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特表2022-549757車両の走行経路を形成するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-29
(54)【発明の名称】車両の走行経路を形成するための方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/10 20060101AFI20221121BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20221121BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20221121BHJP
【FI】
B60W30/10
G05D1/02 H
B60W40/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022505475
(86)(22)【出願日】2019-07-31
(85)【翻訳文提出日】2022-03-23
(86)【国際出願番号】 EP2019070691
(87)【国際公開番号】W WO2021018396
(87)【国際公開日】2021-02-04
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】フォルコリン,ファビオ
(72)【発明者】
【氏名】アルデベス,キナン
【テーマコード(参考)】
3D241
5H301
【Fターム(参考)】
3D241BA11
3D241BC01
3D241BC02
3D241CA18
3D241CE06
3D241DC37Z
3D241DC38Z
3D241DC41Z
5H301AA01
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG08
5H301QQ06
(57)【要約】
本開示は、車両の走行経路(308)を形成するように制御システム(200)を操作するためのコンピュータによって実現される方法であって、経路決定は、三次元(3D)点群を生じる一対のセンサによって生成されるデータに基づき、3D点群は、それぞれ、車両の左側(L)及び右側(R)の表示をもたらす方法に関する。また、本開示は、対応する制御システム(200)及びコンピュータプログラムプロダクトにも関する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(100,102)の走行経路(308)を形成するように制御システム(200)を操作するためのコンピュータによって実現される方法であって、前記制御システム(200)は、電子制御ユニット(ECU)(202)と前記車両(100)に配置された第1及び第2の側方センサ(204,206)とを備え、前記第1及び第2のセンサ(204,206)は、互いに重ならない視野(208,210)を有し、前記ECU(202)は、前記第1及び第2のセンサ(204,206)と通信するように構成される方法において、
-前記第1のセンサ(204)からの第1のデータシーケンス及び前記第2のセンサ(206)からの対応する第2のデータシーケンスを前記ECU(202)において受信するステップ(S1)であって、前記センサ(204,206)からの前記第1及び第2のデータシーケンスは、それぞれ、前記車両(100,102)の左側(L)及び右側(R)の表示をもたらす三次元(3D)点群として構成されるステップ(S1)と、
-前記第1及び第2のデータシーケンスを前記ECU(202)によって互いに関連付けて第3のデータシーケンスを形成するステップ(S2)であって、前記第3のデータシーケンスは、前記第1及び第2のセンサ(204,206)間の領域の3D表示をもたらすステップ(S2)と、
-前記車両(100,102)の通過可能領域(306)を表す前記第3のデータシーケンスの一部を前記ECU(202)によって選択するステップ(S3)と、
-前記第3のデータシーケンスの前記選択された一部に基づいて前記車両(100,102)の前記走行経路(308)を前記ECU(202)によって形成するステップ(S4)と
を含む方法。
【請求項2】
前記第1及び第2のセンサは、LiDARセンサである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1及び第2のセンサのスキャン中心は、前記車両の標準的な運転方向と直交する、請求項1および2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記第1及び第2のデータシーケンスを互いに関連付ける前記ステップは、前記データシーケンスのそれぞれにおけるデータ点間のペアワイズ相関を行うことを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
