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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-28
(54)【発明の名称】熱可塑性ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/06 20060101AFI20221118BHJP
   C08L 81/02 20060101ALI20221118BHJP
   C08L 81/06 20060101ALI20221118BHJP
   C08L 71/08 20060101ALI20221118BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20221118BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20221118BHJP
   C08K 7/28 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
C08L77/06
C08L81/02
C08L81/06
C08L71/08
C08L67/00
C08K7/14
C08K7/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519401
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(85)【翻訳文提出日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2020076954
(87)【国際公開番号】W WO2021058769
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】62/906,867
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヌウォス, チノムソ
(72)【発明者】
【氏名】ゴパラクリシュナン, ヴィジェイ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CF001
4J002CH091
4J002CL031
4J002CN011
4J002CN031
4J002DL006
4J002DL007
4J002FA046
4J002FA107
4J002GQ00
4J002GQ01
(57)【要約】
本発明は、熱可塑性ポリマーと、ガラス繊維と、中空ガラスビーズとを含むポリマー組成物に関し、この場合、ガラス繊維及び中空ガラスビーズの総濃度に対する中空ガラスビーズの濃度の比は、0.2~0.49の範囲である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-ポリ(アリーレンスルフィド)(PAS)、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)、ポリエステル(PE)、ポリアミド(PA)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される熱可塑性ポリマーと、
-ガラス繊維と、
-中空ガラスビーズと、を含むポリマー組成物[組成物(C)]であって、
前記ガラス繊維及び前記中空ガラスビーズの総濃度に対する前記中空ガラスビーズの濃度の比は、0.2~0.49の範囲である、ポリマー組成物[組成物(C)]。
【請求項2】
前記ガラス繊維及び前記中空ガラスビーズの総濃度に対する前記中空ガラスビーズの濃度の比は、0.2~0.48、好ましくは0.2~0.45、より好ましくは0.2~0.4の範囲である、請求項1に記載の組成物(C)。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリマーは、脂肪族、脂環式及び半芳香族ポリアミドからなる群から選択され、前記熱可塑性ポリマーは、好ましくは脂肪族ポリアミドである、請求項1又は2に記載の組成物(C)。
【請求項4】
前記ポリアミドは、以下の式(IV):
【化1】
(式中:
-R~Rは、各位置において、独立して、水素、アルキル、アリール、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、及び4級アンモニウムからなる群から選択され、
-pは、4~10の整数であり、
-p’は、4~12の整数である)で表される繰り返し単位RPAを含む、請求項3に記載の組成物(C)。
【請求項5】
前記ポリアミドは、PA4,6、PA5,6、PA5,10、PA6,10、PA10,10、及びPA10,12からなる群から選択される、請求項4に記載の組成物(C)。
【請求項6】
前記ガラス繊維は、1MHzの周波数で4.0~5.5の誘電率を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項7】
前記中空ガラスビーズは、少なくとも16,000psiの破砕強度を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項8】
前記組成物(C)の総重量に基づいて、10~25重量%、好ましくは10~22重量%、より好ましくは10~20重量%の濃度で前記中空ガラスビーズを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項9】
前記組成物(C)の総重量に基づいて、10~45重量%、好ましくは10~40重量%の濃度で前記ガラス繊維を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項10】
前記組成物(C)の総重量に基づいて、30~80重量%、好ましくは40~65重量%、より好ましくは45~60重量%の濃度で前記熱可塑性ポリマーを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項11】
前記組成物は、少なくとも2.5%、好ましくは少なくとも2.6%、より好ましくは少なくとも2.8%の引張り歪みを有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項12】
前記組成物は、少なくとも80MPA、好ましくは少なくとも85MPA、より好ましくは少なくとも90MPAの引張り強度を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項13】
前記組成物は、少なくとも6.5GPa、好ましくは少なくとも7.0GPa、より好ましくは少なくとも7.8GPaの引張り弾性率を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項14】
前記組成物は、1MHzで3.3以下、好ましくは3.2以下、より好ましくは3.1以下の誘電率を有し、且つ/又は、1MHzで0.015以下、好ましくは0.012以下、より好ましくは0.010以下の誘電正接を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項15】
携帯電子機器部品は、好ましくは携帯電子機器ハウジングである、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物(C)を含む携帯電子機器部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリマー組成物、特に優れた誘電性能及び機械的性能を有する熱可塑性ポリマー組成物、並びに前述の熱可塑性ポリマー組成物を作製するための方法に関する。更に、本発明は、前述の熱可塑性ポリマー組成物を含む携帯電子機器部品に関する。
【背景技術】
【0002】
その軽量化、高い機械的性能、及び優れた設計オプションにより、熱可塑性ポリマー組成物は、携帯電子機器部品の金属代替品として魅力的である。
【0003】
特に、強化フィラーとしてガラス繊維を含む熱可塑性ポリマー組成物は、その高い剛性、高い強度、及び高い衝撃性能のために、携帯電子機器部品で広く使用されている。しかしながら、前述の組成物は、一般に、不十分な誘電特性、即ち、高い誘電率(D)及び高い誘電正接(D)を示す。
【0004】
従って、携帯電子機器部品に必要な特性の適切なバランスに効果的に対処する熱可塑性ポリマー組成物に対する必要性が感じられ、特に、良好な機械的特性を維持しながら、誘電率及び誘電正接に関して満足のいく誘電特性を有する熱可塑性ポリマー組成物に対する必要性が感じられる。
【発明の概要】
【0005】
第1の態様では、本発明は、
