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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-28
(54)【発明の名称】ハイブリッド車用の潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/04 20060101AFI20221118BHJP
   C10M 129/34 20060101ALN20221118BHJP
   C10M 129/42 20060101ALN20221118BHJP
   C10M 145/26 20060101ALN20221118BHJP
   C10M 129/72 20060101ALN20221118BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20221118BHJP
   C10N 30/12 20060101ALN20221118BHJP
【FI】
C10M169/04 ZHV
C10M129/34
C10M129/42
C10M145/26
C10M129/72
C10N40:25
C10N30:12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518342
(86)(22)【出願日】2020-09-22
(85)【翻訳文提出日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 IB2020058814
(87)【国際公開番号】W WO2021059115
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】62/905,777
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501381217
【氏名又は名称】シェブロン・オロナイト・テクノロジー・ビー.ブイ.
(71)【出願人】
【識別番号】391050525
【氏名又は名称】シェブロンジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホーへンドールン、リシャール
(72)【発明者】
【氏名】田中 勲
(72)【発明者】
【氏名】レーウェン、イエロン ファン
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BB08A
4H104BB18C
4H104BB33A
4H104BB34A
4H104CA03A
4H104CA04A
4H104CB14C
4H104DA02A
4H104EB04
4H104EB05
4H104EB07
4H104EB08
4H104EB09
4H104EB10
4H104EB11
4H104EB13
4H104EB15
4H104LA06
4H104PA41
(57)【要約】
ハイブリッド車のエンジンの腐食を低減するための内燃エンジン潤滑油組成物を開示する。腐食の低減は、JIS K2246試験法によって特定することができる。ハイブリッド車のエンジンの腐食を低減するための該潤滑油組成物の使用方法もまた開示する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む内燃エンジン潤滑油組成物:
a.主要量の潤滑粘度の油、
b.カルボン酸官能基、エステル官能基、または無水物官能基を含む式(I)または(II)で表される1つ以上の化合物、
【化1】

式中、各R、R、R、及びRは、独立して、水素ラジカル、ヒドロカルビルラジカル、またはヒドロカルビレンラジカルであり、各R及びRは、独立して、水素ラジカル、ヒドロカルビルラジカル、またはヒドロカルビレンラジカルであり、R、R、R、及びRのうちの少なくとも1つは、ヒドロカルビルまたはヒドロカルビレンラジカルであるもの、ならびに
c.式(III)または(IV)で表されるポリアルコキシル化ヒドロカルビルフェノール:

【化2】

式中、各Rは、独立して、1~250個の炭素原子のヒドロカルビルまたはヒドロカルビレンラジカルであり、各R及びRは、独立して、水素ラジカル、1~6個の炭素原子のヒドロカルビルラジカル、または1~6個の炭素原子のヒドロカルビレンラジカルであり、R10は、水素ラジカル、1~24個の炭素原子のヒドロカルビルラジカル、1~24個の炭素原子のヒドロカルビレンラジカル、または-C(=O)R11で表されるアシルラジカルであり、R11は、1~24個の炭素原子のヒドロカルビルまたはヒドロカルビレンラジカルであり、R12及びR13は、独立して、水素ラジカル、1~24個の炭素原子のヒドロカルビルラジカル、または1~24個の炭素原子のヒドロカルビレンラジカルであり、nは、1~3であり、mは、1~50であり、pは、1~50であるもの。
【請求項2】
前記潤滑油が、JIS K2246試験によって特定されるハイブリッド車のエンジンの腐食を低減する、請求項1に記載の潤滑油組成物であって、前記JIS K2246が、試験流体中での金属片の錆の発生を測定する、前記潤滑油組成物。
【請求項3】
前記試験流体が水を含む、請求項2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
前記試験流体が約10体積%の水を含む、請求項3に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
カルボン酸官能基、エステル官能基、または無水物官能基を含む前記1つ以上の化合物が、前記潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.05~約3.0重量%に及ぶ量で存在する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
前記ポリアルコキシル化ヒドロカルビルフェノールが、前記潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.05~約3.0重量%に及ぶ量で存在する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
さらに、酸化防止剤、摩耗防止剤、界面活性剤、防錆剤、曇り除去剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、摩擦調整剤、流動点降下剤、消泡剤、共溶媒、防食剤、分散剤、多機能性剤、染料、または極圧剤を含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
以下を含む潤滑油組成物で、ハイブリッドエンジンを潤滑及び運転することを含む、ハイブリッドエンジンの腐食を低減する方法:
a.主要量の潤滑粘度の油、
b.カルボン酸官能基、エステル官能基、または無水物官能基を含む式(I)または(II)で表される1つ以上の化合物、

【化3】

式中、各R、R、R、及びRは、独立して、水素ラジカル、ヒドロカルビルラジカル、またはヒドロカルビレンラジカルであり、各R及びRは、独立して、水素ラジカル、ヒドロカルビルラジカル、またはヒドロカルビレンラジカルであり、R、R、R、及びRのうちの少なくとも1つは、ヒドロカルビルまたはヒドロカルビレンラジカルであるもの、ならびに
c.式(III)または(IV)で表されるポリアルコキシル化ヒドロカルビルフェノール:

