(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-28
(54)【発明の名称】脊椎固定方法に使用するための骨移植材料
(51)【国際特許分類】
A61L 27/22 20060101AFI20221118BHJP
A61L 27/54 20060101ALI20221118BHJP
A61F 2/44 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
A61L27/22
A61L27/54
A61F2/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518362
(86)(22)【出願日】2020-09-21
(85)【翻訳文提出日】2022-05-19
(86)【国際出願番号】 EP2020076207
(87)【国際公開番号】W WO2021058404
(87)【国際公開日】2021-04-01
(32)【優先日】2019-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507207144
【氏名又は名称】クロス・バイオサージェリー・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フォクト,ロレンツ
(72)【発明者】
【氏名】ザウダン,フィリペ
(72)【発明者】
【氏名】イアフィネ,アリスタイア・ジンプゾン
【テーマコード(参考)】
4C081
4C097
【Fターム(参考)】
4C081AB02
4C081BA12
4C081CD111
4C081CD112
4C097AA10
4C097BB01
(57)【要約】
本発明は、脊椎固定方法に使用するための骨移植材料であって、i)少なくとも第1のマトリックス材料前駆体成分及び第2のマトリックス材料前駆体成分を含み、適切な条件下で前駆体成分の架橋によってマトリックスを形成することができる、マトリックスを形成するための組成物と、ii)2つの椎骨間の骨形成を刺激し、脊椎固定を行うか又は支持するように生物学的に活性である生物活性因子とを備え、脊椎固定方法は、2つの椎骨の間にケージを施与するステップであって、ケージは骨移植材料で予め充填されていない、施与するステップと、続いて、2つの椎骨の間の残りの体積の本質的に全体が骨移植材料で充填されるように、骨移植材料をケージに隣接して及び/又はケージ内に施与するステップとを含む、骨移植材料に関する。したがって、本発明は、より均一なマトリックスをもたらすと同時に、使いやすさを可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊椎固定方法に使用するための骨移植材料であって、
i)少なくとも第1のマトリックス材料前駆体成分及び第2のマトリックス材料前駆体成分を含み、適切な条件下で前記前駆体成分の架橋によってマトリックスを形成することができる、マトリックスを形成するための組成物と、
ii)2つの椎骨間の骨形成を刺激し、脊椎固定を行うか又は支持するように生物学的に活性である生物活性因子と
を備え、
前記脊椎固定方法は、
-前記2つの椎骨の間にケージを施与するステップであって、前記ケージは前記骨移植材料で予め充填されていない、施与するステップと、
-続いて、前記2つの椎骨の間の残りの体積の本質的に全体が前記骨移植材料で充填されるように、前記骨移植材料を前記ケージに隣接して及び/又は前記ケージ内に施与するステップと
を含む、骨移植材料。
【請求項2】
前記生物活性因子が、前記マトリックス材料前駆体成分の架橋を受けて前記マトリックスに放出可能に組み込まれるのに適している、請求項1に記載の骨移植材料。
【請求項3】
前記生物活性因子は、PTH若しくはその生物学的に活性なフラグメント、好ましくはPTH
1-34、又はPTH若しくはその生物学的に活性なフラグメント、好ましくはPTH
1-34を含むペプチドである、請求項1又は2に記載の骨移植材料。
【請求項4】
前記ペプチドは、少なくとも2つのドメインを含む融合ペプチドであり、第1のドメインはPTH又はその生物学的に活性なフラグメント、好ましくはPTH
1-34を含み、第2のドメインは架橋性基質ドメインを含む、請求項3に記載の骨移植材料。
【請求項5】
前記架橋性基質ドメインは、トランスグルタミナーゼ基質ドメイン、好ましくは第XIIIa因子基質ドメインであるか、又はそれを含む、請求項4に記載の骨移植材料。
【請求項6】
前記融合ペプチドは、前記第1のドメインと前記第2のドメインとの間に酵素分解部位又は加水分解部位を含む、請求項4又は5に記載の骨移植材料。
【請求項7】
