(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-28
(54)【発明の名称】4-置換1,2-ジヒドロキノリン類のエナンチオ選択的水素化のための新規イリジウム触媒の使用を含む方法
(51)【国際特許分類】
C07D 215/08 20060101AFI20221118BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20221118BHJP
C07B 53/00 20060101ALN20221118BHJP
【FI】
C07D215/08
C07B61/00 300
C07B53/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518700
(86)(22)【出願日】2020-09-22
(85)【翻訳文提出日】2022-05-18
(86)【国際出願番号】 EP2020076375
(87)【国際公開番号】W WO2021058458
(87)【国際公開日】2021-04-01
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】313006625
【氏名又は名称】バイエル・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ショーテス,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ベラー,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ユンゲ,カトリン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ウェイピン
(72)【発明者】
【氏名】シュネーケーニヒ,ヤコブ
(72)【発明者】
【氏名】レイシュナー,トマス
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC11
4H006BA22
4H006BA48
4H006BE20
4H039CA19
4H039CB10
(57)【要約】
4-置換1,2-ジヒドロキノリン類のエナンチオ選択的水素化のための新しいイリジウム触媒である。本発明は、キラルイリジウム(P、N)-配位子触媒の存在下、対応する4-置換1,2-ジヒドロキノリン類のエナンチオ選択的水素化を含む光学活性な4-置換1、2,3,4-テトラヒドロキノリン類(1a、1b)を調製するための方法に関する。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Ia)または(Ib)の化合物を調製する方法であって、
【化1】
式中、
R
1は、C
1-C
6-アルキル、C
1-C
6-ハロアルキル、C
1-C
6-アルコキシ-C
1-C
6-アルキル、C
3-C
6-シクロアルキル、C
6-C
14-アリールまたはC
6-C
14-アリール-C
1-C
4-アルキルからなる群から選択され、
ここで、C
1-C
6-アルキル、C
3-C
6-シクロアルキル、および、C
1-C
6-アルコキシ-C
1-C
6-アルキル部分のC
1-C
6-アルコキシは、ハロゲン、C
1-C
4-アルコキシ、C
1-C
4-ハロアルキル、C
1-C
4-ハロアルコキシおよびフェニルからなる群から独立して選択される1~3個の置換基によって任意に置換され、ここで、フェニルは、ハロゲン、C
1-C
4-アルキル、C
1-C
4-アルコキシ、C
1-C
4-ハロアルキル、およびC
1-C
4-ハロアルコキシから互いに独立して選択される1~5個の置換基によって置換されてもよく、そして
各場合におけるC
6-C
14-アリール及びC
6-C
14-アリール-C
1-C
4-アルキル部分のC
6-C
14-アリールは、非置換であるか、または、ハロゲン、C
1-C
4-アルキル、C
1-C
4-ハロアルキル、C
1-C
4-アルコキシ及びC
1-C
4-ハロアルコキシからなる群から選択される1~5個の置換基により置換され、
R
2及びR
3は、同一であり、水素、C
1-C
6-アルキル、C
1-C
6-ハロアルキル、およびC
1-C
6-アルコキシ-C
1-C
6-アルキルからなる群から選択され、または、
R
2及びR
3は、それらが結合している炭素と一緒になってC
3-C
6-シクロアルキル環を形成し、
R
4は、水素、C
1-C
6-アルキル、C
1-C
6-ハロアルキル、C
1-C
6-アルコキシ、C
1-C
6-ハロアルコキシ、C
1-C
6-アルキルアミノ、C
2-C
6-アルケニル、C
2-C
6-アルキニル、C
3-C
6-シクロアルキル、C
3-C
6-シクロアルキル-C
1-C
4-アルキル、C
2-C
6-アルケニルオキシ、9-フルロレニルメチレンオキシ、C
6-C
14-アリール、C
6-C
14-アリールオキシ、C
6-C
14-アリール-C
1-C
4-アルキルオキシまたはC
6-C
14-アリール-C
1-C
4-アルキルであり、
ここで、C
6-C
14-アリールは、そのまままたは複合置換基の一部として、非置換であるか、または、ハロゲン、C
1-C
4-アルキル、C
1-C
4-ハロアルキル、C
1-C
4-アルコキシおよびC
1-C
4-ハロアルコキシからなる群から選択される1~5個の置換基によって置換され、
nは、0、1、2、3または4であり、
それぞれの置換基R
5は、存在する場合、ハロゲン、C
1-C
6-アルキル、C
1-C
6-ハロアルキル、C
1-C
6-アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、および-C(=O)-C
1-C
6-アルキルからなる群から独立して選択され、該方法は、キラルイリジウム触媒の存在下で、式(II)の化合物のエナンチオ選択的水素化を含み、
【化2】
式中、置換基R
1、R
2、R
3、R
4、R
5および整数nは、式(Ia)または(Ib)の化合物に対して定義されたとおりであり、キラルイリジウム触媒が、式(IIIa)または(IIIb)のキラル配位子を含むことを特徴とする;
【化3】
式中、R
6は、以下の式の群であり、
【化4】
ここで、**は、6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタ[b]ピリジン部分への結合を表し、
R
13は、水素、メチルまたはエチルであり、
R
14は、C
1-C
6-アルキルであり、
R
7は、水素であり、
R
8は、C
1-C
4アルキルまたはフェニルであり、ここで、フェニルは、非置換であるか、または、ハロゲン、C
1-C
4-アルキル、C
1-C
4-ハロアルキル、C
1-C
4-アルコキシおよびC
1-C
4-ハロアルコキシからなる群より選択される1~5個の置換基で置換され、
R
9及びR
10は、C
1-C
6-アルキル、C
3-C
8-シクロアルキル、ピペリジニル及びピリジルからなる群から互いに独立して選択され、または、
R
9及びR
10は、それらが結合しているリン原子と一緒になって、G
1またはG
2群を形成し、
【化5】
ここで、「x」および「y」によって特定される結合は、両方ともリン原子に直接結合し、
p及びqは、互いに独立して、0、1および2から選択され、
R
11及びR
12は、独立して、C
1-C
6-アルキル及びフェニルから選択され、該基は、ハロゲン、C
1-C
4-アルキル、C
1-C
4-アルコキシおよびフェニルからなる群から選択される1~5個の置換基で置換されていてもよく、該基は、1個または2個のC
1-C
4-アルキル置換基で置換されていてもよく、または
R
9及びR
10は、それらが結合しているリン原子と一緒になって、G
3群を形成し、
【化6】
ここで、「u」及び「v」によって特定される結合は、両方ともリン原子に直接結合する、前記方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
R
1は、C
1-C
6-アルキルまたはC
6-C
14-アリール-C
1-C
4-アルキルであり、
ここで、C
6-C
14-アリール-C
1-C
4-アルキル部分のC
6-C
14-アリールは、非置換であるか、または、ハロゲン、C
1-C
4-アルキル、C
1-C
4-ハロアルキル、C
1-C
4-アルコキシおよびC
1-C
4-ハロアルコキシからなる群から選択される1~5個の置換基によって置換され、
R
2及びR
3は、同一であり、C
1-C
4-アルキルから選択され、
R
4は、C
1-C
4-アルキル、C
1-C
4-ハロアルキル、C
1-C
4-アルコキシ、C
1-C
4-ハロアルコキシ、フェニルまたはベンジルであり、
nは、0、1または2であり、
それぞれの置換基R
5は、存在する場合、ハロゲン、C
1-C
6-アルキル及びC
1-C
6-ハロアルキルからなる群から選択され、
R
6は、以下の式の群であり、
【化7】
ここで、**は、6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタ[b]ピリジン部分への結合を表し、
R
13は、水素、メチルまたはエチルであり、
R
14は、C
1-C
4-アルキルであり、
R
7は、水素であり、
R
8は、C
1-C
4アルキルまたはフェニルであり、ここで、フェニルは、非置換であるか、または、1~5個のC
1-C
4-アルキル置換基で置換され、
R
9及びR
10は、イソプロピル、tert-ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びピペリジン-1-イルからなる群から互いに独立して選択される、
方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、
R
1は、C
1-C
6-アルキルであり、
R
2及びR
3は、同一であり、C
1-C
4-アルキルから選択され、
R
4は、C
1-C
4-アルキル、C
1-C
4-ハロアルキル、C
1-C
4-アルコキシ、C
1-C
4-ハロアルコキシ、フェニルまたはベンジルであり、
nは、0、1または2であり、
それぞれの置換基R
5は、存在する場合、ハロゲン、C
1-C
6-アルキル及びC
1-C
6-ハロアルキルからなる群から選択され、
R
6は、2,6-ジエチル-4-メチルフェニルであり、
R
7は、水素であり、
R
8は、メチルであり、
R
9及びR
10は、シクロヘキシル及びピペリジン-1-イルからなる群から互いに独立して選択される、
方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
R
1は、C
1-C
6-アルキルであり、
R
2及びR
3は、同一であり、C
1-C
4-アルキルから選択され、または、
R
2及びR
3は、それらが結合している炭素と一緒になってC
3-C
6-シクロアルキル環を形成し、
R
4は、C
1-C
4-アルキル、C
1-C
4-ハロアルキル、フェニルまたはベンジルであり、