-ポリ(アリーレンスルフィド)(PAS)、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)、ポリエステル(PE)、ポリアミド(PA)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される熱可塑性ポリマーと、
-ガラス繊維と、
-中空ガラスビーズと、
を含むポリマー組成物[組成物(C)]に関し、
この場合、ガラス繊維及び中空ガラスビーズの総濃度に対する中空ガラスビーズの濃度の比は、0.2~0.49の範囲である。
【0006】
別の態様では、本発明は、上記で定義された組成物(C)を含む携帯電子機器部品に関する。
【0007】
有利なことに、本発明による組成物(C)は、強度及び延性などの良好な機械的特性を示しながら、優れた誘電性能、即ち、低い誘電率(D)及び低い誘電正接(D)を示す。その高い誘電性能及び機械的性能のおかげで、本発明による組成物(C)は、望ましくは、携帯電子機器部品に組み込むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書で説明されるのは、熱可塑性ポリマーと、ガラス繊維と、中空ガラスビーズとを含むポリマー組成物[組成物(C)]であり、この場合、ガラス繊維及び中空ガラスビーズの総濃度に対する中空ガラスビーズの濃度の比は、0.2~0.49の範囲である。熱可塑性ポリマーは、ポリ(アリーレンスルフィド)(PAS)、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)、ポリエステル(PE)、ポリアミド(PA)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0009】
驚くべきことに、特許請求された比で中空ガラスビーズを組み込むことにより、得られた組成物(C)は、中空ガラスビーズを含まない類似の組成物に対して、及び異なる比で中空ガラスビーズを組み込んだ類似の組成物の両方に対して、誘電率(D)及び誘電正接(D)の減少と、良好な機械的特性、特に高い引張り歪みの維持との間の非常に良好な妥協点を提供したことが見出された。より具体的には、本発明による組成物(C)は、中空ガラスビーズをより高い比で組み込んだ類似の組成物と比較して、著しく高い引張り歪みを示すことが予想外に見出された。
【0010】
組成物(C)におけるガラス繊維及び中空ガラスビーズの総濃度に対する中空ガラスビーズの濃度の比は、式:
【数1】
(式中、WGB及びWGFは、それぞれ、組成物(C)の総重量に対して、組成物(C)における中空ガラスビーズの重量パーセント及びガラス繊維の重量パーセントである)で表すことができる。
【0011】
本明細書において、他に示されない限り、以下の用語は以下のように意味されるべきである。
【0012】
本明細書で使用される場合、用語「アルキル」、並びに、「アルコキシ」、「アシル」及び「アルキルチオ」などの派生用語は、これらの範囲内に、直鎖、分岐鎖及び環状部位を含む。アルキル基の例は、メチル、エチル、1-メチルエチル、プロピル、1,1-ジメチルエチル、及びシクロプロピルである。
【0013】
用語「アリール」は、フェニル、インダニル又はナフチル基を指す。アリール基は、1つ以上のアルキル基を含み得、この場合に「アルキルアリール」と呼ばれることもあり、例えば芳香族基と、2つのC~C基(例えば、メチル又はエチル)とから構成され得る。また、アリール基は、1つ以上のヘテロ原子、例えば、N、O又はSを含み得、この場合に「ヘテロアリール」基と呼ばれることもあり、これらのヘテロ芳香環は、他の芳香族系と縮合し得る。このようなヘテロ芳香環には、これらに限定されないが、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリダジル、ピリミジル、ピラジニル及びトリアジニル環構造が含まれる。アリール又はヘテロアリール置換基は、非置換であっても、或いはハロゲン、ヒドロキシ、C~Cアルコキシ、スルホ、C~Cアルキルチオ、C~Cアシル、ホルミル、シアノ、C~C15アリールオキシ又はC~C15アリールから選択されるが、これらに限定されない1つ以上の置換基で置換されていてもよく、但し、置換基が立体的に適合性であり、且つ化学結合及び歪みエネルギーの規則が満たされていることを条件とする。
【0014】
特に具体的に記述しない限り、各アルキル及びアリール基は、非置換であっても、或いはハロゲン、ヒドロキシ、スルホ、C~Cアルコキシ、C~Cアルキルチオ、C~Cアシル、ホルミル、シアノ、C~C15アリールオキシ又はC~C15アリールから選択されるが、これらに限定されない1つ以上の置換基で置換されていてもよく、但し、置換基が立体的に適合性であり、且つ化学結合及び歪みエネルギーの規則が満たされていることを条件とする。用語「ハロゲン」又は「ハロ」には、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が含まれ、フッ素が好ましい。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によれば、組成物(C)は、熱可塑性ポリマー、ガラス繊維、及び中空ガラスビーズからなる、又はこれらから本質的になる。表現「から本質的になる」は、組成物(C)は、熱可塑性ポリマーと、ガラス繊維と、中空ガラスビーズと、15重量%以下、好ましくは10重量%以下、好ましくは5重量%以下、更により好ましくは3重量%以下、最も好ましくは1重量%以下の他の成分とを含むことを意味することが意図される。
【0016】
いくつかの実施形態では、ガラス繊維及び中空ガラスビーズの総濃度に対する中空ガラスビーズの濃度の比は、0.2~0.48、0.2~0.45、0.2~0.4、0.22~0.49、0.22~0.48、0.22~0.45、0.22~0.4、0.25~0.49、0.25~0.48、0.25~0.45、0.25~0.4の範囲である。
【0017】
誘電性能に関して、ポリマー組成物の誘電率(「D」)及び誘電正接(「D」)は、無線通信が存在する用途設定における材料の適合性を決定するうえで重要である。例えば、携帯電子機器において、様々な部品及びハウジングを形成する材料の誘電特性は、1つ以上のアンテナを通して携帯電子機器により送信及び受信されるワイヤレス無線信号(例えば、1MHz、1GHz、2.4GHz及び5.0GHzの周波数)を著しく損なう可能性がある。材料の誘電率は、一部には材料の電磁放射線との相互作用能力を表し、それに対応して、その材料を通して移動する電磁信号(例えば、無線信号)を混乱させる。従って、所与の周波数における材料の誘電率が低いほど、その周波数で材料が電磁信号を混乱させることがより少なくなる。同様に、誘電正接は、材料の誘電損失に比例し、誘電正接が低いほど、材料の誘電損失が低くなる。
【0018】
本発明による組成物(C)は、優れた誘電性能(比較的低いD及びD)を有する。
【0019】
いくつかの実施形態では、組成物(C)は、3.3以下、3.2以下、3.1以下、3.0以下、2.9以下、又は2.8以下の1MHzでの誘電率(D)を有する。これに加えて又はこの代わりに、いくつかの実施形態では、組成物(C)は、少なくとも2.7の1MHzでのDを有する。いくつかの実施形態では、組成物(C)は、2.7~3.3、2.7~3.2、2.7~3.1、2.7~3.0、2.7~2.9、又は2.7~2.8の範囲の1MHzでのDを有する。
【0020】
いくつかの実施形態では、組成物(C)は、0.015以下、0.014以下、0.013以下、0.012以下、又は0.010以下の1MHzでの誘電正接(D)を有する。これに加えて又はこの代わりに、いくつかの実施形態では、組成物(C)は、少なくとも0.003又は少なくとも0.004の1MHzでのDを有する。いくつかの実施形態では、組成物(C)は、0.003~0.015、0.003~0.014、0.003~0.013、0.003~0.012、0.003~0.011、0.003~0.010、0.004~0.015、0.004~0.014、0.004~0.013、0.004~0.012、0.004~0.011、0.004~0.010の範囲の1MHzでのDを有する。
【0021】
1MHzでのD及びDは、ASTM D150に従って測定することができる。いくつかの実施形態では、組成物(C)は、周波数2.4GHzで、上記の範囲のD及びDを有することができる。2.4GHzでのD及びDは、ASTM D2520又はASTM D150に従って測定することができる。
【0022】
更に、上記のように、本発明による組成物(C)は、衝撃強度(ノッチ付き及びノッチなし)、引張り強度、引張り弾性率、及び特に引張り歪みに関して、良好な機械的性能を有する。
【0023】
