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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-28
(54)【発明の名称】ミリメートル波見通し外分析
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/0413 20170101AFI20221118BHJP
   H04B 7/08 20060101ALI20221118BHJP
   H04B 7/06 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
H04B7/0413 400
H04B7/08 802
H04B7/06 950
H04B7/08 800
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519257
(86)(22)【出願日】2020-10-19
(85)【翻訳文提出日】2022-03-25
(86)【国際出願番号】 IB2020059826
(87)【国際公開番号】W WO2021079256
(87)【国際公開日】2021-04-29
(31)【優先権主張番号】62/925,621
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/945,755
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】シン リャンシャオ
(72)【発明者】
【氏名】バラクリシュナン サランクマール
(57)【要約】
見通し外(NLOS)遮断を推定するチャネル測定を実行して、識別された経路の発射角(AoD)及び到来角(AoA)及び利得を決定して、好ましくない伝搬条件を克服して経路損失を低減するように指向性アンテナを再構成できるようにすることによって、ミリメートル波(mm波)指向性通信における経路損失の影響を低減すること。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク内の無線通信のための装置であって、前記装置は、
(a)指向性アンテナを使用して少なくとも1つの他の無線通信回路と無線通信するように構成される無線通信回路と、
(b)無線ネットワーク上で動作するように構成される局内の前記無線通信回路に結合されるプロセッサと、
(c)前記プロセッサによって実行可能な命令を記憶する非一時的メモリと、
を備え、
(d)前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、
(i)指向性PDP測定から全方向性電力遅延プロファイル(全方向性PDP)を導出するステップと、
(ii)前記指向性PDP測定からマルチパス特性を推論して、測定されたチャネルデータから発射角(AoD)、到来角(AoA)及び光線経路情報を推論して、最適の方向に向かう光線経路をマッピングするステップと、
(iii)経路損失を低減するために、測定されたチャネル測定に応答してアンテナ構成を変更するステップと、
を含む1又は2以上のステップを実行する、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、全方向性PDPを導出するための1又は2以上のステップを更に実行し、前記1又は2以上のステップは、
(a)測定された電力遅延プロファイル(PDP)の中で、アンテナパターンの組み合わせの範囲にわたってPDPサンプルを見つけるステップと、
(b)前記PDPサンプルを見通し内(LOS)PDPサンプルと位置合わせして、LOS経路の信号伝搬時間と比較されるそのPDPサンプルのNLOS経路の追加の信号伝搬時間(LOS PDPギャップ)を識別するステップであって、サンプリング時間が決定論的であるので、PDPサンプルとLOS PDPサンプルとの間のPDPサンプルの数が、LOS経路にわたって前記信号伝搬時間と比較されるそのPDPサンプルのNLOS経路にわたって追加の伝搬時間を表す、ステップと、
(c)同じ伝搬経路上の前記PDPサンプルに基づいて、全方向性PDP値を決定するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、マルチパス特性を推論するための1又は2以上のステップを更に実行し、前記1又は2以上のステップは、光線経路の発射角(θAoD)及び到来角(θAoA)を決定するステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、光線経路の発射角(θAoD)及び到来角(θAoA)を決定するための1又は2以上のステップを更に実行し、前記1又は2以上のステップは、
(a)θAoD及びθAoAの各可能な組み合わせを決定するとともに、アンテナ利得を計算するステップと、
(b)各光線経路上の全てのアンテナパターンの組み合わせにわたって受信電力測定に基づいて、アンテナ利得を比較するステップと、
(c)θAoD及びθAoAとして、光線経路と利得との間の最小差分を有するアンテナパターンの組み合わせを選択するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、各ペアが送信機及び受信機の両方において正又は負のいずれかの特定の回転角度を示す代表的なアンテナ方向ペアのセットから、前記アンテナパターンの組み合わせを選択するステップを含む1又は2以上のステップを更に実行することを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、測定されたPDPデータを、下式の次元を含む4Dテンソルとして記憶するステップを含む1又は2以上のステップを更に実行し、
N×Nrx×Ntx×Nscans
ここで、NはPDPサンプルの数であり、Nrx及びNtxはTX及びRXアンテナパターンの数であり、Nscanは反復測定の数である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、人間遮断体状況に基づく経路損失を低減するために、測定されたチャネル測定に応答してアンテナ構成を変更するステップを含む1又は2以上のステップを実行することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記無線通信回路は、30GHz~300GHzの範囲内のミリメートル波(mm波)周波数で動作するように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記装置は、様々なmm波、Wi-Fi、及び無線ネットワーキングシナリオにおいて見通し外(NLOS)伝搬を推定し、通信遮断の場合には、見通し内(LOS)経路の実際的な代替を見つけるように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
ネットワーク内の無線通信のための装置であって、前記装置は、
(a)指向性アンテナを使用して少なくとも1つの他の無線通信回路と無線通信するように構成される無線通信回路と、
(b)無線ネットワーク上で動作するように構成される局内の前記無線通信回路に結合されるプロセッサと、
(c)前記プロセッサによって実行可能な命令を記憶する非一時的メモリと、
を備え、
(d)前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、
(i)指向性PDP測定から全方向性電力遅延プロファイル(全方向性PDP)を導出するステップであって、前記全方向性PDPを導出するステップは、
(A)測定された電力遅延プロファイル(PDP)の中で、アンテナパターンの組み合わせの範囲にわたってPDPサンプルを見つけるステップと、
(B)前記PDPサンプルを見通し内(LOS)PDPサンプルと位置合わせして、LOS経路の信号伝搬時間と比較されるそのPDPサンプルのNLOS経路の追加の信号伝搬時間(LOS PDPギャップ)を識別するステップであって、サンプリング時間が決定論的であるので、PDPサンプルとLOS PDPサンプルとの間のPDPサンプルの数が、LOS経路にわたって前記信号伝搬時間と比較されるそのPDPサンプルのNLOS経路にわたって追加の伝搬時間を表す、ステップと、
(C)同じ伝搬経路上の前記PDPサンプルに基づいて、全方向性PDP値を決定するステップと、
によって実行される、ステップと、
(ii)前記指向性PDP測定からマルチパス特性を推論して、測定されたチャネルデータから発射角(AoD)、到来角(AoA)及び光線経路情報を推論して、最適の方向に向かう光線経路をマッピングするステップと、
(iii)経路損失を低減するために、測定されたチャネル測定に応答してアンテナ構成を変更するステップと、
を含む1又は2以上のステップを実行する、
ことを特徴とする装置。
【請求項11】