前記マトリックスはフィブリンであり、前記マトリックスを形成するための組成物は、フィブリノゲン、トロンビン及びカルシウム源を含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の骨移植材料。
【請求項8】
脊椎固定方法に使用するためのパーツキットであって、
-先行する請求項のいずれか1項に記載の骨移植材料と、
-請求項10~15のいずれか1項に記載の脊椎固定方法における骨移植材料の使用説明書としての技術文書と、
-任意選択的に、2つの椎骨の間に施与される前に前記骨移植材料を収容するためのシリンジと、
-さらに任意選択的に、前記2つの椎骨の間に前記骨移植材料を送達するために、前記シリンジと共に使用されるカニューレであって、前記カニューレが、
-少なくとも40mm、好ましくは少なくとも60mm、さらに好ましくは少なくとも80mmの長さを有し、
-少なくとも0.51mm(21G)、好ましくは0.51mm(21G)~3.81mm(7G)の範囲内、さらに好ましくは0.84mm(18G)~2.69mm(10G)の範囲内、さらに好ましくは1.19mm(16G)~1.6mm(14G)の範囲内の内径を有する、カニューレと
を備える、パーツキット。
【請求項9】
2つの椎骨の間に施与するのに適したケージをさらに備える、請求項8に記載のパーツキット。
【請求項10】
脊椎固定方法であって、
i)2つの椎骨の間に施与するのに適したケージを提供するステップと、
ii)脊椎固定方法に使用するための骨移植材料を提供するステップであって、前記材料は、
a.少なくとも第1のマトリックス材料前駆体成分及び第2のマトリックス材料前駆体成分を含み、適切な条件下で前記前駆体成分の架橋によってマトリックスを形成することができる、マトリックスを形成するための組成物と、
b.2つの椎骨間の骨形成を刺激し、脊椎固定を行うか又は支持するように生物学的に活性である生物活性因子であって、特に、前記マトリックス材料前駆体成分の架橋を受けて前記マトリックスに放出可能に組み込まれるのに適している、生物活性因子と
を備える、提供するステップと、
iii)前記2つの椎骨の間に前記ケージを施与するステップであって、前記ケージは前記骨移植材料で予め充填されていない、施与するステップと、
iv)続いて、前記2つの椎骨の間の残りの体積の本質的に全体が前記骨移植材料で充填されるように、前記骨移植材料を前記ケージに隣接して及び/又は前記ケージ内に施与するステップと
を含む、脊椎固定方法。
【請求項11】
前記骨移植材料は、前記第1のマトリックス材料前駆体成分及び前記第2のマトリックス材料前駆体成分が最初に互いに接触した後、30秒~420秒、好ましくは60秒~240秒経過したときに、ステップiv)において施与される、請求項10に記載の脊椎固定方法。
【請求項12】
ステップiv)が5秒~60秒の時間枠内で実施される、請求項9又は10に記載の脊椎固定方法。
【請求項13】
前記第1のマトリックス材料前駆体成分及び前記第2のマトリックス材料前駆体成分は、最初に互いに接触された後、約20秒間~約40秒間、好ましくは約30秒間混合される、請求項9~11のいずれか1項に記載の脊椎固定方法。
【請求項14】
前記骨移植材料は、混合後かつステップiv)の前に、約20秒間~約40秒間、好ましくは約30秒間、初期重合を受けることができる、請求項12に記載の脊椎固定方法。
【請求項15】
ステップiv)は、前記骨移植材料の重合がゲル化点に達する前、好ましくは、前記移植材料がゲル化点に到達する少なくとも0.5分前、好ましくは1.0分前、さらに好ましくは1.5分前、より好ましくは少なくとも3分前に実施される、請求項9~13のいずれか1項に記載の脊椎固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脊椎固定術の分野に関し、より詳細には、特定の脊椎固定方法に使用するための特定の骨移植材料、及び関連するパーツキットに関する。
【背景技術】
【0002】
椎間板は、経時的に変性するか又は他の様態で損傷する可能性がある。いくつかの例では、椎間インプラント(しばしば「ケージ」と呼ばれるが、一般にスペーサとも呼ばれる)を、以前に椎間板によって占められていた空間内に位置付けることができる。これらのインプラントは、隣接する椎骨間の所望の間隔を維持するためのものである。
【0003】
骨移植材料は、ケージの内側にある脊椎インプラントとケージに隣接する/ケージを取り囲む脊椎インプラントの両方と共に使用されることが多い。これは、典型的には、隣接する椎骨の融合を容易にする。
【0004】
