IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニバーシティー オブ フロリダ リサーチ ファンデーション, インク.の特許一覧

特表2022-549654RANタンパク質疾患のためのワクチン治療
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-28
(54)【発明の名称】RANタンパク質疾患のためのワクチン治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20221118BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221118BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20221118BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20221118BHJP
   A61K 39/29 20060101ALI20221118BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20221118BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20221118BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20221118BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20221118BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20221118BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20221118BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20221118BHJP
   A61K 39/05 20060101ALI20221118BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20221118BHJP
   A61K 39/08 20060101ALI20221118BHJP
   A61K 39/10 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
A61K39/00 H
A61P25/00
A61P25/14
A61P37/04
A61K39/29
A61K39/12
A61K48/00
A61K9/10
A61K9/14
A61K47/65
A61P25/28
A61K39/39
A61K39/05
A61P21/04
A61K39/08
A61K39/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518829
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(85)【翻訳文提出日】2022-05-18
(86)【国際出願番号】 US2020051670
(87)【国際公開番号】W WO2021061537
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】62/904,612
(32)【優先日】2019-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】501453307
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ フロリダ リサーチ ファンデーション, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ラヌム,ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】ラボワソニア,ローレン,エー.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA16
4C076AA29
4C076BB11
4C076CC01
4C076CC06
4C076CC35
4C076DD63
4C076FF63
4C084AA13
4C084AA17
4C084MA21
4C084MA38
4C084MA66
4C084NA03
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA151
4C084ZA152
4C084ZA181
4C084ZA182
4C084ZC371
4C084ZC372
4C085AA03
4C085AA38
4C085BA10
4C085BA12
4C085BA17
4C085BA51
4C085BA90
4C085BB11
4C085CC32
4C085DD86
4C085EE03
4C085EE06
4C085FF01
4C085FF02
4C085FF13
4C085FF14
(57)【要約】
本開示の側面は、対象において抗反復関連非ATG(RAN)タンパク質抗体の発現もしくは産生を惹起する(または増強する)ための組成物および方法に関する。本開示の方法に従う組成物の投与は、いくつかの態様において、減少したレベルのRANタンパク質の発現および/または凝集をもたらすこともある。かかる組成物および方法は、したがって、RANタンパク質に関連することが知られている疾患および障害の処置に有用なこともある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RANタンパク質に関連する疾患もしくは障害の予防または処置を、これを必要とするヒト対象においてするための方法であって、方法が、治療的に有効な量のRANタンパク質ワクチンを対象へ投与することを含み、ここでRANタンパク質ワクチンの対象への投与が、対象における1以上の抗RANタンパク質抗体の産生を惹起する、前記方法。
【請求項2】
RANタンパク質の翻訳に関連する疾患または障害が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病(HD)、脆弱X症候群(FRAXA)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、脊髄小脳失調症1(SCA1)、脊髄小脳失調症2(SCA2)、脊髄小脳失調症3(SCA3)、脊髄小脳失調症6(SCA6)、脊髄小脳失調症7(SCA7)、脊髄小脳失調症8(SCA8)、脊髄小脳失調症12(SCA12)、もしくは脊髄小脳失調症17(SCA17)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄小脳失調症36型(SCA36)、脊髄小脳失調症29型(SCA29)、脊髄小脳失調症10型(SCA10)、筋強直症ジストロフィー1型(DM1)、筋強直症ジストロフィー2型(DM2)、またはフックス角膜内皮ジストロフィー(CTG181)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
疾患が、ALSであり、
任意に、ALSが、C9Orf72遺伝子における1以上の突然変異によって引き起こされる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
対象が、RANタンパク質の翻訳によって特徴付けられる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
翻訳されたRANタンパク質が、以下:ポリ(CP)、ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(PR)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、ポリ(A)、ポリ(G)、ポリ(S)、ポリ(C)、ポリ(Q)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(QAGR(配列番号2))、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、またはポリ(GK)の1以上を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
対象において翻訳されたRANタンパク質が、対象のC9Orf72伸長反復から発現されたポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、および/またはポリ(PR)のRANタンパク質である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
RANタンパク質ワクチンが、1以上のジペプチド反復(DPR)ペプチド抗原を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
各DPRペプチド抗原が、2ジアミノ酸反復と150ジアミノ酸反復との間を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
各DPRペプチド抗原が、10ジアミノ酸反復と25ジアミノ酸反復との間を含む、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
1以上のDPRペプチド抗原の各々が、(GA)x(配列番号4)、(GP)x(配列番号5)、(GR)x(配列番号7)、(PA)x(配列番号8)、(PR)x(配列番号6)、(CP)x(配列番号3)、(A)x(配列番号9)、(G)x(配列番号10)、(S)x(配列番号11)、(C)x(配列番号12)、(Q)x(配列番号13)、(GD)x(配列番号14)、(GE)x(配列番号15)、(GQ)x(配列番号16)、(GT)x(配列番号17)、(L)x(配列番号18)、(LP)x(配列番号19)、(LPAC)x(配列番号20)、(LS)x(配列番号21)、(P)x(配列番号22)、(QAGR)x(配列番号23)、(RE)x(配列番号24)、(SP)x(配列番号25)、(VP)x(配列番号26)、(FP)x(配列番号27)、および/または(GK)x(配列番号28)ジアミノ酸反復を含み、ここでXが、抗原の反復単位数を表す、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
DPRペプチド抗原が、(GA)10(配列番号4)、(GA)15(配列番号4)、(GR)25(配列番号7)、(GP)10(配列番号5)、(PR)10(配列番号6)、またはそれらの組み合わせを含む、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
DPRペプチド抗原が、[(GA)15(配列番号4)+(GR)25(配列番号7)+(PR)10(配列番号6)]または[(GA)15(配列番号4)+(GR)25(配列番号7)+(PR)10(配列番号6)+(GP)10(配列番号5)]を含む、請求項7~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
RANタンパク質ワクチンが、1以上の追加の免疫原をさらに含む、請求項7~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
1以上の免疫原が、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ブルーキャリア免疫原性タンパク質(CCH)、ウシ血清アルブミン(BSA)、オボアルブミン(OVA)、ジフテリア毒素、麻疹ウイルス融合タンパク質(MVF)、B型肝炎ウイルス表面抗原(HB-sAg)、破傷風毒素(TT)、百日咳毒素(PT)、T細胞ヘルパーエピトープ、または上記いずれかの一部を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
1以上の免疫原が、1以上の連結分子を介してDPRペプチド抗原へ連結されている、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
1以上の連結分子の各々が、アミノ酸、Lys-、Gly-、Lys-Lys-Lys-、(α、ε-N)Lys、およびε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号29)からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
RANタンパク質ワクチンが、表1に記述される式を含む、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
1以上の抗RANタンパク質抗体の各々が、ポリ(CP)、ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(PR)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、ポリ(A)、ポリ(G)、ポリ(S)、ポリ(C)、ポリ(Q)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(QAGR(配列番号2))、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、またはポリ(GK)のジアミノ酸反復を含有するRANタンパク質へ結合する、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
抗RANタンパク質抗体が、抗ポリ(CP)、抗ポリ(GA)、抗ポリ(GP)、抗ポリ(PR)、抗ポリ(GR)、抗ポリ(PA)、抗ポリ(A)、抗ポリ(G)、抗ポリ(S);抗ポリ(C);抗ポリ(Q);抗ポリ(GD)、抗ポリ(GE)、抗ポリ(GQ)、抗ポリ(GT)、抗ポリ(L)、抗ポリ(LP)、抗ポリ(LPAC(配列番号1))、抗ポリ(LS)、抗ポリ(P)、抗ポリ(QAGR(配列番号2))、抗ポリ(RE)、抗ポリ(SP)、抗ポリ(VP)、抗ポリ(FP)、および/または抗ポリ(GK)の抗体の1以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
対象が、1以上の追加の用量のRANタンパク質ワクチンを投与される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
疾患が、HDであり、
任意に、HDが、Htt遺伝子における1以上の突然変異によって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
疾患が、ADであり、
任意に、ADが、LRP8、CASP8、および/またはGREB1遺伝子における1以上の突然変異によって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
疾患が、SCA36であり、
任意に、SCA36が、SCA36遺伝子における1以上の突然変異によって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
疾患が、FTDであり、
任意に、FTDが、C9Orf72遺伝子における1以上の突然変異によって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
各DPRペプチド抗原が、25ジアミノ酸反復と50ジアミノ酸反復との間を含む、請求項7または8に記載の方法。
【請求項26】
各DPRペプチド抗原が、50ジアミノ酸反復と100ジアミノ酸反復との間を含む、請求項7または8に記載の方法。
【請求項27】
各DPRペプチド抗原が、100ジアミノ酸反復と150ジアミノ酸反復との間を含む、請求項7または8に記載の方法。
【請求項28】
xが、5、10、15、20、25、30、35、または40である、請求項10に記載の方法。
【請求項29】
RANタンパク質ワクチンが、B細胞エピトープを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
RANタンパク質ワクチンの投与が、投与に先立ち対象に存在するRANタンパク質の発現レベルと比べて、対象におけるRANタンパク質の発現を低減させる、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
RANタンパク質の発現が、RANタンパク質ワクチンの対象への投与後、投与に先立ち対象に存在するRANタンパク質の発現レベルと比べて1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%まで低減させられる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
RANタンパク質ワクチンの投与が、投与に先立ち対象に存在するRANタンパク質の凝集レベルと比べて、対象におけるRANタンパク質の凝集を低減させる、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
RANタンパク質の凝集が、RANタンパク質ワクチンの対象への投与後、投与に先立ち対象に存在するRANタンパク質の凝集レベルと比べて1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%まで低減させられる、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
RANタンパク質ワクチンが、1以上のアジュバントをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
1以上のアジュバントが、以下:免疫標的化アジュバント;免疫調節性アジュバント;フロイント不完全アジュバント;リン酸アルミニウム;水酸化アルミニウム;ミョウバン;Stimulon(登録商標)QS-21;MPL(登録商標);インターロイキン12;油製剤;ポリマー;ミセル形成アジュバント;サポニン;免疫刺激複合体マトリックス(ISCOMマトリックス);粒子;DDA;DNAアジュバント;カプセル化アジュバント;フラジェリンアジュバント;アルハイドロゲル(Al(OH)3);CpG1;CpG3および/またはadjuphos(AlPO4)のいずれか1以上を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
RANタンパク質ワクチンが、エキソソームを含む組成物で、対象へ送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
RANタンパク質ワクチンが、ナノ粒子を含む組成物で、対象へ送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
ナノ粒子が、脂質ナノ粒子である、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
RANタンパク質ワクチンが、mRNAワクチンである、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府支援研究
本発明は、国立衛生研究所によって授与された助成金第R01 NS098819の下、政府の支援でなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0002】
関連出願
本出願は、「VACCINE THERAPY FOR RAN PROTEIN DISEASES」との表題で2019年9月23日に出願された第62/904,612号の出願日の35 U.S.C.119(e)の下での利益を主張するものであって、この内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
背景
マイクロサテライト反復伸長は、40を超える神経変性の疾患および障害を引き起こすことが知られている。より多くの(growing number of)これら疾患および障害において、伸長突然変異は、複数のリーディングフレームを生じかつ標準的なAUG開始コドンを要さない新規タイプのタンパク質翻訳を経ることが示されている。このタイプの翻訳は反復関連非ATG(RAN)翻訳と呼ばれ、産生されるタンパク質はRANタンパク質と呼ばれる。RANタンパク質は毒性があり、かつこれらに限定されないが、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、筋強直症ジストロフィー1型(DM1)、筋強直症ジストロフィー2型(DM2)、ハンチントン病(HD)、アルツハイマー病(AD)、および脆弱X関連振戦失調症候群(FXTAS)を包含する、より多くの疾患および障害に寄与するとの証拠が増えつつある。
【発明の概要】
【0004】
概要
本開示の側面は、対象において抗RANタンパク質抗体の発現もしくは産生を惹起する(または増強する)ための組成物および方法に関する。本開示は、あるRANタンパク質、例えば、ポリ(CP)、ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(PR)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、ポリ(A)、ポリ(G)、ポリ(S)、ポリ(C)、ポリ(Q)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(QAGR(配列番号2))、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、および/またはポリ(GK)のRANタンパク質、ならびにそれらの組み合わせに対する抗体を産生する、対象をワクチン接種する(vaccinating)ための組成物と、かかる組成物を使用する方法とに、一部基づく。
