日以内の発症、「急性」肝不全を肝症状から7~28日以内の発症、また「亜急性」肝不全を肝症状から28日~24週間以内の発症と特徴付ける場合がある。これらの基準のいずれかにより急性肝不全を発症していると認められた対象を、本明細書中に記載した方法により処置することができる。
【0119】
幾つかの態様では、本明細書中に記載した方法により処置される対象の集団は、高値コレステロール(高コレステロール血症、例えば、約200 mg/dL以上の範囲内の血清中コレステロール値)もしくは高値コレステロールと関連した状態、例えば、高脂血症、アテローム性動脈硬化症、心疾患、卒中、アルツハイマー病、胆石症、胆汁うっ滞性肝疾患などの症状を有していてもいなくてもよいし、かつ/または該高値コレステロールもしくは該状態と診断されていてもいなくてもよい。幾つかの態様では、本明細書中に記載した方法により処置される対象の集団は、高値コレステロール(高コレステロール血症、例えば、約200 mg/dL以上の範囲内の血清中コレステロール値)もしくは高値コレステロールと関連した状態、例えば、高脂血症、アテローム性動脈硬化症、心疾患、卒中、アルツハイマー病、胆石症、胆汁うっ滞性肝疾患などの症状を有していない、かつ/または該高値コレステロールもしくは該状態と診断されていない。
【0120】
投与の説明
前記方法の実施は、一般に、AHを患う患者を同定すること、および適当な経路により許容される形態で25HC3Sまたはその塩を投与することを含む。投与する正確な総量(例えば、1ヶ月の期間内)は、個々の患者の年齢、性別、体重および全般的な健康状態、ならびに疾患の正確な病因に応じて変動する場合がある。
【0121】
幾つかの実施形態では、前記患者に投与する25HC3Sまたはその塩の前記総量は驚くほど少ない。投与する総量(例えば、1ヶ月の期間内)は、典型的には約0.01 mg/kg~約50 mg/kg、より通常は約0.05 mg/kg~約20 mg/kg、例えば約0.1 mg/kg~約10 mg/kg、約0.2 mg/kg~約6 mg/kg、約0.2 mg/kg~約2 mg/kg、または約0.3 mg/kg~約1.5 mg/kgの、体重kg当たりの25HC3Sまたはその塩である。
【0122】
総量は一般に、約1 mg~約1000 mgの25HC3Sまたはその塩である。幾つかの実施形態では、前記方法において前記患者に(例えば、1ヶ月の期間内に)投与する25HC3Sまたはその塩の該総量は約10 mg~約500 mgである。典型的には、幾つかの実施形態では、該方法において該患者に(例えば、1ヶ月の期間内に)投与する25HC3Sまたはその塩の該総量は約10 mg~約400 mgである。例えば、幾つかの実施形態では、該総量は少なくとも約20 mgである。幾つかの実施形態では、該総量は約300 mg以下、例えば約200 mg以下、またはさらに約140 mg以下である。投与する総量の特定の具体例としては、約10 mg~約500 mg、約10 mg~約400 mg、約20 mg~約300 mg、約20 mg~約200 mg、および約20 mg~約140 mgが挙げられる。該総量は投与の経路、バイオアベイラビリティー、および投与する特定の製剤によって変動する。例えば、静脈内投与の場合、本明細書中に記載の総量は特に有用でありうる。
【0123】
幾つかの実施形態では、(例えば、限定するものではないが、前記25HC3Sまたはその塩を静脈内投与により投与する場合を含め)低い用量数(少ない投与回数)は驚くべきものである。この点に関して、前記方法において投与する25HC3Sまたはその塩の前記総量は、1用量で、または複数の別々の用量で一定期間(例えば、1ヶ月の期間)にわたり投与することができる。幾つかの実施形態では、該総量を、1~15の別々の用量で、例えば、1~5の別々の用量で、例えば1用量または2つの別々の用量で投与する。幾つかの実施形態では、該総量を単一用量で投与する。他の実施形態では、該総量を2つの別々の用量で投与する。本明細書中に記載した全方法において、投与する総量は少なくとも第1の用量を含む(該総量を単一用量で投与する場合には該第1用量が該単一用量であるが、他の実施形態では少なくとも1つのさらなる用量を該第1用量の後に投与する)。
【0124】