nは、0、1または2であり、
それぞれの置換基R
5は、存在する場合、ハロゲン及びC
1-C
6-アルキルからなる群から選択される、
方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載の方法であって、
R
1は、C
1-C
4-アルキルであり、
R
2及びR
3は、メチルであり、
R
4は、C
1-C
4-アルキルであり、
nは、0または1であり、
R
5は、存在する場合、フッ素であり、
R
6は、2,6-ジエチル-4-メチルフェニルであり、
R
7は、水素であり、
R
8は、メチルであり、
R
9及びR
10は、いずれも、シクロヘキシルである、
方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の方法であって、
キラルイリジウム触媒が、一般式(Va)または(Vb)であり、
【化8】
式中
R
6は、2,6-ジエチル-4-メチルフェニルであり、
R
7は、水素であり、
R
8は、メチルであり、
R
9及びR
10は、いずれも、シクロヘキシルであり、
Yは、[B(R
18)
4]
-及び式(VII)の[Al{OC(CF
3)
3}
4]
-からなる群から選択される非配位アニオンであり、ここで、R
18は、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニルである、
方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれかに記載の方法であって、
キラルイリジウム触媒が、一般式(Va)で表され、
【化9】
R
6は、2,4,6-トリメチルフェニルであり、
R
7は、水素であり、
R
8は、メチルであり、
R
9及びR
10は、いずれも、シクロヘキシルであり、
Yは、式(VII)の[Al{OC(CF
3)
3}
4]
-である、
方法。
【請求項8】
方法が、ブレンステッド酸、ルイス酸およびそれらの混合物からなる群から選択される添加剤の存在下で行われる、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
添加剤が、ヘキサフルオロリン酸、ペンタフルオロフェノール、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェノール、トリフェニルボラン、トリス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボラン、トリス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ボラン、アルミニウム(III)トリフルオロメタンスルホネート、スカンジウム(III)トリフルオロメタンスルホネート、フッ化アルミニウム(III)、チタン(IV)イソプロポキシド、トリメチルアルミニウム、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素の錯体、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
水素化が、1~300バールの圧力で水素ガスを用いて行われる、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
使用されるキラルイリジウム触媒の量が、式(II)の化合物の量に基づいて0.001モル%~5モル%の範囲内である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
水素化が20℃~130℃の範囲内の温度で行われる、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
使用される添加剤の量が0.1モル%~10モル%の範囲内である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キラルイリジウム(P,N)-配位子触媒の存在下での対応する4-置換1,2-ジヒドロキノリン類のエナンチオ選択的水素化を含む、光学活性な4-置換1,2,3,4-テトラヒドロキノリン類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
N-アセチル-テトラヒドロキノリン類が転位反応を介して対応する4-アミノインダン誘導体類に変換され得ることは、EP0654464号から公知である。
【0003】
4-アミノインダン誘導体類は、殺菌活性を有する種々のN-インダニルヘテロアリールカルボキサミド類を調製するための重要な中間体である(EP0654464、WO2011/162397、WO2012/084812、WO2015/197530)。
【0004】
EP3103789号は、エナンチオマー混合物を、D-酒石酸のジアステレオマー塩に変換することによって1,1,3-トリメチル-4-アミノインダンを光学分割する方法を開示している。(R)-および(S)-1,1,3-トリメチル-4-アミノインダンは、ジアステレオマー塩の分離および塩基化の後に得られる。この引例はまた、望ましくないエナンチオマーをラセミ化するための方法を開示し、その結果、この方法全体は、望ましくないエナンチオマーを、いくつかのプロセス工程を介して所望のエナンチオマーに変換することを可能にする。(R)-1,1,3-トリメチル-4-アミノインダンは、ピラゾールカルボキサミド殺菌剤インピルフルキサムを調製するための重要な中間体である。
【0005】
不斉合成によりN-インダニルヘテロアリールカルボキサミド類のキラル中間体を調製する方法も知られている。WO2015/141564は、光学活性4-置換1,2,3,4-テトラキノリン類を調製するためのプロセスを説明しており、このプロセスは、光学活性配位子を有する遷移金属触媒の存在において、対応する4-置換1,2-ジドロキノリン類の水素化を含む。4-置換NH-ジヒドロキノリン類の不斉水素化は、中程度の転化率(62.6%まで)およびエナンチオ選択性(71.3%eeまで)で進行したが、N-アセチル-ジヒドロキノリン類はさらに悪い転化率(14%まで)およびエナンチオ選択性(31%eeまで)を与えた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の先行技術に鑑みて、本発明の目的は、先行技術の方法に優る利点を有する光学活性4-置換1,2,3,4-テトラヒドロキノリン類の製造方法を提供することである。この方法は、所望のエナンチオマーを、少数のプロセス工程および少数の精製工程で、高収率および高エナンチオマー純度で調製することを可能にすべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】EP0654464号
【特許文献2】WO2011/162397号
【特許文献3】WO2012/084812号
【特許文献4】WO2015/197530号
【特許文献5】EP3103789号
【特許文献6】WO2015/141564号
【0008】
上記目的は、式(Ia)または(Ib)の化合物を調製する方法によって達成され、
【化1】
式中、
R
1は、C
1-C
6-アルキル、C
1-C
6-ハロアルキル、C
1-C
6-アルコキシ-C
1-C
6-アルキル、C
3-C
6-シクロアルキル、C
6-C
14-アリール、またはC
6-C
14-アリール-C
1-C
4-アルキルからなる群から選択され、
ここで、C
1-C
6-アルキル、C
3-C
6-シクロアルキル、および、C
1-C
6-アルコキシ-C
1-C
6-アルキル部分のC
1-C
6-アルコキシは、ハロゲン、C
1-C
4-アルコキシ、C
1-C
4-ハロアルキル、C
1-C
4-ハロアルコキシおよびフェニルからなる群から独立して選択される1~3個の置換基によって任意に置換され、ここで、フェニルは、ハロゲン、C
1-C
4-アルキル、C
1-C
4-アルコキシ、C
1-C
4-ハロアルキルおよびC
1-C
4-ハロアルコキシから互いに独立して選択される1~5個の置換基によって置換されてもよく、そしてここで、
各場合におけるC
6-C
14-アリール及びC
6-C
14-アリール-C
1-C
4-アルキル部分のC
6-C
14-アリールは、非置換であるか、または、ハロゲン、C
1-C
4-アルキル、C
1-C
4-ハロアルキル、C
1-C
4-アルコキシ及びC
1-C
4-ハロアルコキシからなる群から選択される1~5個の置換基により置換され、
R
2及びR
3は、同一であり、水素、C
1-C
6-アルキル、C
1-C
6-ハロアルキルおよびC
1-C
6-アルコキシ-C
1-C
6-アルキルからなる群から選択され、または、
R
2及びR
3は、それらが結合している炭素と一緒になってC
3-C
6-シクロアルキル環を形成し、
R
4は、水素、C
1-C
6-アルキル、C
1-C
6-ハロアルキル、C
1-C
6-アルコキシ、C
1-C
6-ハロアルコキシ、C
1-C
6-アルキルアミノ、C
2-C
6-アルケニル、C
2-C
6-アルキニル、C
3-C
6-シクロアルキル、C
3-C
6-シクロアルキル-C
1-C
4-アルキル、C
2-C
6-アルケニルオキシ、9-フルロレニルメチレンオキシ、C
6-C
14-アリール、C
6-C
14-アリールオキシ、C
6-C
14-アリール-C
1-C
4-アルキルオキシまたはC
6-C
14-アリール-C
1-C
4-アルキルであり、
ここで、C
6-C
14-アリールは、そのまままたは複合置換基の一部として、非置換であるか、または、ハロゲン、C
1-C
4-アルキル、C
1-C
4-ハロアルキル、C
1-C
4-アルコキシおよびC
1-C
4-ハロアルコキシからなる群から選択される1~5個の置換基によって置換され、
nは、0、1、2、3または4であり、
それぞれの置換基R
5は、存在する場合、ハロゲン、C
1-C
6-アルキル、C
1-C
6-ハロアルキル、C
1-C
6-アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、および-C(=O)-C
1-C
6-アルキルからなる群から独立して選択され、
該方法は、
キラルイリジウム触媒の存在下で、式(II)の化合物のエナンチオ選択的水素化を含み、
【化2】
式中、置換基R
1、R
2、R
3、R
4、R
5および整数nは、式(Ia)または(Ib)の化合物に対して定義されたとおりであり、キラルイリジウム触媒が、式(IIIa)または(IIIb)のキラル配位子を含むことを特徴とする;
【化3】
式中、R
6は、以下の式の群であり、
【化4】
ここで、**は、6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタ[b]ピリジン部分への結合を表し、
R
13は、水素、メチルまたはエチルであり、
R
14は、C
1-C
6-アルキルであり、
R
7は、水素であり、
R
8は、C
1-C
4アルキルまたはフェニルであり、ここで、フェニルは、非置換であるか、または、ハロゲン、C