-エッジデータ点を削除するために前記第3のデータシーケンスを前記ECUによってフィルター処理するステップを更に含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1及び第2のデータシーケンスは、前記車両が走行している坑道の少なくとも壁を表す、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記走行経路を形成する前記ステップは、オクトリー処理スキームを適用することを含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
-前記オクトリー処理スキームからの出力を変換し、前記第3のデータシーケンスを表す描画を形成するステップを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
-前記ECUによって前記描画に重み付けを適用するステップを更に含み、前記通過可能領域の縁の近くに配置された前記描画のデータ点に対して前記通過可能領域の中心におけるデータ点と比較してより大きい重み付けを与える、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記通過可能領域は、表面領域である、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記表面領域は、地盤面と一致する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1及び第2のデータシーケンスを互いに関連付ける前記ステップは、前記第1及び第2のデータシーケンスにおける前記互いに対応するデータ点間の距離を比較することを含む、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
-前記形成された走行経路に基づいて前記車両を運転するステップを更に含む、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記ECUは、第1及び第2の処理部分を備え、前記第1の処理部分は、車両内に配置され、前記第2の処理部分は、車両外に配置された遠隔サーバとして構成され、
前記方法は、
-前記車両からの前記第1及び第2のデータシーケンスを前記遠隔サーバに伝達するステップを更に含み、
前記互いに関連付けるステップ、前記選択するステップ、及び前記形成するステップは、前記第2の処理部分によって少なくとも部分的に行われる、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
車両の走行経路を形成するように適合された制御システムであって、前記制御システムは、電子制御ユニット(ECU)と前記車両に配置された第1及び第2の側方センサとを備え、前記第1及び第2のセンサは、互いに重ならない視野を有し、前記ECUは、前記第1及び第2のセンサと通信するように構成される制御システムにおいて、
前記ECUは、
-前記第1のセンサからの第1のデータシーケンス及び前記第2のセンサからの対応する第2のデータシーケンスを受信し、前記センサからの前記第1及び第2のデータシーケンスは、それぞれ、前記車両の左側及び右側の表示をもたらす三次元(3D)点群として構成され、
-前記第1及び第2のデータシーケンスを互いに関連付けて第3のデータシーケンスを形成し、前記第3のデータシーケンスは、前記第1及び第2のセンサ間の領域の3D表示をもたらし、
-前記車両の通過可能領域を表す前記第3のデータシーケンスの一部を選択し、
-前記第3のデータシーケンスの前記選択された一部に基づいて前記車両の前記走行経路を形成する、
ように適合される、制御システム。
【請求項16】
前記第1及び第2のセンサは、LiDARセンサである、請求項15に記載の制御システム。
【請求項17】
前記第1及び第2のセンサのスキャン中心は、前記車両の標準的な運転方向と直交する、請求項15および16のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項18】
前記第1及び第2のデータシーケンスを互いに関連付けることは、前記ECUを前記データシーケンスのそれぞれにおけるデータ点間のペアワイズ相関を行うように適合させることを含む、請求項15から17のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項19】
前記ECUは、
-エッジデータ点を削除するために前記第3のデータシーケンスをフィルター処理するように、更に適合される、請求項15から18のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項20】