幾つかの実施形態では、前記の1以上の別々の用量のうちの少なくとも1つ、および好ましくは各々が、約10 mg~約200 mgの25HC3Sまたはその塩を含む。例えば、幾つかの実施形態では、かかる1以上の別々の用量のうちの少なくとも1つ、および好ましくは各々が、約10 mg~約120 mgの25HC3Sまたはその塩、例えば約20 mg~約100 mgの25HC3Sまたはその塩を含む。具体的な例示投与量としては、以下(a)~(c)、すなわち(a)約20 mg~約40 mgの25HC3Sもしくはその塩(例えば約30 mg)、または(b)約80 mg~約100 mgの25HC3Sもしくはその塩(例えば約90 mg)、または(c)約140 mg~約160 mgの25HC3Sもしくはその塩(例えば約150 mg)、の用量が挙げられる。幾つかの実施形態では、特に有用な投与量は上記(a)または(b)でありうる。幾つかの実施形態では、かかる投与量に関して別々の用量の特に有用な数は、1用量(すなわち、単一用量)または2つの別々の用量でありうる。
【0125】
幾つかの実施形態では、投与の頻度が低いことは驚くべきものである。例えば、幾つかの実施形態では、前記総量を、毎日~週に1回、例えば2日に1回~週に1回、例えば、2日に1回~5日に1回または2日に1回~4日に1回の投与頻度で投与する、2以上の別々の用量で投与する。かかる投与頻度の1例は、約3日に1回の投与である。例えば、前記の別々の用量の総数が2である場合、第2用量を第1用量から1日~1週間後、2日~1週間後、2日~5日後、2日~4日後、または約3日後に投与してもよい。
【0126】
幾つかの実施形態では、前記の1以上の別々の用量を、投与期間(25HC3Sまたはその塩の実際の投与を行う期間を意味する)にわたり投与する。例えば、前記方法が前記総量を、前記第1用量の投与開始から測定した1ヶ月の期間内に投与することを含む場合、結果として該投与期間はその1ヶ月の期間よりも短くなりうる。従って、該投与期間は、幾つかの実施形態では、その後に25HC3Sまたはその塩の投与を行わない「非投与期間」が続き、該投与期間と非投与期間を足すと合計で前記の1ヶ月の期間となる。幾つかのかかる実施形態では、該投与は21日以下、例えば14日以下、例えば、7日以下または5日以下である。
【0127】
上記を考慮すると、1ヶ月の期間内に投与する25HC3Sまたはその塩の前記総量は、約0.01 mg/kg/月~約50 mg/kg/月、より通常は約0.05 mg/kg/月~約20 mg/kg/月、例えば約0.1 mg/kg/月~約10 mg/kg/月、例えば、約0.2 mg/kg/月~約6 mg/kg/月または約0.3 mg/kg/月~約1.5 mg/kg/月でありうる。1ヶ月の期間内に投与する25HC3Sまたはその塩の該総量は、約1 mg/月~約1000 mg/月、約5 mg/月~約600 mg/月、約10 mg/月~約400 mg/月、約20 mg/月~約300 mg/月、約20 mg/月~約200 mg/月、または約20 mg/月~約140 mg/月でありうる。
【0128】
本開示の化合物の前記投与は間欠的であってもよく、または段階的もしくは連続的、一定、もしくは制御された速度であってもよい。
【0129】
投与は、静脈内、筋肉内、および/または皮下注射を含む非経口的経路などの、任意の経路を介していてもよい。投与の経路は処置する状態の性質、例えば、肝障害および/または肝不全の種類または程度によって決まる。例えば、重大な肝機能障害または肝不全が生じる前に迅速な処置を達成するためには、静脈内注射による投与が好ましい場合がある。従って、損傷が既に生じている場合、また特に急性臓器不全と診断される場合、投与の経路は一般に、前記25HC3Sまたはその塩の送達を促進するために非経口または静脈内とする。
【0130】
前記25HC3Sは、純粋な形態で、または適切なエリキシルなど(一般に「担体」と称される)を含む製薬上許容される製剤で、または製薬上許容される塩(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウムもしくはリチウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウムなど)もしくは他の複合体として投与してもよい。例えば、25HC3Sの塩を利用することが好ましい場合があり、25HC3Sのナトリウム塩は1つの例示的なかかる塩である。製薬上許容される製剤が、注射可能な剤形を調製するために従来利用されている液体材料を含むことは理解されたい。該25HC3Sまたはその塩は、典型的には、注射および/または静脈内投与に適した液体である組成物として投与する。投与前の液体への溶解、または懸濁に適した固体形態を調製してもよい。