前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、マルチパス特性を推論するための1又は2以上のステップを更に実行し、前記1又は2以上のステップは、光線経路の発射角(θAoD)及び到来角(θAoA)を決定するステップを含むことを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、光線経路の発射角(θAoD)及び到来角(θAoA)を決定するための1又は2以上のステップを更に実行し、前記1又は2以上のステップは、
(a)θAoD及びθAoAの各可能な組み合わせを決定するとともに、アンテナ利得を計算するステップと、
(b)各光線経路上の全てのアンテナパターンの組み合わせにわたって受信電力測定に基づいて、アンテナ利得を比較するステップと、
(c)θAoD及びθAoAとして、光線経路と利得との間の最小差分を有するアンテナパターンの組み合わせを選択するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、各ペアが送信機及び受信機の両方において正又は負のいずれかの特定の回転角度を示す代表的なアンテナ方向ペアのセットから、前記アンテナパターンの組み合わせを選択するステップを含む1又は2以上のステップを更に実行することを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、測定されたPDPデータを、下式の次元を含む4Dテンソルとして記憶するステップを含む1又は2以上のステップを更に実行し、
N×Nrx×Ntx×Nscans
ここで、NはPDPサンプルの数であり、Nrx及びNtxはTX及びRXアンテナパターンの数であり、Nscanは反復測定の数である、
ことを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項15】
前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、人間遮断体状況に基づく経路損失を低減するために、測定されたチャネル測定に応答してアンテナ構成を変更するステップを含む1又は2以上のステップを実行することを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項16】
前記無線通信回路は、30GHz~300GHzの範囲内のミリメートル波(mm波)周波数で動作するように構成されることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項17】
前記装置は、様々なmm波、Wi-Fi、及び無線ネットワーキングシナリオにおいて見通し外(NLOS)伝搬を推定し、通信遮断の場合には、見通し内(LOS)経路の実際的な代替を見つけるように構成されることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項18】
ネットワーク内の無線通信を実行して、経路損失を低減するために測定されたチャネル測定に応答してアンテナ構成を変更する方法であって、前記方法は、
(a)指向性アンテナを使用して少なくとも1つの他の無線通信局と無線通信するように構成される無線通信局の指向性PDP測定から全方向性電力遅延プロファイル(全方向性PDP)を導出するステップと、
(b)前記指向性PDP測定からマルチパス特性を推論して、測定されたチャネルデータから発射角(AoD)、到来角(AoA)及び光線経路情報を推論して、最適の方向に向かう光線経路をマッピングするステップと、
(c)経路損失を低減するために、測定されたチャネル測定に応答してアンテナ構成を変更するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
前記全方向性PDPを導出するステップは、
(a)測定された電力遅延プロファイル(PDP)の中で、アンテナパターンの組み合わせの範囲にわたってPDPサンプルを見つけるステップと、
(b)前記PDPサンプルを見通し内(LOS)PDPサンプルと位置合わせして、LOS経路の信号伝搬時間と比較されるそのPDPサンプルのNLOS経路の追加の信号伝搬時間(LOS PDPギャップ)を識別するステップであって、サンプリング時間が決定論的であるので、PDPサンプルとLOS PDPサンプルとの間のPDPサンプルの数が、LOS経路にわたって前記信号伝搬時間と比較されるそのPDPサンプルのNLOS経路にわたって追加の伝搬時間を表す、ステップと、
(c)同じ伝搬経路上の前記PDPサンプルに基づいて、全方向性PDP値を決定するステップと、
を含む1又は2以上のステップによって実行される、
ことを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記マルチパス特性を推論するステップは、光線経路の発射角(θAoD)及び到来角(θAoA)を決定するステップによって実行され、前記決定するステップは、
(a)θAoD及びθAoAの各可能な組み合わせを決定するとともに、アンテナ利得を計算するステップと、
(b)各光線経路上の全てのアンテナパターンの組み合わせにわたって受信電力測定に基づいて、アンテナ利得を比較するステップと、
(c)θAoD及びθAoAとして、光線経路と利得との間の最小差分を有するアンテナパターンの組み合わせを選択するステップと、
のうちの1又は2以上のステップを含む、
ことを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
[0001] 本出願は、2019年10月24日に出願された米国特許出願第62/925,621号の継続出願であり、この特許出願はその全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【0002】
〔連邦政府が支援する研究又は開発に関する記述〕
[0002] 適用なし
【0003】
〔著作権保護を受ける資料の通知〕
[0003] 本特許文書中の資料の一部は、米国及びその他の国の著作権法の下で著作権保護を受けることができる。著作権の権利所有者は、米国特許商標庁の一般公開ファイル又は記録内に表されるとおりに第三者が特許文献又は特許開示を複製することには異議を唱えないが、それ以外は全ての著作権を留保する。著作権所有者は、限定するわけではないが、米国特許法施行規則§1.14に従う権利を含め、本特許文献を秘密裏に保持しておくあらゆる権利を本明細書によって放棄するものではない。
【0004】
[0005] 本開示の技術は、一般に、チャネル測定を実行するミリメートル波(mm波)指向性通信回路に関し、具体的には、見通し外(NLOS)経路を推定して、不利な伝搬条件を克服するように指向性アンテナを構成できるようにする指向性mm波通信回路に関する。
【背景技術】
【0005】
[0007] WiFiのための802.11ad/ayを含むミリメートル波(mm波)通信の分野において、超高速データレートアプリケーションの需要が絶えず増加している一方で、セルラネットワークのための5Gは、その高帯域幅の利用可能性から有望な技術である。
【0006】
[0008] 更に、mm波システムは、一般に、指向性アンテナを利用して、mm波周波数での高い経路損失に起因する好ましくない伝搬シナリオを克服する。この経路損失は、静止構造物だけでなく、1又は2以上の信号経路を遮断する人間を含む動的要素も関与すると理解されたい。したがって、信頼できる通信システムを設計及び構成する時に、mm波周波数でのチャネル動特性を理解することが重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0009] したがって、チャネル動特性を推定して、指向性mmW通信をより効率的に利用するための強化された機構に対するニーズが存在する。本開示は、このニーズを満たすとともに、これまでの技術を凌駕する更なる利点をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0010] ミリメートル波(mm波)周波数での高い経路損失を克服するために、いくつかのmm波通信回路は、指向性アンテナに依拠する。一方で、測定されたチャネル測定に応答してアンテナ構成を変更することによって、経路損失を低減することもでき、このチャネル測定は、最適の方向に向かう光線経路をマッピングして、(例えばLOS経路の遮断に応答して)実現可能な伝搬経路を識別して、識別された経路の発射角(AoD)及び到来角(AoA)などのマルチパスパラメータを推論する。また、本開示は、不規則なビームパターンを有するアンテナアレイの光線経路の到着統計を決定することができる。
【0009】
[0011] 限定ではなく一例として、本開示は、mm波周波数(特定の場合では60GHz)に適用可能である。しかしながら、本開示の教示は、一般に、30~300GHzの範囲内の周波数に適用可能である。例は、屋内の居間又は構造物内の他の部屋などの密閉空間内の例を対象とする。本開示は、様々なmm波、Wi-Fi、及び無線ネットワーキングシナリオにおいて見通し外(NLOS)伝搬を推定し、遮断の場合には、LOS経路の実際的な代替を見つけるための適用である。
【0010】
[0012] 本明細書の以下の部分では、本明細書で説明する技術の更なる態様が明らかになり、この詳細な説明は、本技術の好ましい実施形態を制限することなく完全に開示するためのものである。