【0005】
結果的に、いくつかの側面において、本開示は、RANタンパク質の翻訳に関連する疾患の予防または処置を、これを必要とするヒト対象においてするための方法を提供するが、方法は、治療的に有効な量のRANタンパク質ワクチンを対象へ投与することを含み、ここでRANタンパク質ワクチンの対象への投与は、対象において1以上の抗RANタンパク質抗体の産生を惹起する。
【0006】
いくつかの態様において、対象において産生される抗RAN抗体は、以下:抗ポリ(システイン-プロリン)[抗ポリ(CP)];抗ポリ(グリシン-プロリン)[抗ポリ(GP)];抗ポリ(グリシン-アルギニン)[抗ポリ(GR)];抗ポリ(グリシン)[抗ポリ(G)];抗ポリ(アラニン)[抗ポリ(A)];抗ポリ(セリン)[抗ポリ(S)];抗ポリ(システイン)[抗ポリ(C)];抗ポリ(グルタミン)[抗ポリ(Q)];抗ポリ(グリシン-アラニン)[抗ポリ(GA)];抗ポリ(グリシン-アスパルタート)[抗ポリ(GD)];抗ポリ(グリシン-グルタマート)[抗ポリ(GE)];抗ポリ(グリシン-グルタミン)[抗ポリ(GQ)];抗ポリ(グリシン-トレオニン)[抗ポリ(GT)];抗ポリ(ロイシン)[抗ポリ(L)];抗ポリ(ロイシン-プロリン)[抗ポリ(LP)];抗ポリ(ロイシン-プロリン-アラニン-システイン(配列番号1))[抗ポリ(LPAC(配列番号1))];抗ポリ(ロイシン-セリン)[抗ポリ(LS)];抗ポリ(プロリン)[抗ポリ(P)];抗ポリ(プロリン-アラニン)[抗ポリ(PA)];抗ポリ(プロリン-アルギニン)[抗ポリ(PR)];抗ポリ(グルタミン-アラニン-グリシン-アルギニン(配列番号2))[抗ポリ(QAGR(配列番号2))];抗ポリ(アルギニン-グルタマート)[抗ポリ(RE)];抗ポリ(セリン-プロリン)[抗ポリ(SP)];抗ポリ(バリン-プロリン)[抗ポリ(VP)];抗ポリ(フェニルアラニン-プロリン)[抗ポリ(FP)];および/または抗ポリ(グリシン-リシン)[抗ポリ(GK)]抗体、あるいはそれらいずれかの組み合わせの1以上である。
【0007】
いくつかの態様において、RANタンパク質に関連する疾患または障害は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病(HD)、アルツハイマー病(AD)、脆弱X症候群(FRAXA)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、脊髄小脳失調症1(SCA1)、脊髄小脳失調症2(SCA2)、脊髄小脳失調症3(SCA3)、脊髄小脳失調症6(SCA6)、脊髄小脳失調症7(SCA7)、脊髄小脳失調症8(SCA8)、脊髄小脳失調症12(SCA12)、もしくは脊髄小脳失調症17(SCA17)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄小脳失調症36型(SCA36)、脊髄小脳失調症29型(SCA29)、脊髄小脳失調症10型(SCA10)、筋強直症ジストロフィー1型(DM1)、筋強直症ジストロフィー2型(DM2)、またはフックス角膜内皮ジストロフィー(例として、CTG181)である。
【0008】
いくつかの態様において、疾患または障害は、ALSである。いくつかの態様において、ALSを有する対象は、C9Orf72遺伝子において1以上の突然変異を有することによって特徴付けられる。いくつかの態様において、疾患または障害は、FTDである。いくつかの態様において、FTDを有する対象は、C9Orf72遺伝子において1以上の突然変異を有することによって特徴付けられる。いくつかの態様において、疾患または障害は、HDである。いくつかの態様において、HDを有する対象は、Htt遺伝子において1以上の突然変異を有することによって特徴付けられる。いくつかの態様において、疾患または障害は、ADである。いくつかの態様において、ADを有する対象は、LRP8、CASP8、および/またはGREB1遺伝子において1以上の突然変異を有することによって特徴付けられる。いくつかの態様において、疾患または障害は、脊髄小脳失調症36型(SCA36)である。いくつかの態様において、SCA36を有する対象は、SCA36遺伝子において1以上の突然変異を有することによって特徴付けられる。
【0009】
いくつかの態様において、対象は、RANタンパク質の翻訳、またはジアミノ酸反復(DPR)をコードする転写産物を含有するRNA凝集体の存在によって特徴付けられる。いくつかの態様において、対象において翻訳されたRANタンパク質は、以下:ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、および/またはポリ(PR)の1以上を含む。いくつかの態様において、ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、および/またはポリ(PR)のRANタンパク質は、対象のC9Orf72伸長反復から発現される。いくつかの態様において、対象において翻訳されたRANタンパク質は、以下:ポリ(CP)、ポリ(A)、ポリ(G)、ポリ(S)、ポリ(C)、ポリ(Q)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(QAGR(配列番号2))、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、および/またはポリ(GK)の1以上を含む。いくつかの態様において、ポリ(CP)、ポリ(A)、ポリ(G)、ポリ(S)、ポリ(C)、ポリ(Q)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(QAGR(配列番号2))、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、および/またはポリ(GK)のRANタンパク質は、対象のC9Orf72、Htt、LRP8、CASP8、および/またはGREB1の伸長反復から発現される。
【0010】
いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンは、1以上のペプチド抗原を含む。いくつかの態様において、1以上のペプチド抗原は、1以上の免疫原を含む。いくつかの態様において、1以上のペプチド抗原は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10の免疫原を含む。いくつかの態様において、1以上のペプチド抗原は、1以上のRANタンパク質を標的にし、任意に、1以上のRANタンパク質は、ポリ(CP)、ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(PR)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、ポリ(A)、ポリ(G)、ポリ(S)、ポリ(C)、ポリ(Q)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(QAGR(配列番号2))、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、および/またはポリ(GK)のRANタンパク質の1以上である。
【0011】
いくつかの態様において、1以上のペプチド抗原は、1以上のジペプチド反復(DPR)ペプチド抗原を含む。いくつかの態様において、各DPRペプチド抗原は、2ジアミノ酸反復と150ジアミノ酸反復との間を含む。いくつかの態様において、各DPRペプチド抗原は、10ジアミノ酸反復と25ジアミノ酸反復との間を含む。いくつかの態様において、各DPRペプチド抗原は、25ジアミノ酸反復と50ジアミノ酸反復との間を含む。いくつかの態様において、各DPRペプチド抗原は、50ジアミノ酸反復と100ジアミノ酸反復との間を含む。いくつかの態様において、各DPRペプチド抗原は、100ジアミノ酸反復と150ジアミノ酸反復との間を含む。いくつかの態様において、各ジペプチド反復 抗原は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、または150ジアミノ酸反復を含む。
【0012】
いくつかの態様において、1以上のDPRペプチド抗原の各々は、(GA)x(配列番号4)、(GP)x(配列番号5)、(GR)x(配列番号7)、(PA)x(配列番号8)、または(PR)x(配列番号6)のジアミノ酸反復を含み、ここでXは、抗原の反復単位数を表す。いくつかの態様において、1以上のDPRペプチド抗原の各々は、(CP)x(配列番号3)、(A)x(配列番号9)、(G)x(配列番号10)、(S)x(配列番号11)、(C)x(配列番号12)、(Q)x(配列番号13)、(GD)x(配列番号14)、(GE)x(配列番号15)、(GQ)x(配列番号16)、(GT)x(配列番号17)、(L)x(配列番号18)、(LP)x(配列番号19)、(LPAC)x(配列番号20)、(LS)x(配列番号21)、(P)x(配列番号22)、(QAGR)x(配列番号23)、(RE)x(配列番号24)、(SP)x(配列番号25)、(VP)x(配列番号26)、(FP)x(配列番号27)、および/または(GK)x(配列番号28)のジアミノ酸反復を含み、ここでXは、抗原の反復単位数を表す。いくつかの態様において、「x」は、5、10、15、20、25、30、35、40、または40より多い(例として、5、10、15、20、25、30、35、40、または40より多い反復ユニット)。
【0013】
いくつかの態様において、DPRペプチド抗原は、(GA)10(配列番号4)、(GA)15(配列番号4)、(GR)25(配列番号7)、(GP)10(配列番号5)、(PR)10(配列番号6)、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの態様において、DPRペプチド抗原は、[(GA)15(配列番号4)+(GR)25(配列番号7)+(PR)10(配列番号6)]を含む。いくつかの態様において、DPRペプチド抗原は、[(GA)15(配列番号4)+(GR)25(配列番号7)+(PR)10(配列番号6)+(GP)10(配列番号5)]を含む。
【0014】
いくつかの態様において、1以上のペプチド抗原は、B細胞エピトープを含む。
いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンは、1以上の追加の免疫原をさらに含む。いくつかの態様において、1以上の免疫原は、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ブルーキャリア免疫原性(Blue Carrier Immunogenic)タンパク質(CCH)、ウシ血清アルブミン(BSA)、オボアルブミン(OVA)、ジフテリア毒素、麻疹ウイルス融合タンパク質(MVF)、B型肝炎ウイルス表面抗原(HB-sAg)、破傷風毒素(TT)、百日咳毒素(PT)、T細胞ヘルパーエピトープ、または上記いずれかの一部を含む。
【0015】
いくつかの態様において、1以上の追加の免疫原は、1以上の連結分子を介してDPRペプチド抗原へ連結されている。いくつかの態様において、連結分子は、アミノ酸、Lys-、Gly-、Lys-Lys-Lys-、(α、ε-N)Lys、およびε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号29)からなる群から選択される。
いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンは、表1に記述される式を含む。
【0016】
いくつかの態様において、対象によって産生される1以上の抗RANタンパク質抗体の各々は、ポリ(GP)、ポリ(GA)、ポリ(GR)、またはポリ(PR)のジアミノ酸反復を含有するRANタンパク質へ結合する。いくつかの態様において、対象によって産生される1以上の抗RANタンパク質抗体の各々は、ポリ(CP)、ポリ(A)、ポリ(G)、ポリ(S)、ポリ(C)、ポリ(Q)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(QAGR(配列番号2))、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、および/またはポリ(GK)のジアミノ酸反復を含有するRANタンパク質へ結合する。
【0017】
いくつかの態様において、抗RANタンパク質抗体は、抗ポリ(CP)、抗ポリ(GA)、抗ポリ(GP)、抗ポリ(PR)、抗ポリ(GR)、抗ポリ(PA)、抗ポリ(A)、抗ポリ(G)、抗ポリ(S);抗ポリ(C);抗ポリ(Q);抗ポリ(GD)、抗ポリ(GE)、抗ポリ(GQ)、抗ポリ(GT)、抗ポリ(L)、抗ポリ(LP)、抗ポリ(LPAC(配列番号1))、抗ポリ(LS)、抗ポリ(P)、抗ポリ(QAGR(配列番号2))、抗ポリ(RE)、抗ポリ(SP)、抗ポリ(VP)、抗ポリ(FP)、または抗ポリ(GK)の抗体の1以上である。
【0018】
いくつかの態様において、対象は、哺乳動物である。いくつかの態様において、対象は、ヒトである。
いくつかの態様において、対象は、1以上の追加の用量のRANタンパク質ワクチンを投与される。
【0019】
いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンの投与は、RANタンパク質ワクチンの投与に先立ち対象に存在するRANタンパク質の発現レベルと比べて、RANタンパク質の発現を低減させる。いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンの投与は、RANタンパク質ワクチンの投与に先立ち対象に存在するRANタンパク質の発現レベルと比べて、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍まで、または100倍より多くまでRANタンパク質の発現を低減させる。いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンの投与は、RANタンパク質ワクチンの投与に先立ち対象に存在するRANタンパク質の発現レベルと比べて、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%まで、またはそこに含有されるいずれかのパーセンテージまでRANタンパク質の発現を低減させる。
【0020】
いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンの投与は、RANタンパク質ワクチンの投与に先立ち対象に存在するRANタンパク質の凝集レベルと比べて、RANタンパク質の凝集を低減させる。いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンの投与は、RANタンパク質ワクチンの投与に先立ち対象に存在するRANタンパク質の凝集レベルと比べて、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍まで、または100倍より多くまでRANタンパク質の凝集を低減させる。いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンの投与は、RANタンパク質ワクチンの投与に先立ち対象に存在するRANタンパク質の凝集レベルと比べて、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%まで、またはそこに含有されるいずれかのパーセンテージまでRANタンパク質の凝集を低減させる。
【0021】
いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンは、1以上のアジュバントをさらに含む。いくつかの態様において、1以上のアジュバントは、以下:免疫標的化アジュバント;免疫調節性(immunomodulating)アジュバント;フロイント不完全アジュバント;リン酸アルミニウム;水酸化アルミニウム;ミョウバン;Stimulon(登録商標)QS-21;MPL(登録商標);インターロイキン12;油製剤(oil formulation);ポリマー;ミセル形成(micelle forming)アジュバント;サポニン;免疫刺激複合体(immunostimulating complex)マトリックス(ISCOMマトリックス);粒子;DDA;DNAアジュバント;カプセル化(encapsulating)アジュバント;フラジェリンアジュバント;アルハイドロゲル(Al(OH)3);CpG1;CpG3および/またはadjuphos(AlPO4)のいずれか1以上を含む。
【0022】
いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンは、エキソソームを含む組成物で、対象へ送達される。いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンは、ナノ粒子を含む組成物で、対象へ送達される。いくつかの態様において、ナノ粒子は、脂質ナノ粒子である。
いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンは、mRNAワクチンである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図面の簡単な記載
図1図1は、例において実施されたとおり、ペプチドをベースとした抗RANタンパク質ワクチンの試験のための研究デザインを描く概略図を示す。
【0024】
図2図2は、ジアミノ酸反復RANタンパク質の発現構築物の概略図を示す。構築物を、長さが30から60まで120ジアミノ酸反復まで及ぶRANタンパク質(例として、ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(GR)、ポリ(PR)等々)の産生のため、哺乳動物の細胞において発現させた。配列をコードするジアミノ酸反復の発現をCMVプロモーターによって推進した。構築物はまた、V5エピトープタグまたはFLAGタグも含有した。代わりの(alternative)コドン(「Altコドン」)利用を有する構築物もまた使用した。
【0025】
図3A図3A~3Dは、ペプチドをベースとした表記の抗RANタンパク質ワクチン(例として、GA10(配列番号4)、GP10(配列番号5)、GR25(配列番号7)、PR10(配列番号6))へ曝露されたモルモットからの血清(例として、抗RANタンパク質抗体を含有する血清)が、図2に記載の構築物によってin vitroで発現されたRANタンパク質へ結合することができたことを指し示す代表的なウェスタンブロットを示す。図3Aは、GA10(配列番号4)ペプチドワクチンが注射された動物からの血清についての代表的なウェスタンブロットを示す。
図3B図3Bは、GP10(配列番号5)ペプチドワクチンが注射された動物からの血清についての代表的なウェスタンブロットを示す。
図3C-D】図3Cは、GR25(配列番号7)ペプチドワクチンが注射された動物からの血清についての代表的なウェスタンブロットを示す。図3Dは、PR10(配列番号6)ペプチドワクチンが注射された動物からの血清についての代表的なウェスタンブロットを示す。
【0026】
図4図4は、in vitroでのタンパク質アッセイの結果の概要を示す。
図5図5は、ペプチドをベースとした抗RANタンパク質ワクチンへ曝露されたモルモットから得られた血清中の抗RANタンパク質抗体が、RANタンパク質をin situで認識することを指し示す代表的な免疫組織化学データを示す。左側の上および下:夫々、C9+ マウス組織および対照マウス組織における、抗GA抗体;右側の上および下:夫々、C9+ マウス組織および対照マウス組織における、GA25(配列番号4)血清。
【0027】
図6図6は、in vivoでのマウスワクチン接種研究のための研究デザインを描く概略図を示す。
図7図7は、図6に記載のマウス研究のためのワクチン群の概要を示す。
【0028】
図8A図8A~8Bは、代表的な免疫組織化学データを示す。図8Aは、GA15(配列番号4)ワクチンまたはアジュバントが注射されたC9+ マウスの脳梁膨大後部の皮質(retrosplenial cortex)(RSC)におけるポリ(GA)RANタンパク質の凝集体を示す。
図8B図8Bは、マウス抗RANタンパク質抗体が、GA15(配列番号4)ワクチン接種されたマウスにおいて産生され、C9+ マウスのRSCにおいては点(puncta)を形成するが、非処置(NT)マウスにおいては形成しないことを示す。
【0029】
図9A図9A~9Bは、ワクチン接種されたマウスによって産生された抗RANタンパク質抗体が、脳において抗ウサギ抗体で検出されたGA凝集体とともに共局在化したことを指し示す代表的な蛍光顕微鏡法データを示す。図9Aは、GA15(配列番号4)ワクチンでワクチン接種されたC9+ マウスについてのデータを示す。