前記第1及び第2のデータシーケンスは、前記車両が走行している坑道の少なくとも壁を表す、請求項15から19のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項21】
前記走行経路を形成することは、前記ECUをオクトリー処理スキームを適用するように適合させることを含む、請求項15から20のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項22】
前記ECUは、
-前記オクトリー処理スキームからの出力を変換し、前記第3のデータシーケンスを表す描画を形成するように、更に適合される、請求項21に記載の制御システム。
【請求項23】
前記ECUは、
-前記描画に重み付けを適用し、前記通過可能領域の縁の近くに配置された前記描画のデータ点に対して前記通過可能領域の中心におけるデータ点と比較してより大きい重み付けを与える、ように更に適合される、請求項22に記載の制御システム。
【請求項24】
前記通過可能領域は、表面領域である、請求項15から23のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項25】
前記表面領域は、地盤面と一致する、請求項23に記載の制御システム。
【請求項26】
前記第1及び第2のデータシーケンスを互いに関連付けることは、前記ECUを前記第1及び第2のデータシーケンスにおける前記互いに対応するデータ点間の距離を比較するように適合させることを含む、請求項15から25のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項27】
前記ECUは、
-前記形成された走行経路に基づいて前記車両を運転する、ように更に適合される、請求項15-26のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項28】
前記ECUは、第1及び第2の処理部分を備え、前記第1の処理部分は、車両内に配置され、前記第2の処理部分は、車両外に配置された遠隔サーバとして構成され、互いの関連付け、選択、及び形成は、前記第2の処理部分によって少なくとも部分的に行われる、請求項15から27のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項29】
請求項15から28のいずれか1項に記載の制御システムを備える、車両。
【請求項30】
前記車両は、作業機械又はトラックである、請求項29に記載の車両。
【請求項31】
前記車両は、自律運転される、請求項29および30のいずれか1項に記載の車両。
【請求項32】
車両の走行経路を形成するように適合された制御システムを操作するためのコンピュータプログラム手段が記憶された非一時的コンピュータ可読媒体を備えるコンピュータプログラムプロダクトであって、前記制御システムは、電子制御ユニット(ECU)と前記車両に配置された第1及び第2の側方センサとを備え、前記第1及び第2のセンサは、互いに重ならない視野を有し、前記ECUは、前記第1及び第2のセンサと通信するように構成される、コンピュータプログラムプロダクトにおいて、
-前記第1のセンサからの第1のデータシーケンス及び前記第2のセンサからの対応する第2のデータシーケンスを前記ECUにおいて受信するためのコードであって、前記センサからの前記第1及び第2のデータシーケンスは、それぞれ、前記車両の左側及び右側の表示をもたらす三次元(3D)点群として構成されるコードと、
-前記第1及び第2のデータシーケンスを前記ECUによって互いに関連付けて第3のデータシーケンスを形成するためのコードであって、前記第3のデータシーケンスは、前記第1及び第2のセンサ間の領域の3D表示をもたらすコードと、
-前記車両の通過可能領域を表す第3のデータシーケンスの一部を前記ECUによって選択するためのコードと、
-前記第3のデータシーケンスの前記選択された一部に基づいて前記車両の走行経路を前記ECUによって形成するためのコードと、
を備える、コンピュータプログラムプロダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の走行経路を形成するように制御システムを操作するためのコンピュータにより実現される方法であって、経路決定は、三次元(3D)点群を生じる一対のセンサによって生成されるデータに基づき、3D点群は、それぞれ、車両の左側及び右側の表示をもたらす方法に関する。また、本開示は、対応する制御システム及びコンピュータプログラムプロダクトにも関する。
【背景技術】
【0002】