【化4】

式中、各Rは、独立して、1~250個の炭素原子のヒドロカルビルまたはヒドロカルビレンラジカルであり、各R及びRは、独立して、水素ラジカル、1~6個の炭素原子のヒドロカルビルラジカル、または1~6個の炭素原子のヒドロカルビレンラジカルであり、R10は、水素ラジカル、1~24個の炭素原子のヒドロカルビルラジカル、1~24個の炭素原子のヒドロカルビレンラジカル、または-C(=O)R11で表されるアシルラジカルであり、R11は、1~24個の炭素原子のヒドロカルビルまたはヒドロカルビレンラジカルであり、R12及びR13は、独立して、水素ラジカル、1~24個の炭素原子のヒドロカルビルラジカル、または1~24個の炭素原子のヒドロカルビレンラジカルであり、nは、1~3であり、mは、1~50であり、pは、1~50であるもの。
【請求項9】
前記潤滑油が、JIS K2246試験によって特定されるハイブリッド車のエンジンの腐食を低減する、請求項8に記載の方法であって、前記JIS K2246が、試験流体中での金属片の錆の発生を測定する、前記方法。
【請求項10】
前記試験流体が水を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記試験流体が約10体積%の水を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記潤滑油が、さらに、酸化防止剤、摩耗防止剤、界面活性剤、防錆剤、曇り除去剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、摩擦調整剤、流動点降下剤、消泡剤、共溶媒、防食剤、分散剤、多機能性剤、染料、または極圧剤を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
カルボン酸官能基、エステル官能基、または無水物官能基を含む前記1つ以上の化合物が、前記潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.05~約3.0重量%に及ぶ量で存在する、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリアルコキシル化ヒドロカルビルフェノールが、前記潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.05~約3.0重量%に及ぶ量で存在する、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
水及び燃料が混入している潤滑油が、ハイブリッドエンジンの腐食を低減する能力を改善する方法であって、請求項1に記載の潤滑油組成物で、前記エンジンを潤滑及び運転することを含む、前記方法。
【請求項16】
請求項1に記載の潤滑剤組成物で、ハイブリッドエンジンを潤滑及び運転することを含む、ハイブリッドエンジン潤滑油の腐食を低減する方法
【請求項17】
以下を含む、ハイブリッドエンジンの腐食及び/または錆を低減する方法:
a.請求項1に記載の潤滑油組成物を提供すること、
b.前記組成物で前記ハイブリッドエンジンを潤滑すること、及び
c.前記エンジンを運転すること。
【請求項18】
a.主要量の潤滑粘度の油、
b.カルボン酸官能基、エステル官能基、または無水物官能基を含む式(I)または(II)で表される1つ以上の化合物、

【化5】

式中、各R、R、R、及びRは、独立して、水素ラジカル、ヒドロカルビルラジカル、またはヒドロカルビレンラジカルであり、各R及びRは、独立して、水素ラジカル、ヒドロカルビルラジカル、またはヒドロカルビレンラジカルであり、R、R、R、及びRのうちの少なくとも1つは、ヒドロカルビルまたはヒドロカルビレンラジカルであるもの、ならびに
c.式(III)または(IV)で表されるポリアルコキシル化ヒドロカルビルフェノール:

【化6】

式中、各Rは、独立して、1~250個の炭素原子のヒドロカルビルまたはヒドロカルビレンラジカルであり、各R及びRは、独立して、水素ラジカル、1~6個の炭素原子のヒドロカルビルラジカル、または1~6個の炭素原子のヒドロカルビレンラジカルであり、R10は、水素ラジカル、1~24個の炭素原子のヒドロカルビルラジカル、1~24個の炭素原子のヒドロカルビレンラジカル、または-C(=O)R11で表されるアシルラジカルであり、R11は、1~24個の炭素原子のヒドロカルビルまたはヒドロカルビレンラジカルであり、R12及びR13は、独立して、水素ラジカル、1~24個の炭素原子のヒドロカルビルラジカル、または1~24個の炭素原子のヒドロカルビレンラジカルであり、nは、1~3であり、mは、1~50であり、pは、1~50であるものを含む潤滑油組成物の使用であって、
前記潤滑油組成物は、JIS K2246試験法で特定されるハイブリッド車のエンジンの腐食を低減する、前記使用。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
現代の潤滑油は、多くの場合、相手先ブランド供給業者によって設定される厳しい仕様に合わせて配合されている。この厳しい仕様を満たすために、慎重に選択された潤滑油添加剤が潤滑粘度の基油とブレンドされる。通常の潤滑油組成物は、例えば、分散剤、界面活性剤、酸化防止剤、摩耗防止剤、防錆剤、防食剤、発泡防止剤、及び/または摩擦調整剤を含み得る。特定の用途または使用(例えば、ハイブリッド車)によって、潤滑油組成物に含まれる添加剤の組み合わせが決定される。
【0002】
ハイブリッド車は、内燃エンジンと電気モーターという明確に異なる2つのタイプの動力技術に依存している。内燃エンジンは、主に高速で車両を駆動する。電気モーターは、低速で車両を駆動し、追加の力が必要な場合に内燃エンジンを支援することもできる。ハイブリッド車は、車速が上がるにつれてエンジン及びモーターからの力をバランスよく分配することが重要である。
【0003】
ハイブリッド車は通常、アイドリングストップシステムを採用しており、車両が停止するとエンジンが停止し、モーターまたはブレーキのみで車両が駆動されているときには、エンジン燃料系統が一時停止する。その結果として、エンジンが水及び燃料を十分に蒸発させることができないため、水及び燃料が油に蓄積することが問題となる。これにより、不安定なエマルジョンが形成され、これがエンジンの性能に悪影響を及ぼし、エンジン部品の腐食を引き起こす。
【0004】
ハイブリッド車と従来の自動車は大きく異なるため、従来のエンジン油は、ハイブリッド車での使用に最適化されていない。結果として、ハイブリッド車用に特別に設計された潤滑油組成物が必要とされている。特に、ハイブリッド車のエンジン部品の防食を改善する潤滑油組成物が必要である。
【発明の概要】
【0005】
ある実施形態によれば、本発明は、以下を含む内燃エンジン潤滑油組成物を提供する:(a)主要量の潤滑粘度の油、(b)カルボン酸官能基、エステル官能基、または無水物官能基を含む式(I)または(II)で表される1つ以上の化合物、