いくつかの実施形態では、組成物(C)は、少なくとも2.5%、少なくとも2.6%、少なくとも2.8%の引張り歪みを有する。これに加えて又はこの代わりに、いくつかの実施形態では、組成物(C)は、4.0%以下、3.8%以下、又は3.5%以下の引張り歪みを有する。いくつかの実施形態では、組成物(C)は、2.5%~4.0%、2.5%~3.8%、2.5%~3.5%、2.6%~4.0%、2.6%~3.8%、2.6%~3.5%、2.8%~4.0%、2.8%~3.8%、又は2.8%~3.5%の範囲の引張り歪みを有する。
【0024】
いくつかの実施形態では、組成物(C)は、少なくとも80メガパスカル(「MPa」)、少なくとも85MPa、又は少なくとも90MPaの引張り強度を有する。これに加えて又はこの代わりに、いくつかの実施形態では、前述の組成物(C)は、160MPa以下、150MPa以下、又は145MPa以下の引張り強度を有する。いくつかの実施形態では、前述の組成物(C)は、80MPa~160MPa、80MPa~150MPa、80MPa~145MPa、85MPa~160MPa、85MPa~150MPa、85MPa~145MPa、90MPa~160MPa、90MPa~150MPa、90MPa~145MPaの範囲の引張り強度を有する。
【0025】
いくつかの実施形態では、前述の組成物(C)は、少なくとも6.5ギガパスカル(「GPa」)、少なくとも7.0GPa、又は少なくとも7.8GPaの引張り弾性率を有する。これに加えて又はこの代わりに、いくつかの実施形態では、前述の組成物(C)は、11.8GPa以下、11.0GPa以下、又は10.0GPa以下の引張り弾性率を有する。いくつかの実施形態では、前述の組成物(C)は、6.5GPa~11.8GPa、6.5GPa~11.0GPa、6.5GPa~10.0GPa、7.0GPa~11.8GPa、7.0GPa~11.0GPa、7.0GPa~10.0GPa、7.8~11.8GPa、7.8GPa~11.0GPa、7.8GPa~10.0GPaの範囲の引張り弾性率を有する。
【0026】
いくつかの実施形態では、前述の組成物(C)は、少なくとも6.8キロジュール/平方メートル(「kJ/m」)、少なくとも9.4kJ/m、又は少なくとも11.6kJ/mのノッチ付き衝撃強度を有する。これに加えて又はこの代わりに、いくつかの実施形態では、前述の組成物(C)は、16kJ/m以下、15kJ/m以下、14kJ/m以下、13kJ/m以下のノッチ付き衝撃強度を有する。いくつかの実施形態では、前述の組成物(C)は、6.8kJ/m~16kJ/m2、6.8kJ/m~15kJ/m、6.8kJ/m~14kJ/m、6.8kJ/m~13kJ/m、9.4kJ/m~16kJ/m、9.4kJ/m~15kJ/m、9.4kJ/m~14kJ/m、9.4kJ/m~13kJ/m、11.6kJ/m~16kJ/m、11.6kJ/m~15kJ/m、11.6kJ/m~14kJ/m、又は11.6kJ/m~13kJ/mの範囲のノッチ付き衝撃強度を有する。
【0027】
いくつかの実施形態では、前述の組成物(C)は、少なくとも24kJ/m、少なくとも35kJ/m、又は少なくとも49kJ/mのノッチなし衝撃強度を有する。これに加えて又はこの代わりに、いくつかの実施形態では、前述の組成物(C)は、70kJ/m以下、60kJ/m以下、又は55kJ/m以下のノッチなし衝撃強度を有する。いくつかの実施形態では、前述の組成物(C)は、24kJ/m~70kJ/m、24kJ/m~60kJ/m、24kJ/m~55kJ/m、35kJ/m~70kJ/m、35kJ/m~60kJ/m、35kJ/m~55kJ/m、49kJ/m~70kJ/m、49kJ/m~60kJ/m、又は49kJ/m~55kJ/mのノッチなし衝撃強度を有する。
【0028】
引張り強度、引張り歪み、引張り弾性率、並びにノッチ付き衝撃強度及びノッチなし衝撃強度は、実施例に記載の通りに測定することができる。
【0029】
熱可塑性ポリマー
用語「熱可塑性」は、加熱すると軟化し、室温で冷却すると硬化するポリマーであって、室温で、完全に非晶質の場合にはそのガラス転移温度よりも下で、又は半結晶の場合にはその融点よりも下で存在するポリマーを意味することが意図される。それにもかかわらず一般に、前述のポリマーが半結晶性である、即ち、明確な融点を有することが好ましく、好ましいポリマーは、ASTM D3418に従って測定されるときに、少なくとも10J/gの、好ましくは少なくとも25J/gの、より好ましくは少なくとも30J/gの融解熱(ΔH)を有するものである。融解熱についての上限は決定的に重要であるわけではないが、それにもかかわらず、前述のポリマーは、一般に多くともも80J/gの、好ましくは多くともも60J/gの、より好ましくは多くともも40J/gの融解熱を有するであろうことが理解される。
【0030】
本発明によれば、熱可塑性ポリマーは、ポリ(アリーレンスルフィド)(PAS)、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)、ポリエステル(PE)、ポリアミド(PA)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0031】
ポリ(アリーレンスルフィド)(PAS)
一実施形態によれば、熱可塑性ポリマーは、ポリ(アリーレンスルフィド)(PAS)である。
【0032】
本明細書で使用される場合、「ポリ(アリーレンスルフィド)(PAS)」は、主要な構造単位として式-(Ar-S)-の繰り返し単位(RPAS)を含み、この場合、Arはアリーレン基である。アリーレン基は、置換又は非置換であり得る。更に、ポリ(アリーレンスルフィド)(PAS)には、ポリマー内のスルフィド結合の任意の異性体関係を含めることができ、例えば、アリーレン基がフェニレン基である場合、スルフィド結合は、オルト、メタ、パラ、又はこれらの組み合わせであり得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、ポリ(アリーレンスルフィド)(PAS)は、少なくとも5モル%、少なくとも10モル%、少なくとも20モル%、少なくとも30モル%、少なくとも40モル%、少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%、少なくとも99.5モル%、又は少なくとも99.9モル%の繰り返し単位(RPAS)を含む。本明細書で使用される場合、モル%は、ポリ(アリーレンスルフィド)(PAS)の繰り返し単位の総モル数に対してである。
【0034】
好ましくは、ポリ(アリーレンスルフィド)(PAS)は、ポリ(2,4-トルエンスルフィド)、ポリ(4,4’-ビフェニレンスルフィド)、ポリ(パラ-フェニレンスルフィド)、ポリ(オルト-フェニレンスルフィド)、ポリ(メタ-フェニレンスルフィド)、ポリ(キシレンスルフィド)、ポリ(エチルイソプロピルフェニレンスルフィド)、ポリ(テトラメチルフェニレンスルフィド)、ポリ(ブチルシクロヘキシルフェニレンスルフィド)、ポリ(ヘキシルドデシルフェニレンスルフィド)、ポリ(オクタデシルフェニレンスルフィド)、ポリ(フェニルフェニレンスルフィド)、ポリ-(トリルフェニレンスルフィド)、ポリ(ベンジルフェニレンスルフィド)及びポリ(オクチル-4-(3-メチルシクロペンチル)フェニレンスルフィド)からなる群から選択される。
【0035】
一実施形態では、ポリ(アリーレンスルフィド)(PAS)は、ポリ(フェニレンスルフィド)(PPS)であり、式(I):
【化1】
(式中、R、R、R、及びRは、互いに等しく又は異なり、水素原子、又はC~C12アルキル基、C~C24アルキルアリール基、C~C24アラルキル基、C~C24アリーレン基、C~C12アルコキシ基、及びC~C18アリールオキシ基からなる群から選択される置換基であり得る)で表される繰り返し単位(RPPS)を含む。
【0036】
従って、その最も広い定義では、本発明のポリ(フェニレンスルフィド)(PPS)は、置換及び/又は非置換のフェニレンスルフィド基から作製することができる。
【0037】
一実施形態では、ポリフェニレンスルフィド(PPS)は、以下の式(II):
【化2】
で表される繰り返し単位(RPPS)を含み、
特に、Solvay Specialty Polymers USA、L.L.C.からRYTON(登録商標)PPSとして市販されている。
【0038】
いくつかの実施形態では、ポリフェニレンスルフィド(PPS)は、少なくとも50モル%の式(I)及び/又は式(II)の繰り返し単位(RPPS)を含む。例えば、少なくとも約60モル%、少なくとも約70モル%、少なくとも約80モル%、少なくとも約90モル%、少なくとも約95モル%、少なくとも約99モル%のポリフェニレンスルフィド(PPS)の繰り返し単位は、式(I)及び/又は式(II)の繰り返し単位(RPPS)である。
【0039】
一実施形態によれば、組成物(C)は、複数の別個のポリ(アリーレンスルフィド)ポリマーを含み、各ポリ(アリーレンスルフィド)ポリマーは、別個の繰り返し単位(RPAS)を有する。
