(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-28
(54)【発明の名称】骨切りガイドの位置補正方法および整形外科手術システム
(51)【国際特許分類】
A61B 34/20 20160101AFI20221118BHJP
A61B 34/30 20160101ALI20221118BHJP
A61B 17/15 20060101ALI20221118BHJP
A61B 90/90 20160101ALI20221118BHJP
【FI】
A61B34/20
A61B34/30
A61B17/15
A61B90/90
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519982
(86)(22)【出願日】2020-06-09
(85)【翻訳文提出日】2022-05-30
(86)【国際出願番号】 CN2020095217
(87)【国際公開番号】W WO2021063023
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】201910940234.7
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522124758
【氏名又は名称】蘇州微創暢行機器人有限公司
【氏名又は名称原語表記】MICROPORT NAVIBOT (SUZHOU) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Plant 3,No.151 Fengli Street, SIP Suzhou, Jiangsu 215000, China
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】孫 峰
(72)【発明者】
【氏名】胡 方遒
(72)【発明者】
【氏名】何 超
(72)【発明者】
【氏名】李 涛
(72)【発明者】
【氏名】劉 鵬飛
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL12
4C160LL28
(57)【要約】
骨切りガイド4またはロボットアーム2に取り付けられたガイド基準マーカー3が骨切りガイド4の位置を追跡し、ガイド基準マーカー3の位置情報を生成する骨切りガイドの位置補正方法および整形外科手術システムを提供する。ロボットアーム2は、ガイド基準マーカー3の現在位置と所望位置に基づいて移動するように制御され、ガイド基準マーカー3を所望位置に移動させ、骨切りガイド4の位置決めを実現する。この方法によれば、ロボットアーム2の絶対位置精度を考慮する必要性や医者の経験に頼る必要性がなくなり、骨切りガイド4をより正確に配置することができ、結果として骨切りガイド4の位置精度を向上できる。骨切りガイド4は、複数のガイド特徴を有しており、複数の骨切りガイドモードを提供することが可能である。したがって、1つの骨切りガイド4が、様々な骨切り誘導および穿孔作業に対応でき、手術中に1つの骨切りガイド4から他の骨切りガイド4に頻繁に切り替える必要性を無くすことができる。これにより、手術時間を大幅に短縮でき、手術効率を向上できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨切りガイドまたはロボットアームに取り付けられたガイド基準マーカーの現在位置および所望位置に基づいて、ロボットアームの移動を制御することにより、ガイド基準マーカーが所望位置に達するように、骨切りガイドおよびガイド基準マーカーを移動するように駆動する制御ステップを含み、
前記ガイド基準マーカーの位置により前記骨切りガイドの位置が特徴づけられている、骨切りガイドの位置補正方法。
【請求項2】
前記ロボットアームの移動を制御する制御ステップの前に、骨切りガイドおよび/またはガイド基準マーカーが変形したか否かを検証する検証ステップをさらに含み、前記検証ステップは、
前記骨切りガイドに取り付けられた前記検証用基準マーカーの工場から納入する前の前記ガイド用基準マーカーに対する初期位置情報と、使用時の前記ガイド用基準マーカーに対する現在位置情報とに基づいて、前記検証用基準マーカーの初期位置情報と前記現在位置情報とが一致するか否かを判断する判断ステップを含み、
一致する場合、前記骨切りガイドおよび/または前記ガイド基準マーカーが変形していないと判定し、前記骨切りガイドまたは前記ロボットアームに取り付けられた前記ガイド基準マーカーの現在位置および所望位置に基づいて前記ロボットアームが移動するように制御し、
一致しない場合、骨切りガイドおよび/またはガイド基準マーカーが変形したと判断し、ガイド基準マーカーと骨切りガイドとの相対位置を補正してから、骨切りガイドまたはロボットアームに取り付けられたガイド基準マーカーの現在位置および所望位置に基づいてロボットアームが移動するように制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の骨切りガイドの位置補正方法。
【請求項3】
前記補正は、
前記骨切りガイドに取り付けられた少なくとも2つの補正用基準マーカーの、前記ガイド基準マーカーに対する位置情報を取得するステップと、
前記ガイド基準マーカーに対する前記少なくとも2つの補正用基準マーカーの位置情報に基づいて、前記ガイド基準マーカーに対する前記骨切りガイドの現在位置に関する情報を取得し、取得した現在位置に関する情報を用いて前記ガイド基準マーカーに対する前記骨切りガイドの位置を更新するステップと、
を含む、ことを特徴とする請求項2に記載の骨切りガイドの位置補正方法。
【請求項4】
ガイド基準マーカーに対する2つの補正用基準マーカーの位置情報は、それぞれT
1およびT
2と表され、T
1はガイド基準マーカーの座標系における2つの補正用基準マーカーの一方の位置を表し、T
2はガイド基準マーカーの座標系における2つの補正用基準マーカーの他方の位置を表し、
前記ガイド基準マーカーに対する前記骨切りガイドの現在位置に関する情報の取得することは、
前記ガイド基準マーカーの座標系における前記骨切りガイドブロックの中心点の位置T
0および前記ガイド基準マーカーの座標系における前記骨切りガイドブロックの表面の位置T
3を、前記少なくとも二つの補正用基準マーカーの座標系における前記T
1およびT
2の位置情報に基づいて取得することと、
前記ガイド基準マーカーの座標系における骨切りガイドブロックの中心点の位置T
0および前記ガイド基準マーカーの座標系における骨切りガイドブロックの表面の位置T
3に基づいて、前記ガイド基準マーカーに対する前記骨切りガイドの位置および姿勢を取得することと、
を含む、ことを特徴とする請求項3に記載の骨切りガイドの位置補正方法。
【請求項5】
前記制御ステップの前に、
現在位置とガイド基準マーカーの所望位置から、ガイド基準マーカーの所望移動経路を確定するステップを行い、
前記制御ステップでは、前記ガイド基準マーカーの現在位置に基づいて、前記ガイド基準マーカーが所望移動経路にしたがって所望位置まで移動するように前記ロボットアームを制御すること、
を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の骨切りガイドの位置補正方法。
【請求項6】
前記ガイド基準マーカーの所望位置が、前記ガイド基準マーカーと前記骨切りガイドとの間の位置および姿勢相関関係と、前記骨切りガイドの目標位置との両方に基づいて取得される、ことを特徴とする請求項5に記載の骨切りガイドの位置補正方法。
【請求項7】
前記ガイド基準マーカーと前記骨切りガイドとの間の位置および方向の相関関係が、前記骨切りガイド上の複数のガイド特徴と前記ガイド基準マーカーとの間の位置および姿勢の相関関係を含んでいる、ことを特徴とする請求項6に記載の骨切りガイドの位置補正方法。
【請求項8】
前記ガイド特徴の各々と前記ガイド基準マーカーとの間の位置および方向の相関関係を取得することは、
前記ガイド基準マーカー上の基準マーカーボール間の相対的な位置関係を決定し、前記相対的な位置関係に基づいて前記ガイド基準マーカーの座標系を確立するステップと、
ガイド基準マーカーの座標系における骨切りガイドブロックの中心点の位置情報を決定するステップと、
前記骨切りガイドブロックの中心点に対する前記ガイド特徴の位置情報と、前記ガイド基準マーカーの座標系における前記骨切りガイドブロックの中心点の位置情報の両方に基づいて、前記ガイドフィデューシャルの座標系における位置および姿勢を決定するステップと、
を含む、ことを特徴とする請求項7に記載の骨切りガイドの位置補正方法。
【請求項9】
プロセッサによって実行されると、請求項1から8のいずれか一項に記載の骨切りガイドの位置補正方法を実行する命令を格納したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項10】
制御装置と、ナビゲーション装置と、ロボットアームと、骨切りガイドとを備え、骨切りガイドは、ロボットアームの一端に取り付けられており、ロボットアームは、骨切りガイドの位置および姿勢を調整するように構成されている、整形外科手術システムであって、
ナビゲーション装置が、トラッカーとガイド基準マーカーとを含み、ガイド基準マーカーが、骨切りガイドまたはロボットアームに取り付けられ、トラッカーが、ガイド基準マーカーの現在位置を追跡し、現在位置に関する情報を生成するように構成され、ガイド基準マーカーの位置が、骨切りガイドの位置を特徴付けるように構成され、
前記制御装置は、前記トラッカーからフィードバックされた前記ガイド基準マーカーの現在位置に関する情報および前記ガイド基準マーカーの所望位置に関する情報の両方に基づいて前記ロボットアームを動かすように制御し、それによって前記ガイド基準マーカーが前記所望位置に達するように前記骨切りガイドおよび前記ガイド基準マーカーを動かすように構成されている、
整形外科手術システム。
【請求項11】
前記骨切りガイドおよび/または前記ガイド基準マーカーが変形をしたか否かを確認するように構成された検証装置をさらに備え、
前記骨切りガイドは、骨切りガイドを提供するための複数のガイド特徴をその上に備える骨切りガイドブロックを含み、前記検証装置は、前記骨切りガイドブロックに着脱可能に取り付けられるように構成された少なくとも1つの検証用基準マーカーを含み、
前記トラッカーは、工場出荷前に前記ガイド基準マーカーに対する前記検証用基準マーカーの初期位置情報を記録し、手術使用の毎に前記ガイド基準マーカーに対する前記検証用基準マーカーの現在位置情報を記録するように構成され、
前記制御装置は、前記検証用基準マーカーの初期位置情報と前記検証用基準マーカーの現在位置情報とが一致するか否かを判定し、一致する場合には前記骨切りガイドおよび/または前記ガイド基準マーカーが変形していないと判定し、一致しない場合には前記骨切りガイドおよび/または前記ガイド基準マーカーが変形していると判定するよう構成される、
ことを特徴とする請求項10に記載の整形外科手術システム。
【請求項12】
前記検証装置が、前記骨切りガイドおよび/または前記ガイド基準マーカーが変形をしたと判断したときに、前記ガイド基準マーカーに対する前記骨切りガイドの位置を補正する補正装置をさらに備え、前記補正装置は、前記骨切りガイドブロックに着脱可能に取り付けられるように構成された少なくとも二つの補正用基準マーカーのそれぞれからなり、
前記トラッカーは、前記ガイド基準マーカーに対する前記少なくとも2つの補正用基準マーカーの位置情報を記録するように構成され、