【0131】
前記の活性成分は、製薬上許容されかつ該活性成分と相溶性がある賦形剤、例えば、製薬上かつ生理学上許容される担体と混合してもよい。適切な賦形剤としては、例えば、水、生理食塩水(塩化ナトリウム)、シクロデキストリン(例えば、ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン)、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、またはそれらの組み合わせが挙げられる。加えて、前記組成物は、少量の補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤(例えば、リン酸緩衝液)などを含有していてもよい。水を組成物(例えば、注射可能な組成物)の調製用の担体として使用してもよく、該組成物は該組成物を等張にするために従来の緩衝剤および薬剤をさらに含んでいてもよい。他の考えられる添加剤および他の材料(好ましくは、一般に安全とみなされている[GRAS]もの)としては、以下、すなわち界面活性剤(TWEEN(登録商標)、オレイン酸など)、溶剤、安定化剤、エリキシル剤、およびカプセル材料(乳糖、リポソーム等)が挙げられる。メチルパラベンまたは塩化ベンザルコニウムなどの防腐剤もまた使用できる。本開示の組成物は、該組成物を意図される投与経路に適した形態で提供するために、任意のかかる追加成分を含有していてもよい。加えて、この化合物を、水性または油性ビヒクルと共に製剤化してもよい。
【0132】
前記製剤によっては、前記25HC3Sまたはその塩が前記組成物の約1 wt%~約99 wt%存在し、かつ媒体となる「担体」が該組成物の約1 wt%~約99 wt%を占めることが予想される。本開示の医薬組成物は、任意の適切な製薬上許容される添加剤または付加物を、それらが前記25HC3Sまたはその塩の治療効果を妨げないかまたは該治療効果に干渉しない程度に含んでいてもよい。
【0133】
場合によっては、前記アルコール性肝炎は、前記対象がアルコール性肝炎を有していない対象と比較して25HC3Sのクリアランス率の低下を示すような肝機能の低下により特徴付けられる。場合によっては、該アルコール性肝炎は、該対象が、アルコール性肝炎を有していない対象による25HC3Sのクリアランス率の50%以下、40%以下、30%以下、または25%以下である25HC3Sのクリアランス率を示すような肝機能の低下により特徴付けられる。ある例示的な、ただし非限的な場合には、アルコール性肝炎を有していない対象による25HC3Sのクリアランス率は、アルコール性肝炎を有する対象では低下したクリアランス率が測定されるのに対し、25 L/hrとみなされる(すなわち、アルコール性肝炎を有する対象は、25 L/hr未満、例えば25 L/hrの50%以下、40%以下、30%以下、または25%以下である25HC3Sのクリアランス率を示す)。
【0134】
場合によっては、前記アルコール性肝炎は、前記対象が、アルコール性肝炎を有していない対象と比較して1.5倍以上大きい、または2倍以上大きい投与後の血漿中の25HC3Sの半減期時間(T1/2)を示すような、肝機能の低下により特徴付けられる。ある例示的な、ただし非限的な場合には、アルコール性肝炎を有していない対象の該半減期時間は、アルコール性肝炎を有する対象ではより大きい半減期時間が測定されるのに対し、1.6時間とみなされる(すなわち、アルコール性肝炎を有する対象は、1.6時間より大きい、例えば1.5倍以上大きい、または2倍以上大きい半減期時間を示す)。場合によっては、最高薬物濃度到達時間(Tmax)は注入、例えば、2時間の注入の終了時である。幾つかの実施形態では、25HC3Sまたはその塩の該半減期(t1/2)は約4~約6時間である。場合によっては、該対象は、約1.5時間~約6時間または約2時間~約5時間である投与後の25HC3Sの半減期時間(T1/2)を示す。
【0135】
場合によっては、25HC3Sまたはその塩の平均クリアランスは約5 L/hr~約7 L/hrである。場合によっては、前記対象は、約2 L~約8 L/h、約2.5 L/h~約7.5 L/h、または約3 L/h~約7 L/hである25HC3Sのクリアランスを示す。
【0136】
場合によっては、前記対象は、約10 L~約50 L、約15 L~約45 L、または約20 L~約40 Lである25HC3Sの分布容積を示す。場合によっては、該対象は、アルコール性肝炎を有していない対象により示される25HC3Sの分布容積(例えば、55 Lとみなしうる)よりも低い-例えば、90%以下、80%以下、70%以下、または60%以下の分布容積を示す。