1-C
4-アルキル、C
1-C
4-ハロアルキル、C
1-C
4-アルコキシおよびC
1-C
4-ハロアルコキシからなる群より選択される1~5個の置換基で置換され、
R
9及びR
10は、C
1-C
6-アルキル、C
3-C
8-シクロアルキル、ピペリジニル及びピリジルからなる群から互いに独立して選択され、または、
R
9及びR
10は、それらが結合しているリン原子と一緒になって、G
1またはG
2群を形成し、
【化5】
ここで、「x」および「y」によって特定される結合は、両方ともリン原子に直接結合し、
p及びqは、互いに独立して、0、1および2から選択され、
R
11及びR
12は、独立して、C
1-C
6-アルキル及びフェニルから選択され、該基は、ハロゲン、C
1-C
4-アルキル、C
1-C
4-アルコキシおよびフェニルからなる群から選択される1~5個の置換基で置換されていてもよく、該基は、1個または2個のC
1-C
4-アルキル置換基で置換されていてもよく、または
R
9及びR
10は、それらが結合しているリン原子と一緒になって、G
3群を形成し、
【化6】
ここで、「u」及び「v」によって特定される結合は、両方ともリン原子に直接結合する。
【0009】
驚くべきことに、光学活性な4-置換1,2,3,4-テトラヒドロキノリン類(IaおよびIb)は、キラルイリジウム(P,N)-配位子触媒の存在下で対応する4-置換1,2‐ジヒドロキノリン類(II)のエナンチオ選択的水素化により、高収率かつ優れたエナンチオ選択性で調製できることが見出された。
【0010】
定義
上記の式で与えられる記号の定義において、一般に以下の置換基を表す集合的な用語を使用した:
【0011】
ハロゲン:フッ素、塩素、臭素またはヨウ素、好ましくはフッ素、塩素または臭素、より好ましくはフッ素または塩素である。
【0012】
アルキル:1~6、好ましくは1~4の炭素原子を有する、飽和の、直鎖または分岐鎖のヒドロカルビル基、例えば、限定されるものではないが、C1-C6-アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル(n-プロピル)、1-メチルエチル(イソ-プロピル)、ブチル(n-ブチル)、1-メチルプロピル(sec-ブチル)、2-メチルプロピル(イソ-ブチル)、1,1,-ジメチルエチル(tert-ブチル)、ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピルおよび1-エチル-2-メチルプロピルである。特に、前記基は、C1-C4-アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル(イソプロピル)、ブチル、1-メチルプロピル(sec-ブチル)、2-メチルプロピル(イソ-ブチル)または1,1-ジメチルエチル(tert-ブチル)基である。この定義は、他に定義されない限り、複合置換基の一部としてのアルキル、例えばC3-C6-シクロアルキル-C1-C4-アルキル、C6-C14-アリール-C1-C4-アルキル等にも適用される。
【0013】
アルケニル:2~6個、望ましくは2~4個の炭素原子および任意の位置に1個の二重結合を有する、不飽和、直鎖または分枝状のヒドロカルビル基、例えば、限定されるものではないが、C2-C6-アルケニル、例えば、ビニル、アリル、(E)-2-メチルビニル、(Z)-2-メチルビニル、イソプロペニル、ホモアリル、(E)-ブト-2-エニル、(Z)-ブト-2-エニル、(E)-ブト-1-エニル、(Z)-ブト-1-エニル、2-メチルプロプ-2-エニル、1-メチルプロプ-2-エニル、2-メチルプロプ-1-エニル、(E)-1-メチルプロプ-1-エニル、(Z)-1-メチルプロプ-1-エニル、ペント-4-エニル、(E)-ペント-3-エニル、(Z)-ペント-3-エニル、(E)-ペント-2-エニル、(Z)-ペント-2-エニル、(E)-ペント-1-エニル、(Z)-ペント-1-エニル、3-メチルブト-3-エニル、2-メチルブト-3-エニル、1-メチルブト-3-エニル、3-メチルブト-2-エニル、(E)-2-メチルブト-2-エニル、(Z)-2-メチルブト-2-エニル、(E)-1-メチルブト-2-エニル、(Z)-1-メチルブト-2-エニル、(E)-3-メチルブト-1-エニル、(Z)-3-メチルブト-1-エニル、(E)-2-メチルブト-1-エニル、(Z)-2-メチルブト-1-エニル、(E)-1-メチルブト-1-エニル、(Z)-1-メチルブト-1-エニル、1,1-ジメチルプロプ-2-エニル、1-エチルプロプ-1-エニル、1-プロピルビニル、1-イソプロピルビニル、(E)-3,3-ジメチルプロプ-1-エニル、(Z)-3,3-ジメチルプロプ-1-エニル、ヘキサ-5-エニル、(E)-ヘキサ-4-エニル、(Z)-ヘキサ-4-エニル、(E)-ヘキサ-3-エニル、(Z)-ヘキサ-3-エニル、(E)-ヘキサ-2-エニル、(Z)-ヘキサ-2-エニル、(E)-ヘキサ-1-エニル、(Z)-ヘキサ-1-エニル、4-メチルペント-4-エニル、3-メチルペント-4-エニル、2-メチルペント-4-エニル、1-メチルペント-4-エニル、4-メチルペント-3-エニル、(E)-3-メチルペント-3-エニル、(Z)-3-メチルペント-3-エニル、(E)-2-メチルペント-3-エニル、(Z)-2-メチルペント-3-エニル、(E)-1-メチルペント-3-エニル、(Z)-1-メチルペント-3-エニル、(E)-4-メチルペント-2-エニル、(Z)-4-メチルペント-2-エニル、(E)-3-メチルペント-2-エニル、(Z)-3-メチルペント-2-エニル、(E)-2-メチルペント-2-エニル、(Z)-2-メチルペント-2-エニル、(E)-1-メチルペント-2-エニル、(Z)-1-メチルペント-2-エニル、(E)-4-メチルペント-1-エニル、(Z)-4-メチルペント-1-エニル、(E)-3-メチルペント-1-エニル、(Z)-3-メチルペント-1-エニル、(E)-2-メチルペント-1-エニル、(Z)-2-メチルペント-1-エニル、(E)-1-メチルペント-1-エニル、(Z)-1-メチルペント-1-エニル、3-エチルブト-3-エニル、2-エチルブト-3-エニル、1-エチルブト-3-エニル、(E)-3-エチルブト-2-エニル、(Z)-3-エチルブト-2-エニル、(E)-2-エチルブト-2-エニル、(Z)-2-エチルブト-2-エニル、(E)-1-エチルブト-2-エニル、(Z)-1-エチルブト-2-エニル、(E)-3-エチルブト-1-エニル、(Z)-3-エチルブト-1-エニル、2-エチルブト-1-エニル、(E)-1-エチルブト-1-エニル、(Z)-1-エチルブト-1-エニル、2-プロピルプロプ-2-エニル、1-プロピルプロプ-2-エニル、2-イソプロピルプロプ-2-エニル、1-イソプロピルプロプ-2-エニル、(E)-2-プロピルプロプ-1-エニル、(Z)-2-プロピルプロプ-1-エニル、(E)-1-プロピルプロプ-1-エニル、(Z)-1-プロピルプロプ-1-エニル、(E)-2-イソプロピルプロプ-1-エニル、(Z)-2-イソプロピルプロプ-1-エニル、(E)-1-イソプロピルプロプ-1-エニル、(Z)-1-イソプロピルプロプ-1-エニル、1-(1,1-ジメチルエチル)エテニル、ブタ-1,3-ジエニル、ペンタ-1,4-ジエニル、ヘキサ-1,5-ジエニルまたはメチルヘキサジエニルである。特に、前記基はビニルまたはアリルである。この定義は、他に定義されない限り、複合置換基の一部としてのアルケニルにも適用される。
【0014】
アルキニル:2~8、好ましくは2~6、より好ましくは2~4個の炭素原子および任意の位置に1つの三重結合を有する直鎖または分岐ヒドロカルビル置換基、例えば、限定されるものではないが、C2-C6アルキニル、例えば、エチニル、プロプ-1-イニル、プロプ-2-イニル、ブト-1-イニル、ブト-2-イニル、ブト-3-イニル、1-メチルプロプ-2-イニル、ペント-1-イニル、ペント-2-イニル、ペント-3-イニル、ペント-4-イニル、2-メチルブト-3-イニル、1-メチルブト-3-イニル、1-メチルブト-2-イニル、3-メチルブト-1-イニル、1-エチルプロプ-2-イニル、ヘキサ-1-イニル、ヘキサ-2-イニル、ヘキサ-3-イニル、ヘキサ-4-イニル、ヘキサ-5-イニル、3-メチルペント-4-イニル、2-メチルペント-4-イニル、1-メチルペント-4-イニル、2-メチルペント-3-イニル、1-メチルペント-3-イニル、4-メチルペント-2-イニル、1-メチルペント-2-イニル、4-メチルペント-1-イニル、3-メチルペント-1-イニル、2-エチルブト-3-イニル、1-エチルブト-3-イニル、1-エチルブト-2-イニル、1-プロピルプロプ-2-イニル、1-イソプロピルプロプ-2-イニル、2,2-ジメチルブト-3-イニル、1,1-ジメチルブト-3-イニル、1,1-ジメチルブト-2-イニル、または3,3-ジメチルブト-1-イニル基である。特に、前記アルキニル基は、エチニル、プロプ-1-イニル、またはプロプ-2-イニルである。この定義は、他に定義されていない限り、複合置換基の一部としてのアルキニルにも適用される。
【0015】
アルキルアミノ:モノアルキルアミノまたはジアルキルアミノであり、ここで、モノアルキルアミノは、窒素原子に結合した1~4個の炭素原子を有する1個のアルキル残基を有するアミノ基を表す。非限定的な例としては、メチルアミノ、エチルアミノ、n-プロピルアミノ、イソプロピル-アミノ、n-ブチルアミノおよびtert-ブチルアミノを含む。ここで、ジアルキルアミノは、それぞれが窒素原子に結合した1~4個の炭素原子を有する、2つの独立して選択されるアルキル残基を有するアミノ残基を表す。非限定的な例には、N、N-ジメチル-アミノ、N、N-ジエチル-アミノ、N、N-ジイソプロピルアミノ、N-エチル-N-メチルアミノ、N-メチル-N-n-プロピル-アミノ、N-イソプロピル-N-n-プロピルアミノおよびN-tert-ブチル-N-メチルアミノが含まれる。
【0016】
アルコキシ:1~6、より好ましくは1~4個の炭素原子を有する飽和の直鎖または分岐アルコキシ置換基、例えば、限定されるものではないが、C1-C6アルコキシ、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、1-メチルエトキシ、ブトキシ、1-メチルプロポキシ、2-メチルプロポキシ、1,1-ジメチルエトキシ、ペントキシ、1-メチルブトキシ、2-メチルブトキシ、3-メチルブトキシ、2,2-ジメチルプロポキシ、1-エチルプロポキシ、1,1-ジメチルプロポキシ、1,2-ジメチルプロポキシ、ヘキソキシ、1-メチルペントキシ、2-メチルペントキシ、3-メチルペントキシ、4-メチルペントキシ、1,1-ジメチルブトキシ、1,2-ジメチルブトキシ、1,3-ジメチルブトキシ、2,2-ジメチルブトキシ、2,3-ジメチルブトキシ、3,3-ジメチルブトキシ、1-エチルブトキシ、2-エチルブトキシ、1,1,2-トリメチルプロポキシ、1,2,2-トリメチルプロポキシ、1-エチル-1-メチルプロポキシおよび1-エチル-2-メチルプロポキシである。この定義は、他に定義されていない限り、複合置換基の一部としてのアルコキシにも適用される。