前記制御装置が、前記ガイド基準マーカーに対する前記少なくとも2つの補正用基準マーカーの位置情報に基づいて、前記ガイド基準マーカーに対する前記骨切りガイドの現在位置に関する情報を取得し、前記現在位置に関する取得した情報を用いて前記ガイド基準マーカーに対する前記骨切りガイドの位置を更新するように構成されている、
ことを特徴とする請求項11に記載の整形外科手術システム。
【請求項13】
ガイド基準マーカーに対する2つの補正用基準マーカーの位置情報は、それぞれT
1およびT
2と表され、T
1はガイド基準マーカーの座標系における2つの補正用基準マーカーの一方の位置を表し、T
2はガイド基準マーカーの座標系における2つの補正用基準マーカーの他方の位置を表し、
前記制御装置は、前記ガイド基準マーカーの座標系における前記骨切りガイドブロックの中心点の位置T
0および前記ガイド基準マーカーの座標系における前記骨切りガイドブロックの表面の位置T
3を、前記少なくとも二つの補正用基準マーカーの座標系における前記T
1およびT
2の位置情報に基づいて取得するように構成され、前記ガイド基準マーカーの座標系における骨切りガイドブロックの中心点の位置T
0および前記ガイド基準マーカーの座標系における骨切りガイドブロックの表面の位置T
3に基づいて、前記ガイド基準マーカーに対する前記骨切りガイドの位置および姿勢を取得することと
を含む、ことを特徴とする請求項12に記載の整形外科手術システム。
【請求項14】
前記ナビゲーション装置は、静止状態に維持されるベース基準マーカーをさらに備え、前記ガイド基準マーカーの位置は、前記ベース基準マーカーの位置と相対的である、ことを特徴とする請求項10に記載の整形外科手術システム。
【請求項15】
前記制御装置が、複数の位置決め点によって定義される所望移動経路を提供し、前記ガイド基準マーカーが前記所望移動経路に沿って前記所望位置に到達するように前記ロボットアームを制御するように構成されている、ことを特徴とする請求項10に記載の整形外科手術システム。
【請求項16】
前記ガイド基準マーカーと前記骨切りガイドとの間の位置および姿勢の相関関係を記憶するための記憶装置をさらに備える、ことを特徴とする請求項10に記載の整形外科手術システム。
【請求項17】
前記骨切りガイドは、複数の骨切り誘導モードを提供するための複数のガイド特徴をその上に備える骨切りガイドブロックを含み、前記ガイド基準マーカーと前記骨切りガイドとの間の位置および姿勢の相関関係が、前記ガイド特徴と前記ガイド基準マーカーとの間の位置および姿勢の相関関係を含む、ことを特徴とする請求項16に記載の整形外科手術システム。
【請求項18】
前記ガイド特徴の各々と前記ガイド基準マーカーとの間の位置および姿勢の相関関係を取得することは、
前記ガイド基準マーカー上の基準マーカーボール間の相対的な位置関係を決定し、前記相対的な位置関係に基づいて前記ガイド基準マーカーの座標系を確立するステップと、
ガイド基準マーカーの座標系における骨切りガイドブロックの中心点の位置情報を決定するステップと、
前記骨切りガイドブロックの中心点に対する前記ガイド特徴の位置情報と、前記ガイド基準マーカーの座標系における前記骨切りガイドブロックの中心点の位置情報の両方に基づいて、前記該と特徴の前記ガイド基準マーカーの座標系における位置および姿勢を決定するステップと、
を含む、ことを特徴とする請求項17に記載の整形外科手術システム。
【請求項19】
骨切りガイドブロックは、それぞれの検証用基準マーカーが取り付けられる少なくとも1つの検証用ホールをその中に備え、それぞれの検証用基準マーカーが、骨切りガイドブロックの表面と平行な段差面を有する、ことを特徴とする請求項11に記載の整形外科手術システム。
【請求項20】
前記骨切りガイドブロックは、前記ガイド特徴が設けられた上面を有し、前記検証用ホールは、前記上面に垂直に設けられ、前記段差面は、前記上面と一致する、ことを特徴とする請求項19に記載の整形外科手術システム。
【請求項21】
前記検証用ホールの軸線が前記骨切りガイドブロックの対称面内に位置し、前記検証用ホールの端面、前記骨切りガイドブロックの上面および前記段差面が同一平面上にある、ことを特徴とする請求項20に記載の整形外科手術システム。
【請求項22】
前記検証用基準マーカーの前記ガイド基準マーカーに対する位置情報は、前記ガイド基準マーカーの座標系における前記検証用基準マーカーの前端点の位置および姿勢からなる、ことを特徴とする請求項11に記載の整形外科手術システム。
【請求項23】
前記ガイド基準マーカーの座標系における前記各補正用基準マーカーの位置は、
ガイド基準マーカーの座標系における補正用基準マーカーの前端点の位置および姿勢と、
前記ガイド基準マーカーの座標系における前記補正用基準マーカーの段差面の位置および姿勢と、を含み
前記段差面は、前記補正用基準マーカーの段差であり、前記骨切りガイドブロックの表面と平行である、
ことを特徴とする請求項13に記載の整形外科手術システム。
【請求項24】
前記骨切りガイドブロックには補正用ホールが設けられ、前記補正用ホールには2つの補正用基準マーカーがそれぞれ固定され、または2つの補正用基準マーカーが1つの検証用ホールと前記補正用ホールとのそれぞれに固定されている、ことを特徴とする請求項19に記載の整形外科手術システム。
【請求項25】
各補正用ホールは、骨切りガイドブロックの表面および各補正用基準マーカーの段差面の両方と共平面である端面を有する、ことを特徴とする請求項24に記載の整形外科手術システム。
【請求項26】
前記骨切りガイドは、骨切りガイドブロックおよび取り付けインターフェースを備え、前記取り付けインターフェースは、連結シャフトによって前記骨切りガイドブロックに連結され、前記骨切りガイドブロックは、骨切りガイドを提供するための複数のガイド特徴をその上に備え、前記取り付けインターフェースは、前記ロボットアームの端部に着脱可能に取り付けられる、ことを特徴とする請求項10に記載の整形外科手術システム。
【請求項27】
前記連結シャフトは、前記骨切りガイドブロックの回転軸が前記骨切りガイドブロックの回転軸からオフセットされるように、前記骨切りガイドブロックおよび前記取り付けインターフェースの両方に連結される偏心クランクである、ことを特徴とする請求項26に記載の整形外科手術システム。
【請求項28】
前記骨切りガイドは、ホルダをさらに備え、前記骨切りガイドブロック、前記偏心クランク、前記ホルダおよび前記取付インターフェースがこの順で順次に連結され、前記ホルダが、その中に基準マーカー取付孔を備えている、ことを特徴とする請求項27に記載の整形外科手術システム。
【請求項29】
前記骨切りガイドブロックは、前記偏心クランクに着脱自在に取り付けられている、ことを特徴とする請求項27に記載の整形外科手術システム。
【請求項30】
前記ガイド特徴は、前記骨切りガイドブロックの単一面上、または前記骨切りガイドブロックの軸線の周りの異なる面上に設けられた複数のガイド溝を含む、ことを特徴とする請求項26に記載の整形外科手術システム。
【請求項31】
ガイド溝は0°ガイド溝または45°ガイド溝である、ことを特徴とする請求項30に記載の整形外科手術システム。
【請求項32】
前記骨切りガイドは、互いに鏡像配置された2つの骨切りガイドブロックからなり、それぞれが、前記偏心クランクと着脱可能に接続するように構成された取り付けインターフェースをその上に備えている、ことを特徴とする請求項27に記載の整形外科手術システム。
【請求項33】
前記骨切りガイドは、その上に設けられ、互いに対向して配置された2つの取り付けインターフェースを有する1つの骨切りガイドブロックからなり、前記偏心クランクは、前記取り付けインターフェースの1つに選択的に着脱可能に接続される、ことを特徴とする請求項27に記載の整形外科手術システム。
【請求項34】
前記ロボットアームの端部に配置され、前記ロボットアームの接続ポートを覆う無菌バッグをさらに備え、前記接続ポートは、前記骨切りガイドに着脱可能に接続される、ことを特徴とする請求項10に記載の整形外科手術システム。
【請求項35】
前記無菌バッグは、その一端部に通孔が設けられている、ことを特徴とする請求項34に記載の整形外科手術システム。
【請求項36】
請求項10に記載の整形外科手術システムで使用するための骨切りガイドであって、
骨切りガイドは、骨切りガイドブロック、連結シャフトおよび取り付けインターフェースを備え、骨切りガイドブロックは、複数の骨切り誘導モードを提供するための複数のガイド特徴をその上に備え、連結シャフトの両端は、骨切りガイドブロックおよび取り付けインターフェースの両方に接続され、取り付けインターフェースは、ロボットアームの一端に着脱可能に連結するように構成されている、
ことを特徴とする請求項10に記載の整形外科手術システム。
【請求項37】
前記ガイド特徴は、ガイド溝およびガイドホールを含む、ことを特徴とする請求項36に記載の骨切りガイド。
【請求項38】
前記連結軸が偏心クランクである、ことを特徴とする請求項36に記載の骨切りガイド。
【請求項39】
前記骨切りガイドブロック、前記偏心クランク、前記ホルダおよび前記取り付けインターフェースがこの順で順次に連結され、前記ホルダがその中に基準マーカー取付ホールを備えるホルダをさらに備える、ことを特徴とする請求項36に記載の骨切りガイド。
【請求項40】
前記骨切りガイドブロックは、前記偏心クランクに着脱自在に取り付けられている、ことを特徴とする請求項38に記載の骨切りガイド。
【請求項41】
各ガイド溝は、骨切りガイドブロックの表面を通って延びる端部の開口部を有する、ことを特徴とする請求項37に記載の骨切りガイド。
【請求項42】
各ガイド溝がフレア形状である、ことを特徴とする請求項37に記載の骨切りガイド。
【請求項43】
前記骨切りガイドブロックの軸線を中心として異なる面に複数のガイド溝が配置されている、ことを特徴とする請求項37に記載の骨切りガイド。
【請求項44】
各ガイド溝が0°ガイド溝または45°ガイド溝である、ことを特徴とする請求項41~43のいずれか一項に記載の骨切りガイド。
【請求項45】
前記ガイド溝が、0°ガイド溝、45°ガイド溝および滑車切断ガイド溝のうちの少なくとも1つを含み、前記ガイドホールが、人工大腿骨装着用のガイドホール、左脛骨工具位置決め用のガイドホール、右脛骨工具位置決め用のガイドホールおよび骨切りガイド用固定ホールのうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項37に記載の骨切りガイド。
【請求項46】
前記ガイド溝は、2つの0°ガイド溝、2つの45°ガイド溝および2つの滑車切断ガイド溝を含む、ことを特徴とする請求項45に記載の骨切りガイド。
【請求項47】
前記骨切りガイドブロックが軸対称構造である、ことを特徴とする請求項36に記載の骨切りガイド。
【請求項48】
前記骨切りガイドブロックが、互いに対向して配置された2つの取り付けインターフェースをその上に備え、前記偏心クランクが、前記取り付けインターフェースのうちの1つに選択的に着脱可能に連結される、ことを特徴とする請求項40に記載の骨切りガイド。
【請求項49】
前記骨切りガイドブロックは、その中に検証用ホールが設けられている、ことを特徴とする請求項36に記載の骨切りガイド。
【請求項50】
前記骨切りガイドブロックは、その中にさらに補正用ホールを備えている、ことを特徴とする請求項49に記載の骨切りガイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット支援手術システムおよび方法の技術分野に関し、特に骨切りガイド(osteotomy guides)の位置補正方法、コンピュータ読み取り可能な記録媒体、整形外科手術システム(orthopedic surgery system)および骨切りガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