【0011】
[0013] 本明細書で説明する技術は、例示のみを目的とする以下の図面を参照することによって十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】密閉空間のトポロジ例の平面図であり、この場合、境界(壁)及び障害物(家具)を有する部屋内に第1の局及び第2の局を含むものとして示す。
図2】本開示の評価中に検討された7つの異なるTX-RX間のシナリオの平面図である。
図3】本開示の実施形態による例示的な無線mmW通信局ハードウェアのブロック図である。
図4】本開示の実施形態による、利用することができる図3の局ハードウェアのためのmmWビームパターン図である。
図5】本開示の実施形態による、全方向性PDPを合成するフロー図である。
図6】本開示の実施形態による、全方向性PDPを合成するための方法ステップを示す図である。
図7】本開示の実施形態による、角度AoD、AoAを推定するフロー図である。
図8】本開示の実施形態による、角度AoD、AoAを推定するための方法ステップを示す図である。
図9図2に示す7つのTX-RX間のシナリオの各々にわたってチェックされる図1の特定の反射経路の相対受信信号強度(RSSI)のプロット図である。
図10A】単一遮断体を含む全方向性電力遅延プロファイル(PDP)の2つの異なる例示的なシナリオのRSSIのプロット図であり、各シナリオは1750回のスキャンを含む。
図10B】単一遮断体を含む全方向性電力遅延プロファイル(PDP)の2つの異なる例示的なシナリオのRSSIのプロット図であり、各シナリオは1750回のスキャンを含む。
図11A】単一遮断体シナリオTX0 RX0の4つのPDPサンプル及び2つの例示的なケースのRSSI対アンテナパターンの組み合わせのプロット図である。
図11B】単一遮断体シナリオTX0 RX0の4つのPDPサンプル及び2つの例示的なケースのRSSI対アンテナパターンの組み合わせのプロット図である。
図11C】単一遮断体シナリオTX0 RX0の4つのPDPサンプル及び2つの例示的なケースのRSSI対アンテナパターンの組み合わせのプロット図である。
図11D】単一遮断体シナリオTX0 RX0の4つのPDPサンプル及び2つの例示的なケースのRSSI対アンテナパターンの組み合わせのプロット図である。
図11E】単一遮断体シナリオTX0 RX0の4つのPDPサンプル及び2つの例示的なケースのRSSI対アンテナパターンの組み合わせのプロット図である。
図11F】単一遮断体シナリオTX0 RX0の4つのPDPサンプル及び2つの例示的なケースのRSSI対アンテナパターンの組み合わせのプロット図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.概論及びシナリオ
[0026] 本開示は、発射角(AoD)、到来角(AoA)、見通し内経路、及び見通し外経路などのチャネルパラメータを理解及び推定するための方法を考案する際に、チャネル測定を実行するために、その例として屋内の部屋(例えば居間)を利用する。
【0014】
[0027] 指向性PDP測定から全方向性電力遅延プロファイル(全方向性PDP)を導出して、測定されたチャネルデータからAoD、AoA及び光線経路情報を推論するための方法を説明する。また、信号測定とレイトレーシングシミュレーションとの比較に基づいて、この方法を検証した。
【0015】
[0028] 図1に、フェーズドアレイアンテナを有するmm波通信局を使用して、チャネルサウンディング測定を実行した例示的な場所10を示す。限定ではなく一例として、特定のハードウェアは60GHzフェーズドアレイを利用するが、本開示は、一般に、30~300GHzのmmW範囲に適用可能である。例示的な間取図に、4m離された送信機(TX)12及び受信機(RX)14を含む、3.7m×6.2mの部屋16を示す。説明の簡略化のために、本明細書の説明は、TX及びRXを別個に示すが、ネットワーク内の実際の各局は、通常、他の近隣局と通信する際に通信プロトコルによって指示されるTX及びRXを選択的に実行するトランシーバ(TX/RX)を含むように構成される。測定場所内に、着席のための家具18及びテレビジョン19から主に構成される障害物が存在する。
【0016】
[0029] この例のTX及びRXは、互いに対して見通し内(LOS)の向きに配置されるが、人間による遮断などの遮断を受ける可能性がある。LOS経路は常に利用可能であるとは限らず、本開示は、初期LOS経路が利用可能であるか否かに関わらず、利益を提供することができると理解されるであろう。限定ではなく一例として、図示の例では、TX及びRXは、床から1mの高さにあり、互いから4m離れている。例示的な局は、送信機において12個のアンテナパターン及び受信機において12個のアンテナパターンを有する60GHzフェーズドアレイを利用すると考えられる。しかしながら、本開示は、任意の所望の数の(例えば、例示されたアンテナパターンよりも少ない又はそれよりも多い)アンテナパターンを有する局に適用可能であると理解されたい。
【0017】
[0030] これらの例示的なアンテナパターンの全ての組み合わせに対してチャネル測定を実行し、その結果、限定ではなく一例として144セットのチャネル測定が得られ、測定プロセスは、各ケースに対して多数回(例えば1750回)繰り返される。各アンテナパターンの組み合わせに対して、複数の(例えば192個の)時間領域PDPサンプルが取得される。PDPサンプルは、経路の各々の大きさ及び遅延を含む。セットの数、ケース毎の回数及び時間領域PDPサンプルの数の値を選択して、代表的なテストを提供したが、本開示の教示を利用する時に、これらのパラメータに対して選択することができる値を決して限定しないと理解されたい。
【0018】
[0031] 測定されたPDPデータを、下式の次元を含む4Dテンソルとして記憶する。
N×Nrx×Ntx×Nscans
ここで、NはPDPサンプルの数であり、Nrx及びNtxはTX及びRXアンテナパターンの数であり、Nscanは反復測定の数である。限定ではなく一例として、7つの異なるシナリオに対して測定を実行した。各シナリオでは、アンテナアレイが異なる方向に向けられている。
【0019】
[0032] 図2に、本テストにおいて検討された異なるアンテナポインティング関係の実施形態例30を示す。これらのアンテナ関係を選択して、テストのためのアンテナ方向の代表的なサンプルを取得したが、本開示は、任意の所望のレベルのアンテナ方向分解能を有する通信システムに適用可能である。アンテナジンバルがその回転軸に対して反時計回りに回転した時に、回転は正であり、そうでない場合には負である。これらの図示の例では、TX及びRX方向ペアは、(0)0°,0°、(1)0°,-61°、(2)0°,65°、(3)71°,0°、(4)71°,-61°、(5)-59°,0°、及び(6)-58°,64°である。7つのシナリオの各々について、2セットの同様の実験(本明細書ではケースと呼ぶ)を検討した。したがって、これらのテストにおいて、全部で7つのシナリオ及び各シナリオの2つのケースを検討した。
【0020】
[0033] アンテナ方向制御は、広範囲の最新のmmW通信局で利用されるアンテナ方向制御のタイプを表すと理解されたい。
【0021】
2.局(STA)ハードウェア構成
[0035] 図3に、mm波局(STA)のためのハードウェア構成の実施形態例50を示し、ハードウェアブロック53内に接続するI/O経路52を示し、コンピュータプロセッサ(CPU)56及びメモリ(RAM)58が、STAにセンサ、アクチュエータなどへの外部I/OをもたらすI/O経路52に結合されたバス54に結合される。プロセッサ56上では、通信プロトコルと、プロトコルの決定及びハードウェア構成を通知することができるNLOS測定とを実装するプログラムを実行するための、メモリ58からの命令が実行される。また、プログラミングは、現在の通信文脈においてどのような役割をしているかによって異なるモード(例えば、送信、受信、送信元、中間、送信先、AP、非APなど)で動作するように構成されると理解されたい。
【0022】
[0036] この図示のホストマシンは、アンテナアレイを含むように構成される。mm波モデム60が、近隣STAとの通信中にフレームを送受信して、NLOS分析のための情報を収集するための複数のアンテナ64a~64n、66a~66n及び68a~68nに接続される無線周波数(RF)回路62a、62b、62cに結合される。局ハードウェアは、例えば異なる周波数の複数のモデムを含むように構成することができ、1又は2以上のアンテナアレイのアンテナの任意の所望の構造を、本開示の教示から逸脱することなく利用することができることに留意されたい。したがって、この例では、mmW帯のためのRF回路を3つ示しているが、本開示の実施形態は、あらゆる任意の数のRF回路に結合されたモデム60を含むように構成することができる。一般に、使用するRF回路の数が多ければ多いほど、アンテナビーム方向のカバレッジが広くなる。なお、利用するRF回路の数及びアンテナの数は、一般に、特定の装置のハードウェア制約によって決まると理解されたい。RF回路及びアンテナの中には、STAが近隣STAと通信する必要がないと判断した時に無効にできるものもある。少なくとも1つの実施形態では、RF回路が、周波数変換器及びアレイアンテナコントローラなどを含み、送受信のためにビームフォーミングを実行するように制御される複数のアンテナに接続される。このように、STAは、複数のビームパターンの組を使用して信号を送信することができ、各ビームパターン方向がアンテナセクタとみなされる。