【0040】
ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)
一実施形態によれば、熱可塑性ポリマーは、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)である。
【0041】
本明細書で使用される場合、「ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)」は、繰り返し単位の少なくとも50モル%が式(III):
【化3】
(式中:
(i)各Rは、互いに等しく又は異なり、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び4級アンモニウムから選択され、
(ii)各hは、互いに等しく又は異なり、0~4の範囲の整数であり、
(iii)Tは、結合、スルホン基[-S(=O)2-]、及び基-C(Rj)(Rk)-からなる群から選択され、Rj及びRkは、互いに等しく又は異なり、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び4級アンモニウムから選択される)の繰り返し単位(RPAES)である任意のポリマーを意味する。Rj及びRkは、好ましくはメチル基である。
【0042】
好ましくは、少なくとも60モル%、70モル%、80モル%、90モル%、95モル%、99モル%の、最も好ましくは、全てのポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)の繰り返し単位は、式(III)の繰り返し単位(RPAES)である。本明細書で使用される場合、モル%は、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)の繰り返し単位の総モル数に対してである。
【0043】
一実施形態では、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)は、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)である。ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)ポリマーは、ビフェニル部位を含むポリ(アリールエーテルスルホン)である。ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)は、ポリフェニルスルホン(PPSU)としても知られており、例えば、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(ビフェノール)と4,4’-ジクロロジフェニルスルホンとの縮合によって生じる。
【0044】
本明細書で使用される場合、「ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)」は、50モル%超の繰り返し単位が、式(III-A)の繰り返し単位(RPPSU)である任意のポリマーを意味する

【化4】
【0045】
好ましくは、少なくとも60モル%、70モル%、80モル%、90モル%、95モル%、99モル%の、最も好ましくは、全てのポリ(ビフェニルエーテルスルホン)の繰り返し単位(PPSU)は、式(III-A)の繰り返し単位である。
【0046】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)は、公知の方法で調製でき、特にSolvay Specialty Polymers USA、L.L.C.からRADEL(登録商標)PPSUとして入手できる。
【0047】
一実施形態では、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)は、ポリエーテルスルホン(PES)である。
【0048】
本明細書で使用される場合、「ポリ(エーテルスルホン)(PES)」は、少なくとも50モル%の繰り返し単位が、式(III-B)の繰り返し単位である任意のポリマーを意味する:
【化5】
【0049】
好ましくは、少なくとも60モル%、70モル%、80モル%、90モル%、95モル%、99モル%の、最も好ましくは、全てのポリ(エーテルスルホン)の繰り返し単位(PES)は、式(III-B)の繰り返し単位である。
【0050】
ポリ(エーテルスルホン)(PES)は、公知の方法で調製でき、特にSolvay Specialty Polymers USA、L.L.C.からVERADEL(登録商標)PESUとして入手できる。
【0051】
一実施形態では、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)は、ポリスルホン(PSU)である。
【0052】
本明細書で使用される場合、「ポリスルホン(PSU)」は、少なくとも50モル%の繰り返し単位が、式(III-C)の繰り返し単位である任意のポリマーを意味する。
【化6】
【0053】
好ましくは、少なくとも60モル%、70モル%、80モル%、90モル%、95モル%、99モル%の、最も好ましくは、全てのPSUの繰り返し単位は、式(III-C)の繰り返し単位である。
【0054】
ポリスルホン(PSU)は、公知の方法で調製でき、Solvay Specialty Polymers USA、L.L.C.からUDEL(登録商標)PSUとして入手できる。
【0055】
一実施形態によれば、組成物(C)は、複数の別個のポリ(アリールエーテルスルホン)ポリマーを含み、ポリ(アリールエーテルスルホン)ポリマーは、好ましくは、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリ(エーテルスルホン)(PES)、及びポリスルホン(PSU)からなる群から選択される。
【0056】
ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)
一実施形態によれば、熱可塑性ポリマーは、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)である。
【0057】
本明細書で使用される場合、「ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)」は、50モル%超の繰り返し単位(RPAEK)を含む任意のポリマーを意味し、この場合、繰り返し単位(RPAEK)は、Ar-C(O)-Ar’基を含み、この場合、ArとAr’は、互いに等しく又は異なり、芳香族基である。
【0058】
いくつかの実施形態では、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)は、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、又は少なくとも99モル%、少なくとも99.5モル%、又は少なくとも99.9モル%の繰り返し単位(RPAEK)を含む。本明細書で使用される場合、モル%は、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)の繰り返し単位の総モル数に対してである。
【0059】
いくつかの実施形態では、繰り返し単位(RPAEK)は、本明細書において以下の式(J-A)から(J-O):
【化7】
【化8】
【化9】
(式中:
-R’のそれぞれは、互いに等しく又は異なり、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び4級アンモニウムからなる群から選択され、
-jは、0~4の整数である)からなる群から選択される。
【0060】
繰り返し単位(RPAEK)において、それぞれのフェニレン部位は、独立して、繰り返し単位においてR’と異なる他の部位に対して1,2-、1,4-又は1,3-結合を有し得る。好ましくは、フェニレン部位は、1,3-又は1,4-結合を有し、より好ましくは、それらは、1,4-結合を有する。
【0061】
いくつかの実施形態では、繰り返し単位(RPAEK)のj’は、各出現でゼロである。即ち、フェニレン部位には、ポリマーの主鎖での結合を可能にする置換基以外の他の置換基がない。
【0062】
好ましい繰り返し単位(RPAEK)は、従って、本明細書で以下の式(J’-A)~(J’-O)のものから選択される:
【化10】
【化11】
【0063】
好ましい実施形態では、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)である。この実施形態では、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)は、式(JA)又は(J’-A)のいずれかで表される繰り返し単位(RPEEK)を有し、好ましくは繰り返し単位(RPEEK)は、式(J’-A)で表される。