人工関節置換術においては、骨切り術の精度を出すために、人工関節を到着する前に、様々なロケーターやガイドなどを使用して骨切り術を行う必要がある。現在、人工膝関節置換術(TKR)における外科医の骨切りガイドの位置決めに役立つ多くの方法が提案されている。
【0003】
しかしながら、手術中に骨切りガイドを位置決めするための既存の装置/方法は、位置決め精度が不十分であるなどの問題を有する。そこで、骨切りガイドの位置決め精度をより高める方法や手術システムの開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、骨切りガイドの位置および姿勢をリアルタイムに追跡してフィードバックし、かつ、ロボットアームによって骨切りガイドの動きを制御することにより、骨切りガイドの位置決めを実現でき、骨切りガイドの位置決め精度を向上できる骨切りガイドの位置補正方法、コンピュータ読み取り可能な記録媒体、整形外科手術システムおよび骨切りガイドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第一態様に係る骨切りガイドの位置補正方法は、
骨切りガイドまたはロボットアームに取り付けられたガイド基準マーカーの現在位置および所望位置に基づいて、ロボットアームの移動を制御することにより、ガイド基準マーカーが所望位置に達するように、骨切りガイドおよびガイド基準マーカーを移動するように駆動する制御ステップを含み、
前記ガイド基準マーカーの位置により前記骨切りガイドの位置が特徴づけられている。
【0006】
さらに、前記ロボットアームの移動を制御する制御ステップの前に、骨切りガイドおよび/またはガイド基準マーカーが変形したか否かを検証する検証ステップをさらに含み、前記検証ステップは、
前記骨切りガイドに取り付けられた前記検証用基準マーカーの工場から納入する前の前記ガイド用基準マーカーに対する初期位置情報と、使用時の前記ガイド用基準マーカーに対する現在位置情報とに基づいて、前記検証用基準マーカーの初期位置情報と前記現在位置情報とが一致するか否かを判断する判断ステップを含み、
一致する場合、前記骨切りガイドおよび/または前記ガイド基準マーカーが変形していないと判定し、前記骨切りガイドまたは前記ロボットアームに取り付けられた前記ガイド基準マーカーの現在位置および所望位置に基づいて前記ロボットアームが移動するように制御し、
一致しない場合、骨切りガイドおよび/またはガイド基準マーカーが変形したと判断し、ガイド基準マーカーと骨切りガイドとの相対位置を補正してから、骨切りガイドまたはロボットアームに取り付けられたガイド基準マーカーの現在位置および所望位置に基づいてロボットアームが移動するように制御する。
【0007】
さらに、前記補正は、
前記骨切りガイドに取り付けられた少なくとも2つの補正用基準マーカーの、前記ガイド基準マーカーに対する位置情報を取得するステップと、
前記ガイド基準マーカーに対する前記少なくとも2つの補正用基準マーカーの位置情報に基づいて、前記ガイド基準マーカーに対する前記骨切りガイドの現在位置に関する情報を取得し、取得した現在位置に関する情報を用いて前記ガイド基準マーカーに対する前記骨切りガイドの位置を更新するステップと、
を含む。
【0008】
さらに、ガイド基準マーカーに対する2つの補正用基準マーカーの位置情報は、それぞれT1およびT2と表され、T1はガイド基準マーカーの座標系における2つの補正用基準マーカーの一方の位置を表し、T2はガイド基準マーカーの座標系における2つの補正用基準マーカーの他方の位置を表し、
前記ガイド基準マーカーに対する前記骨切りガイドの現在位置に関する情報の取得することは、
前記ガイド基準マーカーの座標系における前記骨切りガイドブロックの中心点の位置T0および前記ガイド基準マーカーの座標系における前記骨切りガイドブロックの表面の位置T3を、前記少なくとも二つの補正用基準マーカーの座標系における前記T1およびT2の位置情報に基づいて取得することと、
前記ガイド基準マーカーの座標系における骨切りガイドブロックの中心点の位置T0および前記ガイド基準マーカーの座標系における骨切りガイドブロックの表面の位置T3に基づいて、前記ガイド基準マーカーに対する前記骨切りガイドの位置および姿勢を取得することと、
を含む。
【0009】
さらに、前記制御ステップの前に、
現在位置とガイド基準マーカーの所望位置から、ガイド基準マーカーの所望移動経路を確定するステップを行い、
前記制御ステップでは、前記ガイド基準マーカーの現在位置に基づいて、前記ガイド基準マーカーが所望移動経路にしたがって所望位置まで移動するように前記ロボットアームを制御すること、
を含む。
【0010】
さらに、前記ガイド基準マーカーの所望位置が、前記ガイド基準マーカーと前記骨切りガイドとの間の位置および姿勢相関関係と、前記骨切りガイドの目標位置との両方に基づいて取得される。
【0011】
さらに、前記ガイド基準マーカーと前記骨切りガイドとの間の位置および方向の相関関係が、前記骨切りガイド上の複数のガイド特徴と前記ガイド基準マーカーとの間の位置および姿勢の相関関係を含んでいる。
【0012】
さらに、前記ガイド特徴の各々と前記ガイド基準マーカーとの間の位置および方向の相関関係を取得することは、
前記ガイド基準マーカー上の基準マーカーボール間の相対的な位置関係を決定し、前記相対的な位置関係に基づいて前記ガイド基準マーカーの座標系を確立するステップと、
ガイド基準マーカーの座標系における骨切りガイドブロックの中心点の位置情報を決定するステップと、
前記骨切りガイドブロックの中心点に対する前記ガイド特徴の位置情報と、前記ガイド基準マーカーの座標系における前記骨切りガイドブロックの中心点の位置情報の両方に基づいて、前記ガイドフィデューシャルの座標系における位置および姿勢を決定するステップと、
を含む。
【0013】
本発明の第二態様によれば、プロセッサによって実行されると、請求項1から8のいずれか一項に記載の骨切りガイドの位置補正方法を実行する命令を格納したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【0014】
本発明の第三態様に係る整形外科手術システムは、制御装置と、ナビゲーション装置と、ロボットアームと、骨切りガイドとを備え、骨切りガイドは、ロボットアームの一端に取り付けられており、ロボットアームは、骨切りガイドの位置および姿勢を調整するように構成され、
ナビゲーション装置が、トラッカーとガイド基準マーカーとを含み、ガイド基準マーカーが、骨切りガイドまたはロボットアームに取り付けられ、トラッカーが、ガイド基準マーカーの現在位置を追跡し、現在位置に関する情報を生成するように構成され、ガイド基準マーカーの位置が、骨切りガイドの位置を特徴付けるように構成され、
前記制御装置は、前記トラッカーからフィードバックされた前記ガイド基準マーカーの現在位置に関する情報および前記ガイド基準マーカーの所望位置に関する情報の両方に基づいて前記ロボットアームを動かすように制御し、それによって前記ガイド基準マーカーが前記所望位置に達するように前記骨切りガイドおよび前記ガイド基準マーカーを動かすように構成されている。
【0015】
さらに、前記骨切りガイドおよび/または前記ガイド基準マーカーが変形をしたか否かを確認するように構成された検証装置をさらに備え、
前記骨切りガイドは、骨切りガイドを提供するための複数のガイド特徴をその上に備える骨切りガイドブロックを含み、前記検証装置は、前記骨切りガイドブロックに着脱可能に取り付けられるように構成された少なくとも1つの検証用基準マーカーを含み、
前記トラッカーは、工場出荷前に前記ガイド基準マーカーに対する前記検証用基準マーカーの初期位置情報を記録し、手術使用の毎に前記ガイド基準マーカーに対する前記検証用基準マーカーの現在位置情報を記録するように構成され、
前記制御装置は、前記検証用基準マーカーの初期位置情報と前記検証用基準マーカーの現在位置情報とが一致するか否かを判定し、一致する場合には前記骨切りガイドおよび/または前記ガイド基準マーカーが変形していないと判定し、一致しない場合には前記骨切りガイドおよび/または前記ガイド基準マーカーが変形していると判定するよう構成される。
【0016】
さらに、前記検証装置が、前記骨切りガイドおよび/または前記ガイド基準マーカーが変形をしたと判断したときに、前記ガイド基準マーカーに対する前記骨切りガイドの位置を補正する補正装置をさらに備え、前記補正装置は、前記骨切りガイドブロックに着脱可能に取り付けられるように構成された少なくとも二つの補正用基準マーカーのそれぞれからなり、
前記トラッカーは、前記ガイド基準マーカーに対する前記少なくとも2つの補正用基準マーカーの位置情報を記録するように構成され、
前記制御装置が、前記ガイド基準マーカーに対する前記少なくとも2つの補正用基準マーカーの位置情報に基づいて、前記ガイド基準マーカーに対する前記骨切りガイドの現在位置に関する情報を取得し、前記現在位置に関する取得した情報を用いて前記ガイド基準マーカーに対する前記骨切りガイドの位置を更新するように構成されている。
【0017】
さらに、ガイド基準マーカーに対する2つの補正用基準マーカーの位置情報は、それぞれT1およびT2と表され、T1はガイド基準マーカーの座標系における2つの補正用基準マーカーの一方の位置を表し、T2はガイド基準マーカーの座標系における2つの補正用基準マーカーの他方の位置を表し、
前記制御装置は、前記ガイド基準マーカーの座標系における前記骨切りガイドブロックの中心点の位置T0および前記ガイド基準マーカーの座標系における前記骨切りガイドブロックの表面の位置T3を、前記少なくとも二つの補正用基準マーカーの座標系における前記T1およびT2の位置情報に基づいて取得するように構成され、前記ガイド基準マーカーの座標系における骨切りガイドブロックの中心点の位置T0および前記ガイド基準マーカーの座標系における骨切りガイドブロックの表面の位置T3に基づいて、前記ガイド基準マーカーに対する前記骨切りガイドの位置および姿勢を取得することと
を含む。
【0018】
さらに、前記ナビゲーション装置は、静止状態に維持されるベース基準マーカーをさらに備え、前記ガイド基準マーカーの位置は、前記ベース基準マーカーの位置と相対的である。
【0019】
さらに、前記制御装置が、複数の位置決め点によって定義される所望移動経路を提供し、前記ガイド基準マーカーが前記所望移動経路に沿って前記所望位置に到達するように前記ロボットアームを制御するように構成されている。
【0020】
さらに、前記ガイド基準マーカーと前記骨切りガイドとの間の位置および姿勢の相関関係を記憶するための記憶装置をさらに備える。
【0021】
さらに、前記骨切りガイドは、複数の骨切り誘導モードを提供するための複数のガイド特徴をその上に備える骨切りガイドブロックを含み、前記ガイド基準マーカーと前記骨切りガイドとの間の位置および姿勢の相関関係が、前記ガイド特徴と前記ガイド基準マーカーとの間の位置および姿勢の相関関係を含む。
【0022】
さらに、前記ガイド特徴の各々と前記ガイド基準マーカーとの間の位置および姿勢の相関関係を取得することは、
前記ガイド基準マーカー上の基準マーカーボール間の相対的な位置関係を決定し、前記相対的な位置関係に基づいて前記ガイド基準マーカーの座標系を確立するステップと、
ガイド基準マーカーの座標系における骨切りガイドブロックの中心点の位置情報を決定するステップと、
前記骨切りガイドブロックの中心点に対する前記ガイド特徴の位置情報と、前記ガイド基準マーカーの座標系における前記骨切りガイドブロックの中心点の位置情報の両方に基づいて、前記該と特徴の前記ガイド基準マーカーの座標系における位置および姿勢を決定するステップと、