【0137】
場合によっては、前記対象は、約500 ng/mL~約10,000 ng/mL、約600 ng/mL~約7000 ng/mL、または約700 ng/mL~約5000 ng/mLである25HC3SのCmaxを示す。例えば、場合によっては、該対象は、静脈内投与した25HC3Sまたはその塩100 mg当たり、約500 ng/mL~約10,000 ng/mL、約600 ng/mL~約7000 ng/mLまたは約700 ng/mL~約5000 ng/mLである25HC3SのCmaxを示す。
【0138】
場合によっては、前記対象は、約3000 ng*h/mL~約50,000 ng*h/mL、約4000 ng*h/mL~約40,000 ng*h/mLまたは約5000 ng*h/mL~約30,000 ng*h/mLである25HC3SのAUCinfを示す。例えば、場合によっては、該対象は、静脈内投与した25HC3Sまたはその塩100 mg当たり、約5000 ng*h/mL~約30,000 ng*h/mLまたは約6000 ng*h/mL~約20,000 ng*h/mLである25HC3SのAUCinfを示す。
【0139】
ある実施形態では、25HC3Sまたはその塩を、対象においてAHの症状を処置または緩和するために使用し、ここで該対象は、25HC3Sまたはその塩を投与されていない対象と比較して、25HC3Sまたはその塩の最初の投与から90日後の死亡リスクの低下を示すものとする。特定の実施形態では、25HC3Sまたはその塩を投与されていない対象と比較した、25HC3Sまたはその塩の最初の投与から90日後の死亡リスクは、5%以上、例えば10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上低下し、また該対象が25HC3Sまたはその塩を投与されていない対象と比較して99%以上の25HC3Sまたはその塩の最初の投与から90日後の死亡リスクの低下を示す場合を含む。
【0140】
ある実施形態では、25HC3Sまたはその塩を、対象においてAHの症状を処置または緩和するために使用し、ここで該対象は、25HC3Sまたはその塩を投与されていない対象と比較して、25HC3Sまたはその塩の最初の投与から28日後の死亡リスクの低下を示すものとする。特定の実施形態では、25HC3Sまたはその塩を投与されていない対象と比較した、25HC3Sまたはその塩の最初の投与から28日後の死亡リスクは、5%以上、例えば10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上低下し、また該対象が25HC3Sまたはその塩を投与されていない対象と比較して99%以上の25HC3Sまたはその塩の最初の投与から90日後の死亡リスクの低下を示す場合を含む。
【0141】
特定の実施形態では、本開示の方法および組成物は、25HC3Sまたはその塩を投与されていない対象と比較して、入院期間を短縮するのに十分なものである。幾つかの例では、本開示の方法および組成物は、入院を、例えば1%以上、例えば2%以上、例えば3%以上、例えば4%以上、例えば5%以上、例えば6%以上、例えば7%以上、例えば8%以上、例えば9%以上、例えば10%以上、例えば11%以上、例えば12%以上、例えば13%以上、例えば14%以上、例えば15%以上、例えば16%以上、例えば17%以上、例えば18%以上、例えば19%以上、例えば20%以上、例えば25%以上、例えば30%以上、例えば35%以上短縮するのに十分なものであり、また該入院期間を40%以上短縮することを含む。
【0142】
特定の実施形態では、本開示の方法および組成物は、25HC3Sまたはその塩を投与されていない対象と比較して、集中治療室での処置期間を短縮するのに十分なものである。幾つかの例では、かかる対象方法および組成物は、集中治療室での処置期間を、例えば1%以上、例えば2%以上、例えば3%以上、例えば4%以上、例えば5%以上、例えば6%以上、例えば7%以上、例えば8%以上、例えば9%以上、例えば10%以上、例えば11%以上、例えば12%以上、例えば13%以上、例えば14%以上、例えば15%以上、例えば16%以上、例えば17%以上、例えば18%以上、例えば19%以上、例えば20%以上、例えば25%以上、例えば30%以上、例えば35%以上短縮するのに十分なものであり、またかかる集中治療室での処置期間を40%以上短縮することを含む。