【0023】
[0037] 図4に、STAが複数の(例えば、36個の)mmWアンテナセクタパターンを生成するために利用できるmmWアンテナ方向の実施形態例70を示す。この例では、STAが、3つのRF回路72a、72b、72cと、接続されたアンテナとを実装し、各RF回路及び接続されたアンテナは、ビームフォーミングパターン74a、74b、74cを生成する。図示のアンテナパターン74aは、12個のビームフォーミングパターン76a、76b、76c、76d、76e、76f、76g、76h、76i、76j、76k及び76n(「n」は、あらゆる数の方向をサポートできることを表す)を有する。この特定の構成を使用する例示的な局は、36個のアンテナセクタを有するが、本開示は、任意の所望の数のアンテナセクタ方向をサポートすることができる。説明を明確且つ容易にするために、以下の節では、一般に更に少ない数のアンテナセクタを有するSTAを例示するが、これを実装の限定として解釈すべきではない。なお、アンテナセクタには、あらゆる任意のビームパターンをマッピングすることができると理解されたい。通常、ビームパターンは、鋭角ビームを生成するように形成されるが、複数の角度から信号を送受信するようにビームパターンを生成することも可能である。
【0024】
[0038] アンテナセクタの選択は、mmW RF回路の選択と、mmWアレイアンテナコントローラによって指示されるビームフォーミングとによって決まる。STAハードウェアコンポーネントは、上述したものとは異なる機能分割を有することもできるが、このような構成は、説明する構成の変形例とみなすことができる。
【0025】
[0039] 少なくとも1つの実施形態では、RF回路が、周波数変換器及びアレイアンテナコントローラなどを含み、送受信のためにビームフォーミングを実行するように制御される複数のアンテナに接続される。このように、STAは、複数のビームパターンの組を使用して信号を送信することができ、各ビームパターン方向がアンテナセクタとみなされる。
【0026】
3.全方向性PDP及び光線経路推論
[0041] mm波周波数では、通常、高い減衰を克服するために指向性アンテナパターンを使用して、チャネル測定を実行する。通常、mm波装置は、複数のビームパターンbiを使用する。ここで、iは、各々が特定の方向に向いているビームパターンの指標である。送信機及び受信機におけるビームパターンbiの組み合わせの各々に対して、電力遅延プロファイル(PDP)と呼ばれる時間領域チャネル応答が取得される。チャネル応答は、次式によって与えられる。
ここで、i,jは、それぞれ、TX及びRXにおけるビームパターンを表し、Lは、マルチパス成分の数であり、α(i,j)は、経路の減衰であり、
は、AoDにおけるアンテナパターン利得であり、
は、AoAにおけるアンテナパターン利得である。値τiは、経路lの遅延である。H(i,j)は、TX及びRXにおける指向性ビームパターンに依存する。これらの指向性チャネル測定は、送信機と受信機との間で利用可能である実現可能な経路についての非常に限定された情報を提供する。
【0027】
[0042] 特定の方向に向いているビームパターンは、その方向の利用可能な光線経路を増幅し、サイドローブの方向の他の光線経路を抑制する。したがって、送信機と受信機との間の全ての実現可能な光線経路を推論するためには、指向性PDPを組み合わせて全方向性PDPを得る必要がある。TXからRXへの実現可能な経路は、複数のビームパターンの組み合わせi,jによってカバーすることができる。これらの中で、ビームパターンの組み合わせのうちの1つは、その経路の最大受信電力を提供する。したがって、経路lは、次式によって選択することができる。
【0028】
[0043] TXとRXとの間のタイミング同期エラーに起因して、複数のスキャンにわたるPDPサンプルを位置合わせすることができない場合があることに留意されたい。例えば、LOSサンプルは、複数のスキャンにわたって数サンプルをシフトする可能性がある。この問題を解決するために、本開示は以下の方法を利用する。y(a,b,c)を、PDPサンプルa、アンテナパターンの組み合わせb、及びスキャンcの受信信号レベルとする。次に、次式によって、LOS PDPサンプルが得られる。
ここで、CVは、次式として定められる分散の係数である。
角度αに基づいて、複数のスキャンにわたるPDPサンプルを位置合わせする。受信機のダイナミックレンジを考慮することによって、合成された全方向性PDPを更に精緻化する。最大ピークよりも低い30dBである経路を破棄する。
【0029】
[0044] 図5に、全方向性PDPを生成するためのフロー図90を示す。実行を開始(92)して、測定されたPDPデータの中で、図2に例示したようなアンテナパターンの組み合わせの範囲にわたってLOS PDPサンプルを見つける(94)。次に、LOS上の送信機及び受信機からの信号伝搬時間が一定であるので、PDPサンプルをLOS PDPサンプルと位置合わせする(96)。サンプリング時間が決定論的であるので、PDPサンプルとLOS PDPサンプルとの間のPDPサンプルの数(LOS PDPギャップで表す)が、LOS経路にわたって信号伝搬時間と比較されるそのPDPサンプルのNLOS経路にわたって追加の伝搬時間を表す。したがって、2つのPDPサンプルが同じLOS PDPギャップを有する場合、これらのPDPサンプルは、無線で同じ経路を通じて伝搬される。次に、同じ伝搬経路上のPDPサンプルに基づいて、全方向性PDPを計算する(98)。
【0030】
[0045] 図6に、全方向性PDPを実装する1つの解決法として構成される例示的なアルゴリズム130を示す。図の第1行に示すように、入力は測定されたPDPデータであり、第2行に、全方向性PDPの出力を示す。第4行~第5行に、測定されたPDPデータにおいてLOS PDPサンプルを見つけるステップを示す。第6行は、PDPサンプルをLOS PDPサンプルと位置合わせするステップを実行する。第7行及びそれ以降は、PDPサンプル毎に全方向性PDPを計算する。
【0031】
3.1.光線経路推論
[0047] この節では、測定PDPサンプルから光線経路のAoA及びAoDを決定するための手順を説明する。PDP測定は、4タプル、すなわち、N×Nrx×Ntx×Nscansであることを想起されたい。目的は、個々の経路のθAoD,θAoAを推論することである。TXにおけるアンテナパターンi及びRXにおけるアンテナパターンjの光線経路Pl=(i,j)の受信電力は、経路損失(PL)を受ける、TXにおけるθAoDに起因するアンテナ利得及びRXにおけるθAoAに起因するアンテナ利得の関数である。
ここで、PTxは送信電力であり、gTx,i(θAoD)は、θAoDにおけるi番目のTXビームパターンの利得であり、gRx,j(θAoA)は、θAoAにおけるj番目のRXビームパターンの利得である。経路Pl(j,k)の場合、光線経路長及び材料反射に起因する損失は一定であり、唯一の変数は、TX及びRXアンテナパターンにそれぞれ起因するアンテナ利得gTx,i(θAoD)及びgRx,j(θAoA)であると理解されたい。
【0032】
[0048] 本例では、TX及びRXは、各々、12個のアンテナパターンを使用するので、その結果、各経路lに対して144個の受信電力測定が得られる。したがって、Plを、全てのアンテナパターンの組み合わせに対する経路lの受信電力のベクトルとして、利得を決定する。

したがって、Gは、θAoD及びθAoAにおけるTX及びRXアンテナパターンの144個の組み合わせに起因する総利得のベクトルである。受信電力ベクトルPlは、経路損失に起因する寄与を含むことに留意されたい。経路の伝搬に起因するあらゆる寄与を除去するために、Plのzスコア正規化を行う。Pは、全ての経路に対してPlを保持する行列を表すとする。目的は、経路lのGとPlとの間の距離を最小にすることである。
【0033】
[0049] 図7に、測定PDPサンプルから光線経路のAoA及びAoDを決定するための実施形態例150を示す。プロセスを開始(152)して、θAoD及びθAoAの各可能な組み合わせを決定するとともに、アンテナ利得Gを計算する。次に、各光線経路l、すなわちPl上の全てのアンテナパターンの組み合わせにわたって受信電力測定に基づいて、利得を比較する(154)。PlとθAoD及びθAoAの全ての可能な組み合わせの利得Gとを比較した後に、その光線経路上のθAoD及びθAoAとして、PlとGとの間の最小差分を有するθAoD及びθAoAの組み合わせを選択(156)して、その後に、処理を終了する(158)。