を含む。
【0023】
さらに、骨切りガイドブロックは、それぞれの検証用基準マーカーが取り付けられる少なくとも1つの検証用ホールをその中に備え、それぞれの検証用基準マーカーが、骨切りガイドブロックの表面と平行な段差面を有する。
【0024】
さらに、前記骨切りガイドブロックは、前記ガイド特徴が設けられた上面を有し、前記検証用ホールは、前記上面に垂直に設けられ、前記段差面は、前記上面と一致する。
【0025】
さらに、前記検証用ホールの軸線が前記骨切りガイドブロックの対称面内に位置し、前記検証用ホールの端面、前記骨切りガイドブロックの上面および前記段差面が同一平面上にある。
【0026】
さらに、前記検証用基準マーカーの前記ガイド基準マーカーに対する位置情報は、前記ガイド基準マーカーの座標系における前記検証用基準マーカーの前端点の位置および姿勢からなる。
【0027】
さらに、前記ガイド基準マーカーの座標系における前記各補正用基準マーカーの位置は、
ガイド基準マーカーの座標系における補正用基準マーカーの前端点の位置および姿勢と、
前記ガイド基準マーカーの座標系における前記補正用基準マーカーの段差面の位置および姿勢と、を含み
前記段差面は、前記補正用基準マーカーの段差であり、前記骨切りガイドブロックの表面と平行である。
【0028】
さらに、前記骨切りガイドブロックには補正用ホールが設けられ、前記補正用ホールには2つの補正用基準マーカーがそれぞれ固定され、または2つの補正用基準マーカーが1つの検証用ホールと前記補正用ホールとのそれぞれに固定されている。
【0029】
さらに、各補正用ホールは、骨切りガイドブロックの表面および各補正用基準マーカーの段差面の両方と共平面である端面を有する。
【0030】
さらに、前記骨切りガイドは、骨切りガイドブロックおよび取り付けインターフェースを備え、前記取り付けインターフェースは、連結シャフトによって前記骨切りガイドブロックに連結され、前記骨切りガイドブロックは、骨切りガイドを提供するための複数のガイド特徴をその上に備え、前記取り付けインターフェースは、前記ロボットアームの端部に着脱可能に取り付けられる。
【0031】
さらに、前記連結シャフトは、前記骨切りガイドブロックの回転軸が前記骨切りガイドブロックの回転軸からオフセットされるように、前記骨切りガイドブロックおよび前記取り付けインターフェースの両方に連結される偏心クランクである。
【0032】
さらに、前記骨切りガイドは、ホルダをさらに備え、前記骨切りガイドブロック、前記偏心クランク、前記ホルダおよび前記取付インターフェースがこの順で順次に連結され、前記ホルダが、その中に基準マーカー取付孔を備えている。
【0033】
さらに、前記骨切りガイドブロックは、前記偏心クランクに着脱自在に取り付けられている。
【0034】
さらに、前記ガイド特徴は、前記骨切りガイドブロックの単一面上、または前記骨切りガイドブロックの軸線の周りの異なる面上に設けられた複数のガイド溝を含む。
【0035】
さらに、ガイド溝は0°ガイド溝または45°ガイド溝である。
【0036】
さらに、前記骨切りガイドは、互いに鏡像配置された2つの骨切りガイドブロックからなり、それぞれが、前記偏心クランクと着脱可能に接続するように構成された取り付けインターフェースをその上に備えている。
【0037】
さらに、前記骨切りガイドは、その上に設けられ、互いに対向して配置された2つの取り付けインターフェースを有する1つの骨切りガイドブロックからなり、前記偏心クランクは、前記取り付けインターフェースの1つに選択的に着脱可能に接続される。
【0038】
さらに、前記ロボットアームの端部に配置され、前記ロボットアームの接続ポートを覆う無菌バッグをさらに備え、前記接続ポートは、前記骨切りガイドに着脱可能に接続される。
【0039】
さらに、前記無菌バッグは、その一端部に通孔が設けられている。
【0040】
本発明のさらなる態様によれば、上記で定義されたような整形外科手術システムで使用するための骨切りガイドであって、
骨切りガイドは、骨切りガイドブロック、連結シャフトおよび取り付けインターフェースを備え、骨切りガイドブロックは、複数の骨切り誘導モードを提供するための複数のガイド特徴をその上に備え、連結シャフトの両端は、骨切りガイドブロックおよび取り付けインターフェースの両方に接続され、取り付けインターフェースは、ロボットアームの一端に着脱可能に連結するように構成されている。
【0041】
さらに、前記ガイド特徴は、ガイド溝およびガイドホールを含む。
【0042】
さらに、前記連結軸が偏心クランクである。
【0043】
さらに、前記骨切りガイドブロック、前記偏心クランク、前記ホルダおよび前記取り付けインターフェースがこの順で順次に連結され、前記ホルダがその中に基準マーカー取付ホールを備えるホルダをさらに備える。
【0044】
さらに、前記骨切りガイドブロックは、前記偏心クランクに着脱自在に取り付けられている。
【0045】
さらに、各ガイド溝は、骨切りガイドブロックの表面を通って延びる端部の開口部を有する。
【0046】
さらに、各ガイド溝がフレア形状である。
【0047】
さらに、前記骨切りガイドブロックの軸線を中心として異なる面に複数のガイド溝が配置されている。
各ガイド溝が0°ガイド溝または45°ガイド溝である。
【0048】
さらに、前記ガイド溝が、0°ガイド溝、45°ガイド溝および滑車切断ガイド溝のうちの少なくとも1つを含み、前記ガイドホールが、人工大腿骨装着用のガイドホール、左脛骨工具位置決め用のガイドホール、右脛骨工具位置決め用のガイドホールおよび骨切りガイド用固定ホールのうちの少なくとも1つを含む。
【0049】
さらに、前記ガイド溝は、2つの0°ガイド溝、2つの45°ガイド溝および2つの滑車切断ガイド溝を含む。
【0050】
さらに、前記骨切りガイドブロックが軸対称構造である。
【0051】
さらに、前記骨切りガイドブロックが、互いに対向して配置された2つの取り付けインターフェースをその上に備え、前記偏心クランクが、前記取り付けインターフェースのうちの1つに選択的に着脱可能に連結される。
【0052】
さらに、骨前記骨切りガイドブロックは、その中に検証用ホールが設けられている。
【0053】
さらに、前記骨切りガイドブロックは、その中にさらに補正用ホールを備えている。
【0054】
上記の方法では、骨切りガイドの位置と姿勢をリアルタイムで追跡してフィードバックし、ロボットアームを移動させるための制御の基礎とする。このようにすれば、ロボットアームの絶対的な位置精度を考慮したり、医者の経験に頼ったりすることなく、より正確に骨切りガイドを配置・位置決めすることができる。さらに、上記整形外科手術システムでは、骨切りガイドが患者の身体に固定されるのではなく、ロボットアームに掛けられるので、そこに二次的な損傷を与えることを回避することができる。
【0055】
さらに、上記方法では、検証用基準マーカーを用いることにより、骨切りガイドおよび/またはガイド基準マーカーの変形の有無を適時に判断することができる。これにより、変形した骨切りガイドおよび/またはガイド基準マーカーの交換または補正が容易になり、手術のリスクを低減し、手術の精度を向上させることができる。たとえば、上記方法において、少なくとも2つの補正用基準マーカーをさらに使用して、ガイド基準マーカーに対する骨切りガイドの位置を補正および更新してもよく、そのような補正は、簡単かつ便利な方法で達成することができる。
【0056】
上記骨切りガイドにおける骨切りガイドブロックは、ガイドホールおよびガイド溝の様々な組み合わせのうちのいずれかであってよい多数のガイド特徴を備えてもよい。これらのガイド特徴部は、様々な骨切り誘導モードを提供することができ、単一の骨切りガイドを異なる骨の切断および穿孔操作に適用できるようにし、したがって、1つの骨切りガイドから別の骨切りガイドに頻繁に切り替える必要をなくすことができる。これにより、手術時間を大幅に短縮し、手術効率を向上させることができます。
【0057】
好ましくは、上記骨切りガイドは、軸対称構造として実施され、これにより、骨切りガイドは、任意の脚部に対する骨切りを支持することができる。この結果、コスト削減、骨切り術の簡便性の向上、および手術効率のさらなる向上を実現することができる。
【0058】
上記骨切りガイドにおいて、各ガイド溝は、たとえば、45°ガイド溝や0°ガイド溝であってよく、両端が骨切りガイドブロックの表面を貫通して延び、したがって端部開口部を有している。これにより、この骨切りガイドは、様々な機種の人工関節の骨切り誘導に適用可能である。
【0059】
上記骨切りガイドにおいて、各ガイド溝は、たとえば、45°ガイド溝や0°ガイド溝であってもよく、その形状はフレア状である。これにより、この骨切りガイドも、様々な機種の人工関節の骨切り誘導に適用することができる。
【0060】
上記骨切りガイドにおいて、ガイド溝(たとえば、0°または45°)は、骨切りガイドブロックの軸線の周りの異なる面に設けられていることが好ましい。これにより、骨切りガイドは、切断すべき別の骨表面に切り替えるために移動する距離が短くなり、基準マーカーの大きな回転ストロークに起因する位置・方向特定エラーや失敗、および、過度の位置・方向変さらに起因するロボットアームの大きな回転エラーを回避し、結果として位置精度をさらに向上させることができる。
【0061】
上記骨切りガイドの回転軸は、ロボットアームの先端部分の回転軸とオフセットしている。このようにすれば、ロボットアームを微小距離並進させた後に回転させるだけで、骨切りガイドの角度調整を行うことができる。これにより、ロボットアームの回転誤差を低減し、位置決め精度をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図面を参照しながら、本発明の実施形態および関連する実施例の特徴、特性および効果について説明する。
【
図1】本発明の1つの実施形態に係る整形外科手術システムを使用して人工膝関節置換術を行うことを説明するために示す図である。
【
図2】本発明の1つの実施形態に係る骨切りガイドの構造を示す図である。
【
図3】本発明の1つの実施形態に係る骨切りガイドを平行移動させることにより複数の位置および方向における骨切り誘導を実現することを説明するために示す図である。
【
図4】本発明の1つの実施形態に係る骨切りガイドを回転させることにより切断される骨表面から他の骨表面に移行するために骨切りガイドがどのように回転するかを説明するために示す図である。
【
図5】線A-Aに沿った
図2の骨切りガイドの断面図であり、0°ガイド溝がフレア状であることを示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る使用中に骨切りガイドおよび/またはガイド基準マーカーが変形したか否かを検証用基準マーカーが検証する方法を説明するために示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る骨切りガイドの構造概略図であり、そこに設けられた補正用ホールを示す図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る補正用基準マーカーを用いて骨切りガイドがどのように補正されるかを説明するために示す図である。
【
図9】本発明の実施形態に係るロボットアームの端部関節の外郭に交互に取り付けられるガイド基準マーカーを示す図である。
【
図10】本発明の他の実施形態に係る、互いに鏡像配置された2つの骨切りガイドの構造を示す図である。
【
図11】本発明の他の実施形態に係る、左脚または右脚の骨切り誘導が可能な、2つのクイックチェンジインターフェースが設けられた他の骨切りガイドブロックを示す図である。