【0064】
一実施形態によれば、組成物(C)は、複数の別個のポリ(アリールエーテルケトン)ポリマーを含み、各ポリ(アリールエーテルケトン)ポリマーは、別個の繰り返し単位(RPAEK)を有する。
【0065】
ポリエステル(PE)
一実施形態によれば、熱可塑性ポリマーは、ポリエステル(PE)である。
【0066】
本明細書で使用される場合、「ポリエステル(PE)」は、少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも85モル%の少なくとも1つのエステル部位(一般に、式:R-(C=O)-OR’で記載される)を含む繰り返し単位を含むポリマーを意味する。ポリエステル(PE)は、少なくとも1つのエステル部位を含む環状モノマー(M)の開環重合によって、少なくとも1つのヒドロキシル基と少なくとも1つのカルボン酸基を含むモノマー(M)の重縮合によって、又は少なくとも2つのヒドロキシル基(ジオール)を含む少なくとも1つのモノマー(M)と、少なくとも2つのカルボン酸基(ジカルボン酸)を含む少なくとも1つのモノマー(M)との重縮合によって、得ることができる。本明細書で使用される場合、用語ジカルボン酸は、ジカルボン酸、及びジカルボン酸の任意の誘導体(これらの関連する酸のハロゲン化物、エステル、半エステル、塩、半塩、無水物、混合無水物、又はこれらの混合物を含む)を含むことが意図される。
【0067】
一実施形態では、ポリエステル(PE)は、芳香族ポリエステル及びポリアルキレンエステルからなる群から選択される。
【0068】
芳香族ポリエステルの例には、ポリ(イソフタレート-テレフタレート-レゾルシノール)エステル、ポリ(イソフタレート-テレフタレート-ビスフェノールA)エステル、ポリ[(イソフタレート-テレフタレート-レゾルシノール)エステル-共(co)-(イソフタレート-テレフタレート-ビスフェノールA)]エステル、及びこれらの組み合わせが含まれる。
【0069】
ポリアルキレンエステルには、ポリアルキレンアリーレート、例えば、ポリアルキレンテレフタレート及びポリアルキレンナフタレートが含まれる。ポリアルキレンテレフタレートの例には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、及びポリプロピレンテレフタレート(PPT)が含まれる。ポリアルキレンナフタレートの例には、ポリエチレンナフタレート(PEN)、及びポリブチレンナフタレート(PBN)が含まれる。
【0070】
一実施形態では、ポリエステル(PE)は、少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも60モル%、より好ましくは少なくとも70モル%、更により好ましくは少なくとも80モル%、最も好ましくは少なくとも90モル%の、少なくとも1つのエステル部位に加えて、少なくとも1つの脂環式基を含む繰り返し単位を含む。一実施形態では、ポリエステル(PE)は、本質的に、少なくとも1つのエステル部位と、少なくとも1つの脂環式基とを含む繰り返し単位から構成される。脂環式基は、脂肪族及び環状の両方である少なくとも1つの基を含むモノマー(M)、モノマー(M)、モノマー(M)又はモノマー(M)から誘導されることができる。
【0071】
モノマー(M)の非限定的な例には、ラクチド及びカプロラクトンが含まれる。
【0072】
モノマー(M)の非限定的な例には、グリコール酸、4-ヒドロキシ安息香酸及び6-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸が含まれる。
【0073】
モノマー(M)の非限定的な例には、1,4-シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、2,2,4-トリメチル1,3-ペンタンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、及びネオペンチルグリコールが含まれるが、1,4-シクロヘキサンジメタノール及びネオペンチルグリコールが好ましい。
【0074】
モノマー(M)の非限定的な例には、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、セバシン酸、及びアジピン酸が含まれるが、テレフタル酸及び1,4-シクロヘキサンジカルボン酸が好ましい。
【0075】
ポリエステル(PE)がコポリマーである場合、モノマー(M)及び(M)が好ましくは使用される。このような場合には、モノマー(M)は、好ましくは、1,4-シクロヘキサンジメタノールであり、モノマー(M)は、好ましくは、テレフタル酸と1,6-ナフタレンジカルボン酸の混合物である。
【0076】
ポリエステルがホモポリマーである場合、それは、ポリ(シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)(PCT)及びポリ(シクロヘキシレンジメチレンナフタレート)(PCN)から選択されることができる。
【0077】
一実施形態によれば、組成物(C)は、複数の別個のポリエステルを含む。
【0078】
ポリアミド(PA)
一実施形態によれば、熱可塑性ポリマーは、ポリアミド(PA)である。
【0079】
本明細書で使用される場合、「ポリアミド(PA)」は、アミド結合を含む繰り返し単位(RPA)を含み、これは、典型的には、少なくとも1つのジカルボン酸成分(又はその誘導体)と少なくとも1つのジアミン成分の重縮合から、及び/又はアミノカルボン酸及び/又はラクタムの重縮合から誘導される。
【0080】
表現「カルボン酸」と組み合わせて使用される場合の表現「その誘導体」は、重縮合条件で反応してアシル基などのアミド結合を生成しやすい誘導体を意味することが意図される。
【0081】
好ましくは、ポリアミド(PA)は、脂肪族、脂環式及び半芳香族ポリアミドからなる群から選択される。
【0082】
好ましい実施形態によれば、熱可塑性ポリマーは、脂肪族ポリアミドである。
【0083】
本明細書で使用される場合、脂肪族ポリアミドは、少なくとも50モル%の繰り返し単位RPAを含み、これは、アミド結合(-NH-CO-)を有しいかなる芳香族基及び脂環式基をも含まない。言い換えると、重縮合によるジアミンと二酸の形成の両方で、繰り返し単位(RPA)は、いかなる芳香族基及び脂環式基をも含まない。いくつかの実施形態では、前述の脂肪族ポリアミドは、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%、又は少なくとも99.9モル%の繰り返し単位(RPA)を有する。
【0084】
好ましくは、繰り返し単位(RPA)は、以下の式(IV):
【化12】
(式中:
~Rは、各位置において、独立して、水素、アルキル、アリール、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、及び4級アンモニウムからなる群から選択され、
pは、4~10の整数であり、
p’は、4~12の整数である)で表される。
【0085】
好ましくは、各位置で、R~Rは水素である。好ましくは、pは、4~6である。好ましくは、p’は、6~12である。
【0086】
好ましくは、前述の脂肪族ポリアミドは、PA4,6、PA5,6、PA5,10、PA6,10、PA10,10、及びPA10,12からなる群から選択される。より好ましくは、前述の脂肪族ポリアミドは、PA6,10である。
【0087】
好ましくは、前述の脂肪族ポリアミドは、ASTM D5336に従って測定される、0.7~1.4デシリットル/g(「dL/g」)の固有粘度を有する。
【0088】
一実施形態によれば、組成物(C)は、上記の説明による複数の別個の脂肪族ポリアミドを含み、各脂肪族ポリアミドは、別個の繰り返し単位RPAを有する。
【0089】
一実施形態によれば、組成物(C)は、複数の別個の熱可塑性ポリマーを含む。好ましくは、前述の別個の熱可塑性ポリマーの少なくとも1つは、脂肪族、脂環式及び半芳香族ポリアミドからなる群から選択される。更により好ましくは、前述の別個の熱可塑性ポリマーの少なくとも1つは、脂肪族ポリアミドである。
【0090】
一実施形態によれば、組成物(C)は、1つのポリアミド又は複数の別個のポリアミド、好ましくは1つの脂肪族ポリアミド又は複数の別個の脂肪族ポリアミドを含み、いかなる他の熱可塑性ポリマーをも含まない。
【0091】