最近、運転支援機能及び安全機能、例えば、車間距離制御、歩行者検出、前方及び後方衝突警報、車線逸脱警報、及び不特定障害物検知を効果的にもたらす車両の半自律運転又は完全自律運転が大きく進展してきている。このような自律車両は、通常、車両の周辺環境に関する情報を検出するように構成された複数のセンサを利用する。センサは、例えば、車両環境を把握するために、カメラ映像技術及びレーダー又はライダー(LiDAR)技術を駆使し、可能であれば、センサの出力を融合する。
【0003】
このような車両の例が、特許文献1に記載されている。ここでは、車両及びその関連する制御システムは、複数のセンサから供給される情報を用いて環境内において車両を誘導する。例えば、もし車両が障害物に接近していることを1つ又は複数のセンサが検出したならば、制御システムは、車両が障害物を避けて移動するように車両の方向制御を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0379247号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
具体的には、特許文献1に記載の制御システムは、ナビゲーション/経路計画(pathing)システム及び障害物回避システムを利用し、車両の速度及び方向を制御することによって検出された車両の周辺環境内において車両を安全に誘導する。通常、ナビゲーション/経路計画システム及び障害物回避システムのいずれもが、車両誘導及び障害物回避のために汎用の対象物/特徴部検出プロセスを適用し、これによって、車両の運転を全体的に信頼できるものとする。しかしながら、特許文献1によって提示される汎用の対象物/特徴部検出プロセスを行うことに起因して、通常、このシステムの実施に必要なコンピュータによる計算の効率が悪く、その結果として、時間が掛かる。従って、自律車両の経路計算を改良するための更なる向上をもたらし、特に、車載実装に適するコンピュータによる計算の効率を高め、可能であれば、車両操作のロバスト性を改良することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、上記の課題は、車両の走行経路を形成するように制御システムを操作するためのコンピュータによって実現される方法であって、制御システムは、電子制御ユニット(ECU)と車両に配置された第1及び第2の側方センサとを備え、第1及び第2のセンサは、互いに重ならない視野を有し、ECUは、第1及び第2のセンサと通信するように構成される方法において、第1のセンサからの第1のデータシーケンス及び第2のセンサからの対応する第2のデータシーケンスをECUにおいて受信するステップであって、センサからの第1及び第2のデータシーケンスは、それぞれ、車両の左側及び右側の表示をもたらす三次元(3D)点群として構成されるステップと、第1及び第2のデータシーケンスをECUによって互いに関連付けて第3のデータシーケンスを形成するステップであって、第3のデータシーケンスは、第1及び第2のセンサ間の領域の3D表示をもたらすステップと、車両の通過可能領域を表す第3のデータシーケンスの一部をECUによって選択するステップと、第3のデータシーケンスの選択された一部に基づいて車両の走行経路をECUによって形成するステップと、を含む方法によって、少なくとも部分的に軽減される。
【0007】
本開示は、車両の前方方向に関するデータが不足している状況にあっても、車両の走行経路を自動的に形成することが可能であるという認識に基づいている。このような状況は、例えば、車両をいかに運転するかを示すどのようなセンサデータも前方方向において利用することができない場合に現れる。これは、本開示によれば、車両の「側面に取り付けられた(side mounted)」第1及び第2のセンサであって、互いに重ならない視野を有する、第1及び第2のセンサからのデータを考慮に入れることによって達成される。具体的には、本開示によれば、側面に取り付けられたこれらのセンサは、それぞれ、互いに対応するデータシーケンスを生成するように構成され、これらのセンサからのデータシーケンスは、それぞれ、車両の左側及び右側の表示(representation、描写)をもたらす3D点群として得られる。
【0008】
続いて、それぞれのセンサからの3D点群は、互いに関連付けられて第3のデータシーケンスを形成する。第3のデータシーケンスは、第1及び第2のセンサ間の領域の3D表示をもたらす。何故なら、それぞれのセンサからの3D点群は、本質的に対象物、例えば、壁、道路分離帯、障害物等に関連するからである。この事実は、センサが側面に取り付けられていること、すなわち、各センサが車両の右側及び左側において車両から「離れる方の」領域を監視することと併せて、(互いに関連付けるステップにおいて)車両の通過可能領域を識別することを可能にする。勿論、車両の前に何が存在するかに関するどのような情報も入手できないが、車両が前方に移動することができる限り、これは、車両の前方の領域が実際に通過可能であることを示すものと見なされる。