【
図12】本発明の実施形態に係るガイド基準マーカーの移動経路を模式的に示す図である。
【
図13】本発明の実施形態に係る脛骨プラトー準備のための誘導を説明するために示す図である。
【
図14】本発明の実施形態に係る前大腿骨切断のための誘導を説明するために示す図である。
【
図15】1つの0°ガイド溝のみを含む骨切りガイドの第一実施例の構造を示す図である。
【
図16】2つの0°ガイド溝を含む、骨切りガイドの第二実施例の構造を示す図である。
【
図17】骨切りガイドの第三実施例の構造を示す図であり、当該骨切りガイドは、2つの滑車切断溝および2つの0°ガイド溝を含むものである。
【
図18】1つの0°ガイド溝と2つのガイドホールとを含む、骨切りガイドの第四実施例の構造を示す図である。
【
図19】2つの0°ガイド溝と2つのガイドホールとを含む、骨切りガイドの第五実施例の構造を示す図である。
【
図20】骨切りガイドの第六実施例の構造を示す図であり、当該骨切りガイドは、2つの0°ガイド溝、2つの滑車カット溝および2つのガイドホールを含むものである。
【
図21】2つの固定ホールと複数のガイド溝を含む、骨切りガイドの第七実施例の構造を示す図である。
【
図22】骨切りガイドの第八実施例の構造を示す図であり、当該骨切りガイドは矩形の滑車切断溝、細長いガイド溝および2つのガイドホールを含むものである。
【
図23】骨切りガイドの第九実施例の構造を示す図であり、当該骨切りガイドは一端の端部に開口部を有するガイド溝を含んでいるものである。
【
図24】脛骨工具ガイドである骨切りガイドの第十実施例の構造を示す図である。
【
図25】滑車切断ガイドである骨切りガイドの第十一実施例の構造を示す図である。
【
図26a】本発明の実施形態に係るロボットアームの端部関節の上に配置された無菌バッグの構造を示す図である。
【
図26b】本発明の実施形態に係る一端部に通過孔が設けられている無菌バッグの部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る技術的手段について、明確かつ完全に説明する。当然でありながら、以下に説明する実施形態は、本発明の一部の実施形態に過ぎず、全ての実施形態ではない。本発明の実施形態に基づいて、いわゆる当業者がなんら創作的な工夫をせずに容易に想到できるすべての他の実施形態は、本発明の保護範囲に含まれる。
【0064】
本明細書の説明において、単数形の「一」、「1つ」および「当該」などの用語は、明確に示さない限り、複数形のものも含む。本明細書の説明において、「または」の用語は、明確に示さない限り、「および/または」の意味を含む。本明細書の説明において、「複数」の用語は、明確に示さない限り、「少なくとも1つ」の意味として使用される。本明細書の説明において、「少なくとも2つ」の表現は、明確に示さない限り、通常は「2つ以上」の意味として使用される。なお、本明細書の説明において、「第一」、「第二」および「第三」などの用語は、わかりやすく説明することを目的としており、相対的な重要性を示すまたは示唆するものとして、または説明する技術的特徴の数量を暗黙的に示すものとして解釈されるべきではない。このため、「第一」、「第二」または「第三」の技術的特徴は、1つまたは少なくとも2つの当該技術的特徴の存在を明示的または暗黙的に示すことである。
【0065】
本発明に係る骨切りガイドの位置補正方法において、位置補正の技術的思想は次のとおりである。骨切りガイドまたはロボットアームに取り付けられたガイド基準マーカーを用いて骨切りガイドの位置を追跡し、ガイド基準マーカーの位置情報さえ取得すれば、ガイド基準マーカーの位置情報(現在位置と所望位置を含む)に基づいてロボットアームの動きを制御でき、したがって、ロボットアームによってその一端に取り付けられた骨切りガイドおよびガイド基準マーカーを駆動することによりガイド基準マーカーを所望位置に移動させることができる。ガイド基準マーカーの位置と骨切りガイドの位置とが対応づけられているため、ガイド基準マーカーの位置や姿勢を調整すれば、骨切りガイドの位置や姿勢を調整することになる。すなわち、骨切りガイドの位置は、ガイド基準マーカーの位置によって特徴づけられる。このようにすれば、ロボットアームの絶対的な位置精度を考慮することや医者の経験に頼る必要性がなくなり、骨切りガイドをより正確に配置することができ、骨切りガイドの位置決め精度が向上され、手術の精度が向上される。
【0066】
骨切りガイドの正確な位置決めを達成実現するための本発明に係る整形外科手術システムは、制御装置、ナビゲーション装置、ロボットアームおよび骨切りガイド(または「骨切断ガイド」とも称する)を含む。骨切りガイドまたは骨切断ガイドは、骨切りガイドの位置および姿勢を調整するロボットアームの端部に取り付けられている。ナビゲーション装置は、トラッカー(追跡装置)およびガイド基準マーカーを含む。ガイド基準マーカーは骨切りガイドまたはロボットアームに取り付けられ、トラッカーはガイド基準マーカーの現在位置を追跡し、現在位置に関連する情報を生成する。実際に使用する際、トラッカーからフィードバックされるガイド基準マーカーの現在位置および所望位置の情報に基づいて、制御装置は、ロボットアームの動きを制御することにより、ガイド基準マーカーが所望位置に到達するように、ロボットアームにより骨切りガイドおよびガイド基準マーカーを駆動する。上記の効果に加えて、本発明に係る整形外科手術システムは、さらに、ロボットアームにより骨切りガイドを吊り下げることができ、骨切りガイドを患者の身体に固定する必要がないため、患者の身体に二次的な損傷を与えることを回避できる。
【0067】
しかしながら、本発明に係る整形外科手術システムは、使用され得る特定の用途に限定されるものではない。たとえば、整形外科手術システムは、人工膝関節置換術以外にも、他の整形外科手術に使用できる。以下では、膝関節置換術に使用されることを一例として整形外科手術システムを説明するが、これは、いかなる意味においても本発明の保護範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0068】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る膝関節置換術に使用される整形外科手術システムを示す図である。
図1に示すように、整形外科手術システムは、制御装置と、ナビゲーション装置と、ロボットアーム2と、骨切りガイド4と、を含む。制御装置はコンピュータであってよく、当該コンピュータは、コントローラ、マスターモニタ8およびキーボード10を備え、より好ましくは、スレーブモニタ7をさらに備える。本実施形態において、スレーブモニタ7およびマスターモニタ8は同じコンテンツを表示し、たとえば骨切りが行われている箇所の画像を表示する。ナビゲーション装置は、電磁的または光学的な位置決めナビゲータ/センサであってよい。一部の実施形態において、ナビゲーション装置は、他のナビゲーション技術と比較して、測定精度がより高く、骨切りガイドの位置決め精度を高めることを可能な光学的な位置決めに基づくものであってよい。
【0069】
以下では、ナビゲーション装置が光学的な位置決めナビゲータを例として説明するが、これに限定されない。
【0070】
具体的な実施態様において、ナビゲーション装置は、ナビゲーションマーカーおよびトラッカー6を含む。ナビゲーションマーカーは、ベース基準マーカー15およびガイド基準マーカー3を含む。ベース基準マーカー15は、たとえば、ベース座標系(またはベース基準マーカー座標系)を提供するように手術用カート1に固定され、ガイド基準マーカー3は、骨切りガイド4の位置を追跡できるように骨切りガイド4に取り付けられる。骨切りガイド4は、ロボットアーム2の端部に取り付けられて支持され、ロボットアーム2によって骨切りガイド4の空間的位置および姿勢(方向)が調整される。
【0071】
実際には、トラッカー6は、ガイド基準マーカー3から反射される信号(好ましくは、光信号)を捕捉し、ガイド基準マーカー3の位置(すなわち、ベース座標系におけるその位置および姿勢)を記録する。その後、コントローラは、記憶装置に記憶された命令と、ガイド基準マーカーの現在位置および所望位置とに基づいて、ロボットアーム2の移動(動き)を制御し、これにより、骨切りガイド4およびガイド基準マーカー3を駆動させてガイド基準マーカー3を所望位置に移動させる。ガイド基準マーカーの所望位置は、骨切りガイド4の所望位置に対応する。
【0072】
このように、整形外科手術システムの用途では、骨切りガイド4を自動的に位置決めすることができる。また、手術中にガイド基準マーカー3が骨切りガイド4の位置や姿勢をリアルタイムに追跡してフィードバックし、それに基づいてロボットアームを制御して移動させ、結果として骨切りガイドの位置や姿勢を調整できる。このようにすれば、骨切りガイドの高い位置精度が得られることに加え、骨切りガイド4を患者の身体に固定するのではなく、ロボットアーム2により支持させることができるため、患者の身体に二次的な損傷を与えることを回避できる。
【0073】
一般的に、整形外科手術システムは、手術用カート1およびナビゲーションカート9をさらに含む。制御装置およびナビゲーション装置の一部は、ナビゲーションカート9に搭載される。たとえば、制御装置はナビゲーションカート9の内部に搭載されてもよく、キーボード10は操作を容易にするためにナビゲーションカート9の外部に配置されてもよい。さらに、マスターモニタ8、スレーブモニタ7およびトラッカー6はいずれもナビゲーションカート9の表面に垂直して取り付けられた支持フレームに固定され、ロボットアーム2は手術用カート1に搭載されるようにしてもよい。手術用カート1およびナビゲーションカート9を使用することにより、手術操作を容易に行うことができる。
【0074】
本実施形態に係る整形外科手術システムを膝関節置換術に使用する場合、通常、以下のような操作を行う。
【0075】
まず、手術用カート1およびナビゲーションカート9の両方を患者のベッド脇の適切な場所へ移動させる。
【0076】
続いて、ナビゲーションマーカー(大腿骨基準マーカー11および脛骨基準マーカー13をさらに含んでもよい)、骨切りガイド4および他の必要な構成要素(たとえば、無菌バッグ)を使用可能に取り付ける。
【0077】
続いて、医者18は、コンピュータに取り込まれた骨切り治療を必要とする患者17の骨の領域のCT/MRスキャンモデルに基づいて術前計画を行い、たとえば、切断すべき骨表面の座標、人工関節のモデル、目標位置および方向などの情報を含む骨切り計画を策定する。具体的には、CT/MRスキャンから患者の膝関節の画像データを取得し、医者が術前評価を行うための基礎となる骨切り計画を策定するための3次元(3D)デジタル膝関節モデルを作成する。より具体的には、骨切り計画は、3Dデジタル膝関節モデル、ならびに、人工関節の寸法、骨切りプレートの目標位置などに基づいて作成されてもよく、最終的には手術レポートの形態で出力される。手術レポートは、切断すべき骨表面の座標、切断すべき骨の量、骨切り角度、人工関節のサイズ、人工関節の目標位置(取り付ける位置)、補助手術器具などを含む一連の参照データが記録されてもよい。特に、外科医の参考のために、たとえば、骨切り角度の理由などを説明する一連の文章を含んでもよい。3Dデジタル膝関節モデルは、マスターモニタ8に表示されてもよい。なお、術前計画の間、外科医は、キーボード10により手術パラメータを入力できる。
【0078】