【0034】
[0050] 図8に、複数の経路上のPDPサンプルの測定から光線経路のAoA及びAoDを決定するための方法ステップ190の実施形態例を示す。図に示すように、第4行~第7行は、光線経路(例えばPl)上の全てのアンテナパターンの組み合わせの受信電力測定と、θAoD及びθAoAの全ての可能な組み合わせのアンテナ利得(例えばG)とを比較する。第9行に、光線経路上のPlとGとの間の差分を最小にするθAoD及びθAoAの値を選択するステップを示す。
【0035】
4.推論及び検証
[0052] この節では、前節に示した方法を使用して、測定データを分析する。まず、7つのシナリオの各々の全方向性PDPを取得する。次に、Scenargie(登録商標)レイトレーシングシミュレータを使用するレイトレーシングシミュレーションを含むチャネルサウンディングデータから取得される光線経路情報を使用して、取得された光線経路情報を検証する。なお、Scenargieは、シナリオの範囲にわたって様々なシステムを分析及び評価できるようにする周知のネットワークシミュレーションパッケージである。例えば2節に示したパラメータを使用して、シミュレーションにおいて、測定場所を複製する。シミュレータは、TX及びRXの位置、環境ジオメトリ及び材料特性(すなわち、材料の比誘電率、導電率及び厚さ)を入力として、TXとRXとの間の全ての実現性のある光線経路をもたらすことができる。限定ではなく一例として、部屋の壁の材料パラメータを以下のように例示した。材料タイプはドライ壁であり、誘電体層は層状誘電体であり、誘電率は2.1であり、導電率は0.21(S/m)であり、壁厚は1mである。
【0036】
[0053] 光線経路情報を取得した後に、シミュレーションを実行して、アンテナパターンbiの各組み合わせに対して受信機におけるRSSIを計算する。測定されたPDPを、レイトレーシングシミュレーションと比較する。レイトレーシングシミュレータは、全方向性アンテナパターンのPDPを生成する。アンテナ指向性利得を、全方向性レイトレーシングPDPに適用する。収集されたデータから、推定された全方向性PDPは、全てのシナリオについてシミュレートされたPDPと非常によく一致することが分かった。全てのシナリオに対して、2つの顕著な光線経路が識別され、そのうちの1つはLOSである。表1に、LOS光線経路に対するNLOS光線経路の経路遅延差を示す。2つのNLOS経路は別個であることが分かる。2つの経路のうちの一方は、LOS経路に対して2.4nsの遅延を有し、他方の経路は、LOS経路に対して7.2nsの遅延を有する。測定場所内のTX及びRXの配置の非対称に起因して、NLOS経路のうちの一方は、他方の経路よりも短いことが図1で分かる。次のステップにおいて、図7及び図8に示す方法を使用して、PDPから、個々の経路ごとにAoD及びAoAを識別する。
【0037】
[0054] この方法は、経路及び測定されたアンテナパターンの受信電力を計算することに依拠することに留意されたい。チャネル測定のために使用される測定システムは、除去しなければならないノイズを発生させる。PDPの最初の数サンプルはノイズの寄与を表すという仮定に基づいて、ノイズ電力を推定する。我々のテストの全てにおいて、35番目のPDPサンプルの後に、LOS経路(又は最初の経路)が到着することが分かった。ノイズ電力は次式のように計算される。
ここで、Nは、考慮した総ノイズサンプルであり、10である。全てのPDPサンプルから、このノイズ電力を減算する。TXアンテナパターンj及びRXアンテナパターンkの経路iの受信電力は、次式のように計算される。
ここで、Nは、この例では1750である。経路iの全ての144個のアンテナパターンの組み合わせの受信電力のベクトルを計算するとともに、図7及び図8に示す方法への入力として、アンテナパターンを与える。PDPにおいて全ての経路に対して、このプロセスを繰り返す。
【0038】
[0055] テストを実行して、7つのシナリオにおいて全ての識別された経路のRSSI対アンテナ組み合わせを取得する。測定からのRSSIベクトルと、推定されたθAoD及びθAoAにおいてGTX(θAoD)GRX(θAoA)から得られるRSSIベクトルとの間に、非常に良い一致があった。測定データにおける経路の(θAoD,θAoA)推定から、図1に示す居間シナリオの場合、側壁からの反射が、TXからRXへのNLOS経路の受信電力の大部分に寄与することを推論することができる。TX及びRXが他方の壁よりも一方の壁の近くに配置されているために、TX及びRXに近い壁からの反射は、遠い方の壁からの反射よりもずっと強い。表1に、検討したシナリオ及びケースの各々のLOS経路及びNLOS経路の受信電力も示す。最も近い壁からの反射の(-37°,37°)のθAoD及びθAoAでは、LOSに対する受信電力の対応する差分は、9:5dBである。(-54°,-51°)のθAoD及びθAoAを含む経路の受信電力差分は、10:2dBである。TX及びRXに近い壁から反射する経路は、伝搬及び反射に起因して、9dBの平均電力損失を受け、他の経路は13dBの平均電力損失を受ける。検討中の環境ジオメトリの場合、反射経路は、LOS経路の遮断の場合には、LOSの実現性のある代替である。最短の反射経路の平均RSSIは52:4dBmであり、最も遠い壁から反射する経路は57:6dBmであり、これはTXとRXとの間のリンクを確立するのに十分である。
【0039】
[0056] 表1に、例示的なケースのLOS及びNLOS光線経路の推定された(θAoD,θAoA)と、LOSに対するNLOS光線経路の時間遅延とを示す。
【0040】
5.人間遮断分析
[0058] 屋内シナリオにおいて受信電力に対するNLOS経路の有意性を識別及び分析したが、この節では、図1に示す間取図において、図2に示す異なるシナリオの受信信号電力への人間遮断体の影響について説明する。図1の例では、人間遮断体が、TXの真正面の壁からTXの左側の壁に向かって垂直に移動しているとみなす。人間は、TX及びRXから等距離に歩いている。
【0041】
[0059] 限定ではなく一例として、Scenargieを使用するレイトレーシングシミュレーションを通じて、人間遮断体の影響を検討する。Scenargieシミュレータが利用するパラメータは、本明細書で前述したものである。人間遮断体のパラメータは、以下の通り設定する。人間の幅及び長さは、両方とも0.5mとして例示し、人間の高さは1.8mである。表面パラメータ及び表面損失は、それぞれ、0.1m及び6dBとして例示する。内部損失は22dBとして例示し、これは、実験データセットにおける遮断領域にわたって平均受信電力として計算される。
【0042】
[0060] シミュレーションでは、実証の簡略化のために、人間遮断体は、TXとRXとの間のLOSに静止姿勢で位置して、LOS経路を遮断する。したがって、本開示をテストするのに利用されるデータセットにおいて、人間がTX及びRXのLOS内に存在する領域のみを検討する。人間遮断体によるLOS遮断中に、NLOS経路は、RXにおける受信信号電力に寄与する。人間によってLOSが遮断された時に結果として得られるRXにおける受信電力は、測定とシミュレーションとの間の非常に良い一致があることがテストによって分かった。これは、取得された光線経路情報及び材料パラメータを含む遮断モデルが人間遮断体の影響をモデル化するのに十分に正確であることを実証する。更に、LOS経路における人間遮断体の場合には、ビームを切り替えることによって、NLOS経路を通じて通信を維持することができることがテストによって分かった。
【0043】
6.NLOS分析
[0062] 以下に、Scenargie(登録商標)の結果と一致するように、マルチパス遮断体シナリオのNLOS分析を実行することについて説明する。
【0044】
[0063] 以下に、このNLOS分析を実行する高レベルのステップを示す。(a)測定からNLOS光線を分離して、発射角(AoD)、到来角(AoA)及び経路長を求める。(b)NLOS光線に基づいて材料パラメータを較正する。(c)NLOSの測定と、Scenargieにおいて較正されたNLOSとを比較する。(d)アンテナ構成を調整して、最適の方向に向かう光線経路をマッピングして、識別された経路の到来角及び発射角などのマルチパスパラメータを推論することに基づいて実現可能な伝搬経路を識別する。
【0045】
[0064] 上記のステップを実行する前に、NLOS経路が安定していて信頼できるかどうかを判断することが好ましい。したがって、指向性PDP測定から全方向性PDPを合成して、シナリオ及び環境をより良く理解して、ゴースト経路を除去する。導出される信号又は経路に関連する「ゴースト」という語は、受信信号が反射信号を含む時にアナログテレビジョン受信機上に生じるアーチファクトのようなゴーストが見られることに由来する語である。
【0046】
6.1.NLOS経路の安定性