【0009】
従って、もし車両が鉱山内の道路のような閉鎖空間内を走行している例を挙げるのであれば、側面に取り付けられたセンサは、本質的に坑道の壁に関連する情報を収集することとなる。センサデータ、好ましくは、順次(経時的に)記憶されるセンサデータを互いに関連付けることによって、前述の通過可能領域が形成される。有利には、センサデータを互いに関連付けるステップは、第1及び第2のデータシーケンスにおける互いに対応するデータ点間の距離を比較することを含むとよい。
【0010】
従って、本開示の好ましい実施形態では、第1及び第2のデータシーケンスを互いに関連付けるステップは、データシーケンスのそれぞれにおけるデータ点間のペアワイズ相関(pair wise correlation)を行うことも含むとよい。好ましくは、通過可能領域は、表面領域、有利には地盤面と一致する表面領域である。
【0011】
本開示によれば、第3のデータシーケンスの一部が選択される。上記の例に関連して、例えば、坑道(又は道路、障害物等)のそれぞれの壁に近い領域は削除されるとよい。例えば、壁のすぐ隣の領域を絶対に通過しない領域として含まないことが望ましい。何故なら、もし壁に接近したなら、例えば、車両の一部が壁に衝突する可能性があるからである。このステップは、3D点群に含まれるノイズの一部をフィルターによって削除するフィルター処理ステップと見なされてもよい。
【0012】
いったん第3のデータシーケンスの一部が選択されたなら、任意の手段を用いて、第3のデータシーケンスの選択された一部を経路、好ましくは、車両を走行させるために選択されるべき経路の表示に変換することが可能である。例えば、もし第3のデータシーケンスの選択された一部を空間(volume)と見なすなら、走行経路は、第3のデータシーケンスの選択された一部の「間引きされた(thinned out)」形態と見なされる。
【0013】
本開示のいくつかの実施形態では、走行経路を形成するステップは、第3のデータシーケンスの選択された一部にオクトリー(octree)処理スキームを適用することを含むとよい。このような手法は、オクトリー処理スキームからの出力を変換し、第3のデータシーケンスを表す描画(graph)を形成することを含んでもよい。また、描画に重み付けを適用すると有利である。具体的には、通過可能領域の縁の近くに配置された描画のデータ点に対して通過可能領域の中心におけるデータ点と比較してより大きい重み付けが与えられるとよい。このような実施によって、概して、走行経路形成の改良されたロバスト性が得られる。
【0014】
好ましくは、車両の周囲の表示をもたらす点群を形成するためのセンサとして、例えば、レーザースキャナー装置、レーダー装置、超音波装置、及び/又はカメラ装置が挙げられる。勿論、更なるセンサも本開示の範囲内において可能である。列挙されるセンサ装置は、いずれも車両の周りの領域/環境のトポロジー/構造の形成を可能にする。
【0015】
好ましい実施形態では、第1及び第2のセンサは、光検出及び測距センサ(Light Detection And Ranging Sensor:LiDARセンサ)である。LiDARセンサは、多数のレーザーを放射することによって車両と周囲面との間の距離を計算する。レーザーの出射角度及び距離データは、前述の三次元(3D)点群に変換される。取得される点の数は、数千から数百万の範囲内にある。加えて、第1及び第2のセンサの走査中心は、車両の標準的な運転方向と直交する。従って、LiDARセンサは、車両の標準的な運転方向と比較して完全に側方を向くように配置されることが(必ずしも必要ではないが)好ましい。
【0016】
本開示の可能な実施形態では、処理の全てが必ずしも車両内において行われる必要がない。むしろ、本開示の1つの可能な実施形態では、ECUは、第1及び第2の処理部分を備え、第1の処理部分は、車両内に配置され、第2の処理部分は、車両外に配置された遠隔サーバとして構成され、前述の方法は、第1及び第2のデータシーケンスを車両から遠隔サーバに送信するステップを更に含み、互いに関連付けるステップ、選択するステップ、及び形成するステップは、少なくとも部分的に第2の処理部分によって行われる。
【0017】
従って、車両の左側及び右側にそれぞれ配置されたセンサを用いてセンサデータを収集する必要がある。しかしながら、車両内において走行経路を形成することもできるが、これは、必ずしも必要ではない。むしろ、いくつかの実施形態では、このようなステップは、車両外で、例えば、遠隔リモートによって行うことが可能である。
【0018】