図9B図9Bは、組み合わせ(GA15(配列番号4)+GR25(配列番号7)+PR10(配列番号6)+GP10(配列番号5))ワクチンでワクチン接種されたC9+ マウスについてのデータを示す。
【0030】
図10図10は、GA凝集体が、GA15(配列番号4)ワクチンで処置されたマウスにおいて低減させられたことを示す。GA15(配列番号4)ワクチン(n=4)またはアジュバント対照(n=3)のいずれかで処置されたC9(+)マウスからの6μm脳切片を、GA凝集体の存在について、抗GA抗体とヘマトキシリンとの対比染色を使用する免疫組織化学によって染色した。GA15(配列番号4)ワクチン(n=4)またはアジュバント対照(n=3)で処置されたC9(+)マウスの脳梁膨大後部の皮質における総GA凝集体。データは、GA凝集体/総細胞(n=3動物/群)として提示される。
【発明を実施するための形態】
【0031】
詳細な記載
本開示の側面は、対象において抗RANタンパク質抗体の発現もしくは産生を惹起する(または増強する)ための組成物および方法に関する。本開示は、あるRANタンパク質、例えば、ポリ(CP)、ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(PR)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、ポリ(A)、ポリ(G)、ポリ(S)、ポリ(C)、ポリ(Q)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(QAGR(配列番号2))、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、およびポリ(GK)RANタンパク質、ならびにそれらの組み合わせに対する抗体を産生する、対象をワクチン接種するための組成物に、一部基づく。いくつかの態様において、本開示によって記載される方法および組成物は、RANタンパク質に関連するある疾患および障害の予防または処置(例として、発病もしくは進行の遅延)に有用である。いくつかの態様において、本開示によって記載される方法および組成物は、RANタンパク質に関連するある疾患および障害を診断するのに有用である。いくつかの態様において、本開示によって記載される方法および組成物は、RANタンパク質に関連するある疾患および障害の進行を監視するのに有用である。
【0032】
いくつかの態様において、RANタンパク質に関連する疾患または障害は、以下:筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、筋強直症ジストロフィー1型(DM1)、筋強直症ジストロフィー2型(DM2)、脊髄小脳失調症1、2、3、6、7、8、10、12、17、31および36型、球脊髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、ハンチントン病(HD)、アルツハイマー病(AD)、脆弱X関連振戦失調症候群(FXTAS)、フックス角膜内皮ジストロフィー(FECD)、ハンチントン病類縁症候群2型(Huntington's disease-like 2 syndrome)(HDL2)、脆弱X症候群(FXS)、7p11.2の葉酸感受性(folate-sensitive)脆弱部位に関する障害FRA7A、2q11.2の葉酸感受性脆弱部位に関する障害FRA2A、または脆弱XE症候群(FRAXE)のいずれか1つである。
【0033】
RANタンパク質
いくつかの側面において、本開示は、対象において抗RANタンパク質抗体を産生する(またはその産生を増強する)ための組成物および方法に関する。「RANタンパク質(反復関連非ATG翻訳タンパク質)」は、AUG開始コドンの不在下にヌクレオチド伸長を持つmRNA配列から翻訳されたポリペプチドである。一般に、RANタンパク質は、単一アミノ酸、ジアミノ酸、トリアミノ酸、またはポリアミノ酸反復と称されるクアッド(quad-)アミノ酸(例として、テトラ(tetra-)アミノ酸)の伸長反復を含む。アミノ酸反復は、ホモポリマーのアミノ酸反復、ジアミノ酸反復、トリアミノ酸反復、テトラアミノ酸反復、またはペンタアミノ酸反復であってもよい。一般に、RANタンパク質は、約2アミノ酸反復と約10,000アミノ酸反復との間を含んでいてもよい。いくつかの態様において、RANタンパク質は、20アミノ酸反復と100アミノ酸反復との間、50アミノ酸反復と200アミノ酸反復との間、100アミノ酸反復と500アミノ酸反復との間、400アミノ酸反復と800アミノ酸反復との間、700アミノ酸反復と1000アミノ酸反復との間、800アミノ酸反復と1500アミノ酸反復との間等々を含む。いくつかの態様において、RANタンパク質は、長さが10アミノ酸残基と500アミノ酸残基との間にあるポリアミノ酸反復を含む。いくつかの態様において、RANタンパク質は、長さが20アミノ酸残基と300アミノ酸残基との間にあるポリアミノ酸反復を含む。いくつかの態様において、RANタンパク質は、長さが30アミノ酸残基と200アミノ酸残基との間にあるポリアミノ酸反復を含む。いくつかの態様において、RANタンパク質は、長さが40アミノ酸残基と100アミノ酸残基との間にあるポリアミノ酸反復を含む。いくつかの態様において、RANタンパク質は、長さが50アミノ酸残基と90アミノ酸残基との間にあるポリアミノ酸反復を含む。いくつかの態様において、RANタンパク質は、長さが60アミノ酸残基と80アミノ酸残基との間にあるポリアミノ酸反復を含む。いくつかの態様において、RANタンパク質は、長さが少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、または少なくとも200アミノ酸残基であるポリアミノ酸反復を含む。いくつかの態様において、RANタンパク質は、長さが200アミノ酸残基より長い(例として、500、1000、5000、10,000等々)ポリアミノ酸反復を有する。
【0034】
RANタンパク質をコードする配列は、対象のゲノム(例として、ヒト対象のゲノム)中、これらに限定されないが、第九染色体のオープンリーディングフレーム72(C9orf72)、第二染色体のオープンリーディングフレーム80(C2orf80)、LRP8、CASP8、CRNDE、EXOC6B、SV2B、PPML1、ADARB2、GREB1、およびMSMO1を包含する複数の遺伝子座にて見出され得る。C9orf72に関連するタンパク質は目下、特徴付けが不十分であるが、ニューロンにおいて、とくに大脳皮質および運動ニューロンにおいて豊富にあることが知られている。C9orf72タンパク質は、シナプス前終末(presynaptic termini)において局部化されていると考えられる。C9orf72タンパク質はおそらく、RNAの転写、翻訳、および細胞内局在化に影響を与える。C9orf72遺伝子は、可変の反復数で生じるGGGGCC反復(ヘキサヌクレオチド反復)を含有する。
【0035】
C9Orf72遺伝子におけるヘキサヌクレオチド配列GGGGCCの反復伸長の結果起こるALS/FTDの文脈において、以下のジアミノ酸反復を含有するRANタンパク質が同定されている:ポリ(Gly-Ala)、ポリ(Gly-Pro)、ポリ(Gly-Arg)、ポリ(Pro-Ala)、またはポリ(Pro-Arg)、これら夫々はまた、ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、およびポリ(PR)とも称される。ALS/FTD RANタンパク質は一般に、例えば、2014年3月10日に出願されWO2014/159247として公開された国際PCT出願第PCT/US2014/022670号、および2015年9月11日に出願されUS2016/0025747として公開された米国出願第14/775,278号に記載されており、これら各々の内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0036】
SCA36遺伝子におけるヘキサヌクレオチド配列TGGGCCの反復伸長の結果起こるSCA36の文脈において、以下のジアミノ酸反復を含有するRANタンパク質が同定されている:ポリ(GP)およびポリ(PR)。
【0037】
ハンチントン病(HD)の文脈において、RANタンパク質の翻訳は、Htt遺伝子におけるCAG・CTG伸長によって引き起こされるが、これによって、RANタンパク質であるポリアラニン、ポリセリン、ポリロイシン、およびポリシステイン(ポリAla、ポリSer、ポリLeu、およびポリCys)の翻訳が、ポリグルタミン(ポリGlnまたはポリQ)に加えてもたらされる。
【0038】
SCA8およびDM1の文脈において、RANタンパク質の翻訳は、CTG・CAG反復伸長によって引き起こされる。SCA8伸長突然変異は双方向で転写されて、CUG(ATXN8OS)とCAG(ATXN8)との両方の伸長RNAを産生するが、前記伸長RNAは伸長突然変異にわたり反対方向に発現される。CUG伸長転写産物はRNA凝集塊(RNA foci)を形成し、反対方向に発現された伸長CAG ATXN8転写産物は、CAG反復の直接上流にAUG開始コドンを含有する異常に短いORFから、ほぼ純粋なポリGlnタンパク質を産生する。これは、RANタンパク質であるポリアラニン、ポリセリン、ポリロイシン、およびポリシステイン(ポリAla、ポリSer、ポリLeu、およびポリCys)の翻訳を、ポリ-グルタミン(ポリGlnまたはポリQ)に加えてもたらす。
【0039】
脆弱X症候群(FXS)および脆弱X関連振戦/失調症候群(FXTAS)の文脈において、RANタンパク質の翻訳は、CGG・CCG伸長によって引き起こされる。FMR1遺伝子の5'非翻訳領域(UTR)におけるCGG反復配列(反復 tract)の伸長は、反復の長さに依存して2つの別個の疾患を引き起こす。より長い伸長(>200反復)は、FXSをもたらすFMR1遺伝子の転写サイレンシングを引き起こす。対照的に、前突然変異の範囲内のより短いアレル(55~200反復)は、遅発性神経変性障害のFXTASを引き起こす。これは、RANタンパク質であるポリGly、ポリPro、ポリArg、およびポリAlaの翻訳をもたらす。
【0040】
DM2の文脈において、RANタンパク質の翻訳は、細胞核酸結合タンパク質(CNBP)遺伝子に位置付けられるイントロンのCCTG・CAGG伸長突然変異によって引き起こされ、これによってセンス(ポリ(ロイシン-プロリン-アラニン-システイン[LPAC]))とアンチセンス(ポリ(グルタミン-アラニン-グリシン-アルギニン[QAGR]))との両方向にテトラペプチド伸長タンパク質が産生される。
【0041】
SCA31の文脈において、RANタンパク質の翻訳は、UGGAA伸長がコードされるTrp-Asn-Gly-Met-Glu(配列番号30)ペンタペプチド反復タンパク質(PPR)の蓄積によって引き起こされる。
【0042】
RANタンパク質の他の例は、ポリ(CP)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(QAGR(配列番号2))、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、もしくはポリ(GK)のRANタンパク質、またはそれらいずれかの組み合わせを包含してもよい。追加のRANタンパク質の例およびRANタンパク質を同定する方法は、例えば、2020年7月2日に出願された国際PCT出願第PCT/US2020/040725号に記載されており、この内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
ペプチドワクチンは、本開示によって記載される方法を使用して(例として、RANタンパク質ワクチンにおけるジアミノ酸反復ペプチド抗原の代わりに、ホモポリマーのアミノ酸反復ペプチド抗原を使用することによって)、ポリAla、ポリSer、ポリLeu、ポリCys、およびポリGlnを標的にする抗RANタンパク質抗体を惹起するように構成されていてもよいことが解されるはずである。RANタンパク質の他の例は、ポリ(CP)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(QAGR(配列番号2))、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、ポリ(GK)、またはそれらいずれかの組み合わせを包含してもよい。
【0044】
いくつかの態様において、RANタンパク質は、ハンチントン病(HD、HDL2)、アルツハイマー病(AD)、脆弱X症候群(FRAXA)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、脊髄小脳失調症1型(SCA1)、脊髄小脳失調症2型(SCA2)、脊髄小脳失調症3型(SCA3)、脊髄小脳失調症6型(SCA6)、脊髄小脳失調症7型(SCA7)、脊髄小脳失調症8型(SCA8)、脊髄小脳失調症12型(SCA12)、もしくは脊髄小脳失調症17型(SCA17)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄小脳失調症36型(SCA36)、脊髄小脳失調症29型(SCA29)、脊髄小脳失調症10型(SCA10)、筋強直症ジストロフィー1型(DM1)、筋強直症ジストロフィー2型(DM2)、またはフックス角膜ジストロフィー(例として、CTG181)に関連する遺伝子によってコードされる。
【0045】
対象および生体試料
本開示の側面は、対象における抗RANタンパク質抗体の発現もしくは産生を惹起する(または増強する)ための組成物および方法に関する。対象は、哺乳動物(例として、ヒト、マウス、ラット、イヌ、ネコ、モルモット、またはブタ等々)であり得る。いくつかの態様において、対象は、哺乳動物対象である。いくつかの態様において、対象は、ヒトである。いくつかの態様において、対象は、マウスである。いくつかの態様において、対象は、C9-BACマウスである。ALSのC9-BACマウスモデルは、例えば、2014年3月10日に出願されWO2014/159247として公開された国際PCT出願第PCT/US2014/022670号、およびLiu et al.,(2016)Neuron 90(3):521-34に記載されており、これら各々の内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0046】
いくつかの態様において、対象は、C9Orf72遺伝子(例として、ヒトC9Orf72遺伝子、またはヒトC9Orf72遺伝子に対応するマウス遺伝子などの遺伝子)におけるGGGGCC(例として、G4C2)ヘキサヌクレオチド配列反復伸長によって特徴付けられる。いくつかの態様において、ヒトC9Orf72遺伝子は、NCBI参照配列番号NM_145005.6、NM_018325.4、およびNM_001256054.2のいずれか1つで表される配列を含むか、またはこれらからなる。いくつかの態様において、対象は、SCA36遺伝子(例として、ヒトSCA36遺伝子、またはヒトSCA36遺伝子に対応するマウス遺伝子などの遺伝子)おけるTGGGCCヘキサヌクレオチド配列反復伸長によって特徴付けられる。いくつかの態様において、ヒトSCA36遺伝子は、NCBI参照配列番号NM_006392.3、NR_027700.2、およびNR_145428.1のいずれか1つで表される配列を含むか、またはこれらからなる。いくつかの態様において、対象は、遺伝学的アッセイ(例として、DNAをベースとしたアッセイ、例えば、配列決定アッセイ)によってヘキサヌクレオチド配列反復伸長(例として、C9Orf72におけるGGGGCC(例として、G4C2)反復伸長またはSCA36におけるTGGGCC反復伸長)を有すると決定されている。
【0047】
いくつかの態様において、対象は、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも500、少なくとも1000、または少なくとも5000のGGGGCC反復伸長(例として、C9Orf72の反復伸長)を含む。いくつかの態様において、対象は、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも500、少なくとも1000、または少なくとも5000のTGGGCC反復伸長(例として、SCA36の反復伸長)を含む。
【0048】
いくつかの態様において、対象は、RANタンパク質の翻訳またはジアミノ酸反復(DPR)をコードする転写産物を含有するRNA凝集体(RNA aggregates)の存在によって特徴付けられる。いくつかの態様において、対象において翻訳されるRANタンパク質は、以下:ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、またはポリ(PR)の1以上を含む。いくつかの態様において、対象において翻訳されるRANタンパク質は、以下:ポリ(CP)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(QAGR(配列番号2))、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、ポリ(GK)、またはそれらいずれかの組み合わせの1以上を含む。いくつかの態様において、ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、ポリ(PR)のRANタンパク質は、対象のC9Orf72、Htt、SCA36、LRP8、CASP8、および/またはGREB1の伸長反復から発現される。いくつかの態様において、ポリ(CP)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(QAGR(配列番号2))、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、ポリ(GK)のタンパク質は、対象のC9Orf72、Htt、SCA36、LRP8、CASP8、および/またはGREB1の伸長反復から発現される。
【0049】
「ALSおよび/またはFTDを有するか、あるいはこれを有すると疑われる対象」は、C9Orf72遺伝子において30より多くのGGGGCC反復を有することが知られているかまたは決定されている対象、あるいはALS/FTDの兆候(signs)および症状(symptoms)(これらに限定されないが、以下:運動機能障害(例として、痙縮)、筋萎縮、および/または神経精神医学的な徴候(manifestations)(例として、強迫行動、無気力、不安)を包含する)を呈する対象であり得る。いくつかの態様において、ALSを有する対象は、C9Orf72遺伝子において1以上の突然変異を有することによって特徴付けられる。
【0050】
「アルツハイマー病を有するか、またはこれを有すると疑われる対象」はADの1以上の兆候および症状(これらに限定されないが、以下:記憶欠損(例として、短期記憶喪失)、錯乱状態、遂行機能(例として、注意力、計画、適応性、抽象的思考等々)の欠陥、失語症、運動技能の衰退もしくは喪失等々を包含する)を呈する対象、あるいはADに関連する1以上の遺伝子突然変異(例えば、アポリポタンパク質(APP)、プレセニリン遺伝子(PSEN1およびPSEN2)、またはタウタンパク質を包含する特定の遺伝子中の突然変異)を有するかまたはこれを有すると同定されている対象であり得る。いくつかの態様において、ADを有するかまたはこれを有すると疑われる対象は、対象の脳組織全体のβ-アミロイド(Aβ)ペプチドおよび高リン酸化タウタンパク質の蓄積によって特徴付けられる。いくつかの態様において、対象は、McKhann et al.,(1984)“Clinical diagnosis of Alzheimer's disease:report of the NINCDS-ADRDA Work Group under the auspices of Department of Health and Human Services Task Force on Alzheimer's Disease”.Neurology,34(7):939-44によって記載されるとおりのNINCDS-ADRDA Alzheimer's Criteriaに従い、医療従事者によってADを有すると診断されている。
【0051】
「筋強直症ジストロフィーを有するか、またはこれを有すると疑われる対象」(例として、筋強直症ジストロフィー1型(DM1)または筋強直症ジストロフィー2型(DM2))は、DM1および/またはDM2の1以上の兆候あるいは症状(これらに限定されないが、以下:筋肉の遅延した弛緩(relaxation)、筋力低下(muscle weakness)、長期の不随意筋収縮、もしくは筋肉の喪失;および/または正常でない心リズム、白内障、もしくは嚥下困難(difficulty swallowing)を包含する)を呈する対象であり得る。
【0052】