【化1】

式中、各R、R、R、及びRは、独立して、水素ラジカル、ヒドロカルビルラジカル、またはヒドロカルビレンラジカルであり、各R及びRは、独立して、水素ラジカル、ヒドロカルビルラジカル、またはヒドロカルビレンラジカルであり、R、R、R、及びRのうちの少なくとも1つは、ヒドロカルビルまたはヒドロカルビレンラジカルであるもの、ならびに(c)式(III)または(IV)で表されるポリアルコキシル化ヒドロカルビルフェノール:

【化2】

式中、各Rは、独立して、1~250個の炭素原子のヒドロカルビルまたはヒドロカルビレンラジカルであり、各R及びRは、独立して、水素ラジカル、1~6個の炭素原子のヒドロカルビルラジカル、または1~6個の炭素原子のヒドロカルビレンラジカルであり、R10は、水素ラジカル、1~24個の炭素原子のヒドロカルビルラジカル、1~24個の炭素原子のヒドロカルビレンラジカル、または-C(=O)R11で表されるアシルラジカルであり、R11は、1~24個の炭素原子のヒドロカルビルまたはヒドロカルビレンラジカルであり、R12及びR13は、独立して、水素ラジカル、1~24個の炭素原子のヒドロカルビルラジカル、または1~24個の炭素原子のヒドロカルビレンラジカルであり、nは、1~3であり、mは、1~50であり、pは、1~50であるもの。
【0006】
別の実施形態によれば、本発明は、以下を含む潤滑油組成物で、ハイブリッドエンジンを潤滑及び運転することを含む、ハイブリッドエンジンの腐食を低減する方法を提供する:(a)主要量の潤滑粘度の油、(b)カルボン酸官能基、エステル官能基、または無水物官能基を含む式(I)または(II)で表される1つ以上の化合物、

【化3】

式中、各R、R、R、及びRは、独立して、水素ラジカル、ヒドロカルビルラジカル、またはヒドロカルビレンラジカルであり、各R及びRは、独立して、水素ラジカル、ヒドロカルビルラジカル、またはヒドロカルビレンラジカルであり、R、R、R、及びRのうちの少なくとも1つは、ヒドロカルビルまたはヒドロカルビレンラジカルであるもの、ならびに(c)式(III)または(IV)で表されるポリアルコキシル化ヒドロカルビルフェノール:

【化4】

式中、各Rは、独立して、1~250個の炭素原子のヒドロカルビルまたはヒドロカルビレンラジカルであり、各R及びRは、独立して、水素ラジカル、1~6個の炭素原子のヒドロカルビルラジカル、または1~6個の炭素原子のヒドロカルビレンラジカルであり、R10は、水素ラジカル、1~24個の炭素原子のヒドロカルビルラジカル、1~24個の炭素原子のヒドロカルビレンラジカル、または-C(=O)R11で表されるアシルラジカルであり、R11は、1~24個の炭素原子のヒドロカルビルまたはヒドロカルビレンラジカルであり、R12及びR13は、独立して、水素ラジカル、1~24個の炭素原子のヒドロカルビルラジカル、または1~24個の炭素原子のヒドロカルビレンラジカルであり、nは、1~3であり、mは、1~50であり、pは、1~50であるもの。
【0007】
さらに別の実施形態によれば、本発明は、(a)主要量の潤滑粘度の油、(b)カルボン酸官能基、エステル官能基、または無水物官能基を含む式(I)または(II)で表される1つ以上の化合物、

【化5】

式中、各R、R、R、及びRは、独立して、水素ラジカル、ヒドロカルビルラジカル、またはヒドロカルビレンラジカルであり、各R及びRは、独立して、水素ラジカル、ヒドロカルビルラジカル、またはヒドロカルビレンラジカルであり、R、R、R、及びRのうちの少なくとも1つは、ヒドロカルビルまたはヒドロカルビレンラジカルであるもの、ならびに(c)式(III)または(IV)で表されるポリアルコキシル化ヒドロカルビルフェノール:

【化6】

式中、各Rは、独立して、1~250個の炭素原子のヒドロカルビルまたはヒドロカルビレンラジカルであり、各R及びRは、独立して、水素ラジカル、1~6個の炭素原子のヒドロカルビルラジカル、または1~6個の炭素原子のヒドロカルビレンラジカルであり、R10は、水素ラジカル、1~24個の炭素原子のヒドロカルビルラジカル、1~24個の炭素原子のヒドロカルビレンラジカル、または-C(=O)R11で表されるアシルラジカルであり、R11は、1~24個の炭素原子のヒドロカルビルまたはヒドロカルビレンラジカルであり、R12及びR13は、独立して、水素ラジカル、1~24個の炭素原子のヒドロカルビルラジカル、または1~24個の炭素原子のヒドロカルビレンラジカルであり、nは、1~3であり、mは、1~50であり、pは、1~50であるものを含む潤滑油組成物の使用を提供し、該潤滑油組成物は、JIS K2246試験法によって特定されるハイブリッド車のエンジンの腐食を低減する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示は、様々な修正及び代替形態を受け入れるが、特定の実施形態を本明細書に詳細に説明する。しかしながら、本明細書における特定の実施形態の説明は、本開示を、開示する特定の形態に限定することを意図していないどころか、その目的は、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の趣旨及び範囲に含まれるすべての修正物、均等物、及び代替物を対象とすることであることを理解されたい。
【0009】
本明細書に開示する発明主題の理解を容易にするため、本明細書で使用されるいくつかの用語、略語または他の省略形を以下に定義する。定義されていない任意の用語、略語または省略形は、本出願の提出と同時期の当業者が使用する通常の意味を有すると理解される。
【0010】
定義
本明細書で使用される、以下の用語は、特段の明示的な記載がない限り、以下の意味を有する。
【0011】
「主要量」とは、組成物の50重量%を超えることを意味する。
【0012】
「少量」とは、組成物に存在する規定の添加剤に関して及びすべての添加剤の全質量に関して添加剤(複数可)の活性成分として計算して表される、組成物の50重量%未満を意味する。
【0013】
「活性成分」もしくは「活性」または「オイルフリー」とは、希釈剤または溶媒ではない添加剤物質を指す。
【0014】
報告されているすべてのパーセンテージは、特に明記しない限り、活性成分に基づく(すなわち、担体または希釈油にかかわらない)重量%である。
【0015】
本明細書に言及するすべてのASTM規格は、本出願の出願日現在の最新のバージョンである。
【0016】
本発明は、以下を含む内燃エンジン潤滑油組成物を提供する:
a.主要量の潤滑粘度の油、
b.カルボン酸官能基、エステル官能基、または無水物官能基を含む式(I)または(II)で表される1つ以上の化合物、