本開示の他の態様によれば、車両の走行経路を形成するように適合された制御システムであって、制御システムは、電子制御ユニット(ECU)と車両に配置された第1及び第2の側方センサとを備え、第1及び第2のセンサは、互いに重ならない視野を有し、ECUは、第1及び第2のセンサと通信するように構成される制御システムにおいて、ECUは、第1のセンサからの第1のデータシーケンス及び第2のセンサからの対応する第2のデータシーケンスを受信し、センサからの第1及び第2のデータシーケンスは、それぞれ、車両の左側及び右側の表示をもたらす三次元(3D)点群として構成され、第1及び第2のデータシーケンスを互いに関連付けて第3のデータシーケンスを形成し、第3のデータシーケンスは、第1及び第2のセンサ間の領域の3D表示をもたらし、車両の通過可能領域を表す第3のデータシーケンスの一部を選択し、第3のデータシーケンスの選択された一部に基づいて車両の走行経路を形成するように適合される、制御システムが提示される。本開示のこの態様は、本開示の先の態様に関して前述した利点と同様の利点をもたらすこととなる。
【0019】
本開示の好ましい実施形態では、制御システムは、車両の1つのコンポーネントとして構成され、車両は、有利には、形成された走行経路に基づいて運転される。車両は、どのような形態の建設機械、例えば、ホイールローダー、又はどのような形態の「普通(regular)」車、例えば、バス、トラック、乗用車の1つであってもよい。更に、車両は、純電気自動車(PEV)及びハイブリッド電気自動車(HEV)の少なくとも1つであってもよい。更に、いくつかの実施形態では、車両は、自律運転車両、例えば、半自律運転車両又は完全自律運転車両であってもよい。
【0020】
本開示の更なる態様によれば、車両の走行経路を形成するように適合された制御システムを操作するためのコンピュータプログラム手段が記憶された非一時的コンピュータ可読媒体を備えるコンピュータプログラムプロダクトであって、制御システムは、電子制御ユニット(ECU)と車両に配置された第1及び第2の側方センサとを備え、第1及び第2のセンサは、互いに重ならない視野を有し、ECUは、第1及び第2のセンサと通信するように構成されるコンピュータプログラムプロダクトにおいて、第1のセンサからの第1のデータシーケンス及び第2のセンサからの対応する第2のデータシーケンスをECUにおいて受信するためのコードであって、センサからの第1及び第2のデータシーケンスは、それぞれ、車両の左側及び右側の表示をもたらす三次元(3D)点群として構成されるコードと、第1及び第2のデータシーケンスをECUによって互いに関連付けて第3のデータシーケンスを形成するためのコードであって、第3のデータシーケンスは、第1及び第2のセンサ間の領域の3D表示をもたらすコードと、車両の通過可能領域を表す第3のデータシーケンスの一部をECUによって選択するためのコードと、第3のデータシーケンスの選択された一部に基づいて車両の走行経路をECUによって形成するためのコードと、を備える、コンピュータプログラムプロダクトが提示される。本開示のこの態様も、本開示の先の態様に関して前述した利点と同様の利点をもたらすこととなる。
【0021】
コンピュータ可読媒体は、どのような種類のメモリデバイス、例えば、取外し可能な不揮発性ランダムアクセスメモリ、ハードディスクドライブ、フロッピーディスク、CD-ROM、DVD-ROM、USBメモリ、SDメモリカード、又は当技術分野において既知の同様のコンピュータ可読媒体であってもよい。
【0022】
本開示の更なる利点及び有利な特徴は、以下の説明及び従属請求項に開示される。
【0023】
以下、添付の図面を参照して、例示される本開示の実施形態を更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】本開示によるナビゲーション経路決定システムが組み込まれたホイールローダーを示す図である。
図1B】本開示によるナビゲーション経路決定システムが組み込まれたトラックを示す図である。
図2】本開示の現在の好ましい実施形態による概念的な制御システムを示す図である。
図3A-3C】点群から車両の走行経路への変換を例示する図である。
図4】本開示による方法を実行するための処理ステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示の現在の好ましい実施形態が示される添付の図面を参照して、本開示を更に十分に説明する。しかしながら、本開示は、多くの異なる形態で実施されてもよく、ここに記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、綿密さ及び完全性をもたらし、本開示の範囲を当業者に十分に知らしめるために提示される。同様の参照符号は、全体を通して同様の要素を指すものとする。
【0026】