[0066] 図9に、見通し外(NLOS)経路の例210、特にNLOS経路#46(送信機12の右側の壁(図の下部の壁)から反射する経路)を示し、TX-RX間のケース0~6のそれぞれのアンテナの向きに対するNLOSの重なり合ったプロットを示す。
【0047】
[0067] 測定において、異なるケース(ケース0~ケース6)の各々のプロットは、互いに実質的に重なり合い、プロットは、一般に、実際に太線のように見えるほど近いことが分かる。オリジナルの図はカラーであり、プロットの特定の端縁に非常にわずかなカラー帯が見えると理解されたい。このテスト及び追加のテストによって、NLOS成分が安定していることが分かった。異なるアンテナの向きに関して追加のテストを実行して、NLOS経路が、他の全てのアンテナの向きについても安定していることが分かった。
【0048】
[0068] NLOS成分が安定していると判断した後に、次のステップにおいて、検討中の環境の主要NLOSを識別する。
【0049】
[0069] PDPは指向性PDPを含み、これは、各アンテナパターンの組み合わせ(本例では、送信機及び受信機の各々において12個のアンテナパターンがあるので、合計144個の組み合わせを含む)に対してPDPを取得することを意味する。指向性PDPは、TX及びRXビームパターンが向いている方向の光線経路情報を提供する。サイドローブに起因して他の方向をトレースする光線経路は抑制される。したがって、全ての指向性PDPを組み合わせて、環境及びシナリオを最も良く表す全方向性PDPを得る必要がある。
【0050】
[0070] 図10A及び図10Bに、2つの例示的なシナリオの例示的な全方向性PDPの結果270、290を示し、1つのシナリオは、送信機/受信機の向きがそれぞれ-30°、+30°であり、1つのシナリオは、送信機/受信機の向きがそれぞれ+30°、-30°である。各シナリオについて、全ての1750回のスキャンを、陰影を付けた丸(これらはオリジナルの図では色の付いた丸である)で表す。PDP包絡線は、複数のPDPサンプルによって単一の実現性のある光線経路を表すことができることを示すフィルタ応答の形状を有することが図から分かる。このことは、畳み込みフィルタを使用してPDPを推定することに起因する。
【0051】
[0071] 図11A図11Fに、フィルタを使用してPDPを推定して、単一のPDPサンプルによってLOS及びNLOSが正しく表されるかどうかを判断する単一遮断体(SB)シナリオの実施形態例からの結果310、320、330、340、350及び360を示す。図11Aに、ケース0、PDPサンプル#42、推定された(θAoD,θAoA):(2,0)、減衰54を示す。図11Bに、ケース0、PDPサンプル#43、推定された(θAoD,θAoA):(0,0)、減衰36.5を示す。図11Cに、ケース0、PDPサンプル#44、推定された(θAoD,θAoA):(0,0)、減衰47を示す。図11Dに、ケース6、PDPサンプル#42、推定された(θAoD,θAoA):(2,0)、減衰55を示す。図11Eに、ケース6、PDPサンプル#43、推定された(θAoD,θAoA):(0,0)、減衰38を示す。図11Fに、ケース6、PDPサンプル#44、推定された(θAoD,θAoA):(0,0)、減衰47を示す。
【0052】
[0072] これらの図に、TXとRXとの間の単一遮断体シナリオの2つの例示的なケースのPDPサンプル#42、#43、及び#44のアンテナパターンの組み合わせに対するRSSIを示す。Y軸はRSSIであり、X軸はポインティング角度の組み合わせ(PAC)であり、各図の第1の曲線は測定を示し、第2の曲線はシミュレーションを示す。なお、PDPサンプル#42、#43、及び#44は全て、同じ向き及びRSSI対PACパターンを有する。PDPサンプル#43は、i番目に高い信号電力を提供するLOSであり、一方、サンプル#42及び#44は、フィルタリング効果に起因するサンプル#43の残りである。全方向性PDPにおいて単一のサンプルを使用して、LOS及びNLOSを正確に表すことができることが図から分かる。
【0053】
7.結論
[0074] 不規則なビームパターンを有するフェーズドアレイで取得される指向性PDPは、マルチパス成分の特性についての限定された情報を提供した。本開示は、mmWフェーズドアレイ上で実行される指向性PDP測定からマルチパス特性を推論するための方法論を示した。開示する発射角(AoD)及び到来角(AoA)の推論を、広範囲な測定データセットに適用して、検討中の通常の小さい部屋のシナリオの場合、側壁の反射は、見通し内(LOS)経路に加えて、著しく有用な見通し外(NLOS)経路を提供することが分かった。天井及び床の反射は、検討中の環境ジオメトリにとって重要でないことが分かった。壁の反射に起因する損失は、近似的に約9~10dBである。また、レイトレーシングシミュレーションを使用して、これらのテストの知見を検証して、本開示の妥当性を証明した。
【0054】
8.実施形態の一般的範囲
[0076] 提示した技術で説明した方法は、様々な無線通信局内に容易に実装することができる。また、無線通信局は、1又は2以上のコンピュータプロセッサ装置(例えば、CPU、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、コンピュータ対応ASICなど)、及び命令を記憶する関連するメモリ(例えば、RAM、DRAM、NVRAM、FLASH、コンピュータ可読媒体など)を含むように実装されることにより、メモリに記憶されたプログラム(命令)がプロセッサ上で実行されて、本明細書で説明した様々なプロセス法のステップを実行することが好ましいと理解されたい。
【0055】
[0077] 当業者は、無線通信局の制御に関連するステップを実行するコンピュータ装置の使用を認識しているため、各図には簡略化のためにコンピュータ装置及びメモリデバイスを示していない。提示した技術は、メモリ及びコンピュータ可読媒体が非一時的であり、したがって一時的電子信号を構成しない限り、これらに関して限定するものではない。
【0056】
[0078] 本明細書では、コンピュータプログラム製品としても実装できる、本技術の実施形態による方法及びシステム、及び/又は手順、アルゴリズム、ステップ、演算、数式又はその他の計算表現のフロー図を参照して本技術の実施形態を説明することができる。この点、フローチャートの各ブロック又はステップ、及びフローチャートのブロック(及び/又はステップ)の組み合わせ、並びにあらゆる手順、アルゴリズム、ステップ、演算、数式、又は計算表現は、ハードウェア、ファームウェア、及び/又はコンピュータ可読プログラムコードの形で具体化された1又は2以上のコンピュータプログラム命令を含むソフトウェアなどの様々な手段によって実装することができる。理解されるように、このようなあらゆるコンピュータプログラム命令は、以下に限定されるわけではないが、汎用コンピュータ又は専用コンピュータ、又は機械を生産するための他のプログラマブル処理装置を含む1又は2以上のコンピュータプロセッサによって実行して、(単複の)コンピュータプロセッサ又は他のプログラマブル処理装置上で実行されるコンピュータプログラム命令が、(単複の)特定される機能を実施するための手段を生み出すようにすることができる。
【0057】
[0079] したがって、本明細書で説明したフローチャートのブロック、並びに手順、アルゴリズム、ステップ、演算、数式、又は計算表現は、(単複の)特定の機能を実行する手段の組み合わせ、(単複の)特定の機能を実行するステップの組み合わせ、及びコンピュータ可読プログラムコード論理手段の形で具体化されるような、(単複の)特定の機能を実行するコンピュータプログラム命令をサポートする。また、本明細書で説明したフロー図の各ブロック、並びに手順、アルゴリズム、ステップ、演算、数式、又は計算表現、及びこれらの組み合わせは、(単複の)特定の機能又はステップを実行する専用ハードウェアベースのコンピュータシステム、又は専用ハードウェアとコンピュータ可読プログラムコードとの組み合わせによって実装することもできると理解されるであろう。
【0058】
[0080] 更に、コンピュータ可読プログラムコードなどの形で具体化されるこれらのコンピュータプログラム命令を、コンピュータプロセッサ又は他のプログラマブル処理装置に特定の態様で機能するように指示することができる1又は2以上のコンピュータ可読メモリ又はメモリデバイスに記憶して、これらのコンピュータ可読メモリ又はメモリデバイスに記憶された命令が、(単複の)フローチャートの(単複の)ブロック内に指定される機能を実施する命令手段を含む製造の物品を生産するようにすることもできる。コンピュータプログラム命令をコンピュータプロセッサ又は他のプログラマブル処理装置によって実行し、コンピュータプロセッサ又は他のプログラマブル処理装置上で一連の動作ステップが実行されるようにしてコンピュータで実施される処理を生成し、コンピュータプロセッサ又は他のプログラマブル処理装置上で実行される命令が、(単複の)フローチャートの(単複の)ブロック、(単複の)手順、(単複の)アルゴリズム、(単複の)ステップ、(単複の)演算、(単複の)数式、又は(単複の)計算表現に特定される機能を実施するためのステップを提供するようにすることもできる。