【0143】
本発明を下記実施例によりさらに説明する。これらの実施例は非限定的なものであって、本発明の範囲を制限するものではない。他に明記しない限り、該実施例中に提示される全てのパーセンテージ、部などは重量基準である。
(実施例)
【実施例1】
【0144】
以下により詳細に記載する通り、計19名の患者を非盲検(オープンラベル)第2a相多施設共同試験に登録し、そのうちの15名はMaddrey判別関数(MDF)≧32(重症型アルコール性肝炎(SAH))を示し、12名は21~30のMELDスコアを有し、また11名はベースラインの血清ビリルビン値>8 mg/dLを示した。全患者に、1日目および4日目(まだ入院している場合)に25HC3S(30、90、または150 mg)のIV注入を施し、28日間追跡調査した。最終登録者数は、以下、すなわち30 mgで投与した8名の患者(4名は中等症、および4名は重症)、90 mgで投与した7名の患者(3名は中等症、および4名は重症)、ならびに150 mgで投与した4名の患者(4名重症)から構成される患者19名であった。
【0145】
方法:
試験薬
25HC3Sナトリウム塩溶液は、以下、すなわち
・30 mg/mLの25HC3Sナトリウム塩、
・240 mg/mLのヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン、および
・50 mmoleのリン酸緩衝液
を含有していた。
【0146】
前記25HC3Sナトリウム塩溶液を100 mLの5%デキストロースまたは0.9%塩化ナトリウム輸液で希釈した:
・用量1:100 mLの5%デキストロースまたは0.9%塩化ナトリウム中30 mgの25HC3Sナトリウム塩
・用量2:100 mLの5%デキストロースまたは0.9%塩化ナトリウム中90 mgの25HC3Sナトリウム塩
・用量3:100 mLの5%デキストロースまたは0.9%塩化ナトリウム中150 mgの25HC3Sナトリウム塩。
【0147】
25HC3Sナトリウム塩は、前記の全用量が1日目および4日目に投与されるまで2時間かけてゆっくりとした静脈内注入(50 mL/h)により投与した。患者が第2用量の前に退院基準を満たした場合、該患者には2用量ではなく1用量のみを投与した。
【0148】
試験の手順
前記試験は2つのパートに分けて実施した。パートAには11~20のMELDスコアを有する患者(中等症AH患者)が含まれ、またパートBにはスコア21~30のMELDを有する患者が含まれていた。投与した25HC3Sナトリウム塩の用量は、パートAに関しては30 mgおよび90 mgであり、またパートBに関しては30 mg、90 mgおよび150 mgであり、4名の患者/用量群/パートとした(ただしパートAの90 mgコホートのみ3名の患者とした)。全患者を28日目まで追跡調査した。
【0149】
前記試験は、30 mgの用量レベルで4名の中等症AH患者(パートA)において開始した。投与を完了した後、用量漸増委員会(DEC)が4名の患者全員から得た安全性、忍容性および薬物動態(PK)データを評価し、同じ用量レベルである30 mgで4名の重症型AH患者(パートB)に投与するため、ならびに中等症患者(パートA)において90 mgまで用量レベルを漸増するために先に進むことは安全であると判断した。その後、パートBで4名の患者全員に150 mgの用量を投与するまで同じ用量漸増手順を実施した。
【0150】
前記試験のフローダイアグラムを
図2に示す。各用量コホートに最大4名の対象を登録した。試験対象に、最大2用量の25HC3Sナトリウム塩を投与した。第1用量を1日目に投与し、まだ入院中であれば、第2用量を4日目に投与した。薬物動態(PK)サンプルを、次の時点、すなわち0時間(投与前)、投与開始1時間後、2時間後(注入の終了)、投与開始3時間後、投与開始4時間後、投与開始8時間後、投与開始12時間後、投与開始24時間後および投与開始50時間後に採取した。
【0151】
集団:
1.本臨床試験において、以下a~d、すなわち
a.最低6ヶ月の期間の、重度のアルコール乱用歴:女性で>40 g/日または男性で>60 g/日、および
b.前記試験への参加の12週間以内のアルコール消費、および
c.血清ビリルビン>3 mg/dLかつAST>ALT、ただし300 U/L未満、および
d.MELDスコア11~30(両端の数字を含む)
と定義される、アルコール性肝炎を患う患者。