以下、図面、特に、図1Aを参照すると、本明細書においてホイールローダー100として示される例示的な車両が描かれている。この車両内に(図2に示される)本開示による制御システム200が組み込まれている。制御システム200は、勿論、可能であればいくらか異なる形態で、図1Bに示されるトラック102、乗用車、バス等に実装されてもよい。車両は、例えば、電気又はハイブリッド自動車、又は場合によっては、天然ガス自動車、ガソリン自動車、又はディーゼル自動車の1つである。車両は、(電気又はハイブリッド自動車の場合)電気機械を備え、又は(天然ガス自動車、ガソリン自動車、又はディーゼル自動車の場合)エンジン、例えば、内燃エンジンを備えている。
【0027】
図2は、例えば、車両100に実装される非限定的な本開示による制御システム200の例示的な概念的実装形態を示している。制御システム200を実装する他の方法も本開示の範囲内において可能である。
【0028】
図示されるように、制御システム200は、第1及び第2のLiDARセンサ204,206と通信するように構成された電子制御ユニット(ECU)202を備え、これらのセンサ204,206は、車両100の両側(左側及び右側)に配置され、互いに重ならない視野を有している。
【0029】
ECU202は、例えば、汎用プロセッサ、特定用途向けプロセッサ、処理コンポーネント含有回路、分散処理コンポーネント群、処理用に構成された分散コンピュータ群、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、等として具体化されるとよい。プロセッサは、データを伝達するために又は信号を処理するために若しくはメモリに記憶されたコンピュータコードを実行するために、どのような数のハードウエアコンポーネントであってもよいし、又はどのような数のハードウエアコンポーネントを含んでもよい。メモリは、本明細書に記載される種々の方法を完遂又は促進するためのデータ及び/又はコンピュータコードを記憶するための1つ又は複数の装置であるとよい。メモリは、揮発性メモリであってもよいし、又は不揮発性メモリであってもよい。メモリは、データベースコンポーネント、オブジェクトコードコンポーネント、スクリプトコンポーネント、又は本明細書の種々のアクティビティを支援するためのどのような他の種類の情報構造を含んでもよい。例示的な実施形態によれば、どのような分散メモリデバイス又はローカルメモリデバイスが、本明細書のシステム及び方法と共に利用されてもよい。例示的な実施形態によれば、メモリは、(例えば、回路を介して又は任意の他の有線、無線、又はネットワーク接続を介して)プロセッサに通信可能に接続され、本明細書に記載される1つ又は複数のプロセスを実行するためのコンピュータコードを備えている。
【0030】
制御システム200は、該制御システム200の一部を構成しない遠隔サーバ210と無線通信することを可能にする送受信機208を更に備えるとよい。参考までに、送受信機208は、任意の形態の無線接続、例えば、WLAN、CDMA、GSM、GPRS、3G移動体通信、3/4/5G移動体通信、等を可能にするように構成されるとよい。他の現在又は将来の無線通信プロトコル、例えば、任意の形態の車と何か(Vehicle to Everything:V2X)通信プロトコルも、本開示の範囲内において可能である。
【0031】
更に、制御システム200は、車両100の運転に関するデータを収集するために(図示されない)1つ又は複数のセンサと通信するように構成されるとよい。このようなセンサとして、例えば、車両100の速度を収集するように構成されたセンサ、現在作動している車両100の傾斜に関するデータを収集するように構成されたセンサ、タイヤ圧を測定するためのセンサ、等が挙げられる。
【0032】
運転中、図3A-3C及び図4を更に参照すると、プロセスは、第1のセンサ204からの第1のデータシーケンス及び第2のセンサ206からの対応する第2のデータシーケンスをECU202において受信するステップS1によって開始される。センサ204,206からの第1及び第2のデータシーケンスは、それぞれ、車両100の運転方向に対して左(L)側壁304及び右(R)側壁302の表示をもたらす三次元(3D)点群として構成される。
【0033】
従って、例えば、車両100が鉱山内の道路のような閉鎖空間内を走行している場合、側面に取り付けられたセンサ204,206は、図3Aに具体的に示されるように、坑道の壁302,304に関する情報を本質的に経時的に収集する。
【0034】