いくつかの実施形態では、組成物(C)は、組成物(C)の総重量に対して少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも45重量%、又は少なくとも50重量%の濃度で、前述の熱可塑性ポリマー又は前述の複数の別個の熱可塑性ポリマーを含む。これに加えて又はこの代わりに、いくつかの実施形態では、組成物(C)は、組成物(C)の総重量に対して多くとも80重量%、多くとも70重量%、多くとも65重量%、又は多くとも60重量%の濃度で、前述の熱可塑性ポリマー又は前述の複数の別個の熱可塑性ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、前述の熱可塑性ポリマー又は前述の複数の別個の熱可塑性ポリマーの濃度は、組成物(C)の総重量に対して30重量%~80重量%、30重量%~70重量%、30重量%~65重量%、30重量%~60重量%、40重量%~80重量%、40重量%~70重量%、40重量%~65重量%、40重量%~60重量%、45重量%~80重量%、45重量%~70重量%、45重量%~65重量%、45重量%~60重量%、50重量%~80重量%、50重量%~70重量%、50重量%~65重量%、又は50重量%~60重量%である。
【0092】
いくつかの実施形態では、組成物(C)は、組成物(C)の総重量に対して少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも45重量%、又は少なくとも50重量%の濃度で上記の説明による脂肪族ポリアミド又は複数の別個の脂肪族ポリアミドを含む。これに加えて又はこの代わりに、いくつかの実施形態では、組成物(C)は、組成物(C)の総重量に対して多くとも80重量%、多くとも70重量%、多くとも65重量%、又は多くとも60重量%の濃度で上記の説明による脂肪族ポリアミド又は複数の別個の脂肪族ポリアミドを含む。いくつかの実施形態では、本発明による組成物(C)は、組成物(C)の総重量に対して30重量%~80重量%、30重量%~70重量%、30重量%~65重量%、30重量%~60重量%、40重量%~80重量%、40重量%~70重量%、40重量%~65重量%、40重量%~60重量%、45重量%~80重量%、45重量%~70重量%、45重量%~65重量%、45重量%~60重量%、50重量%~80重量%、50重量%~70重量%、50重量%~65重量%、又は50重量%~60重量%の濃度で上記の説明による脂肪族ポリアミド又は複数の別個の脂肪族ポリアミドを含む。
【0093】
ガラス繊維
ガラス繊維は、様々なタイプのガラスをもたらように調整することができるいくつかの金属酸化物を含むシリカ系ガラス化合物である。主な酸化物は、ケイ砂の形態のシリカであり、カルシウム、ナトリウム及びアルミニウムなどの他の酸化物は、溶融温度を低下させ、結晶化を妨げるために組み込まれる。ガラス繊維は、エンドレス繊維又はチョップドガラス繊維として添加され得る。ガラス繊維は、一般に、5~20μm、好ましくは5~15μm、より好ましくは5~10μmの等価直径を有する。A、C、D、E、M、R、S、Tガラス繊維などの全てのガラス繊維タイプ(Additives for Plastics Handbook,2nd ed,John Murphyのchapter 5.2.3、pages 43-48に記載)及びこれらの任意の混合物を使用することができる。
【0094】
E、R、S及びTガラス繊維は、当技術分野で周知である。それらは、特に、Fiberglass and Glass Technology,Wallenberger,Frederick T.;Bingham,Paul A.(Eds.),2010,XIV,chapter5,pages 197-225に記載されている。R、S及びTガラス繊維は、ケイ素、アルミニウム及びマグネシウムの酸化物から本質的に構成される。特に、これらのガラス繊維は、典型的には62~75重量%のSiO、16~28重量%のAl及び5~14重量%のMgOを含む。一方、R、S及びTガラス繊維は、10重量%未満のCaOを含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、ガラス繊維は、高弾性ガラス繊維である。高弾性率ガラス繊維は、ASTM D2343に従って測定される、少なくとも76、好ましくは少なくとも78、より好ましくは少なくとも80、最も好ましくは少なくとも82GPaの弾性率を有する。高弾性ガラス繊維の例には、これらに限定されないが、S、R及びTガラス繊維が含まれる。例えば、市販の高弾性ガラス繊維は、それぞれTaishan及びAGYのS-1及びS-2ガラス繊維である。
【0096】
いくつかの実施形態では、ガラス繊維は、低Dガラス繊維である。低Dガラス繊維の誘電率は、1MHz、600MHz、1GHz及び2.4GHzの周波数で4.0~5.5、4.0~5.4、4.0~5.3、4.0~5.2、4.0~5.1又は4.0~5.0の範囲である。低Dガラス繊維は、低D(「低D/Dガラス繊維」)を有することもできる。このようなガラス繊維は、1MHz、1GHz、600MHz及び2.4GHzの周波数で0.0005~0.001のDを有する。ガラス繊維のD及びDは、ASTM D150(1.0MHz)及びASTM D2520(600MHz、1.0Ghz及び2.4GHz)に従って測定することができる。いくつかの実施形態では、ガラス繊維は、高弾性且つ低Dのガラス繊維である。
【0097】
ガラス繊維のモルフォロジーは、特に限定されない。ガラス繊維は、円形の断面(「円形のガラス繊維」)又は非円形の断面(「平坦なガラス繊維」)を有することができる。断面は、ガラス繊維の長さに垂直な平面で取られる。非円形断面は、断面の最長寸法に対応する主寸法と、ガラス繊維の主寸法と長さの両方に垂直な副寸法を有する。非円形横断面は、これらに限定されないが、卵形、楕円形又は矩形であり得る。
【0098】
組成物(C)が平坦なガラス繊維を含むいくつかの実施形態では、非円形断面の主寸法は、好ましくは少なくとも15μm、より好ましくは少なくとも20μm、更により好ましくは少なくとも22μm、最も好ましくは少なくとも25μm、好ましくは多くとも40μm、より好ましくは多くとも35μm、更により好ましくは多くとも32μm、最も好ましくは多くとも30μmである。いくつかの実施形態では、非円形断面の主寸法は、15~35μm、好ましくは20~30μm、より好ましくは25~29μmの範囲である。
【0099】
組成物(C)が平坦なガラス繊維を含むいくつかの実施形態では、非円形断面の副寸法は、好ましくは少なくとも4μm、より好ましくは少なくとも5μm、更により好ましくは少なくとも6μm、最も好ましくは少なくとも7μm、好ましくは多くとも25μm、より好ましくは多くとも20μm、更により好ましくは多くとも17μm、最も好ましくは多くとも15μmである。いくつかの実施形態では、非円形断面の副寸法は、5~20、好ましくは5~15μm、より好ましくは7~11μmの範囲である。
【0100】
組成物(C)が平坦なガラス繊維を含むいくつかの実施形態では、前述の平坦なガラス繊維は、好ましくは少なくとも2、より好ましくは少なくとも2.2、更により好ましくは少なくとも2.4、最も好ましくは少なくとも3、好ましくは多くとも8、より好ましくは多くとも6、更により好ましくは多くとも4のアスペクト比を有する。いくつかの実施形態では、前述の平坦なガラス繊維は、2~6、好ましくは2.2~4の範囲のアスペクト比を有する。アスペクト比は、平坦なガラス繊維の断面の主寸法の同じ断面の副寸法に対する比として定義される。アスペクト比は、ISO 1888に従って測定することができる。
【0101】
組成物(C)が円形のガラス繊維を含むいくつかの実施形態では、前述の円形のガラス繊維は、好ましくは2未満、より好ましくは1.5未満、更により好ましくは1.2未満、更により好ましくは1.1未満、最も好ましくは1.05未満のアスペクト比を有する。当然のことながら、当業者であれば、ガラス繊維のモルフォロジー(例えば、円形又は平坦)に関わらず、定義により、アスペクト比が1未満になり得ないことを理解するであろう。
【0102】
いくつかの実施形態では、前述の組成物(C)は、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、又は少なくとも30重量%の濃度でガラス繊維を含む。これに加えて又はこの代わりに、いくつかの実施形態では、前述の組成物(C)は、組成物(C)の総重量に対して多くとも45重量%、又は多くとも40重量%の濃度でガラス繊維を含む。いくつかの実施形態では、ガラス繊維の濃度は、組成物(C)の総重量に対して10重量%~45重量%、10重量%~40重量%、15重量%~45重量%、15重量%~40重量%、20重量%~45重量%、20重量%~40重量%、25重量%~45重量%、25重量%~40重量%、30重量%~45重量%、30重量%~40重量%である。
【0103】
中空ガラスビーズ
中空ガラスビーズ(中空ガラスの微小球又は気泡としても知られている)はよく知られており、特に、Plastics Additives Handbook,Hanser,4th edition、pages 537-538に記載されている。