【0152】
各コホートの前記対象のベースラインとなる検査上の特徴の一覧を下記表に示す。
【表1】
【0153】
評価:
薬力学的(PD)シグナルの評価:
Lilleスコア、MELDスコア、生化学(例えば、ビリルビン)の変化
方法およびタイミング:
Lilleスコアは7日目に算出した
MELDスコアはスクリーニング時、1日目(投与前)、7日目および28日目に算出した
【0154】
生化学および全ての安全性検査パラメータは、スクリーニング時、1日目および4日目の投与前、1日目および4日目の投与完了/注入終了から12時間後、2日目、7日目、28日目、ならびに入院中であれば3、4、5、および6日目に収集した。
安全性シグナルの評価:
安全性は、臨床および検査モニタリングに基づいて判断した。
PKの評価:
各患者から得た25HC3Sの血漿濃度データを使用して、標準線形/対数-台形公式非コンパートメント法を適当なPKデータ解析プログラムと共に利用して測定される関連PKパラメータを算出した。
PKサンプル採取の時点は以下の通りとした(用量1の後のみ):0(投与前)、投与開始の1時間後、投与の2時間後(注入終了)、3時間後、4時間後、8時間後、12時間後、24時間後。
【0155】
結果:
前記25HC3Sは3用量全てにおいて薬物に関連する重篤な有害事象が認められず、安全であった。SAH患者を含む全患者が28日間の追跡期間生存した。患者の一部は1用量を投与され、また一部の患者は2用量を投与された。投与した量は30 mg~300 mgであった。7日目に来院した18名の患者のうち、4名は2用量を投与され、また14名は1用量を投与された。
【0156】
AH患者への薬物曝露(AUCとC
maxの両方)は用量比例性であった。最高薬物濃度到達時間(T
max)は2時間の注入の終了時であった。中等症AHおよび重症型AHを患う対象における25HC3Sナトリウムの平均血漿濃度を、それぞれ
図3Aおよび
図3Bに示す。25HC3Sナトリウムの半減期(t
1/2)は4~6時間であった。25HC3Sナトリウムの平均クリアランスは約5~7 L/hrであった。25HC3SナトリウムのPKパラメータは、中等症と重症型のAH群間で類似していた。各投薬レベルでの中等症AHおよび重症型AHを患う対象におけるPKパラメータの概要を下記表に要約する。中等症AHおよび重症型AHを患う対象に関するCmax(
図4A)およびAUC(
図4B)のプロットを
図4に示す。
【0157】
【0158】
健常対象における25HC3SナトリウムのPKパラメータと比較して、同じ用量レベル(150 mgの単一用量)でAH患者においてC
maxの2倍の増大およびAUCの約5倍の増大が認められた。25HC3Sナトリウムのクリアランスは、以前の研究で得られた健常対象における該クリアランスと比較して、AH患者で80%低下した。健常対象とアルコール性肝炎を患う対象に投与した25HC3Sの薬物動態パラメータの比較を下記表に要約する。健常対象とアルコール性肝炎を患う対象に投与した25HC3Sの血漿濃度の比較を
図5に示す。
【0159】
【0160】
25HC3Sで処置した全AH患者(1名の患者は7日目の来院のために戻らなかった)中、処置への反応者(Lilleスコア<0.45)は89%であり、15名のSAH患者(MDF≧32)中では87%であり、またMELDが21~30である12名の患者中では83%であった。特に、30または90 mgの25HC3Sで処置したSAH患者(n=11)の100%が、下記表に示すように、該処置に反応した。
【0161】
【0162】
患者には1用量のみ、または2用量の25HC3Sを投与したが、SAH患者における28日目のそのMELDスコアはベースラインから有意に低下した(-17.5%、p=0.01)。30または90 mgの25HC3Sで処置したSAH患者における、ベースラインからの28日目のMELDの中央値低下は-19.0%(p=0.01)であった。該25HC3Sは同様に、AH患者において、特にベースラインのビリルビンが>8.0 mg/dLである患者において7日目の血清ビリルビン値を有意に低下させた(-25.1%、p=0.02)。
【0163】