センサ204,206からの情報が収集されると、その経時的な情報は、ECU202によって互いに関連付けられて第3のデータシーケンスを形成する(ステップS2)。第3のデータシーケンスは、第1及び第2のセンサ(204,206)間の領域の3D表示をもたらす。この互いに関連付けるステップは、好ましくは、センサ304,206からのデータシーケンスのそれぞれにおけるデータ点間のペアワイズ相関を実施することによって行われる。可能であれば、この比較は、車両100が走行している道路を横切る距離、例えば、坑道の壁304,306間の距離を決定することによって行われるとよい。すなわち、車両100に取り付けられた時のセンサ204,206間の内部距離を知ることが有用である。これによって、壁304,306間の全距離が、第1のセンサ206によって測定された壁302に対する距離と、第2のセンサ204によって測定された壁304に対する距離と、センサ204,206間の距離との合計として確定されることとなる。
【0035】
続いて、第3のデータシーケンスのデータの一部がECU202によって選択される(ステップS3)。第3のデータシーケンスのこの選択された一部は、例えば、図3Bに示されるように、車両(100,102)の通過可能領域306を表す。
【0036】
第3のデータシーケンスの選択された一部に基いて、図3Cに示されるような車両100の走行経路308をECU202によって形成することができる(ステップS4)。走行経路306は、例えば、一般的な場合、通過可能領域306の「中心(center)」として示される。しかしながら、この手法のロバスト性を高めるために、第3のデータシーケンスの選択された一部に対してオクトリー処理スキームを適用することも可能である。このような手法は、オクトリー処理スキームからの出力を変換し、第3のデータシーケンスを表す描画を形成することを含むとよい。また、この描画に重み付けを適用すると有利である。具体的には、通過可能領域の縁の近くに配置された描画のデータ点に対して通過可能領域の中心におけるデータ点と比較してより大きい重み付けが与えられるとよい。
【0037】
本開示は、種々の操作を達成するための方法、装置、及び任意の機械可読媒体上のプログラムプロダクトも考慮している。本開示の実施形態は、既存のコンピュータプロセッサを用いて、又はこの目的又は他の目的で組み込まれた適切なシステムのための専用コンピュータプロセッサによって、又は有線システムによって実施されるとよい。本開示の範囲内の実施形態は、記憶された機械実行可能な指令又はデータ構造を担持又は保持するための機械可読媒体を備えるプログラムプロダクトを含んでいる。このような機械可読媒体は、汎用コンピュータ又は専用コンピュータ若しくはプロセッサを有する他の機械によってアクセス可能などのような利用可能な媒体であってもよい。
【0038】
一例として、このような機械可読媒体として、RAM、ROM、EPROM、EEPROM、CD-ROM、又は他の光学ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置又は他の磁気記憶装置、若しくは機械実行可能な指令又はデータ構造の形態にある所望のプログラムコードを保持又は記憶するために用いられ、汎用コンピュータ又は専用コンピュータ若しくはプロセッサを有する他の機械によってアクセス可能な任意の他の媒体が挙げられる。情報がネットワーク又は他の通信接続(有線、無線、若しくは有線又は無線の組合せのいずれか)を介して機械に伝達又は供給される時、該機械は、この接続を機械可読媒体として適切に見なすこととなる。従って、任意のこのような接続は、機械可読媒体と適切に呼ばれる。前述の組合せも、機械可読媒体の範囲内に含まれる。機械可読指令は、例えば、いくつかの機能又は機能群を汎用コンピュータ又は専門コンピュータ若しくは専門処理機械に実行させる指令及びデータを含むものである。
【0039】
図面は、方法ステップの特定の順序を示しているが、これらのステップの順序は、図示されるものと異なってもよい。加えて、2つ以上のステップが同時に又はその一部が同時に行われてもよい。このような変更は、選択されたソフトウエアシステム及びハードウエアシステム及び設計者の選択に依存する。このような変更のいずれも、本開示の範囲内に含まれる。同様に、ソフトウエアの実行は、種々の接続ステップ、処理ステップ、比較ステップ、及び決定ステップを果たすために、ルールベース論理及び他の論理を伴う標準プログラミング技術によって達成される。
【0040】
加えて、本開示を特定の例示的な実施形態を参照して説明してきたが、多くの異なる代替例、変更例、等も当業者にとって明らかになるだろう。開示された実施形態に対する変更は、図面、開示内容、及び添付の請求項の検討に基づいて特許請求される開示内容を実施する時に当業者によって理解されかつ実施され得るだろう。更に、請求項における「備える(comprising)」という用語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞(a, an)は、複数を排除するものではない。
図1A
図1B
図2
図3A-3C】
図4
【国際調査報告】