様々な骨移植材料が現在使用されている。第1に、脊椎固定術の代表例である、オートグラフトとも呼ばれる自家骨移植片がある。しかしながら、すべての患者について摘出が可能であるとは限らない。いずれの場合でも、手技は摘出部位に疼痛を引き起こし、二次感染のリスクを伴い、取り扱いの観点から理想的ではない。第2に、rhBMP-2に基づく手技が非常に効率的である。しかし、バースト放出は不利であり、まだ骨形成に関与していない細胞には影響せず、炎症及び腫脹がよく発生し、異所性骨形成が発生し得る。他の一般にあまり有効でない骨移植片、例えば、同種移植片、脱灰骨マトリックス、幹細胞ベースの移植片又は合成移植片も使用され得る。
【0005】
ケージ、すなわちPTHを補充したフィブリンマトリックスと組み合わせた特定の骨移植材料を骨移植材料として使用することを開示する、またさらなる手法が、国際公開第2012/123028号から知られている。そこに開示されているように、ケージは骨移植材料で予め充填されており、骨移植材料は、2つの椎骨の間に挿入される前に最初に重合することができる。2つの椎骨の間の残りの体積を本質的に完全に充填するために、ケージに隣接してまたさらなる骨移植材料が追加される。
【0006】
この手技は、一方では、ケージが挿入される前にケージの充填を依然として制御することができるため、ケージ自体の確実な充填を可能にする。他方、ケージ内及びケージ外の材料の重合は同期して進行しておらず、重合中の所与の時点においてケージ内の材料は周囲の材料よりも完全に重合されるため、フィブリンマトリックス全体の均一性は不完全であり得る。さらに、骨移植材料の調製のための複数のキットの使用、すなわちケージを予め充填するための第1のキット、及び、その後の、挿入後にケージに隣接してまたさらなる骨移植材料を追加するための少なくとも1つのさらなるキットの使用が必要である。この手技は、医師によって厄介であると認識されることがあり、1つではなく2つのキットが使用されるという点で非効率的であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、上述の欠点を克服すること、特に、より均一なマトリックスを同時にもたらしながら、使いやすさを可能にする骨移植材料及び関連する施与方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これらの目的は、独立請求項の主題によって実現される。好ましい実施形態は、それぞれの従属請求項に概説されている。
【0009】
本発明の第1の態様は、特に腰椎及び/又は胸椎の脊椎固定方法に使用するための骨移植材料であって、
i)少なくとも第1のマトリックス材料前駆体成分及び第2のマトリックス材料前駆体成分を含み、適切な条件下で前駆体成分の架橋によってマトリックスを形成することができる、マトリックスを形成するための組成物と、
ii)2つの椎骨間の骨形成を刺激し、脊椎固定を行うか又は支持するように生物学的に活性である生物活性因子であって、マトリックス材料前駆体成分の架橋を受けてマトリックスに放出可能に組み込まれるのに適している、生物活性因子とを備え、
脊椎固定方法は、
-2つの椎骨の間にケージを施与するステップであって、ケージは骨移植材料で予め充填されていない、施与するステップと、
-続いて、2つの椎骨の間の残りの体積の本質的に全体が骨移植材料で充填されるように、骨移植材料をケージに隣接して及び/又はケージ内に施与するステップと
を含む、骨移植材料に関する。
【0010】
上記の項目i)及びii)で定義されるような適切な骨移植材料は、例えば国際公開第2012/123028号からそれ自体が知られている。その開示は、そこに開示されている骨移植材料の組成物に関して参照により本明細書に組み込まれる。
【0011】
驚くべきことに、許容可能な結果を達成するためにケージを骨移植材料で予め充填しなければならないという一般的な以前の考えとは対照的に、骨移植材料は、ケージが予め充填されずに2つの椎骨の間に挿入された後のみで十分に施与され得ることが見出された。当初の予想に反して、骨移植材料、特に国際公開第2012/123028号に開示されているものは、ケージの周り及び中に確実に流れて、2つの椎骨の間の残りの体積をほぼ完全に充填することができる。これは、挿入前に骨移植材料をケージの内部に配置する必要がなく、挿入前にケージ内の材料を重合する初期段階を待つ必要がないため、全体的な手技を非常に容易にする。さらに、すべての骨移植材料が、本質的に同時にかつ同じ重合段階において椎骨間の空間に挿入されるため、マトリックスの全体的な均一性が改善される。
【0012】