本発明者らのデータを、(本試験のもののように比較DFスコア、プロトロンビン時間、ならびに血清クレアチニン、アルブミンおよびビリルビン値を用いて)145名のAH患者を評価した、LouvetらによりLilleスコアを開発するために使用された一連のデータと比較すると、本発明者らの試験で得たLilleスコアは歴史的データからのLilleスコア、0.24(0.07, 0.60)よりも有意に低く、p<0.0001であった。Louvetら、Hepatology, 45:1348-1354 (2007);およびLouvetら、Gastroenterology, 149:398-406 (2015)。
【0164】
本試験で得た臨床データは同様に、25HC3Sで処置した前記の19名の患者が、Louisville大学(UL)のAH研究での歴史的対照群(n=15)と比較して、ビリルビン(7および28日目)とMELD(28日目)のベースラインからの統計的に有意に大きな低下、ならびに統計的に有意に低いLilleスコアを有していたことも示している。
図1を参照されたい。ULは、初期MELDスコアが15~30である16名のAH患者に支持療法単独(n=9)またはコルチコステロイドと共に支持療法(n=7)を行った匿名データを共有した。25HC3Sを用いた前記の19名のAH患者のうち、1名の患者は7日目に来院しなかったため、Lilleスコアは19名の患者のうち18名についてしか算出できなかった。
【0165】
Lilleスコアは、処置の7日後のAH患者の予後の判定に役立てるために診療に利用される。Lilleスコアが低いほど、該AH患者の予後は良好である。6ヶ月生存率がたった25%しかない、Lilleスコアが0.45を上回る患者と比較して、Lilleスコアが0.45未満の患者は85%の6ヶ月生存率を示す(Louvet Aら、Hepatology, 45:1348-54 (2007))。本試験では、25HC3Sで処置しその7日目に来院した前記18名のAH患者のLilleスコア中央値は0.10であった。89%(16/18)が0.45未満のLilleスコアを有していた。支持療法またはコルチコステロイドと共に支持療法で処置した、前記ULコホートの16名の患者間のLilleスコア中央値は0.41であり、50%(8/16)が0.45未満のLilleスコアを有していた。
【0166】
本試験では、5つのコホート(中等症と重症型AHの両方)から得られた、25HC3Sで処置し、その7日目に来院した全18名のAH患者のLilleスコア中央値は0.10であり、四分位数の範囲は0.04~0.20であった。比較として、Louisville大学(UL)でのコルチコステロイド(標準治療[SOC])使用または不使用の支持療法で処置した16名の患者のコホート間のLilleスコア中央値は0.41(歴史的対照として示す)であって四分位数の範囲は0.14~0.73であり、また1ヶ月または3ヶ月死亡率はそれぞれ12.5%および31.3%であった。処置下で発現する重篤な有害事象は認められなかったことに加えて、25HC3Sを投与されている患者は、SOCで処置した患者より有意に低いLilleスコア、p=0.005を有していた。
【0167】
図6は、30 mgおよび90 mgの25HC3Sナトリウムを投与した中等症AHと診断された対象のAUCに対してプロットした、7日目に測定したLilleスコア、ならびに30 mg、90 mgおよび150 mgの25HC3Sナトリウムを投与した重症型AHと診断された対象のLilleスコアを表している。
図6に示すように、30 mgおよび90 mgの25HC3Sナトリウムを投与した全対象が、7日目に0.45未満のLilleスコアを有していた。150 mgの25HC3Sナトリウムを投与した、重症型AHを患う該対象のうちの2名は、7日目に0.45を上回るLilleスコアを有していた。
【0168】
前記の25HC3Sで処置したAH患者はさらに、7日目に血清総ビリルビン値のベースラインからの、前記UL患者における7日目の-3%と比較して統計的に有意な低下、-14%(n=18)を示した。
【0169】
前記25HC3Sは全患者で良好に忍容され、薬物に関連する重篤な有害事象はいずれの用量レベルでも報告されなかった。薬物曝露は用量比例性であり、また疾患の重症度による影響を受けなかった。
【0170】
結論:
この第2a相試験では、25HC3SはSAH患者を含む全AH患者により試験された前記3用量で良好に忍容された。有害作用による試験薬または試験参加の中断、早期休薬(early withdrawal)または中止はなく、また25HC3Sに関連する重篤な有害作用は認められなかった。全患者が28日の追跡期間を通じて生存していた(すなわち、100%の生存率)。中等症AHおよび重症型AH患者の両方における25HC3Sの薬物動態は、投与した前記用量に関しては類似しており、また用量比例性であった。所与の用量では、25HC3Sの全身クリアランスは、健常対象と比較してAH患者で約5倍低かった。