「脊髄小脳失調症を有するか、またはこれを有すると疑われる対象」(例として、脊髄小脳失調症1、2、3、6、7、8、10、12、17、31または36型)は、脊髄小脳失調症の1以上の兆候または症状(これらに限定されないが、以下:言語障害および嚥下障害(speech and swallowing difficulties)、筋硬直(例として、痙縮)、眼球運動を制御する筋肉の衰弱(例として、眼筋麻痺)、急速な不随意眼球運動(例として、眼振)、非協調運動およびバランスの不均衡(例として、運動失調症)、筋肉の消耗、緩徐眼球運動、認知症、制御されない筋肉の緊張(例として、ジストニア)、こわばり、振戦、眼球突出、複視、腕の協調喪失、進行性の視力低下(vision loss)、失明、感覚もしくは反射神経の変化、体幹の不安定性、機能亢進の腱反射、長引く訥弁(drawn-out slowness of speech)によって特徴付けられる断綴性の(scanning)構音障害、小脳性運動失調、不安定歩行、上肢の運動失調、嚥下障害(dysphagia)、歩行機能障害、錐体外路の機構(functions)、錐体の衰弱、認知障害および行動障害(cognitive and behavioral disturbances)、舞踏病、精神障害(psychiatric disturbances)、感音性聴覚障害(sensorineural hearing impairment)、低下した(impaired)振動感覚、急速眼球運動(例として、サッケード)、目を左右交互に動かすのに支障があること(trouble moving the eyes side-to-side)(例として、眼球運動失効)、および/または眼瞼下垂(droopy eyelids)(例として、眼瞼下垂症(ptosis))を包含する)を呈する対象であり得る。
【0053】
「球脊髄性筋萎縮症を有するか、またはこれを有すると疑われる対象」は、球脊髄性筋萎縮症の1以上の兆候または症状(これらに限定されないが、以下:発語障害(speech impairment)、咀嚼困難および嚥下困難、障害のある(impaired)睡眠、呼吸困難、顔面筋力低下、感情を伝えるのが困難であること、腕および脚の筋肉の衰弱ならびに萎縮、筋肉の単収縮および痙攣(cramping)、拡大した乳房(男性(オス)対象における)、低減した生殖能力および睾丸の萎縮(例として、収縮)、男性(雄性)ホルモンの正常でないプロセシング、筋肉の消耗、および/または歩行困難を包含する)を呈する対象であり得る。
【0054】
「歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)を有するか、またはこれを有すると疑われる」対象は、DRPLAの1以上の兆候または症状(これらに限定されないが、以下:運動失調、制御不能な肢の運動(例として、舞踏病アテトーゼ)、精神科的症状(例として、妄想)、および/または知的機能の劣化(例として、認知症)を包含する)を呈する対象であり得る。
【0055】
「ハンチントン病(HD)を有するか、またはこれを有すると疑われる」対象は、HDの1以上の兆候または症状(これらに限定されないが、以下:正常でない歩行、増大した筋活動、不随意運動、協調に関する問題、筋肉の喪失、筋痙攣(muscle spasms)、健忘、妄想、集中力の欠如、精神錯乱、活動の緩慢さ、思考および理解の困難、強迫行動、そわそわすること、怒りっぽいこと、慎みがないこと、せん妄、うつ病、幻覚、被害妄想、不安、無気力、気分変動、発話(speaking)困難、記憶喪失、振戦、および/または重量減少を包含する)を呈する対象であり得る。
【0056】
「脆弱X障害(例として、脆弱X症候群(FXS)、脆弱X関連振戦失調症候群(FXTAS)、または脆弱XE症候群(FRAXE))を有するか、またはこれを有すると疑われる」対象は、FXS、FXTAS、および/またはFRAXEの1以上の兆候または症状(これらに限定されないが、以下:攻撃性、多動、衝動性、無意味語の繰り返し、反復運動、自傷、発言(words)もしくは動作を持続的に繰り返すこと、学習障害(learning disability)もしくは言語(speech)遅滞(例として、子どもにおける)、協調に関する筋弛緩(flaccid muscles)もしくは問題、大きな耳、発語障害、不安、二重関節のある肢、拡大した頭部、拡大した睾丸、扁平足、弱視、長く細い(long thin)顔、突出した顎、脊柱側湾症、掌上の単一線(single line on palm)、睡眠障害、窪んだ胸部、振戦、神経障害、四肢の無感覚/刺痛、情緒不安定、怒りっぽいこと、爆発的な感情の噴出(explosive outbursts)、人格変化、認知低下(計算、読書などの技能の喪失等々を包含する)、自律神経機能の問題(膀胱または腸機能の虚弱および喪失など)、言語遅滞、不十分な作文技能、多動、および/または移り気を包含する)を呈する対象であり得る。
【0057】
「ハンチントン病類縁症候群2型(HDL2)を有するか、またはこれを有すると疑われる」対象は、HDL2の1以上の兆候または症状(これらに限定されないが、以下:進行性の運動障害(例として、パーキンソニズム、舞踏病)、認識衰退および感情の薄らぎ(cognitive and emotional decline)(例として、認知症、精神障害(psychiatric disturbances))、てんかん発作(単数もしくは複数)、および/またはHDに関連するいずれの他の兆候もしくは症状も包含する)を呈する対象であり得る。
【0058】
「フックス角膜内皮ジストロフィー(FECD)を有するか、またはこれを有すると疑われる」対象は、FECDの1以上の兆候または症状(これらに限定されないが、以下:ぼやけた曇った視界(例として、はっきりとした視界の全般的な欠如)、視界の揺らぎ(例として、朝起床後に症状が悪化し、日中徐々に改善する)、視力が永続的に損なわれること、眩しいこと、光の周囲にハローが見えること、および/または角膜表面上の小水疱による疼痛もしくはザラザラ感(grittiness)を包含する)を呈する対象であり得る。
【0059】
「7p11.2の葉酸感受性脆弱部位に関する障害FRA7Aを有するか、またはこれを有すると疑われる」対象は、7p11.2の葉酸感受性脆弱部位に関する障害FRA7Aの1以上の症状を呈する対象であり得、前記障害は、これらに限定されないが、以下:不適切な社会的相互作用、不十分なアイコンタクト、強迫行動、衝動性、反復運動、自傷、発言(words)もしくは動作を持続的に繰り返すこと、学習障害(learning disability)もしくは言語(speech)遅滞(例として、子どもにおける)、限られた数の物事にしか強い関心を抱かないこと、注意を払うことに問題があること、他者の感情が分からないこともしくはうつ病、不安、変声、音に対する感受性、および/またはチックを包含する。
【0060】
「2q11.2の葉酸感受性脆弱部位に関する障害FRA2Aを有するか、またはこれを有すると疑われる」対象は、2q11.2の葉酸感受性脆弱部位に関する障害FRA2Aの1以上の症状を呈する対象であり得、前記障害は、これらに限定されないが、以下:社会的孤立、解体した行動、攻撃性、動揺、強迫行動、興奮性、敵意、反復運動、自傷、慎みがないこと、思考障害、せん妄、健忘、通常の事象が特別かつ個人的な意味を有すると思い込むこと、思考がそれ自身のものではないと思い込むこと、失見当、精神錯乱、活動の緩慢さ、優れていると誤って思い込むこと、怒り、不安、無気力、自己から切り離されていると感じること、総不満(general discontent)、活動への関心もしくは喜びの喪失、高揚した気分、不適切な情緒反応、幻覚、偏執病、声が聞こえること(hearing voices)、うつ病、懸念、被害妄想、宗教妄想、冗長な話し方(circumstantial speech)、支離滅裂な話し方、早口かつひどく興奮した発話(rapid and frenzied speaking)、言語(speech)障害、疲労、低下した運動協調性、情緒反応の欠如、記憶喪失、および/または他の知的障害(intellectual disabilities)を包含する。
【0061】
抗RANタンパク質抗体
本開示は、対象において抗RANタンパク質抗体の発現もしくは産生を開始または増強するための、あるRANタンパク質抗原(例として、ジアミノ酸反復(DPR)ペプチド抗原)(例として、対象において抗RANタンパク質免疫応答を惹起するペプチドワクチンおよび免疫原組成物)の投与に、一部基づく。
【0062】
抗RANタンパク質抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり得る。典型的には、ポリクローナル抗体は、ヒト、マウス、ウサギ、モルモット、またはヤギなどの好適な哺乳動物への接種(inoculation)によって産生される。より大型の哺乳動物は、収集され得る血清の量がより多いことから、しばしば好ましい。抗原は、哺乳動物中へ注射される。このことはBリンパ球を誘導して、抗原に特異的なIgG免疫グロブリンを産生する。モノクローナル抗体は一般に、単一の細胞株(例として、ハイブリドーマ細胞株)によって産生される。いくつかの態様において、ポリクローナルIgGは、哺乳動物の血清から精製される。
【0063】
いくつかの態様において、例えば、RANタンパク質関連の疾患または障害に対するワクチン投与のケースにおいて、ポリクローナル抗体は、動物の血清中、自由に循環してもよい。いくつかの態様において、本開示の組成物を投与されている対象によって産生される抗RANタンパク質抗体は、自己抗体(例として、対象自身の細胞によって産生されるRANタンパク質に対する抗体であって、治療用抗体または抗RANタンパク質抗体をコードする遺伝子治療用ベクターの投与の結果としてではない)である。
【0064】
いくつかの態様において、抗RANタンパク質抗体は、抗ポリ(CP)、抗ポリ(GA)、抗ポリ(GP)、抗ポリ(PR)、抗ポリ(GR)、抗ポリ(PA)、抗ポリ(A)、抗ポリ(G)、抗ポリ(S)、抗ポリ(C)、抗ポリ(Q)、抗ポリ(GD)、抗ポリ(GE)、抗ポリ(GQ)、抗ポリ(GT)、抗ポリ(L)、抗ポリ(LP)、抗ポリ(LPAC(配列番号1))、抗ポリ(LS)、抗ポリ(P)、抗ポリ(QAGR(配列番号2))、抗ポリ(RE)、抗ポリ(SP)、抗ポリ(VP)、抗ポリ(FP)、もしくは抗ポリ(GK)抗体、またはそれらいずれかの組み合わせである。抗RANタンパク質抗体は、細胞外RANタンパク質、細胞内RANタンパク質、または細胞外と細胞内との両RANタンパク質へ結合してもよい。
【0065】
いくつかの態様において、抗RANタンパク質抗体は、以下:ポリ(CP)、ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(PR)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、ポリ(A)、ポリ(G)、ポリ(S)、ポリ(C)、ポリ(Q)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(QAGR(配列番号2))、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、および/またはポリ(GK)から選択される1以上のRANタンパク質のアミノ酸反復領域(例として、RANタンパク質のジアミノ酸反復、RANタンパク質のホモポリマー反復等々)を標的にする(例として、これへ特異的に結合する)。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、または少なくとも200アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、200アミノ酸残基より多く(例として、500、1000、5000、10000等々)含む。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが10アミノ酸と500アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが20アミノ酸と300アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが30アミノ酸と200アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが40アミノ酸と100アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが50アミノ酸と90アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが60アミノ酸と80アミノ酸との間にある。
【0066】
いくつかの態様において、抗RAN抗体は、ポリアミノ酸反復を含まないRANタンパク質のいずれの部分、例えば、RANタンパク質のC末端(例として、ポリ(CP)、ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(PR)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、ポリ(A)、ポリ(G)、ポリ(S)、ポリ(C)、ポリ(Q)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(QAGR(配列番号2))、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、および/またはポリ(GK)のRANタンパク質のC末端)も標的にする(例として、これらへ特異的に結合する)。RANタンパク質のC末端を標的にする抗RAN抗体の例は、例えば、米国刊行物第2013/0115603号に開示されており、これらの全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0067】
RANタンパク質の「C末部分」または「C末端」は、センス転写産物につき遺伝子(例として、C9Orf72、HTT、DM1、SCA36、LRP8、CASP8、GREB1等々)のイントロン内のポリアミノ酸反復領域下流のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列、またはアンチセンス転写産物につき遺伝子(例として、C9Orf72、HTT、DM1、SCA36、LRP8、CASP8、GREB1等々)のイントロン内のポリアミノ酸反復領域下流のヌクレオチド配列を含む。
【0068】
いくつかの態様において、RANタンパク質のC末部分は、RANタンパク質のポリアミノ酸反復部分の直後のアミノ酸にて始まる配列であって、遺伝子(例として、C9Orf72、HTT、DM1、SCA36、LRP8、CASP8、GREB1等々)のセンス転写産物によってコードされる配列において1以上の連続したアミノ酸を含む。いくつかの態様において、RANタンパク質のC末部分は、RANタンパク質のポリアミノ酸反復部分の直後のアミノ酸にて始まる配列であって、遺伝子(例として、C9Orf72、HTT、DM1、SCA36、LRP8、CASP8、GREB1等々)のアンチセンス転写産物によってコードされる配列において1以上の連続したアミノ酸を含む。
【0069】
いくつかの態様において、RANタンパク質のC末部分は、RANタンパク質のポリアミノ酸反復部分の直後のアミノ酸にて始まる配列において1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、または75より多くの連続したアミノ酸を含む。いくつかの態様において、RANタンパク質のC末部分は、RANタンパク質のポリアミノ酸反復部分の直後のアミノ酸にて始まる配列において1~5、3~10、5~15、8~20、10~25、13~30、15~35、18~40、20~45、23~50、25~55、28~60、30~65、33~70、35~75、または75より多くの連続したアミノ酸を含む。
【0070】
RANタンパク質ワクチンおよび免疫原
RANタンパク質ワクチンは一般に、RANタンパク質に対して免疫応答(例として、対象における特異的な抗体の産生)を惹起する1以上のペプチド抗原を含む。いくつかの態様において、ペプチド抗原の1以上は、B細胞エピトープである。いくつかの態様において、ペプチド抗原は、以下:ポリ(CP)、ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(PR)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、ポリ(A)、ポリ(G)、ポリ(S)、ポリ(C)、ポリ(Q)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(QAGR(配列番号2))、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、および/またはポリ(GK)のRANタンパク質の1以上を標的にする(例として、それをコードするアミノ酸配列を含む)。
【0071】
いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンの投与は、RANタンパク質ワクチンの投与に先立ち対象に存在するRANタンパク質の発現レベルと比べて、RANタンパク質の発現を低減させる。いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンの投与は、RANタンパク質ワクチンの投与に先立ち対象に存在するRANタンパク質の発現レベルと比べて、RANタンパク質の発現を1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍まで、または100倍より多く低減させる。いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンの投与は、RANタンパク質ワクチンの投与に先立ち対象に存在するRANタンパク質の発現レベルと比べて、RANタンパク質の発現を1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%、またはここに含有されるいずれのパーセンテージまで低減させる。
【0072】
いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンの投与は、RANタンパク質ワクチンの投与に先立ち対象に存在するRANタンパク質の凝集レベルと比べて、RANタンパク質の凝集を低減させる。いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンの投与は、RANタンパク質ワクチンの投与に先立ち対象に存在するRANタンパク質の凝集レベルと比べて、RANタンパク質の凝集を1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍まで、または100倍より多く低減させる。いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンの投与は、RANタンパク質ワクチンの投与に先立ち対象に存在するRANタンパク質の凝集レベルと比べて、RANタンパク質の凝集を1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%、またはここに含有されるいずれのパーセンテージまで低減させる。
【0073】
いくつかの態様において、ペプチド抗原は、ジペプチド反復(DPR)ペプチド抗原である。いくつかの態様において、DPRペプチド抗原は、(GA)x(配列番号4)、(GP)x(配列番号5)、(GR)x(配列番号7)、(PA)x(配列番号8)、または(PR)x(配列番号6)のジアミノ酸反復を含み、ここでxは抗原の反復単位数を表す。いくつかの態様において、DPRペプチド抗原は、(CP)x(配列番号3)、(A)x(配列番号9)、(G)x(配列番号10)、(S)x(配列番号11)、(C)x(配列番号12)、(Q)x(配列番号13)、(GD)x(配列番号14)、(GE)x(配列番号15)、(GQ)x(配列番号16)、(GT)x(配列番号17)、(L)x(配列番号18)、(LP)x(配列番号19)、(LPAC)x(配列番号20)、(LS)x(配列番号21)、(P)x(配列番号22)、(QAGR)x(配列番号23)、(RE)x(配列番号24)、(SP)x(配列番号25)、(VP)x(配列番号26)、(FP)x(配列番号27)、および/または(GK)x(配列番号28)のジアミノ酸反復を含み、ここでxは抗原の反復単位数を表す。いくつかの態様において、「x」は、5、10、15、20、25、30、35、40、または40より多い(例として、5、10、15、20、25、30、35、40、または40より多くの反復単位)。いくつかの態様において、ペプチド抗原(例として、DPRペプチド抗原)は、2と150との間にある(例として、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、または150の)アミノ酸反復(例として、種々のホモ重合アミノ酸反復、ジアミノ酸反復、トリアミノ酸反復、テトラアミノ酸反復、ペンタアミノ酸反復、または上記いずれかの組み合わせ)を含む。いくつかの態様において、ペプチド抗原(例として、DPRペプチド抗原)は、50より多くのアミノ酸反復(例として、種々のホモ重合アミノ酸反復、ジアミノ酸反復、トリアミノ酸反復、テトラアミノ酸反復、ペンタアミノ酸反復、または上記いずれかの組み合わせ)を含む。いくつかの態様において、各DPRペプチド抗原は、10ジアミノ酸反復と25ジアミノ酸反復との間を含む。いくつかの態様において、DPRペプチド抗原は、以下のペプチド抗原:(GA10(配列番号4)、GA15(配列番号4)、GR25(配列番号7)、GP10(配列番号5)、PR10(配列番号6)、またはそれらの組み合わせのうち1つを含む。
【0074】