【0017】
シクロアルキル:3~12、好ましくは3~8、より好ましくは3~6個の炭素環員を有する、単環式または多環式の飽和ヒドロカルビル置換基、例えば、限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびアダマンチルである。この定義は、複合置換基の一部としてのシクロアルキル、例えば、他に定義されていない限り、C3-C6-シクロアルキル-C1-C4-アルキルに適用される。
【0018】
ハロアルキル:1~6、好ましくは1~4個の炭素原子(上記で指定)を有する直鎖または分岐アルキル置換基であり、これらの基の水素原子の一部またはすべてが上記で指定されたハロゲン原子で置き換えられており、例えば、限定されるものではないが、C1-C3ハロアルキル、例えば、クロロメチル、ブロモメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロフルオロメチル、ジクロロフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、1-クロロエチル、1-ブロモエチル、1-フルオロエチル、2-フルオロエチル、2,2-ジフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、2-クロロ-2-フルオロエチル、2-クロロ-2,2-ジフルオロエチル、2,2-ジクロロ-2-フルオロエチル、2,2,2-トリクロロエチル、ペンタフルオロエチルおよび1,1,1-トリフルオロプロプ-2-イルである。この定義は、他に定義されていない限り、複合置換基の一部としてのハロアルキルにも適用される。
【0019】
ハロアルケニルおよびハロアルキニルは、アルキル基の代わりに、アルケニルおよびアルキニル基が置換基の一部として存在することを除いて、ハロアルキルと同様に定義される。
【0020】
ハロアルコキシ:1~6、好ましくは1~4個の炭素原子(上記で指定)を有する直鎖または分岐アルコキシ置換基であり、ここで、これらの基の水素原子の一部またはすべてが、上記のようにハロゲン原子に置き換えられており、例えば、限定されるものではないが、C1-C3-ハロアルコキシ、例えば、クロロメトキシ、ブロモメトキシ、ジクロロメトキシ、トリクロロメトキシ、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロフルオロメトキシ、ジクロロフルオロメトキシ、クロロジフルオロメトキシ、1-クロロエトキシ、1-ブロモエトキシ、1-フルオロエトキシ、2-フルオロエトキシ、2,2-ジフルオロエトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシ、2-クロロ-2-フルオロエトキシ、2-クロロ-2,2-ジフルオロエトキシ、2,2-ジクロロ-2-フルオロエトキシ、2,2,2-トリクロロエトキシ、ペンタフルオロエトキシおよび1,1,1-トリフルオロプロプ-2-オキシである。この定義は、他に定義されていない限り、複合置換基の一部としてのハロアルコキシにも適用される。
【0021】
アリール:6~14個の炭素原子を有する単環式、二環式または三環式芳香族または部分芳香族置換基であり、例えば、限定されるものではないが、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インデニルおよびインダニルである。上位の一般構造への結合は、アリール残基の任意の可能な環員を介して実行することができる。アリールは、好ましくは、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、9-フェナントリルおよび9-アントラセニルから選択される。フェニルが特に好ましい。
【0022】
本明細書で使用される「エナンチオ選択的」という語は、水素化生成物の2つの考えられるエナンチオマーのうちの1つ、すなわち式(Ia)のエナンチオマーまたは式(Ib)のエナンチオマーが形成されることが好ましいことを意図する。「エナンチオ過剰率」または「ee」は、エナンチオ選択性の程度を示す:
【0023】
【0024】
主要なエナンチオマーは、キラル配位子の選択によって、例えば、式(IIIa)のキラル配位子または反対のエナンチオマー(式(IIIb)の配位子)を選択することによって制御することができる。
【0025】
本発明による方法は、式(Ia)または(Ib)、好ましくは(Ia)の化合物を調製するために使用される。
【0026】
式(Ia)または(Ib)、特に(Ia)の化合物が好ましく、ここで、置換基は以下のように定義される:
R1は、C1-C6-アルキルまたはC6-C14-アリール-C1-C4-アルキルであり、
ここで、C6-C14-アリール-C1-C4-アルキル部分のC6-C14-アリールは、非置換であるか、または、ハロゲン、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシ及びC1-C4-ハロアルコキシからなる群から選択される1~5個の置換基により置換され、
R2及びR3は、同一であり、C1-C4-アルキルからなる群から選択され、
R4は、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシ、C1-C4-ハロアルコキシ、フェニルまたはベンジルであり、
nは、0、1または2であり、
それぞれの置換基R5は、存在する場合、ハロゲン、C1-C6-アルキルおよびC1-C6-ハロアルキルからなる群から独立して選択される。
【0027】
より好ましくは、式(Ia)または(Ib)、特に(Ia)の化合物であり、ここで、置換基は以下のように定義される:
R1は、C1-C6-アルキルであり、
R2およびR3は、同一であり、C1-C4-アルキルからなる群から選択され、
あるいは
R2およびR3は、それらが結合する炭素と一緒になってC3-C6-シクロアルキル環を形成し、
R4は、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、フェニルまたはベンジルであり、
nは、0、1または2であり、
それぞれの置換基R5は、存在する場合、ハロゲンおよびC1-C6-アルキルからなる群から独立して選択される。
【0028】
さらにより好ましくは、式(Ia)または(Ib)、特に(Ia)の化合物であり、ここで、置換基は以下のように定義される:
R1は、メチル、エチルまたはn-プロピルであり、
R2及びR3は、メチルであり、
R4は、C1-C4-アルキルであり、
nは、0、1または2であり、
それぞれの置換基R5は、存在する場合、ハロゲンおよびC1-C6-アルキルからなる群から独立して選択される。
【0029】
最も好ましいのは、式(Ia)または(Ib)、特に(Ia)の化合物であり、ここで、置換基は以下のように定義される:
R1は、メチルまたはn-プロピルであり、
R2およびR3は、メチルであり、
R4は、メチルであり、
nは、0または1であり、
置換基R5は、存在する場合、フッ素である。
【0030】
本発明による方法は、式(II)の化合物のエナンチオ選択的水素化を含む。式(II)の化合物の置換基R1、R2、R3、R4、R5及び整数nは、それぞれ式(Ia)または(Ib)の化合物に対して定義されたとおりである。
【0031】
式(II)の化合物のエナンチオ選択的水素化は、式(IIIa)または(IIIb)のキラル配位子を含むキラルイリジウム触媒の存在下で行われる。
【0032】
本発明による方法の好ましい実施形態において、式(Ia)、(Ib)、(II)、(IIIa)、(IIIb)の置換基は、以下のように定義される:
R
1は、C
1-C
6-アルキルまたはC
6-C
14-アリール-C
1-C
4-アルキルであり、
ここで、C
6-C
14-アリール-C
1-C
4-アルキル部分におけるC
6-C
14-アリールは、非置換であるか、ハロゲン、C
1-C
4-アルキル、C
1-C
4-ハロアルキル、C
1-C
4-アルコキシおよびC
1-C
4-ハロアルコキシからなる群から選択される1~5個の置換基によって置換され、
R
2およびR
3は、同一であり、C
1-C
4-アルキルから選択され、
R
4は、C
1-C
4-アルキル、C
1-C
4-ハロアルキル、C
1-C
4-アルコキシ、C
1-C
4-ハロアルコキシ、フェニルまたはベンジルであり、
nは、0、1または2であり、
それぞれの置換基R
5は、存在する場合、ハロゲン、C
1-C
6-アルキルおよびC
1-C
6-ハロアルコキシからなる群から独立して選択され、
R
6は、以下の式の群であり、
【化7】
ここで、**は、6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタ[b]ピリジン部分への結合を表し、
R
13は、水素、メチルまたはエチルであり、
R
14は、C
1-C
4-アルキルであり、
R
7は、水素であり、
R
8は、C
1-C
4アルキルまたはフェニルであり、ここで、フェニルは、非置換であるか、または1~5個のC
1-C
4-アルキル置換基で置換され、
R
9及びR
10は、イソプロピル、tert-ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びピペリジン-1-イルからなる群から互いに独立して選択される。
【0033】
本発明による方法のより好ましい実施形態において、式(Ia)、(Ib)、(II)、(IIIa)、(IIIb)の置換基は、以下のように定義される:
R
1は、C
1-C
6-アルキルであり、
R
2およびR
3は、同一であり、C
1-C
4-アルキルから選択され、
R
4は、C
1-C
4-アルキル、C
1-C
4-ハロアルキル、C
1-C
4-アルコキシ、C
1-C
4-ハロアルコキシ、フェニルまたはベンジルであり、
nは、0、1または2であり、
それぞれの置換基R
5は、存在する場合、ハロゲン、C
1-C
6-アルキルおよびC
1-C
6-ハロアルキルからなる群から独立して選択され、
R
6は、以下の式の群であり、
【化8】
ここで、**は、6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタ[b]ピリジン部分への結合を表し、
R
13は、エチルであり、
R
14は、メチルであり、
R
7は、水素であり、
R
8は、メチルであり、
R
9及びR
10は、シクロヘキシル及びピペリジン-1-イルからなる群から互いに独立して選択される。
【0034】
本発明による方法の最も好ましい実施形態において、式(Ia)、(Ib)、(II)、(IIIa)、(IIIb)の置換基は、以下のように定義される:
R1は、C1-C4-アルキルであり、
R2およびR3は、メチルであり、
R4は、C1-C4-アルキルであり、
nは、0または1であり、
R5は、存在する場合、フッ素であり、