好ましい実施形態によれば、生物活性因子は、PTH若しくはその生物学的に活性なフラグメント、好ましくはPTH1-34、又はPTH若しくはその生物学的に活性なフラグメント、好ましくはPTH1-34を含むペプチドである。任意のそのような適切な生物活性因子は、国際公開第2012/123028号に開示されている。その開示は、そこに開示されている骨移植材料の生物活性因子に関して参照により本明細書に組み込まれる。
【0013】
さらに好ましい実施形態では、ペプチドは、少なくとも2つのドメインを含む融合ペプチドであり、第1のドメインはPTH又はその生物学的に活性なフラグメント、好ましくはPTH1-34を含み、第2のドメインは架橋性基質ドメインを含む。ここでも、これは任意の詳細において国際公開第2012/123028号に記載されている。その開示は、適切な架橋性基質ドメインに関して参照により本明細書に組み込まれる。
【0014】
好ましくは、国際公開第2012/123028号に概説されており、参照により本明細書に組み込まれるように、架橋性基質ドメインは、トランスグルタミナーゼ基質ドメイン、好ましくは第XIIIa因子基質ドメインであるか、又はそれを含む。
【0015】
さらに好ましい実施形態では、骨移植材料の融合ペプチドは、第1のドメインと第2のドメインとの間に酵素分解部位又は加水分解部位を含む。適切な酵素分解部位又は加水分解分解部位に関する国際公開第2012/123028号の特定の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0016】
さらに好ましい実施形態では、マトリックスはフィブリンである。マトリックスを形成するための組成物は、フィブリノゲン、トロンビン及びカルシウム源を含む。この組成物、その組成物のこれらの成分及びそれらのそれぞれの関係に関する国際公開第2012/123028号の特定の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0017】
本発明のさらなる態様は、特に腰椎及び/又は胸椎の脊椎固定方法に使用するためのパーツキットであって、
-上に概説した骨移植材料と、
-下記に記載の脊椎固定方法における骨移植材料の使用説明書としての技術文書と、
-任意選択的に、2つの椎骨の間に施与される前に骨移植材料を収容するためのシリンジと、
-さらに任意選択的に、2つの椎骨の間に骨移植材料を送達するために、シリンジと共に使用されるカニューレであって、カニューレが、
-少なくとも40mm、好ましくは少なくとも60mm、さらに好ましくは少なくとも100mmの長さを有し、
-少なくとも0.51mm(21G)、好ましくは0.51mm(21G)~3.81mm(7G)の範囲内、さらに好ましくは0.84mm(18G)~2.69mm(10G)の範囲内、さらに好ましくは1.19mm(16G)~1.6mm(14G)の範囲内の内径を有する、カニューレと
を備える、パーツキットに関する。
【0018】
使用説明書としての技術文書は、例えば説明リーフレットによって、又はインターネットを介してアクセス可能な使用説明書へのリンクによって、パーツキットに含まれ得る。いずれの場合でも、使用説明書及び骨移植材料は、特に互いを参照する。
【0019】
カニューレの前述の長さは、予め充填されたケージが使用されていない場合に、in vivoで椎骨と椎骨との間に骨移植材料を施与することを容易にすることが分かった。
【0020】
さらに、カニューレの前述の内径は、予め充填されたケージが使用されていない場合に、骨移植材料の複数のキットを使用することを必要とせずに、1回で、in vivoで椎骨と椎骨との間に骨移植材料を効率的に施与することを可能にすることが分かった。
【0021】
パーツキットは、2つの椎骨の間に施与するのに適したケージをさらに備えてもよい。
予め充填されたケージを椎骨の間に挿入するための以前から知られている手法とは対照的に、この骨移植材料は、(空の)ケージが既に挿入された後にのみ、1回で椎骨の間の空間に挿入される。これは、椎骨間の空間全体を本質的に充填するために必要なだけ、人間の椎骨間の空間に確実に到達することを可能にする上述の長さを有するカニューレによって最も容易に達成することができる。カニューレの前述の内径は、通常の場合のように、材料が手動で操作されるシリンジを用いることによって施与されるときに合理的な流量を達成することを可能にする。
【0022】
好ましい実施形態では、パーツキットは、下記に記載の脊椎固定方法における骨移植材料及びケージの使用説明書を備えた技術リーフレットをさらに備える。
【0023】
したがって、本発明のまたさらなる態様は、特に腰椎及び/又は胸椎の脊椎固定方法であって、
i)2つの椎骨の間に施与するのに適したケージを提供するステップと、
ii)脊椎固定方法に使用するための骨移植材料を提供するステップであって、材料は、