RANタンパク質ワクチンのペプチド抗原数は変動してもよい(例として、RANタンパク質ワクチンは多価であってもよい)。いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または12より多くの種々のアミノ酸反復(例として、種々のホモ重合アミノ酸反復、ジアミノ酸反復、トリアミノ酸反復、テトラアミノ酸反復、ペンタアミノ酸反復、または上記いずれかの組み合わせ)に対するペプチド抗原を含む。いくつかの態様において、DPRペプチド抗原は、[(GA)15(配列番号4)+(GR)25(配列番号7)+(PR)10(配列番号6)]、または[(GA)15(配列番号4)+(GR)25(配列番号7)+(PR)10(配列番号6)+(GP)10(配列番号5)]を含む。
【0075】
本開示の側面は、1以上の(例として、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または10より多くの)追加の免疫原を含む組成物(例として、RANタンパク質ワクチン等々)に関する。「免疫原」は、免疫学的寛容性よりむしろ、体液性および/または細胞性の免疫応答を誘導することが可能ないずれの抗原も指す。免疫原の例は、これらに限定されないが、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ブルーキャリア免疫原性タンパク質(CCH)、ウシ血清アルブミン(BSA)、オボアルブミン(OVA)、ジフテリア毒素、麻疹ウイルス融合タンパク質(MVF)、B型肝炎ウイルス表面抗原(HB-sAg)、破傷風毒素(TT)、百日咳毒素(PT)、または上記いずれかの部分を包含する。
【0076】
免疫原は、Tヘルパー細胞エピトープを含んでいてもよい。「Tヘルパー細胞エピトープ」または「Thエピトープ」は、抗原提示細胞の表面上に提示されているT細胞エピトープを指し、前記表面上でそれらは、Tヘルパー細胞によって特異的に認識される長さが13~17個のアミノ酸のMHCクラスII分子へ結合される。いくつかの態様において、Thエピトープをワクチンに包含させることは、ワクチン接種された対象において、Th1炎症促進性T細胞応答に優先し、偏ったTh2タイプの制御性T細胞応答をもたらす。
【0077】
ペプチド抗原および追加の免疫原(例として、B細胞エピトープおよびT細胞エピトープ)は、いずれの好適なモダリティによって連結されていてもよい。いくつかの態様において、ペプチド抗原および追加の免疫原は、共有結合的または非共有結合的に連結されている。いくつかの態様において、ペプチド抗原および追加の免疫原は、相互に直接接続されている。いくつかの態様において、ペプチド抗原および追加の免疫原は、1以上の(例として、1、2、3、4、またはそれより多くの)連結分子を介して連結されている。いくつかの態様において、1以上の連結分子によって提供される立体配座的な分離は、提示されたペプチド抗原(例として、DPRペプチド抗原)と適切なTh細胞およびB細胞との間のより効率的な相互作用を可能にし、よってペプチド抗原(例として、DPRペプチド抗原)またはそれらの交差反応性機能的免疫学的類似体の免疫原性が増強される。
【0078】
連結分子は、化学的な繋がり(例として、1以上の小分子間の繋がり)、もしくはアミノ酸の繋がり(例として、アミノ酸間、アミノ酸の反応基間の繋がり、ハイブリダイゼーション等々)、またはそれらの組み合わせを提供してもよい。いくつかの態様において、連結分子は、アミノ酸リンカーを含む。いくつかの態様において、連結分子は、アミノ酸、Lys-、Gly-、Lys-Lys-Lys-、(α、ε-N)Lys、およびε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号29)からなる群から選択される。
【0079】
いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンは、1以上の追加の構成要素、例えば、N末のアミドもしくはシグナルペプチド、またはC末のα-COOHもしくはα-CONH2を含む。
【0080】
RANタンパク質ワクチンまたはRANタンパク質の免疫原は、医薬組成物において製剤化されていてもよい。いくつかの態様において、医薬組成物は、1以上の薬学的に許容し得る賦形剤を含む。薬学的な賦形剤は知られており、例えば、Remington,J.P.(1965).Remington's Pharmaceutical Sciences,Easton,Pa:Mack Pub.Co.,19th ed.,1995によって記載されている。いくつかの態様において、ワクチンを含む医薬組成物は、1以上のアジュバントを包含する。アジュバントは、他の剤の効果を修飾する薬理学的なまたは免疫学的な剤である。アジュバントは、免疫応答をブーストするためにワクチンへ加えられることで、より多くの抗体およびより長く続く免疫が産生されることもあり、よって必要とされる抗原の用量が最小化される。いくつかの態様において、アジュバントは、アルミニウムの無機塩である。いくつかの態様において、アジュバントは、アルハイドロゲル(Al(OH)3)またはadjuphos(AlPO4)である。アルミニウムをベースとしたアジュバントは知られており、例えば、Shardlow et al.(2018)Allergy,Asthma & Clinical Immunology,14:80に記載されるとおりである。いくつかの態様において、医薬組成物は、CpGをさらに含む。いくつかの態様において、CpGは、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)であり、例えば、Weiner,et al.,(1997)PNAS 94(20):10833-7によって記載されるとおりである。アジュバントは、下の「アジュバント」との表題のセクションにおいて詳細に考察される。
【0081】
本発明に従って使用され得るワクチン組成物、ならびにポリペプチドおよび核酸などの免疫原は、薬学的に許容し得る担体または希釈剤とともに提供され得る。対象とする発明(subject invention)において有用な化合物および組成物は、薬学的に有用な組成物を調製するための知られている方法に従って製剤化され得る。製剤は、数多の典拠に詳細に記載されており、当業者に周知であって容易に利用可能である。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences,Easton Pa.:Mack Pub.Co.,19th ed.,1995は、対象とする発明に関係して使用され得る製剤を記載する。一般に、対象とする発明の組成物は、組成物の有効な投与を容易にするために有効量の免疫原が好適な担体と組み合わせられ得るように、製剤化されるであろう。本方法において使用される組成物はまた、様々な形態でもあり得る。これらは、例えば、錠剤、丸薬、粉末、液体溶液(liquid solutions)または懸濁液、坐薬、注射剤および不溶解性溶液、ならびにスプレー液(sprays)などの、固体、半固体、および液体の剤形を包含する。好ましい形態は、意図した投与モードおよび治療用途に依存する。組成物はまた、好ましくは、当業者に知られている従来の薬学的に許容し得る担体および希釈剤も包含する。対象とするペプチド模倣薬との使用のための担体または希釈剤の例は、これらに限定されないが、水、生理食塩水、油(鉱油を包含する)、エタノール、ジメチルスルホキシド、ゼラチン、シクロデキストラン、ステアリン酸マグネシウム、デキストロース、セルロース、糖、炭酸カルシウム、グリセロール、アルミナ、デンプン、ならびに等価な担体および希釈剤、またはこれらのうちいずれの混合物を包含する。本発明の免疫原の製剤はまた、懸濁剤、保護剤、潤滑剤、緩衝剤、保存料、および安定剤も含み得る。所望される治療的処置のためのかかる投薬量の投与を提供するため、本発明の医薬組成物は、有利なことに、担体または希釈剤を包含する組成物全体の重量に基づき、約0.1%と45%との間、とくに1重量%と15重量%との間の免疫原(単数または複数)を含むであろう。
【0082】
対象とする発明のワクチンおよび免疫原性の組成物は、当該技術分野において周知の手順によって調製され得る。例えば、ワクチンまたは免疫原は、典型的には、注射剤、例として、液体溶液または懸濁液として調製される。ワクチンまたは免疫原は、投薬製剤に適合するやり方で、かつレシピエントにおいて治療的に有効であって免疫応答を引き起こす(immunogenic)であろうような量で、投与される。具体的なワクチンまたは免疫原の製剤にとって最適な投薬量および投与パターンは、当業者によって容易に決定され得る。
【0083】
いくつかの態様において、本発明の免疫原はまた、多糖類、または他の好適な担体もしくは足場(scaffold)上にも提示され得る。かかるワクチンのこの構造は、理論に拘束されないが、宿主においてより大きな免疫原性および免疫記憶を誘導すると考えられており、それによって、免疫系細胞が遭遇する抗原の増大した局所濃度に起因して免疫原性応答の増大が容易になる。
【0084】
本発明の抗原性のペプチドおよびポリペプチドを作製する方法
本発明のペプチドは、化学合成および生化学的合成などの当業者に利用可能ないずれの技法も使用し、産生され得る。ペプチドの化学合成のための技法の例は、Lee,Peptide and Protein Drug Delivery,New York,N.Y.,Dekker(1990)において、Ausubel,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley,1987-1998において、およびSambrook et al.(1989)において提供されている。
【0085】
いくつかの態様において、本発明のペプチド抗原は、例えば、組換えタンパク質ワクチンとして、合成して産生されたものであっても、または天然に産生されたものであってもよい。「組換えタンパク質ワクチン」は、その活性成分が、組換え発現によって産生された少なくとも1つのタンパク質抗原を包含する、ワクチンである。ワクチン抗原は、例えば、細菌、哺乳動物の細胞、バキュロウイルス細胞、および/または植物細胞、あるいはこれらのハイブリッドにおいて産生されてもよい。
【0086】
いくつかの態様において、ペプチド抗原、またはそれらの一部は、例として、無細胞翻訳系において、もしくは化学的なタンパク質合成によって、完全に合成的に産生または製造されてもよい。本発明の標的抗原は、例えば、in vivoでの組換え産生および化学合成(例として、SPPS)を包含する、当業者に周知であるかまたは利用可能ないずれのルートも通して得られてもよい。in vivoでの組換え産生は、真核細胞培養物または原核細胞培養物からのタンパク質の回収を指すが、ここで前記細胞は、典型的には調節配列の制御下のプラスミド内に、本発明の抗原性ペプチドまたはポリペプチドの1以上をコードする配列をコードする異種のヌクレオチドを含有する。当業者は、所望されるポリペプチド配列をコードするのに必要なヌクレオチド配列を決定する遺伝暗号を使用し、周知の調節配列および市販のプラスミドベクターと組み合わせて、かかるプラスミドを調製することが可能であろう。かかる系は当該技術分野において周知であって、本発明と関係して使用可能な標準的な組換えDNAおよび分子クローニング技法は、当該技術分野において知られており、例として、Sambrook et al.(1989)において、より十分に記載されている。
【0087】
ペプチドをベースとしたワクチンの調製は一般に当業者に十分理解されており、様々な利用可能な技法(例えば、米国特許第4,608,251号;第4,601,903号;第4,599,231号;第4,599,230号;および第4,596,792号に記載されている技法を包含する)によって;ならびに一般にRemington's Pharmaceutical Sciences,16th Edition,A.Osol,(ed.),Mack Publishing Co.,Easton,Pa.(1980)、およびRemington's Pharmaceutical Sciences,19th Edition,A.R.Gennaro,(ed.),Mack Publishing Co.,Easton,Pa.(1995)において提供されるとおりに、達成され得る。
【0088】
本明細書に開示の抗原および免疫原性の組成物は、当業者に利用可能ないずれの方法によっても調製されてもよい。いくつかの態様において、抗原性ペプチドおよび/または免疫原は、追加の免疫原性の構成要素の一回の出現または繰り返される出現とともに提示される。かかる追加の構成要素は、同一線上の(collinear)発現(すなわち、融合タンパク質合成)を経由して、または化学的抱合によって、結び合わされることで、標的抗原となってもよい;かかる方法は当該技術分野において周知である。いくつかの態様において、標的抗原は、増強された免疫応答を提供するために、細胞、生物、および/または不完全な生物(例として、アデノ様(adeno-like)ウイルス粒子)上あるいは中に提示される。いくつかの態様において、標的抗原は、宿主細胞の遺伝子操作産物として、すなわち、ベクター(例として、組換えウイルスベクター)内に、ベクター上に含有されるものとして、または裸のDNAもしくはRNAワクチンとして、in vivoで合成されてもよい。組換えワクチンを調製するための技法およびDNA/RNAワクチンを送達するための技法は当該技術分野において周知であって、例えば、米国特許第7,223,409号および第6,603,998号において考察されている。
【0089】
アジュバント
いくつかの態様において、本発明の抗原ペプチドおよび免疫原は、ワクチンにおいて提示されたとき免疫応答を誘導するのに充分に免疫原性である。いくつかの態様において、免疫応答は、免疫原性の組成物(例として、ワクチン)がアジュバント物質をさらに包含する場合、増大され得る。用語「アジュバント」は、以下の物質または組成物(composition of matter)を指す:(1)それ自体、ワクチンの免疫原に対する特異的な免疫応答を開始することは可能ではないが、(2)それにもかかわらず、免疫原に対する免疫応答を増強することが可能である。いくつかの態様において、ペプチド抗原および/または免疫原とアジュバントとの組み合わせられたワクチン接種は、ペプチド抗原および/または免疫原単独(alone)(例として、アジュバントなし)によって誘導される免疫応答より強い、ペプチド抗原および/または免疫原に対する免疫応答を誘導できる。
【0090】
ワクチンのアジュバント効果を達成する様々な方法が知られている。本発明に従う使用に好適な一般原則および方法は、“The Theory and Practical Application of Adjuvants,”Duncan E.S.Stewart-Tull (Eds.),John Wiley & Sons Ltd,Malden,Mass.,USA(1995)において;および“Vaccines:New Generation Immunological Adjuvants,”Gregoriadis et al.,(Eds.),Plenum Press,New York,N.Y.,USA(1995)において詳述されている。
【0091】
いくつかの態様において、アジュバントは、「免疫系の刺激」と相関するか、および/またはこれを引き起こすものである。免疫系の刺激は、物質または組成物(composition of matter)が、一般的で非特異的な免疫刺激効果を呈することを意味する。数多のアジュバントおよび推定上のアジュバント(あるサイトカインなど)は、免疫系への刺激能を共有している。いくつかの態様において、免疫刺激剤を使用した結果は、免疫系の増大した「覚醒(alertness)」である(例として、ペプチド抗原および/または免疫原での、同時の免疫付与またはこれに続く免疫付与が、ペプチド抗原および/または免疫原の単独使用(isolated use)と比較して、より有効な免疫応答を有意に誘導し得る)。フロイント完全アジュバント(「CFA」)は、いくつかの態様において、本発明のワクチンと関連して使用されてもよいアジュバントである。使用されてもよい他のアジュバントは、細胞系または液性系のいずれかを通して、増大した防御免疫レベルを推進するであろうアジュバントを包含する。
【0092】
本発明における使用のためのアジュバントの非限定例は、以下:1以上の免疫標的化アジュバント;毒素、サイトカイン、およびマイコバクテリアの誘導体などの、免疫調節性アジュバント;フロイント不完全アジュバント;リン酸アルミニウム;水酸化アルミニウム;ミョウバン;Stimulon(登録商標)QS-21(Aquila Biopharmaceuticals,Inc.,Framingham,Mass.,USA);MPL(登録商標)(3,0,脱アシル化モノホスホリル脂質A;Corixa Corp.,Hamilton,Mont.,USA);インターロイキン12(Genetics Institute,Cambridge,Mass.,USA);油製剤;ポリマー;ミセル形成アジュバント;サポニン;免疫刺激複合体マトリックス(ISCOMマトリックス);粒子;DDA;DNAアジュバント;カプセル化アジュバント;または米国特許第7,357,936号;第7,090,853号;第6,793,928号;第6,780,421号;第6,759,241号;第6,713,068号;第6,572,866号;第6,534,065号;第6,451,325号;第6,440,423号;第6,306,404号;第6,060,068号;第6,033,673号;第5,800,810号;第5,795,582号;第5,785,975号;第5,679,356号;第5,503,841号;および第5,182,109号に記載されるとおりのアジュバントのいずれも包含する。アジュバントはまた、水、生理食塩水、石油、植物油、大豆油、落花生油、および/または鉱油、あるいはそれらの組み合わせなどの滅菌された液体を包含してもよい。いくつかの態様において、アジュバントは、CpG3である。
【0093】
いくつかの態様において、アジュバントは、T細胞を刺激する(例として、無毒化された易熱性E.coliエンテロトキシンアジュバント)。いくつかの態様において、アルミニウムをベースとしたアジュバント(例として、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウム)が使用される。アルミニウムをベースとしたアジュバント(例として、水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウム)は一般的に、緩衝生理食塩水中、約0.05~0.1%溶液として使用され、糖の合成ポリマーとの混和物(例として、Carbopol(登録商標)Noveon,Inc.Cleveland,Ohio,USA)が0.25%溶液として使用され、約70℃から約101℃まで及ぶ温度で夫々約30秒間~約2分間熱処理することによるワクチン中タンパク質の凝集、また架橋剤を用いる凝集も実行可能である。アルブミンに対するペプシン処置抗体(例えば、Fabフラグメントを包含する)での再活性化による凝集物、C.parvumなどの細菌性細胞との混合物、内毒素、もしくはグラム陰性細菌のリポ多糖構成要素、モノオレイン酸マンニド(Aracel-A(登録商標)、Sigma Chemical Co.)などの生理学的に許容し得る油ビヒクル中のエマルション、またはペルフルオロ化合物の血液代替物(perfluorochemical blood substitute)(例として、Fluosol-DA(登録商標))の20%溶液とのエマルションなどのエマルション、あるいはそれらいずれかの組み合わせもまた、採用されてもよい。スクアレンおよびIFAなどの油との混和物もまた、採用されてもよい。
【0094】
本発明の抗原性の組成物は、1以上の担体へ抱合されていても、または同担体上に発現されていてもよい。米国特許出願刊行物第2004/0223976号は、抱合のための例示の方法を考察している。抱合について、担体は、いくつかの態様において、真菌、細菌、ウイルスもしくはウイルス様粒子、またはこの一部、タンパク質もしくはタンパク質複合体(例として、完全もしくは不完全なカプシド粒子)、多糖類もしくは多糖類複合体、ポリヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド複合体(二重ヘリックス、三重ヘリックス、ヘアピンループ等々)、有機もしくは無機ポリマー、マイクロビーズもしくはミクロスフェア、ナノ粒子もしくはナノスフェア、飛来(ballistic)粒子等々、および/またはそれらいずれかの組み合わせであってもよい。本明細書に使用されるとき、「担体タンパク質」は、ペプチド配列およびポリペプチド配列、多糖類、および/または他の抗原が抱合された、免疫原性または非免疫原性のタンパク質を意味する。様々な免疫原性の担体タンパク質は当該技術分野において知られており、結合型ワクチンにおいて使用されてもよい。担体タンパク質は、これらに限定されないが、Neisseria meningitidisの外膜タンパク質複合体(OMPC)、破傷風トキソイドタンパク質、B型肝炎ウイルスタンパク質(例えば、表面抗原タンパク質[HBsAg]およびコア抗原タンパク質[HB CoreAg]を包含する)、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ロタウイルスカプシドタンパク質、およびウシの乳頭腫ウイルスVLPもしくはヒト乳頭腫ウイルスVLP(例として、6型、11型もしくは16型HPVのVLP等、またはその薬学的に許容し得る塩)のL1タンパク質、あるいは上記いずれかの組み合わせを包含する。