【0104】
いくつかの実施形態では、組成物(C)に含まれる中空ガラスビーズは、少なくとも16,000psi、少なくとも18,000psi、少なくとも20,000psi、又は少なくとも30,000psiの破砕強度を有する。破砕強度は、ASTM D3102-72に従って測定することができる。好ましくは、中空ガラスビーズは、約28,000psiの破砕強度を有する。好ましくは、中空ガラスビーズは、3M Specialty Materials Co.から入手可能なiM30Kガラス気泡(glass bubble)である。
【0105】
いくつかの実施形態では、組成物(C)に含まれる中空ガラスビーズは、5~50μm、10~40μm、15~30μm、又は20~25μmの平均直径を有する。好ましくは、中空ガラスビーズは、約18μmの平均直径を有する。平均直径は、顕微鏡法、好ましくは走査型電子顕微鏡法(SEM)によって測定することができる。
【0106】
いくつかの実施形態では、組成物(C)に含まれる中空ガラスビーズは、0.2~1.5g/cm、0.3~1.4g/cm、0.4~1.3g/cm、0.5~1.2g/cm、0.6~1.1g/cm、0.7~1.0g/cm、又は0.8~0.9g/cmの密度を有する。好ましくは、前述の中空ガラスビーズは、約0.65g/cmの密度を有する。密度は、ASTM D2840-69に従って測定することができる。
【0107】
いくつかの実施形態では、組成物(C)は、組成物(C)の総重量に対して少なくとも10重量%、又は少なくとも12重量%の濃度で中空ガラスビーズを含む。これに加えて又はこの代わりに、いくつかの実施形態では、組成物(C)は、組成物(C)の総重量に対して多くとも25重量%、多くとも22重量%、又は多くとも20重量%の濃度で中空ガラスビーズを含む。いくつかの実施形態では、中空ガラスビーズの濃度は、組成物(C)の総重量に対して10重量%~25重量%、10重量%~22重量%、10重量%~20重量%、12重量%~25重量%、12重量%~22重量%、12重量%~20重量%である。
【0108】
任意選択の添加剤
いくつかの実施形態では、本発明による組成物(C)は、紫外線(「UV」)安定剤、熱安定剤、顔料、染料、難燃剤、耐衝撃性改良剤、潤滑剤、及びこれらの1つ以上の任意の組み合わせからなる群から選択される添加剤を含む。
【0109】
組成物(C)が任意選択の添加剤を含むいくつかの実施形態では、添加剤の総濃度は、15重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、1重量%以下、0.5重量%以下、0.4重量%以下、0.3重量%以下、0.2重量%以下、又は0.1重量%以下である。
【0110】
方法
本発明による組成物(C)は、当技術分野でよく知られている方法を使用して作製することができる。
【0111】
例えば、一実施形態では、組成物(C)は、熱可塑性ポリマー、ガラス繊維、中空ガラスビーズ、及び任意の任意選択の添加剤を溶融ブレンドすることによって作製される。組成物(C)の成分を組み合わせるために、任意の適切な溶融ブレンド方法を使用することができる。
【0112】
例えば、一実施形態では、組成物(C)の全ての成分(即ち、熱可塑性ポリマー、ガラス繊維、中空ガラスビーズ、及び任意の任意選択の添加剤)が、一軸押出機又は二軸押出機、攪拌機、一軸又は二軸ニーダー、或いはバンバリーミキサーなどの溶融ミキサーに供給される。成分は、全て一度に溶融ミキサーに添加され得る、又はバッチで徐々に添加され得る。前述の成分がバッチで徐々に添加される場合、成分の一部が最初に添加され、次いで成分の残りの部分と溶融混合され、その後、適切に混合された組成物が得られるまで添加される。
【0113】
ガラス繊維が長い物理的形状(例えば、長いガラス繊維)を示す場合、補強された組成物を調製するために延伸押出し成形が用いられ得る。
【0114】
携帯電子機器
その驚くべき改善された誘電性能及び良好な機械的性能のため、上記のポリマー組成物(C)は、望ましくは、携帯電子機器部品に組み込まれ得る。
【0115】
用語「携帯電子機器」は、便利に持ち運ばれ、様々な場所で使用されるように設計された電子機器を意味することが意図される。携帯電子機器の代表的な例は、携帯電子電話、個人用携帯情報端末、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、ラジオ、カメラ及びカメラ付属品、時計、計算器、音楽プレーヤー、グローバルポジショニングシステム受信機、携帯ゲーム機、ハードドライブ並びに他の電子記憶装置からなる群から選択され得る。好ましい携帯電子機器には、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、携帯電子電話及び時計が含まれる。
【0116】
本明細書において対象とする携帯電子機器の部品には、これらに限定されないが、取付け部品、スナップ嵌め部品、相互可動式部品、機能性要素、作動要素、トラッキング要素、調整要素、キャリア要素、フレーム要素、スイッチ、コネクタ、ケーブル、ハウジング、及び例えばスピーカー部品などの、携帯電子機器で使用されるようなハウジング以外の任意の他の構造部品が含まれる。前述の携帯電子機器の部品は、とりわけ、射出成形、押出し成形又は他の成形技術によって作製することができる。
【0117】
「携帯電子機器のハウジング」は、携帯電子機器の裏面カバー、前面カバー、アンテナハウジング、フレーム及び/又は骨格の1つ以上を指す。ハウジングは、単一の物品であり得る、又は2つ以上の部品を含み得る。「骨格」は、機器の他の部品、例えば電子機器、マイクロプロセッサ、スクリーン、キーボード及びキーパッド、アンテナ、バッテリーソケットなどが取り付けられる構造部品を指す。骨格は、携帯電子機器の外部から見えない又は部分的に見えるに過ぎない内部部品であり得る。ハウジングは、衝撃、並びに環境作用剤(液体、ちり等など)による汚染及び/又は損傷からの機器の内部部品の保護を提供し得る。カバーなどのハウジング部品は、スクリーン及び/又はアンテナなど、機器の外部に露出している特定の部品に対する実質的又は主要な構造支持と、その特定の部品の衝撃に対する保護とを提供することもできる。
【0118】
好ましい実施形態では、携帯電子機器のハウジングは、携帯電話ハウジング、アンテナハウジング、タブレットハウジング、ラップトップコンピュータハウジング、タブレットコンピュータハウジング又は時計ハウジングからなる群から選択される。
【0119】
携帯電子機器部品は、任意の適切な溶融加工方法を用いてポリマー組成物から作製することができる。例えば、携帯電子機器部品は、ポリマー組成物の射出成形又は押出し成形によって作製することができる。射出成型が好ましい方法である。
【0120】
本発明はこれから以下の実施例に関連して説明されるが、その目的は例示的であるにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0121】
実験の部
材料
Radipol(登録商標)DC40は、Radiciから市販されているPA6,10(脂肪族ポリアミドポリマー)である。
【0122】
CS(HL)301HPは、Chongqing Polycomp International Corp.から市販されている低D/Dガラス繊維である。
【0123】
iM160K及びiM30kは、3Mから市販されている、それぞれ16,000psi及び28,000psiの破砕強度を有する中空ガラスビーズである。
【0124】
ステアリン酸カルシウムは、BASFから市販されている潤滑剤である。
【0125】
Irganox(登録商標)1098は、BASFから市販されている熱安定剤である。
【0126】
方法
配合
Radipol(登録商標)DC40、CS(HL)301HP、iM16K又はiM30K、ステアリン酸カルシウム、及びIrganox(登録商標)を含む混合物を、Coperion(登録商標)ZSK-26共回転二軸押出機(L/D比48:1、200rpm、13~18kg/時間、及びバレル温度設定値280℃、及びダイ温度設定値245℃で)を使用して以下の表1に設定された量で溶融ブレンドし、続いてASTM D3641に従って、240℃~260℃の溶融温度及び90℃~120℃の成形温度で成形し、10個の試験片、即ち、CE1、E2、E3、CE4~CE6、E7、CE8、E9、CE10を形成した。
【0127】
試験
及びDは、1MHzでASTM D150に従って測定した。D及びDの測定は、直径50.8mm、厚さ4.0mmの寸法の射出成形されたディスクで行った。
【0128】
引張り弾性率、引張り強度、及び引張り歪みは、ISO527-2に従って、5つの射出成形されたISO引張り棒(長さ80±2mm、幅10±0.2mm、厚さ4±0.2mm)において測定して、試験速度1mm/分を使用し引張り弾性率を測定し、その後、試験速度5mm/分を使用し引張り強度と引張り歪みを測定した。