【0059】
[0081] 更に、本明細書で使用する「プログラム」又は「プログラム実行文」という用語は、本明細書で説明した1又は2以上の機能を実行するために1又は2以上のコンピュータプロセッサが実行できる1又は2以上の命令を意味すると理解されるであろう。命令は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで具体化することができる。命令は、装置の非一時的媒体に局所的に記憶することも、又はサーバなどに遠隔的に記憶することもでき、或いは命令の全部又は一部を局所的に又は遠隔的に記憶することもできる。遠隔的に記憶された命令は、ユーザが開始することによって、或いは1又は2以上の要因に基づいて自動的に装置にダウンロード(プッシュ)することができる。
【0060】
[0082] 更に、本明細書で使用するプロセッサ、ハードウェアプロセッサ、コンピュータプロセッサ、中央処理装置(CPU)及びコンピュータという用語は、命令、並びに入力/出力インターフェイス及び/又は周辺装置との通信を実行できる装置を示すために同義的に使用されるものであり、プロセッサ、ハードウェアプロセッサ、コンピュータプロセッサ、CPU及びコンピュータという用語は、単一の又は複数の装置、シングルコア装置及びマルチコア装置、及びこれらの変種を含むように意図するものであると理解されるであろう。
【0061】
[0083] 本明細書の説明から、本開示は、限定ではないが以下の内容を含む複数の実施形態を含むことができると理解されるであろう。
【0062】
[0084] 1.ネットワーク内の無線通信のための装置であって、前記装置は、(a)指向性アンテナを使用して少なくとも1つの他の無線通信回路と無線通信するように構成される無線通信回路と、(b)無線ネットワーク上で動作するように構成される局内の前記無線通信回路に結合されるプロセッサと、(c)前記プロセッサによって実行可能な命令を記憶する非一時的メモリと、を備え、(d)前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、(d)(i)指向性PDP測定から全方向性電力遅延プロファイル(全方向性PDP)を導出するステップと、(d)(ii)前記指向性PDP測定からマルチパス特性を推論して、測定されたチャネルデータから発射角(AoD)、到来角(AoA)及び光線経路情報を推論して、最適の方向に向かう光線経路をマッピングするステップと、(d)(iii)経路損失を低減するために、測定されたチャネル測定に応答してアンテナ構成を変更するステップと、を含む1又は2以上のステップを実行する、装置。
【0063】
[0085] 2.ネットワーク内の無線通信のための装置であって、前記装置は、(a)指向性アンテナを使用して少なくとも1つの他の無線通信回路と無線通信するように構成される無線通信回路と、(b)無線ネットワーク上で動作するように構成される局内の前記無線通信回路に結合されるプロセッサと、(c)前記プロセッサによって実行可能な命令を記憶する非一時的メモリと、を備え、(d)前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、(d)(i)指向性PDP測定から全方向性電力遅延プロファイル(全方向性PDP)を導出するステップであって、前記全方向性PDPを導出するステップは、(d)(i)(A)測定された電力遅延プロファイル(PDP)の中で、アンテナパターンの組み合わせの範囲にわたってPDPサンプルを見つけるステップと、(d)(i)(B)前記PDPサンプルを見通し内(LOS)PDPサンプルと位置合わせして、LOS経路の信号伝搬時間と比較されるそのPDPサンプルのNLOS経路の追加の信号伝搬時間(LOS PDPギャップ)を識別するステップであって、サンプリング時間が決定論的であるので、PDPサンプルとLOS PDPサンプルとの間のPDPサンプルの数が、LOS経路にわたって前記信号伝搬時間と比較されるそのPDPサンプルのNLOS経路にわたって追加の伝搬時間を表す、ステップと、(d)(i)(C)同じ伝搬経路上の前記PDPサンプルに基づいて、全方向性PDP値を決定するステップと、によって実行される、ステップと、(d)(ii)前記指向性PDP測定からマルチパス特性を推論して、測定されたチャネルデータから発射角(AoD)、到来角(AoA)及び光線経路情報を推論して、最適の方向に向かう光線経路をマッピングするステップと、(d)(iii)経路損失を低減するために、測定されたチャネル測定に応答してアンテナ構成を変更するステップと、を含む1又は2以上のステップを実行する、装置。
【0064】
[0086] 3.ネットワーク内の無線通信を実行して、経路損失を低減するために測定されたチャネル測定に応答してアンテナ構成を変更する方法であって、前記方法は、(a)指向性アンテナを使用して少なくとも1つの他の無線通信局と無線通信するように構成される無線通信局の指向性PDP測定から全方向性電力遅延プロファイル(全方向性PDP)を導出するステップと、(b)前記指向性PDP測定からマルチパス特性を推論して、測定されたチャネルデータから発射角(AoD)、到来角(AoA)及び光線経路情報を推論して、最適の方向に向かう光線経路をマッピングするステップと、(c)経路損失を低減するために、測定されたチャネル測定に応答してアンテナ構成を変更するステップと、を含む方法。
【0065】
[0087] 4.ネットワーク内の無線通信を実行して、経路損失を低減するために測定されたチャネル測定に応答してアンテナ構成を変更する方法であって、前記方法は、(a)測定からNLOS光線を分離して、発射角、到来角及び経路長を求めるステップと、(b)NLOS光線に基づいて材料パラメータを較正するステップと、(c)NLOSの測定と、シミュレーションを含む較正されたNLOSとを比較するステップと、を含む方法。
【0066】
[0088] 5.前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、全方向性PDPを導出するための1又は2以上のステップを更に実行し、前記1又は2以上のステップは、(a)測定された電力遅延プロファイル(PDP)の中で、アンテナパターンの組み合わせの範囲にわたってPDPサンプルを見つけるステップと、(b)前記PDPサンプルを見通し内(LOS)PDPサンプルと位置合わせして、LOS経路の信号伝搬時間と比較されるそのPDPサンプルのNLOS経路の追加の信号伝搬時間(LOS PDPギャップ)を識別するステップであって、サンプリング時間が決定論的であるので、PDPサンプルとLOS PDPサンプルとの間のPDPサンプルの数が、LOS経路にわたって前記信号伝搬時間と比較されるそのPDPサンプルのNLOS経路にわたって追加の伝搬時間を表す、ステップと、(c)同じ伝搬経路上の前記PDPサンプルに基づいて、全方向性PDP値を決定するステップと、を含む、前出のいずれかの実施形態の装置又は方法。
【0067】
[0089] 6.前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、マルチパス特性を推論するための1又は2以上のステップを更に実行し、前記1又は2以上のステップは、光線経路の発射角(θAoD)及び到来角(θAoA)を決定するステップを含む、前出のいずれかの実施形態の装置又は方法。
【0068】
[0090] 7.前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、光線経路の発射角(θAoD)及び到来角(θAoA)を決定するための1又は2以上のステップを更に実行し、前記1又は2以上のステップは、(a)θAoD及びθAoAの各可能な組み合わせを決定するとともに、アンテナ利得を計算するステップと、(b)各光線経路上の全てのアンテナパターンの組み合わせにわたって受信電力測定に基づいて、アンテナ利得を比較するステップと、(c)θAoD及びθAoAとして、光線経路と利得との間の最小差分を有するアンテナパターンの組み合わせを選択するステップと、を含む、前出のいずれかの実施形態の装置又は方法。
【0069】
[0091] 8.前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、各ペアが送信機及び受信機の両方において正又は負のいずれかの特定の回転角度を示す代表的なアンテナ方向ペアのセットから、前記アンテナパターンの組み合わせを選択するステップを含む1又は2以上のステップを更に実行する、前出のいずれかの実施形態の装置又は方法。
【0070】
[0092] 9.前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、測定されたPDPデータを、下式の次元を含む4Dテンソルとして記憶するステップを含む1又は2以上のステップを更に実行し、
N×Nrx×Ntx×Nscans
ここで、NはPDPサンプルの数であり、Nrx及びNtxはTX及びRXアンテナパターンの数であり、Nscanは反復測定の数である、前出のいずれかの実施形態の装置又は方法。