【0095】
本開示のペプチド抗原および/または免疫原は、いくつかの態様において、微生物(例として、アデノウイルス、アデノ様ウイルス、または上記のもしくは他のウイルス粒子の一部などの不完全なウイルス粒子さえも)の表面上に発現されていてもよい。
【0096】
アジュバント化(Adjuvanted)抗原性ペプチド組成物
本発明のペプチド抗原、免疫原、およびその組成物は単独で製剤化されていてもよいが、他の態様において、それらはまた、多糖類ワクチン、タンパク質-多糖類ワクチン、抱合されたワクチンとして、あるいは融合タンパク質(例として、HA配列もしくはNA配列、またはそれら両方との)として一緒に、製剤化されていてもよい。抱合体は、微生物の抗原またはウイルスの抗原の形態を採っていてもよい。「微生物の抗原またはウイルスの抗原」は、本明細書に使用されるとき、微生物もしくはウイルスの、抗原またはエピトープの配列を指し、これらに限定されないが、感染性もしくは病原性のウイルス、細菌、酵母、真菌、寄生体、アメーバ、またはそれらいずれかの組み合わせを包含する。かかる抗原は、無傷のウイルスもしくは微生物それ自体、ならびに天然の単離物、フラグメント、カプシド、細胞画分、膜構成要素、ライセート、またはそれらの誘導体を、かかる微生物もしくはウイルスから得られたネイティブな(すなわち、in vivoもしくはin situでの)抗原と同一または同様の(すなわち、実質的に相同の)合成化合物あるいは組換え化合物に加えて、包含してもよい。すべてのかかるケースにおいて、抗原は、好ましくは、少なくとも最初の動物において、動物宿主の免疫系へ提示されたとき免疫応答を惹起するであろう。
【0097】
多価のまたはポリ微生物の免疫原およびワクチンを伴う本発明のいくつかの態様において、免疫原は、少なくとも2つの別個の抗原を含んでいてもよいが、これらのうち少なくとも1つは、具体的な微生物またはウイルスに特異的である。種内の多価免疫原のケースにおいて、かかる組成物は、好ましくは、少なくとも2つの異なるエピトープ、または2種以上の所定生物に対して免疫応答を惹起する抗原を含むであろう。代わりに、種間の多価免疫原のケースにおいて、かかる組成物は、好ましくは、少なくとも2つの異なるエピトープ、またはある生物からの少なくとも1種に対して免疫応答を惹起する抗原であって、また異なる第2の生物からの少なくとも1種に対しても免疫応答を惹起する抗原を含むであろう。
【0098】
化合物は、天然の微生物抗原に対して免疫応答(体液性のおよび/または細胞の)を誘導する場合、天然の微生物抗原と同様である。かかる抗原は、当該技術分野において定型的に使用されており、当業者に周知であって、真菌、細菌、ウイルス、もしくはウイルス様粒子、またはその一部、あるいはそれらの組み合わせを包含してもよい。一般に、抱合体とのワクチン接種が、感染レベルまたはその結果の疾患の重症度を低減した場合、そのときはペプチドおよび抱合体がワクチンの調製に有用であると見なされる。その上、当業者に利用可能ないずれの方法も、本発明の免疫原およびワクチンを、たとえば、多糖類、脂質、リポペプチド等の非ペプチド化合物と抱合させるのに使用されてもよい。
【0099】
タンパク質は、同タンパク質が、ワクチン抗原として使用されたときT細胞ヘルプを惹起することが可能なT細胞依存性抗原にさせる、1以上のT細胞エピトープを含有してもよい。ジフテリアおよび破傷風トキソイドに由来する抗原性ペプチドならびに免疫刺激性のアミノ酸配列、もしくはいずれの供給源からのいずれか他のT細胞エピトープ、または上記および他のいずれの部分、あるいはそれらの組み合わせもまた、本発明に従う免疫原およびワクチンの製剤において使用され得る。
【0100】
本発明の抗原性の組成物は、当該技術分野におけるいずれの抱合方法を使用しても、担体へ抱合され得る。例えば、抱合は、スルホスクシニミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(sSMCC)、N-[ε-マレイミドカプロイルオキシ]スルホスクシンイミドエステル(sEMCS)、N-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、グルタルアルデヒド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI)、ビス-ジアゾベンジジン(BDB)、もしくはN-アセチルホモシステインチオラクトン(NAHT)、またはそれらの組み合わせを使用して達成され得る。
【0101】
いくつかの態様において、本発明の免疫原性の組成物は、微生物の多糖類を含む。多糖類は、ネイティブなサイズであるか、または代わりに、実例として、顕微溶液化、超音波照射によって、もしくは化学的処置によってサイズ調整され(sized)てもよい。本発明はまた、S.aureusからの5型および8型の多糖類に由来するオリゴ糖類も含める(covers)。いくつかの態様において、本発明の免疫原性の組成物は、多糖類PIA(またはPNAG)をさらに含む。PIA(またはPNAG)は、400kDa超から、75kDaと40kDaとの間まで、10kDaと75kDaとの間まで、N-アセチル構成物質およびO-スクシニル構成物質での(1→6)-β-D-グルコサミン置換の最大30反復単位から構成されるオリゴ糖類まで、変動する種々のサイズであってもよい)。ポリペプチドは、知られている(例えば、米国特許出願刊行物第US2005/0169941号;米国特許第4,372,945号、第4,474,757号、および4,356,170号によって)いずれの方法によっても、担体多糖類(単数または複数)へ連結されてもよい。
【0102】
本発明のある態様において、ペプチドを担体へカップリングさせる抱合反応は、一方の反応物上に固有の求核性基を導入および/または使用することと、他方の反応物において固有の求電子性基を導入および/または使用することとを伴い得る。例えば、求核性チオール基が、担体タンパク質(好ましくは、OMPC)へ導入され得、次いで求電子性基(好ましくは、ハロゲン化アルキルまたはマレイミド)がペプチドへ加えられ得る。その結果得られる抱合体は、ペプチドと担体とを連結するチオールエーテル結合を有する。担体タンパク質のペプチド求電子性基(マレイミドまたはハロゲン化アルキル)と固有の求核性基(好ましくは、一級のアミンまたはチオール)との直接反応は、二級アミン連結またはチオエーテル結合へ繋がり得る。代わりのスキームは、マレイミド基またはハロゲン化アルキルを担体へ加えることを伴い、末端システインをペプチドへ導入すること、および/または固有のペプチドチオールを再度使用することは、所望される場合、チオールエーテル連結をもたらし得る。
【0103】
エキソソーム
本開示の側面は、本開示のRANタンパク質ワクチンもしくは組成物を投与されている対象に特異的なあるペプチド抗原および/または免疫原を同定するためのエキソソームの使用を包含する。いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンの、対象に特異的なペプチド抗原および/または免疫原は、対象のエキソソームにおいて同定される。ペプチド抗原(例として、ワクチン用)が、対象のエキソソームにおいて同定されたとき、かかる抗原は、対象のエキソソーム抗原の代表的なものと言える。
【0104】
エキソソームは、細胞外の環境中へ放出された後に多小胞体が原形質膜と融合したエンドサイトーシスの起源(origin)となる小膜ベシクルである。エキソソームのサイズは、直径が30nmと100nmとの間に及ぶ。それらの表面は、ドナー細胞の細胞膜からの脂質二重層からなり、それらは、エキソソームを産生したその細胞からのサイトゾルを含有し、親の細胞からの膜タンパク質をそれら表面上に呈する。
【0105】
エキソソームは、異なる組成を呈し、それらが由来する細胞型に依存して機能する。そこには「エキソソーム特異的」タンパク質はない;しかしながら、これらのベシクルにおいて同定された幾つかのタンパク質は、それらの起源を反映するエンドソームおよびリソソームに関連する。ほとんどのエキソソームは、MHC IおよびII(主要組織適合遺伝子複合体IおよびII;Tリンパ球などの免疫担当細胞への抗原提示にとって重要である)、テトラスパニン、幾つかの熱ショックタンパク質、アクチンおよびチューブリンなどの細胞骨格構成要素、細胞内膜融合に関与するタンパク質、シグナル伝達(signal transduction)タンパク質、ならびに細胞質ゾルの酵素に富んでいる。
【0106】
エキソソームは、上皮細胞、BおよびTリンパ球、肥満細胞(MC)、ならびに樹状細胞(DC)を包含する多くの細胞によって産生される。ヒトにおいて、エキソソームは、血液、血漿、尿、気管支肺胞洗浄液、腸上皮細胞、および腫瘍組織において見出されている。
【0107】
エキソソームのすべての機能が解明されてはいないが、データは、それらが細胞同士間の伝達(communication)を媒介することを強く指し示している。この伝達は種々のやり方で起こり得る。初めに、エキソソームは、細胞間相互作用と同様のやり方で、細胞表面受容体へ結合し得る。第2に、エキソソームは、細胞膜へ付着して、細胞に新しい受容体および特性を与え得る。よって、エキソソームはまた、標的細胞同士を融合させて、2細胞型間での膜タンパク質およびサイトゾルの交換もし得る。
【0108】
エキソソームを生体試料から単離する数多の方法が当該技術分野において記載されている。例えば、以下の方法:分画遠心、低速遠心分離、アニオン交換および/またはゲル浸透クロマトグラフィー、スクロース密度勾配またはオルガネラ電気泳動、磁気活性化セルソーティング(MACS)、ナノ膜限外濾過濃縮、パーコール勾配単離、および/または微少流体デバイスの使用、が使用され得る。例示の方法は、例えば、US特許刊行物第2014/0212871号に記載されている。
【0109】
ナノ粒子製剤
いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンは、ナノ粒子において製剤化されている。いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンは、脂質ナノ粒子において製剤化されている。いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンは、カチオン性脂質ナノ粒子と称される脂質-ポリカチオン複合体において製剤化されている。非限定例として、ポリカチオンは、これらに限定されないが、ポリリシン、ポリオルニチン、および/またはポリアルギニンなどの、カチオン性ペプチドまたはポリペプチドを包含してもよい。いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンは、非カチオン性脂質(これらに限定されないが、コレステロールまたはジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)など)を包含する脂質ナノ粒子において製剤化されている。
【0110】
脂質ナノ粒子製剤は、これらに限定されないが、カチオン性脂質構成要素の選択、カチオン性脂質飽和度、ペグ化の性質、すべての構成要素の比率、およびサイズなどの生物物理的パラメータによる影響が及ぼされ得る。Semple,et al.,(Nature Biotech.2010 28:172-176)による一例において、脂質ナノ粒子製剤は、57.1%カチオン性脂質、7.1%ジパルミトイルホスファチジルコリン、34.3%コレステロール、および1.4%PEG-c-DMAから構成される。別の例として、カチオン性脂質の組成を変化させると、siRNAが様々な抗原提示細胞へ、より有効に送達され得る(例として、Basha,et al.,Mol Ther.2011 19:2186-2200を見よ)。
【0111】
いくつかの態様において、脂質ナノ粒子製剤は、35~45%カチオン性脂質、40%~50%カチオン性脂質、50%~60%カチオン性脂質、および/または55%~65%カチオン性脂質を含んでいてもよい。
【0112】
いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチン製剤は、少なくとも1つの脂質を含むナノ粒子である。脂質は、これらに限定されないが、DLin-DMA、DLin-K-DMA、98N12-5、C12-200、DLin-MC3-DMA、DLin-KC2-DMA、DODMA、PLGA、PEG、PEG-DMG、ペグ化脂質、およびアミノアルコール脂質から選択されてもよい。いくつかの態様において、脂質は、これらに限定されないが、DLin-DMA、DLin-D-DMA、DLin-MC3-DMA、DLin-KC2-DMA、DODMA、およびアミノアルコール脂質などのカチオン性脂質であってもよい。
【0113】
アミノアルコールカチオン性脂質は、例えば、米国特許刊行物第US20130150625号に記載される脂質であってもよく、および/またはこれに記載される方法によって作製された脂質であってもよい。非限定例として、カチオン性脂質は、2-アミノ-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]-2-{[(9Z,2Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ] メチル}プロパン-1-オール(US20130150625における化合物1);2-アミノ-3-[(9Z)-オクタデカ-9-エン-1-イルオキシ]-2-{[(9Z)-オクタデカ-9-エン-1-イルオキシ]メチル}プロパン-1-オール(US20130150625における化合物2);2-アミノ-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]-2-[(オクチルオキシ)メチル]プロパン-1-オール(US20130150625における化合物3);および2-(ジメチルアミノ)-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]-2-{[(9Z、12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]メチル}プロパン-1-オール(US20130150625における化合物4);または薬学的に許容し得るいずれの塩もしくはその立体異性体であってもよい。
【0114】
脂質ナノ粒子製剤は、典型的には、脂質、とりわけ、イオン化可能なカチオン性脂質、例えば、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、ジリノレイル-メチル-4-ジメチルアミノブチラート(DLin-MC3-DMA)、またはジ((Z)-ノナ-2-エン-1-イル)9-((4-(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)へプタデカンジオアート(L319)を含み、さらに、中性脂質、ステロール、および粒子凝集を低減することが可能な分子、例えば、PEGまたはPEG修飾脂質を含む。
【0115】
mRNA RANタンパク質ワクチン
本発明のいくつかの側面は、本明細書に記載のとおりの抗原ペプチドおよび/または免疫原を含むRNA(例として、mRNA)ワクチンを企図する。いずれの具体的な理論によっても拘束されることは望まないが、RNA(例として、mRNA)ワクチンは、これらがはるかに大きな抗体力価を産生し、かつ市販の抗ウイルス治療的処置より早く応答を産生する点で、秀でた特性を有し得る。mRNAポリヌクレオチドとしてのRNA(例として、mRNA)ワクチンは、RNA(例として、mRNA)ワクチンが天然の細胞機構を取り入れることから、翻訳の際に適切なタンパク質立体配座を産生するよう、より良好にデザインされていると考えられる。ex vivoで製造されかつ不要な細胞応答を始動させ得る既存のワクチンとは違って、RNA(例として、mRNA)ワクチンは、よりネイティブな様式で細胞系へ提示される。
【0116】
いくつかの態様において、本発明のRANタンパク質ワクチンは、mRNA RANタンパク質ワクチンである。いくつかの態様において、mRNA RANタンパク質ワクチンは、本明細書に記載のとおりの少なくとも1つのペプチド抗原または少なくとも1つの免疫原をコードするオープンリーディングフレームを有する、少なくとも1つのRNAポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、mRNA RANタンパク質ワクチンは、カチオン性脂質ナノ粒子において製剤化されている。
【0117】
いくつかの態様において、mRNA RANタンパク質ワクチンは、フラジェリンアジュバントと組み合わせられる(例として、1以上のペプチド抗原または免疫原をコードするmRNAが、フラジェリンをコードするmRNAと組み合わせられる)。フラジェリンアジュバントと組み合わせられたRNA(例として、mRNA)ワクチン(例として、mRNAにコードされたフラジェリンアジュバント)は、これらがはるかに大きな抗体力価を産生し得、かつ市販の抗ウイルス治療的処置より早く応答を産生し得る点で、秀でた特性を有する。いくつかの態様において、mRNA RANタンパク質ワクチンは、少なくとも1つの抗原性ペプチドまたはその免疫原性フラグメント(例として、抗原性ペプチドに対する免疫応答を誘導することが可能な免疫原性フラグメント)をコードするオープンリーディングフレームを有する少なくとも1つのRNA(例として、mRNA)ポリヌクレオチドと、フラジェリンアジュバントをコードするオープンリーディングフレームを有する少なくとも1つのRNA(例として、mRNAポリヌクレオチド)とを包含する。
【0118】
生体試料において抗RAN抗体を検出する方法
本開示の側面は、対象から得られた1以上の生体試料に存在する抗RAN抗体のレベルを検出および/または測定することに関する。いくつかの態様において、1以上の抗RANタンパク質抗体は、抗ポリ(CP)、抗ポリ(GA)、抗ポリ(GP)、抗ポリ(PR)、抗ポリ(GR)、抗ポリ(PA)、抗ポリ(A)、抗ポリ(G)、抗ポリ(S)、抗ポリ(C)、抗ポリ(Q)、抗ポリ(GD)、抗ポリ(GE)、抗ポリ(GQ)、抗ポリ(GT)、抗ポリ(L)、抗ポリ(LP)、抗ポリ(LPAC(配列番号1))、抗ポリ(LS)、抗ポリ(P)、抗ポリ(QAGR(配列番号2))、抗ポリ(RE)、抗ポリ(SP)、抗ポリ(VP)、抗ポリ(FP)、および/または抗ポリ(GK)の抗体の1以上、あるいはそれらいずれかの組み合わせである。
【0119】
いくつかの態様において、1以上の抗RAN抗体の存在は、対象から得られた生体試料において検出および/または測定される。生体試料(例として、血液、血清、および/またはCSFの試料等々)において抗体を検出する方法は、当該技術分野において知られており、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)(例として、RCAをベースとしたELISA、rtPCRをベースとしたELISA等々)、電気化学発光免疫アッセイ(Meso Scale Discovery、MSD)、デジタル式ELISA技術(単一分子アレイ、SIMOA)、ウェスタンブロット分析、免疫組織化学、結合アッセイ、免疫ブロット、および/またはドットブロットアッセイを包含する。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の検出は、免疫ブロット(例として、ドットブロット、2Dゲル電気泳動、ウェスタンブロット等々)、免疫組織化学(IHC)、ELISA(例として、RCAをベースとしたELISAもしくはrtPCRをベースとしたELISA)、標識フリーの免疫アッセイ、たとえば、表面プラズモン共鳴バイオレイヤー干渉、免疫定量(immunoquantitative)PCR、質量分析、例えば、GC-MS、LC-MS、MALDI-TOF-MS、ビーズをベースとした免疫アッセイ、免疫沈降、免疫染色、または免疫電気泳動によって実施される。
【0120】
検出のある方法(例として、ウェスタンブロット)は、タンパク質(例として、抗体、例えば、抗RAN抗体)もしくはペプチドの存在を同定する検出剤またはプローブの使用を採用する。いくつかの態様において、検出剤は、抗原である。いくつかの態様において、抗原は1以上のRANタンパク質を標的にするが、任意に、ここで1以上のRANタンパク質は、以下:ポリ(CP)、ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(PR)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、ポリ(A)、ポリ(G)、ポリ(S)、ポリ(C)、ポリ(Q)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(QAGR(配列番号2))、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、および/またはポリ(GK)の1以上である。
【0121】