R6は、2,6-ジエチル-4-メチルフェニルであり、
R7は、水素であり、
R8は、メチルであり、
R9およびR10は、両方ともシクロヘキシルである。
【0035】
化合物(Ia)または(Ib)が所望の生成物であるかどうかに応じて、式(IIIa)または(IIIb)の配位子が選択される。
【0036】
好ましいのは、式(IIIa)および(IIIb)の配位子であり、ここで、置換基は以下のように定義される:
R6は、2,6-ジエチル-4-メチルフェニルであり、
R7は、水素であり、
R8は、メチルであり、
R9およびR10は、両方ともシクロヘキシルである。
【0037】
好ましくは、キラルイリジウム触媒は、[IrL*(COD)]Yおよび[IrL*(nbd)]Yからなる群から選択され、ここで、
L*は、式(IIIa)および(IIIb)のキラル配位子であり、
CODは、1,5-シクロオクタジエンを表し、
nbdは、ノルボルナジエンを表し、そして
Yは、[B(R
18)
4]
-、PF
6
-、および、式(VII)の[Al{OC(CF
3)
3}
4]
-からなる群から選択される非配位アニオンであり、
【化9】
式中、R
18は、フッ素、および、フェニルから選択され、これは、非置換であるか、または、C
1-C
4-アルキル、C
1-C
4-ハロアルキルおよびハロゲンから選択される1~5個の置換基で置換されている。
【0038】
より好ましいのは、式[IrL*(COD)]Yおよび[IrL*(nbd)]Yのキラルイリジウム触媒であり、ここでYは、式(VII)の[Al{OC(CF3)3}4]-または[B(R18)4]-であり、R18は、フェニルであり、非置換であるか、または、フッ素およびトリフルオロメチルから選択される1~5個の置換基で置換されている。
【0039】
さらにより好ましいのは、一般式(Va)および(Vb)のキラルイリジウム触媒であり、
【化10】
式中
R
6は、2,6-ジエチル-4-メチルフェニルであり、
R
7は、水素であり、
R
8は、メチルであり、
R
9及びR
10は、いずれも、シクロヘキシルであり、
Yは、[B(R
18)
4]
-及び式(VII)の[Al{OC(CF
3)
3}
4]
-からなる群から選択される非配位アニオンであり、
ここで、R
18は、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニルである。
【0040】
最も好ましくは、一般式(Va)のキラルイリジウム触媒であり、
【化11】
R
6は、2,4,6-トリメチルフェニルであり、
R
7は、水素であり、
R
8は、メチルであり、
R
9及びR
10は、いずれも、シクロヘキシルであり、
Yは、式(VII)の[Al{OC(CF
3)
3}
4]
-である。
【0041】
使用されるイリジウム触媒の量は、式(II)の化合物の量に基づいて、好ましくは0.001モル%~5モル%、より好ましくは0.001モル%~4モル%、最も好ましくは0.002モル%~3モル%、特に0.005モル%~1.0モル%の範囲内である。
【0042】
キラルイリジウム触媒は、[Ir(COD)Cl]2、式(IIIa)または(IIIb)のキラル配位子、および非配位アニオンのアルカリ塩などのイリジウム(I)触媒前駆物質から当技術分野で知られている方法によって調製することができる(S.Kaiserら、Angew.Chem.Int.Ed.2006、45、5194-5197;W.J.Drury IIIら、Angew.Chem.Int.Ed.2004、43、70-74)。
【0043】
本発明による方法は、式(II)の化合物のエナンチオ選択的水素化を含む。
【0044】
好ましくは、水素化は、1~300バール、好ましくは3~200バール、最も好ましくは20~150バールの圧力で水素ガスを用いて行われる。
【0045】
水素化は、好ましくは20℃~130℃、より好ましくは30℃~100℃の範囲内の温度で行う。
【0046】
適切な溶媒は、2,2,2-トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール)およびテトラフルオロプロパノール(2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロパノール)などのハロゲン化アルコール、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタンおよびトリクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、メチルtert-アミルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタンおよびアニソールなどのエーテル、および酢酸エチル、酢酸イソプロピルなどのエステル、およびそれらの混合物である。
【0047】
好ましい溶媒は、2,2,2-トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、1,2-ジクロロエタン、テトラフルオロプロパノール、1,4-ジオキサン、酢酸イソプロピル、トルエン、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0048】
より好ましい溶媒は、2,2,2-トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、1,2-ジクロロエタン、テトラフルオロプロパノール、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0049】
特に好ましいのは、2,2,2-トリフルオロエタノールおよびヘキサフルオロイソプロパノールである。
【0050】
最も好ましいのは、ヘキサフルオロイソプロパノールである。
【0051】
本発明による方法は、必要に応じて、ブレンステッド酸およびルイス酸からなる群から選択される添加剤の存在下で実施されてもよい。
【0052】
本発明による方法の好ましい実施形態では、添加剤は、ヘキサフルオロリン酸、酢酸、トリフルオロメチルスルホン酸、水、ペンタフルオロフェノール、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェノール、テトラフルオロホウ酸、テトラフルオロホウ酸ジエチルエーテル錯体、ナフィオン、アンバーリスト、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-オール、トリフェニルボラン、トリス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボラン、トリス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ボラン、ボランテトラヒドロフラン錯体、ホウ酸、アルミニウム(III)トリフルオロメタンスルホネート、亜鉛(II)トリフルオロメタンスルホネート、スカンジウム(III)トリフルオロメタンスルホネート、フッ化アルミニウム(III)、チタン(IV)イソプロポキシド、トリメチルアルミニウム、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素の錯体、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0053】
三フッ化ホウ素の適切な錯体は、三フッ化ホウ素と有機溶媒、例えばジアルキルエーテルまたはアルコールとの錯体、および、三フッ化ホウ素と有機酸、例えばカルボン酸との錯体である。好ましい三フッ化ホウ素錯体は、三フッ化ホウ素-ジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素酢酸錯体および三フッ化ホウ素n-プロパノール錯体からなる群から選択される。
【0054】
本発明による方法のより好ましい態様において、添加剤は、ヘキサフルオロリン酸、ペンタフルオロフェノール、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェノール、テトラフルオロホウ酸ジエチルエーテル錯体、トリフェニルボラン、トリス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボラン、トリス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ボラン、アルミニウム(III)トリフルオロメタンスルホネート、スカンジウム(III)トリフルオロメタンスルホネート、フッ化アルミニウム(III)、チタン(IV)イソプロポキシド、トリメチルアルミニウム、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素の錯体、およびそれらの混合物からなる群から選択され、ここで、三フッ化ホウ素の錯体は、好ましくは、三フッ化ホウ素-ジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素酢酸錯体、および三フッ化ホウ素n-プロパノール錯体からなる群から選択される。
【0055】
本発明による方法のさらにより好ましい実施形態では、添加剤は、ヘキサフルオロリン酸、ペンタフルオロフェノール、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェノール、トリフェニルボラン、トリス[3,5-ビス(トリフルオロ-メチル)フェニル]ボラン、トリス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ボラン、アルミニウム(III)トリフルオロメタンスルホネート、スカンジウム(III)トリフルオロメタンスルホネート、フッ化アルミニウム(III)、チタン(IV)イソプロポキシド、トリメチルアルミニウム、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素の錯体およびそれらの混合物からなる群から選択され、ここで、三フッ化ホウ素の錯体は、好ましくは、三フッ化ホウ素-ジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素酢酸錯体および三フッ化ホウ素n-プロパノール錯体からなる群から選択される。
【0056】
本発明による方法の最も好ましい実施形態では、添加剤は、アルミニウム(III)トリフルオロメタンスルホネート、スカンジウム(III)トリフルオロメタンスルホネート、トリス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ボラン、ヘキサフルオロリン酸、三フッ化ホウ素および三フッ化ホウ素の錯体からなる群から選択され、ここで、三フッ化ホウ素の錯体は、好ましくは、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素酢酸錯体、および三フッ化ホウ素n-プロパノール錯体からなる群から選択される。
【0057】