【化7】

式中、各R、R、R、及びRは、独立して、水素ラジカル、ヒドロカルビルラジカル、またはヒドロカルビレンラジカルであり、各R及びRは、独立して、水素ラジカル、ヒドロカルビルラジカル、またはヒドロカルビレンラジカルであり、R、R、R、及びRのうちの少なくとも1つは、ヒドロカルビルまたはヒドロカルビレンラジカルであるもの、ならびに
c.式(III)または(IV)で表されるポリアルコキシル化ヒドロカルビルフェノール:

【化8】

式中、各Rは、独立して、1~250個の炭素原子のヒドロカルビルまたはヒドロカルビレンラジカルであり、各R及びRは、独立して、水素ラジカル、1~6個の炭素原子のヒドロカルビルラジカル、または1~6個の炭素原子のヒドロカルビレンラジカルであり、R10は、水素ラジカル、1~24個の炭素原子のヒドロカルビルラジカル、1~24個の炭素原子のヒドロカルビレンラジカル、または-C(=O)R11で表されるアシルラジカルであり、R11は、1~24個の炭素原子のヒドロカルビルまたはヒドロカルビレンラジカルであり、R12及びR13は、独立して、水素ラジカル、1~24個の炭素原子のヒドロカルビルラジカル、または1~24個の炭素原子のヒドロカルビレンラジカルであり、nは、1~3であり、mは、1~50であり、pは、1~50であるもの。該潤滑油組成物は、ハイブリッド車のエンジンの腐食を低減する。腐食の低減は、修正JIS K2246法(実施例に記載)によって特定することができる。
【0017】
本発明は、以下を含む潤滑油組成物で、ハイブリッドエンジンを潤滑及び運転することを含む、ハイブリッドエンジンの腐食を低減する方法を提供する:
a.主要量の潤滑粘度の油、
b.カルボン酸官能基、エステル官能基、または無水物官能基を含む式(I)または(II)で表される1つ以上の化合物、
【化9】

式中、各R、R、R、及びRは、独立して、水素ラジカル、ヒドロカルビルラジカル、またはヒドロカルビレンラジカルであり、各R及びRは、独立して、水素ラジカル、ヒドロカルビルラジカル、またはヒドロカルビレンラジカルであり、R、R、R、及びRのうちの少なくとも1つは、ヒドロカルビルまたはヒドロカルビレンラジカルであるもの、ならびに
c.式(III)または(IV)で表されるポリアルコキシル化ヒドロカルビルフェノール:

【化10】

式中、各Rは、独立して、1~250個の炭素原子のヒドロカルビルまたはヒドロカルビレンラジカルであり、各R及びRは、独立して、水素ラジカル、1~6個の炭素原子のヒドロカルビルラジカル、または1~6個の炭素原子のヒドロカルビレンラジカルであり、R10は、水素ラジカル、1~24個の炭素原子のヒドロカルビルラジカル、1~24個の炭素原子のヒドロカルビレンラジカル、または-C(=O)R11で表されるアシルラジカルであり、R11は、1~24個の炭素原子のヒドロカルビルまたはヒドロカルビレンラジカルであり、R12及びR13は、独立して、水素ラジカル、1~24個の炭素原子のヒドロカルビルラジカル、または1~24個の炭素原子のヒドロカルビレンラジカルであり、nは、1~3であり、mは、1~50であり、pは、1~50であるもの。腐食の低減は、実施例に記載のJIS K2246試験によって特定することができる。
【0018】
同様に提供するのは、
a.主要量の潤滑粘度の油、
b.カルボン酸官能基、エステル官能基、または無水物官能基を含む式(I)または(II)で表される1つ以上の化合物、

【化11】

式中、各R、R、R、及びRは、独立して、水素ラジカル、ヒドロカルビルラジカル、またはヒドロカルビレンラジカルであり、各R及びRは、独立して、水素ラジカル、ヒドロカルビルラジカル、またはヒドロカルビレンラジカルであり、R、R、R、及びRのうちの少なくとも1つは、ヒドロカルビルまたはヒドロカルビレンラジカルであるもの、ならびに
c.式(III)または(IV)で表されるポリアルコキシル化ヒドロカルビルフェノール:

【化12】

式中、各Rは、独立して、1~250個の炭素原子のヒドロカルビルまたはヒドロカルビレンラジカルであり、各R及びRは、独立して、水素ラジカル、1~6個の炭素原子のヒドロカルビルラジカル、または1~6個の炭素原子のヒドロカルビレンラジカルであり、R10は、水素ラジカル、1~24個の炭素原子のヒドロカルビルラジカル、1~24個の炭素原子のヒドロカルビレンラジカル、または-C(=O)R11で表されるアシルラジカルであり、R11は、1~24個の炭素原子のヒドロカルビルまたはヒドロカルビレンラジカルであり、R12及びR13は、独立して、水素ラジカル、1~24個の炭素原子のヒドロカルビルラジカル、または1~24個の炭素原子のヒドロカルビレンラジカルであり、nは、1~3であり、mは、1~50であり、pは、1~50であるものを含む、内燃エンジンを潤滑するための潤滑油組成物の使用であり、該潤滑油組成物は、JIS K2246法によって特定されるハイブリッド車のエンジンの腐食を低減する。
【0019】
潤滑粘度の油
潤滑粘度の油(「ベースストック」または「基油」と呼ばれることもある)は、潤滑剤の主液体成分であり、そこに添加剤及び場合によっては他の油がブレンドされて、最終的な潤滑剤(または潤滑剤組成物)が生成される。基油は、濃縮物を作製するため、及びそこから潤滑油組成物を作製するために有用であり、天然及び合成潤滑油ならびにそれらの組み合わせから選択され得る。
【0020】
天然油としては、動植物油、液体の石油ならびにパラフィン系、ナフテン系及び混合パラフィン・ナフテン系タイプの水素化精製された溶剤処理鉱油系潤滑油が挙げられる。石炭または頁岩から得られる潤滑粘度の油もまた有用な基油である。
【0021】
合成潤滑油としては、炭化水素油、例えば、重合及び共重合オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン-イソブチレンコポリマー、塩素化ポリブチレン、ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、ポリ(1-デセン)、アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2-エチルヘキシル)ベンゼン、ポリフェノール(例えば、ビフェニル、テルフェニル、アルキル化ポリフェノール)、ならびにアルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィドならびにそれらの誘導体、類似体及び相同体が挙げられる。
【0022】
別の適切なクラスの合成潤滑油は、ジカルボン酸(例えば、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、アジピン酸、リノール酸二量体、フタル酸)と様々なアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール)とのエステルを含む。これらのエステルの具体例としては、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)、フマル酸ジ-n-ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸二量体の2-エチルヘキシルジエステル、ならびにセバシン酸1モルとテトラエチレングリコール2モル及び2-エチルヘキサン酸2モルを反応させることによって形成される複合エステルが挙げられる。
【0023】
合成油として有用なエステルとしてはまた、C-C12モノカルボン酸とポリオール、及びポリオールエーテル、例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及びトリペンタエリスリトールから作製されるものも挙げられる。
【0024】
該基油は、フィッシャー・トロプシュ合成炭化水素から得られる場合もある。フィッシャー・トロプシュ合成炭化水素は、H及びCOを含む合成ガスから、フィッシャー・トロプシュ触媒を使用して作製される。かかる炭化水素は、通常、基油として有用にするためにさらなる処理が必要である。例えば、該炭化水素は、当業者に既知の方法を使用して、水素化異性化される場合も、水素化分解及び水素化異性化される場合も、脱脂される場合も、水素化異性化及び脱脂される場合もある。
【0025】
未精製油、精製油及び再精製油を、本潤滑油組成物に使用することができる。未精製油とは、さらなる精製処理をすることなく天然または合成源から直接得られるものである。例えば、乾留操作から直接得られるシェールオイル、蒸留から直接得られる石油、またはエステル化工程から直接得られ、さらなる処理をすることなく使用されるエステル油は、未精製油である。精製油は、1つ以上の特性を改善するために1つ以上の精製ステップでさらに処理されていること以外は、未精製油と同様である。多くのかかる精製技術、例えば、蒸留、溶媒抽出、酸または塩基抽出、濾過及び浸透は、当業者に既知である。
【0026】
再精製油は、精製油を得るために使用されるものと同様の工程によって、すでに使用された精製油に適用して得られる。かかる再精製油は、再生油または再加工油としても知られており、多くの場合、使用済み添加剤及び油の分解産物の承認のための技術によってさらに加工される。
【0027】
従って、本潤滑油組成物を作製するために使用され得る基油は、米国石油協会(API)Base Oil Interchangeability Guidelines(API Publication 1509)に定められているグループI~Vの基油のいずれかから選択され得る。かかる基油のグループを、以下の表1に要約する。

【表1】
【0028】
本明細書での使用に適した基油は、APIのグループII、グループIII、グループIV及びグループVの油ならびにそれらの組み合わせ、好ましくは、それらの優れた揮発性、安定性、粘度特性及び清浄特性から、グループIII~グループVの油に対応する種類のいずれかである。
【0029】
本開示の潤滑油組成物に使用するための潤滑粘度の油は、基油とも呼ばれ、通常、主要量、例えば、組成物の総重量に基づいて、50重量%を超える量、好ましくは、約70重量%を超える量、より好ましくは、約80~約99.5重量%、最も好ましくは、約85~約98重量%の量で存在する。本明細書で使用される、「基油」という表現は、単一の製造業者によって同じ仕様で製造され(供給源または製造業者の場所に関係なく)、同じ製造業者の仕様を満たし、独自の処方、製品識別番号、またはその両方によって識別される潤滑剤成分であるベースストックまたはベースストックのブレンドを意味すると理解されるものとする。本明細書で使用する基油は、例えば、エンジン油、船舶用シリンダー油、機能液、例えば、作動油、ギヤ油、トランスミッション液等のありとあらゆる用途のための潤滑油組成物を配合する際に使用される任意の現在既知のまたは後に発見される潤滑粘度の油であり得る。さらに、本明細書で使用する基油は、任意に、粘度指数向上剤、例えば、アルキルメタクリレートポリマー、オレフィン系コポリマー、例えば、エチレン-プロピレンコポリマーまたはスチレン-ブタジエンコポリマー等、及びそれらの混合物を含むことができる。
【0030】
当業者には容易に理解されるように、基油の粘度は、その用途に左右される。従って、本明細書で使用する基油の粘度は、通常、摂氏100°(C.)で約2~約2000センチストークス(cSt)に及ぶ。一般に、エンジン油として使用される基油は、個別に、100℃.で約2cSt~約30cSt、好ましくは、約3cSt~約16cSt、最も好ましくは、約4cSt~約12cStの動粘度範囲を有し、所望の最終用途及び完成油中の添加剤に応じて選択またはブレンドされ、所望の等級のエンジン油、例えば、SAE粘度等級0W、0W-8、0W-12、0W-16、0W-20、0W-26、0W-30、0W-40、0W-50、0W-60、5W、5W-20、5W-30、5W-40、5W-50、5W-60、10W、10W-20、10W-30、10W-40、10W-50、15W、15W-20、15W-30、15W-40、30、40等を有する潤滑油組成物が得られる。
【0031】
カルボン酸、エステル、及び無水物化合物
1つの態様では、本開示は、カルボン酸官能基、エステル官能基、または無水物官能基を含む式(I)または(II)で表される1つ以上の化合物を提供し、
【化13】