いくつかの態様において、抗原は、1以上のジペプチド反復(DPR)ペプチド抗原を含む。いくつかの態様において、各DPRペプチド抗原は、2ジアミノ酸反復と150ジアミノ酸反復との間を含む。いくつかの態様において、各DPRペプチド抗原は、10ジアミノ酸反復と25ジアミノ酸反復との間を含む。いくつかの態様において、各DPRペプチド抗原は、25ジアミノ酸反復と50ジアミノ酸反復との間を含む。いくつかの態様において、各DPRペプチド抗原は、50ジアミノ酸反復と100ジアミノ酸反復との間を含む。いくつかの態様において、各DPRペプチド抗原は、100ジアミノ酸反復と150ジアミノ酸反復との間を含む。いくつかの態様において、各ジペプチド反復抗原は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、または150ジアミノ酸反復を含む。
【0122】
いくつかの態様において、1以上のDPRペプチド抗原の各々は、(GA)x (配列番号4)、(GP)x(配列番号5)、(GR)x(配列番号7)、(PA)x (配列番号8)、または(PR)x(配列番号6)のジアミノ酸反復を含み、ここでXは、抗原の反復単位数を表す。いくつかの態様において、1以上のDPRペプチド抗原の各々は、(CP)x(配列番号3)、(A)x(配列番号9)、(G)x(配列番号10)、(S)x(配列番号11)、(C)x(配列番号12)、(Q)x(配列番号13)、(GD)x(配列番号14)、(GE)x(配列番号15)、(GQ)x(配列番号16)、(GT)x(配列番号17)、(L)x(配列番号18)、(LP)x(配列番号19)、(LPAC)x(配列番号20)、(LS)x(配列番号21)、(P)x(配列番号22)、(QAGR)x(配列番号23)、(RE)x(配列番号24)、(SP)x(配列番号25)、(VP)x(配列番号26)、(FP)x(配列番号27)、および/または(GK)x(配列番号28)のジアミノ酸反復を含み、ここでXは、抗原の反復単位数を表す。いくつかの態様において、xは、5、10、15、20、25、30、35、または40、または40より大きい(例として、5、10、15、20、25、30、35、40、または40より大きい反復単位)。いくつかの態様において、1以上のペプチド抗原は、B細胞エピトープを含む。
【0123】
いくつかの態様において、DPRペプチド抗原は、(GA)10(配列番号4)、(GA)15(配列番号4)、(GR)25(配列番号7)、(GP)10(配列番号5)、(PR)10(配列番号6)、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの態様において、DPRペプチド抗原は、[(GA)15(配列番号4)+(GR)25(配列番号7)+(PR)10(配列番号6)]を含む。いくつかの態様において、DPRペプチド抗原は、[(GA)15(配列番号4)+(GR)25(配列番号7)+(PR)10(配列番号6)+(GP)10(配列番号5)]を含む。
【0124】
抗体産生を惹起、疾患進行を監視、および処置の効き目を評価する方法
本開示の側面は、対象において抗RANタンパク質抗体の発現もしくは産生を惹起する(例として、促進または増強する)ための方法に関する。いくつかの態様において、本開示は、対象において抗RANタンパク質抗体の発現もしくは産生を増大または増強する方法を提供するが、方法は、本明細書に記載のとおりのRANタンパク質ワクチンおよび/またはRANタンパク質免疫原を対象へ投与することを含む。いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンの投与および/またはRANタンパク質免疫原は、対象において、上昇したレベルの抗RANタンパク質抗体をもたらす。いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンの投与および/またはRANタンパク質免疫原は、対象において、変化しないかまたは減少したレベルの抗RANタンパク質抗体をもたらす。
【0125】
さらなる本開示の側面は、RANタンパク質関連の疾患もしくは障害を有するかまたはこれを有すると疑われる対象から得られた生体試料に存在する1以上の抗RAN抗体のレベルを、処置経過にわたり(例として、特定期間にわたり)縦断的に監視すること、それによって、RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患ならびに障害のためのある処置(例として、ワクチン)の治療の効き目の査定を提供することに関する。いくつかの態様において、対象は、これまでに、本明細書に記載のとおりのRANタンパク質ワクチンおよび/またはRANタンパク質免疫原を投与されている。いくつかの態様において、RANタンパク質に関連する疾患または障害は、以下:筋萎縮性側索硬化症(ALS)、または前頭側頭型認知症(FTD)、筋強直症ジストロフィー1型(DM1)および筋強直症ジストロフィー2型(DM2)、脊髄小脳失調症1、2、3、6、7、8、10、12、17、31および36型、球脊髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、ハンチントン病(HD)、アルツハイマー病(AD)、脆弱X関連振戦失調症候群(FXTAS)、フックス角膜内皮ジストロフィー(FECD)、ハンチントン病類縁症候群2型(HDL2)、脆弱X症候群(FXS)、7p11.2の葉酸感受性(folate-sensitive)脆弱部位に関する障害FRA7A、2q11.2の葉酸感受性脆弱部位に関する障害FRA2A、ならびに脆弱XE症候群(FRAXE)からなる群から選択される。
【0126】
いくつかの態様において、1以上の抗RANタンパク質抗体は、本明細書に記載の方法に従ってRANタンパク質関連の疾患もしくは障害を有するかまたはこれを有すると疑われる対象から得られた生体試料において検出される。
【0127】
いくつかの態様において、第1の生体試料は、本明細書に記載のとおりのRANタンパク質ワクチンおよび/またはRANタンパク質免疫原の投与に先立ち(例として、治療レジメンに先立ち)、対象から得られたものであって、第2の生体試料は、本明細書に記載のとおりのRANタンパク質ワクチンおよび/またはRANタンパク質免疫原の投与後に、対象から得られたものである。いくつかの態様において、第1の生体試料は、対照試料(例として、対照の血液、血清、またはCSFの試料)である。いくつかの態様において、対照試料は、RANタンパク質関連の疾患もしくは障害を有するかまたはこれを有すると疑われる同じ対象においてスクリーニングされた、事前の(prior)試料(例として、同じ対象から、第2の試料より早く1時間、1日早く、2日早く、3日早く、4日早く、5日早く、6日早く、1週早く、2週早く、3週早く、1カ月早く、2カ月早く、3カ月早く、6カ月早く、1年早く、2年早く、3年早く、4年早く、5年早く、10年早く、20年早く、採取された試料等々)である。いくつかの態様において、対照試料は、RANタンパク質関連の疾患もしくは障害を有するかまたはこれを有すると疑われる同じ対象においてスクリーニングされた、事後の(later)試料(例として、同じ対象から、第1の試料より1時間後に、1日後に、2日後に、3日後に、4日後に、5日後に、6日後に、1週後に、2週後に、3週後に、1カ月後に、2カ月後に、3カ月後に、6カ月後に、1年後に、2年後に、3年後に、4年後に、5年後に、10年後に、20年後に、採取された試料等々)である。いくつかの態様において、対照試料は、RANタンパク質関連の疾患もしくは障害があると診断されておらず、かつ明らかな症状も、目に見える症状も、またはそうでなければ表現型の症状も有さない対象(例として、健常対照の対象)から採取されたものである。いくつかの態様において、対照試料は、RANタンパク質関連の疾患または障害を有する異なる対象から採取された試料である。いくつかの態様において、対照試料は、RANタンパク質関連の疾患もしくは障害を有するかまたはこれを有すると疑われる対象と合致した(例として、齢(age)が合致した、性が合致した、等々)対照対象から採取された試料である。
【0128】
第1の生体試料と第2の生体試料とが得られる時間間隔は変動してもよい。いくつかの態様において、第1の生体試料は、治療剤の投与(例として、RANタンパク質ワクチンなどの治療剤の第1の投与)に先立ち、1週間と1分間との間に得られたものである。いくつかの態様において、第1の生体試料は、治療剤の投与(例として、治療剤の第1の投与)に先立ち、1日(例として、24時間)と1分間との間に得られたものである。いくつかの態様において、第2の生体試料は、治療剤の投与(例として、治療剤の第1の投与)後、1分間と6カ月間との間に得られたものである。いくつかの態様において、第2の生体試料は、治療剤の投与(例として、治療剤の第1の投与)後、1日と1週間との間に得られたものである。いくつかの態様において、第2の生体試料は、治療剤の投与(例として、治療剤の直近の投与または最後の投与)後、1日と1週間との間に得られたものである。
【0129】
いくつかの態様において、第2の生体試料は、治療剤の投与から約1時間後、5時間後、10時間後、24時間(例として、1日)後、48時間(例として、2日)後、120時間(例として、5日)後、30日後、45日後、または6カ月後に収集されてもよい。いくつかの態様において、幾つかの生体試料(例として、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または10より多くの生体試料)は、例えば、特定された時間枠にわたり(例として、治療レジメンの最中)、対象から得られたものであって、1以上の抗RANタンパク質抗体が本明細書に記載の方法に従って検出される。
【0130】
本明細書に使用されるとき、「上昇した」は、生体試料(例として、血清試料)中に存在する1以上の抗RAN抗体のレベルが、既定の閾値または対照試料における1以上の抗RANタンパク質抗体のレベルなどの対照レベルを上回ることを意味する。対照および対照レベルは、RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患または障害(例として、ALS/FTDもしくはSCA36)を有さないかあるいはこれを有するとは疑われていない対象(および/または30以下のGGGGCC伸長反復もしくはTGGGCC伸長反復を有する対象)から得られた(例として、検出された)抗RANタンパク質抗体レベルを包含する。いくつかの態様において、対照または対照レベルは、治療剤(例として、RANタンパク質ワクチンおよび/またはRANタンパク質免疫原)の投与に先立つ抗RANタンパク質抗体レベルを包含する。上昇したレベルは、例えば、対照レベルを1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、300%、400%、500%、または500%を超えて上回るレベルを包含する。上昇したレベルはまた、ゼロ状態(例として、まったくないかもしくは検出不能な抗RANタンパク質抗体の発現またはレベル)から、非ゼロ状態(例として、あるレベルもしくは検出可能なレベルの抗RANタンパク質抗体の発現または存在)まで増大しつつある現象も包含する。いくつかの態様において、増大(例として、対照または事前の試料と比べた、試料における1以上の抗RANタンパク質抗体レベルのレベル増大)は、治療剤の治療の効き目(例として、試料が得られた対象における治療の効き目)を示唆し得る。いくつかの態様において、対象において、RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患あるいは障害(例として、ALS/FTD)の処置のための治療剤の投与後に、1以上の抗RANタンパク質抗体の上昇したレベルを測定すること(例として、対象において投与に先立ち測定された抗RANタンパク質抗体のレベルと比べて)は、RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患あるいは障害(例として、ALS/FTD)のための治療剤が、対象を有効には処置することを示唆する。
【0131】
本明細書に使用されるとき、「変化しないか、または減少した」は、1以上の抗RANタンパク質抗体のレベルが、既定の閾値もしくは対照試料中の1以上の抗RANタンパク質抗体のレベルなどの対照レベルにあるか、またはそれを下回ることを意味する。対照および対照レベルは、RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患または障害(例として、ALS/FTD)を有さないかあるいはこれを有するとは疑われていない対象(および/または30以下のGGGGCC伸長反復を有する対象)から得られた(例として、検出された)抗RANタンパク質抗体レベルを包含する。いくつかの態様において、対照または対照レベルは、治療剤(例として、RANタンパク質ワクチンおよび/またはRANタンパク質免疫原)の投与に先立つ抗RANタンパク質抗体レベルを包含する。変化しないレベルは、対照レベルと同じレベルである。減少したレベルは、例えば、対照レベルを1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、300%、400%、500%、または500%を超えて下回るレベルを包含する。減少したレベルはまた、非ゼロ状態(例として、あるレベルもしくは検出可能なレベルの抗RANタンパク質抗体の発現または存在)から、ゼロ状態(例として、まったくないかもしくは検出不能な抗RANタンパク質抗体の発現またはレベル)まで、減少しつつある現象も包含する。いくつかの態様において、変化または減少の欠如(例として、対照または事前の試料と比べた、試料における1以上の抗RANタンパク質抗体レベルのレベル変化または減少の欠如)は、治療剤の治療の効き目の欠如(例として、試料が得られた対象における治療の効き目の欠如)を示唆し得る。いくつかの態様において、対象において、RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患あるいは障害(例として、ALS/FTD)の処置のための治療剤の投与後に、1以上の抗RANタンパク質抗体レベルの変化の欠如またはその減少したレベルを測定すること(例として、対象において投与に先立ち測定された抗RANタンパク質抗体のレベルと比べて)は、RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患あるいは障害(例として、ALS/FTD)のための治療剤が、対象を有効には処置しないことを示唆する。
【0132】
本明細書に使用されるとき、第1の生体試料において検出された抗RANタンパク質抗体の量が、第2の生体試料において検出された抗RANタンパク質抗体の量とは異なる場合、対象において1以上の抗RANタンパク質抗体レベルに「変化」が生じている。第1の生体試料と比べて1以上の抗RANタンパク質抗体の上昇したレベルまたは減少したレベルのいずれかが第2の生体試料において観察されたとき、第1の生体試料において検出された抗RANタンパク質抗体の量は、第2の生体試料において検出された抗RANタンパク質抗体の量とは「異なる」と見なされる。
【0133】
いくつかの態様において、処置後試料において検出された抗RANタンパク質抗体のレベル(例として、量)が、抗RANタンパク質抗体の処置前レベル(例として、量)と比較して増大していた場合、治療レジメンは成功している。いくつかの態様において、処置後試料において検出された抗RANタンパク質抗体のレベル(例として、量)が、抗RANタンパク質抗体の処置前レベル(例として、量)と比較して減少していた場合、治療レジメンは成功していない。いくつかの態様において、対象から得られた生体試料(例として、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または10より多くの試料)における抗RANタンパク質抗体のレベルは、治療レジメンの最中、絶えず監視されている(例として、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または10より多くの別々の時に測定される)。
【0134】
いくつかの態様において、本開示によって記載される方法は、生体試料(例として、第2の生体試料)において検出された抗RANタンパク質抗体のレベルが、対照試料(例として、第1の生体試料)において検出されたRANタンパク質のレベルと比較して上昇していた場合に、治療剤(例として、RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患(ALS/FTDなど)の処置のための剤、例えば、RANタンパク質ワクチンおよび/またはRANタンパク質免疫原)を対象へ投与する(または投与するのを継続する)ステップを含む。いくつかの態様において、本開示によって記載される方法は、生体試料(例として、第2の生体試料)において検出された抗RANタンパク質抗体のレベルが、対照試料(例として、第1の生体試料)において検出されたRANタンパク質のレベルと比較して減少していた場合に、治療剤(例として、RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患あるいは障害(ALS/FTDなど)の処置のための剤)の対象への投与を停止するステップを含む。
【0135】
RANタンパク質に関連する疾患を予防または処置する方法
いくつかの側面において、本開示は、RANタンパク質の翻訳に関連する疾患の予防または処置を、これを必要とする対象においてするための方法を提供するが、方法は、治療的に有効な量のRANタンパク質ワクチンを対象へ投与することを含み、ここでRANタンパク質ワクチンの対象への投与は、対象における1以上の抗RANタンパク質抗体の産生を惹起する。いくつかの態様において、1以上の抗RANタンパク質抗体は、抗ポリ(CP)、抗ポリ(GA)、抗ポリ(GP)、抗ポリ(PR)、抗ポリ(GR)、抗ポリ(PA)、抗ポリ(A)、抗ポリ(G)、抗ポリ(S)、抗ポリ(C)、抗ポリ(Q)、抗ポリ(GD)、抗ポリ(GE)、抗ポリ(GQ)、抗ポリ(GT)、抗ポリ(L)、抗ポリ(LP)、抗ポリ(LPAC(配列番号1))、抗ポリ(LS)、抗ポリ(P)、抗ポリ(QAGR(配列番号2))、抗ポリ(RE)、抗ポリ(SP)、抗ポリ(VP)、抗ポリ(FP)、および/または抗ポリ(GK)の抗体の1以上、あるいはそれらいずれかの組み合わせである。
【0136】
いくつかの態様において、RANタンパク質に関連する疾患は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病(HD)、アルツハイマー病(AD)、脆弱X症候群(FRAXA)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、脊髄小脳失調症1(SCA1)、脊髄小脳失調症2(SCA2)、脊髄小脳失調症3(SCA3)、脊髄小脳失調症6(SCA6)、脊髄小脳失調症7(SCA7)、脊髄小脳失調症8(SCA8)、脊髄小脳失調症12(SCA12)、もしくは脊髄小脳失調症17(SCA17)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄小脳失調症36型(SCA36)、脊髄小脳失調症29型(SCA29)、脊髄小脳失調症10型(SCA10)、筋強直症ジストロフィー1型(DM1)、筋強直症ジストロフィー2型(DM2)、またはフックス角膜ジストロフィー(例として、CTG181)である。
【0137】
本明細書に使用されるとき、「処置する」または「処置」は、(a)RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患または障害の発病を予防あるいは遅延させること;(b)RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患あるいは障害の重症度を低減させること;(c)RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患または障害に特徴的な症状の発症を低減あるいは予防すること;(d)RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患あるいは障害に特徴的な症状の悪化を予防すること;および/または(e)RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患または障害の症状をこれまでに示した対象において、症状の再発を低減あるいは予防すること、を指す。
【0138】
例えば、ALS/FTDまたはSCA36の文脈において、「処置する」または「処置」は、(a)ALSおよび/またはFTD、またはSCA36の発病を予防または遅延させること;(b)ALSおよび/またはFTD、またはSCA36の重症度を低減させること;(c)ALSおよび/またはFTD、またはSCA36に特徴的な症状の発症を低減あるいは予防すること;(d)ALSおよび/または、またはSCA36FTDに特徴的な症状の悪化を予防すること;および/または(e)ALSおよび/またはFTD、またはSCA36の症状をこれまでに示した対象において、ALSおよび/またはFTD、またはSCA36の症状の再発を低減あるいは予防すること、を指す。
【0139】