術前評価の後、医者18は、患者の大腿骨および脛骨の特徴点(患者の大腿骨の複数の解剖学的特徴点および患者の脛骨の複数の解剖学的特徴点を含む)をポインタまたはトラッキング機能を備えたポッドで登録し、ナビゲーション装置を用いて、基準としてとられるベース基準マーカー15に対する患者の脛骨14および大腿骨12の全ての特徴点の位置の記録を行う。続いて、全ての特徴点の位置に関する情報をコントローラに送信し、コントローラは、特徴マッチングアルゴリズムを使用して大腿骨12および脛骨14の実際の位置および姿勢(方向)を決定し、それらをCT/MR画像におけるそれぞれのグラフィック表現に相関させる。
【0079】
続いて、ナビゲーション装置は、大腿骨および脛骨のそれぞれの実際の位置および姿勢を、大腿骨および脛骨に固定された基準マーカーに関連付け、大腿骨基準マーカー11および脛骨基準マーカー13が骨の現在位置をリアルタイムで追跡できるようにする。また、手術中、基準マーカーがそれぞれの骨に対して位置を固定している限り、骨が動いても手術結果に悪影響を及ぼすことはない。
【0080】
続いて、ナビゲーション装置は、術前計画時に決定した切断すべき骨表面の座標をロボットアーム2に送信し、ロボットアーム2は、ガイド基準マーカー3に基づいて切断すべき骨表面の位置を特定し、適切な位置へ移動する。ロボットアーム2を静止させた後(すなわち、動かない状態)、外科医は、釣下横挽き鋸または電気ドリルのような外科器具5を用いて、骨切りガイド4の補助のもとで、骨切り誘導および/またはホールあけの操作を行う。骨切り誘導および/またはホールあけの操作の終了後、医者は、人工関節を所定位置にセットし、その他の必要な操作を行うことができる。
【0081】
本実施形態において、ナビゲーションマーカーは、大腿骨基準マーカー11および脛骨基準マーカー13をさらに含む。大腿骨基準マーカー11は、大腿骨12の空間的な位置および姿勢を特定/追跡するために使用され、脛骨基準マーカー13は、脛骨14の空間的な位置および姿勢を特定/追跡するために使用される。なお、上記において、ガイド基準マーカー3は骨切りガイド4に取り付けられるが、他の実施形態において、ガイド基準マーカー3は、ロボットアーム2の端部に取り付けられてもよい。
【0082】
図2は、本発明の一つの実施形態に係る骨切りガイドの構造を示す図である。
図2に示すように、本実施形態に係る骨切りガイド4は、膝関節置換術に使用され、ガイド特徴が設けられた骨切りガイドブロック40を含み、ガイド特徴は、ガイド溝、ガイドホールまたはその両方を含んでもよい。すなわち、骨切りガイドブロック40のガイド特徴は、ガイド溝またはガイドホールのいずれかまたはそれらの組み合わせであってもよい。したがって、膝関節置換に関与し得る1つまたは複数の骨切り術の案内をサポートできる。このような骨切り術の特定の例は、遠位大腿骨切断、前大腿骨切断、後大腿骨切断、前大腿骨斜め切断、後大腿骨斜め切断、滑車切断(trochlear cutting)、大腿人工関節固定スタッド用ホールの穿孔、脛骨プラトー準備および脛骨キール準備ツール用位置決めホールの穿孔を含む。このように、1本の骨切りガイドにより様々な骨切り誘導やホールあけ作業に対応できるため、手術中に他の骨切りガイドに持ち替える必要がなく、手術時間が大幅に短縮され、手術効率が向上される。
【0083】
上述したように、骨切りガイドの位置は、ガイド基準マーカーの位置によって特徴付けられる。このため、ガイド基準マーカー3と骨切りガイド4との間の位置・方向対応付け(相関関係)を予め較正しておく必要がある。本実施形態において、ガイド基準マーカー3と骨切りガイド4との間の位置・方向対応付けは、全てのガイド特徴とガイド基準マーカー3との間の位置・方向対応付けを含む。たとえば、ガイド特徴がガイド溝およびガイドホールの両方を含む場合、ガイド基準マーカー3と骨切りガイド4との間の位置・方向相関関係は、ガイド基準マーカー座標系における骨切りガイド4の各ガイド溝の位置情報およびガイド基準マーカー座標系における骨切りガイド4の各ガイドホールの位置情報を含む。
【0084】
本実施形態において、各ガイド特徴(たとえば、ガイド溝またはガイドホール)とガイド基準マーカー3との位置・方向相関関係は、以下のようなステップにより得られる。
【0085】
(ステップ1)
ガイド基準マーカー3における基準マーカーボール(通常は、4個)間の相対位置関係を取得し、当該相対位置関係に基づいてガイド基準マーカー座標系を構築する。
【0086】
(ステップ2)
ガイド基準マーカー座標系における骨切りガイドブロック40の中心点(幾何学的中心または重心)の座標(すなわち、位置情報)を取得する。
【0087】
(ステップ3)
骨切りガイドブロック40の中心点に対するガイド特徴の位置情報およびガイド基準マーカー座標系における骨切りガイドブロック40の中心点の座標(または位置情報)の両方に基づいて、ガイド基準マーカー座標系におけるガイド特徴の位置情報(位置および姿勢の両方を含む)を取得する。ガイド基準マーカー座標系におけるガイド特徴の位置情報は、ガイド基準マーカー3に対するガイド特徴の位置・方向相関関係である。
【0088】
ガイド基準マーカー座標系における骨切りガイドブロックの全てのガイド特徴の位置および姿勢のデータが予め較正されて記録され、その後、位置変換計算のためにコントローラはこれらのデータを読み取る。好ましくは、ガイド基準マーカーに対する各ガイド特徴の位置および方向の相関関係を取得するステップは、コントローラによって実行される。
【0089】
図2に示されるように、骨切りガイド4は、取り付けインターフェース401をさらに含み、取り付けインターフェース401は、連結シャフトによって骨切りガイドブロック40に連結され、ロボットアーム2の一端に着脱可能に連結され、これにより骨切りガイド4とロボットアームとの連結を実現する。なお、取り付けインターフェース401は、フランジディスクであってもよく、この場合、ネジ、位置決めピンなどの締結具によって、ロボットアームの端部に設けられたフランジに固定される。他の実施形態において、迅速な着脱を可能にするため、取り付けインターフェース401は、ロボットアーム2の端部とクイックディスコネクト接続を確立できるクイックチェンジインターフェースであってもよい。
【0090】
骨切りガイド4は、連結シャフトをさらに含み、当該連結シャフトの両端のそれぞれは、骨切りガイドブロック40および取り付けインターフェース401に接続されている。
図2に示すように、連結シャフトは、取り付けインターフェース401の回転軸(すなわち、ロボットアームの端部関節のスピン回転軸)を骨切りガイドブロック40の回転軸からオフセットさせる偏心クランク403であることが好ましい。他の骨表面の切断を可能にするために骨切りガイド4の角度を変更する必要があるとき、ロボットアーム2を小さな距離だけ平行移動させかつ回転させることによって簡単に達成できる。したがって、ガイド基準マーカー3の大きな回転ストロークによって引き起こされ得る位置および姿勢の識別エラーまたは失敗、ならびに過度の位置および方向の変更によって引き起こされ得るロボットアームの大きな回転エラーを回避でき、骨切りガイドの位置決め精度をさらに向上できる。より好ましくは、偏心クランク403は、骨切りガイドブロック40に着脱可能に連結される。これにより、ガイド全体を交換するのではなく、骨切りガイドブロックを交換するだけで、異なる骨切り術のガイドが可能となり、コストを削減できる。さらに、偏心クランク403は、クイックチェンジインターフェースによって骨切りガイドブロック40に連結されてもよい。本発明は、クイックチェンジインターフェースの構造についてなんら限定もしない。
【0091】
図2に示すように、一つの実施形態において、骨切りガイド4は、ガイド基準マーカー3を取り付けるためのホルダ402をさらに含み、骨切りガイドブロック40、偏心クランク403、ホルダ402および取り付けインターフェース401がこの順に順次に連結されている。本実施形態において、ホルダ402には、基準マーカー取付孔4021が設けられ、ガイド基準マーカー3は基準マーカー装着孔4021に取り付けられている。基準マーカー取付孔4021の数は、2つであってもよく、これに限定されない。
【0092】
図9に示すように、他の実施形態において、ホルダ402を省略でき、骨切りガイドブロック40、偏心クランク403および取り付けインターフェース401がこの順に順次に連結され、ガイド基準マーカー3がロボットアームの端末関節の外郭に直接取り付けられている。これにより、骨切りガイド4の構造を簡素化できるだけでなく、ガイド基準マーカー3を手術部位から離すことができるため、手術中に誤って基準マーカーに触れてしまい、位置決め性能に悪影響を与えることを回避できる。たとえば、ロボットアーム2の先端部分の外郭には、ガイド基準マーカー3を取り付けるための基準マーカー取付孔4021が設けられている。
【0093】
図2に示されるように、骨切りガイド4が様々な骨切りをガイドできるようにするため、本発明の好ましい実施形態によれば、骨切りガイドブロック40には、次のようなガイド特徴を含む。
【0094】
ガイド特徴は、大腿骨プロテーゼの取り付けのためのガイドホール404、右脚滑車溝のための骨切りガイド溝405、左脚脛骨に使用する工具の位置決めのためのガイドホール406、第一0°ガイド溝407、第一45°ガイド溝408、第二45°ガイド溝410、第二0°ガイド溝411、左脚滑車溝のための骨切りガイド溝412および右脚脛骨に使用する工具の位置決めのためのガイドホール413を備えている。
【0095】
実用化においては、ロボットアーム2を介して骨切りガイド4の位置および姿勢を調整するだけで、遠位大腿骨切断、前大腿骨切断、後大腿骨切断、前大腿骨斜め切断、後大腿骨斜め切断、滑車切断、大腿人工関節固定スタッド用ホールの穿孔、脛骨プラトー準備および脛骨キール準備ツール用位置決めホールの穿孔などの骨切り誘導および穿孔の操作を1つの骨切りガイドでサポートできるようになる。したがって、人工膝関節置換術における骨切り術を簡単かつ便利に行うことができ、手術時間を大幅に短縮し、手術効率を向上できる。
【0096】
また、本実施形態に係る骨切りガイド4を使用する際、
図3に示すように、骨切りガイドブロック40に設けられた0°ガイド溝(407、411)および45°ガイド溝(408、410)により、骨切りガイド4を平行移動(
図3における矢印で示された方向に移動)させるだけで前大腿骨切断、後大腿骨切断、前大腿骨斜め切断および後大腿骨斜め切断を含む骨切り誘導の操作を実現できる。したがって、ガイド基準マーカー3の過度な位置・姿勢変化を回避できるため、ロボットアーム2の回転誤差や基準マーカーの位置追従誤差を低減でき、位置精度を向上できる。
【0097】
さらに、本実施形態に係る骨切りガイド4において、
図4に示すように、偏心クランク403を設けることにより、骨切りガイドブロック40の回転中心と取り付けインターフェース401の回転中心との間にオフセットが存在し、骨切りガイド40の回転中心がロボットアームの端末関節の回転中心に比較的に近いため(すなわち、オフセットが小さい)、他の骨表面の切断を可能にするために骨切りガイド4の角度を変更する必要があるとき、ロボットアーム2をわずかな距離だけ平行移動させて回転させればよく、簡単に実現できる。より具体的には、骨切りガイド4がL1によって示される位置に位置されている場合、外科用器具(たとえば、釣下横挽き鋸)を使用して大腿骨12の遠位切断(遠位大腿骨切断)を実現でき。また、骨切りガイド4がL2によって示される位置に回転された後は、外科用器具を使用して大腿骨12の前方切断(前大腿骨切断)および後方切断(後大腿骨切断)ならびに前大腿骨斜め切断および後大腿骨斜め切断を実現できる。なお、オフセットの量は、使用する人工関節の種類や骨切りガイドの移動範囲などの要素に応じて定められるため、本発明は、オフセット量について限定しない。