式中、各R、R、R、及びRは、独立して、水素ラジカル、ヒドロカルビルラジカル、またはヒドロカルビレンラジカルであり、各R及びRは、水素ラジカル、ヒドロカルビルラジカル、またはヒドロカルビレンラジカルであり、R、R、R、及びRのうちの少なくとも1つは、ヒドロカルビルまたはヒドロカルビレンラジカルである。
【0032】
1つの実施形態では、R、R、R、及びRに関して記載されるヒドロカルビル及びヒドロカルビレンラジカルは、独立して、1~400個の炭素、例えば、1~300個の炭素原子、1~200個の炭素原子、1~100個の炭素原子、1~50個の炭素原子、1~30個の炭素原子、または1~25個の炭素原子を有するアルキルまたはアルキレンラジカルであり得る。R、R、R、及びRに関して、該アルキルまたはアルキレンラジカルとしては、脂肪酸部分(すなわち、脂肪酸由来のもの)、またはイソ脂肪族酸部分(例えば、8-メチルオクタデカン酸由来のもの)が挙げられる。1つの実施形態では、R、R、R、及びRのうちの少なくとも1つは、ドデセニルラジカルである。1つの実施形態では、R、R、R、及びRのうちの少なくとも1つは、オクタデセニルラジカルである。1つの実施形態では、R、R、R、及びRのうちの少なくとも1つは、テトラプロペニルラジカルである。
【0033】
ある実施形態では、R及びRに関して記載されるヒドロカルビル及びヒドロカルビレンラジカルは、1~約30個の炭素原子、例えば、1~25個の炭素原子、1~20個の炭素原子、1~15個の炭素原子、または1~10個の炭素原子を有し得る。
【0034】
一般に、該カルボン酸、エステル、または無水物を含む1つ以上の化合物は、本開示の潤滑油組成物に、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.05~約3.0重量%に及ぶ量で存在し得る。1つの実施形態では、該カルボン酸、エステル、または無水物を含む1つ以上の化合物は、本開示の潤滑油組成物に、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.05~約0.75重量%に及ぶ量で存在し得る。1つの実施形態では、該カルボン酸、エステル、または無水物を含む1つ以上の化合物は、本開示の潤滑油組成物に、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.05~約0.50重量%に及ぶ量で存在し得る。別の実施形態では、該カルボン酸、エステル、または無水物を含む1つ以上の化合物は、本開示の潤滑油組成物に、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.1~約0.30重量%に及ぶ量で存在し得る。
【0035】
ポリアルコキシル化ヒドロカルビルフェノール
1つの態様では、本開示は、式(III)または(IV)で表される1つ以上のポリアルコキシル化ヒドロカルビルフェノールを提供し:

【化14】

式中、各Rは、独立して、1~250個の炭素原子のヒドロカルビルまたはヒドロカルビレンラジカルであり、各R及びRは、独立して、水素ラジカル、1~6個の炭素原子のヒドロカルビルラジカル、または1~6個の炭素原子のヒドロカルビレンラジカルであり、R10は、水素ラジカル、1~24個の炭素原子のヒドロカルビルラジカル、1~24個の炭素原子のヒドロカルビレンラジカル、または-C(=O)R11で表されるアシルラジカルであり、R11は、1~24個の炭素原子のヒドロカルビルまたはヒドロカルビレンラジカルであり、R12及びR13は、独立して、水素ラジカル、1~24個の炭素原子のヒドロカルビルラジカル、または1~24個の炭素原子のヒドロカルビレンラジカルであり、nは、1~3であり、mは、1~50であり、pは、1~50である。
【0036】
一般に、該1つ以上のポリアルコキシル化ヒドロカルビルフェノールは、本開示の潤滑油組成物に、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.05~約3.0重量%に及ぶ量で存在し得る。1つの実施形態では、該1つ以上のポリアルコキシル化ヒドロカルビルフェノールは、本開示の潤滑油組成物に、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.05~約0.75重量%に及ぶ量で存在し得る。1つの実施形態では、該1つ以上のポリアルコキシル化ヒドロカルビルフェノールは、本開示の潤滑油組成物に、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.05~約0.50重量%に及ぶ量で存在し得る。別の実施形態では、該1つ以上のポリアルコキシル化ヒドロカルビルフェノールは、本開示の潤滑油組成物に、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.1~約0.30重量%に及ぶ量で存在し得る。
【0037】
さらなる潤滑油添加剤
本開示の潤滑油組成物はまた、該潤滑油組成物に所望の特性を付与することができる、または該潤滑油組成物を改善することができる他の従来の添加物を含んでもよく、これらの添加物は、該潤滑油組成物に分散または溶解される。当業者に既知の任意の添加剤を、本明細書に開示する潤滑油組成物に使用してもよい。いくつかの適切な添加剤は、Mortier et al.,“Chemistry and Technology of Lubricants”,2nd Edition,London,Springer,(1996)、及びLeslie R.Rudnick,“Lubricant Additives:Chemistry and Applications”,New York,Marcel Dekker(2003)に記載されている。これらは両方とも、参照により本明細書に組み込まれる。例えば、該潤滑油組成物は、酸化防止剤、摩耗防止剤、界面活性剤、例えば、金属界面活性剤、防錆剤、曇り除去剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、摩擦調整剤、流動点降下剤、消泡剤、共溶媒、防食剤、分散剤、多機能性剤、染料、極圧剤等及びそれらの混合物とブレンドすることができる。種々の添加剤が知られており、市販されている。これらの添加剤、またはそれらの類似化合物は、通常のブレンド手順による本開示の潤滑油組成物の調製に使用され得る。
【0038】
潤滑油配合物の調製において、炭化水素油、例えば、鉱油系潤滑油、または他の適切な溶媒中、10~100重量%の活性成分濃縮物の形態で該添加剤を導入することが一般的な方法である。
【0039】
通常、これらの濃縮物は、完成潤滑剤、例えば、クランクケースモーター油を形成する際に、添加剤パッケージの重量部あたり3~100、例えば、5~40重量部の潤滑油で希釈され得る。当然ながら、濃縮物の目的は、様々な材料の取り扱いをより簡単かつ便利にすること及び最終的なブレンドでの溶解または分散を促進することである。
【0040】
前述の添加剤の各々は、使用時、当該潤滑剤に所望の特性を付与するのに機能的に有効な量で使用される。従って、例えば、添加剤が摩擦調整剤である場合、この摩擦調整剤の機能的に有効な量とは、当該潤滑剤に所望の摩擦調整特性を付与するのに十分な量である。
【0041】
一般に、該潤滑油組成物中の各添加剤の濃度は、使用時、該潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.001重量%~約20重量%、約0.01重量%~約15重量%、または約0.1重量%~約10重量%、約0.005重量%~約5重量%、または約0.1重量%~約2.5重量%に及び得る。さらに、該潤滑油組成物中の該添加剤の総量は、該潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.001重量%~約20重量%、約0.01重量%~約10重量%、または約0.1重量%~約5重量%に及び得る。
【0042】
以下の実施例は、本開示の実施形態を例示するために提示するものであって、本開示を、記載される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。特段の指示がない限り、すべての部及びパーセンテージは、重量基準である。すべての数値は、近似である。数値範囲が与えられている場合、述べられている範囲外の実施形態もなお、本開示の範囲に含まれ得ることを理解されたい。各実施例に記載の具体的詳細は、本開示の必要な特徴として解釈されるべきではない。
【0043】
本明細書に開示する実施形態に対して様々な修正が行われ得ることが理解されよう。従って、上記の説明は、限定として解釈されるべきではなく、単に好ましい実施形態の例示として解釈されるべきである。例えば、前述の本開示を運用するための最良の形態として実装される機能は、例示のみを目的としている。他の配置及び方法は、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者によって実施され得る。さらに、当業者には、本明細書に添付の特許請求の範囲の範囲及び趣旨の範囲内で他の修正が想定されよう。
【実施例
【0044】
以下の実施例は、例示のみを目的としており、いかなる方法によっても本開示の範囲を限定するものではない。
【0045】
潤滑油は、ハイブリッド車の潤滑剤用にわずかに修正された日本産業規格(JIS)K2246試験により評価した。
【0046】
JIS K2246試験は、試験片サンプルに試験油を塗布し、試験サンプルの錆の発生をチェックすることを含む。修正JIS K2246試験では、試験片サンプルに試験油と蒸留水を含む混合物を塗布する。表2に、JIS K2246試験の結果を要約する。
【0047】
試験片サンプルを、49℃で相対湿度(RH)が95%を超える湿潤キャビネットに置き、72時間静置する。この試験では、主に鉄鋼からなる金属材料または金属製品の錆を防ぐ油の能力を評価する。ASTM D1748試験(湿潤キャビネット錆試験)も同様の方法で行われる。合格等級は15以下である。
【0048】
試験油と蒸留水を含む混合物は、以下のステップに従って調製した:
【0049】
1.蒸留水30mlと試験油270mlをプラスチック容器内で混合する。
【0050】
2.この試験油と蒸留水の混合物を500mlの容器に移す。
【0051】
3.JIS K2246試験当日にこの試験油と蒸留水を含む混合物を攪拌し、その後30秒間ハンドシェイクする。
【0052】
4.対流式オーブンでこの試験油を70℃で30分間加熱する。
【0053】
5.この試験油を30分後、オーブンから取り出し、その試験油を室温まで放冷する。
【0054】
6.試験サンプルをこの試験油に浸漬する直前に、再度この試験油を30秒間ハンドシェイクする。
【0055】
7.JIS K2246試験を開始する。
【0056】
ベースライン
主要量の潤滑粘度のグループIII基油及び以下の添加剤を含む潤滑油組成物を調製し、粘度等級0W-20を有する完成油を得た:
(1)ホウ素含有量として250ppmのホウ素入りスクシンイミド分散剤、
(2)カルシウム含有量として1600ppmの過塩基性カルシウムスルホネート界面活性剤、
(3)リン含有量として770ppmの第一ジアルキルジチオリン酸亜鉛及び第二ジアルキルジチオリン酸亜鉛の約2:1の混合物、
(4)アルキル化ジフェニルアミン酸化防止剤、
(5)ケイ素系発泡防止剤、
(6)オレフィンコポリマー(OCP)粘度調整剤、ならびに
(7)ポリメタクリレート流動点降下剤。
【0057】
カルボン酸、エステル、無水物(化合物A)
化合物Aは、テトラプロペニルコハク酸である。
【0058】
ポリアルコキシル化ヒドロカルビルフェノール(化合物B)
化合物Bは、エトキシル化ドデシルフェノールである。
【0059】
化合物C
化合物Cは、商品名Hitec(登録商標)4313のチアジアゾールである。
【0060】
化合物D
化合物Dは、ビススクシンイミドのテレフタル酸塩である。
【0061】
化合物E
化合物Eは、エトキシル化された第二級アルコールである。
【0062】
化合物F
化合物Fは、MW約2000g/molのポリプロピレングリコールである。
【0063】
化合物G
化合物Gは、アジピン酸ジイソデシルである。
【0064】
化合物H
化合物Hは、トリメチロールプロパンのC-C10脂肪酸エステルである。
【0065】
化合物I
化合物Iは、ジプロピレングリコールジベンゾエートである。
【0066】
実施例1
配合ベースラインに、0.1重量%の化合物A及び0.1重量%の化合物Bを加えた。
【0067】
実施例2
配合ベースラインに、0.1重量%の化合物A及び0.2重量%の化合物Bを加えた。
【0068】
実施例3
配合ベースラインに、0.2重量%の化合物A及び0.1重量%の化合物Bを加えた。
【0069】
実施例4
配合ベースラインに、0.2重量%の化合物A及び0.2重量%の化合物Bを加えた。
【0070】
比較例1
配合ベースラインに、0.1重量%の化合物Aを加えた。
【0071】
比較例2
配合ベースラインに、0.2重量%の化合物Aを加えた。
【0072】
比較例3
配合ベースラインに、0.1重量%の化合物Bを加えた。
【0073】
比較例4
配合ベースラインに、0.1重量%の化合物C及び0.1重量%の化合物Bを加えた。
【0074】
比較例5
配合ベースラインに、0.1重量%の化合物D及び0.1重量%の化合物Bを加えた。
【0075】
比較例6
配合ベースラインに、0.1重量%の化合物E及び0.1重量%の化合物Bを加えた。
【0076】
比較例7
配合ベースラインに、0.1重量%の化合物F及び0.1重量%の化合物Bを加えた。
【0077】
比較例8
配合ベースラインに、0.1重量%の化合物G及び0.1重量%の化合物Bを加えた。
【0078】
比較例9
配合ベースラインに、0.1重量%の化合物H及び0.1重量%の化合物Bを加えた。
【0079】
比較例10
配合ベースラインに、0.1重量%の化合物I及び0.1重量%の化合物Bを加えた。
【0080】
比較例11
配合ベースラインに、0.1重量%の化合物J及び0.1重量%の化合物Bを加えた。