【0071】
[0093] 10.前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、人間遮断体状況に基づく経路損失を低減するために、測定されたチャネル測定に応答してアンテナ構成を変更するステップを含む1又は2以上のステップを実行する、前出のいずれかの実施形態の装置又は方法。
【0072】
[0094] 11.前記無線通信回路は、30GHz~300GHzの範囲内のミリメートル波(mm波)周波数で動作するように構成される、前出のいずれかの実施形態の装置又は方法。
【0073】
[0095] 12.前記装置は、様々なmm波、Wi-Fi、及び無線ネットワーキングシナリオにおいて見通し外(NLOS)伝搬を推定し、通信遮断の場合には、見通し内(LOS)経路の実際的な代替を見つけるように構成される、前出のいずれかの実施形態の装置又は方法。
【0074】
[0096] 13.前記全方向性PDPを導出するステップは、(a)測定された電力遅延プロファイル(PDP)の中で、アンテナパターンの組み合わせの範囲にわたってPDPサンプルを見つけるステップと、(b)前記PDPサンプルを見通し内(LOS)PDPサンプルと位置合わせして、LOS経路の信号伝搬時間と比較されるそのPDPサンプルのNLOS経路の追加の信号伝搬時間(LOS PDPギャップ)を識別するステップであって、サンプリング時間が決定論的であるので、PDPサンプルとLOS PDPサンプルとの間のPDPサンプルの数が、LOS経路にわたって前記信号伝搬時間と比較されるそのPDPサンプルのNLOS経路にわたって追加の伝搬時間を表す、ステップと、(c)同じ伝搬経路上の前記PDPサンプルに基づいて、全方向性PDP値を決定するステップと、を含む1又は2以上のステップによって実行される、前出のいずれかの実施形態の装置又は方法。
【0075】
[0097] 14.前記マルチパス特性を推論するステップは、光線経路の発射角(θAoD)及び到来角(θAoA)を決定するステップによって実行され、前記決定するステップは、(a)θAoD及びθAoAの各可能な組み合わせを決定するとともに、アンテナ利得を計算するステップと、(b)各光線経路上の全てのアンテナパターンの組み合わせにわたって受信電力測定に基づいて、アンテナ利得を比較するステップと、(c)θAoD及びθAoAとして、光線経路と利得との間の最小差分を有するアンテナパターンの組み合わせを選択するステップと、のうちの1又は2以上のステップを含む、前出のいずれかの実施形態の装置又は方法。
【0076】
[0098] 本明細書で使用する単数語「a」、「an」、及び「the」は、文脈によって別途明確に指定しない限り、複数の参照物を含むことができる。単数形による物への言及は、明述しない限り「唯一」を意味するものではなく、「1又は2以上」を意味するものである。
【0077】
[0099] 本開示内の「A、B及び/又はC」などの語句の構成体は、A、B、又はCのいずれかが存在することができる場合、又は項目A、B及びCの任意の組み合わせを説明する。「のうちの少なくとも1つ」の後に要素を列挙したグループが続くような語句の構成体は、これらのグループ要素のうちの少なくとも1つが存在し、適用可能な場合、これらの列挙された要素の任意の可能な組み合わせを含むことを示す。
【0078】
[00100] 本明細書中の「ある実施形態」、「少なくとも1つの実施形態」又は同様の実施形態の用語への言及は、説明された実施形態に関連して説明する特定の特徴、構造又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを示す。したがって、これらの様々な実施形態の語句は、必ずしも全てが同じ実施形態、又は説明されている他の全ての実施形態と異なる特定の実施形態について言及するものではない。実施形態の語句は、所与の実施形態の特定の特徴、構造又は特性を、開示する装置、システム又は方法の1又は2以上の実施形態にあらゆる好適な態様で組み合わせることができることを意味すると解釈すべきである。
【0079】
[00101] 本明細書で使用する「組(set)」という用語は、1又は2以上の物体の集合を意味する。したがって、例えば物体の組は、単一の物体又は複数の物体を含むことができる。
【0080】
[00102] 本明細書で使用する「近似的に(approximately)」、「近似の(approximate)」、「実質的に(substantially)」及び「約(about)」という用語は、わずかな変動の記述及び説明のために使用するものである。これらの用語は、事象又は状況に関連して使用した時には、これらの事象又は状況が間違いなく発生する場合、及びこれらの事象又は状況が発生する可能性が非常に高い場合を意味することができる。これらの用語は、数値に関連して使用した時には、その数値の±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、又は±0.05%以下などの、±10%以下の変動範囲を意味することができる。例えば、「実質的に」整列しているということは、±5°以下、±4°以下、±3°以下、±2°以下、±1°以下、±0.5°以下、±0.1°以下、又は±0.05°以下などの、±10%以下の角度変動範囲を意味することができる。
【0081】
[00103] また、本明細書では、量、比率及びその他の数値を範囲形式で示すこともある。このような範囲形式は、便宜的に簡略化して使用するものであり、範囲の限界として明確に指定された数値を含むが、この範囲に含まれる全ての個々の数値又は部分的範囲も、これらの各数値及び部分的範囲が明確に示されているかのように含むものであると柔軟に理解されたい。例えば、約1~約200の範囲内の比率は、約1及び約200という明確に列挙した限界値を含むが、約2、約3、約4などの個々の比率、及び約10~約50、約20~約100などの部分的範囲も含むと理解されたい。
【0082】
[00104] 本明細書の説明は多くの詳細を含んでいるが、これらは本開示の範囲を限定するものではなく、現在のところ好ましい実施形態の一部を例示するものにすぎないと解釈すべきである。したがって、本開示の範囲は、当業者に明らかになると考えられる他の実施形態も完全に含むと理解されるであろう。
【0083】
[00105] 当業者に周知の本開示の実施形態の要素の全ての構造的及び機能的同等物も、引用によって本明細書に明確に組み入れられ、本特許請求の範囲に含まれるように意図される。更に、本開示の要素、構成要素又は方法ステップは、これらが特許請求の範囲に明示されているかどうかにかかわらず、一般に公開されるように意図するものではない。本明細書における請求項の要素については、その要素が「~のための手段」という表現を使用して明確に示されていない限り、「ミーンズプラスファンクション」の要素として解釈すべきではない。また、本明細書における請求項の要素については、その要素が「~のためのステップ」という表現を使用して明確に示されていない限り、「ステッププラスファンクション」の要素として解釈すべきではない。
【0084】
LOS及びNLOS光線経路の推定された(θAoD,θAoA)及びLOSに対するNLOS光線経路の時間遅延
【表1】

*(θAoD,θAoA
【符号の説明】
【0085】
10 例示的な場所
12 送信機(TX)
14 受信機(RX)
16 部屋
18 着席のための家具
19 テレビジョン
30 実施形態例
50 実施形態例
52 I/O経路
53 ハードウェアブロック
54 バス
56 コンピュータプロセッサ(CPU)
58 メモリ(RAM)
60 mm波モデム
62a,62b,62c 無線周波数(RF)回路
64a~64n,66a~66n,68a~68n アンテナ
70 実施形態例
72a,72b,72c RF回路
74a,74b,74c ビームフォーミングパターン
76a,76b,76c,76d,76e,76f,76g,76h,76i,76j,76k,76n ビームフォーミングパターン
90 フロー図
92 全方向性PDPを生成
94 測定されたPDPデータにおいてLOS PDPサンプルを見つける
96 PDPサンプルをLOS PDPサンプルと位置合わせして、同じ伝搬経路上のPDPサンプルを識別
98 同じ伝搬経路上のPDPサンプルに基づいて全方向性PDPを計算
100 終了
130 例示的なアルゴリズム
150 実施形態例
152 光線経路l上のθAoA及びθAoDを決定
154 光線経路(例えばPl)上の全てのアンテナパターンの組み合わせの受信電力測定と、θAoA及びθAoDの全ての可能な組み合わせのアンテナ利得(例えばG)とを比較
156 光線経路上のθAoD及びθAoAとして、PlとGとの間の差分を最小にするθAoD及びθAoAの組み合わせを選択
158 終了
190 方法ステップ
270,290 例示的な全方向性PDPの結果
310,320,330,340,350,360 結果
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
【国際調査報告】