使用されるブレンステッド酸およびルイス酸からなる群から選択される添加剤の量は、式(II)の化合物の量に基づいて、好ましくは0.1モル%~10モル%、より好ましくは0.2モル%~5モル%、最も好ましくは0.3モル%~2モル%、特に0.4モル%~1モル%の範囲内である。
【0058】
【0059】
【0060】
配位子前駆体(鏡像異性的に濃縮された第二級アルコール)は、Kaiserら、Angew.Chem.Int.Ed.2006、45、5194-5197またはD.H.Woodmansee Chem.Sci 2010、1、72に開示されている方法のような既知の文献手順に従って調製した。配位子およびイリジウム錯体は、同じ先行文献に基づく改変手順によって調製した:
【0061】
標準手順
配位子合成の手順(Ar下):THF中のアルコール前駆体の溶液(0.25mmol、5.0mLのTHF中)を-78℃に冷却し、n-BuLi(ヘキサン中の2.5Mのn-BuLi溶液0.1mL;0.25mmol; 1当量)を、連続的に撹拌溶液に滴下した。添加の完了後、溶液を室温に温め、この温度でさらに30分間撹拌した。溶液を再度-78℃に冷却し、R9R10PCl(0.25ミリモル、1当量)を、連続的に撹拌溶液に添加した。混合物を室温に温め、続いて50℃に加熱し、この温度で一晩保持した。31P-NMRを用いて配位子の理論収率を計算し、配位子をさらに精製することなく次工程に使用した。
【0062】
錯化の方法(Ar下):粗配位子液に、[Ir(COD)2]BARF(BARF=テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]-ホウ酸塩)(固形物として、理論収率に基づいて1当量)を添加した。得られた混合物を50℃に加熱し、この温度で3時間保持した。
【0063】
後処理(空気下):室温に冷却した後、反応溶液をシリカ上で回転蒸発させ、シリカのカラムに負荷する。ペンタン/ジエチルエーテルを用いて副成分を溶出し、続いて所望の錯体をDCMで溶出した。次いで、溶媒を減圧下で蒸発させた。
【0064】
以下の特定の触媒を合成し、特性決定した:
【化13】
【0065】
【0066】
Va-1
反応は、上記の標準手順に従って行った。錯体は、オレンジ色の固体(282mg、[Ir(COD)2]BARFに基づいて76%)として分離できた。
【0067】
1H-NMR (300 MHz, CD2Cl2): δ (ppm) = 7.73 (s, 8H), 7.56 (s, 4H), 7.23 (s, 1H), 7.14 (s, 1H), 7.00 (s, 1H), 5.62 (dd, J = 8.0, 5.6 Hz, 1H), 5.46-5.39 (m, 1H), 4.32 (dd, J = 7.4, 3.4 Hz, 1H), 3.36-3.27 (m, 1H), 3.19-3.06 (m, 2H), 3.01-2.91 (m, 2H), 2.80 (dq, J = 14.9, 7.4 Hz, 1H), 2.59-2.43 (m, 2H), 2.43-2.15 (m, 7H), 2.15-0.83 (m, 36H), 0.66-0.48 (m, 1H)。 31P-NMR (122 MHz, CD2Cl2) δ (ppm) = 119.00。 19F-NMR (282 MHz, CD2Cl2) δ (ppm) = -62.87。 HR-MS (ESI) m/z C40H58NOPIr [M]+ 計算値792.3880、分析値792.3903。
【0068】
Va-2
THF中のそれぞれのアルコール前駆体の溶液(0.25mmol、5.0mLのTHF中)を-78℃に冷却し、n-BuLi(ヘキサン中の2.5Mのn-BuLi溶液0.1mL;0.25mmol;1当量)を、連続的に撹拌溶液に滴下した。添加の完了後、溶液を室温に温め、この温度でさらに30分間撹拌した。溶液を再度-78℃に冷却し、Cy2PCl(0.25ミリモル、1当量)を連続的に撹拌溶液に添加した。混合物を室温に温め、続いて50℃に加熱し、この温度で一晩保持した。反応物を室温まで冷却した後、THFを除去し、減圧乾燥し、[Ir(COD)Cl]2(0.125ミリモル)およびDCM(5.0ml)を管に添加し、50℃で2時間撹拌した。次に、反応混合物にLi{Al[OC(CF3)3]4}(0.275mmol)を加え、室温で一晩攪拌した。反応溶液をシリカ上で回転蒸発させ、DCMで調製したシリカのカラムに負荷して、n-ヘプタン/DCM:1/1でクロマトグラフィー処理し、オレンジ色固体(140mg、32%)を得る。
【0069】
1H-NMR (300 MHz, CD2Cl2) δ = 7.27 (s, 1H), 7.18 (s, 1H), 7.04 (s, 1H), 5.66 (dt, J = 8.0, 3.8 Hz, 1H), 5.50-5.44 (m, 1H), 4.40-4.31 (m, 1H), 3.46-3.26 (m, 1H), 3.25-2.91 (m, 4H), 2.91-2.77 (m, 1H), 2.57-2.52 (m, 2H), 2.50-2.20 (m, 7H), 2.19-1.78 (m, 13H), 1.70-1.53 (m, 5H), 1.49-1.02 (m, 18H), 0.62 (s, 1H)。 31P-NMR (122 MHz, CD2Cl2) δ = 119.02。 19F-NMR (282 MHz, CD2Cl2) δ = -75.74。 HR-MS (ESI) m/z C45H60NOPIr [M]+ 計算値792.3880、分析値792.3903。
【0070】
Va-3
反応は、上記の標準手順に従って行った。錯体は、オレンジ色の固体(162mg、[Ir(COD)2]BARFに基づいて42%)として分離できる。
【0071】
1H-NMR (300 MHz、CD2 Cl2) δ = 7.80-7.65 (m、8H)、7.65-7.41 (m、10H)、7.17 (s、1H)、7.04 (s、1H)、5.70-5.65 (m、1H)、5.53-5.47 (m、1H)、4.42-4.35 (m、1H)、3.43-3.32 (m、2H)、3.27-3.09 (m、2H)、3.09-2.93 (m、1H)、2.86 (dq、J = 14.8、7.4 Hz、1H)、2.55-2.48 (m、2H)、2.38 (s、3H)、2.27-1.46 (m、19H)、1.46-0.74 (m、18H) 、0.69 - 0.52 (m、1H)。 31 P-NMR (122 MHz、CD2 Cl2) δ = 119.07。 19 F-NMR (282 MHz、CD2 Cl2) δ = -62.87。 HR-MS (ESI)M/z C45H60NOPIr[M]+ 計算値854.4036、分析値854.4073。
【0072】
Va-4
ClP-(S)-BINOL(0.25mmol、新しく調製)および[Ir(COD)2]BARF(287mg、0.225mmol)を用いて、上記の標準手法に従って反応を行った。錯体は、ヘプタン/DCM:1/1を用いた3回のカラムクロマトグラフィー後にオレンジ色固体(104mg)として単離することができた。31PNMRでは、依然として4つのピークが示されており、主なピークは117.72ppm(約80%の純度)である。HRMSは、所望の錯体が存在することを示す。
【0073】
31P-NMR (122 MHz, CD2Cl2) δ = 120.36, 117.72, 114.61, 92.27。 19F-NMR (282 MHz, CD2Cl2) δ = -62.85。 HR-MS (ESI) m/z C48H48NO3PIr [M]+ 計算値910.2996、分析値910.3026。
【0074】
Va-5
反応は、1,1’-(クロロホスファンジイル)ジピペリジン(0.25mmol、新たに調製)を用いて、上記の標準手順に従って行った。錯体を赤色固体(149mg)として単離することができた。31PNMRには6つのピークがあり、主なピークは102.35及び98.87ppm(2:3)である。HRMSは、所望の錯体が存在することを示す。
【0075】
31P-NMR (122 MHz, CD2Cl2) δ = 102.35, 101.96, 101.40, 98.87, 98.46, 98.35。 19F-NMR (282 MHz, CD2Cl2) δ = -62.87。 HR-MS (ESI) m/z C39H58N3OPIr [M]+ 計算値808.3941、分析値808.3958。
【0076】
Va-6
THF中のそれぞれのアルコール前駆体の溶液(0.25mmol、5.0mLのTHF中)を-78℃に冷却し、n-BuLi(ヘキサン中の2.5Mのn-BuLi溶液0.1mL;0.25mmol;1当量)を、連続的に撹拌溶液に滴下した。添加の完了後、溶液を室温に温め、この温度でさらに30分間撹拌した。溶液を再度-78℃に冷却し、Cy2PCl(0.25ミリモル、1当量)を連続的に撹拌溶液に添加した。混合物を室温に温め、続いて50℃に加熱し、この温度で一晩保持した。反応物を室温まで冷却した後、THFを除去し、減圧乾燥し、[Ir(COD)Cl]2(0.125ミリモル)およびDCM(5.0ml)を管に添加し、50℃で2時間撹拌した。次に、KPF6(0.25ミリモル)を加え、室温で一晩撹拌した。反応溶液をシリカ上で回転蒸発させ、DCMで調製したシリカのカラムに負荷し、EtOAc/DCM:1/10でクロマトグラフィー処理し、2回のカラムクロマトグラフィー後にオレンジ色固体(130mg、55%)を得る。
【0077】
1H-NMR (300 MHz, CD2Cl2) δ = 7.37-7.02 (m, 3H), 5.74-5.56 (m, 1H), 5.52-5.46 (m, 1H), 4.47-4.30 (m, 1H), 3.45-3.21 (m, 1H), 3.19-2.92 (m, 3H), 2.66 (s, 3H), 2.63-2.48 (m, 2H), 2.44 (s, 3H), 2.40-2.19 (m, 2H), 2.16-1.70 (m, 15H), 1.68-1.46 (m, 6H), 1.41-1.28 (m, 13H), 1.18-0.95 (m, 5H), 0.71-0.58 (m, 1H)。 31P-NMR (122 MHz, CD2Cl2) δ = 118.42, -127.01, -132.85, -138.70, -144.55, -150.39, -156.24, -162.09。 19F-NMR (376 MHz, CD2Cl2) δ = -72.64, -74.52。 HR-MS (ESI) m/z C41H60NOPIr [M]+ 計算値806.4036、分析値806.4061。
【0078】
Va-7
CgPBr(0.25mmol、新たに調製)を用いて、上記の標準的な手順に従って反応を行った。錯体は、オレンジ色固体(120mg)として単離することができた。31PNMRには2つのピークが示されている。HRMSは、所望の錯体が存在することを示す。
【0079】