【0129】
ノッチ付きアイゾット衝撃強度は、ISO180に従って10個の射出成形されたISO棒(長さ80±2mm、幅10±0.2mm、厚さ4±0.2mm)において測定した。
【0130】
ノッチなしアイゾット衝撃強度は、ISO180に従って10個の射出成形されたISO棒(長さ80±2mm、幅10±0.2mm、厚さ4±0.2mm)において測定した。
【0131】
結果
表1は、試験片CE1、E2、E3、CE4~CE6、E7、CE8、E9、CE10に含まれる成分とその量を示している。
【0132】
表1は、試験片におけるガラス繊維及び中空ガラスビーズの総濃度に対する中空ガラスビーズの濃度の比(「中空ガラスビーズ濃度比」)も示しており、これは以下のように表される:
【数2】
(式中、WGBとWGFは、それぞれ、試験片における中空ガラスビーズの重量パーセントとガラス繊維の重量パーセントである)。
【0133】
試験片CE1、E2、E3、CE4、CE5には、試験片の総重量に基づいて、ガラス繊維及び中空ガラスビーズの合計量が50重量%含まれている。
【0134】
試験片CE6、E7、CE8には、試験片の総重量に基づいて、ガラス繊維及び中空ガラスビーズの合計量が40重量%含まれている。
【0135】
試験片E2、E3、CE4、CE5、E7、CE8には、中空ガラスビーズとしてiM30Kが含まれている。
【0136】
試験片E9、CE10には、中空ガラスビーズとしてiM16Kが含まれている。
【0137】
本明細書で使用される場合、「E」でラベル付けされた試験片は、本発明による実施例であり、「CE」でラベル付けされた試験片は、反例(counterexample)である。
【0138】
【表1】
【0139】
表2は、試験片CE1、E2~E4、CE5~CE7、E8、E9、CE10、E11、E12、CE13の組成物(C)において実施した誘電性能試験と機械的性能試験の結果を示している。
【0140】
【表2】
【0141】
表2から明らかなように、本発明の対象である試験片E2、E3、E7、及びE9は、中空ガラスビーズを含まない試験片CE1及びCE6と比較して、並びにガラス繊維及び中空ガラスビーズの合計濃度に対する中空ガラスビーズの濃度の比がより高い試験片CE4、CE5、CE8及びCE10と比較して、誘電特性(即ち、低いD及びD)と機械的特性との望ましい組み合わせを提供する。
【0142】
試験片CE1及びCE6(中空ガラスビーズを含まない)は、高い引張り弾性率、引張り強度、引張り歪み、ノッチ付き及びノッチなし衝撃強度に関して優れた機械的特性を有するが、不十分な誘電特性を示す(即ち、高いD及びD)。
【0143】
試験片CE4、CE5、CE8、及びCE10(中空ガラスビーズの濃度比が高い)は、D及びDが低いという点で十分な誘電特性を有するが、不十分な機械的特性を有する。
【0144】
試験片E2、E3、E7及びE9(本発明の対象である)は、低いD及びDを示し、十分な機械的特性を示すことから、特性の適切なバランスに効果的に対処する。
【0145】
引張り弾性率、引張り強度、ノッチ付き及びノッチなし衝撃強度は、中空ガラスビーズの濃度比を上げると直線的に減少するが、引張り歪みは、中空ガラスビーズの濃度比を0.2(試験片E2)から0.4(試験片E3)に上げると、予期せずプラトー(plateau)のような挙動を示す。他方、引張り歪みは、中空ガラスビーズ濃度が特許請求された比を超えて増加するにつれて直線的に減少する。
【0146】
更なる発明の概念
発明の概念1.ポリマー組成物[組成物(C)]であって、
-ポリ(アリーレンスルフィド)(PAS)、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)、ポリアミド(PA)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される熱可塑性ポリマーと、
-ガラス繊維と、
-中空ガラスビーズと、を含むポリマー組成物[組成物(C)]であって、
ガラス繊維及び中空ガラスビーズの総濃度に対する中空ガラスビーズの濃度の比は、0.2~0.6の範囲である、ポリマー組成物[組成物(C)]。
【0147】
発明の概念2.ガラス繊維及び中空ガラスビーズの総濃度に対する中空ガラスビーズの濃度の比は、0.2~0.5、0.2~0.45、0.2~0.40、0.25~0.6、0.25~0.5、0.25~0.45、0.25~0.40の範囲である、発明の概念(1)の組成物(C)。
【0148】
発明の概念3.熱可塑性ポリマーは、脂肪族、脂環式及び半芳香族ポリアミドからなる群から選択され、熱可塑性ポリマーは、好ましくは脂肪族ポリアミドである、発明の概念(1)又は(2)の組成物(C)。
【0149】
発明の概念4.ポリアミドは、以下の式(IV)で表される繰り返し単位RPAを含む、発明の概念(3)の組成物(C):
【化13】
(式中:
-R~Rは、各位置において、独立して、水素、アルキル、アリール、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、及び4級アンモニウムからなる群から選択され、
-pは、4~10の整数であり、
-p’は、4~12の整数である)。
【0150】
発明の概念5.ポリアミドは、PA4,6、PA5,6、PA5,10、PA6,10、PA10,10、及びPA10,12からなる群から選択される、発明の概念(4)の組成物(C)。
【0151】
発明の概念6.ガラス繊維は、1MHzの周波数で4.0~5.5の誘電率を有する、前述の発明の概念のいずれかの組成物(C)。
【0152】
発明の概念7.中空ガラスビーズは、少なくとも16,000psiの破砕強度を有する、前述の発明の概念のいずれかの組成物(C)。
【0153】
発明の概念8.組成物(C)の総重量に基づいて、10~35重量%、好ましくは10~30重量%、より好ましくは10~25重量%、更に好ましくは10~20重量%の濃度で中空ガラスビーズを含む、前述の発明の概念のいずれかの組成物(C)。
【0154】
発明の概念9.組成物(C)の総重量に対して10重量%~45重量%、10重量%~40重量%、15重量%~45重量%、15重量%~40重量%、20重量%~45重量%、20重量%~40重量%、25重量%~45重量%、25重量%~40重量%、30重量%~45重量%、30重量%~40重量%の濃度でガラス繊維を含む、前述の発明の概念のいずれかの組成物(C)。
【0155】
発明の概念10.組成物(C)の総重量に対して30重量%~80重量%、30重量%~70重量%、30重量%~65重量%、30重量%~60重量%、40重量%~80重量%、40重量%~70重量%、40重量%~65重量%、40重量%~60重量%、45重量%~80重量。%、45重量%~70重量%、45重量%~65重量%、45重量%~60重量%、50重量%~80重量%、50重量%~70重量%、50重量%~65重量%、又は50重量%~60重量%の濃度で熱可塑性ポリマーを含む、前述の発明の概念のいずれかの組成物(C)。
【0156】
発明の概念11.組成物は、少なくとも2.5%、好ましくは少なくとも2.6%、より好ましくは少なくとも2.8%の引張り歪みを有する、前述の発明の概念のいずれかの組成物(C)。
【0157】
発明の概念12.組成物は、少なくとも80MPa、好ましくは少なくとも85MPa、より好ましくは少なくとも90MPaの引張り強度を有する、前述の発明の概念のいずれかの組成物(C)。
【0158】
発明の概念13.組成物は、少なくとも6.5GPa、好ましくは少なくとも7.0GPa、より好ましくは少なくとも7.8GPaの引張り弾性率を有する、前述の発明の概念のいずれかの組成物(C)。
【0159】
発明の概念14.組成物は、1MHzで3.3以下、好ましくは3.2以下、より好ましくは3.1以下の誘電率、及び/又は1MHzで0.015以下、好ましくは0.012以下、より好ましくは0.010以下の誘電正接を有する、前述の発明の概念のいずれかの組成物(C)。
【0160】
発明の概念15.携帯電子機器部品は、好ましくは、携帯電子機器ハウジングである、前述の請求項のいずれかによる組成物(C)を含む携帯電子機器部品。
【0161】
上記の実施形態は、例示を意図するものであり、限定するものではない。追加の実施形態は、発明の概念内である。加えて、本発明は、特定の実施形態に関連して記載されているが、当業者は、変更が本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく形式上及び詳細に行われ得ることを認めるであろう。上記の公文書の参照によるいかなる援用も、本明細書での明白な開示に反する主題は援用されないように限定される。
【国際調査報告】