いくつかの態様において、対象は、1以上の追加の治療剤を、本開示の1以上の治療剤(例として、RANタンパク質ワクチンおよび/またはRANタンパク質免疫原)と併せて(例として、この前に、これと同時に、またはこの後に)投与される。いくつかの態様において、対象は、本開示の1以上の治療剤(例として、RANタンパク質ワクチンおよび/またはRANタンパク質免疫原)の投与に先立ち、これまでに1以上の追加の治療剤で処置されていた。いくつかの態様において、対象は、1以上の追加の治療剤を、本開示の1以上の治療剤(例として、RANタンパク質ワクチンおよび/またはRANタンパク質免疫原)と同時に共投与される。いくつかの態様において、対象は、本開示の1以上の治療剤(例として、RANタンパク質ワクチンまたはRANタンパク質免疫原)が投与された後、続いて1以上の追加の治療剤で処置される。一般に、治療剤は、小分子(例として、メトホルミンまたはメトホルミン誘導体)、干渉RNA(例として、dsRNA、siRNA、miRNA、amiRNA、ASO、アプタマー等々)、タンパク質またはそのフラグメント、ペプチド、抗RANタンパク質抗体などの抗体等々であり得る。いくつかの態様において、治療剤は、例えば、タンパク質キナーゼR(PKR)経路、EIF2経路、またはEIF3経路などの、RANタンパク質の発現を制御する経路を調整することによって、RANタンパク質の発現を調整する。
【0140】
適切な追加の治療剤の同定および選択は、当業者の能力の範囲内にあり、対象が患う疾患または障害に依存するであろう。いくつかの態様において、ALS/FTDの処置のための1以上の追加の治療剤(例として、リルゾール(Rilutek、Sanofi-Aventis)、トラゾドン(Desyrel、Oleptro)、選択的セロトニン再取り込みインヒビター(SSRI)、バクロフェン、ジアゼパム、フェニトイン、トリヘキシフェニジル、アミトリプチリン、メトホルミン、抗RAN抗体等々)は、対象へ投与される。いくつかの態様において、HDのための(例として、テトラベナジン(Xenazine)、バクロフェン、およびデューテトラベナジン(Austedo)等々)、ADのための(例として、コリンエステラーゼインヒビター(Aricept(登録商標)、Exelon(登録商標)、Razadyne(登録商標))、およびメマンチン(Namenda(登録商標))等々)、脆弱X症候群のための(例として、選択的セロトニン再取り込みインヒビター、カルバマゼピン、メチルフェニデート、トラゾドン等々)、脊髄小脳失調症のための(例として、バクロフェン、リルゾール、アマンタジン、バレニクリン等々)、脆弱X症候群のための(例として、セルトラリン、メトホルミン、カンナビジオール(CBD)、アカンプロサート、ロバスタチン、ミノサイクリン等々)、筋強直症ジストロフィー1型のための(例として、チデグルシブ、メキシレチン等々)、または筋強直症ジストロフィー2型のための(例として、Mexilitene、ガバペンチン、非ステロイド系の抗炎症薬(NSAIDS)、低用量の甲状腺補充、低用量のステロイド、三環式抗うつ薬等々)、1以上の追加の治療剤が対象へ投与される。
【0141】
対象は、治療的に有効な量の1以上の治療剤(例として、RANタンパク質ワクチンおよび/またはRANタンパク質免疫原)を投与されていてもよい。本明細書に使用されるとき、「有効量」は、RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患あるいは障害(例として、神経変性の疾患または障害)によって引き起こされる、1以上の兆候もしくは症状の処置または回復などの、医学的に所望される結果を提供するのに充分な、治療剤の投薬量である。いくつかの態様において、治療的に有効な量は、対象において抗RANタンパク質抗体の産生を惹起するのに充分なワクチンまたは免疫原の量である。いくつかの態様において、治療的に有効な量は、処置を受けている対象から得られた試料中に存在する抗RAN抗体の量を(例として、処置を受けていない対象と比べて)増加させるのに有効な量である。いくつかの態様において、治療的に有効な量は、対象において反復伸長を低減させるのに有効な量である。いくつかの態様において、治療的に有効な量は、対象においてRANタンパク質を産生するRNAの転写を低減させるのに有効な量である。ある態様において、治療的に有効な量は、対象においてRANタンパク質の翻訳を低減させるのに有効な量である。ある態様において、治療的に有効な量は、対象においてRANタンパク質の発現を低減させるのに有効な量である。ある態様において、治療的に有効な量は、対象においてRANタンパク質の凝集を低減させるのに有効な量である。反復配列の発現またはRANタンパク質の翻訳を「低減すること」は、治療剤の投与後の対象における反復配列の発現またはRANタンパク質の翻訳の量またはレベルの(および投与に先立ち、対象における量またはレベルと比べた)減少を指す。
【0142】
ある態様において、有効量は、処置を受けている対象から得られた試料中に存在する抗RAN抗体の量(例として、治療剤を投与されていない細胞または対象における抗RAN抗体のレベルと比べた抗RAN抗体のレベル)を、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%まで増加させるのに有効な量である。ある態様において、有効量は、RANタンパク質のレベル(例として、治療剤を投与されていない細胞または対象におけるRANタンパク質のレベルと比べたRANタンパク質のレベル)を、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%まで低減させるのに有効な量である。ある態様において、有効量は、RANタンパク質の翻訳(例として、治療剤を投与されていない細胞または対象にけるRANタンパク質のレベルと比べたRANタンパク質のレベル)を、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%まで低減させるのに有効な量である。ある態様において、有効量は、RANタンパク質の発現(例として、治療剤を投与されていない細胞または対象におけるRANタンパク質のレベルと比べたRANタンパク質のレベル)を、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%まで低減させるのに有効な量である。ある態様において、有効量は、RANタンパク質の凝集体(例として、治療剤を投与されていない細胞または対象におけるRANタンパク質のレベルと比べたRANタンパク質のレベル)を、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%まで低減させるのに有効な量である。
【0143】
有効量は、処置されている対象の齢および体調、対象における疾患または障害(例として、RANタンパク質の蓄積量、もしくはかかる蓄積によって引き起こされる細胞毒性)の重症度、処置の期間、いずれの併用治療の性質、特定の投与ルート、ならびに医療関係者の知識および見解の範囲内の他の因子で変動するであろう。有効量は、単回用量(例として、単一の経口用量)または複数回用量(例として、複数の経口用量)において包含されていてもよい。
【0144】
いくつかの態様において、治療剤(例として、RANタンパク質ワクチンおよび/またはRANタンパク質免疫原)は、ウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、またはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターによって送達される。いくつかの態様において、1以上の抗RANタンパク質ペプチドワクチンは、1以上のrAAVによって送達される。いくつかの態様において、治療剤は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子で、対象へ送達される。
【0145】
処置薬の投与は、当該技術分野において知られているいずれの方法によっても達成されてよい(例として、Harrison's Principle of Internal Medicine,McGraw Hill,Inc.を見よ)。投与は、局部性または全身性であってもよい。治療剤は、腸内(例として、経口)、非経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、気管内、皮下、脳室内、経皮的、皮内、眼、直腸、膣内、腹腔内、局所(粉末、軟膏、クリーム、および/または点滴薬によるとおり)、粘膜、経鼻、口腔内、舌下、気管内注入、気管支への注入(bronchial instillation)、吸入、経口スプレーとしての、鼻腔用スプレーとしての、および/またはエアロゾルとしての、を包含する、いずれのルートによっても投与され得る。全身性のルートは、経口および非経口を包含する。具体的に企図されるルートは、経口投与、静脈内投与(例として、全身性の静脈内注射)、血液および/またはリンパ供給を介する局部投与、および/または患部への直接投与である。いくつかの態様において、本開示によって記載されるとおりの処置薬は、筋肉内注射によって対象へ投与される。一般に、最も適切な投与ルートは、剤の性質(例として、胃腸管の環境におけるその安定性)、および/または対象の状態(例として、対象が、経口投与に耐えることができるかどうか)を包含する様々な因子に依存するであろう。ある態様において、本明細書に記載の化合物または医薬組成物は、対象の目への局所投与に好適である。種々の投与ルートのための組成物は、当該技術分野において周知である(例として、Remington's Pharmaceutical Sciences by E.W.Martinを見よ)。
【0146】
いくつかの態様において、RANタンパク質の発現に関連する疾患または障害のための処置は、これを必要とする対象の中枢神経系(CNS)へ投与される。本明細書に使用されるとき、「中枢神経系(CNS)」は、これらに限定されないが、神経細胞、グリア細胞、星状細胞、脳脊髄液等々を包含する、対象の脳および脊髄のすべての細胞および組織を指す。治療剤を対象のCNSへ投与するモダリティ(Modalities)は、脳中への直接注射(例として、脳内注射、脳室内注射、実質内注射等々)、対象の脊髄中への直接注射(例として、髄腔内注射、腰部への注射等々)、またはそれらいずれかの組み合わせを包含する。
【0147】
いくつかの態様において、本開示によって記載されるとおりの処置は、対象へ、例えば、静脈内注射によって、全身的に投与される。全身的に投与される治療用分子は、いくつかの態様において、対象のCNSへの分子送達を改善するために修飾され得る。治療用分子のCNS送達を改善する修飾の例は、これらに限定されないが、血液脳関門を標的にする剤(例として、Georgieva et al.Pharmaceuticals 6(4):557-583(2014)によって開示されるとおり、トランスフェリン、メラノトランスフェリン、低密度リポタンパク質(LDL)、アンジオペップ(angiopeps)、RVGペプチド等々)との共投与またはこれとの抱合、血液脳関門(BBB)破壊剤(例として、ブラジキニン)との共投与、および投与に先立つBBBの物理的な崩壊(例として、MRIガイド下集束超音波による)等々を包含する。
【0148】
投薬量は、対象および投与ルートに依存するであろう。投薬量は、当業者によって決定され得る。
本開示によって記載されるとおりの組成物(例として、単離された核酸、ベクター、またはrAAVを含む組成物)は、1度または複数回(例として、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20回、もしくは10回より多く)対象へ投与され得る。いくつかの態様において、対象は、1以上の追加の用量のRANタンパク質ワクチンまたはRANタンパク質免疫原を投与される。
【0149】
有効量に達するのに要される厳密な量の治療剤は、例えば、対象の種、齢、および全身状態、副作用または障害の重症度、具体的な化合物の同一性、投与モード等に依存し、対象ごとに変動するであろう。有効量は、単回用量(例として、単一の経口用量)または複数回用量(例として、複数の経口用量)において包含されていてもよい。ある態様において、複数回用量が、対象へ投与されるか、または生体試料、組織、もしくは細胞へ適用されたとき、複数回用量のうちいずれか2用量は、異なる量のまたは実質的に同じ量の本明細書に記載の化合物を包含する。ある態様において、複数回用量が、対象へ投与されるか、または生体試料、組織、もしくは細胞へ適用されたとき、複数回用量を対象へ投与する頻度、または複数回用量を生体試料、組織、もしくは細胞へ適用する頻度は、1日につき3用量、1日につき2用量、1日につき1用量、隔日毎に1用量、3日毎に1用量、1週毎に1用量、2週毎に1用量、3週毎に1用量、または4週毎に1用量である。ある態様において、複数回用量を対象へ投与する頻度、または複数回用量を生体試料、組織、もしくは細胞へ適用する頻度は、1日当り1用量である。ある態様において、複数回用量を対象へ投与する頻度、または複数回用量を生体試料、組織、もしくは細胞へ適用する頻度は、1日当り2用量である。ある態様において、複数回用量を対象へ投与する頻度、または複数回用量を生体試料、組織、もしくは細胞へ適用する頻度は、1日当り3用量である。ある態様において、複数回用量が、対象へ投与されるか、または生体試料、組織、もしくは細胞へ適用されたとき、複数回用量の最初の用量と最後の用量との期間は、1日間、2日間、4日間、1週間、2週間、3週間、1カ月間、2カ月間、3カ月間、4カ月間、6カ月間、8カ月間、9カ月間、1年間、2年間、3年間、4年間、5年間、7年間、10年間、15年間、20年間、または対象、組織、もしくは細胞の生存期間である。ある態様において、複数回用量の最初の用量と最後の用量との期間は、3カ月間、6カ月間、または1年間である。ある態様において、複数回用量の最初の用量と最後の用量との期間は、対象、組織、または細胞の生存期間である。
【0150】
ある態様において、本明細書に記載の用量(例として、単回用量、または複数回用量のいずれかの用量)は、独立して、本明細書に記載の組成物の0.1μgと1μgとの間、0.001mgと0.01mgとの間、0.01mgと0.1mgとの間、0.1mgと1mgとの間、1mgと3mgとの間、3mgと10mgとの間、10mgと30mgとの間、30mgと100mgとの間、100mgと300mgとの間、300mgと1,000mgとの間、または1gと10gとの間(両端含む)を包含する。
【0151】
いずれの具体的な理論によっても拘束されることは望まないが、生体試料における検出(例として、抗RANタンパク質抗体の定量化)は、試料が得られた対象において治療剤または養生法(regime)の有効性を決定するために使用され得る。
【0152】

この例は、ペプチドをベースとした抗RANタンパク質ワクチンの同定および特徴付けを記載する。図1は、研究デザインを記載する概略図を提供する。
【0153】
プロジェクトのステージ1において、モルモットを、それら各々が1以上のRANタンパク質ジアミノ酸反復を標的にする以下の抗RANタンパク質ワクチン:抗ポリ(GA)、抗ポリ(GP)、抗ポリ(GR)、および抗ポリ(PR)の1つでワクチン接種した。対象においてT細胞応答を惹起させずにRANタンパク質に対して特異的な自己抗体の産生を容易にするため、ペプチドをベースとしたいくつかのワクチンを、1以上の異種Tヘルパー細胞(Th)エピトープを包含するように構成した。免疫原を、あるペプチドリンカー、例えば、リシンリッチリンカーを介してジアミノ酸反復ペプチドへ連結させた。モルモット中へ注射されたワクチンの概要を下の表1に提供する。
【0154】
動物に、400μgのペプチド/1.0ml/用量を4注射部位にて筋肉内注射した;続いて、動物を、100μgのペプチド/0.25ml/用量で筋肉内にブーストした。ワクチンおよびブースターの用量は、0.2%Tween 80中0.7:1の比率にてペプチドおよびCpG3(アジュバント)を包含していた。血清を、注射から0、3、6、9、12、および15週後(wpi)にて収集し、抗体力価を定量化した。
【0155】
表1.試験されたワクチンの概要。
【表1】
【0156】
次いで血清を、抗RANタンパク質抗体の存在および活性についてin vitroで試験した。哺乳動物の細胞を、変動した長さの反復領域(例として、長さが30、60、および120反復)を有するポリ(GA)、ポリ(GR)、ポリ(GP)、およびポリ(PA)のRANタンパク質をコードする発現構築物でトランスフェクトした。構築物を図2に示す。RANタンパク質を細胞から抽出し、ウェスタンブロット上でランを行い(run)、これらをワクチン接種されたモルモット血清で探った。図3A~3Dに示される代表的なデータは、ワクチン接種されたモルモットが、RANタンパク質(例として、C9Orf72反復伸長から翻訳されたものなどの、ジアミノ酸反復を含有するRANタンパク質)を認識する抗体を有する血清を産生したことを指し示した。図4は、タンパク質アッセイの結果の概要を提供する。
【0157】
次いで免疫組織化学実験を、ワクチン接種されたモルモット血清中に存在する抗RANタンパク質抗体が、C9Orf72ジペプチド反復を含有するRANタンパク質をin situで認識するかどうかについて、査定するするために実施した。手短に言えば、C9+および対照マウスから脳切片を得て、ワクチン接種されたモルモット血清で探った。代表的なデータ(図5)は、血清中の抗RANタンパク質抗体(例として、GA25(配列番号4)ワクチン接種されたモルモットにおいて産生された抗体)が、RANタンパク質をin situで認識し、C9+ マウスの脳梁膨大後部の皮質(RSC)において点状のポリ(GA)凝集体を染色することを指し示す。
【0158】
要約すれば、ステージ1からのデータは、抗RANタンパク質ワクチン(例として、抗ポリ(GA)、抗ポリ(GP)、抗ポリ(GR)、抗ポリ(PR))でワクチン接種されたモルモットが、高い抗体力価の、ジペプチド反復(DPR)を認識する抗RANタンパク質抗体を産生することを指し示す。
【0159】
ステージ2において、C9Orf72 ALSのマウスモデル(「C9-Bac」マウスと称される)を使用し、幾つかの抗RANタンパク質ワクチンでのワクチン接種を調査した。C9-Bacマウスは、例えば、by Liu et.al.(2016)Neuron,90(3):521-34によってさらに記載されている。
【0160】
図6は、この例のための研究デザインを示す。手短に言えば、C9-Bacマウスを、抗RANタンパク質ワクチン(GA10(配列番号4)、GA15(配列番号4)、GR25(配列番号7)、GP10(配列番号5)、PR10(配列番号6)、ならびに組み合わせワクチンGA15(配列番号4)+GR25(配列番号7)+PR10(配列番号6)、およびGA15(配列番号4)+GR25(配列番号7)+PR10(配列番号6)+GP10(配列番号5))で0週にてワクチン接種した。ブースター注射剤を注射から3週後および6週後にて投与した。動物を9週にて解体し、生体試料を収集した。ワクチンおよびブースターの用量を、500μg/mlの免疫原濃度にて筋肉内投与した(2注射部位でのプライム注射およびブースト注射について50μg/0.1ml/用量)。ワクチンをAdjuphos(リン酸アルミニウム)およびCpG1アジュバント(100μg/ml)とともに製剤化した。図7は、この研究におけるワクチン群の概要を提供する。
【0161】
対照実験として、マウス脳の免疫組織化学実験を、ワクチン接種されたマウスが、脳梁膨大後部の皮質において、対照動物と同様のレベルのGA凝集体を見せるかどうかを調査するために実施した。組織試料を、ワクチン接種されたマウスからの血清で探った。図8A~8Bは、代表的な免疫組織化学データを示す。図8Aは、GA15(配列番号4)ワクチンを注射されたかまたはアジュバントを注射されたC9+ マウスの脳梁膨大後部の皮質(RSC)におけるポリ(GA)RANタンパク質の凝集体を示す。図8Bは、マウス抗RANタンパク質抗体が、GA15(配列番号4)ワクチン接種されたマウスにおいて産生され、C9+ マウスのであってNTマウスのではないRSCにおいて点を形成することを示す。
【0162】
ワクチン接種されたマウスにおいて産生された抗体による、C9-Bacマウスにおけるジペプチド反復(DPR)RANタンパク質の認識もまた、調査した。代表的な免疫蛍光データ(図9A~9B)は、ワクチン接種されたマウスによって産生された抗RANタンパク質抗体が抗ウサギ抗体で脳中に検出されたGA凝集体と共局在化することを指し示す、代表的な蛍光顕微鏡法のデータを示す。図9Aは、GA15(配列番号4)ワクチンでワクチン接種されたC9+ マウスに係るデータを示す。図9Bは、組み合わせ(GA15(配列番号4)+GR25(配列番号7)+PR10(配列番号6)+GP10(配列番号5))ワクチンでワクチン接種されたC9+ マウスに係るデータを示すが、このことは抗RANタンパク質抗体がジペプチド反復RANタンパク質をin situで認識することを指し示す。
【0163】
図10は、GA凝集体が、GA15(配列番号4)ワクチンで処置されたマウスにおいて低減されたいたことを示す。GA15(配列番号4)ワクチン(n=4)またはアジュバント対照(n=3)のいずれかで処置されたC9(+)マウスからの6μm脳切片を、GA凝集体の存在について、抗GA抗体およびヘマトキシリン対比染色を使用する免疫組織化学によって染色した。GA15(配列番号4)ワクチン(n=4)またはアジュバント対照(n=3)で処置されたC9(+)マウスの脳梁膨大後部の皮質における総GA凝集体。データを、GA凝集体/総細胞(n=3動物/群)として提示する。
図1
図2
図3A
図3B
図3C-D】
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
【配列表】
2022549654000001.app
【国際調査報告】