【0098】
本発明の骨切りガイドが適用可能な人工関節の範囲をさらに広げるために、
図5に示すように、0°ガイド溝、45°ガイド溝またはその両方がフレア形状であることが好ましい。このような形状であれば、釣下横挽き鋸のような手術器具をガイド溝内でより大きな振幅で振ることができ、異なる機種の人工関節が必要とする骨切り術により多く対応することができるガイドとすることができる。
【0099】
好ましくは、整形外科手術システムは、骨切りガイド4およびガイド基準マーカー3のいずれか一方または両方の変形の程度を識別し確認する検証装置をさらに含む。著しい変形が確認された場合、骨切りガイド4および/またはガイド基準マーカー3を新しいものに交換してもよく、または、骨切りガイド4とガイド基準マーカー3との間の相対位置について補正してもよい。後者の場合、骨切りガイドの元の位置および姿勢を補正された情報で更新し、骨切りガイドの補正された位置および姿勢によってロボットアームの移動を制御する。
【0100】
図6に示すように、検証装置は、少なくとも1つの検証用基準マーカー16を含み、検証用基準マーカー16は、骨切りガイドブロック40に着脱可能に取り付けられている。たとえば、骨切りガイドブロック40には少なくとも1つの検証用ホール409が設けられ、検証用基準マーカー16は、それぞれの検証用ホール409に取り付けられてもよい。検証用基準マーカー16は、骨切りガイドブロック40の表面と平行に延在する段差面を有してもよい。本実施形態において、段差面は、骨切りガイドブロック40の上面と平行(適合を含む)に延びており、各検証用ホール409は貫通孔であり、好ましくは、骨切りガイドブロック40の上面に対して垂直に設けられている貫通孔である。
【0101】
計算を容易にするために、ガイド特徴(たとえば、ガイド溝およびガイドホール)のほとんどまたはすべてが、骨切りガイドブロック40の上面に設けられてもよい。さらに、検証用ホール409の軸線が骨切りガイドブロック40の対称面に位置し、各検証用ホール409の端面、骨切りガイドブロックの上面および段差面が同平面であってもよい。これにより、さらに容易に計算することができる。
【0102】
具体的な実施形態において、検証を行う工程は、まず、工場から納入する前に、トラッカー6によってガイド基準マーカー3に対する検証用基準マーカー16(骨切りガイドブロックに取り付けられている)の初期位置情報を記録する。続いて、毎回手術を行う前、トラッカー6によりガイド基準マーカー3に対する検証用基準マーカー16の現在位置情報を記録し、コントローラは、受信した現在位置情報と初期位置情報とを比較して、両者が一致するか否かを判断する。一致する場合、コントローラは、骨切りガイド4およびガイド基準マーカー3のいずれにおいても変形が生じていないと判断し、一致しない場合、コントローラは、骨切りガイド4およびガイド基準マーカー3のいずれか一方または両方において変形が生じたと判断する。
【0103】
本実施形態において、ガイド基準マーカー3に対する検証用基準マーカー16の位置情報は、ガイド基準マーカー座標系における検証用基準マーカーの前端点の位置および姿勢を含む。
図6に示すように、検証用基準マーカー16の前端点は、検証用基準マーカー16の先端部Sであってよい。使用中、コントローラは、検証用基準マーカーの前端点の現在位置情報が、工場から納入する前に記録した初期情報と一致しないと判断した場合、骨切りガイド4およびガイド基準マーカー3のいずれか一方または両方において変形が生じたと判断する。これは、ガイド基準マーカーおよび骨切りガイド4のいずれかが変形した場合、最終的には検証用ホール409に影響を与え、検証用ホール409の変形を検証用基準マーカーで識別し確定できるためである。
【0104】
好ましくは、整形外科手術システムは、さらに、補正装置を含む。検証装置が骨切りガイド4およびガイド基準マーカー3の少なくとも一方の変形を識別すると、補正装置は、ガイド基準マーカー3と骨切りガイド4との相対位置を補正し、その後、補正された情報に基づいて、コントローラは、骨切りガイド4とガイド基準マーカー3との間の位置および姿勢相関関係を更新する。
図7および
図8に示すように、補正装置は、骨切りガイドブロック40に着脱自在に取り付けられた少なくとも2つの補正用基準マーカーを含む。さらに、補正用基準マーカーのうちの1つまたは複数は、検証用基準マーカー16として選択されてもよい。本実施形態において、ガイド基準マーカー3に対する骨切りガイド4の位置を補正するために、2つの補正用基準マーカー161、162が設けられている。
【0105】
より具体的には、補正する工程においては、まず、トラッカー6により、ガイド基準マーカー3に対する2つの補正用基準マーカー161、162の位置情報を記録する。続いて、コントローラは、ガイド基準マーカー3に対する2つの補正用基準マーカー161、162の位置情報に基づいて、ガイド基準マーカー3に対する骨切りガイド4の現在位置情報を算出し、算出した情報に基づいて骨切りガイド4とガイド基準マーカー3との位置・姿勢対応付け(相関関係)を更新する。
【0106】
ガイド基準マーカー3に対する補正用基準マーカー161の位置情報は、T1で表すことができ、ガイド基準マーカー3に対する補正用基準マーカー162の位置情報は、T2で表すことができる。ここで、T1はガイド基準マーカー座標系における補正用基準マーカー161の位置であり、T2はガイド基準マーカー座標系における補正用基準マーカー162の位置である。
【0107】
本実施形態において、補正する工程において、ガイド基準マーカー3に対する骨切りガイド4の位置情報は、以下の処理により取得する。
【0108】
まず、コントローラは、ガイド基準マーカー座標系における2つの補正用基準マーカー161、162の位置T1およびT1に基づいて、ガイド基準マーカー座標系における骨切りガイドブロック40の中心点の位置T0およびガイド基準マーカー座標系における骨切りガイドブロック40の表面(上述の段差面と一致する表面、たとえば上面である)の位置T3を算出する。
【0109】
続いて、コントローラは、ガイド基準マーカー座標系における骨切りガイドの中心点の位置T0およびガイド基準マーカー座標系における骨切りガイドの表面の位置T3に基づいて、ガイド基準マーカー3に対する骨切りガイド4の位置および姿勢を確定する。
【0110】
続いて、補正された後のガイド基準マーカー3に対する骨切りガイド4の位置および姿勢で工場から納入する前に記録した初期位置情報を更新し、手術中において、補正後の位置情報により骨切りガイドの位置追跡およびロボットアームの動作制御を行う。このようにすれば、骨切りガイドの正確な位置決めを実現できる。好ましくは、制御装置は、骨切りガイド4とガイド基準マーカー3との位置および姿勢相関関係を記憶するための記憶装置をさらに含む。さらに、ナビゲーション装置は、制御装置と一体化されてナビゲーションシステムを形成してもよい。
【0111】
図7に示すように、骨切りガイドブロック40には、少なくとも2つの補正用ホールが設けられている。他の実施形態において、検証用ホール409は、1つの補正用ホールを構成してもよい。本実施形態において、検証用ホール409の他、第一補正用ホール414aと第二補正用ホール414bとの2つの補正用ホールがそれぞれ設けられている。なお、本発明では、各補正用ホールの位置については特に限定せず、同一面に設けてもよく、異なる面に設けてもよい。さらに、第一補正用ホール414a、第二補正用ホール414bおよび検証用ホール409のうちの任意の2つには、2つの検証用基準マーカー16(すなわち、2つの補正用基準マーカー)が設けられ、2つの検証用基準マーカー16の段差面を骨切りガイドの上面に一致させることにより、2つの検証用基準マーカーの位置されるホールの位置および姿勢を取得でき、すなわち、ガイド基準マーカーに対する各ガイド溝およびガイドホールの位置と姿勢をさらに算出でき、これにより、ガイド基準マーカーとガイドとの相対位置が補正される。他の実施形態において、各補正ホールの端面、骨切りガイドブロックの上面および補正用基準マーカーの段差面は、共有面に設けられ、計算が容易になり、補正効率が向上される。
【0112】
本実施形態において、ガイド基準マーカー座標系における各補正用基準マーカーの位置は、ガイド基準マーカー座標系における補正用基準マーカーの前端点の位置および姿勢と、ガイド基準マーカー座標系における補正用基準マーカーの段差面の位置および姿勢とを含む。
【0113】
さらに、左右の脚の骨切りを可能にするために、骨切りガイドブロック40を軸対称構造にしてもよい。他の実施形態において、
図10に示すように、互いに鏡像配置された2つの骨切りガイドブロック41、42を設けてもよい。この場合、骨切りガイドブロック41により左脚用の骨切り誘導を実現し、骨切りガイドブロック42により右脚用の骨切り誘導を実現する。着脱を容易にするため、各骨切りガイドブロックは、クイックチェンジインターフェースによって偏心クランク403に連結されてもよい。本実施形態において、骨切りガイドブロック41は、クイックチェンジインターフェース415によって偏心クランク403に連結されており、骨切りガイドブロック42は、クイックチェンジインターフェース421によって偏心クランク403に連結されている。なお、2つのクイックチェンジインターフェース415および421は、互いに鏡像配置ではなく、位置的に対応して配置されてもよい。
【0114】
図11に示すように、他の実施形態において、骨切りガイドブロック43は1つのみ設けられ、骨切りガイドブロック43には、互いに対向する側面に配置された2つのクイックチェンジインターフェース431、432が設けられている。偏心クランク403は、クイックチェンジインターフェース431、432の一方に選択的に着脱自在に連結されている。偏心クランク403を骨切りガイドブロックのそれぞれのクイックチェンジインターフェースに選択的に連結させることにより、左右脚の任意の膝関節に対する骨切り術を可能にする。しかしながら、本発明は、2つのクイックチェンジインターフェース431、432の相対位置について限定せず、それらの軸が共線となるように対向面上に配置されてもよい。さらに他の方法として、骨切りガイドブロック43にはクイックチェンジインターフェースが1つのみ設けられ、骨切りガイドブロック43が180度反転して偏心クランク403に連結されてもよく、骨切りガイドブロック43は、同様に、左右脚の骨切りに使用できる。以上のとおり、左右脚の骨切り術は、1つの骨切りガイドブロックによっても2つの骨切りガイドブロックによっても実現可能で、本発明はこれについて限定しない。当然でありながら、1つの骨切りガイドブロックにより左右脚の骨切り術を行うことが好ましい。左脚の骨切り術を例にすると、
図13に示すように、本発明に係る骨切りガイド4は、脛骨プラトーの骨切り手術のために誘導を提供できるとともに、
図14に示すように、大腿骨切断のために誘導を提供できるため、手術中に他の骨切りガイドに持ち替える必要がなく、手術の利便性が向上し、効率が向上する。
【0115】
本実施形態において、コントローラは、複数の位置点によって定義される所望の移動経路を提供でき、ロボットアーム2の移動を制御することにより、ガイド基準マーカー3が所望の移動経路に従って所望位置に到達するように、骨切りガイド4およびガイド基準マーカー3を移動するように駆動する。これにより、位置決め精度がさらに向上される。さらに、コントローラは、ガイド基準マーカー3の現在位置および所望位置に基づいて、ガイド基準マーカーの所望の移動経路を取得する。コントローラは、ガイド基準マーカーと骨切りガイドとの位置および姿勢相関関係および骨切りガイドの目標位置の両方に基づいて、ガイド基準マーカーの所望位置を確定する。