【表2】
【0081】
優先権書類及び/または試験手順を含めた本明細書に記載のすべての文書は、本書と矛盾しない範囲で、参照により本明細書に組み込まれる。前述の一般的な説明及び特定の実施形態から明らかなように、本開示の形態を例示及び説明してきたが、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正がなされ得る。従って、本開示がそれによって限定されることを意図するものではない。
【0082】
簡潔にするために、特定の範囲のみが本明細書で明示的に開示されている。しかしながら、任意の下限からの範囲を任意の上限と組み合わせて、明示的に列挙されていない範囲が列挙され得るとともに、任意の下限からの範囲を任意の他の下限と組み合わせて、明示的に列挙されていない範囲が列挙され得る。同様に、任意の上限からの範囲を任意の他の上限と組み合わせて、明示的に列挙されていない範囲が列挙され得る。さらに、範囲内には、明示的に列挙されていないとしても、その端点間のすべての点または個々の値が含まれる。従って、すべての点または個々の値は、任意の他の点もしくは個々の値または任意の他の下限もしくは上限と組み合わせた独自の下限または上限としての役割を果たし、明示的に列挙されていない範囲を列挙し得る。
【0083】
同様に、「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」という用語と同義であると見なされる。同様に、組成物、要素または要素の群に、「含む」という移行句が先行している場合は常に、移行句「~から本質的になる」、「~からなる」、「~からなる群から選択される」、または「~である」が、組成物、または要素(複数可)の列挙に先行する同じ組成物または要素の群もまた企図されること、及び逆もまた同様であることが理解される。
【0084】
本明細書で使用される、「a」及び「the」という用語は、単数形だけでなく複数形も包含すると理解される。
【0085】
様々な用語が上記で定義されている。特許請求の範囲で使用される用語が上記で定義されていない限り、それには、関連業者がその用語を少なくとも1つの刊行物または交付済み特許に反映されているとして与えている最も広い定義が与えられるべきである。さらに、本出願に引用されているすべての特許、試験手順、及び他の文書は、かかる開示が本出願と矛盾しない範囲で、及びかかる組み込みが許可されているすべての管轄について、参照により完全に組み込まれる。
【0086】
本開示の前述の説明は、本開示を例示及び説明している。さらに、本開示は、好ましい実施形態のみを示し、説明しているが、上記の通り、本開示は、様々な他の組み合わせ、修正、及び環境において使用することが可能であり、上記の教示及び/または関連技術の技能または知識と等しい本明細書に表現される概念の範囲内で変更または修正することが可能であることが理解される。上記は、本開示の実施形態に関するが、本開示の他の及びさらなる実施形態が、その基本的な範囲から逸脱することなく考案される場合もあり、その範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。
【0087】
要素の組み合わせ、サブセット、群等(例えば、組成物における成分の組み合わせ、または方法におけるステップの組み合わせ)が開示される場合、様々な個々の及び集合的な組み合わせの各々の特定の参照ならびにこれらの要素の順列は、明示的に開示されない場合があるが、各々は、本明細書で具体的に企図され、説明されることが理解される。
【0088】
上記本明細書に記載の実施形態は、さらに、その実施について知られている最良の形態を説明すること、及び当業者が本開示を、かかる実施形態または他の実施形態において、特定の用途または使用によって必要とされる様々な修正を行って使用することができるようにすることを意図している。従って、該説明は、本明細書に開示する形態にそれを限定することを意図するものではない。また、添付の特許請求の範囲は、代替的実施形態を含むと解釈されることが意図されている。
【国際調査報告】