31P-NMR (122 MHz, CD2Cl2) δ = 89.41, 83.71。 19F-NMR (282 MHz, CD2Cl2) δ = -62.86。 HR-MS (ESI) m/z C35H46NO4PIr [M]+ 計算値768.2788、分析値768.2816。
【0080】
Va-8
反応は、2-(tert-ブチルクロロホスファニル)ピリジン(0.25mmol)を使用して、上記の標準手順に従って行った。錯体を赤色固体(196mg)として単離することができた。31PNMRには、107.59及び102.97ppmに2つのピーク(1:1.4)がある。HRMSは、所望の錯体が存在することを示す。31P-NMR(122MHz、CD2Cl2) δ=107.59、102.97。19F-NMR(282MHz、CD2Cl2) δ=-62.83。 HR-MS(ESI)M/z C34H43N2OPIr[M]+ 計算値719.2737、分析値719.2757。
【0081】
Va-9
THF中のそれぞれのアルコール前駆体の溶液(0.25mmol、5.0mLのTHF中)を-78℃に冷却し、n-BuLi(ヘキサン中の2.5Mのn-BuLi溶液0.1mL;0.25mmol;1当量)を、連続的に撹拌溶液に滴下した。添加の完了後、溶液を室温に温め、この温度でさらに30分間撹拌した。溶液を再度-78℃に冷却し、Cy2PCl(0.25ミリモル、1当量)を連続的に撹拌溶液に添加した。混合物を室温に温め、続いて50℃に加熱し、この温度で一晩保持した。反応物を室温まで冷却した後、THFを除去し、減圧乾燥し、[Ir(COD)Cl]2(0.125ミリモル)およびDCM(5.0ml)を管に添加し、50℃で2時間撹拌した。次に、反応混合物にLi{Al[OC(CF3)3]4}(0.275mmol)を加え、室温で一晩攪拌した。反応溶液をシリカ上で回転蒸発させ、DCMで調製したシリカのカラムに負荷し、n-ヘプタン/DCM:1/1でクロマトグラフィー処理し、オレンジ色固体(122mg、28%)を得る。
【0082】
1H-NMR (300 MHz, CD2Cl2) δ = 7.40-7.12 (m, 4H), 5.67-5.63 (m, 1H), 5.50-5.42 (m, 1H), 4.43-4.36 (m, 1H), 3.39-3.30 (m, 1H), 3.25-2.90 (m, 3H), 2.67 (s, 3H), 2.60-2.42 (m, 4H), 2.42-2.18 (m, 2H), 2.13-1.99 (m, 5H), 1.96-1.71 (m, 9H), 1.65-1.52 (m, 5H), 1.45-1.01 (m, 12H), 0.69-0.53 (m, 1H)。 31P-NMR (121 MHz, CD2Cl2) δ = 118.81。 19F-NMR (282 MHz, CD2Cl2) δ = -75.74。 HR-MS (ESI) m/z C37H52NOPIr [M]+ 計算値750.3416、分析値750.3420。
【0083】
Va-10
287mgの[Ir(COD)2]BARF(0.225ミリモル)を用いて、上記の手順に従って反応を行った。錯体は、オレンジ色の固体(148mg、[Ir(COD)2]BARFに基づいて40%)として分離できた。
【0084】
1H-NMR (300 MHz, CD2Cl2): δ (ppm) = 7.91-7.46 (m, 12H), 7.21 (s, 1H), 7.09 (s, 1H), 6.94 (s, 1H), 5.67-5.63 (m, 1H), 5.46-5.41 (m, 1H), 4.38-4.36 (m, 1H), 3.36-3.32 (m, 1H), 3.19-2.85 (m, 3H), 2.64 (s, 3H), 2.53-2.46 (m, 2H), 2.41 (s, 3H), 2.35 (s, 3H), 2.31-2.18 (m, 2H), 2.19-1.83 (m, 14H), 1.68-1.54 (m, 6H), 1.38-1.20 (m, 5H), 1.14-0.97 (m, 5H), 0.68-0.56 (m, 1H)。 31P-NMR (122 MHz, CD2Cl2) δ = 118.64。 19F-NMR (282 MHz, CD2Cl2) δ = -62.87。 HR-MS (ESI) m/z C38H54NOPIr [M]+ 計算値764.3572、分析値764.3577。
【0085】
Va-11
反応は、上記の手順に従って行った。錯体は、オレンジ色の固体(274mg、[Ir(COD)2]BARFに基づいて73%)として分離できた。
【0086】
1H-NMR (300 MHz, CD2Cl2): δ (ppm) = 7.79-7.66 (m, 8H), 7.56 (s, 4H), 7.29 (s, 1H), 7.23 (s, 1H), 7.13 (s, 1H), 5.65 (td, J = 5.9, 2.2 Hz, 1H), 5.46-5.40 (m, 1H), 4.42-4.36 (m, 1H), 3.38-3.30 (m, 1H), 3.19-2.86 (m, 3H), 2.65 (s, 3H), 2.59-2.44 (m, 2H), 2.42 (s, 3H), 2.38-1.54 (m, 20H), 1.46-0.98 (m, 21H), 0.70-0.58 (m, 1H)。 31P-NMR (122 MHz, CD2Cl2) δ (ppm) = 118.67。 19F-NMR (282 MHz, CD2Cl2) δ (ppm) = -62.86。 HR-MS (ESI) m/z C41H60NOPIr [M]+ 計算値806.4042、分析値806.4053。
【0087】
Va-12
287mgの[Ir(COD)2]BARF(0.225ミリモル)を用いて、上記の手順に従って反応を行った。錯体は、オレンジ色の固体(298mg、[Ir(COD)2]BARFに基づいて82%)として分離できた。
【0088】
1H-NMR (300 MHz, CD2Cl2): δ (ppm) = 7.80-7.52 (m, 12H), 7.42-7.19 (m, 3H), 7.12 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 5.65 (td, J = 5.6, 2.6 Hz, 1H), 5.48-5.42 (m, 1H), 4.43-4.37 (m, 1H), 3.38-3.30 (m, 1H), 3.21-2.89 (m, 3H), 2.67 (s, 3H), 2.58-2.45 (m, 2H), 2.42 (s, 3H), 2.38-2.16 (m, 2H), 2.13-2.05 (m, 3H), 2.02-1.89 (m, 4H), 1.84 (s, 3H), 1.81-1.72 (m, 2H), 1.64-1.49 (m, 3H), 1.39-1.19 (m, 8H), 1.12-0.99 (m, 4H), 0.68-0.56 (m, 1H)。 31P-NMR (122 MHz, CD2Cl2) δ = 118.80。 19F-NMR (282 MHz, CD2Cl2) δ = -62.88。 HR-MS (ESI) m/z C37H52NOPIr [M]+ 計算値750.3416、分析値750.3420。
【0089】
実施例
反応は金属オートクレーブ中で行った。反応混合物を、後処理せずに、HPLC(キラルパックICカラム、95/5 ヘプタン/エタノール、1mL/分)またはSFC(OZ-Hカラム、超臨界CO2中2.5%メタノール、3mL/分)クロマトグラフィーを介して分析した。
【0090】
実施例1~12
Ir-錯体(与えられた触媒負荷量)および0.64gの1-(2,2,4-トリメチル-1-キノリル)エタノン(3mmol)を、PTFE被覆撹拌棒を含む8mLオートクレーブバイアルに入れた。オートクレーブバイアルを、隔壁を有するスクリューキャップを使用して閉じ、アルゴンでフラッシュした(10分間)。ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP、4mL)を、隔壁を介してバイアルに添加した。バイアルをアルゴン含有オートクレーブに入れ、オートクレーブをアルゴンでフラッシュした(10分)。オートクレーブを水素ガス(10バール)で加圧し、続いて大気圧まで3回減圧した。この後、オートクレーブを60バールの水素圧に加圧し、適切なアルミナブロックに入れた。85℃に加熱した後、反応物をこの温度に所定時間保持した。室温に冷却し、減圧した後、バイアルをオートクレーブから取り出し、反応結果をGC-FID分析(EtOHで希釈)により決定し、エナンチオ過剰率をHPLC分析により決定した。典型的な値を示す。
【0091】
【0092】
実施例13~18:
Ir-錯体(与えられた触媒負荷量)および2.56gの1-(2,2,4-トリメチル-1-キノリル)エタノン(12mmol)を、25mLオートクレーブに入れた。オートクレーブをアルゴンでフラッシュした(10分)。ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP、16mL)をオートクレーブに加えた。オートクレーブを水素ガス(10バール)で加圧し、続いて大気圧まで3回減圧した。この後、オートクレーブを60バールの水素圧に加圧し、適切なアルミナブロックに入れた。85℃に加熱した後、反応物をこの温度に所定時間保持した。室温に冷却し、減圧した後、反応結果をGC-FID分析(EtOHで希釈)により決定し、エナンチオ過剰率をHPLC分析により決定した。
【0093】
【0094】
実施例19~48:
Ir-錯体Va-1(与えられた触媒負荷量)および0.64gの1-(2,2,4-トリメチル-1-キノリル)エタノン(3mmol、ヘプタン:水洗浄+結晶化で精製)を、PTFE被覆撹拌棒を含む8mLオートクレーブバイアルに入れた。オートクレーブバイアルを、隔壁を有するスクリューキャップを使用して閉じ、アルゴンでフラッシュした(10分間)。ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP、4mL)および添加剤(与えられた負荷量)を隔壁を介してバイアルに添加した。バイアルをアルゴン含有オートクレーブに入れ、オートクレーブをアルゴンでフラッシュした(10分)。オートクレーブを水素ガス(10バール)で加圧し、続いて大気圧まで3回減圧した。この後、オートクレーブを60バールの水素圧に加圧し、適切なアルミナブロックに入れた。85℃に加熱した後、反応物をこの温度に所定時間保持した。室温に冷却し、減圧した後、バイアルをオートクレーブから取り出し、反応結果をGC-FID分析(EtOHで希釈)により決定し、エナンチオ過剰率をHPLC分析により決定した。典型的な値を示す。
【0095】
【0096】
実施例49~54