【0116】
より具体的には、
図12に示すように、骨切り術が行われる前に、コントローラは、まず、ロボットアーム2の登録情報(ガイド基準マーカーと骨切りガイドとの位置および姿勢相関関係を含む)に基づいて、ガイド基準マーカー3の現在位置Aを取得し、続いて、患者の骨の登録情報(たとえば。3Dデジタル膝関節モデルやCT/MRスキャン画像から得られる情報)および適する人工関節に関する情報などに基づいて、ガイド基準マーカー3の所望位置Bを取得するする。続いて、逆運動学を利用することにより、コントローラは、ガイド基準マーカー3の所望の移動経路を計画し、ロボットアームの異なる関節(セッション)に移動命令を送信して関節が移動するように駆動させることにより、ガイド基準マーカー3の移動を制御する。移動中、トラッカー6は、ガイド基準マーカー3の位置(たとえば、A’およびA’ ’)をリアルタイムで追跡し、コントローラにフィードバックする。コントローラは、リアルタイムの位置と所望位置とのずれを計算し、それに基づいて、ガイド基準マーカー3の移動経路を更新し、最終的にはガイド基準マーカー3が所望位置Bに到達するように制御し、骨切りガイド4の正確な位置決めを実現できる。
【0117】
以下、具体的な実施例によって、骨切りガイドブロック上のガイド特徴について詳細に説明する。
【0118】
図15に示すように、第一実施例では、遠位大腿骨切断および脛骨プラトー準備のための誘導(ガイド)に使用され、骨切りガイドブロック20を含む骨切りガイドが提供される。より具体的には、骨切りガイドブロック20は、骨切りガイドブロック20の上面に設けられた0°ガイド溝201という1つのガイド特徴のみを有する。骨切りガイドは、遠位大腿骨切断モードと脛骨プラトー準備モードとの間で切り替えるために回転できる。本明細書において、「0°ガイド溝」とは、骨切りガイドブロックの側面と平行に、すなわち、骨切りガイドブロックの側面に対して0°の角度で、たとえば、骨切りガイドブロックの上面から下面に貫通する溝を指す。同様に、「45°ガイド溝」とは、骨切りガイドブロックの側面に対して45°の角度で、たとえば、骨切りガイドブロックの上面から下面に貫通する溝を指す。
【0119】
図16に示すように、第二実施例では、遠位大腿骨切断および脛骨プラトー準備のためのガイドに使用され、骨切りガイドブロック21を含む骨切りガイドが提供される。骨切りガイドブロック21は、骨切りガイドブロック21の異なる表面に設けられた0°ガイド溝211との2つのガイド特徴を有する。たとえば、1つは上面に設けられ、もう1つは上面に隣接する側面に設けられてもよい。2つの0°ガイド溝211が骨切りガイドブロック21の回転軸の周りに配置されているため、手術器具5は、角度を小さくして回転することにより、切断する骨表面から他の骨表面に切り換えることが可能である。したがって、基準マーカーの移動ストロークが大きい場合に生じる可能性のある大きな識別誤差やロボットアームの位置や姿勢が過度に変化することにより生じる可能性のある大きな回転誤差を回避できる。
【0120】
図17に示すように、第三実施例では、大腿骨遠位部切断、脛骨プラトー準備、滑車溝切断のための誘導に使用され、骨切りガイドブロック22を含む骨切りガイドが提供される。具体的には、第二実施例の骨切りガイドブロック21のもとに、左右脚の滑車溝切断のために2つの滑車切断用溝221がそれぞれ追加されている。
【0121】
図18に示すように、第四実施例では、大腿骨遠位部切断および脛骨プラトー準備のための誘導に使用され、骨切りガイドブロック23を含む骨切りガイドが提供される。第一実施例の骨切りガイドブロック20もとに、人工大腿骨や脛骨工具の取り付けホールの穿孔のための誘導に使用できる複数のガイドホール231(たとえば、2つ)が追加されている。
【0122】
図19に示すように、第五実施例では、骨切りガイドが提供され、遠位大腿骨切断および脛骨プラトー準備のための誘導に使用できる骨切りガイドブロック24を含んでいる。第二実施例の2つのガイド溝に加えて、大腿人工関節や脛骨工具の取り付けホールの穿孔のための誘導に使用できるガイドホール241(たとえば、2つ)も設けられている。
【0123】
図20に示すように、第六実施例では、第三実施例のガイド特徴に加え、さらに複数(たとえば、2つ)のガイドホール251を有する骨切りガイドブロック25を含む骨切りガイドが提供される。骨切りガイドブロック25は、大腿骨遠位部切断、脛骨プラトー準備、滑車切断だけでなく、人工大腿骨や脛骨工具の取り付けホールの穿孔のための誘導にも使用可能である。
【0124】
図21に示すように、第七実施例では、他の必要なガイド特徴に加えて、位置決めホール261をさらに有する骨切りガイドブロック26を含む骨切りガイドが提供される。ロボットアーム2によって骨切りガイドが所定位置に配置されると、位置決めピンが骨切りガイドブロック26の位置決めホール261を通して、骨に骨切りガイドを固定する。したがって、前大腿骨切断、前大腿骨斜め切断、後大腿骨切断、後大腿骨斜め切断および滑車切断が一回の処置で完了できる。これにより、ロボットアームの剛性不足による手術中の骨切りガイドの移動を回避できるため、ガイドエラーを低減できる。
【0125】
図22に示すように、第八実施例では、2つのガイド溝と2つのガイドホールを有する第五実施例のものの変形である骨切りガイドブロック27を含む骨切りガイドが提供される。具体的には、滑車切断のための誘導に用いられる矩形溝272と、他の大腿骨および脛骨表面の切断のための誘導に用いられる細長いガイド溝273と、大腿人工関節および脛骨工具の取付けホールの穿孔のための誘導に用いられるガイドホール271とを備えている。
【0126】
図23に示すように、第九実施例では、骨切りガイドが提供され、一側または両側の端部に開口部281を有するガイド溝を有する骨切りガイドブロック28を含む。ガイド溝は、0°または45°ガイド溝のいずれかであってよい。端部開口部281により、釣下横挽き鋸のような外科器具5は、より大きな範囲内で移動でき、ガイドブロックの長さを短くできる。これにより、適用病巣に対する要件を下げ、患者の組織に対する損傷を低減できる。ここで、端部における開口部は、ガイド溝がその一端または両端から骨切りガイドブロックのそれぞれの側面まで貫通し、1つまたは複数の開放端部を有していることを指す。
【0127】
図24に示すように、第十実施例では、上記の実施例のものとは異なる、脛骨工具の自動位置決めが可能な脛骨工具ガイドである骨切りガイドブロック29を含む骨切りガイドが提供される。
図25に示すように、第十一実施例では、骨切りガイドブロック30を含む骨切りガイドが提供され、上記の実施例と異なるところは、滑車切断ガイドを骨切りガイドブロック30として使用し、滑車切断ガイドの自動位置決めを実現した点である。
【0128】
したがって、本発明の様々な実施例において、骨切りガイドブロックは、実際の用途によって必要とされるガイド特徴の異なる組合せを有していてもよい。一部の実施形態では、ガイド溝およびホールの両方が骨切りガイドブロックに設けられてもよいが、本発明は、骨切りガイドブロック上のガイド溝の数または位置について何ら限定もしない。同様に、本発明は、骨切りガイドブロックに設けられるガイドホールの数または位置についても何ら限定もしない。また、骨切りガイドブロックは、0°ガイド溝、45°ガイド溝および滑車切断溝のいずれかまたはこれらの組み合わせを備えていてもよい。さらに、骨切りガイドブロックは、人工大腿骨位置決め用ガイドホール、左脛骨工具位置決め用ガイドホール、右脛骨工具位置決め用ガイドホールおよび骨切りガイド用固定ホールのいずれかまたはこれらの任意の組み合わせを備えてもよい。
【0129】
図26aは、ロボットアームに使用するための無菌バッグ31を示す図である。明確にするために、無菌バッグ31の一部のみが示されている。無菌バッグ31は、一端がロボットアームの連結ポート(たとえば、フランジ)を覆うように、ロボットアームの端部の上に配置されてもよい。連結ポートは、骨切りガイドに着脱可能に連結されてもよい。このようにすれば、手術部位を隔離して、無菌の手術環境を確保できる。好ましくは、無菌バッグ31のロボットアームのフランジに連結される端部は、医療用のPEEK樹脂などの所定硬度を有する材料で作られ、ネジや位置決めピンなどの骨切りガイドをロックするためのそれぞれの締結具312を通過させる通過孔311を備えてもよい。無菌バッグ31は、手術器具の取り付けを支持し、ロボットアームの非無菌部分への露出を最小限に抑えることができる。
【0130】
本発明の実施形態によれば、プロセッサによって実行されると、上述のコントローラの処理方法におけるステップを実行させる命令を格納したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も提供される。
【0131】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明の保護範囲は決して上記実施形態に限定されない。たとえば、本発明は、骨切りガイドブロック上のガイド特徴の数または種類について限定しない。整形外科手術システムを他の種類の整形外科手術に使用する場合、上記以外のガイドおよびホールが含まれていてもよい。さらに、本発明は、検証用ホールの位置を限定せず、また、補正用ホールの位置も限定しない。さらに、正確な誘導を確保し、骨切りガイドブロックの厚みを薄くすることを可能にするため、ガイドホールは、骨切りガイドブロックの同一面に設けられていることが好ましい。さらに、基準マーカーは、光信号を発することができる光学式基準マーカーであることが好ましい。
【0132】
上述の説明は、単に本発明の好ましい実施形態を示すものであり、いかなる意味においても本発明の範囲を限定することを意図するものではない。上記の内容に基づいていわゆる当業者によってなされるすべての変更および改良は、特許請求の範囲の保護範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0133】
1 手術用カート、
2 ロボットアーム、
3 ガイド基準マーカー、
4 骨切りガイド、
5 手術器具、
6 トラッカー、
7 スレーブモニタ、
8 マスターモニタ、
9 ナビゲーションカート、
10 キーボード、
11 大腿骨基準マーカー、
12 大腿骨、
13 脛骨基準マーカー、
14 脛骨、
15 ベース基準マーカー、
16 検証用基準マーカー、
17 患者、
18 医者、
40、41、42、43、20、21、22、23、24 骨切りガイドブロック、
401 取り付けインターフェース、
402 ホルダ、
4021 基準マーカー取付孔、
403 偏心クランク、
404 大腿骨プロテーゼの取り付けのためのガイドホール、
405 右脚滑車溝のための骨切りガイド溝、
406 左脚脛骨に使用する工具の位置決めのためのガイドホール、
407 第一0°ガイド溝、
408 第一45°ガイド溝、
409 検証用ホール、
410 第二45°ガイド溝、
411 第二0°ガイド溝、
412 左脚滑車溝のための骨切りガイド溝、
413 右脚脛骨に使用する工具の位置決めのためのガイドホール、
414a 第一補正用ホール、
414b 第二補正用ホール、
415、421、431、432 クイックチェンジインターフェース、
201、211 0°ガイド溝、
221 滑車切断用溝、
231、241、251、271 ガイドホール、
261 位置決めホール、
272 矩形溝、
273 細長いガイド溝、
281 端部の開口部、
31 無菌バッグ、
311 通過孔、
312 締結具。
【国際調査報告】