【0171】
1または2用量の前記の薬物は、処置後7日目の血清ビリルビン値および28日目のMELDスコアを有意に低下させた。30 mgまたは90 mgの25HC3Sを投与した患者で100%の処置反応率(Lilleスコア<0.45)が認められ、かつ全患者で89%の反応率が認められた。25HC3Sで処置した患者のLilleスコアは、比較用の公表済み歴史的データより有意に優れていた。
【実施例2】
【0172】
アルコール性肝炎(AH)を患う患者において25HC3Sの安全性および有効性を評価する無作為化、二重盲検、プラセボ対照、第2b相臨床試験を実施する。
【0173】
試験のデザイン
対象を以下の試験処置群:
【表5】
に1:1:1の比で無作為に割り当てる。
【0174】
前記の割り当てられたIV試験処置(試験薬)の第1用量(1日目の用量)を、前記対象を無作為化した直後に病院環境において投与する。
【0175】
前記の割り当てられたIV試験処置(試験薬)の第2用量を、前記対象がまだ入院中であれば、4日目、または前記第1用量の3日後に投与する。対象が4日目より前に退院基準を満たした場合、該対象には25HC3Sを1用量だけ投与する
【0176】
合計2用量以下のIV注入試験処置(試験薬)を施す。
【0177】
施設の治験担当医師が標準治療の一環としてコルチコステロイド(CS)を使用することを決めた場合、その際は32 mgのメチルプレドニゾロンカプセル(または対応するステロイドプラセボカプセル)を使用すべきである。該CSカプセルまたはプラセボカプセルの投与は、AASLDガイドラインに基づく施設の治験担当医師の判断で、任意の時点で開始してもよく、また同様に、特にその7日目のLilleスコアが>0.45である場合には、任意の時点で中断してもよい。
【0178】
試験薬、投薬量および投与の様式
30および90 mg(の25HC3S遊離酸)の25HC3Sナトリウム塩を100 mLの5%デキストロースまたは0.9%塩化ナトリウムで希釈してから、およそ2時間かけて注入する。
【0179】
滅菌した即時使用可能な注射用25HC3Sを以下の2つのサイズ、すなわち
・13 mmのストッパーおよびクリンプシール付きの単一用量用2 mLガラスバイアル中30 mg/1 mL。
・13 mmのストッパーおよびクリンプシール付きの単一用量用5 mLガラスバイアル中90 mg/3 mL(30 mg/mL)
で供給する。
【0180】
本試験で使用すべきDUR-928注射用製品の濃度は、31.4 mg/mLの前記25HC3Sナトリウム塩に相当する、30 mg/mLの前記25HC3S遊離酸である。
【0181】
前記の25HC3S注射剤またはプラセボを、5%デキストロースまたは0.9%塩化ナトリウム静注液を含有する100 mLの輸液バッグ中で希釈する。この25HC3Sまたはプラセボ溶液を、IV注入によりおよそ2時間かけて前記対象に投与する。
【0182】
対照薬、投薬量および投与の様式:
注射用滅菌水3 mLを100 mLの5%デキストロースまたは0.9%塩化ナトリウムで希釈してから、およそ2時間かけて注入する。
【0183】
集団
本臨床試験において、以下、すなわち
過去8週間以内の黄疸の発症
6ヶ月の期間以上のアルコールの1日の平均消費量が>40(女性)または>60(男性)グラムであり、黄疸の発症前の<8週間の禁酒を含む。毎日および長期間のアルコール摂取ならびに黄疸の発症に関する判断は、施設の治験担当医師によって下される。
血清化学(実施施設(local laboratory)で測定):
血清総ビリルビン>3.0 mg/dL
50<AST<400 IU/L
ALT<400 IU/L
AST/ALT>1.5
12秒の対照プロトロンビン時間を仮定するとMaddrey判別関数≧32
末期肝疾患モデル(MELD)スコア:21~30
と定義される、アルコール性肝炎を患う患者。
【0184】
評価項目
主要評価項目:
実薬群とプラセボ(SOC)群との90日死亡率(時間枠:90日目)
副次評価項目:
前記処置群間の28日死亡率(時間枠:28日目)
前記処置群間の試験薬による処置の開始後7日目のLilleスコア(時間枠:7日目)
前記処置群間の試験薬による処置の開始後28日目のMELDスコア(時間枠:28日目)
28日目のICU滞在日数(時間枠:1日目~28日目)。
【国際調査報告】