Ir-錯体Va-1(与えられた触媒負荷量)および1-(2,2,4-トリメチル-1-キノリル)エタノン(与えられた量;ヘプタン:水洗浄+結晶化で精製)を25mLオートクレーブに入れた。オートクレーブを、アルゴンでフラッシュした(10分)。ヘキサフルオロイソプロパノール(1-(2,2,4-トリメチル-1-キノリル)エタノン1mmol当たり1.33mL)および添加剤(与えられた負荷量)を、オートクレーブに加えた。オートクレーブを水素ガス(10バール)で加圧し、続いて大気圧まで3回減圧した。この後、オートクレーブを60バールの水素圧に加圧し、適切なアルミナブロックに入れた。85℃に加熱した後、反応物をこの温度に所定時間保持した。室温に冷却し、減圧した後、反応結果をGC-FID分析(EtOHで希釈)により決定し、エナンチオ過剰率をHPLC分析により決定した。
【0097】
【0098】
実施例55~56
Ir錯体(識別し、与えられた触媒負荷量)および0.64gの1-(2,2,4-トリメチル-1-キノリル)エタノン(3mmol、ヘプタン:水洗浄+結晶化で精製)を、PTFE被覆撹拌棒を含む8mLオートクレーブバイアルに入れた。オートクレーブバイアルを、隔壁を有するスクリューキャップを使用して閉じ、アルゴンでフラッシュした(10分間)。ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP、4ml)およびBF3*OEt2[1-(2,2,4-トリメチル-1-キノリル)エタノンに対して1モル%]を、隔壁を介してバイアルに添加した。バイアルをアルゴン含有オートクレーブに入れ、オートクレーブをアルゴンでフラッシュした(10分)。オートクレーブを水素ガス(10バール)で加圧し、続いて大気圧まで3回減圧した。この後、オートクレーブを60バールの水素圧に加圧し、適切なアルミナブロックに入れた。85℃に加熱した後、反応物をこの温度に所定時間保持した。室温に冷却し、減圧した後、バイアルをオートクレーブから取り出し、反応結果をGC-FID分析(EtOHで希釈)により決定し、エナンチオ過剰率をHPLC分析により決定した。典型的な値を示す。
【0099】
【0100】
実施例57~60
Ir錯体Va-1(0.02mol%、0.6μmol)および0.64gの1-(2,2,4-トリメチル-1-キノリル)エタノン(3mmol、ヘプタン:水洗浄+結晶化で精製)を、PTFE被覆撹拌棒を含む8mLオートクレーブバイアルに入れた。オートクレーブバイアルを、隔壁を有するスクリューキャップを使用して閉じ、アルゴンでフラッシュした(10分間)。2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE,4ml)とBF3*OEt2(与えられた負荷量)を隔壁を介してバイアルに加えた。バイアルをアルゴン含有オートクレーブに入れ、オートクレーブをアルゴンでフラッシュした(10分)。オートクレーブを水素ガス(10バール)で加圧し、続いて大気圧まで3回減圧した。この後、オートクレーブを60バールの水素圧に加圧し、適切なアルミナブロックに入れた。85℃に加熱した後、反応物をこの温度で3時間保持した。室温に冷却し、減圧した後、バイアルをオートクレーブから取り出し、反応結果をGC-FID分析(EtOHで希釈)により決定し、エナンチオ過剰率をHPLC分析により決定した。典型的な値を示す。
【0101】
【0102】
比較例
Ir-錯体(与えられた触媒負荷量)および0.64gの1-(2,2,4-トリメチル-1-キノリル)エタノン(3mmol)を、PTFE被覆撹拌棒を含む8mLオートクレーブバイアルに入れた。オートクレーブバイアルを、隔壁を有するスクリューキャップを使用して閉じ、アルゴンでフラッシュした(10分間)。ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP、4mL)を、隔壁を介してバイアルに添加した。バイアルをアルゴン含有オートクレーブに入れ、オートクレーブをアルゴンでフラッシュした(10分)。オートクレーブを水素ガス(10バール)で加圧し、続いて大気圧まで3回減圧した。この後、オートクレーブを60バールの水素圧に加圧し、適切なアルミナブロックに入れた。85℃に加熱した後、反応物をこの温度に所定時間保持した。室温に冷却し、減圧した後、バイアルをオートクレーブから取り出し、反応結果をGC-FID分析(EtOHで希釈)により決定し、エナンチオ過剰率をHPLC分析により決定した。
【0103】
【0104】
この実験結果の集合は、錯体Va-1およびVa-2の優位性を示す。Va-2は、0.01モル%の触媒で6時間後にVa-1よりわずかに高い転化率を与える。Va-1は、0.01mol%の触媒を用いて17時間後にVa-10(=WO2019/185541A1からのVa-10)よりも有意に高い転化率を与える。Va-10はVa-13(=WO2019/185541A1からのVa-1)と同様の成績を与えるが、触媒量の1/4のみが使用された。従って、Va-13よりも優れていると考えなければならない。Va-13は、DE112015001290T5からのIr触媒(I)と比較して優れた転化率を与える。さらに、全ての触媒Vaは、DE112015001290T5からのIr触媒(1)(81.7%ee)と比較して、優れたエナンチオ選択性(>95%ee)を与える。触媒Va-1は、触媒負荷量の10分の1(0.01対0.1モル%)であっても、DE112015001290T5からのIr触媒(1)よりも高い転化率(93.1対84%)を与える。
【0105】
【手続補正書】
【提出日】2022-09-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
上記目的は、式(Ia)または(Ib)の化合物を調製する方法によって達成され、
【化1】
式中、
R
1は、C
1-C
6-アルキル、C
1-C
6-ハロアルキル、C
1-C
6-アルコキシ-C
1-C
6-アルキル、C
3-C
6-シクロアルキル、C
6-C
14-アリール、またはC
6-C
14-アリール-C
1-C
4-アルキルからなる群から選択され、
ここで、C
1-C
6-アルキル、C
3-C
6-シクロアルキル、および、C
1-C
6-アルコキシ-C
1-C
6-アルキル部分のC
1-C
6-アルコキシは、ハロゲン、C
1-C
4-アルコキシ、C
1-C
4-ハロアルキル、C
1-C
4-ハロアルコキシおよびフェニルからなる群から独立して選択される1~3個の置換基によって任意に置換され、ここで、フェニルは、ハロゲン、C
1-C
4-アルキル、C
1-C
4-アルコキシ、C
1-C
4-ハロアルキルおよびC
1-C
4-ハロアルコキシから互いに独立して選択される1~5個の置換基によって置換されてもよく、そしてここで、
各場合におけるC
6-C
14-アリール及びC
6-C
14-アリール-C
1-C
4-アルキル部分のC
6-C
14-アリールは、非置換であるか、または、ハロゲン、C
1-C
4-アルキル、C
1-C
4-ハロアルキル、C
1-C
4-アルコキシ及びC
1-C
4-ハロアルコキシからなる群から選択される1~5個の置換基により置換され、
R
2及びR
3は、同一であり、水素、C
1-C
6-アルキル、C
1-C
6-ハロアルキルおよびC
1-C
6-アルコキシ-C
1-C
6-アルキルからなる群から選択され、または、
R
2及びR
3は、それらが結合している炭素と一緒になってC
3-C
6-シクロアルキル環を形成し、
R
4は、水素、C
1-C
6-アルキル、C
1-C
6-ハロアルキル、C
1-C
6-アルコキシ、C
1-C
6-ハロアルコキシ、C
1-C
6-アルキルアミノ、C
2-C
6-アルケニル、C
2-C
6-アルキニル、C
3-C
6-シクロアルキル、C
3-C
6-シクロアルキル-C
1-C
4-アルキル、C
2-C
6-アルケニルオキシ、9-フルロレニルメチレンオキシ、C
6-C
14-アリール、C
6-C
14-アリールオキシ、C
6-C
14-アリール-C
1-C
4-アルキルオキシまたはC
6-C
14-アリール-C
1-C
4-アルキルであり、
ここで、C
6-C
14-アリールは、そのまままたはその一部として、非置換であるか、または、ハロゲン、C
1-C
4-アルキル、C
1-C
4-ハロアルキル、C
1-C
4-アルコキシおよびC1-C
4-ハロアルコキシからなる群から選択される1~5個の置換基によって置換され、
nは、0、1、2、3または4であり、
それぞれの置換基R
5は、存在する場合、ハロゲン、C
1-C
6-アルキル、C
1-C
6-ハロアルキル、C
1-C
6-アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、および-C(=O)-C
1-C
6-アルキルからなる群から独立して選択され、
該方法は、
キラルイリジウム触媒の存在下で、式(II)の化合物のエナンチオ選択的水素化を含み、
【化2】
式中、置換基R
1、R
2、R
3、R
4、R
5および整数nは、式(Ia)または(Ib)の化合物に対して定義されたとおりであり、
キラルイリジウム触媒が、式(IIIa)または(IIIb)のキラル配位子を含むことを特徴とする;
【化3】
式中、R
6は、以下の式の群であり、
【化4】
ここで、**は、6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタ[b]ピリジン部分への結合を表し、
R
13は、水素、メチルまたはエチルであり、
R
14は、C
1-C
6-アルキルであり、
R
7は、水素であり、
R
8は、C
1-C
4-アルキルまたはフェニルであり、ここで、フェニルは、非置換であるか、または、ハロゲン、C
1-C
4-アルキル、C
1-C
4-ハロアルキル、C
1-C
4-アルコキシおよびC
1-C
4-ハロアルコキシからなる群より選択される1~5個の置換基で置換され、
R
9及びR
10は、C
1-C
6-アルキル、C
3-C
8-シクロアルキル、ピペリジニル及びピリジルからなる群から互いに独立して選択され、または、
R
9及びR
10は、それらが結合しているリン原子と一緒になって、G
1またはG
2群を形成し、
【化5】
ここで、「x」および「y」によって特定される結合は、両方ともリン原子に直接結合し、
p及びqは、互いに独立して、0、1および2から選択され、
R
11及びR
12は、独立して、C
1-C
6-アルキル及びフェニルから選択され、該基は、ハロゲン、C
1-C
4-アルキル、C
1-C
4-アルコキシおよびフェニルからなる群から選択される1~5個の置換基で置換されていてもよく、該基は、1個または2個のC
1-C
4-アルキル置換基で置換されていてもよく、または
R
9及びR
10は、それらが結合しているリン原子と一緒になって、G
3群を形成し、
【化6】
ここで、「u」及び「v」によって特定される結合は、両方ともリン原子に直接結合する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0065
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0065】
【国際調査報告】