a.少なくとも第1のマトリックス材料前駆体成分及び第2のマトリックス材料前駆体成分を含み、適切な条件下で前駆体成分の架橋によってマトリックスを形成することができる、マトリックスを形成するための組成物と、
b.2つの椎骨間の骨形成を刺激し、脊椎固定を行うか又は支持するように生物学的に活性である生物活性因子であって、マトリックス材料前駆体成分の架橋を受けてマトリックスに放出可能に組み込まれるのに適している、生物活性因子とを備える、提供するステップと、
iii)2つの椎骨の間にケージを施与するステップであって、ケージは骨移植材料で予め充填されていない、施与するステップと、
iv)続いて、2つの椎骨の間の残りの体積の本質的に全体が骨移植材料で充填されるように、骨移植材料をケージに隣接して及び/又はケージ内に施与するステップと
を含む、脊椎固定方法に関する。
【0024】
好ましい実施形態では、骨移植材料は、第1のマトリックス材料前駆体成分及び第2のマトリックス材料前駆体成分が最初に互いに接触した後、30秒~420秒、好ましくは60秒~240秒経過したときに、ステップiv)において施与される。これらの時間枠において、材料は、特に、2つの椎骨の間の空間の本質的に全体の周りを確実に流れ、充填することが分かっている。
【0025】
ステップiv)は、5秒~60秒の時間枠内で実施されることがさらに好ましい。施与自体が60秒以下で終了する場合、それは一般に、得られたマトリックスの均一性を改善することが分かっている。
【0026】
さらに好ましい実施形態では、第1のマトリックス材料前駆体成分及び第2のマトリックス材料前駆体成分は、最初に互いに接触された後、約20秒間~約40秒間、好ましくは約30秒間混合される。そのような混合時間は、一方では、不可避の初期重合が材料のその後の施与を妨げる程度にはまだ進行しないと同時に、均一な混合を確実に可能にするのに十分であることが分かっている。
【0027】
またさらなる好ましい実施形態では、骨移植材料は、混合後かつステップiv)の前に、約20秒間~約40秒間、好ましくは約30秒間、初期重合を受けることができる。施与前のこのような初期重合は、マトリックスの均一な形成を妨げないと同時に、施与時の材料の取り扱い特性を改善することが分かっている。
【0028】
またさらなる好ましい実施形態では、ステップiv)は、骨移植材料の重合がゲル化点に達する前、好ましくは、移植材料がゲル化点に到達する少なくとも0.5分前、好ましくは1.0分前、さらに好ましくは1.5分前、より好ましくは少なくとも3分前に実施される。ゲル点は、Chernysh他(Blood 2011 Apr 28;117(17):4609-4614)に記載されているように決定される。
【0029】
上記で概説したように、マトリックスを形成するための組成物は、少なくとも第1のマトリックス材料前駆体成分及び第2のマトリックス材料前駆体成分を含み、これら2つの成分は、適切な条件下で前駆体成分の架橋によってマトリックスを形成することができる。しかしながら、当業者は、本発明の一般的な概念が、流動可能な状態(in vivoでの施与前及び施与中)から流動不可能な状態(in vivoでの施与後)へのそのレオロジー特性の変化を可能にする特性を有する任意の種類のマトリックス材料を使用することによってさらにより一般的に適用可能であることを容易に理解するであろう。本明細書において理解されるものとしては、「流動可能」という用語は、組成物が手動操作によって直径3mmの開口部を有するシリンジから吐出可能であることを意味する。「流動不可能」という用語は、組成物が手動操作によって直径3mmの開口部を有するシリンジから吐出可能でないことを意味する。このレオロジー特性の変化は、酵素作用、化学的作用、又は温度の変化によって引き起こすことができる。例えば、Injury(2011)Sep;42 Suppl 2:S30-4に開示されているものなどの、任意の注入可能な骨移植片代替材料が使用されてもよい。例えば、生分解性ポリマー(架橋及び非架橋)及びセメントが、上に概説したような本発明の文脈において使用されてもよい。具体的には、本発明の文脈において使用するための生分解性ポリマーは、例えば国際公開第2006/067221号に記載されているもの(ヒドロゲル)及びPolymers(Basel)2011 Sep 1;3(3):1377-1397に記載されているもの(PLGA)である。本発明の文脈において使用するためのセメントは、例えば、例としてPRO-DENSE(商標)(Wright Medical Group)などの、リン酸カルシウム/硫酸カルシウム系セメントである。
【0030】
本発明は、上述した本発明の全体的な概念を限定することを決して意図しない特定の実施形態によって以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1A】先行して挿入されたケージの中及び隣への骨移植材料の施与の概略図である。
【
図1B】個々の絵図が異なる時点における骨移植片の流れを示す、椎間板箇所モデルを使用した骨移植材料の施与の実験試験の図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
骨移植材料の調製
骨移植材料は、国際公開第2012/123028号に以前に開示されているような、TGplPTH1-34ペプチド溶液及びフィブリンシーラントからなる。この骨移植材料は、以下のように使用直前に現場で調製される。
【0033】
非滅菌野:
1.周囲条件でTGplPTH1-34溶液のバイアルを解凍する。
【0034】
滅菌野:
2.BaxterからのARTISS[フィブリンシーラント(ヒト用)]の処方情報に記載されている調製指示に従ってARTISS事前充填済み10mlシリンジを解凍及び加温する。
【0035】
3.無菌移送技術及び1mlシリンジを使用して、0.5mLのTGplPTH1-34溶液(上記1参照)を取り出し、逆さにしたバイアルを持ち上げて取り出しやすくする。
【0036】
4.メス型ルアー-メス型ルアーコネクタを使用して、1mlシリンジから10mlシリンジに、0.5ml体積のTGplPTH1-34溶液をすべて移す。
【0037】
ARTISS事前充填済み10mlシリンジを完全に解凍及び加温した後、キャップを取り外し、ダブルチャンバシリンジのノズルを接合片に接続して、それらがしっかりと固定されていることを確実にする。テザーストラップをダブルチャンバシリンジに締結することによって接合片を固定し、ダブルプランジャを挿入する。
【0038】
5.メス型ルアー-メス型ルアーコネクタを使用し、ARTISSダブルチャンバシリンジを、0.5mLのTGplPTH1-34溶液を含む10mLシリンジと接続する。
【0039】
骨移植材料の施与の直前:
6.ARTISSシリンジから、0.5mLのTGplPTH1-34溶液を含む10mLシリンジに内容物を押し出す。ARTISSダブルチャンバシリンジ及び接合片をルアーコネクタから取り外し、空の10mLシリンジを、TGplPTH1-34及びARTISSを含む10mLシリンジに接続する。
【0040】
(ステップ6は、構成部品の混合の開始に等しい。)
7.2つのシリンジ間で混合物を前後に5回移動させることによって、TGplPTH1-34溶液とARTISSとを混合する。
【0041】
8.空のシリンジ及びルアーコネクタを取り外し、骨移植材料(TGplPTH1-34フィブリンシーラント)を含むシリンジをカニューレ(すなわち14G)と接続する。
【0042】
(ステップ6~8、すなわちTGplPTH1-34溶液とARTISSとの結合及び混合は、約30秒間続く。)
9.KUR-113骨移植片を少なくとも30秒間インキュベートして、フィブリンゲルの成形可能なフィブリンマトリックスへの初期重合を可能にする。
【0043】
10.施与の直前に、施与カニューレから最初の数滴を吐出して廃棄する。
椎間板腔モデルにおける骨移植片の施与:
椎間板腔モデルは、脊椎固定術におけるハードウェアに対する補助療法として、骨移植材料の施与をシミュレートすることを可能にする。モデルは、空にされた椎間板腔の形状及びサイズに匹敵する空間と、脊椎インプラント(「ケージ」)の挿入及び骨移植材料の施与のための上部の開口とを含む。
図1B参照。手技を監視し、製品を視覚的に検査するために、椎間板腔モデルを透明なプレキシガラス板で作製した。
【0044】
空の脊椎インプラントを空にされた椎間板腔内に配置した後の骨移植材料の施与を、椎間板腔モデルを使用して研究した。簡潔には、空の脊椎インプラントを椎間板腔モデルに挿入した。次いで、上述の骨移植材料を上記のように調製し、挿入された脊椎インプラントに隣接して配置された14Gカニューレを使用して椎間板腔モデル内に注入した。
図1Bのタイムラプス画像に示すように、挿入された脊椎インプラントに隣接してカニューレを配置したが、骨移植材料を吐出すると、椎間板腔及びケージは骨移植片で均一に充填される。したがって、驚くべきことに、挿入された脊椎インプラントに隣接して骨移植材料を施与することにより、脊椎インプラントが既に椎間板腔に挿入された後に、単一回の施与で脊椎インプラント及び椎間板腔を均一に充填することが可能になる。
【0045】
上記の手技の代わりに骨移植材料を脊椎インプラントに挿入した場合(詳細には示さず)にも同様の結果が得られ、その結果、2つの椎骨の間の空間は、脊椎インプラントの内側から外側の、残りの空間に流れる骨移植材料で充填される。
【国際調査報告】